(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013919
(43)【公開日】2025-01-28
(54)【発明の名称】有機物ナノ粒子の製造方法及び有機物ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
B02C 17/20 20060101AFI20250121BHJP
B02C 17/16 20060101ALI20250121BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250121BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
B02C17/20
B02C17/16
A61K9/14
A61K31/4166
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024185891
(22)【出願日】2024-10-22
(62)【分割の表示】P 2021540758の分割
【原出願日】2020-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2019149394
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519273762
【氏名又は名称】シオノギファーマ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505279215
【氏名又は名称】株式会社広島メタル&マシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】落井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏典
(72)【発明者】
【氏名】茨城 哲治
(72)【発明者】
【氏名】平田 大介
(57)【要約】 (修正有)
【課題】湿式ビーズミルを用いた有機物粉体のナノ粉砕において、十分な処理速度を維持し、かつビーズやビーズミル装置の部材からの混入物濃度を大幅に抑制することが可能な新しい方法を提供する。
【解決手段】湿式ビーズミルの容器内にて、有機物粒子を含むスラリーと、0.15mm以上、かつ1.07-0.11×〔攪拌ローターの外周速度(m/秒)〕で計算される値(mm)以下の平均粒径を有するビーズとを含む混合物を、7m/秒以下の外周速度で回転する攪拌ローターにより攪拌する工程を含む、有機物ナノ粒子の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式ビーズミルの容器内にて、有機物粒子を含むスラリーと、0.15~0.9mmの平均粒径を有するビーズとを含む混合物を、7m/秒以下の外周速度で回転する攪拌ローターにより攪拌する工程を含む、有機物ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
湿式ビーズミルの容器内にて、有機物粒子を含むスラリーと、0.15mm以上、かつ1.07-0.11×〔攪拌ローターの外周速度(m/秒)〕で計算される値(mm)以下の平均粒径を有するビーズとを含む混合物を、7m/秒以下の外周速度で回転する攪拌ローターにより攪拌する工程を含む、有機物ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
ビーズが部分安定化ジルコニアからなる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
湿式ビーズミルの容器内で、攪拌ローターを回転させる回転軸が鉛直方向に設置されている、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
湿式ビーズミルの容器内にて、有機物粒子を含むスラリーとビーズとを含む混合物を攪拌ローターにより攪拌する工程を含む、有機物ナノ粒子の製造方法であって、該湿式ビーズミルの容器が縦型の円筒容器であり、該円筒容器の上部に開口部を備え、該攪拌ローターを回転させる回転軸が、該円筒容器の上方から該開口部を経由して該円筒容器内に挿入されており、該回転軸に該攪拌ローターが接続している、製造方法。
【請求項6】
前記円筒容器の上方にスラリー貯槽があり、該円筒容器と該スラリー貯槽が連絡管路を介して連結しており、前記攪拌ローターを回転させる回転軸が、該スラリー貯槽の上方から該スラリー貯槽及び該連絡管路を経由して該円筒容器内に挿入されており、該回転軸に該攪拌ローターが接続しており、ビーズ分離処理後のスラリーが該円筒容器の下部から排出される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
攪拌ローターが7m/秒以下の外周速度で回転する、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
ビーズの平均粒径が0.15mm~0.9mmである、請求項5~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
ビーズの平均粒径が0.15mm以上、かつ1.07-0.11×〔攪拌ローターの外周速度(m/秒)〕で計算される値(mm)以下である、請求項5~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
ビーズが部分安定化ジルコニアからなる、請求項5~9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の製造方法によって得られる有機物ナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、湿式ビーズミルを用いた有機物ナノ粒子の製造方法に関する。本開示は、特に、難溶性の医薬化合物のナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康食品や医薬品の粉体をナノメートルサイズまで粉砕(ナノ粉砕)することにより、活性の向上など、機能を改善する処理が試みられている。特に、難溶性薬剤の活性を改善するために、薬剤の粉体をナノサイズまで粉砕する試みが盛んである。また、薬剤粒子をナノサイズまで微細化することにより、薬効の発揮時期を一定にする効果もある。このように、近年では、ナノサイズまで粉砕された薬剤(ナノ薬剤)の研究が進み、実用化されてきている。
【0003】
有機物粉体のナノ粉砕方法としては、ジェットミルやビーズミルを用いた粉砕処理が一般的である。中でも湿式ビーズミルでの粉砕処理がよく行われており、一般的には以下のようにして行われる。数~数十マイクロメートルに準備された薬剤原料粉体と分散媒の混合物(スラリー)を調製し、球形の粉砕メディア(ビーズ)が入れられているビーズミルに供給する。ビーズミル内で攪拌ローターが高速回転することで、スラリーとビーズとの混合物が攪拌され、薬剤原料粉体が粉砕される。ビーズの材質としては、ジルコニア、アルミナ、硬質ガラス、炭化珪素などの無機物やポリスチレンやポリプロピレンなどの高分子材料が用いられる。
【0004】
ナノ粉砕に使用されるビーズのサイズとして、特許文献1には、望ましくは3mm以下、より望ましくは1mm以下であると記載されており、特許文献2には、10~1000マイクロメートルのビーズを使用することで、より細かい粒子まで粉砕処理することが記載されている。特許文献3には、粉砕処理において、500マイクロメートル未満のビーズを使用することが望ましいとの記載がある。しかしながら、特許文献1~3には、単に適正なビーズ径が記載されているだけで、粉砕処理の条件についての具体的な記載はない。
【0005】
特許文献4には、20~200マイクロメートルのビーズを用い、特殊な形状の攪拌ローターを備えたビーズミル装置を、攪拌ローターの外周速が3~8m/秒となるように駆動することにより粉砕処理することが記載されている。しかし、特許文献4には、ビーズや攪拌ローターから発生する破片のスラリーへの混入については記載されていない。特許文献4の粉砕方法では、特殊な形状の攪拌ローターを使用することで粉砕効率は向上し得るが、ビーズと攪拌ローター部材との接触面積が増え、かつ局所的に高速流が形成されることから、ビーズと攪拌ローター部材の破片のスラリーへの混入が増加し得る。
【0006】
医薬品の分野において、一般に、薬剤には健康を害する可能性のある物質の含有量について許容濃度が設定されており、ナノ薬剤においても、これが適用される。ナノ薬剤においては、粉砕プロセスにおいて、ビーズやミルの部材が摩耗するに伴って、それらの成分が薬剤中に混入する問題がある。湿式ビーズミルでの粉砕処理においては、ビーズの成分であるジルコニウム、イットリウム、アルミニウム、シリコン等の元素や、ミルの金属部品の成分である鉄、ニッケル、クロム、タングステンなどの元素が薬剤中に混入し得る。
【0007】
これらの元素の原薬中濃度は、規制上の限界値を守る必要があるが、混入物がナノサイズであることから、極力低い濃度にすることが好ましい。特許文献5には、医薬品の製造において、重金属の混入量が約10ppmより少ないことが望ましいが、ビーズを用いた粉砕処理では、これを実現することが難しいと記載されている。
【0008】
特許文献5には、ナノサイズの有機物粉砕物中の金属物質の混在を低減する方法として、ポリマー樹脂でコーティングしたビーズを粉砕媒体として用いることが記載されている。しかしながら、ビーズからの金属物質の混在は抑制できても、ポリマー樹脂が混在するリスクがある。さらに、ビーズミル装置の部品からも金属物質の混入が考えられるが、これに対する解決策については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表平8-501073
【特許文献2】特開2016-84294
【特許文献3】特表2010-510988
【特許文献4】特開2006-212489
【特許文献5】特開2003-175341
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、従来技術での有機物のナノ粉砕方法においては、単に効率的な粉砕処理ができればよいとの考えしかなく、高速で攪拌ローターを回転させることで、処理速度を維持するというものであった。また、特許文献5のように、金属物質の混入を抑制する方法が知られていたものの、特殊なビーズを使用する必要があり、一般的なビーズでは問題を解決できなかった。しかも、特許文献5に記載の方法では、ビーズのコーティング成分であるポリマー樹脂や、ビーズミル装置の金属部品の成分である重金属(クロム、ニッケル、鉄など)が混入するリスクがあった。
【0011】
したがって、湿式ビーズミルを用いた有機物粉体のナノ粉砕において、十分な処理速度を維持し、かつビーズやビーズミル装置の部材からの混入物濃度を大幅に抑制することが可能な新しい方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書は、以下を開示するものである:
(1)湿式ビーズミルの容器内にて、有機物粒子を含むスラリーと、0.15mm~0.9mmの平均粒径を有するビーズとを含む混合物を、7m/秒以下の外周速度で回転する攪拌ローターにより攪拌する工程を含む、有機物ナノ粒子の製造方法、
(2)湿式ビーズミルの容器内にて、有機物粒子を含むスラリーと、0.15mm以上、かつ1.07-0.11×〔攪拌ローターの外周速度(m/秒)〕で計算される値(mm)以下の平均粒径を有するビーズとを含む混合物を、7m/秒以下の外周速度で回転する攪拌ローターにより攪拌する工程を含む、有機物ナノ粒子の製造方法、
(3)ビーズが部分安定化ジルコニアからなる、上記(1)または(2)に記載の製造方法、
(4)湿式ビーズミルの容器内で、攪拌ローターを回転させる回転軸が鉛直方向に設置されている、上記(1)~(3)のいずれかに記載の製造方法、
(5)湿式ビーズミルの容器内にて、有機物粒子を含むスラリーとビーズとを含む混合物を攪拌ローターにより攪拌する工程を含む、有機物ナノ粒子の製造方法であって、該湿式ビーズミルの容器が縦型の円筒容器であり、該円筒容器の上部に開口部を備え、該攪拌ローターを回転させる回転軸が、該円筒容器の上方から該開口部を経由して該円筒容器内に挿入されており、該回転軸に該攪拌ローターが接続している、製造方法、
(6)前記円筒容器の上方にスラリー貯槽があり、該円筒容器と該スラリー貯槽が連絡管路を介して連結しており、前記攪拌ローターを回転させる回転軸が、該スラリー貯槽の上方から該スラリー貯槽及び該連絡管路を経由して該円筒容器内に挿入されており、該回転軸に該攪拌ローターが接続しており、ビーズ分離処理後のスラリーが該円筒容器の下部から排出される、上記(5)に記載の製造方法、
(7)攪拌ローターが7m/秒以下の外周速度で回転する、上記(5)または(6)に記載の製造方法、
(8)ビーズの平均粒径が0.15mm~0.9mmである、上記(5)~(7)のいずれかに記載の製造方法、
(9)ビーズの平均粒径が0.15mm以上、かつ1.07-0.11×〔攪拌ローターの外周速度(m/秒)〕で計算される値(mm)以下である、上記(5)~(7)のいずれかに記載の製造方法、
(10)ビーズが部分安定化ジルコニアからなる、上記(5)~(9)のいずれかに記載の製造方法、および
(11)上記(1)~(10)のいずれかに記載の製造方法によって得られる有機物ナノ粒子。
【発明の効果】
【0013】
本開示の方法によって、湿式ビーズミルを用いて、医薬化合物などの有機物粉体をナノ粒子(例えば平均粒径400ナノメートル以下)に粉砕する際に、ビーズやビーズミル部品からの混入物を低減でき、薬剤の汚染を防止できる。本開示の方法は、医薬品のみならず、健康食品やX線造影剤などのナノ粒子の製造においても、汚染の防止が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の方法に使用することができる、メカニカルシールが設置されており円筒容器下部からスラリーを排出する形式の縦型ビーズミルである。
【
図2】本開示の方法に使用することができる、メカニカルシールが設置されており円筒容器上部からスラリーを排出する形式の縦型ビーズミルである。
【
図3】本開示の方法に使用することができる、メカニカルシールが設置されていない、円筒容器下部からスラリーを排出する形式の縦型ビーズミルである。
【
図4】本開示の方法に使用することができる、メカニカルシールが設置されている横型ビーズミルである。
【
図5】粉砕処理における、有機物粉体(フェニトイン)の平均粒径(D50)の時間変化を示す。上のグラフは、粒径の小さいビーズ(△:ビーズ径0.1mm、◇:ビーズ径0.2mm、○:ビーズ径0.3mm)を用いた結果であり、下のグラフは、粒径の大きいビーズ(□:ビーズ径0.5mm、▲:ビーズ径0.8mm、◆:ビーズ径1.0mm)を用いた結果である。
【
図6】有機物粉体(フェニトイン)の粉砕処理における、混入物濃度(スラリー中のジルコニウムとイットリウムの合計濃度:ZY濃度(ppm))の時間変化を示す。△:ビーズ径0.1mm、◇:ビーズ径0.2mm、○:ビーズ径0.3mm、□:ビーズ径0.5mm、▲:ビーズ径0.8mm、◆:ビーズ径1.0mm。
【
図7】粉砕処理時間に対する、攪拌ローターの外周速度(外周速)の影響を示す。◇:ビーズ径0.2mm、○:ビーズ径0.3mm、△:ビーズ径0.5mm、▲:ビーズ径0.8mm。
【
図8】混入物濃度に対する、攪拌ローターの外周速度(外周速)の影響を示す。◇:ビーズ径0.2mm、○:ビーズ径0.3mm、□:ビーズ径0.5mm。
【
図9】混入物濃度に対するビーズ径の影響を示す。△:外周速2m/秒、◇:外周速4m/秒、○:外周速6m/秒。
【
図10】好適な粉砕条件におけるビーズ径と攪拌ローターの外周速度(外周速)との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、「平均粒径」とは、粒度分布測定機で測定した粒度分布から求められるもので、体積基準のメジアン径(D50)として表される。本開示では、堀場製作所製のLA-950を用いて測定して得られた値を平均粒径として記載する。なお、静的レーザー回折/散乱方式の粒度分析計であれば、ほぼ同等の測定結果が得られる。
本明細書において用いられる「粒子径」または「粒径」との用語は、特に定めがない限り、上記「平均粒径」と同意義である。
【0016】
本明細書において、「スラリー」とは、液体の分散媒中に、おおよそ100マイクロメートル以下の有機物の固体粒子が懸濁したものである。一般的には、平均粒径1~100マイクロメートルの有機物の粒子を用いてスラリーを調製することができるが、100マイクロメートル以上のものであっても、本開示の方法を実施することは可能である。本開示のビーズミルを用いた粉砕方法では、5マイクロメートル以上の粒径までの粉砕処理速度は極めて速く、例えば、30マイクロメートルから5マイクロメートルまでの粉砕処理時間は3分間程度と、全体の粉砕処理時間の45~400分間に対して極めて短い。従って、粉砕処理前の有機物の粒径がビーズミルの運転条件に与える影響は小さい。本開示では、粉砕処理前の原料スラリー中の有機物粒子の粒径は1~100マイクロメートルが望ましいが、1マイクロメートル以上であれば、運転条件の設定に実質的な影響はない。
【0017】
本開示の方法で使用される分散媒は、粉砕される有機物粒子が本質的に不溶性である液状媒体であれば特に限定されず、当業者であれば、有機物粒子の性状に応じて適宜選択することができる。例えば、水、または様々な有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ等のエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル、酢酸エチル等のエステル、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、シクロヘキサン等の非芳香族炭化水素、トルエン等の芳香族炭化水素、ノルマルヘキサン等の直鎖状炭化水素等)が挙げられる。
【0018】
本明細書において、「有機物粒子」(本明細書中、「有機物粉体」ということもある)は、有機化合物を含んでなる固体粒子であれば任意のものであってよく、例えば、電子部品材料、蛍光体、顔料、塗料、医薬品、農薬、食品等の様々な分野で用いられる任意の有機化合物の粒子が挙げられるが、これらに限定されない。医薬品の分野で用いられる有機物粒子としては、医薬品の有効成分となる医薬化合物、医薬製剤に使用される添加剤、X線造影剤などの製造に使用されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
医薬化合物としては特に限定されず、任意のものが使用できる。例えば、フェニトイン、メフェナム酸、インドメタシン、イブプロフェン、イトラコナゾール、スルファメトキサゾール、プロブコール、グリセオフルビン、ジゴキシン、ペラパミル、タクロリムス,デキサメタゾン、ハロペリドール、ラミブジン、レバミピド、アリピプラゾール,リスペリドン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、フェルビナク、ジフェロナク、アセメタシン、アルクロフェナク、フェンブフェン、ロベンザリット、ペニシラミン、ナプロキセン、プラノプロフェン、エトドラク、シクロスポリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
スラリー中の有機物粒子の濃度(本明細書中、「スラリー濃度」ともいう)は、ビーズミルによる粉砕処理が可能な流動性が得られる濃度であれば特に限定されない。本明細書においては、スラリー濃度を、スラリー全体の重量に対する被粉砕物(有機物粒子)の重量%として示す。本開示の方法において用いられるスラリー濃度としては、例えば、1~70重量%、2~65重量%、3~60重量%、4~55重量%、5~50重量%の範囲内の任意の濃度が挙げられる。
【0021】
本明細書において、「有機物ナノ粒子」とは、上記有機物粒子を、平均粒径1マイクロメール未満のナノメートルのサイズ、例えば平均粒径500ナノメートル以下、400ナノメートル以下、300ナノメートル以下、200ナノメートル以下、100ナノメートル以下、50ナノメートル以下、20ナノメートル以下にまで粉砕(本明細書において「ナノ粉砕」ともいう)することにより得られた粒子を意味する。
【0022】
本開示の方法では、湿式ビーズミルの容器内にて、回転軸に固定された攪拌ローターを回転させて、前記スラリーとビーズの混合物を攪拌することで有機物粒子が粉砕される。
【0023】
本開示の方法で用いることができる湿式ビーズミルの容器は、その内壁面が中心軸基準で点対象の円をなすものであり、中心軸と平行方向においては、内壁面の直径が一定であっても、変化していても良い。また、スラリー供給口などのために点対称にならない部分があっても良い。本開示の方法に用いることができる湿式ビーズミルは、強化アルミナ、炭化珪素、サイアロン(SiAlON)、部分安定化ジルコニア、ステンレス鋼などの容器中で、ビーズとスラリーの混合物を攪拌するものである。粉砕処理中の摩擦などによる該容器内のスラリー温度上昇を抑制する必要がある場合に、該容器の外側をジャケット構造として、水冷することがある。本開示の方法に用いることができる湿式ビーズミルの容量は、当技術分野において一般的に使用されている容量であり、例えば0.15L~10Lの任意の容量(0.15L、0.5L、1L、2L、5L、10L等)である。
【0024】
攪拌ローターは、強化アルミナ、炭化珪素、サイアロン、部分安定化ジルコニアなどの硬質セラッミクス製のものを使用することができるが、部分安定化ジルコニア製の攪拌ローターが好ましい。
【0025】
ジルコニアは、酸化カルシウムや酸化イットリウムを添加することにより立方晶ジルコニア結晶ができ、高強度となる。さらに、添加物の量を、完全に結晶が安定化する量よりもやや少ない量とする(部分安定化する)ことで、じん性が高まり磨耗や破損に強いセラミックス材料となる。一般的に、部分安定化ジルコニアは、酸化ジルコニウム94~96重量%に対し、添加物として酸化イットリウムを4~6重量%含み、これに加えてさらに他の酸化物が添加されているものである。このように、部分安定化ジルコニアは、強度だけでなく、じん性が高く、局部欠損が起きにいため、部分安定化ジルコニア製の攪拌ローターは破片の発生が少ないという利点がある。
【0026】
本開示の方法は、例えば
図1から
図4に示されるような湿式ビーズミル装置を用いて実施することができるが、これらの装置に限らず、当技術分野において一般的に使用されている装置を使用して実施することができる。
【0027】
一実施形態では、本開示の方法に使用するビーズミルは、
図1に示される、スラリーを上部から供給し、下部から排出する形式の縦型ビーズミル(装置1)である。ビーズミルの容器は縦型の円筒容器であり、上部に開口部を備え、回転軸プーリー9などの駆動装置に接続した回転軸4が、円筒容器の上方から開口部を経由して円筒容器内に鉛直方向に挿入されており、回転軸4には攪拌ローター5が接続している。回転軸4と円筒容器の接続部にはメカニカルシール13が設置されている。スラリーは上方から下方に流れ、スリット式ビーズ分離器8によりビーズを分離した後に、円筒容器の下部から排出される。
【0028】
一実施形態では、本開示の方法に使用するビーズミルは、
図2に示される、スラリーを下部から供給し、上部から排出する形式の縦型ビーズミル(装置2)である。ビーズミルの容器は縦型の円筒容器であり、円筒容器の上部に開口部を備え、回転軸プーリー9などの駆動装置に接続した回転軸4が、円筒容器の上方から開口部を経由して円筒容器内に鉛直方向に挿入されている。回転軸4には攪拌ローター5と遠心式ビーズ分離装置14が接続している。円筒容器の接続部には2個のメカニカルシール13が設置されている。スラリーは遠心式ビーズ分離装置14にてビーズが分離された後、回転軸中に設置された中空流路中を上昇して、排出口7から排出される。
【0029】
上記の装置1および2のように、湿式ビーズミル装置には、一般的に、回転軸と円筒容器の間のシーリングを目的として、メカニカルシール又はそれに類したシーリング装置が設けられる。メカニカルシールの回転部と固定部との接触部の材質としては、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、クロム、シリコンなどの高強度金属や高強度セラミックスが挙げられ、ビーズミルでの粉砕処理中にシーリング装置の摩耗に伴って、これらがスラリー中に混入し得る。従って、シーリング装置のないビーズミルを用いて有機物粉体を粉砕することで、混入物濃度をさらに低減することができる。
【0030】
シーリング装置のない湿式ビーズミルとしては、縦型の円筒容器を用いるもので、該円筒容器の上面に貫通孔が施されており、該貫通孔を経由して、回転軸が該円筒容器上方から、該円筒容器内に挿入されており、回転軸には攪拌ローターが接続している構造のものが挙げられる。バッチ式湿式ビーズミルの場合は、上記に記載された装置となるが、循環式の湿式ビーズミルの場合は、回転部のメカニカルシールなしで円筒容器内にスラリーを供給・排出する機構が必要である。一実施形態として、そのような装置の例を
図3に示す。
【0031】
図3のビーズミル(装置3)は、ミル内の構造および容量は上記装置1と同じであるが、回転軸と円筒容器の接続部が開放されたもので、シーリング装置のない循環式湿式ビーズミルの例である。上蓋2の上方にはスラリー貯槽15があり、上蓋2とスラリー貯槽15が連絡管路16で結合している。回転軸プーリー9などの駆動装置に接続した回転軸4がスラリー貯槽15及び連絡管路16を経由して円筒容器内に鉛直方向に挿入されている。回転軸4には攪拌ローター5が接続している。スラリーは、循環タンク20からスラリー連絡管22を経由してスラリー貯槽15に流入し、更に連絡管路16を経由して該円筒容器に流入する。該円筒容器内を下降中に粉砕処理されたスラリーは、プラグ式ビーズ分離器8にてビーズ分離後に、スラリー排出口7から該円筒容器外に排出される。スラリーは、更にポンプ19により、スラリー配管18を経由して、循環タンク20に戻される。スラリー流を改善するために、連絡管路16中の回転軸4にポンピング装置17を設置して、スラリーを下方に押すこともある。
【0032】
また、他の形式のシーリング装置のないビーズミルも本開示の方法に適用可能である。他形式のビーズミルの例としては、以下の構造のものがある。円筒容器の上方にスラリー貯槽があり、該円筒容器と該スラリー貯槽を結ぶ貫通孔が設置されており、該貫通孔を経由して、回転軸が該円筒容器内に伸びており、そこで攪拌ローターと接続している。円筒容器下部にスラリー供給口があり、スラリーは上昇しながら粉砕処理されて、円筒容器上部に設置されている遠心分離式ビーズ分離装置にてビーズが分離された後、該回転軸中に設置された中空流路中を上昇して、スラリー貯槽に排出される。貫通孔内の回転軸には、
図3の装置と同様に、循環用のポンピング機構やスラリー旋回用羽根などにより、スラリーを該スラリー貯槽から該円筒容器に流す構造がある。この流れにより、貫通孔でのビーズ漏洩は防止できる。なお、貫通孔を下方に流れたスラリーは、該遠心分離式ビーズ分離装置と該中空流路を経由して、スラリー貯槽に戻る。
【0033】
上記の装置1~3のビーズミルでは、攪拌ローターは複数の棒状のピンが設置されたものであるが、攪拌ローターは、水平に配置された円板が高さ方向に複数設置されたものや、縦方向に設置された複数の板状のものなどでも良い。
【0034】
本開示の方法では、攪拌ローターの回転速度が比較的遅いため、使用するビーズミルは、縦型ビーズミルが好ましい。縦型ビーズミルの場合は、重力と直角方向に遠心力が働き、ビーズに掛かる力が円筒容器内の円周方向でほぼ一定であることから、局部的に過剰な力が働くことがなく、均一性が高い。
【0035】
ビーズミルの円筒容器中のスラリーの流れ方向は、上方への流れ、下方への流れのいずれでも良いが、スラリーを下方に流すことで、ビーズを下方に充填でき、円筒容器底部でのビーズ同士の接触頻度が向上することから、装置1や装置3のような、スラリーを上方から下方へ流す縦型ビーズミルを使用することがより好ましい。ただし、スラリーの上下方向への流れ速度は低いため、その差は小さく、本開示の方法は、スラリーを下方から上方へ流す縦型ビーズミルを使用しても実施することができる。
【0036】
また、横型のビーズミルであっても、本開示の方法を実施することができる。横型ビーズミルの例としては、
図4に示すビーズミル(装置4)が挙げられる。装置4は、回転軸4が水平方向に設置されており、回転方向に平行に設置された花びら型で穴が開いた攪拌ローター5が複数設置されており、撹拌ローター5がスラリーとビーズを撹拌する。処理が終わったスラリーはスクリーン23でビーズが分離された後に、円筒容器外に排出される。
【0037】
横型ビーズミルの場合、円筒容器内の円周方向の位置により、遠心力と重力の方向が異なる。円筒容器の側面の上部では遠心力から重力が差し引かれて、ビーズを押し付ける力が弱くなる。一方、下部では、遠心力と重力が合わさるため、ビーズを押し付ける力が強くなる。本開示の方法は、撹拌ローターの外周速度(本明細書中、「外周速」ともいう)が比較的遅く、遠心力が小さい条件下で実施されるため、前述の現象の度合いが大きく、ビーズが円筒容器最上部に上がりづらくなるため、処理速度が低下する。このため、横型ビーズミルでは、外周速度が特に低い場合においては、縦型ビーズミルに比べて混入物濃度がやや増加するが、本開示の方法に使用することは可能である。
【0038】
循環式の湿式ビーズミルでは、循環1回当りのスラリー処理時間は3~10分間で、5~50回程度の循環処理を行うのが一般的である。一般的な処理時間は30~400分間であるが、ミルの容量によって、これより短くても長くてもよい。
【0039】
本開示の方法で使用されるビーズは、湿式ビーズミルを用いた粉砕処理に通常使用されるものであれば特に限定されず、当業者であれば、ビーズミルの仕様、被粉砕物の特性(例えば粒子の硬さ、密度および粒径等)、目標とする粉砕後の微粒子の粒径、スラリーの粘度等の様々な因子を考慮して適宜選択することができる。
【0040】
ビーズミルで用いられるビーズの材質としては、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコン(ジルコニア・シリカ系セラミックス)、ジルコニア、スチールなどが挙げられるがこれらに限定されない。ジルコニアは、硬度が高くビーズ劣化による破片の混入が少ない傾向にあるため、ビーズの材質として好ましい。特に、部分安定化ジルコニア製のビーズは、上述のように、強度だけでなく、じん性が高く、局部欠損が起きにいため、特に好ましい。
【0041】
一実施形態では、本開示の方法において、部分安定化ジルコニア製のビーズが使用される。本明細書中、部分安定化ジルコニア製のビーズを単に「ビーズ」と称することもある。
【0042】
本明細書において、「ビーズ充填率」とは、ビーズミルの円筒容器の実効容積(円筒容器の内容積から撹拌ローターの容積を引いたもの)に対するビーズの見掛け容積(体積%)である。
【0043】
ビーズ充填率は、当業者であれば、ビーズミルの仕様や運転条件、スラリーの粘度等の様々な因子を考慮して適宜選択することができる。一般的には、10~95体積%の範囲内で適宜設定することができ、例えば15~95体積%、25~90体積%、35~90体積%、50~90体積%、75~90体積%の範囲内で設定することができる。
【0044】
ビーズミルに投入されるスラリーの量は、ビーズミルの仕様(例えば、使用するビーズミルの粉砕室の容量)や運転条件等に応じて当業者が適宜選択することができる。
【0045】
一般的に、有機物粉体は比較的柔らかく、ビーズの衝突エネルギーが小さくても粉砕が可能なため、本開示の方法においては、ビーズの平均粒径(本明細書中、「ビーズ径」ともいう)は比較的小さくても良い。また、ビーズの粒径が小さいほうが比表面積が大きく、粉砕速度は速くなる。一般に、ビーズ摩耗には、ビーズの比表面積による摩耗増加要因と単体質量による摩耗増加要因の二つの要因がある。前者はビーズの粒径が大きいほど摩耗が少なく、後者はビーズの粒径が小さいほど摩耗が少ない。両者を勘案すると、中間サイズのビーズ径がより摩耗が少ないと考えられる。本開示の方法では、0.15mm~0.9mmの範囲内の任意の平均粒径を有するビーズを使用することができ、例えば、粒径規格0.15mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、または0.9mmとして商業的に入手可能なビーズを使用することができる。
【0046】
一般的に、ビーズの表面積は、ビーズミルの部材の表面積と比べて圧倒的に大きい。例えば、有効内容積200ミリリットルのビーズミル内では、円筒容器内面と撹拌ローターの合計面積が105mm2程度であるのに対し、ビーズの総表面積は106~107mm2のオーダーであり、ビーズ同士の接触による摩耗が、ビーズミルの部材の摩耗と比べて圧倒的に大きい。
したがって、ビーズの摩耗を抑制する本開示の方法は、撹拌ローターの形状によって達成できる混入物濃度の最低値は異なるが、原理的には、全ての形状の撹拌ローターに適用でき、複雑な形状の攪拌ローターであっても、本開示の方法による効果が期待できる。
【0047】
本開示の方法に使用される湿式ビーズミルの撹拌ローターとしては、回転方向に対して点対称位置に棒状のピンが設置されている攪拌ローター、回転方向に平行な複数の板で構成される攪拌ローター、回転軸方向に平行な複数の板で構成される攪拌ローターなどが挙げられる。ピン形状の攪拌ローターは必ずしも円柱状の形状でなくても良く、板状でもよく、また単純な板形状でなくても良い。
【0048】
本明細書において、「外周速度」または「外周速」とは、攪拌ローターの回転時の外周速度を意味する。
ビーズ径が同じ条件では、一般に、撹拌ローターの外周速度が速いほど処理時間は短くなる。本開示の方法では、1m/秒以上の外周速度が好ましいが、外周速度が0.5m/秒でも有機物粒子を200ナノメートル程度の粒径まで粉砕することは可能である。
また、撹拌ローターの外周速度はビーズや攪拌ローター部材の摩耗にも影響する。本開示の方法では、撹拌ローターの外周速度が7m/秒以下の場合に、十分な処理速度を維持し、かつビーズや攪拌ローター部材からの混入物濃度を大幅に抑制できる。本開示の方法における撹拌ローターの外周速度としては、例えば、0.5m/秒~7m/秒の範囲内の任意の速度(例えば、0.5m/秒、1m/秒、2m/秒、3m/秒、4m/秒、5m/秒、6m/秒、7m/秒)が挙げられる。
【0049】
一実施形態では、本開示の方法は、撹拌ローターの外周速度が7m/秒以下で、0.15mm以上、かつ1.07-0.11×〔攪拌ローターの外周速度(m/秒)〕で計算される値(mm)以下の平均粒径を有する部分安定化ジルコニア製ビーズを用いて粉砕処理する工程を含み、これにより、十分な粉砕処理速度を維持し、かつビーズや攪拌ローター部材からの混入物濃度を大幅に抑制できる。
【0050】
一実施形態では、本開示の方法により得られる有機物ナノ粒子に含まれる混入物の量は、得られた粒子の全体の重量に対して、例えば、0.0001ppm以上~50ppm未満、0.0001ppm以上~40ppm未満、0.0001ppm以上~30ppm未満、0.0001ppm以上~20ppm未満、0.0001ppm以上~10ppm未満である。本明細書においては、混入物の濃度を、スラリー全体の質量に対する混入物質量の百万分率(質量ppm)として示す。また、本明細書において「ZY濃度」とは、スラリー全体の質量に対するジルコニウムとイットリウムの質量の合計を百万分率(質量ppm)として示したものである。一実施形態では、本開示の方法により粉砕処理されたスラリー中のZY濃度は約5ppm以下である。
スラリー中の混入物濃度は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)等の当分野で慣用の測定方法により決定することができる。
【0051】
医薬品の分野においては、特許文献5に記載されるように、原薬中の重金属濃度を10ppm以下とすることは一つの指標となっていることから、例えば、粉砕処理に付されるスラリーの濃度を50重量%とした場合には、粉砕処理されたスラリー全体における重金属の濃度は約5ppm以下であることが望ましい。但し、本開示は、湿式ビーズミルで有機物粉体を迅速に、かつ混入物濃度を低減する粉砕方法を提供するものであり、必ずしも、この条件を満たす必要はない。
【0052】
本開示の方法の実施に際して、必要に応じ、スラリーに添加剤を配合することができる。例えば、スラリー中の有機物粒子の分散性の向上、凝集の防止または分散状態の安定化を目的として、分散剤をスラリーに配合することができる。
【0053】
分散剤は、有機物粒子や分散媒の性状、ビーズミルの仕様および運転条件等の様々な因子を考慮して適宜選択することができる。分散剤としては、例えばカルボン酸塩(脂肪酸塩等)、スルホン酸塩(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、リン酸塩(モノアルキルリン酸塩等)、硫酸エステル塩(ラウリル硫酸ナトリウム等)等の界面活性剤やヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC))、メチルセルロース(MC)、ポリビニルピロリドン(PVP)等の高分子化合物が挙げられる。分散剤の量は、当業者が慣用の手順に従って適宜選択することができる。
【0054】
本開示の方法を実施するために必要な他の粉砕条件は、当業者が、種々の因子(有機物の性質、分散媒の種類、スラリーの粘度、粉砕後に得られるナノ粒子の粒径、粉砕効率等)を考慮して適宜設定することができる。
【0055】
ビーズミルから排出されたスラリーは、当分野における慣用の手順に従い乾燥して分散媒を留去し、有機物ナノ粒子を含んでなる粉体としてもよい。
【0056】
本開示のさらなる態様では、本開示の方法によって得られる有機物ナノ粒子が提供される。
一実施形態では、本開示の有機物ナノ粒子は、医薬化合物を含んでなる。
【0057】
本開示の方法により得られる有機物ナノ粒子の形態は特に限定されず、本開示の方法により得られたスラリーであってもよいし、そのスラリーを乾燥して粉体化されたものでもよい。
【0058】
本開示のさらなる態様では、本開示の方法によって得られた有機物ナノ粒子を含んでなる組成物または材料が提供される。このような組成物または材料としては、例えば、誘電体、圧電体、磁性体などの電子部品材料、蛍光体、電池用電極材料、顔料、塗料、ファインセラミックス原料、研磨材、医薬品、農薬、食品等が挙げられる。
【0059】
本開示のさらなる態様では、本開示の方法によって得られる有機物ナノ粒子を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0060】
本開示の医薬組成物は、本開示の方法によって得られた有機物ナノ粒子を用い、目的とする剤形に応じて適宜、医薬製剤の分野で通常用いられているいくつかの工程(例えば、造粒、整粒、打錠、コーティング等)を経た後、最終製品として得ることができる。
【0061】
一実施形態として、装置1を例に、本開示の方法で使用するビーズミルの運転方法を説明する。スラリーをスラリー供給口6から円筒1、上蓋2及び下蓋3から構成される容器内に供給する。回転軸4に連結された攪拌ローター5にて、スラリーとビーズの混合物を撹拌する。撹拌ローター5は、複数の棒状ピンからなるものである。スラリーはスラリー供給口6から該円筒容器内を下降していくが、一般的に、その速度は10~数十mm/秒の速度である。攪拌ローター5の攪拌により、スラリー中の有機物粒子は粉砕される。処理を施されたスラリーは、プラグ式ビーズ分離器8にてビーズを分離した後、スラリー排出口7から該円筒容器の外に排出される。ビーズミル内の圧力を確保するために、回転軸4には、メカニカルシール13が設置されている。
図1には記載されていないが、排出されたスラリーは、ポンプの送液によりパイプ中を流れて、循環タンクに戻る。このように、スラリーは循環タンクとビーズミルの間を循環して処理されることが一般的である。
【0062】
以下の試験例および実施例は、本開示をさらに詳細に説明するものであって、いかなる意味においてもその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例0063】
試験例1:処理時間に対するビーズ径の影響
湿式ビーズミル(広島メタル&マシナリー製Apex Mill 015型ミル(上記「装置1」に該当。以下の試験例および実施例ではこれを「装置1」と称する))を用い、フェニトイン(静岡カフェイン工業所、原料粒度:16~20μm)5重量%、分散剤としてポリビニルピロリドン(3重量%)およびラウリル硫酸ナトリウム(0.25重量%)を含むスラリー(500g)を、撹拌ローターの外周速度2m/秒にて、種々の平均粒径(粒径規格)の部分安定化ジルコニアビーズ(ニッカトー製YTZボール(以下、使用したビーズは同じ)、ビーズ充填率:75%)と共に撹拌することにより粉砕処理を行った。粉砕処理中の所定の時点でサンプリングを行い、サンプル中のフェニトイン粒子の粒径と混入物濃度(ジルコニウムとイットリウムの濃度の合計。本明細書中、「ZY濃度」と称す。)を測定した。
フェニトイン粒子の粒径はLA-950(堀場製作所製)によって測定した(以降の試験例および実施例についても同じ)。
測定条件:
粒子屈折率:1.610(フェニトイン)
Set Zero:60秒
測定時間:60秒
測定回数:2回
形状:非球形
溶媒屈折率:1.333(水)
超音波 :なし
粒子径基準:体積
スラリー中の混入物濃度は以下の手順に従って測定した(以降の試験例および実施例についても同じ)。
粉砕処理後のサンプル0.5gをメタルフリーの容器に秤取し、内部標準物質(Co)を添加した後、NMP/HCl/HNO
3混液(90:5:5)を加え、超音波照射により溶解させ、試料溶液とした。この試料を、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)装置(iCAPQ(商標)、サーモフィッシャー社)を用いて、サンプル中の混入物(ジルコニウムとイットリウム)の濃度(重量ppm)を測定した。
測定条件:
測定元素:Zr(m/z=90),Y(m/z=89)
ネブライザー:同軸型ネブライザー
スプレーチャンバー:サイクロン型
スプレーチャンバー温度:3℃付近の一定温度
インジェクター内径:1.0mm
サンプル導入方法:自然吸引
高周波パワー:1550W
冷却ガス流量:14L/min
補助ガス流量:0.8L/min
測定モード:KED
コリジョンガス:ヘリウム
添加ガス:酸素
ペリスタポンプ回転数:20rpm
積分時間:0.1秒
積算回数:3回
結果を
図5および
図6に示す。ZY濃度は、粉砕処理されたスラリー重量に対する質量ppmで示す(以降同じ)。
図5に示すとおり、0.2mm以上のビーズ径では、フェニトインの粒径が約400ナノメートルに達するまでは迅速に粉砕が進み、400ナノメートル以下になると、処理速度が低下し、ビーズ径の影響が大きくなる。ビーズ径が小さいほど処理速度が速く、200ナノメートルに達するまでの時間はビーズ径が0.2mm(
図5中◇)と0.3mm(
図5中○)の場合が最も短い。ビーズ径0.1mmの場合(
図5中△)、初期の処理速度が遅く、1マイクロメートル以上の粗粒が極少量残っていたが、200ナノメートルまでは粉砕することができた。このように、有機物粉体は比較的柔らかいため、ビーズの衝突エネルギーが小さい小径のビーズでも粉砕が可能である。また、小径のビーズでは比表面積が大きいため処理速度が速い。ビーズ径0.1mmの場合は、ビーズの衝撃力が小さく、数十マイクロメートル以上の粉体を粉砕するために時間がかかるが、粉体の粒径が8マイクロメートル以下になると、急速に粉砕が進んだ。
図6に示すとおり、ZY濃度を処理時間に対してプロットしたデータでは、ビーズ径0.2~0.8mmを用いた場合に良好な結果が得られ、ビーズ径0.3mmの場合(
図6中○)が最も良い結果となった。ビーズ径0.1mm(
図6中△)と1mm(
図6中◆)のビーズを使用した場合は、ビーズの摩耗に起因して混入物の濃度(ZY濃度)が高かった。上述したとおり、ビーズの摩耗には、ビーズの比表面積による摩耗増加要因と単体質量による摩耗増加要因の二つの要因があり、ビーズ径が0.1mmのビーズでは、比表面積の影響が大きいため、ビーズの磨耗が大きく、ビーズ径1mmのビーズでは、個々のビーズの質量が大きく、ビーズ同士の衝突エネルギーが大きいため、磨耗が大きかった。
【0064】
試験例2:処理時間に対する外周速の影響
本開示の粉砕処理における外周速と処理時間との関係を調べた。装置1を用いて、フェニトイン(原料粒度:16~20μm)5重量%、分散剤としてポリビニルピロリドン(3重量%)およびラウリル硫酸ナトリウム(0.25重量%)を含むスラリー(500g)を、ビーズ径0.2mm~0.8mmの部分安定化ジルコニアビーズ(ビーズ充填率:75%)を用いて、平均粒径200ナノメートル付近まで粉砕処理した。結果を
図7に示す。
ビーズ径が同じ条件では、外周速が高いほど処理時間が短かった。0.3mm径のビーズを使用した場合(
図7中○)、0.5m/秒の外周速でも、420分程度で200ナノメートルまで粉砕することが可能であった。
【0065】
試験例3:混入物濃度に対する外周速の影響
装置1を用いて、フェニトイン(原料粒度:16~20μm)5重量%、分散剤としてポリビニルピロリドン(3重量%)およびラウリル硫酸ナトリウム(0.25重量%)を含むスラリー(500g)を、撹拌ローターの外周速を変化させて、試験例2と同様に、部分安定化ジルコニアビーズ(ビーズ充填率:75%)を用いて、平均粒径200ナノメートル付近まで粉砕処理し、フェニトイン粒子の平均粒径が200ナノメートルに到達したときの混入物濃度(ZY濃度)を測定した。結果を
図8に示す。
【0066】
試験例4:混入物濃度に対するビーズ径の影響
装置1を用いて、フェニトイン(原料粒度:16~20μm)5重量%、分散剤としてポリビニルピロリドン(3重量%)およびラウリル硫酸ナトリウム(0.25重量%)を含むスラリー(500g)を、種々のビーズ径の部分安定化ジルコニアビーズ(ビーズ充填率:75%)を用いて、試験例2と同様に平均粒径200ナノメートル付近まで粉砕処理した。攪拌ローターの外周速度を2m/秒、4m/秒、6m/秒として、それぞれ粉砕処理し、フェニトイン粒子の平均粒径が200ナノメートルに到達したときのスラリー中の混入物濃度(ZY濃度)を測定した。結果を
図9に示す。
使用したビーズ径は0.1~1mmであった。各外周速でのZY濃度は、いずれもビーズ径0.2~0.3mmで最も低く、ビーズ径が小さい場合と大きい場合に、ZY濃度が高くなっていた。
図9に示されるように、外周速が2m/秒の場合(
図9中△)、ビーズ径0.8mmと1.0mmの間、外周速が4m/秒の場合(◇)、ビーズ径0.5mmと0.8mmの間、外周速が6m/秒の場合(〇)、ビーズ径0.3mmと0.5mmの間でZY濃度が急激に増大した。
図9に示すように、各周速について、上記ビーズ径のデータポイントを結ぶ直線とZY濃度5ppmを示す水平の直線との交点から、ZY濃度が5ppmに到達するビーズ径の値を求め、その値を記載した。ビーズ径が小さい場合もZY濃度が増大しており、ビーズ径0.1mmでは、ビーズ径0.2mmの場合と比較してZY濃度が高かった。
図9のグラフから判断すると、ZY濃度が5ppmを超えるビーズ径の下方限界はおおよそ0.15mmである。従って、ZY濃度が急激に増大するビーズ径の上方限界は外周速によって影響を受ける値であり、一方、下方限界は約0.15mmである。
【0067】
試験例5:ビーズ径と外周速の関係
装置1を用いて、フェニトイン(原料粒度:16~20μm)5重量%、分散剤としてポリビニルピロリドン(3重量%)およびラウリル硫酸ナトリウム(0.25重量%)を含むスラリー(500g)を、下表に示す各種ビーズ径の部分安定化ジルコニアビーズ(ビーズ充填率:75%)と共に、下表に示す外周速にて粉砕処理し、フェニトイン粒子の平均粒径が200ナノメートル付近に到達したときのスラリー中の混入物濃度(ZY濃度)を測定した。
【表1】
図10に示すように、上の表に示した各データを、横軸を外周速、縦軸をビーズ径としてプロットし、ZY濃度の数値(単位ppm)を各データポイントに付記した。
図9から求めた、各外周速でのスラリー中のZY濃度が5ppmに到達するビーズ径の上方限界(外周速2m/sで0.87mm、4m/sで0.60mm、6m/sで0.43mm)を
図10に〇として示した。
図10に示すように、スラリー中のZY濃度が5ppmに到達するビーズ径の上方限界(Do)は、攪拌ローターの外周速度に対して直線の関係にあり、次式:Do=1.07-0.11×〔攪拌ローターの外周速度(m/秒)〕(mm)で示される。
また、スラリー中のZY濃度が5ppmに到達するビーズ径の下方限界値は、試験例4で示したように、約0.15mmであり、
図10中に水平の直線で表した。
図10に示されるように、ZY濃度は、2本の直線の間の領域内に分布する条件では、スラリー中のZY濃度が5ppm以下に抑えられている。一方、2本の直線の間の領域の外に分布する条件では、ZY濃度が急激に増大した。
【0068】
試験例6:ビーズ充填率の影響
フェニトイン(原料粒度:16~20μm)5重量%、分散剤としてポリビニルピロリドン(3重量%)およびラウリル硫酸ナトリウム(0.25重量%)を含むスラリーを、0.3mm径の部分安定化ジルコニアビーズを用い、ビーズ充填率を変化させて、外周速2m/秒にて、試験例1と同様に平均粒径200ナノメートル付近まで粉砕処理し、フェニトイン粒子の平均粒径が200ナノメートルに到達したときの混入物濃度(ZY濃度)を測定した。
処理時間とZY濃度は各々、充填率25%で600分間、0.50ppm、充填率35%で330分、0.70ppm、充填率75%で90分、0.99ppm、充填率90%で90分、1.4ppmであった。充填率25%では、ZY濃度は低いが、処理時間が長く、また、充填率90%では充填率75%と比較して処理時間が変わらず、ZY濃度がやや上昇した。
【0069】
試験例7:スラリー濃度の影響
スラリー中のフェニトイン(原料粒度:16~20μm)の濃度を変えて、0.3mm径の部分安定化ジルコニアビーズを用い(ビーズ充填率:75%)、2m/秒の外周速にて、試験例1と同様に装置1にて粉砕処理した。200ナノメートルに到達するまでの粉砕処理時間と200nm到達時のスラリー中の混入物(ZY)濃度を下表に示す。
【表2】
スラリー中のフェニトイン濃度を変化させても、200ナノメートルまでの粉砕時間はほぼ変化しなかった。また、ZY濃度も大きく変化しなかった。このように、40重量%以下の濃度では、スラリー濃度はZY濃度に影響しなかった。なお、50重量%の高濃度では、スラリーの流動性が悪化したが、粉砕処理は可能であった。
【0070】
実施例1~31
図1~4に示したビーズミル(装置1~4)を用いて、各種有機物粒子(フェニトイン、スルファメトキサゾール、フェノフィブラート、メフェナム酸、イトラコナゾール)のスラリーを粉砕処理した。用いたビーズミル装置は以下のとおりである(下記のジルコニアはいずれも、添加物としてイットリウムを含む)。
装置1:Apex Mill 015型(広島メタル&マシナリー製)。接薬部の材質は、タングステンカーバイト、ニッケル(メカニカルシール)、ジルコニア入り強化アルミナ(ステーター)、ジルコニア(ローター)、パーフロ(Oリング)である。
装置2:Ultra Apex Mill 015型(広島メタル&マシナリー製)。接薬部の材質は、タングステンカーバイト、ニッケル(メカニカルシールUPPER側、LOWER側)、ジルコニア入り強化アルミナ(ステーター)、ジルコニア(セパレーター、ローター)、パーフロ(Oリング)である。
装置3:実験試作機。接薬部の材質は、ジルコニア入り強化アルミナ(ステーター)、ジルコニア(ローター)、SUS316L(ポンピング装置)、パーフロ(Oリング)である。
装置4:Dyno Mill リサーチラボ型[微小ビーズ対応小型湿式分散・粉砕機](シンマルエンタープライゼス製)。接薬部の材質は、ジルコニア(ハフニウムを含む)(アクセレレーター、ウェアーブッシュ)、SSiC(シリコン・カーバイド)(グランディングシリンダー)、ニッケル、ハードクロムメッキ(スクリーン)、バイトン(登録商標)(O-リング)である。
各実施例の粉砕処理の条件および結果を表3に示す。また、比較例として、強化アルミナ製ビーズを用いた比較例1、外周速またはビーズ径が本開示の条件の範囲外である比較例2~6を示す。混入物濃度は、ビーズ成分のジルコニウムとイットリウム、ビーズミルの容器の材質である強化アルミナの成分(アルミニウム)、ビーズミルで使用されている金属部材の主な成分である鉄、ニッケル、クロム、タングステンの濃度をそれぞれ記載した(粉砕処理したスラリー重量に対する質量ppmで表す)。
【表3】
【0071】
実施例1~25は、実効内容積150ミリリットルの装置1で、500グラムのスラリーを最終粒径200ナノメートル付近まで粉砕処理した結果である。スラリー中のZY濃度(表中「ZrY合計」の欄)は、いずれも5ppm以下であった。処理時間も工業的に適正な範囲であった。また、スラリー濃度が50重量%と高濃度であっても、処理時間の延長なく処理でき、ZY濃度も1.48ppmと低位であった(実施例17)。
【0072】
実施例26と27は、実効内容積150ミリリットルの装置2で、フェニトインを粉砕処理した結果である。実施例26では、ZY濃度が0.48ppmと非常に低かった。
【0073】
実施例28~30は、フェニトインをミル内の装置構成が装置1とほぼ同じである内容積150ミリリットルの装置3で処理した結果である。いずれの実施例でも、ZY濃度は低く(最大で1.07ppm)、処理時間も最長で300分間と適正な範囲であった。なお、装置3はメカニカルシールが設置されていないことから、ニッケル及びタングステンの濃度が、メカニカルシールを有する装置1を用いた場合(実施例1~25)と比べて低かった。このように、メカニカルシールが設置されていないビーズミルでは、金属部材からのスラリー中の重金属の混入物濃度を低減できる効果も認められた。
【0074】
実施例31は装置4を用いて粉砕処理した結果である。装置4は横置きビーズミルであり、撹拌ローターは異形の板に穴が開いたものが複数設置されているものである。処理時間では、210ナノメートルまでの粉砕が70分間と問題なかった。混入物濃度では、ZY濃度が約2.1ppmであり、同一の運転条件にて装置1で処理した場合(実施例10の約1.4ppm)と比較すると高濃度であったが、十分に良好な結果であった。
【0075】
一方、強化アルミナ製ビーズを用いて処理した比較例1では、スラリーへのアルミニウム混入が100ppm近くになっており、混入物濃度が極めて高かった。これは、強化アルミナは強度が高いが、じん性が低いため、摩耗が早く進んだためである。比較例2~6は装置1で部分安定化ジルコニアビーズを用いた処理ではあるが、外周速またはビーズ径が本開示の条件(0.15mm以上、且つ1.07-0.11×〔攪拌ローターの外周速度(m/秒)〕で計算される値(mm)以下)を外れている例である。比較例2~6はいずれも、ZY濃度が5ppmを超えており、最大値は約54.5ppmであった。
前記円筒容器の上方にスラリー貯槽があり、該円筒容器と該スラリー貯槽が連絡管路を介して連結しており、前記攪拌ローターを回転させる回転軸が、該スラリー貯槽の上方から該スラリー貯槽及び該連絡管路を経由して該円筒容器内に挿入されており、該回転軸に該攪拌ローターが接続しており、ビーズ分離処理後のスラリーが該円筒容器の下部から排出される、請求項6に記載の製造方法または方法。