(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013847
(43)【公開日】2025-01-28
(54)【発明の名称】プレバイオティック組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20250121BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20250121BHJP
A23L 27/00 20160101ALN20250121BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L33/125
A23L27/00 101A
A23L27/00 101Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024180558
(22)【出願日】2024-10-16
(62)【分割の表示】P 2020553617の分割
【原出願日】2019-04-04
(31)【優先権主張番号】1805578.0
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516128485
【氏名又は名称】オプティバイオティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】オハラ ステファン パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス オズワルド
(72)【発明者】
【氏名】コリダ ソフィア
(57)【要約】 (修正有)
【課題】甘味を付与することができるプレバイオティック組成物、すなわちプレバイオティック成分を含む組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(i)酵素処理された高甘味度甘味料グリコシドと、オリゴ糖とを含むプレバイオティック組成物を提供する。特に、本発明は、ガラクトシル化され、かつ/又はフルクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化された高甘味度甘味料グリコシド、及び(ii)同じ酵素反応の間に得られるオリゴ糖に関する。この組成物の使用及び製造方法も記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)酵素処理された高甘味度甘味料グリコシドと、
(ii)オリゴ糖と
を含むプレバイオティック組成物。
【請求項2】
前記高甘味度甘味料グリコシドが、ガラクトシル化及び/又はフルクトシル化及び/又は脱グリコシル化によって酵素処理されたものである請求項1に記載のプレバイオティック組成物。
【請求項3】
前記高甘味度甘味料グリコシドが、以下の、ステビオールグリコシド若しくはモグロシド、又はこれらの誘導体のうちの1以上から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ステビオールグリコシドがレバウディオサイドAを含むか、又は前記モグロシドがモグロシドVを含む請求項4に記載の組成物。
【請求項5】
前記オリゴ糖が、以下の、ガラクトオリゴ糖(GOS)又はフラクトオリゴ糖(FOS)のうちの1以上である請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、約5%までガラクトシル化され、かつ/又は約5%までフルクトシル化され、かつ/又は5%まで脱グリコシル化された高甘味度甘味料グリコシドを含む請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、約2%までガラクトシル化され、かつ/又は約2%までフルクトシル化され、かつ/又は2%まで脱グリコシル化された高甘味度甘味料グリコシドを含む請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、約1.5%までガラクトシル化され、かつ/又は約1.5%までフルクトシル化され、かつ/又は1.5%まで脱グリコシル化された高甘味度甘味料グリコシドを含む請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記高甘味度甘味料グリコシドが、オリゴ糖の合成と同時にガラクトシル化され、かつ/又はフルクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されたものである請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記高甘味度甘味料グリコシドが、ガラクトシル化及び/又はフルクトシル化及び/又は脱グリコシル化によって、約3単位までのラクトース又はフルクトースによって変性されているステビオールグリコシドを含む請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記高甘味度甘味料グリコシドが、ガラクトシル化及び/又はフルクトシル化及び/又は脱グリコシル化によって、約4単位までのラクトース又はフルクトースによって変性されているステビオールグリコシドを含む請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記高甘味度甘味料グリコシドが、ガラクトシル化及び/又はフルクトシル化及び/又は脱グリコシル化によって、約4単位以上のラクトース又はフルクトースによって変性されているステビオールグリコシドを含む請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記高甘味度甘味料グリコシドが、ガラクトシル化によって約3単位までのガラクトースによって変性されているモグロシドを含む請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記高甘味度甘味料グリコシドが、フルクトシル化によって約2単位までのフルクトースによって変性されているモグロシドを含む請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記ステビオシドが、異なる変性を有するステビオシドの混合物を含む請求項4から請求項9及び請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、(i)1単位のフルクトースを有するレバウディオサイドA、レバウディオサイドF、レバウディオサイドC、ルブソシド又はステビオシド、(ii)2単位のフルクトースを有するステビオシド又は1単位のフルクトースを有するレバウディオサイドA若しくはレバウディオサイドC、及び(iii)2単位のフルクトースを有するステビオシド又は1単位のフルクトースを有するレバウディオサイドA若しくはレバウディオサイドC、のうちの1以上の混合物を含む請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、(i)1単位のガラクトースを有するレバウディオサイドA及びレバウディオサイドC又はステビオシド、(ii)2単位のガラクトースを有するステビオシド又は1単位のガラクトースを有するレバウディオサイドA若しくはレバウディオサイドC、(iii)3単位のガラクトースを有するステビオシド又は2単位のガラクトースを有するレバウディオサイドA若しくはレバウディオサイドC、並びに(iv)4単位のガラクトースを有するステビオシド又は2単位のガラクトースを有するレバウディオサイドA若しくはレバウディオサイドC、のうちの1以上の混合物を含む請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記モグロシドが、異なる変性を有するモグロシドの混合物を含む請求項4から請求項9及び請求項13から請求項14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記モグロシドが、モグロシドII、モグロシドIII、モグロシドIV、モグロシドV又はモグロシドVIのうちの1以上の混合物を含む請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記モグロシドが、(i)モグロシドV、(ii)モグロシドIV、及び(iii)モグロシドIIIのうちの1以上の混合物を含む請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記モグロシドが、(i)モグロシドIII;(ii)モグロシドIV、(iii)モグロシドV、(iv)1単位のフルクトースを有するモグロシド;及び(v)2単位のフルクトースを有するモグロシド、のうちの1以上の混合物を含む請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記モグロシドが、(i)モグロシドIV、(ii)1単位のガラクトースを有するモグロシド、(iii)2単位のガラクトースを有するモグロシドV、及び(iv)3単位のガラクトースを有するモグロシドVの混合物を含む請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
低カロリー又はノンカロリーの甘味のプレバイオティックとしての、請求項1から請求項22のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項24】
前記組成物が、食料品、フードサプリメント若しくはカロリー制限の惣菜製品に組み込まれているか、又はそれらに組み込むためのものである請求項1から請求項22のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項25】
前記組成物が顆粒形態にあり、任意に小袋又は瓶に入れられている請求項24に記載の組成物の使用。
【請求項26】
甘味のプレバイオティック組成物の製造方法であって、
異なるオリゴ糖を同時に生成するように、高甘味度甘味料グリコシドを、スクロース及び/又はラクトースの存在下で、前記高甘味度甘味料グリコシドをガラクトシル化し、かつ/又はフルクトシル化し、かつ/又は脱グリコシル化するのに有効な1以上の酵素と接触させる工程
を備える方法。
【請求項27】
前記高甘味度甘味料グリコシドが、以下の、ステビオールグリコシド若しくはモグロシド、又はこれらの誘導体のうちの1以上から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記高甘味度甘味料グリコシドが、アスペルギルス属種から得られるカルボヒドラーゼ混合物及びβ-ガラクトシダーゼから選択される1以上の酵素を使用して、ガラクトシル化され、かつ/又はフルクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化される請求項26又は請求項27に記載の方法。
【請求項29】
合成される前記オリゴ糖が以下の、ガラクトオリゴ糖(GOS)又はフラクトオリゴ糖(FOS)のうちの1以上である請求項26から請求項28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記甘味のプレバイオティック組成物が、約5%までガラクトシル化され、かつ/又は約5%までフルクトシル化され、かつ/又は約5%まで脱グリコシル化された高甘味度甘味料グリコシドを含む請求項26から請求項30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食料品用の機能性食品原料として及び惣菜製品における組み込み材料として具体的な用途を有するか、又は単独で食品に甘味を加えるために使用される甘味のプレバイオティック組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
全世界の甘味料市場は、現在、砂糖が主役であり、2022年までに1120憶ドルに達すると予想されている。低カロリー又はノンカロリーの甘味料への動きが大きくなっている。ステビオールグリコシド及びモグロシドV等のいくつかの甘味料は、高甘味度甘味料(HIS)に分類され、報告によれば、それぞれスクロースに対しておよそ150倍及び400倍の甘味度を有する。しかしながら、いくつかのHISは、苦み又は異味を伴い、このことが消費者にとってのHISの魅力を減じている。
【0003】
プレバイオティクスは、乳酸桿菌又はビフィズス菌等の健康への恩恵をもたらす宿主微生物によって選択的に利用される基質であり、食品部門へのはるかに増加した応用を見出している。プレバイオティクスは、健康の改善に寄与する結腸細菌によって選択的に代謝される非消化性の食物原料であることができる。従って、プレバイオティクスを使用することは、常在性の腸内細菌叢内の有益な変化を促進し、その変化は、プロバイオティクスの生存性を助けることができる。プレバイオティクスは、腸内細菌集団に対して全体的な効果を有し、腸で選択的に代謝されないペクチン、セルロース類、キシラン等の多くの食物繊維とは明確に異なる。プレバイオティックとしての分類基準は、それが胃液酸性度、哺乳類の酵素による加水分解及び上部消化管における吸収に抵抗する必要があり、腸管微生物叢によって発酵されるための適切な量で結腸に到達して健康及び健全性と関連する腸内細菌の増殖及び/又は活性を選択的に刺激する必要があるということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
甘味を付与することができるプレバイオティック組成物、すなわちプレバイオティック成分を含む組成物を提供することが本発明の目的である。特に、苦み及び/又は望ましくない後味が少なくて甘味を付与するプレバイオティック組成物、すなわちプレバイオティック成分を含む組成物を提供することが本発明の目的である。ヒト又は動物の上部消化管で消化されず、それゆえ腸内マイクロバイオームの多様性を改善することができるノンカロリーの、又は実質的にノンカロリーの、機能的原料として使用することができるプレバイオティック組成物、すなわちプレバイオティック成分を含む組成物を提供することが本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、
(i)酵素処理された高甘味度甘味料グリコシドと、
(ii)オリゴ糖と
を含むプレバイオティック組成物が提供される。
【0006】
本発明の関連する態様によれば、
(i)酵素処理された高甘味度甘味料グリコシドと、
(ii)酵素により合成された(酵素合成)オリゴ糖と
を含むプレバイオティック組成物が提供される。
【0007】
本発明のさらに関連する態様によれば、
(i)酵素処理された高甘味度甘味料グリコシドと、
(ii)酵素により合成された(酵素合成)オリゴ糖と
を含む合成プレバイオティック組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、実施例1に記載されるステビオールグリコシドのHPLC-DADプロファイル及び検出を示し、
図1Bは、実施例2に記載される炭水化物のGC-FIDプロファイル及び検出を示す。
【
図2】
図2Aは、実施例1に記載されるステビオールグリコシドの検出についてのHPLC-DADプロファイルを示し、
図2Bは、実施例2に記載される炭水化物の検出についてのGC-FIDプロファイルを示す。
【
図3】
図3Aは、実施例3に記載されるモグロシドの検出についてのHPLC-DADプロファイルを示し、
図3Bは、実施例3に記載される炭水化物の検出についてのGC-FIDプロファイルを示す。
【
図4】
図4Aは、実施例4に記載されるモグロシドの検出についてのHPLC-DADプロファイルを示し、
図4Bは、実施例4に記載される炭水化物の検出についてのGC-FIDプロファイルを示す。
【
図5】
図5は、実施例5において試験された試料についての甘味についての官能試験結果を示す棒グラフである(棒は平均値を表し、エラーバーは±半LSDに広がる)。
【
図6】
図6は、実施例5において試験された試料についての異味の強さについての官能試験結果を示す棒グラフである(棒は平均値を表し、エラーバーは±半LSDに広がる)。
【
図7】
図7は、実施例5において試験された試料についての苦味についての官能試験結果を示す棒グラフである(棒は平均値を表し、エラーバーは±半LSDに広がる)。
【
図8】
図8は、実施例5において試験された試料についてのリコリス味についての官能試験結果を示す棒グラフである(棒は平均値を表し、エラーバーは±半LSDに広がる)。
【
図9】
図9は、実施例5において試験された試料についての甘い後味についての官能試験結果を示す棒グラフである(棒は平均値を表し、エラーバーは±半LSDに広がる)。
【
図10】
図10は、実施例6に記載されるA.アキュリータスカルボヒドラーゼを用いて酵素処理されたステビオールグリコシドについてのHPLC-MSプロファイルを示すプロットである。RA:レバウディオサイドA;ST:ステビオシド;RF:レバウディオサイドF;RC:レバウディオサイドC;Ru:ルブソシド;Sb:ステビオールビオシド。
【
図11】
図11は、実施例6に記載されるA.アキュリータスカルボヒドラーゼを用いて酵素処理されたステビオールグリコシドについてのMALDI-TOFプロファイルを示すプロットである。RA:レバウディオサイドA;ST:ステビオシド;RF:レバウディオサイドF;RC:レバウディオサイドC;Ru:ルブソシド;Sb:ステビオールビオシド.;Fru:フルクトース。
【
図12】
図12は、実施例6に記載されるβ-ガラクトシダーゼを用いて酵素処理されたステビオールグリコシドについてのHPLC-MSプロファイルを示すプロットである。RA:レバウディオサイドA;ST:ステビオシド;RF:レバウディオサイドF;RC:レバウディオサイドC;Ru:ルブソシド;Sb:ステビオールビオシド。
【
図13】
図13は、実施例6に記載されるβ-ガラクトシダーゼを用いて酵素処理されたステビオールグリコシドについてのMALDI-TOFプロファイルを示すプロットである。RA:レバウディオサイドA;ST:ステビオシド;RF:レバウディオサイドF;RC:レバウディオサイドC;Ru:ルブソシド;Sb:ステビオールビオシド.;Gal:ガラクトース。
【
図14】
図14は、実施例6に記載されるA.アキュリータスカルボヒドラーゼを用いて酵素処理されたモグロシドについてのHPLC-MSプロファイルを示すプロットである。M:モグロシド。
【0009】
【
図15】
図15は、A.アキュリータスカルボヒドラーゼを用いて酵素処理されたモグロシドについてのMALDI-TOFプロファイルを示すプロットである。M:モグロシド;Fru:フルクトース。
【
図16】
図16は、実施例6に記載されるβ-ガラクトシダーゼを用いて酵素処理されたモグロシドについてのHPLC-MSプロファイルを示すプロットである。M:モグロシド。
【
図17】
図17は、実施例6に記載されるβ-ガラクトシダーゼを用いて酵素処理されたモグロシドについてのMALDI-TOFプロファイルを示すプロットである。M:モグロシド;Gal:ガラクトース。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語「合成(の)」及び「合成された」は、天然には存在しないか又は天然では生成されない産物を意味すると意図されている。この用語は、もちろん、天然由来の前駆組成物及び天然由来の酵素等の天然物を使用して「人が造った」産物を包含する。
【0011】
高甘味度甘味料グリコシドは、ガラクトシル化及び/又はフルクトシル化及び/又は脱グリコシル化によって酵素処理されていてもよい。
【0012】
上記高甘味度甘味料グリコシドは、以下のもののうちの1以上(又は組み合わせ)から選択されてもよい:ステビオールグリコシド(例えばレバウディオサイドA)若しくはモグロシド(例えばモグロシドV)、又はこれらの誘導体。
【0013】
好ましくは、上記酵素は微生物由来である。上記酵素は、アスペルギルス(Aspergillus)属由来であってもよい。上記酵素は、アスペルギルス属の以下の種のうちの1以上に由来してもよい:アスペルギルス・オフィシナリス(Aspergillus officinalis);アスペルギルス・アキュリータス(Aspergillus aculeatus);アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori);アスペルギルス・カーボナリウス(Aspergillus carbonarius);アスペルギルス・セルロサエ(Aspergillus cellulosae);ニホンコウジカビ(アスペルギルス・オリゼ、Aspergillus oryzae);黄色コウジ菌(アスペルギルス・フラバス、Aspergillus flavus);アスペルギルス・ヤポニカス(Aspergillus japonicas);アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulansl);又はクロコウジカビ(アスペルギルス・ニガー、Aspergillus niger)。
【0014】
得られるオリゴ糖は、以下のうちの1つであってもよい:フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、α-ガラクトオリゴ糖、β-グルコオリゴ糖、キシロオリゴ糖及びこれらの組み合わせ。得られるオリゴ糖が以下の、ガラクトオリゴ糖(GOS)又はフラクトオリゴ糖(FOS)のうちの1以上であることが好ましい。
【0015】
当該組成物は、約5%までガラクトシル化され、かつ/又は約5%までフルクトシル化され、かつ/又は5%脱グリコシル化された高甘味度甘味料グリコシドを含んでもよい。好ましくは、当該組成物は、約2%までガラクトシル化され、かつ/又は約2%までフルクトシル化され、かつ/又は2%脱グリコシル化された高甘味度甘味料グリコシドを含んでもよい。より好ましくは、当該組成物は、約1.5%までガラクトシル化され、かつ/又は約1.5%までフルクトシル化され、かつ/又は1.5%脱グリコシル化された高甘味度甘味料グリコシドを含む。
【0016】
上記高甘味度甘味料グリコシドは、オリゴ糖合成の間にガラクトシル化され、かつ/又はフルクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されてもよい。
【0017】
上記高甘味度甘味料グリコシドは、好ましくは、オリゴ糖の合成と同時にガラクトシル化され、かつ/又はフルクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されたものであることになる。
【0018】
1つの実施形態では、高甘味度甘味料グリコシドは、ガラクトシル化及び/又はフルクトシル化及び/又は脱グリコシル化によって約3単位までのラクトース又はフルクトースによって変性されているステビオールグリコシドを含む。別の実施形態では、高甘味度甘味料グリコシドは、ガラクトシル化及び/又はフルクトシル化及び/又は脱グリコシル化によって約4単位までのラクトース又はフルクトースによって変性されているステビオールグリコシドを含む。別の実施形態では、高甘味度甘味料グリコシドは、ガラクトシル化及び/又はフルクトシル化及び/又は脱グリコシル化によって約4単位以上のラクトース又はフルクトースによって変性されているステビオールグリコシドを含む。
【0019】
1つの実施形態では、高甘味度甘味料グリコシドは、ガラクトシル化によって約3単位までのガラクトースによって変性されているモグロシドを含む。別の実施形態では、高甘味度甘味料グリコシドは、フルクトシル化によって約2単位までのフルクトースによって変性されているモグロシドを含む。別の実施形態では、高甘味度甘味料グリコシドは、フルクトシル化によって約2単位以上のフルクトースによって変性されているモグロシドを含む。
【0020】
上記ステビオシドは、異なる変性を有するステビオシドの混合物を含んでもよい。例えば、当該組成物は、下記のもののうちの1以上の混合物を含む:(i)1単位のフルクトースを有するレバウディオサイドA、レバウディオサイドF、レバウディオサイドC、ルブソシド又はステビオシド;(ii)2単位のフルクトースを有するステビオシド又は1単位のフルクトースを有するレバウディオサイドA若しくはレバウディオサイドC;及び(iii)2単位のフルクトースを有するステビオシド又は1単位のフルクトースを有するレバウディオサイドA若しくはレバウディオサイドC。選択的に、当該組成物は、下記のもののうちの1以上の混合物を含む:(i)1単位のガラクトースを有するレバウディオサイドA及びレバウディオサイドC又はステビオシド;(ii)2単位のガラクトースを有するステビオシド又は1単位のガラクトースを有するレバウディオサイドA若しくはレバウディオサイドC;(iii)3単位のガラクトースを有するステビオシド又は2単位のガラクトースを有するレバウディオサイドA若しくはレバウディオサイドC;並びに(iv)4単位のガラクトースを有するステビオシド又は2単位のガラクトースを有するレバウディオサイドA若しくはレバウディオサイドC。
【0021】
上記モグロシドは、異なる変性を有するモグロシドの混合物を含んでもよい。例えば、モグロシドは、モグロシドII、モグロシドIII、モグロシドIV、モグロシドV又はモグロシドVIのうちの1以上の混合物を含んでもよい。あるいは、モグロシドは、以下のうちの1以上の混合物を含んでもよい:(i)モグロシドV;(ii)モグロシドIV、及び(iii)モグロシドIII。さらにあるいは、モグロシドは、以下のうちの1以上の混合物を含んでもよい:(i)モグロシドIII;(ii)モグロシドIV;(iii)モグロシドV;(iv)1単位のフルクトースを有するモグロシド;及び(v)2単位のフルクトースを有するモグロシド。なおさらに、モグロシドは、以下の混合物を含んでもよい:(i)モグロシドIV;(ii)1単位のガラクトースを有するモグロシド;(iii)2単位のガラクトースを有するモグロシドV;及び(iv)3単位のガラクトースを有するモグロシドV。
【0022】
本明細書に記載されるプレバイオティック組成物の態様のすべては、有利なことに、ヒトの上部消化管で消化されない甘くて天然の健康によい繊維(ファイバー)を形成することが示されており、それゆえノンカロリーの、又は実質的にノンカロリーの、機能的原料として使用することができる。これらの甘い繊維(スイートファイバー)は、有利なことにマイクロバイオームの多様性をも改善しつつスクロースに類似した甘味を有するがカロリーを有さないか、又は実質的に有さない製品としての有望なバルク砂糖代用品として開発されてきた。
【0023】
当該プレバイオティック組成物の構成成分は、異味(例えば苦味、酸味、かび臭さ、塩味等)が少ないという長所とともにすべての他の試料よりも有意に甘いということが見い出された。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、本明細書中にこれまで記載されたプレバイオティック組成物の、低カロリー又はノンカロリーの甘味のプレバイオティックとしての使用が提供される。当該組成物は、ある範囲の食料品、フードサプリメント又はカロリー制限の惣菜製品に組み込まれてもよいし、それらに組み込むためのものであってもよく、又は甘味をつけるためにそれ自体で使用されてもよいことは当業者には明らかであろう。
【0025】
ある実施形態では、当該組成物は、粉末又は顆粒の形態であってもよいし、任意に、消費者が所望量の当該組成物を食料品に添加できるように小袋又は瓶に入れられてもよい。
【0026】
用語「食料品」は、ヒト又は動物によって安全に摂取されることが可能なあらゆる材料を意味することが意図されており、例としては、食品、飲料、シリアル、ベーカリー製品、パン粉をまぶし衣付きの製品(揚げ物)、乳製品、菓子類、スナック菓子、及び粗粉が挙げられるが、これらに限定されない。この用語は、調理又は摂食される前に再構成を必要とする製品を包含する。この用語は、任意の食品/栄養補助食品又は医薬(ビタミン錠剤又は抗生物質液等)も包含する。
【0027】
変性高甘味度甘味料グリコシドが、そのグリコシドを他の原料とブレンド又は混合することにより製品に組み込まれてもよいことは、当業者には明らかであろう。あるいは、変性高甘味度甘味料グリコシドが、製品をコーティングするために使用されてもよい。
【0028】
本発明の第3の態様によれば、甘味のプレバイオティック組成物の製造方法であって、
a)高甘味度甘味料グリコシドを、異なる供与体(スクロース及び/又はラクトース等)、主に二糖の存在下で、高甘味度甘味料グリコシドをガラクトシル化し、かつ/又はフルクトシル化し、かつ/又は脱グリコシル化するのに有効な1以上の酵素と接触させる工程と、
b)甘味のプレバイオティック組成物を形成するように、上記高甘味度甘味料グリコシドのガラクトシル化及び/又はフルクトシル化及び/又は脱グリコシル化の間に、異なるオリゴ糖を有する高甘味度甘味料グリコシドを得る工程と
を備える方法が提供される。
【0029】
当該方法における高甘味度甘味料グリコシドは、以下のもののうちの1以上から選択されてもよい:ステビオールグリコシド(レバウディオサイドA等)、若しくはモグロシド(モグロシドV等)、又はこれらの誘導体。好ましくは、高甘味度甘味料グリコシドは、以下のもののうちの1以上から選択される:ステビオールグリコシド、若しくはモグロシドV、又はこれらの誘導体。
【0030】
当該方法における高甘味度甘味料グリコシドは、β-ガラクトシダーゼ、並びにアスペルギルス属の種/菌株によって産生される広い範囲のカルボヒドラーゼ、例えばアラビナーゼ、セルラーゼ、β-グルカナーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ及びキシラナーゼを含有する多酵素複合体から選択される1以上の酵素を使用して、ガラクトシル化され、フルクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されてもよい。
【0031】
当該方法におけるオリゴ糖は、合成物であってよく、以下のもののうちの1以上であってよい:フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、β-グルコオリゴ糖、α-ガラクトオリゴ糖及びキシロオリゴ糖並びにこれらの組み合わせ。合成のオリゴ糖は、ガラクトオリゴ糖(GOS)又はフラクトオリゴ糖(FOS)のうちの1以上から選択されることが好ましい。
【0032】
当該方法における甘味のプレバイオティック組成物は、約5%までガラクトシル化され、かつ/又は約5%までフルクトシル化され、かつ/又は5%まで脱グリコシル化された高甘味度甘味料グリコシドを含んでもよい。好ましくは、当該方法における組成物は、約2%までガラクトシル化され、かつ/又は約2%までフルクトシル化され、かつ/又は2%脱グリコシル化された高甘味度甘味料グリコシドを含んでもよい。より好ましくは、当該方法における組成物は、約1.5%までガラクトシル化され、かつ/又は約1.5%までフルクトシル化され、かつ/又は1.5%脱グリコシル化された高甘味度甘味料グリコシドを含む。
【0033】
上記高甘味度甘味料グリコシドは、上記酵素及び二糖(供与体)の存在下でガラクトシル化され、かつ/又はフルクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されてもよい。
【0034】
当該方法の組成物は、ガラクトオリゴ糖又はフラクトオリゴ糖を含んでもよい。
【0035】
当該方法は、本発明の第1及び第2の態様を参照して本明細書中にこれまで記載された組成物を製造するために用いられてもよい。
【0036】
本発明の態様のいくつかに関して列挙された組成物の特徴のいくつかは、不適合でないかぎりは、記載された組成物及び方法に関して互換的であるということは、当業者には明らかであろう。
【0037】
本発明の実施形態は、例としてのみ、これより記載される。
【実施例0038】
これらの実験の目的は、同じ酵素反応の間に得られるいくつかのオリゴ糖及び酵素処理された高強度グリコシドの甘味及びあらゆる異味の強度を決定することであった。
【0039】
実施例1 - 酵素処理されたステビオールグリコシド及びFOSの生成
この実験は、フルクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されたステビオールグリコシド及びFOSを同じ酵素反応の間に製造することについての可能性のある収率及び好ましい酵素を調べることを目的とした。調べた酵素は、アスペルギルス属由来のカルボヒドラーゼ複合体及びラクトバチルス属(Lactobacillus)由来のイヌリナーゼ(R&D)であった。基質はスクロース及びステビオールグリコシドであった。使用した条件は、1.5%ステビオールグリコシド、60%スクロースであり、精製は酵母発酵に依り、乾燥プロセスは凍結乾燥及び真空エバポレーションを利用した。
【0040】
図1Aは、ステビオールグリコシドのHPLC-DADプロファイル及び検出を示し、
図1Bは、炭水化物(トリメチルシリルオキシム)のGC-FIDプロファイルを示す。
【0041】
最良の結果は、微生物酵素複合体を利用して得られた。本実験は、準備した市販の酵素の使用により、フルクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されたステビオールグリコシドを合成の間に生成されたFOSと混合すると、風味が向上するということを示唆した。それゆえ、本結果は、上記混合物は、酵素反応の間に得られる高FOS濃度に起因して、プレバイオティックとしての使用に好適であろうということを示唆する。
【0042】
実施例2 - 酵素処理されたステビオールグリコシド及びGOSの生成
この実験は、ガラクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されたステビオールグリコシド、及びGOSを同じ酵素反応の間に製造することについての可能性のある収率及び好ましい酵素を調べることを目的とした。調べた酵素は、アスペルギルス属及びビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)由来のβ-ガラクトシダーゼであった。基質はラクトース及びステビオールグリコシドであった。条件は1.5%ステビオールグリコシド、40%ラクトースであった。精製は酵母発酵に依り、乾燥プロセスは凍結乾燥及びロータリーエバポレーターであった。
【0043】
図2Aは、ステビオールグリコシドの検出についてのHPLC-DADプロファイルを示す。
図2Bは、炭水化物(トリメチルシリルオキシム)の検出についてのGC-FIDプロファイルを示す。
【0044】
最良の結果は、アスペルギルス属由来のβ-ガラクトシダーゼを使用することによって得られた。この結果は、ガラクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されたステビオールグリコシド及び合成の間に得られるGOSを生成するために市販の酵素を使用することの有望性を示す。それゆえ、本結果は、酵素による合成の間に得られる高いGOS濃度はプレバイオティックとしての使用に好適であろうということを示唆する。
【0045】
実施例3 - 酵素処理されたモグロシド及びFOSの生成
この実験は、フルクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されたモグロシド及びFOSを同じ酵素反応の間に製造することについての可能性のある収率及び好ましい酵素を調べることを目的とした。調べた酵素は、アスペルギルス・アキュリータス由来のカルボヒドラーゼ複合体及びラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)由来のイヌリナーゼ(R&D)であった。基質はスクロース及びステビオールグリコシドであった。使用した条件は1.5%ステビオールグリコシド、60%スクロースであり、精製は酵母発酵に依り、乾燥プロセスは凍結乾燥及び真空エバポレーションを利用した。
【0046】
図3Aは、モグロシドの検出についてのHPLC-DADプロファイルを示す。
図3Bは、炭水化物(トリメチルシリルオキシム)の検出についてのGC-FIDプロファイルを示す。
【0047】
最良の結果は、微生物酵素複合体を利用して得られた。本実験は、準備した市販の酵素の使用により、フルクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されたモグロシドをすると、風味が向上するということを示唆した。これは、フルクトシル化されたモグロシドの最初の報告であると考えられる。それゆえ、本結果は、フルクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されたモグロシド及び酵素反応の間に同時に得られるFOSは、主に高FOS濃度に起因して、良好なプレバイオティックを提供するであろうということを示唆する。
【0048】
実施例4 - 酵素処理されたモグロシド及びGOSの生成
この実験は、ガラクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されたモグロシド及びGOSを同じ酵素反応の間に製造することについての可能性のある収率及び好ましい酵素を調べることを目的とした。調べた酵素は、アスペルギルス属及びビフィドバクテリウム・ビフィドゥム由来のβ-ガラクトシダーゼであった。使用した基質はラクトース及びモグロシドであった。使用した条件は1.5%モグロシド、40%ラクトースであった。精製は酵母発酵を使用して実施し、乾燥プロセスは凍結乾燥及びロータリーエバポレーターを使用した。
【0049】
図4Aは、モグロシドの検出についてのHPLC-DADプロファイルを示す。
図4Bは、炭水化物の検出についてのGC-FIDプロファイルを示す。
【0050】
最良の結果は、アスペルギルス属由来のβ-ガラクトシダーゼを用いて得られた。これは、ガラクトシル化されたモグロシドの最初の報告であると考えられる。それゆえ、本結果は、ガラクトシル化され、かつ/又は脱グリコシル化されたモグロシドは、酵素反応の間に同時に得られるGOSと混合されると、高GOS濃度に起因して、良好なプレバイオティックを提供するであろうということを示唆する。
【0051】
実施例5 - 変性HISの官能試験データ
Reading(レディング)のSensory Science Centre(感覚科学センター)(英国)の訓練を受けた官能パネルを、上記試料の官能プロファイリングのために採用した。1年~9年の経験を持つ10人のパネリストが存在した。QDA(定量的記述分析)プロファイリングアプローチを採用した。このパネルは、試食会のための合意事項として開発した同じ語彙を使用した。そのような語彙は、ステビオールグリコシドの特徴的な味わいである用語「リコリス味」を含んでいた。このパネルは、試料セットの開始時に3回の別々の試食会にわたって再訓練を受けた。この再訓練は、スクロース標品位置の新しい濃度に対して甘味をパネリストが信頼性高くスコア付けすることができることを確保することに絞り込んだ。
【0052】
評点付けは、隔離された官能評価ブースで、不定式の線尺度(0~100のスケール)を使用して、二重に独立に実施した。しかしながら、甘味についての区別を向上させるために、4つのスクロース試料を標品として使用した。パネルが合意したところによる、これらの試料の各々についての平均値を下記表1に示す。
【0053】
【0054】
各スコア付け会議の開始時に、パネルは強さが大きくなる順に上記4つの基準試料を味わい、線尺度上のこれらのレベルの甘味の位置決めに自身を再び慣れさせた。基準試料(10mL)は、透明なポリスチレンカップ(30mL)に入れて出された。次いでパネルは、暖かい濾過した水道水及び低塩のクラッカー(Carr’s water crackers)で口直しをし、その後で試料試食会を開始し、各試料スコア付け会議の間に再び同様に口直しをした。
【0055】
無作為の3文字コードで標識した試料を、1日あたり最大6試料で、偏りのない提示順序で継続単一製品式に(シークエンシャルモナディック法により)提示した。部屋の空調を23℃に設定して、試料を23~24℃(室温)で出した。
【0056】
パネルは、下記表2に示すように、試料を規定するために15個の特性を使用した。2つの異なるグリコシダーゼ混合物(F:実施例1及び実施例3並びにG:実施例2及び実施例4)を用いて変性したモグロシド(M)及びステビオールグリコシド(SG)についての平均スコア(0~100)は示すとおりである。
【0057】
【0058】
図5~
図9は、重要な甘味、異味、苦味、リコリス味、又は甘い後味についての官能試験データを図示する。
【0059】
下記表3は、試験した試料の等価スクロース及び相対的な甘味の値を示す。
【0060】
【0061】
実施例6 - ヒトの腸内マイクロバイオームに対するMV-FOS、MV-GOS、SG-FOS及びSG-GOSの影響
ヒトの腸内マイクロバイオームの代謝活性に対するMV-FOS、MV-GOS、SG-FOS及びSG-GOS(1%w/v)の影響を評価するために実験を行った。
【0062】
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)スペクトルを、337nmで3ns、及び3Hz周波数で発光する窒素レーザーを備えるVoyager DE-PRO質量分析装置(Applied Biosystems(アプライド・バイオシステムズ))を使用することにより記録した。レーザー脱離によって生成したイオンを、加速電圧25kV、94%グリッド電圧、0.075%イオンガイドワイヤ電圧、及び遅延時間400nsを用い、線形陽イオンモード(linear positive ion mode)で飛行時間型分析器(1.3mの飛行路)に導入した。質量スペクトルをm/z範囲100~5000にわたって得た。水(Milli-Q水、Millipore(ミリポア)、ベッドフォー(Bedfor)、米国)中の10mg/mLの濃度の2,5-ジヒドロキシ安息香酸(>98%、Fluka(フルカ))をマトリクスとして使用した。試料を水中で1:100に希釈し、次いでマトリクス溶液とおよそ1:3の比で混合した。この溶液1μLを平らなステンレス鋼の試料プレートにスポッティングし、空気中で乾燥させた。較正用混合物1及び2、Sequazyme Peptide Mass Standards Kits;Applied Biosystems(アプライド・バイオシステムズ)のdes-Arg1ブラジキニン、アンギオテンシンI、Glu1-フィブリノペプチドB、ACTH(1-17)、ACTH(18-39)、ACTH(7-38)及びインスリン(ウシ)のモノアイソトピックな[M+H]+値を使用して外部質量較正を適用した。
【0063】
LC-MSによる酵素処理されたステビオールグリコシド及びモグロシドの分離及び分析を、アセトニトリル及び水(0.1%ギ酸)の溶媒勾配を用いて0.1mL/分の流量で、C18カラム(150mm×2.1mm、3.5mm粒径、ThermoFisher(サーモフィッシャー))を用いて25℃で実施した。すべての実験を、ESIインターフェースを使用してFinnigan LCQ Decaイオントラップ型質量分析計に結合されたクォータナリーグラジエントシステムを備えるFinnigan Surveyorポンプで実施した。試料注入(10mL)は、Finnigan Surveyorオートサンプラーによって実施した。すべての機器(Thermo Fisher Scientific(サーモフィッシャーサイエンティフィック)、サンノゼ、カリフォルニア州、米国)、及びデータ取得を、Xcaliburソフトウェア(1.2バージョン;Thermo Fisher Scientific(サーモフィッシャーサイエンティフィック))によって管理した。
【0064】
ヒトの腸内マイクロバイオームの代謝活性に対するMV-FOS、MV-GOS、SG-FOS及びSG-GOS(1%w/v)の影響を、pH及び温度を制御したバッチ式培養液において調べた。有機酸の濃度に対する影響を短鎖のフラクトオリゴ糖(プレバイオティクス陽性対照;FUJIFILM Wako Chemicals(富士フイルム和光純薬)、ドイツ)及び炭水化物陰性対照と比較した。変性のMV及びSG(1%w/v)の合成のために使用した同じ酵素活性によって生成されるフラクトオリゴ糖及びガラクトオリゴ糖も、未変性のMV及びSG(0.2%w/v)と共に試験した。
【0065】
新しく排便された糞便試料を、本研究の前に6か月間抗生物質を、そして本研究の前に6週間プレバイオティクス及び/又はプロバイオティクスを摂取しなかった胃腸障害を患っていない5人の健康な成人から得た。
【0066】
無菌の発酵槽(20mL作業容積、Soham scientific(ソーアム・サイエンティフィック)、イーリー(Ely)、英国)に、ペプトン水(Oxoid(オクソイド)、ベージングストーク(Basingstoke)、英国) 2gL-1;酵母エキス(Oxoid、ベージングストーク(Basingstoke)、英国) 2gL-1;NaCl 0.1gL-1;K2HPO4 0.04gL-1;KH2PO4 0.04gL-1;MgSO4.7H2O 0.01gL-1;CaCl2.6H2O 0.01gL-1;NaHCO3 2gL-1;ヘミン 0.05gL-1;システイン.HCl 0.5gL-1;胆汁酸塩 0.5gL-1、ビタミンK1 10μL;Tween 80 2mL(Sigma Aldrich(シグマアルドリッチ))からなる予め還元(脱酸素)した無菌基礎培地を充填し、無酸素のN2を注入して、嫌気性条件を確立して維持した。マグネチックスターラーを使用して撹拌を行った。試験する炭水化物(1%w/v)を指定された容器に加え、その直後に、1人の提供者由来の糞便スラリー(嫌気性リン酸緩衝生理食塩水中で調製した10% v/v)を用いて接種した。1人の提供者に対するすべての試験を並行して実施した。発酵温度を循環水槽によって37℃に維持した。自動pH制御装置(Fermac 260;Electrolab(エレクトロラボ)、英国)が、必要に応じて0.5M NaOH及び0.5M HClを添加することにより、培養液のpHを6.7~6.9の範囲内に維持した。発酵を24時間実行し、0時間、5時間、10時間及び24時間で試料を有機酸分析のために抜き取った。下記表4は、発酵実施の結果を示す。
【0067】
【0068】
有機酸(OA)濃度は、Richardsonら(1989)によって記載された方法に基づいて、2-エチル酪酸を内部標準として使用して、水素炎イオン化検出器(GC-FID)を備えるガスクロマトグラフィーによって決定した。水素炎イオン化検出器(FID)及び0.25μmコーティング(架橋(5%-フェニル)-メチルポリシロキサン、Hewlett Packard(ヒューレットパッカード)、英国)を備えるHP-5MSカラム(30m×0.25mm)を備えるガスクロマトグラフ分析器(Agilent(アジレント)/HP 6890)をSCFA測定のために使用した。ヘリウムを、1.7mL/分の流量(ヘッド圧力133KPa)でキャリアガスとして使用した。オーブンの初期温度を63℃に設定し、次いで190℃まで15℃/分の温度勾配が続き、この温度でオーブンを3分間保持した。100:1のスプリット比を使用した。クロマトグラムにおけるOAの出現を、それぞれの市販のOA標品(乳酸、酢酸、プロピオン酸及び酪酸)(Sigma-Aldrich(シグマアルドリッチ)、英国)の保持時間に基づいて確認した。
【0069】
図10~
図17を参照して、全体として、SG-GOS及びSG-FOSは、脱グリコシル化及びガラクトシル化及びフルクトシル化による、それぞれ3単位まで~4単位以上のラクトース又はフルクトースによるステビオールグリコシドの変性を示した。この挙動はMV-GOS及びMV-FOSについても見出され、この場合モグロシドは、3ガラクトース単位がガラクトシル化され、2フルクトース単位がフルクトシル化された。
【0070】
SG-GOSは、発酵の5時間及び10時間で乳酸のレベルの有意な上昇によって示されるように、迅速に発酵され、この挙動は、プレバイオティック対照及びGOSと同様であった。乳酸は発酵中間体であり、これは、腸内マイクロバイオームの他のメンバーによる交差摂取を通して迅速に利用される。乳酸は、生成速度が利用速度と比べて大きいとき、培養液中に蓄積し、それはオリゴ糖の糖分解の間に観察される迅速な腸内マイクロバイオーム発酵速度の特徴である。酢酸、プロピオン酸及び酪酸の濃度も陰性対照と比べて有意に高く、プレバイオティック対照及びGOSによって観察されるパターンと類似のパターンに従った。
【0071】
SG-FOS培養液では、乳酸の蓄積はSG-GOSと比べて有意に低く、発酵の5時間及び10時間で乳酸の蓄積によって示されたとおり、迅速に発酵され、これは陽性対照についても観察され、レベルは、プレバイオティック対照と比べて有意に低かったが、FOSに非常に類似しており、これは、より遅い発酵速度を示す。酢酸、プロピオン酸及び酪酸の濃度はすべて、陰性対照と比べて有意に高く、FOS発酵における濃度と類似していたが、酢酸生成の点では、プレバイオティック対照よりも有意に低かった。
【0072】
MV-GOS培養液では、乳酸の蓄積はGOS及びプレバイオティック対照と比べて有意に低く、これはあまり迅速ではない発酵を示す。酢酸濃度は陰性対照と比べて有意に高かったが、発酵期間にわたって徐々に上昇し、より低いレベルではあったが、プレバイオティック対照及びGOSに類似のパターンに従った。MV-GOSは、プロピオン酸濃度を有意に高め、レベルは、プレバイオティック対照及びGOSと比べて有意に高かった。酪酸の有意な上昇は24時間の発酵の後に観察され、プレバイオティック対照及びGOSに関する酪酸の上昇と同等であった。
【0073】
MV-FOS代謝産物の生成は、有意には増加しなかった酪酸を除いてMV-GOSと同一のパターンに従った。
【0074】
全体として、合成された化合物の発酵挙動は、市販のプレバイオティクスの発酵挙動と非常に近い類似性を示す。ヒトの腸内マイクロバイオームの代謝活性に対するそれらの影響は、オリゴ糖の糖分解の特徴である。それらの化合物は、酢酸を有意に増加させただけでなく、コレステロール産生、食欲調節、密着結合完全性及び免疫調節において重要な役割を有する有機酸であるプロピオン酸及び酪酸も有意に増加させた。
【0075】
上記の実施形態は、特許請求の範囲によって与えられる保護範囲を限定することを意図しておらず、本発明が実施されてもよい方法の例を記載することを意図している。