(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139634
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】保持器及び転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/49 20060101AFI20250919BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
F16C33/49
F16C19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038575
(22)【出願日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004358
【氏名又は名称】弁理士法人NYTパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】井口 洋二
(72)【発明者】
【氏名】滝本 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤裏 英雄
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA25
3J701BA44
3J701EA36
3J701FA15
3J701GA01
3J701GA31
3J701XB03
3J701XB13
3J701XB14
3J701XB23
3J701XB26
(57)【要約】
【課題】高速回転時の変形を抑制することができる保持器及び当該保持器を有する転がり軸受を提供する。
【解決手段】保持器5は、環状の基部51と、前記基部51から軸方向に突出する柱部52と、周方向に隣り合う2つの前記柱部52の間に形成されて、転動体4の少なくとも一部を収容するポケット部53と、を備える。前記ポケット部53は、前記転動体4により径方向及び軸方向の移動を規制されるように構成される。前記ポケット部53の径方向幅W5は前記ポケット部53の軸方向幅W4の0.6倍以上である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の基部と、
前記基部から軸方向に突出する柱部と、
周方向に隣り合う2つの前記柱部の間に形成されて、転動体の少なくとも一部を収容するポケット部と、を備え、
前記ポケット部は、前記転動体により径方向及び軸方向の移動を規制されるように構成され、
前記ポケット部の径方向幅は前記ポケット部の軸方向幅の0.6倍以上である、保持器。
【請求項2】
前記柱部の外径は前記基部の外径よりも大きい、請求項1に記載の保持器。
【請求項3】
前記ポケット部の径方向内側には内側開口が形成され、
前記ポケット部の径方向外側には外側開口が形成され、
前記内側開口及び前記外側開口の周方向幅は前記転動体の径よりも小さい、請求項1に記載の保持器。
【請求項4】
前記ポケット部の軸方向上側には上側開口が形成され、
前記上側開口の周方向幅は前記転動体の径よりも小さい、請求項1に記載の保持器。
【請求項5】
内輪と、
外輪と、
前記内輪及び前記外輪との間に配置された複数の転動体と、
前記複数の転動体を保持する請求項1に記載の保持器と、を備え、
前記保持器の前記柱部の外径は前記外輪の内径よりも小さい、転がり軸受。
【請求項6】
前記転動体は前記保持器から軸方向に露出しており、
露出した前記転動体の軸方向長さは、前記転動体の径の30%以上50%未満である、請求項5に記載の転がり軸受。
【請求項7】
前記内輪の外周面で規定される直径をL
i、前記外輪の内周面で規定される直径をL
o、前記内輪及び前記外輪の軸方向幅をB、前記転動体の径をD、前記直径L
oと前記直径L
iとの差分に対する前記保持器の占有率をα、軸方向における前記径Dに対する前記保持器のカバー率をβ、軸方向の前記転動体以外の領域における前記軸方向幅Bに対する前記保持器の占有係数をγとすると、前記保持器の径方向幅に対する軸方向高さのアスペクト比は、
【数1】
で規定され、前記占有率α、前記カバー率β及び前記占有係数γは、
【数2】
を満たす、請求項5に記載の転がり軸受。
【請求項8】
前記占有率α、前記カバー率β及び前記占有係数γは、
【数3】
を満たす、請求項7に記載の転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持器及び転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、いわゆる冠型の保持器を有する玉軸受が開示されている。この保持器は、円環部と、この円環部の軸方向の片方の端面に形成された複数の柱部と、を有している。周方向に隣接する2つの柱部の間に、転動体である玉を収容するポケットが形成されている。玉軸受内において、保持器は所定の間隔で複数の玉を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外輪及び内輪の相対的な高速回転時、玉及び保持器はともに回転する。保持器には径方向外側に遠心力が作用する。柱部は径方向外側に向かって変形する。径方向外側に最も大きく変形する柱部の先端が例えば外輪の内周面に接触すると、柱部が摩耗して異常発熱を引き起こすことがある。
【0005】
そこで、本発明は、高速回転時の変形を抑制することができる保持器及び当該保持器を有する転がり軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る保持器は、環状の基部と、前記基部から軸方向に突出する柱部と、周方向に隣り合う2つの前記柱部の間に形成されて、転動体の少なくとも一部を収容するポケット部と、を備え、前記ポケット部は、前記転動体により径方向及び軸方向の移動を規制されるように構成され、前記ポケット部の径方向幅は前記ポケット部の軸方向幅の0.6倍以上である。
【0007】
本発明の一態様に係る転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪との間に配置された複数の転動体と、前記複数の転動体を保持する上述の保持器と、を備え、前記保持器の前記柱部の外径は前記外輪の内径よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高速回転時の変形を抑制することができる保持器及び当該保持器を有する転がり軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る転がり軸受1の構造を概略的に示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る保持器5の構造を概略的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る保持器5の構造を概略的に示す斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る保持器5の構造を概略的に示す斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る保持器5の構造を概略的に示す平面図である。
【
図7】
図2の7-7線に沿った断面の一部の拡大断面図である。
【
図10】保持器5の寸法設計について説明するための転がり軸受1の一部の部分拡大断面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る保持器5Aの構造を概略的に示す斜視図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る保持器5Bの構造を概略的に示す斜視図である。
【
図15】本発明の第4実施形態に係る保持器5Cの構造を概略的に示す斜視図である。
【
図16】本発明の第4実施形態に係る保持器5Cの構造を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る転がり軸受1の構造を概略的に示す斜視図である。転がり軸受1は、例えば、工作機械等に組み込まれる高速のスピンドルモータや電気自動車に組み込まれる駆動モータ等に適用される。この転がり軸受1は、内輪2と、外輪3と、複数の転動体4と、保持器5と、を備えている。内輪2、外輪3及び保持器5は、軸線xを中心軸線とする環状の部材である。軸線xは、転がり軸受1の軸線と保持器5の軸線とを兼ねる。転がり軸受1は、一例では、外輪3がモータのハウジングに固定される一方で、内輪2がモータのシャフトに固定される。
【0011】
図2は、
図1の2-2線に沿った断面図である。
図1及び
図2を併せて参照すると、内輪2及び外輪3は軸線xを中心とする円筒状に形成される。軸線xに沿った方向(以下、「軸方向」という。)に直交する径方向において、内輪2の外側に外輪3が配置される。内輪2の外周面21には外輪3の内周面31が対向する。内輪2の外周面21には、外周面21から径方向内側に凹む環状の軌道溝22が形成される。同様に、外輪3の内周面31には、内周面31から径方向外側に凹む環状の軌道溝32が形成される。これらの軌道溝22及び軌道溝32の間に複数の転動体4が軸線x周りの周方向に配列される。この例では、内輪2及び外輪3の間には周方向に7つの転動体4が配列されている。
【0012】
転動体4は球体(玉)であり、したがって、転がり軸受1は転がり玉軸受である。内輪2及び外輪3の間で、複数の転動体4は保持器5によって周方向に所定の間隔を空けて保持されている。内輪2及び外輪3は、例えばステンレス鋼等の金属材料から形成される。転動体4は、例えばステンレス鋼又はセラミック等から形成される。保持器5は、例えばポリアミド等の樹脂材料から形成される。なお、内輪2及び外輪3の間の空間にはグリース等の潤滑剤(図示せず)が充填される。潤滑剤は、転動体4と内輪2及び外輪3との間の摩擦を低減する。内輪2及び外輪3の間の空間を密封する1対のシールド(図示せず)が配置されてもよい。シールドによれば、空間から外側への潤滑剤の漏出や空間内への異物の侵入が回避される。
【0013】
図3は、保持器5を軸方向の一方の側から見た場合の斜視図である。
図4は、保持器5を軸方向の他方の側から見た場合の斜視図である。なお、説明の便宜上、軸方向の一方の側を上側と規定し、軸方向の他方の側を下側と規定する。なお、この「上」及び「下」は重力方向における上下とは必ずしも一致しなくてもよい。
図3及び
図4では、保持器5に転動体4が保持された状態が示されている。保持器5は、基部51と、複数の柱部52と、複数のポケット部53と、を有している。基部51は、軸線xを中心軸線とする環状に形成されている。複数の柱部52は基部51から軸方向に上側に突出する。
図4に示すように、基部51の下面51aは、軸線xに直交する平面に沿って規定される。
【0014】
複数の柱部52は周方向に所定の間隔を空けて配列されている。この例では、周方向に7つの柱部52が形成されている。各ポケット部53は、周方向に隣り合う2つの柱部52、52の間に形成されている。この例では、周方向に7つのポケット部53が形成されている。各ポケット部53に1つの転動体4が保持されている。各ポケット部53は転動体4の少なくとも一部を収容する。各柱部52には、柱部52の上端面52aから軸方向に下側に凹むグリースポケット54が形成される。この例では、グリースポケット54は、各柱部52の径方向の内端から外端まで延びている。グリースポケット54は前述の潤滑剤を保持することができる。なお、柱部52の上端面52aは、この例では、軸線xに直交する平面に沿って広がる。
【0015】
図5は、保持器5の構造を概略的に示す保持器5単体の斜視図である。
図6は、保持器5の構造を概略的に示す保持器5単体の平面図である。
図5及び
図6を併せて参照すると、各ポケット部53は、径方向内側に形成された内側開口55と、径方向外側に形成された外側開口56と、軸方向の上側に形成された上側開口57と、で開放されている。内側開口55と外側開口56とは径方向に互いに対向している。上側開口57は、内側開口55と外側開口56とを接続する。この例では、内側開口55、外側開口56及び上側開口57は概ね円弧状に形成されている。各ポケット部53は、転動体4の球面に対向する球面58を規定する。球面58は、例えば転動体4の中心周りに転動体4の球面に部分的に対向する球面で規定される。
【0016】
各柱部52は、基部51よりも径方向外側に向かって突出する1対の爪部59、59を有している。爪部59、59は柱部52の上端面52aに沿って径方向外側に延在する。1対の爪部59、59は、径方向に延びるグリースポケット54によって周方向に隔てられている。各柱部52において、1対の爪部59、59は径方向外側に向かうにつれて周方向に互いに離れる周縁59aを有している。すなわち、周方向に隣り合う2つの柱部52、52において、一方の柱部52の爪部59とこの爪部59に周方向に隣り合う他方の柱部52の爪部59とは、径方向外側に向かうにつれて周方向に互いに近づく周縁59aを有している。
図6に示すように、爪部59の外縁59bの外径OD1は、基部51の外周面の外径OD2よりも大きい。
【0017】
図7は、
図2の7-7線に沿った断面の一部の拡大断面図である。
図7に示す断面は、軸線xに直交する平面であるとともに、転動体4の中心Cを含む平面に沿って規定される。
図7に示すように、内側開口55には、この断面内において周方向に沿って周方向幅W1が規定される。ここでは、周方向幅W1は、周方向に沿った内側開口55の両縁間の直線距離の最大値である。内側開口55の周方向幅W1は、転動体4の径Dよりも小さく規定される。また、外側開口56には、この断面内において周方向に沿って周方向幅W2が規定される。ここでは、周方向幅W2は、周方向に沿った外側開口56の両縁間の直線距離の最大値である。外側開口56の周方向幅W2は、転動体4の径Dよりも小さく規定される。こうして各ポケット部53は径方向に転動体4を保持している。
【0018】
前述したように、内輪2及び外輪3との間に複数の転動体4が配置されている。転動体4は、内輪2の軌道溝22及び外輪3の軌道溝32内を摺動しつつ転がる。転動体4の径方向の移動は抑制される。ポケット部53の内側開口55の周方向幅W1及び外側開口56の周方向幅W2は転動体4の径Dよりも小さいので、転動体4によってポケット部53すなわち柱部52の径方向における移動が規制される。
図7から明らかなように、転動体4は、保持器5のポケット部53の内側開口55から径方向外側及び外側開口56から径方向内側にその一部を露出させている。この例では、径方向外側に露出した転動体4の径方向長さL1及び径方向内側に露出した転動体4の径方向長さL2の和は、転動体4の径Dの10%以上50%以下であることが好ましく、径Dの10%以上30%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
図8は、
図7の8-8線に沿った断面図である。
図8に示す断面は、転動体4の中心Cを含む平面に沿って規定される。
図8に示すように、上側開口57には、この断面において周方向に周方向幅W3が規定される。ここでは、周方向幅W3は、周方向に沿った上側開口57の両縁間の直線距離の最大値である。上側開口57の周方向幅W3は、転動体4の径Dよりも小さく規定される。こうして各ポケット部53は軸方向に転動体4を保持している。転動体4は内輪2の軌道溝22及び外輪3の軌道溝32内を摺動しつつ転がるので、転動体4の軸方向の移動は抑制される。その結果、転動体4によってポケット部53すなわち柱部52の軸方向における移動が規制される。
図8から明らかなように、転動体4は、保持器5のポケット部53の上側開口57から軸方向の上側にその一部を露出させている。この例では、軸方向に露出した転動体4の軸方向長さL3は、転動体4の径Dの30%以上50%未満であることが好ましく、径Dの40%以上50%未満であることがさらに好ましい。
【0020】
図9は、
図5の9-9線に沿った断面図である。
図9に示すように、各ポケット部53では、柱部52の上端面52aから球面58の最深部までの軸方向の幅である軸方向幅W4が規定される。一方で、各ポケット部53では、柱部52の内周面52bから外周面52cまでの幅である径方向幅W5が規定される。柱部52の内周面52bは軸線xを中心軸線とする円筒面で規定される。柱部52の外周面52cは爪部59の外縁59bに一致する。各ポケット53において、径方向幅W5は軸方向幅W4の0.6倍以上の大きさに規定される。ただし、径方向幅W5は、軸方向幅W4の0.7倍以上、0.8倍以上、0.9倍以上、1.0倍以上、1.1倍以上であってもよい。また、径方向幅W5は、内輪2の外周面21と外輪3の内周面31との間の距離より小さく規定される。この例では、径方向幅W5は軸方向幅W4よりも大きく規定される。言い換えると、各ポケット部53は、軸方向よりも径方向においてより大きく形成された扁平な形状を有している。
【0021】
ここで、
図2に戻ると、転がり軸受1では、上述したように、保持器5は内輪2と外輪3との間に配置されている。保持器5の柱部52は、径方向において内輪2の軌道溝22と外輪3の軌道溝32とに対向している。上述した柱部52(爪部59の外縁59b)の外径OD2は、原則として、外輪3の内周面31で規定される内径IDよりも小さく設定される。ただし、柱部52の爪部58が径方向において外輪3の軌道溝32に対向している限り、柱部52の外径OD1は外輪3の内径IDと同一に設定されてもよい。なお、柱部52の爪部59の外縁59bは、外輪3の内周面31から最も深い軌道溝32の最深部に少なくとも部分的に対向していることが好ましい。
【0022】
以上のような転がり軸受1では、径方向に内輪2と外輪3との間に配置される保持器5は、複数のポケット部53がそれぞれ転動体4を保持する。高速回転時に軸線x回りに転動体4と保持器5とがともに回転すると、転動体4は内輪2の軌道溝22及び外輪3の軌道溝32を摺動するので、転動体4の軸方向及び径方向の移動が抑制される。こうして転動体4によってポケット部53すなわち柱部52の軸方向及び径方向の移動が規制される。また、ポケット部53において、その径方向幅W5はその軸方向幅W4の0.6倍以上である。こうした構成によれば、高速回転時に保持器5に対して遠心力が作用したとしても、径方向外側への柱部52の変形を抑制することができる。
【0023】
図10は、保持器5の寸法設計について説明するための転がり軸受1の一部の部分拡大断面図である。
図10に示すように、転がり軸受1には以下の各寸法が設定される:内輪2の外周面21の直径L
i;外輪3の内周面31の直径L
o;内輪2及び外輪3の軸方向幅B(この例では内輪2及び外輪3で同一である);転動体4の径D;保持器5の径方向幅W
R(柱部52の内周面52bから外周面52cまでの幅);及び、保持器5の軸方向高さh
R(基部51の下面51aから柱部52の上端面52aまでの高さ)。ここで、保持器5のアスペクト比は以下の式(1)で定義される。
【数1】
【0024】
次に、保持器5の径方向幅W
Rは以下のとおりに定義される。具体的には、径方向幅W
Rは、内輪2と外輪3との間の隙間(L
o-L
i)と、保持器5の径方向幅W
Rがこの隙間(L
o-L
i)をどの程度の割合で占有しているかを示す占有率αと、に基づいて以下の式(2)のように表される。
【数2】
【0025】
一方で、保持器5の軸方向高さh
Rは以下のとおりに定義される。具体的には、軸方向高さh
Rは、軸方向において保持器5が転動体4の径Dのうちのどの程度の割合をカバーしているかを示すカバー率βと、保持器5が、転動体4をカバーしている部分を除いた部分で、軸方向において内輪2又は外輪3の軸方向幅Bのどの程度の割合を占有しているかを示す占有係数γと、に基づいて以下の式(3)のように表される。
【数3】
【0026】
以上の数式(1)~(3)によれば、保持器5のアスペクト比は以下の数式(4)で定義することができる。
【数4】
なお、占有率α、カバー率β及び占有係数γはそれぞれ、以下の数式(5)の範囲であることが必要であり、かつ、以下の数式(6)の範囲であることが好ましい。
【数5】
【数6】
なお、保持器5が上述したシールドを有する場合、内輪2及び外輪3の軸方向幅Bは、シールドが装着される1対のシールド溝の間の距離として規定される。
【0027】
図11は、本発明の第2実施形態に係る保持器5Aの構造を概略的に示す斜視図である。
図12は、
図11の12-12線に沿った断面図である。
図11及び
図12に示すように、この保持器5Aでは、保持器5と比較して、径方向に規定される基部51の径方向幅W6(
図12参照)が小さく設定されている。すなわち、基部51は、保持器5の基部51と比べて、径方向に薄肉化されている。一方で、柱部52の外周面52cの外径OD2は保持器5と同一に設定されている。ポケット部53は、前述と同様に、転動体4によって軸方向及び径方向の移動を規制されている。その他、保持器5と同様の構成には同一の参照符号を付して、ここでの重複した説明を省略する。こうした構成によれば、基部51の薄肉化によって保持器5を軽量化することができる。一方で、この構成によっても、径方向外側への柱部52の変形を抑制することができる。
【0028】
図13は、本発明の第3実施形態に係る保持器5Bの構造を概略的に示す斜視図である。
図14は、
図13の14-14線に沿った断面図である。
図13及び
図14に示すように、この保持器5Bでは、保持器5と比較して、径方向に規定される基部51の径方向幅W6が大きく設定されている。ただし、基部51の外径OD2は、前述と同様に、柱部52の外径OD1よりも小さく設定されている。この保持器5Bは、基部51の下面51aから上側に凹む肉抜き部51bをさらに有している。この例では、肉抜き部51bは、軸線x周りに周方向に環状に形成されている。肉抜き部51bによれば、基部51の径方向幅W6の増大に拘わらず、保持器5Bの重量の増加を抑制することができる。その他、保持器5と同様の構成には同一の参照符号を付して、ここでの重複した説明を省略する。こうした構成によっても、径方向外側への柱部52の変形を抑制することができる。なお、肉抜き部51bは周方向に途切れていてもよい。また、その他の条件を満たす限り、基部51よりも径方向外側に向かって突出する爪部59の形成が省略されてもよい。すなわち、基部51の外周面と柱部52の外周面とが互いに一致してもよい。
【0029】
図15及び
図16は、本発明の第4実施形態に係る保持器5Cの構造を概略的に示す斜視図である。
図17は、
図15の17-17線に沿った断面図である。
図15は、保持器5Cを上側から見た場合の斜視図であり、
図16は、保持器5を下側から見た場合の斜視図である。この保持器5Cは保持器5Bの一変形例である。
図15~
図17を併せて参照すると、この保持器5Cでは、保持器5Bと比較して、肉抜き部51bの深さが大きく設定されている。その結果、肉抜き部51bは各ポケット部53に連通する。すなわち、各ポケット部53の球面58には肉抜き部51bに連通する開口部60が形成される。こうして肉抜き部51bがより大きく形成されることによって、保持器5Cの重量の増加をさらに抑制することができる。その他、保持器5Bと同様の構成には同一の参照符号を付して、ここでの重複した説明を省略する。こうした構成によっても、径方向外側への柱部52の変形を抑制することができる。
【0030】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、上述の実施形態は、本発明が利用される利用対象を限定するものではなく、本発明はあらゆるものをその利用対象として含み得る。上記実施形態が備える各構成要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。例えば、本発明は、製造上の公差等の実施において発生する差を含むものである。また、技術的に矛盾しない範囲において、異なる実施形態で示した構成要素同士を部分的に置換し又は組み合わせることができる。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 転がり軸受、2 内輪、21 外周面、22 軌道溝、3 外輪、31 内周面、32 軌道溝、4 転動体、5、5A、5B、5C 保持器、51 基部、51a 下面、51b 肉抜き部、52 柱部、52a 上端面、52b 内周面、52c 外周面、53 ポケット部、54 グリースポケット、55 内側開口、56 外側開口、57 上側開口、58 球面、59 爪部、59a 周縁、59b 外縁、60 開口部、x 軸線