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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139729
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】基板接合装置および基板接合方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20250919BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038719
(22)【出願日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光治
(72)【発明者】
【氏名】清水 英樹
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA37
5F131BA60
5F131CA09
5F131CA12
5F131DA33
5F131DA42
5F131DB72
5F131EA07
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA24
5F131EB02
5F131EB34
5F131EB37
5F131EB55
5F131EB57
5F131EB63
5F131EB72
5F131FA17
5F131FA32
5F131FA33
5F131FA37
5F131KA22
(57)【要約】
【課題】第1基板および第2基板の界面にボイドが発生する可能性を低下させることができる基板接合装置を提供する。
【解決手段】基板接合装置は、第1チャック10の第1外側部12と第2チャック20の第2外側部22との間の隙間を塞ぐことにより、第1チャック10および第2チャック20に保持されている第1基板W1および第2基板W2の間の空間である境界空間BSを密閉するシールリング30と、境界空間BSが密閉状態のときに第1基板W1および第2基板W2の間の気体を吸引することにより、第1基板W1の外周部が第1固定部11に固定されたまま第1基板W1の内側部が第2基板W2に近づくように第1基板W1を変形させて、第1基板W1および第2基板W2が互いに接触した接触領域CRの面積を増加させる吸引ポンプ31pとを備える。
【選択図】図11A-D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の第1基板の内側部が前記内側部を取り囲む前記第1基板の外周部に対して対向方向に移動できるように前記第1基板の前記外周部を固定する第1固定部と、前記対向方向に見ると前記第1基板および第1固定部を取り囲んだ環状の第1外側部と、を含む第1チャックと、
円板状の第2基板が前記第1チャックに保持されている前記第1基板と前記対向方向に向かい合うように前記第2基板を固定する第2固定部と、前記対向方向に見ると前記第2基板および第2固定部を取り囲んでおり、前記第1外側部と前記対向方向に向かい合う環状の第2外側部と、を含む第2チャックと、
前記第1チャックの前記第1外側部と前記第2チャックの前記第2外側部との間の隙間を塞ぐことにより、前記第1チャックおよび第2チャックに保持されている前記第1基板および第2基板の間の空間である境界空間を密閉するシールリングと、
前記境界空間が、前記シールリングが前記第1チャックの前記第1外側部と前記第2チャックの前記第2外側部との両方に接しており、流体が前記隙間を通じて前記境界空間に出入りできない密閉状態のときに前記第1基板および第2基板の間の気体を吸引することにより、前記第1基板の前記外周部が前記第1固定部に固定されたまま前記第1基板の前記内側部が前記第2基板に近づくように前記第1基板を変形させて、前記第1基板および第2基板が互いに接触した接触領域の面積を増加させる吸引ポンプと、を備える、基板接合装置。
【請求項2】
前記第1基板の前記内側部が前記第2基板に接触しており、前記境界空間が前記密閉状態であり、前記吸引ポンプが前記境界空間の気圧を低下させているときに、前記第1チャックの前記第1固定部に対する前記第1基板の前記外周部の固定を停止する制御装置をさらに備える、請求項1に記載の基板接合装置。
【請求項3】
前記第2チャックの前記第2固定部は、前記第2基板の内側部が前記内側部を取り囲む前記第2基板の外周部に対して前記対向方向に移動できるように前記第2基板の前記外周部を固定する、請求項1または2に記載の基板接合装置。
【請求項4】
前記対向方向への前記第1チャックおよび第2チャックの間隔を変更することにより、前記密閉状態と、前記シールリングが前記第1チャックの前記第1外側部と前記第2チャックの前記第2外側部との一方だけに接触しており、流体が前記第1チャックの前記第1外側部と前記第2チャックの前記第2外側部との間の前記隙間を通じて前記境界空間に出入りできる開放状態と、の間で前記境界空間を切り替える間隔変更アクチュエータと、
前記第1チャックおよび第2チャックに保持されている前記第1基板および第2基板が接触しておらず、前記境界空間が前記開放状態または密閉状態であるときに、前記第1基板の前記内側部を前記第2基板の方に押すことにより、前記第1基板の前記外周部が前記第1固定部に固定されたまま前記第1基板の前記内側部が前記第2基板に近づくように前記第1基板を変形させて、前記第1基板および第2基板の接合を開始するプッシャーと、をさらに備える、請求項1または2に記載の基板接合装置。
【請求項5】
前記間隔変更アクチュエータは、前記プッシャーが前記第1基板の前記内側部を前記第2基板に接触させているときに、前記第1チャックを前記第2チャックの方に前記対向方向に移動させることにより、前記境界空間を前記開放状態から前記密閉状態に切り替える、請求項4に記載の基板接合装置。
【請求項6】
前記吸引ポンプは、前記第1チャックおよび第2チャックに保持されている前記第1基板および第2基板が接触しておらず、前記境界空間が前記密閉状態のときに前記第1基板および第2基板の間の気体を吸引することにより、前記第1基板の前記外周部が前記第1固定部に固定されたまま前記第1基板の前記内側部が前記第2基板に近づくように前記第1基板を変形させて、前記第1基板および第2基板の接合を開始する、請求項1または2に記載の基板接合装置。
【請求項7】
前記境界空間が前記密閉状態であり、前記吸引ポンプが前記境界空間の気圧を低下させているときに、前記境界空間の気圧の設定値を前記第1基板および第2基板が配置された空間の気圧よりも低い一定の値に維持する制御装置をさらに備える、請求項1または2に記載の基板接合装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記境界空間が前記密閉状態であり、前記吸引ポンプが前記境界空間の気圧を低下させているときに、前記境界空間の気圧の前記設定値を前記第1基板および第2基板が配置された前記空間の気圧よりも低い一定の第1の値に維持した後に、前記第1の値よりも低い一定の第2の値に維持する、請求項7に記載の基板接合装置。
【請求項9】
円板状の第1基板の内側部が前記内側部を取り囲む前記第1基板の外周部に対して対向方向に移動できるように前記第1基板の前記外周部を固定する第1固定部と、前記対向方向に見ると前記第1基板および第1固定部を取り囲んだ環状の第1外側部と、を含む第1チャックによって前記第1基板を保持する第1準備工程と、
円板状の第2基板が前記第1チャックに保持されている前記第1基板と前記対向方向に向かい合うように前記第2基板を固定する第2固定部と、前記対向方向に見ると前記第2基板および第2固定部を取り囲んでおり、前記第1外側部と前記対向方向に向かい合う環状の第2外側部と、を含む第2チャックによって前記第2基板を保持する第2準備工程と、
前記第1チャックの前記第1外側部と前記第2チャックの前記第2外側部との間の隙間をシールリングによって塞ぐことにより、前記第1チャックおよび第2チャックに保持されている前記第1基板および第2基板の間の空間である境界空間を密閉するシール工程と、
前記境界空間が、前記シールリングが前記第1チャックの前記第1外側部と前記第2チャックの前記第2外側部との両方に接しており、流体が前記隙間を通じて前記境界空間に出入りできない密閉状態のときに前記第1基板および第2基板の間の気体を吸引ポンプに吸引させることにより、前記第1基板の前記外周部が前記第1固定部に固定されたまま前記第1基板の前記内側部が前記第2基板に近づくように前記第1基板を変形させて、前記第1基板および第2基板が互いに接触した接触領域の面積を増加させる減圧工程と、を含む、基板接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の基板を接合する基板接合装置および基板接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、第1ホルダと第2ホルダと第1気体供給部とを備える貼合装置を開示している。第1気体供給部は、第1基板と第2基板との貼合位置に向かって気体を供給する複数の第1気体供給口を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-136342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の貼合装置では、第1基板および第2基板の間に気体を供給しながら第1基板および第2基板を貼り合わせる。したがって、第1基板および第2基板の間に気体が残ることがある。残留した気体は、第1基板および第2基板の界面にボイド(空洞)を発生させる原因となり得る。
【0005】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、第1基板および第2基板の界面にボイドが発生する可能性を低下させることができる基板接合装置および基板接合方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、円板状の第1基板の内側部が前記内側部を取り囲む前記第1基板の外周部に対して対向方向に移動できるように前記第1基板の前記外周部を固定する第1固定部と、前記対向方向に見ると前記第1基板および第1固定部を取り囲んだ環状の第1外側部と、を含む第1チャックと、円板状の第2基板が前記第1チャックに保持されている前記第1基板と前記対向方向に向かい合うように前記第2基板を固定する第2固定部と、前記対向方向に見ると前記第2基板および第2固定部を取り囲んでおり、前記第1外側部と前記対向方向に向かい合う環状の第2外側部と、を含む第2チャックと、前記第1チャックの前記第1外側部と前記第2チャックの前記第2外側部との間の隙間を塞ぐことにより、前記第1チャックおよび第2チャックに保持されている前記第1基板および第2基板の間の空間である境界空間を密閉するシールリングと、前記境界空間が、前記シールリングが前記第1チャックの前記第1外側部と前記第2チャックの前記第2外側部との両方に接しており、流体が前記隙間を通じて前記境界空間に出入りできない密閉状態のときに前記第1基板および第2基板の間の気体を吸引することにより、前記第1基板の前記外周部が前記第1固定部に固定されたまま前記第1基板の前記内側部が前記第2基板に近づくように前記第1基板を変形させて、前記第1基板および第2基板が互いに接触した接触領域の面積を増加させる吸引ポンプと、を備える、基板接合装置を提供する。
【0007】
前記実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを前記基板接合装置に加えてもよい。
【0008】
前記基板接合装置は、前記第1基板の前記内側部が前記第2基板に接触しており、前記境界空間が前記密閉状態であり、前記吸引ポンプが前記境界空間の気圧を低下させているときに、前記第1チャックの前記第1固定部に対する前記第1基板の前記外周部の固定を停止する制御装置をさらに備える。
【0009】
前記第2チャックの前記第2固定部は、前記第2基板の内側部が前記内側部を取り囲む前記第2基板の外周部に対して前記対向方向に移動できるように前記第2基板の前記外周部を固定する。
【0010】
前記基板接合装置は、前記対向方向への前記第1チャックおよび第2チャックの間隔を変更することにより、前記密閉状態と、前記シールリングが前記第1チャックの前記第1外側部と前記第2チャックの前記第2外側部との一方だけに接触しており、流体が前記第1チャックの前記第1外側部と前記第2チャックの前記第2外側部との間の前記隙間を通じて前記境界空間に出入りできる開放状態と、の間で前記境界空間を切り替える間隔変更アクチュエータと、前記第1チャックおよび第2チャックに保持されている前記第1基板および第2基板が接触しておらず、前記境界空間が前記開放状態または密閉状態であるときに、前記第1基板の前記内側部を前記第2基板の方に押すことにより、前記第1基板の前記外周部が前記第1固定部に固定されたまま前記第1基板の前記内側部が前記第2基板に近づくように前記第1基板を変形させて、前記第1基板および第2基板の接合を開始するプッシャーと、をさらに備える。
【0011】
前記間隔変更アクチュエータは、前記プッシャーが前記第1基板の前記内側部を前記第2基板に接触させているときに、前記第1チャックを前記第2チャックの方に前記対向方向に移動させることにより、前記境界空間を前記開放状態から前記密閉状態に切り替える。
【0012】
前記吸引ポンプは、前記第1チャックおよび第2チャックに保持されている前記第1基板および第2基板が接触しておらず、前記境界空間が前記密閉状態のときに前記第1基板および第2基板の間の気体を吸引することにより、前記第1基板の前記外周部が前記第1固定部に固定されたまま前記第1基板の前記内側部が前記第2基板に近づくように前記第1基板を変形させて、前記第1基板および第2基板の接合を開始する。
【0013】
前記基板接合装置は、前記境界空間が前記密閉状態であり、前記吸引ポンプが前記境界空間の気圧を低下させているときに、前記境界空間の気圧の設定値を前記第1基板および第2基板が配置された空間の気圧よりも低い一定の値に維持する制御装置をさらに備える。
【0014】
前記制御装置は、前記境界空間が前記密閉状態であり、前記吸引ポンプが前記境界空間の気圧を低下させているときに、前記境界空間の気圧の前記設定値を前記第1基板および第2基板が配置された前記空間の気圧よりも低い一定の第1の値に維持した後に、前記第1の値よりも低い一定の第2の値に維持する。
【0015】
本発明の他の実施形態は、円板状の第1基板の内側部が前記内側部を取り囲む前記第1基板の外周部に対して対向方向に移動できるように前記第1基板の前記外周部を固定する第1固定部と、前記対向方向に見ると前記第1基板および第1固定部を取り囲んだ環状の第1外側部と、を含む第1チャックによって前記第1基板を保持する第1準備工程と、円板状の第2基板が前記第1チャックに保持されている前記第1基板と前記対向方向に向かい合うように前記第2基板を固定する第2固定部と、前記対向方向に見ると前記第2基板および第2固定部を取り囲んでおり、前記第1外側部と前記対向方向に向かい合う環状の第2外側部と、を含む第2チャックによって前記第2基板を保持する第2準備工程と、前記第1チャックの前記第1外側部と前記第2チャックの前記第2外側部との間の隙間をシールリングによって塞ぐことにより、前記第1チャックおよび第2チャックに保持されている前記第1基板および第2基板の間の空間である境界空間を密閉するシール工程と、前記境界空間が、前記シールリングが前記第1チャックの前記第1外側部と前記第2チャックの前記第2外側部との両方に接しており、流体が前記隙間を通じて前記境界空間に出入りできない密閉状態のときに前記第1基板および第2基板の間の気体を吸引ポンプに吸引させることにより、前記第1基板の前記外周部が前記第1固定部に固定されたまま前記第1基板の前記内側部が前記第2基板に近づくように前記第1基板を変形させて、前記第1基板および第2基板が互いに接触した接触領域の面積を増加させる減圧工程と、を含む、基板接合方法を提供する。基板接合装置に関する前述の特徴の少なくとも1つを前記基板接合方法に加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】接合される前後の2枚の基板の外観の一例を示す概略図である。
図1B】接合される前後の2枚の基板の断面の一例を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る基板接合方法について説明するための工程図である。
図3】本発明の一実施形態に係る基板接合装置の概略平面図である。
図4】接合ユニットの内部を水平に見た概略図である。
図5】第1チャックの鉛直な断面を示す概略図である。
図6】第1チャックを上から見た概略図である。
図7】第2チャックの鉛直な断面を示す概略図である。
図8】第2チャックを上から見た概略図である。
図9A-C】第1基板および第2基板を接合ユニットに搬入してから搬出するまでの流れの一例について説明するための概略図である。
図9D-E】第1基板および第2基板を接合ユニットに搬入してから搬出するまでの流れの一例について説明するための概略図である。
図9F-G】第1基板および第2基板を接合ユニットに搬入してから搬出するまでの流れの一例について説明するための概略図である。
図10A-D】第1基板および第2基板を接合する第1の例について説明するための概略図である。
図10E-G】第1基板および第2基板を接合する第1の例について説明するための概略図である。
図11A-D】第1基板および第2基板を接合する第2の例について説明するための概略図である。
図12】境界空間の気圧の設定値と経過時間との関係の一例を示すグラフである。
図13】第1チャックおよび第2チャックの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1Aは、接合される前後の2枚の基板Wの外観の一例を示す概略図である。図1Bは、接合される前後の2枚の基板Wの断面の一例を示す概略図である。2枚の基板Wを区別する場合、第1基板W1および第2基板W2という。貼り合わせは、接合と同義である。
【0019】
図1Aに示すように、第1基板W1および第2基板W2は、直径が互いに等しい平らな円板である。第1基板W1および第2基板W2の直径は、300mmであってもよいし、これ以外であってもよい。第1基板W1は円板状の基材WD1を含み、第2基板W2は円板状の基材WD2を含む。基材WD1および基材WD2は、シリコンの単結晶などの半導体で作られている。基材WD1および基材WD2は、半導体以外の物質で作られていてもよい。
【0020】
基材WD1および基材WD2は、いずれも、互いに平行な円形の表面および裏面と、表面および裏面の外縁同士を接続する環状の端面とを含む。基材WD1の表面および裏面は、互いに平行な2つの平坦面である。基材WD2の表面および裏面も同様である。基材WD1および基材WD2の表面は、トランジスタなどのデバイスが形成されるデバイス形成面である。基材WD1および基材WD2の裏面は、デバイスが形成されない非デバイス形成面である。基材WD1または基材WD2の表面および裏面の両方がデバイス形成面であってもよい。
【0021】
基材WD1の外周部は、基材WD1の表面に対して垂直な方向に基材WD1を見たときに基材WD1の端面で開口したV字状のノッチを形成している。基材WD1の外周部は、ノッチではなく、オリエンテーション・フラット(いわゆるオリフラ)を形成していてもよい。ノッチおよびオリフラは、基材WD1または基材WD2の結晶方位を示すものである。第1基板W1は、第1基板W1のノッチまたはオリフラを基準にして第1基板W1の周方向に位置決めされる。第2基板W2についても同様である。
【0022】
図1Bに示すように、第1基板W1は、基材WD1の表面を覆うデバイス層WC1と、デバイス層WC1の表面を覆う接合層WB1とを含む。第2基板W2は、基材WD2の表面を覆うデバイス層WC2と、デバイス層WC2の表面を覆う接合層WB2とを含む。トランジスタなどのデバイスは、デバイス層WC1およびデバイス層WC2に配置されている。デバイスは、接合層WB1および接合層WB2に覆われている。
【0023】
第1基板W1の接合層WB1は、透明または半透明な絶縁層であってもよい。第2基板W2の接合層WB2も同様である。接合層WB1および接合層WB2は、酸化シリコン膜であってもよいし、酸化シリコン以外の物質の薄膜であってもよい。前者の場合、接合層WB1および接合層WB2は、TEOS(tetraethoxysilane)を用いて作製された酸化シリコン膜であってもよい。接合層WB1は、単一の材料で作られていてもよいし、複数の材料で作られていてもよい。後者の場合、金属と絶縁材料とが接合層WB1の表面で露出していてもよい。接合層WB2についても同様である。
【0024】
第1基板W1の接合層WB1の表面は、第1基板W1の接合面WA1である。デバイス層WC1とは反対側の第1基板W1の基材WD1の表面は、第1基板W1の非接合面WE1である。第1基板W1の接合面WA1および非接合面WE1は、第1基板W1が配置された空間の雰囲気に接する互いに平行な2つの平面である。第2基板W2の接合層WB2の表面は、第2基板W2の接合面WA2である。デバイス層WC2とは反対側の第2基板W2の基材WD2の表面は、第2基板W2の非接合面WE2である。第2基板W2の接合面WA2および非接合面WE2は、第2基板W2が配置された空間の雰囲気に接する互いに平行な2つの平面である。第1基板W1および第2基板W2は、第1基板W1の接合面WA1と第2基板W2の接合面WA2とが向かい合うように接合される。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係る基板接合方法について説明するための工程図である。第1基板W1および第2基板W2を接合するときは、第1基板W1の接合面WA1および第2基板W2の接合面WA2を活性化させる活性化工程(図2のステップS1)を行い、活性化した2枚の基板Wを洗浄し乾燥させる洗浄工程(図2のステップS2)を行う。その後、第1基板W1および第2基板W2の一方を反転させる反転工程(図2のステップS3)を行う。
【0026】
第1基板W1および第2基板W2の一方を反転させた後は、第1基板W1および第2基板W2の相対的な位置および角度を表すアライメントを確認するアライメント確認工程(図2のステップS4)と、確認されたアライメントに基づいて第1基板W1および第2基板W2のアライメントを調整するアライメント調整工程(図2のステップS5)と、アライメントが調整された第1基板W1および第2基板W2を接触させることにより第1基板W1および第2基板W2を接合する基板接触工程(図2のステップS6)と、を行う。
【0027】
活性化工程は、酸素プラズマなどのプラズマを第1基板W1の接合面WA1および第2基板W2の接合面WA2に照射するプラズマ処理であってもよい。この場合、空気中の水分や洗浄工程で基板Wに供給される水分が、プラズマが照射された第1基板W1の接合面WA1および第2基板W2の接合面WA2に接触し、水酸基(OH基)などの親水基が第1基板W1の接合面WA1および第2基板W2の接合面WA2に形成される。プラズマ処理は、基板Wの表面を改質する表面改質の一例である。活性化工程は、親水基を形成する親水化液を第1基板W1の接合面WA1および第2基板W2の接合面WA2に供給するウェット処理であってもよい。
【0028】
基板接触工程は、室温(例えば20~30℃)の大気中で2枚の基板Wを直接接合する工程であってもよい。基板接触工程は、2枚の基板Wの表面同士が向かい合うようにこれらの基板Wを接合するフェイストゥフェイス接合を行う工程であってもよい。この場合、2枚の基板Wの表面が第1基板W1の接合面WA1および第2基板W2の接合面WA2に相当する。基板接触工程は、2枚の基板Wの一方を2枚の基板Wの他方に押し付けずに、もしくは、2枚の基板Wに形成されたデバイスが損傷しない圧力で2枚の基板Wの一方を2枚の基板Wの他方に押し付けることにより2枚の基板Wを接合する工程であってもよい。
【0029】
図1Bは、第1基板W1および第2基板W2に直交する平面で第1基板W1および第2基板W2を切断した断面を示している。図1Bに示すデバイス層WC1およびデバイス層WC2の厚みと接合層WB1および接合層WB2との厚みとの比率は、実際の比率と同一とは限らない。図1Bは、親水基の一例である水酸基が、接合される前の第1基板W1の接合面WA1および第2基板W2の接合面WA2に形成された例を示している。この例では、水酸基中の酸素原子(O)が接合層WB1および接合層WB2中のケイ素原子(Si)に結合されている。
【0030】
接合される前の第1基板W1の接合面WA1および第2基板W2の接合面WA2は、複数の水酸基で終端化されている。第1基板W1の接合面WA1および第2基板W2の接合面WA2を接触させると、2つの水酸基間に働く分子間力により、第1基板W1および第2基板W2が接合される。場合によって、2つの水酸基から水分子が離脱し、第1基板W1の接合層WB1中のケイ素原子と第2基板W2の接合層WB2中のケイ素原子とが酸素原子を介して結合される。このようにして、第1基板W1および第2基板W2が接合される。
【0031】
次に、前述のように2枚の基板Wを接合する基板接合装置1について説明する。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態に係る基板接合装置1の概略平面図である。以下の説明における上下方向、左右方向、前後方向は、特に断りがない限り、基板接合装置1の上下方向、左右方向、前後方向を意味する。上下方向は鉛直方向である。左右方向および前後方向は、互いに直交する2つの水平方向である。複数のロードポートLPに保持されている複数のキャリアCAの配列方向が左右方向である。各キャリアCAは、キャリアCAの開口部が後方に向けられた状態でロードポートLPに保持される。
【0033】
基板接合装置1は、半導体ウエハなどの円板状の2枚の基板Wを接合する装置である。基板接合装置1は、FOUP(Front-Opening Unified Pod)などの複数枚の基板Wを収容するキャリアCAが1つずつ置かれる複数のロードポートLPと、複数のロードポートLPから搬送された基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、複数のロードポートLPと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送システムTSと、複数の処理ユニット2および搬送システムTSを収容した密閉空間を形成する外壁1aとを備えている。基板接合装置1は、さらに、基板接合装置1を制御する制御装置3を備えている。
【0034】
図3は、3つのロードポートLPが設けられた例を示している。3つのロードポートLPは、第1基板W1を収容したキャリアCAが置かれる第1ロードポートLP1と、第2基板W2を収容したキャリアCAが置かれる第2ロードポートLP2と、接合された第1基板W1および第2基板W2を収容するキャリアCAが置かれる第3ロードポートLP3とを含む。第1ロードポートLP1および第2ロードポートLP2は、基板接合装置1で接合すべき基板Wを収容したキャリアCAが置かれる搬入ポートである。第3ロードポートLP3は、基板接合装置1で接合された2枚の基板Wを収容したキャリアCAが置かれる搬出ポートである。
【0035】
複数の処理ユニット2は、活性化前アライナー2aと、活性化ユニット2bと、接合前洗浄ユニット2cと、接合前アライナー2dと、接合ユニット2eとを含む。図3は、活性化前アライナー2aと活性化ユニット2bと接合前洗浄ユニット2cと接合前アライナー2dとが2つずつ設けられた例を示している。特に断りが無い限り、本明細書に記載の接合ユニット2eは、大気圧下において基板Wの接合を行うものである。
【0036】
活性化前アライナー2aは、ノッチまたはオリフラを基準にして基板Wの周方向への基板Wの位置決めを行うユニットである。接合前アライナー2dも同様である。活性化ユニット2bは、基板Wの表面または裏面にプラズマを接触させることにより、基板Wの表面または裏面を活性化させるプラズマ処理を行うユニットである。接合前洗浄ユニット2cは、基板Wに洗浄液を供給することにより、基板Wを洗浄するユニットである。接合ユニット2eは、2枚の基板Wを接触させることにより、当該2枚の基板Wを接合するユニットである。
【0037】
搬送システムTSは、第1ロードポートLP1および第2ロードポートLP2から複数の処理ユニット2に基板Wを搬送し、複数の処理ユニット2から第3ロードポートLP3に基板Wを搬送する。搬送システムTSは、さらに、複数の処理ユニット2の間で基板Wを搬送する。搬送システムTSは、図3において太線で示す搬送路TP上で1枚以上の基板Wを水平な姿勢で搬送する少なくとも1つの搬送ロボットTRを備えていてもよい。
【0038】
搬送ロボットTRは、1枚の基板Wを水平な姿勢で保持する少なくとも1つのハンドTHを含む。ハンドTHは、グリップ式、バキューム式、静電式、またはベルヌーイ式のハンドであってもよいし、これら以外のハンドであってもよい。搬送ロボットTRは、ハンドTHで基板Wを水平に保持しながら搬送路TPに沿って移動する。図3は、搬送路TPが、第1ロードポートLP1および第2ロードポートLP2のそれぞれから複数の処理ユニット2に延び、複数の処理ユニット2から第3ロードポートLP3に戻る例を示している。
【0039】
制御装置3は、基板接合装置1に備えられた電気機器および電子機器を制御する。制御装置3は、プログラムの実行などの情報の処理を行うCPU(central processing unit)3aと、CPU3aによって実行すべきプログラム等の情報を記憶するメモリ3bとを含む。制御装置3は、基板接合装置1を制御することにより、以下で説明する基板Wの搬送および処理等を行う。言い換えると、制御装置3は、以下で説明する基板Wの搬送および処理等を行うようにプログラムされている。
【0040】
以下では、接合ユニット2eについて説明する。
【0041】
図4は、接合ユニット2eの内部を水平に見た概略図である。後述するように、第1基板W1および第2基板W2の少なくとも一方は、第1基板W1および第2基板W2の間の気圧に応じて変形する。以下では、特に断りがない限り、第1基板W1および第2基板W2が平坦な状態について説明する。
【0042】
接合ユニット2eは、接合すべき第1基板W1および第2基板W2を収容する筐体4と、筐体4内で第1基板W1を水平に保持する第1チャック10と、筐体4内で第2基板W2を水平に保持する第2チャック20とを含む。図4は、第1チャック10が下に向けられ、第2チャック20が上に向けられた状態を示している。第1チャック10は、第2チャック20の上方に配置されている。
【0043】
筐体4は、第1基板W1および第2基板W2を収容する内部空間6と内部空間6に出入りする第1基板W1および第2基板W2が通過する通過口7とを形成した隔壁5と、通過口7を開閉するドア8とを含む。第1基板W1および第2基板W2が通過口7を通じて筐体4に出し入れされるとき以外は、ドア8が閉じられる。筐体4内の気圧は、大気圧と等しくてもよいし、大気圧よりも高いまたは低くてもよい。
【0044】
第1チャック10は、第1基板W1の接合面WA1に接触せずに第1基板W1を保持するチャックである。第2チャック20は、第2基板W2の接合面WA2に接触せずに第2基板W2を保持するチャックである。第1基板W1は、第1基板W1の中心が第1チャック10の中心線に一致するように第1チャック10に保持される。第2基板W2は、第2基板W2の中心が第2チャック20の中心線に一致するように第2チャック20に保持される。第1チャック10および第2チャック20は、気体の吸引により発生した吸引力で第1基板W1を保持するバキュームチャックまたは電気的な吸引力で第1基板W1を保持する静電チャックである。第1チャック10および第2チャック20は、これら以外のチャックであってもよい。
【0045】
第1チャック10は、第1基板W1の内側部が第1基板W1の外周部に対して上下方向に移動できるように第1基板W1の外周部を固定する第1固定部11と、第1基板W1に対して垂直な方向に見ると第1基板W1を取り囲んだ第1外側部12とを含む。同様に、第2チャック20は、第2基板W2の内側部が第2基板W2の外周部に対して上下方向に移動できるように第2基板W2の外周部を固定する第2固定部21と、第2基板W2に対して垂直な方向に見ると第2基板W2を取り囲んだ第2外側部22とを含む。図4は、第1チャック10の第1固定部11および第1外側部12が下に向けられ、第2チャック20の第2固定部21および第2外側部22が上に向けられた状態を示している。
【0046】
第1基板W1の内側部は、第1基板W1の外周部を除く第1基板W1の全ての部分である。第1基板W1の内側部は、第1基板W1の中央部と第1基板W1の中間部とを含む。第1基板W1の中間部は、第1基板W1の中央部と第1基板W1の外周部との間の円環状の部分である。同様に、第2基板W2の内側部は、第2基板W2の外周部を除く第2基板W2の全ての部分である。第2基板W2の内側部は、第2基板W2の中央部と第2基板W2の中間部とを含む。第2基板W2の中間部は、第2基板W2の中央部と第2基板W2の外周部との間の円環状の部分である。
【0047】
接合ユニット2eは、第1基板W1を第1固定部11に固定する吸着力を発生する第1吸着力発生器13gと、第2基板W2を第2固定部21に固定する吸着力を発生する第2吸着力発生器23gとを含む。第1固定部11は、第1基板W1の非接合面WE1が吸着する吸着面である。第2固定部21は、第2基板W2の非接合面WE2が吸着する吸着面である。制御装置3は、第1吸着力発生器13gを制御することにより、第1チャック10に対する第1基板W1の吸着を開始および停止する。同様に、制御装置3は、第2吸着力発生器23gを制御することにより、第2チャック20に対する第2基板W2の吸着を開始および停止する。
【0048】
第1チャック10がバキュームチャックである場合、第1吸着力発生器13gは、第1固定部11で開口した吸引口に気体を吸引させるポンプ、ポンプから吸引口に伝達される吸引力を変更する圧力制御バルブ、または、第1固定部11で開口した吸引口にベンチュリ効果を利用して気体を吸引させるエジェクタに供給される気体の流量を変更することにより吸引口に加わる吸引力を変更する流量調整バルブであってもよいし、これら以外であってもよい。第1チャック10が静電チャックである場合、第1吸着力発生器13gは、第1チャック10に内蔵された電極に加わる電圧の大きさを変更する電源であってもよいし、これ以外であってもよい。第2吸着力発生器23gについても同様である。
【0049】
接合ユニット2eは、第1チャック10および第2チャック20を相対的に動かす少なくとも1つのアクチュエータ40を含む。アクチュエータは、電気、流体、磁気、熱、または化学エネルギーを表す駆動エネルギーを機械的な仕事、つまり、有体物の運動に変換する装置である。アクチュエータには、電動モータ(ロータリーモータ)、リニアモータ、エアシリンダ、およびその他の装置が含まれる。
【0050】
少なくとも1つのアクチュエータ40は、X方向アクチュエータ40x、Y方向アクチュエータ40y、Z方向アクチュエータ40z、第1自転アクチュエータ40ra、第2自転アクチュエータ40rb、および反転アクチュエータ40iを含む。X方向アクチュエータ40xは、水平なX方向に第2チャック20を平行移動させるアクチュエータである。Y方向アクチュエータ40yは、X方向に対して直交する水平なY方向に第2チャック20を平行移動させるアクチュエータである。Z方向アクチュエータ40zは、鉛直なZ方向に第1チャック10を平行移動させるアクチュエータである。第1自転アクチュエータ40raは、第1チャック10の中心線まわりに第1チャック10を回転させるアクチュエータである。第2自転アクチュエータ40rbは、第2チャック20の中心線まわりに第2チャック20を回転させるアクチュエータである。反転アクチュエータ40iは、水平な直線まわりに第1チャック10を180度回転させるアクチュエータである。
【0051】
図4は、第1チャック10が退避位置に配置されており、下に向けられた状態を示している。Z方向アクチュエータ40zは、退避位置と、待機位置(図9Aに示す位置)と、近接位置(図10Aに示す位置)と、密閉位置(図10Cに示す位置)と、を含む複数の位置で第1チャック10を静止させる。
【0052】
退避位置は、上位置に位置するリフトピン41の上端よりも第1チャック10が上方に配置される位置である。リフトピン41については後述する。待機位置は、上位置に位置するリフトピン41の上端よりも第1チャック10が下方に配置される位置である。近接位置は、第1チャック10に保持されている第1基板W1が変形しなければ第2基板W2に保持されている第2基板W2に接触しない位置である。密閉位置は、第1チャック10および第2チャック20に保持されている第1基板W1および第2基板W2の間の空間である境界空間BSが密閉される位置である。近接位置は、密閉位置の上方の位置である。待機位置は、近接位置の上方の位置である。退避位置は、待機位置の上方の位置である。
【0053】
接合ユニット2eは、第1基板W1および第2基板W2の少なくとも一方を水平に支持する複数のリフトピン41と、複数のリフトピン41を上下に移動させるアクチュエータ41aとを含む。全てのリフトピン41の上端は、同じ高さに配置されている。複数のリフトピン41は、複数のリフトピン41の上端を第1基板W1または第2基板W2の下面に接触させることにより、第1基板W1および第2基板W2の少なくとも一方を水平に支持する。第1チャック10および第2チャック20がリング状である場合、上下方向に見ると、複数のリフトピン41の上端は、第1チャック10および第2チャック20の内側に配置される(図6および図8参照)。
【0054】
アクチュエータ41aは、上位置(図9Aに示す位置)と下位置(図4に示す位置)とを含む複数の位置で複数のリフトピン41を静止させる。上位置は、全てのリフトピン41の上端が待機位置に位置している第1チャック10よりも上方に配置される位置である。下位置は、全てのリフトピン41の上端が、第1チャック10の第1固定部11よりも下方に配置され、第2チャック20の第2固定部21よりも下方に配置される位置である。複数のリフトピン41が上位置に配置されているとき、第2チャック20は、全てのリフトピン41の上端よりも下方に配置される。
【0055】
搬送ロボットTR(図9A参照)は、ハンドTHによって水平に支持されている第1基板W1または第2基板W2を上位置に位置している複数のリフトピン41の上に置く。搬送ロボットTRは、さらに、上位置に位置している複数のリフトピン41によって水平に支持されている第1基板W1および第2基板W2をハンドTHで持ち上げる。アクチュエータ41aは、第1基板W1または第2基板W2を支持している複数のリフトピン41を上位置から下位置に下降させることにより、第1基板W1または第2基板W2を第1チャック10または第2チャック20に置く(図9C参照)。アクチュエータ41aは、さらに、複数のリフトピン41を下位置から上位置に上昇させることにより、第2チャック20に支持されている第1基板W1および第2基板W2を複数のリフトピン41で持ち上げる。
【0056】
接合ユニット2eは、第1チャック10が密閉位置に配置されているときに、第1チャック10の第1外側部12と第2チャック20の第2外側部22との間の隙間を密閉するシールリング30を含む。シールリング30は、第1外側部12および第2外側部22のいずれかに保持されている。図4は、シールリング30が第2外側部22に保持された例を示している。この例では、シールリング30の一部が第2外側部22から凹んだ環状溝内に配置されており、シールリング30の残りの部分が第2外側部22から突出している。
【0057】
シールリング30は、全周にわたって連続している(図8参照)。第1チャック10および第2チャック20に保持されている第1基板W1および第2基板W2に垂直な方向に見ると、シールリング30は、第1基板W1および第2基板W2の全周を取り囲む。シールリング30は、第1基板W1および第2基板W2の直径よりも大きい内径を有する円形のリングである。シールリング30は、ゴムまたは樹脂製のOリングであってもよいし、Oリング以外のシールであってもよい。シールリング30は、四角形などの円形以外のリングであってもよい。シールリング30の長さ方向に対して垂直な平面で切断したシールリング30の断面は、円形であってもよいし、円形以外の形状であってもよい。
【0058】
第1チャック10および第2チャック20が第1基板W1および第2基板W2を保持しており、退避位置などの密閉位置以外の位置に第1チャック10が配置されているとき、シールリング30は、第1チャック10および第2チャック20の一方だけに接している。このとき、流体は、第1チャック10および第2チャック20に保持されている第1基板W1および第2基板W2の間の空間である境界空間BSに第1外側部12と第2外側部22との間の隙間を通じて出入りできる。第1チャック10が密閉位置に配置されると、シールリング30は、第1チャック10および第2チャック20の両方に接触する(図10C参照)。これにより、第1外側部12と第2外側部22との間の隙間がシールリング30によって塞がれ、境界空間BSが密閉される。
【0059】
接合ユニット2eは、第1基板W1および第2基板W2の間の気体を吸引する吸引ポンプ31pを含む。吸引ポンプ31pは、第1チャック10の第1外側部12と第2チャック20の第2外側部22との少なくとも一方で開口した複数の吸引口31を通じて第1基板W1および第2基板W2の間の気体を吸引する。図4は、複数の吸引口31が第1チャック10だけに設けられた例を示している。
【0060】
複数の吸引口31は、直径が第1基板W1および第2基板W2の直径よりも大きく、シールリング30の内径よりも小さい円上に配置されている。したがって、複数の吸引口31は、第1基板W1および第2基板W2の外側に配置されていると共に、シールリング30の内側に配置されている。複数の吸引口31は、第1チャック10または第2チャック20の周方向に配列されている(図6参照)。吸引ポンプ31pの吸引力は、全ての吸引口31に伝達される。
【0061】
境界空間BSが密閉された状態で吸引ポンプ31pが第1基板W1および第2基板W2の間の気体を吸引すると、境界空間BSの気圧が低下し、筐体4内の気圧よりも低い値に維持される。境界空間BSの気圧は、吸引ポンプ31pの設定値に維持される。吸引ポンプ31pから吸引口31に伝達される吸引力を変更する自動圧力制御バルブ31vが設けられる場合、境界空間BSの気圧は、自動圧力制御バルブ31vの設定値に維持される。制御装置3は、吸引ポンプ31pまたは自動圧力制御バルブ31vの設定値を制御することにより、境界空間BSの気圧を上昇または低下させたり、一定に維持したりする。
【0062】
自動圧力制御バルブ31vは、電空レギュレータともいわれる電動式の圧力制御バルブである。図4は、吸引ポンプ31pの吸引力を吸引口31に伝達する吸引管に自動圧力制御バルブ31vが取り付けられた例を示している。制御装置3は、自動圧力制御バルブ31vの設定値を変更すれば、吸引ポンプ31pの設定値を変更しなくても、吸引ポンプ31pの設定値以下の範囲内で境界空間BSの気圧を変更することができる。自動圧力制御バルブ31vは、境界空間BSの気圧を制御装置3によって指定された設定値に維持する。
【0063】
図示はしないが、自動圧力制御バルブ31vは、吸引口31に吸引された気体が通過する環状の弁座と、弁座に対して移動可能な弁体と、弁座に対して弁体を移動させることにより弁座と弁体との間の流路の断面積を変更する電動アクチュエータとを含む。自動圧力制御バルブ31vは、さらに、弁座の上流で(吸引口31側で)気圧を検出する圧力センサと、圧力センサの検出値に基づいて電動アクチュエータに弁体を移動させることにより、圧力センサの検出値を設定値に維持するバルブコントローラとを含む。
【0064】
接合ユニット2eは、第1チャック10および第2チャック20に保持されている第1基板W1および第2基板W2の一方を押すプッシャー42と、プッシャー42を移動させるアクチュエータ42aとを含む。図4は、プッシャー42が第1基板W1の中央部を第2基板W2の中央部の方に押す例を示している。第1基板W1の外周部が第1チャック10の第1外側部12に固定された状態でプッシャー42が第1基板W1の中央部を第2基板W2の中央部の方に押すと、第1基板W1の中央部を含む第1基板W1の内側部が第1基板W1の外周部に対して第2基板W2の方に移動し、第1基板W1が弾性変形する(図10B参照)。第1基板W1の品質に問題がなければ、プッシャー42が第1基板W1を押したとき、第1基板W1の一部が塑性変形してもよい。
【0065】
アクチュエータ42aは、平坦位置(図4に示す位置)と変形位置(図10Bに示す位置)とを含む複数の位置でプッシャー42を静止させる。アクチュエータ42aは、待機位置(図4において二点鎖線で示されたプッシャー42の位置)でプッシャー42を静止させてもよい。
【0066】
変形位置は、プッシャー42が第1チャック10に保持されている第1基板W1を押す位置である。平坦位置は、プッシャー42が第1チャック10に保持されている第1基板W1を押さない位置である。変形位置および平坦位置は、第1チャック10に保持されている第1基板W1に対して垂直な直線上の位置である。待機位置は、第1チャック10に保持されている第1基板W1に垂直な方向に見たときに、プッシャー42が第1チャック10および第1基板W1に重ならない位置である。プッシャー42が平坦位置に配置されているとき、プッシャー42は、第1チャック10に保持されている第1基板W1に接していてもよいし、離れていてもよい。
【0067】
接合ユニット2eは、第1基板W1および第2基板W2の少なくとも一方を撮影する少なくとも1つのカメラ43を含む。少なくとも1つのカメラ43は、受け取った赤外線を電気信号に変換することにより対象物の画像を生成する赤外線カメラ、または、受け取った可視光線を電気信号に変換することにより対象物の画像を生成する可視光カメラであってもよいし、赤外線カメラおよび可視光カメラの両方を含んでいてもよい。少なくとも1つのカメラ43は、互いに離れた状態で向かい合った第1基板W1および第2基板W2を撮影する1つの赤外線カメラであってもよいし、第1基板W1および第2基板W2を別々に撮影する2つの赤外線カメラであってもよい。
【0068】
第1基板W1は、第1基板W1および第2基板W2のアライメントを調整する際の基準となる少なくとも1つのアライメントマークを含む。第2基板W2も同様である。カメラ43が赤外線カメラである場合、第1基板W1および第2基板W2の少なくとも一方に向けて赤外線を照射する赤外線ランプを、第1基板W1および第2基板W2の少なくとも一方に対して赤外線カメラとは反対側に配置してもよい。この場合、赤外線ランプに赤外線を放出させながら、第1基板W1および第2基板W2の少なくとも一方を赤外線カメラで撮影してもよい。
【0069】
制御装置3は、第1チャック10および第2チャック20に保持されている第1基板W1および第2基板W2のずれの大きさおよび方向を少なくとも1つのカメラ43によって生成された1枚以上の画像に基づいて確認するアライメント確認工程を行う。その後、制御装置3は、ずれの大きさおよび方向に基づいて少なくとも1つのアクチュエータ40に第1チャック10および第2チャック20の相対的な位置を変更させることにより第1基板W1および第2基板W2のずれ量を減少させるアライメント調整工程を行う。その後、制御装置3は、第1基板W1および第2基板W2を接触させる基板接触工程を行う。これにより、第1基板W1および第2基板W2が接合される。
【0070】
次に、第1チャック10および第2チャック20について説明する。
【0071】
図5は、第1チャック10の鉛直な断面を示す概略図である。図6は、第1チャック10を上から見た概略図である。図7は、第2チャック20の鉛直な断面を示す概略図である。図8は、第2チャック20を上から見た概略図である。
【0072】
前述のように、第1チャック10は、第1固定部11および第1外側部12を含み、第2チャック20は、第2固定部21および第2外側部22を含む。第1固定部11および第1外側部12は、第1チャック10の表面の一部である。第2固定部21および第2外側部22は、第2チャック20の表面の一部である。第1固定部11の構成は、第2固定部21の構成と同じまたはほぼ同じであり、第1外側部12の構成は、第2外側部22の構成と同じまたはほぼ同じである。したがって、以下では、第1固定部11および第1外側部12について説明し、第2固定部21および第2外側部22についての説明を省略する。
【0073】
図5および図6に示すように、第1固定部11は、第1基板W1の非接合面WE1の外周部に接した状態で第1基板W1の外周部を固定する部分である。第1固定部11は、第1基板W1の非接合面WE1と直接向かい合う、第1基板W1の非接合面WE1と平行な平面である。第1固定部11は、凹凸のない平面であってもよいし、凹凸のある平面であってもよい。図6は、第1固定部11が第1基板W1と同心の円環状である例を示している。この例では、第1基板W1の非接合面WE1の外周部だけが第1チャック10に接触し、同外周部を除く第1基板W1の非接合面WE1のいずれの部分も第1チャック10に接触しない。
【0074】
図5に示す例では、第1固定部11の幅(第1固定部11の内周から第1固定部11の外周までの最短距離)は、第1基板W1の外周部が第1固定部11に固定されている状態で、第1基板W1の中央部および中間部を含む第1基板W1の内側部が第1基板W1の外周部に対して第1基板W1に垂直な方向に移動できるように設定されている。図5は、第1固定部11の幅が、第1固定部11の外周から第1チャック10の外周までの最短距離よりも小さく、第1基板W1の厚みよりも大きい例を示している。第1固定部11の内径は、第1基板W1の直径よりも小さい。第1固定部11の外径は、第1基板W1の直径と等しくてもよいし、第1基板W1の直径よりも大きいまたは小さくてもよい。
【0075】
図6に示すように、第1外側部12は、第1チャック10に保持されている第1基板W1を第1基板W1に対して垂直な方向に見たときに第1基板W1の外側に配置される部分である。第1外側部12は、第1基板W1および第1固定部11の全周を取り囲んでいる。第1外側部12の外径は、第1基板W1の直径よりも大きい。第1外側部12の幅(第1外側部12の内周から第1外側部12の外周までの最短距離)は、第1固定部11の幅と等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
図5に示すように、第1外側部12は、第1固定部11から外側に延びている。第1チャック10の円筒状の外周面は、第1外側部12の外周から下方に延びている。第1チャック10の中心線まわりのいずれの角度でも、第1外側部12の断面は、第1基板W1の外周から第1基板W1の外側の位置まで連続している。第1基板W1および第2基板W2の間の空間を密閉できるのであれば、第1外側部12はどのような形状であってもよい。図5は、第1外側部12が第1基板W1と平行な平面上に配置された例を示している。第1固定部11も同様である。第1外側部12は、第1固定部11を含む平面上に配置されてもよいし、第1固定部11を含む平面とは異なる平面上に配置されてもよい。図5は、後者の例を示している。第1固定部11が第1外側部12から凹んでいる。
【0077】
図5図8は、第1チャック10および第2チャック20がバキュームチャックである例を示している。図6に示すように、第1チャック10の周方向に配列された複数の第1吸引口13が第1固定部11で開口している。図8に示すように、第2チャック20の周方向に配列された複数の第2吸引口23が第2固定部21で開口している。第1基板W1が第1固定部11に接した状態で第1吸着力発生器13gの吸引力が複数の第1吸引口13に伝達されると、第1基板W1は第1固定部11に吸着され固定される。同様に、第2基板W2が第2固定部21に接した状態で第2吸着力発生器23gの吸引力が複数の第2吸引口23に伝達されると、第2基板W2は第2固定部21に吸着され固定される。
【0078】
図5および図6に示すように、第1チャック10は、第1自転アクチュエータ40raを介して反転アクチュエータ40iに連結されている。反転アクチュエータ40iは、Z方向アクチュエータ40zに連結されている。図5は、第1自転アクチュエータ40ra、反転アクチュエータ40i、およびZ方向アクチュエータ40zが電動モータである例を示している。この例では、水平な直線まわりに回転可能な反転ステージ14によって第1自転アクチュエータ40raおよび第1チャック10が支持されており、ボールねじ15およびボールナット16を含むモーションコンバータを介してZ方向アクチュエータ40zが反転アクチュエータ40iおよび反転ステージ14に連結されている。
【0079】
第1自転アクチュエータ40raは、第1チャック10を反転ステージ14に対して第1チャック10の中心線まわりに回転させる。反転アクチュエータ40iは、反転ステージ14を筐体4(図4参照)に対して回転させることにより、第1チャック10および第1自転アクチュエータ40raを水平な直線まわりに180度回転させる。Z方向アクチュエータ40zの回転は、ボールねじ15およびボールナット16によってZ方向への反転アクチュエータ40iおよび反転ステージ14の移動に変換される。これにより、第1チャック10および第1自転アクチュエータ40raが上下方向に一致するZ方向に平行移動する。
【0080】
図7および図8に示すように、第2チャック20は、筐体4(図4参照)に対してX方向に平行移動可能なXステージ24に支持されている。第2自転アクチュエータ40rbは、第2チャック20とXステージ24との間に配置されている。Xステージ24は、筐体4に対してY方向に平行移動可能なYステージ25に支持されている。図8は、X方向に延びる2つのリニアガイド27xを介してXステージ24がYステージ25に支持され、Y方向に延びる2つのリニアガイド27yを介してYステージ25が台座26に支持された例を示している。
【0081】
第2自転アクチュエータ40rbは、第2チャック20をXステージ24に対して第2チャック20の中心線まわりに回転させる。X方向アクチュエータ40xは、Xステージ24を筐体4に対してX方向に移動させることにより、第2チャック20および第2自転アクチュエータ40rbをX方向に平行移動させる。Y方向アクチュエータ40yは、Yステージ25を筐体4に対してY方向に移動させることにより、第2チャック20、第2自転アクチュエータ40rb、およびXステージ24をY方向に平行移動させる。
【0082】
第1チャック10および第2チャック20が相対的にX方向に移動するのであれば、X方向アクチュエータ40xは、第1チャック10を移動させてもよいし、第1チャック10および第2チャック20の両方を移動させてもよい。Y方向アクチュエータ40yおよびZ方向アクチュエータ40zについても同様である。第1自転アクチュエータ40raおよび第2自転アクチュエータ40rbのいずれか一方を省略してもよい。筐体4の外で第1基板W1を反転させるのであれば、反転アクチュエータ40iを省略してもよい。この場合、第1チャック10を下向きで保持してもよい。
【0083】
次に、第1基板W1および第2基板W2を接合ユニット2eに搬入してから搬出するまでの流れの一例について説明する。
【0084】
図9A図9Gは、第1基板W1および第2基板W2を接合ユニット2eに搬入してから搬出するまでの流れの一例について説明するための概略図である。第1基板W1および第2基板W2を接合ユニット2eに搬入するときは、図9Aに示すように、第1チャック10の第1固定部11が上に向けられた状態で第1チャック10を待機位置に配置し、リフトピン41の上端が待機位置に位置する第1チャック10の第1固定部11よりも上方に位置する上位置にリフトピン41を配置する。
【0085】
搬送ロボットTRは、この状態で、第1基板W1をハンドTHで水平に支持しながらリフトピン41の上方に配置する。その後、搬送ロボットTRは、ハンドTHを下降させる。これにより、図9Bに示すように、非接合面WE1に相当する第1基板W1の下面がリフトピン41に接触し、ハンドTHが第1基板W1の下面から離れる。搬送ロボットTRは、第1基板W1をリフトピン41の上に置いた後、ハンドTHを接合ユニット2eの外に移動させる。
【0086】
図9Cに示すように、アクチュエータ41aは、ハンドTHが第1基板W1と第1チャック10との間から退避した後、リフトピン41を下降させる。これにより、第1基板W1がリフトピン41によって水平に支持されたまま下方に平行移動する。その過程で、第1基板W1の下面が第1チャック10の第1固定部11に接触し、リフトピン41が第1基板W1の下面から離れる。リフトピン41が下位置に到達すると、リフトピン41の上端は、第2チャック20の第2固定部21よりも下方に配置される。
【0087】
第1基板W1が第1チャック10の上に置かれると、第1基板W1の外周部が第1チャック10の第1固定部11に接触する。制御装置3は、この状態で、第1基板W1の外周部を第1チャック10の第1固定部11に固定する吸着力を第1吸着力発生器13gに発生させる。これにより、第1基板W1の外周部が第1チャック10の第1固定部11に接した状態で第1チャック10の第1固定部11に固定される。
【0088】
図9Dに示すように、Z方向アクチュエータ40zは、第1基板W1の外周部が第1固定部11に固定されている状態で第1チャック10を待機位置から退避位置まで上昇させる。その後、反転アクチュエータ40iは、第1基板W1の外周部が第1チャック10の第1固定部11に固定されている状態で、退避位置に位置する第1チャック10を水平な直線まわりに180度回転させる。これにより、図9Eに示すように、接合面WA1に相当する第1基板W1の上面が下に向けられた状態で第1基板W1が第1チャック10によって水平に保持される。
【0089】
その一方で、図9Dに示すように、アクチュエータ41aは、第1チャック10が待機位置から上昇した後、リフトピン41を下位置から上位置まで上昇させる。これにより、リフトピン41の上端が第2チャック20の第2固定部21よりも上方に配置される。搬送ロボットTRは、この状態で、第2基板W2をハンドTHで水平に支持しながらリフトピン41の上方に配置する。搬送ロボットTRは、反転アクチュエータ40iが第1基板W1および第1チャック10を反転させるのと同時に第2基板W2をリフトピン41の上方に配置してもよいし、反転アクチュエータ40iが第1基板W1および第1チャック10を反転させる前または後に第2基板W2をリフトピン41の上方に配置してもよい。
【0090】
第2基板W2がリフトピン41の上方に配置された後、搬送ロボットTRは、ハンドTHを下降させる。これにより、非接合面WE2に相当する第2基板W2の下面がリフトピン41に接触し、ハンドTHが第2基板W2の下面から離れる。搬送ロボットTRは、第2基板W2をリフトピン41の上に置いた後、ハンドTHを接合ユニット2eの外に移動させる。アクチュエータ41aは、ハンドTHが第2基板W2と第2チャック20との間から退避した後、リフトピン41を下降させる。これにより、第2基板W2がリフトピン41によって水平に支持されたまま下方に平行移動する。図9Eに示すように、その過程で、第2基板W2の下面が第2チャック20の第2固定部21に接触し、リフトピン41が第2基板W2の下面から離れる。
【0091】
第1チャック10によって下向きに保持されている第1基板W1の下面は、第2チャック20によって上向きに保持されている第2基板W2の上面と平行に向かい合う。第1基板W1の下面は、第1基板W1の接合面WA1であり、第2基板W2の上面は、第2基板W2の接合面WA2である。制御装置3は、第1チャック10および第2チャック20によって水平に保持されている第1基板W1および第2基板W2をカメラ43に撮影させることにより、第1基板W1および第2基板W2のアライメントを確認する。その後、制御装置3は、X方向アクチュエータ40x、Y方向アクチュエータ40y、第1自転アクチュエータ40ra、および第2自転アクチュエータ40rb(図4参照)の少なくとも1つによって第1基板W1および第2基板W2の両方または一方を動かすことにより、第1基板W1および第2基板W2のアライメントを調整する。その後、制御装置3は、第1基板W1および第2基板W2を接合する。接合の詳細については後述する。
【0092】
図9Fに示すように、第1基板W1および第2基板W2が接合されると、第1チャック10は退避位置に配置される。接合基板、つまり、接合された第1基板W1および第2基板W2は、第2チャック20に保持される。制御装置3は、第1基板W1および第2基板W2が接合された後、第2吸着力発生器23gに吸着力の発生を停止させる。その後、制御装置3は、アクチュエータ41aを制御することにより、リフトピン41を下位置から上位置まで上昇させる。図9Gに示すように、接合基板は、リフトピン41によって持ち上げられ、第2チャック20から上方に離れる。搬送ロボットTRは、リフトピン41によって水平に支持されている接合基板をハンドTHで持ち上げた後、ハンドTHを接合ユニット2eの外に移動させる。これにより、接合基板が接合ユニット2eから搬出される。
【0093】
次に、第1基板W1および第2基板W2を接合する2つの例について説明する。最初に、第1の例について説明する。
【0094】
図10A図10Gは、第1基板W1および第2基板W2を接合する第1の例について説明するための概略図である。第1基板W1および第2基板W2を接合するとき、図10Aに示すように、第1基板W1は、第1チャック10によって下向きに保持され、第2基板W2は、第2チャック20によって上向きに保持される。第1基板W1の外周部は、第1チャック10の第1固定部11に接した状態で第1チャック10の第1固定部11に固定される。第2基板W2の外周部は、第2チャック20の第2固定部21に接した状態で第2チャック20の第2固定部21に固定される。第1基板W1および第2基板W2は、間隔を空けて上下方向に平行に向かい合う。
【0095】
図10Aに示すように、第1チャック10は、近接位置に配置される。近接位置は、第1チャック10に保持されている第1基板W1が変形しなければ第2基板W2に保持されている第2基板W2に接触しない位置である。第1チャック10が近接位置に配置されているとき、シールリング30は、第1チャック10および第2チャック20の間の隙間を塞いでおらず、第1基板W1および第2基板W2の間の空間である境界空間BSは、流体が第1外側部12と第2外側部22との間の隙間を通じて境界空間BSに出入りできる開放状態にある。
【0096】
図10Bに示すように、制御装置3は、境界空間BSが開放された状態で、アクチュエータ42aを制御することにより、プッシャー42を平坦位置から変形位置に移動させる。プッシャー42は、第1基板W1の中央部を第2基板W2の中央部の方に押しながら変形位置の方に移動する。第1基板W1の中央部は、第1基板W1の外周部が第1チャック10に固定されたまま、第2基板W2の中央部に近づく。これにより、第1基板W1の中央部が第1基板W1の外周部に対して突出するように平坦な第1基板W1が円錐台状に変形する。プッシャー42が変形位置に到達するのと同時にまたはその前に、第1基板W1の中央部が第2基板W2の中央部に接触する。言い換えると、第1基板W1および第2基板W2が互いに接触した円形またはほぼ円形の接触領域CRが第1基板W1および第2基板W2の界面に形成される。これにより、第1基板W1および第2基板W2の接合が開始され、第1基板W1および第2基板W2が部分的に接合される。
【0097】
図10Cに示すように、制御装置3は、プッシャー42が変形位置に配置されている状態で、Z方向アクチュエータ40zを制御することにより、第1チャック10を近接位置から密閉位置に移動させる。制御装置3は、第1チャック10が近接位置から密閉位置に移動している間、第1チャック10の移動速度を一定に維持してもよいし、第1チャック10が密閉位置に到達する前に第1チャック10の移動速度を変更してもよい。
【0098】
第1チャック10が密閉位置に到達すると、第1チャック10および第2チャック20の間の隙間がシールリング30によって塞がれ、境界空間BSが開放状態から密閉状態に変わる。密閉状態は、流体が第1外側部12と第2外側部22との間の隙間を通じて境界空間BSに出入りできない状態である。境界空間BSが密閉状態に変わると、第1基板W1、第2基板W2、第1チャック10、第2チャック20、およびシールリング30によって閉空間が形成される。
【0099】
図10Dは、図10Cに示す第1基板W1、第2基板W2、第1チャック10、および第2チャック20等を上から見た概略図である。図10Dに示す一点鎖線は、図10Bに示す接触領域CRの外縁CR1を示している。図10Dに示す二点鎖線は、図10Cに示す接触領域CRの外縁CR1を示している。接触領域CRの外縁CR1は、ボンディングウェーブ(bonding wave)といわれることがある。接触領域CRの外縁CR1が第1基板W1および第2基板W2の外周の方に移動することは、ボンディングウェーブが広がるといわれることがある。
【0100】
第1チャック10は、プッシャー42が変形位置に配置されている状態で近接位置から密閉位置に移動する。プッシャー42が第1基板W1を押す方向と同じ方向に第1チャック10が移動するので、第1チャック10が密閉位置に近づくにしたがって第1基板W1の変形量が減少する。それに伴って、接触領域CRの外縁CR1が第1基板W1および第2基板W2の外周の方に移動し、接触領域CRの面積が増加する。したがって、図10D中の一点鎖線および二点鎖線によって示されるように、接触領域CRは、円形またはほぼ円形のまま大きくなる。接合界面に相当する接触領域CRが拡大しているとき、接触領域CRをカメラ43(図4参照)で撮影することにより、接触領域CRの変化を観察してもよい。これは、境界空間BSの減圧により接触領域CRを拡大させるときも同様である。
【0101】
図10Eに示すように、制御装置3は、境界空間BSが密閉された後、第1基板W1の外周部が第1チャック10に固定され、第2基板W2の外周部が第2チャック20に固定されている状態で、吸引ポンプ31pに第1基板W1および第2基板W2の間の気体を第1チャック10の吸引口31を通じて吸引させる。この気体の吸引は、境界空間BSが密閉状態に変わるのと同時に開始してもよいし、境界空間BSが密閉状態に変わる前または後に開始してもよい。後者の場合、第1基板W1および第2基板W2の接合が開始される前に気体の吸引を開始してもよい。
【0102】
境界空間BSが密閉された状態で、第1基板W1および第2基板W2の間の気体が吸引されると、境界空間BSの気圧が筐体4(図4参照)内の気圧と等しい値から筐体4内の気圧よりも低い値まで低下する。吸引ポンプ31pは、境界空間BSの気圧を筐体4内の気圧よりも低い値に維持する。差圧、つまり、境界空間BSの気圧と筐体4内の気圧との差は、境界空間BSが小さくなるように第1基板W1および第2基板W2の少なくとも一方を変形させる。図10Eに示す例では、プッシャー42および第1基板W1が上方向への第2基板W2の移動を規制しているので、第2基板W2は変形しないまたは殆ど変形しない。したがって、主として第1基板W1が変形する。これにより、第1基板W1および第2基板W2の界面に形成された接触領域CRの直径が増加する。
【0103】
接触領域CRの外縁CR1は、境界空間BSの気圧と筐体4内の気圧との差に応じた速度で第1基板W1および第2基板W2の外周の方に移動する。筐体4内の気圧は一定である。したがって、接触領域CRの外縁CR1は、境界空間BSの気圧に応じた速度で移動する。例えば、境界空間BSの気圧が低下すると、第1基板W1および第2基板W2の接合速度、つまり、接触領域CRの外縁CR1が第1基板W1および第2基板W2の外周の方に移動する速度が増加する。制御装置3は、境界空間BSの気圧の設定値を一定に維持してもよいし、変化させてもよい。後者の場合、制御装置3は、境界空間BSの気圧の設定値を段階的または連続的に減少または増加させてもよい。
【0104】
境界空間BSの気圧を筐体4内の気圧よりも低い一定の値に維持すると、第1基板W1および第2基板W2の接合速度が連続的に減少する。これは、第1基板W1および第2基板W2を接触させるために必要な力が第1チャック10および第2チャック20に近づくにしたがって増加するからである。言い換えると、荷重点である接触領域CRの外縁CR1から固定端である第1チャック10および第2チャック20までの距離が減少するからである。制御装置3は、境界空間BSの気圧の設定値を連続的に減少させることにより、第1基板W1および第2基板W2の接合速度を一定に維持してもよい。
【0105】
制御装置3は、差圧に起因する第1基板W1の変形で第1基板W1および第2基板W2の接触領域CRが大きくなった後、吸引ポンプ31pが境界空間BSの気圧を筐体4内の気圧よりも低い値に維持している状態で、第1チャック10に第1基板W1の吸着を停止させる。図10Fは、第1基板W1の外周部を除く第1基板W1の殆ど全てが第2基板W2に接触している状態で、第1チャック10に第1基板W1の吸着を停止させる例を示している。接触領域CRが差圧で大きくなった後であれば、制御装置3は、いつ第1チャック10に第1基板W1の吸着を停止させてもよい。制御装置3は、差圧に起因する第1基板W1の変形が続いているときに第1チャック10に第1基板W1の吸着を停止させてもよいし、同変形が止まった後に第1チャック10に第1基板W1の吸着を停止させてもよい。
【0106】
第1チャック10が第1基板W1の吸着を停止すると、第1基板W1を元の形状に戻そうとする復元力で、第1基板W1の外周部が第1チャック10から離れ、第2基板W2の外周部の方に移動する。図10Fに示すように、第1基板W1の外周部は、第1チャック10にも第2基板W2にも接触していない状態に瞬間的になる。第1基板W1の外周部が第2基板W2の外周部に近づくのに伴って接触領域CRの外縁CR1が第1基板W1および第2基板W2の外周に近づく。図10Gに示すように、第1基板W1の外周部が第2基板W2の外周部に接触すると、第1基板W1の接合面WA1の全域が第2基板W2の接合面WA2の全域に接触する。これにより、第1基板W1および第2基板W2が接合される。その後は、前述の通り、接合された第1基板W1および第2基板W2が筐体4から搬出される。
【0107】
なお、制御装置3は、第1チャック10を密閉位置に移動させる前ではなく、第1チャック10を密閉位置に移動させた後に、プッシャー42を平坦位置から変形位置に移動させてもよい。この場合、制御装置3は、吸引ポンプ31pが境界空間BSの気圧を筐体4内の気圧よりも低い値に維持している状態で、プッシャー42を平坦位置から変形位置に移動させてもよいし、境界空間BSの気圧が筐体4内の気圧と等しい状態で、プッシャー42を平坦位置から変形位置に移動させてもよい。
【0108】
次に、第1基板W1および第2基板W2を接合する第2の例について説明する。
【0109】
図11A図11Dは、第1基板W1および第2基板W2を接合する第2の例について説明するための概略図である。第2の例は、プッシャー42で第1基板W1の中央部を押すことにより第1基板W1および第2基板W2の接合を開始するのではなく、境界空間BSの気圧を低下させることにより第1基板W1および第2基板W2の接合を開始する点で第1の例とは異なる。
【0110】
図11Aに示すように、制御装置3は、第1基板W1のいずれの部分も第2基板W2に接触していない状態で、Z方向アクチュエータ40zを制御することにより、第1チャック10を近接位置から密閉位置に移動させる。制御装置3は、さらに、吸引ポンプ31pに第1基板W1および第2基板W2の間の気体を第1チャック10の吸引口31を通じて吸引させる。この気体の吸引は、境界空間BSが密閉状態に変わるのと同時に開始してもよいし、境界空間BSが密閉状態に変わる前または後に開始してもよい。
【0111】
境界空間BSが密閉された状態で、第1基板W1および第2基板W2の間の気体が吸引されると、境界空間BSの気圧が筐体4内の気圧と等しい値から筐体4内の気圧よりも低い値まで低下する。これにより、図11Bに示すように、境界空間BSが小さくなるように第1基板W1および第2基板W2の少なくとも一方が変形する。第2の例では、プッシャー42(図4参照)が第1基板W1に接触していないので、第1基板W1だけでなく、第2基板W2も変形する。平坦な第1基板W1は、第1基板W1の中央部が第1基板W1の外周部に対して突出するように円錐台状に変形する。同様に、平坦な第2基板W2は、第2基板W2の中央部が第2基板W2の外周部に対して突出するように円錐台状に変形する。これにより、第1基板W1の中央部と第2基板W2の中央部とが互いに接触し、第1基板W1および第2基板W2の接合が開始される。
【0112】
第1基板W1および第2基板W2の接合が開始された後は、図11Cに示すように、第1基板W1および第2基板W2の接触領域CRの外縁CR1が境界空間BSの気圧に応じた速度で第1基板W1および第2基板W2の外周の方に移動する。これにより、接触領域CRの直径が増加し、接触領域CRが円形またはほぼ円形のまま大きくなる。制御装置3は、接触領域CRの拡大が停止するのと同時にまたは停止する前または後に、第1チャック10に第1基板W1の吸着を停止させる。図11Cは、第1基板W1の外周部を除く第1基板W1の殆ど全てが第2基板W2に接触した状態で、制御装置3が第1チャック10に第1基板W1の吸着を停止させる例を示している。
【0113】
第1チャック10が第1基板W1の吸着を停止すると、第1基板W1を元の形状に戻そうとする復元力で、第1基板W1の外周部が第1チャック10から離れ、第2基板W2の外周部の方に移動する。第1基板W1の外周部が第2基板W2の外周部に近づくのに伴って接触領域CRの外縁CR1が第1基板W1および第2基板W2の外周に近づく。図11Dに示すように、第1基板W1の外周部が第2基板W2の外周部に接触すると、第1基板W1の接合面WA1の全域が第2基板W2の接合面WA2の全域に接触する。その後は、前述の通り、接合された第1基板W1および第2基板W2が筐体4から搬出される。
【0114】
図12は、第2の例における境界空間BSの気圧の設定値と経過時間との関係の一例を示すグラフである。この例では、時刻T1で境界空間BSが密閉され、その直後に第1基板W1および第2基板W2の接合が開始される。第1基板W1および第2基板W2の接合が開始されたときの境界空間BSの気圧の設定値は筐体4内の気圧よりも低い第1の値である。境界空間BSの気圧の設定値が第1の値に維持されているとき、第1基板W1および第2基板W2の接触領域CRは連続的に大きくなる。
【0115】
第1基板W1および第2基板W2の接合が進んでいるとき、つまり、第1基板W1および第2基板W2の接触領域CRが拡大しているとき(図12では時刻T2)、制御装置3は、境界空間BSの気圧の設定値を第1の値よりも低い第2の値に変更する。これにより、境界空間BSの気圧がさらに低下し、境界空間BSの体積がさらに減少する。それに伴って、第1基板W1および第2基板W2の接合速度が増加する。境界空間BSの気圧の設定値が第2の値に維持されているとき(図12では時刻T3)、第1基板W1の吸着が解除される。これにより、第1基板W1および第2基板W2の接合が終了する。
【0116】
次に、本実施形態に係る効果について説明する。
【0117】
本実施形態では、接合すべき第1基板W1および第2基板W2を第1チャック10および第2チャック20によって保持する。第1基板W1は、第1チャック10の第1固定部11に固定される。第2基板W2は、第2チャック20の第2固定部21に固定される。第1チャック10の第1外側部12は、対向方向の一例である上下方向に見ると第1基板W1および第1固定部11を取り囲んでおり、第2チャック20の第2外側部22は、上下方向に見ると第2基板W2および第2固定部21を取り囲んでいる。第1外側部12および第2外側部22は、上下方向に向かい合っている。シールリング30は、第1チャック10の第1外側部12と第2チャック20の第2外側部22との間の隙間を塞ぐ。これにより、第1チャック10に保持されている第1基板W1と第2チャック20に保持されている第2基板W2との間の空間が密閉される。
【0118】
吸引ポンプ31pは、第1チャック10および第2チャック20に保持されている第1基板W1および第2基板W2の間の空間である境界空間BSが密閉状態のときに第1基板W1および第2基板W2の間の気体を吸引する。密閉状態は、シールリング30が第1チャック10の第1外側部12と第2チャック20の第2外側部22との両方に接しており、流体が第1外側部12と第2外側部22との間の隙間を通じて境界空間BSに出入りできない状態である。したがって、吸引ポンプ31pが第1基板W1および第2基板W2の間の気体を吸引すると、境界空間BSの気圧が低下する。
【0119】
第1チャック10の第1固定部11は、第1基板W1の内側部が第1基板W1の外周部に対して上下方向に移動できるように第1基板W1の外周部を固定する。境界空間BSの気圧が低下すると、第1基板W1の外周部が第1チャック10の第1固定部11に固定されたまま第1基板W1が変形し、第1基板W1の内側部が第1基板W1の外周部に対して第2基板W2の方に上下方向に移動する。これにより、第1基板W1および第2基板W2の接合が開始される。もしくは、第1基板W1および第2基板W2の接合が進む。その結果、第1基板W1および第2基板W2が互いに接触した接触領域CRの面積が増加する。
【0120】
第1基板W1および第2基板W2の間の気体を減少させた状態で第1基板W1および第2基板W2の接触領域CRを大きくするので、気体を減少させない場合に比べて、接合された第1基板W1および第2基板W2の界面にボイド(空洞)が発生する可能性を低下させることができる。ボイドが発生したとしても、ボイドを減らすまたは小さくすることができる。さらに、第1基板W1および第2基板W2の接触領域CRは、境界空間BSの気圧に応じた速度で大きくなる。したがって、境界空間BSの気圧を制御することにより、第1基板W1および第2基板W2の接合が進む速度を制御することができる。
【0121】
本実施形態では、第1基板W1の内側部が第2基板W2に接触しており、境界空間BSが密閉状態であり、吸引ポンプ31pが境界空間BSの気圧を低下させているとき、制御装置3が、第1吸着力発生器13gを制御することにより、第1チャック10の第1固定部11に対する第1基板W1の外周部の固定を停止する。第1基板W1を元の形状に戻そうとする復元力と第1基板W1の非接合面WE1に加わる気圧は、第1基板W1の外周部を第1チャック10の第1固定部11から離し第2基板W2に近づける。第1基板W1の外周部が第2基板W2の外周部に近づくのに伴って第1基板W1および第2基板W2の接触領域CRが大きくなる。
【0122】
第1基板W1の非接合面WE1に加わる気圧と境界空間BSの気圧との差が大きければ、第1チャック10の第1固定部11に対する第1基板W1の外周部の固定を停止しなくても、第1基板W1の外周部は第1チャック10の第1固定部11から離れる。しかしながら、この場合、境界空間BSの気圧を極端に低下させる必要がある。第1基板W1の外周部の固定を停止すれば、このような必要がない。さらに、第1基板W1および第2基板W2の間を低圧に維持しながら、第1基板W1の外周部を第2基板W2の外周部に接触させるので、第1基板W1および第2基板W2の外周部の間にボイドが発生する可能性を低下させることができる。
【0123】
本実施形態では、第1チャック10だけでなく第2チャック20も基板Wが変形できるように同基板Wを保持する。境界空間BSの気圧が低下すると、第1基板W1の外周部が第1チャック10の第1固定部11に固定されたまま第1基板W1が変形すると共に、第2基板W2の外周部が第2チャック20の第2固定部21に固定されたまま第2基板W2が変形する。したがって、第1基板W1だけを変形させることにより第1基板W1および第2基板W2を接合する場合に比べて第1基板W1の変形量を小さくすることができる。
【0124】
本実施形態では、間隔変更アクチュエータの一例であるZ方向アクチュエータ40zによって第1チャック10および第2チャック20の一方または両方を上下方向に移動させることにより、上下方向への第1チャック10および第2チャック20の間隔を変更する。これにより、境界空間BSが、密閉状態と開放状態との間で切り替わる。開放状態は、シールリング30が第1チャック10の第1外側部12と第2チャック20の第2外側部22との一方だけに接触しており、流体が第1外側部12と第2外側部22との間の隙間を通じて境界空間BSに出入りできる状態である。
【0125】
プッシャー42は、第1チャック10および第2チャック20に保持されている第1基板W1および第2基板W2が接触しておらず、境界空間BSが開放状態または密閉状態であるときに、第1基板W1の内側部を第2基板W2の方に押す。これにより、第1基板W1の外周部が第1チャック10の第1固定部11に固定されたまま第1基板W1が変形し、第1基板W1の内側部が第1基板W1の外周部に対して第2基板W2の方に上下方向に移動する。第1基板W1の内側部が第2基板W2に近づくことにより、第1基板W1および第2基板W2の接合が開始される。したがって、減圧によって第1基板W1および第2基板W2の接合を開始する場合に比べて、接合が始まる位置を安定させることができる。
【0126】
本実施形態では、プッシャー42が第1基板W1の内側部を第2基板W2の方に押しており、第1基板W1の内側部が第2基板W2に接した状態で、Z方向アクチュエータ40zが第1チャック10を第2チャック20の方に上下方向に移動させる。これにより、境界空間BSが開放状態から密閉状態に切り替わる。第1チャック10が第2チャック20に近づくにしたがって第1基板W1の変形量が減少する。それに伴って、接触領域CRの外縁CR1が第1基板W1および第2基板W2の外周の方に移動し、接触領域CRの面積が増加する。したがって、第1チャック10が第2チャック20に近づく速度を制御することにより、第1基板W1および第2基板W2の接合が進む速度を制御することができる。
【0127】
本実施形態では、第1チャック10および第2チャック20に保持されている第1基板W1および第2基板W2が接触しておらず、境界空間BSが密閉状態のときに、吸引ポンプ31pが第1基板W1および第2基板W2の間の気体を吸引する。これにより、第1基板W1の内側部が第2基板W2に近づくように第1基板W1が変形し、第1基板W1および第2基板W2の接合が開始される。したがって、第1基板W1および第2基板W2の接合を開始したときにボイドが発生する可能性を低下させることができる。さらに、第1基板W1および第2基板W2の接合を開始するときに、プッシャー42などの有体物で第1基板W1を第2基板W2の方に押さなくてもよい。
【0128】
本実施形態では、境界空間BSが密閉状態であり、吸引ポンプ31pが境界空間BSの気圧を低下させているときに、制御装置3が、吸引ポンプ31pまたは自動圧力制御バルブ31vを制御することにより、境界空間BSの気圧の設定値を、第1基板W1および第2基板W2が配置された空間(境界空間BSを除く)の気圧よりも低い一定の値に維持する。境界空間BSの気圧が低下すると、第1基板W1が変形し、第1基板W1および第2基板W2の接触領域CRが大きくなる。言い換えると、接触領域CRの外縁CR1が第1基板W1および第2基板W2の外周の方に移動する。
【0129】
接触領域CRの外縁CR1が移動する速度が速すぎると、ボイドが発生する可能性が高まることがある。境界空間BSの気圧を第1基板W1および第2基板W2が配置された空間の気圧よりも低い一定の値に維持すると、接触領域CRの外縁CR1が移動する速度が連続的に減少する。これは、第1基板W1および第2基板W2を接触させるために必要な力が第1チャック10および第2チャック20に近づくにしたがって増加するからである。境界空間BSの気圧の設定値を一定に維持することにより、接合速度の増加を防止できる。
【0130】
本実施形態では、境界空間BSの気圧の設定値を第1基板W1および第2基板W2が配置された空間(境界空間BSを除く)の気圧よりも低い範囲内で低下させる。具体的には、同設定値を第1の値から第2の値に低下させる。境界空間BSの気圧が低すぎると、接触領域CRの外縁CR1が高速で移動する期間が生じ得る。これは、ボイドが発生する可能性を高める原因となり得る。境界空間BSの気圧の設定値を段階的に低下させれば、このような期間を無くすまたは短くすることができる。
【0131】
本実施形態では、境界空間BSの気圧の設定値を、第1の値から第1の値よりも低い第2の値に低下させているが、第1の値と第2の値とを同じ値に設定してもよく、第2の値を第1の値よりも高い値に設定してもよい。
【0132】
次に、他の実施形態について説明する。
【0133】
第1基板W1および第1チャック10を、第2基板W2および第2チャック20の上方ではなく、第2基板W2および第2チャック20の下方に配置してもよい。
【0134】
第1基板W1と第2基板W2とが向かい合う方向は、上下方向以外の方向であってもよい。つまり、対向方向は、水平方向であってもよいし、水平面に対して傾いた方向であってもよい。
【0135】
第1チャック10の第1固定部11に対する第1基板W1の外周部の固定を停止せずに、境界空間BSの気圧を低下させることにより第1基板W1の外周部を第1チャック10の第1固定部11から離してもよい。
【0136】
図13に示すように、第1チャック10は、リング状ではなく、円板状であってもよい。第2チャック20についても同様である。
【0137】
第1チャック10および第2チャック20の少なくとも一方が円板状である場合、リフトピン41が挿入される貫通穴を設ければよい。図13は、貫通穴10hが円板状の第1チャック10に設けられ、貫通穴20hが円板状の第2チャック20に設けられた例を示している。円板状の第1チャック10または第2チャック20を介して第1基板W1または第2基板W2を赤外線カメラで撮影する場合、石英などの赤外線を透過する材料で第1チャック10または第2チャック20を作製すればよい。
【0138】
第1チャック10および第2チャック20の少なくとも一方が円板状である場合、第1チャック10および第2チャック20の少なくとも一方は、基板Wが変形できないように同基板Wを保持してもよい。第2チャック20が円板状である場合、第2基板W2の非接合面WE2の全域を第2チャック20の平坦な吸着面に吸着させてもよい。
【0139】
第1チャック10が円板状である場合、第1チャック10に保持されている第1基板W1をプッシャー42(図4参照)で押すのではなく、第1基板W1の非接合面WE1を第1チャック10の半球状の吸着面に密着させることにより、第1基板W1を半球状に変形させてもよい。この場合、第1基板W1の外周部だけを第1チャック10の吸着面に吸着させてもよい。つまり、半球状に変形した第1基板W1の内側部(中央部および中間部)は、第1チャック10の吸着面に対して移動可能であってもよい。
【0140】
2つ以上のシールリング30で第1チャック10の第1外側部12と第2チャック20の第2外側部22との間の隙間を塞いでもよい。例えば、第2チャック20に保持されているシールリング30とは別のシールリング30を第1チャック10に保持させてもよい。
【0141】
第1チャック10の第1外側部12は、第2チャック20の第2外側部22を取り囲んだ筒状部を有していてもよい。もしくは、第2チャック20の第2外側部22は、第1チャック10の第1外側部12を取り囲んだ筒状部を有していてもよい。この場合、シールリング30を第1外側部12と筒状部との間、または第2外側部22と筒状部との間に配置してもよい。
【0142】
第1基板W1および第2基板W2の一方は、トランジスタなどのデバイスが配置されたデバイス層WC1およびデバイス層WC2を有していなくてもよい。この場合、第1基板W1および第2基板W2の一方は、シリコンまたはガラス製の支持基板であってもよい。
【0143】
前述の全ての構成の2つ以上を組み合わせてもよい。前述の全ての工程の2つ以上を組み合わせてもよい。
【0144】
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の精神および範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0145】
1:基板接合装置、2e:接合ユニット、3:制御装置、10:第1チャック、11:第1固定部、12:第1外側部、13:第1吸引口、13g:第1吸着力発生器、14:反転ステージ、15:ボールねじ、16:ボールナット、20:第2チャック、21:第2固定部、22:第2外側部、23:第2吸引口、23g:第2吸着力発生器、24:Xステージ、25:Yステージ、26:台座、27x:リニアガイド、27y:リニアガイド、30:シールリング、31:吸引口、31p:吸引ポンプ、31v:自動圧力制御バルブ、40:アクチュエータ、40i:反転アクチュエータ、40ra:第1自転アクチュエータ、40rb:第2自転アクチュエータ、40x:X方向アクチュエータ、40y:Y方向アクチュエータ、40z:Z方向アクチュエータ、42:プッシャー、42a:アクチュエータ、BS:境界空間、CR:接触領域、CR1:外縁、TH:ハンド、TR:搬送ロボット、TS:搬送システム、W:基板、W1:第1基板、W2:第2基板、WA1:接合面、WA2:接合面、WB1:接合層、WB2:接合層、WC1:デバイス層、WC2:デバイス層、WD1:基材、WD2:基材、WE1:非接合面、WE2:非接合面
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A-C】
図9D-E】
図9F-G】
図10A-D】
図10E-G】
図11A-D】
図12
図13