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特開2025-138442ヘッドカバー、内燃機関、及び、車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025138442
(43)【公開日】2025-09-25
(54)【発明の名称】ヘッドカバー、内燃機関、及び、車両
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/04 20060101AFI20250917BHJP
【FI】
F01M13/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037540
(22)【出願日】2024-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優郎
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015AA13
3G015BD13
3G015BD25
3G015BE06
3G015DA05
(57)【要約】
【課題】 ブローバイガスに含まれるオイルをできるだけ多く回収し得る、ヘッドカバーを提供すること。
【解決手段】 内燃機関のヘッドカバーは、天井部とプレートとの間に区画されるバッフル室を備える。バッフル室は、ブローバイガス入口を通して流入するブローバイガスからオイルミストの一部を滞留させるとともに分離させる第1の部屋と、第1の部屋の出口を通過したブローバイガスを折り返すように誘導する壁を備え、ブローバイガスからオイルミストを分離させる第2の部屋と、第2の部屋を通過したブローバイガスを旋回するように誘導する曲面壁を備え、ブローバイガスからオイルミストを分離させる第3の部屋と、第2の部屋において、第3の部屋に出口に向かうにつれて開口面積を小さくする絞り部とを有する。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のヘッドカバーであって、
天井部を有するヘッドカバー本体、及び、前記天井部に対向して設けられるプレートを備え、前記天井部と前記プレートとの間に区画されるバッフル室と、
前記プレートに設けられ、オイルミストを含むブローバイガスを、前記バッフル室に流入させるブローバイガス入口と
を備え、
前記バッフル室は、
前記ブローバイガス入口を通して流入する前記ブローバイガスから前記オイルミストの一部を滞留させるとともに分離させる第1の部屋と、
前記ブローバイガスが流れる方向に沿って、前記第1の部屋の下流側に連通し、前記第1の部屋の出口を通過した前記ブローバイガスを折り返すように誘導する壁を備え、前記ブローバイガスから前記オイルミストを分離させる第2の部屋と、
前記ブローバイガスが流れる方向に沿って、前記第2の部屋の下流側に連通し、前記第2の部屋を通過した前記ブローバイガスを旋回するように誘導する曲面壁を備え、前記ブローバイガスから前記オイルミストを分離させる第3の部屋と、
前記第2の部屋において、前記第3の部屋に出口に向かうにつれて開口面積を小さくする絞り部と、
前記ブローバイガスが流れる方向に沿って、前記第3の部屋の下流側に連通し、前記ブローバイガスを排出するブローバイガス出口と
を有する、ヘッドカバー。
【請求項2】
前記第1の部屋は、前記第1の部屋と前記第2の部屋とを区画し、前記第1の部屋の出口と前記第2の部屋の入口とを兼ねる開口部分を有する、第1の壁部を備え、
前記第1の部屋は、前記ブローバイガス入口から前記ブローバイガスを直接流入させる位置に設けられる、
請求項1に記載のヘッドカバー。
【請求項3】
前記第2の部屋は、前記ブローバイガスが流れる方向に沿って、前記第1の部屋の下流側に隣接し、
前記第2の部屋の入口を通した前記ブローバイガスを、前記第1の部屋に向けて曲げる曲面部と、前記曲面部に連続し前記第1の部屋側に設けられるオイルミスト捕捉部と、を有する第2の壁部を備える、
請求項2に記載のヘッドカバー。
【請求項4】
前記第2の部屋の前記第2の壁部は、前記ブローバイガスを前記壁に沿って前記第1の部屋の出口に対して水平方向に180°誘導するように形成される、
請求項3に記載のヘッドカバー。
【請求項5】
前記第2の部屋は、前記ブローバイガスが流れる方向に沿って、前記第2の部屋の出口を形成する第3の壁部を備え、
前記第3の壁部は、前記第2の部屋の出口に向かうにつれて前記ブローバイガスが流れる通路の開口量を減少させるように形成される、
請求項3に記載のヘッドカバー。
【請求項6】
前記第3の部屋の前記曲面壁は、前記第3の部屋の入口を通した前記ブローバイガスを水平方向に旋回させるように形成される、
請求項1に記載のヘッドカバー。
【請求項7】
前記第3の部屋の前記曲面壁は、前記ブローバイガスが、前記絞り部の出口に対して水平方向に180°から270°の間で旋回するように誘導する、
請求項6に記載のヘッドカバー。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のヘッドカバーと、
前記ヘッドカバーが設けられる内燃機関本体と
を有する、内燃機関。
【請求項9】
請求項8に記載の内燃機関と、
前記内燃機関の上方に設けられるフロアパネルを有するキャブと
を有する、車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドカバー、内燃機関、及び、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、内燃機関に取り付けられるヘッドカバーが開示されている。このヘッドカバーは、オイルミストを含むブローバイガスからオイルを分離するオイルセパレータを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-143628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ブローバイガスに含まれるオイルをできるだけ多く回収し得る、ヘッドカバー、内燃機関、及び、車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、内燃機関のヘッドカバーは、天井部を有するヘッドカバー本体、及び、前記天井部に対向して設けられるプレートを備え、前記天井部と前記プレートとの間に区画されるバッフル室と、前記プレートに設けられ、オイルミストを含むブローバイガスを、前記バッフル室に流入させるブローバイガス入口とを備える。前記バッフル室は、前記ブローバイガス入口を通して流入する前記ブローバイガスから前記オイルミストの一部を滞留させるとともに分離させる第1の部屋と、前記ブローバイガスが流れる方向に沿って、前記第1の部屋の下流側に連通し、前記第1の部屋の出口を通過した前記ブローバイガスを折り返すように誘導する壁を備え、前記ブローバイガスから前記オイルミストを分離させる第2の部屋と、前記ブローバイガスが流れる方向に沿って、前記第2の部屋の下流側に連通し、前記第2の部屋を通過した前記ブローバイガスを旋回するように誘導する曲面壁を備え、前記ブローバイガスから前記オイルミストを分離させる第3の部屋と、前記第2の部屋において、前記第3の部屋に出口に向かうにつれて開口面積を小さくする絞り部と、前記ブローバイガスが流れる方向に沿って、前記第3の部屋の下流側に連通し、前記ブローバイガスを排出するブローバイガス出口とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ブローバイガスに含まれるオイルをできるだけ多く回収し得る、ヘッドカバー、内燃機関、及び、車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】車両の前後方向、左右方向に対する内燃機関の取り付け状態を上側から見た図。
図2】ヘッドカバーを含む内燃機関の一部と、その上方に設けられるキャブの一部とを示す断面図。
図3図1及び図2に示す内燃機関のヘッドカバーの概略的な斜視図。
図4図3中の矢印IVで示す方向から見たヘッドカバーの下面図。
図5図3に示すヘッドカバーの右側から見た透視図。
図6図4中のVI-VI線に沿うヘッドカバーの概略的な斜視断面図。
図7図4中のVII-VII線に沿うヘッドカバーの概略的な斜視断面図。
図8図5中の符号VIIIで示す方向から見たヘッドカバーの概略的な斜視断面図。
図9図5中の符号IXで示す方向から見たヘッドカバーの概略的な斜視断面図。
図10図4に示すヘッドカバーの底壁部を透視した状態を示す図。
図11図8中の符号XIで示す位置の拡大図。
図12図8中の符号XIIで示す位置の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。各図に示す上下前後左右の各方向は、説明の便宜上定めたものに過ぎないものとする。
【0009】
図1には、車両10の前後方向、左右方向に対する内燃機関12の取り付け状態を上側から見た図を示す。図2には、ヘッドカバー30を含む内燃機関12の一部と、内燃機関12の上方に設けられるキャブ(キャビン)14の一部とを示す断面図を示す。なお、図2は、図4中のII-II線に沿う断面図である。ヘッドカバー30は、内燃機関12のうち、上部に配置される。
【0010】
図3には、内燃機関12のヘッドカバー30の概略的な斜視図を示す。
【0011】
図4には、図3中の矢印IVで示す方向から見たヘッドカバー30の下面図を示す。図5には、図3に示すヘッドカバー30の左側から見た透視図を示す。
【0012】
図6には、図4中のVI-VI線に沿うヘッドカバー30の概略的な斜視断面図を示す。図7には、図4中のVII-VII線に沿うヘッドカバー30の概略的な斜視断面図を示す。
【0013】
図8及び図9は、図5中のS-S線に沿う断面として示す。このため、図8及び図9は、ヘッドカバー30の最上部を除去した状態を示す。図8は、図5中の符号VIIIで示す方向から見たヘッドカバー30の概略的な斜視断面図を示す。図9は、図5中の符号IXで示す方向から見たヘッドカバー30の概略的な斜視断面図を示す。
【0014】
図10には、図4に示すヘッドカバー30の底壁部(プレート)42を透視した状態を示す。図11には、図8中の符号XIで示す位置の拡大図を示す。図12には、図8中の符号XIIで示す位置の拡大図を示す。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る車両10は、内燃機関12と、その上方に設けられるキャブ14とを備える。図2中の符号14aは、フロアパネルである。すなわち、本実施形態に係る車両10は、キャブ14が内燃機関12の上方に配置されるキャブオーバータイプとして形成される。このような車両10の内燃機関12は、後述する内燃機関本体22及びヘッドカバー30の高さができるだけ低く形成されることが好適である。
【0016】
なお、図2に示すフロアパネル14aとヘッドカバー30のヘッドカバー本体32との間の距離L1は、例えば34mm程度となる。また、フロアパネル14aとヘッドカバー30のヘッドカバー本体32との間の距離L2は、例えば81mm程度となる。
【0017】
キャブ14の後方には、架装(例えば荷台)が配置される。
【0018】
図1を用いて内燃機関12の概略構成を説明する。図1中において、白抜き矢印Aは、吸気される空気の流れを示し、黒塗り矢印Gは、排気の流れを示し、点線矢印Bは、ブローバイガスの流れを示す。
【0019】
本実施形態の内燃機関12は、車両10に搭載された多気筒の圧縮着火式内燃機関、例えば図2に符号12aで示す6つのシリンダ及びピストンを有する6気筒ディーゼルエンジンである。車両10は、例えばトラック等の大型車両である。しかしながら、車両10及び内燃機関12の種類、形式、用途等に特に限定はなく、例えば車両10は、乗用車等の小型車両であっても良いし、内燃機関12は、ガソリンエンジン等の火花点火式内燃機関であっても良い。
【0020】
内燃機関12は、内燃機関本体22と、吸気路24と、排気路26と、ターボチャージャ28と、ヘッドカバー30とを備える。
【0021】
内燃機関本体22は、シリンダヘッド、シリンダブロック、クランクケース等の固定部品と、その内部に収容されたピストン、クランクシャフト、弁機構等の可動部品とを含む。シリンダヘッドの上部には、弁機構を覆うヘッドカバー30が固定される。すなわち、内燃機関本体22には、ヘッドカバー30が設けられる。
【0022】
吸気路24は、内燃機関本体22のシリンダヘッドに接続された吸気マニホールド24aと、吸気マニホールド24aの上流端に接続された吸気管24bと、を含む。
【0023】
吸気マニホールド24aは、吸気管24bから送られてきた空気を各シリンダの吸気ポートに分配する。吸気管24bには、上流側から順に、エアクリーナ24c、ターボチャージャ28のコンプレッサ28a、及びインタークーラ24dが設けられる。
【0024】
排気路26は、内燃機関本体22のシリンダヘッドに接続された排気マニホールド26aと、排気マニホールド26aの下流側に配置された排気管26bとを含む。
【0025】
排気マニホールド26aは、各シリンダの排気ポートから送られてきた排気を集合させる。排気マニホールド26aと排気管26bの間には、ターボチャージャ28のタービン28bが設けられる。
【0026】
また、内燃機関本体22の内部には、ブローバイガスが流れるブローバイガス通路が設けられる。ブローバイガスは、シリンダとピストンとの隙間からクランクケース内に漏れ出たガスである。
【0027】
ブローバイガス通路は、例えば、クランクケース内からシリンダブロック及びシリンダヘッドの内部を通過してヘッドカバー30内に連通する。
【0028】
図2に示すように、ヘッドカバー30は、内燃機関12のシリンダヘッドの上方で、内燃機関12の最上部付近を覆うヘッドカバー本体32と、ヘッドカバー本体32に設けられ、ブローバイガスに含まれるオイルを分離するためのバッフル室70を有するオイルセパレータ34とを備える。
【0029】
図3から図10に示すように、ヘッドカバー30のヘッドカバー本体32は、例えば左右方向に対して前後方向に長く、また、適宜の高さに形成される。
【0030】
ヘッドカバー本体32の内壁部33は上側に凹み、オイルセパレータ34とともに、オイルを含むブローバイガスからオイルを分離するための空間を形成する。内壁部33は、天井部33aが平面、略平面、又は、略平面に近いことが好適な緩やかな曲面で形成され、その外周部が内燃機関本体22の上端に対するヘッドカバー本体32内の天井部33aの高さ(空間高さ)を主として規定する周壁部33bとして形成される。
【0031】
なお、ヘッドカバー本体32の天井部33aの厚さ、周壁部33bの厚さ、周壁部33bの高さが適宜に設定されることにより、ヘッドカバー30の高さが設定される。
【0032】
ヘッドカバー本体32の内壁部33の天井部33a及び周壁部33bの略全面には、例えば多数の多角形のリブ33cが形成されている。リブ33cの存在により、ヘッドカバー本体32を薄肉化しつつ、適宜の強度を維持している。本実施形態では、リブ33cは、菱形の例を示すが、例えば正六角形や正八角形等の正多角形であってもよく、形状は適宜に選択される。
【0033】
ヘッドカバー本体32の内壁部33の外縁部には、シール部33dが設けられ、内燃機関本体22との間の隙間が閉塞されている。なお、シール部33dは、ヘッドカバー本体32を内燃機関本体22に固定するボルトを避けるように配置される。また、後述する他方の側壁64側の突出部64a,64b,64c,64dは、ボルト穴33eが配置される位置に隣接することが好適である。
【0034】
ヘッドカバー本体32には、ブローバイガス通路の出口管(ブローバイガス出口)36が設けられる。ブローバイガス通路のヘッドカバー30の出口管36は、外付けのオイルセパレータフィルター(図示せず)に接続され、ブローバイガスはフィルター及びヘッドカバー30内の戻り通路(図示せず)を通った後、ブローバイガス管38の上流端に接続される。
【0035】
ブローバイガス管38は、ブローバイガスを吸気管24bに還流させるための管部材である。ブローバイガス管38は、例えばゴム等の樹脂材料で形成され、内燃機関12の外部に配置される。ブローバイガス管38の下流端は、吸気管24bに形成されたガス導入口24eに接続される。ガス導入口24eは、エアクリーナ24cとコンプレッサ28aとの間に位置する吸気管24bに設けられる。
【0036】
このため、本実施形態では、内燃機関12の稼働中、クランクケース内のブローバイガスが、内燃機関本体22のブローバイガス通路、ヘッドカバー30のオイルセパレータ34、ヘッドカバー30のブローバイガス通路の出口管36、外付けのオイルセパレータフィルター、ヘッドカバー30内の戻り通路、ブローバイガス管38を順に流れて、ガス導入口24eから吸気管24bに導入される。吸気管24bに導入されたブローバイガスは、エアクリーナ24cからの吸気と共にコンプレッサ28aに送られる。
【0037】
なお、ブローバイガスは、内燃機関本体22のブローバイガス通路、ヘッドカバー30のオイルセパレータ34、ヘッドカバー30のブローバイガス通路の出口管36、外付けのオイルセパレータフィルター、ブローバイガス管38を順に流れて、車両10の外部に排出されるように形成されてもよい。
【0038】
ヘッドカバー本体32は、オイル排出部40を備える。オイル排出部40は、例えばヘッドカバー本体32のうち、例えば左側後端部の低位置に配置される。
【0039】
図5から図9に示すように、オイルセパレータ34は、ヘッドカバー本体32のうち内壁部33の天井部33aに近い位置に形成される。オイルセパレータ34は、ブローバイガスからオイルを分離する。ブローバイガスから分離されたオイルは、オイル排出部40、オイル戻り管(不図示)を通じて内燃機関本体22のクランクケース内に戻される。
【0040】
図4から図10に示すように、オイルセパレータ34は、ヘッドカバー本体32の内壁部33のうちの天井部33aに対向する底壁部42と、底壁部42とヘッドカバー本体32の内壁部33の天井部33aとの間に設けられるオイル回収壁46とを備える。なお、ヘッドカバー本体32の内壁部33の周壁部33bは、底壁部42とともにオイルセパレータ34を区画する囲い壁33b1を形成する。
【0041】
底壁部42は、平面部52と、平面部52よりも低い位置に配置されるオイル回収部54とを備える。平面部52及びオイル回収部54は、左右方向に比べて前後方向に長く形成される。
【0042】
ここで、図2に示すように、車両10に内燃機関12が取り付けられた状態において、平面部52は、水平面に対し、前側が上に、後側が前側に比べて下側に、角度α(例えば数°程度)傾斜するように配置される。一例として、傾斜角度αは4°である。また、車両10に内燃機関12が取り付けられた状態において、平面部52は、水平面に対し、右側が上に、左側が右側に比べて下側に傾斜するように配置される。一例として、平面部52の傾斜角度は4°である。
【0043】
なお、ここでは、右側に対して左側が下がるように傾斜する例について説明するが、オイル排出部40の位置に応じて、左側に対して右側が下がるように傾斜することも好適である。
【0044】
平面部52の後端側であって、最後端よりも前側の位置には、ブローバイガスの入口56が設けられる。オイルセパレータ34は、ブローバイガス通路の、ヘッドカバー30への入口56を備える。
【0045】
ブローバイガスの入口56は、平面部52に開口を備える。その開口の下方には、ブローバイガスが直線的にオイルセパレータ34内に入ることを防止しつつ、ブローバイガスをオイルセパレータ34内に案内する略U字状の案内壁56aが設けられる。本実施形態では、ブローバイガスは、案内壁56aにより、平面部52の下側を水平方向(例えば右側から左側)に案内され、バッフル室70に入れられる。ブローバイガスの入口56の案内壁56aは、内燃機関本体22内のエンジンオイルが巻き上げられることによって直接的にバッフル室70に入ることを防止する。

本実施形態では、オイル回収部54は、平面部52の左側に配置されるものとする。オイル回収部54は、第1の面54aと、第2の面54bとを有する。第1の面54a及び第2の面54bは、略矩形状に形成される。例えば平面部52の左端には、第1の面54aの右端が連続する。そして、第1の面54aは、平面部52に対して左下方に向けて傾斜する。第1の面54aの左端には、第2の面54bの右端が連続する。そして、第2の面54bは、平面部52と平行又は第1の面54aに対して左上方に向けて傾斜する。なお、第2の面54bは、オイル排出部40の近傍で左下方に向けて傾斜する。第2の面54bに対して、オイル排出部40は、低い位置にある。
【0046】
これら前後方向及び左右方向の底壁部42の平面部52及びオイル回収部54の傾斜のため、オイルは、オイルセパレータ34の底壁部42の平面部52及びオイル回収部54を通して、オイル排出部40に向けて案内される。
【0047】
そして、例えば平面部52からオイル回収部54に供給されるオイルは、基本的には、第1の面54aと第2の面54bとの境界に溜められる。そして、後述する第2-1の壁84a及び第2-3の壁84cのうち、第1の面54aと第2の面54bとの境界付近には、オイルを後方に向けて流す開口85d,85e(図11及び図12参照)が形成されている。
【0048】
囲い壁33b1は、前後方向に延びる1対の側壁62,64と、側壁62,64間の前端を連結する前側壁66と、側壁62,64間の後端を連結する後側壁68とを備える。囲い壁33b1は、全体として例えば略矩形の枠状に配置される。
【0049】
側壁62,64のうち、一方の側壁62は、例えば前後方向に真っすぐに延びるように形成されている。側壁62,64のうち、他方の側壁64は、例えば前後方向に延びているが、複数個所で、バッフル室70の内側に突出する突出部64a,64b,64c,64dを有する。オイルミストを含むブローバイガスは、各突出部64a,64b,64c,64dを通過する際に、オイルミストを含むブローバイガスの流速を上昇させる。
【0050】
そして、囲い壁33b1、底壁部42、及び、ヘッドカバー本体32の内壁部33の天井部33aにより区画される内側の領域は、ブローバイガスからオイルを分離するバッフル室70として用いられる。
【0051】
オイル回収壁46は、底壁部42とヘッドカバー本体32の内壁部33との間を接続するように設けられる。オイル回収壁46は、ヘッドカバー本体32の内壁部33の天井部33aと一体的に形成されていることが好適である。そして、オイル回収壁46は、バッフル室70が迷路構造を有するように、バッフル室70を複数の部屋(第1の部屋72、第2の部屋74及び第3の部屋76)に区画する。
【0052】
本実施形態では、バッフル室70は、ブローバイガスの上流側である後側(ブローバイガスの入口側)から、ブローバイガスの下流側である前側(ブローバイガスの出口側)に向かって、第1の部屋72、第2の部屋74及び第3の部屋76を有する。
【0053】
第1の部屋72は、ブローバイガス入口56から第1の部屋72にブローバイガスを直接流入させる位置に設けられる。
【0054】
第1の部屋72のオイル回収壁46は、一方の側壁62から他方の側壁64に向かって延びる第1の壁(第1の壁部)82を有する。第1の壁82は、左右方向に略真っすぐに延びることが好適である。第1の壁82のうち、一端は一方の側壁62に固定又は一体化され、他端は平面部52とオイル回収部54の第1の面54aとの境界付近に配置される。第1の壁82の他端は、実際には、オイル回収部54の第1の面54a上に配置されることが好適である。
【0055】
なお、ブローバイガスの入口56は、第1の部屋72の第1の壁82と、後側壁68との間の底壁部42に設けられる。このため、第1の部屋72内にブローバイガスが流入する。
【0056】
第1の壁82の他端は、他方の側壁64との間に開口部分(隙間)82aを形成するように形成される。すなわち、第1の壁82の他端と他方の側壁64との間の開口部分82aは、ブローバイガスの第1の部屋72の出口として形成されるとともに、ブローバイガスの第2の部屋74の入口として形成される。
【0057】
突出部64aは、第1の壁82の第1の部屋72側の面の仮想延長線上よりも、第1の部屋72側に設けられる。
【0058】
突出部64aに対して後側壁68側に隣接する位置には、オイル戻り管に連通するオイル排出部40が配置される。オイル排出部40は、第2の面54bに隣接し、オイルをヘッドカバー本体32から排出する開口として形成される。
【0059】
第2の部屋74は、第1の部屋72の出口を通過したオイルミストを含むブローバイガスを壁に沿って第1の部屋72の出口に対して前方向に略水平に移動させた勢いで後方向に略水平に移動させるように誘導し、ブローバイガスからオイルミストを分離させるように形成される。すなわち、第2の部屋74は、ブローバイガスを折り返すように案内して、ブローバイガスの経路を長くし、オイルミストを分離させるように形成される。本実施形態では、第2の部屋74は、第1の部屋72の出口を通過し前方向に向かうオイルミストを含むブローバイガスを壁に沿って第1の部屋72の出口に対して水平方向に例えば略180°誘導し、ブローバイガスからオイルミストを分離させるように形成される。
【0060】
本実施形態では、第2の部屋74は、第2-1の部屋74a及び第2-2の部屋74bを有する。
【0061】
第2-1の部屋74aは、他方の側壁64から一方の側壁62に向かって延びる第2-1の壁(第2の壁部)84aを有する。
【0062】
第2-1の壁84aの一端は、他方の側壁64に固定又は一体化されている。第2-1の壁84aは、左右方向に例えば平板状に延びる延出部85aと、延出部85aの他端から後方側の第1の壁82に向かって曲がる曲面部85bと、曲面部85bの後方端に連続して設けられ、他方の側壁64に向かって例えば平板状に延びる平板部(オイルミスト捕捉部)85cとを備える。すなわち、平板部85cは、曲面部85bに対して、第1の部屋72側に設けられる。第2-1の壁84aは、外観が略J字状に形成される。
【0063】
なお、第2-1の壁84aの延出部85aは、オイル回収部54の第1の面54a及び第2の面54bを前後に区画する。第2-1の壁84aの延出部85aのうち、オイル回収部54の第1の面54a及び第2の面54bの境界付近には、開口85dが形成される。この開口85dは、オイルを後側壁68側のオイル排出部40に向けて流すために用いられる。
【0064】
曲面部85bは、延出部85aの他端に対して後端側に水平方向に略90°曲がる曲壁として形成される。このため、第1の部屋72の出口、すなわち、第2の部屋74の入口から第2の部屋74に導入されたブローバイガスは、水平方向に略180°曲げられる。
【0065】
平板部85cの一端は、曲面部85bの他端に形成される。平板部85cは、曲面部85bの他端に対して左方向に突出する。このため、平板部85cは、第1の部屋72の出口、すなわち、第2の部屋74の入口から第2の部屋74に導入され、延出部85a及び曲面部85bに沿って案内されたブローバイガスの流れを塞き止める。このため、平板部85cにより、ブローバイガスからオイルを捕捉する。平板部85cの他端は、第1の壁82の他端よりも、側壁62側に位置する。
【0066】
突出部64bは、第2-1の壁84aの延出部85aよりも、第1の部屋72側に設けられる。
【0067】
なお、突出部64bは、平板部85cよりも第2-1の壁84aの延出部85a側に配置されていることが好適である。
【0068】
そして、第2-1の壁84aの平板部85cの他端(自由端)と、第2-1の壁84aの平板部85cよりも後方側(後側壁68側)の第1の壁82との間は、ブローバイガスを下流側に流す通路として形成される。さらに、第2-1の部屋74aは、一方の側壁62と第2-1の壁84aの曲面部85bとの間にブローバイガスを下流側に流す通路を形成する。
【0069】
第2の部屋74のオイル回収壁46は、一方の側壁62から他方の側壁64に向かって延びる第2-2の壁84bを有する。第2-2の壁84bは、第2-1の壁84aの延出部85aよりも前側壁66側に離間した位置にある。第2-2の壁84bのうち、一端は一方の側壁62に固定又は一体化され、他端は平面部52とオイル回収部54の第1の面54aとの境界付近に配置される。第2-2の壁84bの他端は、他方の側壁64との間に開口部分(隙間)84b1を形成するように形成される。このため、第2-1の部屋74aは、第2-2の壁84bと、第2-1の壁84aの延出部85a及び曲面部85bとの間にブローバイガスを下流側に流す通路を形成する。
【0070】
なお、第2-2の壁84bは、第2-1の部屋74aと第2-2の部屋74bとの境界を形成する。
【0071】
第2-2の部屋74bは、他方の側壁64から一方の側壁62に向かって延びる第2-3の壁(第2の壁部)84cを有する。第2-3の壁84cの一端は、他方の側壁64に固定又は一体化されている。第2-3の壁84cは、第2-2の壁84bよりも前側壁66側に離間した位置にある。第2-3の壁84cは、第2-1の壁84aと同様に、左右方向に平板状に延びる延出部85aと、延出部85aの他端から後方側の第1の壁82に向かって曲がる曲面部85bと、曲面部85bの後方端に設けられ、他方の側壁64に向かって平板状に延びる平板部85cとを備える。第2-3の壁84cは、外観が略J字状に形成される。
【0072】
なお、第2-3の壁84cの延出部85aは、オイル回収部54の第1の面54a及び第2の面54bも覆う。第2-3の壁84cの延出部85aのうち、オイル回収部54の第1の面54a及び第2の面54bの境界付近には、開口85eが形成される。この開口85eは、オイルを後側壁68に向けて流すために用いられる。
【0073】
突出部64cは、第2-3の壁84cの延出部85aよりも、第1の部屋72側に設けられる。
【0074】
そして、第2-3の壁84cの他端と他方の側壁64との間は、第2-2の部屋74aの出口として形成される。
【0075】
なお、第2-3の壁84cの他端には、前端側の前側壁66に向かうにつれて一方の側壁62に近接し、一方の側壁62、ヘッドカバー本体32の天井部33a及び底壁部42の平面部52とともに、下流側にブローバイガスを排出するノズル部(絞り部)として形成する壁部(第3の壁部)86が設けられる。すなわち、第2の部屋74は、ブローバイガスが流れる方向に沿って、第2の部屋74の出口に向かう壁部86を備える。ノズル部は、第2の部屋74の出口に向かうにつれてブローバイガスが流れる通路の開口量(開口面積)を小さくする。
【0076】
なお、壁部86の前側壁66側の部分は、第3の部屋76の入口と、第2の部屋74の出口とを兼ねる。第3の部屋76の入口は、第2の部屋74から第3の部屋76に向かうにつれて開口量を減少させるように形成される。
【0077】
第3の部屋76は、底壁部42と天井部33aとの間に設けられ、ブローバイガスが流れる方向に沿って、ノズル部の下流側に連通し、第2の部屋74を通過したオイルミストを壁に沿ってノズル部の出口に対して略水平方向に180°以上であって、360°未満まで旋回するように誘導し、オイルミストを分離させるように形成される。本実施形態では、オイルを排出するため、第3の部屋76は、ブローバイガスがノズル部(絞り部)の出口に対して水平方向に180°以上、略270°の間で旋回するように誘導する曲面壁88を有することが好適である。本実施形態では、第3の部屋76の曲面壁88は、一方の側壁62及び前端側の前側壁66とともに、ブローバイガスを略270°旋回させる。曲面壁88は、第3の部屋76のうち、左側よりも右側に寄った位置に設けられる。曲面壁88の一端は、一方の側壁62にある。曲面壁88の他端は、ノズル部として形成される壁部86の前端よりも後方側に位置する。曲面壁88の一端は、一方の側壁62及び前側壁66に固定又は一体化されている。
【0078】
なお、曲面壁88によるブローバイガスの旋回角度は、本実施形態では180°から270°とする。しかしながら、曲面壁88の内側に付着したオイルが水平面に対する平面部52の前後方向の角度αの傾斜、水平面に対する平面部52の左右方向の角度の傾斜により、平面部52を通して、オイル回収部54に流れ出る角度であれば、曲面壁88の旋回角度は360°の近くまで許容されるなど、適宜に設定可能である。したがって、曲面壁88は閉じた管状とならず、オイルが曲面壁88の外側に排出可能であればよい。
【0079】
突出部64dは、曲面壁88に対向する位置に配置される。突出部64dの前側には、出口管(ブローバイガス出口)36が設けられる。すなわち、ブローバイガスを排出する出口管36は、ブローバイガスが流れる方向に沿って、第3の部屋76の下流側に連通し、ブローバイガスを排出する。
【0080】
次に、本実施形態に係るオイルセパレータ34の作用について説明する。
【0081】
図10に示すように、バッフル室70のブローバイガス入口56からオイルミストを含むブローバイガスが第1の部屋72に導入されると、導入されたオイルミストを含むブローバイガスは、第1の部屋72に滞留する。そして、オイルミストのうち一部は、第1の部屋72の天井部33a、第1の壁82、側壁62,64、後側壁68、底壁部42にそれぞれ付着し、ブローバイガスから分離される。すなわち、第1の部屋72で適宜のオイルミストが捕捉される。ここで捕捉されるオイルミストの多くは、ブローバイガスに含まれるオイルミストのうち、比較的粒径(平均粒径)が大きく、重量があるものである。
【0082】
そして、第1の部屋72の天井部33a、第1の壁82、側壁62,64、後側壁68、底壁部42にそれぞれ付着し、捕捉される。第1の部屋72で捕捉されたオイルは、図2に示す傾斜により、底壁部42と後側壁68との境界に集められながら第1の面54aに案内され、第1の面54aと第2の面54bとの境界を通して、オイル排出部40側に向かう。また、側壁64で捕捉されたオイルの一部は、直接、オイル排出部40側に向かう。
【0083】
オイルミストを含むブローバイガスは、第1の部屋72の出口、すなわち第2の部屋74の入口を通して第2-1の部屋74aに入る。
【0084】
このとき、第2-1の部屋74aよりも上流側の突出部64aにより、それよりもさらに上流の位置よりも左右方向の空間断面が狭くなっている。また、第1の壁82の他端と他方の側壁64との間の左右方向の空間断面(隙間)がさらに狭くなっている。このため、ブローバイガスは、流速を上げて第1の壁82の他端と他方の側壁64との間の隙間を通して第1の部屋72から第2-1の部屋74aに入る。
【0085】
ブローバイガスは、第2-1の壁84aの延出部85a、曲面部85bを通して平板部85cに衝突する。このとき、突出部64bにより他方の側壁64と曲面部85bとの間の左右方向の空間断面(隙間)を減少させることにより、ブローバイガスを曲面部85b側に案内し、適宜の流速を維持したまま平板部85cにブローバイガスを衝突させる。このため、ブローバイガスに含まれるオイルミストの一部は、第2-1の部屋74aの天井部33a、側壁64、第2-1の壁84aの延出部85a、曲面部85b、平板部85c、さらには、底壁部42にそれぞれ付着し、ブローバイガスから分離される。このとき、平板部85cでブローバイガスを衝突させ、すなわち、オイルミストを平板部85cに衝突させるため、第2-1の部屋74aで適宜のオイルミストが捕捉される。第2-1の部屋74aで捕捉されるオイルミストの多くは、第1の部屋72で捕捉されるオイルミストの平均粒径よりも小さいものである。
【0086】
第2-1の部屋74aで捕捉されたオイルの一部は、水平面に対する平面部52の前後方向の角度αの傾斜、水平面に対する平面部52の左右方向の角度の傾斜により、底壁部42の平面部52と第1の壁82との境界に集められながら第1の面54aに案内され、第1の面54aと第2の面54bとの境界を通して、オイル排出部40側に向かう。
【0087】
ブローバイガスは、第2-1の壁84aの平板部85cに衝突後、平板部85cと第1の壁82との間を通して側壁62側に向かい、側壁62と第2-1の壁84aの曲面部85bとの間、第2-2の壁84bと第2-1の壁84aの曲面部85bとの間、第2-2の壁84bと第2-1の壁84aの延出部85aとの間を通して、第2-2の部屋74bに入る。
【0088】
このとき、第2-2の壁84bの他端と他方の側壁64との間の左右方向の空間断面(隙間)が第2-2の壁84bと第2-1の壁84aの曲面部85bとの間よりも狭くなっている。このため、ブローバイガスは、第2-2の壁84bと第2-1の壁84aの曲面部85bとの間を通る場合に比べて流速を上げて第2-2の壁84bの他端と他方の側壁64との間の隙間を通して第2-1の部屋74aから第2-2の部屋74bに入る。
【0089】
ブローバイガスは、第2-3の壁84cの延出部85a、曲面部85bを通して平板部85cに衝突する。このとき、突出部64cにより他方の側壁64と曲面部85bとの間の左右方向の空間断面(隙間)を減少させることにより、ブローバイガスを曲面部85b側に案内し、適宜の流速を維持したまま平板部85cにブローバイガスを衝突させる。このため、ブローバイガスに含まれるオイルミストの一部は、第2-2の部屋74bの天井部33a、側壁64、第2-3の壁84cの延出部85a、曲面部85b、平板部85c、さらには、底壁部42にそれぞれ付着し、ブローバイガスから分離される。このとき、平板部85cでブローバイガスを衝突させ、すなわち、オイルミストを平板部85cに衝突させるため、第2-2の部屋74bで適宜のオイルミストが捕捉される。第2-2の部屋74bで捕捉されるオイルミストの多くは、第1の部屋72、第2-1の部屋74aで捕捉されるオイルミストの平均粒径よりも小さいものである。
【0090】
第2-2の部屋74bで捕捉されたオイルの一部は、水平面に対する平面部52の前後方向の角度αの傾斜、水平面に対する平面部52の左右方向の角度の傾斜により、底壁部42の平面部52と第2-1の壁84aの延出部85aとの境界に集められながら第1の面54aに案内され、第1の面54aと第2の面54bとの境界の開口85dを通して、オイル排出部40側に向かう。
【0091】
ブローバイガスは、第2-3の壁84cの平板部85cに衝突後、平板部85cと第2-2の壁84bとの間を通して側壁62側に向かい、側壁62と第2-3の壁84cの曲面部85bとの間、ノズル部として形成する側壁62と壁部86との間を通して、第3の部屋76に入る。このとき、側壁62と壁部86との間は、上流側から下流側に向かうにつれて流路断面が縮小するため、ブローバイガスの流速が上げられる。
【0092】
そして、ブローバイガスは、曲面壁88に沿って移動する。そして、曲面壁88の開口端と壁部86との間、曲面壁88と第2-3の壁84cの曲面部85bとの間、曲面壁88と第2-3の壁84cの延出部85aとの間を通してブローバイガス通路の出口管36に向けて流される。すなわち、ブローバイガスに含まれるオイルミストの一部を曲面壁88に沿って水平方向に旋回させながら移動させるため、第3の部屋76で適宜のオイルミストがブローバイガスの旋回による遠心力を利用して捕捉される。したがって、ブローバイガスからオイルが効率的に分離される。第3の部屋76で捕捉されるオイルミストの多くは、第1の部屋72、第2-1の部屋74a、第2-2の部屋74bで捕捉されるオイルミストの平均粒径よりも小さいものである。したがって、ブローバイガスに含まれるオイルミストがオイルセパレータ34の上流側から下流側に向かうにつれて、すなわち、第1の部屋72、第2-1の部屋74a、第2-2の部屋74bの順に流れるにつれて、各部屋で捕捉されるオイルミストの平均粒径が次第に小さくなる。
【0093】
そして、第3の部屋76で捕捉されたオイルの一部は、水平面に対する平面部52の前後方向の角度αの傾斜、水平面に対する平面部52の左右方向の角度の傾斜により、底壁部42の平面部52と第2-3の壁84cの延出部85aとの境界に集められながら第1の面54aに案内され、第1の面54aと第2の面54bとの境界の開口85eを通して、オイル排出部40側に向かう。
【0094】
このように、本実施形態に係るオイルセパレータ34を含むヘッドカバー30によれば、各部屋72,74,76を、順にオイルを含むブローバイガスが移動し、ブローバイガスに含まれるオイルを各部屋72,74,76の壁に付着させて、できるだけ多く回収することができる。
【0095】
本実施形態では、フロアパネル14aとヘッドカバー本体32とが近接する。このため、ヘッドカバー本体32の高さをできるだけ低くし、バッフル室70の体積を適宜に抑制しながら、上述した第1の部屋72、第2の部屋74、及び第3の部屋76によって、ブローバイガスに含まれるオイルをできるだけ多く回収することができる。例えば、本実施形態に係るヘッドカバー30のヘッドカバー本体32は、前後方向及び左右方向のサイズは、従来のヘッドカバーのヘッドカバー本体と略同一である。しかし、本実施形態に係るヘッドカバー30のヘッドカバー本体32は、従来のヘッドカバーのヘッドカバー本体(図示しない)に対して高さを53mm下げた。このため、本実施形態に係る車両10では、車両10のフロアパネル14aの位置を、相対的に低い位置に配置し、キャブ14の容積を大きくすることができる。そして、本実施形態に係るヘッドカバー30のヘッドカバー本体32のバッフル室70の容量は、従来のヘッドカバーのヘッドカバー本体のバッフル室の容量に対して、略40%低下した。しかしながら、本実施形態に係るバッフル室70を有するオイルセパレータ34を含むヘッドカバー30によれば、従来と同等又はそれ以上のオイルを回収できることが実験結果により得られた。
【0096】
したがって、本実施形態によれば、ブローバイガスに含まれるオイルをできるだけ多く回収し得る、ヘッドカバー30、そのようなヘッドカバー30を有する内燃機関12、及び、そのような内燃機関12を有する車両10を提供することができている。
【0097】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0098】
10…車両、12…内燃機関、14…キャブ、22…内燃機関本体、30…ヘッドカバー、32…ヘッドカバー本体、33…内壁部、33a…天井部、33b…周壁部、33b1…、33c…リブ、33d…シール部、33e…ボルト穴、34…オイルセパレータ、36…出口管、38…ブローバイガス管、40…オイル排出部、42…底壁部、46…オイル回収壁、52…平面部、54…オイル回収部、54a…第1の面、54b…第2の面、56…ブローバイガス入口、56a…案内壁、62,64…側壁、64a,64b,64c,64d…突出部、66…前側壁、68…後側壁、70…バッフル室、72…第1の部屋、74…第2の部屋、74a…第2-1の部屋、74b…第2-2の部屋、76…第3の部屋、82…第1の壁、84a…第2-1の壁、84b…第2-2の壁、84c…第2-3の壁、85a…延出部、85b…曲面部、85c…平板部、85d,85e…開口、86…壁部、88…曲面壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12