(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139459
(43)【公開日】2025-09-26
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/08 20060101AFI20250918BHJP
F25D 23/02 20060101ALI20250918BHJP
【FI】
F25D23/08 G
F25D23/02 304Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038410
(22)【出願日】2024-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪川 充央
(72)【発明者】
【氏名】尾渡 謙児
【テーマコード(参考)】
3L102
【Fターム(参考)】
3L102JA01
3L102KA01
3L102KE04
3L102MA01
3L102MB06
(57)【要約】
【課題】扉面材に生じる変形を抑制しながらも、扉面材の発泡断熱材側に空洞の発生を抑制することができる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】実施形態の冷蔵庫1は、貯蔵室を内部に有する冷蔵庫本体2と、冷蔵庫本体2に設けられた扉42とを備えた冷蔵庫1において、扉42は、庫外側の前面を形成する扉面材50と、扉面材50の後方に設けられ扉面材50との間に断熱空間Sを形成する扉内板100と、断熱空間Sに発泡充填された発泡断熱材130と、扉面材50と発泡断熱材130とを分離する分離部材120とを備え、分離部材120が扉面材50において扉42の前面を形成する前面形成部51の一部分に設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を内部に有する冷蔵庫本体と、前記冷蔵庫本体に設けられた扉とを備えた冷蔵庫において、
前記扉は、庫外側の前面を形成する扉面材と、前記扉面材の後方に設けられ前記扉面材との間に断熱空間を形成する扉内板と、前記断熱空間に発泡充填された発泡断熱材と、前記扉面材と前記発泡断熱材とを分離する分離部材とを備え、
前記分離部材が前記扉面材において前記扉の前面を形成する前面形成部の一部分に設けられている、冷蔵庫。
【請求項2】
前記扉面材の前記断熱空間側に設けられた構造体を備え、
前記構造体は、前記分離部材に固定され前記扉面材と分離する分離領域と、前記扉面材に固定された固定領域とを備える、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記扉内板は後方へ膨らんだ膨出部を備え、前記分離部材が前記膨出部の前方に設けられている、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記扉の上面部及び下面部の少なくとも一方に前記断熱空間へ凹んだ凹部を備え、
前記分離部材が、前記上面部及び前記下面部のうち前記凹部を備えた面部側に設けられた前記膨出部の前方に設けられている、請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記扉の上面部及び下面部の少なくとも一方に前記断熱空間へ凹んだ凹部と、前記凹部の前記断熱空間側に貼付された金属箔膜体とを備え、
前記金属箔膜体が前記分離部材の端部を覆っている、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記扉面材の前記断熱空間側に設けられた構造体と、前記扉面材と前記構造体との間に設けられ前記構造体の前記扉面材側に前記発泡断熱材が充填される空間を形成する空間形成部材とが設けられている、請求項1に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫の扉は、庫外側の前面を形成する扉面材と、庫内側の後面を形成する扉内板と、扉の上下両端を形成する端部部材とが組み合わさり、その内部に形成された断熱空間に発泡断熱材が充填されている。
【0003】
このような扉では、発泡断熱材の熱収縮により扉面材が断熱空間側に引き寄せられるため、鋼板などの金属板のように変形しやすい材料で扉面材が形成されている場合、発泡断熱材の熱収縮によって扉面材が凹んで冷蔵庫の美観を損ねるおそれがある。
【0004】
これに対して、扉面材と発泡断熱材との間に分離部材を設け、発泡断熱材の熱収縮力が扉面材に伝わりにくくすることで、扉面材の変形を抑制すること技術が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1によると、扉面材と発泡断熱材とが分離しているため、発泡断熱材が熱収縮すると、扉面材と発泡断熱材との間に空洞が生じて、僅かな外力を受けても扉面材が変形してしまうおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、扉面材に生じる変形を抑制しながらも、扉面材の発泡断熱材側に空洞の発生を抑制し、ひいては扉面材の変形を抑制することができる冷蔵庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態による冷蔵庫は、貯蔵室を内部に有する冷蔵庫本体と、前記冷蔵庫本体に設けられた扉とを備えた冷蔵庫において、前記扉は、庫外側の前面を形成する扉面材と、前記扉面材の後方に設けられ前記扉面材との間に断熱空間を形成する扉内板と、前記断熱空間に発泡充填された発泡断熱材と、前記扉面材と前記発泡断熱材とを分離する分離部材とを備え、前記分離部材が前記扉面材において前記扉の前面を形成する前面形成部の一部分に設けられているものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図9】上側の端部部材の左端部を斜め前下方から見た斜視図
【
図10】上側の端部部材の右端部を斜め前下方から見た斜視図
【
図11】分離部材と真空断熱材を取り付けた扉前板を後方から示す図
【
図12】変更例1の冷蔵庫における扉の要部拡大断面図
【
図13】変更例2の冷蔵庫における扉の要部拡大断面図
【
図14】変更例2の冷蔵庫における分離部材と真空断熱材を取り付けた扉前板を後方から示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態について図面に基づき説明する。
【0011】
(1)冷蔵庫10の構成
図1及び
図2に実施形態の冷蔵庫10を示す。冷蔵庫10の筐体11は、冷蔵庫10の外郭を形成する外箱12と、外箱12と組み合わされる内箱13と、外箱12と内箱13との間の断熱部14とを有している。断熱部14には断熱材が充填されている。その断熱材を、外箱12と内箱13が挟んでいる。
【0012】
筐体11の内側は断熱仕切壁21によって上下に仕切られている。断熱仕切壁21より上は冷蔵空間である。冷蔵空間は冷蔵保存に適した温度である冷蔵温度に維持される。また、断熱仕切壁21より下は冷凍空間である。冷凍空間は冷凍保存に適した温度である冷凍温度に維持される。
【0013】
冷蔵空間及び冷凍空間には、食品を貯蔵する複数の貯蔵室がそれぞれ設けられている。各貯蔵室は前方に開口部を有し、利用者はその開口部から食品を出し入れできる。
【0014】
冷蔵空間には上から順に貯蔵室としての冷蔵室20及び野菜室22が設けられている。冷蔵室20内には複数の載置棚24が設けられている。冷蔵室20内の載置棚24の周囲は、冷蔵温度の範囲内の例えば2~5℃に維持される。冷蔵室20内の下部にはチルド室26が設けられている。チルド室26は冷蔵室20の内部でも特に低温に維持される場所で、例えば0~3℃に維持される。
【0015】
冷蔵室20の前方開口部は、左右一対の冷蔵室扉40、41で開閉される。この冷蔵室扉40、41は、冷蔵庫本体2の左右両側に設けられたヒンジ(図示省略)により回動自在に枢支された回動式の扉である。一方の冷蔵室扉40には操作パネル15が設けられている。操作パネル15は、利用者が冷蔵庫10の操作をする部分であり、利用者に対し必要な情報を表示する部分でもある。冷蔵室扉40の庫内側の面には、複数の収納ポケット29が取り付けられている。
【0016】
野菜室22は冷蔵温度の範囲内の例えば4~7℃に維持される。野菜室22には引き出し式の収納容器が収納されている。野菜室22の前方開口部は、引き出し式の野菜室扉42で開閉される。
【0017】
冷凍空間の上部左側には製氷室(図示省略)が設けられている。また、冷凍空間の上部右側(製氷室の右側)には小冷凍室27が設けられている。製氷室及び小冷凍室27の下には冷凍室28が設けられている。製氷室、小冷凍室27及び冷凍室28にはそれぞれ引き出し式の収納容器が収納されている。製氷室、小冷凍室27及び冷凍室28の内部は、通常運転時は、冷凍温度の範囲内の例えば-20~-18℃に維持される。
【0018】
製氷室の前方開口部は引き出し式の製氷室扉43で開閉される。また、小冷凍室27の前方開口部は引き出し式の小冷凍室扉44で開閉される。また、冷凍室28の前方開口部は引き出し式の冷凍室扉45で開閉される。
【0019】
冷蔵空間の背後には第1冷却室35が設けられている。第1冷却室35は、筐体11の内箱13と、貯蔵室の奥面を構成する壁19との間に形成された空間である。この第1冷却室35に、冷気を発生させる第1冷却器30と、発生した冷気を循環させる送風装置としての第1送風機32が設けられている。第1冷却器30で発生した冷気は、第1冷却器30から上方へ向かって延びるダクト31を通って冷蔵空間へ吹き出て冷蔵空間を循環する。冷蔵空間を循環した冷気は第1冷却器30の場所へ戻る。
【0020】
また、冷凍空間の背後には、冷気を発生させる第2冷却器33と、発生した冷気を循環させる送風装置としての第2送風機34とが設けられている。第2冷却器33で発生した冷気は、冷凍空間へ吹き出て冷凍空間を循環した後、第2冷却器33の場所へ戻る。
【0021】
冷蔵庫10の下部後方には機械室36が設けられている。機械室36には圧縮機37や凝縮器(不図示)等が収納されている。圧縮機37、凝縮器、第1冷却器30、第2冷却器33等は周知の冷凍サイクル装置を構成している。圧縮機37で圧縮された冷媒が第1冷却器30及び第2冷却器33に交互に流れることにより、第1冷却器30及び第2冷却器33で交互に冷気が発生する。
【0022】
(2)扉の構造
次に、本実施形態の扉の構造について説明する。冷蔵室扉40、41、野菜室扉42、製氷室扉43、小冷凍室扉44及び冷凍室扉45は、大きさ及び形状が異なっているが、同様の構造となっているため、ここでは、野菜室扉42(以下単に「扉42」とする)を例に説明する。
【0023】
以下の説明において、左右、前後、上下とは、冷蔵庫10を前方から見たときの表現である。そして、扉42における左右方向の中心側のことを「幅方向内側」とする。また、扉42における左右方向の端部側のことを「幅方向外側」とする。また、扉42における上下方向の中心側のことを「扉上下方向内側」とする。また、扉42における上下方向の端部側のことを「扉上下方向外側」とする。
【0024】
図3~
図5に示すように、扉42は、前方の扉面材50と、後方の扉内板100と、上下それぞれの端部部材60、75とを備え、扉面材50と扉内板100と上下の端部部材60,75とで断熱空間Sが形成されている。扉42の断熱空間S内には、構造体110と分離部材120と発泡断熱材130とが設けられている。
【0025】
(3)扉面材50
扉面材50は鋼板などの金属板を折り曲げて形成されたものであり、扉42の正面、側面及び背面の左右側縁部を構成する。
【0026】
具体的には、
図7に示すように、扉面材50には、扉42の前面を形成する略矩形状の前面形成部51と、前面形成部51の一端辺である第1端辺(例えば右端辺)50aから後方に突出した第1端面部52と、第1端面部52の後端辺(以下、この辺を第1後端辺ということもある)50bから幅方向内側へ突出した第1後面部53と、前面形成部51において第1端辺50aと向かい合う第2端辺(例えば左端辺)50cから後方に突出した第2端面部56と、第2端面部56の後端辺(以下、この辺を第2後端辺ということもある)50dから幅方向内側へ延びる第2後面部57とを備える。
【0027】
前面形成部51は、平面状であってもよく、また、幅方向の断面形状が幅方向中央部において前方に膨らむように湾曲する湾曲面等の曲面状であってもよい。
【0028】
また、扉面材50は、第1端面部52のうち前面形成部51と第1後面部53とを繋ぐ端部(例えば、第1端面部52の上下両端部)からそれぞれ幅方向内側に突出する第1取付面55と、第2端面部56のうち前面形成部51と第2後面部57とを繋ぐ端部(例えば、第2端面部56の上下両端部)からそれぞれ幅方向内側に突出する第2取付面58と、前面形成部51の第1端辺50a及び第2端辺50c以外の端辺(例えば、前面形成部51の上下両端)からそれぞれ後方へ突出する第3取付面54とを備える。
【0029】
なお、扉面材50の上端部の構造と下端部の構造は、基本的な構造が共通している。つまり、第1取付面55、第2取付面58、及び第3取付面54や、第1後面部53及び第2後面部57は、扉面材50の上端部と下端部で構造が共通しているため、ここでは、扉面材50の上端部について説明し、下端部の構成については対応する構成に同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0030】
(4)扉内板100
扉内板100は、合成樹脂の成形品である。
図4~
図6に示すように、扉内板100は扉42における庫内側の面を構成する。扉内板100の周縁部には、上下辺部及び左右辺部に沿って後方へ膨らんだ膨出部101が設けられている。
【0031】
また、扉内板100の周縁部には、膨出部101の外側を取り囲むように取付部102が設けられている。取付部102にはガスケットと呼ばれる不図示の封止部材が取り付けられている。封止部材は、野菜室22の前面開口部の周縁と前後方向に対向する位置に設けられ、封止部材内部に配した磁石の磁力により冷蔵庫本体2の開口部周縁に密着することで、扉42と野菜室22の前面開口部との間を閉じる。
【0032】
(5)端部部材60、75
上下の端部部材60、75は、合成樹脂の成形品である。上側の端部部材60は、扉面材50及び扉内板100の上端部と接合され扉42における上端の面を構成する。下側の端部部材75は、扉面材50及び扉内板100の下端部と接合され扉42における下端の面を構成する。上下の端部部材60、75は、大きさ及び形状が異なり、また、後述する凹部61aに相当する構成が端部部材75に設けられていない点で異なっているが、その他は同様の構造となっているため、ここでは、上側の端部部材60を例に説明する。
【0033】
図5、
図8~
図10に示すように、端部部材60は、外面部61と、第1突部62、第2突部63と、第3突部64と、後部壁65とを備える。
【0034】
外面部61は、扉42の外部側を構成する部分であり、扉面材50の第1取付面55、第2取付面58及び第3取付面54の扉上下方向外側に配置され、扉42の上面側を構成する。
図3~
図5、
図8~
図10に示すように、外面部61には、扉42の手掛け部として機能する下方に凹んだ凹部61aが形成されている。
【0035】
第1突部62は外面部61の左端部から扉上下方向中心側へ立ち上がり前後方向に延びる第2内部壁69から幅方向外側へ突出する突起からなる。第1突部62は、外面部61の左端部から扉上下方向内側へ間隔をあけて設けられ、外面部61の左端部との間に扉面材50の第1取付面55を収容する第1収容部66を形成する。
【0036】
第2突部63は外面部61と同程度に扉の右方向に突出するとともに前後方向に亘って連続して設けられた突条からなる。第2突部63は、外面部61の右端部から扉上下方向内側へ間隔をあけて設けられ、外面部61の右端部との間に前後方向に延びる溝状の第2収容部67を形成する。第2収容部67には扉面材50の第2取付面58が収容されている。
【0037】
第3突部64は外面部61と同程度に扉の前方向に突出するとともに左右方向に亘って連続して設けられた突条からなる。第3突部64は、外面部61の前端部から扉上下方向内側へ間隔をあけて設けられ、外面部61の前端部との間に左右方向に延びる溝状の第3収容部68を形成する。第3収容部68には扉面材50の第3取付面54が収容されている。
【0038】
後部壁65は外面部61の後端から扉上下方向内側へ突出し左右方向に延びる平板状の突起である。後部壁65は扉内板100における扉内部側の面が接触する。
【0039】
このような端部部材60は、第1収容部66に扉面材50の第1取付面55が差し込まれ、第2収容部67に第2取付面58が差し込まれ、第3収容部68に第3取付面54が差し込まれることで、扉面材50が取り付けられる。
【0040】
(6)構造体110
構造体110は、断熱空間Sに配置する前に予め所定形状に成形された部材であって、扉面材50の前面形成部51の断熱空間S側に設けられている。構造体110は、平板状の部材であることが好ましく、また構造体110を設ける扉の上下方向および左右方向における中央部を含み、当該扉の前面の半分以上の領域を占める大きさの部材であることが好ましい。構造体110としては例えば、真空断熱材や発泡スチロールや段ボール等の平板状に成形された断熱材を好適に用いることができる。
【0041】
構造体110は、前面形成部51に接着固定された固定領域110aと、分離部材120に接着固定され前面形成部51と分離する分離領域110bとを備える。
【0042】
例えば、構造体110の上下方向中央部及び下部は、前面形成部51の断熱空間S側に重ねて設けられ、接着剤や両面テープなどの接着部によって前面形成部51に直接固定された固定領域110aを構成する。なお、接着部は固定領域110aの全体に設けても、一部分に設けてもよい。
【0043】
また、構造体110の上端部は、分離部材120の断熱空間S側に重ねて設けられ、両面テープや接着剤によって分離部材120に固定されている。後述するように分離部材120は前面形成部51に対する位置が変更可能な状態で前面形成部51の断熱空間S側に設けられているため、分離部材120に固定された構造体110の上端部は前面形成部51と分離する分離領域110bを構成する。
【0044】
(7)分離部材120
分離部材120は、金属製あるいは樹脂製の平板状の部材であって扉面材50の前面形成部51の一部分に設けられている。分離部材120は、前面形成部51に対して接着剤などによって直接接着されておらず、前面形成部51に対する位置が変更可能な状態で前面形成部51の断熱空間S側に沿わせて設けられている。
【0045】
分離部材120の厚みは任意に設定することができるが、分離部材120が扉面材50と同様の鋼板で形成されている場合、分離部材120の厚みは扉面材50の厚みよりも薄くてもよい。扉面材50を構成する鋼板の厚みが0.35mm~0.55mmに対して、分離部材120の厚みを0.25mm~0.45mmとすることができる。
【0046】
分離部材120は、前面形成部51の一部分に沿って設けられていれば、任意の大きさ及び任意の位置に設けることができる。
【0047】
図5及び
図6に例示すように、分離部材120の少なくとも一部分が、前方から見て扉内板100の周縁部に設けられた膨出部101の一部分と重なるように設けられることが好ましい。また、分離部材120の少なくとも一部分が、扉42において凹部61aを備える上面部側の膨出部101a、つまり、扉内板100の上辺部に沿って設けられた膨出部101aと重なるように設けられることがより好ましい。
【0048】
また、
図10に例示するように、分離部材120は、左右方向及び上下方向のいずれか一方において扉面材50の前面形成部51の半分以上の領域、より好ましくは80%以上の領域を覆うように設けられ、左右方向及び上下方向の他方において前面形成部51の半分以下の領域を覆うように設けられることが好ましい。
【0049】
更に好ましくは、分離部材120は、左右方向及び上下方向のうち前面形成部51の長辺方向において前面形成部51の半分以上の領域、より好ましくは80%以上の領域を覆うように設けられ、短辺方向において前面形成部51の半分以下の領域を覆うように設けられる。
【0050】
本実施形態では、分離部材120は、左右方向において前面形成部51の半分以上の領域を覆うように設けられ、上下方向において前面形成部51の半分以下の領域を覆うように設けられている。
【0051】
また、
図10に示すように、分離部材120は扉面材50の前面形成部51と構造体110との境界部分の少なくとも一部に設けられることが好ましい。つまり、分離部材120は構造体110の周縁の少なくとも一部に分離部材120が設けられることが好ましい。本実施形態では、分離部材120が構造体110の上縁と前後方向に重なるように前面形成部51と構造体110との間に設けられている。
【0052】
(8)発泡断熱材130
発泡断熱材130は、断熱空間Sに注入した発泡原液が発泡により膨張して断熱空間Sに充填された発泡ウレタン等の断熱材である。
【0053】
具体的には、発泡断熱材130は、構造体110及び分離部材120を前面形成部51の断熱空間S側に設けた後、断熱空間Sに発泡原液を注入することで、上側の端部部材60に設けられた凹部61aの周囲や、膨出部101の内部や、構造体110及び分離部材120の後方等、断熱空間Sにおける構造体110及び分離部材120が存在しない箇所に充填されている。
【0054】
(9)扉42の製造方法
次に上記した扉42の製造方法について説明する。
【0055】
まず、作業者は、完成状態の扉42を前方から見たときに扉内板100の上辺部に沿って設けられた膨出部101aと重なる位置に分離部材120を配置する。
【0056】
そして、構造体110に接着剤や両面テープなどの接着部を設け、分離部材120と前面形成部51とに跨がるように構造体110を貼り付ける。
【0057】
つまり、構造体110の上端部が分離部材120の下端部に重なり、構造体110の上下方向中央部及び下部が前面形成部51の断熱空間S側に重なるように構造体110を配置して、構造体110を分離部材120及び前面形成部51の断熱空間S側に固定する。
【0058】
この状態では、構造体110の上下方向中央部及び下部は接着部によって前面形成部51に直接固定されているが、分離部材120は前面形成部51に直接固定されていない。そのため、分離部材120と重ねて設けられた構造体110の上端部は前面形成部51に対して移動可能な状態にある。
【0059】
次に、上側の端部部材60及び下側の端部部材75を扉面材50へ取り付ける。これにより、扉42が組み立て状態となり、扉面材50、端部部材60、75により背面が開口する空間が形成する。
【0060】
このようにして組み立て状態となった後、作業者が、背面の開口から、扉42の内部空間にウレタンフォーム等の流動性のある発泡樹脂原液を注入する。発泡樹脂原液は、発泡により膨張して扉42の内部空間を流動し、扉42の内部空間に充填された後に固化して扉42が完成する。
【0061】
作業者は、他の扉も、野菜室扉42と同様の工程で製造する。そして、作業者は、完成したそれぞれの扉や、各種機器類を筐体11に取り付け、冷蔵庫10として完成させる。
【0062】
(10)効果
本実施形態では、前面形成部51に固定されていない分離部材120が前面形成部51の断熱空間S側に設けられているため、断熱空間Sに充填された発泡断熱材130に熱収縮が生じても、前面形成部51が断熱空間S側に引っ張られにくくなり、前面形成部51の変形を抑えることができる。
【0063】
しかも、分離部材120は前面形成部51の一部分に設けられているため、発泡断熱材130の熱収縮によって分離部材120が後方へ引っ張られても広範囲にわたって分離部材120と前面形成部51との間に空洞が生じにくい。そのため、前面形成部51が外力をうけても変形しにくい。
【0064】
本実施形態において、前面形成部51に固定された固定領域110aが構造体110に設けられている場合であると、発泡断熱材130の熱収縮によって構造体110が断熱空間S側に引っ張られても構造体110と前面形成部51との間に広範囲にわたる空洞が生じにくくなる。
【0065】
また、本実施形態において、分離部材120の少なくとも一部分が、前方から見て扉内板100の周縁部に設けられた膨出部101の一部分と重なるように設けられている場合、発泡断熱材130の厚みが大きく熱収縮量が大きくなりやすい膨出部101の近傍において、発泡断熱材130の熱収縮力が前面形成部51に伝達されにくくなり、前面形成部51に変形を効果的に抑えることができる。
【0066】
特に、扉42に設けられた凹部61aによって発泡断熱材の厚みが大きく変化する箇所では、発泡断熱材130の熱収縮力が大きく変化しやすいが、凹部61aを備える側の膨出部101aと重なるように分離部材120を設けることで、前面形成部51に変形を効果的に抑えることができる。
【0067】
(11)変形例
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0068】
上記の実施形態に対して、以下に説明する複数の変更例のうちいずれか1つを適用しても良いし、以下に説明する変更例のうちいずれか2つ以上を組み合わせて適用しても良い。また、以下の変更例の他にも様々な変更が可能である。
【0069】
(12)変更例1
図12に示すように、扉42の外面部61に設けられた凹部61aの断熱空間S側に金属薄膜体80を設けてもよい。金属薄膜体80は、例えば、アルミニウム等の金属薄膜の一方の面に接着部が設けられた金属箔テープからなる。金属薄膜体80は、凹部61aから扉上下方向内側へ延び、分離部材120の端部120aを覆っている。
【0070】
本変更例では、構造体110が真空断熱材の場合に分離部材120によって構造体110を損傷するのを防ぐことができるとともに、庫外空気に接する前面形成部51の熱を凹部61aへ伝達して凹部61aにおける結露を抑えることができる。
【0071】
(13)変更例2
図13に示すように、扉面材50の前面形成部51と構造体110との間に空間形成部材150を設けてもよい。空間形成部材150は、軟質のポリウレタンフォーム、ゴムスポンジ、ポリエチレンフォーム、アクリルフォームなど適度な柔軟性を有する部材からなり、接着剤や両面テープなどによって構造体110に固定されている。空間形成部材150は、構造体110を部分的に前面形成部51から離隔して配置させ、構造体110と前面形成部51との間に発泡断熱材130が充填される空間を形成する。
【0072】
なお、空間形成部材150は任意の形状及び大きさとすることができるが、分離部材120よりも厚みが大きく、構造体110よりも厚みが小さいことが好ましい。例えば、分離部材120の厚みが0.25mm~0.45mm、構造体110の厚みが5mm~30mmに対して、空間形成部材150の厚みを2mm~5mmとすることができる。
【0073】
また、空間形成部材150は構造体110の任意の位置に設けることができるが、
図13及び
図14に示すように、空間形成部材150が分離部材120の断熱空間S側に重なるように空間形成部材150を設けることが好ましい。空間形成部材150の一部を分離部材120に重ね、他の一部を前面形成部51に重ねて配置することがより好ましい。
【0074】
分離部材120の断熱空間S側に重ねて空間形成部材150を設ける場合、空間形成部材150において分離部材120に対向する箇所に接着剤や両面テープを設け、空間形成部材150を分離部材120に固定することが好ましい。
【0075】
分離部材120と前面形成部51とに跨がるように分離部材120と前面形成部51の両方に重ねて空間形成部材150を設ける場合、空間形成部材150において分離部材120及び前面形成部51に対向する箇所に接着剤や両面テープを設け、空間形成部材150を分離部材120と前面形成部51に固定することが好ましい。
【0076】
本変更例では、空間形成部材150によって構造体110と前面形成部51との間に発泡断熱材130が設けられているため、発泡断熱材130に熱収縮が発生しても構造体110と前面形成部51との間に大きな空洞が生じにくくなり、そのため、前面形成部51が外力をうけても変形しにくい。
【0077】
本変更例において、分離部材120の断熱空間S側に重なるように空間形成部材150を設ける場合、発泡断熱材130に熱収縮が生じやすい箇所において構造体110と前面形成部51との間に発泡断熱材130を充填することができ、空洞の発生を効果的に抑えることができる。
【0078】
本変更例において、空間形成部材150を分離部材120に固定することで、空間形成部材150を介して構造体110に分離部材120を保持させることができ、扉42の組立作業性を向上することができる。
【0079】
また、本変更例において、空間形成部材150を前面形成部51に固定することで、発泡断熱材130の充填時に構造体110が前面形成部51から過度に離れることがなく、構造体110と前面形成部51との間に進入する発泡断熱材の進入量を適切に制御することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…冷蔵庫、2…冷蔵庫本体、10…冷蔵庫、11…筐体、12…外箱、13…内箱、20…冷蔵室、22…野菜室、27…小冷凍室、28…冷凍室、40…冷蔵室扉、41…冷蔵室扉、42…野菜室扉、43…製氷室扉、44…小冷凍室扉、45…冷凍室扉、50…扉面材、51…前面形成部、60…端部部材、75…端部部材、80…金属薄膜体、100…扉内板、101…膨出部、101a…膨出部、102…取付部、110…構造体、110a…固定領域、110b…分離領域、120…分離部材、130…発泡断熱材、150…空間形成部材、S…断熱空間