IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-多層基板及び電子機器 図1
  • 特開-多層基板及び電子機器 図2
  • 特開-多層基板及び電子機器 図3
  • 特開-多層基板及び電子機器 図4
  • 特開-多層基板及び電子機器 図5
  • 特開-多層基板及び電子機器 図6
  • 特開-多層基板及び電子機器 図7
  • 特開-多層基板及び電子機器 図8
  • 特開-多層基板及び電子機器 図9
  • 特開-多層基板及び電子機器 図10
  • 特開-多層基板及び電子機器 図11
  • 特開-多層基板及び電子機器 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139675
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】多層基板及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20250919BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20250919BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20250919BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
H05K1/02 D
H05K1/02 N
H01Q13/08
H01Q21/08
H05K3/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038634
(22)【出願日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川辺 健太朗
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA38
5E316BB04
5E316BB06
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC10
5E316HH11
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB19
5E338BB63
5E338BB72
5E338BB75
5E338CC02
5E338EE26
5E338EE28
5J021AA03
5J021AA07
5J021AB06
5J045DA10
(57)【要約】
【課題】段差部の変形及び補強材部近傍でのクラックを抑制した多層基板、及び当該多層基板を備える電子機器、を得る。
【解決手段】多層基板101は、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。樹脂積層体10は、樹脂積層体10の層方向領域として第1領域A1及び当該第1領域A1に連続する第2領域A2を有する。樹脂積層体10の第1領域A1での厚みをT1で表し、樹脂積層体10の第2領域A2での厚みをT2で表すとき、それら厚みはT1<T2の関係にある。多層基板101は、樹脂積層体10の第1領域A1の上面と、樹脂積層体10の第2領域A2の側面と、に連続して接合している第1補強材部11と、樹脂積層体10の第1領域A1の上面T2と第1補強材部11の表面とに連続して接合している第2補強材部12と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体を備える多層基板であり、
前記樹脂積層体は、前記樹脂積層体の層方向領域として第1領域及び当該第1領域に連続する第2領域を有し、
前記樹脂積層体の前記第1領域での厚みをT1で表し、前記樹脂積層体の前記第2領域での厚みをT2で表すとき、それら厚みはT1<T2の関係にあり、
前記樹脂積層体の前記第1領域の上面と、前記樹脂積層体の前記第2領域の側面と、に連続して接合している、第1樹脂で構成される第1補強材部と、
前記樹脂積層体の前記第1領域の表面と前記第1補強材部の表面とに連続して接合している、第2樹脂で構成される第2補強材部と、
を備える多層基板。
【請求項2】
導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体を備える多層基板であり、
前記樹脂積層体の層方向領域として第1領域、第2領域、及び前記第1領域と前記第2領域との間の領域である第3領域を有し、
前記樹脂積層体の前記第1領域での厚みをT1で表し、前記樹脂積層体の前記第2領域の厚みをT2で表し、前記樹脂積層体の前記第3領域の厚みをT3で表すとき、それら厚みはT3<T1<T2の関係にあり、
前記樹脂積層体の前記第3領域を充填し、前記樹脂積層体の前記第1領域の上面と前記樹脂積層体の前記第2領域の側面とに連続して接合している、第1樹脂で構成される第1補強材部と、
前記樹脂積層体の前記第1領域の表面と前記第1補強材部の表面とに連続して接合している、第2樹脂で構成される第2補強材部と、
を備える多層基板。
【請求項3】
前記樹脂層のヤング率をE10で表し、前記第1補強材部のヤング率をE11で表し、前記第2補強材部のヤング率をE12で表すと、
E11>E10、E11>E12、の関係にある、
請求項1又は2に記載の多層基板。
【請求項4】
前記第1補強材部の、前記樹脂積層体の前記第2領域の側面に沿った高さをL1で表し、前記第1補強材部の、前記樹脂積層体の前記第1領域での前記第2領域から離れる方向に沿った長さをL2で表すとき、L1>L2の関係にある、
請求項1又は2に記載の多層基板。
【請求項5】
前記第2補強材部は、前記樹脂積層体の前記第1領域の表面と、前記第1補強材部の表面と、前記樹脂積層体の前記第2領域の側面と、に沿って連続している、
請求項1又は2に記載の多層基板。
【請求項6】
前記樹脂積層体の内部の層に形成された信号ライン用導体パターンと、前記樹脂積層体の下面又は内層に形成されたグランド導体層と、を備え、少なくとも、前記信号ライン用導体パターン、前記グランド導体層及び前記樹脂積層体の前記第1領域でストリップ線路が構成され、
前記第1補強材部と前記信号ライン用導体パターンとの間にグランド導体層が形成されている、
請求項1又は2に記載の多層基板。
【請求項7】
前記樹脂積層体の前記第2領域の上面に形成された放射電極と、前記樹脂積層体の少なくとも前記第2領域の下面又は内層に形成されたグランド導体層とでパッチアンテナが構成された、
請求項1又は2に記載の多層基板。
【請求項8】
前記第1補強材部及び前記第2補強材部は、前記樹脂積層体の前記第1領域において前記複数の樹脂層の積層方向の異なる位置である2箇所に存在する、
請求項1又は2に記載の多層基板。
【請求項9】
前記第1補強材部及び前記第2補強材部は、前記樹脂積層体の前記第1領域において前記複数の樹脂層の層方向に異なる位置である2箇所に存在する、
請求項1又は2に記載の多層基板。
【請求項10】
前記第2補強材部の表面の一部及び前記第2領域の側面に接合する第3補強材部を備える、
請求項1又は2に記載の多層基板。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の前記多層基板と、当該多層基板に実装された電子部品とを備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体を備える多層基板、及び当該多層基板を備える電子機器、に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂層の積層数の相違により、積層方向の厚みが異なる第1領域と第2領域とを有する多層基板が示されている。
【0003】
このように、樹脂層の積層数が第1領域と第2領域とで相違する場合、この第1領域と第2領域との境界に段差部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-16743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体を備える多層基板においては、各導体パターンの位置関係や使用形態に応じて、積層方向の厚みが異なる第1領域と第2領域とを有する多層基板が必要となる。
【0006】
上記厚みの薄い領域を第1領域、厚みの厚い領域を第2領域、と表現すると、第1領域と第2領域との段差部が変形しやすくなる。
【0007】
上記段差部の内角部に、樹脂層に比べてヤング率の高い補強のための樹脂を付与することで、補強樹脂部を形成すると、多層基板の段差部での変形が抑えられる。
【0008】
しかし多層基板の変形によって、補強樹脂部に応力が集中するので、主に補強樹脂部と樹脂層との間にクラックが発生する虞がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、段差部の変形及び補強材部近傍でのクラックを抑制した多層基板、及び当該多層基板を備える電子機器、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本開示の一例としての多層基板は、
導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体を備える多層基板であり、
前記樹脂積層体は、前記樹脂積層体の層方向領域として第1領域及び当該第1領域に連続する第2領域を有し、
前記樹脂積層体の前記第1領域での厚みをT1で表し、前記樹脂積層体の前記第2領域での厚みをT2で表すとき、それら厚みはT1<T2の関係にあり、
前記樹脂積層体の前記第1領域の上面と、前記樹脂積層体の前記第2領域の側面と、に連続して接合している、第1樹脂で構成される第1補強材部と、
前記樹脂積層体の前記第1領域の表面と前記第1補強材部の表面とに連続して接合している、第2樹脂で構成される第2補強材部と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
(2)本開示の一例としての多層基板は、
導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体を備える多層基板であり、
前記樹脂積層体の層方向領域として第1領域、第2領域、及び前記第1領域と前記第2領域との間の領域である第3領域を有し、
前記樹脂積層体の前記第1領域での厚みをT1で表し、前記樹脂積層体の前記第2領域の厚みをT2で表し、前記樹脂積層体の前記第3領域の厚みをT3で表すとき、それら厚みはT3<T1<T2の関係にあり、
前記樹脂積層体の前記第3領域を充填し、前記樹脂積層体の前記第1領域の上面と前記樹脂積層体の前記第2領域の側面とに連続して接合している、第1樹脂で構成される第1補強材部と、
前記樹脂積層体の前記第1領域の表面と前記第1補強材部の表面とに連続して接合している、第2樹脂で構成される第2補強材部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、段差部の変形及び補強樹脂部近傍でのクラックが抑制された多層基板、及び当該多層基板を備える電子機器、が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は第1の実施形態に係る多層基板101の部分断面図である。
図2図2は第1の実施形態に係る多層基板101の部分平面図である。
図3図3は第2の実施形態に係る多層基板102の部分断面図である。
図4図4は第3の実施形態に係る多層基板103Aの部分断面図である。
図5図5は第3の実施形態に係るもう一つの多層基板103Bの部分断面図である。
図6図6は第4の実施形態に係る多層基板104の部分断面図である。
図7図7は第5の実施形態に係る多層基板105Aの部分断面図である。
図8図8は第5の実施形態に係る多層基板105Bの部分断面図である。
図9図9の上部は第6の実施形態に係る多層基板106の屈曲前の状態での断面図である。図9の下部は第6の実施形態に係る多層基板106の屈曲後の状態での断面図である。
図10図10は第7の実施形態に係る多層基板107の部分断面図である。
図11図11は第8の実施形態に係る多層基板108の部分断面図である。
図12図12は第9の実施形態に係る多層基板109の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上、複数の実施形態に分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な省略、置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0015】
《第1の実施形態》
第1の実施形態では、パッチアンテナを備えた多層基板について例示する。
【0016】
図1は第1の実施形態に係る多層基板101の部分断面図である。図2は第1の実施形態に係る多層基板101の部分平面図である。図1図2における一点鎖線部分での部分断面図である。
【0017】
多層基板101は、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。図1では、層方向に隣接する二つの樹脂層の界面は図示していない。この層界面の不図示は以降に示す各実施形態においても同様である。
【0018】
樹脂積層体10は、樹脂層の層方向領域(層を形成する延伸方向における領域)として第1領域A1及び当該第1領域A1に連続する第2領域A2を有する。樹脂積層体10の第1領域A1での厚みをT1で表し、樹脂積層体10の第2領域A2での厚みをT2で表すとき、T1<T2の関係にある。
【0019】
このことにより、第1領域A1と第2領域A2との境界に段差部が形成されている。段差部の内角部には、第1補強材部11が付与されている。この第1補強材部11は、樹脂積層体10の第1領域A1の上面TSと、樹脂積層体10の第2領域A2の側面SSと、に連続して接合している。第1補強材部11は第1樹脂で構成されている。
【0020】
樹脂積層体10の第1領域A1の上面TS及び第1補強材部11の表面には第2補強材部12が形成されている。この第2補強材部12は樹脂積層体10の第1領域A1の上面TS及び第1補強材部11の表面に連続して接合している。第2補強材部12は第2樹脂で構成されている。
【0021】
上記樹脂層のヤング率をE10で表し、第1補強材部11のヤング率をE11で表し、第2補強材部のヤング率をE12で表すと、E11>E10、E11>E12、の関係にある。例えば、樹脂層のヤング率E10は4GPa、第1補強材部11のヤング率E11は7GPa、第2補強材部12のヤング率E12は2.7GPaである。例えば、樹脂層は液晶ポリマー樹脂、第1補強材部11はエポキシ樹脂、第2補強材部12はポリイミド樹脂、である。
【0022】
ヤング率はJIS Z 2255,ISO 14577の規格でナノインデンター試験を行うことで求められる。例えばKLA社製Microナノインデンター装置を用いて荷重-変位データから求められる。
【0023】
ここで、E11>E10の関係により、第1領域A1と第2領域A2との境界の段差部の内角部が第1補強材部11で補強される。このことにより、多層基板101の段差部の変形が抑制される。また、E11>E12の関係により、第1補強材部11の根元部(樹脂積層体10の第1領域A1の上面TSに接合する第1補強材部11の端部)11R1が第2補強材部12で補強される。このことにより、第1補強材部11と樹脂積層体10との接合境界面又はその付近でのクラックが防止される。
【0024】
また、第2補強材部12が上述のようにポリイミド樹脂のように弾性体である。このことにより、第2補強材部12が樹脂積層体10の第1領域A1の変形にも追随して、第1補強材部11と樹脂積層体10との接合界面を覆うことができ、樹脂積層体10の破断を抑制できる。
【0025】
樹脂積層体10の第2領域A2の上面には放射電極REが形成されている。樹脂積層体10の第1領域A1の上面TSには端子電極TEが形成されている。樹脂積層体10の下面BSにはグランド導体層GLが形成されている。
【0026】
樹脂積層体10の内部には信号ライン用導体パターンSLが形成されている。この信号ライン用導体パターンSLは複数の樹脂層のうち一つの樹脂層に形成された導体パターンである。
【0027】
また、樹脂積層体10の内部には、層間接続導体V1,V2が形成されている。層間接続導体V1は樹脂積層体10における樹脂層の積層方向に延びて、信号ライン用導体パターンSLの一方端部と放射電極REとを電気的に接続する。層間接続導体V2は上記積層方向に延びて、信号ライン用導体パターンSLの他方端部と端子電極TEとを電気的に接続する。
【0028】
信号ライン用導体パターンSL、グランド導体層GL、及び信号ライン用導体パターンSLとグランド導体層GLとの間にある樹脂層によってマイクロストリップ線路が構成されている。すなわち、端子電極TEと放射電極REとが、上記マイクロストリップ線路を介して高周波的に接続されている。
【0029】
放射電極RE、グランド導体層GL及び樹脂積層体10によってパッチアンテナが構成されている。
【0030】
図1において、樹脂積層体10の第1領域A1の厚みT1は第2領域A2の厚みT2より薄いので、第2領域A2に対して第1領域A1のX-Y面はY軸に平行な軸回りに屈曲させやすい。このような屈曲応力を意図的に生じさせても、上記多層基板101の段差部の変形、及び第1補強材部11と樹脂積層体10との接合境界面又はその付近でのクラックが防止される。
【0031】
図2に示す例では、複数の放射電極REがアレー配置されていて、複数のパッチアンテナによるアレーアンテナが構成されている。各放射電極REから放射される送信信号又は、各放射電極REが受ける受信信号に対する位相制御若しくは位相設定によってアンテナの指向性が定められている。なお、図2においては、図1に示した端子電極TEの図示を省略している。
【0032】
本実施形態によれば、段差部の変形及び補強材部近傍でのクラックが抑制された多層基板が得られる。また、本実施形態では、放射電極REが形成された多層基板であるので、放射電極REが変位することによる、アンテナの指向性の変化を抑制できる。
【0033】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、樹脂積層体の層方向領域として第1領域、第2領域及び第3領域を有する多層基板について例示する。
【0034】
図3は第2の実施形態に係る多層基板102の部分断面図である。
【0035】
多層基板102は、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。
【0036】
樹脂積層体10は、樹脂積層体10の層方向領域として、第1領域A1、第2領域A2、及び第1領域A1と第2領域A2との間の領域である第3領域A3を有する。樹脂積層体10の第1領域A1での厚みをT1で表し、樹脂積層体10の第2領域A2での厚みをT2で表し、樹脂積層体10の第3領域A3での厚みをT3で表すとき、それら厚みはT3<T1<T2の関係にある。
【0037】
このことにより、第3領域A3によって、第1領域A1と第2領域A2との境界に溝状の凹部が形成されている。
【0038】
多層基板102は、樹脂積層体10の第3領域A3を充填し、樹脂積層体10の第1領域A1の上面TSと樹脂積層体10の第2領域A2の側面SSとに連続して接合している第1補強材部11を備えている。第1補強材部11は第1樹脂で構成されている。
【0039】
樹脂積層体10の第1領域A1の上面TS及び第1補強材部11の表面には第2補強材部12が形成されている。この第2補強材部12は樹脂積層体10の第1領域A1の上面TS及び第1補強材部11の表面に連続して接合している。第2補強材部12は第2樹脂で構成されている。
【0040】
上記樹脂層のヤング率をE10で表し、第1補強材部11のヤング率をE11で表し、第2補強材部のヤング率をE12で表すと、第1の実施形態で示した例と同様に、E11>E10、E11>E12、の関係にある。例えば、樹脂層のヤング率E10は4GPa、第1補強材部11のヤング率E11は7GPa、第2補強材部12のヤング率E12は2.7GPaである。例えば、樹脂層は液晶ポリマー樹脂、第1補強材部11はエポキシ樹脂、第2補強材部12はポリイミド樹脂、である。
【0041】
本実施形態によれば、第1補強材部11が充填されている第3領域A3の存在により、第1補強材部11と樹脂積層体10との密着面積が大きい。このことにより、第1補強材部11と樹脂積層体10との密着強度を容易に高められる。その他の作用効果は第1の実施形態で示したとおりである。
【0042】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、第2補強材部の形成領域が、第1・第2の実施形態で示した例とは異なる多層基板について例示する。
【0043】
図4は第3の実施形態に係る多層基板103Aの部分断面図である。この図4に示す例では、第2補強材部12は、樹脂積層体10の第1領域A1の上面TSと、第1補強材部11の表面と、樹脂積層体10の第2領域A2の側面SSと、に沿って連続している。
【0044】
図5は第3の実施形態に係るもう一つの多層基板103Bの部分断面図である。この図5に示す例では、第2補強材部12は、樹脂積層体10の第1領域A1の表面、第1補強材部11の表面、及び樹脂積層体10の第2領域A2の上面、に沿って連続している。
【0045】
図5に示す例では、第2補強材部12は放射電極REの全体をも被覆している。また、第2補強材部12は端子電極TEの周囲も被覆している。
【0046】
本実施形態によれば、第1補強材部11の根元部(樹脂積層体10の第1領域A1の上面に接合する第1補強材部11の端部)11R1が第2補強材部12で補強されるだけでなく、第1補強材部11の上端部(樹脂積層体10の第2領域A2の側面SSに接合する端部)11R2も補強される。また、樹脂積層体10の第2領域A2も第2補強材部12で補強される。このことにより、段差部の変形及び補強材部近傍でのクラックが、より抑制された多層基板が得られる。また、本実施形態では、放射電極REが形成された多層基板であるので、放射電極REが変位することによる、アンテナの指向性の変化をより抑制できる。
【0047】
また、図5に示した例では、放射電極RE及び端子電極TEも、外部からの応力又は多層基板103Bの屈曲などによる応力から保護される。
【0048】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、第1補強材部及び第2補強材部が樹脂積層体の第1領域において複数の樹脂層の積層方向の異なる位置である(分離された)2箇所に存在する多層基板について例示する。
【0049】
図6は第4の実施形態に係る多層基板104の部分断面図である。多層基板104は、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。
【0050】
樹脂積層体10は、樹脂積層体10の層方向領域として第1領域A1及び当該第1領域A1に連続する第2領域A2を有する。樹脂積層体10の第1領域A1での厚みをT1で表し、樹脂積層体10の第2領域A2での厚みをT2で表すとき、それら厚みはT1<T2の関係にある。
【0051】
第1領域A1と第2領域A2との境界には2つの段差部が形成されている。段差部の内角部には、それぞれ補強材部11A,11Bが付与されている。第1補強材部11Aは、樹脂積層体10の第1領域A1の上面TS1と、樹脂積層体10の第2領域A2の側面SS1と、に連続して接合している。同様に、第1補強材部11Bは、樹脂積層体10の第1領域A1の下面TS2と、樹脂積層体10の第2領域A2の側面SS2と、に連続して接合している。
【0052】
樹脂積層体10の第1領域A1の上面TS1及び第1補強材部11Aの表面には第2補強材部12Aが形成されている。この第2補強材部12Aは樹脂積層体10の第1領域A1の上面TS1及び第1補強材部11Aの表面に連続して接合している。同様に、樹脂積層体10の第1領域A1の下面TS2及び第1補強材部11Bの表面には第2補強材部12Bが形成されている。この第2補強材部12Bは樹脂積層体10の第1領域A1の下面TS2及び第1補強材部11Bの表面に連続して接合している。
【0053】
樹脂積層体10の第2領域A2の上面には放射電極RE1が形成されている。樹脂積層体10の第2領域A2の下面には放射電極RE2が形成されている。樹脂積層体10の中央にはグランド導体層GLが形成されている。また、樹脂積層体10の内部には信号ライン用導体パターンSL1,SL2が形成されている。
【0054】
また、樹脂積層体10の内部には、層間接続導体V1A,V1Bが形成されている。層間接続導体V1Aは、樹脂積層体10の積層方向に延びて、信号ライン用導体パターンSL1の一方端部と放射電極RE1とを電気的に接続する。同様に、層間接続導体V1Bは、樹脂積層体10の積層方向に延びて、信号ライン用導体パターンSL2の一方端部と放射電極RE2とを電気的に接続する。
【0055】
信号ライン用導体パターンSL1、グランド導体層GL、及び信号ライン用導体パターンSL1とグランド導体層GLとの間にある樹脂層によってマイクロストリップ線路が構成されている。同様に、信号ライン用導体パターンSL2、グランド導体層GL、及び信号ライン用導体パターンSL2とグランド導体層GLとの間にある樹脂層によってマイクロストリップ線路が構成されている。
【0056】
本実施形態によれば、電子機器の筐体内に組み込む際、限られた空間に装着できる等、配置の自由度が高まる。また、互いの方向の異なる放射電極RE1,RE2を備えるので、広指向性又は2方向性のアンテナとして用いることができる。
【0057】
その他の構成及びそれによる作用効果は第1の実施形態で示したとおりである。
【0058】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、グランド導体層の構成がこれまでに示した例とは異なる多層基板について例示する。
【0059】
図7は第5の実施形態に係る多層基板105Aの部分断面図である。多層基板105Aは、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。
【0060】
樹脂積層体10は、樹脂積層体10の層方向領域として第1領域A1及び当該第1領域A1に連続する第2領域A2を有する。樹脂積層体10の第1領域A1での厚みをT1で表し、樹脂積層体10の第2領域A2での厚みをT2で表すとき、それら厚みはT1<T2の関係にある。
【0061】
このことにより、第1領域A1と第2領域A2との境界に段差部が形成されている。段差部の内角部には、補強材部11が付与されている。この補強材部11は、樹脂積層体10の第1領域A1の上面TSと、樹脂積層体10の第2領域A2の側面SSと、に連続して接合している。
【0062】
樹脂積層体10の第1領域A1の表面及び第1補強材部11の表面には第2補強材部12が形成されている。この第2補強材部12は樹脂積層体10の第1領域A1の上面TS及び第1補強材部11の表面に連続して接合している。
【0063】
樹脂積層体10の第2領域A2の上面には放射電極REが形成されている。樹脂積層体10の下面BSにはグランド導体層GL0が形成されている。樹脂積層体10の第1領域A1の上面にはグランド導体層GL1が形成されている。
【0064】
樹脂積層体10の内部には信号ライン用導体パターンSLが形成されている。また、樹脂積層体10の内部には、層間接続導体V1が形成されている。層間接続導体V1は樹脂積層体10の積層方向に延びて、信号ライン用導体パターンSLの一方端部と放射電極REとを電気的に接続する。
【0065】
信号ライン用導体パターンSL、グランド導体層GL0,GL1、及び信号ライン用導体パターンSLとグランド導体層GL0,GL1との間にある樹脂層によってストリップ線路が構成されている。すなわち、放射電極REには層間接続導体V1を介して上記ストリップ線路が接続されている。その他の構造及びそれによる作用効果は第1の実施形態で示したとおりである。
【0066】
図7に示した構造によれば、第1補強材部11と信号ライン用導体パターンSLとの間にグランド導体層GL1が存在するので、誘電体である第1補強材部11の誘電率及び誘電正接の影響を受けない。したがって、第1補強材部11を設けることによるストリップ線路の特性インピーダンスの無用な変化がない。また、伝送損失の増大が防止される。
【0067】
図8は第5の実施形態に係る多層基板105Bの部分断面図である。多層基板105Bは、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。
【0068】
樹脂積層体10の第2領域A2の上面には放射電極REが形成されている。樹脂積層体10の下面BSにはグランド導体層GL0が形成されている。樹脂積層体10の第1領域A1の上面にはグランド導体層GL2が形成されている。また、樹脂積層体10の内部にグランド導体層GL1及び信号ライン用導体パターンSLが形成されている。
【0069】
グランド導体層GL1は第1補強材部11と信号ライン用導体パターンSLとの間に部分的に配置されている。同様に、グランド導体層GL2は第1補強材部11と信号ライン用導体パターンSLとの間に部分的に配置されている。このグランド導体層GL1,GL2によって、信号ライン用導体パターンSLは第1補強材部11から電磁界的に遮蔽されている。
【0070】
図8に示した構造によれば、第1補強材部11と信号ライン用導体パターンSLとの間にグランド導体層GL1,GL2が存在するので、誘電体である第1補強材部11の誘電率及び誘電正接の影響を受けない。したがって、第1補強材部11を設けることによるストリップ線路の特性インピーダンスの無用な変化がない。また、伝送損失の増大が防止される。
【0071】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、所定箇所で屈曲させる多層基板について例示する。
【0072】
図9の上部は第6の実施形態に係る多層基板106の屈曲前(屈折前)の状態での断面図である。図9の下部は第6の実施形態に係る多層基板106の屈曲後の状態での断面図である。
【0073】
図9の上部に示すように、多層基板106は導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。樹脂積層体10は、樹脂積層体10の層方向領域として1つの第1領域A1及び当該第1領域A1にそれぞれ連続する2つの第2領域A2を有する。樹脂積層体10の第1領域A1での厚みをT1で表し、樹脂積層体10の第2領域A2での厚みをT2で表すとき、それら厚みはT1<T2の関係にある。
【0074】
このことにより、第1領域A1と第2領域A2との境界に段差部が形成されている。段差部の内角部には、補強材部11A,11Bが付与されている。この補強材部11A,11Bは、樹脂積層体10の第1領域A1の上面TSと、樹脂積層体10の第2領域A2の側面SSと、にそれぞれ連続して接合している。
【0075】
樹脂積層体10の第1領域A1の上面TS及び第1補強材部11A,11Bの表面には第2補強材部12が形成されている。この第2補強材部12は樹脂積層体10の第1領域A1の上面TS及び第1補強材部11A,11Bの表面に連続して接合している。
【0076】
樹脂積層体10の第2領域A2の上面には放射電極RE1,RE2が形成されている。樹脂積層体10の下面BSにはグランド導体層GLが形成されている。
【0077】
樹脂積層体10の内部には信号ライン用導体パターンSLが形成されている。また、樹脂積層体10の内部には、層間接続導体V1A,V1Bが形成されている。層間接続導体V1A,V1Bは樹脂積層体10の積層方向に延びて、信号ライン用導体パターンSLの一方端部と放射電極RE1とを電気的に接続し、信号ライン用導体パターンSLの他方端部と放射電極RE2とを電気的に接続する。信号ライン用導体パターンSLにはアンテナに対する入出力回路につながる、図外の信号ライン用導体パターンが接続されている。
【0078】
図9の下部に示すように、多層基板106を、その第1領域A1の中央で、Y軸に沿った方向の軸回りに90°屈曲させると、放射電極RE1,RE2の方向が90°異なる配置となる。
【0079】
本実施形態によれば、電子機器の筐体内に組み込む際、限られた空間に装着できる等、配置の自由度が高まる。また、互いの方向の異なる放射電極RE1,RE2を備えるので、広指向性のアンテナとして用いることができる。
【0080】
《第7の実施形態》
第7の実施形態では、第2補強材部の表面の一部及び第2領域の側面に接合する第3補強材部を備える、多層基板について例示する。
【0081】
図10は第7の実施形態に係る多層基板107の部分断面図である。
【0082】
多層基板107は、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。
【0083】
樹脂積層体10は、樹脂積層体10の層方向領域として、第1領域A1、第2領域A2、及び第1領域A1と第2領域A2との間の領域である第3領域A3を有する。この3つの領域を有する構造は図3に示した例と同じである。
【0084】
多層基板107は、樹脂積層体10の第3領域A3を充填しつつ樹脂積層体10の第1領域A1の上面TSと樹脂積層体10の第2領域A2の側面SSとに連続して接合している第1補強材部11を備えている。第1補強材部11は第1樹脂で構成されている。
【0085】
樹脂積層体10の第1領域A1の上面TS及び第1補強材部11の表面には第2補強材部12が形成されている。この第2補強材部12は樹脂積層体10の第1領域A1の上面TS及び第1補強材部11の表面に連続して接合している。第2補強材部12は第2樹脂で構成されている。
【0086】
この多層基板107は、第2補強材部12の表面の一部及び第2領域A2の側面SSに接合する第3補強材部13を備える。第3補強材部13は第3樹脂で構成されている。
【0087】
第2領域A2の側面SSに接する第3補強材部13の端部は、第2領域A2の側面SSに接する第1補強材部11の端部よりも放射電極RE側に存在する。
【0088】
このように、第2補強材部12の端部を第3補強材部13で覆うことで、第1補強材部11からの第2補強材部12の剥がれが抑制される。
【0089】
また、上記第1樹脂のチクソ比(チクソトロピーの大きさ)をTR1、上記第3樹脂のチクソ比(チクソトロピーの大きさ)をTR3で表すと、TR1<TR3の関係にある。このことにより、第1樹脂積層体10の溝部に第1樹脂を隙間なく濡れ広がらせることが可能である。一方、第3樹脂は濡れ広がりにくいため、所望の箇所に限定的に第3補強材部13を形成することが可能である。
【0090】
なお、第3樹脂は第1樹脂又は第2樹脂と同一樹脂であってもよい。
【0091】
《第8の実施形態》
第8の実施形態では、特に第1補強材部の高さと幅との関係について例示する。
【0092】
図11は第8の実施形態に係る多層基板108の部分断面図である。
【0093】
樹脂積層体10は第1領域A1及び第2領域A2を有する。第1領域A1と第2領域A2との境界には段差部が形成されている。段差部の内角部には、第1補強材部11が付与されている。この第1補強材部11は、樹脂積層体10の第1領域A1の上面TSと、樹脂積層体10の第2領域A2の側面SSと、に連続して接合している。
【0094】
第1補強材部11の、樹脂積層体10の第2領域A2の側面SSに沿った高さをL1で表し、第1補強材部11の、樹脂積層体の第1領域A1での第2領域A2から離れる方向に沿った長さをL2で表すとき、L1>L2の関係にある。その他の構成は第1の実施形態で示したとおりである。
【0095】
第8の実施形態によれば、第1領域A1の上面TSに接する第1補強材部11の幅L2が、第2領域A2の側面SSに接する第1補強材部11の長さ(高さ)L1より小さいので、第1補強材部11の存在による、樹脂積層体10の第1領域A1の可撓性阻害が少ない。例えば第1領域A1の可撓性領域を狭めない。すなわち、第1補強材部11及び第2補強材部12による、樹脂積層体10の第1領域A1と第2領域A2との界面の補強、及び第1補強材部11と樹脂積層体10と接合界面の補強性を確保しつつ、第1領域A1の可撓性を確保できる。
【0096】
《第9の実施形態》
第9の実施形態では、第1領域と第2領域との構成がこれまでに示した例とは異なる多層基板について例示する。
【0097】
図12は第9の実施形態に係る多層基板109の断面図である。この多層基板109は、基板部109Sと、それに搭載された搭載部109Eとを備える。基板部109Sと搭載部109Eとで第2領域A2が構成されている。そして、搭載部109Eの搭載領域以外の基板部109Sで第1領域A1が構成されている。
【0098】
基板部109S及び搭載部109Eは、複数の樹脂層と、これら複数の樹脂層のうち所定の樹脂層に付された導体層及び層間接続導体と、を備える。導体層及び層間接続導体は例えばCu又はAgを主成分とした導体である。
【0099】
基板部109Sの最上層の樹脂層の開口部には接続導体BMが塗布形成されている。接続導体BMは例えばはんだ等の加熱溶融金属である。接続導体BMの下層には多層基板部側パット電極2が形成されている。パット電極2と信号ライン用導体パターンSLの一方端との間は、導体層5及び層間接続導体4により積層方向に接続されている。また、端子電極TEと信号ライン用導体パターンSLの他方端との間も、導体層5及び層間接続導体4により積層方向に接続されている。
【0100】
搭載部109Eの上部には放射電極REが形成されている。搭載部109Eの搭載面(下面)には端子電極6が形成されている。そして、この端子電極6と放射電極REとの間は層間接続導体4及び導体層5を介して電気的に接続されている。
【0101】
搭載部109Eの端子電極6は、基板部109Sに形成されているパット電極2に電気的に接続される。
【0102】
このように、基板部109Sと、搭載部109Eとで樹脂積層体を構成してもよい。その他の構成は、例えば第1の実施形態等、これまでに示した実施形態と同様である。
【0103】
樹脂積層体は第1領域A1から第2領域A2にかけて全体に同種の樹脂材で形成されていてもよいし、第2領域A2において、第1領域A1を構成する樹脂基板上に異種基板を接合することによって第2領域A2を形成してもよい。すなわち、基板部109Sの樹脂部と、搭載部109Eの樹脂部とは異種の樹脂材で構成されていてもよい。ただし、基板部109Sの樹脂部と、搭載部109Eの樹脂部と、が同種の樹脂材で構成されていれば、異種材料界面を形成しないことから高い接合強度を得られる。
【0104】
同種の樹脂材であるか否かはフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)で確認できる。すなわち、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)でスペクトルを求め、搭載部109Eと基板部109Sとについて上記スペクトルのピークが同一であれば、同種の樹脂材であることが確認できる。
【0105】
なお、熱可塑性樹脂であれば、同種の樹脂材は融点の差が小さい。基板部109Sの樹脂部と、搭載部109Eの樹脂部と、が同種の樹脂材であるか否かは、示差走査熱量測定(DSC)の吸熱ピークで確認できる。具体的には、リガク製DSC8230を用い、10℃/分の昇温速度で昇温し、溶融させたものを降温後、再度10℃/分で昇温させたときの2つ樹脂材の融点の差が5℃以内のものを同種の樹脂材とみなすことができる。
【0106】
《第10の実施形態》
第10の実施形態では本発明に係る電子機器について例示する。
【0107】
本発明に係る電子機器は、第1の実施形態から第7の実施形態に示したいずれかの多層基板と、当該多層基板に実装された電子部品とを備える。この電子部品は、例えばパッチアンテナに接続される信号伝送線路のインピーダンス整合用チップキャパシタ、パッチアンテナへ送信信号を出力する電力増幅IC、パッチアンテナの受信信号を増幅する信号増幅IC等である。
【0108】
ここまで、本発明に係る種々の実施形態を提示したが、これらはすべて例であって、これら提示は本発明の範囲を限定することを意図していない。本発明に係る実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該種々の省略、置き換え、変更を行った実施形態は、本発明の範囲や本発明の要旨に含まれるとともに、本願の特許請求の範囲に記載された発明及びその均等の範囲内に含まれる。
【0109】
例えば、各実施形態では、樹脂積層体10の第2領域A2に放射電極を形成した例を示したが、第2領域A2に形成する電極は放射電極に限らない。
【0110】
また、各実施形態では、第1領域A1や第2領域A2に層間接続導体を形成した例を示したが、これら層間接続導体は必須ではない。
【0111】
また、各実施形態では、信号ライン用導体パターンSL及びグランド導体層GLを形成して、マイクロストリップ線路やトリプレート型のストリップ線路を構成したが、このような伝送線路部を備えるものに限らない。
【0112】
また、各実施形態では、導体パターンが樹脂積層体の外面に露出する例を示したが、各導体パターンが樹脂積層体の内部(内層)に形成したものも含まれる。
【0113】
本発明の多層基板及び電子機器は次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0114】
<1>
導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体を備える多層基板であり、
前記樹脂積層体は、前記樹脂積層体の層方向領域として第1領域及び当該第1領域に連続する第2領域を有し、
前記樹脂積層体の前記第1領域での厚みをT1で表し、前記樹脂積層体の前記第2領域での厚みをT2で表すとき、それら厚みはT1<T2の関係にあり、
前記樹脂積層体の前記第1領域の上面と、前記樹脂積層体の前記第2領域の側面と、に連続して接合している、第1樹脂で構成される第1補強材部と、
前記樹脂積層体の前記第1領域の表面と前記第1補強材部の表面とに連続して接合している、第2樹脂で構成される第2補強材部と、
を備える多層基板。
【0115】
<2>
導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体を備える多層基板であり、
前記樹脂積層体の層方向領域として第1領域、第2領域、及び前記第1領域と前記第2領域との間の領域である第3領域を有し、
前記樹脂積層体の前記第1領域での厚みをT1で表し、前記樹脂積層体の前記第2領域の厚みをT2で表し、前記樹脂積層体の前記第3領域の厚みをT3で表すとき、それら厚みはT3<T1<T2の関係にあり、
前記樹脂積層体の前記第3領域を充填し、前記樹脂積層体の前記第1領域の上面と前記樹脂積層体の前記第2領域の側面とに連続して接合している、第1樹脂で構成される第1補強材部と、
前記樹脂積層体の前記第1領域の表面と前記第1補強材部の表面とに連続して接合している、第2樹脂で構成される第2補強材部と、
を備える多層基板。
【0116】
<3>
前記樹脂層のヤング率をE10で表し、前記第1補強材部のヤング率をE11で表し、前記第2補強材部のヤング率をE12で表すと、
E11>E10、E11>E12、の関係にある、
<1>又は<2>に記載の多層基板。
【0117】
<4>
前記第1補強材部の、前記樹脂積層体の前記第2領域の側面に沿った高さをL1で表し、前記第1補強材部の、前記樹脂積層体の前記第1領域での前記第2領域から離れる方向に沿った長さをL2で表すとき、L1>L2の関係にある、
<1>から<3>のいずれかに記載の多層基板。
【0118】
<5>
前記第2補強材部は、前記樹脂積層体の前記第1領域の表面と、前記第1補強材部の表面と、前記樹脂積層体の前記第2領域の側面と、に沿って連続している、
<1>から<4>のいずれかに記載の多層基板。
【0119】
<6>
前記樹脂積層体の内部の層に形成された信号ライン用導体パターンと、前記樹脂積層体の下面又は内層に形成されたグランド導体層と、を備え、少なくとも、前記信号ライン用導体パターン、前記グランド導体層及び前記樹脂積層体の前記第1領域でストリップ線路が構成され、
前記第1補強材部と前記信号ライン用導体パターンとの間にグランド導体層が形成されている、
<1>から<5>のいずれかに記載の多層基板。
【0120】
<7>
前記樹脂積層体の前記第2領域の上面に形成された放射電極と、前記樹脂積層体の少なくとも前記第2領域の下面又は内層に形成されたグランド導体層とでパッチアンテナが構成された、
<1>から<6>のいずれかに記載の多層基板。
【0121】
<8>
前記第1補強材部及び前記第2補強材部は、前記樹脂積層体の前記第1領域において前記複数の樹脂層の積層方向の異なる位置である2箇所に存在する、
<1>から<7>のいずれかに記載の多層基板。
【0122】
<9>
前記第1補強材部及び前記第2補強材部は、前記樹脂積層体の前記第1領域において前記複数の樹脂層の層方向に異なる位置である2箇所に存在する、
<1>から<7>のいずれかに記載の多層基板。
【0123】
<10>
前記第2補強材部の表面の一部及び前記第2領域の側面に接合する第3補強材部を備える、
<1>から<9>のいずれかに記載の多層基板。
【0124】
<11>
<1>から<10>のいずれかに記載の前記多層基板と、当該多層基板に実装された電子部品とを備える電子機器。
【符号の説明】
【0125】
A1…第1領域
A2…第2領域
A3…第3領域
BM…接続導体
BS…下面
GL,GL0,GL1,GL2…グランド導体層
RE,RE1,RE2…放射電極
SL,SL1,SL2…信号ライン用導体パターン
SS,SS1,SS2…側面
T1,T2…厚み
TE…端子電極
TS,TS1…上面
TS2…下面
V1,V2…層間接続導体
V1A,V1B…層間接続導体
2…パット電極
4…層間接続導体
5…導体層
6…端子電極
10…樹脂積層体
11,11A,11B…第1補強材部
11R1…第1補強材部11の根元部
11R2…第1補強材部11の上端部
12,12A,12B…第2補強材部
13…第3補強材部
101,102,103A,103B,104,105A,105B,106,107,108,109…多層基板
109E…搭載部
109S…基板部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12