(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025138765
(43)【公開日】2025-09-25
(54)【発明の名称】新規な架橋アルギン酸
(51)【国際特許分類】
C08B 37/04 20060101AFI20250917BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20250917BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20250917BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20250917BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20250917BHJP
【FI】
C08B37/04
A61L31/14 300
A61K9/06
A61K47/36
A61L15/28
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025107884
(22)【出願日】2025-06-26
(62)【分割の表示】P 2024220178の分割
【原出願日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2019227866
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000181147
【氏名又は名称】持田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】古迫 正司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 智裕
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新規なアルギン酸誘導体および新規な架橋アルギン酸を提供すること。
【解決手段】式(I)及び式(II)で表わされるアルギン酸誘導体、及び式(I)のアルギン酸誘導体及び式(II)のアルギン酸誘導体を用いてHuisgen反応を行うことで得られる新規な架橋アルギン酸。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基にアミド結合及び2価のリンカー(-L
1-)を介して、環状アルキン基(Akn)が導入された下記式(I)で表わされるアル
ギン酸誘導体、及びアルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基にアミド結合及び2価
のリンカー(-L
2-)を介して、アジド基が導入された下記式(II)で表わされるア
ルギン酸誘導体を用いて架橋反応を施すことにより得られる架橋アルギン酸:
[式(I)で表わされるアルギン酸誘導体]
下記式(I):
【化164】
[式(I)中、(ALG)は、アルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意
のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
1-は、下記表:
【表51-1】
【表51-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーを表わし;
Aknは、下記表:
【表52】
に記載された部分構造式[各式中、破線右側は含まない]からなる群より選択される環状
アルキン基を表わす)で表されるアルギン酸誘導体;
[式(II)で表わされるアルギン酸誘導体]
下記式(II):
【化165】
(式(II)中、(ALG)はアルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意
のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
2-は、下記表:
【表53-1】
【表53-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーを表わす]で表されるアルギン酸誘導体(但し、式(I)で表わされるアルギ
ン酸誘導体において-L
1-が(L1-1)、(L1-2a)、(L1-2b)、(L1
-11)又は(L1-12)の群から選択されるいずれか1つのリンカーである誘導体と
、式(II)で表わされるアルギン酸誘導体において-L
2-が(L2-10)のリンカ
ーである誘導体を用いて架橋反応を施すことにより得られる架橋アルギン酸は除く)。
【請求項2】
アルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基にアミド結合及び2価のリンカー(-L
1-)を介して、環状アルキン基(Akn)が導入された、下記式(I):
【化166】
[式(I)中、(ALG)は、アルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意
のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
1-は、下記表:
【表54-1】
【表54-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーを表わし;
Aknは、下記表:
【表55】
に記載された部分構造式[各式中、破線右側は含まない]からなる群より選択される環状
アルキン基を表わす]で表されるアルギン酸誘導体。
【請求項3】
Akn-L1-NH2基(Akn、及び-L1-は、請求項2に記載の定義と同じであ
る)の導入率が、0.1%~30%である、請求項2に記載の式(I)のアルギン酸誘導
体。
【請求項4】
アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量が、
10万Da~300万Daである、請求項2に記載の式(I)のアルギン酸誘導体。
【請求項5】
アルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基にアミド結合及び2価のリンカー(-L
2-)を介して、アジド基が導入された、下記式(II):
【化167】
[式(II)中、(ALG)は、アルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任
意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
2-は、下記表:
【表56-1】
【表56-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーを表わす]で表されるアルギン酸誘導体。
【請求項6】
N3-L2-NH2基(-L2-は、請求項5中の記載の定義と同じである)の導入率
が、0.1%~30%である、請求項5に記載の式(II)のアルギン酸誘導体。
【請求項7】
アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量が、
10万Da~300万Daである、請求項5に記載の式(II)のアルギン酸誘導体。
【請求項8】
第1のアルギン酸の任意のカルボキシル基と、第2のアルギン酸の任意のカルボキシル
基が、下記式(III-L):
【化168】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-は、アルギン酸の任意のカ
ルボキシル基を介したアミド結合を表わし;
-L
1-は、請求項1中の定義と同じであり;
-L
2-は、請求項1中の定義と同じであり;
Xは、下記表:
【表57-1】
【表57-2】
に記載された部分構造式の群から選択される環状基である(各式中、両端の破線外側は含
まない)]を介して結合した、請求項1に記載の架橋アルギン酸(但し、式(III-L
)において、-L
1-が(L1-1)、(L1-2a)、(L1-2b)、(L1-11
)又は(L1-12)の群から選択されるいずれか1つのリンカーである場合、対応する
-L
2-において、(L2-10)のリンカーは除く)。
【請求項9】
請求項1に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)で表わされる
アルギン酸誘導体とを混合して架橋反応(Huisgen反応)を行うことで、請求項1
に記載の架橋アルギン酸を得ることを含む、架橋アルギン酸を製造する方法。
【請求項10】
請求項1に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)で表わされる
アルギン酸誘導体にHuisgen反応を行うことにより形成される化学架橋が、下記式
(III-L):
【化169】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-、X、-L
1-、並びに-
L
2-は、請求項8中の定義と同じである]の構造である、請求項1に記載の架橋アルギ
ン酸を製造する方法。
【請求項11】
請求項1に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)で表わされる
アルギン酸誘導体を混合したアルギン酸誘導体の混合溶液を、2価金属イオンを含む溶液
中に滴下することで得られる架橋アルギン酸構造体。
【請求項12】
架橋としてHuisgen反応により形成されるトリアゾール環による化学架橋、及び
2価金属イオンにより部分的に形成されるイオン架橋を含む、請求項11に記載の架橋ア
ルギン酸構造体。
【請求項13】
請求項1に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)で表わされる
アルギン酸誘導体を2価金属イオンによるイオン架橋及びHuisgen反応による化学
架橋して得られる、内容物の保持性を有する架橋アルギン酸構造体。
【請求項14】
請求項1に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)で表わされる
アルギン酸誘導体を用いて、Huisgen反応を行うことにより形成される化学架橋が
、下記式(III-L):
【化170】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-、X、-L
1-、並びに-
L
2-は、請求項8中の定義と同じである]の構造である、請求項11ないし13のいず
れか1項に記載の架橋アルギン酸構造体。
【請求項15】
請求項1に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)で表わされる
アルギン酸誘導体を混合したアルギン酸誘導体の混合溶液を、2価金属イオンを含む溶液
中に滴下して、架橋反応を施すことにより得られる、架橋アルギン酸構造体を製造する方
法。
【請求項16】
架橋としてHuisgen反応により形成されるトリアゾール環による化学架橋、及び
2価金属イオンにより部分的に形成されるイオン架橋を含む、請求項15に記載の架橋ア
ルギン酸構造体を製造する方法。
【請求項17】
請求項1に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)で表わされる
アルギン酸誘導体を用いて、Huisgen反応を行うことにより形成される化学架橋が
、下記式(III-L):
【化171】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-、X、-L
1-、並びに-
L
2-は、請求項8中の定義と同じである]の構造である、請求項15又は16に記載の
架橋アルギン酸構造体を製造する方法。
【請求項18】
ビーズ又は略球形のゲルである、請求項11ないし14のいずれか1項に記載の架橋ア
ルギン酸構造体。
【請求項19】
請求項11ないし14のいずれか1項に記載の架橋アルギン酸構造体を含む医療用材料
。
【請求項20】
ビーズ又は略球形のゲルである、請求項19に記載の医療用材料。
【請求項21】
生体適合性がある、請求項1に記載の架橋アルギン酸、請求項2又は請求項5に記載の
アルギン酸誘導体、又は請求項11ないし14のいずれか1項に記載の架橋アルギン酸構
造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアルギン酸誘導体、新規な架橋アルギン酸、新規な架橋アルギン酸構
造体、及びそれらの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸は、レッソニア、マクロシスティス、ラミナリア、アスコフィラム、ダービ
リア、カジメ、アラメ、コンブ等の天然の褐藻類の細胞壁から抽出される高分子酸性多糖
分子であり、β-D-マンヌロン酸(M成分)とそのC‐5エピマーであるα-L-グル
ロン酸(G成分)の2種類のウロン酸が1-4結合した直鎖状のヘテロポリマーである。
具体的に、その化学構造は、マンヌロン酸のホモポリマーブロック(MM)、グルロン酸
のホモポリマーブロック(GG)、及びマンヌロン酸とグルロン酸がランダムに配列した
ブロック(MG)が任意の順列及び割合で複雑に結合したブロック共重合体である。アル
ギン酸は、医療、バイオテクノロジー、化粧品、繊維、製紙、食品、等の分野において幅
広く利用されている。
【0003】
アルギン酸の1価塩のアルギン酸アルカリ金属塩類(例えば、アルギン酸ナトリウム、
等)は水溶性であるが、2価塩のアルギン酸アルカリ土類金属塩類(例えば、アルギン酸
カルシウム、等)は、金属イオンにより架橋されゲル化(不溶化)する性質を有しており
、その性質を利用して各種用途に適したものに改変又は成形する試みが行われている。
【0004】
多糖類(例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、等)の各種材料へ
の改変又は成形の可能性及びその物性(例えば、強度、膨潤性、等)の改良を探るべく、
例えば、共有結合により架橋した架橋多糖に関する研究等が、これ迄に種々行われている
。
【0005】
架橋多糖を得る方法として、具体的には、(1)ホルムアルデヒド等のアルデヒド架橋
剤を用いる架橋法(特許文献1:国際公開第2011/028031号パンフレット)、
(2)多糖中のカルボキシ基及び水酸基による自己架橋法(特許文献2:国際公開第89
/10941号パンフレット)、(3)ホモ二官能性架橋剤(ジエポキシド、ジビニルス
ルホン、ジアミン、又はジヒドラジド等)又はヘテロ二官能性架橋剤(エピハロヒドリン
等)を用いる架橋法(特許文献3:国際公開第2009/073437号パンフレット)
が知られている。
【0006】
又、(4)光反応性基(ケイ皮酸、置換ケイ皮酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸
、フリルアクリル酸、チオフェンアクリル酸、シンナミリデン酢酸、ソルビン酸、チミン
、又はクマリン、等)を導入した後に光照射することによる架橋法(特許文献4、5:国
際公開第2005/026214号パンフレット、特開平9-87236号公報)、及び
(5)チオール基が導入された多糖同士をジスルフィド結合で架橋する架橋法及びチオー
ル基が導入された多糖類及びマレイミド基が導入された多糖類と用いてマイケル付加反応
させることによる架橋法(特許文献6:国際公開第2008/071058号パンフレッ
ト)、等が知られている。
【0007】
更に、多糖類を共有結合により架橋する方法として、(6)アルキン基が導入された多
糖類及びアジド基が導入された多糖類と用いてHuisgen反応(1,3-双極子付加
環化反応)させることによる架橋法が知られている。
【0008】
多糖類をHuisgen反応で架橋させた架橋多糖が、(i)国際公開第2008/0
31525号パンフレット(特許文献7)、(ii)国際公開第2012/165462
号パンフレット(特許文献8)、(iii)国際公開第2015/020206号パンフ
レット(特許文献9)、(iv)中国特許出願公開第106140040号明細書(特許
文献10)、及び(v)国際公開第2019/240219号パンフレット(特許文献1
3)、等に開示されている。
【0009】
しかし、(i)特許文献7は、第1の多糖をヒアルロン酸、第2の多糖をコンドロイチ
ン、硫酸化デルマタン、アルギン酸又はその塩、等から選ばれる多糖として、各多糖にリ
ンカーを介して導入された鎖状のアルキン基及びアジド基を、銅触媒存在下にHuisg
en反応させることで得られた架橋多糖に関するものであり、後述の新規な架橋アルギン
酸は開示されていない。
【0010】
又、(ii)特許文献8は、第1の多糖及び第2の多糖をヒアルロン酸、カルボキシメ
チルデキストラン、セルロース誘導体、及びキトサンから選ばれる多糖(第1の多糖及び
第2の多糖が同種であっても異種であっても良い)として、各多糖にリンカー(多糖とリ
ンカーはエステル結合である)を介して導入された環状アルキン基及びアジド基をHui
sgen反応させることで得られた架橋多糖に関するものであるが、後述の新規な架橋ア
ルギン酸は開示されていない。
【0011】
又、(iii)特許文献9は、第1の多糖をヒアルロン酸、第2の多糖をコンドロイチ
ン硫酸として、各多糖にリンカーを介して導入された環状アルキン基及びアジド基をHu
isgen反応させることで得られた架橋多糖に関するものであるが、後述の新規な架橋
アルギン酸は開示されていない。
【0012】
又、(iv)特許文献10は、第1の多糖をキトサン、第2の多糖をアルギン酸ナトリ
ウムとして、各多糖にリンカー(多糖とリンカーはエステル結合である)を介して導入さ
れた環状アルキン基及びアジド基をHuisgen反応させることで得られた架橋多糖に
関するものであるが、後述の新規な架橋アルギン酸は開示されていない。
【0013】
又、国際公開第2016/019391号パンフレット(特許文献11)及び国際公開
第2017/165389号パンフレット(特許文献12)には、側鎖にアジド基が導入
されたアルギン酸が記載されているが、側鎖にアルキン基が導入されたアルギン酸とから
形成される架橋アルギン酸構造体は開示されていないし、その使用目的も本願発明とは異
なる。
【0014】
更に、非特許文献1は、側鎖にシクロオクチン側鎖が導入された分岐型アルギン酸(bA
lg-DBCO)が記載されているが、アルギン酸と分岐型ポリエチレングリコール(4-arm PEG
-NH2)から合成した分岐型アルギン酸(Branched alginic acid:bAlg)に、アミノ化シ
クロオクチン(DBCO-PEG-amine)を反応させて得られたものであり、後述の新規なアルギ
ン酸誘導体と構造が異なり、その使用目的も異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2011/028031号パンフレット
【特許文献2】国際公開第89/10941号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2009/073437号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2005/026214号パンフレット
【特許文献5】特開平9-87236号公報
【特許文献6】国際公開第2008/071058号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2008/031525号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2012/165462号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2015/020206号パンフレット
【特許文献10】中国特許出願公開第106140040号明細書
【特許文献11】国際公開第2016/019391号パンフレット
【特許文献12】国際公開第2017/165389号パンフレット
【特許文献13】国際公開第2019/240219号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Nat Commun.9(1),p2195-,2018年.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前記の状況において、新規なアルギン酸誘導体、当該新規なアルギン酸誘導体から形成
される新規な架橋アルギン酸、架橋アルギン酸構造体、及びそれらの製造方法が求められ
ていた。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、式(I)又は式(I
I)で表わされる新規なアルギン酸誘導体を各々見出した。更に、式(I)及び式(II
)の新規なアルギン酸誘導体をHuisgen反応に付すことで得られる新規な架橋アル
ギン酸を用いて、架橋アルギン酸構造体の1つであるビーズ(色素含有ビーズ)を成形し
たところ、当該ビーズが高い安定性有すること、又、従来のゲルと比較して目的に応じた
透過率を有するゲルに調整できること、等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
ここで提供される新規なアルギン酸誘導体(式(I)及び式(II))は、例えば、化
学架橋形成に使用することができるものであり、即ち、化学架橋形成に用いることができ
る反応性基又は当該反応性基の相補的な反応性基が導入されたものである。
【0020】
前記化学架橋形成は、例えば、Huisgen反応(1,3-双極子付加環化反応)に
よる架橋反応にて行われ、例えば、式(I)及び式(II)のアルギン酸誘導体間で行わ
れても良く、又は、例えば、式(I)のアルギン酸誘導体とアジド基を有する他の分子間
で行われても良く、又は、式(II)のアルギン酸誘導体とアルキン基を有する他の分子
間で行われても良い。
【0021】
末端アルキン基及び末端アジド基によるHuisgen反応は、一般に100℃ 以上
の加熱を必要とするため、生体分子の化学修飾に本反応を用いることは適していなかった
。しかし、当該反応において銅触媒(例えば、Cu(I))を共存させることにより、室
温にてほぼ100%の収率で環化付加体(トリアゾール環)が形成される反応条件が見出
され(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,41,p2596-2599
,2002年;J.Org.Chem.,67,p3057-3064,2002年)、
生体分子の化学修飾へ利用することが可能となった。一方、前記銅触媒存在下のHuis
gen反応にて架橋アルギン酸を得ようとする場合、当該架橋アルギン酸中に微量の銅触
媒が残存する可能性があり、架橋アルギン酸若しくは架橋アルギン酸構造体において銅由
来の細胞毒性が発現する懸念が生じる。
【0022】
好ましい態様では、架橋アルギン酸において銅由来の細胞毒性の発現回避の為に、銅触
媒不要のHuisgen反応を利用して、架橋アルギン酸を得る。具体的には、アルギン
酸誘導体に導入されるアルキン基にシクロオクチン誘導体(高歪みの環状アルキン基)を
用いることで、100℃以上の高温条件並びに銅触媒を必要とせず、反応させることがで
きた。従って、好ましい態様の新規な架橋アルギン酸は、銅触媒が含有されていないこと
から、最終形体物(架橋アルギン酸構造体)へ成形した場合でも、銅由来の毒性が発現す
ることがないという観点においても優れている。
【0023】
ここでは、以下の態様に示されるアルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基に、ア
ミド結合及び2価のリンカーを介して環状アルキン基又はアジド基が導入された式(I)
又は式(II)のアルギン酸誘導体、式(I)及び式(II)のアルギン酸誘導体用いて
Huisgen反応(1,3-双極子付加環化反応)を行うことで得られる新規な架橋ア
ルギン酸、架橋アルギン酸構造体、並びに前記各アルギン酸誘導体、架橋アルギン酸、及
び架橋アルギン酸構造体の製造方法が提供される。すなわち、例示的な態様は、以下の〔
1〕~〔23〕の通りであり得る。
【0024】
〔1〕アルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基にアミド結合及び2価のリンカー(
-L
1-)を介して、環状アルキン基(Akn)が導入された下記式(I):
【化1】
[式(I)中、Akn、-L
1-、-NHCO-及び(ALG)は、後述する第1の態様
中の定義と同じである]で表わされるアルギン酸誘導体、及びアルギン酸の任意の1つ以
上のカルボキシル基にアミド結合及び2価のリンカー(-L
2-)を介して、アジド基が
導入された下記式(II):
【化2】
[式(II)中、-L
2-、-NHCO-及び(ALG)は、後述する第1の態様中の定
義と同じである]で表わされるアルギン酸誘導体を用いて架橋反応を施すことにより得ら
れる架橋アルギン酸。
【0025】
〔1-Ia〕Akn-L1-NH2基(Akn、及び-L1-は、後述する第1の態様中
の定義と同じである)の導入率が、0.1%~30%である、前記〔1〕に記載の式(I
)で表わされるアルギン酸誘導体。
【0026】
〔1-Ib〕アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平均
分子量が、10万Da~300万Daである、前記〔1〕に記載の式(I)で表わされる
アルギン酸誘導体。
【0027】
〔1-IIa〕N3-L2-NH2基(-L2-は、後述する第1の態様中の定義と同じ
である)の導入率が、0.1%~30%である、前記〔1〕に記載の式(II)で表わさ
れるアルギン酸誘導体。
【0028】
〔1-IIb〕アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平
均分子量が、10万Da~300万Daである、前記〔1〕に記載の式(II)で表わさ
れるアルギン酸誘導体。
【0029】
〔2〕アルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基にアミド結合及び2価のリンカー(
-L
1-)を介して、環状アルキン基(Akn)が導入された、下記式(I):
【化3】
[式(I)中、(ALG)、-L
1-、Aknの定義は、後述する第2の態様中の定義と
同じである]で表されるアルギン酸誘導体。
【0030】
〔3〕Akn-L1-NH2基(Akn、及び-L1-は、後述する第3の態様中の定義
と同じである)の導入率が、0.1%~30%である、前記〔2〕に記載の式(I)で表
わされるアルギン酸誘導体。
【0031】
〔4〕アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量
が、10万Da~300万Daである、前記〔2〕に記載の式(I)で表わされるアルギ
ン酸誘導体。
【0032】
〔5〕アルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基にアミド結合及び2価のリンカー(
-L
2-)を介して、アジド基が導入された、下記式(II):
【化4】
[式(II)中、(ALG)、-L
2-の定義は、後述する第5の態様中の定義と同じで
ある]で表されるアルギン酸誘導体。
【0033】
〔6〕N3-L2-NH2基(-L2-は、後述する第6の態様中の定義と同じである)
の導入率が、0.1%~30%である、前記〔5〕に記載の式(II)で表わされるアル
ギン酸誘導体。
【0034】
〔7〕アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量
が、10万Da~300万Daである、前記〔5〕に記載の式(II)で表わされるアル
ギン酸誘導体。
【0035】
〔8〕第1のアルギン酸の任意のカルボキシル基と、第2のアルギン酸の任意のカルボキ
シル基が、下記式(III-L):
【化5】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-は、アルギン酸の任意のカ
ルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
1-、-L
2-、及びXは、後述する第
8の態様中の定義と同じである]を介して結合した、前記〔1〕に記載の架橋アルギン酸
。
【0036】
〔8a〕第1のアルギン酸の任意のカルボキシル基と、第2のアルギン酸の任意のカルボ
キシル基が、下記式(III-L):
【化6】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-は、アルギン酸の任意のカ
ルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
1-、-L
2-、及びXは、後述する第
8aの態様中の定義と同じである]を介して結合した架橋アルギン酸。
【0037】
〔8-1〕架橋としてHuisgen反応により形成されるトリアゾール環による化学架
橋、及び2価金属イオンにより部分的に形成されるイオン架橋を含む、前記〔1〕又は〔
8a〕に記載の架橋アルギン酸。
〔8-2〕架橋としてHuisgen反応により形成されるトリアゾール環による化学架
橋を含む、前記〔1〕又は〔8a〕に記載の架橋アルギン酸。
【0038】
〔8-3-1〕前記〔8-1〕において、2価金属イオンは、カルシウムイオン、マグネ
シウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン、及び亜鉛イオンからなる群から
選択されるイオンである。
【0039】
〔8-3-2〕前記〔8-1〕において、2価金属イオンの供給源としては、塩化カルシ
ウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、グルコン酸カルシウム水溶液、塩化バリウム水溶液
、等からなる群から選択される水溶液である。
【0040】
〔9〕前記〔1〕に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)で表わ
されるアルギン酸誘導体とを混合して架橋反応(Huisgen反応)を行うことで、前
記〔1〕又は〔8a〕に記載の架橋アルギン酸を得ることを含む、架橋アルギン酸を製造
する方法。
【0041】
〔9-1〕前記〔1〕に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液を、前記〔
1〕に記載の式(II)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液に加えて架橋反応(Hui
sgen反応)を行うことで、前記〔1〕又は〔8a〕に記載の架橋アルギン酸を得るこ
とを含む、架橋アルギン酸を製造する方法。
【0042】
〔9-2〕前記〔1〕に記載の式(II)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液を、前記
〔1〕に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液に加えて架橋反応(Hui
sgen反応)を行うことで、前記〔1〕又は〔8a〕に記載の架橋アルギン酸を得るこ
とを含む、架橋アルギン酸を製造する方法。
【0043】
〔10〕前記〔1〕に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)で表
わされるアルギン酸誘導体を用いてHuisgen反応(架橋反応)を行うことにより形
成される化学架橋が、下記式(III-L):
【化7】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-、-L
1-、並びに-L
2
-は、後述する第10の態様中の定義と同じである]の構造である、前記〔1〕又は〔8
a〕に記載の架橋アルギン酸を得ることを含む、架橋アルギン酸を製造する方法。
【0044】
〔11〕前記〔1〕に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)で表
わされるアルギン酸誘導体を混合したアルギン酸誘導体の混合溶液を、2価金属イオンを
含む溶液中に滴下することで得られる架橋アルギン酸構造体。
【0045】
〔11-1〕前記〔1〕に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液を、2価
金属イオンを含む溶液中に滴下して得られるゲルを、前記〔1〕に記載の式(II)で表
わされるアルギン酸誘導体の溶液に加えて架橋反応を施すことにより得られる、架橋アル
ギン酸構造体。
【0046】
〔11-2〕前記〔1〕に記載の式(II)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液を、2
価金属イオンを含む溶液中に滴下して得られるゲルを、前記〔1〕に記載の式(I)で表
わされるアルギン酸誘導体の溶液に加えて架橋反応を施すことにより得られる、架橋アル
ギン酸構造体。
【0047】
〔12-1〕架橋としてHuisgen反応により形成されるトリアゾール環による化学
架橋、及び2価金属イオンにより部分的に形成されるイオン架橋を含む、前記〔11〕~
〔11-2〕のいずれか1項に記載の架橋アルギン酸構造体。
【0048】
〔12-2〕架橋としてHuisgen反応により形成されるトリアゾール環による化学
架橋を含む、前記〔11〕~〔11-2〕のいずれか1項に記載の架橋アルギン酸構造体
。
【0049】
〔12-3-1〕前記〔12-1〕において、2価金属イオンは、カルシウムイオン、マ
グネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン、及び亜鉛イオンからなる群
から選択されるイオンである。
【0050】
〔12-3-2〕前記〔12-1〕において、2価金属イオンの供給源としては、塩化カ
ルシウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、グルコン酸カルシウム水溶液、塩化バリウム水
溶液、等からなる群から選択される水溶液である。
【0051】
〔13-1〕前記〔1〕に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)
で表わされるアルギン酸誘導体を2価金属イオンによるイオン架橋及びHuisgen反
応による化学架橋して得られる、内容物の保持性を有する架橋アルギン酸構造体。
【0052】
〔13-2〕前記〔1〕に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)
で表わされるアルギン酸誘導体をHuisgen反応による化学架橋して得られる、内容
物の保持性を有する架橋アルギン酸構造体。
【0053】
〔13-3-1〕前記〔13-1〕において、2価金属イオンは、カルシウムイオン、マ
グネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン、及び亜鉛イオンからなる群
から選択されるイオンである。
【0054】
〔13-3-2〕前記〔13-1〕において、2価金属イオンの供給源としては、塩化カ
ルシウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、グルコン酸カルシウム水溶液、塩化バリウム水
溶液、等からなる群から選択される水溶液である。
【0055】
〔14〕前記〔1〕に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)で表
わされるアルギン酸誘導体を用いて、Huisgen反応を行うことにより形成される化
学架橋が、下記式(III-L):
【化8】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-、-L
1-、並びに-L
2
-は、後述する第14の態様中の定義と同じである]の構造である、前記〔11〕ないし
〔13-2〕に記載の架橋アルギン酸構造体。
【0056】
〔15〕前記〔1〕に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)で表
わされるアルギン酸誘導体を混合したアルギン酸誘導体の混合溶液を、2価金属イオンを
含む溶液中に滴下して、架橋反応を施すことにより得られる、架橋アルギン酸構造体を製
造する方法。
【0057】
〔15-1〕前記〔1〕に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液を、2価
金属イオンを含む溶液中に滴下して得られるゲルを、前記〔1〕に記載の式(II)で表
わされるアルギン酸誘導体の溶液に加えて架橋反応を施すことにより得られる、架橋アル
ギン酸構造体を製造する方法。
【0058】
〔15-2〕前記〔1〕に記載の式(II)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液を、2
価金属イオンを含む溶液中に滴下して得られるゲルを、前記〔1〕に記載の式(I)で表
わされるアルギン酸誘導体の溶液に加えて架橋反応を施すことにより得られる、架橋アル
ギン酸構造体を製造する方法。
【0059】
〔16-1〕架橋としてHuisgen反応により形成されるトリアゾール環による化学
架橋、及び2価金属イオンにより部分的に形成されるイオン架橋を含む、前記〔15〕~
〔15-2〕のいずれか1項に記載の架橋アルギン酸構造体を製造する方法。
【0060】
〔16-2〕架橋としてHuisgen反応により形成されるトリアゾール環による化学
架橋を含む、前記〔15〕~〔15-2〕のいずれか1項に記載の架橋アルギン酸構造体
を製造する方法。
【0061】
〔16-3-1〕前記〔16-1〕において、2価金属イオンは、カルシウムイオン、マ
グネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン、及び亜鉛イオンからなる群
から選択されるイオンである。
【0062】
〔16-3-2〕前記〔16-1〕において、2価金属イオンの供給源としては、塩化カ
ルシウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、グルコン酸カルシウム水溶液、塩化バリウム水
溶液、等からなる群から選択される水溶液である。
【0063】
〔17〕前記〔1〕のいずれか1項に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び
式(II)で表わされるアルギン酸誘導体を用いて、Huisgen反応を行うことによ
り形成される化学架橋が、下記式(III-L):
【化9】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-、-L
1-、並びに-L
2
-は、後述する第17の態様中の定義と同じである]の構造である、前記〔15〕~〔1
6-2〕のいずれか1項に記載の架橋アルギン酸構造体を製造する方法。
【0064】
〔18〕ビーズ又は略球形のゲルである、前記〔11〕~〔14〕のいずれか1項に記載
の架橋アルギン酸構造体。
【0065】
〔19〕前記〔11〕~〔14〕のいずれか1項に記載の架橋アルギン酸構造体を含む医
療用材料。
【0066】
〔20〕ビーズ又は略球形のゲルである、前記〔19〕に記載の医療用材料。
【0067】
〔21〕生体適合性がある、前記〔1〕又は〔8a〕に記載の架橋アルギン酸、前記〔2
〕又は前記〔5〕に記載のアルギン酸誘導体、又は前記〔11〕~〔14〕のいずれか1
項に記載の架橋アルギン酸構造体。
【0068】
〔22〕下記式(AM-1):
【化10】
[式(AM-1)中、-L
1-、及びAknの定義は、後述する第22の態様中の定義と
同じである]で表されるアミノ化合物、又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの
溶媒和物。
【0069】
〔23〕下記式(AM-2):
【化11】
[式(II)中、-L
2-の定義は、後述する第23の態様中の-L
2-の定義から選択
される]で表されるアミノ化合物、又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒
和物。
【発明の効果】
【0070】
本発明は、例えば化学架橋形成に使用することができる新規なアルギン酸誘導体、新規
な架橋アルギン酸、新規な架橋アルギン酸構造体などを提供する。
好ましくは、アルギン酸誘導体は、生体にない反応基を導入したもので、未反応の基が
残っていても、細胞等の生体成分との架橋反応が進行する恐れがない生体生物にとって、
安全性が期待されるものである。また、好ましくは、架橋反応は、金属触媒を用いること
なく、常温で反応が完結するため、安全で容易に使用することができる。
いくつかの態様の架橋アルギン酸は、Huisgen反応(1,3-双極子付加環化反
応)にて化学架橋されたものである。架橋は、化学架橋と2価金属金イオン(例えば、カ
ルシウムイオン)を利用したイオン架橋とを組み合わせて用いることができ、反応条件を
調整することにより、好ましくはその安定性が非架橋アルギン酸又は非化学架橋アルギン
酸(例えば、カルシウムイオン架橋された架橋アルギン酸)と比較して改善したものであ
る。また、好ましくは、架橋体のゲル物性を調整することができ、物質透過性を調整する
こともできる。本発明は、少なくともこれらの効果の1つ以上を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】架橋アルギン酸構造体のゲルの安定性の評価を示す図である。
【
図2】架橋アルギン酸構造体のEDTA下のゲルの安定性の評価を示す図である。
【
図3】架橋アルギン酸構造体のゲルの安定性の評価を示す図である。
【
図4】架橋アルギン酸構造体のEDTA下のゲルの安定性の評価を示す図である。
【
図5】架橋アルギン酸構造体のゲルの安定性の評価を示す図である。
【
図6】架橋アルギン酸構造体のEDTA下のゲルの安定性の評価を示す図である。
【
図7】架橋アルギン酸構造体のゲルの透過率の評価を示す図である。
【
図8】架橋アルギン酸構造体のゲルの透過率の評価を示す図である。
【
図9】架橋アルギン酸誘導体のゲルの生体適合性評価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
[具体的な態様]
以下の態様[1]~[23]が含まれうる。
[1]第1の態様は、次の通りである。アルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基に
アミド結合及び2価のリンカー(-L1-)を介して、環状アルキン基(Akn)が導入
された下記式(I)で表わされるアルギン酸誘導体、及びアルギン酸の任意の1つ以上の
カルボキシル基にアミド結合及び2価のリンカー(-L2-)を介して、アジド基が導入
された下記式(II)で表わされるアルギン酸誘導体を用いて架橋反応を施すことにより
得られる架橋アルギン酸。
【0073】
[式(I)で表わされるアルギン酸誘導体]
下記式(I):
【化12】
[式(I)中、(ALG)は、アルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意
のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
1-は、下記表:
【表1-1】
【表1-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーを表わし;
Aknは、下記表:
【表2】
に記載された部分構造式[各式中、破線右側は含まない]からなる群より選択される環状
アルキン基表わす]で表されるアルギン酸誘導体。
【0074】
[式(II)で表わされるアルギン酸誘導体]
下記式(II):
【化13】
(式(II)中、(ALG)はアルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意
のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
2-は、下記表:
【表3-1】
【表3-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーを表わす]で表されるアルギン酸誘導体(但し、式(I)で表わされるアルギ
ン酸誘導体において、-L
1-が(L1-1)、(L1-2a)、(L1-2b)、(L
1-11)又は(L1-12)の群から選択されるいずれか1つのリンカーである誘導体
と、式(II)で表わされるアルギン酸誘導体において、-L
2-が(L2-10)のリ
ンカーである誘導体を用いて架橋反応を施すことにより得られる架橋アルギン酸は除く)
。
【0075】
[1-1-1]前記態様[1]の式(I)において、-L
1-は、好ましくは、下記表:
【表4-1】
【表4-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーである(但し、架橋反応を施す際に、-L
2-が(L2-10)、(L2-1
0-p1)、(L2-10-p2)又は(L2-10-X)の群から選択されるいずれか
1つでのリンカーを有する式(II)で表されるアルギン酸誘導体を用いる場合には、前
記表中の-L
1-の内、(L1-1)、(L1-2a)、(L1-2b)、(L1-11
)及び(L1-12-p1)であるリンカーは、好ましい態様から除く)。
【0076】
[1-1-2]前記態様[1]の式(I)において、-L
1-は、より好ましくは、下記
表:
【表5-1】
【表5-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーである(但し、架橋反応を施す際に、-L
2-が(L2-10)、(L2-1
0-p1)、(L2-10-p2)又は(L2-10-X)の群から選択されるいずれか
1つでのリンカーを有する式(II)で表されるアルギン酸誘導体を用いる場合には、前
記表中の-L
1-の内、(L1-1-1)、(L1-2a-1)、(L1-2b-1)、
(L1-11-1)及び(L1-12-p2)であるリンカーは、より好ましい態様から
除く)。
【0077】
[1-1-3]前記態様[1]の式(I)において、-L
1-は、更に好ましくは、下記
表:
【表6-1】
【表6-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーである(但し、架橋反応を施す際に、-L
2-が(L2-10)、(L2-1
0-p1)、(L2-10-p2)又は(L2-10-X)の群から選択されるいずれか
1つでのリンカーを有する式(II)で表されるアルギン酸誘導体を用いる場合には、前
記表中の-L
1-の内、(L1-1-X)、(L1-2-X)、(L1-11-X)及び
(L1-12-X)であるリンカーは、更に好ましい態様から除く)。
【0078】
[1-2-1]前記態様[1]の式(I)において、Aknは、好ましくは、下記表:
【表7】
に記載された部分構造式[各式中、破線右側は含まない]からなる群より選択される環状
アルキン基である。
【0079】
[1-2-2]前記態様[1]の式(I)において、Aknは、より好ましくは、下記表
:
【表8】
に記載された部分構造式[各式中、破線右側は含まない]からなる群より選択される環状
アルキン基である。
【0080】
[1-2-3]前記態様[1]の式(I)において、Aknは、更に好ましくは、下記表
:
【表9】
に記載された部分構造式[各式中、破線右側は含まない]からなる群より選択される環状
アルキン基である。
【0081】
[1-3-1]前記態様[1]の式(II)において、-L
2-は、好ましくは、下記表
:
【表10】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーである(但し、架橋反応を施す際に、-L
1-が(L1-1)、(L1-2a
)、(L1-2b)、(L1-11)、(L1-12)、(L1-1-1)、(L1-2
a-1)、(L1-2b-1)、(L1-11-1)、(L1-12-p1)、(L1-
1-X)、(L1-2-X)、(L1-11-X)又は(L1-12-X)の群から選択
されるいずれか1つでのリンカーを有する式(I)で表されるアルギン酸誘導体を用いる
場合には、前記表中の-L
2-の内、(L2-10-p1)のリンカーは、好ましい態様
から除く)。
【0082】
[1-3-2]前記態様[1]の式(II)において、-L
2-は、より好ましくは、下
記表:
【表11】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーである(但し、架橋反応を施す際に、-L
1-が(L1-1)、(L1-2a
)、(L1-2b)、(L1-11)、(L1-12)、(L1-1-1)、(L1-2
a-1)、(L1-2b-1)、(L1-11-1)、(L1-12-p1)、(L1-
1-X)、(L1-2-X)、(L1-11-X)又は(L1-12-X)の群から選択
されるいずれか1つでのリンカーを有する式(I)で表されるアルギン酸誘導体を用いる
場合には、前記表中の-L
2-の内、(L2-10-p2)のリンカーは、より好ましい
態様から除く)。
【0083】
[1-3-3]前記態様[1]の式(II)において、-L
2-は、更に好ましくは、下
記表:
【表12】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーである(但し、架橋反応を施す際に、-L
1-が(L1-1)、(L1-2a
)、(L1-2b)、(L1-11)、(L1-12)、(L1-1-1)、(L1-2
a-1)、(L1-2b-1)、(L1-11-1)、(L1-12-p1)、(L1-
1-X)、(L1-2-X)、(L1-11-X)又は(L1-12-X)の群から選択
されるいずれか1つでのリンカーを有する式(I)で表されるアルギン酸誘導体を用いる
場合には、前記表中の-L
2-の内、(L2-10-X)のリンカーは、更に好ましい態
様から除く)。
【0084】
[1-4-1]前記態様[1]の式(I)において、Akn及び-L
1-の組み合わせは
、好ましくは、下記表の式:
【表13】
の群から選択される部分構造で示される通りである(表中のAkn、-L
1-の各式は前
記態様[1]に記載の通りである)(但し、架橋反応を行う際に、架橋反応を施す際に、
-L
2-が(L2-10)、(L2-10-p1)、(L2-10-p2)又は(L2-
10-X)の群から選択されるいずれか1つでのリンカーを有する式(II)で表される
アルギン酸誘導体を用いる場合には、前記表中の-L
1-の内、(L1-1)、(L1-
2a)、(L1-2b)、(L1-11)及び(L1-12)のリンカーは、好ましい態
様から除く)。
【0085】
[1-4-2]前記態様[1]の式(I)において、Akn及び-L
1-の組み合わせは
、より好ましくは、下記表の式:
【表14】
の群から選択される部分構造で示される通りである(表中のAkn、-L
1-の各式は前
記態様[1-1]に記載の通りである)(但し、架橋反応を施す際に、-L
2-が(L2
-10)、(L2-10-p1)、(L2-10-p2)又は(L2-10-X)の群か
ら選択されるいずれか1つでのリンカーを有する式(II)で表されるアルギン酸誘導体
を用いる場合には、前記表中の-L
1-の内、(L1-1-1)、(L1-2a-1)、
(L1-2b-1)、(L1-11-1)及び(L1-12-p1)のリンカーは、より
好ましい態様から除く)。
【0086】
[1-4-3]前記態様[1]の式(I)において、Akn及び-L
1-の組み合わせは
、更に好ましくは、下記表の式:
【表15】
の群から選択される部分構造で示される通りである(表中のAkn、-L
1-の各式は前
記態様[1-1]に記載の通りである)(但し、架橋反応を施す際に、-L
2-が(L2
-10)、(L2-10-p1)、(L2-10-p2)又は(L2-10-X)の群か
ら選択されるいずれか1つでのリンカーを有する式(II)で表されるアルギン酸誘導体
を用いる場合には、前記表中の-L
1-の内、(L1-1-X)、(L1-2-X)、(
L1-11-X)及び(L1-12-X)のリンカーは、更に好ましい態様から除く)。
【0087】
[1-4-4]前記態様[1]の式(I)において、Akn及び-L
2-の組み合わせは
、特に好ましくは、下記部分構造式:
【化14】
の群から選択される部分構造で示される通りである(但し、架橋反応を施す際に、-L
2
-が(L2-10)、(L2-10-p1)、(L2-10-p2)又は(L2-10-
X)の群から選択されるいずれか1つでのリンカーを有する式(II)で表されるアルギ
ン酸誘導体を用いる場合には、下記部分構造式:
【化15】
の群から選択される部分構造は、特に好ましい態様から除く)。
【0088】
[1-Ia]第1-Iaの態様は、次の通りである。Akn-L1-NH2基(Akn、
及び-L1-は、前記態様[1]中の定義と同じである)の導入率が、約0.1%~約3
0%である、前記態様[1]に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体。
【0089】
[1-Ia-1]前記態様[1―Ia]において、Akn-L1-NH2基の導入率は、
好ましくは、約1.0%~約20%であり;より好ましくは、約2.0~10%である。
【0090】
[1-Ib]第1-Ibの態様は、次の通りである。アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマ
トグラフィー法により測定した重量平均分子量が、約10万Da~約300万Daである
、前記態様[1]に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体。
【0091】
[1-Ib-1]前記態様[1-Ib]において、アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマト
グラフィー法により測定した重量平均分子量が、好ましくは約30万Da~約250万D
aであり、より好ましくは約50万Da~約100万Daである。
【0092】
[1-Ic]第1-Icの態様は、次の通りである。N3-L2-NH2基(-L2-は
、前記態様[1]中の定義と同じである)の導入率が、約0.1%~約30%である、前
記態様[1]に記載の式(II)で表わされるアルギン酸誘導体。
【0093】
[1-Ic-1]前記態様[1-Ic]において、N3-L2-NH2基の導入率は、好
ましくは、約1.0%~約20%であり;より好ましくは、約2.0~10%である。
【0094】
[1-Id]第1-Idの態様は、次の通りである。アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマ
トグラフィー法により測定した重量平均分子量が、約10万Da~約300万Daである
、前記態様[1]に記載の式(II)で表わされるアルギン酸誘導体。
【0095】
[1-Id-1]前記態様[1-Id]において、式(II)のアルギン酸誘導体のゲル
ろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量は、好ましくは約30万Da~
約250万Daであり、より好ましくは約50万Da~約100万Daである。
【0096】
前記態様[1]の好ましい態様、更にはAkn、-L1-及び-L2-の定義を適宜組
み合わせることにより、前記態様[1]の架橋アルギン酸の好ましい態様を任意に形成し
得る。
【0097】
[2]第2の態様は、次の通りである。アルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基に
アミド結合及び2価のリンカー(-L
1-)を介して、環状アルキン基(Akn)が導入
された、下記式(I):
【化16】
[式(I)中、(ALG)は、アルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意
のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
1-は、下記表:
【表16-1】
【表16-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーを表わし;
Aknは、下記表:
【表17】
に記載された部分構造式[各式中、破線右側は含まない]からなる群より選択される環状
アルキン基表わす]で表されるアルギン酸誘導体。
【0098】
[2-1]前記態様[2]の式(I)において、-L
1-は、好ましくは、下記表:
【表18-1】
【表18-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーであり;
より好ましくは、下記表:
【表19-1】
【表19-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーであり;
更に好ましくは、下記表:
【表20-1】
【表20-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーである。
【0099】
[2-2]前記態様[2]の式(I)において、Aknは、好ましくは、下記表:
【表21】
に記載された部分構造式[各式中、破線右側は含まない]からなる群より選択される環状
アルキン基であり;
より好ましくは、下記表
【表22】
に記載された部分構造式[各式中、破線右側は含まない]からなる群より選択される環状
アルキン基であり;
更に好ましくは、下記表:
【表23】
に記載された部分構造式[各式中、破線右側は含まない]からなる群より選択される環状
アルキン基である。
【0100】
[2-3]前記態様[2]の式(I)において、Akn及び-L
1-の組み合わせは、好
ましくは、下記表:
【表24】
の群から選択される部分構造で示される通りであり(表中のAkn、-L
1-の各式は前
記態様[2]に記載の通りである);
より好ましくは、Akn-L
1-の組み合わせは、下表の式:
【表25】
の群から選択される部分構造で示される通りであり(表中のAkn、-L
1-の各式は前
記態様[2-1]及び[2-2]に記載の通りである);
更に好ましくは、Akn-L
1-の組み合わせは、下表の式:
【表26】
の群から選択される部分構造で示される通りであり(表中のAkn、-L
1-の各式は前
記態様[2-1]及び[2-2]に記載の通りである);
特に好ましくは、Akn-L
1-の組み合わせは、下記部分構造式:
【化17】
の群から選択される部分構造で示される通りである。
【0101】
前記態様[2]の好ましい態様、更にはAkn、及び-L1-の定義を適宜組み合わせ
ることにより、前記態様[2]の前記式(I)で表されるアルギン酸誘導体の好ましい態
様を任意に形成し得る。
【0102】
[3]第3の態様は、次の通りである。Akn-L1-NH2基(Akn、及び-L1-
は、前記態様[2]中に記載の定義と同じである)の導入率が、約0.1%~約30%で
ある、前記態様[2]に記載の式(I)のアルギン酸誘導体。
【0103】
[3-1]前記態様[3]において、Akn-L1-NH2基の導入率は、好ましくは、
約1.0%~約20%であり;より好ましくは、約2.0~10%である。
【0104】
[4]第4の態様は、次の通りである。アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー
法により測定した重量平均分子量が、約10万Da~約300万Daである、前記態様[
2]に記載の式(I)のアルギン酸誘導体。
【0105】
[4-1]前記態様[4]において、アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー法
により測定した重量平均分子量が、好ましくは約30万Da~約250万Daであり、よ
り好ましくは約50万Da~約100万Daである。
【0106】
[5]第5の態様は、次の通りである。アルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基に
アミド結合及び2価のリンカー(-L
2-)を介して、アジド基が導入された、下記式(
II):
【化18】
[式(II)中、(ALG)は、アルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任
意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
2-は、下記表:
【表27-1】
【表27-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーを表わす)で表されるアルギン酸誘導体。
【0107】
[5-1]前記態様[5]の前記式(II)のアルギン酸誘導体において、-L
2-は、
好ましくは、下記表:
【表28】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーであり;
より好ましくは、下記表:
【表29】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーであり;
更に好ましくは、下記表:
【表30】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーである。
【0108】
[5a]第5aの態様は、次の通りである。アルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル
基にアミド結合及び2価のリンカー(-L
2-)を介して、アジド基が導入された、下記
式(II):
【化19】
[式(II)中、(ALG)は、アルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任
意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
2-は、下記表:
【表31-1】
【表31-2】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーを表わす)で表されるアルギン酸誘導体。
【0109】
[5a-1]前記態様[5a]の前記式(II)のアルギン酸誘導体において、-L
2-
は、好ましくは、下記表:
【表32】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーであり;
より好ましくは、下記表:
【表33】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーであり;
更に好ましくは、下記表:
【表34】
に記載された部分構造式[各式中、両端の破線外側は含まない]からなる群より選択され
るリンカーである。
【0110】
[6]第6の態様は、次の通りである。N3-L2-NH2基(-L2-は、前記態様[
5]中の記載の定義と同じである)の導入率が、約0.1%~約30%である、前記態様
[5]又は態様[5a]に記載の式(II)のアルギン酸誘導体。
【0111】
[6-1]前記態様[6]において、N3-L2-NH2基の導入率は、好ましくは、約
1.0%~約20%であり;より好ましくは、約2.0~10%である。
【0112】
[7]第7の態様は、次の通りである。アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー
法により測定した重量平均分子量が、約10万Da~約300万Daである、前記態様[
5]又は態様[5a]中に記載の式(II)のアルギン酸誘導体。
【0113】
[7-1]前記態様[7]において、式(II)のアルギン酸誘導体のゲルろ過クロマト
グラフィー法により測定した重量平均分子量は、好ましくは約30万Da~約250万D
aであり、より好ましくは約50万Da~約100万Daである。
【0114】
[8]第8の態様は、次の通りである。第1のアルギン酸の任意のカルボキシル基と、第
2のアルギン酸の任意のカルボキシル基が、下記式(III-L):
【化20】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-は、アルギン酸の任意のカ
ルボキシル基を介したアミド結合を表わし;
-L
1-は、前記態様[1]中の定義と同じであり;
-L
2-は、前記態様[1]中の定義と同じであり;
Xは、下記表:
【表35-1】
【表35-2】
に記載された部分構造式の群から選択される環状基である(各式中、両端の破線外側は含
まない)]を介して結合した、前記態様[1]に記載の架橋アルギン酸。(但し、式(I
II-L)において、-L
1-が(L1-1)、(L1-2a)、(L1-2b)、(L
1-11)又は(L1-12)の群から選択されるいずれか1つのリンカーである場合、
対応する-L
2-において、(L2-10)のリンカーは除く)。
【0115】
[8a]第8aの態様は、次の通りである。第1のアルギン酸の任意のカルボキシル基と
、第2のアルギン酸の任意のカルボキシル基が、下記式(III-L):
【化21】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-は、アルギン酸の任意のカ
ルボキシル基を介したアミド結合を表わし;
-L
1-は、前記態様[1]中の定義と同じであり;
-L
2-は、前記態様[1]中の定義と同じであり;
Xは、前記態様[8]中の定義と同じである]
を介して結合した架橋アルギン酸。
(但し、式(III-L)において、-L
1-が(L1-1)、(L1-2a)、(L1
-2b)、(L1-11)又は(L1-12)の群から選択されるいずれか1つのリンカ
ーである場合、対応する-L
2-において、(L2-10)のリンカーは除く)。
【0116】
[8-1-1]前記態様[8]又は態様[8a]の式(III-L)において、好ましい
、-L1-は、前記態様[1-1-1]に記載された-L1-を表わす式からなる群より
選択されるリンカーと同じである。
【0117】
[8-1-2]前記態様[8]又は態様[8a]の式(III-L)において、より好ま
しい、-L1-は、前記態様[1-1-2]に記載された-L1-を表わす式からなる群
より選択されるリンカーと同じである。
【0118】
[8-1-3]前記態様[8]又は[8a]の式(III-L)において、更に好ましい
-L1-は、前記態様[1-1-3]に記載された-L1-を表わす式からなる群より選
択されるリンカーと同じである。
【0119】
[8-2-1]前記態様[8]又は態様[8a]の式(III-L)において、好ましい
-L2-は、前記態様[1-2-1]に記載された-L2-を表わす式からなる群より選
択されるリンカーと同じである。
【0120】
[8-2-2]前記態様[8]又は態様[8a]の式(III-L)において、より好ま
しい-L2-は、前記態様[1-2-2]に記載された-L2-を表わす式からなる群よ
り選択されるリンカーと同じである。
【0121】
[8-2-3]前記態様[8]又は態様[8a]の式(III-L)において、更に好ま
しい-L2-は、前記態様[1-2-3]に記載された-L2-を表わす式からなる群よ
り選択されるリンカーと同じである。
【0122】
[8-3-1]前記態様[8]又は態様[8a]の式(III-L)において、Xは、好
ましくは、前記態様[8]に記載された部分構造式(TZ-1)、式(TZ-2)、式(
TZ-3)、式(TZ-4)、式(TZ-5)、式(TZ-6)、式(TZ-10)、式
(TZ-1-r)、式(TZ-2-r)、式(TZ-3-r)、式(TZ-4-r)、式
(TZ-5-r)、式(TZ-6-r)、及び式(TZ-10-r)からなる群より選択
される環状基である。
【0123】
[8-3-2]前記態様[8]又は態様[8a]の式(III-L)において、Xは、よ
り好ましくは、部分構造式(TZ-2)、式(TZ-3)、式(TZ-6)、式(TZ-
10)、式(TZ-2-r)、式(TZ-3-r)、式(TZ-6-r)、及び式(TZ
-10-r)からなる群より選択される環状基である。
【0124】
[8-3-3]前記態様[8]又は態様[8a]の式(III-L)において、Xは、更
に好ましくは、部分構造式(TZ-2)、式(TZ-6)、式(TZ-2-r)、及び式
(TZ-6-r)からなる群より選択される環状基である。
【0125】
[8-4-1]前記態様[8]又は態様[8a]の式(III-L)において、好ましく
は、-L
2-X-L
1-の組み合わせは、下記表の式:
【表36-1】
【表36-2】
の群から選択される部分構造で示される通りである(表中の-L
1-及び-L
2-は前記
態様[1]に記載の通り;-X-は前記態様[8]に記載の通りである)(但し、前記表
中、-L
1-が(L1-1)、(L1-2a)、(L1-2b)、(L1-11)、又は
(L1-12)の群から選択されるいずれか1つのリンカーである場合、対応する-L
2
-において、(L2-10-p1)のリンカーは除く)。
【0126】
[8-4-2]前記態様[8]又は態様[8a]の式(III-L)において、より好ま
しくは、-L
2-X-L
1-の組み合わせは、下記表の式:
【表37-1】
【表37-2】
の群から選択される部分構造で示される通りである(表中の-L
1-及び-L
2-は前記
態様[1]に記載の通り;-X-は前記態様[8]に記載の通りである)(但し、前記表
中、-L
1-が(L1-1-1)、(L1-2a-1)、(L1-2b-1)、(L1-
11-1)、又は(L1-12-p1)の群から選択されるいずれか1つのリンカーであ
る場合、対応する-L
2-において、(L2-10-p2)のリンカーは除く)。
【0127】
[8-4-3]前記態様[8]又は態様[8a]の式(III-L)において、更に好ま
しくは、-L
2-X-L
1-の組み合わせは、下表の式:
【表38】
の群から選択される部分構造で示される通りである(表中の-L
1-及び-L
2-は前記
態様[1]に記載の通り;-X-は前記態様[8]に記載の通りである)(但し、前記表
中、-L
1-が(L1-1-X)、(L1-2-X)、(L1-11-X)又は(L1-
12-X)の群から選択されるいずれか1つのリンカーである場合、対応する-L
2-に
おいて、(L2-10-X)のリンカーは除く)。
【0128】
[8-4-4]前記態様[8]又は態様[8a]の式(III-L)において、特に好ま
しくは、-L
2-X-L
1-の組み合わせは、下記部分構造式[式中、両端の破線外側は
含まない]:
【化22】
の群から選択される部分構造で示される通りである。
【0129】
[8-5-1]前記態様[1]又は態様[8a]に記載の架橋アルギン酸において、架橋
は、Huisgen反応により形成されるトリアゾール環による化学架橋及び2価金属イ
オンにより部分的に形成されるイオン架橋である。
【0130】
[8-5-2]前記態様[1]又は態様[8a]に記載の架橋アルギン酸において、架橋
は、Huisgen反応により形成されるトリアゾール環による化学架橋である。
【0131】
[8-5-3]前記態様[8-5-1]において、2価金属イオンは、好ましくは、カル
シウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン又は亜鉛イ
オンの群から選択される2価金属イオンであり;より好ましくは、カルシウムイオン又は
バリウムイオンであり;更に好ましくは、カルシウムイオンである。
【0132】
[8-5-4]前記態様[8-5-1]において、イオン架橋形成に用いられる2価金属
イオンは、好ましくは、塩化カルシウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、グルコン酸カル
シウム水溶液、及び塩化バリウム水溶液からなる群から選択される水溶液を供給源とする
ことができ;より好ましくは、塩化カルシウム水溶液又は塩化バリウム水溶液であり;更
に好ましくは、塩化カルシウム水溶液である。
【0133】
態様[8]の好ましい態様、更には-L1-、-L2-、及びXの定義を適宜組み合わ
せることにより、前記態様[8]の架橋アルギン酸の好ましい態様を任意に形成し得る。
態様[8a]の好ましい態様、更には-L1-、-L2-、及びXの定義を適宜組み合
わせることにより、前記態様[8a]の架橋アルギン酸の好ましい態様を任意に形成し得
る。
【0134】
[9] 第9の態様は、次の通りである。前記態様[1]に記載の式(I)で表わされるアル
ギン酸誘導体及び式(II)で表わされるアルギン酸誘導体とを混合して架橋反応(Hu
isgen反応)を行うことで、前記態様[1]又は態様[8a]に記載の架橋アルギン
酸を得ることを含む、架橋アルギン酸を製造する方法。
【0135】
[9-1]第9-1の態様は、次の通りである。前記態様[1]に記載の式(I)で表わ
されるアルギン酸誘導体の溶液を、前記態様[1]に記載の式(II)で表わされるアル
ギン酸誘導体の溶液に加えて架橋反応(Huisgen反応)を行うことで、前記態様[
1]又は態様[8a]に記載の架橋アルギン酸を得ることを含む、架橋アルギン酸を製造
する方法。
【0136】
[9-2]第9-2の態様は、次の通りである。前記態様[1]に記載の式(II)で表
わされるアルギン酸誘導体の溶液を、前記態様[1]に記載の式(I)で表わされるアル
ギン酸誘導体の溶液に加えて架橋反応(Huisgen反応)を行うことで、前記態様[
1]又は態様[8a]に記載の架橋アルギン酸を得ることを含む、架橋アルギン酸を製造
する方法。
【0137】
[10]前記態様[1]に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体及び式(II)
で表わされるアルギン酸誘導体を用いてHuisgen反応(架橋反応)を行うことによ
り形成される化学架橋が、下記式(III-L):
【化23】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-、X、-L
1-、並びに-
L
2-は、前記態様[8]中の定義と同じである]の構造である、前記態様[1]又は態
様[8a]に記載の架橋アルギン酸を製造する方法。
【0138】
[11]第11の態様は、次の通りである。前記[1]に記載の式(I)で表わされるア
ルギン酸誘導体及び式(II)で表わされるアルギン酸誘導体を混合したアルギン酸誘導
体の混合溶液を、2価金属イオンを含む溶液中に滴下することで得られる架橋アルギン酸
構造体。
【0139】
[11-1]第11-1の態様は、次の通りである。前記[1]のいずれか1項に記載の
式(I)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液を、2価金属イオンを含む溶液中に滴下し
て得られるゲルを、前記[1]に記載の式(II)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液
に加えて架橋反応を施すことにより得られる、架橋アルギン酸構造体。
【0140】
[11-2]第11-2の態様は、次の通りである。前記[1]に記載の式(II)で表
わされるアルギン酸誘導体の溶液を、2価金属イオンを含む溶液中に滴下して得られるゲ
ルを、前記[1]に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液に加えて架橋反
応を施すことにより得られる、架橋アルギン酸構造体。
【0141】
[12-1]第12-1の態様は、次の通りである。架橋としてHuisgen反応によ
り形成されるトリアゾール環による化学架橋、及び2価金属イオンにより部分的に形成さ
れるイオン架橋を含む、前記態様[11]~[11-2]のいずれか1項に記載の架橋ア
ルギン酸構造体。
【0142】
[12-2]第12-2の態様は、次の通りである。架橋としてHuisgen反応によ
り形成されるトリアゾール環による化学架橋を含む、前記態様[11]~[11-2]の
いずれか1項に記載の架橋アルギン酸構造体。
【0143】
[12-3-1]前記態様[12-1]において、2価金属イオンは、好ましくは、カル
シウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン又は亜鉛イ
オンの群から選択される2価金属イオンであり;より好ましくは、カルシウムイオン又は
バリウムイオンであり;更に好ましくは、カルシウムイオンである。
【0144】
[12-3-2]前記態様[12-1]において、イオン架橋形成に用いられる2価金属
イオンは、好ましくは、塩化カルシウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、グルコン酸カル
シウム水溶液、及び塩化バリウム水溶液からなる群から選択される水溶液を供給源とする
ことができ;より好ましくは、塩化カルシウム水溶液又は塩化バリウム水溶液であり;更
に好ましくは、塩化カルシウム水溶液である。
【0145】
[13]第13の態様は、次の通りである。前記態様[1]に記載の式(I)で表わされ
るアルギン酸誘導体及び式(II)で表わされるアルギン酸誘導体を2価金属イオンによ
るイオン架橋及び/又はHuisgen反応による化学架橋して得られる、内容物の保持
性を有する架橋アルギン酸構造体。
【0146】
[13-1-1]前記態様[13]において、2価金属イオンは、好ましくは、カルシウ
ムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン又は亜鉛イオン
の群から選択される2価金属イオンであり;より好ましくは、カルシウムイオン又はバリ
ウムイオンであり;更に好ましくは、カルシウムイオンである。
【0147】
[13-1-2]前記態様[13]において、イオン架橋形成に用いられる2価金属イオ
ンは、好ましくは、塩化カルシウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、グルコン酸カルシウ
ム水溶液、及び塩化バリウム水溶液からなる群から選択される水溶液を供給源とすること
ができ;より好ましくは、塩化カルシウム水溶液又は塩化バリウム水溶液であり;更に好
ましくは、塩化カルシウム水溶液である。
【0148】
[14]第14の態様は、次の通りである。前記態様[1]に記載の式(I)で表わされ
るアルギン酸誘導体及び式(II)で表わされるアルギン酸誘導体を用いて、Huisg
en反応を行うことにより形成される化学架橋が、下記式(III-L):
【化24】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-、X、-L
1-、並びに-
L
2-は、前記態様[8]中の定義と同じである]の構造である、前記態様[11]~[
13]のいずれか1項に記載の架橋アルギン酸構造体。
【0149】
[15]第15の態様は、次の通りである。前記態様[1]に記載の式(I)で表わされ
るアルギン酸誘導体及び式(II)で表わされるアルギン酸誘導体を混合したアルギン酸
誘導体の混合溶液を、2価金属イオンを含む溶液中に滴下して、架橋反応を施すことによ
り得られる、架橋アルギン酸構造体を製造する方法。
【0150】
[15-1]第15-1の態様は、次の通りである。前記態様[1]に記載の式(I)で
表わされるアルギン酸誘導体の溶液を、2価金属イオンを含む溶液中に滴下して得られる
ゲルを、前記態様[1]に記載の式(II)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液に加え
て架橋反応を施すことにより得られる、架橋アルギン酸構造体を製造する方法。
【0151】
[15-2]第15-2の態様は、次の通りである。前記態様[1]に記載の式(II)
で表わされるアルギン酸誘導体の溶液を、2価金属イオンを含む溶液中に滴下して得られ
るゲルを、前記態様[1]に記載の式(I)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液に加え
て架橋反応を施すことにより得られる、架橋アルギン酸構造体を製造する方法。
【0152】
[16-1]第16-1の態様は、次の通りである。架橋としてHuisgen反応によ
り形成されるトリアゾール環による化学架橋、及び2価金属イオンにより部分的に形成さ
れるイオン架橋を含む、前記態様[15]~[15-2]のいずれか1項に記載の架橋ア
ルギン酸構造体を製造する方法。
【0153】
[16-2]第16-2の態様は、次の通りである。架橋としてHuisgen反応によ
り形成されるトリアゾール環による化学架橋を含む、前記態様[15]~[15-2]の
いずれか1項に記載の架橋アルギン酸構造体を製造する方法。
【0154】
[16-3-1]前記態様[16-1]において、2価金属イオンは、好ましくは、カル
シウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン又は亜鉛イ
オンの群から選択される2価金属イオンであり;より好ましくは、カルシウムイオン又は
バリウムイオンであり;更に好ましくは、カルシウムイオンである。
【0155】
[16-3-2]前記態様[16-1]において、イオン架橋形成に用いられる2価金属
イオンは、好ましくは、塩化カルシウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、グルコン酸カル
シウム水溶液、及び塩化バリウム水溶液からなる群から選択される水溶液を供給源とする
ことができ;より好ましくは、塩化カルシウム水溶液又は塩化バリウム水溶液であり;更
に好ましくは、塩化カルシウム水溶液である。
【0156】
[17]第17の態様は、次の通りである。前記態様[1]に記載の式(I)で表わされ
るアルギン酸誘導体及び式(II)で表わされるアルギン酸誘導体を用いて、Huisg
en反応を行うことにより形成される化学架橋が、下記式(III-L):
【化25】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-、X、-L
1-、並びに-
L
2-は、前記態様[8]中の定義と同じである]の構造である、前記態様[15]~[
16-2]のいずれか1項に記載の架橋アルギン酸構造体を製造する方法。
【0157】
[18]第18の態様は、次の通りである。ビーズ又は略球形のゲルである、前記態様[
11]~[14]のいずれか1項に記載の架橋アルギン酸構造体。
【0158】
[19]第19の態様は、次の通りである。前記態様[11]~[14]のいずれか1項
に記載の架橋アルギン酸構造体を含む医療用材料。
【0159】
[20]第20の態様は、次の通りである。ビーズ又は略球形のゲルである、前記態様[
19]に記載の医療用材料。
【0160】
[21]第21の態様は、次の通りである。生体適合性がある、前記態様[1]又は態様
[8a]に記載の架橋アルギン酸、前記態様[2]又は前記態様[5]に記載のアルギン
酸誘導体、又は前記態様[11]~[14]のいずれか1項に記載の架橋アルギン酸構造
体。
【0161】
[22]第22の態様は、次の通りである。下記式(AM-1):
【化26】
[式(AM-1)中、-L
1-、及びAknの定義は、前記態様[2]中に記載の定義と
同じである]で表されるアミノ化合物、又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの
溶媒和物である。但し、下記表:
【表39】
のアミノ化合物又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物は除く。
【0162】
[22-1]前記態様[22]の式(AM-1)で表される化合物は、好ましくは、-L
1-が、記態様[2-1]中に記載の好ましい-L
1-の定義と同じであり、Aknが、
記態様[2-2]中に記載の好ましいAknの定義と同じである、アミノ化合物、又は製
薬学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物である。但し、下記表:
【表40】
のアミノ化合物又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物は除く。
【0163】
[22-2]前記態様[22]の式(AM-1)で表される化合物は、より好ましくは、
-L
1-が、記態様[2-1]中に記載のより好ましい-L
1-の定義と同じであり、A
knが、記態様[2-2]中に記載のより好ましいAknの定義と同じである、アミノ化
合物、又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物である。但し、下記表:
【表41】
のアミノ化合物又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物は除く。
【0164】
[22-3]前記態様[22]の式(AM-1)で表される化合物は、更に好ましくは、
-L
1-が、記態様[2-1]中に記載の更に好ましい-L
1-の定義と同じであり、A
knが、記態様[2-2]中に記載の更に好ましいAknの定義と同じである、アミノ化
合物、又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物である。但し、下記表:
【表42】
のアミノ化合物又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物は除く。
【0165】
[22-4]前記態様[22]の前記式(AM-1)で表される化合物は、特に好ましく
は、下記式:
【化27】
からなる群より選択されるアミノ化合物、又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれら
の溶媒和物である。
【0166】
[23]第23の態様は、次の通りである。下記式(AM-2):
【化28】
[式(AM-2)中、-L
2-の定義は、前記態様[5]中に記載の(L2-2a)、(
L2-2b-A)、(L2-3)、(L2-4)、(L2-5a)、(L2-5b)、(
L2-6a)、(L2-6b)、(L2-7a)、(L2-7b)、(L2-8a)、(
L2-8b)、(L2-9a)及び(L2-9b)の定義と同じである]で表されるアミ
ノ化合物、又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物である。但し、下記
表:
【表43】
のアミノ化合物又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物は除く。
【0167】
[23-1]
前記態様[23]の式(AM-2)で表される化合物は、好ましくは、-L
2-が、前記
態様[5-1]中に記載の(L2-2a)、(L2-2b-A)、(L2-3)、(L2
-4-p1)、(L2-5a-p1)、及び(L2-5b-p1)の定義と同じである、
アミノ化合物、又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物である。但し、
下記表:
【表44】
のアミノ化合物又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物は除く。
【0168】
[23-2]前記態様[23]の式(AM-2)で表される化合物は、より好ましくは、
-L
2-が、前記態様[5-1]中に記載の(L2-2a-1)、(L2-2b-B)、
(L2-3-1)、(L2-4-p2)、(L2-5a-p2)、及び(L2-5b-p
2)の定義と同じであるアミノ化合物、又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの
溶媒和物である。但し、下記表:
【表45】
のアミノ化合物又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物は除く。
【0169】
[23-3]前記態様[23]の前記式(AM-2)で表される化合物は、更に好ましく
は、下記式:
【化29】
からなる群より選択されるアミノ化合物、又は製薬学的に許容されるその塩、又はそれら
の溶媒和物である。
本明細書中、特に断りのない限り、上位態様を引用した場合、当該態様の下位態様も含
まれるものとする。例えば態様[1]を引用した場合、態様[1]の下位態様も含まれる
ものとする。
【0170】
以下、各態様についてより詳細に説明する。
【0171】
1.アルギン酸
本明細書中、アルギン酸と記載する場合、アルギン酸、アルギン酸エステル、及びそれ
らの塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)からなる群から選択される少なくとも1種のア
ルギン酸(「アルギン酸類」という場合がある)を意味する。用いられるアルギン酸は、
天然由来でも合成物であってもよいが、天然由来であるのが好ましい。好ましく用いられ
るアルギン酸類は、レッソニア、マクロシスティス、ラミナリア、アスコフィラム、ダー
ビリア、カジカ、アラメ、コンブなどの褐藻類から抽出される生体内吸収性の多糖類であ
って、D-マンヌロン酸(M)とL-グルロン酸(G)という2種類のウロン酸が直鎖状
に重合したポリマーである。より具体的には、D-マンヌロン酸のホモポリマー画分(M
M画分)、L-グルロン酸のホモポリマー画分(GG画分)、およびD-マンヌロン酸と
L-グルロン酸がランダムに配列した画分(M/G画分)が任意に結合したブロック共重
合体である。
【0172】
アルギン酸は、褐藻類の海藻から抽出し、精製して製造される天然多糖類の一種であり
、D-マンヌロン酸(M)とL-グルロン酸(G)が重合したポリマーである。アルギン
酸のD-マンヌロン酸とL-グルロン酸の構成比(M/G比)、すなわちゲル強度は、主
に海藻等の由来となる生物の種類によって異なり、また、その生物の生育場所や季節によ
る影響を受け、M/G比が約0.2の高G型からM/G比が約5の高M型まで高範囲にわ
たる。アルギン酸のM/G比、MとGの配列の仕方等によってアルギン酸の物理化学的性
質が異なり、また好ましい用途が異なる場合がある。アルギン酸類のゲル化能力および生
成したゲルの性質は、M/G比によって影響を受け、一般的に、G比率が高い場合にはゲ
ル強度が高くなることが知られている。M/G比は、その他にも、ゲルの硬さ、もろさ、
吸水性、柔軟性などにも影響を与える。したがって、本発明で使用するアルギン酸は、そ
の最終使用用途に応じて、適切なM/G比や適切な粘度のものを用いるのがよい。
【0173】
アルギン酸の工業的な製造方法には、酸法とカルシウム法などがあるが、本発明ではい
ずれの製法で製造されたものも使用することができる。精製により、HPLC法による定
量値が80~120質量%の範囲に含まれるものが好ましく、90~110質量%の範囲
に含まれるものがより好ましく、95~105質量%の範囲に含まれるものがさらに好ま
しい。本発明においては、HPLC法による定量値が前記の範囲に含まれるものを高純度
のアルギン酸と称する。本発明で使用するアルギン酸又はその塩は、高純度アルギン酸で
あることが好ましい。市販品としては、例えば、キミカアルギンシリーズとして、(株)
キミカより販売されているもの、好ましくは、高純度食品・医薬品用グレードのものを購
入して使用することができる。市販品を、さらに適宜精製して使用することも可能である
。例えば、低エンドトキシン処理することが好ましい。精製法や低エンドトキシン処理方
法は、例えば特開2007-75425号公報に記載されている方法を採用することがで
きる。
【0174】
本発明で使用する「アルギン酸」におけるアルギン酸の塩としては、「アルギン酸の1
価金属塩」であり、アルギン酸のD-マンヌロン酸またはL-グルロン酸のカルボン酸の
水素イオンを、Na+やK+などの1価金属イオンとイオン交換することでつくられる塩で
ある。アルギン酸の1価金属塩としては、具体的には、アルギン酸ナトリウム、アルギン
酸カリウムなどを挙げることができるが、特に、アルギン酸ナトリウムが好ましい。
【0175】
本明細書中、アルギン酸は、アルギン酸を(ALG)として、アルギン酸の任意のカル
ボキシル基の1つを-COOHとして、(ALG)-COOHと表記する場合がある。
【0176】
本発明で使用するアルギン酸は、その最終使用用途に応じて、適切な重量平均分子量の
ものを用いるのがよい。例えば、重量平均分子量が1万~1,000万のものを用いるの
が好ましく、より好ましくは10万以上500万以下、さらに好ましくは15万以上30
0万以下である。
【0177】
いくつかの態様では、アルギン酸は、アルギン酸ナトリウムである。アルギン酸ナトリ
ウムは、市販品のアルギン酸ナトリウムを用いることができる。ここで、後述の実施例で
は、アルギン酸ナトリウムは、下表に記載したA-1、A-2、A-3、B-1、B-2
、及びB-3のアルギン酸ナトリウム(発売元 持田製薬株式会社)を用いている。各ア
ルギン酸ナトリウムの1w/w%の水溶液の粘度、重量平均分子量及びM/G灯を下記の
表に示す。
【0178】
【0179】
前記アルギン酸ナトリウムA-1、A-2、A-3、B-1、B-2、及びB-3の各
物性値は、下記の各種方法により測定した。測定方法は、当該方法に限定されるものでは
ないが、測定方法により各物性値が上記のものと異なる場合がある。
【0180】
[アルギン酸ナトリウムの粘度測定]
日本薬局方(第16版)の粘度測定法に従い、回転粘度計法(コーンプレート型回転粘
度計)を用いて測定した。具体的な測定条件は以下のとおりである。試料溶液の調製は、
MilliQ水を用いて行った。測定機器は、コーンプレート型回転粘度計(粘度粘弾性測定装
置レオストレスRS600(Thermo Haake GmbH)センサー:35/1)を用いた。回転数は、
1w/w%アルギン酸ナトリウム溶液測定時は1rpmとした。読み取り時間は、2分間
測定し、開始1分から2分までの平均値とした。3回の測定の平均値を測定値とした。測
定温度は20℃とした。
【0181】
[アルギン酸ナトリウムの重量平均分子量測定]
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)と、(2)GPC-MALSの2種類の測
定法で測定した。測定条件は以下のとおりである。
【0182】
[前処理方法]
試料に溶離液を加え溶解後、0.45μmメンブランフィルターろ過したものを測定溶
液とした。
【0183】
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定
[測定条件(相対分子量分布測定)]
カラム:TSKgel GMPW-XL×2+G2500PW-XL(7.8mm I
.D.×300mm×3本)
溶離液:200mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:1.0mL/min
濃度:0.05%
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:200μL
分子量標準:標準プルラン、グルコース
【0184】
(2)GPC-MALS測定
[屈折率増分(dn/dc)測定(測定条件)]
示差屈折率計:Optilab T-rEX
測定波長:658nm
測定温度:40℃
溶媒:200mM硝酸ナトリウム水溶液
試料濃度:0.5~2.5mg/mL(5濃度)
【0185】
[測定条件(絶対分子量分布測定)]
カラム:TSKgel GMPW-XL×2+G2500PW-XL(7.8mm I
.D.×300mm×3本)
溶離液:200mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:1.0mL/min
濃度:0.05%
検出器:RI検出器、光散乱検出器(MALS)
カラム温度:40℃
注入量:200μL
【0186】
本明細書中、アルギン酸、アルギン酸誘導体、架橋アルギン酸、及び架橋アルギン酸の
分子量において、単位としてDa(ダルトン)を付記する場合がある。
【0187】
アルギン酸類のD-マンヌロン酸とL-グルロン酸の構成比(M/G比)は、主に海藻
等の由来となる生物の種類によって異なり、また、その生物の生育場所や季節による影響
を受け、M/G比が約0.2の高G型からM/G比が約5の高M型まで高範囲にわたる。
アルギン酸類のゲル化能力および生成したゲルの性質は、M/G比によって影響を受け、
一般的に、G比率が高い場合にはゲル強度が高くなることが知られている。M/G比は、
その他にも、ゲルの硬さ、もろさ、吸水性、柔軟性などにも影響を与える。用いるアルギ
ン酸類および/またはその塩のM/G比は、通常、0.1~4.0であり、ある態様では
、0.1~3.0であり、ある態様では、0.1~2.0であり、ある態様では0.5~
1.8であり、ある態様では0.8~1.2である。又、別の態様では、0.1~0.5
である。
【0188】
また、本発明で使用するアルギン酸は、その最終使用用途に応じて、適切な粘度や、適
切なM/G比のものを用いるのがよい。
【0189】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそ
れぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0190】
本明細書中、用いられる「アルギン酸エステル」、「アルギン酸塩」とは、特に限定さ
れないが、架橋剤と反応させるため、架橋反応を阻害する官能基を有していないことが必
要である。アルギン酸エステルとしては、好ましくは、アルギン酸プロピレングリコール
、等が挙げられる。
【0191】
本明細書中、アルギン酸塩としては、例えば、アルギン酸の1価の塩、アルギン酸の2
価の塩が挙げられる。アルギン酸の1価の塩としては、好ましくは、アルギン酸ナトリウ
ム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、等が挙げられ、より好ましくは、ア
ルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カリウムであり、特に好ましくは、アルギン酸ナト
リウムである。アルギン酸の2価の塩としては、好ましくは、アルギン酸カルシウム、ア
ルギン酸マグネシウム、アルギン酸バリウム、アルギン酸ストロンチウム、等が挙げられ
る。
【0192】
アルギン酸は、高分子多糖類であり、分子量を正確に定めることは困難であるが、一般
的に重量平均分子量で1000~1000万、好ましくは1万~800万、より好ましく
は2万~300万の範囲である。天然物由来の高分子物質の分子量測定では、測定方法に
より値に違いが生じうることが知られている。
【0193】
本明細書において本発明のアルギン酸誘導体またはアルギン酸又はその塩の分子量を特
定する場合は、特段のことわりがない限り、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に
より算出される重量平均分子量である。本発明で使用するアルギン酸又はその塩としても
、その最終使用用途に応じて、適切な分子量分布のものを用いることが望ましい。
【0194】
例えば、後記実施例に記載したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)又はゲルろ過ク
ロマトグラフィー(これらを合わせてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ともいう
)の測定条件にて、好ましくは、10万~500万であり、より好ましくは15万~30
0万である。また、ある態様では、50万~300万の範囲であり、より好ましくは、1
00万~250万であり、さらに好ましくは、100万~200万の範囲である。
【0195】
また、例えば、GPC-MALS(SEC-MALS)法によれば、絶対重量平均分
子量を測定することができる。GPC-MALS法により測定した重量平均分子量(絶対
分子量)は、好ましくは1万以上、より好ましくは5万以上、さらに好ましくは6万以上
であり、また好ましくは、100万以下、より好ましくは80万以下、さらに好ましくは
70万以下、とりわけ好ましくは50万以下である。その好ましい範囲は、1万~100
万であり、より好ましくは5万~80万であり、さらに好ましくは6万~50万である。
【0196】
通常、高分子多糖類の分子量を上記のようなSEC、SEC-MALSを用いた手法で
算出する場合、約10%~約30%の測定誤差を生じうる。例えば、50万であれば35
万~65万、100万であれば70万~130万程度の範囲で値の変動が生じうる。本明
細書中、分子量測定の記載において「約」と記載した場合、当該数値の±10%迄、ある
態様では当該数値の±20%迄の値も含み得るものである。
【0197】
ここで、一般に天然物由来の高分子物質は、単一の分子量を持つのではなく、種々の分
子量を持つ分子の集合体であるため、ある一定の幅を持った分子量分布として測定される
。代表的な測定手法はゲルろ過クロマトグラフィーである。ゲルろ過クロマトグラフィー
により得られる分子量分布の代表的な情報としては、重量平均分子量(Mw)、数平均分
子量(Mn)、分散比(Mw/Mn)があげられる。
【0198】
分子量の大きい高分子の平均分子量への寄与を重視したのが重量平均分子量であり、下
記式で表される。
【0199】
Mw=Σ(WiMi)/W=Σ(HiMi)/Σ(Hi)
数平均分子量は、高分子の総重量を高分子の総数で除して算出される。
【0200】
Mn=W/ΣNi=Σ(MiNi)/ΣNi=Σ(Hi)/Σ(Hi/Mi)
ここで、Wは高分子の総重量、Wiはi番目の高分子の重量、Miはi番目の溶出時間
における分子量、Niは分子量Miの個数、Hiはi番目の溶出時間における高さである
。
【0201】
天然物由来の高分子物質の分子量測定では、測定方法により値に違いが生じうることが
知られている(ヒアルロン酸の例:Chikako YOMOTA et.al. Bu
ll.Natl.Health Sci., Vol.117, pp135-139(
1999)、Chikako YOMOTA et.al. Bull.Natl.In
st. Health Sci., Vol.121, pp30-33(2003))
。アルギン酸の分子量測定については、固有粘度(Intrinsic viscosi
ty)から算出する方法、SEC-MALLS(Size Exclusion Chr
omatography with Multiple Angle Laser Li
ght Scattering Detection)により算出する方法が記載された
文献がある(ASTM F2064-00(2006),ASTM Internati
onal発行)。本発明においては、重量平均分子量は、上記文献に示されるような常法
にて、例えばサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分子量を測定し、プルラン
を標準物質として用いた較正曲線により算出した値とすることができる。
又、本発明においては、重量平均分子量は、上記文献に示されるような常法にて、例え
ばサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)―MALSにより測定した絶対分子量とする
ことができる。
【0202】
アルギン酸類の分子量の測定は、常法に従い測定することができる。
【0203】
本明細書中においてアルギン酸又はその塩の分子量を特定する場合は、特段のことわりが
ない限り、ゲルろ過クロマトグラフィーにより算出される重量平均分子量である。分子量
測定にゲルろ過クロマトグラフィーを用いる場合の代表的な条件は、例えば、後述する本
実施例の条件を採用することができる。カラムは、例えば、Superose6 Inc
rease10/300 GLカラム(GEヘルスケアサイエンス社)を用いることがで
き、展開溶媒として、例えば、0.15mol/L NaClを含む10mmol/Lリ
ン酸緩衝液(pH7.4)を使用することができ、分子量標準としてブルーデキストラン
、チログロブリン、フェリチン、アルドラーゼ、コンアルブミン、オブアルブミン、リボ
ヌクレアーゼAおよびアプロチニンを用いることができる。
【0204】
本明細書中で用いられるアルギン酸の粘度は、特に限定されないが、1w/w%のアル
ギン酸類の水溶液として粘度を測定した場合、好ましくは、10mPa・s~1000m
Pa・s、より好ましくは、50mPa・s~800mPa・sである。
【0205】
アルギン酸の水溶液の粘度の測定は、常法に従い測定することができる。例えば、回転
粘度計法の、共軸二重円筒形回転粘度計、単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド型
粘度計)、円すい-平板形回転粘度計(コーンプレート型粘度計)等を用いて測定するこ
とができる。好ましくは、日本薬局方(第16版)の粘度測定法に従うことが望ましい。
より好ましくは、コーンプレート型粘度計を用いる。
【0206】
アルギン酸類は、褐藻類から抽出された当初は、分子量が大きく、粘度が高めだが、熱
による乾燥、精製などの過程で、分子量が小さくなり、粘度は低めとなる。製造工程の温
度等の条件管理、原料とする褐藻類の選択、製造工程における分子量の分画などの手法に
より分子量の異なるアルギン酸類を製造することができる。さらに、異なる分子量あるい
は粘度を持つ別ロットのアルギン酸類と混合することにより、目的とする分子量を有する
アルギン酸類とすることも可能である。
【0207】
本明細書中で用いられるアルギン酸は、いくつかの態様においては、低エンドトキシン
処理されていないアルギン酸であり、又は別のいくつかの態様においては、低エンドトキ
シン処理されたアルギン酸である。低エンドトキシンとは、実質的に炎症、または発熱を
惹起しない程度にまでエンドトキシンレベルが低いことをいう。より好ましくは、低エン
ドトキシン処理されたアルギン酸類であることが望ましい。
【0208】
低エンドトキシン処理は、公知の方法またはそれに準じる方法によって行うことができ
る。例えば、ヒアルロン酸ナトリウムを精製する、菅らの方法(例えば、特開平9-32
4001号公報など参照)、β1,3-グルカンを精製する、吉田らの方法(例えば、特
開平8-269102号公報など参照)、アルギネート、ゲランガム等の生体高分子塩を
精製する、ウィリアムらの方法(例えば、特表2002-530440号公報など参照)
、ポリサッカライドを精製する、ジェームスらの方法(例えば、国際公開第93/131
36号パンフレットなど参照)、ルイスらの方法(例えば、米国特許第5589591号
明細書など参照)、アルギネートを精製する、ハーマンフランクらの方法(例えば、Ap
pl Microbiol Biotechnol(1994)40:638-643な
ど参照)等またはこれらに準じる方法によって実施することができる。低エンドトキシン
処理は、それらに限らず、洗浄、フィルター(エンドトキシン除去フィルターや帯電した
フィルターなど)によるろ過、限外ろ過、カラム(エンドトキシン吸着アフィニティーカ
ラム、ゲルろ過カラム、イオン交換樹脂によるカラムなど)を用いた精製、疎水性物質、
樹脂または活性炭などへの吸着、有機溶媒処理(有機溶媒による抽出、有機溶剤添加によ
る析出・沈降など)、界面活性剤処理(例えば、特開2005-036036号公報など
参照)など公知の方法によって、あるいはこれらを適宜組合せて実施することができる。
これらの処理の工程に、遠心分離など公知の方法を適宜組み合わせてもよい。アルギン酸
の種類に合わせて適宜選択するのが望ましい。
【0209】
エンドトキシンレベルは、公知の方法で確認することができ、例えば、リムルス試薬(
LAL)による方法、エンドスペシー(登録商標)ES-24Sセット(生化学工業株式
会社)を用いる方法などによって測定することができる。
【0210】
用いられるエンドトキシンの処理方法は特に限定されないが、その結果として、アルギ
ン酸類のエンドトキシン含有量が、リムルス試薬(LAL)によるエンドトキシン測定を
行った場合に、500エンドトキシン単位(EU)/g以下であることが好ましく、さら
に好ましくは、100EU/g以下、とりわけ好ましくは、50EU/g以下、特に好ま
しくは、30EU/g以下である。本発明において、「実質的にエンドトキシンを含まな
い」とは、日局エンドトキシン試験により測定したエンドトキシン値が前記の数値範囲に
あるものを意味する。低エンドトキシン処理されたアルギン酸ナトリウムは、例えば、S
ea Matrix(登録商標)(持田製薬株式会社)、PRONOVATM UP L
VG(FMCBioPolymer)など市販品により入手可能である。
【0211】
2.アルギン酸誘導体
本明細書中、新規なアルギン酸誘導体が提供される。本明細書中、アルギン酸誘導体と
しては、アルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基にアミド結合及び2価のリンカー
を介して、Huisgen反応における反応性基又は当該反応性基の相補的な反応性基が
導入されたものである。
より具体的には、下記式(I):
【化30】
[式(I)中、(ALG)、-L
1-、Akn及び-NH-CO-の定義は、前述の第1
の態様中の定義と同じである]で表されるアルギン酸誘導体、及び下記式(II):
【化31】
[式(II)中、(ALG)、-L
2-及び-NH-CO-の定義は、前述の第4の態様
中の定義と同じである]で表されるアルギン酸誘導体である。
【0212】
前記の2価のリンカー(-L1-又は-L2-)は、反応性基と当該反応性基と相補的
な反応性基との反応を阻害しない限り、任意の直鎖状基の使用が可能である。具体的には
、例えば、直鎖のアルキレン基(-(CH2)n-、n=1~30)(当該基中の-CH
2-は、-C(=O)-、-CONH-、-O-、-NH-、-S-、ベンゼン環、複素
環(ピリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、等の5~6員芳香族複素環又は5~6員
非芳香族複素環)、等の基で複数個(例えば、1~10個、又は1~5個)置き換えられ
ても良く、当該-CH2-の水素原子は、オキソ基(=O)、C1-6アルキル基(例え
ば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、等の基)、ハロゲン原
子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、等)、水酸基(-OH)、
等の基から選択される基で複数個(例えば、1~10個、又は1~5個)置換されていて
も良い)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0213】
前記式(I)又は式(II)で表わされるアルギン酸誘導体の-NH-CO-基におけ
る、イミノ基(-NH-)の水素原子をメチル基に置換し-N(Me)-CO-基するこ
とが可能である。
前記式(I)又は式(II)で表わされるアルギン酸誘導体における、リンカー(-L
1-、-L2-)とアルギン酸の結合様式は、-NH-CO-結合、又は-N(Me)-
CO-があり;好ましくは、-NH-CO-結合である。
【0214】
本明細書における新規なアルギン酸誘導体である式(I)及び式(II)で表わされる
アルギン酸誘導体は、例えば、下記式の方法(詳細は、後述の一般的製造方法を参照)に
より製造することが可能である。
【0215】
【0216】
本明細書の式(I)又は式(II)で表わされるアルギン酸誘導体の重量平均分子量は
、10万Da~300万Daであり、好ましくは30万Da~250万Daであり、より
好ましくは50万Da~200万Daである。当該両アルギン酸誘導体の分子量は、後述
する方法により求めることができる。
【0217】
本明細書中、式(I)のAkn-L1-NH-基は、アルギン酸構成単位の全てのカル
ボキシル基に結合している必要はなく、又、式(II)のN3-L2-NH-基は、アル
ギン酸構成単位の全てのカルボキシル基に結合している必要はない。
【0218】
本明細書中、式(I)のAkn-L1-NH-基を反応性基と言う場合、式(II)の
N3-L2-NH-基が相補的な反応性基となる。又、逆に式(II)のN3-L2-N
H-基を反応性基と言う場合、式(I)のAkn-L1-NH-基が相補的な反応性基と
なる。
【0219】
本明細書中、反応性基又は相補的な反応性基の導入率は、各々、0.1%~30%又は
1%~30%であり、好ましくは2%~20%であり、より好ましくは3%~10%であ
る。
【0220】
前記反応性基又は相補的な反応性基の導入率は、アルギン酸類の繰り返し単位であるウ
ロン酸単糖単位のうち、各反応性基が導入されたウロン酸単糖単位の数を百分率で表した
値である。本明細書中、特に断らない限り、アルギン酸誘導体(式(I)または式(II
))における反応性基又は相補的な反応性基の導入率に用いられる%は、mol%を意味
する。各反応性基又は相補的な反応性基の導入率は、後述の実施例に記載の方法により求
めることができる。
【0221】
本明細書中、式(I)中の環状アルキン基(Akn)及び式(II)中のアジド基が、
Huisgen反応によりトリアゾール環を形成し、これにより架橋が形成される。
【0222】
3.Huisgen反応
Huisgen反応(1,3-双極子付加環化反応)は、下記式に示される様に末端ア
ジド基及び末端アルキン基を有する化合物間の縮合反応である。反応の結果、二置換1,
2,3-トリアゾール環が収率良く得られ、余計な副生成物が生じないという特徴を有し
ている。当該反応は、1,4-又は1,5-二置換トリアゾール環が生成し得ると考えら
れるが、銅触媒を用いることで位置選択的にトリアゾール環を得ることが可能である。
【0223】
【0224】
又、銅触媒を用いないHuisgen反応がWittigとKrebsにより報告がな
されている。即ち、シクロオクチンとフェニルアジドを混合するだけで環化付加体が得ら
れる反応である(下記式中、R3=フェニルである)。本反応は、シクロオクチンの三重
結合が大きく歪んでいるため、フェニルアジドとの反応による歪みの解消が駆動力となり
、反応が自発的に進行することにより、触媒が不要となった。
【0225】
【0226】
以上の様に、Huisgen反応は、置換された1級アジド、2級アジド、3級アジド
、芳香族アジド、等を有するアジド化合物、及びアジド基の相補的な反応性基である末端
又は環状アルキン基を有する化合物を用いることができる。又、Huisgen反応では
、ほぼアジド基及びアルキン基のみが反応することから、反応基質中に種々の官能基(例
えば、エステル基、カルボキシル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、等)を置換させ
ることが可能である。
【0227】
いくつかの態様では、望ましくない副生成物を生じさせず、銅触媒による細胞毒性を回
避させる為に銅触媒を用いずに、短時間、容易に、且つ効率的に1,2,3-トリアゾー
ル環による架橋をアルギン酸分子間に形成させる為に、Huisgen反応のアルキン基
としては、例えば、前記態様[1]に記載した環状アルキン基(シクロオクチル基)を用
いる。
【0228】
好ましい態様のアルギン酸誘導体の架橋方法においては、当該反応(Huisgen反
応)にて望ましくない副生成物がほとんど形成されない。この場合、アルギン酸を用いた
新規な形態の生体適合性材料の作製、及びアルギン酸ヒドロゲルの形成において、種々の
生物活性分子を取込むこと、又、再建外科用又は遺伝子療法用のアルギン酸ヒドロゲルに
て、細胞物質を取込むことが可能となる。
【0229】
4.架橋アルギン酸
架橋アルギン酸は、(i)2価の金属イオン結合を介したものと、(ii)化学結合を
介したものと、又は(iii)2価の金属イオン結合及び化学結合の両方を介したものが
ある。何れの架橋アルギン酸は、ゲル状から半固体、場合によってはスポンジ様の形態を
形成する特性を有している。
【0230】
2価の金属イオン結合を介した架橋アルギン酸は、超高速にて反応が進行し、可逆的で
あるのに対して、化学結合を介した架橋アルギン酸は、比較的温和な条件でゆっくり反応
が進行し、非可逆的である。架橋アルギン酸の物性は、例えば、使用する2価金属イオン
が含まれる水溶液(例えば、塩化カルシウム水溶液)の濃度、若しくは、アルギン酸に導
入された反応性基の導入率を変化させる等の方法で、調整が可能である。
【0231】
前記の架橋反応を利用することで、種々のアルギン酸構造体を作成することが可能とな
る。例えば、イオン架橋反応により、アルギン酸溶液から瞬時に特定の構造体を作ること
ができ、当該構造体の構造強化(例えば、長期安定性の獲得、等)の為に、化学結合によ
る架橋反応を利用すること可能である。又、例えば、2価の金属イオン結合及び化学結合
の両方を介した架橋アルギン酸構造体において、イオン架橋により取り込まれた2価金属
イオンは可逆的に放出されて、化学結合による架橋のみが残った構造体を作ることも可能
である。
【0232】
ある態様の架橋アルギン酸は、前記式(I)及び前記式(II)のアルギン酸誘導体を
混合してHuisgen反応を行うことにより、得ることができる。
【0233】
ある態様の架橋アルギン酸は、化学架橋(アルキン基及びアジド基から形成されるトリ
アゾール環による架橋)を介して三次元の網目構造を形成する。好ましいアルギン酸誘導
体は、架橋後の架橋アルギン酸の安定性が改善したものである。
【0234】
いくつかの態様の架橋アルギン酸は、第1のアルギン酸の任意のカルボキシル基と第2
のアルギン酸の任意のカルボキシル基間が下記式(III-L):
【化35】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-は、アルギン酸の任意のカ
ルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
1-、-L
2-、及びXは、前記第8の
態様中の定義と同じである]を介してアミド結合した架橋アルギン酸である。
【0235】
いくつかの態様にて、架橋アルギン酸を調製する際の、式(I)のアルギン酸誘導体と
、式(II)のアルギン酸誘導体の混合比は、式(I)の誘導体と式(II)誘導体の重
量比にて、例えば、1~1.5:1、好ましくは、1.2~1.5:1、または1~1.
2:1、より好ましくは1:1である。
【0236】
いくつかの態様にて、架橋アルギン酸を調製する際の、式(II)のアルギン酸誘導体
と、式(I)のアルギン酸誘導体の混合比は、式(II)の誘導体と式(I)誘導体の重
量比にて、例えば、1~4.0:1、好ましくは1.5~4.0:1、または1.2~1
.5:1、または1~1.2:1、より好ましくは1:1である。
【0237】
いくつかの態様にて、架橋アルギン酸を調製する際の、式(I)のアルギン酸誘導体と
、式(II)のアルギン酸誘導体の混合比は、より好ましくは式(I)のアルギン酸誘導
体と式(II)のアルギン酸誘導体の反応性基の導入率(mol%)比にて、例えば、1
~1.5:1、好ましくは、1.2~1.5:1、または1~1.2:1、より好ましく
は1:1である。
【0238】
いくつかの態様にて、架橋アルギン酸を調製する際の、式(II)のアルギン酸誘導体
と、式(I)のアルギン酸誘導体の混合比は、より好ましくは式(II)のアルギン酸誘
導体と式(I)のアルギン酸誘導体の反応性基の導入率(mol%)比にて、例えば、1
~4.0:1、好ましくは1.5~4.0:1、または1.2~1.5:1、または1~
1.2:1、より好ましくは1:1である。
【0239】
尚、前記混合比において、式(I)のアルギン酸誘導体を式(II)のアルギン酸誘導
体に、式(II)のアルギン酸誘導体を式(I)の誘導体に、それぞれ置き換えることも
可能である。
【0240】
架橋アルギン酸は、アルギン酸の構成単位の全てのカルボキシル基が上記式(III-
L)の架橋を有している必要はない。架橋アルギン酸における、上記式(III-L)で
表わされる架橋の導入率(架橋率とも言う)は、例えば、約0.1~約80%、約0.3
~約60%、約0.5~約30%、または約1.0~約10%の範囲である。
【0241】
架橋アルギン酸を得るためのHuisgen反応における式(I)又は式(II)のア
ルギン酸誘導体の濃度は、通常約1~約500mg/mLであり、好ましくは約5~約1
00mg/mLの範囲である。
【0242】
Huisgen反応の反応温度は、通常、外温約4~約60℃であり、好ましくは外温
約15~約40℃の範囲である。
【0243】
架橋アルギン酸(ヒドロゲル)を形成させる為の撹拌時間は、例えば、数秒~約24時
間、数秒~約12時間、数秒~約30分間、又は、数秒~約10分間である。
【0244】
Huisgen反応に用いる反応溶媒又は反応溶液は、特に限定はされないが、例えば
、水道水、純水(例えば、蒸留水、イオン交換水、RO水、RO-EDI水、等)、超純
水、細胞培養用培地、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及び生理食塩水等が挙げられ、
好ましくは超純水である。
【0245】
いくつかの態様の架橋アルギン酸は、架橋としてHuisgen反応により形成される
トリアゾール環による化学架橋、及び2価金属イオンにより部分的に形成されるされるイ
オン架橋を含む、架橋アルギン酸である。
【0246】
5.架橋アルギン酸構造体
架橋アルギン酸構造体は、前記式(I)のアルギン酸誘導体及び式(II)のアルギン
酸誘導体を用いて架橋反応を施すことを含む方法により得ることができる。
【0247】
本明細書中、「架橋反応を施す」又は「架橋反応を行う」とは、前記式(I)のアルギ
ン酸誘導体及び前記式(II)のアルギン酸誘導体を用いて、Huisgen反応を行う
ことにより、当該式(I)のアルギン酸誘導体及び式(II)のアルギン酸誘導体間で化
学架橋(化学結合)が形成されること、又は、前記式(I)のアルギン酸誘導体及び前記
式(II)のアルギン酸誘導体に2価の金属イオンを共存させることにより当該式(I)
のアルギン酸誘導体及び/又は式(II)のアルギン酸誘導体の各誘導体間でイオン架橋
(イオン結合)が形成されること、又は前記Huisgen反応による化学架橋及び2価
の金属イオンによるイオン架橋の両方が形成されることを意味する。
【0248】
架橋アルギン酸構造体は、例えば、以下の方法によって調製することが可能だが、これら
に限定されるものでない。
【0249】
[混和法]
前記式(I)のアルギン酸誘導体及び前記式(II)のアルギン酸誘導体を混和して得
られるアルギン酸誘導体の混合溶液を、2価金属イオンを含む溶液中に滴下することで、
化学架橋(Huisgen反応によりアルキン基及びアジド基から形成されるトリアゾー
ル環による架橋)及びイオン架橋(2価金属イオンにより部分的に形成される架橋)が形
成された、特定の構造体である、架橋アルギン酸構造体を得ることができる。
【0250】
[コーティング法]
前記式(I)のアルギン酸誘導体を含む溶液を、2価金属イオンを含む溶液中に滴下す
る等して部分的に架橋された特定の構造体が得られる。前記で得られた、例えばゲル等の
構造体を、前記式(II)のアルギン酸誘導体を含む溶液に添加することにより、前記構
造体の表面等にさらなる架橋反応(Huisgen反応)を施すことにより、架橋アルギ
ン酸構造体を得ることができる。尚、この方法は、式(I)のアルギン酸誘導体を式(I
I)のアルギン酸誘導体に、式(II)のアルギン酸誘導体を式(I)のアルギン酸誘導
体に、それぞれ置き換えて実施することも可能である。
【0251】
前記方法にて用いる2価金属イオンとしては、特に限定されないが、例えば、カルシウ
ムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン、亜鉛イオン、
等の群から選択される2価金属イオンが挙げられ、;好ましくは、カルシウムイオン又は
バリウムイオンであり;より好ましくは、カルシウムイオンである。
【0252】
前記方法にて用いる2価金属イオンを含む溶液としては、特に限定されないが、例えば
、塩化カルシウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、グルコン酸カルシウム水溶液、又は塩
化バリウム水溶液、等の群から選択される水溶液が挙げられ、好ましくは、塩化カルシウ
ム水溶液又は塩化バリウム水溶液であり;より好ましくは、塩化カルシウム水溶液である
。
【0253】
前記方法にて用いる2価金属イオンを含む溶液の2価金属イオン濃度は、特に限定され
ないが、例えば、約1mM~約1Mが挙げられ、好ましくは、約5mM~約500mMで
あり、より好ましくは、約10mM~約300mMである。
【0254】
前記方法にて用いる溶媒または溶液も特に限定されないが、例えば、水道水、純水(例
えば、蒸留水、イオン交換水、RO水、RO-EDI水、等)、超純水、細胞培養用培地
、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及び生理食塩水等が挙げられ、好ましくは超純水で
ある。
【0255】
特定の架橋アルギン酸構造体としては、例えば、繊維状構造体、ファイバー、ビーズ、
ゲル、略球形のゲル、等が挙げられる。好ましい架橋アルギン酸構造体は、安定性が改善
したものである。又、架橋アルギン酸構造体は、その内部に内容物を保持する能力(内容
物保持性)を有していてもよい。
【0256】
アルギン酸ゲルの物性は、硬さ、弾性、反発力、断裂力、破断時応力、等の物性値によ
り調節することが可能である。
【0257】
6.アルギン酸誘導体、架橋アルギン酸構造体の生体適合性
本明細書において、アルギン酸誘導体、架橋アルギン酸又は架橋アルギン酸構造体は、
生体適合性を有する。本明細書において、生体適合性とは、生体用材料(ここでは、式(
I)又は式(II)で表わされるアルギン酸誘導体、及び当該両アルギン酸誘導体を用いて
製造された架橋アルギン酸又は架橋アルギン酸構造体のことを言う)と生体間の相互作用
、前記生体用材料に隣接する組織の局所的反応、又は全身的反応等の反応を引き起こさな
い性質を、生体適合性(biocompatibility)を有するという。
【0258】
本明細書において、アルギン酸誘導体、架橋アルギン酸又は架橋アルギン酸構造体の生
体適合性に関しては、後述する生体適合性に関する実施例にて確認する。
【0259】
7.架橋アルギン酸構造体の安定性
架橋アルギン酸構造体の安定性は、例えば、ゲル安定性を測定すること、透過性はゲル
透過率を測定することなどで確認することができる。
【0260】
[ゲル安定性の測定法]
容器に入れた架橋アルギン酸構造体ゲルにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を添加し、
PBS中に溶出したアルギン酸の濃度(μg/mL)を測定する。測定したアルギン酸濃
度から溶出アルギン酸量を算出し、架橋アルギン酸構造体ゲルを分解することで得た全ア
ルギン酸濃度から算出した全アルギン酸量で除した値を百分率で示した値を、崩壊率とす
る。ゲル安定性は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0261】
本明細書中、架橋アルギン酸構造体のゲル崩壊率は、好ましくは0%~約90%であり
、より好ましくは0%~約70%であり、更に好ましくは0%~約50%である。架橋ア
ルギン酸構造体の安定性は、水溶液中に漏出するアルギン酸の濃度が低いほど、すなわち
ゲル崩壊率が低いほど、安定性が高いことを意味する。
【0262】
[ゲル透過率の測定法]
フルオレセインイソチオシアナート-デキストランを内包した架橋アルギン酸構造体ゲ
ルを作製し、容器に入れた前記ゲルに生理食塩水を添加し、生理食塩水中に漏出したデキ
ストラン濃度を測定する。測定したデキストランの濃度から算出したデキストラン量を、
フルオレセインイソチオシアネート-デキストラン内包架橋アルギン酸構造体ゲルを分解
することで得た全デキストラン濃度から算出した全デキストラン量で除した値を百分率で
示した値がゲル透過率である。ゲル透過率は、具体的には、後述の実施例に記載の方法に
より求めることができる。
【0263】
架橋アルギン酸の生理食塩水添加24時間後のゲル透過率は、例えば、分子量約200
万のデキストランを内包した場合、好ましくは0%~約90%であり、より好ましくは0
%~約70%であり、更に好ましくは0%~約50%である。又、分子量約15万のデキ
ストランを内包した場合、例えば、当該架橋アルギン酸構造体ゲルの使用目的がたんぱく
質や抗体の放出・産生であるならば、好ましくは約1%~約100%であり、より好まし
くは約10%~約100%であり、更に好ましくは約30%~約100%である。又、使
用目的が免疫隔壁であるならば、好ましくは0%~約90%であり、より好ましくは0%
~約70%であり、更に好ましくは0%~約50%である。
【0264】
架橋アルギン酸構造体の透過性は、透過率が低いほど、内容物やゲル外物質の透過性が
低いことを意味し、透過率が高いほど、内容物やゲル外物質の透過性が高いことを意味す
る。
【0265】
ゲルの透過率は、使用するアルギン酸の分子量、濃度、アルギン酸に導入する反応性基
の種類や導入率、ゲル化に用いる2価金属イオンの種類や濃度、またはこれらの組み合わ
せによって調整することが可能である。
【0266】
[内容物が内包した架橋アルギン酸構造体ゲルの調製方法]
例えば、内容物としてフルオレセインイソチオシアナート-デキストランを内包した架
橋アルギン酸構造体ゲルは以下の方法にて調製できる。
【0267】
(1)式(I)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液とフルオレセインイソチオシアナー
ト-デキストラン溶液を混和する。
(2)(1)で得られた混合溶液に、式(II)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液を
混和する。
((1)の式(I)を式(II)に変更する場合、(2)の式(II)は式(I)に変更
することになる)
(3)(2)で得られた混合溶液を、カルシウムイオンを含む溶液中に滴下し得られたゲ
ルが、溶液中で、化学架橋及びイオン架橋を形成することにより、フルオレセインイソチ
オシアナート-デキストラン内包の架橋アルギン酸構造体ゲルが得られる。
【0268】
本明細書中の記載において「約」と記載した場合、特に断りが無い場合には、当該数値
の±20%迄、好ましくは当該数値の±10%迄の値も含み得るものである。
【0269】
8.アルギン酸誘導体の合成方法
本明細書において、式(I)又は式(II)で表わされるアルギン酸誘導体は、各々、
H2N-L1-Akn(式中、L1及びAknは、前記態様[1]中の定義と同じである
)で表わされるアミン誘導体(AM-1)、又は、H2N-L2-N3(式中、L2は、
前記態様[4]中の定義と同じである)で表わされるアミン誘導体(AM-2)を、アル
ギン酸類の任意のカルボキシル基とを、縮合剤を用いる縮合反応により製造することがで
きる。
【0270】
【0271】
[式(I)のアルギン酸誘導体の製法]
0.5重量%~1重量%のアルギン酸水溶液及び式(AM-1)で表わされるアミンを
用いて、文献公知の方法、例えば、『実験化学講座 第5版 16、有機化合物の合成I
V、カルボン酸および誘導体、エステル類、p35-70、酸アミドおよび酸イミド、p
118-154、アミノ酸・ペプチド、p258-283、2007年、丸善』等に記載
された方法に準じて、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル
-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC・HCl)、ベン
ゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロ
ホスフェイト(BOP試薬)、ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィニッ
ククロリド(BOP-Cl)、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフ
ルオロホスフェイト(CIP)、又は4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジ
ン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)、等から選択され
る縮合剤の存在下、アルギン酸が析出しない程度の、テトラヒドロフラン、1,4-ジオ
キサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2-プロパノール、等のアルコー
ル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド等の極性溶媒等から選択される溶媒と水との混
合溶媒中、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基、又はトリエチルアミン、
ピリジン等の有機塩基の存在下又は非存在下にて、0℃から50℃間の温度で縮合反応を
行うことにより、式(I)のアルギン酸誘導体を製造することができる。
【0272】
[式(II)のアルギン酸誘導体の製法]
0.5重量%~1重量%のアルギン酸水溶液及び式(AM-2)で表わされるアミンを
用いて、前述の[式(I)のアルギン酸誘導体の製法]に準じて反応をおこなうことによ
り、式(II)のアルギン酸誘導体を製造することができる。
【0273】
前記、式(I)のアルギン酸誘導体又は式(II)のアルギン酸誘導体の製法において
、式(AM-1)又は式(AM-2)のアミンの導入率は、当該アミンの性質等を考慮す
ることで、下記(i)~(v)等の反応条件を適宜選択して組み合わせることにより調節
が可能になる。(i)縮合剤の等量の増減、(ii)反応温度の上昇・下降、(iii)
反応時間の延長・短縮、(iv)反応基質のアルギン酸の濃度の調整、(v)式(AM-
1)又は式(AM-2)のアミンの溶解度を上げる為に水に混和する有機溶媒を添加する
、等。
【0274】
以下に、式(AM-1)又は式(AM-2)で表わされるアミンのうち、より具体的な
アミンの製造方法を示す。
【0275】
尚、以下の各製造方法中、m1、n1、m2a、n2a、p2a、m2b、n2b、p
2b、m3、n3、p3、m4a、n4a、m4b、n4b、m5a、n5a、p5a、
q5a、m5b、n5b、p5b、q5b、m6a、n6a、p6a、m6b、n6b、
p6b、m7、n7、m8a、n8a、m8b、n8b、m9a、n9a、p9a、m9
b、n9b、p9b、m10、n10、p10、m11、m12、n12、p12、x1
、x2、x2a、y2a、x2b、y2b、x3、y3、x4、y4、z4、x5a、y
5a、x5b、y5b、x6a、y6a、z6a、v6a、x6b、y6b、z6b、v
6b、x7a、y7a、z7a、x7b、y7b、z7b、x8a、y8a、z8a、x
8b、y8b、z8b、x9a、y9a、z9a、x9b、y9b、z9b、x10及び
y10の定義は前記態様[1]中の記載と同じ定義であり;P1は-C(O)O-ter
tBu基、-C(O)O-Bn基、-C(O)CH3基、-C(O)CF3基、-SO2
Ph、-SO2PhMe基、-SO2Ph(NO2)基、等から選択されるアミノ基の保
護基であり;E=ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、等)、
-OTs基、-OMs基、等の脱離基である。
【0276】
又、以下の各製造方法中、保護基P1の保護・脱保護は、文献公知の方法、例えば、『
プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective
Groups in Organic Synthesis 4thEdition)
第4版、2007年、ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley &
Sons)、グリーン(Greene)ら』の成書に記載された脱保護の方法に準じて
、保護・脱保護を行うことができる。
【0277】
[製造方法AM-A]式(AM-1-B1)で表されるアミンの製造方法:
【化37】
式(SM-B1)の化合物及び式(RG-B1)の化合物[式(SM-B1)の化合物
及び式(RG-B1)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法によ
り製造できる化合物であり]を用いて、前記[式(I)のアルギン酸誘導体の製法]と同
様な縮合反応を行い、続いて保護基P
1を脱保護することにより式(AM-1-B1)で
表されるアミン化合物、又はその塩を製造することができる。
【0278】
[製造方法AM-B]式(AM-1-B2a)及び式(AM-1-B2b)で表されるア
ミンの製造方法:
【化38】
【0279】
式(SM-B2a)の化合物及び式(RG-B2a)の化合物[式(SM-B2a)の
化合物及び式(RG-B2b)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造
方法により製造できる化合物であり]を用いて、[製造方法AM-A]と同様にして、反
応させることで式(AM-1-B2a)で表されるアミン化合物、又はその塩を製造する
ことができる。同様にして、式(SM-B2b)の化合物及び式(RG-B2b)の化合
物[式(SM-B2b)の化合物及び式(RG-B2b)の化合物は市販化合物又は市販
化合物から文献公知の製造方法により製造できる化合物であり]を用いて同様に反応を行
うことで、式(AM-1-B2b)で表されるアミン化合物、又はその塩を製造すること
ができる。
【0280】
[製造方法AM-C]式(AM-1-B3)で表されるアミンの製造方法:
【化39】
【0281】
式(SM-B3)の化合物[式(SM-B3)の化合物は市販化合物又は市販化合物か
ら文献公知の製造方法により製造できる化合物であり]を用いて、上記合成スキームに従
い反応を行うことで(各工程の反応は[製造方法AM-A]に記載の反応に準じる)、式
(AM-1-B3)で表されるアミン化合物、又はその塩を製造することができる。上記
スキーム中、式(RG-B3)、式(RG-B3-1)、及び式(RG-B3-2)の化
合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法により製造できる化合物である
。
【0282】
[製造方法AM-D]式(AM-1-B5a)及び式(AM-1-B5b)で表されるア
ミンの製造方法:
【化40】
【0283】
上記合成スキームに従い反応を行うことで(各工程の反応は[製造方法AM-A]に記
載の反応に準じる)、式(AM-1-B5a)及び式(AM-1-B5b)で表されるア
ミン化合物、又はその塩を製造することができる。上記スキーム中、式(SM-B5a)
、式(RG-B5a)、式(RG-B5a-1)、式(RG-B5a-2)、式(SM-
B5b)、式(RG-B5b)、式(RG-B5b-1)、及び式(RG-B5b-2)
の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法により製造できる化合物で
ある。
【0284】
[製造方法AM-E]式(AM-1-B6a)及び式(AM-1-B6b)で表されるア
ミンの製造方法:
【化41】
【0285】
上記合成スキームに従い反応を行うことで(各工程の反応は[製造方法AM-A]に記
載の反応に準じる)、式(AM-1-B6a)及び式(AM-1-B6b)で表されるア
ミン化合物、又はその塩を製造することができる。上記スキーム中、式(SM-B6a)
、式(RG-B6a)、式(SM-B6b)、及び式(RG-B6b)の化合物は市販化
合物又は市販化合物から文献公知の製造方法により製造できる化合物である。
【0286】
[製造方法AM-F]式(AM-1-B10)で表されるアミンの製造方法:
【化42】
【0287】
上記合成スキームに従い反応を行うことで(各工程の反応は[製造方法AM-A]に記
載の反応に準じる)、式(AM-1-B10)で表されるアミン化合物、又はその塩を製
造することができる。上記スキーム中、式(SM-B10)、式(RG-B10)、式(
RG-B10-1)、及び式(RG-B10-2)の化合物は市販化合物又は市販化合物
から文献公知の製造方法により製造できる化合物である。
【0288】
[製造方法AM-G]式(AM-1-B4a)及び式(AM-1-B4b)で表されるア
ミンの製造方法:
【化43】
【0289】
式(SM-B4)の化合物及び式(RG-B4a)の化合物[式(SM-B4)の化合
物及び式(RG-B4a)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法
により製造できる化合物であり]を用いて、文献公知の方法、例えば、『Journal
of the American Chemical Society、126(46
)、p15046-15047、2004年』等に記載された方法に準じて、<工程1a
>トリフルオロメタンスルホン酸銀、AgClO4等の試薬存在下、トルエン、ジクロロ
メタン等の反応に関与しない溶媒中反応させることで、式(IM-B4a-1)の化合物
が得られ、<工程2a>続いて水素化ナトリウム、NaOMe等の塩基を用いて脱臭素化
反応を行うことにより式(IM-B4a-2)の化合物が得られ、<工程3a>更に、保護
基P1を脱保護することにより式(AM-1-B4a)で表されるアミン化合物、又はそ
の塩を製造することができる。
同様にして、式(RG-B4a)の代わりに、式(RG-B4b)を用いて、上記スキ
ームに従い反応を行うことにより式(AM-1-B4b)で表されるアミン化合物、又は
その塩を製造することができる。
【0290】
[製造方法AM-H]式(AM-1-B8a)及び式(AM-1-B8b)で表されるア
ミンの製造方法:
【化44】
【0291】
上記合成スキームに従い反応を行うことで(各工程の反応は[製造方法AM-A]に記
載の反応に準じる)、式(AM-1-B8a)及び式(AM-1-B8b)で表されるア
ミン化合物、又はその塩を製造することができる。上記スキーム中、式(SM-B8a)
又は式(SM-B8b)は、市販化合物又は[製造方法AM-G]に記載の反応に準じて
製造ができる化合物であり、式(RG-B8a)又は式(RG-B8b)の化合物は市販
化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法により製造できる化合物である。
【0292】
[製造方法AM-J]式(AM-1-B7)で表されるアミンの製造方法:
【化45】
【0293】
式(SM-B7)の化合物及び式(RG-B7)の化合物[式(SM-B7)の化合物
及び式(RG-B7)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法によ
り製造できる化合物であり]を用いて、前記[式(I)のアルギン酸誘導体の製法]と同
様な縮合反応を行い、続いて保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-B7)で
表されるアミン化合物、又はその塩として製造することができる。
【0294】
[製造方法AM-J-2]式(AM-1-B7)で表されるアミンの製造方法:
【化46】
【0295】
式(SM-B7)の化合物及び式(RG-B7-2)の化合物[式(SM-B7)の化
合物及び式(RG-B7-2)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造
方法により製造できる化合物であり]を用いて、前記[式(I)のアルギン酸誘導体の製
法]と同様な縮合反応を行い(<工程1>及び<工程2>)、続いて保護基P1を脱保護
し、続いて、式(RG-B7-3)の化合物(市販化合物又は市販化合物から文献公知の
製造方法により製造できる化合物であり)を用いて、前記<工程1>と同様な縮合反応を
行い、続いて保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-B7)で表されるアミン
化合物、又はその塩として製造することができる。
【0296】
[製造方法AM-K]式(AM-1-B9a)及び式(AM-1-B9b)で表されるア
ミンの製造方法:
【化47】
【0297】
上記合成スキームに従い反応を行うことで(各工程の反応は[製造方法AM-J]に記
載の反応に準じる)、式(AM-1-B9a)及び式(AM-1-B9b)で表されるア
ミン化合物、又はその塩を製造することができる。上記スキーム中、式(SM-B7)、
式(RG-B9a)又は式(RG-B9b)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文
献公知の製造方法により製造できる化合物である。
【0298】
[製造方法AM-L]式(AM-2-Z1)で表されるアミンの製造方法:
【化48】
【0299】
式(SM-Z1)の化合物[式(SM-Z1)の化合物は市販化合物又は市販化合物か
ら文献公知の製造方法により製造できる化合物であり]を用いて、文献公知の方法、例え
ば、『Organometallics,29(23),p6619-6622;201
0年』等に記載された方法に準じて、ジメチルスルホキシド等の反応に関与しない溶媒中
、NaN3を反応させアジド基を導入した後、保護基P1を脱保護することにより式(A
M-2-Z1)で表されるアミン化合物、又はその塩を製造することができる。
尚、式(AM-2-Z1)で表されるアミン化合物、又はその塩は、市販化合物として
入手可能なものもある。
【0300】
[製造方法AM-M]式(AM-2-Z2a)及び式(AM-2-Z2b)で表されるア
ミンの製造方法:
【化49】
【0301】
式(SM-Z2a)の化合物又は式(SM-Z2b)の化合物[式(SM-Z2a)の化
合物及び式(SM-Z2b)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方
法により製造できる化合物であり]を用いて、[製造方法AM-L]と同様にして、Na
N3を反応させアジド基を導入した後、保護基P1を脱保護することにより式(AM-2
-Z2a)又は式(AM-2-Z2b)で表されるアミン化合物、又はその塩を製造するこ
とができる。尚、式(AM-2-Z2a)又は式(AM-2-Z2b)で表されるアミン化
合物、又はその塩は、市販化合物として入手可能なものもある。
【0302】
[製造方法AM-N]式(AM-2-Z3)で表されるアミンの製造方法:
【化50】
【0303】
式(SM-Z3)の化合物及び式(RG-Z3)の化合物[式(SM-Z3)の化合物
及び式(RG-Z3)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法によ
り製造できる化合物であり]の化合物を用いて、前記[式(I)のアルギン酸誘導体の製
法]と同様な縮合反応を行い、続いて保護基P1を脱保護することにより式(AM-2-
Z3)で表されるアミン化合物、又はその塩を製造することができる。
【0304】
[製造方法AM-O]式(AM-2-Z4)で表されるアミンの製造方法:
【化51】
【0305】
式(SM-Z4)の化合物及び式(RG-Z4)の化合物[式(SM-Z4)の化合物
及び式(RG-Z4)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法によ
り製造できる化合物であり]を用いて、前記[式(I)のアルギン酸誘導体の製法]と同
様な縮合反応を行い、続いて保護基P1を脱保護することにより式(AM-2-Z4)で
表されるアミン化合物、又はその塩を製造することができる。
【0306】
[製造方法AM-P]式(AM-2-Z5a)及び式(AM-2-Z5b)で表されるアミ
ンの製造方法:
【化52】
【0307】
式(SM-Z5a)の化合物及び式(RG-Z5a)の化合物[式(SM-Z5a)の化
合物及び式(RG-Z5a)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方
法により製造できる化合物であり]を用いて、水素化ナトリウム、炭酸カリウム等の塩基
存在下、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、
ジメチルスルホキシド、等の反応に関与しない溶媒中で反応させることで、側鎖が導入さ
れた化合物が得られる。続いて保護基P1を脱保護することにより、式(AM-2-Z5
a)で表されるアミン化合物、又はその塩を製造することができる。
同様にして、式(SM-Z5b)の化合物及び式(RG-Z5b)の化合物[式(SM
-Z5b)の化合物及び式(RG-Z5b)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文
献公知の製造方法により製造できる化合物であり]を用いて同様に反応を行うことで、式
(AM-2-Z5b)で表されるアミン化合物、又はその塩を製造することができる。
【0308】
式(AM-2-Z6a)、式 (AM-2-Z6b)、式(AM-2-Z7a)、式
(AM-2-Z7b)、式 (AM-2-Z8a)、式(AM-2-Z8b)、式(AM
-2-Z9a)、及び式(AM-2-Z9b)で表わされるアミノ化合物、又はそれらの
塩は、前記[製造方法AM-A]~[製造方法AM-P]に準じて、下記スキームに示す
製造方法により製造することができる。
【0309】
【0310】
【0311】
【0312】
【0313】
[製造方法AM-Q]式(AM-2-Z10)で表されるアミンの製造方法:
【化57】
【0314】
<工程1> 式(SM-Q)の化合物[式(SM-Q)の化合物は市販化合物又は市販化
合物から文献公知の製造方法により製造できる化合物である]及び式(RG-Q1)の化
合物[式(RG-Q1)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法に
より製造できる化合物である]を用いて、文献公知の方法、例えば、『European
Journal of Organic Chemistry, 2014(6),
p1280-1286; 2014年』等に記載された方法に準じて、(i)PPh3、
及びN2(CO2CHMe2)2の試薬存在下、テトラヒドロフラン等の反応に関与しな
い溶媒中、光延反応を行い、続いて水酸化ナトリウム等の塩基存在下、メタノール、エタ
ノール、テトラヒドロフラン、水等の反応に関与しない溶媒若しくはそれらの混合溶媒中
、エステル基の加水分解を行うことにより、式(IM-Q1)で表される化合物を製造す
ることができる。
【0315】
<工程2>[製造方法AM-Q]<工程1>で得られる式(IM-Q1)の化合物及び式
(RG-Q2)の化合物[式(RG-Q2)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文
献公知の製造方法により製造できる化合物である]の化合物を用いて、前記[式(I)の
アルギン酸誘導体の製法]と同様な縮合反応を行うことにより縮合体が得られ、続いて保
護基P1を脱保護することにより式(AM-2-Z10)で表されるアミン化合物、又は
その塩を製造することができる。
【0316】
[製造方法AM-R]式(AM-1-B10)で表されるアミンの製造方法:
【化58】
【0317】
<工程1> 式(SM-R)の化合物[式(SM-R)の化合物は市販化合物又は市販化
合物から文献公知の製造方法により製造できる化合物であり]を用いて、文献公知の方法
、例えば、『Faming Zhuanli Shenqing, 104529898
, 22 Apr 2015年』等に記載された方法に準じて、(i)ピリジン等の塩基
存在下、エタノール等の反応に関与しない溶媒中、H2NOH-HClを反応させオキシ
ムを形成させ、続いて(ii)P2O5, メタンスルホン酸中、五酸化二リンを反応さ
せ、ベックマン転移を行うことにより8員環ラクタムを形成させる、続いて(iii)ジ
エチルエーテール等の反応に関与しない溶媒中、BH3、LiAlH4等の還元剤を用い
てアミド基の還元を行ことにより、式(IM-R1)で表される化合物を製造することが
できる。
【0318】
<工程2> [製造方法AM-R]<工程1>により得られる式(IM-R1)の化合物
及び式(RG-R1)の化合物[式(RG-R1)の化合物は市販化合物又は市販化合物
から文献公知の製造方法により製造できる化合物である]を用いて、前記[式(I)のア
ルギン酸誘導体の製法]と同様な縮合反応を行い縮合体が得られる、続いて臭素を付加さ
せて後、tert-BuOKを用いて脱臭素化反応を行うことによりアルキン基を形成し
、続いて保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-B10)で表されるアミン化
合物、又はその塩を製造することができる。
【0319】
[製造方法AM-S]式(AM-2-Z11)で表されるアミンの製造方法:
【化59】
【0320】
式(SM-S)の化合物及び式(RG-S1)の化合物[式(SM-S)の化合物及び式
(RG-S1)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法により製造
できる化合物である]を用いて、前記[式(I)のアルギン酸誘導体の製法]と同様な縮
合反応を行い、続いて保護基P1を脱保護することにより、式(AM-2-Z11)で表
わされる化合物、又はその塩を製造することができる。
【0321】
[製造方法AM-T]
式(AM-1-T1)及び式(AM-1-T2)で表されるアミンの製造方法:
【化60】
【0322】
<工程1> 式(SM-T)の化合物および式(RG-T-1)の化合物[式(SM-T
)の化合物および式(RG-T-1)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知
の製造方法により製造できる化合物である]を用いて、文献公知の方法、例えば、WO2
004/035017等に記載された方法に準じて、グリニャール反応を行い、続いて酸
化反応を行うことで、式(IM-T-1)の化合物を得る。
【0323】
<工程2> 式(IM-T-1)の化合物のカルボニル基を保護した後(例えば、アセタ
ール基等)、シクロオクテン環に臭素を付加させた後、tert-BuOK等の塩基を用
いて脱臭素化反応を行い、続いてカルボニル基の保護基及び保護基P1を脱保護すること
で、式(AM-1-T1)で表されるアミン、又はその塩を製造する。
【0324】
<工程3> 式(AM-1-T1)のアミン又はその塩と式(RG-T-2)の化合物[
式(RG-T-2)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法により
製造できる化合物である]を用いて、縮合反応を行い、保護基P1を脱保護することによ
り、式(AM-1-T2)で表されるアミン、又はその塩を製造する。
【0325】
[製造方法AM-U]
式(AM-1-U1)及び式(AM-1-U2)で表されるアミンの製造方法:
【化61】
【0326】
前記[製造方法AM-T]において、式(SM-T)の化合物を式(SM-U)の化合物
[式(SM-U)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法により製
造できる化合物である]に置き換えて、[製造方法AM-T]に記載の方法に準じて反応
を行うことにより、式(AM-1-U1)及び式(AM-1-U2)で表されるアミン、
又はその塩を製造する。
【0327】
前記[製造方法AM-T]及び[製造方法AM-U]の<工程1>で用いるアルデヒドを
、下記式(RG-T-3)または式(RG-T-4)のアルデヒド[式(RG-T-3)
の化合物及び式(RG-T-4)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製
造方法により製造できる化合物である]に置き換えて行うことにより、対応するリンカー
を有するアミン、又はその塩を製造する。
【化62】
[製造方法AM-V]
式(AM-1-V1)及び式(AM-1-V2)で表されるアミンの製造方法:
【化63】
【0328】
<工程1> 式(SM-V)の化合物[式(SM-V)の化合物は市販化合物又は文献公
知の方法、例えば、Bioorganic & Medicinal Chemistr
y,23(22),p7150-7157,2015年等に記載された方法により製造で
きる]を用いて、常法に従い酸クロライドに変換した後、式(RG-V-1)の化合物[
式(RG-V-1)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法により
製造できる化合物であり]を用いてグリニャール反応を行い、続いて保護基P1を脱保護
することで、式(AM-1-V1)で表されるアミン、又はその塩を製造する。
【0329】
<工程2> 式(AM-1-V1)のアミン又はその塩と式(RG-T-1)の化合物を
用いて、縮合反応を行い、保護基P1を脱保護することにより、式(AM-1-V2)で
表されるアミン、又はその塩を製造する。
【0330】
前記[製造方法AM-V]の<工程1>で用いる化合物を、下記式の化合物[各化合物は
市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法により製造できる]に置き換えて反応
を行うことにより対応するリンカーを有するアミン、又はその塩を製造する。
【化64】
【0331】
[製造方法AM-W]
式(AM-1-W1)及び式(AM-1-W2)で表されるアミンの製造方法:
【化65】
【0332】
前記[製造方法AM-V]において、式(SM-V)の化合物を式(SM-W)の化合物
[式(SM-W)の化合物は市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法により製
造できる化合物である]に置き換えて、[製造方法AM-V]に記載の方法に準じて反応
を行うことにより、式(AM-1-W1)及び式(AM-1-W2)で表されるアミン、
又はその塩を製造する。
【0333】
前記[製造方法AM-W]の<工程1>で用いる化合物を、下記式の化合物[各化合物は
市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法により製造できる]に置き換えて反応
を行うことにより対応するリンカーを有するアミン、又はその塩を製造する。
【化66】
【0334】
式(I)又は式(II)で表わされるアルギン酸誘導体を製造する為に用いられる、ア
ルキン基が導入されたアミン(Akn-L1-NH2)又はアジド基が導入されたアミン
(N3-L2-NH2)については、前記[製造方法AM-A]~[製造方法AM-P]
等に記載される各反応、文献公知の方法、例えば、『実験化学講座 第5版、各本、20
07年、丸善』、『Comprehensive Organic Transformations, A Guide to Functional G
roup Preparations, 3rd Edition (Edited by Richard C. Larock), 2018年』、『Strate
gic Applications of Named Reactions in Organic Synthesis, (Edited by Laszlo Kurt
i, Barbara Czako), Academic Press, 2005年』等に記載の方法を適宜組み合わせること
により、所望のアミンを製造することができる。
【0335】
本明細書中、式(AM-1)又は式(AM-2)で表わされるアミン化合物(各々の式
の下位の式も含む)は、製薬学的に許容される塩(例えば、酸付加塩)を形成する場合が
ある。かかる塩としては、製薬学的に許容し得る塩であれば特に限定されないが、例えば
、無機酸との塩、有機酸との塩、酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。無機酸との塩の
好適な例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、よう化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等と
の塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオ
ロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、エナント酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミ
チン酸、ステアリン酸、乳酸、ソルビン酸、マンデル酸等の脂肪族モノカルボン酸等との
塩、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸等の脂肪
族ジカルボン酸との塩、クエン酸等の脂肪族トリカルボン酸との塩、安息香酸、サリチル
酸等の芳香族モノカルボン酸との塩、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸の塩、桂皮酸、グ
リコール酸、ピルビン酸、オキシル酸、サリチル酸、N-アセチルシステイン等の有機カ
ルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の
有機スルホン酸との塩、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸類との酸付加塩
が挙げられる。酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アスパラギン酸、グル
タミン酸などとの塩が挙げられる。このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。
【0336】
前記塩は、常法に従い、例えば、本発明の化合物と適量の酸もしくは塩基を含む溶液を
混合することにより目的の塩を形成させた後に分別濾取するか、もしくは該混合溶媒を留
去することにより得ることができる。塩に関する総説として、Handbook of
Pharmaceutical Salts:Properties, Selecti
on, and Use、Stahl&Wermuth(Wiley-VCH、2002
)が出版されており、本書に詳細な記載がなされている。
【0337】
本明細書中、式(AM-1)又は式(AM-2)で表わされるアミン化合物(各々の式
の下位の式も含む)又はその塩は、水、エタノール、グリセロール等の溶媒と溶媒和物を
形成し得る。
【0338】
本明細書中、特に断りのない限り、環状基に可変置換基が置換している場合、該可変置
換基は環状基の特定の炭素原子に結合されていない事を意味する。例えば、下記式Aにお
ける可変置換基Rsは、該式Aにおける炭素原子i、ii、iii、iv又はvの何れか
に置換する事ができる事を意味する。
【化67】
【0339】
本明細書中、式(I)又は式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体中のリン
カー(-L1-又は-L2-)において不斉炭素が存在する場合には、その各光学異性体
も包含されることを意味する。
【0340】
例えば、式(I)中の-L
1-が、式(L1-8a)であり、m8a=2、n8a=1
、R
1=Meの場合の下記式(L1-8a-M)(式中、破線両外側は含まない):
【化68】
である場合、R
1基が置換する炭素の立体配置がS体である下記式(L1-8a-M-S
)及びベンジル基が置換する炭素の立体配置がR体である下記式(L1-8a-M-R)
(いずれの式中、破線両外側は含まない):
【化69】
で表わされるリンカーが含まれることを意味する。
【0341】
式(I)又は式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体中のリンカー(-L1
-又は-L2-)において不斉炭素が存在する場合(光学活性体である場合)には、式(
I)又は式(II)に対応するアミン誘導体(AM-1)を合成する工程において、その
ラセミ体から通常の光学分割手段(分離手法)により、各光学活性体に分離することが可
能であり、又、式(I)に対応するアミン誘導体である式(AM-1)又は式(AM-2
)を合成する工程において、不斉合成を用いることで光学異性体の一方を選択的に合成で
き、各光学活性体を合成することが可能である。
【0342】
9.アルギン酸誘導体、架橋アルギン酸構造体の用途
アルギン酸誘導体は、食品、医療、化粧品、繊維、製紙などの幅広い分野で、従来のア
ルギン酸の代わりに用いることができる。アルギン酸誘導体または光架橋アルギン酸構造
体の好ましい用途としては、具体的には、創傷被覆材、術後癒着防止材、薬剤徐放用基材
、細胞培養用基材、細胞移植用基材等の医療用材料が挙げられる。
【0343】
医療用材料として用いる場合の架橋アルギン酸構造体の形状として、チューブ状、繊維
状、ファイバー、ビーズ、ゲル、略球形のゲル等が挙げられ、ビーズ、ゲルまたは略球形
のゲルとすることが好ましく、略球形のゲルとすることがより好ましい。
【0344】
なお、本明細書に記載した全ての文献及び刊行物は、その目的にかかわらず参照により
その全体を本明細書に組み込むものとする。
【0345】
また、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業
者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を実施できる
。発明を実施するための最良の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態
様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに
限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明
細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【実施例0346】
次に、本発明をさらに詳細に説明するために実施例、試験例をあげるが、これらの例は
単なる実施例、試験例であって、本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸
脱しない範囲で変化させてもよい。
【0347】
核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定には、JEOL JNM-ECX400 FT
-NMR(日本電子)を用いた。液体クロマトグラフィー-質量分析スペクトル(LC-
Mass)は以下の方法で測定した。[UPLC]Waters AQUITY UPL
CシステムおよびBEH C18カラム(2.1mm×50mm、1.7μm)(Wat
ers)を用い、アセトニトリル:0.05%トリフルオロ酢酸水溶液=5:95(0分
)~95:5(1.0分)~95:5(1.6分)~5:95(2.0分)の移動相およ
びグラジエント条件を用いた。
【0348】
1H-NMRデータ中、NMRシグナルのパターンで、sはシングレット、dはダブレ
ット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレット、brはブロード、Jは
カップリング定数、Hzはヘルツ、CDCl3は重クロロホルム、DMSO-d6は重ジ
メチルスルホキシド、D2Oは重水を意味する。1H-NMRデータ中、水酸基(OH)
、アミノ基(NH2)、カルボキシル基(COOH)のプロトン等、ブロードバンドであ
るため確認ができないシグナルについては、データに記載していない。
【0349】
LC-Massデータ中、Mは分子量、RTは保持時間、[M+H]+,[M+Na]
+は分子イオンピークを意味する。
【0350】
実施例中の「室温」は、通常約0℃から約35℃の温度を示すものとする。
実施例中の反応性置換基導入率(モル%)は、1H-NMR(D2O)から算出された
アルギン酸を構成する単糖(グルロン酸およびマンヌロン酸)単位のモル数に対する導入
された反応性置換基のモル数の割合を示すものとする。
【0351】
実施例において、反応性基又は相補的な反応性基が導入される前のアルギン酸ナトリウ
ムは、前記表46に記される物性値を示すアルギン酸ナトリウムを用いた。
【0352】
表48には、(実施例1)~(実施例20)で得られた、反応性基が導入されたアルギ
ン酸誘導体の物性値(具体的には、反応性基導入率(mol%)、分子量、及び重量平均
分子量(万Da))を示す。
表49-1~表49-5には、(実施例1)~(実施例20)中の中間体の1H-NM
Rが、表50には、(実施例1)~(実施例20)中の中間体のLCM-Massを示す
。
【0353】
(実施例1)
3-アジドプロピルアミノ基導入アルギン酸(EX1-A2)の合成:
【化70】
【0354】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(2
0 mL)に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-
メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(56 mg)、市販の3-アジドプロ
ピルアミン[CAS REGISTRY NO.:88192-19-2](1-1、5
.1 mg)のエタノール(2 mL)溶液、1モル濃度-重曹水(50 μL)を加え
た。30℃で3時間攪拌した後、塩化ナトリウム(0.2 g)、エタノール(40 m
L)を順次加え、30分間室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後
、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶解後凍結乾燥して、標記化合物EX1-A2(1
87 mg)を白色固体として得た。
【0355】
(実施例2)
2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エタン-1-アミノ基導入アルギン酸(E
X2-A2)の合成:
【化71】
【0356】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(1
0.9 mL)に、氷冷攪拌下、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-
2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(55.83 mg)
及び1モル濃度-重曹水(252.17 μL)を加えた。続いて、市販の2-(2-(
2-アジドエトキシ)エトキシ)エタン-1-アミン[CAS REGISTRY NO
.:166388-57-4](2-1、26.36 mg)のエタノール(1 mL)
及び水(1 mL)溶液を加え、室温で15時間攪拌した後、塩化ナトリウム(100
mg)、エタノール(21.8 mL)を順次加え、30分間室温で攪拌した。得られた
沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥し、標記化合物EX2-A2(99 mg
)を白色固体として得た。
【0357】
(実施例3)
2-アミノ-N-(3-アジドプロピル)アセタミド基導入アルギン酸(EX3-A2)
の合成:
【化72】
【0358】
<工程1>
tert-ブチル(2-(3-アジドプロピル)アミノ)-2-オキソエチル)カルバ
メート(3-2)の合成:
【化73】
市販の3-アジドプロピルアミン[CAS REGISTRY NO.:88192-
19-2](1-1、41 μL)、N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシン[
CAS REGISTRY NO.:4530-20-5](3-1、100 mg)の
エタノール(2 mL)溶液に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-
2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(197 mg)を加
え、室温で18時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を水、飽
和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られ
た油状物をメチル-tert-ブチルエーテル(10 mL)に溶解し、飽和重曹水、水
、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮して、標
記化合物3-2(95 mg)を無色油状物として得た。
【0359】
<工程2>
2-アミノ-N-(3-アジドプロピル)アセタミド 塩酸塩(3-3)の合成:
【化74】
【0360】
(実施例3)<工程1>で得られた化合物(3-2、95 mg)に、氷水冷下4規定
-塩化水素/1,4-ジオキサン(665 μL)を加えた後、室温で1時間撹拌した。
反応液に、ジイソプロピルエーテル(2.0 mL)を加え、減圧濃縮した。得られた油
状物を、メチル-tert-ブチルエーテルでデカント洗浄後、減圧濃縮して、標記化合
物3-3(62 mg)を無色ガム状物として得た。
【0361】
<工程3>
2-アミノ-N-(3-アジドプロピル)アセタミド基導入アルギン酸(EX3-A2
)の合成:
【化75】
【0362】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(2
0 mL)に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-
メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(56 mg)、(実施例3)<工程2
>で得られた化合物(3-3、10.6 mg)のエタノール(2 mL)溶液、1モル
濃度-重曹水(76 μL)を加えた。30℃で3時間攪拌した後、塩化ナトリウム(0
.2 g)、エタノール(40 mL)を順次加え、30分間室温で攪拌した。得られた
沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶解後凍結乾燥
して、標記化合物EX3-A2(207 mg)を白色固体として得た。
【0363】
(実施例4)
3-アミノ-N-(3-アジドプロピル)プロパンアミド基導入アルギン酸(EX4-A
2)の合成:
【化76】
【0364】
<工程1>
tert-ブチル(3-((3-アジドプロピル)アミノ)-3-オキソプロピル)カル
バメート(4-2)の合成:
【化77】
【0365】
市販の3-アジドプロピルアミン[CAS REGISTRY NO.:88192-
19-2](1-1、38 μL)、N-(tert-ブトキシカルボニル)-β-アラ
ニン[CAS REGISTRY NO.:3303-84-2](4-1、100 m
g)のエタノール(2 mL)溶液に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリア
ジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(146 mg
)を加え、室温で18時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を
水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮して、
標記化合物4-2(124 mg)を白色ワックス状物として得た。
【0366】
<工程2>
3-アミノ-N-(3-アジドプロピル)プロパンアミド 塩酸塩(4-3)の合成:
【化78】
【0367】
(実施例4)<工程1>で得られた化合物(4-2、124 mg)に、氷水冷下4規
定-塩化水素/1,4-ジオキサン(868 μL)を加えた後、室温で1時間撹拌した
。反応液に、ジイソプロピルエーテル(2.6 mL)を加え、減圧濃縮した。得られた
油状物を、メチル-tert-ブチルエーテルでデカント洗浄後、減圧濃縮して、標記化
合物4-3(93 mg)を無色ガム状物として得た。
【0368】
<工程3>
3-アミノ-N-(3-アジドプロピル)プロパンアミド基導入アルギン酸(EX4-A
2)の合成:
【化79】
【0369】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(2
0 mL)に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-
メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(56 mg)、(実施例4)<工程2
>で得られた化合物(4-3、12.6 mg)のエタノール(2 mL)溶液、1モル
濃度-重曹水(76 μL)を加えた。30℃で3時間攪拌した後、塩化ナトリウム(0
.2 g)、エタノール(40 mL)を順次加え、30分間室温で攪拌した。得られた
沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶解後凍結乾燥
して、標記化合物EX4-A2(211 mg)を白色固体として得た。
【0370】
(実施例5)
N-(4-(アミノメチル)ベンジル)-2-アジドアセタミド基導入アルギン酸(EX
5-A2)の合成:
【化80】
【0371】
<工程1>
tert-ブチル(4-((2-アジドアセタミド)メチル)ベンジル)カルバメート
(5-2)の合成:
【化81】
【0372】
市販の2-アジド酢酸[CAS REGISTRY NO.:18523-48-3]
(1-1、41 μL)から、Organic Letters (2017), 19
(23), 6400-6403に記載の方法と同様に調製したアジド酢酸クロリドの塩
化メチレン(1.0mL)溶液を、市販の1-(N-tert-ブチトキシカルボニル-
アミノメチル)-4-(アミノメチル)ベンゼン[CAS REGISTRY NO.:
108468-00-4](5-1、100 mg)、トリエチルアミン(118 μL
)の塩化メチレン(1.0 mL)溶液に、氷水冷下で加え、室温で2.5時間撹拌した
。反応液に、酢酸エチル(20 mL)、水(5 mL)を加え、分液後、有機層を水、
飽和重曹水、水、飽和食塩水で順次洗浄した。不溶物をろ去し、ろ液を無水硫酸ナトリウ
ムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をメチル-tert-ブチルエーテル/n-ヘプタンで
トリチュレートした。得られた固体をろ取し、標記化合物5-2(91 mg)を薄いベ
ージュ固体として得た。
【0373】
<工程2>
N-(4-(アミノメチル)ベンジル)-2-アジドアセタミド 塩酸塩(5-3)の
合成:
【化82】
【0374】
(実施例5)<工程1>で得られた化合物(5-2、91 mg)に、氷水冷下4規定
-塩化水素/1,4-ジオキサン(637 μL)を加えた後、1,4-ジオキサン(6
27 μL)を追加した後、室温で3.5時間撹拌した。反応液に、ジイソプロピルエー
テル(3.8 mL)を加え、10分間撹拌した。得られた固体をろ過して、標記化合物
5-3(62 mg)をベージュ固体として得た。
【0375】
<工程3>
N-(4-(アミノメチル)ベンジル)-2-アジドアセタミド基導入アルギン酸(EX
5-A2)の合成:
【化83】
【0376】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(2
5 mL)に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-
メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(70 mg)、(実施例5)<工程2
>で得られた化合物(5-3、16.1 mg)、1モル濃度-重曹水(95 μL)を
加えた。30℃で3時間攪拌した後、塩化ナトリウム(0.25 g)、エタノール(5
0 mL)を順次加え、30分間室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで
洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶解後凍結乾燥して、標記化合物EX5-A
2(239 mg)を白色固体として得た。
【0377】
(実施例6)
2-(4-アジドフェノキシ)エタン-1-アミノ基導入アルギン酸(EX6-A2)の
合成:
【化84】
【0378】
<工程1>
tert-ブチル(2-(4-アジドフェノキシ)エチル)カルバメート(6-3)の合
成:
【化85】
【0379】
市販の4-アジドフェノール[CAS REGISTRY NO.:24541-43
-3](6-1、0.3 g)、市販のtert-ブチル (2-ブロモエチル)カルバ
メート[CAS REGISTRY NO.:39684-80-5](6-2、0.6
g)及びN-メチルピロリドン(3 mL)の混合物に対し、室温で炭酸カリウム(0
.61 g)を加えた。反応混合物を80℃で6時間30分攪拌し、室温まで冷却した後
、水(10 mL)及びメチル tert-ブチルエーテル(20 mL)を加えた。生
じた懸濁液をセライトろ過し、残留物をメチル tert-ブチルエーテル(5 mL)
で2回洗浄した。ろ液を分離し、有機層を減圧下で濃縮することで粗生成物を得た。この
粗生成物をメチル tert-ブチルエーテル(20 mL)に溶解させ、1規定-水酸
化ナトリウム水溶液(5 mL)で2回、水(5 mL)で2回、飽和食塩水(5 mL
)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層をろ過後、減圧下で濃縮する
ことで標記化合物6-3(0.411 g)を紫色の油状物として得た。
【0380】
<工程2>
2-(4-アジドフェノキシ)エタン-1-アミン 塩酸塩(6-4)の合成:
【化86】
【0381】
(実施例6)<工程1>で得られた化合物(6-3、0.41 g)及び1,4-ジオ
キサン(2.87 mL)の混合物に対し、水冷攪拌下、4規定-塩化水素/1,4-ジ
オキサン(2.87 mL)を加えた後、室温で18時間撹拌した。反応液に、ジイソプ
ロピルエーテル(40 mL)を加え、懸濁液を室温で30分攪拌した。析出物をろ過し
、回収した固体を減圧乾燥して、標記化合物6-4(0.2834 g)を淡い紫色固体
として得た。
【0382】
<工程3>
2-(4-アジドフェノキシ)エタン-1-アミノ基導入アルギン酸(EX6-A2)
の合成:
【化87】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(2
9.66 mL)に、室温で4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-
イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(91.52 mg)及び
1モル濃度-重曹水(68.63 μL)を加えた。続いて、(実施例6)<工程2>で
得られた化合物(6-4、14.73 mg)の水(1 mL)及びエタノール(1 m
L)溶液を室温にて加え、同温で42時間攪拌した後、塩化ナトリウム(300 mg)
、エタノール(59.3 mL)を順次加え、30分間室温で攪拌した。得られた沈殿を
ろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶解後凍結乾燥して、
標記化合物EX6-A2(269 mg)をピンク色固体として得た。
【0383】
(実施例7)
N-(2-アミノエチル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミ
ド基導入アルギン酸(EX7-B2)の合成:
【化88】
【0384】
<工程1>
tert-ブチル(2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)カルバメート(7-
2)の合成:
【化89】
【0385】
市販のtert-ブチル(2-アミノエチル)カルバメート(7-1、3.00 g、
[CAS REGISTRY NO.:57260-73-8])のテトラヒドロフラン
(12.0 mL)溶液に、トリフルオロ酢酸エチル(2.24 mL)を滴下した。反
応混合物を、室温で14.5時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣にtert-ブ
チルメチルエーテル(5 mL)とヘプタン(25 mL)を加え、トリチュレートした
。固体をろ取後、ヘプタンで洗浄して、標記化合物7-2(4.36 g)を白色固体と
して得た。
【0386】
<工程2>
N-(2-アミノエチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド 塩酸塩(7-3)
の合成:
【化90】
【0387】
(実施例7)<工程1>で得られた化合物7-2(0.50 g)を、1,4-ジオキ
サン(3.0 mL)に懸濁した。氷水冷下、4規定-塩化水素/1,4-ジオキサン(
7.0 mL)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液に、ジイソプロピルエーテル(3
0.0 mL)を加え、室温で50分間撹拌した。固体をろ取し、ジイソプロピルエーテ
ルで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物7-3(0.70 g)を白色固体として得た。
【0388】
<工程3>
N-(2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)エチル)-
2,2,2-トリフルオロアセタミド(7-5)の合成:
【化91】
【0389】
文献公知の方法(Org. Process Res. Dev.(2018)22:
108-110)に従い合成したカルボン酸(7-4、300 mg)のエタノール(2
mL)溶液に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4
-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(1.09 g)、(実施例7)<工
程2>で得られた化合物7-3(380 mg)、トリエチルアミン(321 μL)を
加え、30℃で3時間撹拌後、トリエチルアミン(229 μL)を追加し、同温で1時
間撹拌した。さらに室温で15.5時間撹拌後、水(10 mL)と酢酸エチル(50
mL)を加え、分液し、水層を酢酸エチル(10 mL)で抽出した。有機層を0.5規
定-クエン酸、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し
た。残渣にtert-ブチルメチルエーテルを加え、不溶物をろ去し、ろ液を濃縮後、シ
リカゲルカラムクロマトグラフィー(10%-酢酸エチル/n-ヘプタン~40%酢酸エ
チル/n-ヘプタン)で精製して、標記化合物7-5(322 mg)を白色固体として
得た。
【0390】
<工程4>
N-(2-アミノエチル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミ
ド(7-6)の合成:
【化92】
【0391】
(実施例7)<工程3>で得られた化合物7-5(322 mg)のメタノール(4.
8 mL)溶液に、炭酸カリウム(278 mg)の水(1.6 mL)溶液を加え、室
温で7.5時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水(3 mL)を加えた後、塩化ナトリ
ウムで飽和させた。水層を酢酸エチル(30 mL,10 mL×3)で抽出し、無水硫
酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮して、標記化合物7-6(238 mg)を無色油状物
として得た。
【0392】
<工程5>
N-(2-アミノエチル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミ
ド基導入アルギン酸(EX7-B2)の合成:
【化93】
【0393】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:B-2)水溶液(1
20 mL)に、室温撹拌下、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2
-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(335 mg)、(実
施例7)<工程4>で得られた化合物7-6(68 mg)のエタノール(12 mL)
溶液、1モル濃度-重曹水(303 μL)を順次加え、30度で3時間攪拌した。反応
液に、塩化ナトリウム(1.2 g)を加えた後、エタノール(240 mL)を加え、
1.5時間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノール(20 mL×5)で洗浄後、
減圧乾燥した。得られた固体を水に溶かし、凍結乾燥して、標記化合物EX7-B2(1
.16 g)を白色固体として得た。
【0394】
(実施例8)
N-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イ
ロキシ)アセタミド基導入アルギン酸の合成(EX8-A2):
【化94】
【0395】
<工程1>
tert-ブチル(2-(2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)エトキシ)エチ
ルカルバメート(8-2)の合成:
【化95】
【0396】
tert-ブチル(2-アミノエチル)カルバメート(8-1、1.0 g、[CAS
REGISTRY NO.:57260-73-8])のテトラヒドロフラン(4.0
mL)溶液に、トリフルオロ酢酸エチル(0.6 mL)を滴下した。反応混合物を室
温で、3.5時間撹拌し、減圧濃縮して、標記粗化合物8-2(1.5 g)を無色油状
物として得た。
【0397】
<工程2>
N-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド 塩
酸塩(8-3)の合成:
【化96】
【0398】
(実施例8)<工程1>で得られた化合物8-2(1.5 g)に、氷水冷下、4規定
-塩化水素/1,4-ジオキサン溶液(10.3 mL)を加え、室温で1時間撹拌した
。反応液に、ジイソプロピルエーテル(30 mL)を加え、30分間室温で撹拌した。
減圧下、溶媒を留去し、ジイソプロピルエーテルで共沸した後、減圧乾燥して、標記化合
物8-3(1.3 g)を無色油状物として得た。
【0399】
<工程3>
N-(2-(2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)エトキ
シ)エチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド(8-4)の合成:
【化97】
【0400】
文献公知の方法(Org. Process Res. Dev.(2018)22:
108-110)に従い合成したカルボン酸(7-4、300 mg)、(実施例8)<
工程2>で得られた化合物8-3(443 mg)をアセトニトリル(6.0 mL)に
溶解した。O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テト
ラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩(0.75 g)、N,N-ジイソプロピル
エチルアミン(920 μL)を加え、室温で2.5時間撹拌した。反応液に、酢酸エチ
ル(20 mL)、水(10 mL)を加え、分液した。有機層を、水(10mL)、飽
和食塩水(5 mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣
をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/n-ヘプタン~70%酢酸
エチル/n-ヘプタン)で精製して、標記化合物8-4(469 mg)を無色ガム状物
として得た。
【0401】
<工程4>
N-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロ
キシ)アセタミド(8-5)の合成:
【化98】
【0402】
(実施例8)<工程3>で得られた化合物8-4(220 mg)のメタノール(3.
0 mL)溶液に、炭酸カリウム(103 mg)の水(0.99 mL)溶液を加え、
室温で4.5時間撹拌した。メタノールを減圧下で留去し、水(2 mL)を加えた後、
食塩で飽和させた。酢酸エチル(15 mL、10 mL×4)抽出し、無水硫酸ナトリ
ウムで乾燥させた後、減圧下で溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル(10 mL)に溶か
し、不溶物をろ過して除いた後、減圧濃縮して、標記粗化合物8-5(140 mg)を
淡黄色ガム状物として得た。
【0403】
<工程5>
N-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロ
キシ)アセタミド基導入アルギン酸(EX8-A2)の合成:
【化99】
【0404】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(4
0 mL)に、室温撹拌下、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-
イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(112 mg)、(実施
例8)<工程4>で得られた化合物8-5(30 mg)のエタノール(4,0 mL)
溶液、1モル濃度-重曹水(101 μL)を順次加え、30℃で3時間攪拌した。反応
液に、塩化ナトリウム(0.4 g)を加えた後、エタノール(80 mL)を加え、3
0分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた
固体を水に溶かし、凍結乾燥して、標記化合物EX8-A2(410 mg)を白色固体
として得た。
【0405】
(実施例9a、9b)
N-(2-アミノエチル)-2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセ
タミド)アセタミド基導入アルギン酸(EX9a-A2、EX9b-B2)の合成:
【化100】
【0406】
<工程1>
tert-ブチル(2-オキソ-2-((2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド
)エチル)アミノ)エチル)カルバメート(9-1)の合成:
【化101】
【0407】
N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシン(91 mg、[CAS REGIS
TRY NO.:4530-20-5])、(実施例7)<工程2>で得られた化合物(
7-3、100 mg)をアセトニトリル(3.0 mL)に溶解した。O-(7-アザ
ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサ
フルオロりん酸塩(217 mg)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(281 μ
L)を加え、室温で3.5時間撹拌した。反応液に、酢酸エチル(15 mL)、水(5
mL)を加え、分液後、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を、無水硫酸
ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:40
%酢酸エチル/n-ヘプタン→酢酸エチル)で精製し、標記化合物9-1(180 mg
)を薄いベージュアモルファスとして得た。
【0408】
<工程2>
N-(2-(2-アミノアセタミド)エチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド
塩酸塩(9-2)の合成:
【化102】
【0409】
(実施例9)<工程1>で得られた化合物(9-1、180 mg)に、氷水冷下4規
定-塩化水素/1,4-ジオキサン(1.2 mL)を加えた後、室温で0.8時間撹拌
した。反応液に、ジイソプロピルエーテル(3.6 mL)を加え、30分間撹拌した。
得られた固体をろ過して、標記化合物9-2(114 mg)を白色固体として得た。
【0410】
<工程3>
N-(2-(2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)アセタ
ミド)エチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド(9-3)の合成:
【化103】
【0411】
文献公知の方法(Org. Process Res. Dev.(2018)22:
108-110)に従い合成したカルボン酸(7-4、80 mg)、(実施例9)<工
程2>で得られた化合物(9-2、110 mg)に、エタノール(1.6 mL)、4
-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニ
ウムクロリド(DMT-MM)(219 mg)、トリエチルアミン(67 μL)を加
え、室温で3時間撹拌した。反応液に、水(3.2 mL)を加え、室温で30分間撹拌
した後、固体をろ過し、水で洗浄した。得られた固体に、酢酸エチル/エタノール(1/
1、10 mL)を加え、不溶物をろ去した。ろ液を減圧濃縮して、標記化合物9-3(
101 mg)を白色固体として得た。
【0412】
<工程4>
N-(2-(アミノエチル)-2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)ア
セタミド)アセタミド(9-4)の合成:
【化104】
【0413】
(実施例9)<工程3>で得られた化合物(9-3、60 mg)のメタノール(1.
8 mL)溶液に、炭酸カリウム(59 mg)の水(0.3 mL)溶液を加え、室温
で4時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、水(2mL)を加え、塩化ナトリウムで飽
和させた。酢酸エチル(15mL,10 mL×4)で抽出し、抽出層を減圧濃縮した。
残渣に酢酸エチル(10 mL)、エタノール(1mL)を加え、不溶物をろ去した。得
られたろ液を減圧濃縮して、標記化合物9-4(49 mg)を無色ガム状物として得た
。
【0414】
<工程5-1>
N-(2-(アミノエチル)-2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)ア
セタミド)アセタミド基導入アルギン酸(EX9a-A2)の合成:
【化105】
【0415】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(3
8 mL)に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-
メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(106 mg)、(実施例9)<工程
4>で得られた化合物(9-4、30.3 mg)のエタノール(3.8 mL)溶液、
1モル濃度-重曹水(96 μL)を加えた。30℃で3.2時間攪拌した後、塩化ナト
リウム(0.38 g)、エタノール(76 mL)を順次加え、30分間室温で攪拌し
た。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶
解後凍結乾燥して、標記化合物EX9a-A2(381 mg)を白色固体として得た。
【0416】
<工程5-2>
N-(2-(アミノエチル)-2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)ア
セタミド)アセタミド基導入アルギン酸(EX9b-B2)の合成:
【化106】
【0417】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:B-2)水溶液(3
8 mL)に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-
メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(64 mg)、(実施例9)<工程4
>で得られた化合物(9-4、18.2 mg)、1モル濃度-重曹水(58 μL)を
加えた。30℃で3.2時間攪拌した後、塩化ナトリウム(0.38 g)、エタノール
(76 mL)を順次加え、30分間室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノー
ルで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶解後凍結乾燥して、標記化合物EX9
b-B2(366 mg)を白色固体として得た。
【0418】
(実施例10)
N-(2-アミノエチル)-3-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)ア
セタミド)プロパンアミド基導入アルギン酸(EX10-A2)の合成:
【化107】
【0419】
<工程1>
tert-ブチル(3-オキソ-3-((2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド
)エチル)アミノ)プロピル)カルバメート(10-1)の合成:
【化108】
【0420】
市販のN-(tert-ブトキシカルボニル)-β-アラニン(113 mg、[CA
S REGISTRY NO.:3303-84-2])、(実施例7)<工程2>で得
られた化合物(7-3、110 mg)をアセトニトリル(3.3 mL)に溶解した。
O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウ
ロニウムヘキサフルオロりん酸塩(261 mg)、N,N-ジイソプロピルエチルアミ
ン(319 μL)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液に、酢酸エチル(15 mL
)、水(5 mL)を加え、分液後、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を
、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、tert-ブチルメチルエーテル(20
mL)でトリチュレートした。固体をろ取し、酢酸エチル(20 mL)に溶解した。有
機層を、1規定-クエン酸、水、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾
燥後、減圧濃縮した。残渣をtert-ブチルメチルエーテル(10 mL)でトリチュ
レートした後、固体をろ取し、標記化合物10-1(80 mg)を白色固体として得た
。
【0421】
<工程2>
3-アミノ-N-(2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)エチル)プロパンアミ
ド 塩酸塩(10-2)の合成:
【化109】
【0422】
(実施例10)<工程1>で得られた化合物(10-1、80 mg)に、氷水冷下4
規定-塩化水素/1,4-ジオキサン(1.1 mL)を加えた後、室温で2時間撹拌し
た。反応液に、ジイソプロピルエーテル(3.4 mL)を加え、1.5時間撹拌した。
得られた固体をろ過して、標記化合物10-2(61 mg)を白色固体として得た。
【0423】
<工程3>
3-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)-N-(2-(2,
2,2-トリフルオロアセタミド)エチル)プロパンアミド(10-3)の合成:
【化110】
【0424】
文献公知の方法(Org. Process Res. Dev.(2018)22:
108-110)に従い合成したカルボン酸(7-4、44 mg)、(実施例10)<
工程2>で得られた化合物(10-2、61 mg)に、エタノール(1.2 mL)、
4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリ
ニウムクロリド(DMT-MM)(115 mg)、トリエチルアミン(39 μL)を
加え、室温で2時間撹拌した。反応液に、水(3.7 mL)を加え、酢酸エチル(15
mL, 5 mL)で抽出した。有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナト
リウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた固体に、tert-ブチルメチルエーテル(1
0 mL)を加え、トリチュレートし、ろ過した。得られた固体をカラムクロマトグラフ
ィー(80%酢酸エチル/n-ヘプタン→酢酸エチル→20%メタノール/酢酸エチル)
で精製して、標記化合物10-3(60 mg)を淡黄色固体として得た。
【0425】
<工程4>
N-(2-(アミノエチル)-3-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)ア
セタミド)プロパンアミド(10-4)の合成:
【化111】
【0426】
(実施例10)<工程3>で得られた化合物(10-3、60 mg)のメタノール(
3.0 mL)溶液に、炭酸カリウム(42 mg)の水(0.3 mL)溶液を加え、
室温で3時間撹拌後、さらに、炭酸カリウム(42 mg)の水(0.3 mL)溶液を
加え、室温で16.5時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、飽和食塩水(2mL)を
加え、さらに塩化ナトリウムで飽和させた。酢酸エチル(15mL,10 mL×4)で
抽出し、抽出層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣に酢酸エチル(5
mL)と数滴のメタノールを加え、不溶物をろ去した。得られたろ液を減圧濃縮して、標
記化合物10-4(31 mg)を無色油状物として得た。
【0427】
<工程5>
N-(2-アミノエチル)-3-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセ
タミド)プロパンアミド基導入アルギン酸(EX10-A2)の合成:
【化112】
【0428】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(4
1 mL)に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-
メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(114 mg)、(実施例10)<工
程4>で得られた化合物(10-4、30.5 mg)のエタノール(4.1 mL)溶
液、1モル濃度-重曹水(103 μL)を加えた。30℃で3時間攪拌した後、塩化ナ
トリウム(0.41 g)、エタノール(82 mL)を順次加え、30分間室温で攪拌
した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に
溶解後凍結乾燥して、標記化合物EX10-A2(406 mg)を白色固体として得た
。
【0429】
(実施例11a、11b)
2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エタン-1-アミノ基導入アルギン酸(
EX11a-A2、EX11b-B2)の合成:
【化113】
【0430】
<工程1>
(E)-N-(2-((2-ブロモシクロオクト-2-エン-1-イル)オキシ)エチル
)-2,2,2-トリフルオロアセタミド(11-3)の合成:
【化114】
【0431】
文献公知の方法(Org. Process Res. Dev.(2018)22:
108-110)に従い合成したジブロモ体(11-1、1 g)及び文献公知の方法(
国際公開第2015/140807号パンフレット)に従い合成したアルコール体(11
-2、5.28 g)の混合物に対し、室温でジクロロメタン(2 mL)を加えた。内
温を室温に保ちながら、反応容器をアルミホイルで包み、光から保護した。続いて、室温
でトリフルオロメタンスルホン酸銀(1.92 g)を一度に加え、同温にて1時間攪拌
した。攪拌後、氷冷下で飽和食塩水(5 mL)を加え、析出した銀塩をセライトろ過に
より除去し、残留物をメチル tert-ブチルエーテル(10 mL)で洗浄した。ろ
液を分離し、有機層を水(5 mL)で2回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾
燥させ、ろ過後、減圧下で濃縮することで粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカ
ラムクロマトグラフィー(n-へプタン/酢酸エチル)で精製し、化合物11-3(0.
46 g)を含む画分を得た。
【0432】
<工程2>
2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エタン-1-アミン(11-4)の合成
:
【化115】
【0433】
(実施例11)<工程1>で得られた化合物(11-3、0.46 g)を含む画分及
びジメチルスルホキシド(1.38 mL)の混合物に対し、水冷攪拌下、28%ナトリ
ウムメトキシドメタノール溶液(1.82 mL)を加え、室温で16時間攪拌した。水
(10 mL)を加え反応を停止させ、メタノールを減圧下で濃縮した。生じた溶液をメ
チル tert-ブチルエーテル(10 mL)で3回抽出した。有機層を無水硫酸ナト
リウムで乾燥させ、ろ過後、減圧下で濃縮することで標記化合物11-4(0.196
g)の粗生成物を褐色油状物として得た。
【0434】
<工程3-1>
2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エタン-1-アミノ基導入アルギン酸(
EX11a-A2)の合成:
【化116】
【0435】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(6
9.2 mL)に、室温で4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イ
ル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(213.55 mg)を加
えた。続いて、(実施例11)<工程2>で得られた化合物(11-4、26.78 m
g)の水(1 mL)及びエタノール(1 mL)溶液を室温にて加え、同温で24時間
攪拌した後、塩化ナトリウム(700 mg)、エタノール(138.4 mL)を順次
加え、30分間室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥
した。得られた固体を水に溶解後凍結乾燥して、標記化合物EX11a-A2(661
mg)を白色固体として得た。
【0436】
<工程3-2>
2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エタン-1-アミノ基導入アルギン酸(
EX11b-B2)の合成:
【化117】
【0437】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:B-2)水溶液(7
0.1 mL)、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4
-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(216.4 mg)及び(実施例1
1)<工程2>で得られた化合物(11-4、27.14 mg)を用い、(実施例11
)<工程3-1>と同様の操作を行い、標記化合物EX11b-B2(648 mg)を
白色固体として得た。
【0438】
(実施例12)
2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エトキシ)エタン-1-アミノ基
導入アルギン酸(EX12-A2)の合成:
【化118】
【0439】
<工程1>
2,2,2-トリフルオロ-N-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)アセタミ
ド(12-2)の合成:
【化119】
【0440】
市販の2-(2-アミノエトキシ)エタノール[CAS REGISTRY NO.:
929-06-6](12-1、2.0 mL)のテトラヒドロフラン(8.0 mL)
溶液に、2,2,2-トリフルオロ酢酸エチル(2.5 mL)を、5分かけて滴下した
後、室温で20時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、酢酸エチル(30 mL)、水
(10 mL)を加え、分液した。水層を酢酸エチル(10 mL)で抽出し、合わせた
有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧
濃縮して、標記化合物12-2(3.7 g)を無色油状物として得た。
【0441】
<工程2>
(E)-N-(2-(2-((2-ブロモシクロオクト-2-エン-1-イル)オキシ
)エトキシ)エチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド(12-3)の合成:
【化120】
【0442】
文献公知の方法(Org. Process Res. Dev.(2018)22:
108-110)に従い合成したジブロモ体(11-1、0.30 g)を塩化メチレン
(0.54 mL)に溶解し、アルミホイル遮光下、(実施例12)<工程1>で得られ
た化合物(12-2、1.86 g)、トリフルオロメタンスルホン酸銀(0.52 g
)を加えた。遮光下、室温で1.5時間撹拌後、反応液に、氷水冷下、飽和重曹水(2.
0 mL)、飽和食塩水(3.0 mL)を順次加えた。固体をセライトにてろ去し、t
ert-ブチルメチルエーテル(10 mL×3)で洗浄した。ろ液を分液し、有機層を
水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮して
、標記化合物12-3(424 mg)を薄い茶色油状物として得た。
【0443】
<工程3>
N-(2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エトキシ)エチル)-2,
2,2-トリフルオロアセタミド(12-4)の合成:
【化121】
【0444】
(実施例12)<工程2>で得られた化合物(12-3、100 mg)を、テトラヒ
ドロフラン(0.7 mL)、N,N-ジメチルホルムアミド(0.7 mL)に溶解し
た。60%水素化ナトリウム(21 mg)を、氷水下で加え、同温で3時間撹拌した。
60%水素化ナトリウム(10 mg)を加え、室温で1時間、さらに60%水素化ナト
リウム(10 mg)を加え、室温で20時間撹拌した。水(3 mL)を加え、酢酸エ
チル(15 mL、10 mL)で抽出し、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。有
機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(
n-ヘプタン→50%酢酸エチル/n-ヘプタン)で精製して、標記化合物12-4(3
7 mg)を無色油状物として得た。
【0445】
<工程4>
2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エトキシ)エタン-1-アミン(
12-5)の合成:
【化122】
【0446】
(実施例12)<工程3>で得られた化合物(12-4、37 mg)のメタノール(
555 μL)溶液に、炭酸カリウム(50 mg)の水(185 μL)溶液を加え、
室温で17時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、水(1 mL)を加え、塩化ナトリ
ウムで飽和させた。酢酸エチル(10 mL×4)で抽出し、抽出層を無水硫酸ナトリウ
ムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣に酢酸エチル(10 mL)と数滴のメタノールを加え
、不溶物をろ去した。得られたろ液を減圧濃縮して、標記化合物12-5(30 mg)
を無色油状物として得た。
【0447】
<工程5>
2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エトキシ)エタン-1-アミノ基
導入アルギン酸(EX12-A2)の合成:
【化123】
【0448】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(5
2 mL)に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-
メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(145 mg)、(実施例12)<工
程4>で得られた化合物(12-5、29 mg)のエタノール(5.2 mL)溶液、
1モル濃度-重曹水(131 μL)を加えた。30℃で3.2時間攪拌した後、塩化ナ
トリウム(0.52 g)、エタノール(104 mL)を順次加え、30分間室温で攪
拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水
に溶解後凍結乾燥して、標記化合物EX12-A2(522 mg)を白色固体として得
た。
【0449】
(実施例13)
3-アミノ-N-(2-(2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタ
ミド)エトキシ)エチル)プロパンアミド基導入アルギン酸(EX13-A2)の合成:
【化124】
【0450】
<工程1>
3-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)プロパン酸(13-2)の合成:
【化125】
【0451】
市販のβ-アラニン[CAS REGISTRY NO.:107-95-9](13
-1、2.0 g)をメタノール(40.0 mL)に溶解し、トリエチルアミン(3.
3 mL)を加えた。水冷下で2,2,2-トリフルオロ酢酸(3.4 mL)を5分間
で滴下後、室温で20.5時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水(20 mL)を加え
、1規定-塩酸でpH4に調整した。酢酸エチル(100 mL×2、50 mL)で抽
出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮
して、標記化合物13-2(2.9 g)を白色固体として得た。
【0452】
<工程2>
tert-ブチル(2-(2-(3-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)プロパン
アミド)エトキシ)エチル)カルバメート(13-3)の合成:
【化126】
【0453】
(実施例13)<工程1>で得られた化合物(13-2、400 mg)、tert-
ブチル(2-アミノエチル)カルバメート(8-1、441 mg、[CAS REGI
STRY NO.:57260-73-8])のエタノール(4.0 mL)溶液に、4
-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニ
ウムクロリド(DMT-MM)(897 mg)を加え、3.5時間撹拌した。反応液に
、水(5 mL)を加え、酢酸エチル(20 mL、10 mL)で抽出後、有機層を水
、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、残渣
をカラムクロマトグラフィー(30%酢酸エチル/n-ヘプタン→酢酸エチル)で精製し
て、標記化合物13-3(451 mg)を無色油状物として得た。
【0454】
<工程3>
N-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-3-(2,2,2-トリフルオロアセタミ
ド)プロパンアミド 塩酸塩(13-4)の合成:
【化127】
【0455】
(実施例13)<工程2>で得られた化合物(13-3、451 mg)に、氷水冷下
4規定-塩化水素/1,4-ジオキサン(3.16 mL)を加え、室温で3時間撹拌し
た。反応液に、ジイソプロピルエーテル(6.4 mL)を加え、減圧濃縮して、標記化
合物13-4(433 mg)を無色ガム状物として得た。
【0456】
<工程4>
N-(2-(2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)エトキ
シ)エチル-3-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)プロパンアミド(13-5)
の合成:
【化128】
【0457】
文献公知の方法(Org. Process Res. Dev.(2018)22:
108-110)に従い合成したカルボン酸(7-4、111 mg)、(実施例13)
<工程3>で得られた化合物(13-4、215 mg)に、エタノール(1.7 mL
)、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモル
ホリニウムクロリド(DMT-MM)(253 mg)、トリエチルアミン(102 μ
L)を加え、室温で21時間撹拌した。反応液に、水(5 mL)を加え、酢酸エチル(
15 mL)で抽出した。有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム
で乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(30%酢酸エチル
/n-ヘプタン→酢酸エチル→15%メタノール/酢酸エチル)で精製して、標記化合物
13-5(35 mg)を無色油状物として得た。
【0458】
<工程5>
3-アミノ-N-(2-(2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタ
ミド)エトキシ)エチル)プロパンアミド(13-6)の合成:
【化129】
【0459】
(実施例13)<工程4>で得られた化合物(13-5、35 mg)のメタノール(
700 μL)溶液に、炭酸カリウム(33 mg)の水(175 μL)溶液を加え、
室温で16.5時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、水(2 mL)を加え、塩化ナ
トリウムで飽和させた。酢酸エチル(10 mL×5)で抽出し、抽出層を無水硫酸ナト
リウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣に酢酸エチル(10 mL)と数滴のメタノールを
加え、不溶物をろ去した。得られたろ液を減圧濃縮して、標記化合物13-6(24 m
g)を無色ガム状物として得た。
【0460】
<工程6>
3-アミノ-N-(2-(2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタ
ミド)エトキシ)エチル)プロパンアミド基導入アルギン酸(EX13-A2)の合成:
【化130】
【0461】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(2
8 mL)に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-
メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(78 mg)、(実施例13)<工程
5>で得られた化合物(13-6、24 mg)のエタノール(2.8 mL)溶液、1
モル濃度-重曹水(71 μL)を加えた。30℃で3.5時間攪拌した後、塩化ナトリ
ウム(0.28 g)、エタノール(56 mL)を順次加え、30分間室温で攪拌した
。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶解
後凍結乾燥して、標記化合物EX13-A2(272 mg)を白色固体として得た。
【0462】
(実施例14)
N-(4-(2-アミノエトキシ)ベンジル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イ
ロキシ)アセタミド基導入アルギン酸(EX14a-A2、EX14b-B2)の合成:
【化131】
【0463】
<工程1>
N-(2-ブロモエチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド(14-2)の合成:
【化132】
【0464】
市販の2-ブロモエチルアミン臭化水素酸塩[CAS REGISTRY NO.:2
576-47-8](14-1、3 g)のメタノール(30 mL)溶液に対し、氷冷
攪拌下、トリエチルアミン(4.29 mL)を加えた。この混合物に対し、同温でトリ
フルオロ酢酸エチル (1.92 mL)を徐々に加え、室温で42時間攪拌した。反応
終了後、反応液を減圧下で濃縮し、水(10 mL)を加えた。酢酸エチル(10 mL
)で3回抽出し、有機層を水(5 mL)、飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄し、無水
硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後、減圧下で濃縮することで、標記化合物14-2(2
.457 g)を淡い褐色固体として得た。
【0465】
<工程2>
tert-ブチル (4-(2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)エトキシ)ベ
ンジル)カルバメート(14-4)の合成:
【化133】
【0466】
市販のtert-ブチル (4-ヒドロキシベンジル)カルバメート[CAS REG
ISTRY NO.:149505-94-2](14-3、0.36 g)、(実施例
14)<工程1>で得られた化合物(14-2、0.46 g)、ヨウ化カリウム(0.
35 g)及びN-メチルピロリドン(3.6 mL)の混合物に対し、室温で炭酸カリ
ウム(0.45 g)を加え、140℃で5時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し
、水(10 mL)で希釈した。メチル tert-ブチルエーテル(10 mL)で3
回抽出し、有機層を1規定-水酸化ナトリウム水溶液(5 mL)で2回、水(5 mL
)、飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層を
ろ過後、減圧下で濃縮することで、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラ
ムクロマトグラフィー(n-へプタン/酢酸エチル)で精製し、標記化合物14-4(0
.202 g)を白色アモルファスとして得た。
【0467】
<工程3>
N-(2-(4-(アミノメチル)フェノキシ)エチル)-2,2,2-トリフルオロア
セタミド 塩酸塩(14-5)の合成:
【化134】
【0468】
(実施例14)<工程2>で得られた化合物(14-4、0.2 g)を用い、(実施
例6)<工程2>と同様の操作を実施することで、標記化合物14-5(0.147 g
)を白色固体として得た。
【0469】
<工程4>
N-(2-(4-((2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)メチ
ル)フェノキシ)エチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド(14-6)の合成:
【化135】
【0470】
文献公知の方法(Org. Process Res. Dev.(2018)22:
108-110)に従い合成したカルボン酸(7-4、50 mg)、(実施例14)<
工程3>で合成した化合物(14-5、81.96 mg)及びエタノールの混合物に対
し、氷冷攪拌下、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4
-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(137.22 mg)及びトリエチ
ルアミン(38.25 μL)を加え、室温で1時間30分攪拌した。反応終了後、水(
2 mL)を加え、懸濁液を攪拌し、メチル tert-ブチルエーテル(0.5 mL
)を加えた。分離した水層をメチル tert-ブチルエーテル(5 mL)で2回抽出
し、水(5 mL)、飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥
させた。乾燥した有機層をろ過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロ
マトグラフィー(n-へプタン/酢酸エチル)で精製し、標記化合物14-6(99 m
g)を白色アモルファスとして得た。
【0471】
<工程5>
N-(4-(2-アミノエトキシ)ベンジル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イ
ロキシ)アセタミド(14-7)の合成:
【化136】
【0472】
(実施例14)<工程4>で得られた化合物(14-6、99 mg)及びメタノール
(1485 μL)の混合物に対し、水冷攪拌下、炭酸カリウム(64.17 mg)及
び水(495 μL)を加え、室温で15時間攪拌した。反応終了後、メタノールを減圧
下で濃縮し、生じた水層を酢酸エチル(5 mL)で3回抽出した。有機層を水(5 m
L)及び飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥
させた有機層をろ過後、減圧下で濃縮することで、標記化合物14-7(68 mg)の
粗生成物を黄色油状物として得た。
【0473】
<工程6-1>
N-(4-(2-アミノエトキシ)ベンジル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イ
ロキシ)アセタミド基導入アルギン酸(EX14a-A2)の合成:
【化137】
【0474】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(4
9.44 mL)、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-
4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(152.54 mg)及び(実施
例14)<工程5>で得られた化合物(14-7、37.79 mg)を用い、(実施例
11)<工程3-1>と同様の操作を行い、標記化合物EX14a-A2(479 mg
)を白色固体として得た。
【0475】
<工程6-2>
N-(4-(2-アミノエトキシ)ベンジル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イ
ロキシ)アセタミド基導入アルギン酸(EX14b-B2)の合成:
【化138】
【0476】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:B-2)水溶液(4
0.08 mL)、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-
4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(123.66 mg)及び(実施
例14)<工程5>で得られた化合物(14-7、30.64 mg)を用い、(実施例
11)<工程3-1>と同様の操作を行い、標記化合物EX14b-B2(356 mg
)を白色固体として得た。
【0477】
(実施例15)
2-アミノ-N-[3-(11,12-ジデヒドロジベンズ[b,f]アゾシン-5(6
H)-イル)-3-オキソプロピル]アセタミド基導入アルギン酸(EX15-A2)の
合成:
【化139】
【0478】
<工程1>
(9H-フルオレン-9-イル)メチル-N-[3-(11,12-ジデヒドロジベンズ
[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-3-オキソプロピル]アセタミド-2-カル
バメート基(15-2)の合成:
【化140】
【0479】
市販の3-アミノ-1-(11,12-ジデヒドロジベンズ[b,f]アゾシン-5(
6H)-イル)-1-プロパノン[CAS REGISTRY NO.:1255942
-06-3](15-1、50 mg)、N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ
)カルボニル]グリシン[CAS REGISTRY NO.:29022-11-5]
(54 mg)をアセトニトリル(1.5 mL)に溶解した。O-(7-アザベンゾト
リアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロ
りん酸塩(76 mg)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(70 μL)を加え、
室温で4.5時間撹拌した。反応液に、酢酸エチル(15 mL)、水(5 mL)を加
え、分液後、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾
燥後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製して、標記化合物15-2(63
mg)を薄いベージュアモルファスとして得た。
【0480】
<工程2>
2-アミノ-N-[3-(11,12-ジデヒドロジベンズ[b,f]アゾシン-5(6
H)-イル)-3-オキソプロピル]アセタミド(15-3)の合成:
【化141】
【0481】
(実施例15)<工程1>で得られた化合物(15-2、63 mg)に、ピぺリジン
(56 μL)のN,N-ジメチルホルムアミド(315 μL)溶液を加え、室温で3
0分間拡販した。反応液に、酢酸エチル(15 mL)、水(5 mL)を加え、分液後
、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減
圧濃縮した。得られた固体に、tert-ブチルメチルエーテル(5 mL)を加え、ト
リチュレートした後、ろ取し、標記化合物15-3(10 mg)を薄いベージュ固体と
して得た。ろ液から回収し、追加で、標記化合物15-3(11 mg)を淡黄色ガム状
物として得た。
【0482】
<工程3>
2-アミノ-N-[3-(11,12-ジデヒドロジベンズ[b,f]アゾシン-5(6
H)-イル)-3-オキソプロピル]アセタミド基導入アルギン酸(EX15-A2)の
合成:
【化142】
【0483】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(1
9 mL)に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-
メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(106 mg)、(実施例15)<工
程2>で得られた化合物(15-3、21 mg)のエタノール(1.9 mL)溶液、
1モル濃度-重曹水(48 μL)を加えた。30℃で3時間攪拌した後、塩化ナトリウ
ム(0.19 g)、エタノール(38 mL)を順次加え、30分間室温で攪拌した。
得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶解後
凍結乾燥して、標記化合物EX15-A2(188 mg)を白色固体として得た。
【0484】
(実施例16)
2-アミノ-N-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エチル)アセタミド
基導入アルギン酸(EX16-A2)の合成:
【化143】
【0485】
<工程1>
(2,2,2-トリフルオロアセチル)グリシン(16-2)の合成:
【化144】
【0486】
グリシン(16-1、2 g)をメタノール(10 mL)に懸濁させ、4℃まで冷却
した。同温にて、トリフルオロ酢酸エチル(3.5 mL)及びトリエチルアミン(3.
71 mL)を加え、室温で23時間攪拌した。反応終了後、1規定-塩酸(20 mL
)をpH2になるまで徐々に加え、酢酸エチル(10 mL)で3回抽出し、水(5 m
L)及び飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥さ
せ、ろ過後、減圧下で濃縮し、淡黄色油状物を得た。得られた油状物を酢酸エチル(20
mL)に溶解させ、n-へプタン(10 mL)を加えた。この溶液を減圧下で濃縮す
ることで標記化合物16-2(3.22 g)を白色アモルファスとして得た。
【0487】
<工程2>
N-(2-((2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エチル)アミノ)-2-
オキソエチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド(16-3)の合成:
【化145】
【0488】
化合物11-4(80 mg)及び(実施例16)<工程1>で得られた化合物(16
-2、81.83 mg)の混合物に対し、氷冷攪拌下、エタノール(1600 μL)
及び4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモル
ホリニウムクロリド(DMT-MM)(239.21 mg)を加え、室温で3時間攪拌
した。水(2 mL)を加え反応を停止させ、メチル tert-ブチルエーテル(5
mL)で3回抽出した。有機層を水(5 mL)、飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄し
、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層をろ過後、減圧下で濃縮することで、粗生成
物を得た。この粗生成物をn-ヘプタン(10 mL)でトリチュレートし、ろ過及び減
圧下で乾燥させることで標記化合物16-3(95.1 mg)を白色固体として得た。
【0489】
<工程3>
2-アミノ-N-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エチル)アセタミド
(16-4)の合成:
【化146】
【0490】
(実施例16)<工程2>で得られた化合物(16-3、60 mg)、メタノール(
900 μL)、炭酸カリウム(51.78 mg)及び水(300 μL)を用い、(
実施例14)<工程5>と同様の操作を実施することで、標記化合物16-4(15 m
g)を淡黄色油状物として得た。
【0491】
<工程4>
2-アミノ-N-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エチル)アセタミド
基導入アルギン酸(EX16-A2)の合成:
【化147】
【0492】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(2
9.66 mL)、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-
4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(91.52 mg)及び(実施例
16)<工程3>で得られた化合物(16-4、15 mg)を用い、(実施例11)<
工程3-1>と同様の操作を行い、標記化合物EX16-A2(279 mg)を白色固
体として得た。
【0493】
(実施例17)
(2S)-2-アミノ-N-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エチル)
-3-フェニルプロパンアミド基導入アルギン酸(EX17-A2)の合成:
【化148】
【0494】
<工程1>
(2,2,2-トリフルオロアセチル)-L-フェニルアラニン(17-2)の合成:
【化149】
【0495】
L-フェニルアラニン[CAS REGISTRY NO.:63-91-2](17
-1、2 g)をメタノール(10 mL)に溶解させ、4℃まで冷却した。続いて、同
温にて、トリフルオロ酢酸エチル(1.59 mL)及びトリエチルアミン(1.69
mL)を加え、室温で16時間攪拌した。反応終了後、1規定-塩酸(10 mL)をp
H1になるまで徐々に加え、懸濁液を30分攪拌した。懸濁液をろ過し、回収した固体を
減圧下で乾燥させることで標記化合物17-2(2.53 g)を白色固体として得た。
【0496】
<工程2>
(2S)-N-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エチル)-3-フェニ
ル-2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)プロパンアミド(17-3)の合成:
【化150】
【0497】
化合物11-4(60 mg)及び(実施例17)<工程1>で得られた化合物(17
-2、93.7 mg)の混合物に対し、氷冷下、エタノール(1200 μL)及び4
-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニ
ウムクロリド(DMT-MM)(179.41 mg)を加え、室温で3時間攪拌した。
水(2 mL)を加え反応を停止させ、メチル tert-ブチルエーテル(5 mL)
で3回抽出した。有機層を水(5 mL)、飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄し、無水
硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層をろ過後、減圧下で濃縮し、粗生成物を得た。粗生
成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製するこ
とで、標記化合物17-3(57 mg)を白色アモルファスとして得た。
【0498】
<工程3>
(2S)-2-アミノ-N-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エチル)
-3-フェニルプロパンアミド(17-4)の合成:
【化151】
【0499】
(実施例17)<工程2>で得られた化合物(17-3、57 mg)、メタノール(
855 μL)、炭酸カリウム(38.39 mg)及び水(285 μL)を用い、(
実施例14)<工程5>と同様の操作を実施することで、標記化合物17-4(35 m
g)を淡黄色油状物として得た。
【0500】
<工程4>
(2S)-2-アミノ-N-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)エチル)
-3-フェニルプロパンアミド基導入アルギン酸(EX17-A2)の合成:
【化152】
【0501】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(4
7.46 mL)、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-
4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(146.44 mg)及び(実施
例17)<工程3>で得られた化合物(17-4、34.53 mg)を用い、(実施例
11)<工程3-1>と同様の操作を行い、標記化合物EX17-A2(383 mg)
を白色固体として得た。
【0502】
(実施例18)
4-(2-アミノエトキシ)-N-(3-アジドプロピル)ベンズアミド基導入アルギン
酸(EX18-A2)の合成:
【化153】
【0503】
<工程1>
メチル 4-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エトキシ)ベンゾエー
ト(18-2)の合成:
【化154】
【0504】
トリフェニルホスフィン(0.96 g)のテトラヒドロフラン(2.59 mL)溶
液に、氷冷撹拌下、アゾジカルボン酸ジエチル(40%トルエン溶液,1.92 mL)
溶液を加え、室温で20分間撹拌した。この溶液に対し、氷冷撹拌下、市販の4-ヒドロ
キシ安息香酸(化合物18-1、0.37 g)及び2-(tert-ブトキシカルボニ
ル)エタノールアミン(0.39 g)のテトラヒドロフラン(1.1 mL)溶液を加
え、室温で17時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマ
トグラフィー(5%酢酸エチル/n-ヘプタン~40%酢酸エチル/n-ヘプタン)によ
り精製し、化合物18-1と化合物18-2の混合物を得た。この混合物をメチル te
rt-ブチルエーテル(20 mL)に溶解させ、1規定-水酸化ナトリウム水溶液(5
mL)で2回、飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム
で乾燥させた後、減圧下で溶媒を留去し、標記化合物18-2(0.45 g)をピンク
色のオイル状物質として得た。
【0505】
<工程2>
4-(2-アミノエトキシ)-N-(3-アジドプロピル)ベンズアミド塩酸塩(化合物
18-4)の合成:
【化155】
【0506】
(実施例18)<工程1>で得られた化合物18-2(0.44 g)のメタノール(
4.4 mL)溶液に水酸化リチウム一水和物(0.25 g)を加え、60℃で3時間
30分撹拌した。反応液に1規定-塩酸(5 mL)を加え、酢酸エチル(10 mL)
で3回抽出した。有機層を水(5 mL)、飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄し、無水
硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。残留物をアセトニトリル(4.4
mL)に溶解させ、3-アジドプロパン-1-アミン(0.15 g)とO-(7-ア
ザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキ
サフルオロりん酸塩(0.57 g)を加えた。続いて、氷冷撹拌下、N,N-ジイソプ
ロピルエチルアミン(0.52 mL)を加え、室温で5時間撹拌した。反応液に対し水
(10 mL)を加え、酢酸エチル(15 mL)で3回抽出し、有機層を無水硫酸ナト
リウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフ
ィー(16%酢酸エチル/n-ヘプタン~100%酢酸エチル)により精製し、化合物1
8-3(0.71 g)を含む画分を得た。
【0507】
化合物18-3を含む画分(0.71 g)に対し、4規定-塩化水素/1,4-ジオ
キサン(4.9 mL)を加え、室温で20分間撹拌した。反応液にジイソプロピルエー
テルを加えた後、析出物を濾過することで、標記化合物18-4(0.49 g)を白色
固体として得た。
【0508】
<工程3>
4-(2-アミノエトキシ)-N-(3-アジドプロピル)ベンズアミド基導入アルギン
酸(化合物EX18-A2)の合成:
【化156】
【0509】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(1
9.6 mL)に、氷冷撹拌下、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-
2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(50.19 mg)
、(実施例18)<工程2>で得られた化合物18-4(54.37 mg)、1モル濃
度-重曹水(181.4 μL)を用い、(実施例11)<工程3-1>と同様の操作を
行い、標記化合物EX18-A2(198 mg)を白色固体として得た。
【0510】
(実施例19)
3-アミノ-1-(11,12-ジデヒドロジベンズ[b,f]アゾシン-5(6H)-
イル)- 1-プロパノン基導入アルギン酸(EX19-A2)の合成:
【化157】
【0511】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(4
3.6 mL)に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-
4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(111.7 mg)、1モル濃度
-重曹水(403.5 μL)、市販の3-アミノ-1-(11,12-ジデヒドロジベ
ンズ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)- 1-プロパノン[CAS REGIS
TRY NO.:1255942-06-3](19-1、83.6 mg)を用い、(
実施例11)<工程3-1>と同様の操作を行い、標記化合物EX19-A2(376
mg)を淡黄色固体として得た。
【0512】
(実施例20)
N-(4-(アミノメチル)ベンジル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ
)アセタミド基導入アルギン酸(EX20-B2)の合成:
【化158】
【0513】
<工程1>
tert-ブチル(4-((2,2,2-トリフルオロアセタミド)メチル)ベンジル)
カルバメート(化合物20-2)の合成:
【化159】
【0514】
文献公知の方法(Bioorganic & Medicinal Chemistr
y(2003)11:4189-4206)を参考に合成したtert-ブチル(4-(
アミノエチル)ベンジル)カルバメート(20-1、0.67 g)、トリエチルアミン
(0.39 mL)及びメタノール(6.67 mL)の混合物に対し、氷冷撹拌下、ト
リフルオロ酢酸エチル(0.44 mL)を滴下した。反応混合物を室温に昇温し、同温
で5時間撹拌した。反応を水(10 mL)で停止し、酢酸エチル(10mL)で3回抽
出した。回収した有機層を飽和食塩水(5 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥
させた。乾燥させた有機層を濾過後、濃縮し、標記粗化合物20-2(0.67 g)を
淡黄色アモルファスとして得た。
【0515】
<工程2>
N-(4-(アミノエチル)ベンジル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド 塩酸塩
(化合物20-3)の合成:
【化160】
【0516】
(実施例20)<工程1>で得られた化合物20-2(0.5 g)の1,4-ジオキ
サン溶液(3.5 mL)に対し、水冷撹拌下、4規定-塩化水素/1,4-ジオキサン
(3.5 mL)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液にジイソプロピルエーテル(4
0 mL)を加えた後、析出物を濾過することで、標記化合物20-3(0.4 g)を
白色固体として得た。
【0517】
<工程3>
N-(4-((2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)メチル)ベ
ンジル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド(化合物20-4)の合成:
【化161】
【0518】
文献公知の方法(Org. Process Res. Dev.(2018)22:
108-110)に従い合成したカルボン酸(7-4、0.17 g)及びO-(7-ア
ザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキ
サフルオロりん酸塩(0.26 g)のアセトニトリル(1.7 mL)溶液に対し、氷
冷撹拌下、(実施例20)<工程2>で得られた化合物20-3(0.26 g)及びN
,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.51 mL)を滴下し、室温で1時間30分撹
拌した。水(5 mL)を加え反応を停止させた後、酢酸エチル(5 mL)で3回抽出
した。有機層を飽和食塩水(3 mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた
。乾燥させた有機層を濾過後、減圧下で溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロ
マトグラフィー(12%酢酸エチル/n-ヘプタン~100%酢酸エチル)により精製し
、標記化合物20-4(0.19 g)を白色アモルファスとして得た。
【0519】
<工程4>
N-(4-(アミノメチル)ベンジル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ
)アセタミド(化合物20-5)の合成:
【化162】
【0520】
(実施例20)<工程3>で得られた化合物20-4(0.18 g)及びメタノール
(1.8 mL)の混合物に対して、氷冷撹拌下、炭酸カリウム(0.13 g)水溶液
(0.9 mL)を滴下し、室温で17時間30分撹拌した。メタノールを減圧下で留去
し、酢酸エチル(5 mL)で3回抽出した。有機層を飽和食塩水(5 mL)で洗浄後
、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層を濾過後、減圧下で溶媒を留去し、標記粗化
合物20-5(0.13 g)を淡黄色油状物として得た。
【0521】
<工程5>
N-(4-(アミノエチル)ベンジル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキ
シ)アセタミド基導入アルギン酸(EX20-B2)の合成:
【化163】
【0522】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:B-2)水溶液(5
0.9 mL)、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4
-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(0.12 g)、(実施例20)<
工程4>で得られた化合物20-5(35 mg)のエタノール(3 mL)溶液を用い
、(実施例11)<工程3-1>と同様の操作を行い、標記化合物EX20-B2(52
1 mg)を白色固体として得た。
【0523】
(実施例P1~P7)
下記表に示される(実施例P1)~(実施例P7)のアルギン酸誘導体を前記実施例に
示される方法に準じて、対応するアミノ化合物(製薬学的に許容されるその塩、又はそれ
らの溶媒和物であっても良い)とアルギン酸を用いて製造する。
【表47】
【0524】
【0525】
中間体化合物のNMRデータ
【表49-1】
【表49-2】
【表49-3】
【表49-4】
【表49-5】
【0526】
【0527】
[反応性基又は相補的な反応性基の導入率測定]
反応性基又は相補的な反応性基導入率は、アルギン酸の繰り返し単位であるウロン酸単
糖単位あたりに導入された反応性基又は相補的な反応性基の数を百分率で表した値を意味
する。
本実施例においては、反応性基又は相補的な反応性基導入率(mol%)は、1H-N
MRの積分比による計算した。又、導入率の算出に必要なアルギン酸の量は、検量線を利
用したカルバゾール硫酸法により測定し、反応性基又は相補的な反応性基の量は、検量線
を利用した吸光度測定法により測定することもできる。
【0528】
[分子量の測定]
実施例で得られた反応性基又は相補的な反応性基が導入されたアルギン酸固体を0.1
5 mol/LのNaClを含む10mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解し
0.1%又は0.2%溶液を調製し、孔径0.22μmのポリエーテルスルフォン製ろ過
フィルター(Minisart High Flow Filter、Sartoriu
s社)を通し不溶物を除いた後、ゲルろ過用サンプルとした。各サンプルのスペクトルを
分光光度計DU-800(Beckman-Coulter社)により測定し、各化合物
のゲルろ過における測定波長を決定した。特異的な吸収波長を持たない化合物に関しては
、示差屈折計を用いた。
【0529】
ゲルろ過用サンプルの200μLをSuperose6 Increase10/30
0 GLカラム(GEヘルスケアサイエンス社)に供した。ゲルろ過は、クロマトグラフ
装置としてAKTA Explorer 10Sを、展開溶媒として0.15 mol/
L NaClを含む10mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)を使用し、室温で流速
0.8mL/mimの条件で実施した。サンプルの溶出プロファイルは、各化合物で決定
した波長の吸収をモニターし作製した。得られたクロマトグラムは、Unicorn5.
31ソフトウエア(GEヘルスケアサイエンス社)にて解析し、ピーク範囲を決定した。
【0530】
反応性基又は相補的な反応性基が導入されたアルギン酸の分子量は、ブルーデキストラ
ン(分子量200万Da、 SIGMA社)、チログロブリン(分子量66.9万Da、
GEヘルスケアサイエンス社)フェリチン(分子量44万Da、GEヘルスケアサイエン
ス社)アルドラーゼ(分子量15.8万Da、GEヘルスケアサイエンス社)、コンアル
ブミン(分子量7.5万Da、GEヘルスケアサイエンス社)、オブアルブミン(分子量
4.4万Da、GEヘルスケアサイエンス社)、リボヌクレアーゼA(分子量1.37万
Da、GEヘルスケアサイエンス社)及びアプロチニン(分子量6500Da、GEヘル
スケアサイエンス社)を標準品として用い、反応性基又は相補的な反応性基が導入された
アルギン酸と同じ条件でゲルろ過を行い、各成分の溶出液量をUnicornソフトウエ
アにて決定した。この各成分の溶出液量を横軸に、分子量の対数値を縦軸にそれぞれプロ
ットし、直線回帰し、検量線を作成した。検量線は、ブルーデキストランからフェリチン
まで、フェリチンからアプロチニンまでの2種類を作成した。
【0531】
この検量線を用いて、先に得られたクロマトグラムの溶出時間iにおける分子量(Mi
)を計算した。次いで、溶出時間iにおける吸光度を読み取りHiとした。これらのデー
タから重量平均分子量(Mw)を以下の式から求めた。
【0532】
【0533】
[ゲル安定性の測定]
(ゲル安定性の測定(1)):PBS中安定性
実施例1、4、5及び19にて得られた、(Ex1-A2)、(Ex4-A2)、(Ex
5-A2)及び(Ex19-A2)の各アルギン酸誘導体を、濃度が1.0%となるよう水
に溶かしてそれぞれアルギン酸水溶液(1-1)、(4‐1)、(5-1)、(19-1
)を得た。これらをそれぞれ、(1-1)と(19-1)、(4-1)と(19-1)、
(5-1)と(19-1)の組み合わせで等量混和し、18ゲージの注射針を装着した注
射筒に入れ、この注射筒を流速1 mL/分に設定したシリンジポンプに設置し、濃度が
30 mmol/Lの塩化カルシウム溶液に30秒間滴下し、5分間撹拌してアルギン酸
ゲルを得た。このゲルを10 mLのPBSで1度洗浄し、PBS中、37℃で10分間
静置して化学架橋を行い、化学架橋アルギン酸ゲルを得た。(Ex18-A2)/(Ex
19-A2)で作製された架橋アルギン酸ゲル(ビーズ)もこれらと同様に調製した。こ
のゲルに19.5 mLのPBSを添加し、37℃で振盪して、経時的に水溶液を回収し
、回収した量と同量のPBSを補充した。試験終了後、試験溶液にアルギン酸リアーゼ(
ニッポンジーン、319-08261)を10 μL添加し、37℃で3時間以上振盪さ
せてゲルを全て崩壊させ、水溶液を回収した。回収した水溶液中のアルギン酸濃度をカル
バゾール硫酸法により測定し、各時点までの溶出アルギン酸量を、全時点のアルギン酸濃
度および試験終了後のアルギン酸濃度から算出した総アルギン酸量で除した値を百分率で
表した値を崩壊率とし、ゲル安定性の指標とした。
【0534】
図1の結果が得られた。前記架橋アルギン酸ゲル(ビーズ)は、96時間を経過しても
崩壊せず、ゲルの安定性が確認できた。すなわち、Huisgen反応による化学架橋が
形成されたことにより、作製された(ビーズ)構造体は、長期に渡りその構造が維持され
ることが示唆された。(Ex18-A2)/(Ex19-A2)で作製された架橋アルギ
ン酸ゲル(ビーズ)は、本試験のコントロールである。
【0535】
(ゲル安定性の測定(2)):EDTA下安定性
(ゲル安定性の測定(1))で得たアルギン酸水溶液をそれぞれ、(1-1)と(19
-1)、(4-1)と(19-1)、(5-1)と(19-1)の組み合わせで等量混和
し、18ゲージの注射針を装着した注射筒に入れ、この注射筒を流速1 mL/分に設定
したシリンジポンプに設置し、濃度が30 mmol/Lの塩化カルシウム溶液に30秒
間滴下し、5分間撹拌してアルギン酸ゲルを得た。(Ex18-A2)/(Ex19-A
2)で作製された架橋アルギン酸ゲル(ビーズ)もこれらと同様に調製した。このゲルを
10 mLの生理食塩水で1度洗浄し、生理食塩水中、37℃で10分間静置して化学架
橋を行い、化学架橋アルギン酸ゲルを得た。このゲルに19.5 mLの5 mMエチレ
ンジアミン四酢酸二カリウム塩二水和物(EDTA・2K)/生理食塩水を添加し、37
℃で振盪して、経時的に水溶液を回収し、回収した量と同量の5 mM EDTA・2K
/生理食塩水を補充した。試験終了後、試験溶液にアルギン酸リアーゼ(ニッポンジーン
、319-08261)を10μL添加し、37℃で3時間以上振盪させてゲルを全て崩
壊させ、水溶液を回収した。回収した水溶液中のアルギン酸濃度をカルバゾール硫酸法に
より測定し、各時点までの溶出アルギン酸量を、全時点のアルギン酸濃度および試験終了
後のアルギン酸濃度から算出した総アルギン酸量で除した値を百分率で表した値を崩壊率
とし、ゲル安定性の指標とした。
【0536】
結果を
図2に示した。前記架橋アルギン酸ゲル(ビーズ)は、24時間を経過した後の
、崩壊率が2%以下であった。すなわち、Huisgen反応による架橋形成がなされる
ことにより、作製された構造体は、カルシウムイオンのない溶液(生体にとっての生理的
濃度以下)条件下でも、構造が維持されることが示唆された。(Ex18-A2)/(E
x19-A2)で作製された架橋アルギン酸ゲル(ビーズ)は、本試験のコントロールで
ある。
【0537】
(ゲル安定性の測定(3)):PBS中安定性
実施例3、5、6、9、10、12及び18にて得られた、(Ex3-A2)、(Ex
5-A2)、(Ex6-A2)、(Ex9a-A2)、(Ex10-A2)、(Ex12-A
2)及び(Ex18-A2)の各アルギン酸誘導体を、濃度が1.0%となるよう水に溶
かしてそれぞれアルギン酸水溶液(3-1)、(5-1)、(6-1)、(9-1)、(
10‐1)、(12-1)、(18-1)を得た。これらをそれぞれ、(6-1)と(9
-1)、(3-1)と(10-1)、(5-1)と(10-1)、(18-1)と(12
-1)の組み合わせで等量混和し、18ゲージの注射針を装着した注射筒に入れ、この注
射筒を流速1 mL/分に設定したシリンジポンプに設置し、濃度が30 mmol/L
の塩化カルシウム溶液に30秒間滴下し、5分間撹拌してアルギン酸ゲルを得た。このゲ
ルを10 mLのPBSで1度洗浄し、PBS中、37℃で10分間静置して化学架橋を
行い、化学架橋アルギン酸ゲルを得た。(Ex18-A2)/(Ex19-A2)で作製
された架橋アルギン酸ゲル(ビーズ)もこれらと同様に調製した。このゲルに19.5
mLのPBSを添加し、37℃で振盪して、経時的に水溶液を回収し、回収した量と同量
のPBSを補充した。試験終了後、試験溶液にアルギン酸リアーゼ(ニッポンジーン、3
19-08261)を10 μL添加し、37℃で3時間以上振盪させてゲルを全て崩壊
させ、水溶液を回収した。回収した水溶液中のアルギン酸濃度をカルバゾール硫酸法によ
り測定し、各時点までの溶出アルギン酸量を、全時点のアルギン酸濃度および試験終了後
のアルギン酸濃度から算出した総アルギン酸量で除した値を百分率で表した値を崩壊率と
し、ゲル安定性の指標とした。
【0538】
図3の結果が得られた。前記架橋アルギン酸ゲル(ビーズ)は、96時間を経過しても
崩壊せず、ゲルの安定性が確認できた。すなわち、Huisgen反応による化学架橋が
形成されたことにより、作製された(ビーズ)構造体は、長期に渡りその構造が維持され
ることが示唆された。尚、(Ex18-A2)/(Ex19-A2)で作製された架橋ア
ルギン酸ゲル(ビーズ)は、本試験のコントロールである。
【0539】
(ゲル安定性の測定(4)):EDTA下安定性
(ゲル安定性の測定(3))で得たアルギン酸水溶液をそれぞれ、(6-1)と(9-
1)、(3-1)と(10-1)、(5-1)と(10-1)、(18-1)と(12-
1)の組み合わせで等量混和し、18ゲージの注射針を装着した注射筒に入れ、この注射
筒を流速1 mL/分に設定したシリンジポンプに設置し、濃度が30 mmol/Lの
塩化カルシウム溶液に30秒間滴下し、5分間撹拌してアルギン酸ゲルを得た。このゲル
を10 mLの生理食塩水で1度洗浄し、生理食塩水中、37℃で10分間静置して化学
架橋を行い、化学架橋アルギン酸ゲルを得た。(Ex18-A2)/(Ex19-A2)
で作製された架橋アルギン酸ゲル(ビーズ)もこれらと同様に調製した。このゲルに19
.5 mLの5 mMエチレンジアミン四酢酸二カリウム塩二水和物(EDTA・2K)
/生理食塩水を添加し、37℃で振盪して、経時的に水溶液を回収し、回収した量と同量
の5 mM EDTA・2K/生理食塩水を補充した。試験終了後、試験溶液にアルギン
酸リアーゼ(ニッポンジーン、319-08261)を10μL添加し、37℃で3時間
以上振盪させてゲルを全て崩壊させ、水溶液を回収した。回収した水溶液中のアルギン酸
濃度をカルバゾール硫酸法により測定し、各時点までの溶出アルギン酸量を、全時点のア
ルギン酸濃度および試験終了後のアルギン酸濃度から算出した総アルギン酸量で除した値
を百分率で表した値を崩壊率とし、ゲル安定性の指標とした。
【0540】
結果を
図4に示した。前記架橋アルギン酸ゲル(ビーズ)は、24時間を経過した後の
、崩壊率が4%以下であった。すなわち、Huisgen反応による架橋形成がなされる
ことにより、作製された構造体は、カルシウムイオンのない溶液(生体にとっての生理的
濃度以下)条件下でも、構造が維持されることが示唆された。Ex18-A2/Ex19
-A2で作製された架橋アルギン酸ゲル(ビーズ)は、本試験のコントロールである。
【0541】
(ゲル安定性の測定(5)):PBS中安定性
実施例4、9、16、18及び20にて得られた、(Ex4-A2)、(EX9a-A2
)、(Ex16-A2)、(Ex18-A2)及び(Ex20-B2)の各アルギン酸誘導
体を、濃度が1.0%となるよう水に溶かしてそれぞれアルギン酸水溶液(4-1)、(
9-1)、(16-1)、(18-1)、(20‐1)を得た。これらをそれぞれ、(4
-1)と(20-1)、(18-1)と(9-1)、(18-1)と(16-1)の組み
合わせで等量混和し、18ゲージの注射針を装着した注射筒に入れ、この注射筒を流速1
mL/分に設定したシリンジポンプに設置し、濃度が30 mmol/Lの塩化カルシ
ウム溶液に30秒間滴下し、5分間撹拌してアルギン酸ゲルを得た。このゲルを10 m
LのPBSで1度洗浄し、PBS中、37℃で10分間静置して化学架橋を行い、化学架
橋アルギン酸ゲルを得た。(Ex18-A2)/(Ex19-A2)で作製された架橋ア
ルギン酸ゲル(ビーズ)もこれらと同様に調製した。このゲルに19.5 mLのPBS
を添加し、37℃で振盪して、経時的に水溶液を回収し、回収した量と同量のPBSを補
充した。試験終了後、試験溶液にアルギン酸リアーゼ(ニッポンジーン、319-082
61)を10μL添加し、37℃で3時間以上振盪させてゲルを全て崩壊させ、水溶液を
回収した。回収した水溶液中のアルギン酸濃度をカルバゾール硫酸法により測定し、各時
点までの溶出アルギン酸量を、全時点のアルギン酸濃度および試験終了後のアルギン酸濃
度から算出した総アルギン酸量で除した値を百分率で表した値を崩壊率とし、ゲル安定性
の指標とした。
【0542】
結果を
図5に示した。前記方法で作製された架橋アルギン酸は、96時間を経過しても
約12%以下の崩壊率であった。すなわち、Huisgen反応による化学架橋が形成さ
れたことにより、作製された(ビーズ)構造体は、その構造が維持されることが示唆され
た。Ex18-A2/Ex19-A2で作製された架橋アルギン酸ゲル(ビーズ)は、本
試験のコントロールである。
【0543】
(ゲル安定性の測定(6)):EDTA下安定性
(ゲル安定性の測定(5))で得たアルギン酸水溶液をそれぞれ、(4-1)と(20
-1)、(18-1)と(9-1)、(18-1)と(16-1)の組み合わせで等量混
和し、18ゲージの注射針を装着した注射筒に入れ、この注射筒を流速1 mL/分に設
定したシリンジポンプに設置し、濃度が30 mmol/Lの塩化カルシウム溶液に30
秒間滴下し、5分間撹拌してアルギン酸ゲルを得た。このゲルを10 mLの生理食塩水
で1度洗浄し、生理食塩水中、37℃で10分間静置して化学架橋を行い、化学架橋アル
ギン酸ゲルを得た。(Ex18-A2)/(Ex19-A2)で作製された架橋アルギン
酸ゲル(ビーズ)もこれらと同様に調製した。このゲルに19.5 mLの5 mMエチ
レンジアミン四酢酸二カリウム塩二水和物(EDTA・2K)/生理食塩水を添加し、3
7℃で振盪して、経時的に水溶液を回収し、回収した量と同量の5 mM EDTA・2
K/生理食塩水を補充した。試験終了後、試験溶液にアルギン酸リアーゼ(ニッポンジー
ン、319-08261)を10μL添加し、37℃で3時間以上振盪させてゲルを全て
崩壊させ、水溶液を回収した。回収した水溶液中のアルギン酸濃度をカルバゾール硫酸法
により測定し、各時点までの溶出アルギン酸量を、全時点のアルギン酸濃度および試験終
了後のアルギン酸濃度から算出した総アルギン酸量で除した値を百分率で表した値を崩壊
率とし、ゲル安定性の指標とした。
【0544】
図6の結果が得られた。前記架橋アルギン酸ゲル(ビーズ)は、24時間を経過した後
の、崩壊率が18%以下であった。すなわち、Huisgen反応による架橋形成がなさ
れることにより、作製された構造体は、カルシウムイオンのない溶液(生体にとっての生
理的濃度以下)条件下でも、構造が維持されることが示唆された。Ex18-A2/Ex
19-A2で作製された架橋アルギン酸ゲル(ビーズ)は、本試験のコントロールである
。
【0545】
[ゲル透過性の測定]
(ゲル透過性の測定(1))
実施例1、3、4、5及び18にて得られた、(Ex1-A2)、(Ex3-A2)、(
Ex4-A2)、(Ex5-A2)及び(Ex18-A2)の各アルギン酸誘導体を、濃度
が2.0%となるよう水に溶かしてアルギン酸水溶液を調製し、このアルギン酸水溶液に
2/5容量の1 mg/mLに調製した分子量15万のフルオレセインイソチオシアナー
ト-デキストラン(シグマアルドリッチ、FD150S)、及び3/5容量の水を加え、
0.2 mg/mLフルオレセインイソチオシアナート-デキストラン含有1.0%アル
ギン酸水溶液(1‐2)、(3-2)、(4-2)、(5-2)、(18-2)を得た。
【0546】
さらに実施例10、12及び19にて得られた、(Ex10-A2)、(Ex12-A2
)及び(Ex19-A2)の各アルギン酸誘導体を、濃度が1.0%となるよう水に溶か
してそれぞれアルギン酸水溶液(10-1)、(12‐1)、(19‐1)を得た。
【0547】
これらをそれぞれ、(1-2)と(19-1)、(4-2)と(19-1)、(5-2
)と(19-1)、(3-2)と(10-1)、(18-2)と(12-1)の組み合わ
せで等量混和し、濃度が30 mmol/Lの塩化カルシウム溶液を40 mL添加し、
5分間撹拌してアルギン酸ゲルを得た。このゲルを10 mLの生理食塩水で1度洗浄し
、生理食塩水中、37℃で10分間静置して化学架橋を行い、フルオレセインイソチオシ
アナート-デキストラン内包化学架橋アルギン酸ゲルを得た。(Ex18-A2)/(E
x19-A2)で作製されたフルオレセインイソチオシアナート-デキストラン内包化学
架橋アルギン酸ゲルもこれらと同様に調製した。このゲルに19.5 mLの生理食塩水
を添加し、37℃で振盪して、経時的に水溶液を回収し、回収した量と同量の生理食塩水
を補充した。試験終了後、試験溶液にアルギン酸リアーゼ(ニッポンジーン、319-0
8261)を10 μL添加し、37℃で3時間以上振盪させてゲルを全て崩壊させ、水
溶液を回収した。回収した水溶液中のデキストラン濃度を蛍光定量法(励起光:485n
m、蛍光:535nm)により測定し、各時点までのデキストラン量を試験終了後の総デ
キストラン量で除した値を百分率で表した値を透過率とした。
【0548】
図7の結果が得られた。24時間後の透過率は、25%~40%の範囲であった。尚、
(Ex18-A2)/(Ex19-A2)で作製されたフルオレセインイソチオシアナー
ト-デキストラン内包化学架橋アルギン酸ゲルは、本試験のコントロールである。
【0549】
(ゲル透過性の測定(2))
実施例4、5、6及び18にて得られた、(Ex4-A2)、(Ex5-A2)、(Ex
6-A2)及び(Ex18-A2)の各アルギン酸誘導体を、濃度が2.0%となるよう水
に溶かしてアルギン酸水溶液を調製し、このアルギン酸水溶液に2/5容量の1 mg/
mLに調製した分子量15万のフルオレセインイソチオシアナート-デキストラン(シグ
マアルドリッチ、FD150S)、及び3/5容量の水を加え、0.2 mg/mLフル
オレセインイソチオシアナート-デキストラン含有1.0%アルギン酸水溶液(4‐2)
、(5-2)、(6-2)、(18-2)を得た。
【0550】
さらに実施例9、10、16及び20にて得られた、(EX9a-A2)、(Ex10-
A2)、(Ex16-A2)及び(Ex20-B2)の各アルギン酸誘導体を、濃度が1.
0%となるよう水に溶かしてそれぞれアルギン酸水溶液(9-1)、(10‐1)、(1
6‐1)、(20-1)を得た。
【0551】
これらをそれぞれ、(4-2)と(20-1)、(5-2)と(10-1)、(6-2
)と(9-1)、(18-2)と(9-1)、(18-2)と(16-1)の組み合わせ
で等量混和し、濃度が30 mmol/Lの塩化カルシウム溶液を40 mL添加し、5
分間撹拌してアルギン酸ゲルを得た。このゲルを10 mLの生理食塩水で1度洗浄し、
生理食塩水中、37℃で10分間静置して化学架橋を行い、フルオレセインイソチオシア
ナート-デキストラン内包化学架橋アルギン酸ゲルを得た。(Ex18-A2)/(Ex
19-A2)で作製されたフルオレセインイソチオシアナート-デキストラン内包化学架
橋アルギン酸ゲルもこれらと同様に調製した。このゲルに19.5 mLの生理食塩水を
添加し、37℃で振盪して、経時的に水溶液を回収し、回収した量と同量の生理食塩水を
補充した。試験終了後、試験溶液にアルギン酸リアーゼ(ニッポンジーン、319-08
261)を10 μL添加し、37℃で3時間以上振盪させてゲルを全て崩壊させ、水溶
液を回収した。回収した水溶液中のデキストラン濃度を蛍光定量法(励起光:485nm
、蛍光:535nm)により測定し、各時点までのデキストラン量を試験終了後の総デキ
ストラン量で除した値を百分率で表した値を透過率とした。
【0552】
図8の結果が得られた。24時間後の透過率は、25%~30%の範囲であった。Ex
18-A2/Ex19-A2で作製されたフルオレセインイソチオシアナート-デキスト
ラン内包化学架橋アルギン酸ゲルは、本試験のコントロールである。
【0553】
[架橋アルギン酸誘導体(ゲル)の生体適合性評価]
実施例4、5、12、16、18、19及び20にて得られた、(EX4-A2)、(
EX5-A2)、(EX12-A2)、(EX16-A2)、(EX18-A2)、(E
X19-A2)及び(EX20-B2)の各アルギン酸誘導体を、水に溶かして反応性基
導入アルギン酸溶液とした。これをミニザルトハイフロー(ザルトリウス、16532G
UK)で濾過滅菌した後、1.0%反応性基導入アルギン酸/生理食塩水溶液を調製した
。細胞濃度5×103 cells/wellとなるよう96wellプレートに播種し
て後1日培養したHeLa細胞に、1.0%反応性基反応性基導入アルギン酸/生理食塩
水溶液を(EX18-A2)と(EX19-A2)、(Ex5-A2)と(Ex19-A
2)、(Ex4-A2)と(Ex20-B2)、(Ex18-A2)と(Ex12-A2
)あるいは(Ex16-A2)の組み合わせで終濃度0.1%となるよう添加し、1日培
養後に細胞毒性の指標としてATP活性をCellTiter-Glo Lumines
cent Cell Viability Assay(Promega、G7571)
で評価した。
【0554】
図9の結果が得られた。前記方法にて評価した全ての架橋アルギン酸ゲルにおいてAT
P活性が確認できたことより、架橋アルギン酸ゲルに細胞毒性が無いことが示唆されてお
り、Huisgen反応により化学架橋が形成されたアルギン酸構造体(ビーズ)が生体
適合性を有していることが示唆された。