(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013840
(43)【公開日】2025-01-28
(54)【発明の名称】コーティング組成物およびこれから製造されるフィルム
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20250121BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20250121BHJP
C09D 183/06 20060101ALI20250121BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20250121BHJP
C08J 7/048 20200101ALI20250121BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D7/65
C09D183/06
B05D7/24 302Y
C08J7/048 CEP
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024178514
(22)【出願日】2024-10-11
(62)【分割の表示】P 2022168753の分割
【原出願日】2017-12-28
(31)【優先権主張番号】10-2016-0184431
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】515068085
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】チョ チシク
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンモ
(72)【発明者】
【氏名】パク キョンミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ソンクン
(72)【発明者】
【氏名】ナム トンジン
(72)【発明者】
【氏名】チョ スンソク
(72)【発明者】
【氏名】シン キュスン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単なコーティング工程だけでフィルムの光学的物性を阻害せずとも、耐透湿性および表面硬度を顕著に改善できるコーティング組成物を提供する。
【解決手段】ケージ型とラダー型のシルセスキオキサン樹脂の重量比が20:80~50:50重量%であるシルセスキオキサンオリゴマーを含み、前記オリゴマーは、化学式1で表されるラダー型シルセスキオキサン樹脂にケージ型が結合したものであり、そして更に開始剤を含み、前記開始剤の含有量が0.1~10重量%である、コーティング組成物とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケージ型シルセスキオキサン樹脂とラダー型シルセスキオキサン樹脂の重量比が10重量%:90重量%~80重量%:20重量%であるシルセスキオキサンオリゴマーを含む、コーティング組成物。
【請求項2】
前記シルセスキオキサンオリゴマーは、化学式1で表されるラダー型シルセスキオキサン樹脂に化学式2で表されるケージ型シルセスキオキサン樹脂が結合したものである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【化1】
前記化学式1において、
R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して置換基で置換もしくは非置換のメチル基;フェニル基;アミノ基;(メタ)アクリル基;ビニル基;エポキシ基;チオール基;または紫外線吸収体であり、nは1~100の整数であり、
R
5、R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立して、水素;置換基で置換もしくは非置換のC1~C10のアルキル基;または下記の化学式2で表される連結基であり、R
5、R
6、R
7、R
8のうちの少なくとも一つは下記の化学式2と連結され、
【化2】
前記化学式2において、
Rは、それぞれ独立して置換基で置換もしくは非置換のメチル基、フェニル基、アミノ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基、チオール基または紫外線吸収剤であり、R
0は、それぞれ独立して水素または置換基で置換もしくは非置換のC
1~C
10のアルキル基であり、
nは3~6の整数であり、
前記化学式1または2において、置換基はそれぞれ独立して重水素、ハロゲン、アミン基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基またはフェニル基である。
【請求項3】
前記コーティング組成物は、光または熱で開始される陽イオン開始剤、ラジカル開始剤または溶媒のいずれか一つ以上をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
請求項1~3に記載のコーティング組成物が基材上にコーティングされて硬化した、フィルム。
【請求項5】
前記基材の水分透過度は4g/m2.day以上である、請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
前記基材はトリアセチルセルロースである、請求項4に記載のフィルム。
【請求項7】
前記フィルムは100g/m2.day以下の水分透過度を有する、請求項6に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物に関し、特に、トリアセチルセルロースフィルムの上にコーティング組成物を用いて簡単なコーティング工程だけでトリアセチルセルロースフィルムの光学的物性を阻害せずとも、耐透湿性および表面硬度を改善できるコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に記述された内容は、単に本発明と関連する背景情報のみを提供するだけで、従来技術を構成するものではない。
【0003】
トリアセチルセルロースフィルムは写真フィルムで半世紀以上使用されてきた天然素材のプラスチックフィルムであり、特異なアモルファス構造を有しており、それによって特異な機械的、光学的物性を発現する。特に、複屈折が非常に低い水準で光学的等方性に優れた特性を有する。このような特性に基づいてトリアセチルセルロースフィルムは、偏光板用保護フィルム、視野角拡大フィルムの支持体などの光学フィルム用として幅広く使用されている。特に、偏光板用保護フィルムに使用されるトリアセチルセルロースフィルムは、純度が高く、透明性と光学的等方性が良好で位相差がなくてポリビニルアルコールフィルムの両面に接着して強度を向上し、ポリビニルアルコール基材を熱や湿度から保護する役割を果たす。また、ポリビニルアルコール基材とトリアセチルセルロースフィルムとの接着時に水溶性接着剤を用いるので、これに用いられるトリアセチルセルロースフィルムは、接着以後に水分が抜けるように適切な透湿特性が必須的に要求された。しかし、最近の偏光板の製作動向をみると、既存には水系接着剤を使用していたが、反応性接着剤に急激に変化しており、これ以上トリアセチルセルロースフィルムの透湿特性を必要としないように工程過程も共に変化している。
【0004】
また、トリアセチルセルロースフィルムは、水分透過度が他のフィルム類に比べて高いほうで、高温、多湿な環境では耐久性が低下しやすくて偏光子の不良をもたらし、スクラッチに脆弱な表面の硬度は解決しなければならない究極の課題として指摘されている。
【0005】
前記のような問題点を克服するため、産業界では多くの試みがなされてきた。例えば、韓国公開特許10-2016-0080656号では、トリアセチルセルロースフィルムの上にシロキサンオリゴマーを含むコーティング層を形成してトリアセチルセルロースフィルムの透湿度および表面硬度を克服しようとした。しかし、前記技術においては表面硬度が3Hの限界を表し、高い透湿率を示して耐久性が落ちるという問題が依然として存在した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のような従来技術の課題を解決するため、本発明は、簡単なコーティング工程だけでフィルムの光学的物性を阻害せずとも、耐透湿性および表面硬度を顕著に改善できるコーティング組成物を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、前記コーティング組成物を用いて透湿性および表面硬度が向上したフィルムおよびこれを含む光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明は、
ケージ型シルセスキオキサン樹脂とラダー型シルセスキオキサン樹脂の重量比が10重量%:90重量%~80重量%:20重量%であるシルセスキオキサンオリゴマーを含むコーティング組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、コーティング組成物が基材上にコーティングされて硬化したフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるコーティング組成物は、簡単なコーティング工程だけでフィルムの優れた光学的物性を阻害せずとも、耐透湿性および表面硬度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態によるコーティングされたフィルムを示した図であり、コーティング層は実際よりも厚く表示されている。
【
図2】本発明の一実施形態によるハードコーティングされたトリアセチルセルロースフィルムの結合構造を示した図である。
【
図3】本発明の実施例1によるコーティングされたトリアセチルセルロースフィルムのコーティング断面SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は多様な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0013】
明細書全体で、ある部分がある構成要素を“含む”というとき、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0014】
本発明のコーティング組成物は、ケージ型シルセスキオキサン樹脂とラダー型シルセスキオキサン樹脂の重量比が10重量%:90重量%~80重量%:20重量%であるシルセスキオキサンオリゴマーを含む。
【0015】
具体的には、本発明のコーティング組成物は、前記シルセスキオキサンオリゴマー;開始剤;および溶媒を含むことができる。
【0016】
前記シルセスキオキサンオリゴマーは、ケージ構造とラダー構造を一緒に有することができ、具体的には、化学式1で表されるラダー型シルセスキオキサン樹脂に化学式2で表されるケージ型シルセスキオキサン樹脂が結合されたものであり得る。
【化1】
前記化学式1において、
R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して置換基で置換もしくは非置換のメチル基;フェニル基;アミノ基;(メタ)アクリル基;ビニル基;エポキシ基;チオール基;または紫外線吸収体であり、nは1~100の整数であり、
R
5、R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立して、水素;置換基で置換もしくは非置換のC1~C10のアルキル基;または下記の化学式2で表される連結基であり、R
5、R
6、R
7、R
8のうちの少なくとも一つは下記の化学式2と連結され、
【化2】
前記化学式2において、
Rは、それぞれ独立して置換基で置換もしくは非置換のメチル基、フェニル基、アミノ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基、チオール基または紫外線吸収剤であり、R
0は、それぞれ独立して水素または置換基で置換もしくは非置換のC
1~C
10のアルキル基であり、
nは3~6の整数であり、
前記化学式1または2において、置換基はそれぞれ独立して重水素、ハロゲン、アミン基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基またはフェニル基である。
【0017】
前記紫外線吸収体は、200nm~400nmの波長範囲を有する紫外線を吸収する構造体であり、汎用的に使用されている紫外線吸収体としては、benzophenone系(紫外線吸収範囲300~380nm)、benzotriazole系(吸収範囲300~385nm)、salicylic acid系(吸収範囲260~340nm)、acrylonitrile系(吸収範囲290~400nm)などがある。
【0018】
本発明に使用される前記シルセスキオキサンオリゴマーは、オリゴマー内のケージ構造の比率が10~80重量%を有することによって、TACフィルムの水分透過度は100g/m2.day以下である優れた耐透湿性を満足させることができ、具体的には、シルセスキオキサンオリゴマーは、オリゴマー内のケージ構造の比率が20~50重量%を有することによって、TACフィルムの水分透過度は85g/m2.day以下である優れた耐透湿性を同時に満足させることができ、より具体的には、シルセスキオキサンオリゴマーは、オリゴマー内のケージ構造の比率が25~35重量%を有することによって、TACフィルムの水分透過度は70g/m2.day以下である優れた耐透湿性を満足させることができる。
【0019】
また、具体的には化学式2で表される連結基は、nが4の場合下記の化学式3のような構造であり得る。
【化3】
【0020】
前記化学式3において、*は連結部位であり、RおよびR0は、化学式2において定義した通りである。
【0021】
本発明のコーティング組成物で前記シルセスキオキサンオリゴマーの含有量は20~60重量%であることが望ましい。前記範囲内の場合、TACフィルムの優れた耐透湿性および優れた表面硬度を同時に満足させることができる。
【0022】
トリアセチルセルロースフィルムは、高い水分透過度によって多湿な環境では耐久性が低下しやすく、特に、これを用いた偏光板の偏光子の不良をもたらす原因となる。そこで、本発明では、トリアセチルセルロースフィルムの上にシルセスキオキサンを含む組成物をコーティングすることによって、トリアセチルセルロースフィルムの水分透過度を顕著に低くしながら表面硬度も大幅に向上させて、耐久性が向上したトリアセチルセルロースフィルムを提供する。
【0023】
ラダー型単独のシルセスキオキサンは脆性が高くて、コーティング時にコーティング膜が割れて、壊れやすくて、コーティング膜には容易ではない。また、ケージ型単独のシルセスキオキサンは、コーティング後に時間経過に伴って再配列を起こして初期の性能を維持できず、ケージ構造自体が有する空隙によって透湿率を低下させることに限界がある。
【0024】
そこで、本発明者らは1分子内にケージ型構造とラダー型構造を同時に有するシルセスキオキサンを製造した。また、ケージ型構造とラダー型構造との比率を調節することによって透湿率および表面硬度を向上させた。特に、ケージ型構造とラダー型構造との比率が10重量%:90重量%~80重量%:20重量%を有するコーティング組成物をコーティング時に形成されたネットワーク構造間の空隙の大きさを小さくして透湿率を顕著に低下させ、表面硬度も大幅に向上させた。
【0025】
また、本発明のコーティング組成物に含まれる開始剤は特に限定されず、具体的には光ラジカル開始剤、光陽イオン開始剤、熱ラジカル開始剤または熱陽イオン開始剤などを使用することができる。本発明のコーティング組成物で、前記開始剤の含有量は0.1~10重量%であることが望ましい。前記範囲内であればTACフィルムの優れた耐透湿性および優れた表面硬度を同時に満足させることができる。
【0026】
また、本発明で使用可能な溶媒としては溶解性があり、反応に影響を与えない溶媒であれば特に限定されず、具体的には、前記有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、グリコール類、フラン系、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどの極性溶媒だけでなく、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクロニトリル、メチレンクロリド、オクタデシルアミン、アニリン、ジメチルスルホキシド、ベンジルアルコールなど多様な溶媒を用いることができるが、これに限定されない。本発明で前記溶媒はシルセスキオキサンオリゴマー、開始剤および選択的に追加される添加剤を除いた残量で含まれ得る。
【0027】
本発明のコーティング組成物は、必要に応じてシリコン系添加剤またはアクリル系添加剤をさらに含むことができる。
【0028】
前記コーティング組成物のシリコン系添加剤としては、BYK-300、BYK-301、BYK-302、BYK-331、BYK-335、BYK-306、BYK-330、BYK-341、BYK-344、BYK-307、BYK-333、BYK-310があり、アクリル系添加剤としてはBYK-340、BYK-350、BYK-352、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358N、BYK-359、BYK-361N、BYK-380N、BYK-381、BYK-388、BYK-390、BYK-392、BYK-394がある。前記添加剤はそれぞれ独立して0.01~5重量%の含有量で添加されることができる。前記シリコン系添加剤を含む場合ハードコーティング層の表面スリップ性とコーティングの平坦性をさらに向上させることができ、耐透湿性をさらに向上させることができる。また、アクリル系添加剤を用いる場合ハードコーティング層のレベリング性および耐透湿性をさらに向上させることができる。また、本発明のハードコーティング組成物は、必要に応じて酸化防止剤、レベリング剤などハードコーティング組成物に添加できる公知の添加剤をさらに含むことができる。
【0029】
また、本発明は、前記コーティング組成物が基材上にコーティングされて硬化したフィルムを提供する。
【0030】
本発明によるコーティング組成物は、4g/m2.day以上の水分透過度を有するフィルムで耐透湿性を向上させる効果をもたらす。詳しくは、前記コーティング組成物はPMMA、PET、PC、PES、PVA、PI、COCなどのフィルムにコーティング可能であり、特に、トリアセチルセルロースフィルムにコーティングした場合、透湿力の向上の効果が最も効果的に起こる。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態によるコーティングされたフィルム100を示した図である。
【0032】
本発明のコーティングされたフィルム100は、フィルム層101の上に前記コーティング組成物の硬化層102が結合された構造を有する。具体的には、前記コーティング組成物の硬化層102の厚さは10~60umであり得る。前記フィルムはPMMA、PET、PC、PES、PVA、PI、COCなどのフィルムであり得、特に、トリアセチルセルロースフィルムであり得る。前記範囲内であればコーティングされたフィルム100の耐透湿性と表面硬度をさらに向上させることができる。
【0033】
前記コーティング組成物の硬化層102を形成する方法は、前記コーティング組成物をフィルム層101の表面の上にコーティングした後、乾燥または硬化して形成することができ、コーティング方法はスピンコーティング、バーコーティング、スリットコーティング、ディップコーティング、ナチュラルコーティング、リバースコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、浸漬法、含浸法、グラビアコーティングなど公知の方法中で当業者が任意に選択して適用することができる。
【0034】
具体的には、前記コーティング組成物の硬化層102は、シリコン系添加剤およびアクリル系添加剤をさらに含むことができ、この場合、コーティングされたフィルム100の耐透湿性と表面硬度をさらに向上させることができる。
【0035】
図2は、本発明のコーティングされたトリアセチルセルロースフィルム100のコーティング断面の結合構造を示した図である。
図2に示したように、フィルム層101とコーティング組成物の硬化層102が水素結合および/またはバンデルバルス結合を通じて強く結合することによって、全体コーティングされたトリアセチルセルロースフィルム100が耐透湿性と表面硬度で耐久性に優れた長所がある。
【0036】
本発明によるコーティングされたフィルム100は、従来のフィルムの慢性的問題である耐透湿性および表面硬度を顕著に改善して偏光板用保護フィルム、視野角拡大フィルムの支持体など光学フィルムに有用に適用することができる。
【0037】
以下、本発明の理解を助けるために具体的な実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示したものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0038】
[触媒の製造]
塩基度調整のために、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド25重量%水溶液に10%水酸化カリウム水溶液を混合して触媒を製造した。
【0039】
[合成例1]
冷却管と撹拌機を備えた乾燥済みのフラスコに、蒸留水10重量部、アセトニトリル(大井化金(株))20重量部、製造された触媒2重量部を滴加し、1時間常温で攪拌した後、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)、商品名KBM-303)20重量部を滴加して6時間追加攪拌した。反応完了後、2回洗浄して触媒と不純物を抽出し、最終的にケージ型シルセスキオキサンおよびラダー型シルセスキオキサンが10:90の比率を有するシルセスキオキサンオリゴマーを得た。
【0040】
[合成例2]
冷却管と撹拌機を備えた乾燥済みのフラスコに、蒸留水10重量部、アセトニトリル(大井化金(株))50重量部、製造された触媒2重量部を滴加し、1時間常温で攪拌した後、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)、商品名KBM-303)20重量部を滴加して6時間追加攪拌した。反応完了後、2回洗浄して触媒と不純物を抽出し、最終的にケージ型シルセスキオキサンおよびラダー型シルセスキオキサンが30:70の比率を有するシルセスキオキサンオリゴマーを得た。
【0041】
[合成例3]
冷却管と撹拌機を備えた乾燥済みのフラスコに、蒸留水10重量部、アセトニトリル(大井化金(株))90重量部、製造された触媒2重量部を滴加し、1時間常温で攪拌した後、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)、商品名KBM-303)20重量部を滴加して6時間追加攪拌した。反応完了後、2回洗浄して触媒と不純物を抽出し、最終的にケージ型シルセスキオキサンおよびラダー型シルセスキオキサンが50:50の比率を有するシルセスキオキサンオリゴマーを得た。
【0042】
[合成例4]
冷却管と撹拌機を備えた乾燥済みのフラスコに、蒸留水10重量部、アセトニトリル(大井化金(株))220重量部、製造された触媒2重量部を滴加し、1時間常温で攪拌した後、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)、商品名KBM-303)20重量部を滴加して6時間追加攪拌した。反応完了後、2回洗浄して触媒と不純物を抽出し、最終的にケージ型シルセスキオキサンおよびラダー型シルセスキオキサンが80:20の比率を有するシルセスキオキサンオリゴマーを得た。
【0043】
[合成例5]
冷却管と撹拌機を備えた乾燥済みのフラスコに、蒸留水10重量部、アセトニトリル(大井化金(株))7重量部、製造された触媒2重量部を滴加し、1時間常温で攪拌した後、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)、商品名KBM-303)20重量部を滴加して6時間追加攪拌した。反応完了後、2回洗浄して触媒と不純物を抽出し、最終的にケージ型シルセスキオキサンおよびラダー型シルセスキオキサンが3:97の比率を有するシルセスキオキサンオリゴマーを得た。
【0044】
[合成例6]
冷却管と撹拌機を備えた乾燥済みのフラスコに、蒸留水10重量部、アセトニトリル(大井化金(株))10重量部、製造された触媒2重量部を滴加し、1時間常温で攪拌した後、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)、商品名KBM-303)20重量部を滴加して6時間追加攪拌した。反応完了後、2回洗浄して触媒と不純物を抽出し、最終的にケージ型シルセスキオキサンおよびラダー型シルセスキオキサンが5:95の比率を有するシルセスキオキサンオリゴマーを得た。
【0045】
[合成例7]
冷却管と撹拌機を備えた乾燥済みのフラスコに、蒸留水10重量部、アセトニトリル(大井化金(株))260重量部、製造された触媒2重量部を滴加し、1時間常温で攪拌した後、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)、商品名KBM-303)20重量部を滴加して6時間追加攪拌した。反応完了後、2回洗浄して触媒と不純物を抽出し、最終的にケージ型シルセスキオキサンおよびラダー型シルセスキオキサンが85:15の比率を有するシルセスキオキサンオリゴマーを得た。
【0046】
[合成例8]
冷却管と撹拌機を備えた乾燥済みのフラスコに、蒸留水10重量部、アセトニトリル(大井化金(株))280重量部、製造された触媒2重量部を滴加し、1時間常温で攪拌した後、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)、商品名KBM-303)20重量部を滴加して6時間追加攪拌した。反応完了後、2回洗浄して触媒と不純物を抽出し、最終的にケージ型シルセスキオキサンおよびラダー型シルセスキオキサンが90:10の比率を有するシルセスキオキサンオリゴマーを得た。
【0047】
[実施例1]
前記合成例1で得られたシルセスキオキサンオリゴマー50gをメチルイソブチルケトンに50重量%で溶かして100gの組成物を製造した。以降、準備された組成物100重量部にクロロアセトフェノン5重量部、シリコン系添加剤BYK-302 1重量部およびアクリル系添加剤BYK-359 1重量部を添加し10分間攪拌してケージ型構造とラダー型構造の比率が10重量%:90重量%の光硬化型樹脂組成物を製造した。製造された光硬化型樹脂組成物を80μmトリアセチルセルロースフィルム(FUJIFILM)の上に塗布し、85度の乾燥オーブンで溶媒を蒸発させた後、UV装備を用いて1J/cm2のUVを照射して結果物を収得した。
【0048】
[実施例2]
前記合成例2で得られたシルセスキオキサンオリゴマー50gをメチルイソブチルケトンに50重量%で溶かして100gの組成物を製造した。以降、準備された組成物100重量部にアクリル系添加剤BYK-359 1重量部を添加し10分間攪拌してケージ型構造とラダー型構造の比率が30重量%:70重量%の光硬化型樹脂組成物を製造した。製造された光硬化型樹脂組成物を80μmトリアセチルセルロースフィルム(FUJIFILM)の上に塗布し、85度の乾燥オーブンで溶媒を蒸発させた後、UV装備を用いて1J/cm2のUVを照射して結果物を収得した。
【0049】
[実施例3]
前記合成例3で得られたシルセスキオキサンオリゴマー50gをメチルイソブチルケトンに50重量%で溶かして100gの組成物を製造した。以降、準備された組成物100重量部にクロロアセトフェノン5重量部、シリコン系添加剤BYK-302 1重量部およびアクリル系添加剤BYK-359 1重量部を添加し10分間攪拌してケージ型構造とラダー型構造の比率が50重量%:50重量%の光硬化型樹脂組成物を製造した。製造された光硬化型樹脂組成物を80μmトリアセチルセルロースフィルム(FUJIFILM)の上に塗布し、85度の乾燥オーブンで溶媒を蒸発させた後、UV装備を用いて1J/cm2のUVを照射して結果物を収得した。
【0050】
[実施例4]
前記合成例4で得られたシルセスキオキサンオリゴマー50gをメチルイソブチルケトンに50重量%で溶かして100gの組成物を製造した。以降、準備された組成物100重量部にクロロアセトフェノン5重量部、シリコン系添加剤BYK-302 1重量部およびアクリル系添加剤BYK-359 1重量部を添加し10分間攪拌してケージ型構造とラダー型構造の比率が80重量%:20重量%の光硬化型樹脂組成物を製造した。製造された光硬化型樹脂組成物を80μmトリアセチルセルロースフィルム(FUJIFILM)の上に塗布し、85度の乾燥オーブンで溶媒を蒸発させた後、UV装備を用いて1J/cm2のUVを照射して結果物を収得した。
【0051】
[実施例5]
前記合成例2で得られたシルセスキオキサンオリゴマー50gをメチルイソブチルケトンに50重量%で溶かして100gの組成物を製造した。以降、準備された組成物100重量部にクロロアセトフェノン5重量部、シリコン系添加剤BYK-302 1重量部およびアクリル系添加剤BYK-359 1重量部を添加し10分間攪拌してケージ型構造とラダー型構造の比率が30重量%:70重量%の光硬化型樹脂組成物を製造した。製造された光硬化型樹脂組成物を80μmトリアセチルセルロースフィルム(FUJIFILM)の上に塗布し、85度の乾燥オーブンで溶媒を蒸発させた後、UV装備を用いて1J/cm2のUVを照射し、反対面にも同じ工程を通じて両面コーティングして結果物を収得した。
【0052】
[比較例1]
実施例および比較例のコ-ティング基材として用いた80μmトリアセチルセルロースフィルム(FUJIFILM)単独で下記実験を行った。
【0053】
[比較例2]
前記合成例5で得られたシルセスキオキサンオリゴマー50gをメチルイソブチルケトンに50重量%で溶かして100gの組成物を製造した。以降、準備された組成物100重量部にクロロアセトフェノン5重量部、シリコン系添加剤BYK-302 1重量部およびアクリル系添加剤BYK-359 1重量部を添加し10分間攪拌してケージ型構造とラダー型構造の比率が3重量%:97重量%の光硬化型樹脂組成物を製造した。製造された光硬化型樹脂組成物を80μmトリアセチルセルロースフィルム(FUJIFILM)の上に塗布し、85度の乾燥オーブンで溶媒を蒸発させた後、UV装備を用いて1J/cm2のUVを照射して結果物を収得した。
【0054】
[比較例3]
前記合成例6で得られたシルセスキオキサンオリゴマー50gをメチルイソブチルケトンに50重量%で溶かして100gの組成物を製造した。以降、準備された組成物100重量部にクロロアセトフェノン5重量部、シリコン系添加剤BYK-302 1重量部およびアクリル系添加剤BYK-359 1重量部を添加し10分間攪拌してケージ型構造とラダー型構造の比率が5重量%:95重量%の光硬化型樹脂組成物を製造した。
製造された光硬化型樹脂組成物を80μmトリアセチルセルロースフィルム(FUJIFILM)の上に塗布し、85度の乾燥オーブンで溶媒を蒸発させた後、UV装備を用いて1J/cm2のUVを照射して結果物を収得した。
【0055】
[比較例4]
前記合成例7で得られたシルセスキオキサンオリゴマー50gをメチルイソブチルケトンに50重量%で溶かして100gの組成物を製造した。以降、準備された組成物100重量部にクロロアセトフェノン5重量部、シリコン系添加剤BYK-302 1重量部およびアクリル系添加剤BYK-359 1重量部を添加し10分間攪拌してケージ型構造とラダー型構造の比率が85重量%:15重量%の光硬化型樹脂組成物を製造した。
製造された光硬化型樹脂組成物を80μmトリアセチルセルロースフィルム(FUJIFILM)の上に塗布し、85度の乾燥オーブンで溶媒を蒸発させた後、UV装備を用いて1J/cm2のUVを照射して結果物を収得した。
【0056】
[比較例5]
前記合成例8で得られたシルセスキオキサンオリゴマー50gをメチルイソブチルケトンに50重量%で溶かして100gの組成物を製造した。以降、準備された組成物100重量部にクロロアセトフェノン5重量部、シリコン系添加剤BYK-302 1重量部およびアクリル系添加剤BYK-359 1重量部を添加し10分間攪拌してケージ型構造とラダー型構造の比率が90重量%:10重量%の光硬化型樹脂組成物を製造した。
【0057】
製造された光硬化型樹脂組成物を80μmトリアセチルセルロースフィルム(FUJIFILM)の上に塗布し、85度の乾燥オーブンで溶媒を蒸発させた後、UV装備を用いて1J/cm2のUVを照射して結果物を収得した。
【0058】
[実験]
前記実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4および比較例5で収得した結果物を対象に、コーティング前後に対して鉛筆硬度、接着力、透過度、ヘイズ、水分透過度を測定して下記表1に示した。
-鉛筆硬度:JIS5600-5-4に基づいて500g荷重で評価した。鉛筆は三菱製品を使用し、1本鉛筆硬度あたり5回実施して2つ以上のスクラッチが発生する場合不良と判定した。測定硬度とスクラッチの未発生回数/実施回数で表記した。
-接着力評価:JIS K5600-5-6に基づいて1mm間隔でカッター刃で引いて格子状に100個のキズをつけ、粘着テープをその上に付着し、その後に90度方向に引きはがしてコーティング層の表面が粘着テープに付着しているかどうかを肉眼で確認した。表記は、100個のうち、付着している個数で表記した。
(例:付着している個数/100で表記、100個が付着していると100/100で表記する。)
-透過度およびヘイズ:ISO14782に基づいて、COH-400(Nippon
Denshoku)を用いて測定した。サンプルあたり5回ずつ測定して平均値を記載した。
-水分透過度:MOCON装備を用いて37.8°C、100%RH(Relative Humidity)恒温恒湿条件で測定した。
【表1】
【0059】
前記表1に示したように、本発明の実施例2、実施例3、実施例5は、実施例1、実施例4、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4および比較例5と比較して顕著に優れた物性を示した。特に、実施例2とその両面コーティングの実施例5の場合、さらに優れたTACフィルムの水分透過度と鉛筆硬度を有することを確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
偏光板用保護フィルム、視野角拡大フィルムの支持体などの光学フィルム用として使用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケージ型シルセスキオキサン樹脂とラダー型シルセスキオキサン樹脂の重量比が
20重量%:80重量%~50重量%:50重量%であるシルセスキオキサンオリゴマーを含み、前記シルセスキオキサンオリゴマーは、化学式1で表されるラダー型シルセスキオキサン樹脂に化学式2で表されるケージ型シルセスキオキサン樹脂が結合したものであり、
そして更に開始剤を含み、前記開始剤の含有量が0.1~10重量%である、コーティング組成物。
【化1】
前記化学式1において、
R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して置換基で置換もしくは非置換のメチル基;フェニル基;アミノ基;(メタ)アクリル基;ビニル基;エポキシ基;チオール基;または紫外線吸収体であり、nは1~100の整数であり、
R
5、R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立して、水素;置換基で置換もしくは非置換のC1~C10のアルキル基;または下記の化学式2で表される連結基であり、R
5、R
6、R
7、R
8のうちの少なくとも一つは下記の化学式2と連結され、
【化2】
前記化学式2において、
Rは、それぞれ独立して置換基で置換もしくは非置換のメチル基、フェニル基、アミノ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基、チオール基または紫外線吸収剤であり、R
0は、それぞれ独立して水素または置換基で置換もしくは非置換のC
1~C
10のアルキル基であり、
nは3~6の整数であり、
前記化学式1または2において、置換基はそれぞれ独立して重水素、ハロゲン、アミン基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基またはフェニル基である。
【請求項2】
前記シルセスキオキサンオリゴマーの含有量が、20~60重量%である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記コーティング組成物は、溶媒をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
請求項1~3に記載のコーティング組成物が基材上にコーティングされて硬化した、フィルム。
【請求項5】
前記基材の水分透過度は4g/m2.day以上である、請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
前記基材はトリアセチルセルロースである、請求項4に記載のフィルム。
【請求項7】
前記フィルムは100g/m2.day以下の水分透過度を有する、請求項6に記載のフィルム。
【外国語明細書】