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特開2025-139550ポリエステル系樹脂とその製造方法および用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139550
(43)【公開日】2025-09-26
(54)【発明の名称】ポリエステル系樹脂とその製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/00 20060101AFI20250918BHJP
   C08G 63/82 20060101ALI20250918BHJP
   C08G 63/78 20060101ALI20250918BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20250918BHJP
   G02B 1/04 20060101ALN20250918BHJP
【FI】
C08G63/00
C08G63/82
C08G63/78
G02B6/02 391
G02B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025017831
(22)【出願日】2025-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2024038190
(32)【優先日】2024-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 久芳
(72)【発明者】
【氏名】南 聡史
【テーマコード(参考)】
2H250
4J029
【Fターム(参考)】
2H250AB32
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB04
4J029AB07
4J029AC02
4J029AD00
4J029AE04
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA07
4J029BA08
4J029BA09
4J029BA10
4J029BB04A
4J029BB05A
4J029BB06A
4J029BB09A
4J029BB18
4J029BC09
4J029BD05A
4J029BD06A
4J029BD07A
4J029BD08
4J029BF09
4J029BF10
4J029BF18
4J029BF20
4J029BF26
4J029CB04A
4J029CB05A
4J029CB05B
4J029CB06A
4J029CB10A
4J029CC03A
4J029CC05A
4J029CC06A
4J029CC09
4J029CD03
4J029CD05
4J029HA01
4J029HB03A
4J029JA061
4J029JA091
4J029JA253
4J029JB131
4J029JB151
4J029JB171
4J029JB193
4J029JC283
4J029JC453
4J029JC473
4J029JC481
4J029JC561
4J029JC571
4J029JC581
4J029JF221
4J029JF361
4J029KB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い屈折率を有し、かつ黄色味などの色味を低減できるポリエステル系樹脂を提供する。
【解決手段】脂環族ジカルボン酸単位(A1)と、芳香族ジカルボン酸単位(A2)および/またはビス(カルボキシアルキル)フルオレン単位(A3)とを含むジカルボン酸単位(A)と、ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレンまたはビス(ヒドロキシアルキレンオキシフェニル)フルオレンからなる単位(B1)と、脂環族ジオール単位(B2)と、脂肪族ジオール単位(B3)とを含むジオール単位(B)とを含み、かつ色度bの絶対値が3.5以下であるポリエステル系樹脂を調製する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸単位(A)とジオール単位(B)とを含むポリエステル系樹脂であって、
前記ジカルボン酸単位(A)が、下記式(1)
【化1】
(式中、
は脂肪族炭化水素環を示し、
は置換基を示し、nは0以上の整数を示す)
で表される脂環族ジカルボン酸単位(A1)と、
下記式(2)
【化2】
(式中、
は芳香族炭化水素環を示し、
は置換基を示し、mは0以上の整数を示す)
で表される芳香族ジカルボン酸単位(A2)および/または下記式(3)
【化3】
(式中、A1aおよびA1bは独立してアルキレン基を示し、
は置換基を示し、kは0~8の整数を示す)
で表されるフルオレンジカルボン酸単位(A3)とを含み、
前記ジオール単位(B)が、下記式(4)
【化4】
(式中、
2aおよびA2bは独立してアルキレン基を示し、s1およびs2は独立して0以上の整数を示し、
4aおよびR4bは独立して置換基を示し、t1およびt2は独立して0~4の整数を示し、
は置換基を示し、pは0~8の整数を示す)
で表されるフルオレンジオール単位(B1)と、
下記式(5)
【化5】
(式中、
は脂肪族炭化水素環を示し、
3aおよびA3bは独立してアルキレン基を示し、q1およびq2は独立して0または1を示し、
は置換基を示し、rは0以上の整数を示す)
で表される脂環族ジオール単位(B2)と、
下記式(6)
【化6】
(式中、Aはアルキレン基を示し、uは1以上の整数を示す)
で表される脂肪族ジオール単位(B3)とを含み、かつ色度bの絶対値が3.5以下であるポリエステル系樹脂。
【請求項2】
前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)と、前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)および前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)の合計とのモル比が、前者/後者=95/5~50/50である請求項1記載のポリエステル系樹脂。
【請求項3】
前記フルオレンジオール単位(B1)と、前記脂環族ジオール単位(B2)および脂肪族ジオール単位(B3)の合計とのモル比が、前者/後者=95/5~50/50である請求項1または2記載のポリエステル系樹脂。
【請求項4】
ジカルボン酸単位(A)とジオール単位(B)とを含むポリエステル系樹脂であって、
前記ジカルボン酸単位(A)が、請求項1記載の脂環族ジカルボン酸単位(A1)を含み、
前記ジオール単位(B)が、請求項1記載のフルオレンジオール単位(B1)と、請求項1記載の脂肪族ジオール単位(B3)と、下記式(7)
【化7】
(式中、
は芳香族炭化水素環を示し、
5aおよびA5bは独立してアルキレン基を示し、v1およびv2は独立して0または1を示し、
は置換基を示し、wは0以上の整数を示す)
で表される芳香族ジオール単位(B4)とを含み、かつ色度bの絶対値が3.5以下であるポリエステル系樹脂。
【請求項5】
前記ジカルボン酸単位(A)が、さらに請求項1記載のフルオレンジカルボン酸単位(A3)を含む請求項4記載のポリエステル系樹脂。
【請求項6】
前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)のトランス体比率が60モル%以上である請求項1、2、4または5記載のポリエステル系樹脂。
【請求項7】
ジカルボン酸単位(A)とジオール単位(B)とを含むポリエステル系樹脂であって、
前記ジカルボン酸単位(A)が、請求項1記載の芳香族ジカルボン酸単位(A2)と、請求項1記載のフルオレンジカルボン酸単位(A3)および/または脂肪族ジカルボン酸単位(A4)とを含み、
前記ジオール単位(B)が、請求項1記載のフルオレンジオール単位(B1)と、請求項1記載の脂環族ジオール単位(B2)と、請求項1記載の脂肪族ジオール単位(B3)とを含み、かつ色度bの絶対値が3.5以下であるポリエステル系樹脂。
【請求項8】
チタンを含まない請求項1、2、4、5または7記載のポリエステル系樹脂。
【請求項9】
前記ジカルボン酸単位(A)に対応するジカルボン酸成分(a)と、前記ジオール単位(B)に対応するジオール成分(b)とを重合して、請求項1、2、4、5または7記載のポリエステル系樹脂を製造する方法。
【請求項10】
ゲルマニウム化合物の存在下またはアルミニウム化合物およびリン化合物の存在下で重合する請求項9記載の方法。
【請求項11】
熱安定剤の存在下で重合する請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記熱安定剤がリン系化合物および/またはフェノール系化合物を含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項1、2、4、5または7記載のポリエステル系樹脂を含む成形体。
【請求項14】
導光体または光学レンズである請求項13記載の成形体。
【請求項15】
請求項1、2、4または5記載のポリエステル系樹脂を含む成形体であって、前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)がモノC5-8シクロアルカン環ジカルボン酸単位を含み、かつ光ファイバーのコアである成形体。
【請求項16】
請求項1、2または7記載のポリエステル系樹脂を含む成形体であって、前記ジカルボン酸単位(A)が前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)を含み、かつ拡張現実用レンズまたは仮想現実用レンズである成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特定のジオール単位と特定のジカルボン酸単位とを含むポリエステル系樹脂とその製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、構成単位として芳香族単位を含むことにより、屈折率およびガラス転移温度が高くなるため、高屈折率で耐熱性に優れた光学材料として利用されている。特に、近年、導光板や光ファイバーなどの導光体、AR(拡張現実)またはVR(仮想現実)用レンズなどの光学レンズの分野では、高い屈折率に加えて、色調や複屈折などの光学特性も要求される上に、機械的特性、耐熱性、成形性とのバランスを高度に充足させることも要求される。
【0003】
特開2007-39660号公報(特許文献1)には、リン化合物を含有し、脂環族成分およびフルオレン誘導体成分を構成単位として含み、ガラス転移温度が85~150℃である光学用ポリエステル樹脂が開示されている。
【0004】
特開2011-12178号公報(特許文献2)には、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のエステル化物(A)を含む酸成分と、ビスフェニルヒドロキシ化合物(B)と、炭素数2~6の脂肪族ジオール化合物(C)とを含むジオール成分とを重合反応させてなるガラス転移温度130~150℃ポリエステル樹脂を含む組成物であって、前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸残基のトランス体とシス体の比率が80/20~95/5であるポリエステル樹脂組成物が開示されている。
【0005】
特開2020-117706号公報(特許文献3)には、(A1)カルボキシ残基のトランス体/シス体異性比率が85/15~100/0である1,4-シクロヘキサンジカルボン酸成分及び(A2)トランス体/シス体異性比率が80/20~100/0である2,6-デカヒドロナフタレンジカルボン酸成分のうちの少なくとも一方を含む酸成分(A)と、(B1)前記重合体の質量に対して12質量%~61質量%のフルオレン系ポリオール成分と、(B2)複素環系ポリオール成分及び脂環系ポリオール成分のうちの少なくとも一方とを含むアルコール成分(B)との重合体を含み、ガラス転移温度が135℃以上であるポリエステル樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-39660号公報
【特許文献2】特開2011-12178号公報
【特許文献3】特開2020-117706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、屈折率を向上させるために、芳香環などにより嵩高い構造を形成すると、変色(黄変など)し易くなって色調は低下する傾向があるため、高い屈折率と黄色味などの色味の低減(高い無色透明性)とはトレードオフの関係にあり、両立が困難である。そのため、特許文献1~3のポリエステル樹脂でも、高い屈折率と色味の低減とは両立できていない。
【0008】
従って、本開示の目的は、高い屈折率を有し、かつ黄色味などの色味を低減できるポリエステル系樹脂ならびにその製造方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、脂環族ジカルボン酸単位(A1)と、芳香族ジカルボン酸単位(A2)および/または特定のフルオレンジカルボン酸単位(A3)とを含むジカルボン酸単位(A)と、特定のフルオレンジオール単位(B1)と、脂環族ジオール単位(B2)と、脂肪族ジオール単位(B3)とを含むジオール単位(B)とを組み合わせ、色度bの絶対値を3.5以下に調整することにより、高い屈折率を有し、かつ黄色味などの色味も低減できるポリエステル系樹脂を提供できることを見出し、本発明(または本開示)を完成した。
【0010】
すなわち、本開示には、以下の態様が含まれる。
【0011】
態様[1]:ジカルボン酸単位(A)とジオール単位(B)とを含むポリエステル系樹脂であって、
前記ジカルボン酸単位(A)が、下記式(1)
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、
は脂肪族炭化水素環を示し、
は置換基を示し、nは0以上の整数を示す)
で表される脂環族ジカルボン酸単位(A1)と、
下記式(2)
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、
は芳香族炭化水素環を示し、
は置換基を示し、mは0以上の整数を示す)
で表される芳香族ジカルボン酸単位(A2)および/または下記式(3)
【0016】
【化3】
【0017】
(式中、A1aおよびA1bは独立してアルキレン基を示し、
は置換基を示し、kは0~8の整数を示す)
で表されるフルオレンジカルボン酸単位(A3)とを含み、
前記ジオール単位(B)が、下記式(4)
【0018】
【化4】
【0019】
(式中、
2aおよびA2bは独立してアルキレン基を示し、s1およびs2は独立して0以上の整数を示し、
4aおよびR4bは独立して置換基を示し、t1およびt2は独立して0~4の整数を示し、
は置換基を示し、pは0~8の整数を示す)
で表されるフルオレンジオール単位(B1)と、
下記式(5)
【0020】
【化5】
【0021】
(式中、
は脂肪族炭化水素環を示し、
3aおよびA3bは独立してアルキレン基を示し、q1およびq2は独立して0または1を示し、
は置換基を示し、rは0以上の整数を示す)
で表される脂環族ジオール単位(B2)と、
下記式(6)
【0022】
【化6】
【0023】
(式中、Aはアルキレン基を示し、uは1以上の整数を示す)
で表される脂肪族ジオール単位(B3)とを含み、かつ色度bの絶対値が3.5以下であるポリエステル系樹脂。
【0024】
態様[2]:前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)と、前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)および前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)の合計とのモル比が、前者/後者=95/5~50/50である前記態様[1]記載のポリエステル系樹脂。
【0025】
態様[3]:前記フルオレンジオール単位(B1)と、前記脂環族ジオール単位(B2)および脂肪族ジオール単位(B3)の合計とのモル比が、前者/後者=95/5~50/50である前記態様[1]または[2]記載のポリエステル系樹脂。
【0026】
態様[4]:ジカルボン酸単位(A)とジオール単位(B)とを含むポリエステル系樹脂であって、
前記ジカルボン酸単位(A)が、前記態様[1]記載の脂環族ジカルボン酸単位(A1)を含み、
前記ジオール単位(B)が、前記態様[1]記載のフルオレンジオール単位(B1)と、前記態様[1]記載の脂肪族ジオール単位(B3)と、下記式(7)
【0027】
【化7】
【0028】
(式中、
は芳香族炭化水素環を示し、
5aおよびA5bは独立してアルキレン基を示し、v1およびv2は独立して0または1を示し、
は置換基を示し、wは0以上の整数を示す)
で表される芳香族ジオール単位(B4)とを含み、かつ色度bの絶対値が3.5以下であるポリエステル系樹脂。
【0029】
態様[5]:前記ジカルボン酸単位(A)が、さらに前記態様[1]記載のフルオレンジカルボン酸単位(A3)を含む前記態様[4]記載のポリエステル系樹脂。
【0030】
態様[6]:前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)のトランス体比率が60モル%以上である前記態様[1]~[5]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂。
【0031】
態様[7]:ジカルボン酸単位(A)とジオール単位(B)とを含むポリエステル系樹脂であって、
前記ジカルボン酸単位(A)が、前記態様[1]記載の芳香族ジカルボン酸単位(A2)と、前記態様[1]記載のフルオレンジカルボン酸単位(A3)および/または脂肪族ジカルボン酸単位(A4)とを含み、
前記ジオール単位(B)が、前記態様[1]記載のフルオレンジオール単位(B1)と、前記態様[1]記載の脂環族ジオール単位(B2)と、前記態様[1]記載の脂肪族ジオール単位(B3)とを含み、かつ色度bの絶対値が3.5以下であるポリエステル系樹脂。
【0032】
態様[8]:チタンを含まない前記態様[1]~[7]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂。
【0033】
態様[9]:前記ジカルボン酸単位(A)に対応するジカルボン酸成分(a)と、前記ジオール単位(B)に対応するジオール成分(b)とを重合して、前記態様[1]~[8]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂を製造する方法。
【0034】
態様[10]:ゲルマニウム化合物の存在下またはアルミニウム化合物およびリン化合物の存在下で重合する前記態様[9]記載の方法。
【0035】
態様[11]:熱安定剤の存在下で重合する前記態様[9]または[10]記載の方法。
【0036】
態様[12]:前記熱安定剤がリン系化合物および/またはフェノール系化合物を含む前記態様[11]記載の方法。
【0037】
態様[13]:前記態様[1]~[8]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂を含む成形体。
【0038】
態様[14]:導光体または光学レンズである前記態様[13]記載の成形体。
【0039】
態様[15]:前記態様[1]~[6]および[8]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂を含む成形体であって、前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)がモノC5-8シクロアルカン環ジカルボン酸単位を含み、かつ光ファイバーのコアである成形体。
【0040】
態様[16]:前記態様[1]~[3]および[6]~[8]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂を含む成形体であって、前記ジカルボン酸単位(A)が前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)を含み、かつAR用レンズまたはVR用レンズである成形体。
【0041】
なお、本開示では、以下の従たる目的を達成(課題を解決)してもよい。
【0042】
本開示の他の目的は、屈折率が高く、色味も低減されて色調に優れ、複屈折も低いポリエステル系樹脂ならびにその製造方法および用途を提供することにある。
【0043】
本開示のさらに他の目的は、高い屈折率と、優れた色調と、低い複屈折と、高い耐熱性および成形性とを実現できるポリエステル系樹脂ならびにその製造方法および用途を提供することにある。
【0044】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基などの炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば「Cアルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
【0045】
本明細書および特許請求の範囲において、「独立して」とは、2つの構成要素が、それぞれ独立した構成要素であることを意味し、例えば、アルキレン基A1aおよびA1bの場合、A1aとA1bとが同一のアルキレン基である必要はなく、異なるアルキレン基であってもよいことを意味する。
【0046】
さらに、本明細書および特許請求の範囲において、「X~Y」を用いて数値範囲を示す場合、端の数値XおよびYを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0047】
本開示によれば、高い屈折率を有し、かつ黄色味などの色味も低減できるポリエステル系樹脂を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
[ポリエステル系樹脂(P)]
本開示のポリエステル系樹脂(P)は、色度bの絶対値が3.5以下であるポリエステル系樹脂であり、
前記式(1)で表される脂環族ジカルボン酸単位(A1)と、前記式(2)で表される芳香族ジカルボン酸単位(A2)および/または前記式(3)で表されるフルオレンジカルボン酸単位(A3)とを含むジカルボン酸単位(A)と、前記式(4)で表されるフルオレンジオール単位(B1)と、前記式(5)で表される脂環族ジオール単位(B2)と、前記式(6)で表される脂肪族ジオール単位(B3)とを含むジオール単位(B)とを含むポリエステル系樹脂(P1)、
前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)を含むジカルボン酸単位(A)と、前記フルオレンジオール単位(B1)と、前記脂肪族ジオール単位(B3)と、前記式(7)で表される芳香族ジオール単位(B4)とを含むジオール単位(B)とを含むポリエステル系樹脂(P2)および
前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)と、前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)および/または脂肪族ジカルボン酸単位(A4)とを含むジカルボン酸単位(A)と、前記フルオレンジオール単位(B1)と、前記脂環族ジオール単位(B2)と、前記脂肪族ジオール単位(B3)とを含むジオール単位(B)とを含むポリエステル系樹脂(P3)から選択できる。
【0049】
前記ポリエステル系樹脂(P1)、前記ポリエステル系樹脂(P2)および前記ポリエステル系樹脂(P3)は、それそれ単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて混合樹脂として使用してもよい。
【0050】
(ポリエステル系樹脂(P1))
本開示のポリエステル系樹脂(P1)は、脂環族ジカルボン酸単位(A1)と、芳香族ジカルボン酸単位(A2)および/または前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)とを含むジカルボン酸単位(A)と、前記フルオレンジオール単位(B1)、脂環族ジオール単位(B2)および脂肪族ジオール単位(B3)を含むジオール単位(B)とを組み合わせることにより、高い屈折率を有し、かつ黄色味などの色味も低減でき、色調を向上できる。また、本開示のポリエステル系樹脂(P1)は、複屈折も低減できる上に、ガラス転移温度も適度な範囲にあるため、成形性を損なうことなく、耐熱性を向上できる。さらに、前記ジカルボン酸単位(A)が前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)を含むことにより、色調を高度に向上でき、前記ジカルボン酸単位(A)が前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)を含むことにより、複屈折を高度に低減できる。
【0051】
(A)ジカルボン酸単位
本開示のポリエステル系樹脂(P1)は、ジカルボン酸単位(A)として、前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)と、前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)および/または前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)とを含むジカルボン酸単位(A)とを含む。
【0052】
(A1)式(1)で表される脂環族ジカルボン酸単位
前記式(1)において、Zで表される脂肪族炭化水素環としては、シクロアルカン環、具体的には、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環などのモノC5-10シクロアルカン環;ビまたはトリシクロアルカン環などの架橋環式シクロアルカン環、具体的には、ノルボルナン環(ビシクロヘプタン環)、デカリン環(デカヒドロナフタレン環)、アダマンタン環、トリシクロデカン環などのビまたはトリC6-14シクロアルカン環などが挙げられる。これらのうち、シクロヘキサン環などのモノC5-8シクロアルカン環、デカリン環などのビC6-10シクロアルカン環が好ましく、シクロヘキサン環などのモノC5-8シクロアルカン環、デカリン環がさらに好ましく、高度に色調を向上し易い点から、モノC5-8シクロアルカン環がより好ましく、シクロヘキサン環が最も好ましい。
【0053】
で表される置換基(非反応性置換基または非重合性置換基)としては、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、モノまたはジ置換アミノ基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。
【0054】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0055】
炭化水素基には、直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが含まれる。
【0056】
アルキル基(直鎖状または分岐鎖状アルキル基)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などのC1-10アルキル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基;メチルフェニル基(またはトリル基)、ジメチルフェニル基(またはキシリル基)などのモノないしトリC1-4アルキル-フェニル基などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基が挙げられる。
【0057】
アルコキシ基(直鎖状または分岐鎖状アルコキシ基)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基などのC1-10アルコキシ基が挙げられる。
【0058】
アシル基としては、アセチル基などのC1-6アルキル-カルボニル基などが挙げられる。置換アミノ基としては、ジメチルアミノ基などのモノまたはジC1-4アルキルアミノ基;ジアセチルアミノ基などのビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基が挙げられる。
【0059】
シクロアルキルオキシ基としては、シクロヘキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基が挙げられる。
【0060】
アリールオキシ基としては、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基などが挙げられる。
【0061】
アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基などが挙げられる。
【0062】
アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基などが挙げられる。
【0063】
シクロアルキルチオ基としては、シクロヘキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基などが挙げられる。
【0064】
アリールチオ基としては、チオフェノキシ基(フェニルチオ基)などのC6-10アリールチオ基が挙げられる。
【0065】
アラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基などが挙げられる。
【0066】
アシル基としては、アセチル基などのC1-6アルキル-カルボニル基などが挙げられる。
【0067】
モノまたはジ置換アミノ基としては、ジアルキルアミノ基、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基などが挙げられる。ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基が挙げられる。ビス(アルキルカルボニル)アミノ基としては、ジアセチルアミノ基などのビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基などが挙げられる。
【0068】
これらの置換基のうち、代表的には、ハロゲン原子;アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基などの炭化水素基;アルコキシ基;アシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基などが挙げられる。これらの置換基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0069】
好ましい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基が挙げられ、アルキル基としては、メチル基などのC1-6アルキル基が好ましく、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基などのC5-8シクロアルキル基が好ましく、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのC6-14アリール基が好ましく、アルコキシ基としては、メトキシ基などのC1-4アルコキシ基が好ましい。なかでも、アルキル基が好ましく、メチル基などのC1-4アルキル基が特に好ましい。
【0070】
の置換数nは、0以上の整数であればよく、環Zの種類に応じて適宜選択でき、例えば0~8の整数の範囲であってもよいが、好ましくは以下段階的に、0~6の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0または1であり、0が最も好ましい。
【0071】
前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)に対応する脂環族ジカルボン酸成分(a1)としては、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンカルボン酸などのシクロヘキサンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体;1,2-デカリンジカルボン酸、1,4-デカリンジカルボン酸、1,5-デカリンジカルボン酸、1,8-デカリンジカルボン酸、2,3-デカリンジカルボン酸、2,6-デカリンジカルボン酸などのデカリンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0072】
なお、本明細書および特許請求の範囲において特に断りのない限り、「エステル形成性誘導体」は、アルキルエステル(または低級アルキルエステル)、具体的には、メチルエステル、エチルエステルなどのC1-4アルキルエステルなど;酸クロリドなどの酸ハライド;酸無水物を意味する。
【0073】
脂環族ジカルボン酸単位(A1)は、耐熱性を向上し易い点から、シス体よりもトランス体を多く含むのが好ましい。脂環族ジカルボン酸単位(A1)のトランス体比率は、例えば60~100モル%であってもよく、好ましくは以下段階的に、70モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、95モル%以上であり、例えば80~99.9モル%、好ましくは85~99.5モル%、さらに好ましくは90~99モル%であってもよい。
【0074】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、脂環族ジカルボン酸単位(A1)のトランス体比率は、原料である脂環族ジカルボン酸の総量(シス体およびトランス体の合計量)に対するトランス体の割合を意味する。
【0075】
これらの脂環族ジカルボン酸単位(A1)は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましい脂環族ジカルボン酸単位(A1)は、前記式(1)において、Zがシクロヘキサン環またはデカリン環であり、かつnが0であるジカルボン酸単位;より好ましくは1,4-シクロヘキサンジカルボン酸または2,6-デカリンジカルボン酸由来のジカルボン酸単位である。好ましい脂環族ジカルボン酸単位(A1)の割合は、脂環族ジカルボン酸単位(A1)中、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。好ましい脂環族ジカルボン酸単位(A1)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向がある。
【0076】
脂環族ジカルボン酸単位(A1)の割合は、全ジカルボン酸単位(A)中30モル%以上、好ましくは50モル%以上であってもよく、例えば50~99モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、55~95モル%、60~90モル%、65~85モル%、70~80モル%、72~78モル%である。脂環族ジカルボン酸単位(A1)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率や耐熱性が向上する傾向がある。
【0077】
(A2)式(2)で表される芳香族ジカルボン酸単位
前記式(2)において、Zで表される芳香族炭化水素環(アレーン環)としては、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられる。多環式アレーン環としては、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合多環式芳香族炭化水素環)などが挙げられる。
【0078】
縮合多環式アレーン環としては、縮合二環式アレーン環、縮合三環式アレーン環などの縮合二ないし四環式アレーン環などが挙げられる。縮合二環式アレーン環としては、ナフタレン環、インデン環などの縮合二環式C10-16アレーン環などが挙げられる。縮合三環式アレーン環としては、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式C14-20アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環は、ナフタレン環などの縮合多環式C10-14アレーン環である。
【0079】
環集合アレーン環としては、ビフェニル環、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などのビアレーン環;テルフェニル環などのテルアレーン環などが挙げられる。好ましい環集合アレーン環は、ビフェニル環などのC12-18ビアレーン環である。
【0080】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「環集合アレーン環」とは、2つ以上の環系(アレーン環系)が一重結合(単結合)または二重結合で直結し、環を直結する結合の数が環系の数より1つだけ少ないものを意味し、例えば、上述のように、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などは縮合多環式アレーン環骨格を有していても環集合アレーン環に分類され、ナフタレン環(非環集合アレーン環)などの「縮合多環式アレーン環」と明確に区別される。
【0081】
これらのアレーン環のうち、環Zとしては、C6-12アレーン環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環がさらに好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0082】
で表される置換基(非反応性置換基または非重合性置換基)としては、Rとして例示された置換基などが挙げられる。前記置換基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。前記置換基のうち、アルキル基が好ましく、メチル基などのC1-4アルキル基が特に好ましい。
【0083】
の置換数mは、0以上の整数であればよく、環Zの種類に応じて適宜選択でき、例えば0~8の整数であってもよいが、好ましくは以下段階的に、0~6の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0または1であり、0が最も好ましい。
【0084】
前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)に対応する芳香族ジカルボン酸成分(a2)としては、単環式芳香族ジカルボン酸成分、縮合多環式芳香族ジカルボン酸成分、環集合多環式芳香族ジカルボン酸成分などが挙げられる。
【0085】
単環式芳香族ジカルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのベンゼンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体;5-メチルイソフタル酸などのC1-4アルキル-ベンゼンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0086】
縮合多環式芳香族ジカルボン酸成分としては、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体;アントラセンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体;フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10-24アレーン-ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0087】
環集合多環式芳香族ジカルボン酸成分としては、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸などのビC6-10アレーン-ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0088】
これらの芳香族ジカルボン酸単位(A2)は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましい芳香族ジカルボン酸単位(A2)は、前記式(2)において、Zがベンゼン環であり、かつmが0であるジカルボン酸単位;より好ましくはテレフタル酸単位である。好ましい芳香族ジカルボン酸単位(A2)の割合は、芳香族ジカルボン酸単位(A2)中、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。好ましい芳香族ジカルボン酸単位(A2)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向がある。
【0089】
(A3)式(3)で表されるフルオレンジカルボン酸単位
前記式(3)において、A1aおよびA1bで表されるアルキレン基(直鎖状または分岐鎖状アルキレン基)としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などのC1-8アルキレン基などが挙げられる。アルキレン基A1aは、アルキレン基A1bと異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。これらのアルキレン基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、エチレン基、プロピレン基などのC2-3アルキレン基が好ましく、エチレン基が特に好ましい。
【0090】
で表される置換基(非反応性置換基または非重合性置換基)としては、Rとして例示された置換基などが挙げられる。前記置換基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。前記置換基のうち、アルキル基、アリール基が好ましく、メチル基などのC1-4アルキル基、フェニル基などのC6-10アリール基が特に好ましく、C1-3アルキル基がより好ましい。
【0091】
の置換数kは、例えば0~8の整数の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、0~6の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0または1あるいは0または2であり、0が最も好ましい。
【0092】
前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)に対応するフルオレンジカルボン酸成分(a3)としては、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)-フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-6アルキル)-フルオレンまたはそのエステル形成性誘導体;9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-2,7-ジフェニルフルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-6アルキル)-ジアリールフルオレンまたはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0093】
これらのフルオレンジカルボン酸単位(A3)は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましいフルオレンジカルボン酸単位(A3)は、前記式(3)において、A1aおよびA1bがC2-3アルキレン基であり、かつkが0であるジカルボン酸単位である。好ましいフルオレンジカルボン酸単位(A3)の割合は、フルオレンジカルボン酸単位(A3)中、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。好ましいフルオレンジカルボン酸単位(A3)の割合が下限以上であると、複屈折を低下させる傾向がある。
【0094】
前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)、前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)および前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)の総量は、全ジカルボン酸単位(A)中、例えば50モル%以上であってもよく、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0095】
前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)と、前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)および前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)の合計との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=99/1~30/70程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、95/5~50/50、93/7~55/45、90/10~60/40、85/15~65/35、80/20~70/30、78/22~72/28である。前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率が高くなったり、複屈折が低下する傾向がある。
【0096】
芳香族ジカルボン酸単位(A2)およびフルオレンジカルボン酸単位(A3)の総量は、全ジカルボン酸単位(A)中1~70モル%であってもよく、好ましくは以下段階的に、5~50モル%、7~45モル%、10~40モル%、15~35モル%、20~30モル%、22~28モル%である。前記総量が下限以上であると、屈折率が高くなったり、複屈折が低下する傾向があり、上限以下であると、色調が向上する傾向がある。
【0097】
芳香族ジカルボン酸単位(A2)とフルオレンジカルボン酸単位(A3)との割合は、特に限定されず、前者/後者(モル比)=100/0~0/100の範囲から選択できるが、用途に応じて選択してもよい。
【0098】
芳香族ジカルボン酸単位(A2)とフルオレンジカルボン酸単位(A3)との割合(モル比)は、前者/後者=50/50~0/100であってもよく、好ましくは30/70~0/100、さらに好ましくは20/80~0/100、より好ましくは10/90~0/100であり、フルオレンジカルボン酸単位(A3)のみが最も好ましい。これらの割合は、特に、AR用レンズまたはVR用レンズに適用する場合に好適である。
【0099】
脂環族ジカルボン酸単位(A1)および芳香族ジカルボン酸単位(A2)の総量は、全ジカルボン酸単位(A)中、例えば50モル%以上であってもよく、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0100】
脂環族ジカルボン酸単位(A1)およびフルオレンジカルボン酸単位(A3)の総量は、全ジカルボン酸単位(A)中、例えば50モル%以上であってもよく、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0101】
脂環族ジカルボン酸単位(A1)と、芳香族ジカルボン酸単位(A2)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=99/1~30/70程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、95/5~50/50、93/7~55/45、90/10~60/40、85/15~65/35、80/20~70/30、78/22~72/28である。
【0102】
脂環族ジカルボン酸単位(A1)と、フルオレンジカルボン酸単位(A3)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=99/1~30/70程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、95/5~50/50、93/7~55/45、90/10~60/40、85/15~65/35、80/20~70/30、78/22~72/28である。
【0103】
(A4)脂肪族ジカルボン酸単位
ジカルボン酸単位(A)は、必要に応じて、脂肪族ジカルボン酸単位(A4)をさらに含んでいてもよい。脂肪族ジカルボン酸単位に対応する脂肪族カルボン酸成分(a4)としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などのC1-20アルカン-ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体;マレイン酸、フマル酸などのC2-10アルケン-ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸単位は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0104】
脂肪族ジカルボン酸単位(A4)の割合は、全ジカルボン酸単位(A)中50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以下、10モル%以下、5モル%以下である。ジカルボン酸単位(A)は、脂肪族ジカルボン酸単位(A4)を実質的に含まないのが好ましく、全く含まないのが特に好ましい。
【0105】
(A5)他のジカルボン酸単位
ジカルボン酸単位(A)は、必要に応じて、他のジカルボン酸単位(A5)として、前記ジカルボン酸単位(A1)~(A4)以外のジカルボン酸単位をさらに含んでいてもよい。他のジカルボン酸単位(A5)の割合は、全ジカルボン酸単位(A)中50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以下、10モル%以下、5モル%以下である。ジカルボン酸単位(A)は、他のジカルボン酸単位(A5)を実質的に含まないのが好ましく、全く含まないのが特に好ましい。
【0106】
(B)ジオール単位
本開示のポリエステル系樹脂(P1)は、ジオール単位(B)として、前記式(4)で表されるフルオレンジオール単位(B1)と、前記式(5)で表される脂環族ジオール単位(B2)と、前記式(6)で表される脂肪族ジオール単位(B3)とを含む。
【0107】
(B1)式(4)で表されるフルオレンジオール単位
前記式(4)において、A2aおよびA2bで表されるアルキレン基(直鎖状または分岐鎖状アルキレン基)としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2-6アルキレン基などが挙げられる。これらのアルキレン基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、C2-6アルキレン基が好ましく、C2-4アルキレン基がさらに好ましく、エチレン基、プロピレン基などのC2-3アルキレン基がより好ましく、エチレン基が最も好ましい。アルキレン基A2aは、アルキレン基A2bと異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0108】
繰り返し数s1およびs2は、それぞれ0以上であり、例えば0~15の整数の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、0~10の整数、0~8の整数、0~6の整数、0~4の整数、0~2の整数、0または1である。また、繰り返し数s1およびs2は、1以上であると重合反応性を向上し易く、好ましくは以下段階的に、1~10の整数、1~8の整数、1~6の整数、1~4の整数、1~3の整数、1または2であり、特に1が最も好ましい。s1およびs2は、上限以下であると、耐熱性や屈折率が向上する傾向がある。また、s1とs2は、同一であってもよく、異なっていてもよい。s1およびs2がそれぞれ2以上の整数である場合、2以上のアルキレン基A2aおよびA2bの種類は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0109】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「繰り返し数(付加モル数)」は、平均値(算術平均値、相加平均値)または平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、上述の好ましい整数の範囲と同様であってもよい。
【0110】
フルオレン環の9位に結合するベンゼン環(フェニル基)に対する基[-O-(A2aO)s1-]および基[-O-(A2bO)s2-](すなわち、ポリエステル系樹脂の主
鎖を形成するエーテル結合)のそれぞれの置換位置は、特に制限されず、例えば、フルオレン環の9位に結合するフェニル基の2位、3位、4位のいずれかの位置であってもよく、好ましくは3位または4位、特に好ましくは4位である。
【0111】
4aおよびR4bで表される置換基(非反応性置換基または非重合性置換基)としては、Rとして例示された置換基などが挙げられる。前記置換基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、アルキル基が好ましく、メチル基などのC1-4アルキル基が特に好ましい。置換基R4aは、置換基R4bと同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0112】
置換数t1およびt2は、それぞれ0~4の整数であってもよく、好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0または1、より好ましくは0である。置換数t1と置換数t2とは、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。t1およびt2が2以上の整数であるとき、2以上の置換基R4aおよび置換基R4bの種類は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0113】
置換基R4aおよびR4bの置換位置は、特に限定されず、フルオレン環の9位に結合するそれぞれのフェニル基の2位および/または6位、3位および/または5位が好ましく、3位および/または5位が特に好ましい。
【0114】
で表される置換基(非反応性置換基または非重合性置換基)としては、Rとして例示された置換基などが挙げられる。前記置換基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。前記置換基のうち、アルキル基が好ましく、メチル基などのC1-4アルキル基が特に好ましい。
【0115】
置換数pは、例えば0~8の整数であればよいが、好ましくは以下段階的に、0~6の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0または1であり、最も好ましくは0である。なお、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環において、基Rのそれぞれの置換数は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0116】
前記フルオレンジオール単位(B1)に対応するフルオレンジオール成分(b1)としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス[(モノまたはジ)C1-4アルキル-ヒドロキシフェニル]フルオレンなど;9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-フェニル]フルオレン;9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(モノまたはジ)C1-4アルキル-ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
【0117】
これらのフルオレンジオール単位(B1)は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましいフルオレンジオール単位(B1)は、前記式(4)において、A2aおよびA2bがC2-3アルキレン基であり、s1およびs2が1以上の整数であり、かつt1、t2およびpが0であるジオール単位;より好ましくは9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノないしトリ)C2-4アルコキシ-フェニル]フルオレン由来のジオール単位である。好ましいフルオレンジオール単位(B1)の割合は、フルオレンジオール単位(B1)中、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。好ましいフルオレンジオール単位(B1)の割合が下限以上であると、屈折率や耐熱性が向上する傾向がある。
【0118】
フルオレンジオール単位(B1)は、全ジオール単位(B)中、例えば30モル%以上、好ましくは40モル%以上であってもよく、例えば40~99モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは50~95モル%、さらに好ましくは55~90モル%、より好ましくは60~80モル%、最も好ましくは65~75モル%である。フルオレンジオール単位(B1)の割合が下限以上であると、色調が向上(黄色味が低減)する傾向がある。
【0119】
(B2)式(5)で表される脂環族ジオール単位
前記式(5)において、Zで表される脂肪族炭化水素環としては、Zとして例示された脂肪族炭化水素環などが挙げられる。前記脂肪族炭化水素環のうち、シクロヘキサン環などのモノC5-8シクロアルカン環、デカリン環などのビC6-10シクロアルカン環が好ましく、シクロヘキサン環、デカリン環がさらに好ましく、高度に色調を向上(黄色味を低減)し易い点から、シクロヘキサン環がより好ましい。
【0120】
3aおよびA3bで表されるアルキレン基(直鎖状または分岐鎖状アルキレン基)としては、A1aおよびA1bとして例示されたアルキレン基などが挙げられる。アルキレン基A3aは、アルキレン基A3bと異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。前記アルキレン基のうち、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのC1-3アルキレン基が好ましく、メチレン基などのC1-2アルキレン基がさらに好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0121】
3aおよびA3bの有無を示す係数q1と係数q2とは、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。係数q1および係数q2は1が好ましい。
【0122】
で表される置換基(非反応性置換基または非重合性置換基)としては、Rとして例示された置換基などが挙げられる。前記置換基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。前記置換基のうち、アルキル基が好ましく、メチル基などのC1-4アルキル基が特に好ましい。
【0123】
の置換数rは、0以上の整数であればよく、環Zの種類に応じて適宜選択でき、例えば0~8の整数の範囲であってもよいが、好ましくは以下段階的に、0~6の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0または1であり、0が最も好ましい。
【0124】
脂環族ジオール単位(B2)に対応する脂環族ジオール成分(b2)としては、1,4-シクロヘキサンジオール(または1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン)などのシクロヘキサンジオール;シクロヘキサン-1,3-ジメタノール[または1,3-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン]、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1-3アルキル)シクロヘキサン;デカリン-2,6-ジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1-3アルキル)デカリン;アダマンタンジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1-3アルキル)アダマンタン;トリシクロデカンジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1-3アルキル)トリシクロデカンなどが挙げられる。
【0125】
脂環族ジオール単位(B2)は、耐熱性を向上し易い点から、シス体よりもトランス体を多く含むのが好ましい。脂環族ジオール単位(B2)のトランス体比率は、例えば60~100モル%であってもよく、好ましくは以下段階的に、70モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、95モル%以上であり、例えば80~99.9モル%、好ましくは85~99.5モル%、さらに好ましくは90~99モル%であってもよい。
【0126】
これらの脂環族ジオール単位(B2)は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましい脂環族ジオール単位(B2)は、前記式(5)において、Zがシクロヘキサン環であり、かつrが0であるジオール単位;より好ましくはシクロヘキサン-1,4-ジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1-2アルキル)シクロヘキサン由来のジオール単位である。好ましい脂環族ジオール単位(B2)の割合は、脂環族ジオール単位(B2)中、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。好ましい脂環族ジオール単位(B2)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向がある。
【0127】
脂環族ジオール単位(B2)の割合は、前記フルオレンジオール単位(B1)100モルに対して、例えば1~100モル、好ましくは5~80モル、さらに好ましくは10~60モル、より好ましくは20~50モル、最も好ましくは30~40モルである。脂環族ジオール単位(B2)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率および耐熱性が向上する傾向がある。
【0128】
脂環族ジオール単位(B2)の割合は、全ジオール単位(B)中、例えば1モル%以上、特に3モル%以上であってもよく、例えば3~70モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは5~50モル%、さらに好ましくは10~40モル%、より好ましくは15~35モル%、最も好ましくは20~30モル%である。脂環族ジオール単位(B2)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率および耐熱性が向上する傾向がある。
【0129】
(B3)式(6)で表される脂肪族ジオール単位
前記式(6)において、Aで表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、テトラメチレン基、1,6-ヘキサンジイル基などのC2-12アルキレン基などが挙げられる。これらのうち、C2-6アルキレン基が好ましく、C2-4アルキレン基がさらに好ましく、エチレン基、プロピレン基などのC2-3アルキレン基がより好ましく、特にエチレン基が最も好ましい。
【0130】
繰り返し数uは1以上であればよく、例えば1~10であり、好ましくは以下段階的に、1~4の整数、1~3の整数、1または2であり、特に1が好ましい。uが2以上である場合、2以上のアルキレン基Aの種類は、異なっていてもよいが、同一が好ましい。
【0131】
前記脂肪族ジオール単位(B3)に対応する脂肪族ジオール成分(b3)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、テトラメチレングリコール(または1,4-ブタンジオール)、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオールなどのC2-12アルキレングリコール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジないしデカC2-12アルキレングリコールなどが挙げられる。
【0132】
これらの脂肪族ジオール単位(B3)は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましい脂肪族ジオール単位(B3)は、前記式(6)において、AがC2-4アルキレン基であり、uが1であるジオール単位;より好ましくはエチレングリコールなどのC2-3アルキレングリコール由来のジオール単位である。好ましい脂肪族ジオール単位(B3)の割合は、脂肪族ジオール単位(B3)中、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。好ましい脂肪族ジオール単位(B3)の割合が下限以上であると、重合反応性が向上する傾向がある。
【0133】
脂肪族ジオール単位(B3)の割合は、前記フルオレンジオール単位(B1)100モルに対して、例えば0.5~50モル、好ましくは1~30モル、さらに好ましくは1.5~20モル、より好ましくは3~15モル、最も好ましくは5~10モルである。脂肪族ジオール単位(B3)の割合が下限以上であると、重合反応性が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率および耐熱性が向上する傾向がある。
【0134】
脂肪族ジオール単位(B3)の割合は、前記脂環族ジオール単位(B2)100モルに対して、例えば0.5~200モル、好ましくは1~100モル、さらに好ましくは3~80モル、より好ましくは5~50モル、最も好ましくは10~30モルである。脂肪族ジオール単位(B3)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向があり、上限以下であると、重合反応性が向上する傾向がある。
【0135】
脂肪族ジオール単位(B3)の割合は、全ジオール単位(B)中、例えば0.5モル%以上、特に1モル%以上であってもよく、例えば0.5~50モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは1~30モル%、さらに好ましくは1.5~20モル%、より好ましくは2~15モル%、最も好ましくは3~10モル%である。脂肪族ジオール単位(B3)の割合が下限以上であると、重合反応性が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率および耐熱性が向上する傾向がある。
【0136】
前記フルオレンジオール単位(B1)、前記脂環族ジオール単位(B2)および脂肪族ジオール単位(B3)の総量は、全ジオール単位(B)中、例えば50モル%以上であってもよく、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0137】
前記フルオレンジオール単位(B1)と、前記脂環族ジオール単位(B2)および前記脂肪族ジオール単位(B3)の合計との割合は、前者/後者(モル比)=99/1~30/70程度の範囲から選択でき、例えば95/5~50/50、好ましくは93/7~50/50、さらに好ましくは90/10~55/45、より好ましくは80/20~60/40、最も好ましくは75/25~65/35である。前記フルオレンジオール単位(B1)の割合が下限以上であると、屈折率および耐熱性が向上する傾向があり、上限以下であると、色調が向上したり、重合性反応性が向上する傾向がある。
【0138】
(B4)式(7)で表される芳香族ジオール単位
ジオール単位(B)は、必要に応じて、前記式(7)で表される芳香族ジオール単位(B4)をさらに含んでいてもよい。前記式(7)において、Zで表される芳香族炭化水素環としては、Zとして例示された芳香族炭化水素環などが挙げられる。前記芳香族炭化水素環のうち、C6-12アレーン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0139】
5aおよびA5bで表されるアルキレン基(直鎖状または分岐鎖状アルキレン基)としては、A1aおよびA1bとして例示されたアルキレン基などが挙げられる。アルキレン基A5aは、アルキレン基A5bと異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。前記アルキレン基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。前記アルキレン基のうち、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのC1-3アルキレン基が好ましく、メチレン基などのC1-2アルキレン基がさらに好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0140】
5aおよびA5bの有無を示す係数v1と係数v2とは、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。係数v1および係数v2は1が好ましい。
【0141】
で表される置換基(非反応性置換基または非重合性置換基)としては、Rとして例示された置換基などが挙げられる。前記置換基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。前記置換基のうち、アルキル基が好ましく、メチル基などのC1-4アルキル基が特に好ましい。
【0142】
の置換数wは、0以上の整数であればよく、環Zの種類に応じて適宜選択でき、例えば0~8の整数の範囲であってもよいが、好ましくは以下段階的に、0~6の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0または1であり、0が最も好ましい。
【0143】
芳香族ジオール単位(B4)に対応する芳香族ジオール成分(b4)としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビフェノール、ビナフトールなどのジヒドロキシアレーン;ベンゼンジメタノールなどのビス(ヒドロキシアルキル)アレーンなどが挙げられる。
【0144】
これらの芳香族ジオール単位(B4)は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましい芳香族ジオール単位(B4)は、前記式(7)において、Zがベンゼン環であり、かつwが0であるジオール単位;より好ましくはベンゼン-1,4-ジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1-2アルキル)ベンゼン由来のジオール単位である。好ましい芳香族ジオール単位(B4)の割合は、芳香族ジオール単位(B4)中、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。
【0145】
芳香族ジオール単位(B4)の割合は、全ジオール単位(B)中、例えば50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以下、10モル%以下、5モル%以下である。ジオール単位(B)は、芳香族ジオール単位(B4)を実質的に含まないのが好ましく、全く含まないのが特に好ましい。
【0146】
(B5)他のジオール単位
ジオール単位(B)は、必要に応じて、他のジオール単位(B5)をさらに含んでいてもよい。他のジオール単位(B5)としては、芳香族ジオール単位(但し、前記フルオレンジオール単位(B1)および前記芳香族ジオール単位(B4)を除く)などが挙げられる。前記芳香族ジオール単位に対応する芳香族ジオール成分(b4)としては、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールG、ビスフェノールSなどのビスフェノール類;およびこれらのジオール成分のC2-4アルキレンオキシド(またはアルキレンカーボネート、ハロアルカノール)付加体などが挙げられる。これらの他のジオール単位は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0147】
他のジオール単位(B5)の割合は、全ジオール単位(B)中、例えば50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以下、10モル%以下、5モル%以下である。ジオール単位(B)は、他のジオール単位(B5)を実質的に含まないのが好ましく、全く含まないのが特に好ましい。
【0148】
(C)他の構成単位
本開示のポリエステル系樹脂(P1)は、必要に応じて、ジカルボン酸単位(A)およびジオール単位(B)とは異なる他の構成単位(C)を含んでいてもよい。
【0149】
他の構成単位(C)としては、ヒドロキシアルカン酸や対応するラクトン、3以上のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を有する多官能性重合成分、カーボネート結合形成成分などに由来する構成単位などが挙げられる。
【0150】
前記ヒドロキシアルカン酸や対応するラクトンとしては、例えば、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、6-ヒドロキシヘキサン酸などのヒドロキシアルカン酸;ε-カプロラクトンなどのヒドロキシアルカン酸に対応するラクトンなどが挙げられる。
【0151】
前記多官能性重合成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸や、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールなど、合計で3以上のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を有する多官能性重合成分などが挙げられる。
【0152】
カーボネート結合形成成分としては、2つのジオール成分との反応により、カーボネート結合を形成可能な化合物であればよい。すなわち、「カーボネート結合形成成分に由来する構成単位」とは、カルボニル基を意味し、このカルボニル基に隣接して結合する2つのジオール単位の末端酸素原子とともにカーボネート結合を形成する。代表的なカーボネート結合形成成分としては、例えば、ホスゲン、トリホスゲンなどのホスゲン類、ジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステル類などが挙げられる。
【0153】
このような他の構成単位(C)の割合は、構成単位全体[ジカルボン酸単位(A)、ジオール単位(B)および他の構成単位(C)の総量]に対して50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、5モル%以下であり、通常、他の構成単位(C)を実質的に含まない場合が多い。なお、前記割合は、0~10モル%程度、例えば0.01~1モル%程度であってもよい。
【0154】
本開示のポリエステル系樹脂(P1)は、色調を向上できる点から、チタンを実質的に含まないのが好ましく、チタンを含まないのが特に好ましい。
【0155】
(ポリエステル系樹脂(P2))
本開示のポリエステル系樹脂(P2)は、前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)を含むジカルボン酸単位(A)と、前記フルオレンジオール単位(B1)と、前記脂肪族ジオール単位(B3)と、前記芳香族ジオール単位(B4)とを含むジカルボン酸単位(B)とを組み合わせることにより、高い屈折率を有し、かつ黄色味などの色味も低減でき、色調を向上できる。また、本開示のポリエステル系樹脂(P2)は、複屈折も低減できる上に、ガラス転移温度も適度な範囲にあるため、成形性を損なうことなく、耐熱性を向上できる。さらに、前記ジカルボン酸単位(A)が、前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)をさらに含むことにより、複屈折を高度に低減できる。
【0156】
(A)ジカルボン酸単位
本開示のポリエステル系樹脂(P2)は、ジカルボン酸単位(A)として、前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)を含む。
【0157】
(A1)式(1)で表される脂環族ジカルボン酸単位
ポリエステル系樹脂(P2)において、脂環族ジカルボン酸単位(A1)は、好ましい態様も含めて、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された脂環族ジカルボン酸単位(A1)から選択できる。
【0158】
ポリエステル系樹脂(P2)において、脂環族ジカルボン酸単位(A1)の割合は、全ジカルボン酸単位(A)中30モル%以上、好ましくは50モル%以上であってもよく、例えば50~99モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50~90モル%、55~85モル%、60~80モル%、65~75モル%である。脂環族ジカルボン酸単位(A1)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率や耐熱性が向上する傾向がある。
【0159】
(A3)式(3)で表されるフルオレンジカルボン酸単位
ポリエステル系樹脂(P2)において、フルオレンジカルボン酸単位(A3)は、好ましい態様も含めて、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示されたフルオレンジカルボン酸単位(A3)から選択できる。
【0160】
ポリエステル系樹脂(P2)において、前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)と、前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=100/0~30/70程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、99/1~40/60、90/10~50/50、85/15~55/45、80/20~60/40、75/25~65/35である。前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率が高くなったり、複屈折が低下する傾向がある。
【0161】
ポリエステル系樹脂(P2)において、前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)および前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)の総量は、全ジカルボン酸単位(A)中、例えば50モル%以上であってもよく、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0162】
(他のジカルボン酸単位)
ポリエステル系樹脂(P2)において、ジカルボン酸単位(A)は、必要に応じて、他のジカルボン酸単位として、前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)および前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)以外のジカルボン酸単位をさらに含んでいてもよい。他のジカルボン酸単位としては、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された芳香族ジカルボン酸単位(A2)、脂肪族ジカルボン酸単位(A4)などが挙げられる。他のジカルボン酸単位の割合は、全ジカルボン酸単位(A)中50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以下、10モル%以下、5モル%以下である。ジカルボン酸単位(A)は、他のジカルボン酸単位を実質的に含まないのが好ましく、全く含まないのが特に好ましい。
【0163】
(B)ジオール単位
本開示のポリエステル系樹脂(P2)は、ジオール単位(B)として、前記式(4)で表されるフルオレンジオール単位(B1)と、前記式(6)で表される脂肪族ジオール単位(B3)と、前記式(7)で表される芳香族ジオール単位(B4)とを含む。
【0164】
(B1)式(4)で表されるフルオレンジオール単位
ポリエステル系樹脂(P2)において、フルオレンジオール単位(B1)は、好ましい態様も含めて、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示されたフルオレンジオール単位(B1)から選択できる。
【0165】
ポリエステル系樹脂(P2)において、フルオレンジオール単位(B1)は、全ジオール単位(B)中、例えば30モル%以上であってもよく、例えば30~95モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは40~90モル%、さらに好ましくは45~80モル%、より好ましくは50~70モル%、最も好ましくは55~65モル%である。フルオレンジオール単位(B1)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向がある。
【0166】
(B3)式(6)で表される脂肪族ジオール単位
ポリエステル系樹脂(P2)において、脂肪族ジオール単位(B3)は、好ましい態様も含めて、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された脂肪族ジオール単位(B3)から選択できる。
【0167】
ポリエステル系樹脂(P2)において、脂肪族ジオール単位(B3)の割合は、前記フルオレンジオール単位(B1)100モルに対して、例えば0.5~50モル、好ましくは1~40モル、さらに好ましくは3~30モル、より好ましくは5~25モル、最も好ましくは10~20モルである。脂肪族ジオール単位(B3)の割合が下限以上であると、重合反応性が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率および耐熱性が向上する傾向がある。
【0168】
ポリエステル系樹脂(P2)において、脂肪族ジオール単位(B3)の割合は、全ジオール単位(B)中、例えば0.5モル%以上、特に1モル%以上であってもよく、例えば0.5~50モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは1~30モル%、さらに好ましくは2~25モル%、より好ましくは3~20モル%、最も好ましくは5~15モル%である。脂肪族ジオール単位(B3)の割合が下限以上であると、重合反応性が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率および耐熱性が向上する傾向がある。
【0169】
(B4)式(7)で表される芳香族ジオール単位
ポリエステル系樹脂(P2)において、芳香族ジオール単位(B4)は、好ましい態様も含めて、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された芳香族ジオール単位(B4)から選択できる。
【0170】
ポリエステル系樹脂(P2)において、芳香族ジオール単位(B4)の割合は、フルオレンジオール単位(B1)100モルに対して、例えば5~100モル、好ましくは10~90モル、さらに好ましくは20~80モル、より好ましくは30~70モル、最も好ましくは40~60モルである。芳香族ジオール単位(B4)の割合が下限以上であると、屈折率が向上する傾向があり、上限以下であると、色調が向上する傾向がある。
【0171】
ポリエステル系樹脂(P2)において、芳香族ジオール単位(B4)の割合は、脂肪族ジオール単位(B3)100モルに対して、例えば10~1000モル、好ましくは50~800モル、さらに好ましくは100~500モル、より好ましくは200~400モル、最も好ましくは250~350モルである。芳香族ジオール単位(B4)の割合が下限以上であると、屈折率が向上する傾向があり、上限以下であると、重合反応性が向上する傾向がある。
【0172】
ポリエステル系樹脂(P2)において、芳香族ジオール単位(B4)の割合は、全ジオール単位(B)中、例えば1モル%以上、特に3モル%以上であってもよく、例えば3~70モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは5~60モル%、さらに好ましくは10~50モル%、より好ましくは15~45モル%、最も好ましくは20~40モル%である。芳香族ジオール単位(B4)の割合が下限以上であると、屈折率が向上する傾向があり、上限以下であると、色調が向上する傾向がある。
【0173】
ポリエステル系樹脂(P2)において、前記フルオレンジオール単位(B1)、前記脂肪族ジオール単位(B3)および前記芳香族ジオール(B4)の総量は、全ジオール単位(B)中、例えば50モル%以上であってもよく、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0174】
(他のジオール単位)
ポリエステル系樹脂(P2)において、ジオール単位(B)は、必要に応じて、他のジオール単位として、前記フルオレンジオール単位(B1)、前記脂肪族ジオール単位(B3)および前記芳香族ジオール(B4)以外のジオール単位をさらに含んでいてもよい。他のジオール単位としては、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された脂環族ジオール単位(B2)、他のジオール単位(B5)などが挙げられる。他のジオール単位の割合は、全ジオール単位(B)中50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以下、10モル%以下、5モル%以下である。ジオール単位(B)は、他のジオール単位を実質的に含まないのが好ましく、全く含まないのが特に好ましい。
【0175】
(C)他の構成単位
本開示のポリエステル系樹脂(P2)は、必要に応じて、ジカルボン酸単位(A)およびジオール単位(B)とは異なる他の構成単位(C)を含んでいてもよい。
【0176】
ポリエステル系樹脂(P2)において、他の構成単位(C)としては、好ましい態様も含めて、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された他の構成単位(C)から選択できる。
【0177】
ポリエステル系樹脂(P2)において、他の構成単位(C)の割合は、構成単位全体[ジカルボン酸単位(A)、ジオール単位(B)および他の構成単位(C)の総量]に対して50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、5モル%以下であり、通常、他の構成単位(C)を実質的に含まない場合が多い。なお、前記割合は、0~10モル%程度、例えば0.01~1モル%程度であってもよい。
【0178】
本開示のポリエステル系樹脂(P2)は、色調を向上できる点から、チタンを実質的に含まないのが好ましく、チタンを含まないのが特に好ましい。
【0179】
(ポリエステル系樹脂(P3))
本開示のポリエステル系樹脂(P3)は、前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)と、前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)および/または脂肪族ジカルボン酸単位(A4)とを含むジカルボン酸単位(A)と、前記フルオレンジオール単位(B1)と、前記脂環族ジオール単位(B2)と、前記脂肪族ジオール単位(B3)とを組み合わせることにより、高い屈折率を有し、かつ黄色味などの色味も低減でき、色調を向上できる。また、本開示のポリエステル系樹脂(P2)は、複屈折も低減できる上に、ガラス転移温度も適度な範囲にあるため、成形性を損なうことなく、耐熱性を向上できる。さらに、前記ジカルボン酸単位(A)が前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)を含むことにより、屈折率を高度に向上でき、かつ複屈折も低減できる。
【0180】
(A)ジカルボン酸単位
本開示のポリエステル系樹脂(P3)は、ジカルボン酸単位(A)として、前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)と、前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)および/または脂肪族ジカルボン酸単位(A4)とを含む。
【0181】
(A2)式(2)で表される芳香族ジカルボン酸単位
ポリエステル系樹脂(P3)において、芳香族ジカルボン酸単位(A2)は、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された芳香族ジカルボン酸単位(A2)から選択できる。前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0182】
ポリエステル系樹脂(P3)において、好ましい芳香族ジカルボン酸単位(A2)は、前記式(2)において、Zがベンゼン環であり、かつmが0であるジカルボン酸単位、前記式(2)において、Zがナフタレン環であり、かつmが0であるジカルボン酸単位;さらに好ましくはテレフタル酸単位、ナフタレンジカルボン酸単位;より好ましくは2,6-ナフタレンジカルボン酸単位である。好ましい芳香族ジカルボン酸単位(A2)の割合は、芳香族ジカルボン酸単位(A2)中、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。好ましい芳香族ジカルボン酸単位(A2)の割合が下限以上であると、屈折率が向上する傾向がある。
【0183】
ポリエステル系樹脂(P3)において、芳香族ジカルボン酸単位(A2)の割合は、全ジカルボン酸単位(A)中30モル%以上、好ましくは50モル%以上であってもよく、例えば50~90モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、15~80モル%、18~70モル%、20~60モル%、25~50モル%、28~40モル%である。芳香族ジカルボン酸単位(A2)の割合が下限以上であると、屈折率が向上する傾向があり、上限以下であると、複屈折が低下する傾向がある。
【0184】
(A3)式(3)で表されるフルオレンジカルボン酸単位
ポリエステル系樹脂(P3)において、フルオレンジカルボン酸単位(A3)は、好ましい態様も含めて、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示されたフルオレンジカルボン酸単位(A3)から選択できる。
【0185】
(A4)脂肪族ジカルボン酸単位
ポリエステル系樹脂(P3)において、脂肪族ジカルボン酸単位は、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された脂肪族ジカルボン酸単位(A4)から選択できる。前記脂肪族ジカルボン酸単位(A4)は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0186】
ポリエステル系樹脂(P3)において、好ましい脂肪族ジカルボン酸単位(A4)は、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された脂肪族ジカルボン酸単位(A4)から選択できる。前記脂肪族ジカルボン酸単位(A4)は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0187】
ポリエステル系樹脂(P3)において、好ましい脂肪族ジカルボン酸単位(A4)は、セバシン酸などのC4-18アルカンジカルボン酸単位;より好ましくはC6-14アルカンジカルボン酸単位である。好ましい脂肪族ジカルボン酸単位(A4)の割合は、脂肪族ジカルボン酸単位(A4)中、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。
【0188】
前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)、前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)および前記脂肪族ジカルボン酸単位(A4)の総量は、全ジカルボン酸単位(A)中、例えば50モル%以上であってもよく、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0189】
前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)と、前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)および前記脂肪族ジカルボン酸単位(A4)の合計との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=10/90~90/10程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、15/85~80/20、17/83~70/30、20/80~60/40、23/77~50/50、25/75~40/60、27/73~35/65である。前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)の割合が下限以上であると、屈折率が高くなる傾向があり、上限以下であると、複屈折が低下する傾向がある。
【0190】
フルオレンジカルボン酸単位(A3)および脂肪族ジカルボン酸単位(A4)の総量は、全ジカルボン酸単位(A)中10~99モル%であってもよく、好ましくは以下段階的に、10~98モル%、20~95モル%、30~90モル%、50~85モル%、60~80モル%、65~75モル%である。前記総量が下限以上であると、複屈折が低下したり、重合反応性が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率が向上する傾向がある。
【0191】
フルオレンジカルボン酸単位(A3)と脂肪族ジカルボン酸単位(A4)との割合は、特に限定されず、前者/後者(モル比)=100/0~0/100の範囲から選択できるが、用途に応じて選択してもよい。
【0192】
フルオレンジカルボン酸単位(A3)と脂肪族ジカルボン酸単位(A4)との割合(モル比)は、前者/後者=100/0~50/50であってもよく、好ましくは70/30~100/0、さらに好ましくは80/20~100/0、より好ましくは90/10~100/0であり、フルオレンジカルボン酸単位(A3)のみが最も好ましい。これらの割合は、特に、AR用レンズまたはVR用レンズに適用する場合に好適である。
【0193】
芳香族ジカルボン酸単位(A2)およびフルオレンジカルボン酸単位(A3)の総量は、全ジカルボン酸単位(A)中、例えば50モル%以上であってもよく、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0194】
前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)と、前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=10/90~90/10程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、15/85~80/20、17/83~70/30、20/80~60/40、23/77~50/50、25/75~40/60、27/73~35/65である。前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)の割合が下限以上であると、屈折率が高くなる傾向があり、上限以下であると、複屈折が低下する傾向がある。
【0195】
芳香族ジカルボン酸単位(A2)および脂肪族ジカルボン酸単位(A4)の総量は、全ジカルボン酸単位(A)中、例えば50モル%以上であってもよく、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0196】
前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)と、前記脂肪族ジカルボン酸単位(A4)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=99/1~50/50であってもよく、好ましくは95/5~60/40、さらに好ましくは90/10~70/30、より好ましくは87/13~80/20である。前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)の割合が下限以上であると、屈折率が高くなる傾向があり、上限以下であると、重合反応性が向上する傾向がある。
【0197】
(他のジカルボン酸単位)
ポリエステル系樹脂(P3)において、ジカルボン酸単位(A)は、必要に応じて、他のジカルボン酸単位として、前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)、前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)および前記脂肪族ジカルボン酸単位(A4)以外のジカルボン酸単位をさらに含んでいてもよい。他のジカルボン酸単位としては、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された脂環族ジカルボン酸単位(A1)などが挙げられる。他のジカルボン酸単位の割合は、全ジカルボン酸単位(A)中50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以下、10モル%以下、5モル%以下である。ジカルボン酸単位(A)は、他のジカルボン酸単位を実質的に含まないのが好ましく、全く含まないのが特に好ましい。
【0198】
(B)ジオール単位
本開示のポリエステル系樹脂(P3)は、ジオール単位(B)として、前記式(4)で表されるフルオレンジオール単位(B1)と、前記式(5)で表される脂環族ジオール単位と、前記式(6)で表される脂肪族ジオール単位(B3)とを含む。
【0199】
(B1)式(4)で表されるフルオレンジオール単位
ポリエステル系樹脂(P3)において、フルオレンジオール単位(B1)は、好ましい態様も含めて、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示されたフルオレンジオール単位(B1)から選択できる。
【0200】
ポリエステル系樹脂(P3)において、フルオレンジオール単位(B1)は、全ジオール単位(B)中、例えば30モル%以上であってもよく、例えば30~95モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは40~90モル%、さらに好ましくは45~85モル%、より好ましくは50~80モル%、最も好ましくは60~70モル%である。フルオレンジオール単位(B1)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向がある。
【0201】
(B2)式(5)で表される脂環族ジオール単位
ポリエステル系樹脂(P3)において、脂環族ジオール単位(B2)は、好ましい態様も含めて、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された脂環族ジオール単位(B2)から選択できる。
【0202】
ポリエステル系樹脂(P3)において、脂環族ジオール単位(B2)の割合は、前記フルオレンジオール単位(B1)100モルに対して、例えば0.5~100モル、好ましくは1~50モル、さらに好ましくは3~30モル、より好ましくは5~25モル、最も好ましくは10~20モルである。脂環族ジオール単位(B2)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率および耐熱性が向上する傾向がある。
【0203】
ポリエステル系樹脂(P3)において、脂環族ジオール単位(B2)の割合は、全ジオール単位(B)中、例えば0.5モル%以上、特に1モル%以上であってもよく、例えば0.5~50モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは1~30モル%、さらに好ましくは2~25モル%、より好ましくは3~20モル%、最も好ましくは5~15モル%である。脂環族ジオール単位(B2)の割合が下限以上であると、色調が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率および耐熱性が向上する傾向がある。
【0204】
(B3)式(6)で表される脂肪族ジオール単位
ポリエステル系樹脂(P3)において、脂肪族ジオール単位(B3)は、好ましい態様も含めて、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された脂肪族ジオール単位(B3)から選択できる。
【0205】
ポリエステル系樹脂(P3)において、脂肪族ジオール単位(B3)の割合は、前記フルオレンジオール単位(B1)100モルに対して、例えば1~80モル、好ましくは5~70モル、さらに好ましくは10~60モル、より好ましくは20~50モル、最も好ましくは30~40モルである。脂肪族ジオール単位(B3)の割合が下限以上であると、重合反応性が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率および耐熱性が向上する傾向がある。
【0206】
ポリエステル系樹脂(P3)において、脂肪族ジオール単位(B3)の割合は、全ジオール単位(B)中、例えば1モル%以上、特に3モル%以上であってもよく、例えば1~70モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは3~60モル%、さらに好ましくは5~50モル%、より好ましくは10~40モル%、最も好ましくは20~30モル%である。脂肪族ジオール単位(B3)の割合が下限以上であると、重合反応性が向上する傾向があり、上限以下であると、屈折率および耐熱性が向上する傾向がある。
【0207】
ポリエステル系樹脂(P3)において、前記フルオレンジオール単位(B1)、前記脂環族ジオール単位(B2)および前記脂肪族ジオール単位(B3)の総量は、全ジオール単位(B)中、例えば50モル%以上であってもよく、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0208】
ポリエステル系樹脂(P3)において、前記フルオレンジオール単位(B1)と、前記脂環族ジオール単位(B2)および前記脂肪族ジオール単位(B3)の合計との割合は、前者/後者(モル比)=99/1~30/70程度の範囲から選択でき、例えば95/5~40/60、好ましくは93/7~45/55、さらに好ましくは90/10~50/50、より好ましくは80/20~55/45、最も好ましくは70/30~60/40である。前記フルオレンジオール単位(B1)の割合が下限以上であると、屈折率および耐熱性が向上する傾向があり、上限以下であると、色調が向上したり、重合性反応性が向上する傾向がある。
【0209】
(B4)式(7)で表される芳香族ジオール単位
ポリエステル系樹脂(P3)において、ジオール単位(B)は、必要に応じて、前記式(7)で表される芳香族ジオール単位(B4)をさらに含んでいてもよい。芳香族ジオール単位(B4)は、好ましい態様も含めて、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された芳香族ジオール単位(B4)から選択できる。芳香族ジオール単位(B4)の割合は、全ジオール単位(B)中、例えば50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以下、10モル%以下、5モル%以下である。ジオール単位(B)は、芳香族ジオール単位(B4)を実質的に含まないのが好ましく、全く含まないのが特に好ましい。
【0210】
(B5)他のジオール単位
ポリエステル系樹脂(P3)において、ジオール単位(B)は、必要に応じて、他のジオール単位(B5)をさらに含んでいてもよい。他のジオール単位(B5)の割合は、全ジオール単位(B)中、例えば50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以下、10モル%以下、5モル%以下である。ジオール単位(B)は、他のジオール単位(B5)を実質的に含まないのが好ましく、全く含まないのが特に好ましい。
【0211】
(C)他の構成単位
本開示のポリエステル系樹脂(P3)は、必要に応じて、ジカルボン酸単位(A)およびジオール単位(B)とは異なる他の構成単位(C)を含んでいてもよい。
【0212】
ポリエステル系樹脂(P3)において、他の構成単位(C)としては、好ましい態様も含めて、ポリエステル系樹脂(P1)の項で例示された他の構成単位(C)から選択できる。
【0213】
ポリエステル系樹脂(P3)において、他の構成単位(C)の割合は、構成単位全体[ジカルボン酸単位(A)、ジオール単位(B)および他の構成単位(C)の総量]に対して50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、5モル%以下であり、通常、他の構成単位(C)を実質的に含まない場合が多い。なお、前記割合は、0~10モル%程度、例えば0.01~1モル%程度であってもよい。
【0214】
本開示のポリエステル系樹脂(P3)は、色調を向上できる点から、チタンを実質的に含まないのが好ましく、チタンを含まないのが特に好ましい。
【0215】
(ポリエステル系樹脂の好適な態様)
前記ポリエステル系樹脂(P)のうち、屈折率の向上と色味の低減とのバランスに優れる点から、ポリエステル系樹脂(P1)およびポリエステル系樹脂(P3)が好ましく、ポリエステル系樹脂(P1)が特に好ましい。さらに、高い屈折率が重要な用途では、ポリエステル系樹脂(P3)が好ましい。特に、屈折率の向上と色味の低減とのバランスに優れ、かつ複屈折も低減できる点から、ジカルボン酸単位(A)が前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)を含むポリエステル系樹脂(P1)およびジカルボン酸単位(A)が前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)を含むポリエステル系樹脂(P3)が好ましく、ジカルボン酸単位(A)が前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)を含むポリエステル系樹脂(P1)が特に好ましい。
【0216】
[ポリエステル系樹脂(P)の製造方法]
本開示のポリエステル系樹脂(P)の製造方法は、前記ジカルボン酸単位(A)に対応するジカルボン酸成分(a)[例えば、ポリエステル系樹脂(P1)では、前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)に対応するジカルボン酸成分(a1)と、前記芳香族ジカルボン酸単位(A2)に対応するジカルボン酸成分(a2)および/または前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)に対応するジカルボン酸成分(a3)とを含むジカルボン酸成分(a)]と、前記ジオール単位(B)に対応するジオール成分(b)[例えば、ポリエステル系樹脂(P1)では、前記フルオレンジオール単位(B1)に対応するジオール成分(b1)と、前記脂環族ジオール単位(B2)に対応するジオール成分(b2)と、前記脂肪族ジオール単位(B3)に対応する脂肪族ジオール成分(b3)とを含むジオール成分(b)]とを重合成分として用いること以外は特に制限されず、慣用の方法を利用できる。
【0217】
本開示のポリエステル系樹脂の製造方法としては、前記ジカルボン酸成分(a)と前記ジオール成分(b)とを反応(重合)させて製造すればよく、例えば、溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などの慣用の方法で調製でき、溶融重合法が好ましい。なお、反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。
【0218】
本開示のポリエステル系樹脂の製造方法は、エステル交換法(エステル交換反応)、直接エステル化法のいずれであってもよい。エステル交換法では、ジカルボン酸成分(b)としてエステル形成性誘導体であるアルキルエステル体を用いて、エステル交換反応を行なった後、重縮合反応に供してもよい。
【0219】
前記ジカルボン酸成分(a)と前記ジオール成分(b)との使用割合(または仕込み割合)は、例えば、前者/後者(モル比)=1/1.2~1/0.8、好ましくは1/1.1~1/0.9であるが、必ずしもこの範囲である必要はなく、重合成分に含まれる少なくとも1種の成分を、予定する導入割合に対して過剰に用いて反応させてもよい。例えば、反応系から留出可能なエチレングリコールなどのジオール成分は、ポリエステル系樹脂中に導入される割合(または導入割合)よりも過剰に使用してもよい。
【0220】
反応は、通常、不活性ガス、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気中で行われる。また、反応は、減圧下、例えば、1×10~1×10Pa程度で行うこともできる。通常、エステル交換反応は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが多く、重縮合反応は、減圧下で行うことが多い。反応温度は、重合方法に応じて選択でき、例えば、溶融重合法における反応温度は150~320℃、好ましくは180~310℃、さらに好ましくは200~300℃である。特に、エステル交換法では、エステル交換反応の反応温度が200~260℃、好ましくは220~250℃であってもよく、重縮合反応の反応温度が220~300℃、好ましくは240~280℃であってもよい。
【0221】
(触媒)
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用のエステル化触媒、例えば、金属触媒などが利用できる。金属触媒としては、例えば、ナトリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;チタン、マンガン、コバルトなどの遷移金属;亜鉛、カドミウムなどの周期表第12族金属;アルミニウムなどの周期表第13族金属;ゲルマニウム、鉛などの周期表第14族金属;アンチモンなどの周期表第15族金属などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物としては、例えば、アルコキシド;酢酸塩、プロピオン酸塩などの有機酸塩;ホウ酸塩、炭酸塩などの無機酸塩;酸化物などであってもよく、これらの水和物であってもよい。
【0222】
代表的な金属化合物としては、例えば、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、シュウ酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウム-n-ブトキシドなどのゲルマニウム化合物;三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエチレングリコレートなどのアンチモン化合物;テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート(チタン(IV)テトラブトキシド)、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウムなどのチタン化合物;アルミニウム化合物(アルミニウム;酢酸アルミニウムなどのカルボン酸アルミニウム;塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムなどの無機酸アルミニウム;アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートなどのアルミニウムキレート化合物など)と、リン化合物(リン酸トリフェニルなどのリン酸エステル;ベンジルホスホン酸ジエチル、ナフチルエチルホスホン酸ジエチルなどのホスホン酸エステル;ホスフィン酸フェニルなどのホスフィン酸エステルなど)との組み合わせ(併用触媒);酢酸マンガン・4水和物などのマンガン化合物;酢酸カルシウム・1水和物などのカルシウム化合物などが例示できる。
【0223】
これらの触媒は単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。複数の触媒を用いる場合、反応の進行に応じて、各触媒を添加することもできる。
【0224】
これらの触媒のうち、酢酸マンガン・4水和物、酢酸カルシウム・1水和物などの有機酸金属塩、二酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物、チタン(IV)テトラブトキシドなどのチタン化合物、アルミニウム化合物とリン化合物との併用触媒が好ましく、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物とリン化合物との併用触媒が特に好ましい。
【0225】
アルミニウム化合物とリン化合物との組み合わせにおいて、リン化合物の割合は、アルミニウム化合物1モルに対して、例えば0.01~100モル、好ましくは0.1~10モル、さらに好ましくは0.5~5モル、より最も好ましくは1~3モル、好ましくは1.5~2.5モルである。アルミニウム化合物とリン化合物との併用触媒は、特開2002-256068号公報に記載されたポリエステル重合触媒であってもよい。
【0226】
特に、色調を向上できる点から、触媒として二酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物;アルミニウムキレート化合物などのアルミニウム化合物とアラルキルホスホン酸ジアルキルなどのリン化合物との併用触媒を含むの好ましく、エステル交換法では、重縮合触媒としてゲルマニウム化合物;アルミニウム化合物とリン化合物との併用触媒を用いるのが好ましく、特に、重合活性の点から、エステル交換反応触媒として、酢酸マンガン・4水和物などのマンガン化合物および/または酢酸カルシウム・1水和物などのカルシウム化合物を用いるとともに、重縮合触媒としてゲルマニウム化合物を用いるのがさらに好ましい。また、色調を向上できる点から、触媒としてチタン化合物を用いないのが好ましい。
【0227】
触媒の使用量は、ジカルボン酸成分(a)100モルに対して、例えば0.0001~1モル、好ましくは0.001~0.7モル、さらに好ましくは0.01~0.4モルである。
【0228】
エステル交換反応において、エステル交換反応触媒としてのマンガン化合物および/またはカルシウム化合物と、重縮合触媒としてのゲルマニウム化合物またはアルミニウム化合物とリン化合物との併用触媒とを組み合わせる場合、エステル交換反応触媒の使用量は、ジカルボン酸成分(a)100モルに対して、例えば0.01~0.5モル、好ましくは0.05~0.3モルであり、重縮合触媒の使用量は、ジカルボン酸成分(b)100モルに対して、例えば0.01~1モル、好ましくは0.1~0.5モルである。
【0229】
(安定剤)
反応は、必要に応じて、熱安定剤や酸化防止剤などの安定剤の存在下で行ってもよい。通常、熱安定剤がよく利用される。
【0230】
熱安定剤としては、リン系化合物および/またはフェノール系化合物などが挙げられる。
【0231】
リン系化合物としては、ホスフェート類、ホスファイト類、ホスフィン類、t-ブチルフェニル基を有するリン系化合物などが挙げられる。
【0232】
ホスフェート類としては、ジブチルホスフェート(リン酸ジブチルまたはジブチルリン酸)、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェートなどのアルキルホスフェート;トリフェニルホスフェートなどのアリールホスフェートなどが挙げられる。
【0233】
ホスファイト類としては、亜リン酸;トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトアルキルホスファイト;ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイトなどのアリールアルキルホスファイト;トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどのアリールホスファイトなどが挙げられる。
【0234】
ホスフィン類としては、次亜リン酸;トリメチルホスフィンなどのアルキルホスフィン;トリフェニルホスフィン、トリ-2,4-ジメチルフェニルホスフィン、トリ-2,4,6-トリメチルフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリ-o-アニシルホスフィン、トリ-p-アニシルホスフィンなどのアリールホスフィンなどが挙げられる。
【0235】
t-ブチルフェニル基を有するリン系化合物としては、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンホスファイト、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスフアスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(「アデカスタブ PEP-36」)、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイトなどのリン系化合物;ジエチル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、エチルジ(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフィンなどのヒンダードフェノール系化合物などが挙げられる。
【0236】
これらのリン系化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ホスフェート類、t-ブチルフェニル基を有するリン系化合物が好ましく、ホスフェート類(t-ブチルフェニル基を有さないホスフェート類)とt-ブチルフェニル基を有するリン系化合物との組み合わせが特に好ましい。
【0237】
フェノール系化合物としては、t-ブチル基とフェノール性ヒドロキシル基とを有するヒンダードフェノール系化合物、(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール系化合物などが挙げられる。
【0238】
t-ブチル基とフェノール性ヒドロキシル基とを有するヒンダードフェノール系化合物としては、(オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート((株)ADEKA製「アデカスタブ AO-50」)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9-ビス{2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンなど)などのモノないしテトラ(t-ブチルフェノール)プロピオン酸エステル類;2,2’-メチレンビス(6-t-ブチル-4-メチル)フェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタンなどのアルカンビスまたはトリス(t-ブチルフェノール)類;1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゼン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどのトリス(t-ブチルフェノール)ベンゼン類;トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオンなどのトリス(t-ブチルフェノール)イソシアヌレート類などが挙げられる。
【0239】
(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール系化合物としては、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレートなどが挙げられる。
【0240】
これらのフェノール系化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、t-ブチル基とフェノール性ヒドロキシル基とを有するヒンダードフェノール系化合物が好ましく、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのモノないしテトラ(t-ブチルフェノール)プロピオン酸エステル類が特に好ましい。
【0241】
これらの熱安定剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。熱安定剤としては、少なくともリン系化合物を含むのが好ましく、ホスフェート類(t-ブチルフェニル基を有さないホスフェート類)とt-ブチルフェニル基を有するリン系化合物との組み合わせを含むのがさらに好ましく、ホスフェート類とt-ブチルフェニル基を有するリン系化合物とフェノール系化合物との組み合わせを含むのがより好ましい。
【0242】
熱安定剤の使用量は、ジカルボン酸成分(a)100モルに対して、例えば0.0001~1モル、好ましくは0.001~0.7モル、さらに好ましくは0.01~0.4モルである。
【0243】
熱安定剤として、ホスフェート類とt-ブチルフェニル基を有するリン系化合物とを組み合わせる場合、ホスフェート類の使用量は、ジカルボン酸成分(a)100モルに対して、例えば0.01~1モル、好ましくは0.03~0.5モル、さらに好ましくは0.05~0.3モル、より好ましくは0.1~0.2モルであり、t-ブチルフェニル基を有するリン系化合物の使用量は、ジカルボン酸成分(a)100モルに対して、例えば0.01~0.5モル、好ましくは0.02~0.3モル、さらに好ましくは0.03~0.2モル、より好ましくは0.05~0.15モルである。
【0244】
ホスフェート類とt-ブチルフェニル基を有するリン系化合物とを組み合わせる場合、t-ブチルフェニル基を有するリン系化合物の割合は、ホスフェート類100モルに対して10モル以上であってもよく、例えば10~200モル、好ましくは20~150モル、さらに好ましくは30~100モルであり、黄色味を低減できる点から、より好ましくは40~80モル、最も好ましくは50~70モルである。t-ブチルフェニル基を有するリン系化合物の割合が下限以上であると、色調を向上できる傾向がある。
【0245】
ホスフェート類とt-ブチルフェニル基を有するリン系化合物とフェノール系化合物とを組み合わせる場合、ホスフェート類の使用量は、ジカルボン酸成分(a)100モルに対して、例えば0.01~1モル、好ましくは0.03~0.5モル、さらに好ましくは0.05~0.3モル、より好ましくは0.1~0.2モルであり、t-ブチルフェニル基を有するリン系化合物の使用量は、ジカルボン酸成分(a)100モルに対して、例えば0.01~0.5モル、好ましくは0.01~0.3モル、さらに好ましくは0.02~0.1モル、より好ましくは0.03~0.07モルであり、フェノール系化合物の使用量は、ジカルボン酸成分(a)100モルに対して、例えば0.001~0.3モル、好ましくは0.003~0.1モル、さらに好ましくは0.005~0.05モル、より好ましくは0.01~0.03モルである。
【0246】
ホスフェート類とt-ブチルフェニル基を有するリン系化合物とフェノール系化合物とを組み合わせる場合、t-ブチルフェニル基を有するリン系化合物の割合は、ホスフェート類100モルに対して、例えば1~200モル、好ましくは3~100モル、さらに好ましくは5~70モルであり、より好ましくは10~50モル、最も好ましくは20~40モルである。
【0247】
ホスフェート類とt-ブチルフェニル基を有するリン系化合物とフェノール系化合物とを組み合わせる場合、フェノール系化合物の割合は、ホスフェート類とt-ブチルフェニル基を有するリン系化合物の合計100モルに対して、例えば0.5~100モル、好ましくは1~50モル、さらに好ましくは2~30モルであり、より好ましくは3~20モル、最も好ましくは5~15モルである。
【0248】
[ポリエステル系樹脂の特性]
本開示のポリエステル系樹脂の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などにより測定でき、ポリスチレン換算で、例えば10000~100000の範囲から選択でき、好ましい範囲は、以下段階的に、15000~100000、20000~80000、25000~50000であり、最も好ましくは28000~40000である。分子量が下限以上であると、耐熱性や成形性(または機械的特性)が向上する傾向があり、上限以下であると、成形性が向上する傾向がある。
【0249】
本開示のポリエステル系樹脂は、屈折率が高い。具体的には、本開示のポリエステル系樹脂の屈折率nDは、温度20℃、波長589nmにおいて、例えば1.5以上、好ましくは1.55以上、さらに好ましくは1.58以上であり、好ましくは以下段階的に、1.53~1.65、1.55~1.64、1.58~1.63、1.585~1.62であり、最も好ましくは1.59~1.61である。
【0250】
本開示のポリエステル系樹脂のアッベ数は、温度20℃において、例えば22~32、好ましくは23~31、さらに好ましくは24~30、より好ましくは25~30、最も好ましくは26~30である。
【0251】
本開示のポリエステル系樹脂は、低複屈折である。本開示のポリエステル系樹脂の複屈折は、ポリエステル系樹脂単独で形成したフィルムを3倍で自由端一軸延伸した延伸フィルムの複屈折(3倍延伸時複屈折または3倍複屈折)により評価してもよい。前記3倍延伸時複屈折の絶対値は、測定温度20℃、波長600nmにおいて、例えば0~75×10-4程度の範囲であってもよく、好ましくは以下段階的に、50×10-4以下、40×10-4以下、35×10-4以下、30×10-4以下、25×10-4以下、20×10-4以下、10×10-4以下、5×10-4以下、1×10-4以下、0.5×10-4以下、0.2×10-4以下である、なお、前記3倍延伸時複屈折の絶対値の範囲における下限値は0以上であり、例えば0.001×10-4以上、0.005×10-4以上、0.01×10-4以上、0.05×10-4以上などであってもよい。
【0252】
本開示のポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは120℃以上であってもよく、例えば120~160℃、好ましくは122~150℃、さらに好ましくは123~145℃であり、より好ましくは125~140℃、最も好ましくは127~135℃である。ガラス転移温度Tgが下限以上であると、耐熱性が向上する傾向があり、上限以下であると、成形性が向上する傾向がある。
【0253】
本開示のポリエステル系樹脂は色調も優れている。特に、本開示のポリエステル系樹脂は、カラー(L色空間)において、色度bの絶対値が3.5以下であり、黄色味および青色味が低減されているため、色調に優れている。本開示のポリエステル系樹脂において、色度bの絶対値は、好ましくは以下段階的に、3.3以下、3以下、2以下、1.5以下、1以下であり、例えば0.1~2程度であってもよい。
【0254】
本開示のポリエステル系樹脂は、カラーにおいて、明度Lが50以上であってもよく、好ましくは60以上、さらに好ましくは70以上、より好ましくは75以上、最も好ましくは80以上であり、例えば80~90程度であってもよい。明度Lが下限以上であると、明度が大きく、色調を向上できる傾向がある。
【0255】
本開示のポリエステル系樹脂は、カラーにおいて、色度aの絶対値が10以下であってもよく、好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下、より好ましくは3以下、最も好ましくは1以下であり、例えば0.1~1程度であってもよい。色度aが下限以上であると、赤色味や緑色味を低減でき、色調を向上できる傾向がある。
【0256】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、重量平均分子量Mw、屈折率nD、アッベ数、複屈折、ガラス転移温度Tg、カラーは、後述する実施例に記載の方法により測定できる。色度bが下限以上であると、黄色味や青色味を低減でき、色調を向上できる傾向がある。
【0257】
[成形体]
本開示の成形体は、少なくとも前記ポリエステル系樹脂を含み、優れた光学的特性などを示すため、光学部材、例えば、導光板や光ファイバーなどの導光体、光学レンズなどとして利用でき、前記脂環族ジカルボン酸単位(A1)がモノC5-8シクロアルカン環ジカルボン酸単位を含む場合は、色調に優れるため、光ファイバーや導光板などの光学部材、特に、光ファイバーのコアとして好適に利用でき、前記ジカルボン酸単位(A)が前記フルオレンジカルボン酸単位(A3)を含む場合は、複屈折を高度に低減できるため、AR用レンズやVR用レンズとして好適に利用できる。
【0258】
本開示の成形体は、慣用の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、炭素材などの充填剤または補強剤、染顔料などの着色剤、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、加水分解抑制剤、安定剤、低応力化剤などを含んでいてもよい。安定剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。低応力化剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤の合計割合は、前記ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば50質量部以下、好ましくは以下段階的に、30質量部以下、0~10質量部であり、0.1~5質量部程度であってもよい。
【0259】
本開示の成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。これらのうち、射出成形が好ましい。
【0260】
なお、成形体の形状は、特に限定されず、例えば、線状、繊維状(またはファイバー状)、糸状などの一次元的構造、フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造、凹または凸レンズ状などのレンズ状、棒状、中空状(管状)などの三次元的構造などが挙げられる。
【実施例0261】
以下に、実施例に基づいて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、評価項目および原料の詳細について示す。
【0262】
[評価項目]
(分子量)
試料をクロロホルムに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製「HLC-8320GPC」)を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwを求めた。
【0263】
(屈折率nD)
屈折率は、次のようにして測定した。試料を200~240℃で熱プレスして、厚み200~300μmのフィルムを成形した。このフィルムを縦20~30mm×横10mmの短冊状に切り出し、試験片を得た。得られた試験片について、多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製「DR-M4(循環式恒温水槽60-C3)」)を用いて、測定温度20℃で、接触液にジヨードメタンを使用して、589nm(D線)の屈折率nDを測定した。
【0264】
(アッベ数)
屈折率を測定した試験片(589nm(D線)の屈折率nDを測定した試験片)を用い、測定波長を486nm(F線)、656nm(C線)に変更する以外は屈折率nDと同様にして、屈折率nF、nCをそれぞれ測定した。得られた各波長における屈折率nF、nD及びnCから、アッベ数を以下の式によって算出した。
【0265】
(アッベ数)=(nD-1)/(nF-nC)
【0266】
(複屈折(3倍延伸))
試料を200~240℃で熱プレスして、厚み200~600μmのフィルムを成形した。このフィルムを横10mm×縦50mmの短冊状に切り出し、ガラス転移温度Tg+10℃の温度条件下、25mm/分の速度で延伸倍率3倍まで縦方向に自由端一軸延伸(縦方向の長さ50mmを150mmに延伸)して試験片を得た。得られた試験片を、位相差フィルム・光学材料検査装置(大塚電子(株)製「RETS-100」)を用いて、測定温度20℃、測定波長600nmの条件下、平行ニコル回転法にてリタデーションを測定し、この測定値を測定部位の厚みで除して複屈折(又は3倍複屈折)を算出した。
【0267】
(ガラス転移温度Tg)
示差走査熱量計(エスアイアイナノテクノロジー(株)製「EXSTAR6000 DSC6220 ASD-2」)を用いて、窒素ガス雰囲気下、10℃/分の昇温速度で測定した。
【0268】
(カラー)
分光測色計(コニカミノルタ(株)製「CM―5」)を用いて、JIS Z 8722条件cに準拠して、試料を測定径30mm用のシャーレに詰め、反射測定、正反射光処理SCI、観測光源D65の条件にて、L、a、bの測定を行った。
【0269】
H-NMR)
試料を、内部標準物質としてテトラメチルシランを含む重溶媒(CDCl)に溶解し、核磁気共鳴装置(BRUKER社製「AVANCE III HD」)を用いて、H-NMRスペクトルを測定した。
【0270】
[樹脂原料(重合反応成分)]
(ジカルボン酸成分)
DMCD:下記式で表されるシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ジメチル(trans/cis(モル比)=98/2)
【0271】
【化8】
【0272】
DDCM:下記式で表されるデカリン-2,6-ジカルボン酸ジメチル(trans/cis(モル比)=90/10)
【0273】
【化9】
【0274】
DMT:下記式で表されるテレフタル酸ジメチル
【0275】
【化10】
【0276】
2,6-DMN:下記式で表される2,6-ナフタレンジカルボン酸
【0277】
【化11】
【0278】
FDP-m:下記式で表される9,9-ビス(2-メトキシカルボニルエチル)フルオレン
【0279】
【化12】
【0280】
DPFDP-m:下記式で表される9,9-ビス(2-メトキシカルボニルエチル)-2,7-ジフェニルフルオレン
【0281】
【化13】
【0282】
SA-m:下記式で表されるセバシン酸ジメチル
【0283】
【化14】
【0284】
(ジオール成分)
BPEF:下記式で表される9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン
【0285】
【化15】
【0286】
CHDM:下記式で表されるシクロヘキサン-1,4-ジメタノール(異性体混合)
【0287】
【化16】
【0288】
4,4’-BCH:4,4’-ビシクロヘキサノール
【0289】
【化17】
【0290】
EG:下記式で表されるエチレングリコール
【0291】
【化18】
【0292】
BDM:1,4-ベンゼンジメタノール
【0293】
【化19】
【0294】
[熱安定剤]
PEP-36:下記式で表されるアデカスタブPEP-36(株式会社ADEKA製)
【0295】
【化20】
【0296】
AO-50:下記式で表されるアデカスタブAO-50(株式会社ADEKA製)
【0297】
【化21】
【0298】
[実施例および参考例]
参考例1
反応器に、ジカルボン酸成分としてDDCM(38.17g(150mmol))ジオール成分としてBPEF(46.05g(105mmol))、CHDM(5.41g(37.5mmol))、EG(19.12g(307.5mmol))、エステル交換反応の触媒として、酢酸カルシウム・1水和物(26.4mg(150μmol))、酢酸マンガン・4水和物(7.4mg(30μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱、撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、熱安定剤として、トリメチルリン酸(31.5mg(225μmol))、重縮合反応の触媒として、二酸化ゲルマニウム(39.2.mg(375μmol))を加え、徐々に260℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
【0299】
実施例1
反応器に、ジカルボン酸成分としてDMCD(30.0g(150mmol))、DMT(9.7g(50mmol))、ジオール成分としてBPEF(61.4g(140mmol))、CHDM(7.2g(50mmol))、EG(25.5g(410mmol))、エステル交換反応の触媒として、酢酸カルシウム・1水和物(35.2mg(200μmol))、酢酸マンガン・4水和物(9.8mg(40μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱、撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、熱安定剤として、トリメチルリン酸(42.0mg(300μmol))、重縮合反応の触媒として、二酸化ゲルマニウム(52.3mg(500μmol))を加え、徐々に260℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
【0300】
実施例2、4~10および12~13
ジカルボン酸成分、ジオール成分を表1に示す割合で用いる以外、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
【0301】
実施例3
反応器に、ジカルボン酸成分としてDMCD(12.0g(60mmol))、DMT(27.2g(140mmol))、ジオール成分としてBPEF(61.4g(140mmol))、CHDM(4.3g(30mmol))、EG(26.7g(430mmol))、エステル交換反応および重縮合反応の触媒として、酢酸カルシウム・1水和物(35.2mg(200μmol))、アルミニウムアセチルアセトナート(Al(acac)、81.1mg(250μmol))、ベンジルホスホン酸ジエチル(BPADE、114.1mg(500μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱、撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、徐々に260℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
【0302】
実施例5および11
ジカルボン酸成分、ジオール成分を表1に示す割合で用いる以外、実施例3と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
【0303】
比較例1
反応器に、ジカルボン酸成分としてDDCM(45.8g(180mmol))、ジオール成分としてBPEF(45.0g(103mmol))、CHDM(9.1g(63mmol))、EG(1.7g(27mmol))、エステル交換反応、及び重縮合反応の触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド(6.4mg(19μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱、撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、熱安定剤として、ジブチルリン酸(13.1mg(62μmol))を加え、徐々に250℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
【0304】
参考例2~3
ジカルボン酸成分、ジオール成分を表1に示す割合で用いる以外、比較例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
【0305】
実施例14~17
得られるポリエステルに対して表3の割合で熱安定剤を原料の仕込み時に加える以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。なお、エステル交換反応、重縮合反応に要した時間を表3に示す。
【0306】
実施例1~17、比較例1および参考例1~3で得られた各ポリエステル樹脂の評価結果を表1~3に示す。なお、H-NMRで測定したところ、ポリマー組成比は、EG以外の成分は仕込み比率と同程度、EGの組成比はBPEF、CHDMの仕込み比率の合計量を100(mol%)から引いた量と同程度であった。
【0307】
【表1】
【0308】
【表2】
【0309】
【表3】
【0310】
表1~3から明らかなように、実施例のポリエステル樹脂は、屈折率が高く、耐熱性に優れ、色調に優れ、複屈折が低かった。これに対して、比較例1のポリエステル系樹脂は、bが高く、黄色味が強かった。
【0311】
実施例1~2、4~6、7~11および14~17で得られたポリエステル樹脂は、特に色調に優れ、導光板、光ファイバーなどの導光体に適していた。また、実施例4、5、7、9、11および13で得られたポリエステル樹脂は、特に複屈折が低く、AR用レンズまたはVR用レンズに適していた。
【0312】
実施例10~12で得られたポリエステル樹脂(ポリエステル系樹脂(P3))は、特に屈折率高く、実施例10および11で得られたポリエステル樹脂は、特に色調も優れていた。
【0313】
実施例1~7および13~17で得られたポリエステル樹脂(ポリエステル系樹脂(P1))は、屈折率、色調、耐熱性、複屈折のバランスに優れており、なかでも、実施例4で得られたポリエステル樹脂が特に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0314】
本開示のポリエステル系樹脂は、優れた光学的特性を示すため、様々な用途、例えば、コーティング剤またはコーティング膜、具体的には、塗料、インキ、電子機器や液晶部材などの保護膜など;接着剤、粘着剤;樹脂充填剤;電気・電子材料または電気・電子部品(電気・電子機器)、具体的には、帯電防止剤、キャリア輸送剤、発光体、有機感光体、感熱記録材料、フォトクロミック材料、ホログラム記録材料、帯電防止トレイ、導電シート、光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、カラーフィルタ、有機EL素子、有機半導体レーザ、色素増感型太陽電池、センサ、EMIシールドフィルムなど;機械材料または機械部品(機器)、具体的には、自動車用材料または部品、航空・宇宙関連材料または部品、摺動部材などに利用できる。
【0315】
なかでも、本開示のポリエステル系樹脂は、光学部材として特に有効に利用でき、代表的には、液晶用フィルム、有機EL用フィルムなどの光学フィルム(光学シート);メガネ用レンズ、カメラ用レンズなどの光学レンズ;プリズム、ホログラム、光ファイバーなどが挙げられるが、色調に優れる点から、光ファイバーのコアやクラッド(特に、コア)、AR用レンズやVR用レンズなどの光学レンズに特に好適である。