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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139680
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】樹脂多層基板及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20250919BHJP
【FI】
H05K3/28 B
H05K3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038639
(22)【出願日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 彰記
(72)【発明者】
【氏名】川田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】堀 智史
(72)【発明者】
【氏名】池内 康祐
(72)【発明者】
【氏名】立浪 智宗
(72)【発明者】
【氏名】吉川 孝義
(72)【発明者】
【氏名】松原 大悟
【テーマコード(参考)】
5E314
【Fターム(参考)】
5E314AA32
5E314AA33
5E314AA36
5E314AA45
5E314BB07
5E314BB10
5E314BB11
5E314CC01
5E314CC15
5E314FF05
5E314GG11
(57)【要約】
【課題】樹脂積層体の表面を保護する保護膜の剥がれを抑制した樹脂多層基板、及び当該樹脂多層基板を備える電子機器、を得る。
【解決手段】樹脂多層基板101Aは樹脂積層体10を備える。樹脂積層体10は、層方向領域として第1領域A1、第2領域A2、及び第3領域A3を有する。樹脂多層基板101Aは、第1領域A1の表面から第3領域A3にかけて貼付された第1樹脂材R1と、第3領域A3内に形成された第2樹脂材R2と、を備える。第2樹脂材R2は、第1樹脂材R1の一部を被覆し、第3領域A3に存在する第1樹脂材R1の端部を被覆する。第1樹脂材R1のヤング率をE1、第2樹脂材のヤング率をE2で表すとき、E1<E2の関係にある。第1樹脂材R1と樹脂積層体10との密着力をAD1、第2樹脂材R2と樹脂積層体10との密着力をAD2で表すとき、AD2≧AD1の関係にある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体を備え、
前記樹脂積層体は、層方向領域として第1領域、第2領域、及び前記第1領域と前記第2領域との間の領域である第3領域を有し、
前記樹脂積層体の前記第1領域の平均厚みをT1で表し、前記樹脂積層体の前記第2領域の平均厚みをT2で表し、前記樹脂積層体の前記第3領域の平均厚みをT3で表すとき、それら厚みはT3<T1<T2の関係にあり、
前記第1領域の表面から前記第3領域にかけて覆う第1樹脂材と、
前記第3領域内に形成された第2樹脂材と、
を備え、
前記第2樹脂材は、前記第1樹脂材の一部を被覆し、前記第3領域に存在する前記第1樹脂材の端部を被覆し、
前記第1樹脂材のヤング率をE1、前記第2樹脂材のヤング率をE2で表すとき、E1<E2の関係にあり、
前記第1樹脂材と前記樹脂積層体との密着力をAD1、前記第2樹脂材と前記樹脂積層体との密着力をAD2で表すとき、AD2≧AD1の関係にある、
樹脂多層基板。
【請求項2】
前記第2樹脂材は、前記第1樹脂材の端部から前記第1領域にかけて前記第1樹脂材を被覆する、
請求項1に記載の樹脂多層基板。
【請求項3】
前記第3領域は、前記樹脂積層体の厚みが複数段階に分かれた領域であり、
前記第2樹脂材は、前記第3領域の所定段に位置する前記第1樹脂材の端部から、前記第3領域のうち前記所定段より一段以上上部にかけて、又は前記第1樹脂材の端部から前記第1領域にかけて、前記第1樹脂材を被覆する、
請求項1又は2に記載の樹脂多層基板。
【請求項4】
前記第2樹脂材は、前記第1領域の厚みよりも高い位置まで前記第2領域の側面部を被覆する、
請求項1又は2に記載の樹脂多層基板。
【請求項5】
前記第2樹脂材と前記第2領域の側面のとの密着力は前記第2樹脂材と前記第3領域の上面との密着力より大きい、
請求項4に記載の樹脂多層基板。
【請求項6】
前記第2樹脂材は前記第2領域の側面部に達する前記導体パターンを被覆する、
請求項4に記載の樹脂多層基板。
【請求項7】
前記第2領域の上面を被覆する第3樹脂材を備え、
前記第3樹脂材の端部と前記第2樹脂材とは、互いに非接触の位置関係にそれぞれ配置されている、
請求項1又は2に記載の樹脂多層基板。
【請求項8】
前記第2領域の側面に形成された第3樹脂材を備え、
前記第2樹脂材は、前記第2領域の側面において、前記第3樹脂材の端部を被覆している、
請求項1又は2に記載の樹脂多層基板。
【請求項9】
前記第2領域の上面を覆う第3樹脂材を備え、
前記第2樹脂材は、前記第2領域の上面において、前記第3樹脂材の端部を被覆している、
請求項1又は2に記載の樹脂多層基板。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の樹脂多層基板と、当該樹脂多層基板に実装された電子部品とを備える、又は前記樹脂多層基板を実装する他基板を備える、電子機器。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の樹脂多層基板と、当該樹脂多層基板を内蔵する筐体とを備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体を備える樹脂多層基板、及び当該樹脂多層基板を備える電子機器、に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂層の積層数の相違により、積層方向の厚みが異なる第1領域と第2領域とを有する多層基板が示されている。
【0003】
このように、樹脂層の積層数が第1領域と第2領域とで相違する場合、この第1領域と第2領域との境界に段差部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-16743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体を備える樹脂多層基板においては、各導体パターンの位置関係や使用形態に応じて、積層方向の厚みが異なる領域が必要となる。
【0006】
一方、樹脂多層基板に形成された回路を保護するために、又は樹脂多層基板自体を補強するために、樹脂多層基板の表面に絶縁性の保護膜を、粘着層を介して貼付することで、樹脂積層体の表面に保護膜を被覆する構成も採られる。
【0007】
ところが、樹脂積層体の厚みに大きな段差部が生じるような樹脂積層体においては、その段差部に連続する保護膜を形成することは困難であるので、厚みが比較的均等な領域に対して連続する保護膜を被覆することになる。樹脂多層基板がこのような構造であると、保護膜の端部が樹脂多層基板の外縁ではなく、内側に位置するので、保護膜が剥がれやすくなる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、樹脂積層体の表面を保護する保護膜の剥がれを抑制した樹脂多層基板、及び当該樹脂多層基板を備える電子機器、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(a)本開示の一例としての樹脂多層基板は、
導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体を備え、
前記樹脂積層体は、層方向領域として第1領域、第2領域、及び前記第1領域と前記第2領域との間の領域である第3領域を有し、
前記樹脂積層体の前記第1領域の平均厚みをT1で表し、前記樹脂積層体の前記第2領域の平均厚みをT2で表し、前記樹脂積層体の前記第3領域の平均厚みをT3で表すとき、それら厚みはT3<T1<T2の関係にあり、
前記第1領域の表面から前記第3領域にかけて覆う第1樹脂材と、
前記第3領域内に形成された第2樹脂材と、
を備え、
前記第2樹脂材は、前記第1樹脂材の一部を被覆し、前記第3領域に存在する前記第1樹脂材の端部を被覆し、
前記第1樹脂材のヤング率をE1、前記第2樹脂材のヤング率をE2で表すとき、E1<E2の関係にあり、
前記第1樹脂材と前記樹脂積層体との密着力をAD1、前記第2樹脂材と前記樹脂積層体との密着力をAD2で表すとき、AD2≧AD1の関係にある。
【0010】
(b)本開示の一例としての電子機器は、樹脂多層基板と、当該樹脂多層基板に実装された電子部品とを備える、又は前記樹脂多層基板を実装する他基板を備える。
【0011】
(c)本開示の一例としての電子機器は、樹脂多層基板と、当該樹脂多層基板を内蔵する筐体とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、樹脂積層体の表面を保護する保護膜の剥がれを抑制した樹脂多層基板、及び当該樹脂多層基板を備える電子機器、が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は第1の実施形態に係る樹脂多層基板101Aの断面図である。
図2図2は第1の実施形態に係る樹脂多層基板101Aの部分平面図である。
図3図3は第1の実施形態に係る樹脂多層基板101Bの断面図である。
図4図4は第2の実施形態に係る樹脂多層基板102の断面図である。
図5図5は第3の実施形態に係る樹脂多層基板103Aの断面図である。
図6図6は第3の実施形態に係る樹脂多層基板103Bの断面図である。
図7図7は第4の実施形態に係る樹脂多層基板104Aの断面図である。
図8図8は第4の実施形態に係る樹脂多層基板104Bの断面図である。
図9図9は第4の実施形態に係る樹脂多層基板104Cの断面図である。
図10図10は第5の実施形態に係る樹脂多層基板105の断面図である。
図11図11は第6の実施形態に係る樹脂多層基板106Aの断面図である。
図12図12は第6の実施形態に係る樹脂多層基板106Bの断面図である。
図13図13は第6の実施形態に係る樹脂多層基板106Cの断面図である。
図14図14は第7の実施形態に係る樹脂多層基板107の断面図である。
図15図15は第8の実施形態に係る樹脂多層基板108の断面図である。
図16図16は第9の実施形態に係る樹脂多層基板109の断面図である。
図17図17は第10の実施形態に係る樹脂多層基板110の断面図である。
図18図18は第11の実施形態に係る樹脂多層基板111の断面図である。
図19図19の上部は第12の実施形態に係る樹脂多層基板112の屈曲前の状態での断面図である。図19の下部は第12の実施形態に係る樹脂多層基板112の屈曲後の状態での断面図である。
図20図20は第13の実施形態に係る樹脂多層基板113及び電子機器413の断面図である。
図21図21は第14の実施形態に係る樹脂多層基板114及び電子機器414の断面図である。
図22図22の上部は樹脂多層基板に形成されている、第1樹脂材R1と樹脂積層体10との密着力を測定するための切刃の位置及び運動方向を示す図である。図22の下部は切刃の詳細な運動について示す拡大図である。
図23図23の左部は樹脂多層基板の切断位置を示す図であり、図23の右部は図23の左部の破線部で切断した状態の図である。
図24図24の上部は第1樹脂材R1のヤング率の測定状態での断面図である。図24の下部は第2樹脂材R2のヤング率の測定状態での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、発明を実施するための形態を、説明の便宜上、複数の実施形態に分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な省略、置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0015】
《第1の実施形態》
第1の実施形態では、パッチアンテナを備えた樹脂多層基板について例示する。
【0016】
図1は第1の実施形態に係る樹脂多層基板101Aの断面図である。図2は第1の実施形態に係る樹脂多層基板101Aの部分平面図である。なお、断面図においては、断面に現れる(切断によって現れる)線を描画していて、断面より後方に存在する線については図示を略している。このことは後に示す各実施形態においても同様である。また、図1図2においては、単一の樹脂多層基板について示しているが、このような単一の樹脂多層基板を製造する途中段階では、複数の樹脂多層基板の連続体であり、製造工程の最終段階又は最終段階の直前段階で上記連続体を切断することにより個体化する。このような連続体及び個体化の関係は他の図においても同様である。
【0017】
樹脂多層基板101Aは、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。この樹脂積層体10は、層方向領域として第1領域A1、第2領域A2、及び第1領域A1と第2領域A2との間の領域である第3領域A3を有する。
【0018】
図1では、複数の樹脂層のうち層方向に隣接する各樹脂層の界面は図示していない。この層界面の不図示は以降に示す各実施形態においても同様である。
【0019】
樹脂積層体10の第1領域A1の平均厚みをT1で表し、樹脂積層体10の第2領域A2の平均厚みをT2で表し、樹脂積層体10の第3領域A3の平均厚みをT3で表すとき、それら厚みはT3<T1<T2の関係にある。
【0020】
このことにより、第1領域A1と第3領域A3との境界に段差部が形成されていて、第2領域A2と第3領域A3との境界に段差部が形成されている。
【0021】
第1領域A1の表面から第3領域A3にかけて第1樹脂材(保護膜)R1が樹脂積層体10に貼付されている。この第1樹脂材R1は、樹脂積層体10の外層に露出する導体パターンの保護及び電気的絶縁を行う。
【0022】
第3領域A3内には第2樹脂材(補強材)R2を塗布形成している。このことにより、第2樹脂材R2は第1樹脂材R1の一部を被覆している(全面を被覆しているわけではない)。第2樹脂材R2は、第3領域A3に貼付されている第1樹脂材R1の端部から、第3領域A3と第2領域A2との境界部にかけて第1樹脂材R1を被覆している。少なくとも第3領域A3に貼付されている第1樹脂材R1の端部を被覆している。
【0023】
各部の材料例は次のとおりである。
【0024】
[第1樹脂材R1]
・ポリイミドの基材に粘着層を貼り合わせたシート状の絶縁材料であり、ポリイミド基材の厚さ、粘着層の厚さは任意である。また、ポリイミド基材の色及び粘着層の色は任意である。
【0025】
・第1樹脂材R1のヤング率E1は3GPa以上5Gpa未満である。
【0026】
[第2樹脂材R2]
・エポキシ樹脂又はアクリル樹脂を主成分としたアンダーフィル若しくはサイドフィル用途の材料であり、色は任意である。
【0027】
・第2樹脂材R2のヤング率E2は5Gpa以上である。例えば7GPaである。
【0028】
[樹脂積層体10]
・液晶ポリマー樹脂又はポリイミド
第1樹脂材R1のヤング率をE1、第2樹脂材R2のヤング率をE2で表すとき、
E1<E2の関係にある。
【0029】
なお、ヤング率の測定方法については各実施形態を例示した後に詳述する。
【0030】
各部の密着力関係の例は次のとおりである。
【0031】
第1樹脂材R1と樹脂積層体10との密着力AD1:0.5~2.0N/mm
第2樹脂材R2と樹脂積層体10との密着力AD2:1.0~3.0N/mm
第2樹脂材R2と第1樹脂材R1との密着力AD12:0.5~2.0N/mm
上記密着力の測定方法については、各実施形態を例示した後に詳述する。
【0032】
ここで、第1樹脂材R1と樹脂積層体10との密着力をAD1、第2樹脂材R2と樹脂積層体10との密着力をAD2で表すとき、AD2≧AD1の関係であることが好ましい。
【0033】
樹脂積層体10の第2領域A2の上面には放射電極REが形成されている。樹脂積層体10の第1領域A1の上面には端子電極TEが露出されている。樹脂積層体10の下面にはグランド導体層GLが形成されている。
【0034】
樹脂積層体10の内部には信号ライン用導体パターンSLが形成されている。この信号ライン用導体パターンSLは複数の樹脂層のうち一つの樹脂層に形成された導体パターンである。
【0035】
また、樹脂積層体10の内部には、層間接続導体V1,V2が形成されている。層間接続導体V1は樹脂積層体10における樹脂層の積層方向に延びて、信号ライン用導体パターンSLの一方端部と放射電極REとを電気的に接続する。層間接続導体V2は上記積層方向に延びて、信号ライン用導体パターンSLの他方端部と端子電極TEとを電気的に接続する。
【0036】
信号ライン用導体パターンSL、グランド導体層GL、及び信号ライン用導体パターンSLとグランド導体層GLとの間にある樹脂層によってマイクロストリップ線路が構成されている。すなわち、端子電極TEと放射電極REとが、上記マイクロストリップ線路を介して高周波的に接続されている。
【0037】
放射電極RE、グランド導体層GL及び樹脂積層体10によってパッチアンテナが構成されている。
【0038】
信号ライン用導体パターンSL、グランド導体層GL、一部が端子電極TEである導体パターン、層間接続導体V1,V2、放射電極RE等の各種導体パターンは例えばCu又はAgを主成分とした導体である。
【0039】
樹脂多層基板101Aの製造時、第1樹脂材R1を樹脂積層体10に貼付し、真空プレスにより第1樹脂材R1を樹脂積層体10に密着させる。その後、オーブン硬化により第1樹脂材R1の貼付材を硬化させる。次に、第2樹脂材R2を塗布し、この第2樹脂材R2を硬化させる。
【0040】
図2に示す例では、複数の放射電極REがアレー配置されていて、複数のパッチアンテナによるアレーアンテナが構成されている。各放射電極REから放射される送信信号、又は各放射電極REが受ける受信信号、に対する位相制御若しくは位相設定によってアンテナの指向性が定められる。なお、図2においては、図1に示した端子電極TEの図示を省略している。
【0041】
図1に示した例では、第1領域A1、第2領域A2及び第3領域A3が一体化された状態で示しているが、第1領域と第3領域とを有する多層基板に第2領域A2を構成する基板を搭載することで、樹脂積層体10を形成してもよい。このことは以降に示す他の実施形態についても同様である。
【0042】
本実施形態によれば、第1領域A1と第2領域A2との間の第3領域A3の厚みT2が、第1領域A1の厚みT1及び第2領域A2の厚みT2より小さいので、第3領域A3が陥凹部として作用する。したがって、第3領域A3で第2樹脂材R2の塗布量を確保できる。このことにより、第2樹脂材R2として、例えば40Pa・s以下の粘度の低い樹脂材料を選択できる。このように、粘度の低い樹脂材料からなる第2樹脂材R2を第1樹脂材R1の端部に塗布すれば、この第1樹脂材R1の端部の剥がれを効果的に抑制できる。
【0043】
また、本実施形態によれば、上述のとおり、第1領域A1から第3領域A3にかけて貼付された第1樹脂材R1の端部が第3領域において第2樹脂材R2で被覆されていて、且つAD2≧AD1の関係にあるので、樹脂積層体10に対する第1樹脂材R1の密着力が相対的に弱くても、樹脂積層体10からの第1樹脂材R1の剥がれを抑制できる。
【0044】
また、図1において、樹脂積層体10の第1領域A1の厚みT1は第2領域A2の厚みT2より薄いので、第2領域A2に対して第1領域A1のX-Y面はY軸に平行な軸回りに屈曲させやすい。このような屈曲応力を意図的に生じさせても、上述のとおり、E1<E2の関係であるので、第1領域A1の曲げ応力で第1樹脂材R1は変形しやすい。このことにより、第1樹脂材R1は第1領域A1の変形に追随しやすい。したがって、第2領域A2に対する第1領域A1及び第3領域A3の屈曲応力が掛かったとき、樹脂積層体10の表面に対する第1樹脂材R1のずれが抑制される。このことによっても、第1樹脂材R1の剥がれが効果的に抑制される。すなわち、第2領域A2に対する第1領域A1及び第3領域A3の屈曲時の耐屈曲性を高めることができる。
【0045】
図3は第1の実施形態に係る樹脂多層基板101Bの断面図である。この樹脂多層基板101Bと、図1に示した樹脂多層基板101Aと、では第2樹脂材R2の被覆範囲が異なる。
【0046】
図3に示す樹脂多層基板101Bでは、第2樹脂材R2は第1樹脂材R1の端部から第1領域A1にかけて第1樹脂材R1を被覆する。つまり、第2樹脂材R2は樹脂積層体10の第1領域A1に乗り上げる位置にまで延在する。その他の構成は図1に示したとおりである。
【0047】
樹脂積層体10の第1領域A1と第3領域A3との境界付近では、樹脂積層体10に対する第1樹脂材R1の密着性が低い場合がある。図3に示した構造によれば、第2樹脂材R2が樹脂積層体10の第1領域A1と第3領域A3との境界に存在するので、その箇所での、樹脂積層体10に対する第1樹脂材R1の剥がれを抑制できる。さらには、第1樹脂材R1と第2樹脂材R2との接着面積が大きいので、樹脂積層体10に対する第1樹脂材R1の剥がれを効果的に抑制できる。
【0048】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、樹脂積層体の第1領域と第2領域との間に第3領域以外の領域が存在する例について示す。
【0049】
図4は第2の実施形態に係る樹脂多層基板102の断面図である。樹脂多層基板102は、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。この樹脂積層体10は、層方向領域として第1領域A1、第2領域A2、及び、第1領域A1と第2領域A2との間に第3領域A3を有する。また、第1領域A1と第2領域A2との間に第4領域A4を有する。
【0050】
樹脂積層体10の第1領域A1の平均厚みをT1で表し、樹脂積層体10の第2領域A2の平均厚みをT2で表し、樹脂積層体10の第3領域A3の平均厚みをT3で表し、樹脂積層体10の第4領域A4の平均厚みをT4で表すとき、それら厚みはT4<T3<T1<T2の関係にある。
【0051】
図4に示す例では、第3領域A3から第1領域A1にかけて、第1樹脂材(保護膜)R1が樹脂積層体10に貼付されている。そして、第2樹脂材R2は、第3領域A3に位置する第1樹脂材R1の端部を被覆している。
【0052】
その他の構成は第1の実施形態で示したとおりである。第2の実施形態によれば、第3領域以外に、樹脂積層体10の厚みの異なる領域があっても、第2樹脂材R2の塗布面積を抑制でき、コストダウンを図ることができる。その他にも第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0053】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、樹脂積層体の第3領域が、樹脂積層体の厚みが複数段階に分かれた領域である例について示す。また、第3の実施形態では、第1樹脂材R1及び第2樹脂材R2の構成が第2の実施形態とは異なる例について示す。
【0054】
図5は第3の実施形態に係る樹脂多層基板103Aの断面図である。樹脂多層基板103Aは、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。
【0055】
樹脂積層体10は、層方向領域として第1領域A1、第2領域A2、及び、第1領域A1と第2領域A2との間の領域である第3領域A31,A32を有する。
【0056】
樹脂積層体10の第1領域A1の平均厚みをT1で表し、樹脂積層体10の第2領域A2の平均厚みをT2で表し、樹脂積層体10の一方の第3領域A31の平均厚みをT31で表し、樹脂積層体10の他方の第3領域A32の平均厚みをT32で表すとき、それら厚みはT32<T31<T1<T2の関係にある。このように、第3領域A31,A32は樹脂積層体10の厚みが複数段階に分かれた領域である。
【0057】
図5に示す例では、第3領域A32から第1領域A1にかけて、第1樹脂材(保護膜)R1が樹脂積層体10に貼付されている。そして、第2樹脂材R2は第3領域A32に位置する第1樹脂材R1の端部を被覆している。
【0058】
その他の構成は第1、第2の実施形態で示したとおりである。図5に示す例では、第2樹脂材R2の塗布面積を抑制でき、コストダウンを図ることができる。図5に示した樹脂多層基板103Aにおいても第1、第2の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0059】
図6は第3の実施形態に係る樹脂多層基板103Bの断面図である。この樹脂多層基板103Bと、図5に示した樹脂多層基板103Aと、では第2樹脂材R2の被覆範囲が異なる。
【0060】
図6に示す樹脂多層基板103Bでは、第2樹脂材R2は、第3領域A32から第1領域A1にかけて第1樹脂材R1を被覆する。つまり、第2樹脂材R2は樹脂積層体10の第1領域A1に乗り上げる位置にまで延在する。その他の構成は図6に示したとおりである。
【0061】
なお、樹脂多層基板は、第2樹脂材R2が第3領域A32から第3領域A31にかけて第1樹脂材R1を被覆する構造であってもよい。
【0062】
すなわち、第3実施形態では、第2樹脂材R2は、第3領域A31,A32の所定段に位置する第1樹脂材R1の端部から、第3領域のうち所定段より一段以上上部にかけて、又は第1樹脂材R1の端部から第1領域A1にかけて、第1樹脂材R1が貼付されている、
その他の構成は第1、第2の実施形態で示したとおりである。第3の実施形態においても第1、第2の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0063】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、第2樹脂材R2が第2領域A2の側面部を被覆する樹脂多層基板について例示する。
【0064】
図7は第4の実施形態に係る樹脂多層基板104Aの断面図である。図8の上部は第4の実施形態に係る樹脂多層基板104Bの断面図である。図8の下部は第2樹脂材R2周囲の写真である。樹脂積層体10の構造は第1の実施形態において図1図3に示した樹脂積層体10と同様である。
【0065】
図7図8に示す例では、第1樹脂材R1は第3領域A3から第1領域A1にかけて樹脂積層体10に貼付されている。図7に示す例では、第2樹脂材R2は、第3領域を被覆することで第1樹脂材R1の端部を覆い、且つ第2領域A2の側面部を被覆している。また、図8に示す例では、第2樹脂材R2は、第1領域及び第3領域において第1樹脂材R1を覆い、且つ第2領域A2の側面部を被覆している。いずれも、第2樹脂材R2は第1領域A1の厚みよりも高い位置まで第2領域A2の側面部を被覆している。
【0066】
図9は第4の実施形態に係る樹脂多層基板104Cの断面図である。樹脂積層体10の構造は第1の実施形態において図1図3に示した樹脂積層体10と同様である。
【0067】
図9に示す例でも、第1樹脂材R1は第3領域A3から第1領域A1にかけて樹脂積層体10に貼付されている。この図9に示す例では、第2樹脂材R2を第1領域A1から第2領域A2にかけて設けている。つまり、第2樹脂材R2は第2領域A2の側面の全面だけでなく、第2領域A2の上面の一部も被覆している。また、図9に示す例では、第2樹脂材R2は放射電極REの端部も被覆している。この構造により、第2領域A2の上面のCu箔の剥離抑制効果もある。
【0068】
樹脂多層基板104A,104B,104Cのいずれにおいても、樹脂積層体10の第2領域A2の側面部の粗さは第3領域A3の上面の粗さより大きい。
【0069】
本実施形態によれば、樹脂積層体10の第2領域A2が第2樹脂材R2で固定されるので、第2領域A2の曲げ耐性を高めることができる。また、第2領域A2の根本部の耐屈曲性を高めることができる。このことにより、第2領域A2の変形が抑制されるので、例えばアンテナ特性の変化が抑制される。
【0070】
また、既述のとおり、第2領域A2の側面部の粗さは第3領域A3の上面の粗さより大きいので、第2樹脂材R2と第2領域A2の側面との密着力は第2樹脂材R2と第3領域A3の上面との密着力より大きい。樹脂積層体10の第1領域A1の屈曲時に、第2領域A2と第2樹脂材R2との接合面に応力が掛かるが、上述のとおり、第2樹脂材R2と第2領域A2の側面のとの密着力が大きいので、上記応力発生時の第2樹脂材R2の剥がれを抑制できる。
【0071】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、第2領域A2の側面及びその根元部の構造が第4の実施形態で示した例とは異なる樹脂多層基板について示す。
【0072】
図10は第5の実施形態に係る樹脂多層基板105の断面図である。樹脂多層基板105は、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。この樹脂積層体10は、層方向領域として第1領域A1、第2領域A2、及び、第1領域A1と第2領域A2との間にある第3領域A3を有する。
【0073】
第2領域A2の側面SSは上部方向に先細りとなるテーパー状である。また、第2領域A2の根元部RPは湾曲形状である。その他の構造は図7に示した樹脂多層基板104Aと同様である。
【0074】
本実施形態によれば、第1領域A1及び第3領域A3を有するフレキシブルな多層基板に、第2領域A2を構成するリジッドな基板を搭載することで、樹脂積層体10を形成する場合でも、第1領域A1及び第3領域A3に対する第2領域A2の接合強度を高めることができる。すなわち、テーパー状部分での第2領域A2と第2樹脂材R2との密着性が高いので、第1領域A1及び第3領域A3に対する第2領域A2の抜けを抑制できる。
【0075】
また、第2領域A2の根元部RPが湾曲形状であるので、第3領域A3に屈折応力が掛かる際に、第2領域A2の根元部RPに加わる応力が小さくなり、第2領域A2の根元部のクラック発生が抑制される。
【0076】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、樹脂積層体の厚みが複数段階に分かれた領域である第3領域を備え、且つ第2樹脂材R2が第2領域A2の側面部を被覆する樹脂多層基板について例示する。
【0077】
図11は第6の実施形態に係る樹脂多層基板106Aの断面図である。樹脂多層基板106Aは、導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。この樹脂積層体10は、層方向領域として第1領域A1、第2領域A2、及び、第1領域A1と第2領域A2との間にある第3領域A31,A32を有する。
【0078】
樹脂積層体10の第1領域A1の平均厚みをT1で表し、樹脂積層体10の第2領域A2の平均厚みをT2で表し、樹脂積層体10の一方の第3領域A31の平均厚みをT31で表し、樹脂積層体10の他方の第3領域A32の平均厚みをT32で表すとき、それら厚みはT32<T31<T1<T2の関係にある。このように、第3領域A31,A32は樹脂積層体10の厚みが複数段階に分かれた領域である。
【0079】
図11に示す例では、第1樹脂材(保護膜)R1が樹脂積層体10の第3領域A32から第1領域A1までに貼付されている。そして、第2樹脂材R2は第3領域A32に位置する第1樹脂材R1の端部から第2領域A2の側面部を被覆している。
【0080】
図12は第6の実施形態に係る樹脂多層基板106Bの断面図である。樹脂積層体10の構成は図11に示したものと同様である、
図12に示す例では、第1樹脂材(保護膜)R1が樹脂積層体10の第3領域A31から第1領域A1までに貼付されている。そして、第2樹脂材R2は第3領域A31に位置する第1樹脂材R1の端部から第2領域A2の側面部を被覆している。
【0081】
図13は第6の実施形態に係る樹脂多層基板106Cの断面図である。樹脂積層体10の構造は第1の実施形態において図1図3に示した樹脂積層体10と同様である。
【0082】
図13に示す例では、第1樹脂材R1は第3領域A32から第1領域A1にかけて樹脂積層体10に貼付されている。この図13に示す例では、第2樹脂材R2は第1領域A1から第2領域A2にかけて設けている。つまり、第2樹脂材R2は第2領域A2の側面の全面だけでなく、第2領域A2の上面の一部も被覆している。また、図13に示す例では、第2樹脂材R2は放射電極REの端部も被覆している。この構造により、第2領域A2の上面のCu箔の剥離抑制効果もある。
【0083】
本実施形態によれば、第2領域A2が第2樹脂材R2で固定されるので、第2領域A2の曲げ耐性を高めることができる。また、第2領域A2の根本部の耐屈曲性を高めることができる。
【0084】
このように、第3領域が樹脂積層体10の厚みが複数段階に分かれた領域である場合も、第1樹脂材R1の端部から第2領域A2の側面にわたって第2樹脂材R2が第1樹脂材R1及び樹脂積層体10の表面を被覆する構造であっても、第4の実施形態に示した樹脂多層基板と同様の作用効果を奏する。
【0085】
《第7の実施形態》
第7の実施形態では、第2領域の上面の構造がこれまでに示した例とは異なる樹脂多層基板について例示する。
【0086】
図14は第7の実施形態に係る樹脂多層基板107の断面図である。この樹脂多層基板107は、第2領域A2の上面に形成されている放射電極REの上面と共に第2領域A2の上面を被覆する第3樹脂材R3を備える。第3樹脂材R3と第2樹脂材R2とは互いに非接触の位置関係にある。すなわち、第3樹脂材R3と第2樹脂材R2との間で、樹脂積層体10の第2領域の一部が露出している。第3樹脂材R3は第1樹脂材R1と同様に、例えばポリイミドの基材に粘着層を貼り合わせたシート状の絶縁材料である。
【0087】
その他の構成は第4の実施形態において図7に示した樹脂多層基板104Aの構成と同様である。
【0088】
本実施形態によれば、第3樹脂材R3と第2樹脂材R2とが連続していないため、第1領域A1及び第3領域A3の屈曲による影響を第3樹脂材R3は受けず、第3樹脂材R3剥がれ耐性を高めることができる。
【0089】
《第8の実施形態》
第8の実施形態では、第3樹脂材が第2領域の側面部を被覆する樹脂多層基板について例示する。
【0090】
図15は第8の実施形態に係る樹脂多層基板108の断面図である。この例では、第2領域A2の上面から側面にかけて第3樹脂材R3が形成されている。第2樹脂材R2は第2領域の側面において第3樹脂材R3の端部を覆う位置にまで形成されている。なお、第2領域A2の上面から側面にかけて丸みを形成することで、樹脂積層体10の第2領域A2に対する第3樹脂材R3の貼付の容易性を高めている。
【0091】
その他の構成は第4の実施形態において図7に示した樹脂多層基板104Aの構成と同様である。
【0092】
本実施形態によれば、第2樹脂材R2が第3樹脂材R3の端部を覆うので、第3樹脂材R3の剥がれについての耐屈曲性も高めることができる。
【0093】
《第9の実施形態》
第9の実施形態では、樹脂積層体の第2領域内の導体パターンと、第2領域の側面を被覆する第2樹脂材及び第3樹脂材との関係について例示する。
【0094】
図16は第9の実施形態に係る樹脂多層基板109の断面図である。樹脂積層体10の第2領域A2内には、層間接続導体V1及びこの層間接続導体V1に接する導体箔を有する樹脂層の積層により、積層方向導体経路が形成されている。この導体箔の端部の一部は第2領域A2の側面に達している。
【0095】
第3樹脂材R3は上記導体箔の露出部に貼付されている。また、第2領域A2の側面を被覆する第2樹脂材R2は上記導体箔の露出部を被覆している。
【0096】
その他の構成は第4の実施形態において図7に示した樹脂多層基板104Aの構成と同様である。
【0097】
本実施形態によれば、第2領域A2の側面での導体パターンの不適切な電気的導通が防止される。また、このことに関連して、第2領域A2のX方向又はX-Y面方向のサイズを縮小化できる。
【0098】
《第10の実施形態》
第10の実施形態では、樹脂積層体の第2領域内の導体パターンと、第2領域の側面を被覆する第2樹脂材との関係について例示する。
【0099】
図17は第10の実施形態に係る樹脂多層基板110の断面図である。樹脂積層体10の第2領域A2内には、層間接続導体V1及びこの層間接続導体V1に接する導体箔を有する樹脂層の積層により、積層方向導体経路が形成されている。この導体箔の端部の一部は第2領域A2の側面に露出している。
【0100】
第2領域A2の側面を被覆する第2樹脂材R2は上記導体箔の露出部を被覆している。
【0101】
その他の構成は第4の実施形態において図7に示した樹脂多層基板104Aの構成と同様である。
【0102】
本実施形態によれば、第2領域A2の側面での導体パターンの不適切な電気的導通が防止される。また、このことに関連して、第2領域A2のX方向又はX-Y面方向のサイズを縮小化できる。
【0103】
《第11の実施形態》
第11の実施形態では、第1樹脂材及び第2樹脂材が、樹脂積層体における複数の樹脂層の積層方向の異なる位置である(分離された)2箇所に存在する樹脂多層基板について例示する。
【0104】
図18は第11の実施形態に係る樹脂多層基板111の断面図である。樹脂多層基板111は導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。
【0105】
樹脂積層体10は、樹脂積層体10の層方向領域として第1領域A1、第2領域A2及び第3領域A3を有する。樹脂積層体10の第1領域A1の厚みをT1で表し、樹脂積層体10の第2領域A2の厚みをT2で表すし、樹脂積層体10の第3領域A3の厚みをT3で表すとき、それら厚みはT3<T1<T2の関係にある。
【0106】
第1領域A1と第3領域A3との境界に段差部が形成されていて、第2領域A2と第3領域A3との境界に段差部が形成されている。
【0107】
第1領域A1の表面から第3領域A3にかけて第1樹脂材(保護膜)R1が樹脂積層体10に貼付されている。また、第3領域A3内には第2樹脂材(補強材)R2が被覆されている。
【0108】
図1に示した例と対比すれば明らかなように、第11の実施形態の樹脂多層基板111は、第1樹脂材R1及び第2樹脂材R2が、樹脂積層体10における複数の樹脂層の積層方向の異なる位置である(分離された)2箇所に存在する。
【0109】
本実施形態によれば、電子機器の筐体内に組み込む際、限られた空間に装着できる等、配置の自由度が高まる。また、互いの方向の異なる放射電極REを備えるので、広指向性又は2方向性のアンテナとして用いることができる。
【0110】
その他の構成及びそれによる作用効果は第1の実施形態で示したとおりである。
【0111】
《第12の実施形態》
第12の実施形態では、樹脂積層体の第1領域で屈曲させる樹脂多層基板について例示する。
【0112】
図19の上部は第12の実施形態に係る樹脂多層基板112の屈曲前(屈折前)の状態での断面図である。図19の下部は第12の実施形態に係る樹脂多層基板112の屈曲後の状態での断面図である。
【0113】
図19の上部に示すように、樹脂多層基板112は導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体10を備える。樹脂積層体10は、樹脂積層体10の層方向領域として1つの第1領域A1、第2領域A2及び第3領域A3を有する。樹脂積層体10の第1領域A1の厚みをT1で表し、樹脂積層体10の第2領域A2の厚みをT2で表すし、樹脂積層体10の第3領域A3の厚みをT3で表すとき、それら厚みはT3<T1<T2の関係にある。
【0114】
第1領域A1の表面から第3領域A3にかけて第1樹脂材(保護膜)R1が樹脂積層体10に貼付されている。また、第3領域A3内には第2樹脂材(補強材)R2が被覆されている。
【0115】
図1に示した例と対比すれば明らかなように、第12の実施形態の樹脂多層基板112は、第1樹脂材R1及び第2樹脂材R2が、樹脂積層体10の層方向の異なる位置である(分離された)2箇所に存在する。
【0116】
図19の下部に示すように、樹脂多層基板112を、その第1領域A1の中央で、Y軸に沿った方向の軸回りに90°屈曲させると、2箇所の放射電極REの方向が90°異なる配置となる。
【0117】
本実施形態によれば、電子機器の筐体内に組み込む際、限られた空間に装着できる等、配置の自由度が高まる。また、互いの方向の異なる放射電極RE1,RE2を備えるので、広指向性のアンテナとして用いることができる。
【0118】
《第13の実施形態》
第13の実施形態では、第2領域の構成がこれまでに示した例とは異なる樹脂多層基板について例示する。
【0119】
図20は第13の実施形態に係る樹脂多層基板113の断面図である。この樹脂多層基板113は、基板部10Sと、それに搭載された搭載部10Eとを備える。基板部10Sと搭載部10Eとで第2領域A2が構成されている。そして、搭載部10Eの搭載領域以外の基板部10Sで第1領域A1及び第3領域A3が構成されている。
【0120】
基板部10S及び搭載部10Eは、複数の樹脂層と、これら複数の樹脂層のうち所定の樹脂層に付された導体層及び層間接続導体と、を備える。導体層及び層間接続導体は例えばCu又はAgを主成分とした導体である。
【0121】
基板部10Sの最上層の樹脂層の開口部には接続導体BMが塗布形成されている。接続導体BMは例えばはんだ等の加熱溶融金属である。接続導体BMの下層には信号ライン用導体パターンSLの端部が配されている。
【0122】
搭載部10Eの上部には放射電極REが形成されている。搭載部10Eの搭載面(下面)には端子電極6が形成されている。そして、この端子電極6と放射電極REとの間は層間接続導体4及び導体層5を介して電気的に接続されている。
【0123】
搭載部10Eの端子電極6は、基板部10Sに形成されている信号ライン用導体パターンSLの一方の端部に電気的に接続される。また、端子電極TEと信号ライン用導体パターンSLの他方端とは、導体層5及び層間接続導体4により積層方向に接続されている。
【0124】
このように、基板部10Sと、搭載部10Eとで樹脂積層体を構成してもよい。その他の構成は、例えば第1の実施形態等、これまでに示した実施形態と同様である。
【0125】
樹脂積層体は第1領域A1、第2領域A2及び第3領域A3の全体が同種の樹脂材で形成されていてもよいし、第2領域A2において、第1領域A1及び第3領域A3を構成する樹脂基板上に異種基板を接合することによって第2領域A2を形成してもよい。すなわち、基板部10Sの樹脂部と、搭載部10Eの樹脂部とは異種の樹脂材で構成されていてもよい。ただし、基板部10Sの樹脂部と、搭載部10Eの樹脂部と、が同種の樹脂材で構成されていれば、異種材料界面を形成しないことから高い接合強度を得られる。同種の樹脂材であるか否かはフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)で確認できる。すなわち、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)でスペクトルを求め、搭載部10Eと基板部10Sとについて上記スペクトルのピークが同一であれば、同種の樹脂材であることが確認できる。
【0126】
なお、熱可塑性樹脂であれば、同種の樹脂材は融点の差が小さい。基板部10Sの樹脂部と、搭載部10Eの樹脂部と、が同種の樹脂材であるか否かは、示差走査熱量測定(DSC)の吸熱ピークで確認できる。具体的には、リガク製DSC8230を用い、10℃/分の昇温速度で昇温し、溶融させたものを降温後、再度10℃/分で昇温させたときの2つ樹脂材の融点の差が5℃以内のものを同種の樹脂材とみなすことができる。
【0127】
《第14の実施形態》
第14の実施形態では、電子部品が実装された樹脂多層基板及び他基板を備える電子機器について例示する。
【0128】
図21は第14の実施形態に係る樹脂多層基板114及び電子機器414の断面図である。
【0129】
樹脂積層体10の第1領域A1には電子部品24が実装されている。電子部品24にはハッチングの図示を省略している。
【0130】
電子機器414は、他基板27と、それに実装された樹脂多層基板114と、を備える。他基板27にはハッチングの図示を省略している。
【0131】
樹脂多層基板114の構成は第1の実施形態において図1に示した樹脂多層基板101Aと同様である。
【0132】
《第15の実施形態》
第15の実施形態では、筐体を備える電子機器について例示する。
【0133】
本実施形態に係る電子機器は、第1の実施形態から第13の実施形態に示したいずれかの樹脂多層基板と、当該樹脂多層基板を収容する筐体とを備える。
【0134】
樹脂多層基板を収容する筐体は、この樹脂多層基板の収容(内蔵)可能な大きさ及び形状である。
【0135】
《密着力の測定方法》
密着力の測定方法としては一般的には、引張強度試験機を用いた引張試験により測定を行うが、製造後の樹脂多層基板の状態で、各部の密着力を測定するためには、表面から界面にかけて鋭利な切刃を用いて超低速で切削及び剥離する際の切刃にかかる水平力と垂直力及び垂直変位を測定することで求められる。例えばダイプラ・ウィンテス社製SAICASと呼ばれる装置を用いて測定する。
【0136】
ここで、先ず、各実施形態で示した、第1樹脂材R1と樹脂積層体10との密着力(密着強度)AD1の測定方法について例示する。
【0137】
図22の上部は樹脂多層基板に形成されている、第1樹脂材R1と樹脂積層体10との密着力を測定するための切刃の位置及び運動方向を示す図である。図22の下部は切刃の詳細な運動について示す拡大図である。
【0138】
図22の上部に示すように、第1樹脂材R1の表面から樹脂積層体10の界面にかけて鋭利な切刃を運動させ、第1樹脂材R1を超低速で切削し、樹脂積層体10から剥離させる。
【0139】
図22の下部に示す図において、先ず、切刃を-Z方向へFvの力、及び+X方向へFhの力を掛けつつ2軸方向へ移動させることにより、第1樹脂材R1を斜めに切り進む。第1樹脂材R1がある厚さに達したとき、せん断が生じる。その後、第1樹脂材R1が樹脂積層体10から剥離する。以降は+X方向の1軸方向へ移動させる。このような切刃の運動を行ったとき、切刃に掛かる+X方向の力Fhのピークが、第1樹脂材R1と樹脂積層体10との密着力として扱うことができる。
【0140】
第2樹脂材R2と樹脂積層体10との密着力(密着強度)AD2の測定方法の例は次のとおりである。
【0141】
図23の左部は樹脂多層基板の切断位置を示す図であり、その破線部で切断することにより、図23の右部状態とする。この状態で第2樹脂材R2の厚みは図22に示した第1樹脂材R1と同じ厚みとする。
【0142】
図23の右部に示す図において、切刃を-Z方向へ移動させることにより、第2樹脂材R2を切り進む。第2樹脂材R2に掛かる力がある値に達したとき、第2樹脂材R2にせん断が生じる。その後、第2樹脂材R2が樹脂積層体10から剥離する。このような切刃の運動を行ったとき、切刃に掛かる-Z方向の力のピークが、第2樹脂材R2と樹脂積層体10との密着力として扱うことができる。
【0143】
《ヤング率の測定方法》
第1樹脂材R1のヤング率の測定方法について例示する。ヤング率の測定方法としては、JIS Z 2255,ISO 14577の規格でナノインデンター試験を行う。例えばKLA社製Microナノインデンター装置を用いて荷重-変位データから求められる。
【0144】
図24の上部は第1樹脂材R1のヤング率の測定状態での断面図である。圧子としてビッカース形又はバーコビッチ型三角錐圧子を用いる。この圧子を第1樹脂材R1の表面に対して垂直に当て、膜厚の1/10程度の押し込み深さで測定する。例えば、膜厚10μmであれば1μm程度である。
【0145】
図24の下部は第2樹脂材R2のヤング率の測定状態での断面図である。この形状は、図24の上部に示した樹脂多層基板を破線で切断した状態である。圧子としてビッカース形又はバーコビッチ型三角錐圧子を用いる。この圧子を第2樹脂材R2の表面に対して垂直に当て、膜厚の1/10程度の押し込み深さで測定する。例えば、膜厚10μmであれば1μm程度である。
【0146】
ここまで、本発明に係る種々の実施形態を提示したが、これらはすべて例であって、これら提示は本発明の範囲を限定することを意図していない。本発明に係る実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該種々の省略、置き換え、変更を行った実施形態は、本発明の範囲や本発明の要旨に含まれると共に、本願の特許請求の範囲に記載された発明及びその均等の範囲内に含まれる。
【0147】
例えば、各実施形態では、樹脂積層体10の第2領域A2に放射電極を形成した例を示したが、第2領域A2に形成する電極は放射電極に限らない。
【0148】
また、各実施形態では、第1領域A1や第2領域A2に層間接続導体を形成した例を示したが、これら層間接続導体は必須ではない。
【0149】
また、各実施形態では、信号ライン用導体パターンSL及びグランド導体層GLを形成して、マイクロストリップ線路やトリプレート型のストリップ線路を構成したが、このような伝送線路部を備えるものに限らない。
【0150】
本発明の樹脂多層基板及び電子機器は次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0151】
<1>
導体パターンが形成された樹脂層を含む複数の樹脂層の積層による樹脂積層体を備え、
前記樹脂積層体は、層方向領域として第1領域、第2領域、及び前記第1領域と前記第2領域との間の領域である第3領域を有し、
前記樹脂積層体の前記第1領域の平均厚みをT1で表し、前記樹脂積層体の前記第2領域の平均厚みをT2で表し、前記樹脂積層体の前記第3領域の平均厚みをT3で表すとき、それら厚みはT3<T1<T2の関係にあり、
前記第1領域の表面から前記第3領域にかけて覆う第1樹脂材(保護膜)と、
前記第3領域内に形成された第2樹脂材(補強材)と、
を備え、
前記第2樹脂材は、前記第1樹脂材の一部を被覆し、前記第3領域に存在する前記第1樹脂材の端部を被覆し、
前記第1樹脂材のヤング率をE1、前記第2樹脂材のヤング率をE2で表すとき、E1<E2の関係にあり、
前記第1樹脂材と前記樹脂積層体との密着力をAD1、前記第2樹脂材と前記樹脂積層体との密着力をAD2で表すとき、AD2≧AD1の関係にある、
樹脂多層基板。
【0152】
<2>
前記第2樹脂材は、前記第1樹脂材の端部から前記第1領域にかけて前記第1樹脂材を被覆する、
<1>に記載の樹脂多層基板。
【0153】
<3>
前記第3領域は、前記樹脂積層体の厚みが複数段階に分かれた領域であり、
前記第2樹脂材は、前記第3領域の所定段に位置する前記第1樹脂材の端部から、前記第3領域のうち前記所定段より一段以上上部にかけて、又は前記第1樹脂材の端部から前記第1領域にかけて、前記第1樹脂材を被覆している、
<1>又は<2>に記載の樹脂多層基板。
【0154】
<4>
前記第2樹脂材は、前記第1領域の厚みよりも高い位置まで前記第2領域の側面部を被覆する、
<1>から<3>のいずれかに記載の樹脂多層基板。
【0155】
<5>
前記第2樹脂材と前記第2領域の側面のとの密着力は前記第2樹脂材と前記第3領域の上面との密着力より大きい、
<4>に記載の樹脂多層基板。
【0156】
<6>
前記第2樹脂材は前記第2領域の側面部に達する前記導体パターンを被覆している、
<4>又は<5>に記載の樹脂多層基板。
【0157】
<7>
前記第2領域の上面を被覆する第3樹脂材を備え、
前記第3樹脂材の端部と前記第2樹脂材とは、互いに非接触の位置関係にそれぞれ配置されている、
<1>から<6>のいずれかに記載の樹脂多層基板。
【0158】
<8>
前記第2領域の側面に形成された第3樹脂材を備え、
前記第2樹脂材は、前記第2領域の側面において、前記第3樹脂材の端部を被覆している、
<1>から<6>のいずれかに記載の樹脂多層基板。
【0159】
<9>
前記第2領域の上面を被覆する第3樹脂材を備え、
前記第2樹脂材は、前記第2領域の上面において、前記第3樹脂材の端部を被覆している、
<1>から<6>のいずれかに記載の樹脂多層基板。
【0160】
<10>
<1>から<9>のいずれかに記載の樹脂多層基板と、当該樹脂多層基板に実装された電子部品とを備える、又は前記樹脂多層基板を実装する他基板を備える、電子機器。
【0161】
<11>
<1>から<9>のいずれかに記載の樹脂多層基板と、当該樹脂多層基板を内蔵する筐体とを備える電子機器。
【符号の説明】
【0162】
A1…第1領域
A2…第2領域
A3…第3領域
A31,A32…第3領域
A4…第4領域
BM…接続導体
GL…グランド導体層
R1…第1樹脂材
R2…第2樹脂材
R3…第3樹脂材
RE,RE1,RE2…放射電極
RP…根元部
SL…信号ライン用導体パターン
SS…側面
TE…端子電極
V1,V2…層間接続導体
4…層間接続導体
5…導体層
6…端子電極
10…樹脂積層体
10E…搭載部
10S…基板部
24…電子部品
27…他基板
101A,101B,102,103A,103B,104A,104B,104C,105,106A,106B,106C,107,108,109,110,111,112,113,114…樹脂多層基板
414…電子機器
図1
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