(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013852
(43)【公開日】2025-01-28
(54)【発明の名称】水素製造システム、バイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システム
(51)【国際特許分類】
C01B 3/06 20060101AFI20250121BHJP
C10J 3/00 20060101ALI20250121BHJP
C10B 53/02 20060101ALI20250121BHJP
C10L 5/44 20060101ALI20250121BHJP
C01B 3/14 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
C01B3/06
C10J3/00 Z
C10B53/02
C10L5/44
C01B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024181364
(22)【出願日】2024-10-16
(62)【分割の表示】P 2023100265の分割
【原出願日】2023-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】523234337
【氏名又は名称】株式会社日本バイオマス水素
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀雄
(57)【要約】
【課題】炭化炉から排出される高温ガスを利用し過熱蒸気を水性反応させることができる水素製造システムを提供する。
【解決手段】バイオマスを連続式の亜臨界水を用いて加水分解処理しペレットに加工処理する水素製造システム1は、ペレットを不完全燃焼して炭化する炭化炉3と、炭化物の比率を測定する炭化率測定装置31と、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置4と、熱分解ガスを発生させる熱分解炉5と、水性ガス回収装置6と、制御装置90と、を備え、炭化炉3は、ペレットが投入される投入口301aと、投入された炭化物を収容する収容部301と、ペレットを炭化させて生成した炭化物を排出する排出口301bと、生成された炭化物の炭化度を評価する炭化度評価部313と、を有し、制御装置90は、炭化率測定装置31が測定した炭化物の比率及び炭化度評価部313が評価した炭化度が一定となるように収容部301内の雰囲気温度を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを連続式の亜臨界水を用いて加水分解処理しペレットに加工処理する水素製造システムであって、
前記ペレットを不完全燃焼して炭化する炭化炉と、
前記炭化炉で炭化して得られた炭化物に対する不完全燃焼した炭化物の比率を測定する炭化率測定装置と、
水蒸気を熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置と、
前記過熱蒸気発生装置から供給される前記過熱蒸気と前記炭化炉で炭化して得られた炭化物とを、前記炭化炉で発生した燃焼排ガスによって加熱して熱分解ガスを発生させる熱分解炉と、
前記熱分解炉で発生した前記熱分解ガスを洗浄して水性ガスを回収する水性ガス回収装置と、
前記炭化炉、前記過熱蒸気発生装置、前記熱分解炉及び前記水性ガス回収装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記炭化炉は、
前記ペレットが投入される投入口と、
前記投入口から投入された前記炭化物を収容する収容部と、
前記収容部において前記ペレットを炭化させて生成した炭化物を排出する排出口と、
生成された前記炭化物の炭化度を評価する炭化度評価部と、を有し、
前記制御装置は、前記炭化率測定装置が測定した炭化物の比率及び前記炭化度評価部が評価した炭化度が一定となるように前記収容部内の雰囲気温度を制御することを特徴とする水素製造システム。
【請求項2】
前記炭化炉は、内部空間の温度を検出する温度センサを有し、
前記制御装置は、前記温度センサから伝達される燃焼温度に基づいて、前記内部空間に供給される空気の送風量を制御することにより前記内部空間内の雰囲気温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項3】
前記炭化炉は、前記収容部から排出される炭化物の排出量を検出する炭化物レベルセンサを有し、
前記制御装置は、前記炭化物レベルセンサから伝達される炭化物のレベルに応じて、前記収容部から排出される炭化物の排出量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の水素製造システム。
【請求項4】
前記炭化炉は、前記収容部において生成された炭化物の色を基準に炭化度を評価する炭化度センサを有し、
前記制御装置は、前記炭化度センサが評価する炭化度に応じて供給される原料の量に対する炭化物の比率を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の水素製造システム。
【請求項5】
前記炭化炉は、前記収容部の下方側において炭化物が排出されるターンテーブルの回転数を検出するターンテーブル回転数センサを有し、
前記制御装置は、前記ターンテーブル回転数センサが検出するターンテーブルの回転数に応じて前記収容部から排出される炭化物の排出量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の水素製造システム。
【請求項6】
前記炭化炉は、前記収容部に供給されるペレットの供給量を検出する原料供給センサを有し、
前記制御装置は、前記原料供給センサが検出するペレットの供給量に応じて前記収容部に投入されたペレットに対し、炭化物が23重量%~25重量%となるように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の水素製造システム。
【請求項7】
前記炭化炉は、内部空間の圧力を検出する圧力センサを有し、
前記制御装置は、前記圧力センサが検出する圧力に応じて前記内部空間の圧力を負圧に制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の水素製造システム。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の水素製造システムと、
前記水素製造システムによって生成された水素を用いて発電を行う発電装置とを備えたことを特徴とするバイオマス発電システム。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の水素製造システムと、
前記水素製造システムによって生成された水素を供給する水素供給装置とを備えたことを特徴とするバイオマス水素供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造システム、バイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムに関し、特に再生可能エネルギー源の一つであるバイオマス(有機廃棄物)を利用し連続式亜臨界処理した残渣を脱塩、脱水しペレット化した原料にて炭化し、水性反応させる廃棄材などのバイオマスを利用した全体システム自動制御による水素製造システム、バイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に開示されているように、バイオマスを熱分解してガス化し、それによって得られた水性ガスを用いて、ガスエンジン等で効率よく発電するバイオマス発電システムが知られている。
【0003】
リグニンを多く含む木質系材料(バイオマス)の熱分解ガス化は、新規なエネルギー資源の供給源として大きな可能性を有しており、近年、有効に利用しようという試みが行われている。木質系材料を熱分解ガス化するには、原料となる木質バイオマスを温度600℃から900℃で低酸素状態において、ガス(CO、H2、CH4、CO2、H2O)、炭化物、炭化水素に分解し、その熱分解生成物を酸素又は空気の制限下に供給して燃焼させるとともに、炭化物を高温加熱してガス化させることで水性ガスを生成する。
【0004】
また、特許文献3には、炭化物を排出する炭化物排出部と、燃焼用の空気を供給する空気供給部と、炭化物の温度を検出する温度センサと、温度センサが検出する温度に応じて炭化物排出部が排出する炭化物の排出量を制御する制御部とを備える炭化炉が開示されている。制御部は、炭化炉が備える各部からの信号を受信するとともに、各部に制御信号を伝達することで各部を制御することにより、炭化炉における各処理を自動的に実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-165019号公報
【特許文献2】特許第6170579号公報
【特許文献3】特開2016-121253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1乃至3に開示されている技術は、炭化炉から排出される熱源として利用するための排ガスを一定レベル以上に保つという点に関しては改善の余地を残していた。
【0007】
そこで、本発明は、炭化炉から排出される高温ガスを利用し過熱蒸気を水性反応させることができる水素製造システム、バイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対して、本発明は、バイオマスを連続式の亜臨界水を用いて加水分解処理しペレットに加工処理する水素製造システムであって、前記ペレットを不完全燃焼して炭化する炭化炉と、前記炭化炉で炭化して得られた炭化物に対する不完全燃焼した炭化物の比率を測定する炭化率測定装置と、水蒸気を熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置と、前記過熱蒸気発生装置から供給される前記過熱蒸気と前記炭化炉で炭化して得られた炭化物とを、前記炭化炉で発生した燃焼排ガスによって加熱して熱分解ガスを発生させる熱分解炉と、前記熱分解炉で発生した前記熱分解ガスを洗浄して水性ガスを回収する水性ガス回収装置と、前記炭化炉、前記過熱蒸気発生装置、前記熱分解炉及び前記水性ガス回収装置の動作を制御する制御装置と、を備え、前記炭化炉は、前記ペレットが投入される投入口と、前記投入口から投入された前記炭化物を収容する収容部と、前記収容部において前記ペレットを炭化させて生成した炭化物を排出する排出口と、生成された前記炭化物の炭化度を評価する炭化度評価部と、を有し、
前記制御装置は、前記炭化率測定装置が測定した炭化物の比率及び前記炭化度評価部が評価した炭化度が一定となるように前記収容部内の雰囲気温度を制御することを特徴とする。
【0009】
ここで、前記炭化炉は、前記内部空間の温度を検出する温度センサを有し、前記制御装置は、前記温度センサから伝達される燃焼温度に基づいて、前記内部空間に供給される空気の送風量を制御することにより前記内部空間内の雰囲気温度を制御することが好ましい。また、前記炭化炉は、前記収容部から排出される炭化物の排出量を検出する炭化物レベルセンサを有し、前記制御装置は、前記炭化物レベルセンサから伝達される炭化物のレベルに応じて、前記収容部から排出される炭化物の排出量を制御することが好ましい。
【0010】
また、前記炭化炉は、前記収容部において生成された炭化物の色を基準に炭化度を評価する炭化度センサを有し、前記制御装置は、前記炭化度センサが評価する炭化度に応じて供給される原料の量に対する炭化物の比率を制御することが好ましい。また、前記炭化炉は、前記収容部の下方側において炭化物が排出されるターンテーブルの回転数を検出するターンテーブル回転数センサを有し、前記制御装置は、前記ターンテーブル回転数センサが検出するターンテーブルの回転数に応じて前記収容部から排出される炭化物の排出量を制御することが好ましい。
【0011】
また、前記炭化炉は、前記収容部に供給されるペレットの供給量を検出する原料供給センサを有し、前記制御装置は、前記原料供給センサが検出するペレットの供給量に応じて前記収容部に投入されたペレットに対し、炭化物が23重量%~25重量%となるように制御することが好ましい。また、前記炭化炉は、前記内部空間の圧力を検出する圧力センサを有し、前記制御装置は、前記圧力センサが検出する圧力に応じて前記内部空間の圧力を負圧に制御することが好ましい。
【0012】
また、バイオマス発電システムの発明は、上記いずれかに記載の水素製造システムと、前記水素製造システムによって生成された水性ガスを用いて発電を行う発電装置とを備えたことを特徴とする。
【0013】
さらに、バイオマス水素供給システムの発明は、上記いずれかに記載の水素製造システムと、前記水素製造システムによって生成された水素を供給する水素供給装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように構成された本発明の水素製造システムは、炭化炉が、ペレット及びチップにて投入される投入口と、投入口から投入された炭化物を収容する収容部と、収容部においてペレット及びチップを炭化させて生成した炭化物を排出する排出口と、生成された炭化物の炭化度を評価する炭化度評価部と、を有し、制御装置は、炭化率測定装置が測定した炭化物の比率及び炭化度評価部が評価した炭化度が一定となるように収容部内の雰囲気温度を制御する。これにより、炭化炉から排出される高温ガスを利用し過熱蒸気を水性反応させることができる。
【0015】
特に、制御装置は、温度センサから伝達される燃焼温度に基づいて、内部空間に供給される空気の送風量を制御することにより内部空間内の雰囲気温度を制御する。また、制御装置は、炭化物レベルセンサから伝達される炭化物のレベルに応じて、収容部から排出される炭化物の排出量を制御する。また、制御装置は、炭化度センサが評価する炭化度に応じて供給される原料の量に対する炭化物の比率を制御する。また、制御装置は、ターンテーブル回転数センサが検出するターンテーブルの回転数に応じて収容部から排出される炭化物の排出量を制御する。また、制御装置は、原料供給センサが検出するペレットあるいはチップの供給量に応じて収容部に投入されたペレットあるいはチップに対し、炭化物が23重量%~25重量%となるように制御する。また、制御装置は、圧力センサが検出する圧力に応じて内部空間の圧力を負圧に制御する。従って、これらいずれの場合にも上記同様に炭化炉から排出される高温ガスを利用し過熱蒸気を水性反応させることができる。
【0016】
また、バイオマス発電システムの発明は、組成比が均一な熱分解ガスを効率よく発生させる水素製造システムによって生成された水性ガスを用いて発電を行うので、ガス中の可燃ガス(CO、H2)の含有割合によって発熱量が決まる発電機のエンジンを、安定して回転させることができる。
【0017】
さらに、バイオマス水素供給システムの発明は、組成比が均一な熱分解ガスを効率よく発生させる水素製造システムによって生成された水素を製造して水素を供給するので、バイオマスを使って水素を製造しながら燃料電池自動車に直接、水素を充填することができるオンサイト型の水素ステーションにも、製造場所から別の場所に水素を輸送するオフサイト型の水素ステーションにも、簡単に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態の水素製造システムが組み込まれたバイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムの構成を説明するブロック図である。
【
図2】亜臨界システムの具体的な構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施の形態の水素製造システムが組み込まれたバイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムの構成を説明する概略図である。
【
図4】本実施の形態の水素製造システムが組み込まれたバイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムの構成を説明する概略図であって、
図3の続きを示す図である。
【
図5】炭化炉の内部の構造を示す模式的な縦断面図である。
【
図6】炭化炉の機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本実施の形態の水素製造システム1が組み込まれたバイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムの構成を説明するブロック図であり、
図2は連続式の亜臨界水を用いた亜臨界システムの具体的な構成を示すブロック図であり、
図3及び
図4は本実施の形態の水素製造システム1が組み込まれたバイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムの構成を説明する概略図である。
【0020】
本実施の形態の水素製造システム1は、食品残渣、紙おむつ、生ごみ、畜糞汚泥等の廃棄物のバイオマス(有機廃棄物)から炭化炉にて炭化物を回収し、熱分解ガス化することで水性ガスを生成させる装置である。そして、水素製造システム1によって生成された水性ガスは、発電装置であるガス発電機7の燃料となって発電に利用されたり、水素供給装置である水素供給設備8に送られて製造されて水素になったりして、燃料電池自動車や家庭用燃料電池コージェネレーションシステムなどで使用される。例えば、ガス発電機7は、水素製造システム1によって生成された水性ガスの約30%を用いて発電を行い、水素製造システム1によって生成された水性ガスの約70%を製造して水素を供給する。
【0021】
まず、本実施の形態の水素製造システム1について説明する。水素製造システム1は、バイオマスを加工処理して供給する亜臨界システム2と、加工処理済みのバイオマスを不完全燃焼して炭化する炭化炉3と、水蒸気を熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置4と、熱分解ガスを発生させる熱分解炉5と、熱分解ガスを洗浄して水性ガスを回収する水性ガス回収装置6とによって主に構成される。
【0022】
亜臨界システム2には、原料供給ライン21から有機廃棄物や一部加工処理済みのバイオマスが投入される。亜臨界システム2は、バイオマスを連続亜臨界処理し、ペレットに加工処理する。有機廃棄物とは、食品残渣、紙おむつ、畜糞汚泥等広く食品廃棄物、紙おむつ廃棄物、畜産廃棄物、家庭から排出される生ごみ等の一般廃棄物を含むものである。水素を生成する原料には、これらのような種々の有機廃棄物を用いることができるが、食品残渣、紙おむつや畜糞汚泥等のバイオマス(高水分系バイオマスという)を用いるのが好ましい。なお、高水分系バイオマスは、含水率が70重量%から80重量%程度である。
【0023】
図2は、亜臨界システム2の具体的な構成を示すブロック図である。亜臨界システム2は、破砕部210と、選別部220と、亜臨界処理部230と、保持部240と、分離部250と、ペレット製造部260と、乾燥部270と供給部280とを有する亜臨界機構200と、亜臨界機構200の各構成要素を制御する亜臨界制御部290とを備えている。
【0024】
破砕部210は、炭化物の原料となるバイオマスを細かく破砕する。破砕部210は、例えば撹拌棒211と粉砕機212とを有するタンクとして設けられ、タンク内にバイオマスが投入される。
【0025】
破砕部210では、バイオマスが撹拌棒211により撹拌・混合され、更に粉砕機212により5mm角50mm程度の長さ寸法になるように粉砕される。なお、破砕部210は2台のタンクにより構成され、2台のタンクにおいて交互に撹拌・粉砕が行われることが望ましい。破砕部210で破砕されたバイオマスは、コンベア(バケットコンベア)により選別部220へと供給される。
【0026】
選別部220は、破砕部210により破砕されたバイオマス中から金属成分を非金属成分から選別して除去する。具体的には、選別部220は、炭化物となる原料から不要な素材である金属成分を異物として搬送経路から除外する。
【0027】
選別部220は、例えば磁選機、渦電流選別機等であり、金属と非鉄分を選別するために設けられている。なお、選別部220は上下2層構造であることが望ましく、上側の表面磁束密度は1000ガウス、下側の表面磁束密度は3000ガウスであることが望ましい。選別部220で選別された、金属成分が除去されたバイオマスは、コンベアにより亜臨界処理部230へと供給される。
【0028】
亜臨界処理部230は、選別部220により金属、非鉄分成分が除去されたバイオマスを撹拌し、亜臨界状態の水蒸気によりスラリーを生成する。具体的には、亜臨界処理部230は、バイオマスを加圧、加熱された水蒸気と加水分解することにより、液体状のバイオマスとしてスラリーを生成する。
【0029】
亜臨界処理部230は、円筒状の胴体部231と、胴体部231の上下方向における両端に設けられた縦横比2:1の楕円形又は半球状のドーム部232とを有して構成されている。具体的には、亜臨界処理部230は、上下方向に延びる円筒状のタンクとして形成されている。このような構成により、亜臨界処理部230全体の形状が球状に形成されている場合と比較して、収容することができるバイオマスの容量を増加させることができる。なお、選別部220から亜臨界処理部230へのバイオマスの供給は、第1ボール弁233により調整される。また、亜臨界処理部230では、液面計(不図示)によりバイオマスの液面の位置が測定される。
【0030】
亜臨界処理部230では、70~80重量%程度の水分を含むバイオマスが亜臨界状態の水蒸気とともに攪拌機(不図示)により撹拌されることで、スラリーが生成される。ここで、亜臨界状態の水蒸気とは、例えば温度が200~230℃で、圧力が2.0Mpa~3.0Mpaである。なお、この水蒸気は、例えば後述の過熱蒸気発生装置4から供給されることが望ましい。
【0031】
亜臨界処理部230内部の雰囲気温度は200~250℃程度であることが好ましく、200~230℃程度、更には215℃であることがより好ましい。また、亜臨界処理部230内部の圧力は、2~5.0MPa程度であることがより好ましく、2.0~3.0MPa程度、更には2.1MPaであることがより好ましい。亜臨界処理部230では、水分系バイオマスは30~50分程度の期間保持されてスラリーが生成される。
【0032】
亜臨界処理部230で生成されたスラリーは、第2ボール弁234により供給量を調節されつつ、保持部240に供給される。保持部240は、亜臨界処理部230で生成されたスラリーを保持するとともに、蒸気と液体が分離(スーパーヒート)された蒸気部分を排ガスとして放出する。保持部240で一定期間保持されたスラリーは、スラリーポンプを介して分離部250に送出される。
【0033】
分離部250は、保持部240から供給されたスラリーの含水率を40重量%以下に減少させて固形成分を生成する。具体的には、スラリーから脱塩し、水分を分離させることにより含水率が90重量%から40重量%程度にまで減少した固形成分(脱水ケーキ)を生成する。
【0034】
なお、分離部250で生成された脱水ケーキは、塩分を含んでいる。そのため、分離部250は、塩分を含む脱水ケーキを洗浄して塩分を除去するための洗浄水を供給する洗浄水供給部251を備えていることが望ましい。水等の洗浄水により脱水ケーキを洗浄することにより、ペレットの原料となる脱水ケーキから塩分が除去される。分離部250で生成された固形成分は、バケットコンベアによりペレット製造部260に供給される。
【0035】
ペレット製造部260は、分離部250で生成された固形成分からペレットを生成する。ペレット製造部260は、含水率が40重量%程度となった脱水ケーキを対象に、直径5mm程度、長さ50mm程度のペレットを製造する。ペレット製造部260で生成されたペレットは、バケットコンベアにより乾燥部270に供給される。
【0036】
乾燥部270は、ペレット製造部260で製造されたペレットあるいはチップを乾燥させる。具体的には、乾燥部270では炭化炉3で発生した高温の排ガスを利用して、含水計にてペレットの含水率が15重量%程度となるまで、熱風の副射熱によりペレットを乾燥機の回転数を制御し乾燥させる。
【0037】
供給部280は、亜臨界システム2から炭化炉3へとペレットを供給するための経路であり、乾燥部270で乾燥されたペレットは、供給部280を介して炭化炉3に供給される。供給部280には、乾燥部270と炭化炉3との間にペレットの含水率を計測する含水計281が設けられている。含水計281は、例えばペレットの含水率が15重量%程度であるかどうかを検出するセンサとして機能する。なお、供給部280は必ずしも亜臨界システム2の一部として設けられている必要はなく、水素製造システム1において原料を供給することができるのであれば、いかなる位置に設けられていてもよい。
【0038】
亜臨界制御部290は、亜臨界システム2におけるバイオマスの投入から炭化炉3へのペレット供給までの各工程における連続的な亜臨界処理の制御を実行する。
【0039】
図5は、炭化炉3の内部の構造を示す模式的な縦断面図である。炭化炉3は、有機廃棄物を炭化させて炭化物を得るための装置である。炭化炉3は、収容部301と、加熱部302と、ターンテーブル303と、着火部304と、温度センサ311と、炭化物レベルセンサ312と、炭化度センサ(炭化度評価部)313と、ターンテーブル回転数センサ314と、原料供給センサ315と、圧力センサ316を有して構成されている。炭化炉3の各種動作は、制御装置90の炭化炉制御部100により制御されている。
【0040】
収容部301は、軸線Xに沿って略円筒状に延びるように形成されている。収容部301は、ペレットが投入される内部空間305を有し、下方側から下部領域R1、中間領域R2、上部領域R3の3つの領域に分割されている。収容部301には、投入口301a、排出口301b、空気供給口301c、排気口301dが形成されている。
【0041】
投入口301aは、原料となるペレット(有機物)を内部空間305に投入されるための開口部である。投入口301aからは、亜臨界システム2で脱水、乾燥機にて含水率が15重量%以下まで乾燥されたペレットが投入される。投入口301aは、収容部301の上部側面に形成されている。投入口301aを介して内部空間305に投入される原料の投入量は、炭化炉制御部100により制御される。
【0042】
排出口301bは、内部空間305から外部に炭化物を排出するための開口部である。排出口301bは、収容部301の下方側(底部)に形成されている。排出口301bを介して内部空間305から排出される炭化物の排出量は、炭化炉制御部100により制御される。
【0043】
空気供給口301cは、内部空間305に燃焼用の空気を供給するための開口部である。空気供給口301cは、収容部301の側面に形成され、内部空間305に対して開閉自在に設けられている。空気供給口301cが開閉自在であることにより、炭化炉制御部100により内部空間305への空気の供給量が制御される。
【0044】
排気口301dは、内部空間305で発生した燃焼ガスを外部に排出するための開口部である。排気口301dは、収容部301の側面に形成され、内部空間305に対して開閉自在に設けられている。
【0045】
加熱部302は、ターンテーブル303の上側から上方に突出する円筒状の部材と収容部301に挟まれた部分である。加熱部302は、収容部301の下方側から3分の1程度の高さとなるように設けられ、収容部301との間に隙間が形成されている。加熱部302は、炭化炉3の運転開始時に着火部304により燃焼され、内部空間305に投入されたペレットは不完全燃焼され炭化物を発生する。
【0046】
ターンテーブル303は、収容部301の下方に設けられる円環状の回転体である。ターンテーブル303は、炭化炉制御部100により制御されるモータにより軸線X回りに回転する。ターンテーブル303の回転に伴い、排出口301bから炭化物が排出される。
【0047】
着火部304は、収容部301の内側に設けられ、加熱部302及び内部空間305を加熱する。着火部304は、加熱部302を加熱することができるよう、収容部301の下方側に設けられていることが望ましい。着火部304は、例えばバーナーである。
【0048】
温度センサ311は、内部空間305の温度を検出する。具体的には、温度センサ311は、収容部301の内側の中間領域R2に対応した箇所に設けられ、中間領域R2の燃焼ガスの雰囲気温度を検出する。なお、温度センサ311は、中間領域R2に対応した箇所以外である下部領域R1及び上部領域R3に対応した箇所にそれぞれ設けられてもよい。
【0049】
炭化物レベルセンサ312は、ターンテーブル303を介して炭化炉3から排出される炭化物の排出量を検出する。また、炭化度センサ313は、炭化炉3において生成された炭化物の色を基準に炭化度を評価する。
【0050】
ターンテーブル回転数センサ314は、炭化炉3の下方側において炭化物が排出されるターンテーブル303の回転数を検出する。また、原料供給センサ315は、炭化炉3に供給されるペレットの供給量を検出する。
【0051】
圧力センサ316は、内部空間305内の圧力を検出する。具体的には、圧力センサ316は、炭化炉3の運転開始時に炭化炉3内部の圧力が-50mmAg程度の負圧であるか否かを検出する。
【0052】
炭化炉3は、制御装置90により運転開始から終了までの工程が自動化されるように制御されている。制御装置90は、炭化炉制御部100を有し、炭化炉制御部100により炭化炉3の自動化のための制御が行われる。
【0053】
図6は、炭化炉3の機能構成の一例を示すブロック図である。炭化炉制御部100は、温度センサ311、炭化物レベルセンサ312、炭化度センサ313、ターンテーブル回転数センサ314、原料供給センサ315、圧力センサ316の各種センサと接続され、炭化炉制御部100にはこれらのセンサからの情報が伝達される。炭化炉制御部100は、温度制御部101と、炭化物レベル制御部102と、炭化度制御部103と、炭化率制御部104と、着火バーナー制御部105とを有して構成されている。
【0054】
温度制御部101は、炭化炉3内の温度を制御する。具体的には、温度制御部101は温度センサ311から伝達される燃焼温度に基づいて、空気供給口301cから供給される空気の送風量を制御することにより内部空間305内の雰囲気温度を制御する。温度制御部101は、炭化率測定装置31の炭化率が23重量%~25重量%程度となるように中間領域R2の酸欠状態の雰囲気温度を制御する。
【0055】
炭化炉3の起動時には、着火部304が起動され、内部空間305内の温度が800℃程度まで上昇すると、着火部304を停止して、着火バーナーを自動にて抜き出し、ターンテーブル303を回転させる。炭化炉3の起動時において内部空間305の圧力は負圧(陰圧)である。温度制御部101は、下部領域R1の雰囲気温度が350~400℃、中間領域R2の雰囲気温度が1000℃前後(950~1050℃)、上部領域R3の雰囲気温度が1150~1200℃前後に維持されるように、空気供給口301cから供給される空気の送風量を制御する。空気供給口301cから供給される空気の送風量を制御するためには、例えば1次空気ブロワ361と2次空気ブロワ362から供給される空気の量を調整すればよい。
【0056】
炭化物レベル制御部102は、炭化炉3から排出される炭化物の排出量を制御する。炭化度制御部103は、炭化炉3で生成される炭化物の炭化度が一定となるように制御する。炭化率制御部104は、収容部301に投入されたペレットに対し、炭化物が23重量%~25重量%となるように制御する。着火バーナー制御部105は、炭化炉3の起動時において着火部304に起動及び停止を制御する。
【0057】
炭化炉3においては、約92重量%カーボンが含まれる炭化物と完全燃焼した1150℃~1200℃の高温排ガスが生成される。炭化物は炭化炉3の下部から排出されて、クインカーを分離後、コンベアを介して炭化率測定装置31に送られる。一方、高温排ガスは、炭化炉3の上端部から排出されて熱分解反応の熱源として利用するため熱分解炉5に送られる。
【0058】
水素製造システム1では、熱分解炉5内に設置したセンターパイプ51内の流動式水性反応の際に炭化物と反応する過熱蒸気が過熱蒸気発生装置4によって加熱される。過熱蒸気は、飽和温度を超える温度に加熱した蒸気である。ガス化剤として熱分解炉5に供給する過熱蒸気の温度は、800℃から850℃程度に加熱される。
【0059】
過熱蒸気発生装置4は、第1スチーム過熱器41と、第2スチーム過熱器42とによって主に構成される。第1スチーム過熱器41及び第2スチーム過熱器42では、飽和蒸気を加熱することにより飽和蒸気から過熱蒸気が生成される。
【0060】
第1スチーム過熱器41には、プロセスボイラ43が生成した飽和蒸気が供給される。また、第1スチーム過熱器41には、熱分解炉5から排出される水性ガスが供給される。第1スチーム過熱器41に供給される水性ガスの温度は、900℃から1000℃程度となる。
【0061】
第1スチーム過熱器41から第2スチーム過熱器42を経て排出された過熱蒸気は、熱分解炉5へガス化剤として供給される。また、第2スチーム過熱器42で過熱蒸気を生成する熱源として用いられた燃焼ガスは、プロセスボイラ43へ供給される。
【0062】
プロセスボイラ43では、2.2MPaG以上の飽和蒸気を回収し、第1スチーム過熱器41、800℃から850℃の第2スチーム過熱器42で過熱蒸気とし熱分解炉5に供給し水性反応に使用する。同時に亜臨界処理部230に使用する。蒸気圧力2.1MPaG以上、蒸気温度215℃以上で供給し、加水分解させる。
【0063】
さらに、プロセスボイラ43で回収された燃焼排ガスは、
図3に示すように、原料供給ライン(亜臨界システム2)の乾燥部270に送られて、バイオマスの乾燥に利用される。また、乾燥部270から発生する排ガスは、排ガス処理設備24にて無害化して大気に放出される。
【0064】
一定以上の粒径のクリンカが除去された炭化物は、炭化率測定装置31に供給される。炭化率測定装置31は、原料供給ラインにおいて炭化炉3よりも下流側に配置され、収容部301に収容されたペレットに対し、生成された炭化物の比率が23重量%~25重量%であるかどうかをリアルタイムで検出する。具体的には、炭化率測定装置31は、収容部301に収容されたペレットの重量を検出するレベル計(ロードセル)として機能する。
【0065】
炭化率測定装置31で炭化率を計測されてコンベアで運ばれた炭化物は、受入ホッパ33に投入される。その後、窒素置換器(N2)から常時供給される窒素ガスによって、空気に含まれる酸素を不活性な窒素ガスに置換してから熱分解炉5に供給する。
【0066】
熱分解炉5には、このようにして炭化炉3から直接、送り込まれる炭化物と、後述するリサイクルホッパ13から送られるリターンの炭化物とが供給される。また、上述したように過熱蒸気発生装置4からの過熱蒸気も供給される。
【0067】
本実施の形態の熱分解炉5は、
図4に示すように、長尺状のセンターパイプ51と、その周囲を覆うジャケット部52とを備えている。センターパイプ51は、長さが6mから9mの円筒管によって形成される。センターパイプ51の長さは、8m程度にするのが好ましい。
【0068】
センターパイプ51は、1000℃以上の高温に曝されることになるため、SUS310などの耐熱性の高いステンレス鋼などによって製作するのが好ましい。ジャケット部52は、センターパイプ51を中心にして、センターパイプ51の外周面と間隔が開くようにして囲繞させる外筒である。
【0069】
ジャケット部52の内周面とセンターパイプ51の外周面との間の隙間には、1000℃から1200℃の高温の燃焼排ガスが通過するため、ジャケット部52には、350mmから400mm程度の厚さの耐熱材を貼り付ける。
【0070】
ジャケット部52は、センターパイプ51より短く形成される。そして、ジャケット部52から上方に向けて突出されるセンターパイプ51の部分が上端部511となり、ジャケット部52から下方に向けて突出されるセンターパイプ51の部分が下端部512となる。
【0071】
また、ジャケット部52の上端付近には、炭化炉3で発生した燃焼排ガスである高温排ガスを内部に取り込むための導入口53が設けられる。導入口53からセンターパイプ51との隙間に流入した高温排ガスは、ジャケット部52の下端付近の排出路54から排出される。排出された燃焼排ガスは、第2スチーム過熱器42に供給される。
【0072】
8m程度の長さに製作されたセンターパイプ51は、高温排ガスの通過によって160mmから190mm程度伸びることになるので、下端部512はグランド構造とし、上端部511は固定する。
【0073】
熱分解炉5は、流動式の熱分解ガス化装置である。センターパイプ51の下端部512の端面近くの蒸気供給口513からは、上述した過熱蒸気発生装置4によって生成された過熱蒸気が供給される。
【0074】
過熱蒸気は、炭化物の終末速度以上となる10m/sから15m/sの上昇流が形成されるように供給する。下端部512の蒸気供給口513より100mmから200mm程度の上方には、リターン未反応炭を供給するリターン供給口515と、炭化物を供給する炭化物供給口514とを設ける。ここでは、リターン供給口515より炭化物供給口514を上方に設ける。
【0075】
炭化物供給口514とリターン供給口515からセンターパイプ51内に供給された炭化物及び未反応炭は、それより下方の蒸気供給口513から供給された過熱蒸気と一緒にセンターパイプ51内を上昇する。
【0076】
炭化物と過熱蒸気が接触混合されると、水性反応(熱分解反応)が起き、水素ガス(H2)、一酸化炭素ガス(CO)、二酸化炭素ガス(CO2)を主成分とする水性ガス(熱分解ガス)が生成される。例えば、H2が60容積%(V%)、COが13容積%、CO2が25容積%、CH4が約2容積%の水性ガスが生成され、上端部511の熱分解ガス排出口516から排出される。
【0077】
この水性反応は、トータルで吸熱反応であり、導入口53からセンターパイプ51の外周に供給された1000℃から1200℃の高温排ガスによって、センターパイプ51内では輻射熱及び総括伝熱係数にて900℃から1000℃の温度となる。
【0078】
ここで、水性反応は、以下のようになる。
C+H2O→CO+H2 (1)
C+H2O→CO2+H2 (2)
【0079】
上記式(1)に示す水性ガス反応は吸熱反応であり、式(2)に示す水性ガスシフト反応は発熱反応である。式(2)に示す発熱反応の発熱量よりも、式(1)に示す吸熱反応の吸熱量の方が大きい。そのため、炭化物と過熱蒸気との熱分解反応は、全体として吸熱反応となる。
【0080】
一般的に、低温(750℃-800℃)では発熱反応である水性ガスシフト反応が促進され、高カロリーの一酸化炭素が消費されて低カロリーの水素が生成されるので、単位体積当たりの発熱量が小さい水素リッチな熱分解ガスが生成される。一方、高温(900℃-1000℃)では水素リッチな熱分解ガスが生成される。また、ガス化剤となる過熱蒸気の供給量が多いほど、熱分解ガス中のH2/CO比が高くなる。
【0081】
本実施の形態のように流動式の熱分解炉5を採用することによって、炭化物と過熱蒸気との反応面積が増大し、反応率を上昇させることができる。すなわち長尺状のセンターパイプ51であれば、上昇していく間の長い距離において、水性反応させるための反応面積を充分に確保することができる。本実施の形態の熱分解炉5であれば、反応率を、供給炭化物に対して80重量%から85重量%(w%)にすることができる。
【0082】
熱分解炉5のセンターパイプ51の上端部511に設けられた熱分解ガス排出口516から排出された水性ガス(熱分解ガス)は、
図4に示すように、マルチサイクロン11に送られる。
【0083】
マルチサイクロン11では、水性ガスを内部で旋回させることにより水性ガスに含まれる残渣を遠心分離して、下方へ導いて減温器12に供給する。また、マルチサイクロン11では、残渣が除去された水性ガスを上方へ導いて、過熱蒸気発生装置4に供給する。
【0084】
マルチサイクロン11では、未反応炭の約99%以上が分離される。マルチサイクロン11で分離された未反応炭は、減温器12において水供給ポンプ(TW)から液体である水が噴霧されることによって、300℃から400℃に冷却される。そして、冷却された未反応炭は、リサイクルホッパ13又は余剰ホッパ14に送られる。
【0085】
このようなリターンシステムによって、供給された炭化物の約2~5倍の未反応炭を、熱分解炉5にリターン未反応炭として戻すことができる。すなわち、炭化物の未反応分が水性ガスの生成に用いられずに廃棄されることが回避でき、炭化物からの水性ガスの収率が向上する。また、窒素置換器(N2)によって水性ガスが不活性な窒素ガスと置換されて余剰ホッパ14に送られた未反応炭は、回収される。
【0086】
一方、マルチサイクロン11において回収された水性ガスは、第1スチーム過熱器41にて熱回収(約400℃)されて、CO改質器61に送られる。CO改質器61では、一酸化炭素(CO)と水蒸気(H2O)を触媒上で反応させて、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)に変換する。
CO+H2O→CO2+H2(発熱反応)
【0087】
CO改質器61で改質された水性ガスの組成は、H2が約65容積%(V%)、COが約2容積%、CO2が約31容積%、CH4が約2容積%となって排出される。そして、改質された水性ガスは、水性ガス洗浄塔62に送られる。
【0088】
本実施の形態の水性ガス回収装置6は、水性ガス洗浄塔62と、循環クーラ63と、水性ガスルーツブロワ64と、水性ガスホルダ65とによって主に構成される。上述したCO改質器61を、水性ガス回収装置6の構成に含めることもできる。
【0089】
水性ガス洗浄塔62では、約400℃の温度で送り込まれた水性ガスを、約40℃にまで冷却する。水性ガスは冷却によって、冷却され水性ガスと残渣(未反応炭)とに分離され、未反応炭は系外へ排出されて回収される。
【0090】
水性ガス洗浄塔62には、水性ガス冷却装置となる循環クーラ63が接続されており、液体である循環水によって洗浄と冷却を行うことで、水性ガスホルダ65に向けて排出される水性ガスを約40℃にまで冷却することができる。
【0091】
ここで、水性ガス洗浄塔62と循環クーラ63との間には、洗浄塔ポンプ621とラインフィルタ631とが介在される。また、循環クーラ63では、水性ガスの洗浄及び冷却のために供給された冷却水(CW)の戻り水(RCW)を回収して、循環ポンプにより再び水性ガスの洗浄及び冷却させる冷却水として循環させる。
【0092】
水性ガス洗浄塔62で処理された水性ガスは、水性ガスルーツブロワ64によって水性ガスホルダ65に供給される。そして、水性ガスホルダ65にガス発電機7が接続されていれば、水性ガスによる発電が行われて送電がされる。水素製造システム1の水性ガスホルダ65にガス発電機7が接続されていれば、バイオマス発電システムとなる。
【0093】
ガス発電機7は、水性ガスを燃料として動作する発電装置である。ガス発電機7を駆動させる動力源としては、例えば、水性ガスを燃焼させることにより動作するガスエンジンが用いられる。
【0094】
一方、水素製造システム1の水性ガスホルダ65に水素供給装置である水素供給設備8が接続されていれば、バイオマス水素供給システムとなる。バイオマス発電システムとバイオマス水素供給システムとは、いずれか一方であってもよいし、
図1及び
図4に図示したように両方を備えたシステムであってもよい。
【0095】
図4は、バイオマス水素供給システムを構成する水素供給設備8の一例を説明するブロック図である。水素供給設備8は、圧縮機81と、蓄圧器82とによって主に構成される。
【0096】
水素製造システム1では、水性ガスホルダ65から供給された水性ガスを、0.9MpaGに加圧して、加圧吸着方式(PSA)によって、水素(H2)が純度99.999%以上となるように製造される。要するに、水性ガスに含まれる一酸化炭素ガス、二酸化炭索ガス等の成分を除去することで純度が高い水素ガスに製造する。
【0097】
水素製造システム1によって製造された水素(H2)は、圧縮機81によって90Mpaまで圧縮されて、蓄圧器82に充填される。そして、燃料電池自動車FCVに水素を供給する際には、充填機であるディスペンサ83に燃料電池自動車FCVを接続してタンクへの充填が行われる。ディスペンサ83を使用すれば、流量や圧力を制御しながら水素ガスを燃料電池自動車FCVに供給することができる。
【0098】
一方、家庭用燃料、家庭用燃料電池コージェネレーションシステム半導体製造工程、各工場の燃料、電力会社など、バイオマス水素供給システムと配管にて接続し供給するか別の場所で水素ガスを使用する場合は、ボンベ用の充填装置84を介して蓄圧器82の水素をボンベHGBやカードルやローリなどに充填する。
【0099】
制御装置90は、水素製造システム1の運転開始から停止までの全期間に亘り、一連の処理を自動的に実行する。具体的には、制御装置90により、バイオマスが投入される破砕部210から水素が供給される水素供給設備8に至るまでの経路上に設けられる各構成要素による処理が自動化される。なお、制御装置90による制御としては、分散制御システム(DCS:Distributed Control System)が挙げられる。なお、
図3及び
図4において、一部の分散制御システムの図示は一部省略している。
【0100】
具体的には、制御装置90は、破砕部210に供給されたバイオマスを自動的に破砕するように、破砕部210に設けられた撹拌棒211及び粉砕機212をモータにより制御する。また、制御装置90は、選別部220の磁束密度を制御することにより、バイオマスから金属成分を選別する。
【0101】
また、制御装置90は、亜臨界処理部230の温度及び圧力が一定の値となるよう制御する。具体的には、制御装置90は、水素製造システム1のプロセスボイラ43で発生した蒸気を回収し、亜臨界処理部230に供給するよう制御する。また、制御装置90は、亜臨界処理部230で生成されたスラリーが保持部240において一定期間保持されるように、保持部240からスラリーが供給されるタイミングを制御する。
【0102】
また、制御装置90は、分離部250において遠心分離によりスラリーの含水率が90重量%から40重量%程度にまで減少するように制御するとともに洗浄水の供給を制御する。また、制御装置90は、ペレット製造部260において固形成分の供給を制御する。
【0103】
また、制御装置90は、含水計281からのデータを基準に、ペレットの含水率が15重量%以下に減少するように乾燥部270の乾燥数をインバーター制御にて調整し滞留時間を変動させ制御する。制御装置90は、供給部280を含む水素製造システム1における搬送経路上に設けられたモータを制御することにより、スラリー、ペレット等のバイオマスの供給を制御する。
【0104】
また、制御装置90は、制御信号を各構成要素に出力し、水素製造システム1の全体制御を行う。例えば、制御装置90は、炭化炉3から熱分解炉5へとペレットが供給されるようにコンベアを制御する。制御装置90は、過熱蒸気発生装置4によって生成された過熱蒸気を熱分解炉5へと供給させる。制御装置90は、熱分解炉5において、供給された炭化物の反応率を80重量%から85重量%の範囲内となるように制御する。
【0105】
更に制御装置90は、熱分解炉5からマルチサイクロン11へと水性ガスを送出させる。マルチサイクロン11において、制御装置90は水性ガスに含まれる残渣を遠心分離し、分離された未反応炭は、減温器12を経てリサイクルホッパ13又は余剰ホッパ14に供給させる。制御装置90は、マルチサイクロン11において回収された水性ガスをCO改質器61に送出させ、CO改質器61で改質された水性ガスを水性ガス洗浄塔62へと送出させる。即ち、制御装置90により水素製造の各工程が連続的かつ自動的に実行される。
【0106】
このように構成された亜臨界システム2は、バイオマスを連続亜臨界処理しペレットに加工処理するものであり、供給されたバイオマスを破砕する破砕部210と、破砕部210により破砕され金属や非鉄金属の成分が除去されたバイオマスを撹拌し、亜臨界状態の水蒸気によりスラリーを生成する亜臨界処理部230と、亜臨界処理部230で生成されたスラリーから脱塩し、水分を分離させて固形成分を生成する分離部250と、分離部250で生成された固形成分からペレットを製造するペレット製造部260と、ペレット製造部260で製造されたペレットを乾燥する乾燥部270と、破砕部210、亜臨界処理部230、分離部250、ペレット製造部260及び乾燥部270の動作を制御する亜臨界制御部290とを備えている。即ち、亜臨界システム2を構成する各構成要素が亜臨界制御部290により制御されるため、原料投入からペレット供給までの一連の工程を連続的かつ自動的に効率よく行うことができる。
【0107】
また、亜臨界処理部230は、円筒状の胴体部231と、胴体部231の上下方向における両端に設けられた縦横比2:1の楕円形又は半球状のドーム部232とを有している。このような構成により、例えば単に球状に形成されている場合と比較して、亜臨界処理部230の収容量を増加させることができる。
【0108】
また、亜臨界処理部230で使用される亜臨界状態の水蒸気は、温度が200~230℃で、圧力が2.0Mpa~3.0Mpaである。このため、連続的に処理が行われる水素製造システム1において水性ガスの生成効率を向上させることができる。
【0109】
また、分離部250が固形成分から塩分を除去するための洗浄水を供給する洗浄水供給部251を備えている。このため、製造されたペレットが塩分を除去するための洗浄水で洗浄されるため、実質的に塩分を含まない炭化物を得ることができる。
【0110】
また、水素製造システム1では、亜臨界システム2の各構成要素及び炭化炉3、炭化率測定装置31、過熱蒸気発生装置4、熱分解炉5及び水性ガス回収装置6等が、例えば制御装置90からのDCS信号によって制御される。従って、人手により各種の処理を実行する必要が無く、原料供給から水性ガス発生までの一連の工程を連続的かつ自動的に効率よく行うことができる。
【0111】
また、炭化炉3は、ペレットが投入される投入口301aと、ペレットを炭化し収容する収容部301と、炭化物を排出する排出口301bと、炭化物の炭化度を評価する炭化度センサ313と、を有し制御装置90は、収容部301内の雰囲気温度を制御することにより炭化物の炭化度を一定に保つことができる。特に、炭化炉3において、炭化物を収容する収容部301は上下方向に延びる筒状に形成されている。その上で、制御装置90により、炭化度センサ313が評価する炭化度に応じて供給される原料の量に対する炭化物の比率(炭化率)が23重量%~25重量%に制御され、下部領域R1の雰囲気温度が350~400℃、中間領域R2の雰囲気温度950~1050℃、上部領域R3の雰囲気温度が1150~1200℃となるように自動制御される。このため、炭化炉3で生成される炭化物の炭化度を高めることができる。
【0112】
また、水素製造システム1によって生成された水性ガスを用いて発電を行うバイオマス発電システムは、ガス中の可燃ガス(CO、H2)の含有割合によって発熱量が決まる発電機のエンジンを、安定して回転させることができる。また、窒素、硫黄及びタールなどの不純物は炭化炉3で除去されるので、高い発電効率によって安全で効率のよい電力を供給することができる。要するに、バイオマスの有効利用により、省エネルギーと自然環境保護を実行できるうえに、経済性に優れている。
【0113】
さらに、水素製造システム1によって生成された水性ガスを製造して水素を供給するバイオマス水素供給システムであれば、バイオマスを使って水素を製造しながら燃料電池自動車FCVに直接、水素を充填することができるオンサイト型の水素ステーションや、製造場所から別の場所に水素を輸送するオフサイト型の水素ステーションを簡単に実現することができる。
【0114】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1 :水素製造システム
2 :亜臨界システム
210 :破砕部
230 :亜臨界処理部
231 :胴体部
232 :ドーム部
250 :分離部
260 :ペレット製造部
270 :乾燥部
290 :亜臨界制御部
3 :炭化炉
31 :、炭化率測定装置
301 :収容部
301a :投入口
301b :排出口
313 :炭化度センサ(炭化度評価部)
4 :過熱蒸気発生装置
5 :熱分解炉
6 :水性ガス回収装置
7 :ガス発電機(発電装置)
8 :水素供給設備(水素供給装置)
90 :制御装置