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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139450
(43)【公開日】2025-09-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20250918BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20250918BHJP
【FI】
H01L21/60 321E
H01L23/50 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038396
(22)【出願日】2024-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】ミネベアパワーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 悠次郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 智康
【テーマコード(参考)】
5F067
【Fターム(参考)】
5F067BB01
(57)【要約】
【課題】リードフレームの形状の制約を受けずにダイオード領域を配置してサージ電流耐量の向上を図る半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置1Aは、表面電極及び裏面電極の間にそれぞれが連続し、互いに隣接するダイオード領域103及びトランジスタ領域102を有する半導体素子100と、表面電極側の接合領域で表面電極に接合されるリードフレーム108と、ダイオード領域103を覆うように設けられ、表面電極とリードフレーム108とを接合する接合部材106と、を備え、平面視において、ダイオード領域103とリードフレーム108の接合領域とが重なる領域は、ダイオード領域103よりも小さい。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面電極及び裏面電極の間にそれぞれが連続し、互いに隣接するダイオード領域及びトランジスタ領域を有する半導体素子と、
前記表面電極側の接合領域で前記表面電極に接合されるリードフレームと、
前記ダイオード領域を覆うように設けられ、前記表面電極とリードフレームとを接合する接合部材と、を備え、
平面視において、前記ダイオード領域と前記リードフレームの接合領域とが重なる領域は、前記ダイオード領域よりも小さい半導体装置。
【請求項2】
平面視において、前記接合領域の外側に前記ダイオード領域が配置されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
平面視において、前記ダイオード領域と前記リードフレームとが重なる領域は、前記ダイオード領域よりも小さい請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
平面視において、前記リードフレームの外側に前記ダイオード領域が配置されている請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記リードフレームは前記接合部材を露出させる貫通穴を有し、
平面視において、前記貫通穴に前記ダイオード領域が配置されている請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記リードフレームは、その角部を切り欠いた後退部を有し、
平面視において、前記後退部に前記ダイオード領域が配置されている請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記リードフレームは複数に分離され、
平面視において、分離された前記リードフレーム間の間隙に前記ダイオード領域が配置されている請求項4に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記接合部材は、平面視において複数の領域に分割され、
前記半導体素子は、分割された前記接合部材の間を延伸する素子内配線を有する請求項4に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ダイオード領域は、平面視において互いに平行に延伸するストライプ状に配置されている請求項1から請求項8の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ダイオード領域は、平面視において円形状の領域が等間隔に並ぶアイランド状に配置されている請求項1から請求項8の何れか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一チップ内に絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)及びダイオードを内蔵した逆導通IGBT(以下RC-IGBTという)は、IGBTチップとダイオードチップのターミネーション領域を共通化することによりチップサイズを低減でき、トランジスタ領域(IGBT領域ともいう)またはダイオード領域で発生した損失をチップ全体で放熱できるため熱抵抗が低減するなどの利点がある。
また、パワー半導体チップの表面電極にリードフレームを接合部材により接続して電気的配線を形成する技術がある。この技術では、従来のワイヤボンディングによる電気的配線の形成と比較して配線の断面積を大きくすることができるため、より高い電流密度に対応することができる。その一方で、電源投入時の突入電流等のサージ電流による熱破壊が問題となる。例えば特許文献1には、RC-IGBTのダイオード部の全領域を配線部材の平板部で覆う逆導通型半導体装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-201159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1の逆導通型半導体装置では、配線部材の平板部による熱容量増加がダイオード部のサージ電流耐量向上に寄与するため、ダイオード部の全領域が平板部に覆われる必要がある。このため、チップ内におけるダイオード部の配置が平板部の形状により制約を受ける。しかし、一般に、RC-IGBTにおいてIGBT領域及びダイオード領域はチップ内に均一に分散配置される方が熱抵抗の観点から望ましい。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、リードフレームの形状の制約を受けずにダイオード領域を配置してサージ電流耐量の向上を図る半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、本発明に係る半導体装置は、表面電極及び裏面電極の間にそれぞれが連続し、互いに隣接するダイオード領域及びトランジスタ領域を有する半導体素子と、前記表面電極側の接合領域で前記表面電極に接合されるリードフレームと、前記ダイオード領域を覆うように設けられ、前記表面電極とリードフレームとを接合する接合部材と、を備え、平面視において、前記ダイオード領域と前記リードフレームの接合領域とが重なる領域は、前記ダイオード領域よりも小さい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、リードフレームの形状の制約を受けずにダイオード領域を配置してサージ電流耐量の向上を図る半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】第1実施形態に係る半導体装置の概略を例示する平面図である。
図1B図1Aにおいてリードフレームを透視する平面図である。
図1C図1Bの一部の拡大図である。
図2図1AのII-II線における断面図である。
図3A】第1変形例に係る半導体装置を配線基板に配置した状態の概略を例示する平面図である。
図3B】第1変形例に係る半導体装置についてリードフレームを透視して概略を例示する平面図である。
図4A図3AのIVA方向の側面図である。
図4B図3AのIVB方向の側面図である。
図5A】第2変形例に係る半導体装置の概略を例示する平面図である。
図5B図5Aにおいてリードフレームを透視する平面図である。
図6A】第3変形例に係る半導体装置の概略を例示する平面図である。
図6B図6Aにおいてリードフレームを透視する平面図である。
図7A】第4変形例に係る半導体装置の概略を例示する平面図である。
図7B図7AのVIIB-VIIB線における断面図である。
図7C図7Aの一部を拡大し、リードフレームを透視する平面図である。
図8A】第2実施形態に係る半導体装置の概略を例示する平面図である。
図8B図8Aにおいてリードフレームを透視する平面図である。
図8C図8AのIIIVC方向の側面図である。
図9A】第3実施形態に係る半導体装置の概略を例示する平面図である。
図9B図9Aにおいてリードフレームを透視する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態及び変形例について図面を参照しながら説明する。なお、本発明はこれらの実施形態や変形例に限定されない。また、図面において、一部の部材を省略している場合、各部材の大きさや形状、位置関係を誇張している場合がある。上面、下面等の表現は、相対的な位置関係の一例であり、使用の際の方向を限定するものではない。
【0009】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る半導体装置1Aについて図1Aから図2を参照しながら説明する。半導体装置1Aは、パワー半導体モジュールの一部を構成する装置である。
図1A図1Bに例示するように、半導体装置1Aは、半導体素子100と、配線部材であるリードフレーム108Aと、リードフレーム108Aを半導体素子100に接合する接合部材106を備えている。なお、図1Bはリードフレーム108Aを透視する平面図である。図3B図5B図6B図8B図9Bも同様にリードフレームを透視する平面図である。以下、半導体装置1Aの各構成について説明する。
【0010】
(半導体素子)
半導体素子100は、トランジスタやダイオード等が形成された半導体チップである。一例として、半導体素子100はRC-IGBTである。図2に例示するように、半導体素子100は、表面電極113及び裏面電極115の間にそれぞれが連続し、互いに隣接するダイオード領域103及びトランジスタ領域102を有する。
表面電極113は半導体素子の表面に設けられる電極であり、裏面電極115は半導体素子の裏面に設けられる電極である。表面電極113は、半導体素子100の周縁部であるターミネーション領域101を除く範囲を覆うように設けられる。裏面電極115は、表面電極113に対向するように設けられる。ターミネーション領域101にはダイオード領域及びトランジスタ領域は配置されず、ダミー配線117等を設けることができる。ターミネーション領域101には保護層119が設けられている。なお、半導体素子のリードフレームに接合される面を表面、後記する配線基板に接合される面を裏面として説明する。
【0011】
ダイオード領域103は、表面電極113及び裏面電極115の間に連続する領域であり、表面電極113及び裏面電極115の一方をアノード電極、他方をカソード電極とするダイオードとして機能する。
トランジスタ領域102は、表面電極113及び裏面電極115の間に連続する領域であり、表面電極113及び裏面電極115の一方をエミッタ電極、他方をコレクタ電極とするトランジスタ、ここではIGBTとして機能する。
【0012】
ダイオード領域103及びトランジスタ領域102は電極を共通にし、動作時の電流は半導体素子100の厚さ方向に流れる。ダイオード領域103及びトランジスタ領域102は、互いに隣接して半導体素子100内に交互に繰り返し配置されている。
図1Bに例示するように、ダイオード領域103は、平面視において互いに平行に延伸するストライプ状に配置されている。ストライプ状とすることにより、ダイオード領域を効率的に配置することができる。ちなみに、図1Bの例におけるストライプ状は、7本の縦じまから構成されているものを示しているが、その縦じまの1本1本がダイオード領域103である。
【0013】
(接合部材)
接合部材106は半導体素子100とリードフレーム108とを接合する部材である。接合部材106は、ダイオード領域103を覆うように設けられる。図1A図1Bに例示するように、接合部材106は平面視でダイオード領域103を包含している。ここでは、接合部材106は、例えばPb系はんだやSn系はんだである。
接合部材106がダイオード領域103を覆うとは、図2に例示するように、ダイオード領域103の端部において、接合部材106の厚さtが少なくとも表面電極113の厚さt以上であることをいう。表面電極113の厚さtは、例えば3μmから10μmとすることができる。接合部材106は、例えば100μmから1000μmの厚さに形成することができる。このため、接合部材106の厚さtは表面電極113の厚さtよりも大きい。しかし、例えば接合部材106の周縁部では、厚さtが徐々に減少する場合がある。ダイオード領域103の端部において、接合部材106の厚さtが減少している場合でも、接合部材106の厚さtが表面電極113の厚さt以上であれば、接合部材106がダイオード領域103を覆っているとする。
【0014】
(リードフレーム)
リードフレーム108は、半導体素子100と半導体素子100が配置される配線基板とを接続する部材である。リードフレーム108は、接合部材106によって、表面電極113側の接合領域107で表面電極113に接合されている。接合領域107は、接合部材106とリードフレーム108とが接合している領域である。
図1Bに例示するように、平面視において、接合領域107は接合部材106よりも小さく、接合部材106に包含されている。
【0015】
図1Cに例示するように、平面視において、ダイオード領域103はリードフレームの接合領域107と重なる領域R1を有しており、ダイオード領域103とリードフレームの接合領域107とが重なる領域R1は、ダイオード領域103よりも小さい(面積が小さい)。すなわち、ダイオード領域103とリードフレームの接合領域107とが重なる領域R1は、ダイオード領域103の一部であり全部ではない。また、平面視において、ダイオード領域103はリードフレーム108と重なる領域R2を有しており、ダイオード領域103とリードフレーム108とが重なる領域R2は、ダイオード領域103よりも小さい(面積が小さい)。すなわち、ダイオード領域103とリードフレーム108とが重なる領域R2は、ダイオード領域103の一部であり全部ではない。なお、図1Cでは、領域R1と領域R2とは同じ領域となっている。
【0016】
半導体装置1Aにおいて、ダイオード領域103の全域が接合部材106によって覆われており、かつ、ダイオード領域103の一部がリードフレーム108によって覆われている。ダイオード領域103の一部はリードフレーム108に覆われておらず、接合領域107にも覆われていない。
リードフレーム108Aでは、平面視において、接合領域107の外側にダイオード領域103が配置され、リードフレーム108Aの外側にダイオード領域103が配置されている。
【0017】
そして、リードフレーム108Aは、接合部材106を露出させる貫通穴116を有し、平面視において、貫通穴116にダイオード領域103が配置されている。貫通穴116は、接合部材106に対面する位置に形成されている。貫通穴の向きや形状、位置に特に制限はない。ここでは、貫通穴116は小判形状であり、接合部材106の中央の位置に、長手方向がストライプ状のダイオード領域に交差する向きに形成されている。
貫通穴の大きさは、接合部材との接合面積を確保するため、平面視においてリードフレームの接合領域の50%以下とし、接合領域の中央に近い位置に設けることが好ましい。リードフレーム108は貫通穴を複数有してもよい。
【0018】
このように、半導体装置1Aでは、リードフレームに覆われる位置に加えて、リードフレームに覆われない位置にもダイオード領域が配置されている。リードフレームの形状には特に制限はない。
リードフレーム108の材料は、金、銀、銅、アルミニウム等の金属とすることができ、ここでは銅である。リードフレーム108の厚さは、例えば1mmから3mmとすることができる。
【0019】
以上のような構成を備える半導体装置1Aは、接合部材がダイオード領域を覆うことで、接合部材の熱容量によってダイオード領域の温度上昇が抑制され、サージ電流耐量が向上する。このため、リードフレームの形状の制約を受けずにダイオード領域を配置することができる。発明者らの検討によれば、ダイオードのサージ電流耐量向上への寄与はリードフレームの熱容量より、接合部材の熱容量の方が圧倒的に大きい。従って、接合部材がダイオード領域を覆うことで十分にサージ電流耐量を確保することができる。
半導体装置1Aは、平面視において、ダイオード領域とリードフレームの接合領域とが重なる領域は、ダイオード領域よりも小さく(面積が小さく)、リードフレームの接合領域に重ならない領域にもダイオード領域を配置することができる。また、平面視において、ダイオード領域とリードフレームとが重なる領域は、ダイオード領域よりも小さく(面積が小さく)、リードフレームに重ならない領域にもダイオード領域を配置することができる。
【0020】
半導体装置1Aは、平面視において、接合領域の外側にダイオード領域が配置され、接合領域を含めてダイオード領域を分散させて配置することができる。また、平面視において、リードフレームの外側にダイオード領域が配置され、リードフレームの領域を含めてダイオード領域を分散させて配置することができる。ダイオード領域を分散して配置することで、半導体素子における発熱を均一化して温度上昇を抑えることができる。
半導体装置1Aは、リードフレームが接合部材を露出させる貫通穴を有し、貫通穴に余剰な接合部材が凝集することで、接合部材のリードフレーム外へのはみ出しを抑制し、均一な厚さで接合することができる。また、平面視において、貫通穴にダイオード領域が配置され、貫通穴と重なる領域を含めてダイオード領域を分散配置して、熱抵抗を低減することができる。
【0021】
[変形例]
次に、第1実施形態に係る半導体装置1Aの変形例について図3Aから図7Cを参照しながら説明する。ここで説明する変形例は第1変形例から第4変形例である。第1変形例から第4変形例に係る半導体装置1B、1C、1D、1Eは、第1実施形態に係る半導体装置1Aとリードフレームが異なり、その他の点は共通する。そこで、各変形例のリードフレームについて説明する。なお、第1変形例では、半導体装置が配置される配線基板についても説明する。
【0022】
(第1変形例)
第1変形例に係る半導体装置1Bは配線基板に配置した状態で図3Aに例示している。配線基板については後で説明する。半導体装置1Bのリードフレーム108Bは、その角部を切り欠いた後退部118を有している。ここでは、後退部118は、半導体素子100の1/8程度の面積を露出させる大きさに形成されている。後退部118の大きさは、さらに大きくてもよく、小さくてもよい。
半導体素子100は、露出している角部にパッド104を有している。パッド104はボンディングワイヤ105によって配線基板に接続されている。パッド104は、半導体素子100の内部で、例えばトランジスタ領域102のゲートに接続されている。なお、他の変形例及び実施形態も同様に半導体素子100の表面にパッド104を設けることができるが、他の変形例及び実施形態の図では記載を省略している。
【0023】
第1変形例において、ダイオード領域103及び接合部材106も切り欠くことができる。ダイオード領域103及び接合部材106の一部は、後退部118に配置されている。平面視において、後退部118にダイオード領域103が配置され、後退部118においても接合部材106がダイオード領域103を覆っている。後退部118においてダイオード領域103の一部はリードフレーム108Bよりも外側に位置している。一方、後退部118を除く外周において、リードフレーム108Bの外側にはダイオード領域103は配置されていない。
後退部118を除く部分では、リードフレーム108Bはトランジスタ領域102及び接合部材106を覆う大きさに形成されている。図3Bに例示するように、接合領域107は接合部材106よりも一回り小さい形状となっている。
【0024】
図4A図4Bに例示するように、リードフレーム108Bは下面側に凸部121Bを有し、凸部121Bの接合部材106に対面する面が接合領域107となっている。ここでは、凸部121Bの上面側には凹部121Aが形成されている。凹部121A、凸部121Bは、例えば板状のリードフレームの半抜き加工によって形成することができる。凹部121Aは設けなくてもよい。なお、図4A図4Bは、それぞれ図3AのIVA方向、IVB方向の側面図である。
図3A図4A及び図4Bにおいて、半導体装置1Bは配線基板150に配置されている。ここで配線基板150について説明する。図4Aに例示するように、配線基板150は、絶縁基板111の上面に導体パターン110、下面に導体層112が形成された基板である。導体パターン110は、半導体素子100や配線部材が接続される所定のパターンに形成されている。導体パターン110には、半導体素子100の裏面電極、リードフレーム108及びボンディングワイヤ105が接合されている。導体パターン110と半導体素子100の裏面電極との接合部は、基板接合部109として図示している。
【0025】
導体層112は、絶縁基板111の下面に一様な厚さで形成されている。導体層112は、パワー半導体モジュールの底板となるベースに接合される。そして、半導体装置1B及び配線基板150を囲むケース、ケースが囲むベース上の部材を封止する封止部材、さらに蓋部が設けられてパワー半導体モジュールとなる。なお、他の変形例及び実施形態も同様に配線基板150に配置され、パワー半導体モジュールを構成することができる。
絶縁基板111の材料は、例えば酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等のセラミックスとすることができる。導体パターン110及び導体層112の材料は、金、銀、銅、アルミニウム等の金属とすることができ、ここでは銅である。基板接合部109及び導体パターン110とリードフレーム108との接合部の材料は、接合部材106と同様の材料とすることができる。
【0026】
図3Bに例示するように、ここでは、接合部材106は、矩形状の1つの角部を切り欠いた五角形状に形成されている。このような形状の接合部材106の形成は、例えば予め成形されたシート状はんだを準備して行うことができる。この場合、半導体素子100、シート状はんだ、リードフレーム108の順に積層し、リフローすることで接合させる。また、半導体素子100の表面電極にペースト状のはんだを印刷し、その上にリードフレームを設置した状態でリフローを行ってもよい。
【0027】
第1変形例に係る半導体装置1Bは、リードフレームが、その角部を切り欠いた後退部を有することで、半導体素子の角部のパッドにボンディングワイヤを接合するボンディング装置のツールとの干渉を回避することができる。なお、接合部材はリードフレームと比較して高さが低いため、パッド近傍まで濡れ広がっても問題ない。
半導体装置1Bは、後退部にダイオード領域が配置され、後退部を含めてダイオード領域を分散して配置することができ、半導体素子における発熱を均一化して温度上昇を抑えることができる。
【0028】
(第2変形例)
図5Aに例示するように、第2変形例に係る半導体装置1Cのリードフレーム108Cは、平面視で細長い矩形状であり、短手方向は半導体素子100の幅の半分以下、長手方向は半導体素子100よりも長い大きさである。そして、長手方向の一端側が接合部材106の中央に配置され、接合されている。
図5Bに例示するように、接合領域107は接合部材106の中央に位置し、第1実施形態の接合領域よりも小さい。リードフレーム108Cは、短手方向を短くすることで、接合部材106と対面する面積を小さくし、接合領域107を小さくしている。リードフレーム108Cの形状及び大きさを調整することで、接合領域107の面積を調整することができる。接合領域107の面積は、例えば、平面視における接合部材106の面積の20%以上60%以下とすることができる。
【0029】
第2変形例は、平面視において、接合領域の外側にダイオード領域が配置され、接合領域の外側に配置されているダイオード領域の割合が第1実施形態よりも大きい。例えば、平面視において、接合領域の外側に配置されているダイオード領域の面積は、接合領域に配置されているダイオード領域の面積の2倍以上4倍以下とすることができる。
第2変形例に係る半導体装置1Cは、リードフレームの接合領域が小さいことで、接合部材や表面電極に及ぼす熱応力が小さくなり、熱疲労寿命を向上させることができる。
【0030】
(第3変形例)
リードフレームは複数に分離されていてもよい。図6Aに例示するように、第3変形例に係る半導体装置1Dのリードフレーム108Dは、2つのリードフレーム108Dに分離されている。リードフレーム108Dは、第2変形例のリードフレーム108Cよりも短手方向がさらに短い矩形状であり、互いに平行に配置されている。そして、平面視において、分離されたリードフレーム108D間の間隙にダイオード領域103が配置されている。なお、リードフレームは3つ以上に分離されてもよい。
第3変形例では、接合領域107も2つに分離され、1つの接合領域107は第2変形例よりもさらに小さくなっている。例えば、接合領域の面積の合計が第2変形例と同じになるようにしてもよい。
【0031】
第3変形例に係る半導体装置1Dは、リードフレームが複数に分離されていることで、1つのリードフレームの接合領域をさらに小さくすることができ、熱疲労寿命をさらに向上させることができる。
【0032】
(第4変形例)
図7Aに例示するように、第4変形例に係る半導体装置1Eのリードフレーム108Eは、平面視で半導体素子100の外形を包含している。一方、接合領域107は、第1実施形態に係る半導体装置1Aと同様の形状、大きさとなっている。また、接合部材106の中央の位置に貫通穴116を有する点も第1実施形態と同様である。
図7Bに例示するように、リードフレーム108Eは、図における下面側に有する凸部123が接合部材106に対面して接合領域107を形成している。ここでは、凸部123はリードフレーム108Eの厚みを増して形成されている。
【0033】
第4変形例は、平面視における接合領域107とダイオード領域103との関係は第1実施形態と同様である。ダイオード領域103と接合領域107とが重なる領域R1は図1Cに例示される領域である。一方、リードフレーム108Eとダイオード領域103との関係は第1実施形態と異なる。図7Cに例示するように、第4変形例では、ダイオード領域103とリードフレーム108とが重なる領域R2は接合領域107の外側まで広がっている。なお、図7Cでは領域R1は図示しておらず、領域R2を斜線で示している。平面視において、接合領域107の外側にダイオード領域103が配置されているが、リードフレーム108Eの外側にはダイオード領域103は配置されていない。
そして、第4変形例は、接合部材106を露出させる貫通穴116を有し、平面視において、貫通穴116にダイオード領域103が配置されている。
【0034】
第4変形例に係る半導体装置1Eは、接合領域の形状とリードフレームの形状を独立して調整することができる。これにより、ダイオード領域を分散配置して温度上昇を抑えながら、接合領域を小さくして熱応力を低減し、リードフレームの形状の自由度を高めることができる。
【0035】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る半導体装置2について図8Aから図8Cを参照しながら説明する。図8A図8Bに例示するように、半導体装置2の接合部材106は、平面視において2つの領域に分割されている。2つの領域の接合部材106A、106Bの直線状の境界は、ストライプ状のダイオード領域103の延伸方向に直交している。
半導体装置2の半導体素子200は、一例としてRC-IGBTであるが、第1実施形態の半導体素子100と異なる。半導体素子200では、ダイオード領域103が、接合部材106A側のダイオード領域103Aと接合部材106B側のダイオード領域103Bとに分割されている。そして、接合部材106Aがダイオード領域103Aを覆い、接合部材106Bがダイオード領域103Bを覆っている。
【0036】
半導体素子200は、分割された接合部材の間を延伸する素子内配線114を有する。素子内配線114は、平面視において、2つの領域の接合部材106A、106Bの境界を直線状に延伸している。図8Bにおいて、素子内配線114は、半導体素子200の中央を横断するように設けられている。素子内配線114は、例えばトランジスタ領域へのゲート配線や、温度検出ダイオードとその配線とすることができる。
図8A図8Cに例示するように、リードフレーム108Fは、2つの接合部材106A、106Bに跨るように配置されている。ここでは、リードフレーム108Fは、2つの接合部材106A、106Bのそれぞれに対面するように厚みを増して形成される2つの脚部125を有し、脚部125の表面電極側の面が接合領域107A、107Bを形成している。
【0037】
平面視において、接合領域107Aの外側にダイオード領域103Aが配置され、接合領域107Bの外側にダイオード領域103Bが配置されている。また、平面視において、リードフレーム108Fの外側にダイオード領域103が配置されている。半導体装置2は、第1実施形態及び変形例と同様に、ダイオード領域103を分散して配置することができる。
【0038】
第2実施形態に係る半導体装置2は、第1実施形態と同様に、接合部材がダイオード領域を覆うことでサージ電流耐量を確保することができる。また、ダイオード領域を分散して配置することができ、半導体素子における発熱を均一化して温度上昇を抑えることができる。そして、リードフレームによる熱応力の影響を抑えながら、半導体素子を横断又は縦断するように素子内配線を設けることができる。また、素子内配線を金属とすることで、配線抵抗を低減することができる。
なお、接合部材は、平面視において3つ以上の領域に分割されていてもよい。また、リードフレームは、第3変形例のリードフレーム108Dのように、分離されたリードフレームとしてもよい。
2つの脚部125を有するリードフレーム108Fは、第1実施形態のような分離されていない接合部材106と接合させてもよい。この場合、分離されていない接合部材106上に分離された2つの接合領域を形成することができる。
【0039】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る半導体装置3について、図9A及び図9Bを参照しながら説明する。半導体装置3は、接合部材106及びリードフレーム108Aについて第1実施形態と共通するため説明を省略する。一方、半導体素子300は、一例としてRC-IGBTであるが、第1実施形態の半導体素子100と異なる。
図9A図9Bに例示するように、半導体素子300は、ダイオード領域103Cが、平面視において円形状の領域が等間隔に並ぶアイランド状に配置されている。ダイオード領域103は直線状に延伸していなくてもよく、その配置はストライプ状に限られない。半導体素子300では、円形状のダイオード領域103Cが、三角格子の格子点に位置するように等間隔に配置されている。
【0040】
第3実施形態に係る半導体装置3は、第1実施形態と同様に、接合部材がダイオード領域を覆うことでサージ電流耐量を確保することができる。また、ダイオード領域を分散して配置することができ、半導体素子における発熱を均一化して温度上昇を抑えることができる。そして、ダイオード領域の配置をアイランド状とすることで、トランジスタ領域とダイオード領域との境界線の総延長を長くすることができ、トランジスタ領域とダイオード領域との熱結合を向上させて、熱抵抗を低減することができる。
なお、第3実施形態の半導体素子300は、第1実施形態や変形例、第2実施形態の半導体素子に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0041】
1A 半導体装置
100 半導体素子
101 ターミネーション領域
102 トランジスタ領域
103 ダイオード領域
104 パッド
105 ボンディングワイヤ
106 接合部材
107 接合領域
108 リードフレーム
109 基板接合部
110 導体パターン
111 絶縁基板
112 導体層
113 表面電極
114 素子内配線
115 裏面電極
116 貫通穴
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B