(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139462
(43)【公開日】2025-09-26
(54)【発明の名称】発光装置、ウェアラブルデバイス、表示装置、光電変換装置、および電子機器
(51)【国際特許分類】
H10K 59/124 20230101AFI20250918BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20250918BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20250918BHJP
H10K 50/858 20230101ALI20250918BHJP
H10K 59/65 20230101ALI20250918BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250918BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20250918BHJP
【FI】
H10K59/124
H10K50/00
H10K59/12
H10K50/858
H10K59/65
G09F9/30 338
G09F9/30 365
G09F9/30 310
G09F9/30 349Z
G09F9/00 366G
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038414
(22)【出願日】2024-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 圭
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 正人
(72)【発明者】
【氏名】金田 翼
(72)【発明者】
【氏名】小川 俊之
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107CC35
3K107DD91
3K107EE29
3K107EE61
3K107EE63
3K107FF15
3K107HH05
5C094AA05
5C094AA25
5C094BA03
5C094BA29
5C094CA19
5C094DA13
5C094DB01
5C094EB05
5C094FA01
5C094FA02
5C094HA08
5C094JA08
5G435AA16
5G435BB05
5G435CC09
5G435EE49
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL14
(57)【要約】
【課題】発光装置における画素内の耐圧維持と画素サイズの縮小との両立に有利な技術を提供する。
【解決手段】基板に配された複数の画素を有する発光装置は、前記複数の画素の各々は、互いに異なる導電型で隣り合う2つの領域同士を分離するトレンチ型の第1分離部と、互いに同じ導電型で隣り合う2つの領域同士を分離するトレンチ型の第2分離部とを有し、前記第2分離部の深さは前記第1分離部の深さよりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に配された複数の画素を有する発光装置であって、
前記複数の画素の各々は、互いに異なる導電型で隣り合う2つの領域同士を分離するトレンチ型の第1分離部と、互いに同じ導電型で隣り合う2つの領域同士を分離するトレンチ型の第2分離部とを有し、
前記第2分離部の深さは前記第1分離部の深さよりも大きい、ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第2分離部の深さは、前記第1分離部の深さよりも0.3μm以上大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記基板の表面と平行な方向において、前記第1分離部の開口幅は前記第2分離部の開口幅よりも狭い、ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第1分離部と前記第2分離部とは、前記基板の表面からの高さが互いに異なる、ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第2分離部は、互いに積層された上層部分および下層部分を含み、
前記下層部分は、前記上層部分の底面の一部に接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記下層部分の深さは、前記上層部分の深さよりも大きい、ことを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記下層部分の最大幅は、前記上層部分の前記底面の幅よりも小さい、ことを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項8】
前記複数の画素の各々は、第1半導体領域と、前記第1半導体領域と導電型が同じである第2半導体領域と、前記第1半導体領域と導電型が異なる第3半導体領域とを有し、
互いに隣り合って配された前記第1半導体領域と前記第3半導体領域との間に前記第1分離部を有し、互いに隣り合って配された前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間に前記第2分離部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項9】
前記複数の画素の各々は、発光素子と、前記発光素子を駆動する画素回路とを有し、
前記画素回路は、画素へのデータの入力を制御する選択トランジスタと、入力されたデータに応じて前記発光素子を駆動する駆動トランジスタとを備える、ことを特徴とする請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
互いに隣り合って配された2つの前記駆動トランジスタの間に前記第2分離部を有する、ことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記画素回路は、前記発光素子の発光制御を行うスイッチトランジスタと、前記発光素子をリセットするリセットトランジスタとを更に備える、ことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項12】
互いに隣り合って配された2つの前記リセットトランジスタの間に前記第2分離部を有する、ことを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記リセットトランジスタとそれに隣り合う前記スイッチトランジスタとの間に前記第2分離部を有する、ことを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項14】
前記スイッチトランジスタとそれに隣接する前記選択トランジスタとの間に前記第2分離部を有する、ことを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項15】
画素のウェルコンタクトとそれに隣り合う前記リセットトランジスタとの間に前記第1分離部を有する、ことを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項16】
画素のウェルコンタクトとそれに隣り合う前記選択トランジスタとの間に前記第1分離部を有する、ことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項17】
画素のウェルコンタクトとそれに隣接する前記駆動トランジスタとの間に前記第1分離部を有する、ことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項18】
画像を表示するための表示装置を有するウェアラブルデバイスであって、
前記表示装置は、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の発光装置を有することを特徴とするウェアラブルデバイス。
【請求項19】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載の発光装置と、前記発光装置に接続されている能動素子と、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項20】
複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、画像を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は、前記撮像素子が撮像した画像を表示し、かつ、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の発光装置を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項21】
表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有し、
前記表示部は、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の発光装置を有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、ウェアラブルデバイス、表示装置、光電変換装置、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、消費電力が小さく応答速度が速い事から液晶に代わる発光装置(表示装置)の主役となりつつあり、更なる高性能化が求められている。有機EL素子は、有機層を発光させる画素アレイを有する。画素アレイには、様々な輝度信号の電圧に応じた電流を流すための複数のトランジスタが設けられており、複数のトランジスタ間を電気的に分離するために溝構造のSTI(Shallow Trench Isolation)を使用することが知られている。特許文献1には、画素内において一定の深さでSTIを構成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構成では、今後の高精細化により画素密度を増加させる場合、画素サイズを縮小させるために、画素アレイのトランジスタ間の分離幅の縮小が要求されうる。この要求に応えるために単純にトランジスタ間の分離幅を縮小しただけでは、画素内の耐圧の維持が困難となり、画素間のリーク電流による表示コントラストの低下などの画質劣化(即ち、表示品位の低下)が生じる虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、発光装置における画素内の耐圧維持と画素サイズの縮小との両立に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての発光装置は、基板に配された複数の画素を有する発光装置であって、前記複数の画素の各々は、互いに異なる導電型で隣り合う2つの領域同士を分離するトレンチ型の第1分離部と、互いに同じ導電型で隣り合う2つの領域同士を分離するトレンチ型の第2分離部とを有し、前記第2分離部の深さは前記第1分離部の深さよりも大きい、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、発光装置における画素内の耐圧維持と画素サイズの縮小との両立に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の発光装置の構成例を示すブロック図
【
図2】第1実施形態の発光装置における1つの画素を拡大して示した平面図
【
図3】第1実施形態の発光装置における各画素の断面図
【
図4】第1素子分離部および第2素子分離部を半導体基板に形成する方法を説明するための図
【
図5】第2実施形態の発光装置における各画素の断面図
【
図6】各実施形態の発光装置の画素の構成例を示す断面図
【
図7】各実施形態の発光装置を用いた表示装置の一例を示す図
【
図8】各実施形態の発光装置を用いた光電変換装置の一例を示す図
【
図9】各実施形態の発光装置を用いた電子機器の一例を示す図
【
図10】各実施形態の発光装置を用いた表示装置の一例を示す図
【
図11】各実施形態の発光装置を用いたウェアラブルデバイスの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
以下、本発明に係る発光装置の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、いずれも本発明の一例を示すものであり、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、本発明を限定するものではない。
【0012】
<第1実施形態>
本発明に係る第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の発光装置10の構成例を示すブロック図である。画素アレイ100(画素部)は、複数行および複数列にわたって基板上に二次元状(マトリクス状)で配列された複数の画素101を有する。各々の画素101には、垂直走査回路102から走査線103を介して制御信号が入力されるとともに、信号出力回路104から信号線105を介して輝度信号電圧が入力される。垂直走査回路102および信号出力回路104は、制御回路106(制御部)によって制御される。信号出力回路104は、水平走査回路によって走査されて各列の画素に入力される画像データをアナログ信号電圧に変換し、当該アナログ信号電圧に応じた輝度信号電圧を信号線105に出力する。
【0013】
図2は、本実施形態の発光装置10における1つの画素101を拡大して示した平面図であり、発光色が互いに異なる2つのサブ画素(第1サブ画素206、第2サブ画素207)が配された例を示している。各サブ画素の1単位は、スイッチトランジスタ201と、駆動トランジスタ202と、リセットトランジスタ203と、選択トランジスタ204と、ウェルコンタクト205とによって構成されうる。スイッチトランジスタ201は、発光素子の発光制御を行う。駆動トランジスタ202は、輝度信号として選択トランジスタ204から入力されたデータに応じた電流を発光素子に供給することによって発光素子を駆動する。リセットトランジスタ203は、発光素子をリセットする。選択トランジスタ204は、画素(発光素子)へのデータの入力を制御する。ウェルコンタクト205は、半導体基板内のウェルと半導体基板上に配された配線層とを電気的に接続する。本実施形態の場合、スイッチトランジスタ201、駆動トランジスタ202、リセットトランジスタ203および選択トランジスタ204は、P型の半導体領域からなるソースドレインを有し、ウェルコンタクト205はN型の半導体領域からなる。各種トランジスタやウェルコンタクトは、後述するトレンチ型(溝構造)の素子分離部によって電気的に分離される。トレンチ型の素子分離部としては、STI(Shallow Trench Isolation)が用いられうる。なお、本実施形態では各種トランジスタの導電型をP型として説明するが、N型であってもよい。
【0014】
図3は、本実施形態の発光装置10における各画素101の断面図の一例を示している。
図3の断面図は、例えば、
図2におけるY-Y’断面図である。本実施形態の各画素101は、発光素子312と、発光素子312を駆動する画素回路311とを含みうる。また、本実施形態の各画素101には、画素回路311における各種トランジスタやウェルコンタクトを分離するトレンチ型の素子分離部として、第1素子分離部301および第2素子分離部302が半導体基板300に形成される。第1素子分離部301と第2素子分離部302とは、互いに深さ(トレンチ深さ)の異なる素子分離部である。具体的には、第2素子分離部302の深さは第1素子分離部301の深さよりも大きい。なお、以下では、画素回路311の導電型をP型として説明するが、N型であってもよい。
【0015】
半導体基板300の内部には、画素アレイ100(各画素101)を構成する画素回路311が配され、画素回路311には各種トランジスタが形成される。各種トランジスタは、N型のウェル320、P型のライトドープ321、P型のソースドレイン322、ゲート電極303、サイドウォール304、シリサイド防止膜305を有する。また、互いに隣り合う2つのトランジスタは、第1素子分離部301または第2素子分離部302によって分離される。第1素子分離部301および第2素子分離部302は、
図3に示されるように、1つのサブ画素内で使い分けられてもよいし、複数のサブ画素間で使い分けられてもよい。後者の場合、例えば、1つのサブ画素を第1素子分離部301のみで形成し、別のサブ画素を第2素子分離部302のみで形成することができる。即ち、第1素子分離部301および第2素子分離部302は、種々の変形・組み合わせが可能である。
【0016】
シリサイド防止膜305が設けられておらず半導体基板300(例えばシリコン)が露出した部分にはシリサイド306が形成される。シリサイド306上には、配線層間膜307と、プラグ308と、配線309と、金属電極310とが形成される。金属電極310は、Bサブ画素331と、Gサブ画素332と、Rサブ画素333とに分けられる。各々のサブ画素の金属電極310上には、各発光色で発光する発光素子312が形成される。
【0017】
発光素子312は、各発光色の光学干渉条件を満たす高さの光学調整層334と、透明アノード電極335と、画素分離層336と、有機発光層337と、カソード電極338とを有する。カソード電極338上には保護層339が形成され、保護層339上に、サブ画素の色ごとの分光特性を有する青色カラーフィルタ341b、緑色カラーフィルタ341g、赤色カラーフィルタ341rが配される。これにより、各サブ画素の輝度入力信号電圧に応じた発光が得られる。
【0018】
本実施形態の発光装置10では、画素回路311内の複数の素子領域(トランジスタ領域、ウェルコンタクト領域)間に、必要となる耐圧に応じて第1素子分離部301または第2素子分離部302が配される。これにより、画素101内の耐圧維持と画素サイズの縮小との両立を図ることが可能となる。なお、前述したように、第2素子分離部302は、第1素子分離部301よりもトレンチ深さが大きくなるように構成される。
【0019】
第1素子分離部301(第1分離部)は、互いに異なる導電型で隣り合う2つの領域同士を電気的に分離するために配される。本実施形態の場合、第1素子分離部301は、ウェルコンタクト205とそれに隣り合うスイッチトランジスタ201との間、および/または、ウェルコンタクト205とそれに隣り合う駆動トランジスタ202との間に配されうる。第1素子分離部301は、ウェルコンタクト205とそれに隣り合うリセットトランジスタ203との間、および/または、ウェルコンタクト205とそれに隣り合う選択トランジスタ204との間に配されてもよい。
【0020】
例えば、
図3の例において、トランジスタ351のソースドレインを構成する半導体領域351a(第1半導体領域)と、それに隣り合うウェルコンタクトを構成する半導体領域352(第3半導体領域)とは、互いに異なる導電型である。そのため、トランジスタ351(半導体領域351a)とウェルコンタクト(半導体領域352)との間には、第1素子分離部301が配される。
【0021】
一方、第2素子分離部302(第2分離部)は、互いに同じ導電型で隣り合う2つの領域同士を電気的に分離するために配される。本実施形態の場合、第2素子分離部302は、互いに隣り合って配された2つの駆動トランジスタ202の間、および/または、互いに隣り合って配された2つのリセットトランジスタ203の間に配置されうる。第2素子分離部302は、互いに隣り合って配された2つのスイッチトランジスタの間に配されうる。第2素子分離部302は、リセットトランジスタとそれに隣り合うスイッチトランジスタ201との間、および/または、スイッチトランジスタ201とそれに隣り合う選択トランジスタ204との間に配置されてもよい。
【0022】
例えば、
図3の例において、トランジスタ353のソースドレインを構成する半導体領域353a(第1半導体領域)と、それに隣り合うトランジスタ354のソースドレインを構成する半導体領域354a(第2半導体領域)とは、互いに同じ導電型である。そのため、トランジスタ353(半導体領域353a)とトランジスタ354(半導体領域354a)との間には、第2素子分離部302が配される。
【0023】
以下、本実施形態の発光装置10において第1素子分離部301と第2素子分離部302とを使い分ける理由および効果について説明する。
【0024】
各駆動トランジスタのソースドレイン領域はP型の半導体領域により構成される。そのため、互いに隣り合う2つの駆動トランジスタの間には、素子分離部を介して、P型のソースドレイン322、N型のウェル320、P型のソースドレイン322からなるPNPの寄生バイポーラが形成されうる。PNPの寄生バイポーラに流れる電流を低減するためには、寄生バイポーラのベース幅(即ち、N型領域の幅)を広げることが有効である。しかしながら、ベース幅(N型領域の幅)を広げるために、半導体基板300の表面と平行な方向における素子分離部の幅を拡大することは、画素サイズの縮小を困難としうる。そのため、本実施形態では、寄生バイポーラのベース幅(N型領域の幅)を広げる手段として、互いに隣り合う2つの駆動トランジスタの間に配される素子分離部の深さを大きくしている。つまり、互いに隣り合う2つの駆動トランジスタの間に第2素子分離部302が配される。これにより、半導体基板300の表面と平行な方向における素子分離部の幅の拡大を抑えながら、寄生バイポーラの動作を抑制することができる。
【0025】
また、駆動トランジスタは、画素ごとに任意の輝度信号の電圧に応じた電流を流すためのトランジスタである。そのため、駆動トランジスタのソースドレイン領域には、その他のリセットトランジスタ、スイッチトランジスタまたは選択トランジスタと比べて大きな電圧が印加されることとなる。画素内の輝度信号によっては、駆動トランジスタのソースドレイン領域に、サブ画素内部において最大の電圧が印加されることもある。したがって、駆動トランジスタのソースドレイン領域とそれに隣り合う駆動トランジスタのソースドレイン領域との間には、画素内において最も大きな耐圧が求められる。
【0026】
上記の理由から、本実施形態の発光装置10では、駆動トランジスタ(例えばトランジスタ353)とそれに隣り合う駆動トランジスタ(例えばトランジスタ354)との間に第2素子分離部302が配されている。リセットトランジスタとそれに隣り合うリセットトランジスタとの間など、互いに同じ導電型で隣り合う2つの領域間においても、同様の理由により、第2素子分離部302が配されうる。
【0027】
一方、ウェルコンタクトとそれに隣り合うリセットトランジスタとの間には、第2素子分離部302よりも深さが小さい第1素子分離部301を配することが可能である。ウェルコンタクトとそれに隣り合うリセットトランジスタとの間には、素子分離部を介して、P型のソースドレイン322、N型のウェル320、N型のソースドレインからなるPN接合が形成されるだけである。前述したように、駆動トランジスタとそれに隣り合う駆動トランジスタとの間にはPN接合が2カ所あるため、寄生バイポーラの動作を抑制する必要がある。それに対し、ウェルコンタクトの近傍にはPN接合が1カ所しか形成されないため、その耐圧とN型領域の幅の依存性が小さい。つまり、第1素子分離部301においては、第2素子分離部302よりも深さを小さく(浅く)することが可能となる。一般に、素子分離部の深さが小さい方が絶縁膜の埋め込み性が向上するため、より微細な分離幅を得ることができ、画素サイズの縮小に有利となる。
【0028】
加えて、ウェルコンタクト部分を介してウェルの電位を任意に制御することで、画素回路311内のトランジスタへのバックゲート効果を用いて、トランジスタのソースドレイン間に流れるリーク電流を低減することが可能となる。この際に、ウェルコンタクト部分の周囲における素子分離部の深さを小さくすることで、ウェルコンタクト領域からの距離が短くなり、電位降下を低減することができる。電位降下の低減により、バックゲート効果のばらつき低減が可能となる。
【0029】
このように、本実施形態の発光装置10において第1素子分離部301と第2素子分離部302とを使い分けることで、上記の効果が得られる。即ち、耐圧が必要な箇所においては、第2素子分離部302により画素内のリーク電流を低減することができ、耐圧の余裕度がある箇所においては、第1素子分離部301を用いて、素子分離部の幅を縮小することができる。したがって、発光装置10における画素内の耐圧維持(表示品位の低下抑制)と画素サイズの縮小とを両立させることが可能となる。
【0030】
(発光装置の製造方法)
以下、発光装置10の製造方法について、
図3~
図4の断面図を用いて例示的に説明する。まず、
図4を用いて、第1素子分離部301および第2素子分離部302を半導体基板300に形成する方法の一例を説明する。
【0031】
図4(a)の工程は、第1素子分離部301を構成するトレンチTr1を半導体基板300に形成する工程である。具体的には、半導体基板300上に、酸化膜401、ポリシリコン402およびシリコン窒化膜403からなるハードマスクを成膜し、当該ハードマスク上に第1フォトレジスト404を塗布する。そして、第1素子分離部301を形成する領域のみが開口するようにフォトリソグラフィによって第1フォトレジスト404のパターニングを行う。当該パターニングの後、第1フォトレジスト404をマスクとしてドライエッチングを行うことにより、半導体基板300にトレンチTr1を形成する。
【0032】
図4(b)の工程は、第2素子分離部302を構成するトレンチTr2を半導体基板300に形成する工程である。具体的には、第1フォトレジスト404を除去した後、半導体基板300上に第2フォトレジスト405を塗布する。そして、第2素子分離部302を形成する領域のみが開口するようにフォトリソグラフィによって第2フォトレジスト405のパターニングを行う。当該パターニングの後、第2フォトレジスト405をマスクとしてドライエッチングを行うことにより、半導体基板300にトレンチTr2を形成する。
【0033】
上記の工程を経ることにより、第1素子分離部301および第2素子分離部302のトレンチ(溝)の深さを任意に変更することができる。トレンチの深さは、一例として、第1素子分離部301においては100~400nm程度であり、第2素子分離部302においては400~800nm程度である。すなわち、第2素子分離部302のトレンチの深さは、第1素子分離部301のトレンチの深さの4倍~8倍であってよい。
【0034】
図4(c)の工程は、半導体基板300に形成されたトレンチTr1~Tr2に絶縁体を形成する工程である。具体的には、酸化性ガス雰囲気中での熱酸化などを用いて、各トレンチTr1~Tr2の内壁(側面および底面)に絶縁膜を形成する。その後、各トレンチTr1~Tr2の内壁に形成された絶縁膜を覆うように各トレンチTr1~Tr2の内部に絶縁体を充填する。各トレンチTr1~Tr2に充填される絶縁体は、例えば、高密度プラズマCVD法によって形成されるシリコン酸化膜である。当該絶縁体は、第1素子分離部301および第2素子分離部302となる各トレンチTr1~Tr2を埋め込むことができる膜厚で成膜される。各トレンチTr1に充填された絶縁体は、エッチングとCMP(Chemical Mechanical Polisher)との組み合わせによって平坦化されうる。
【0035】
図4(d)の工程は、半導体基板300上のハードマスクを除去する工程である。具体的には、半導体基板300上のシリコン窒化膜403およびポリシリコン402を除去する。ポリシリコン402を除去する前に、ウェットエッチングにより各トレンチTr1~Tr2内の絶縁体の膜厚を調整してもよい。また、半導体基板300上の酸化膜401も除去してもよい。この工程により、トレンチTr1が第1素子分離部301として形成され、トレンチTr2が第2素子分離部302として形成される。ここで、第1素子分離部301と第2素子分離部302とはトレンチの深さが互いに異なるため、半導体基板300の表面からの高さ(突き出し量)が第1素子分離部301と第2素子分離部302とで互いに異なっていてもよい。或いは、ウェットエッチングを用いることにより、第1素子分離部301と第2素子分離部302とで高さ(即ち、半導体基板300からの突き出し量)が互いに同じになるように制御してもよい。
【0036】
次に、
図3を用いて、第1素子分離部301および第2素子分離部302が形成された半導体基板300から画素アレイ100を製造する方法の一例を説明する。
【0037】
前述した
図4(d)の工程を経て第1素子分離部301および第2素子分離部302を半導体基板300に形成した後、当該半導体基板300の表面に熱酸化膜を形成する。この熱酸化膜は、イオン注入のチャネリング抑制等の目的で設けられる。また、レジストによって所定の領域を保護した状態で、多段階のイオン注入によりN型のウェル320を形成する。多段階のイオン注入は、例えば、加速エネルギー10~2000keV、ドーズ量1×10
11~5×10
13/cm
2程度の範囲で調整されうる。ドーズ量は、多段階のイオン注入の深さによって変更されてもよい。第1素子分離部301および第2素子分離部302の底部よりも浅い領域では高濃度に、第1素子分離部301および第2素子分離部302の底部よりも深い領域では低濃度になるように、N型のウェル320を形成してもよい。
【0038】
次に、ゲート酸化膜およびゲート電極303を形成し、その後、レジストにより所定の領域を保護した状態で、イオン注入によりN型のライトドープ321を形成する。イオン注入は、例えば、加速エネルギー10~150keV、ドーズ量1×1011~5×1014/cm2程度の範囲で調整されうる。ドーズ量は、多段階のイオン注入の深さによって変更されてもよい。
【0039】
次に、トランジスタのサイドウォール304を形成する。サイドウォール304は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを成膜した後にエッチバックすることにより形成されうる。サイドウォール304は、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜の単層であってもよいし、それらの積層構造であってもよい。
【0040】
次に、レジストにより所定の領域を保護した状態で、イオン注入によりP型のソースドレイン322を形成する。このとき、オフセットMOSを形成するために、P型のソースドレイン322がゲート電極303の端部から所定の距離を持って注入されるようなレジストパターンを形成してもよい。イオン注入は、例えば、加速エネルギー3~30keV、ドーズ量1e13~7e15/cm2程度の範囲で調整されうる。次に、ドーパントの活性化のための熱処理が順次実施されうる。
【0041】
ここで、第2素子分離部302は、第1素子分離部301よりも深さが0.3μm以上大きくなるように形成されることが望ましい。但し、第2素子分離部302は、その深さがN型のウェル320の底部よりも浅くなるように形成されることが望ましい。第2素子分離部302の深さをウェル320の底部よりも深くした場合、ウェル320の電位がフローティングになってしまいリーク電流が発生する虞があるからである。
【0042】
また、第1素子分離部301(トレンチTr1)は、第2素子分離部302(トレンチTr2)よりも、半導体基板300の表面と平行な方向における開口幅が狭くなるように形成されることが望ましい。ウェルコンタクトとトランジスタとの距離を短くして電位降下を低減するためである。第1素子分離部301の開口幅の最小は0.1μm以上0.2μm未満であるとよく、第2素子分離部302の開口幅の最小は0.2μm以上0.5μm未満であるとよい。各々の素子分離部の深さや開口幅は、各画素に必要な電圧に応じて適宜変更されてもよい。ソースドレイン間の耐圧が必要でない個所に第1素子分離部301を用いることで、開口幅を縮小することができるため、画素ピッチの縮小に寄与することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、2種類の素子分離部(第1素子分離部301、第2素子分離部302)を各画素101に設けた例を示したが、それに限られず、深さや開口幅が互いに異なる3種類以上の素子分離部を各画素101に設けてもよい。
【0044】
次に、メタルシリサイドの領域を画定するため、酸化膜によるシリサイドプロテクションを形成する。メタルシリサイドがLDD(Lightly Doped Drain)領域上に形成されないように、シリサイドプロテクションを形成する。その後、コンタクトプラグを形成し、多層の配線層が形成される。
【0045】
金属電極310上には、Bサブ画素331、Gサブ画素332およびRサブ画素333のそれぞれの画素の発光波長の干渉に合わせて、異なる高さの光学調整層334が形成される。そして、光学調整層334上に、透明アノード電極335と、画素間を分離するための画素分離層336と、有機発光層337と、カソード電極338とが順番に成膜される。さらに、カソード電極338上に保護層339が成膜された後、当該保護層339上に、青色カラーフィルタ341b、緑色カラーフィルタ341g、赤色カラーフィルタ341rが形成される。
【0046】
上述したように、本実施形態の発光装置10における各画素101には、トレンチ型の第1素子分離部301と、第1素子分離部301よりも深さが大きいトレンチ型の第2素子分離部302とが配される。第1素子分離部301は、互いに異なる導電型で隣り合う2つの領域同士を電気的に分離するように配され、第2素子分離部302は、互いに同じ導電型で隣り合う2つの領域同士を電気的に分離するように配される。これにより、画素101内の耐圧維持と画素サイズの縮小との両立を図ることが可能となる。ここで、本実施形態の発光装置10は、上記の製造方法・工程順序で必ずしも形成する必要はなく、様々な工程の入替、変更等が可能である。また、トレンチの深さや工程順は逆にしてもよい。本実施形態は、本発明を適用しうる幾つかの態様を例示したものに過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜修正や変形を行うことを妨げるものではない。
【0047】
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態を基本的に引き継ぐものであり、以下で言及する事項以外は第1実施形態に従いうる。
【0048】
図5は、本実施形態の発光装置10における各画素101の断面図の一例を示している。本実施形態では、第2素子分離部302を、互いに積層された上層部分302aおよび下層部分302bを含むように構成する例を説明する。なお、本実施形態の第2素子分離部302は、上層部分302aと下層部分302bとを組み合わせた2段階構造とする例を説明するが、それに限られず、3個以上の層部分を組み合わせた3段階以上の構造としてもよい。
【0049】
本実施形態の第2素子分離部302は、上層部分302aの底面の一部に下層部分302bが接続されることによって構成される。上層部分302aの底面のうち下層部分302bが接続される一部の幅(径、面積)は、上層部分302aの底面の幅(径、面積)よりも小さいとよい。「上層部分302aの底面のうち下層部分302bが接続される一部」は、下層部分302bのうち上層部分302aに接続される上部(接続部)として理解されてもよい。下層部分302bは、その最大幅(径、面積)が上層部分302aの底面の幅(径、面積)よりも小さいとよい。
【0050】
また、本実施形態の第2素子分離部302では、下層部分302bの深さが上層部分302aの深さよりも大きいとよい。即ち、上層部分302aの深さに対する下層部分302bの深さの比が1以上であるとよい。さらに、本実施形態の第2素子分離部302では、上層部分302aを構成するトレンチの開口幅が、下層部分302bを構成するトレンチの開口幅よりも大きいとよい。これにより、半導体領域のトランジスタのアクティブ領域の幅を第2素子分離部302の上層部分302aの開口幅によって任意に制御することが可能となる。
【0051】
上述したように、本実施形態では、第2素子分離部302が上層部分302aと下層部分302bとによって構成される。これにより、第2素子分離部302の上層部分302aを第1素子分離部301と同一工程で形成することができるようになるため、第1素子分離部301と第2素子分離部302とで半導体基板300の表面からの高さが一定(同じ)になるとの効果が得られる。半導体基板300の表面からの高さを素子分離部301~302で一定とすることにより、加工中の半導体基板300の平坦度が向上し、ゲート電極等の加工をより微細に行うことが可能となる。また、本実施形態によれば、第2素子分離部302の上層部分302aの深さを、第1実施形態の第2素子分離部302全体の深さに比べて小さく(浅く)することができる。そのため、トレンチTr2への絶縁体の埋め込みが有利(容易)となるとともに、トレンチ幅自体を更に微細に形成することも可能となる。
【0052】
[有機発光素子の構成]
有機発光素子は、基板の上に、絶縁層、第一電極、有機化合物層、第二電極を形成して設けられる。陰極の上には、保護層、カラーフィルタ、マイクロレンズ等を設けてよい。カラーフィルタを設ける場合は、保護層との間に平坦化層を設けてよい。平坦化層はアクリル樹脂等で構成することができる。カラーフィルタとマイクロレンズとの間において、平坦化層を設ける場合も同様である。
【0053】
[基板]
基板は、石英、ガラス、シリコンウエハ、樹脂、金属等が挙げられる。また、基板上には、トランジスタなどのスイッチング素子や配線を備え、その上に絶縁層を備えてもよい。絶縁層としては、第一電極との間に配線が形成可能なように、コンタクトホールを形成可能で、かつ接続しない配線との絶縁を確保できれば、材料は問わない。例えば、ポリイミド等の樹脂、酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
【0054】
[電極]
電極は、一対の電極を用いることができる。一対の電極は、陽極と陰極であってよい。有機発光素子が発光する方向に電界を印加する場合に、電位が高い電極が陽極であり、他方が陰極である。また、発光層にホールを供給する電極が陽極であり、電子を供給する電極が陰極であるということもできる。
【0055】
陽極の構成材料としては仕事関数がなるべく大きいものが良い。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン、等の金属単体やこれらを含む混合物、あるいはこれらを組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。またポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーも使用できる。
【0056】
これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また、陽極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
【0057】
反射電極として用いる場合には、例えばクロム、アルミニウム、銀、チタン、タングステン、モリブデン、又はこれらの合金、積層したものなどを用いることができる。上記の材料にて、電極としての役割を有さない、反射膜として機能することも可能である。また、透明電極として用いる場合には、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛などの酸化物透明導電層などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。電極の形成には、フォトリソグラフィ技術を用いることができる。
【0058】
一方、陰極の構成材料としては仕事関数の小さなものがよい。例えばリチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体またはこれらを含む混合物が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えばマグネシウム-銀、アルミニウム-リチウム、アルミニウム-マグネシウム、銀-銅、亜鉛-銀等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。中でも銀を用いることが好ましく、銀の凝集を低減するため、銀合金とすることがさらに好ましい。銀の凝集が低減できれば、合金の比率は問わない。例えば、銀:他の金属が、1:1、3:1等であってよい。
【0059】
陰極は、ITOなどの酸化物導電層を使用してトップエミッション素子としてもよいし、アルミニウム(Al)などの反射電極を使用してボトムエミッション素子としてもよいし、特に限定されない。陰極の形成方法としては、特に限定されないが、直流及び交流スパッタリング法などを用いると、膜のカバレッジがよく、抵抗を下げやすいためより好ましい。
【0060】
[画素分離層]
画素分離層は、化学気相堆積法(CVD法)を用いて形成されたシリコン窒化物(SiN)膜やシリコン酸窒化物(SiON)膜やシリコン酸化物(SiO)膜で形成される。有機化合物層の面内方向の抵抗を上げるために、有機化合物層の膜厚、特に正孔輸送層、は、画素分離層の側壁において薄く成膜されることが好ましい。具体的には、画素分離層の側壁のテーパー角や画素分離層の膜厚を大きくし、蒸着時のケラレを増加させることにより、側壁の膜厚を薄く成膜することができる。
【0061】
一方で、画素分離層は、その上に形成される保護層に空隙が形成されない程度に、画素分離層の側壁テーパー角や画素分離層の膜厚を調整することが好ましい。保護層に空隙が形成されないため、保護層に欠陥が発生することを低減できる。保護層に欠陥の発生を低減するので、ダークスポットの発生や、第二電極の導通不良の発生などの信頼性低下を低減することができる。
【0062】
本実施形態によれば、画素分離層の側壁のテーパー角が急峻でなくとも、隣接画素への電荷漏れを効果的に抑制することが可能になる。本検討の結果、テーパー角が60度以上90度以下の範囲であれば十分低減できることが分かった。画素分離層の膜厚は10nm以上から150nm以下であることが望ましい。また、画素分離層を有さない画素電極のみで構成されていても同様の効果が得られる。ただし、この場合画素電極の膜厚は有機層の半分以下するか、画素電極端部を60°未満の順テーパーにすることが有機発光素子の短絡が低減できるので好ましい。
【0063】
[有機化合物層]
有機化合物層は、単層で形成されても、複数層で形成されてもよい。複数層を有する場合には、その機能によって、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロッキング層、発光層、ホールブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、と呼ばれてよい。有機化合物層は、主に有機化合物で構成されるが、無機原子、無機化合物を含んでいてもよい。例えば、銅、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、イリジウム、白金、モリブデン、亜鉛等を有してよい。有機化合物層は、第一電極と第二電極との間に配置されてよく、第一電極及び第二電極に接して配されてよい。
【0064】
発光層を複数有する場合には、第一発光層、第二発光層の間に電荷発生部を有してよい。電荷発生部は最低非占有分子軌道エネルギー(LUMO)が-5.0eV以下の有機化合物を有してよい。第二発光層、第三発光層の間に電荷発生部を有する場合も同様である。
【0065】
[保護層]
第二電極の上に、保護層を設けてもよい。例えば、第二電極上に吸湿剤を設けたガラスを接着することで、有機化合物層に対する水等の浸入を低減し、表示不良の発生を低減することができる。また、別の実施形態としては、陰極上に窒化ケイ素等のパッシベーション膜を設け、有機化合物層に対する水等の浸入を低減してもよい。例えば、陰極を形成後に真空を破らずに別のチャンバーに搬送し、CVD法で厚さ2μmの窒化ケイ素膜を形成することで、保護層としてもよい。CVD法の成膜の後で原子堆積法(ALD法)を用いた保護層を設けてもよい。ALD法による膜の材料は限定されないが、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等であってよい。ALD法で形成した膜の上に、さらにCVD法で窒化ケイ素を形成してよい。ALD法による膜は、CVD法で形成した膜よりも小さい膜厚であってよい。具体的には、50%以下、さらには、10%以下であってよい。
【0066】
[カラーフィルタ]
保護層の上にカラーフィルタを設けてもよい。例えば、有機発光素子のサイズを考慮したカラーフィルタを別の基板上に設け、それと有機発光素子を設けた基板と貼り合わせてもよいし、上記で示した保護層上にフォトリソグラフィ技術を用いて、カラーフィルタをパターニングしてもよい。カラーフィルタは、高分子で構成されてよい。
【0067】
[平坦化層]
カラーフィルタと保護層との間に平坦化層を有してもよい。平坦化層は、下の層の凹凸を低減する目的で設けられる。目的を制限せずに、材質樹脂層と呼ばれる場合もある。平坦化層は有機化合物で構成されてよく、低分子であっても、高分子であってもよいが、高分子であることが好ましい。
【0068】
平坦化層は、カラーフィルタの上下に設けられてもよく、その構成材料は同じであっても異なってもよい。具体的には、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等があげられる。
【0069】
[マイクロレンズ]
有機発光装置は、その光出射側にマイクロレンズ等の光学部材を有してよい。マイクロレンズは、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等で構成されうる。マイクロレンズは、有機発光装置から取り出す光量の増加、取り出す光の方向の制御を目的としてよい。マイクロレンズは、半球の形状を有してよい。半球の形状を有する場合、当該半球に接する接線のうち、絶縁層と平行になる接線があり、その接線と半球との接点がマイクロレンズの頂点である。マイクロレンズの頂点は、任意の断面図においても同様に決定することができる。つまり、断面図におけるマイクロレンズの半円に接する接線のうち、絶縁層と平行になる接線があり、その接線と半円との接点がマイクロレンズの頂点である。
【0070】
また、マイクロレンズの中点を定義することもできる。マイクロレンズの断面において、円弧の形状が終了する点から別の円弧の形状が終了する点までの線分を仮想し、当該線分の中点がマイクロレンズの中点と呼ぶことができる。頂点、中点を判別する断面は、絶縁層に垂直な断面であってよい。
【0071】
マイクロレンズは凸部を有する第一面と、第一面と反対の第二面を有する。第二面が第一面よりも機能層側に配されていることが好ましい。このような構成を取るためには、発光装置上にマイクロレンズを形成する必要がある。機能層が有機層の場合には、製造工程において高温になるプロセスは避ける方が好ましい。また、第二面が第一面よりも機能層側に配されている構成を取る場合には、有機層を構成する有機化合物のガラス転移温度がすべて100℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。
【0072】
[対向基板]
平坦化層の上には、対向基板を有してよい。対向基板は、前述の基板と対応する位置に設けられるため、対向基板と呼ばれる。対向基板の構成材料は、前述の基板と同じであってよい。対向基板は、前述の基板を第一基板とした場合、第二基板であってよい。
【0073】
[有機層]
本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する有機化合物層(正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)は、以下に示す方法により形成される。
【0074】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する有機化合物層は、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマ等のドライプロセスを用いることができる。またドライプロセスに代えて、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により層を形成するウェットプロセスを用いることもできる。
【0075】
ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で成膜する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0076】
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0078】
[画素回路]
発光装置は、発光素子に接続されている画素回路を有してよい。画素回路は、第一の発光素子、第二の発光素子をそれぞれ独立に発光制御するアクティブマトリックス型であってよい。アクティブマトリックス型の回路は電圧プログラミングであっても、電流プログラミングであってもよい。駆動回路は、画素毎に画素回路を有する。画素回路は、発光素子、発光素子の発光輝度を制御するトランジスタ、発光タイミングを制御するトランジスタ、発光輝度を制御するトランジスタのゲート電圧を保持する容量、発光素子を介さずにGNDに接続するためのトランジスタを有してよい。
【0079】
発光装置は、表示領域と、表示領域の周囲に配されている周辺領域とを有する。表示領域には画素回路を有し、周辺領域には表示制御回路を有する。画素回路を構成するトランジスタの移動度は、表示制御回路を構成するトランジスタの移動度よりも小さくてよい。
【0080】
画素回路を構成するトランジスタの電流電圧特性の傾きは、表示制御回路を構成するトランジスタの電流電圧特性の傾きよりも小さくてよい。電流電圧特性の傾きは、いわゆるVg-Ig特性により測定できる。
【0081】
画素回路を構成するトランジスタは、第一の発光素子など、発光素子に接続されているトランジスタである。
【0082】
[画素]
有機発光装置は、複数の画素を有する。画素は互いに他と異なる色を発光する副画素を有する。副画素は、例えば、それぞれRGBの発光色を有してよい。
【0083】
画素は、画素開口とも呼ばれる領域が、発光する。この領域は第一領域と同じである。画素開口は15μm以下であってよく、5μm以上であってよい。より具体的には、11μm、9.5μm、7.4μm、6.4μm等であってよい。
【0084】
副画素間は、10μm以下であってよく、具体的には、8μm、7.4μm、6.4μmであってよい。
【0085】
画素は、平面図において、公知の配置形態をとりうる。例えば、ストライプ配置、デルタ配置、ペンタイル配置、ベイヤー配置であってよい。副画素の平面図における形状は、公知のいずれの形状をとってもよい。例えば、長方形、ひし形等の四角形、六角形、等である。もちろん、正確な図形ではなく、長方形に近い形をしていれば、長方形に含まれる。副画素の形状と、画素配列と、を組み合わせて用いることができる。
【0086】
[本発明の一実施形態に係る有機発光素子の用途]
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置の構成部材として用いることができる。他にも、電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライト、白色光源にカラーフィルタを有する発光装置等の用途がある。
【0087】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する画像入力部を有し、入力された情報を処理する情報処理部を有し、入力された画像を表示部に表示する画像情報処理装置でもよい。
【0088】
また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部は、タッチパネル機能を有していてもよい。このタッチパネル機能の駆動方式は、赤外線方式でも、静電容量方式でも、抵抗膜方式であっても、電磁誘導方式であってもよく、特に限定されない。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0089】
次に、図面を参照しながら本実施形態に係る表示装置について説明する。
【0090】
図1は、有機発光素子とこの有機発光素子に接続されるトランジスタとを有する表示装置の例を示す断面模式図である。トランジスタは、能動素子の一例である。トランジスタは薄膜トランジスタ(TFT)であってもよい。
【0091】
図6(a)は、本実施形態に係る表示装置の構成要素である画素の一例である。画素は、副画素810(画素PIX)を有している。副画素はその発光により、810R、810G、810Bに分けられている。発光色は、発光層から発光される波長で区別されても、副画素から出射する光がカラーフィルタ等により、選択的透過または色変換が行われてもよい。それぞれの副画素は、層間絶縁層801の上に第一電極である反射電極802、反射電極802の端を覆う絶縁層803、第一電極と絶縁層とを覆う有機化合物層804、第二電極805、保護層806、カラーフィルタ807を有している。
【0092】
層間絶縁層801は、その下層または内部にトランジスタ、容量素子を配されていてもよい。トランジスタと第一電極は不図示のコンタクトホール等を介して電気的に接続されていてよい。
【0093】
絶縁層803は、バンク、画素分離膜とも呼ばれる。第一電極の端を覆っており、第一電極を囲って配されている。絶縁層の配されていない部分が、有機化合物層804と接し、発光領域となる。
【0094】
有機化合物層804は、正孔注入層841、正孔輸送層842、第一発光層843、第二発光層844、電子輸送層845を有する。
【0095】
第二電極805は、透明電極であっても、反射電極であっても、半透過電極であってもよい。
【0096】
保護層806は、有機化合物層に水分が浸透することを低減する。保護層は、一層のように図示されているが、複数層であってよい。層ごとに無機化合物層、有機化合物層があってよい。
【0097】
カラーフィルタ807は、その色により807R、807G、807Bに分けられる。カラーフィルタは、不図示の平坦化膜上に形成されてよい。また、カラーフィルタ上に不図示の樹脂保護層を有してよい。また、カラーフィルタは、保護層806上に形成されてよい。またはガラス基板等の対向基板上に設けられた後に、貼り合わせられてよい。
【0098】
図6(b)の表示装置800(上記実施形態の発光装置10に対応する)は、有機発光素子826とトランジスタの一例としてTFT818とが記載されている。ガラス、シリコン等の基板811とその上部に絶縁層812が設けられている。絶縁層の上には、TFT等の能動素子818が配されており、能動素子のゲート電極813、ゲート絶縁膜814、半導体層815が配置されている。TFT818は、他にも半導体層815とドレイン電極816とソース電極817とで構成されている。TFT818の上部には絶縁膜819が設けられている。絶縁膜に設けられたコンタクトホール820を介して有機発光素子826を構成する陽極821とソース電極817とが接続されている。
【0099】
なお、有機発光素子826に含まれる電極(陽極、陰極)とTFTに含まれる電極(ソース電極、ドレイン電極)との電気接続の方式は、
図6(b)に示される態様に限られるものではない。つまり陽極又は陰極のうちいずれか一方とTFTソース電極またはドレイン電極のいずれか一方とが電気接続されていればよい。TFTは、薄膜トランジスタを指す。
【0100】
図6(b)の表示装置800では有機化合物層を1つの層の如く図示をしているが、有機化合物層822は、複数層であってもよい。陰極823の上には有機発光素子の劣化を低減するための第一の保護層824や第二の保護層825が設けられている。
【0101】
図6(b)の表示装置800ではスイッチング素子としてトランジスタを使用しているが、これに代えて他のスイッチング素子として用いてもよい。
【0102】
また、
図6(b)の表示装置800に使用されるトランジスタは、単結晶シリコンウエハを用いたトランジスタに限らず、基板の絶縁性表面上に活性層を有する薄膜トランジスタでもよい。活性層として、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコンなどの非単結晶シリコン、インジウム亜鉛酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物等の非単結晶酸化物半導体が挙げられる。なお、薄膜トランジスタはTFT素子とも呼ばれる。
【0103】
図6(b)の表示装置800に含まれるトランジスタは、Si基板等の基板内に形成されていてもよい。ここで基板内に形成されるとは、Si基板等の基板自体を加工してトランジスタを作製することを意味する。つまり、基板内にトランジスタを有することは、基板とトランジスタとが一体に形成されていると見ることもできる。
【0104】
本実施形態に係る有機発光素子はスイッチング素子の一例であるTFTにより発光輝度が制御され、有機発光素子を複数面内に設けることでそれぞれの発光輝度により画像を表示することができる。なお、本実施形態に係るスイッチング素子は、TFTに限られず、低温ポリシリコンで形成されているトランジスタ、Si基板等の基板上に形成されたアクティブマトリクスドライバーであってもよい。基板上とは、その基板内ということもできる。基板内にトランジスタを設けるか、TFTを用いるかは、表示部の大きさによって選択され、例えば0.5インチ程度の大きさであれば、Si基板上に有機発光素子を設けることが好ましい。
【0105】
図7は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。表示装置1000は、上部カバー1001と、下部カバー1009と、の間に、タッチパネル1003、表示パネル1005、フレーム1006、回路基板1007、バッテリー1008、を有してよい。タッチパネル1003および表示パネル1005は、フレキシブルプリント回路FPC1002、1004が接続されている。回路基板1007には、トランジスタがプリントされている。バッテリー1008は、表示装置が携帯機器でなければ、設けなくてもよいし、携帯機器であっても、別の位置に設けてもよい。
【0106】
本実施形態に係る表示装置は、赤色、緑色、青色を有するカラーフィルタを有してよい。カラーフィルタは、当該赤色、緑色、青色がデルタ配列で配置されてよい。
【0107】
本実施形態に係る表示装置は、携帯端末の表示部に用いられてもよい。その際には、表示機能と操作機能との双方を有してもよい。携帯端末としては、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、ヘッドマウントディスプレイ等が挙げられる。
【0108】
本実施形態に係る表示装置は、複数のレンズを有する光学部と、当該光学部を通過した光を受光する撮像素子とを有する撮像装置の表示部に用いられてよい。撮像装置は、撮像素子が取得した情報を表示する表示部を有してよい。また、表示部は、撮像装置の外部に露出した表示部であっても、ファインダ内に配置された表示部であってもよい。撮像装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラであってよい。
【0109】
図8は、本実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。撮像装置1100は、ビューファインダ1101、背面ディスプレイ1102、操作部1103、筐体1104を有してよい。ビューファインダ1101は、本実施形態に係る表示装置を有してよい。その場合、表示装置は、撮像する画像のみならず、環境情報、撮像指示等を表示してよい。環境情報には、外光の強度、外光の向き、被写体の動く速度、被写体が遮蔽物に遮蔽される可能性等であってよい。
【0110】
撮像に好適なタイミングはわずかな時間なので、少しでも早く情報を表示した方がよい。したがって、本発明の有機発光素子を用いた表示装置を用いるのが好ましい。有機発光素子は応答速度が速いからである。有機発光素子を用いた表示装置は、表示速度が求められる、これらの装置、液晶表示装置よりも好適に用いることができる。
【0111】
撮像装置1100は、不図示の光学部を有する。光学部は複数のレンズを有し、筐体1104内に収容されている撮像素子に結像する。複数のレンズは、その相対位置を調整することで、焦点を調整することができる。この操作を自動で行うこともできる。撮像装置は光電変換装置と呼ばれてもよい。光電変換装置は逐次撮像するのではなく、前画像からの差分を検出する方法、常に記録されている画像から切り出す方法等を撮像の方法として含むことができる。
【0112】
図9は、本実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。電子機器1200は、表示部1201と、操作部1202と、筐体1203を有する。筐体1203には、回路、当該回路を有するプリント基板、バッテリー、通信部、を有してよい。操作部1202は、ボタンであってもよいし、タッチパネル方式の反応部であってもよい。操作部は、指紋を認識してロックの解除等を行う、生体認識部であってもよい。通信部を有する電子機器は通信機器ということもできる。電子機器は、レンズと、撮像素子とを備えることでカメラ機能をさらに有してよい。カメラ機能により撮像された画像が表示部に映される。電子機器としては、スマートフォン、ノートパソコン等があげられる。
【0113】
図10は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。
図10(a)は、テレビモニタやPCモニタ等の表示装置である。表示装置1300は、額縁1301を有し表示部1302を有する。表示部1302には、本実施形態に係る発光装置が用いられてよい。
【0114】
額縁1301と、表示部1302を支える土台1303を有している。土台1303は、
図10(a)の形態に限られない。額縁1301の下辺が土台を兼ねてもよい。
【0115】
また、額縁1301および表示部1302は、曲がっていてもよい。その曲率半径は、5000mm以上6000mm以下であってよい。
【0116】
図10(b)は本実施形態に係る表示装置の他の例を表す模式図である。
図10(b)の表示装置1310は、折り曲げ可能に構成されており、いわゆるフォルダブルな表示装置である。表示装置1310は、第一表示部1311、第二表示部1312、筐体1313、屈曲点1314を有する。第一表示部1311と第二表示部1312とは、本実施形態に係る発光装置を有してよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、つなぎ目のない1枚の表示装置であってよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、屈曲点で分けることができる。第一表示部1311、第二表示部1312は、それぞれ異なる画像を表示してもよいし、第一および第二表示部とで一つの画像を表示してもよい。
【0117】
図11を参照して、上述の各実施形態の表示装置の適用例について説明する。表示装置は、例えばスマートグラス、HMD、スマートコンタクトのようなウェアラブルデバイスとして装着可能なシステムに適用できる。このような適用例に使用される撮像表示装置は、可視光を光電変換可能な撮像装置と、可視光を発光可能な表示装置とを有する。
【0118】
図11(a)は、1つの適用例に係る眼鏡1600(スマートグラス)を説明する。眼鏡1600のレンズ1601の表面側に、CMOSセンサやSPADのような撮像装置1602が設けられている。また、レンズ1601の裏面側には、上述した各実施形態の表示装置が設けられている。
【0119】
眼鏡1600は、制御装置1603をさらに備える。制御装置1603は、撮像装置1602と各実施形態に係る表示装置に電力を供給する電源として機能する。また、制御装置1603は、撮像装置1602と表示装置の動作を制御する。レンズ1601には、撮像装置1602に光を集光するための光学系が形成されている。
【0120】
図11(b)は、1つの適用例に係る眼鏡1610(スマートグラス)を説明する。眼鏡1610は、制御装置1612を有している。当該制御装置1612に、撮像装置1602に相当する撮像装置と、表示装置が搭載される。レンズ1611には、制御装置1612内の表示装置が発する発光を投影するための光学系が形成されており、レンズ1611には画像が投影される。制御装置1612は、撮像装置および表示装置に電力を供給する電源として機能するとともに、撮像装置および表示装置の動作を制御する。制御装置は、装着者の視線を検知する視線検知部を有してもよい。視線の検知は赤外線を用いてよい。赤外発光部は、表示画像を注視しているユーザーの眼球に対して、赤外光を発する。発せられた赤外光の眼球からの反射光を、受光素子を有する撮像部が検出することで眼球の撮像画像が得られる。平面視における赤外発光部から表示部への光を低減する低減手段を有することで、画像品位の低下を低減する。
【0121】
赤外光の撮像により得られた眼球の撮像画像から表示画像に対するユーザーの視線を検出する。眼球の撮像画像を用いた視線検出には任意の公知の手法が適用できる。一例として、角膜での照射光の反射によるプルキニエ像に基づく視線検出方法を用いることができる。
【0122】
より具体的には、瞳孔角膜反射法に基づく視線検出処理が行われる。瞳孔角膜反射法を用いて、眼球の撮像画像に含まれる瞳孔の像とプルキニエ像とに基づいて、眼球の向き(回転角度)を表す視線ベクトルが算出されることにより、ユーザーの視線が検出される。
【0123】
本発明の一実施形態に係る表示装置は、受光素子を有する撮像装置を有し、撮像装置からのユーザーの視線情報に基づいて表示装置の表示画像を制御してよい。
【0124】
具体的には、表示装置は、視線情報に基づいて、ユーザーが注視する第一の表示領域と、第一の表示領域以外の第二の表示領域とを決定される。第一の表示領域、第二の表示領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。表示装置の表示領域において、第一の表示領域の表示解像度を第二の表示領域の表示解像度よりも高く制御してよい。つまり、第二の表示領域の解像度を第一の視界領域よりも低くしてよい。
【0125】
また、表示領域は、第一の表示領域、第一の表示領域とは異なる第二の表示領域とを有し、視線情報に基づいて、第一の表示領域および第二の表示領域から優先度が高い領域を決定される。第一の視界領域、第二の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。優先度の高い領域の解像度を、優先度が高い領域以外の領域の解像度よりも高く制御してよい。つまり優先度が相対的に低い領域の解像度を低くしてよい。
【0126】
なお、第一の表示領域や優先度が高い領域の決定には、AIを用いてもよい。AIは、眼球の画像と当該画像の眼球が実際に視ていた方向とを教師データとして、眼球の画像から視線の角度、視線の先の目的物までの距離を推定するよう構成されたモデルであってよい。AIプログラムは、表示装置が有しても、撮像装置が有しても、外部装置が有してもよい。外部装置が有する場合は、通信を介して、表示装置に伝えられる。
【0127】
視認検知に基づいて表示制御する場合、外部を撮像する撮像装置を更に有するスマートグラスに好ましく適用できる。スマートグラスは、撮像した外部情報をリアルタイムで表示することができる。
【0128】
以上説明した通り、本実施形態に係る有機発光素子を用いた装置を用いることにより、良好な画質で、長時間表示にも安定な表示が可能になる。
【0129】
<実施形態のまとめ>
本明細書の開示は、少なくとも以下の発光装置、ウェアラブルデバイス、表示装置、光電変換装置、および電子機器を含む。
(項目1)
基板に配された複数の画素を有する発光装置であって、
前記複数の画素の各々は、互いに異なる導電型で隣り合う2つの領域同士を分離するトレンチ型の第1分離部と、互いに同じ導電型で隣り合う2つの領域同士を分離するトレンチ型の第2分離部とを有し、
前記第2分離部の深さは前記第1分離部の深さよりも大きい、ことを特徴とする発光装置。
(項目2)
前記第2分離部の深さは、前記第1分離部の深さよりも0.3μm以上大きい、ことを特徴とする項目1に記載の発光装置。
(項目3)
前記基板の表面と平行な方向において、前記第1分離部の開口幅は前記第2分離部の開口幅よりも狭い、ことを特徴とする項目1又は2に記載の発光装置。
(項目4)
前記第1分離部と前記第2分離部とは、前記基板の表面からの高さが互いに異なる、ことを特徴とする項目1乃至3のいずれか1項目に記載の発光装置。
(項目5)
前記第2分離部は、互いに積層された上層部分および下層部分を含み、
前記下層部分は、前記上層部分の底面の一部に接続されている、ことを特徴とする項目1乃至4のいずれか1項目に記載の発光装置。
(項目6)
前記下層部分の深さは、前記上層部分の深さよりも大きい、ことを特徴とする項目5に記載の発光装置。
(項目7)
前記下層部分の最大幅は、前記上層部分の前記底面の幅よりも小さい、ことを特徴とする項目5又は6に記載の発光装置。
(項目8)
前記複数の画素の各々は、第1半導体領域と、前記第1半導体領域と導電型が同じである第2半導体領域と、前記第1半導体領域と導電型が異なる第3半導体領域とを有し、
互いに隣り合って配された前記第1半導体領域と前記第3半導体領域との間に前記第1分離部を有し、互いに隣り合って配された前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間に前記第2分離部を有する、ことを特徴とする項目1乃至7のいずれか1項目に記載の発光装置。
(項目9)
前記複数の画素の各々は、発光素子と、前記発光素子を駆動する画素回路とを有し、
前記画素回路は、画素へのデータの入力を制御する選択トランジスタと、入力されたデータに応じて前記発光素子を駆動する駆動トランジスタとを備える、ことを特徴とする項目8に記載の発光装置。
(項目10)
互いに隣り合って配された2つの前記駆動トランジスタの間に前記第2分離部を有する、ことを特徴とする項目9に記載の発光装置。
(項目11)
前記画素回路は、前記発光素子の発光制御を行うスイッチトランジスタと、前記発光素子をリセットするリセットトランジスタとを更に備える、ことを特徴とする項目9又は10に記載の発光装置。
(項目12)
互いに隣り合って配された2つの前記リセットトランジスタの間に前記第2分離部を有する、ことを特徴とする項目11に記載の発光装置。
(項目13)
前記リセットトランジスタとそれに隣り合う前記スイッチトランジスタとの間に前記第2分離部を有する、ことを特徴とする項目11又は12に記載の発光装置。
(項目14)
前記スイッチトランジスタとそれに隣接する前記選択トランジスタとの間に前記第2分離部を有する、ことを特徴とする項目11乃至13のいずれか1項目に記載の発光装置。
(項目15)
画素のウェルコンタクトとそれに隣り合う前記リセットトランジスタとの間に前記第1分離部を有する、ことを特徴とする項目11乃至14のいずれか1項目に記載の発光装置。
(項目16)
画素のウェルコンタクトとそれに隣り合う前記選択トランジスタとの間に前記第1分離部を有する、ことを特徴とする項目9乃至15のいずれか1項目に記載の発光装置。
(項目17)
画素のウェルコンタクトとそれに隣接する前記駆動トランジスタとの間に前記第1分離部を有する、ことを特徴とする項目9乃至16のいずれか1項目に記載の発光装置。
(項目18)
画像を表示するための表示装置を有するウェアラブルデバイスであって、
前記表示装置は、項目1乃至17のいずれか1項目に記載の発光装置を有することを特徴とするウェアラブルデバイス。
(項目19)
項目1乃至17のいずれか1項目に記載の発光装置と、前記発光装置に接続されている能動素子と、を有することを特徴とする表示装置。
(項目20)
複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、画像を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は、前記撮像素子が撮像した画像を表示し、かつ、項目1乃至17のいずれか1項目に記載の発光装置を有することを特徴とする光電変換装置。
(項目21)
表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有し、
前記表示部は、項目1乃至17のいずれか1項目に記載の発光装置を有することを特徴とする電子機器。
【0130】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0131】
10:発光装置、100:画素アレイ、101:画素、102:垂直走査回路、104:信号出力回路、106:制御回路、201:スイッチトランジスタ、202:駆動トランジスタ、203:リセットトランジスタ、204:選択トランジスタ、205:ウェルコンタクト、300:半導体基板、301:第1素子分離部、302:第2素子分離部