(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013821
(43)【公開日】2025-01-28
(54)【発明の名称】耐食性かつ機械加工可能な銅合金で形成された成形部品
(51)【国際特許分類】
C22C 9/02 20060101AFI20250121BHJP
C22C 9/04 20060101ALI20250121BHJP
C22F 1/08 20060101ALI20250121BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20250121BHJP
【FI】
C22C9/02
C22C9/04
C22F1/08 J
C22F1/08 K
C22F1/00 604
C22F1/00 630J
C22F1/00 630K
C22F1/00 631Z
C22F1/00 640A
C22F1/00 641B
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 691B
C22F1/00 626
C22F1/00 694B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024174877
(22)【出願日】2024-10-04
(62)【分割の表示】P 2021172295の分割
【原出願日】2019-06-10
(31)【優先権主張番号】10 2018 004 702.5
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】508178560
【氏名又は名称】ゲブル ケンペル ゲーエムベーハー ウント コンパニィー カーゲー メタルヴェルケ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ハンセン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低い鉛含量であり、機械的特性、耐食性を有する銅合金およびその使用、成形品の製造のためのプロセス、並びにそれらから形成された成形品を提供する。
【解決手段】Sn:2~6%、Zn:0~5%、S:0.05~0.6%、Pb:0.25%未満、Ni:0.6%未満、Sb:0.2%未満を含み、場合により、最大0.06重量%までのリン、最大0.03重量%までのB、最大0.03重量%までのZr、および不可避的不純物を含み、残部がCuである銅合金が提供される。成形品を製造するための、銅合金の少なくとも1つの熱間成形操作を含むことを特徴とするプロセス、並びにそれらから形成された成形品も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱間成形操作を含むプロセスによる成形部品の製造に適した銅合金で
あって、該合金は、重量%で以下の組成、すなわち、
Sn:2~6%
Zn:0~5%
S:0.05~0.6%
Pb:0.25%未満
Ni:0.6%未満
Sb:0.2%未満
を含み、場合により、最大0.06重量%までのリン、最大0.03重量%までのB、最
大0.03重量%までのZr、および不可避的不純物を含み、残部がCuであることを特
徴とする銅合金。
【請求項2】
少なくとも1つの熱間成形操作を含むプロセスによる成形部品の製造のための銅合金の
使用であって、該合金は、重量%で以下の組成、すなわち、
Sn:2~6%
Zn:0~5%
S:0.05~0.6%
Pb:0.25%未満
Ni:0.6%未満
Sb:0.2%未満
を含み、場合により、最大0.06重量%までのリン、最大0.03重量%までのB、最
大0.03重量%までのZr、および不可避的不純物を含み、残部がCuである銅合金で
ある、銅合金の使用。
【請求項3】
銅合金から成形部品を製造するためのプロセスであって、前記銅合金は、重量%で以下
の組成、すなわち、
Sn:2~6%
Zn:0~5%
S:0.05~0.6%
Pb:0.25%未満
Ni:0.6%未満
Sb:0.2%未満
を含み、場合により、最大0.06重量%までのリン、最大0.03重量%までのB、最
大0.03重量%までのZr、および不可避的不純物を含み、残部がCuである銅合金で
あり、前記プロセスは、
成形品を製造するための銅合金の少なくとも1つの熱間成形操作を含む
ことを特徴とするプロセス。
【請求項4】
不純物の合計が0.25重量%を超えない、請求項1に記載の銅合金、請求項2に記載
の使用、または請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
スズの含有量が2~4重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の銅合金、使
用またはプロセス。
【請求項6】
亜鉛の含有量が0~3重量%である、請求項1~5のいずれかに記載の銅合金、使用ま
たはプロセス。
【請求項7】
硫黄の含有量が0.1~0.45重量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の
銅合金、使用またはプロセス。
【請求項8】
前記銅合金が、Al、Si、Sb、Te、Se、CおよびBi族の元素を含まず、およ
び/または合金がPbを含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の銅合金、使用ま
たはプロセス。
【請求項9】
前記銅合金が、少なくとも1つの熱間成形後の機械加工ステップをさらに含むプロセス
によって成形部品を製造するのに適しており、前記プロセスが、少なくとも1つの熱間成
形ステップをさらに含むか、前記使用が熱間成形に続く機械加工プロセスを含む、請求項
1~8のいずれか一項に記載の銅合金、使用またはプロセス。
【請求項10】
請求項1または4~9のいずれかに記載の銅合金から形成された、または請求項2およ
び4~9のいずれか一項に記載の使用によって得られた、または請求項3~9のいずれか
に記載のプロセスによって得られた成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅合金、その使用、並びに成形品の製造のためのプロセスおよびそれから形成
された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
水は貴重な原料であり、日常の使用に欠かすことができないものである。従って、飲料
水が供給システムから取られるとき、それが細菌学的に、その後の消費が人間の病気をも
たらさないようでなければならない。これを達成するために、飲料水に直接接触する材料
に高い要求が課される。銅は最も高品質な汎用材料であり、水系システムの産業および技
術において不可欠な材料と見なされている。銅は静菌性を有しており、優れた耐食性も提
供する。銅はまた、成形においても優れた特性を示す。銅鋳造合金は鋳造が容易であり、
材料の高い強度と靭性により、プラストメカニカル成形に特に適している。
【0003】
しかしながら、機械加工中に問題を引き起こすのは、まさにこの塑性変形能である。こ
こで、均一な銅材料は長い切り屑(チップ)を形成する傾向がある。このタイプの切り屑
は、全自動旋削または穴開け中の作業シーケンスを阻害し、工具の刃先の激しい摩耗に繋
がる。銅の切り屑形成は、機械加工の制限要因である場合が多いため、ワークピースの経
済効率に直接的な影響を有する。
【0004】
ガンメタルは、銅鋳造合金のグループに属し、良好な鋳造性と最適な機械加工性および
高強度の組み合わせによって特徴付けられる。ガンメタルは、その優れた耐食性のため、
継手や衛生技術などの水系システムに特に適している。一般的なガンメタル合金は、強度
と耐食性を高めるためにスズを含んでいる。費用対効果の高い銅の代替品として、亜鉛が
添加される。ガンメタルで作られた製品を経済的に処理できるようにするために、重金属
リードが添加される。これは、合金のチップブレーカーとして機能し、CNCマシンおよ
び従来の自動旋盤での加工を可能にする。
【0005】
市販の鉛含有継手において飲料水が長期間流れない場合、金属イオンの移動によって、
水道水に鉛が放出される可能性がある。高い鉛濃度は健康に害があると考えられている。
このため、飲料水と接触する材料の鉛含有量には世界中でさらに厳しい要件が課されてい
る。ドイツ内でも、法定飲用水条例により、2013年1月12日以降、鉛含有量が10
μg/Lに削減された。飲料水中の鉛含有量をさらに削減する圧力が世界中で高まってお
り、今後も増加し続けるだろう。例えば、米国の法的要件により、銅合金の鉛含有量は、
飲料水中の実際の鉛濃度に関係なく、0.25%の平均鉛含有量を超えてはならない。
【0006】
理想的なガンメタルは、鉛および他の疑わしい物質を含まず、生産において同じまたは
よりよい効率を有し、耐食性、高い機械的強度および良好な加工性を損なうことはない。
【0007】
特許文献1は、4~6重量%のスズ、4~6重量%の亜鉛、および0.25重量%未満
の鉛を含む無鉛ガンメタル合金を記載している。この合金を用いて、鋳造プロセスによっ
て鉛フリーの部品を製造することができる。しかしながら、これらのコンポーネントの機
能面を形成するための後続の機械的処理は考慮されていない。鉛なしに、特定の組成は均
一なα-MK微細構造を示し、これは長い切り屑を形成する傾向があり、経済的に機械加
工することができない。また、想定される鋳造プロセスは、成形部品の生産のために、代
替の成形プロセスよりも高い材料投入量を必要とする。特許文献2~5は、銅合金を開示
している。特許文献6は、2~8重量%のスズ、2.5~13重量%の亜鉛、および0.
25重量%未満の鉛を含み、ホットプレスに適しており、ホットプレスの最後に均質な構
造を示す鉛フリーのガンメタル合金の形成プロセスを記載している。熱間成形により、少
ない材料投入量で成形部品を経済的に製造することができる。ブランクの成形までのプロ
セスシーケンスは説明されているが、コンポーネントの機能面の形成に必要な後続の機械
加工プロセスは考慮されていない。化学組成とそれに続く熱間成形により、均質な微細構
造が形成される。ここでも、チップブレーカーが存在しない場合には、加工中に長い切り
屑が形成され、部品の経済的な加工がより困難になる。
【0008】
特許文献7は、比較的低いが有意な割合のMn、Al、およびZrに加えて、Si含有
量が比較的高い銅合金で作られた低マイグレーション成分を記載している。同様の銅合金
は、特許文献8にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第2290114号
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0082588号
【特許文献3】欧州特許第2241643号
【特許文献4】欧州特許第3225707号
【特許文献5】米国特許第9181606号
【特許文献6】欧州特許第2872660号
【特許文献7】欧州特許第1801250号
【特許文献8】国際公開第2007/068470号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先行技術で現在知られている多くの銅合金にもかかわらず、一方では、鉛(Pb)を使
用せずに管理し、これは環境および健康の観点からの問題であり、他方では、機械的特性
と耐食性を損なうことなく成形プロセスを可能にするガンメタル合金を特定することは、
依然として課題である。良好な熱間成形性を示し(すなわち、機械的特性の著しい低下な
しに)、好ましくは機械加工が容易な銅合金の提供は、特に課題であることが証明されて
いる。
【0011】
先行技術における上述した欠点のために、本発明の課題は、これらの欠点を克服する銅
合金を示すことである。特に、可能な限り少ない成分を含む銅合金は、鉛を含まないか、
本質的に鉛を含まず、高価な金属成分および/または混合が困難な金属成分を省くことが
できる。
【0012】
この課題は、請求項1に記載の銅合金、請求項2に記載のその使用、および請求項3に
記載の成形部品の製造方法によって解決される。好ましい設計は、従属請求項および以下
の説明に示される。ここで説明する銅合金を使用して製造された成形部品も応力に晒され
る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明は、本発明に従う合金に関して以下に説明される。しかし、この文脈で説
明した好ましい設計は、説明した使用、説明した製造プロセス、および説明した成形部品
にも適用でき、本発明のこれらの態様に対する好ましい設計と見なさなければならないこ
とは、当業者には明らかである。
【0014】
本発明は、低材料入力での熱間成形により、その微細構造にチップブレーカーを有する
ガンメタル合金から、高い機械的強度、高い寸法安定性および高い耐食性を備える成形部
品を製造することを可能にする。これらの部品は、ホットプレス後に経済的な機械加工を
施すこともできる。本発明の熱間成形可能なガンメタル合金は、微細構造にチップブレー
カーを形成するためにAl、Si、Pb、Sb、Te、Se、CおよびBiなどの元素を
必要とせず、従って容易に再利用することができる。
【0015】
従って、本発明は、特に、少なくとも1つの熱間成形プロセスと、それに続く機械加工
からの成形部品の製造のための、重量%で以下の組成、すなわち、
Sn:2~6%
Zn:0~5%
S:0.05~0.6%
Pb:0.25未満
Ni:0.6未満
Sb:0.2%未満、
を含み、任意で、最大0.06重量%までのリン、最大0.003重量%までのB、最大
0.03重量%までのZr、不可避的不純物を含み、不純物の合計が好ましくは0.25
重量%を超えず、残部はCuである銅合金を提供する。
【0016】
上述のように、特に、本発明の合金は、Al、Si、Sb、Te、Se、CおよびBi
族の元素を含まず、好ましい形態では、Pbも含まない。
【0017】
本発明に従って使用される合金成分の好ましい含有量は以下の通りであり、それにより
、これらは、本発明による各組み合わせと同様に個別に開示され、特許請求される(いず
れの場合も重量%である)。
Sn:2~4%、複数の実施形態では、2~3.25%などの2%以上3.5%未満
Zn:0~3%、複数の実施形態では、0~1.5%未満、特に0.1%以上1.5%未
満
S:0.1~0.45%、複数の実施形態では、0.1~0.2%などの0.1以上0.
25%未満
Ni:0.5%未満、0~0.25%などの0%以上0.4%以下
【0018】
合金中の銅含有量は、好ましくは88重量%以上、より好ましくは90重量%以上であ
る。
【0019】
本明細書に開示される銅合金は、先行技術からの既知の欠点を克服できることが予想外
に示された。特に、銅合金製の半製品および中間製品は、熱間成形に非常に適している。
熱間成形中のひずみ硬化の頻繁な劣化にもかかわらず(典型的には約600~950℃の
温度で)、本発明による合金は、優れた機械的特性を有し、耐食性の低下を示さない(例
えば、機械加工によりさらに加工され得る)成形部品の製造を可能にする。
【0020】
さらに、特に長い切り屑の望ましくない形成が回避されるため、この方法で(すなわち
、熱間成形後)形成された部品も経済的な方法でさらに処理できることが示された。従っ
て、熱間成形に関与するプロセスにもかかわらず、本発明による合金は、PbまたはSi
などの典型的なチップ破壊成分を省くものの、チップ破壊成分は依然として合金の微細構
造に存在することが分かる。そこで、本発明は、所望の特性の優れたバランスを備えた銅
合金を提供する。従って、銅合金の他の所望の特性の低下および高温での使用への適合性
を低下させることを恐れることなく、特にここで説明したさらなる処理ステップと組み合
わせて、特に熱間成形により、この合金から成形部品を製造することが可能である。
【0021】
従って、本発明による合金は、成形部品の製造に有利に使用することができ、これらの
製造プロセスは、場合によっては後続の機械加工などの他の機械加工プロセスと組み合わ
せた熱間成形を含む。ここで説明した銅合金の望ましい特性を維持するために、個々の合
金成分のみ、およびそれらの相互作用により、合金特性の良好で再現可能な制御が可能と
なる。
【0022】
スズは、固溶体硬化剤として合金中で作用し、したがって、引張強度、降伏強度および
硬度を高めるが、破断点伸びを減少させる。また、スズは耐食性を高め、スズ含有量が増
えると耐食性が向上する。熱間成形用ブランクの製造中に、スズによる微細構造内で強い
偏析が発生し、これは固化中にゾーン結晶の形成をもたらすことが認識された。凝固の開
始時に、比較的低いスズ含有量の銅結晶が沈殿し、残りの溶融物は、合金の平均含有量よ
りも高いスズ含有量で濃縮される。安定した銅-スズ状態図から逸脱すると、共析物が室
温で微細構造内に7重量%超のスズ(α+δ)の含有量で存在し得るが、平衡状態では、
この共析物は最大で15.8重量%のスズの含有量でのみ形成される。可能なδ相は、k
fz格子で結晶化するため、容易に変形可能であるが、416原子の膨大な基本セルのた
めに、相は脆性を示す。これにより、その後の熱間成形プロセスがより困難になる。共析
物は、十分な時間(α+δ)の高温での熱処理によって除去できるが、熱処理は多くのエ
ネルギーを必要とする。
【0023】
また、処理中に微細構造の結晶粒が拡大するリスクもある。これにより、伸びが低下し
、その後の熱間成形プロセスがより困難になるだろう。2~6重量%のスズ、特に好まし
くは2~4重量%のスズの含有量により、高い伸びを伴う高い機械的強度が保証され、鋳
造状態での共析物(α+δ)の形成が回避される。
【0024】
硫黄は、固体の銅にほとんど不溶性であり、耐食性などの材料の本来の特性は、硫黄の添
加による影響を受けない。固体の銅に不溶性であるため、硫黄は、鉛と同様の態様で銅-
スズ合金の凝固プロセスに影響を与える構成的挙動をもたらす。しかしながら、鉛とは異
なり、固化の終わりに硫黄は微細構造内に元素として存在せず、微細構造内に均一に分布
する金属間の金属硫黄化合物の形で存在する。この相は、微細構造においてインコヒーレ
ントで脆く、従ってチップ破壊メカニズムを生成することが認識できた。
【0025】
硫化物の特性は、ガンメタル材料の機械的、塑性的挙動に影響を及ぼす。影響は、材料
中の硫化物相の量によって決定される。0.6重量%を超える硫黄含有量から、α-Cu
マトリックスに伝達する応力は、硫化物の影響を非常に強く受けるため、ホットプレスプ
ロセスは極めて困難となる。0.05重量%から0.6重量%、特に好ましくは0.1重
量%から0.45重量%の硫黄含有量は、微細構造に十分な硫化介在物が存在し、チップ
破壊メカニズムを生成し、熱間成形プロセスを保証する。
【0026】
亜鉛は、銅の経済的な代替物として合金に添加される。亜鉛含有量と硫黄含有量の間に
は、時間の経過および硫化物形成の分布のタイプと密接な関係があることが認識されてき
た。亜鉛含有量が高いほど、鋳造凝固中に微細構造に硫化物の介在物が早く形成される。
亜鉛含有量が5重量%を超える場合、硫化物の形成は、ガンメタル合金の凝固温度の範囲
内の温度にシフトする。この温度範囲では、鋳造構造内に高い割合の溶融部分がなおも存
在し、それらは所々において互いに結合している。
【0027】
高い亜鉛含有量は、硫化物の早期形成に繋がる。これらの硫化物は、不均一であり、微
細構造に集中しているため、α-MKマトリックスの局所的な弱体化のために、ホットプ
レスプロセスがより困難になる。亜鉛の含有量が低い場合、形成はより低い温度にシフト
し、以前の残留溶融領域に存在し、硫化物は互いに別々にかつ均一に分布する。含有量が
0~5重量%、特に0~3重量%の亜鉛により、高温での硫化物の生成が回避される。調
査により、本発明による銅合金は、その特定の組成のために、成形部品の製造プロセスで
使用するのに特別な適合性を有し、このプロセスは少なくとも1つの熱間成形を含むこと
が示された。合金の特殊な組成により、熱間成形後に問題なく、例えば後続の機械加工な
ど、さらなる加工ステップを行うことができる。
【0028】
本発明による熱成形プロセスは、例えば、ホットプレスプロセスであり得る。しかし、
本発明によれば、専門家に既知の他の熱間成形プロセスも可能である。ブランクは、ホッ
トプレスプロセスなどの熱間成形の前に、600℃~950℃に加熱される。600℃か
ら、降伏強度は十分に低く、熱間成形プロセスを用いるとガンメタル材料を塑性変形させ
る。本発明によれば、熱成形は、上記の温度範囲内の任意の適切な温度、例えば700~
900℃で行うことができる。温度は、成形物品のタイプや成形速度などに応じて、専門
家によって選択される。
【0029】
また、所与の温度範囲では、硫化物の原子結合が弱くなるため、これらの超構造におけ
る転位の動きが促進されることが認識された。この温度範囲では、相は脆性を失って変形
可能になり、従って熱間成形プロセスを阻害しない。形成直後に、α-MKマトリックス
の動的再結晶が行われ、以前に鋳造された異なるスズ濃度の固溶体が除去され、断面全体
で均一な濃度が確保されるため、一定の機械特性および腐食特性を保証する。
【0030】
しかしながら、室温での変形プロセスの後、硫化物は再び微細構造内に分布して脆くな
り、その結果、それらはチップブレーカーとして機能する。0.05重量%以上の低硫黄
含有量の熱成形された成形部品であっても、切り屑と工具との間の摩擦が時間的に変化す
るため、機械加工中に工具の振動が発生することが分かった。これらの変化した摩擦条件
は、ホットプレスプロセス後、硫化物が埋め込まれた銅含有α-MKマトリックスで構成
される不均一な微細構造によるものである。振動滑りにより切り屑にせん断帯が形成され
、これにより層状切り屑およびせん断切り屑が発生し、工具の切り屑ガイドステップから
排出された時に、加工プロセスのさらなる過程において破壊される。これにより、長い切
り屑が防止され、経済的な加工が可能となる。
【0031】
本発明で想定されるホットプレスプロセスを可能にするために、鋳造状態の平均粒径は
2mmを超えてはならない。このような平均粒径を確保するために必要な手段は、専門家
に公知である。結晶粒の微細化は、例えば、ジルコニウムやホウ素などの化学添加物を0
.005~0.03重量%の含有量まで使用するか、電磁攪拌、超音波励起、振動、ガス
注入、または鋳造中の溶融物の強い過冷却の手段などの、結晶粒微細化の他の代替プロセ
スを使用することにより可能である。
【0032】
上記の銅合金は、成形部品の製造での使用に特に適しており、この製造は少なくとも1
つの熱間成形操作を含む。上記銅合金は、成形部品の製造にも使用でき、少なくとも1つ
の熱間成形操作の後に、後続の機械加工などの追加の処理ステップが続く。対応する製造
プロセスは、コンポーネントの製造、例えばガスまたは水道管などの媒体パイプや、例え
ば継ぎ手などの接続コンポーネントなどの製造に特に適している。特に注目されている継
手は、パイプ、継手、エンドキャップ、コネクタなどの家庭用配管システムのコンポーネ
ントである。このような成形部品の製造のための基本的なプロセスステップは専門家に公
知であるため、ここでは詳細に説明しない。この文脈において、使用される銅合金の特定
の組成は、上記のように、熱間成形後でも機械的特性と耐食性の低下がないことを意味す
ることに注意することが必要である。また、熱間成形の前後の双方において、得られた部
品を問題なく他の機械加工プロセスにかけられることが示された。特に、長い切り屑の問
題のある望ましくない形成が回避されるため、機械加工が可能である。このようにして、
経済的な方法で成形部品を製造することができる(特に、良好な高温動作特性、部品と接
触する物質、特に飲料水に対する不活性および腐食など、銅合金の他の望ましい特性抵抗
に影響されないため)。これに関連して、従来技術でしばしば必要と考えられる成分Pb
、Siなどの使用は不要であるにもかかわらず、ここで説明した本発明の利点が達成され
ることを特に強調すべきである。
【0033】
本明細書に記載された銅合金のこの予期されない利点は、上述の成形部品の製造におけ
るその経済的な使用を可能にする。
【0034】
例
鉛フリーのガンメタルから、飲料水設備用の成形部品が、その後の機械加工を伴う熱間
成形によって細粒状態で製造された。これは、ホットプレスプロセス後、合金の微細構造
にチップブレーカーが存在し、経済的な完全自動化機械加工が可能であることを示した。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱間成形操作を含むプロセスによる成形部品の製造に適した銅合金であって、該合金は、重量%で以下の組成、すなわち、
Sn:2~6%
Zn:0~5%
S:0.05~0.6%
Pb:0.25%未満
Ni:0.6%未満
Sb:0.2%未満
を含み、場合により、最大0.06重量%までのリン、最大0.03重量%までのB、最大0.03重量%までのZr、および不可避的不純物を含み、残部がCuであることを特徴とする銅合金。
【外国語明細書】