(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139077
(43)【公開日】2025-09-26
(54)【発明の名称】インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/322 20140101AFI20250918BHJP
C09D 11/38 20140101ALI20250918BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250918BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20250918BHJP
【FI】
C09D11/322
C09D11/38
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037815
(22)【出願日】2024-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 准平
(72)【発明者】
【氏名】石井 竜
(72)【発明者】
【氏名】武田 径明
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056KB16
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA12
2H186FB11
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB55
4J039BB01
4J039BE12
4J039BE19
4J039BE22
4J039BE23
4J039BE28
4J039BE30
4J039BE32
4J039EA36
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】
機械安定性に優れ、かつ、耐擦過性に優れた印刷物の提供を可能とする、インクジェット用インク組成物の提供。
【解決手段】
顔料、モンタンワックス及び水を含む、インク循環機構を備える記録ヘッド用インク組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、モンタンワックス及び水を含む、インク循環機構を備える記録ヘッド用インク組成物。
【請求項2】
上記インク組成物中における上記モンタンワックスの含有率が、0.1質量%以上、かつ、5質量%以下である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインク組成物により記録された記録媒体。
【請求項4】
請求項1または2に記載のインク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させるインク組成物付着工程、を備えたインクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ記録装置による印刷は、ノズルよりインクを噴射し被記録材に付着せしめる方式であり、従来の印刷方法と異なり版を使用しない印刷方式であることから、少量多品種に対応できるオンデマンド印刷方式として広範囲にわたる利用分野が期待されている印刷方式である。近年ではパーソナル、オフィス用途から、産業用印刷の分野へと広がりつつあり、特に段ボールや紙器、ラベル、包装フィルムといったパッケージ用途の分野において、付加価値向上の観点から、高品質なデザインを再現することが可能なインクジェット印刷方式に対する関心が高まっている。このようなパッケージ用途においては、実使用に耐えられる特性を有する印刷物の形成が要求されることになり、インクに優れた耐擦過性が求められる。
一般的に、インクに耐擦過性を持たせるために、さまざまな樹脂が添加されており、樹脂の添加量が多くなるほど、耐擦過性が向上することが知られている。しかし、樹脂の添加量が多くなることによって、インクが乾燥しやすくなってしまうため、ヘッドノズル面でのインク固着等が発生しやすくなり、吐出信頼性が低下してしまうという問題がある。
一方で、近年ノズル付近までインクを循環させることによりノズル近傍でのインクの乾燥を防ぐ機構をもつ循環ヘッドが盛んに開発されている。
このようなインク循環機構を有する印刷装置においては、インクを長時間循環した際に装置内フィルタ通過時やポンプ送液時にかかるせん断力によって析出物が発生する場合があり、このような析出物が発生すると、ヘッド内フィルタの目詰まりが発生し、結果的にインクジェットヘッドのヘッドライフを短くする(例えば、吐出不良状態となる)ことになってしまうため、機械安定性に優れたインクが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、機械安定性に優れ、かつ、耐擦過性に優れた印刷物の提供を可能とする、インクジェット用インク組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、顔料、モンタンワックス及び水を含む、インク循環機構を備える記録ヘッド用インク組成物が上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は以下の1)~4)に関する。
1)
顔料、モンタンワックス及び水を含む、インク循環機構を備える記録ヘッド用インク組成物。
2)
上記インク組成物中における上記モンタンワックスの含有率が、0.1質量%以上、かつ、5質量%以下である、1)に記載のインク組成物。
3)
1)または2)に記載のインク組成物により記録された記録媒体。
4)
1)または2)に記載のインク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させるインク組成物付着工程、を備えたインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、機械安定性に優れ、かつ、耐擦過性に優れた印刷物の提供を可能とするインク組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書においては、特に断りの無い限り、実施例等を含めて「部」及び「%」は、いずれも質量基準で記載する。また、本明細書において、前記インク組成物を、「インク」と略記する場合がある。
【0009】
本発明のインク組成物は、インク循環機構を備える記録ヘッド用のインク組成物であり、顔料、モンタンワックス及び水を含む。
【0010】
[顔料]
上記インク組成物は顔料を含む。
上記顔料としては、無機顔料、有機顔料、体質顔料、中空粒子等が挙げられる。
【0011】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属フェロシアン化物、金属塩化物等が挙げられる。
本実施形態に係るインクが黒インクであり、且つ、顔料が無機顔料である場合、該黒インクが含有する無機顔料としては、サーマルブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、ランプブラック、ガスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの具体例としては、例えば、コロンビア・カーボン社製のRavenシリーズ;キャボット社製のMonarchシリーズ、Regalシリーズ、及びMogulシリーズ;オリオンエンジニアドカーボンズ社製のHiBlackシリーズ、ColorBlackシリーズ、Printexシリーズ、SpecialBlackシリーズ、及びNeroxシリーズ;三菱ケミカル(株)製のMAシリーズ、MCFシリーズ、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、及びNo.2300;等が挙げられる。
本実施形態に係るインクが白インクであり、且つ、顔料が無機顔料である場合、該白インクが含有する無機顔料としては、亜鉛、シリコン、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、ジルコニウム等の金属の酸化物、窒化物、又は酸化窒化物;ガラス、シリカ等の無機化合物;などが挙げられる。これらの中でも、二酸化チタン及び酸化亜鉛が好ましい。
【0012】
有機顔料としては、例えば、アゾ、ジスアゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、ジオキサジン、ペリレン、ペリノン、チオインジゴ、アンソラキノン、キノフタロン等の各種の顔料が挙げられる。
【0013】
有機顔料の具体例としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、24、55、73、74、75、83、93、94、95、97、98、108、114、128、129、138、139、150、151、154、155、180、185、193、199、202、213等のイエロー顔料;C.I.Pigment Red 5、7、12、48、48:1、57、88、112、122、123、146、149、150、166、168、177、178、179、184、185、202、206、207、254、255、257、260、264、269、272等のレッド顔料;C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、25、60、66、80等のブルー顔料;C.I.Pigment Violet 19、23、29、37、38、50等のバイオレット顔料;C.I.Pigment Orange 13、16、43、68、69、71、73等のオレンジ顔料;C.I.Pigment Green 7、36、54等のグリーン顔料;C.I.Pigment Black 1等のブラック顔料;などが挙げられる。これらの中でも、C.I.Pigment Blue 15:4が好ましい。
【0014】
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、ホワイトカーボン等が挙げられる。体質顔料は、他の着色剤と併用されることが多い。
【0015】
中空粒子としては、例えば、米国特許第4880465号明細書、特許第3562754号公報、特許第6026234号公報、特許第5459460号公報、特開2003-268694号公報、特許第4902216号公報等に記載されている公知の中空粒子を用いることができ、特に、白色顔料として用いることが好ましい。
【0016】
顔料の平均粒径は、30~300nmであることが好ましく、50~250nmであることがより好ましい。本明細書において平均粒径とは、レーザ光散乱法を用いて測定した粒子の平均粒径を指す。
【0017】
顔料の含有率は、本実施形態に係るインクの総質量に対して、1~30質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、2~8質量%であることがさらに好ましい。
【0018】
上記インクは、上記顔料以外のその他の染料をさらに含んでいても良い。
上記その他の染料としては、例えば、溶剤染料、直接染料、酸性染料、反応染料等が挙げられる。
【0019】
上記インクが、上記顔料を複数種含む場合、それぞれの顔料の配合比は、目的に応じ任意に設定可能である。また、上記顔料に加え、上記その他の染料を含む場合、上記顔料の総量と、上記その他の染料の総量との配合比も任意の割合で設定可能である。
【0020】
[モンタンワックス]
上記インクは、モンタンワックスを含む。
モンタンワックスとは、一般に、褐炭から抽出されるモンタン蝋から作られるワックスを指す。本発明のインクが含む「モンタンワックス」には、上記モンタンワックス、上記モンタンワックスをさらに酸化した後、エステル化することで得られる「モンタンエステルワックス」、上記モンタンワックスをさらに酸化した後、部分ケン化することで得られる「モンタンケン化ワックス」、上記モンタンワックスにエチレンオキサイド等の付加を行った「モンタン付加ワックス」、も含まれる。上記モンタンワックスは、ワックスエマルションであっても良く、上記インクが含むモンタンワックスとして、モンタンエステルワックスを含むことが好ましく、上記インクが、モンタンエステルワックスのみを含むことがより好ましい。
上記モンタンエステルワックスとしては、具体的には、クラリアントケミカルズ株式会社製のLicowax E、Licowax KPS、Licowax KSL、Licowax WE4、Licowax WE40等が挙げられ、ワックスエマルションとしてはビックケミー・ジャパン株式会社製のAQUACER541等が挙げられる。
【0021】
上記インク中における上記モンタンワックスの含有率は、0.1質量%以上、かつ、5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上、かつ、4質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以上、かつ、3質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以上、かつ、2質量%以下であることが特に好ましい。
【0022】
[水]
上記インク組成物は水を含む。
上記水としては、金属イオン等の不純物の含有量が少ない水、すなわち、イオン交換水、蒸留水等が好ましい。そのような水は、公知の方法により調製することができる。インク中に含まれる水の含有量は、55質量%~90質量%であることが好ましく、60質量%~85質量%であることがより好ましい。
【0023】
上記インクは、上記成分以外として、さらにインク調製剤を含んでいても良い。インク調製剤としては、例えば、高分子分散剤、樹脂エマルション、有機溶剤、粘度調整剤、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、キレート剤、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤等が挙げられる。
【0024】
上記高分子分散剤としては、上記顔料を分散しうる重量平均分子量2,500以上の高分子であり、上記モンタンワックス以外のものであれば、特に限定は無い。本願明細書において、前記高分子分散剤を、分散剤と略記する場合がある。
上記高分子分散剤としては、公知の高分子分散剤を使用することができる。高分子分散剤としては、上記モンタンワックス以外であり、例えば、スチレン及びその誘導体;ビニルナフタレン及びその誘導体;α,β-エチレン性不飽和性カルボン酸の脂肪族アルコールエステル;(メタ)アクリル酸及びその誘導体;マイレン酸及びその誘導体;イタコン酸及びその誘導体;ファール酸及びその誘導体;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びそれらの誘導体;等のモノマーから選択される少なくとも2種類のモノマー(好ましくは、このうち少なくとも1種類が親水性のモノマー)から構成される共重合体が挙げられる。そのような共重合体としては、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらの中でも、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及び(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体がより好ましく、メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体がさらに好ましい。共重合体の種類としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、塩の形態であってもよい。
【0025】
分散剤は、市販品として入手することも合成することもできる。
【0026】
市販品として入手可能な分散剤としては、例えば、Joncyrl 62、67、68、678、687(BASF社製のスチレン-アクリル系共重合体);モビニールS-100A(ジャパンコーティングレジン(株)製の変性酢酸ビニル共重合体);ジュリマーAT-210(東亜合成(株)製のポリアクリル酸エステル共重合体);等が挙げられる。
【0027】
合成により得られる分散剤としては、例えば、国際公開第2013/115071号に開示されたA-Bブロックポリマーが挙げられる。国際公開第2013/115071号に開示されたA-BブロックポリマーのAブロックを構成するモノマーは、(メタ)アクリル酸、及び直鎖状又は分岐鎖状のC4アルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種類のモノマーであり、メタクリル酸及びn-ブチルメタクリレートから選択される少なくとも1種類のモノマーが好ましく、これら2種類のモノマーを併用するのがより好ましい。また、国際公開第2013/115071号に開示されたA-BブロックポリマーのBブロックを構成するモノマーは、ベンジルメタクリレート及びベンジルアクリレートから選択される少なくとも1種類のモノマーであり、ベンジルメタクリレートが好ましい。A-Bブロックポリマーの具体例としては、国際公開第2013/115071号の合成例3~8に開示されたブロック共重合体が挙げられる。
【0028】
分散剤の酸価は、通常90~200mgKOH/gであり、好ましくは100~150mgKOH/g、より好ましくは100~120mgKOH/gである。
【0029】
分散剤を水に均一に分散させるため、中和剤を使用してもよい。中和剤としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、脂肪族アミン化合物、アルカノールアミン化合物等が挙げられる。これらの中でも、アンモニア及びアルカリ金属の水酸化物が好ましく、アンモニアがより好ましい。中和剤の使用量の目安としては、分散剤の酸価の理論等量で中和したときを100%中和度として、通常30~300%中和度であり、好ましくは50~200%中和度である。
【0030】
分散剤の質量平均分子量は、通常10000~60000であり、好ましくは10000~40000、より好ましくは15000~30000、さらに好ましくは20000~25000である。分散剤の質量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ法(GPC法)により測定することができる。具体的には、GPC装置としてHLC-8320GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSK gel Super MultIpore HZ-H(東ソー(株)製、内径4.6mm×15cm)を2本用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、標準試料としてTSK Standard(東ソー(株)製)を用いて測定することができる。
【0031】
分散剤のPDI(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.29~1.49程度であることが好ましい。上記のような範囲とすることにより、インクの分散性及び保存安定性が良好になる傾向にある。
【0032】
分散剤は、着色剤と混合した状態で使用することができる。また、着色剤の表面の一部又は全部を分散剤で被覆した状態で使用することもできる。あるいは、これらの両方の状態を併用してもよい。
【0033】
上記インク中における、着色剤の総質量と分散剤の総質量との比は、着色剤の総質量をDy、分散剤の総質量をDs、とした場合、Dy/Dsで求められる値が、0.01~1.0であることが好ましく、より好ましくは0.05~0.6、さらに好ましくは0.1~0.5である。
【0034】
上記樹脂エマルションとしては、上記モンタンワックス、上記高分子分散剤、以外のものであれば、特に限定は無い。
上記樹脂エマルションとしては、例えば、酸価が10mgKOH/g未満の樹脂エマルションであることが好ましい。インク組成物中に酸価が10mgKOH/g未満の樹脂エマルションが含有されることにより、インク粘度を好適な範囲内に抑えることができ、粒状性が極めて少ない印刷画像を実現することができる。酸価が10mgKOH/gを超える樹脂エマルションは水分が蒸発した時のインク粘度上昇の度合いが大きいため、メディアへのインク着弾後にインクの濡れ広がりを抑制して、均一なベタ印刷品質を得られない。樹脂エマルションは、ポリマー及びワックスから選択される1種類以上を含むことが好ましい。
樹脂エマルションの調製方法は特に制限されない。その一例としては、樹脂を機械的に水性媒体中で微細化し、分散する方法;乳化重合、分散重合、懸濁重合などにより樹脂エマルションを調製する方法;等が挙げられる。乳化重合は、乳化剤を用いることも、ソープフリーで行うこともできる。前記樹脂エマルションの調製方法としては、例えば、特開2000-336292号公報の製造例1に公開された方法が挙げられる。樹脂エマルションの樹脂含有量としては好ましくは20~50%である。
樹脂エマルションとしては、例えば、ウレタン系、ポリエステル、アクリル系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、スチレン-アクリル系、アクリル-シリコン系、スチレン-ブタジエン系の各ポリマー又はそれを含有するエマルションが挙げられる。これらの中ではウレタン系、アクリル系、及びスチレン-ブタジエン系から選択される樹脂エマルションが好ましく、アクリル系樹脂エマルションがより好ましい。
市販品としては、例えば、ウレタン系ポリマーである三洋化成社製のユーコートUX-320(酸価:10)、大成ファインケミカル社製のWBR-016U(酸価:7)、WBR-2101(酸価:10)、ポリエステル系ポリマーである東洋紡社製のバイロナールMD-1480(酸価:3)、バイロナールMD-1985(酸価:2)、バイロナールMD-2000(酸価:2)、酢酸ビニル系ポリマーである日信化学工業社製のビニブラン715(酸価:8)、ビニブラン985(酸価:5)等が挙げられる。
【0035】
ワックスとしては、ワックスエマルションが好ましく、水系ワックスエマルションがより好ましい。ワックスとしては、天然ワックス及び合成ワックスを用いることができる。
天然ワックスとしては、石油系ワックスであるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等;植物系ワックスであるカルナバワックス、キャンデリアワックス等;動植物系ワックスである蜜蝋、ラノリン等のワックスを、水性媒体中に分散させたエマルション等が挙げられる。
【0036】
合成ワックスとしてはポリアルキレンワックス(好ましくはポリC2-C4アルキレンワックス)、酸化ポリアルキレンワックス(好ましくは酸化ポリC2-C4アルキレンワックス)、及びパラフィンワックスが挙げられる。前記のうち、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスから選択される1種類以上のワックスが好ましく、酸化ポリエチレンワックスがより好ましい。
また、ワックスの平均粒径は、インクジェットヘッドの目詰まりを防止するために30nm~5μmが好ましく、50nm~1μmがより好ましい。
【0037】
ワックスエマルションの市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のAQUACER 515、1547;東邦化学工業株式会社製のHYTEC Eシリーズ、例えば、E-6500、E-9015、E-6314等が挙げられる。
【0038】
上記インクが上記樹脂エマルションを含む場合、樹脂エマルションのインク組成物における含有量は、好ましくは0.2~10%であり、より好ましくは0.5~5%である。
【0039】
上記インクは、メディアへの浸透性やインクの粘度、乾燥性、消泡性などを調整するために、有機溶剤を含んでいてもよい。含有する有機溶剤は特に制限されないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド又はN,N-ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン又はN-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン又は1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素類;アセトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン、エチレンカーボネート等のケトン、ケトアルコール又はカーボネート;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール又はジチオジグリコール等のC2-C6アルキレン単位を有するオリゴ又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のC3-C9ポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル(好ましくはC3-C10のモノ、ジ若しくはトリエチレングリコールエーテル、及びC4-C13のモノ、ジ若しくはトリプロピレングリコールエーテルよりなる群から選択されるグリコールエーテル);1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等の、C3-C9アルカンジオール;γ-ブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等;等が挙げられる。
上記有機溶剤としては、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール等が好ましく、トリエチレングリコール、グリセリンがより好ましい。
【0040】
上記インクが上記有機溶剤を含む場合、上記インクの総量中における、上記有機溶剤の総量は、0.1~40%であることが好ましく、0.2~35%であることがより好ましく、1~30%であることがさらに好ましく、2~25%であることが特に好ましい。
【0041】
上記インクは、粘度調整剤を含んでいても良い。特に、産業用インクジェットプリンタは、搭載するプリンタヘッド(インクを吐出するヘッド)の仕様に基づき、通常は、吐出できるインクの粘度範囲が決まっている。このため、インクに粘度調整剤を加え、その粘度を適正な範囲に調整することができる。粘度調整剤としては、上記カルナバワックス、を除き、インクの粘度を調整できる物質であれば特に制限されず、公知の物質を使用することができる。その具体例としては、例えば、上記に上げた有機溶剤、高分子分散剤、樹脂エマルション等が挙げられる。
【0042】
上記インクは、界面活性剤を含んでいても良い。界面活性剤としては特に限定はないが、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、シリコン系、及びフッ素系の各界面活性剤が挙げられる。界面活性剤にはカチオン系およびノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0043】
アニオン系界面活性剤としては、アルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸又はその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0044】
カチオン界面活性剤としては、2-ビニルピリジン誘導体及びポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0045】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、炭素数4~18のポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル)、ポリオキシエチレン(ジ)スチレン化フェニルエーテル(例えば、花王株式会社製のエマルゲン A-60、A-90、A-500、青木油脂社製のDSP-9、DSP-12.5、TSP-7.5、KTSP-16、TSP-50)等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(あるいはアセチレンアルコール)系(例えば、エボニックジャパン株式会社のサーフィノール 420、440、465、485、オルフィン STG、E1004、E1040等);ポリグリコールエーテル系等が挙げられる。
【0046】
シリコン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。その一例としては、エアープロダクツ社製のダイノール 960、980;日信化学株式会社製のシルフェイス SAG001、SAG002、SAG003、SAG005、SAG503A、SAG008、SAG009、SAG010;及び、BYK Additives & Instruments社製のBYK-345、347、348、349、3450、3451、3455;EvonicTego Chemie社製のTEGO Twin 4000、TEGO Wet KL 245、250、260、265、270、280等が挙げられる。
【0047】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。市販品として入手できるものの具体例としては、例えば、Capstone FS-30、FS-31(Chemours社製)等が挙げられる。
【0048】
上記防腐剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、及び無機塩系等の化合物が挙げられる。防腐剤の市販品の具体例としては、アーチケミカル社製のプロクセル GXL(S)、及びXL-2(S)等が挙げられる。
【0049】
上記防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、及び1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン並びにこれらの塩等が挙げられる。
【0050】
上記pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びN-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム及び酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;並びにリン酸二ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0051】
上記インクのpHは、通常5~11、好ましくは6~9である。インクの表面張力は通常20~60mN/m、好ましくは25~50mN/mである。インクの粘度は通常2~30mPa・s、好ましくは3~15mPa・sである。インクのpH及び表面張力は、pH調整剤、界面活性剤、及び有機溶剤等を使用することにより調整できる。
【0052】
上記キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム、αシクロデキストリン、βシクロデキストリン及びγシクロデキストリン等が挙げられる。
【0053】
上記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、及びジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0054】
上記水溶性紫外線吸収剤の例としては、例えば、スルホ化されたベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、及びトリアジン系化合物が挙げられる。
【0055】
上記酸化防止剤の例としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。上記有機系の褪色防止剤の例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、クロロゲン酸、二酸化硫黄、カテキン類、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、及びブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0056】
上記消泡剤としては、サーフィノール104シリーズ(104A、104E、104H、104PA、104PG-50)、サーフィノールDF110D、サーフィノールAD01、サーフィノールMD-20等のアセチレン系消泡剤、サーフィノールDF-58、BYK-017、BYK-018、BYK-019、BYK-021、BYK-022、BYK-023、BYK-024、BYK-025、BYK-028、BYK-044、BYK-092、BYK-1610、BYK-1611、BYK-1615、BYK-1617、BYK-1650、BYK1679、BYK-1719、BYK-1723、BYK-1724、BYK-1730、BYK-1770、BYK-1781、BYK-1786、BYK-1789等のシリコン系消泡剤、BYK-035、BYK-037、BYK-038、BYK-1630等の鉱物油系消泡剤、ビスフォームCS、ビスフォームECC、ビスフォームTDI-1等の高級アルコール誘導体、ビスフォームTS-10等の脂肪酸誘導体等が挙げられる。消泡剤としては、アセチレン系消泡剤またはシリコン系消泡剤であることが好ましい。
【0057】
本願発明のインクは、インクにかかる圧力変動等に対する安定性(機械安定性)が良好でインクの循環安定性、吐出安定性に優れ、また、本願発明のインクで記録された画像は、耐擦過性、乾燥性、発色性、光沢性、粒状性、画質に優れる。
【0058】
上記インクは、各種の印刷において使用することができる。例えば、筆記具、各種の印刷、情報印刷、捺染等に好適であり、インクジェット印刷に用いることが特に好ましい。
【0059】
上記インクを調製する場合、公知の製造方法を使用することができる。その一例としては、例えば、顔料とモンタンワックスとから調製した水性の分散液に、水、及び必要に応じてインク調製剤を加えて混合することにより、インクを調製する方法が挙げられる。
【0060】
上記インクは、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【0061】
また、上記インクは、インクを精密濾過することが好ましい。精密濾過をするときは、メンブランフィルター及び/又はガラス濾紙等を用いることができる。精密濾過を行うときのフィルター等の孔径は通常0.5μm~20μm、好ましくは0.5μm~10μmである。
【0062】
上記インクを少なくとも含むインクセットも本願発明に含まれる。
上記インクセットとしては、例えば、上記インクを2種以上含むインクセット、上記インクを1種あるいは2種以上と、上記インク以外の他のインクを1種あるいは2種以上とを、含むインクセット等が挙げられる。上記インク以外の他のインクとは、上記インクと構成が異なるものであれば特に限定は無いが、上記インクと色相が異なることが好ましい。
【0063】
上記インク及び上記インクセットは、インクジェット方式の印刷で用いることが好ましい。
【0064】
<インクジェット記録方法>
インクジェット記録方法は、上記インク組成物の液滴を吐出して、記録媒体に付着させて画像を形成する工程を含む。画像を形成する工程は、インクジェット方式を用いて行うことができる。
上記インクを、インクジェットから吐出して、後述する記録媒体に付着させるインク組成物付着工程、を備えたインクジェット記録方法も本願発明に含まれる。
【0065】
インクジェット方式としては、公知の方式が使用できる。インクジェット方式の具体例としては、例えば、電荷制御方式、ドロップオンデマンド(圧力パルス)方式、音響インクジェット方式、及びサーマルインクジェット方式等が挙げられ、ドロップオンデマンド方式が好ましい。また、インクジェット方式には、インク中の顔料の含有量が少ないインクを小さい体積で多数射出して画質を改良する方式、実質的に同じ色相で、インク中の顔料の濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式、及び、無色透明のインクを用いることにより、顔料の定着性を向上させる方式等も含まれる。
【0066】
上記インク組成物は、インク循環機構を有するヘッド用である。インク循環機構を備えるインクジェットヘッドとは、例えば、複数の液滴吐出素子、前記複数の液滴吐出素子にそれぞれ供給路を介して連通する共通流路及び前記複数の液滴吐出素子に還流路を介して連通する前記共通循環路を有し、前記共通流路から前記複数の液滴吐出素子にインク組成物が供給され、前記共通循環路に循環するインク循環装置を備えるという機構を指す。インクの循環流速について特に制限はないが、10mL/min以上1000mL/min以下が好ましく、20mL/min以上500mL/min以下がより好ましい。産業用インクジェットプリンタの機構としてはインクジェットヘッドを並べて用いるラインヘッド型が知られており、循環機構として複数のインクジェットが並ぶため、好ましい範囲は単位インクジェットあたりの循環流量を指す。
循環機構を備えるインクジェットヘッドとしては富士フィルム社製のSambaGL3、キャノン社製のSシリーズ、京セラ社製のKJ4B-EX1200プリントヘッドなどが挙げられる。
【0067】
<記録媒体>
上記インクを用いて記録した記録媒体も本願発明に含まれる。記録媒体は、上記インク組成物が付着できる物質であれば特に制限されず、一例として、紙、フィルム、缶、皮革、布、繊維等が挙げられる。記録媒体はインクの浸透しないフィルムや缶などの非浸透性記録媒体と、インクの浸透する浸透性記録媒体に大別され、浸透性記録媒体がより好ましい。浸透性記録媒体としては、例えば、普通紙、インクジェット専用紙、アート紙、コート紙、マット紙、キャスト紙、ライナ紙等が挙げられる。
【0068】
<インク記録媒体セット>
インク記録媒体セットとは、本発明のインク組成物又はインクセットと、上記記録媒体とを含むセットである。
【0069】
上記した全ての事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ、より好ましいものとさらに好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
また、特に断りのない限り上記した全ての成分等は、そのうちの1種類を単独で使用することができるし、2種類以上を併用することもできる。
【実施例0070】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。実施例中で使用した「水」は、「イオン交換水」である。
【0071】
[調製例1]:分散液の調製。
国際公開第2013/115071号の合成例3に記載のブロック共重合体を調製し、得られたブロック共重合体(6部)をメチルエチルケトン20部に溶解させ、均一な溶液とした。この液に、水酸化ナトリウム(0.45部)を水(53.55部)に溶解させた混合液を加えた後、C.I.Pigment Blue 15:4(大日精化株式会社製、Chromofine blue 4851)20部を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行い、液を得た。得られた液に水(100部)を加えた後、この液をガラスろ紙GA-100を用いてろ過する事により、凝集物等を取り除き、ろ液を得た。得られたろ液を、エバポレーターを用いて、ろ液中のメチルエチルケトン、及び水の一部を減圧蒸留し、ろ液中の顔料含有量が12.0%となるようにすることで、シアン分散液を得た。得られた顔料分散液を「DP1」とする。
【0072】
[実施例1、及び比較例1]:インクの調製。
上記で得た分散液「DP1」を、下記表1に記載の各成分と混合してインクを得た後、3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、評価試験用の実施例1、及び比較用の比較例1の各インクを得た。表1中の各成分の欄の数値はその成分の使用量(部)を表し、「-」はその成分を使用していないことを意味する。
表1における略称は各々下記のとおりである。
DP1:調製例1で得た顔料分散液
グリセリン
トリエチレングリコール
SF440 (ノニオン系界面活性剤SF440:日信化学株式会社製)
AQUACER 541 (モンタンエステルワックスエマルション:ビックケミー・ジャパン社製、固形分量30%)
E-6700 (ポリエチレンワックスエマルション:東邦化学工業社製、固形分量35%)
【0073】
【0074】
[機械安定性の評価]
実施例1のインクについて、ダイヤフラムポンプ(KNF社製)、金属製フィルタ(濾過精度15μm)、及び圧力計を連結した循環経路を作成し、32℃の水浴中で5,000サイクル循環送液した。
また、上記の実施例1のインクを使用する代わりに、比較例1のインクを使用する以外は、上記と同様にして循環送液を行った。
循環初期から循環完了までの圧力推移を、以下の基準で評価し、評価結果を表1に示した。
下記基準において、評価B以上であることが、実用上望ましい。
[評価基準]
A:循環完了時の圧力値が循環初期値の+15kPa未満
B:循環完了時の圧力値が循環初期値の+15kPa以上+30kPa未満
C:循環完了時の圧力値が循環初期値の+30kPa以上+60kPa未満
D:循環完了時の圧力値が循環初期値の+60kPa以上
【0075】
【0076】
[耐擦過性評価]
実施例1のインクと、インクジェットプリンタを用いて、シングルパス(1パス)方式にてインクジェット印刷を行った。吐出したインクの液適量は12ピコリットル、ヘッド温度は32℃である。また、ヘッドとして京セラ600dpiヘッドを使用した。また、メディアとしては王子製紙株式会製のオフセットコート紙「OKトップコート+」を用いた。インクジェット印刷は、100%Dutyの画像となるように行い、印刷画像を得た。得られた画像を全乾させたのちに試験片として用いて、耐擦過性試験を行った。試験片の耐擦過性を、安田精機製作所製、No.428 学振形摩耗試験機(摩擦試験機II形)を用いて評価した。すなわち、試験片に500gの荷重を掛けた状態で、インクジェット記録した部分を10回擦り合わせ、画像の劣化具合を下記4段階の評価基準で評価した。下記基準において、評価Aであることが、実用上望ましい。
[評価基準]
A:記録画像に傷は確認できなかった。
B:記録画像にわずかに傷が認められた。
C:記録画像に傷が認められた。
D:記録画像の傷が認められ、かつ、傷が非常に大きい。
【0077】
上記表1及び表2の結果より、本願実施例インク組成物はインクの機械安定性に優れ、かつ、インクを用いて作製した印刷物における高い耐擦過性、を兼ね備えることが分かった。