(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013907
(43)【公開日】2025-01-28
(54)【発明の名称】爆薬組成物及びその製造方法、並びに異原子ドープナノダイヤモンドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/26 20170101AFI20250121BHJP
C06B 27/00 20060101ALI20250121BHJP
C06B 33/10 20060101ALI20250121BHJP
C06D 5/00 20060101ALI20250121BHJP
C06B 33/00 20060101ALI20250121BHJP
C06B 33/08 20060101ALI20250121BHJP
B01J 3/08 20060101ALI20250121BHJP
B01J 3/06 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
C01B32/26
C06B27/00
C06B33/10
C06D5/00 Z
C06B33/00
C06B33/08
B01J3/08 M
B01J3/08 D
B01J3/06 Q
B01J3/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024185411
(22)【出願日】2024-10-21
(62)【分割の表示】P 2021509073の分割
【原出願日】2020-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2019058397
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019212821
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間彦 智明
(72)【発明者】
【氏名】牧野 有都
(72)【発明者】
【氏名】鶴井 明彦
(72)【発明者】
【氏名】劉 明
(72)【発明者】
【氏名】西川 正浩
(57)【要約】
【課題】異原子をドープしたナノダイヤモンドの製造に好適な爆薬組成物及びその製造方法、並びに異原子ドープナノダイヤモンドの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも1種の爆薬と少なくとも1種の異原子化合物を含み、前記異原子化合物がB、P、Si、S、Cr、Sn、Al、Ge、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Ni、Cu、Ag、Cd、Hg、Ga、In、Tl、As、Sb、Bi、Se、Te、Co、Xe、F、Y及びランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種の異原子を含む、爆薬組成物を提供するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の爆薬と少なくとも1種の有機異原子化合物を含み、前記有機異原子化合物がB、P、Si、S、Cr、Sn、Al、Ge、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Ni、Cu、Ag、Cd、Hg、Ga、In、Tl、As、Sb、Bi、Se、Te、Co、Xe、F、Y及びランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種の異原子を含む、爆薬組成物であって、爆薬組成物中の前記爆薬の割合が90~99.99質量%であり、前記有機異原子化合物の割合が0.01~10質量%である爆薬組成物。
【請求項2】
前記爆薬が、トリニトロトルエン(TNT)、シクロトリメチレントリニトラミン(ヘキソゲン、RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(オクトゲン)、トリニトロフェニルメチルニトラミン(テトリル)、ペンタエリスリトールテトラニトレート(PETN)、テトラニトロメタン(TNM)、トリアミノ-トリニトロベンゼン、ヘキサニトロスチルベン及びジアミノジニトロベンゾフロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の爆薬組成物。
【請求項3】
爆薬および/または異原子化合物の粒子サイズが10mm以下である、請求項1~又は2に記載の爆薬組成物。
【請求項4】
爆薬と異原子化合物を乾燥粉もしくは溶融状態もしくは溶媒を用いて混合し、圧搾法もしくは注填法によって成形することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の爆薬組成物の製造方法。
【請求項5】
粒子サイズが10mm以下の爆薬および/または異原子化合物を用いて乾燥粉もしくは溶融状態で混合して爆薬組成物を作製する、請求項4に記載される爆薬組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の爆薬組成物を密閉容器内で爆発させる工程を含む、異原子ドープナノダイヤモンドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆薬組成物及びその製造方法、並びに異原子ドープナノダイヤモンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドの発光センターは、ナノサイズで化学的に安定な蛍光性発色団であり有機物の蛍光体に多く見られる生体内での分解、褪色、明滅を示さないために、蛍光イメージングのプローブとして期待されている。また発光センター内で励起される電子のスピン情報を外部より計測できる場合もあることにより、ODMR(Optically Detected Magnetic Resonance;光検出磁気共鳴法)や量子ビットとしての利用も期待されている。
【0003】
ダイヤモンドの発光センターの1種であるSiVセンターは、発光スペクトルにおいてZPL(Zero Phonon Level)と言われる鋭いピークを有する(非特許文献1)。
【0004】
ケイ素又はホウ素をドープしたダイヤモンドは、CVD法などにより製造されている(特許文献1~4)。
【0005】
特許文献5は、一種又は二種以上の高性能爆薬とダイヤモンド粉を含むダイヤモンド合成用爆薬組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2014-504254
【特許文献2】特開2004-176132
【特許文献3】特開2018-076216
【特許文献4】特開2018-012612
【特許文献5】特開平2-241536
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】E. Neu et al. APPLIED PHYSICS LETTERS 98, 243107 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、異原子をドープしたナノダイヤモンドの製造に好適な爆薬組成物及びその製造方法、並びに異原子ドープナノダイヤモンドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の爆薬組成物及びその製造方法、並びに異原子ドープナノダイヤモンドの製造方法を提供するものである。
項1. 少なくとも1種の爆薬と少なくとも1種の異原子化合物を含み、前記異原子化合物がB、P、Si、S、Cr、Sn、Al、Ge、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Ni、Cu、Ag、Cd、Hg、Ga、In、Tl、As、Sb、Bi、Se、Te、Co、Xe、F、Y及びランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種の異原子を含む、爆薬組成物。
項2. 前記爆薬が、トリニトロトルエン(TNT)、シクロトリメチレントリニトラミン(ヘキソゲン、RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(オクトゲン)、トリニトロフェニルメチルニトラミン(テトリル)、ペンタエリスリトールテトラニトレート(PETN)、テトラニトロメタン(TNM)、トリアミノ-トリニトロベンゼン、ヘキサニトロスチルベン及びジアミノジニトロベンゾフロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、項1に記載の爆薬組成物。
項3. 異原子化合物が有機異原子化合物である、項1又は2に記載の爆薬組成物。
項4. 爆薬を80~99.9999質量%、異原子化合物を0.0001~20質量%含む、項1~3のいずれか1項に記載の爆薬組成物。
項5. 爆薬および/または異原子化合物の粒子サイズが10mm以下である、項1~4のいずれか1項に記載の爆薬組成物。
項6. 爆薬と異原子化合物を乾燥粉もしくは溶融状態もしくは溶媒を用いて混合し、圧搾法もしくは注填法成形することを特徴とする、項1~5のいずれか1項に記載の爆薬組成物の製造方法。
項7. 粒子サイズが10mm以下の爆薬および/または異原子化合物を用いて乾燥粉もしくは溶融状態で混合して爆薬組成物を作製する、項6に記載の爆薬組成物の製造方法。
項8. 項1~5のいずれか1項に記載の爆薬組成物を密閉容器内で爆発させる工程を含む、異原子ドープナノダイヤモンドの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の爆薬組成物を用いることで、爆轟法により少なくとも1種の異原子がドープされたナノダイヤモンドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ケイ素化合物としてトリフェニルシラノールを用い、添加量が外割で1質量%で得られたケイ素ドープナノダイヤモンドの、(a)738nm輝点イメージング像(a)、(b)
図1(a)の輝点の蛍光測定結果、(c) 混酸およびアルカリ処理後の試料のXRD測定結果。
図1(b)において、750nm付近に蛍光のサイドバンド(ショルダーピーク)が存在するが、このサイドバンドはサンプルによって存在しない場合もある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の爆薬組成物は、少なくとも1種の爆薬と少なくとも1種の異原子化合物を含む。
【0013】
爆薬としては、特に限定されず、公知の爆薬を広く用いることができる。具体例としては、トリニトロトルエン(TNT)、シクロトリメチレントリニトラミン(ヘキソゲン、RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(オクトゲン)、トリニトロフェニルメチルニトラミン(テトリル)、ペンタエリスリトールテトラニトレート(PETN)、テトラニトロメタン(TNM)、トリアミノ-トリニトロベンゼン、ヘキサニトロスチルベン、ジアミノジニトロベンゾフロキサンなどが挙げられ、これらを1種単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
異原子化合物は、少なくとも1種の異原子(炭素以外の原子)を含む化合物であり、有機化合物と無機化合物のいずれであってもよい。
【0015】
異原子は、B、P、Si、S、Cr、Sn、Al、Ge、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Ni、Cu、Ag、Cd、Hg、Ga、In、Tl、As、Sb、Bi、Se、Te、Co、Xe、F、Y及びランタノイドからなる群から選ばれ、好ましくはSi、Ge、Sn、B、P、Ni、Ti、Co、Xe、Cr、W、Ta、Zr、Ag及びランタノイドからなる群から選ばれ、さらに好ましくはSi、Ge、Sn、B、P、Ni、Ti、Co、Xe、Cr、W、Ta、Zr、及びAgからなる群から選ばれる。
【0016】
以下に具体例が記載されている異原子化合物は、単なる例示であり、公知の異原子化合物が広く使用できる。
【0017】
異原子がケイ素の場合、有機のケイ素化合物としては、
・アセトキシトリメチルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、トリアセトキシメチルシラン、アセトキシトリエチルシラン、ジアセトキシジエチルシラン、トリアセトキシエチルシラン、アセトキシトリプロピルシラン、メトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、エトキシトリエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリメチルフェノキシシランなどの低級アルキル基を有するシラン、
【0018】
・トリクロロメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、トリクロロエチルシラン、ジクロロジエチルシラン、クロロトリエチルシラン、トリクロロフェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン、クロロトリフェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ジクロロメチルフェニルシラン、ジクロロエチルフェニルシラン、クロロジフルオロメチルシラン、ジクロロフルオロメチルシラン、クロロフルオロジメチルシラン、クロロエチルジフルオロシラン、ジクロロエチルフルオロシラン、クロロジフルオロプロピルシラン、ジクロロフルオロプロピルシラン、トリフルオロメチルシラン、ジフルオロジメチルシラン、フルオロトリメチルシラン、エチルトリフルオロシラン、ジエチルジフルオロシラン、トリエチルフルオロシラン、トリフルオロプロピルシラン、フルオロトリプロピルシラン、トリフルオロフェニルシラン、ジフルオロジフェニルシラン、フルオロトリフェニルシラン、トリブロムメチルシラン、ジブロムジメチルシラン、ブロムトリメチルシラン、ブロムトリエチルシラン、ブロムトリプロピルシラン、ジブロムジフェニルシラン、ブロムトリフェニルシランなどのハロゲン原子を有するシラン、
【0019】
・ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、ヘキサプロピルジシラン、ヘキサフェニルジシラン、オクタフェニルシクロテトラシランなどのポリシラン
・トリエチルシラザン、トリプロピルシラザン、トリフェニルシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、ヘキサエチルシクロトリシラザン、オクタエチルシクロテトラシラザン、ヘキサフェニルシクロトリシラザンなどのシラザン、
・シラベンゼン、ジシラベンゼンなどの芳香環にケイ素原子が組み込まれた芳香族シラン
・トリメチルシラノール、ジメチルフェニルシラノール、トリエチルシラノール、ジエチルシランジオール、トリプロピルシラノール、ジプロピルシランジオール、トリフェニルシラノール、ジフェニルシランジオールなどの水酸基含有シラン
【0020】
・テトラメチルシラン、エチルトリメチルシラン、トリメチルプロピルシラン、トリメチルフェニルシラン、ジエチルジメチルシラン、トリエチルメチルシラン、メチルトリフェニルシラン、テトラエチルシラン、トリエチルフェニルシラン、ジエチルジフェニルシラン、エチルトリフェニルシラン、テトラフェニルシランなどのアルキルもしくはアリール置換シラン、
・トリフェニルシリルカルボン酸、トリメチルシリル酢酸、トリメチルシリルプロピオン酸、トリメチルシリル酪酸などのカルボキシル基含有シラン、
【0021】
・ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサンなどのシロキサン、
・メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、ジフェニルシラン、トリフェニルシランなどのアルキル基もしくはアリール基と水素原子を有するシラン、
・テトラキス(クロロメチル)シラン、テトラキス(ヒドロキシメチル)シラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン、テトラキス(トリメチルシリル)メタン、テトラキス(ジメチルシラノリル)シラン、テトラキス(トリ(ヒドロキシメチル)シリル)シラン、テトラキス(ニトレートメチル)シラン、
などが挙げられる。
【0022】
無機ケイ素化合物としては、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、窒化炭化ケイ素、シラン、或いはケイ素をドープした炭素材料等が挙げられる。ケイ素をドープする炭素材料としては黒鉛、グラファイト、活性炭、カーボンブラック、ケッチェンブラック、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン、アセチレンブラック、カーボンファイバー、メソポーラスカーボンなどが挙げられる。
【0023】
ホウ素化合物としては、例えば、無機ホウ素化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。
【0024】
無機ホウ素化合物としては、例えば、オルトホウ酸、二酸化二ホウ素、三酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素、三臭化ホウ素、テトラフルオロホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0025】
有機ホウ素化合物としては、例えば、トリエチルボラン、(R)-5,5-ジフェニル-2-メチル-3,4-プロパノ-1,3,2-オキサザボロリジン、ホウ酸トリイソプロピル、2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン、ビス(ヘキシレングリコラト)ジボロン、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾール、tert-ブチル-N-〔4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,2,3-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル〕カルバメート、フェニルボロン酸、3-アセチルフェニルボロン酸、三フッ化ホウ素酢酸錯体、三フッ化ホウ素スルホラン錯体、2-チオフェンボロン酸、トリス(トリメチルシリル)ボラートなどが挙げられる。
【0026】
リン化合物としては、例えば、無機リン化合物、有機リン化合物などが挙げられる。無機リン化合物としては、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0027】
有機リン化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、2-エチルヘキシルジ(p-トリル)ホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)p-トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ジ(ドデシル)p-トリルホスフェート、トリス(2-ブトキシエチル)ホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、p-トリルビス(2,5,5’-トリメチルヘキシル)ホスフェート、クレジル-2,6-キシレニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(i-プロピルフェニル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェートなどのリン酸エステル、
1,3-フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)、1,4-フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)、1,3-フェニレン ビス(3,5,5’-トリメチルヘキシルホスフェート)、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)、4,4’-ビフェニル ビス(ジキシレニルホスフェート)、1,3,5-フェニレン トリス(ジキシレニルホスフェート)などの縮合リン酸エステル、
トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどの亜リン酸エステル、
1,3-フェニレン ビス(ジフェニルホスファイト)、1,3-フェニレン ビス(ジキシレニルホスファイト)、1,4-フェニレン ビス(3,5,5’-トリメチルヘキシルホスファイト)、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスファイト)、4,4’-ビフェニル ビス(ジキシレニルホスファイト)、1,3,5-フェニレン トリス(ジキシレニルホスファイト)などの亜リン酸エステルが挙げられる。
【0028】
ゲルマニウム化合物としては、メチルゲルマン、エチルゲルマン、トリメチルゲルマニウムメトキシド、ジメチルゲルマニウムジアセテート、トリブチルゲルマニウムアセテート、テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、イソブチルゲルマン、三塩化アルキルゲルマニウム、三塩化ジメチルアミノゲルマニウム等の有機ゲルマニウム化合物、としては、ニトロトリフェノール錯体(Ge2(ntp)2O)、カテコール錯体(Ge(cat)2) 又はアミノピレン錯体(Ge2(ap)2Cl2)等のゲルマニウム錯体、ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド等のゲルマニウムアルコキシドが挙げられる。
【0029】
スズ化合物としては、例えば、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、硫化スズ(II)、硫化スズ(IV)、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、臭化スズ(II)、フッ化スズ(II)、酢酸スズ、硫酸スズなどの無機スズ化合物、テトラメチルスズのようなアルキルスズ化合物、モノブチルスズオキシドのようなモノアルキルスズオキシド化合物、ジブチルスズオキシドのようなジアルキルスズオキシド化合物、テトラフェニルスズのようなアリールスズ化合物、ジメチルスズマレエート、ヒドロキシブチルスズオキサイド、モノブチルスズトリス(2-エチルヘキサノエート)などの有機スズ化合物などが挙げられる。
【0030】
ニッケル化合物としては、例えば、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、ヨウ化ニッケル(II)等の二価のハロゲン化ニッケル、酢酸ニッケル(II)、炭酸ニッケル(II)などの無機ニッケル化合物、ニッケルビス(エチルアセトアセテート)、ニッケルビス(アセチルアセトナート)などの有機ニッケル化合物などが挙げられる。
【0031】
チタン化合物としては、例えば、二酸化チタン、窒化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウムなどの無機チタン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブチロキシチタン等のテトラアルコキシチタン;チタン酸テトラエチレングリコール、チタン酸ジ-n-ブチルビス(トリエタノールアミン)、ビス(アセチルアセトン)酸ジ-イソプロポキシチタン、オクタン酸イソプロポキシチタン、トリメタクリル酸イソプロピルチタン、トリアクリル酸イソプロピルチタン、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ブチルメチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルジ(ジラウリルホスファイト)チタネート、ジメタクリルオキシアセテートチタネート、ジアクリルオキシアセテートチタネート、ジ(ジオクチルホスフェート)エチレンチタネート、トリ(ジオクチルリン酸)イソプロポキシチタン、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジ-トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ-n-ドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリロイルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネートなどの有機チタン化合物などが挙げられる。
【0032】
コバルト化合物としては、例えば、コバルト無機酸塩、コバルトハロゲン化物、酸化コバルト、水酸化コバルト、ジコバルトオクタカルボニル、コバルト水素テトラカルボニル、テトラコバルトドデカカルボニル、アルキリジントリコバルトノナカルボニルなどの無機コバルト化合物、コバルトトリス(エチルアセトアセテート)、コバルトトリス(アセチルアセトナート)、コバルトの有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、オクタンスルホン酸塩、ドデカンスルホン酸塩などのアルキルスルホン酸塩(例えば、C6-18アルキルスルホン酸塩);ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、デシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などのアルキル基で置換されていてもよいアリールスルホン酸塩(例えば、C6-18アルキル-アリールスルホン酸塩))、有機コバルト錯体等が挙げられる。錯体を構成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナート、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。
【0033】
キセノン化合物としては、例えば、XeF2、XeF4、XeF6、XeOF2,XeOF4,XeO2F4などのフッ化物、XeO3,XeO4などの酸化物、キセノン酸Xe(OH)6とその塩Ba3XeO6など,過キセノン酸H4XeO6とその塩Na4XeO6,金属カルボニルとの錯体M(CO)5Xe(M=Cr,Mo,W)、水和物などが挙げられる。
【0034】
クロム化合物としては、例えば、アセチルアセトンクロムなどのクロムアセチルアセトン錯体、クロム(III)イソプロポキシドなどのクロムアルコキシド、酢酸クロム(II)、二酢酸ヒドロキシクロム(III)などの有機酸クロム、トリス(アリル)クロム、トリス(メタリル)クロム、トリス(クロチル)クロム、ビス(シクロペンタジエニル)クロム(即ち、クロモセン)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)クロム(即ち、デカメチルクロモセン)、ビス(ベンゼン)クロム、ビス(エチルベンゼン)クロム、ビス(メシチレン)クロム、ビス(ペンタジエニル)クロム、ビス(2,4-ジメチルペンタジエニル)クロム、ビス(アリル)トリカルボニルクロム、(シクロペンタジエニル)(ペンタジエニル)クロム、テトラ(1-ノルボルニル)クロム、(トリメチレンメタン)テトラカルボニルクロム、ビス(ブタジエン)ジカルボニルクロム、(ブタジエン)テトラカルボニルクロム、及びビス(シクロオクタテトラエン)クロムなどの有機クロム化合物が挙げられる。
【0035】
タングステン化合物としては、例えば、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウムなどの無機タングステン化合物、エチルボリルエチリデン(ethylborylethylidene)配位子等のホウ素原子配位タングステン錯体;カルボニル配位子やシクロペンタジエニル配位子、アルキル基配位子、オレフィン系配位子等の炭素原子配位タングステン錯体;ピリジン配位子、アセトニトリル配位子等の窒素原子配位タングステン錯体;ホスフィン配位子、ホスファイト配位子等の配位したリン原子配位タングステン錯体;ジエチルカルバモジチオラト配位子等が配位した硫黄原子配位タングステン錯体などの有機タングステン化合物などが挙げられる。
【0036】
タリウム化合物としては、例えば、硝酸タリウム、硫酸タリウム、フッ化タリウム、塩化タリウム、臭化タリウム、ヨウ化タリウムなどの無機タリウム化合物、トリメチルタリウム、トリエチルタリウム、トリイソブチルタリウムなどのトリアルキルタリウム、ジアルキルタリウムハライド、アルケニルジアルキルタリウム、アルキニルジアルキルタリウム、トリフェニルタリウム、トリトリルタリウムなどのアリールタリウム、ジアリールタリウムハライド、2-エチルヘキサン酸タリウム、マロン酸タリウム、ギ酸タリウム、タリウムエトキシド、タリウムアセチルアセトナートなどの有機タリウム化合物が挙げられる。
【0037】
ジルコニウム化合物としては、例えば、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム、ヨウ化ジルコニウムなどの無機ジルコニウム化合物、ジルコニウムn-プロポキシド、ジルコニウムn-ブトキシド、ジルコニウムt-ブトキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニルアセテート、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、ジルコニウムトリフルオロアセチルアセトナートなどの有機ジルコニウム化合物などが挙げられる。
【0038】
銀化合物としては、例えば、酢酸銀、ピバル酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、安息香酸銀等の有機銀化合物;硝酸銀、フッ化銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、硫酸銀、酸化銀、硫化銀、テトラフルオロホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀(AgPF6)、ヘキサフルオロアンチモン酸銀(AgSbF6)等の無機銀化合物等が挙げられる。
【0039】
アルミニウム化合物としては、例えば、酸化アルミニウムなどの無機アルミニウム化合物、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、イソプロポキシアルミニウム、イソプロポキシジエトキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム等のアルコキシ化合物;トリアセトキシアルミニウム、トリステアラートアルミニウム、トリブチラートアルミニウム等のアシロオキシ化合物;アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec-ブチレート、アルミニウムtert-ブチレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n-プロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(iso-プロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n-ブチルアセトアセテート)アルミニウム、トリスサリチルアルデヒドアルミニウム、トリス(2-エトキシカルボニルフェノラート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルケニルジアルキルアルミニウム、アルキニルジアルキルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのアリールアルミニウム、ジアリールアルミニウムハライドなどの有機アルミニウム化合物などが挙げられる。
【0040】
バナジウム化合物としては、例えば、バナジン酸およびメタバナジン酸、ならびにこれらのアルカリ金属塩無機バナジウム化合物、トリエトキシバナジル、ペンタエトキシバナジウム、トリアミロキシバナジル、トリイソプロポキシバナジル等のアルコキシド;ビスアセチルアセトネートバナジル、バナジウムアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムオキシアセチルアセトネート等のアセトネート;ステアリン酸バナジウム、ピバリン酸バナジウム、酢酸バナジウム等の有機バナジウム化合物が挙げられる。
【0041】
ニオブ化合物としては、例えば、五塩化ニオブ、五フッ化ニオブなどのハロゲン化物、硫酸ニオブ、ニオブ酸、ニオブ酸塩などの無機ニオブ化合物、ニオブアルコキシドなどの有機ニオブ化合物などが挙げられる。
【0042】
タンタル化合物としては、例えば、TaCl5、TaF5などの無機タンタル化合物、Ta(OC2H5)5、Ta(OCH3)5、Ta(OC3H7)5 、Ta(OC4H9)5 、(C5H5)2TaH3、Ta(N(CH3)2)5などの有機タンタル化合物などが挙げられる。
【0043】
モリブデン化合物としては、例えば、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、ケイモリブデン酸、二硫化モリブデン、二セレン化モリブデン、二テルル化モリブデン、ホウ化モリブデン、二ケイ化モリブデン、窒化モリブデン、炭化モリブデン等の無機モリブデン化合物、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン等の有機モリブデン化合物が挙げられる。
【0044】
マンガン化合物としては、例えば、マンガンの水酸化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩化物及び炭酸塩などの無機マンガン化合物、シュウ酸マンガン、アセチルアセトネート化合物、あるいはメトキシド、エトキシド、ブトキシド等のマンガンアルコキシドを含む有機マンガン化合物が挙げられる。
【0045】
銅化合物としては、例えば、シュウ酸銅、ステアリン酸銅、ギ酸銅、酒石酸銅、オレイン酸銅、酢酸銅、グルコン酸銅、サリチル酸銅などの有機銅化合物、炭酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、リン酸銅、ハイドロタルサイト、スチヒタイト、パイロライト等の天然鉱物などの無機銅化合物が挙げられる。
【0046】
カドミウム化合物としては、例えば、フッ化カドミウム、塩化カドミウム、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウム、酸化カドミウム、炭酸カドミウムなどの無機カドミウム化合物、フタル酸カドミウム、ナフタル酸カドミウムなどの有機カドミウム化合物が挙げられる。
【0047】
水銀化合物としては、例えば、塩化第二水銀、硫酸水銀、硝酸第二水銀などの無機水銀化合物、メチル水銀、塩化メチル水銀、エチル水銀、塩化エチル水銀、酢酸フェニル水銀、チメロサール、パラクロロ安息香酸水銀、フルオレセイン酢酸水銀などの有機水銀化合物が挙げられる。
【0048】
ガリウム化合物としては、例えば、テトラフェニルガリウム、テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガリウム等の有機ガリウム化合物、オキソ酸ガリウム、ハロゲン化ガリウム、水酸化ガリウム、シアン化ガリウムなどの無機ガリウム化合物が挙げられる。
【0049】
インジウム化合物としては、例えば、トリエトキシインジウム、2-エチルヘキサン酸インジウム、インジウムアセチルアセトナートなどの有機インジウム化合物、シアン化インジウム、硝酸インジウム、硫酸インジウム、炭酸インジウム、フッ化インジウム、塩化インジウム、臭化インジウム、ヨウ化インジウムなどの無機インジウム化合物が挙げられる。
【0050】
ヒ素化合物としては、例えば、三酸化二ヒ素、五酸化二ヒ素、三塩化ヒ素、五塩化ヒ素、亜ヒ酸、ヒ酸、及びそれらの塩として、亜ヒ酸ナトリウム、亜ヒ酸アンモニウム、亜ヒ酸カリウム、ヒ酸アンモニウム、ヒ酸カリウムなどの無機ヒ素化合物、カコジル酸、フェニルアルソン酸、ジフェニルアルソン酸、p-ヒドロキシフェニルアルソン酸、p-アミノフェニルアルソン酸、及びそれらの塩として、カコジル酸ナトリウム、カコジル酸カリウム等の有機ヒ素化合物が挙げられる。
【0051】
アンチモン化合物としては、例えば、酸化アンチモン、燐酸アンチモン、KSb(OH)、NH4SbF6などの無機アンチモン化合物、有機酸とのアンチモンエステル、環状アルキル亜アンチモン酸エステル、トリフェニルアンチモンなどの有機アンチモン化合物が挙げられる。
【0052】
ビスマス化合物としては、例えば、トリフェニルビスマス、2-エチルヘキサン酸ビスマス、ビスマスアセチルアセトナートなどの有機ビスマス化合物、硝酸ビスマス、硫酸ビスマス、酢酸ビスマス、水酸化ビスマス、フッ化ビスマス、塩化ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマスなどの無機ビスマス化合物が挙げられる。
【0053】
セレン化合物としては、例えば、セレノメチオニン、セレノシステイン、セレノシスチン等の有機セレン化合物、セレン酸カリウム等のアルカリ金属セレン酸塩、亜セレン酸ナトリウム等のアルカリ金属亜セレン酸塩を含む無機セレン化合物が挙げられる。
【0054】
テルル化合物としては、例えば、テルル酸及びその塩、酸化テルル、塩化テルル、臭化テルル、ヨウ化テルル及びテルルアルコキシドが挙げられる。
【0055】
マグネシウム化合物としては、例えばエチルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(アセチルアセトナート)などの有機マグネシウム化合物、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどの無機マグネシウム化合物が挙げられる。
【0056】
カルシウム化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸カルシウム、カルシウムエトキシド、カルシウムメトキシド、カルシウムメトキシエトキシド、カルシウムアセチルアセトナートなどの有機カルシウム化合物、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、シアン化カルシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウムなどの無機カルシウム化合物が挙げられる。
【0057】
異原子がLi、Na、K、Cs、S、Sr、Ba、F、Y、ランタノイドの異原子化合物は、公知の有機又は無機の化合物が使用できる。
【0058】
異原子化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
少なくとも1種の爆薬と少なくとも1種の異原子化合物を含む爆薬組成物中の爆薬の割合は、好ましくは80~99.9999質量%、より好ましくは85~99.999質量%、さらに好ましくは90~99.99質量%、特に好ましくは95~99.9質量%であり、異原子化合物の割合は、好ましくは0.0001~20質量%、より好ましくは0.001~15質量%であり、さらに好ましくは0.01~10質量%であり、特に好ましくは0.1~5質量%である。また、爆薬と異原子化合物を含む爆薬組成物中の異原子含量は、好ましくは0.000005~10質量%、より好ましくは0.00001~8質量%、さらに好ましくは0.0001~5質量%、特に好ましくは0.001~3質量%、最も好ましくは0.01~1質量%である。
【0060】
少なくとも1種の爆薬と少なくとも1種の異原子化合物の混合は、両者が固体の場合には粉体混合してもよく、溶融してもよく、適当な溶媒に溶解ないし分散させて混合してもよい。混合は、撹拌、ビーズミリング、超音波などにより行うことができる。
【0061】
好ましい1つの実施形態において、少なくとも1種の爆薬と少なくとも1種の異原子化合物を含む爆薬組成物は、さらに少なくとも1種の冷却媒体を含む。冷却媒体は、固体、液体、気体のいずれであってもよい。冷却媒体を使用する方法として、爆薬と異原子化合物を含む爆薬組成物を冷却媒体中で起爆する方法が挙げられる。冷却媒体としては、不活性ガス(窒素、アルゴン、CO)、水、氷、液体窒素、異原子含有塩の水溶液、結晶水和物などが挙げられる。異原子含有塩としては、異原子がケイ素の場合、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、ケイ酸アンモニウム、ケイ酸テトラメチルアンモニウムなどが挙げられる。冷却媒体は、例えば水や氷の場合、爆薬重量に対して5倍程度使用することが好ましい。
【0062】
本発明の1つの好ましい実施形態において、少なくとも1種の爆薬と少なくとも1種の異原子化合物を含む爆薬組成物は、爆薬の爆発によって生成された高圧高温条件下での衝撃波による圧縮によって異原子ドープナノダイヤモンドに変換される(爆轟法)。爆薬の爆発の際に、ダイヤモンド格子に少なくとも1種の異原子が組み込まれる。異原子ドープナノダイヤモンドの炭素源は、爆薬と有機異原子化合物であり得るが、爆薬と少なくとも1種の異原子化合物を含む爆薬組成物が異原子を含まない炭素材料をさらに含む場合、この炭素材料も異原子ドープナノダイヤモンドの炭素源となり得る。
【0063】
本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドは、異原子V(vacancy)センターを含み、それにより蛍光発光ピークを有する。蛍光発光ピークの波長は、異原子がケイ素を含む場合、好ましくは720~770 nm、より好ましくは730~760 nmであり、異原子がゲルマニウムを含む場合、好ましくは580~630 nm、より好ましくは590~620 nmであり、異原子がスズを含む場合、好ましくは590~650 nm、より好ましくは600~640 nmである。本発明のより好ましい1つの実施形態において、第14族元素がSiのナノダイヤモンドの蛍光発光ピークは、ZPL(Zero Phonon Level)と言われる約738nmの鋭いピークを含む 。
【0064】
本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドにおける異原子Vセンターの濃度は、好ましくは1×1010/cm3以上であり、より好ましくは2×1010~1×1019/cm3である。異原子Vセンターの濃度は、例えば共焦点レーザー顕微鏡、または蛍光吸光分光装置を利用することで特定できると推定される。なお、蛍光吸光分析による異原子Vセンターの濃度の決定は、文献(DOI 10.1002/pssa.201532174)を参照できる。
【0065】
本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドのBET比表面積は、好ましくは20~900 m2/g、より好ましくは25~800 m2/g、さらに好ましくは30~700 m2/g、特に好ましくは35~600 m2/gである。BET比表面積は、窒素吸着により測定することができる。BET比表面積の測定装置は、例えばBELSORP-miniII(マイクロトラック・ベル株式会社製)を挙げることができ、BET比表面積は、例えば以下の条件で測定することができる。
・測定粉末量:40mg
・予備乾燥:120℃、真空で3時間処理
・測定温度:-196℃(液体窒素温度)
本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドの一次粒子の平均サイズは、好ましくは2~70 nm、より好ましくは2.5~60 nm、さらに好ましくは3~55 nm、特に好ましくは3.5~50 nmである。一次粒子の平均サイズは、粉末X線回折法(XRD) の分析結果から、シェラーの式により求めることができる。XRDの測定装置は、例えば全自動多目的X線回折装置(株式会社リガク製)を挙げることができる。
【0066】
本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドの炭素含有量は、好ましくは70~99質量%、より好ましくは75~98質量%、さらに好ましくは80~97質量%である。
【0067】
本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドの水素含有量は、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~4.5質量%、さらに好ましくは0.3~4.0質量%である。
【0068】
本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドの窒素含有量は、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~4.5質量%、さらに好ましくは0.3~4.0質量%である。
【0069】
異原子ドープナノダイヤモンドの炭素、水素、窒素の含有量は、元素分析により測定することができる。
【0070】
本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドの異原子含有量は、好ましくは0.0001~10.0質量%、より好ましくは0.0001~5.0質量%、さらに好ましくは0.0001~1.0質量%である。異原子含有量は、例えば誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES、XRF、SIMS(二次イオン質量分析)により測定することができ、異原子ドープナノダイヤモンドはアルカリ融解後、酸性溶液として定量することができる。
【0071】
本発明の好ましい1つの実施形態において、本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドは、ラマン分光法により、ラマンシフトのチャートにおいてダイヤモンド、グラファイト、表面ヒドロキシ基(OH)、表面カルボニル基(CO)に特徴的なピークを特定できる。ラマンシフトチャートにおけるダイヤモンドに特徴的なピークは1100~1400 cm-1であり、グラファイトに特徴的なピークは1450~1700cm-1であり、表面ヒドロキシ基(OH) に特徴的なピークは1500~1750cm-1であり、表面カルボニル基(CO) に特徴的なピークは1650~1800cm-1である。ダイヤモンド、グラファイト、表面ヒドロキシ基(OH)、表面カルボニル基(CO)に特徴的なピークの面積は、ラマン分光装置により示される。ラマン光源のレーザー波長は、例えば325nm又は488nmである。ラマン分光装置としては、共焦点顕微ラマン分光装置(例えば、商品名:顕微レーザーラマン分光光度計LabRAM HR Evolution、堀場製作所株式会社製)を使用することができる。
【0072】
本発明の好ましい1つの実施形態において、本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドにおいて、ダイヤモンドのピーク面積(D)とグラファイトのピーク面積(G)の比(D/G)は、好ましくは0.2~9、より好ましくは0.3~8、さらに好ましくは0.5~7である。
【0073】
本発明の好ましい1つの実施形態において、本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドの表面ヒドロキシ基(OH)のピーク面積(H)とダイヤモンドのピーク面積(D)の比(H/D)は、好ましくは0.1~5、より好ましくは0.1~4.0、さらに好ましくは0.1~3.0である。
【0074】
本発明の好ましい1つの実施形態において、本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドの表面カルボニル基(CO)のピーク面積(C)とダイヤモンドのピーク面積(D)の比(C/D)は、好ましくは0.01~1.5、より好ましくは0.03~1.2、さらに好ましくは0.05~1.0である。
【0075】
ナノダイヤモンドのラマン分析手法として、文献(例えば、Vadym N. Mochalin et. al, NATURE NANOTECHNOLOGY, 7(2012)11-23、特にFigure 3)を参照することができる。
【0076】
本発明の他の1つの好ましい実施形態において、本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドの表面に少なくとも1種の酸素官能基終端及び/又は少なくとも1種の水素終端を有していてもよい。酸素官能基末端としては、OH、COOH、CONH2、C=O、CHOなどが挙げられ、OH、C=O、COOHが好ましい。水素終端としては、炭素数1~20のアルキル基が挙げられる。
【0077】
異原子ドープナノダイヤモンドの表面に少なくとも1種の酸素官能基終端が存在することで、ナノダイヤモンド粒子の凝集が抑制されるので好ましい。異原子ドープナノダイヤモンドの表面に少なくとも1種の水素終端が存在することで、ゼータ電位がプラスになり、酸性水溶液中で安定的かつ高分散するので好ましい。
【0078】
本発明の他の1つの好ましい実施形態において、本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドはコアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造の異原子ドープナノダイヤモンドのコアは異原子がドープされたナノダイヤモンド粒子である。このコアは、SiVセンターを有し、蛍光を発するものであることが好ましい。シェルは非ダイヤモンド被覆層であり、sp2炭素を含んでいてもよく、さらに酸素原子を含有することが好ましい。シェルはグラファイト層であってもよい。シェルの厚さは、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下、さらに好ましくは1nm以下である。シェルは表面に親水性官能基を有していてもよい。
【0079】
異原子ドープナノダイヤモンドは、好ましくは本発明の爆薬組成物を用いて爆轟法で製造することができる。異原子ドープナノダイヤモンドの形状は、好ましくは球状、楕円体状或いはそれらに近い多面体状である。
【0080】
本明細書において、円形度とは、画像などに描画されている図形の複雑さを表すための数値のことである。円形度は、最大値を1として、図形が複雑であればあるほど数値が小さくなっていく。円形度は、例えばケイ素ドープナノダイヤモンドのTEM画像を画像解析ソフト(例えば、winROOF)で解析し、下記式により求めることができる。
円形度=4π×(面積)÷(周囲長)^2
例えば、半径10の真円の場合、「4π×(10×10×π)÷(10×2×π)^2」の計算式になり、円形度は1(最大値)という結果になる。つまり、円形度において真円は、最も複雑ではない図形ということになる。本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドの円形度は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.35以上である。
【0081】
本発明の好ましい1つの実施形態において、本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンド粒子の中心は、sp3炭素とドープされた異原子を含むダイヤモンド構造を有し、その表面は、sp2炭素で構成されるアモルファス層で覆われている。さらに好ましい実施形態において、アモルファス層の外側は酸化グラファイト層で覆われていてもよい。また、アモルファス層と酸化グラファイト層の間には水和層が形成されていてもよい。
【0082】
本発明の好ましい1つの実施形態において、本発明の爆薬組成物を用いて製造される異原子ドープナノダイヤモンドは、プラス又はマイナスのゼータ電位を有する。異原子ドープナノダイヤモンドのゼータ電位は、好ましくは-70~70mV、より好ましくは-60~30mVである。
【0083】
異原子ドープナノダイヤモンドは、少なくとも1種の爆薬と少なくとも1種の異原子化合物を含む爆薬組成物を混合する工程、得られた爆薬組成物を密閉容器内で爆発させる工程を含む製造方法により製造される。容器としては、金属製容器、合成樹脂製容器が挙げられる。爆薬と異原子化合物は、圧搾法(pressing)、注填法(casting)によって成形することが好ましい。爆薬と異原子化合物の粒子(乾燥粉体)を作るための方法として、晶析法、破砕法、スプレーフラッシュ法(spray flash evaporation)が挙げられる。爆薬組成物を圧搾法もしくは注填法により成形する場合、爆薬と異原子化合物を乾燥粉もしくは溶融状態もしくは溶媒を用いて混合する。爆薬と異原子化合物の混合時の状態は、以下の4つのいずれの組み合わせであってもよい:
・爆薬(乾燥粉)と異原子化合物(乾燥粉)
・爆薬(乾燥粉)と異原子化合物(溶融状態)
・爆薬(溶融状態)と異原子化合物(乾燥粉)
・爆薬(溶融状態)と異原子化合物(溶融状態)
爆薬と異原子化合物の混合は、溶媒の存在下或いは非存在下のいずれであってもよく、混合後に圧搾法もしくは注填法により成形することができる。
【0084】
爆薬と異原子化合物の平均粒子径は、各々好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。なお、これらの平均粒子径は、レーザ回折・散乱法、光学顕微鏡、ラマン法により測定することができる。爆発により得られた生成物は、さらに精製工程、ポスト処理工程に供することができる。精製工程は、混酸処理、アルカリ処理の一方又は両方を含むことができる。好ましい精製工程は混酸処理工程である。
【0085】
少なくとも1種の爆薬と少なくとも1種の異原子化合物を含む爆薬組成物を密閉容器内で爆発させると、異原子ドープナノダイヤモンドの他に、グラファイト、金属不純物、異原子単体、異原子酸化物などが生成する。グラファイトと金属不純物は混酸処理で除去することができ、異原子単体と異原子酸化物はアルカリ処理で除去することができる。
【0086】
混酸は、濃硫酸と濃硝酸の混酸を挙げることができ、好ましくは濃硫酸:濃硝酸=1:1(体積比)の混酸を挙げることができる。混酸処理の温度は50~200℃であり、混酸処理の時間は0.5~24時間である。
【0087】
アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を挙げることができる。アルカリ処理の温度は30~150℃であり、アルカリ処理の時間は0.5~24時間である。
【0088】
ポスト処理工程は、アニーリング、気相酸化を含むことができる。アニーリング処理により、異原子ドープナノダイヤモンド中のドープされた異原子と欠陥(Vacancy)が出会い、異原子Vセンターを形成することができる。また、気相酸化により異原子ドープナノダイヤモンドの表面に形成されたグラファイト層を薄くするか、或いは除去することができる。任意の工程であるが、アニーリングの前に空孔形成工程を行ってもよい。空孔形成工程は、イオンビーム又は電子ビームの照射により行う。空孔形成工程を行わなくてもアニーリングにより異原子Vセンターは形成されるが、空孔形成工程の後のアニーリングを行うことでより多くの異原子Vセンターが形成され得る。イオンビーム照射又は電子ビーム照射により導入する空孔密度は、上限はダイヤモンドが破壊されてしまう濃度(>1×1021/cm3の空孔濃度)により限定されるが、下限に関しては例えば1×1016/cm3以上、さらに1×1018/cm3以上である。イオンビームは、好ましくは水素(H)又はヘリウム(He)のイオンビームである。例えば、水素のイオンビームのエネルギーは、好ましくは10~1500 keVであり、ヘリウムのイオンビームのエネルギーは、好ましくは20~2000 keVである。電子線のエネルギーは、好ましくは500~5000 keVである。
【0089】
アニーリングの温度は、好ましくは800℃以上であり、アニーリング時間は30分以上である。
【0090】
気相酸化は、大気雰囲気下で行うことができ、気相酸化温度は、好ましくは300℃以上であり、気相酸化時間は2時間以上である。
【0091】
本発明の1つの好ましい実施形態において、少なくとも1種の爆薬と少なくとも1種の異原子化合物を含む爆薬組成物は、爆薬の爆発によって生成された高圧高温条件下での衝撃波による圧縮によってダイヤモンドに変換される(爆轟法)。爆薬の爆発の際に、ダイヤモンド格子に異原子が組み込まれる。ナノダイヤモンドの炭素源は、爆薬と有機異原子化合物であり得るが、爆薬と異原子化合物を含む爆薬組成物が異原子を含まない炭素材料をさらに含む場合、この炭素材料も異原子ドープナノダイヤモンドの炭素源となり得る。
【実施例0092】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1~6
爆薬としてTNTを用い、異原子がケイ素である化合物として表1に示すドーパントをTNT1モルに対し表1に示すモル数で用い、表1に示す温度(K)及び圧力(GPa)の条件で、常法に従い爆ごう法によるケイ素ドープナノダイヤモンドの製造を行うと、表1に示す割合でケイ素がドープされたナノダイヤモンドを得ることができる。
【0093】
ケイ素をドープさせるために用いたドーパント分子(異原子化合物)1~6の名称と構造式を以下に示す。
ドーパント分子1:シリン(silline)
ドーパント分子2:テトラメチルシラン(SiMe4)
ドーパント分子3:テトラキス(ニトレートメチル)シラン(SiPETN)
ドーパント分子4:テトラキス(ジメチルシラノリル)シラン(Si(SiMe2OH)4)
ドーパント分子5:テトラキス(トリメチルシリル)シラン(Si(SiMe3)4)
ドーパント分子6:テトラキス(トリメチルシリル)メタン(C(SiMe3)4)
【0094】
【0095】
【0096】
表1から明らかなように、本発明によればケイ素原子を多量に導入したナノダイヤモンドが得られることが明らかである。
【0097】
実施例7
トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトラミン(RDX)を含む爆薬100質量部に、ケイ素化合物としてトリフェニルシラノールを各々10質量部、1質量部又は0.1質量部添加した爆薬組成物約60gを使用し、ナノダイヤモンド製造の常法に従い、ケイ素ドープナノダイヤモンドを製造した。得られたケイ素ドープナノダイヤモンドについて、以下の処理を行った。なお、爆薬中のトリフェニルシラノールの添加量は、10質量%、1質量%又は0.1質量%であった。
(i)混酸処理
濃硫酸:濃硝酸=11:1(重量比)の混酸2800gに爆轟試験で得たナノダイヤモンド15gを加え、撹拌しながら150℃で10時間処理した。
(ii)アルカリ処理
8Nの水酸化ナトリウム水溶液100mLに混酸処理したナノダイヤモンド1gを加え、撹拌しながら100℃で10時間処理した。
(iii)アニーリング
アルカリ処理後のナノダイヤモンドを真空雰囲気下、800℃で30分間アニーリングした。
(iv)気相酸化
アニーリングしたナノダイヤモンドを大気雰囲気下、300℃、2時間気相酸化処理することで、本発明のケイ素ドープナノダイヤモンドを得た。
(v)蛍光分析
気相酸化で得られた本発明のケイ素ドープナノダイヤモンドの10w/v%の水懸濁液をガラス基板上に滴下し、乾燥させて評価サンプルを作製した。得られた評価サンプルを顕微ラマン分光装置(商品名:顕微レーザーラマン分光光度計 LabRAM HR Evolution、堀場製作所株式会社製)を用いて高速マッピングを行い、738nm輝点イメージングを行った。ケイ素化合物としてトリフェニルシラノールを用い、添加量が外割で1質量%で得られたケイ素ドープナノダイヤモンドの738nm輝点イメージング像を
図1(a)に示す。
図1(a)の輝点の蛍光スペクトルを
図1(b)に示す。SiVセンターのゼロフォノンライン(蛍光ピーク)が確認できる。得られたケイ素ドープナノダイヤモンドのSi含有量は、爆薬中のトリフェニルシラノールの添加量が10質量%のときに3.2質量%、1質量%のときに0.15質量%、0.1質量%のときに0.03質量%であった。
図1(b)より、本発明のケイ素ドープナノダイヤモンドがSVセンターに由来する738nmの蛍光を有することが確認された。さらに、得られたケイ素ドープナノダイヤモンドのXRDにより測定した一次粒子の平均サイズ、BET比表面積を以下の表2に示す。
【0098】
【0099】
・BET比表面積の測定
装置:BELSORP-miniII(マイクロトラック・ベル株式会社製)
測定粉末量:40mg
予備乾燥:120℃、真空で3時間処理
測定温度:-196℃(液体窒素温度)
・一次粒子の平均サイズの測定(粉末X線回折法(XRD))
装置:全自動多目的X線回折装置(株式会社リガク製)
・Si導入量の測定法(XRF)
装置:蛍光X線分析装置 ZSX Primus IV 株式会社リガク製
【0100】
実施例8
実施例7のトリフェニルシラノール1質量部に代えてフェニルボロン酸1質量部を使用した以外は実施例7と同様にして、ホウ素がドープされたナノダイヤモンドが得られる。
【0101】
実施例9
実施例7のトリフェニルシラノール1質量部に代えてトリフェニルホスフィン1質量部を使用した以外は実施例7と同様にして、リンがドープされたナノダイヤモンドが得られる。
【0102】
実施例10
実施例7のトリフェニルシラノール1質量部に代えてニッケルビス(アセチルアセトナート)1質量部を使用した以外は実施例7と同様にして、ニッケルがドープされたナノダイヤモンドが得られる。
【0103】
実施例11
実施例7のトリフェニルシラノール1質量部に代えてトリフェニルシラノール0.5質量部とフェニルボロン酸0.5質量部を使用した以外は実施例7と同様にして、ケイ素とホウ素がドープされたナノダイヤモンドが得られる。
【0104】
実施例12
実施例7のトリフェニルシラノール1質量部に代えてトリフェニルシラノール0.5質量部とトリフェニルホスフィン0.5質量部を使用した以外は実施例7と同様にして、ケイ素とリンがドープされたナノダイヤモンドが得られる。