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特開2025-13889高安全性及び高容量を兼ね備えたリチウム電池用三元正極板、その製造方法及びそれを含むリチウム電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013889
(43)【公開日】2025-01-28
(54)【発明の名称】高安全性及び高容量を兼ね備えたリチウム電池用三元正極板、その製造方法及びそれを含むリチウム電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/131 20100101AFI20250121BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20250121BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20250121BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20250121BHJP
   H01M 10/0563 20100101ALI20250121BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250121BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20250121BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20250121BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250121BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/525
H01M4/62 Z
H01M4/1391
H01M10/0563
H01M10/052
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M4/505
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024184090
(22)【出願日】2024-10-18
(62)【分割の表示】P 2022572661の分割
【原出願日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】202010464210.1
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010464212.0
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010464214.X
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521228710
【氏名又は名称】北京▲衛▼▲藍▼新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING WELION NEW ENERGY TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】No.1,Qihang West Street,Doudian Town,Fangshan District,Beijing 102402 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 文俊
(72)【発明者】
【氏名】丁 秋▲鳳▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 浩
(72)【発明者】
【氏名】徐 航宇
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ ▲海▼▲雲▼
(72)【発明者】
【氏名】丁 ▲澤▼▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】王 雅丹
(72)【発明者】
【氏名】李 永▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ゆ▼ 会根
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高安全性及び高容量を兼ね備えたリチウム電池用正極板、その製造方法、およびリチウム電池を提供する。
【解決手段】正極板には、リチウムリッチマンガン系固溶体、リチウムリッチ固体電解質及び脱リチウム状態の一酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1種であるリチウムリッチ化合物が配合されており、前記リチウムリッチ化合物は、電池過充電、内部短絡、外部短絡、熱的乱用、ニードルパンチ、押圧や過熱などの極端な条件でLiイオンを放出し、正極材料中のリチウム空孔を埋めることで、正極材料の格子構造を安定化させ、この正極材料を用いて製造される電池の安全性を改善することができ、しかも、正極板は高い面容量を有しながら、優れたサイクル性能を維持できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムリッチマンガン系固溶体、リチウムリッチ固体電解質及び脱リチウム状態の一酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1種であるリチウムリッチ化合物が配合されている、ことを特徴とするリチウム電池用正極板。
【請求項2】
前記リチウムリッチ化合物は電池の極端な条件でリチウムイオンを放出でき、
好ましくは、前記電池極端な条件は、電池過充電、高温、ニードルパンチ、押圧、内部短絡、外部短絡、熱的乱用や過熱のうちの少なくとも1種を含み、
好ましくは、前記リチウムリッチマンガン系固溶体の分子式は、xLiMnO・(1-x)LiMO(式中、xは0<x≦1であり、MはNi、Co又はMnから選ばれる少なくとも1種である。)である、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項3】
前記リチウムリッチ固体電解質はLiLaZr12及びLiLaZr12に他の元素がドーピングされた材料から選ばれ、ドーピング元素はLa、Nb、Sb、Ga、Te、W、Al、Sn、Ca、Ti、Hf、Taのうちの少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項4】
前記脱リチウム状態の一酸化ケイ素の分子式はLiSiO(式中、xは1.4~2.1であり、yは0.9~1.1である。)である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項5】
前記リチウムリッチ化合物の粒子の粒子径D50が、0.1~10μm、好ましくは0.5~2μmである、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項6】
前記リチウム電池用正極板中の正極活物質とリチウムリッチ化合物の総質量を100%として、前記リチウムリッチ化合物の含有量が0.1~20質量%、好ましくは1~5質量%である、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項7】
前記リチウム電池用正極板の面容量が4mAh/cm以上であり、
好ましくは、前記リチウム電池用正極板中の正極活物質はLiNiCo1-x-y(式中、x≧0.8、y≦0.2、MはMn、Al又はMgから選ばれるいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせである。)である、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項8】
正極活物質とリチウムリッチ化合物を予備混合し、予備混合粉体を得るステップと、
前記予備混合粉体、バインダ液、導電剤を混合し、正極スラリーを得るステップと、
集電体上に前記正極スラリーを塗布し、ベーク、コールドプレス、シート状化を行い、前記リチウム電池用正極板を得るステップとを含み、
好ましくは、前記予備混合粉体、バインダ液、導電剤を混合する方式としては、予備混合粉体にバインダ液を加えてから、導電剤を加え、前記正極スラリーを得る、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のリチウム電池用正極板の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のリチウム電池用正極板を含み、
好ましくは、負極板をさらに含み、前記負極板中の負極活物質は一酸化ケイ素及び/又はシリコンカーボンから選ばれ、
好ましくは、前記負極板は負極活物質、導電剤、増粘剤、及びバインダを含み、
好ましくは、セパレータをさらに含む、ことを特徴とする電池。
【請求項10】
前記セパレータはセラミックコーティングが塗装されたセパレータから選ばれ、
好ましくは、前記セパレータの厚さは10~40μmであり、空隙率は20~60%である、ことを特徴とする請求項9に記載の電池。
【請求項11】
集電体と、前記集電体の表面に位置する正極活物質層とを含む高安全性及び高容量を兼ね備えたリチウム電池用三元正極板であって、
前記正極活物質層はリチウムイオンを輸送できる酸化物固体電解質を含み、前記酸化物固体電解質は多孔質球状粒子である、ことを特徴とするリチウム電池用三元正極板。
【請求項12】
前記多孔質球状粒子の空隙率は5~70%、好ましくは40~70%である、ことを特徴とする請求項11に記載の三元正極板。
【請求項13】
前記酸化物固体電解質の粒子径は0.1~10μm、好ましくは0.5~3μmである、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の三元正極板。
【請求項14】
前記正極活物質層中の正極活物質と酸化物固体電解質との総質量を100%として、前記酸化物固体電解質の含有量は0.1~10質量%、好ましくは1~5質量%である、ことを特徴とする請求項11~13のいずれか1項に記載の三元正極板。
【請求項15】
前記酸化物固体電解質はNASICON構造、ペロブスカイト構造、アンチペロブスカイト構造、LISICON構造及びガーネット構造のうちの少なくとも1種を含み、
好ましくは、前記NASICON構造は、Li1+xAlGe2-x(PO、Li1+xAlGe2-x(POの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li1+yAlTi2-y(PO及びLi1+yAlTi2-y(POの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物から選ばれる少なくとも1種であり、
好ましくは、前記ペロブスカイト構造はLi3zLa2/3-zTiO、Li3zLa2/3-zTiOの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li3/8Sr7/16Ta3/4Hf1/4、Li3/8Sr7/16Ta3/4Hf1/4の同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li2a-bSr1-aTaZr1-b及びLi2a-bSr1-aTaZr1-bの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物のから選ばれる少なくとも1種であり、
好ましくは、前記アンチペロブスカイト構造は、Li3-2xHalO、Li3-2xHalOの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、LiOCl及びLiOClの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物から選ばれる少なくとも1種であり、式中、HalはCl及び/又はIを含み、MはMg2+、Ca2+、Sr2+又はBa2+から選ばれるいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせであり、
好ましくは、前記LISICON構造は、Li4-cSi1-c、Li4-cSi1-cの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li14ZnGe16及びLi14ZnGe16の同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物から選ばれる少なくとも1種であり、
好ましくは、前記ガーネット構造は、Li7-dLaZr2-d12及び/又はLi7-dLaZr2-d12の同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物から選ばれる、ことを特徴とする請求項11~14のいずれか1項に記載の三元正極板。
【請求項16】
前記三元正極板の面容量は4mAh/cm以上である、ことを特徴とする請求項11~15のいずれか1項に記載の三元正極板。
【請求項17】
前記正極活物質層中の正極活物質は高ニッケル三元材料から選ばれ、
好ましくは、前記高ニッケル三元材料はニッケルコバルトマンガン酸リチウム及び/又はニッケルコバルトアルミン酸リチウムを含み、
好ましくは、前記ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの分子式はLiNiCoMn1-x-yであり、前記ニッケルコバルトアルミン酸リチウムの分子式はLiNiCoAl1-x-yであり、式中、x≧0.6である、ことを特徴とする請求項11~16のいずれか1項に記載の三元正極板。
【請求項18】
正極活物質と酸化物固体電解質とを予備混合し、予備混合粉体を得るステップと、
予備混合粉体にバインダ液、導電剤を加えて混合し、正極スラリーを得るステップと、
集電体上に前記正極スラリーを塗布し、乾燥させて前記三元正極板を得るステップとを含む、ことを特徴とする請求項11~17のいずれか1項に記載の三元正極板の製造方法。
【請求項19】
請求項11~17のいずれか1項に記載の三元正極板を含む、ことを特徴とするリチウム電池。
【請求項20】
前記リチウム電池は液体リチウム電池、半固体リチウム電池及び全固体リチウム電池のうちのいずれかの1種を含み、
好ましくは、前記液体リチウム電池は請求項11~17のいずれか1項に記載の三元正極板、負極板及び液体電解質を含み、
好ましくは、前記半固体リチウム電池は請求項11~17のいずれか1項に記載の三元正極板、負極板及び電解質層を含み、前記電解質層に液体電解質材料が含有されており、
好ましくは、前記固体リチウム電池は、請求項11~17のいずれか1項に記載の三元正極板、負極板及び固体電解質層を含み、
好ましくは、前記固体電解質層中の固体電解質は重合体固体電解質、酸化物固体電解質及び硫化物固体電解質から選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項19に記載のリチウム電池。
【請求項21】
集電体と、前記集電体の表面に位置する正極材料層とを含み、前記正極材料層は三元正極活性材料粒子、導電剤、バインダ、及びリチウムイオンを伝導可能な酸化物固体電解質粒子を含み、
前記正極板の面容量が4mAh/cm以上であり、前記酸化物固体電解質粒子の粒子径D50が0.1~3μmである、ことを特徴とするリチウム電池用三元正極板。
【請求項22】
前記酸化物固体電解質粒子の粒子径D50は0.5~2μmであり、
好ましくは、三元正極活性材料粒子、導電剤、バインダ及び酸化物固体電解質粒子の総質量を100%として、前記三元正極活性材料粒子の含有量は80~98%であり、
好ましくは、三元正極活性材料粒子、導電剤、バインダ及び酸化物固体電解質粒子の総質量を100%として、前記酸化物固体電解質の含有量は0.1~10%、好ましくは1~5%であり、
好ましくは、三元正極活性材料粒子、導電剤、バインダ及び酸化物固体電解質粒子の総質量を100%として、前記導電剤の含有量は0.1~8%であり、
好ましくは、三元正極活性材料粒子、導電剤、バインダ及び酸化物固体電解質粒子の総質量を100%として、前記バインダの含有量は0.1~10%である、ことを特徴とする請求項21に記載の正極板。
【請求項23】
前記酸化物固体電解質粒子は、NASICON構造のLi1+x1Alx1Ge2-x1(PO又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li1+x2Alx2Ti2-x2(PO又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、ペロブスカイト構造のLi3x3La2/3-x3TiO又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合
物、Li3/8Sr7/16Ta3/4Hf1/4又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li2x4-y1Sr1-x4Tay1Zr1-y1又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、アンチペロブスカイト構造のLi3-2x5x5HalO、LiOCl又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、LISICON構造のLi4-x6Si1-x6x6又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li14ZnGe16又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、ガーネット構造のLi7-x7LaZr2-x712又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物のうちのいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、式中、0<x1≦0.75、0<x2≦0.5、0.06≦x3≦0.14、0.25≦y1≦1、x4=0.75y1、0≦x5≦0.01、0.5≦x6≦0.6;0≦x7<1であり、MはMg2+、Ca2+、Sr2+又はBa2+のうちのいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、Halは元素Cl又はIであり、
好ましくは、前記酸化物固体電解質粒子は、Li1+x2Alx2Ti2-x2(PO及び/又はLi7-x7LaZr2-x712を含み、好ましくはLi1+x2Alx2Ti2-x2(POである、ことを特徴とする請求項21又は22に記載の正極板。
【請求項24】
前記三元正極活性材料粒子はニッケルコバルトマンガン酸リチウム及び/又はニッケルコバルトアルミン酸リチウムを含み、
好ましくは、前記三元正極活性材料粒子の化学組成はLiNiCo1-x-y(MはMn又はAlのうちの少なくとも1種であり、x≧0.6である。)であり、
好ましくは、前記導電剤は、Super-P、KS-6、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、CNT、アセチレンブラック又はグラフェンのうちのいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、好ましくはカーボンナノチューブとSuper-Pの組み合わせであり、
好ましくは、前記バインダは、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン、ポリエチレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレンのうちのいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項21~23のいずれか1項に記載の正極板。
【請求項25】
前記三元正極活性材料粒子の粒子径D50と前記酸化物固体電解質粒子の粒子径D50との比が5以上である、ことを特徴とする請求項21~24のいずれか1項に記載の正極板。
【請求項26】
三元正極活性材料粒子を含む正極活性材料粒子と酸化物固体電解質粒子とを予備混合し、予備混合材料を得るステップS1と、
前記予備混合材料にバインダのバインダ液を加えて混合し、一次スラリーを得るステップS2と、
前記一次スラリーに導電剤を加えて混合し、二次スラリーを得るステップS3と、
極板の面容量が4mAh/cm以上となるように集電体上に前記二次スラリーを塗装し、焼き付け、ロールプレスを行い、正極板を得るステップS4とを含む、ことを特徴とする請求項21~25のいずれか1項に記載の正極板の製造方法。
【請求項27】
前記予備混合は真空予備混合又は露点≦-30℃の条件で行われる予備混合であり、
好ましくは、前記予備混合及び混合はボールミル又は撹拌機にて行われ、
好ましくは、前記予備混合及び混合は自転公転撹拌機を用いて行われ、公転速度は20rpm以上、独立して好ましくは30~90rpm、自転速度は200rpm以上、独立して好ましくは500~2000rpmであり、
好ましくは、前記予備混合の時間は0.5~4h、好ましくは1~2hであり、
好ましくは、前記露点は-45℃以下、さらに好ましくは-60℃以下である、ことを
特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
正極板の製造において、粒子径D50が0.1~3μmの酸化物固体電解質粒子を加え、正極活性材料粒子間に分散させるステップを含み、前記正極板の面容量は4mAh/cm以上である、ことを特徴とするリチウム電池の安全性向上方法。
【請求項29】
請求項21~25のいずれか1項に記載の正極板を含む、ことを特徴とするリチウム電池。
【請求項30】
液体リチウム電池又は半固体リチウム電池を含み、
好ましくは、前記液体リチウム電池は、請求項21~25のいずれか1項に記載の正極板、負極板及び液体電解質を含み、
好ましくは、前記半固体リチウム電池は、請求項21~25のいずれか1項に記載の正極板、負極板、及び液体電解質を含有する電解質層を含む、ことを特徴とする請求項29に記載のリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2020年5月27日に中国特許庁に提出された出願番号が202010464210.1、発明の名称が「高安全性、高容量及び長サイクル寿命を兼ね備えたリチウム電池用三元正極板、その製造方法及び使用」である中国特許出願、2020年5月27日に中国特許庁に提出された出願番号が202010464212.0、発明の名称が「高安全性及び高容量を兼ね備えたリチウム電池用三元正極板、その製造方法及び使用」である中国特許出願、2020年5月27日に中国特許庁に提出された出願番号が202010464214.X、発明の名称が「高安全性及び高容量を兼ね備えたリチウム電池用正極板、その製造方法及び使用」である中国特許出願の優先権を主張している。これらの特許出願の全内容は引用により本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は電池材料の分野に属し、高安全性及び高容量を兼ね備えたリチウム電池用正極板、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
現在の社会では、エネルギーと環境は人類社会の生存や発展のための基本的な条件であり、国家建設と経済発展を支える重要な物質基礎であり、現在全世界が直面している互いに矛盾する2つの難題でもある。近年、科学の発展に伴い、特に自動車の急速な発展、エネルギーの枯渇及び環境の汚染は社会の生存や発展に深刻な影響を与えている。新しいグリーンエネルギー技術が開発、利用されており、リチウムイオン電池は長寿命、高動作電圧、高いエネルギー密度などの利点があるため、広く応用されている。
【0004】
エネルギー危機及び環境問題がますます際立っている現在の社会環境の下で、新エネルギー自動車は次第に自動車産業発展の主流になっている。新エネルギー自動車の投入と使用により、石油などの化石燃料への依存性を低減させることができ、温室効果ガスと標準汚染物質の排出を効果的に削減できる。周知のように、リチウムイオン電池は近年、携帯電子製品において広く応用されており、動力電池と中大型電池へ発展し始めており、これはリチウムイオン電池のサイクル周期、使用寿命、製造コストに大きな挑戦を突きつけるだけでなく、リチウムイオン電池の安全性に対してもより高い要求を突きつけている。
【0005】
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、サイクル性能が良く、使用寿命が長く、自己放電が低く、メモリー効果がないなどの利点があり、動力電池において応用の将来性が期待できる。電気自動車は交通手段として、走行距離や安全性能などが注目されているが、これらは主に動力電池のエネルギー密度、サイクル寿命、出力密度、安全性などの性能に依存される。
【0006】
動力電池のエネルギー密度と電気自動車の走行距離から見ると、ニッケル(Ni)を含む三元材料系は明らかな優位性があり、特に高ニッケル三元ニッケルコバルトマンガン酸リチウムとニッケルコバルトアルミン酸リチウム材料は動力電池において将来性が期待できる。三元材料は放電容量が大きく、サイクル寿命が長く、低温性能が良く、原料が豊富などの利点があり、また、リン酸鉄リチウムの容量が低く、コバルト酸リチウム材料のコストが高く、マンガン酸リチウム材料の安定性が低いなどの問題を同時に解決することができ、動力型リチウム電池の最も潜在力のある正極材料の一つとされているため、高ニッケル三元材料は電気自動車分野で応用の将来性が期待でき、しかし、高温安定性が悪く、熱暴走が発生しやすく、しかも三元材料中のニッケル含有量が高いほど、熱安定性が悪く
なる。三元正極材料の安全性を高めることは、高エネルギー密度の三元リチウム電池の動力電池分野における広範な応用の鍵であり、現在研究されている重要な方向の一つでもある。
【0007】
三元正極材料はこのように多くの優位性があるが、その高温安定性が悪く、熱暴走が発生しやすく、しかも三元材料中のニッケル含有量が高いほど、熱安定性が悪くなる。三元正極材料の安全性を高めることは、高エネルギー密度の三元リチウム電池の動力電池分野における広範な応用の鍵であり、現在研究されている重要な方向の一つでもある。
【0008】
三元材料であるニッケルマンガンコバルト酸リチウムを例にとると、その安全性が悪い原因は次のとおりである。
【0009】
1)ニッケルマンガンコバルト酸リチウムは、熱分解温度が低く、放熱量が高く、材料の熱安定性が悪い。リン酸鉄リチウムと比較して、ニッケルマンガンコバルト酸リチウムは脱酸素温度が200℃で、放熱量が800J/gより大きいのに対し、リン酸鉄リチウムは脱酸素温度が270℃で、放熱エネルギーが124J/gだけで、しかも大規模な分解には400℃以上が必要である。
【0010】
2)ニッケルマンガンコバルト酸リチウムは活発で、高電位下で強い酸化性を持って、しかも自身が不安定で、酸素を発生させやすく、それによって電解液と反応して副反応を発生し、大量の熱を放出し、熱暴走を引き起こしやすく、また、三元正極材料のサイクル寿命と貯蔵寿命の低下を招くことがある。
【0011】
以上の問題は三元リチウム電池の安全性能が悪くなる原因であり、三元電池の安全上のリスクをいかに効果的に解決し、電池の熱暴走現象の発生を回避するかは、中国の国内外の各企業が早急に解決しなければならない問題となっている。
【0012】
現在、リチウム電池の安全性を高める方法は、主に、正極材料被覆、電解液添加剤、PTCコーティング、絶縁/難燃コーティング、セラミックセパレータへの塗装、負極材料の改質などがある。例えば、高性能三元動力電池及びその製造方法であるCN103151513Bは、三元電池の安全性能を改善するためにAlを被覆したニッケルコバルトマンガン酸リチウム三元材料を開示しているが、この発明は温度が高い場合に安全性の改善が低く、作用が限定されている。PTCコーティングを含むリチウムイオン電池用極板の製造方法であるCN104409681Aは、集電体上に、常温では導電性が良好で、温度が上昇すると電気抵抗が急激に上昇し、それ以上の電池の昇温を防止する感温性プレコートを予め塗装してから、正極活物質又は負極活物質を塗装することにより、リチウムイオン電池の安全性を向上させることを開示している。しかし、ニードルパンチによる熱暴走は瞬間的に発生するため、このコーティングの作用機序は作用が間に合わず、ニードルパンチの場合の安全性を効果的に高める作用を発揮できない。さらに、上記の正極材料被覆、セラミックセパレータへの塗装、電解液添加剤の使用、PTCコーティングの構築、絶縁や難燃性コーティングの構築などの方法は、正極の電気化学的性能を低下させ、これらの方法を用いて改質した正極材料の総合性能を最適化する必要があり、一方、電極や電池コアの製造プロセスにも一定の影響があり、量産が困難である。さらに、上記の正極材料被覆、セラミックセパレータへの塗装、電解液添加剤の使用、PTCコーティングの構築、絶縁や難燃性コーティングの構築などの方法は、正極の電気化学的性能を低下させ、これらの方法を用いて改質した正極材料の総合性能を最適化する必要があり、一方、電極や電池コアの製造プロセスにも一定の影響があり、量産が困難である。CN107768647Aは、安全性の高い被覆型高ニッケル三元正極板を開示しており、前記正極板は高ニッケル三元正極材料で形成された正極層と、前記正極層の表面に被覆された被覆層とを含み、前記被覆層は、無機難燃剤1質量%~95質量%と、無機相変化材料1質量
%~95質量%と、高熱伝導性無機材料1質量%~20質量%とを原料として製造されるものであり、前記無機難燃剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、及びモリブデン含有無機化合物から選ばれる1種又は複数種であり、前記無機相変化材料は、AlCl、LiNO、NaNO、KNO、及びNaNOから選ばれる1種又は複数種で形成される混合物又は複合体、及び溶融塩系化合物のうちの1種又は複数種であり、前記高熱伝導性無機材料は、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、及び窒化アルミニウムから選ばれる1種又は複数種であり、前記高ニッケル三元正極材料は、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム及び/又はニッケルコバルトアルミン酸リチウムから選ばれ、この形態では、高酸化状態での高ニッケル材料の安定性の課題を根本的に回避することはできない。
【0013】
そのため、過充電、高温、ニードルパンチ、押圧、内部短絡、外部短絡、熱的乱用や過熱などの極端な条件で高安全性及び高容量を有するリチウム電池用正極板の開発は重要な意義がある。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、リチウムリッチマンガン系固溶体、リチウムリッチ固体電解質及び脱リチウム状態の一酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1種であるリチウムリッチ化合物が配合されている、高安全性及び高容量を兼ね備えたリチウム電池用正極板、その製造方法及び使用を提供することであり、前記リチウムリッチ化合物は電池過充電、高温、ニードルパンチ、押圧、内部短絡、外部短絡、熱的乱用や過熱などの極端な条件でLiイオンを放出し、正極材料中のリチウム空孔を埋めることで、極端な条件での正極の酸化状態を低下させ、正極材料の格子構造を安定化させ、この正極材料を用いて製造された電池の安全性を向上させ、しかも、リチウム電池用正極板は高い面容量を有しながら、優れたサイクル性能を維持することができ、これにより、電池は高い比エネルギー及び良好なサイクル寿命を維持しながら、高安全性を達成させる。
【0015】
ここで、前記高安全性とは、過充電、高温、ニードルパンチ、押圧、内部短絡、外部短絡、熱的乱用や過熱などの極端な条件でもリチウムイオンを放出し得るリチウムリッチ化合物が前記リチウム電池用正極板に含有されていることにより、この正極板を用いて製造された電池の安全性が明らかに向上し、電池はニードルパンチ検出、190℃でのホットボックス実験に合格し、このようなプロセスにおいて発火や爆発が起こらないことを意味する。
【0016】
ここで、前記高容量とは、前記リチウム電池用正極板の面容量が4mAh/cm以上に達することを意味する。
【0017】
この発明目的を達成させるために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
【0018】
第1態様では、本発明は、リチウムリッチマンガン系固溶体、リチウムリッチ固体電解質及び脱リチウム状態の一酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1種であるリチウムリッチ化合物が配合されているリチウム電池用正極板を提供する。
【0019】
本発明の前記リチウムリッチ化合物は、電池の過充電、高温、ニードルパンチ、押圧、内部短絡、外部短絡、熱的乱用や過熱などの極端な条件でLiイオンを放出し、正極材料中のリチウム空孔を埋めることで、正極材料の格子構造を安定化させ、この正極材料を用いて製造される電池の安全性を向上させ、しかも、リチウム電池用正極板は高い面容量を有しながら優れたサイクル性能を維持できる。
【0020】
従来の高ニッケル三元正極板は、極端な条件では、高い酸化性を有し、かつ遷移金属の
溶出により材料構造が不安定になり、正極材料が酸素を発生させて、電解液と副反応を引き起こし、大量の熱を放出し、熱暴走を引き起こしやすく、安全上の問題を招く。
【0021】
本発明の前記正極板にはリチウムリッチ化合物が配合されており、該リチウムリッチ化合物は、正極内のリチウム含有量を安定化させ、正極全体の熱的安定性を向上させ、電池の極端な条件での安全性能を改善することができる。
【0022】
好ましくは、前記リチウムリッチ化合物は、電池の極端な条件では、リチウムイオンを放出し得る。
【0023】
好ましくは、前記電池の極端な条件は、電池過充電、高温、ニードルパンチ、押圧、内部短絡、外部短絡、熱的乱用や過熱のうちの少なくとも1種を含む。
【0024】
好ましくは、前記リチウムリッチマンガン系固溶体の分子式はxLiMnO・(1-x)LiMO(式中、0<x≦1、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8又は0.9など、好ましくは0.9~1.0であり、Mは、Ni、Co又はMnから選ばれる少なくとも1種である)である。
【0025】
ここで、リチウムリッチ化合物としてのリチウムリッチマンガン系固溶体は、従来の正極材料と異なり、両相(LiMnOとLiNiCoMn1-x-y)の固溶体である。
【0026】
好ましくは、前記リチウムリッチ固体電解質はLiLaZr12及びLiLaZr12にドーピングが行われた固体電解質から選ばれ、前記ドーピング元素はLa、Nb、Sb、Ga、Te、W、Al、Sn、Ca、Ti、Hf、Taのうちの少なくとも1種である。
【0027】
好ましくは、前記脱リチウム状態の一酸化ケイ素の分子式はLiSiO(式中、xは1.4~2.1、例えば1.5、1.6、1.7、1.8、1.9又は2などであり、yは0.9~1.1、例えば0.92、0.95、0.98、1、1.02又は1.08などである。)である。
【0028】
本発明の前記脱リチウム状態の一酸化ケイ素の分子式中、xは、1.4~2.1であり、yは0.9~1.1であり、上記の組成が使用されると、電池は過充電、高温、ニードルパンチ、押圧、内部短絡、外部短絡、熱的乱用や過熱などの極端な状態でリチウムイオンを適時に放出し、正極内のリチウムイオンのバランスを維持し、正極の熱的安定性を向上させ、極端な条件でも電池に高い安全性を持たせることに有利である。
【0029】
好ましくは、前記リチウムリッチ化合物の粒子の粒子径D50が0.1~10μm、例えば0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm又は9μmなど、好ましくは0.5~2μmである。
【0030】
ここで、リチウムリッチ化合物の粒子の粒子径が0.1~10μmに限定されることによって、電池は極端な条件でリチウムイオンを放出し、正極内のリチウム含有量を維持し、安全性を高くするような効果を果たすのに有利であり、粒子の粒子径<0.1μmの場合、界面抵抗が大きくなり、正極板内のイオン輸送に影響を与え、粒子の粒子径>10μmの場合、正極活性粒子に対するバリア効果が不十分であり、結果として、電池の安全性能の改善が不十分である。
【0031】
好ましくは、前記リチウム電池用正極板中の正極活物質とリチウムリッチ化合物の総質
量を100%として、前記リチウムリッチ化合物の含有量が0.1~20質量%、例えば0.5質量%、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、7質量%、9質量%、10質量%、12質量%、14質量%、16質量%又は18質量%など、好ましくは1~5%である。
【0032】
本発明の前記リチウムリッチ化合物の配合量が上記の範囲であることによって、電池は極端な条件で正極内のリチウム含有量を維持し、安全性を高くするような効果を果たすのに有利であり、リチウムリッチ化合物の含有量≦0.1質量%の場合、提供されるLiの量が限られ、高エネルギー電池の安全性能に対する改善効果が不十分であり、リチウムリッチ化合物の含有量≧20質量%の場合、正極活物質の含有量の低下により電池のエネルギー密度が低下する。
【0033】
好ましくは、前記リチウム電池用正極板の面容量が4mAh/cm以上、例えば5mAh/cm、6mAh/cm、7mAh/cm、8mAh/cm、9mAh/cm又は10mAh/cmなどである。
【0034】
本発明の前記正極板にリチウムリッチ化合物が配合されることによって、正極板の高面容量でのサイクル性能が明らかに改善する。
【0035】
好ましくは、前記リチウム電池用正極板中の正極活物質はLiNiCo1-x-y(式中、x≧0.8、例えば0.8、0.83、0.85、0.88又は0.90など、y≦0.2、例えば0.05、0.08、0.1、0.13、0.15、0.18又は0.2などであり、MはMn、Al又はMgから選ばれるいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせであり、前記組み合わせは、一例として、MnとAlの組み合わせ、MgとMnの組み合わせ又はAlとMgの組み合わせなどを含む。)である。
【0036】
第2態様では、本発明は、正極活物質とリチウムリッチ化合物を予備混合し、予備混合粉体を得るステップと、
前記予備混合粉体、バインダ液、導電剤を混合し、正極スラリーを得るステップと、
集電体上に前記正極スラリーを塗布し、ベーク、コールドプレス、シート状化を行い、前記リチウム電池用正極板を得るステップと、を含む第1態様に記載のリチウム電池用正極板の製造方法を提供する。
【0037】
好ましくは、前記予備混合粉体、バインダ液、導電剤を混合する方式として、予備混合粉体にバインダ液を加えてから、導電剤を加え、前記正極スラリーを得る。
【0038】
第3態様では、本発明は、第1態様に記載のリチウム電池用正極板を含む電池を提供する。
【0039】
好ましくは、前記電池は負極板をさらに含み、前記負極板中の負極活物質は一酸化ケイ素及び/又はシリコンカーボンから選ばれる。
【0040】
好ましくは、前記負極板は負極活物質、導電剤、増粘剤、及びバインダを含む。
【0041】
好ましくは、前記電池はセパレータをさらに含む。
【0042】
好ましくは、前記セパレータはセラミックコーティングが塗装されたセパレータから選ばれる。
【0043】
好ましくは、前記セパレータの厚さは10~40μm、例えば12μm、15μm、1
8μm、20μm、22μm、25μm、28μm、30μm、32μm、35μm又は38μmなどであり、空隙率は20~60%、例えば25%、30%、35%、40%、45%、50%又は55%などである。
【0044】
好ましくは、前記電池は、リチウム塩、溶媒及び成膜添加剤を含む電解液をさらに含む。
【0045】
好ましくは、前記リチウム塩はLiPF、LiBF又はLiClOから選ばれるいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせであり、前記組み合わせは、一例として、LiPFとLiBFの組み合わせ、LiClOとLiPFの組み合わせ又はLiBFとLiClOの組み合わせなどを含む。
【0046】
好ましくは、前記溶媒はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートから選ばれる少なくとも1種である。
【0047】
好ましくは、前記成膜添加剤はVC及び/又はPSから選ばれる。
【0048】
本発明の別の目的は、集電体と、前記集電体の表面に位置する正極活物質層とを含み、前記正極活物質層はリチウムイオンを輸送できる酸化物固体電解質を含み、前記酸化物固体電解質は多孔質球状粒子である、高安全性及び高容量を兼ね備えたリチウム電池用三元正極板、その製造方法及び使用を提供することであり、本発明の前記三元正極板の正極活物質層中に上記の多孔質球状酸化物固体電解質を分散させているので、リチウム電池の安全性が明らかに改善され、この正極板を用いて得られたリチウム電池は、ニードルパンチ、加熱及び変形押圧テストの合格率が明らかに向上し、かつ高い比容量を有し、得られたリチウム電池の比容量が300Wh/kg以上に達する。
【0049】
ここで、前記高安全性とは、本発明の前記三元正極板を用いて得られたリチウム電池がニードルパンチテスト、180℃で2h加熱するテスト及び50%変形押圧テストに合格することを意味し、
ここで、前記高容量とは、本発明の前記三元正極板の面容量が4mAh/cm以上に達することを意味する。
【0050】
この発明目的を達成させるために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
【0051】
第1態様では、本発明は、集電体と、前記集電体の表面に位置する正極活物質層とを含む高安全性及び高容量を兼ね備えたリチウム電池用三元正極板であって、前記正極活物質層はリチウムイオンを輸送できる酸化物固体電解質を含み、前記酸化物固体電解質は多孔質球状粒子であるリチウム電池用三元正極板を提供する。
【0052】
本発明の前記三元正極板の正極活物質層中に上記の多孔質球状の酸化物固体電解質を分散させているので、得られた三元正極板により得られたリチウム電池の安全性及び容量が明らかに向上し、得られたリチウム電池は、ニードルパンチテスト、180℃で2h加熱するテスト及び50%変形押圧テストに合格する。得られたリチウム電池のエネルギー密度は300Wh/Kgに達する。
【0053】
本発明の前記三元正極板を用いて得られたリチウム電池は、高面容量の条件では、より優れたサイクル性能を有する。
【0054】
好ましくは、前記多孔質球状粒子の空隙率は5~70%、例えば5%、10%、15%
、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%など、好ましくは40~70%である。
【0055】
好ましくは、前記酸化物固体電解質の粒子径は0.1~10μm、例えば0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1.0μm、2μm、3μmなど、好ましくは0.5~3μmである。
【0056】
本発明の前記三元正極板中酸化物固体電解質の粒子径が上記の範囲であることにより、正極活物質層に分散させると、前記三元正極板を用いて得られたリチウム電池の安全性及び容量が明らかに向上し、酸化物固体電解質の粒子径<0.1μmの場合、酸化物固体電解質の粒子径が小さすぎ、界面抵抗が大きくなり、イオン輸送が遮断され、界面インピーダンスが増え、電池のエネルギー密度が低下し、酸化物固体電解質の粒子径>10μmの場合、粒子径が大きすぎ、正極粒子間の接触をバリアする効果が不十分であり、安全性の向上が不十分になる。
【0057】
好ましくは、前記正極活物質層中の正極活物質と酸化物固体電解質との総質量を100%として、前記酸化物固体電解質の含有量は0.1~10質量%、例えば0.5質量%、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%又は9質量%など、好ましくは1~5質量%である。
【0058】
本発明の前記三元正極板中の酸化物固体電解質の添加量が上記の範囲であることによって、得られたリチウム電池の安全性及び容量を改善するのに有利であり、酸化物固体電解質の含有量が0.1%未満である場合、酸化物固体電解質の配合量が少なすぎ、固体電解質の吸熱や断熱効果が不十分であり、安全性向上も不十分であり、酸化物固体電解質の含有量が10%よりも大きい場合、酸化物固体電解質の配合量が多すぎ、正極活物質の割合が低下し、電池のエネルギー密度が低下する。
【0059】
好ましくは、前記酸化物固体電解質はNASICON構造、ペロブスカイト構造、アンチペロブスカイト構造、LISICON構造及びガーネット構造のうちの少なくとも1種を含む。
【0060】
好ましくは、前記NASICON構造は、Li1+xAlGe2-x(PO(LAGP)、Li1+xAlGe2-x(POの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li1+yAlTi2-y(PO(LATP)及びLi1+yAlTi2-y(POの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはLi1+yAlTi2-y(PO(式中、xは0.1~0.4、例えば0.15、0.2、0.25、0.3又は0.35などであり、yは0.1~0.4、例えば0.15、0.2、0.25、0.3又は0.35などから選ばれる。)である。
【0061】
好ましくは、前記ペロブスカイト構造は、Li3zLa2/3-zTiO(LLTO)、Li3zLa2/3-zTiOの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li3/8Sr7/16Ta3/4Hf1/4(LSTH)、Li3/8Sr7/16Ta3/4Hf1/4の同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li2a-bSr1-aTaZr1-b(LSTZ)及びLi2a-bSr1-aTaZr1-bの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物から選ばれる少なくとも1種であり、ここで、zは0.06~0.14、例えば、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12又は0.13などであり、aは0.75×bから選ばれ、bは0.25~1、例えば0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9又は0.95である。
【0062】
好ましくは、前記アンチペロブスカイト構造は、Li3-2xHalO、Li3-2xHalOの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、LiOCl及びLiOClの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物から選ばれる少なくとも1種であり、式中、HalはCl及び/又はIを含み、MはMg2+、Ca2+、Sr2+又はBa2+から選ばれるいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせである。
【0063】
好ましくは、前記LISICON構造は、Li4-cSi1-c、Li4-cSi1-cの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li14ZnGe16(LZGO)及びLi14ZnGe16の同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物から選ばれる少なくとも1種であり、式中、cは0~1、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8又は0.9などである。
【0064】
好ましくは、前記ガーネット構造は、Li7-dLaZr2-d12(LLZO)及び/又はLi7-dLaZr2-d12の同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物から選ばれ、式中、dは0.1~0.6、例えば0.2、0.3又は0.4などである。
【0065】
好ましくは、前記三元正極板の面容量は4mAh/cm以上、例えば5mAh/cm、6mAh/cm、7mAh/cm、8mAh/cm、9mAh/cm又は10mAh/cmなどである。
【0066】
好ましくは、前記正極活物質層中の正極活物質は高ニッケル三元材料から選ばれる。
【0067】
好ましくは、前記高ニッケル三元材料はニッケルコバルトマンガン酸リチウム及び/又はニッケルコバルトアルミン酸リチウムを含む。
【0068】
好ましくは、前記ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの分子式はLiNiCoMn1-x-yであり、前記ニッケルコバルトアルミン酸リチウムの分子式はLiNiCoAl1-x-y(式中、x≧0.6、例えば0.65、0.7、0.8、0.85又は0.9など)である。
【0069】
第2態様では、本発明は、
正極活物質と酸化物固体電解質とを予備混合し、予備混合粉体を得るステップと、
予備混合粉体にバインダ液、導電剤を加えて混合し、正極スラリーを得るステップと、
集電体上に前記正極スラリーを塗布し、乾燥させて前記三元正極板を得るステップとを含む第1態様に記載の三元正極板の製造方法を提供する。
【0070】
好ましくは、前記正極活物質は高ニッケル三元材料から選ばれ、
好ましくは、前記正極活物質と前記酸化物固体電解質との質量比は(90~99.9):(0.1~10)、例えば90:10、92:8、95:5、98:2、99:1又は99.5:0.5などである。
【0071】
好ましくは、前記予備混合はボールミル又は撹拌機にて行われ、公転速度は30-50r/min、例えば35r/min、40r/min又は45r/minなどであり、分散回転数は300~3000r/min、例えば、500r/min、800r/min、1000r/min、1200r/min、1500r/min、1800r/min、2000r/min、2200r/min、2500r/min又は2800r/minなどであり、好ましくは、前記分散回転数は500~2000r/minである。
【0072】
第3態様では、本発明は、第1態様に記載の三元正極板を含むリチウム電池を提供する
【0073】
好ましくは、前記リチウム電池は、液体リチウム電池、半固体リチウム電池及び全固体リチウム電池のうちのいずれかの1種を含む。
【0074】
好ましくは、前記液体リチウム電池は第1態様に記載の三元正極板、負極板及び液体電解質を含む。
【0075】
好ましくは、前記半固体リチウム電池は第1態様に記載の三元正極板、負極板及び電解質層を含み、前記電解質層に液体電解質材料が含有されている。
【0076】
好ましくは、前記固体リチウム電池は第1態様に記載の三元正極板、負極板及び固体電解質層を含む。
【0077】
好ましくは、前記固体電解質層中の固体電解質は重合体固体電解質、酸化物固体電解質及び硫化物固体電解質から選ばれる少なくとも1種である。
【0078】
本発明の最後の態様の目的は、正極板、その製造方法及び使用、特に高安全性、高容量及び長サイクル寿命を兼ね備えたリチウム電池用三元正極板、その製造方法、リチウム電池の安全性向上方法、対応する正極板、及びリチウム電池を提供することである。
【0079】
本発明の前記「高安全性、高容量及び長サイクル寿命を兼ね備えた正極板」では、長サイクル寿命とは、該正極板を用いて製造されたリチウム電池の1C/1Cサイクル寿命である1000回容量維持率が80%以上に達することを意味し、高容量とは面容量≧4mAh/cmを意味し、高安全性とは、電池がニードルパンチ及び180℃ホットボックスのテストに合格し、ニードルパンチ、180℃ホットボックステストのいずれでも発火、爆発、発煙がないことを意味する。
【0080】
上記の目的を達成させるために、本発明は下記技術的解決手段を採用する。
【0081】
第1態様では、本発明は、集電体と、前記集電体の表面に位置する正極材料層とを含み、前記正極材料層は三元正極活性材料粒子、導電剤、バインダ、及びリチウムイオンを伝導可能な酸化物固体電解質粒子を含み、
前記正極板の面容量が4mAh/cm以上であり、前記酸化物固体電解質粒子の粒子径D50が0.1~3μmであるリチウム電池用三元正極板を提供する。
【0082】
本発明では、正極板の面容量は4mAh/cm以上、例えば4mAh/cm、6mAh/cm、8mAh/cm、10mAh/cm、12mAh/cm又は15mAh/cmなどである。
【0083】
本発明の正極板では、三元正極活性材料粒子は主な活性成分として機能し、面容量の高い三元正極を得るために、従来技術では、高比容量の高ニッケル三元正極材料を使用するか、又は極板の厚さを増加するのが一般的である。一方では、三元正極材料の高温安定性が劣り、かつ三元正極材料中のニッケル含有量が高いほど、熱的安定性が悪くなり、他方では、電極の厚さが厚くなると電子及びリチウムイオンの輸送経路が長くなり、電池のインピーダンスや充放電過程におけるジュール熱が増加する。面容量の高い三元正極材料では、単位面積当たりの正極材料に貯蔵されたエネルギーが高く、短路や過熱が発生したら、単位面積あたりの正極材料が放出可能なエネルギーが高く、これにより、安全上のリスクが高い。このため、高安全性及び高容量を兼ね備えた解決手段が必要である。
【0084】
本発明では、正極板に粒子径D50が0.1~3μmの酸化物固体電解質が添加され、導電剤及びバインダと組み合わせられることにより、正極板の面容量が4mAh/cm以上の正極板では、高容量及び長サイクル寿命に影響を与えずに、正極板の熱的安定性を向上させ、電池の安全性を確保する。その技術的原理は以下のとおりである。まず、酸化物固体電解質粒子は一定のイオン輸送能力を持ち、しかも、三元正極活性材料粒子同士の接触を効果的にバリアすることができ、これにより、イオン輸送を確保しながら熱的安定性を向上させ、次に、酸化物固体電解質そのものは吸熱作用を有するので、一部の熱を吸収し、正極の過熱を緩和させることができ、さらに、酸化物固体電解質は化学的安定性が高いので、現在の正極板、セパレータ及び電池の主流な製造プロセスを変えなくてもよく、安定性が高い、コストが低いような優位性を有し、大規模で適用するのに適している。酸化物固体電解質粒子そのものは一定のイオン電導能力を持つため、本発明の前記固体電解質の含有量の範囲では、酸化物固体電解質の導入により正極のイオン輸送能力へ明らかな悪影響を与えることはなく、さらに、酸化物固体電解質の吸熱作用により正極活性材料の充放電中の平均温度を低下させ、三元正極活性材料の高温の場合の副反応を減らし、このため、電池の長サイクル寿命を確保するのに有利である。
【0085】
本発明では、前記酸化物固体電解質粒子の粒子径D50は0.1~3μm、例えば0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、2.5μm又は3μmなどである。酸化物固体電解質粒子径が小さすぎると、その界面抵抗が明らかに増大し、イオン輸送がバリアされ、正極容量が小さくなり、電池のエネルギー密度が低下し、粒子径が大きすぎると、酸化物固体電解質の正極粒子同士の接触に対するバリア効果が不十分であり、安全性向上が不十分になる。
【0086】
以下は本発明の好適な技術的解決手段であるが、本発明で提供される技術的解決手段を限定するものではなく、以下の好適な技術的解決手段によれば、本発明の技術の目的及び有益な効果をさらに果たすことができる。
【0087】
好ましくは、前記酸化物固体電解質粒子の粒子径D50は0.5~2μmである。
【0088】
好ましくは、三元正極活性材料粒子、導電剤、バインダ及び酸化物固体電解質粒子の総質量を100%として、前記三元正極活性材料粒子の含有量は80~98%であり、
好ましくは、三元正極活性材料粒子、導電剤、バインダ及び酸化物固体電解質粒子の総質量を100%として、前記酸化物固体電解質の含有量は0.1~10%、例えば0.1%、0.3%、0.5%、0.8%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%又は10%などであり、酸化物固体電解質の含有量が0.1%未満であると、三元正極活性材料粒子同士の接触を効果的にバリアすることができず、安全性の向上が不十分であり、酸化物固体電解質の含有量が10%を超えると、イオン輸送に影響を与え、リチウムイオン電導率を低下させ、電池容量の発揮に影響を与え、電池のエネルギー密度やサイクル性能を低下させるため、好ましくは上記の範囲、より好ましくは1~5%とする。
【0089】
好ましくは、三元正極活性材料粒子、導電剤、バインダ及び酸化物固体電解質粒子の総質量を100%として、前記導電剤の含有量は0.1~8%、例えば0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、3%、3.5%、4%、5%、6%、7%又は8%などである。
【0090】
好ましくは、三元正極活性材料粒子、導電剤、バインダ及び酸化物固体電解質粒子の総質量を100%として、前記バインダの含有量は0.1~10%、例えば0.1%、0.8%、1.2%、3%、5%、6%、7%、8%又は10%などである。
【0091】
好ましくは、前記酸化物固体電解質粒子は、NASICON構造のLi1+x1Alx1Ge2-x1(PO(LAGP)又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li1+x2Alx2Ti2-x2(PO(LATP)又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、ペロブスカイト構造のLi3La2/3-x3TiO(LLTO)又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li3/8Sr7/16Ta3/4Hf1/4(LSTH)又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li2x4-y1Sr1-x4Tay1Zr1-y1(LSTZ)又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、アンチペロブスカイト構造のLi3-2x5x5HalO、LiOCl又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、LISICON構造の Li4-x6Si1-x6x6又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li14ZnGe16(LZGO)又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、ガーネット構造のLi7-x7LaZr2-x712(LLZO)又はその同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物のうちのいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、式中、0<x1≦0.75、0<x2≦0.5、0.06≦x3≦0.14、0.25≦y1≦1、x4=0.75y1、0≦x5≦0.01、0.5≦x6≦0.6;0≦x7<1であり、Mは、Mg2+、Ca2+、Sr2+又はBa2+のうちのいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではなく、本分野でよく使用されている他の高価陽イオンも本発明に適用でき、Halは元素Cl又はIである。
【0092】
好ましくは、前記酸化物固体電解質粒子はLi1+x2Alx2Ti2-x2(PO及び/又はLi7-x7LaZr2-x712を含み、好ましくはLi1+x2Alx2Ti2-x2(POである。
【0093】
前記三元正極活性材料粒子は、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)及び/又はニッケルコバルトアルミン酸リチウム(NCA)を含む。
【0094】
好ましくは、前記三元正極活性材料粒子の化学組成はLiNiCo1-x-y(MはMn又はAlのうちの少なくとも1種であり、x≧0.6、例えば0.6、0.65、0.7、0.8又は0.88などである。)であり、この好ましい技術的解決手段に係る三元正極活性材料は高ニッケル三元正極材料であり、比エネルギーが高いものの、熱的安定性が悪く、本発明では、三元正極活性材料は酸化物固体電解質を導電剤及びバインダと組み合わせて使用することにより改質され、安全性上の問題を解決でき、高エネルギー密度の優位性を十分に発揮させる。
【0095】
好ましくは、前記導電剤はSuper-P、KS-6、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、CNT、アセチレンブラック又はグラフェンのうちのいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。前記組み合わせの代表的な非限定例として、Super-PとKS-6の組み合わせ、Super-Pとカーボンブラックの組み合わせ、Super-Pとカーボンナノファイバーの組み合わせ、カーボンブラックとCNTの組み合わせ、KS-6、カーボンブラック及びCNTの組み合わせなどが含まれ、好ましくはカーボンナノチューブとSuper-Pの組み合わせである。
【0096】
好ましくは、前記バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン(PVDF-HFP)、ポリエチレンオキシド(PEO)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちのいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。前記組み合わせの代表的な範囲の限定例として、PVDFとPEOの組み合わせ、PVDFとPTFEの組み合わせ、PVDFとPVDF-HFPの組み合わせなどが含まれる。
【0097】
好ましくは、前記三元正極活性材料粒子の粒子径D50と前記酸化物固体電解質粒子の粒子径D50との比は5以上、例えば5、6、8、10、12、13又は15などである。両方の粒子径が近いと、固体電解質の含有量による制限のため、この粒子径の条件では、固体電解質の含有量は、三元正極活性材料粒子同士の接触をバリアするのに不十分であり、結果として、材料の安全性が劣る。
【0098】
第2態様、本発明は、
三元正極活性材料粒子を含む正極活性材料粒子と酸化物固体電解質粒子とを予備混合し、予備混合材料を得るステップS1と、
前記予備混合材料にバインダのバインダ液を加えて混合し、一次スラリーを得るステップS2と、
前記一次スラリーに導電剤を加えて混合し、二次スラリーを得るステップS3と、
極板の面容量が4mAh/cm以上になるように集電体上に前記二次スラリーを塗装し、焼き付け、ロールプレスを行い、正極板を得るステップS4とを含む、第1態様に記載の正極板の製造方法を提供する。
【0099】
本発明の方法では、ステップS2及びステップS3では、それぞれ独立して一括して加えてもよく、段階的に加えてもよい。
【0100】
好ましくは、前記予備混合は真空予備混合又は露点≦-30℃(例えば-30℃、-35℃、-40℃、-45℃又は-50℃など)の条件で行われる予備混合である。この好ましい技術的解決手段では、まず、正極活性材料粒子と酸化物固体電解質粒子を真空予備混合又は露点≦-30℃の条件で予備混合し、この目的は、両方を均一に分散させ、三元正極活性材料と酸化物固体電解質の安定性を確保することである。例えば、露点≧0℃の条件では、Li7-x7LaZr2-x712(0≦x7<1)は水と副反応を引き起こしやすく、この結果、製品の構造が破壊され、性能が劣化する。
【0101】
好ましくは、前記予備混合及び混合はボールミル又は撹拌機にて行われる。
【0102】
好ましくは、前記予備混合及び混合は自転公転撹拌機を用いて行われ、公転速度は20rpm以上、例えば20rpm、30rpm、40rpm、50rpm、60rpm、70rpm、80rpm、85rpm又は100rpmなど、独立して好ましくは30~90rpmであり、自転速度は200rpm以上、例えば200rpm、300rpm、400rpm、600rpm、800rpm、1000rpm、1200rpm、1300rpm、1500rpm、1750rpm、2000rpm、2200rpm、2500rpm又は3000rpmなど、独立して好ましくは500~2000rpmである。
【0103】
好ましくは、前記予備混合の時間は0.5~4h、例えば0.5h、1h、1.5h、2h、3h又は4hなど、好ましくは1~2hである。
【0104】
好ましくは、前記露点は-45℃以下、さらに好ましくは-60℃以下である。
【0105】
良好な分散性及び酸化物固体電解質の構造安定性を確保し、三元正極活性材料粒子同士の接触をバリアし、正極板の熱的安定性を向上させるために、上記の公転速度、自転速度及び露点条件が好ましい。
【0106】
本発明の前記方法のさらに好ましい技術的解決手段では、前記方法は、
三元正極活性材料粒子と酸化物固体電解質粒子とを自転公転撹拌機にて、公転速度30~90rpm、自転速度500~2000rpmで、0.5~4h真空予備混合し、均一に混合した予備混合材料を得るステップS1と、
S1の前記均一に混合した予備混合材料に、均一に混合したバインダ液を徐々に加え、公転速度30~90rpm、自転速度500~2000rpmとし、均一に混合したスラリーを得るステップS2と、
S2の前記均一に混合したスラリーに導電剤を徐々に加え、公転速度30~90rpm、自転速度500~2000rpmとし、最後に、均一に混合した三元正極スラリーを得るステップS3と、
極板の面容量が4mAh/cm以上となるように、集電体上にS3の前記スラリーを塗装し、ベーク、ロールプレス、ダイカッティングを行い、高安全性・高容量三元正極板を得るステップS4とを含む。
【0107】
第3態様では、本発明は、正極板の製造において、粒子径D50が0.1~3μmの酸化物固体電解質粒子を加え、正極活性材料粒子間に分散させるステップを含み、前記正極板の面容量は4mAh/cm以上であるリチウム電池の安全性向上方法を提供する。
【0108】
本発明はまた、第3態様の方法で得られた正極板を提供する。
【0109】
第4態様では、本発明は、第1態様に記載の正極板を含むリチウム電池を提供する。
【0110】
好ましくは、前記リチウム電池は液体リチウム電池又は半固体リチウム電池を含む。
【0111】
好ましくは、前記液体リチウム電池は第1態様に記載の正極板、負極板、及び液体電解質(電解液とも呼ばれる)を含む。
【0112】
好ましくは、前記半固体リチウム電池は、第1態様に記載の正極板、負極板、及び液体電解質を含有する電解質層を含む。
【0113】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
(1)本発明の前記リチウム電池用正極板では、極端な使用条件でもリチウムイオンを放出し得るリチウムイオンリッチ化合物が配合されており、該正極板を組み込んだ電池は電池過充電、過熱などの極端な条件でLiイオンを放出し、正極材料中のリチウム空孔を埋めることで、正極材料の格子構造を安定化させ、この正極材料を用いて製造された電池の安全性を向上させ、正極内のリチウムのバランスを維持し、正極全体の熱的安定性を向上させ、電池の極端な条件での安全性を改善する。
(2)本発明の前記リチウム電池用正極板では、リチウムリッチ化合物が配合されていることによって、正極板の高面容量の場合のサイクル性能を改善することができる。
(3)本発明では、前記三元正極板の正極活物質層中に多孔質球状粒子状の酸化物固体電解質を分散させることによって、得られたリチウム電池の安全性が明らかに改善し、得られたリチウム電池はニードルパンチテスト、180℃で2h加熱するテスト及び50%変形押圧テストに合格する。
(4)本発明の前記三元正極板を用いて得られたリチウム電池の比容量は300Wh/kg以上に達する。
(5)本発明では、正極板に粒子径D50が0.1~3μmの酸化物固体電解質が添加され、導電剤及びバインダと組み合わせて使用されることにより、正極板の面容量が4mAh/cm以上の正極板では、極板の高容量及び電池の長サイクル寿命を維持しながら電池の安全性能を大幅に向上させることができる。その技術的原理は以下のとおりである。まず、酸化物固体電解質粒子は一定のイオン輸送能力を持ち、しかも、三元正極活性材料粒子同士の接触を効果的にバリアすることができ、これにより、イオン輸送を確保しながら正極の熱的安定性を向上させ、次に、酸化物固体電解質そのものは一定の熱容量を有するので、正極で生じた熱の一部を吸収し、正極の過熱を緩和させることができ、さらに、酸化物固体電解質は正極材料に直接配合されても、正極活性粒子そのものの電気化学的
性能に影響を与えることはなく、一方、酸化物電解質で正極活性粒子を被覆することにより改質する方法を利用する場合、被覆層は正極活性粒子のイオン及び電子の輸送に影響を与え、電池の総合的性能に悪影響を及ぼし、さらに、酸化物固体電解質は化学的安定性が高いので、極板の製造に先立って正極活性材料に直接配合されてもよく、本発明で提供される正極板は従来のリチウムイオン電池正極板の主流な製造プロセスと適合性を有し、正極及び電池コアの製造プロセスに影響を与えることはなく、量産のコストが低く、大規模で適用するのに適している。
本発明の前記正極板を用いて組み立てられたリチウム電池は、高容量、高安全性、長サイクルの特性を有し、電池はニードルパンチテストに順調に合格する。本発明の正極板の好ましい態様は、上記の効果を有しながら、電池の高い比エネルギー(一般には、電池の質量比エネルギーは260Wh/Kg以上)を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0114】
図1】高面容量で、比較例1及び実施例1、3、5の15Ah電池のエネルギー密度が300Wh/Kgに達するときのサイクル性能のテスト曲線である。
図2】高ニッケル三元正極材料が使用された比較例1の高エネルギー電池のニードルパンチテストを示す図、及び高ニッケル三元正極板にリチウムリッチ固体電解質LiLaZr12が配合された実施例3の高エネルギー電池のニードルパンチを示す図である。
図3】本発明の前記三元正極板の構造模式図である。
図4】本発明の前記三元正極板を用いて組み立てられたリチウム電池の構造模式図であり、1-三元正極板、10-アルミニウム箔、11-正極活物質、12-酸化物固体電解質、2-負極板、20-銅箔、21-負極活物質、3-固体、液体又は半固体電解質であり、ここで、液体リチウムイオン電池はセパレータをさらに含む。
図5】本発明の酸化物固体電解質が配合された三元電極板中の正極材料層の内部構造の模式図であり、1-酸化物固体電解質、2-三元正極活性材料、3-導電剤である。
図6】比較例4のニードルパンチテスト後の電池の画像である。
図7】実施例38のニードルパンチテスト後の電池の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0115】
以下、本発明の実施例を参照しながら、本発明の技術的解決手段を明確かつ完全に説明するが、明らかに、説明する実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではない。当業者が本発明の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに得る他の全ての実施例は本発明の範囲に属する。
【0116】
以下、具体的な実施形態によって本発明の技術的解決手段をさらに説明する。当業者にとって明らかなように、前記実施例は本発明を理解しやすくするために過ぎず、本発明を具体的に限定するものとして理解できない。
【0117】
比較例1
本比較例1では、正極板にリチウムリッチ化合物が配合されておらず、正極板中の正極活物質はLiNi0.83Co0.12Mn0.05(Ni83)、バインダはPVDF、導電剤はCNTであり、正極活物質、バインダ、及び導電剤の質量比は95:2:3であり、正極板の製造方法は以下のとおりである。
バインダ液をNi83と均一に混合し、導電剤を加えて、正極スラリーを調製し、次にアルミニウム箔上に塗布し、面容量5.4mAh/cmの正極板を得て、ベークしてからコールドプレス、シート状化を行い、正極板を作成する。
マッチングした負極板(活物質SiC)を、厚さ15μm、空隙率50%のセラミックセパレータと組み立てて、溶接、hi-potテスト、包装をした後、焼き付け、リチウム塩としてLiPF、溶媒としてエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びフ
ルオロエチレンカーボネートの混合溶媒、添加剤としてVCの電解液を注入し、注液後、パッケージし、フォーメーション、キャパシティグレーディングの工程を行い、電池を作成する。
【0118】
実施例1
本実施例では、正極板にリチウムリッチマンガン系固溶体が配合されており、前記リチウムリッチマンガン系固溶体は0.5LiMnO・0.5LiMn0.54Ni0.13Co0.13であり、正極活物質とリチウムリッチ化合物との質量比は94:6であり、リチウムリッチ化合物の粒子の粒子径は500nmであり、正極板中の正極活物質はNi83であり、バインダはPVDFであり、導電剤はCNTであり、その製造方法は以下のとおりである。
正極活物質とリチウムリッチ化合物ナノ粒子とを、公転40r/min、分散回転数500r/minで1h予備混合し、予備混合粉体を得る。
予備混合粉体:バインダ:導電剤が95:2:3の質量比となるように、予備混合材料にバインダ液を加え、均一に混合した後、導電剤を加えて、正極スラリーを調製し、次に、アルミニウム箔上に塗布し、面容量5.4mAh/cmの正極板を得て、ベークしてからコールドプレス、シート状化を行い、正極板を作成する。
マッチングした負極板(活物質SiC)を、厚さ15μm、空隙率50%のセラミックセパレータと組み立てて、溶接、hi-potテスト、包装をした後、焼き付け、リチウム塩としてLiPF、溶媒としてエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートの混合溶媒、添加剤としてVCの電解液を注入し、注液後、パッケージし、フォーメーション、キャパシティグレーディングの工程を行い、電池を作成する。
【0119】
実施例2
実施例1に比べて、本実施例では、正極活物質とリチウムリッチマンガン系固溶体との質量比は90:10であり、リチウムリッチマンガン系固溶体は0.37LiMnO・0.63LiNi0.13Co0.13Mn0.54であり、リチウムリッチマンガン系固溶体の粒子径は2μmである以外、残りのパラメータ及び条件は実施例1と同様であった。
【0120】
実施例3
実施例1に比べて、本実施例では、正極活物質とリチウムリッチ固体電解質との質量比は99.5:0.5であり、リチウムリッチ固体電解質の粒子径は200nmであり、リチウムリッチ固体電解質はLiLaZr12である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例1と同様であった。
【0121】
実施例4
実施例1に比べて、本実施例では、正極活物質とリチウムリッチ固体電解質との質量比は92:8であり、リチウムリッチ固体電解質の粒子径は2μmであり、リチウムリッチ固体電解質はLi6.75LaZr1.75Ta0.2512である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例1と同様であった。
【0122】
実施例5
実施例1に比べて、本実施例では、正極活物質と脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物との質量比は99.5:0.5であり、脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物の粒子径は200nmであり、脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物はLi1.4SiO0.9である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例1と同様であった。
【0123】
実施例6
実施例1に比べて、本実施例では、正極活物質はLiNi0.8Co0.1Al0.1であり、脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物はLi2.1SiOであり、正極活物質と脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物との質量比は95:5であり、脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物の粒子径は1μmである以外、残りのパラメータ及び条件は実施例1と同様であった。
【0124】
実施例7
実施例1に比べて、本実施例では、正極活物質とリチウムリッチ固体電解質との質量比は94:6であり、リチウムリッチ固体電解質の粒子径は500nmであり、リチウムリッチ固体電解質はLiLaZr12である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例1と同様であった。
【0125】
実施例8
実施例1に比べて、本実施例では、正極活物質と脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物との質量比は94:6であり、脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物の粒子の粒子径は500nmであり、脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物はLi1.4SiO0.9である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例1と同様であった。
【0126】
実施例9
実施例1に比べて、本実施例では、正極活物質とリチウムリッチマンガン系固溶体との質量比は94:6であり、リチウムリッチなリチウムリッチマンガン系固溶体の粒子径は10μmであり、リチウムリッチマンガン系固溶体は0.5LiMnO・0.5LiMn0.54Ni0.13Co0.13である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例1と同様であった。
【0127】
実施例10
実施例1に比べて、本実施例では、正極活物質とリチウムリッチマンガン系固溶体との質量比は94:6であり、リチウムリッチなリチウムリッチマンガン系固溶体の粒子径は100nmであり、リチウムリッチマンガン系固溶体は0.5LiMnO・0.5LiMn0.54Ni0.13Co0.13である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例1と同様であった。
【0128】
実施例11
実施例1に比べて、本実施例では、正極活物質とリチウムリッチマンガン系固溶体との質量比は99:1であり、リチウムリッチなリチウムリッチマンガン系固溶体の粒子径は500nmであり、リチウムリッチマンガン系固溶体は0.5LiMnO・0.5LiMn0.54Ni0.13Co0.13である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例1と同様であった。
【0129】
実施例12
実施例1に比べて、本実施例では、正極活物質とリチウムリッチマンガン系固溶体との質量比は95:5であり、リチウムリッチなリチウムリッチマンガン系固溶体の粒子径は500nmであり、リチウムリッチマンガン系固溶体は0.5LiMnO・0.5LiMn0.54Ni0.13Co0.13である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例1と同様であった。
【0130】
実施例13
実施例1に比べて、本実施例では、正極活物質と脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物との質量比は80:20であり、脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物の粒子の粒子径は500nmであり、脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物はLi1.6SiO1.
である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例1と同様であった。
【0131】
実施例14
実施例5に比べて、本実施例では、正極活物質と脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物との質量比は99.5:0.5であり、脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物の粒子の粒子径は200nmであり、脱リチウム状態のリチウムリッチ化合物はLi2.1SiOである以外、残りのパラメータ及び条件は実施例5と同様である。
比較例1及び実施例1~14で得られた正極板を用いて組み立てられた電池についてテストを行う。
1、サイクルテスト:高面容量では、比較例1及び実施例1、3、5の15Ah電池のエネルギー密度は300Wh/Kgに達し、サイクル性能をテストし、電池の放電容量百分率が80%を超えると、テストを持続し、そうではないと、テストを停止し、テスト結果を図1に示し、上記の図1から分かるように、高面容量の電池について1Cで1000サイクルしたところ、放電容量百分率は80%を超え、一方、正極板にリチウムリッチ化合物が添加されると、電池のサイクル性能が改善される。
2、ニードルパンチテスト:15Ah電池のエネルギー密度は300Wh/Kg以上であり、テスト条件として、φ3~8mmのニードル、速度25~80mm/sとし、ニードルが電池のコアを垂直に突き刺し、電池内で1h留めた結果、「発火なし、爆発なし」であると合格とし、そうではないと、失敗とする。
【0132】
【表1】
【0133】
上記の表1から分かるように、正極にリチウムリッチ化合物が添加された電池は、エネルギー密度が300Wh/Kgを超え、ニードルパンチテストに合格し、ニードルパンチを受けた後表面温度の変化が明らかではなく、添加量が20%である場合、電池のエネルギー密度の低下は明らかであり、一方、リチウムリッチ化合物が添加されていない電池はニードルパンチテストに合格しない。
3、熱衝撃テスト:15Ah電池のエネルギー密度は300Wh/Kg以上であり、190℃で2h加熱し、昇温速度5℃/minで、190℃に加熱して2h保温し、1h観察した結果、「発火なし、爆発なし」は合格とし、そうではないと、失敗とし、テスト結果を表2に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
上記の表2から分かるように、正極にリチウムリッチ化合物が添加された電池は、エネルギー密度が300Wh/Kgを越え、190℃で2h熱衝撃することに耐えられ、添加量が20%である場合、電池のエネルギー密度は明らかに低下し、一方、リチウムリッチ化合物が添加されていない場合、電池は190℃熱衝撃テストに合格しない。
本発明では、高ニッケル三元正極板にリチウムリッチ化合物が配合されることによって、高エネルギー密度電池の安全性能が明らかに向上する。比較例1及び実施例1、3、5の電池はエネルギー密度が全て300Wh/Kgに達し、実施例1、3、5では、さまざまなリチウムリッチ化合物が添加された電池は全てニードルパンチテストに合格し、電池の表面温度の変化は明らかではなく、電池は190℃で2h保温する熱衝撃に合格し、主に、リチウムリッチ化合物は前記極端な条件でLiイオンを放出し、正極材料中のリチウム空孔を埋めることで、正極材料の格子構造を安定化させ、正極の内部リチウムの含有量を安定化させ、極端な条件での正極の酸化状態を低下させ、この正極材料を用いて製造される電池の極端な条件での安全性を向上させるためである。
実施例9、10及び1を比較して、さまざまな粒子径による電池の安全性能への影響を説明し、正極に配合されるものの粒子径が小さすぎるか又は大きすぎると、良好な安全性向上効果が得られにくく、リチウムリッチ化合物の粒子径が小さすぎると、界面抵抗が大きくなり、イオン輸送がバリアされ、粒子径が大きすぎると、正極に対するバリア効果が不十分であり、安全性向上が不十分になる。
実施例5及び13を比較して、リチウムリッチ化合物の添加量による電池安全性能への
影響を説明し、添加量が少なすぎると、安全性能の改善が不十分であり、添加量が多すぎると、安全性能を改善した反面、正極板中の活物質粒子の減少により電池のエネルギー密度が低下し、実施例13の電池のエネルギー密度は294Wh/Kgに低下している。
実施例1、7、8の比較から分かるように、配合量が同じ場合、リチウムリッチ固体電解質が配合されるほうは、安全性能が優れ、ニードルパンチテストにおいて、電池の表面の最高温度が最低である。
本発明の前記三元正極板の構造模式図は図3に示され、図3から分かるように、前記三元正極板1は、集電体10、例えばアルミニウム箔と、前記集電体の表面に位置する正極活物質層とを含み、前記正極活物質層は正極活物質11及び酸化物固体電解質12を含む。
本発明の前記三元正極板を用いて組み立てられたリチウム電池の構造模式図は図4に示され、図4から分かるように、前記リチウム電池は、三元正極板1、負極板2及び前記三元正極板1と負極板2に介在している固体、液体又は半固体電解質3を含み、前記負極板2は、集電体20と、前記集電体の表面に位置する負極活物質層とを含み、前記負極活物質層には負極活物質21が含まれている。
【0136】
比較例2
本比較例2では、三元正極板において、集電体はアルミニウム箔であり、正極活物質はNi83(LiNi0.83Co0.11Mn0.06)であり、酸化物固体電解質はLATP(Li1.4Al0.4Ti1.6(PO、中実球状)であり、正極活物質と酸化物固体電解質との質量比は97:3であり、酸化物固体電解質の粒子径は0.8μmであり、三元正極板の面容量は4mAh/cm以上であり、その製造方法は以下のとおりである。
Ni83とLATPナノ粒子とを、公転40r/min、分散回転数1500r/minで0.5h予備混合し、予備混合粉体を得る。
予備混合粉体:バインダ(PVDF):導電剤(CNT)が95:2:3の質量比となるように、予備混合粉体にバインダ液を加えて、均一に混合した後、導電剤を加えて、正極スラリーを作成する。
次に、アルミニウム箔上に正極スラリーを塗布してベークした後、コールドプレスを行い、裁断して三元正極板を得る。
負極板の製造
負極粉体:導電剤(Sp):CMC:SBRが95.8:1:1.2:2の質量比となるように、負極スラリーを製造し、次に、銅箔上に負極スラリーを塗布してベークした後、コールドプレスを行い、裁断して負極板を得た。前記負極粉体は、▲リー▼陽天目先導電池材料科技有限公司製のSL450A-SOCナノシリコンカーボン負極材料を用いる。
マッチングした負極板とセラミックセパレータ(基膜PPの塗装層はAl)を組み立てて、溶接、hi-potテスト、トップシール及びサイドシールをした後、焼き付け、注液(電解液はEC+DEC+FEC+LiPF)した後、完全な封口、フォーメーション、キャパシティグレーディングの工程を行い、リチウム電池を製造した後、電気的性能及び安全性をテストし、テスト結果を表3に示す。
【0137】
【表3】
【0138】
表3から分かるように、本発明では、高ニッケル三元正極板に酸化物固体電解質が配合されることにより、電池の安全性が向上し、15Ahの電池は、0.3C/0.3Cでは300Wh/kgを達成させ、かつ、3Cレートでの放電維持率が80%以上に達し、電池の安全性が全体的に向上し、ニードルパンチ、180℃ホットボックス及び50%押圧変形に合格し、主に、三元正極活性材料に酸化物固体電解質が添加されることで、三元活性粒子同士の接触を効果的にバリアし、正極板の熱的安定性を向上させるためであり、また、本発明の酸化物固体電解質そのものは一定の熱容量を有するので、正極で生じた熱の一部を吸収し、正極の過熱を緩和させることができ、また、電池の安全性能を向上できる。
【0139】
実施例15
比較例2に比べて、本実施例15では、前記酸化物固体電解質は多孔質球状であり、空隙率が50%である以外、残りのパラメータ及び条件は比較例2と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能のテストを行った結果を表4に示す。
【0140】
【表4】
【0141】
表4から分かるように、比較例2と比較して、高ニッケル三元正極板に配合された酸化物固体電解質は多孔質球状であり、多孔質球状固体電解質にはより多くの反応部位があり、電池のレート性能を向上させ、電池の3Cレート放電維持率を90%以上とし、また、電池のエネルギー密度を、305Wh/kgに向上させ、しかも、正極に多孔質球状の酸化物固体電解質が配合されると、正極で生じた熱がより多く吸収され、電池の熱的安定性はより効果的に向上し、電池の安全性能はさらに向上する。
【0142】
実施例16
実施例15に比べて、本実施例では、正極活物質と酸化物固体電解質との質量比は95:5である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行った結果を表5に示す。
【0143】
【表5】
【0144】
表5から分かるように、実施例15と比較して、本実施例では、固体電解質の正極中の含有量は5%に上昇し、安全性能はわずかに向上したが、電池のエネルギー密度は明らかに低下し、かつ電池の3Cレート性能も90%から83%に低下し、これは、固体電解質の増加に伴い、正極材料中の活物質の割合が減少し、その結果、電池のエネルギー密度は低下し、電池のレート性能は劣化する。
【0145】
実施例17
実施例15に比べて、本実施例では、酸化物固体電解質をLATPから多孔質球状形態のLAGP(Li1.5Al0.5Ge1.5(PO)に変更した以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行った結果を表6に示す。
【0146】
【表6】
【0147】
表6から分かるように、実施例15と比較して、本実施例では、多孔質球状固体電解質をLATPからLAGPに変更すると、電池のエネルギー密度はわずかに低下し、レート放電性能はわずかに低下し、これは、LAGPの導電性がLATPよりも僅かに低いため、電池の性能のわずかな低下の原因となるためである。
【0148】
実施例18
実施例15に比べて、本実施例では、予備混合における分散回転数は500r/minである以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行った結果を表7に示す。
【0149】
【表7】
【0150】
表7から分かるように、実施例15と比較して、予備混合における分散回転数は1500r/minから500r/minに変更され、回転数の低下に伴い、酸化物固体電解質は均一に分散できるようになり、電池のエネルギー密度及びレート性能はほぼ影響を受けない。
【0151】
実施例19
実施例15に比べて、本実施例では、前記酸化物固体電解質の粒子径は2μmである以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0152】
【表8】
【0153】
表8から分かるように、実施例15と比較して、酸化物固体電解質の粒子径は0.8μmから2μmに変わり、粒子径は明らかに増大し、ただし、電池のエネルギー密度及びレート性能にはほぼ変化が認められず、ニードルパンチ性能には明らかな変化が認められない。
【0154】
実施例20
実施例15に比べて、本実施例では、前記酸化物固体電解質の粒子径は0.5μmである以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0155】
【表9】
【0156】
表9から明らかなように、実施例15と比較して、本実施例では、酸化物固体電解質の粒子径は0.8μmから0.5μmに変わり、固体電解質の粒子径は小さくなり、ただし、電池のエネルギー密度及びレート性能にはほぼ変化が認められず、電池の安全性能はほぼ変わっていない。
【0157】
実施例21
実施例15に比べて、本実施例では、前記酸化物固体電解質の粒子径は3μmである以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0158】
【表10】
【0159】
表10から明らかなように、実施例15と比較して、本実施例では、酸化物固体電解質の粒子径は0.8μmから3μmに変わり、電池のエネルギー密度及びレート性能はほぼ維持されており、安全性能にも明らかな低下が認められない。
【0160】
実施例22
実施例15に比べて、本実施例では、正極活物質と酸化物固体電解質との質量比は99.9:0.1である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0161】
【表11】
【0162】
表11から明らかなように、実施例15と比較して、本実施例では、固体電解質の正極材料中の含有量は0.1%に低下し、残りのパラメータは変化しておらず、電池のエネルギー密度は明らかに向上し、また、レート性能も向上したが、電池の安全性能には、ニードルパンチ、180℃ホットボックスに合格しておらず、これは、酸化物固体電解質の含有量が低下したため、三元活性粒子同士の接触を効果的にバリアすることができず、かつ正極で生じた熱の一部を吸収することもできず、結果として、電池の安全性能が劣化するためである。
【0163】
実施例23
実施例15に比べて、本実施例では、正極活物質と酸化物固体電解質との質量比は90:10である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0164】
【表12】
【0165】
表12から明らかなように、実施例15と比較して、本実施例では、固体電解質の正極材料中の含有量は10%に上昇し、電池のエネルギー密度は明らかに低下し、サイクル回数は劣化し、レート性能は劣化し、これは、固体電解質の含有量が高いことにより正極活物質の割合が低下し、結果として、電池の電気化学的性能が劣化するためである。
【0166】
実施例24
実施例15に比べて、本実施例では、酸化物固体電解質をLATPから、多孔質球状のLLTO(Li0.5La0.5TiO)に変更する以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0167】
【表13】
【0168】
表13から明らかなように、実施例15と比較して、固体電解質はLATPからLLTOに変更されており、電池の電気化学的性能及び安全性能には明らかな変化が認められず、これは、この2種の材料の示す性能がほぼ同じであるためである。
【0169】
実施例25
実施例15に比べて、本実施例では、酸化物固体電解質をLATPから、多孔質球状のLZGO(Li14ZnGe16)に変更する以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0170】
【表14】
【0171】
表14から明らかなように、実施例15と比較して、酸化物固体電解質LATPはLZGOに変更されており、固体電解質の種類は変わり、電池のエネルギー密度は明らかに低下し、3Cレート放電性能は劣化し、電池の安全性能も明らかに劣化し、これは、LZTOのイオン電導率が大きいことにより、正極板のインピーダンスが増大し、電池性能の劣化を招くためである。
【0172】
実施例26
実施例15に比べて、本実施例では、酸化物固体電解質をLATPから、多孔質球状のLLZO(LiLaZr12)に変更する以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0173】
【表15】
【0174】
表15から明らかなように、実施例15と比較して、酸化物固体電解質LATPはLLZOに変更されており、固体電解質の種類は変わり、電池のエネルギー密度は低下し、3Cレート放電性能は劣化し、LATPに比べて、LLZOのイオン電導率は低下し、結果として、電池性能は劣化する。
【0175】
実施例27
実施例15に比べて、本実施例では、多孔質球状の酸化物固体電解質の空隙率を40%に変更する以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0176】
【表16】
【0177】
表16から明らかなように、実施例15と比較して、酸化物固体電解質LATPの空隙率は50%から40%に変わり、電池のエネルギー密度及び電池のレート性能にはほぼ変化が認められない。
【0178】
実施例28
実施例15に比べて、本実施例では、多孔質球状の酸化物固体電解質の空隙率を5%に変更する以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0179】
【表17】
【0180】
表17から明らかなように、実施例15と比較して、酸化物固体電解質LATPの空隙率は50%から5%に変わり、空隙率は小さくなり、反応の活性部位が少なくなり、その結果、電池のエネルギー密度及び電池のレート性能は低下し、また、空隙率が小さくなるため、正極で生じた熱に対する吸収能力が低下し、それにより、安全性能も低下する。
【0181】
実施例29
実施例15に比べて、本実施例では、正極活物質と酸化物固体電解質との質量比は99.99:0.01である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0182】
【表18】
【0183】
表18から明らかなように、実施例15と比較して、本実施例では、固体電解質の正極材料中の含有量は0.01%に低下し、残りのパラメータは変化しておらず、電池のエネルギー密度は明らかに向上し、レート性能も向上したが、電池の安全性能は合格できず、これは、酸化物固体電解質の含有量が低下したため、三元活性粒子同士の接触を効果的にバリアすることができず、また、正極で生じた熱を吸収することもできず、結果として、電池の安全性能が劣化するためである。
【0184】
実施例30
実施例15に比べて、本実施例では、正極活物質と酸化物固体電解質との質量比は85:15である外である以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0185】
【表19】
【0186】
表19から明らかなように、実施例15と比較して、本実施例では、固体電解質の正極材料中の含有量は15%に上昇し、電池のエネルギー密度は明らかに低下し、サイクル回数及びレート性能のいずれも明らかに劣化し、これは、固体電解質の含有量が高いため正極活物質の割合が低下し、結果として、電池の電気化学的性能が劣化するためである。
【0187】
実施例31
実施例15に比べて、本実施例では、前記酸化物固体電解質の粒子径は0.1μmである以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0188】
【表20】
【0189】
表20から明らかなように、実施例15と比較して、本実施例では、酸化物固体電解質の粒子径は0.8μmから0.1μmに変わり、固体電解質の粒子径は小さくなり、電池のエネルギー密度及びレート性能の低下が認められたが、電池の安全性能はほぼ変わっていない。
【0190】
実施例32
実施例15に比べて、本実施例では、前記酸化物固体電解質の粒子径は0.01μmである以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0191】
【表21】
【0192】
表21から明らかなように、実施例15と比較して、本実施例では、酸化物固体電解質の粒子径は0.8μmから0.01μmに変わり、固体電解質の粒子径は小さくなり、電池のエネルギー密度及びレート性能の低下が認められ、電池の安全性能も明らかに劣化し、主に、粒子が小さくなるので、凝集しやすくなり、結果として、電池の電気化学的性能及び安全性能が劣化するためである。
【0193】
実施例33
実施例15に比べて、本実施例では、前記酸化物固体電解質の粒子径は11μmである以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0194】
【表22】
【0195】
表22から分かるように、実施例15と比較して、酸化物固体電解質の粒子径は0.8μmから11μmに変わり、酸化物固体電解質の粒子径は明らかに増大し、電池のエネルギー密度は明らかに劣化し、サイクル性能も低下し、電池のレート性能も明らかに低下し、これは、固体電解質の粒子径が増大し、材料の電気抵抗が増大し、結果として、電池性能が劣化するためであり、さらに、電池の安全性能が明らかに低下し、これは、酸化物固体電解質の粒子径が上昇し、正極粒子同士の接触に対するバリア効果が不十分になり、その結果、三元活性粒子同士の接触を効果的に遮断できず、電池の安全性能に悪影響を与えるためである。
【0196】
実施例34
実施例15に比べて、本実施例では、前記酸化物固体電解質の粒子径は10μmである以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0197】
【表23】
【0198】
表23から分かるように、実施例15と比較して、酸化物固体電解質の粒子径は0.8μmから10μmに変わり、粒子径は増大し、電池のエネルギー密度及びレート性能が、劣化したが、安全性能テストに合格する。
【0199】
実施例35
実施例15に比べて、本実施例では、多孔質球状の酸化物固体電解質の空隙率を3%に変更する以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0200】
【表24】
【0201】
表24から明らかなように、実施例15と比較して、酸化物固体電解質LATPの空隙率は50%から3%に変わり、空隙率は小さくなり、反応の活性部位は明らかに減少し、その結果、電池のエネルギー密度は低下し、電池のレート性能は低下し、かつ、空隙率が小さくなるため、正極で生じた熱に対する吸収能力は劣化し、リチウムイオンの輸送性能は劣化し、エネルギー密度は低下する。
【0202】
実施例36
実施例15に比べて、本実施例では、多孔質球状の酸化物固体電解質の空隙率を70%に変更する以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0203】
【表25】
【0204】
表25から明らかなように、実施例15と比較して、酸化物固体電解質LATPの空隙率は50%から70%に変わり、空隙率は増大し、反応の活性部位は明らかに多くなり、結果として、電池のエネルギー密度及び電池のレート性能も上昇し、かつ、空隙率が増大するため、正極で生じた熱に対する吸収能力は強くなり、リチウムイオンの輸送性能は良好なものとなり、その結果、安全性能も向上する。
【0205】
実施例37
実施例15に比べて、本実施例では、多孔質球状の酸化物固体電解質の空隙率を80%に変更する以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本実施例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0206】
【表26】
【0207】
表26から明らかなように、実施例15と比較して、酸化物固体電解質LATPの空隙率は50%から80%に変わり、空隙率は増大し、反応の活性部位は明らかに多くなり、結果として、電池のエネルギー密度及び電池のレート性能も向上し、かつ、空隙率が増大するため、正極で生じた熱に対する吸収能力は強くなり、リチウムイオンの輸送性能は良好なものとなり、その結果、安全性能も向上し、ただし、孔を形成する際に、材料の製造プロセスが困難であり、かつ材料の空隙率が大きすぎると、材料の歩留まりは急激に低下する。
【0208】
比較例3
実施例15に比べて、本比較例では、三元正極板に酸化物固体電解質が添加されていない以外、残りのパラメータ及び条件は実施例15と同様であった。
本比較例で得られたリチウム電池について電気的性能及び安全性能テストを行い、テスト結果を以下に示す。
【0209】
【表27】
【0210】
表27から明らかなように、実施例15と比較して、本比較例では、いずれの固体電解質も添加されておらず、電池のエネルギー密度は向上し、レート性能も向上したが、電池安全性能には、ニードルパンチ、180℃ホットボックス、及びほぼ50%変形押圧のいずれにも合格しておらず、これは、酸化物固体電解質がないため、三元活性粒子同士の接触をバリアすることができず、正極で生じた熱を吸収することもできず、結果として、電池の安全性能が劣化するためである。
【0211】
実施例15~37及び比較例2~3の比較から分かるように、本発明では、前記三元正極板に酸化物固体電解質が添加されており、この正極板を用いて得られたリチウム電池の安全性は明らかに改善し、実施例におけるリチウム電池は、全てニードルパンチテスト、180℃で2h加熱するテスト及び50%変形押圧テストに合格し、かつ得られたリチウム電池は、300Wh/Kg以上と高い比容量を有する。
【0212】
比較例2と実施例15の比較から分かるように、本発明では、多孔質球状の酸化物固体電解質は使用されており、この酸化物固体電解質を用いて得られたリチウム電池は、より高い容量及びより優れたサイクル性能を有する。
【0213】
実施例15、17、24~26の比較から分かるように、前記酸化物固体電解質は好ましくはLATP及びLLTOである。
【0214】
実施例15、16、22、23、29、30の比較から分かるように、前記正極活物質と前記酸化物固体電解質との総質量を100%として、前記酸化物固体電解質の含有量は0.1~10質量%、好ましくは1~5質量%であり、固体電解質の含有量が多すぎると、正極活物質の含有量は低下し、電池のエネルギー密度及び電気化学的性能に悪影響を与え、固体電解質の含有量が少なすぎると、電池の安全性能は合格できない。
【0215】
実施例15、19-21、31~34の比較から分かるように、前記酸化物固体電解質の粒子径は0.1~10μm、好ましくは0.5~3μmであり、酸化物固体電解質の粒子径<0.1μmの場合、酸化物固体電解質の粒子径は小さすぎ、界面抵抗は増大し、イオン輸送は遮断され、界面インピーダンスは増加し、電池のエネルギー密度は低下し、酸化物固体電解質の粒子径>10μmの場合、粒子径は大きすぎ、正極粒子間の接触に対するバリア効果が不十分であり、結果として、安全性向上は不十分になる。
【0216】
実施例15、27、35~37の比較から分かるように、前記酸化物固体電解質多孔質球状粒子の空隙率は5~70%、好ましくは40~70%である。空隙率が小さすぎると、固体電解質の活性部位は少なすぎ、界面抵抗は大きすぎ、また、リチウムイオン輸送は遮断され、空隙率が大きすぎると、孔形成の難度が大幅に向上し、材料の歩留まりが低下する。
【0217】
一、酸化物固体電解質が配合された三元電極板の製造
三元正極活性材料、酸化物固体電解質、導電剤、バインダを表28におけるC1-C22、C25-C30に記載の割合のデータのように秤量し、まず、三元正極活性材料と酸化物固体電解質とを真空予備混合し、均一に分散させた予備混合材料を得て、上記の均一に分散させた予備混合材料にPVDFのNMPバインダ液を徐々に加え、均一に混合した後、導電剤Super-P及びCNTを徐々に加え、均一に混合し、一定の流動性を有する三元正極スラリーを得て、次に、アルミニウム箔上に塗装し、ブラスト乾燥、ロールプレスをして、正極板を得て、それぞれC1、C2…C22、C25~C30とした。
導電剤はカーボンナノチューブ及び導電性カーボンブラック(CNT+Super-P、カーボンナノチューブと導電性カーボンブラックとの質量比は1:2)、バインダはポリフッ化ビニリデン(PVDF)であった。
酸化物固体電解質が配合された三元電極板中の正極材料層の内部構造の模式図を図5に示す。
【0218】
二、酸化物固体電解質が配合されていない三元電極板の製造
三元正極活性材料、導電剤、バインダを、表28におけるC23、C24に記載の割合のデータのように秤量し、三元正極活性材料にPVDFのNMPバインダ液を徐々に加え、均一に混合した後、導電剤Super-P及びCNT(CNTと導電性カーボンブラックSuper-Pとの質量比は1:2)を徐々に加え、均一に混合し、一定の流動性を有する三元正極スラリーを得て、次に、アルミニウム箔上に塗装し、ブラスト乾燥、ロールプレスをして、正極板を得て、それぞれC23、C24とした。
導電剤及びバインダの種類は実施例38と同じであり、真空予備混合ステップを行わない以外、残りの操作は実施例38と同様であった。
【0219】
【表28】
【0220】
前記酸化物固体電解質は、Li1.4Al0.4Ti1.6(PO(略語LATP-1)、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO(略語LATP-2)、Li1.5Al0.5Ti1.5(PO(略語LATP-3)、Li6.4LaZr1.6Ta0.612(略語LLZO-1)、LiLaZr12(略語LLZO-2)、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO(略語LAGP-1)、Li1.3Al0.3Ge1.7(PO(略語LAGP-2)、Li0.5La0.5Ti
(略語LLTO-1)、Li0.34La0.56TiO(略語LLTO-2)、LiOCl(略語LOC)、Li3/8Sr7/16Ta3/4Zr1/4(略語LSTZ)、Li14ZnGe16(略語LZGO)である。
前記三元正極材料はLiNi0.8Co0.1Mn0.1(略語Ni80)、LiNi0.83Co0.12Mn0.05(略語Ni83)、LiNi0.88Co0.09Mn0.03(略語Ni88)、LiNi0.8Co0.15Al0.05(略語NCA)である。
【0221】
三、負極板の製造
本発明では、負極は一般的なグラファイト、シリコンカーボン、シリコンオキシカーボン、ソフト/ハードカーボン、メソカーボンミクロスフェア、複合金属リチウムであり、本発明では、負極について限定がなく、電池コアを製造する際に面容量が正極とマッチングすればよい。
より具体的には、負極主材活物質、導電剤、バインダを、96:2:2の質量比で脱イオン水に加えて混合し、均一に撹拌し、一定の流動性を有する負極スラリーを得て、次に、銅箔上に塗装し、ブラスト乾燥、ロールプレスをして、負極板を得て、それぞれA1、A2、…A5とした。ここで、導電剤はカーボンナノチューブCNTと導電性カーボンブラックSuper-Pを1:2の質量比で混合したものであり、バインダはCMCとSBRを1:1の質量比で混合したものであった。
【0222】
【表29】
【0223】
前記シリコンカーボン材料は、▲リー▼陽天目先導電池材料科技有限公司製のSL450A-SOCナノシリコンカーボン負極材料を用い、前記シリコンオキシカーボン材料は貝特瑞新能源材料股▲フン▼有限公司製のS450~2Aシリコンオキシカーボン負極材料であった。
【0224】
四、電池コアの製造
表30に記載のデータのように15Ahソフトパック電池コアを製造した。極板のサイズ:正極107mm*83mm、負極109mm*85mm。
【0225】
【表30】
【0226】
これらの中でも、実施例38~57、60~65は液体リチウム電池であり、セパレータとして両面セラミックセパレータを用い、電解液として市販の一般的な電解液を用い、比較例4~7及び実施例38~57では、電解液の組成は1mol/L LiPF-EC/DEC(3:7,V/V)+2wt%VC+1wt%LiDFOBであり、実施例6
0~62では、電解液の組成は1.2mol/L LiPF-EC/EMC(3:7,V/V)+2wt%FEC+1wt%LiDFOBであり、実施例63~65では、電解液の組成は1.2mol/L LiPF-EC/DEC(3:7,V/V)+2wt%FEC+1wt%LiDFOB+1wt%1,3-PSであり、実施例58~59は半固体リチウム電池であり、PVDF-HFP系ゲル重合体電解質膜を用い、電解液の組成は1mol/L LiPF-EC/DEC(3:7,V/V)+2wt%VC+1wt%LiDFOBであった。
【0227】
五、電池性能のテスト
実施例38~65及び比較例4~7で製造されたリチウム電池について、電気抵抗、100サイクル後の容量維持率、及び1000サイクル後の容量維持率をテストし、結果を表31に示す。テスト電圧範囲:2.75~4.2V、充放電電流:1C/1C。
【0228】
【表31】
【0229】
本発明では、高ニッケル三元正極板に酸化物固体電解質が配合されることにより、電池の安全性を向上させる。比較例4~5及び実施例37~65の比較から明らかなように、本発明で製造された電池では、電池の性能の受ける影響は小さい。主に、酸化物固体電解質粒子そのものが一定のイオン導電性能力であるので、本発明に記載の固体電解質の含有量の範囲内で酸化物固体電解質を導入すると、正極中のイオン輸送能力を明らかに阻害することはなく、また、酸化物固体電解質による吸熱作用により正極活性材料の充放電中の平均温度を低下させ、三元正極活性材料の高温での副反応を減少させ、このため、電池の長サイクル寿命を確保することに有利であるためである。ただし、配合された酸化物固体
電解質の粒子径が小さすぎる、又は配合量が多すぎると、電池の内部抵抗は増大し、電池のエネルギー密度は低下する。
【0230】
六、電池コアのニードルパンチによる安全性テスト
実施例37~65及び比較例4~7で製造されたリチウム電池について、リチウムイオン電池GB/T31485~2015電気自動車用パワーバッテリーの安全要件及びテスト方法に従って、ニードルパンチによる安全性テストを行った。
ニードルパンチテスト
電池を1Cで定電流・定電圧で充電し、カットオフ電流を0.05Cとし、φ5mmの耐高温スチールニードルを、25±5mm/sの速度で、蓄電池の極板に垂直な方向において好ましくは突き刺す対象となる面の幾何学的中心付近を突き刺し、スチールニードルを蓄電池に留め、30min観察し、この過程における電池コアの表面温度の変化を監視し、電池コアの発火や爆発の有無を記録し、結果を表32に示す。
【0231】
【表32】
【0232】
本発明では、高ニッケル三元正極板に酸化物固体電解質が配合されることによって、電池の安全性を向上させる。比較例4~5及び実施例38~42、44~48、50~51、53~65の比較から明らかなように、本発明で製造された電池は、ニードルパンチにおいて発火や爆発がなく、ニードルパンチにおいて電池コアの表面温度が41.3~57.6℃であり、このため、電池の安全性は向上し、一方、正極板に酸化物固体電解質が添加されていない比較例4~5では、この正極板を用いて製造された電池は、ニードルパンチにおいて発火や爆発が起こり、熱暴走が発生し、電池コアの表面温度が最高で793.7℃に達する。主に、三元正極活性材料に酸化物固体電解質が添加されることによって、三元活性粒子同士の接触を効果的にバリアし、材料の熱的安定性を向上させ、また、本発
明の酸化物固体電解質そのものは一定の熱容量を有するので、正極で生じた熱の一部を吸収し、正極の過熱を緩和できるためである。
比較例6~7及び実施例38~42から明らかなように、比較例6~7では、酸化物固体電解質が添加されたが、酸化物固体電解質の粒子径が小さすぎる場合、イオン輸送が遮断され、界面インピーダンスが増加し、電池のエネルギー密度が低下し、酸化物固体電解質の粒子径が大きすぎる場合、正極粒子間の接触に対するバリア効果が不十分であり、結果として、安全性向上は不十分であり、これにより、ニードルパンチテストに合格しない。このことから、正極に配合された粒子径が小さすぎても、大きすぎても、電池のエネルギー密度を確保しながら安全性を向上させる効果が得られないことが分かる。
実施例40、43~48から分かるように、実施例43では、正極板に酸化物固体電解質が添加されたが、酸化物固体電解質の配合量が少なすぎるため、固体電解質の吸熱及び断熱効果が不十分であり、安全性向上は不十分であり、ニードルパンチテストに合格できず、正極板に酸化物固体電解質が添加されている実施例48では、ニードルパンチテストに合格したが、配合量が多すぎ、電池のエネルギー密度は低下する。このことから、正極での配合量が少なすぎても、多すぎても、電池のエネルギー密度を確保しながら安全性を向上させる効果が得られないことが分かる。
実施例49では、酸化物固体電解質が添加されており、その粒子径D50は0.1~3μmの好ましい範囲であり、その添加量は0.1~10%の好ましい範囲であるが、三元正極材料D50と酸化物固体電解質D50との比が5未満であり、即ち、両方の粒子径が近いため、該粒子径及び含有量の範囲では、酸化物固体電解質の量は三元正極活性材料粒子同士の接触をバリアするのに不十分になり、その結果、安全性は劣り、ニードルパンチテストに合格できず、ただし、比較例4~5の電池コアよりも表面温度が低下し、このことから、酸化物固体電解質は熱暴走中のエネルギーをある程度減少させることを示している。
実施例52では、酸化物固体電解質が添加されており、その粒子径D50は0.1~3μmの好ましい範囲であり、その添加量は0.1~10%の好ましい範囲であるが、三元正極材料D50と酸化物固体電解質D50との比は5よりも大きいが、予備混合の回転数は小さすぎるため、分散効果が悪く、粒子同士が凝集しやすく、その結果、安全性は劣り、ニードルパンチテストに合格できず、ただし、比較例4~5の電池コアよりも表面温度が低下し、このことから、酸化物固体電解質は熱暴走中のエネルギーをある程度減少させることを示している。
実施例40、55~57、60~65から明らかなように、どの酸化物固体電解質がドーピングされても、電池の安全性能は、程度が異なるが、上昇しており、この中でも、LATPによる安全性能向上効果は最も好適であり、実施例40、61~62、実施例53、64、実施例54、63、及び実施例56、65から明らかなように、電解質ごとに、電解質の成分による電池安全性への影響が少なく、いずれの場合にも、電池はニードルパンチテストに支障なく合格できる。
実施例60~65から明らかなように、本発明で提供された正極板は、一般的な市販電解液と組み合わせて使用されると、電池コアの安全性を向上させる効果を果たし、電池コアはニードルパンチテストに支障なく合格できる。
【0233】
七、電池コアの180℃ホットボックスによる安全性テスト
電池を1Cで定電流・定電圧で充電し、カットオフ電流を0.05Cとし、180℃で2h加熱し、5℃/mm昇温速度で、180℃に加熱して2h保温し、1h観察したところ、「発火なし、爆発なし」のものは合格とし、そうではないものは失敗とし、この過程における電池コアの表面温度の変化を監視し、テスト結果を表33に示す。
【0234】
【表33】
【0235】
本発明では、高ニッケル三元正極板に酸化物固体電解質が配合されることによって、電池の安全性を向上させる。比較例4~5及び実施例38~42、44~47、50~51、53~65から明らかなように、本発明で製造された電池は、180℃ホットボックス
テストにおいて、電池コアの表面温度が181.4~188.7℃、電池の重量損失率が15.1%~27.1%であり、いずれにも発火や爆発がない。一方、正極板に酸化物固体電解質が添加されていない比較例4~5に関しては、これを用いて製造された電池は、熱暴走が起こり、電池の表面温度が最高で560.8℃に達する。主に、三元正極活性材料に酸化物固体電解質が添加されることによって、三元活性粒子同士の接触を効果的にバリアし、材料の熱的安定性を向上させ、次に、本発明の酸化物固体電解質そのものは一定の熱容量を有するので、正極で生じた熱の一部を吸収し、正極の過熱を緩和できるためである。このため、電池は180℃ホットボックステストに支障なく合格する。
【0236】
比較例6~7及び実施例38~42から明らかなように、比較例6~7では、酸化物固体電解質が添加されたが、酸化物固体電解質の粒子径が小さすぎる場合、イオン輸送が遮断され、界面インピーダンスが増加し、電池のエネルギー密度が低下し、酸化物固体電解質の粒子径が大きすぎる場合、正極粒子同士の接触に対するバリア効果が不十分であり、結果として、安全性向上は不十分であり、これにより、180℃ホットボックステストに合格しない。このことから、正極配合の粒子径が小さすぎても、大きすぎても、電池のエネルギー密度を確保しながら安全性を向上させる効果が得られないことが分かる。
【0237】
実施例40、43~48から分かるように、実施例43では、正極板に酸化物固体電解質が添加されたが、正極での配合量が少なすぎる又は多すぎると、好適な安全性向上効果が得られず、酸化物固体電解質の配合量が少なすぎる場合、固体電解質の吸熱や断熱効果が不十分であり、安全性向上は不十分であり、正極板に酸化物固体電解質が添加されている実施例48では、180℃ホットボックステストに合格したが、配合量が多すぎ、電池のエネルギー密度は低下する。
【0238】
実施例49では、酸化物固体電解質が添加されており、その粒子径D50は0.1~3μmの好ましい範囲であり、その添加量は0.1~10%の好ましい範囲であるが、三元正極材料D50と酸化物固体電解質D50との比が5未満であり、即ち、両方の粒子径が近いため、該粒子径及び含有量の範囲では、酸化物固体電解質の量は三元正極活性材料粒子同士の接触をバリアするのに不十分であり、その結果、安全性は劣り、180℃ホットボックステストに合格できず、ただし、比較例4~5の電池コアよりも表面温度が低下し、このことから、酸化物固体電解質は熱暴走中のエネルギーをある程度減少させることを示している。
【0239】
実施例52では、酸化物固体電解質が添加されており、その粒子径D50は0.1~3μmの好ましい範囲であり、その添加量は0.1~10%の好ましい範囲であり、三元正極材料D50と酸化物固体電解質D50との比は5よりも大きいが、予備混合の回転数は小さすぎるため、分散効果が悪く、粒子同士が凝集しやすく、その結果、安全性は劣り、180℃ホットボックステストに合格できない。ただし、比較例4~5の電池コアよりも表面温度が低下し、このことから、酸化物固体電解質は熱暴走中のエネルギーをある程度減少させることを示している。
【0240】
本発明で提供される実施例では、使用される三元正極材料LiNiCo1-x-yにおいて、ニッケル含有量xは0.80、0.83又は0.88であり、高ニッケル三元正極材料は、ニッケル含有量が多いほど、熱的安定性が劣り、実施例54、55から分かるように、本発明で提供される正極板では、ニッケル含有量が高い(x=0.88)場合においても、電池コアはホットボックステストに支障なく合格でき、Ni含有量が低い(x=0.6~0.8)正極活性材料でも、本発明で提供される正極板は安全性を良好に維持できる。
【0241】
実施例40、55~57、60~65から明らかなように、どの酸化物固体電解質がド
ーピングされても、電池の安全性能は、程度が異なるが、上昇しており、この中でも、LATPによる安全性能向上効果は最も好適であり、実施例40、61~62、実施例53、64、実施例54、63及び実施例56、65から明らかなように、電解質ごとに、電解質の成分による電池安全性への影響が少ない。
【0242】
実施例60~65から明らかなように、本発明で提供される正極板は、一般的な市販電解液と組み合わせて使用されると、電池コアの安全性を向上させる効果を果たし、電池コアはホットボックステストに支障なく合格できる。
【0243】
なお、以上は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者であれば、本発明の原理を逸脱することなく、いくつかの改良や修飾を行ってもよく、これらの改良や修飾は本発明の範囲とみなすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体の表面に位置する正極活物質層とを含む高安全性及び高容量を兼ね備えたリチウム電池用三元正極板であって、
前記正極活物質層はリチウムイオンを輸送できる酸化物固体電解質を含み、前記酸化物固体電解質は多孔質球状粒子である、ことを特徴とするリチウム電池用三元正極板。
【請求項2】
前記多孔質球状粒子の空隙率は5~70%、好ましくは40~70%である、ことを特徴とする請求項に記載の三元正極板。
【請求項3】
前記酸化物固体電解質の粒子径は0.1~10μm、好ましくは0.5~3μmである、ことを特徴とする請求項に記載の三元正極板。
【請求項4】
前記正極活物質層中の正極活物質と酸化物固体電解質との総質量を100%として、前記酸化物固体電解質の含有量は0.1~10質量%、好ましくは1~5質量%である、ことを特徴とする請求項に記載の三元正極板。
【請求項5】
前記酸化物固体電解質はNASICON構造、ペロブスカイト構造、アンチペロブスカイト構造、LISICON構造及びガーネット構造のうちの少なくとも1種を含み、
好ましくは、前記NASICON構造は、Li1+xAlGe2-x(PO、Li1+xAlGe2-x(POの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li1+yAlTi2-y(PO及びLi1+yAlTi2-y(POの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物から選ばれる少なくとも1種であり、
好ましくは、前記ペロブスカイト構造はLi3zLa2/3-zTiO、Li3zLa2/3-zTiOの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li3/8Sr7/16Ta3/4Hf1/4、Li3/8Sr7/16Ta3/4Hf1/4の同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li2a-bSr1-aTaZr1-b及びLi2a-bSr1-aTaZr1-bの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物のから選ばれる少なくとも1種であり、
好ましくは、前記アンチペロブスカイト構造は、Li3-2xHalO、Li3-2xHalOの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、LiOCl及びLiOClの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物から選ばれる少なくとも1種であり、式中、HalはCl及び/又はIを含み、MはMg2+、Ca2+、Sr2+又はBa2+から選ばれるいずれかの1種又は少なくとも2種の組み合わせであり、
好ましくは、前記LISICON構造は、Li4-cSi1-c、Li4-cSi1-cの同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物、Li14ZnGe16及びLi14ZnGe16の同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物から選ばれる少なくとも1種であり、
好ましくは、前記ガーネット構造は、Li7-dLaZr2-d12及び/又はLi7-dLaZr2-d12の同結晶形ヘテロ原子ドーピング化合物から選ばれる、ことを特徴とする請求項に記載の三元正極板。
【請求項6】
前記三元正極板の面容量は4mAh/cm以上である、ことを特徴とする請求項に記載の三元正極板。
【請求項7】
前記正極活物質層中の正極活物質は高ニッケル三元材料から選ばれ、
好ましくは、前記高ニッケル三元材料はニッケルコバルトマンガン酸リチウム及び/又はニッケルコバルトアルミン酸リチウムを含み、
好ましくは、前記ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの分子式はLiNiCoMn1-x-yであり、前記ニッケルコバルトアルミン酸リチウムの分子式はLiNiCoAl1-x-yであり、式中、x≧0.6である、ことを特徴とする請求項に記載の三元正極板。
【請求項8】
正極活物質と酸化物固体電解質とを予備混合し、予備混合粉体を得るステップと、
予備混合粉体にバインダ液、導電剤を加えて混合し、正極スラリーを得るステップと、
集電体上に前記正極スラリーを塗布し、乾燥させて前記三元正極板を得るステップとを含む、ことを特徴とする請求項に記載の三元正極板の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の三元正極板を含む、ことを特徴とするリチウム電池。
【請求項10】
体リチウム電池を含み、
記液体リチウム電池は請求項1~7のいずれか1項に記載の三元正極板、負極板及び液体電解質を含む、ことを特徴とするリチウム電池。
【請求項11】
半固体リチウム電池を含み
前記半固体リチウム電池は請求項1~7のいずれか1項に記載の三元正極板、負極板及び液体電解質を含む、ことを特徴とするリチウム電池
【請求項12】
全固体リチウム電池を含み、
前記全固体リチウム電池は請求項1~7のいずれか1項に記載の三元正極板、負極板及び固体電解質を含む、ことを特徴とするリチウム電池。