(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139752
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】洗浄設備用プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/14 20060101AFI20250919BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20250919BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20250919BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20250919BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
A61L2/14
C02F1/50 510Z
C02F1/50 520A
C02F1/50 531R
C02F1/50 531Q
C02F1/50 531J
C02F1/50 540A
C02F1/50 550D
C02F1/50 550C
C02F1/50 550L
B01J19/08 E
B08B3/08 Z
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038761
(22)【出願日】2024-03-13
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】523116055
【氏名又は名称】カーボントレードネオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】建石 俊之
【テーマコード(参考)】
2G084
3B201
4C058
4G075
【Fターム(参考)】
2G084AA07
2G084AA13
2G084AA25
2G084BB07
2G084BB23
2G084BB35
2G084BB37
2G084CC03
2G084CC19
2G084CC34
2G084CC35
2G084DD15
2G084DD21
2G084DD22
2G084DD25
2G084HH02
2G084HH05
2G084HH19
2G084HH20
2G084HH21
2G084HH22
2G084HH28
2G084HH52
3B201AB01
3B201BB02
3B201BB92
3B201CB12
4C058AA01
4C058BB06
4C058CC06
4C058KK06
4C058KK46
4G075AA03
4G075AA13
4G075AA61
4G075BA08
4G075BB10
4G075BD27
4G075CA47
4G075DA02
4G075EB01
4G075EB42
4G075EC21
4G075FA01
4G075FA12
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB06
4G075FB12
4G075FC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】洗浄対象物を効率よく滅菌することができる洗浄設備用プラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】誘電体層及び当該誘電体層の両側に設けられた一対の電極層を少なくとも備えプラズマを発生させるプラズマ生成部10と、一対の前記電極層に交流電圧を印加する電源部と、気体をプラズマで処理するためにプラズマ生成部10に気体を流すとともに、プラズマによって処理された気体を液体が溜められた洗浄設備200に供給する気体流動部20とを有することを特徴とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び当該誘電体層の両側に設けられた一対の電極層を少なくとも備えプラズマを発生させるプラズマ生成部と、
一対の前記電極層に交流電圧を印加する電源部と、
気体をプラズマで処理するために前記プラズマ生成部に気体を流すとともに、プラズマによって処理された気体を液体が溜められた洗浄設備に供給する気体流動部と、を有することを特徴とする洗浄設備用プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記洗浄設備の水位を検知する水位センサと、
前記水位センサの検知結果を受信する制御部と、
前記水位センサの検知結果に基づいて前記洗浄設備に液体を供給するリザーブタンクと、を有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄設備用プラズマ処理装置。
【請求項3】
誘電体層及び当該誘電体層の両側に設けられた一対の電極層を少なくとも備えプラズマを発生させるプラズマ生成部と、
一対の前記電極層に交流電圧を印加する電源部と、
前記プラズマ生成部でプラズマによって処理された気体を受け入れプラズマによって処理された液体を生成するプラズマ液生成部と、を有し、
前記プラズマ液生成部でプラズマによって処理された液体を、液体が溜められた洗浄設備に供給することを特徴とする洗浄設備用プラズマ処理装置。
【請求項4】
前記プラズマ生成部を覆うとともに、前記誘電体層で複数の空間に仕切られた筐体を有し、
前記筐体は、各前記空間に気体が流入する流入部及び気体が流出する流出部を各前記空間ごとに備えるとともに、各前記空間に異なる圧力の気体が流れるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の洗浄設備用プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄設備用プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマ処理技術に関しては、誘電体バリア放電((Dielectric Barrier Discharge)という手法が開発され、大気圧下で低温度のプラズマを発生させることが可能となった。その結果、プラズマ処理の適用範囲が広がり、多様な用途で利用が進みつつある。プラズマ処理の目的としては、殺菌、消臭、表面改質、化学物質の分解などが挙げられる。また、プラズマ処理の対象となる物質は、固体、液体、気体のいずれであってもよい。
【0003】
空気を流動させつつ連続的にプラズマ処理するために、種々のプラズマ処理装置が開発されている。例えば、特許文献1には、平板状の第1電極と第2電極とが間隙を隔てて対向するように設けられたプラズマ生成部が2層以上に積層配置されたプラズマ発生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、畜産農場、養豚場、養鶏場、食品工場等の衛生管理が必要な施設において、入口等で入場者の足、靴底、車両のタイヤ、機器の脚等を洗浄する場合がある。入口等に水が入った水槽を配置し、入場者の足等を洗浄することが考えられるが、表面の汚れなどは落とすことができても、付着している菌を滅菌することはできない。一方、水槽の水に滅菌用の薬品を投入することが考えられるが、薬品を入れる作業が煩雑になるとともに、薬品の材料コストも嵩むという問題がある。そこで、プラズマの洗浄能力を適用することが望まれている。
【0006】
このような背景を鑑みて本発明は、洗浄対象物を効率よく滅菌することができる洗浄設備用プラズマ処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するため、本発明は、誘電体層及び当該誘電体層の両側に設けられた一対の電極層を少なくとも備えプラズマを発生させるプラズマ生成部と、一対の前記電極層に交流電圧を印加する電源部と、気体をプラズマで処理するために前記プラズマ生成部に気体を流すとともに、プラズマによって処理された気体を液体が溜められた洗浄設備に供給する気体流動部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、プラズマによって処理された気体(プラズマ気体とも言う)を洗浄設備の液体に供給し、洗浄設備内の液体に含ませることができる(この液体をプラズマ液体とも言う)。これにより、洗浄対象物を効率よく滅菌することができる。
【0009】
また、前記洗浄設備の水位を検知する水位センサと、前記水位センサの検知結果を受信する制御部と、前記水位センサの検知結果に基づいて前記洗浄設備に液体を供給するリザーブタンクと、を有することが好ましい。
【0010】
本発明によれば、洗浄設備が液体不足になることを防ぐことができる。
【0011】
また、本発明は、誘電体層及び当該誘電体層の両側に設けられた一対の電極層を少なくとも備えプラズマを発生させるプラズマ生成部と、一対の前記電極層に交流電圧を印加する電源部と、前記プラズマ生成部でプラズマによって処理された気体を受け入れプラズマによって処理された液体を生成するプラズマ液生成部と、を有し、前記プラズマ液生成部でプラズマによって処理された液体を、液体が溜められた洗浄設備に供給することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、プラズマによって処理された気体(プラズマ気体とも言う)を洗浄設備の液体に供給し、洗浄設備内の液体に含ませる(この液体をプラズマ液体とも言う)。これにより、洗浄対象物を効率よく滅菌することができる。また、プラズマ液生成部を備えることで、各設備間の距離や設備面積に応じて設備設計の自由度を高めることができる。
【0013】
また、前記プラズマ生成部を覆うとともに、前記誘電体層で複数の空間に仕切られた筐体を有し、前記筐体は、各前記空間に気体が流入する流入部及び気体が流出する流出部を各前記空間ごとに備えるとともに、各前記空間に異なる圧力の気体が流れるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、一のプラズマ生成部から、圧力の異なる複数のプラズマ気体を供給することができる。つまり、供給先の負荷に応じて圧力の異なるプラズマ気体を供給することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の洗浄設備用プラズマ処理装置によれば、洗浄対象物を効率よく滅菌することができる。また洗浄に伴う薬品の使用を減らす、あるいはなくすことができ、消毒のためのコストを下げることができる。また、電力のみで減菌することができるので、大規模な災害等が発生して薬品の入手が困難になった場合などにも効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】プラズマ生成部を説明するためのパース図である。
【
図2】プラズマ生成部を説明するための斜視図である。
【
図3】プラズマ生成部を説明するための断面図である。
【
図4】第一変形例に係るプラズマ生成部を説明するための斜視図である。
【
図5】第二変形例に係るプラズマ生成部を説明するための斜視図である。
【
図6】第三変形例に係るプラズマ生成部を説明するための断面図である。
【
図7】第四変形例に係るプラズマ生成部を説明するための断面図である。
【
図8】本発明の第一実施形態に係る洗浄設備用プラズマ処理装置を示す概略側面図である。
【
図9】第一実施形態に係る洗浄設備用プラズマ処理装置を示すブロック図である。
【
図10】第一実施形態に係るプラズマ処理装置を示す拡大側面図である。
【
図11】本発明の第二実施形態に係る洗浄設備用プラズマ処理装置を示す概略側面図である。
【
図12】本発明の第三実施形態に係る洗浄設備用プラズマ処理装置を示す概略側面図である。
【
図13】本発明の第四実施形態に係る洗浄設備用プラズマ処理装置を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明の実施形態は、以下に記載された実施形態に限定されるものではない。各実施形態及び変形例は適宜組み合わせて適用することができる。また、説明における「上下」等の方向は説明の便宜上用いるものであって、本発明の方向を限定するものではない。
【0018】
本実施形態の洗浄設備用プラズマ処理装置は、気体を連続してプラズマ処理するために、誘電体層、電極層及びマスク層(省略可)を有する多層構造のプラズマ生成部と、一対の電極層間に交流電圧を印加することができる電源部と、プラズマ生成部に気体を流すことができる気体流動部と、を有している。誘電体バリア放電では、2つの電極層の間に誘電体層を設けて、両電極層間に交流電圧を印加することによって、両電極層で挟まれた誘電体層内にプラズマを発生させることができる。まずは、プラズマ生成部について説明する。
【0019】
<プラズマ生成部の基本構造>
プラズマ生成部10は、
図1及び
図2に示すように、誘電体層11と、上層電極12と、下層電極13と、上側マスク層14と、下側マスク層15と、を備えている。プラズマ生成部10は、薄膜状部材であり可撓性を備えている。誘電体層11は便宜上一つの誘電体として表現しているが、一つ以上の空気を含む誘電体を重ね合わせたものでもよい。また、マスク層は、電極の保護や電極の組み立てや性などを改善するためであり、なくてもよい。さらには、マスク層の厚みと位置を適当に選ぶことで、電極への過度な電界集中を防ぐことができ、電極の寿命を長くすることができる。
【0020】
誘電体層11は、
図1~3に示すように、上層電極12と下層電極13の間に設置される層状部材である。誘電体層11の材料は、上層電極12と下層電極13の間で容易に放電することがないように、絶縁破壊電圧の大きな絶縁性材料を使用する。また、誘電体層11の材料は、発生するプラズマにさらされることになるため、プラズマ中で発生する活性物質に対して耐久性を有した材料であることが好ましい。誘電体層11の材料は、主としてガラス、セラミックス及び合成樹脂から選ばれる材料であることが好ましい。「主として」とは、成分組成が50質量%以上であることを意味している(以下同様である)。誘電体層11は便宜上一つの誘電体として示しているが、空気を含む複数の誘電体を重ね合わせたものでも良い。
【0021】
ガラスとしては、ソーダ石灰ガラス(ソーダガラス)、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、酸化物ガラスなどが挙げられる。
合成樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂がある。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリ乳酸、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの汎用樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリングプラスチック、ポリフェニレンスルファイド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、フッ素系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。これらの合成樹脂の中では、耐久性に優れたシリコーン系樹脂やポリイミド系樹脂、テフロン系樹脂が特に好ましい。誘電体層11の厚さは特に制限されないが、軽量で小型化を図るために0.1mm~5.0mmが好ましく、0.1mm~3.0mmがより好ましく、0.1~1.0mmがさらに好ましい。
【0022】
上層電極(電極層)12及び下層電極(電極層)13は、
図2及び
図3に示すように、誘電体層11の表裏に設置される層状部材である。上層電極12及び下層電極13には、厚さ方向に貫通する貫通孔16がそれぞれ設けられている。貫通孔16は、本実施形態では長丸状を呈し、5つ形成されているが、形状や個数は限定されるものではない。貫通孔16は、省略してもよいが、本実施形態のように、貫通孔16があることでプラズマを発生し易くすることができ、電源回路の作成を容易にすることができる。また貫通孔16部分で気体と接することで気体のプラズマ処理を可能とする。
【0023】
上層電極(電極層)12及び下層電極(電極層)13は、導電性材料で形成されており、金属板(金属箔を含む)、導電性塗料、導電性高分子、導電性の膜などを使用することができる。上層電極12及び下層電極13の厚さは、特に制限されないが、可撓性を備えるとともに軽量でコンパクトな処理装置とするために、それぞれ5μm~1.0mmが好ましく、5μm~0.2mmがより好ましく、5μm~0.1mmがさらに好ましい。
【0024】
誘電体層11と上層電極12及び下層電極13は、接着剤を使用せずに積層してもよいし、接着剤で接着してもよい。接着剤としては、プラズマ中で発生する活性物質に対して耐久性を有した材料であることが好ましい。接着剤としては、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、フェノール系、ユリア系、シリコーン系、シアノアクリレート系、ゴム系、酢酸ビニル系などの種類がある。これらの中では、耐久性の点から、シリコーン系接着剤、UV硬化型エポキシ系接着剤が好ましく、ポリアミド系接着剤や、ポリイミド系接着剤、シリコーン系接着剤がより好ましい。接着剤の厚さは、0.01~0.2mmが好ましく、0.01~0.1mmがより好ましい。
【0025】
上側マスク層(マスク層)14及び下側マスク層(マスク層)15は、
図3に示すように、上層電極12及び下層電極13の外側にそれぞれ設置される部材である。より詳しくは、上側マスク層14は、上層電極12の上面に設置されている。下側マスク層15は、下層電極13の下面に設置されている。上側マスク層14及び下側マスク層15には、貫通孔17がそれぞれ設けられている。貫通孔17は、本実施形態では長丸状を呈し、5つ形成されているが、形状や個数は限定されるものではない。貫通孔17は、省略してもよいが、製造のしやすさから、貫通孔17は貫通孔16と同じであるほうが好ましいがこの限りではない。
【0026】
図2及び
図3に示すように、貫通孔17は、貫通孔16と同形状になっており、互いに連通するようになっている。貫通孔16,17によって、誘電体層11が外部に露出する。換言すると、誘電体層11は、貫通孔16,17が形成されている複数の箇所において、その表面が外部に露出している。また、貫通孔16,17の孔壁(断面部)16a,17aも外部にそれぞれ露出している。
【0027】
上側マスク層14及び下側マスク層15は、絶縁性材料で形成されている。また、上側マスク層14及び下側マスク層15の硬度は、上層電極12及び下層電極13の硬度と同等かそれよりも小さくなるように形成することが好ましい。プラズマ生成部10を薄い部材で製造した場合取り扱いが難しくなるという問題があるが、上側マスク層14及び下側マスク層15を設けることで取り扱い性を高めることができる。また、上側マスク層14及び下側マスク層15は、薄い導体を製造時や使用時の機械的・物理的な衝撃や導体の周辺環境から受ける劣化などから保護することができる。また、製造時などに生じるような傷などから機械的に保護することができる。一方、プラズマ生成部10を取付対象物に設置することを考慮すると、上側マスク層14及び下側マスク層15は、取付対象物に沿って設置し易く、かつ、取り扱い性も高められる硬さであることが好ましい。さらには、誘電体層11を2分割することで、プラズマ生成部10の上層構造と下層構造を対称にすることができる。上層構造と下層構造を組み立てて、中央で貼り合わせるようにすると容易に製造できる。この場合、誘電体層11は、上層、下層と接着層の三層に分割されるが、電気的には一つの誘電体として考えられる。
上側マスク層14及び下側マスク層15の厚さは、特に制限されないが、可撓性を備えるとともに軽量でコンパクトな処理装置とするために、それぞれ5μm~1.0mmが好ましく、5μm~0.2mmがより好ましく、5μm~0.1mmがさらに好ましい。上側マスク層14及び下側マスク層15の厚さは適宜設定すればよいが、本実施形態では上層電極12及び下層電極13の厚さよりも大きくなるように形成している。
【0028】
プラズマ生成部10は、非常に薄く、可撓性もあるため、例えば、組み付け時において取り扱いが困難になるという問題がある。また、上層電極12及び下層電極13は導電性を備えた金属や導電性の誘電体など、導電性の物質で形成されていて、例えば金属などは液体や気体によって浸食される場合がある。例えば、上層電極12及び下層電極13は、酸化力の強い気体では酸化するし、硫酸や塩酸などでは浸食される。また例えば、上層電極12及び下層電極13は、樹脂系の導体物質であると湿度や酸などで劣化することもある。また、プラズマ生成部10は、取付対象物の形状に沿って設置するものであるが、上側マスク層14及び下側マスク層15を設けず上層電極12及び下層電極13のみであると、仮に電極が薄い金属の場合、電極を構成する金属にしわがよったり、誘電体層11との間に隙間があいたりするという問題がある。上層電極12及び下層電極13と誘電体層11との間に隙間があくと、異常放電や部分放電を起こす原因にもなる。
この点、本実施形態によれば、上側マスク層14及び下側マスク層15によって、上層電極12及び下層電極13を保護することができるとともに、プラズマ生成部10が扱いやすくなり、作業性や組付性を高めることができる。また、上側マスク層14及び下側マスク層15を備えることで、しわや隙間が形成されることなく取付対象物に設置することができる。また、一対の電極を複数組設けて多段化する場合には、上側マスク層14及び下側マスク層15がバリア放電を構成する誘電体の一部にもなるため、仮に設置する際に隙間ができても異常放電が起こり難くなる。状況によっては、マスク層は上層、あるいは下層のどちらかの一方でも同様の効果が得られる。
【0029】
なお、上層電極12及び下層電極13は、その外縁部が外界に曝されて経時劣化しないように、また貫通孔16以外の外縁部を経由して放電することがないように、外縁部を絶縁体(図示省略)で封止してもよい。マスク層として樹脂などを使う場合には、上層電極12と下層電極13に加えて、誘電体層11の上面、下面まで薄く広がるため、このような効果が得られる。
同様に、上側マスク層14及び下側マスク層15は、その外縁部が外界に曝されて外界の物質を反応して経時劣化しないように、また貫通孔17以外の外縁部を経由して放電することがないように、外縁部を絶縁体(図示省略)で封止してもよい。
【0030】
貫通孔16,17の長手方向は、気体の流通方向と平行になると、気体の流れの抵抗が小さくなり、気体の流れがスムーズになる。一方、貫通孔16,17の長手方向と、気体の流通方向が直交すると、気体の流れの抵抗が大きくなり、気体の流れが乱されて、気体が攪拌されることになる。
【0031】
貫通孔16,17の形状、個数、気体の流れに対する向きをどのようにするかは、プラズマ処理の目的、プラズマ処理の効果等に応じて適宜選択して実施することができる。また、プラズマ生成部10の表側と裏側とで貫通孔の形状が異なるようにしてもよい。また、プラズマ生成部10の表側に貫通孔を設け、裏側には貫通孔を設けないようにしてもよい。
【0032】
<プラズマ生成部の第一変形例>
図4は、第一変形例に係るプラズマ生成部を説明するための斜視図である。第一変形例に係るプラズマ生成部10Aは、上側マスク層14が設けられていない点で、前記した基本構造と相違する。第一変形例に係るプラズマ生成部のように、マスク層は、プラズマ生成部10Aの片側に設けられているだけでもよい。
【0033】
<プラズマ生成部の第二変形例>
図5は、第二変形例に係るプラズマ生成部を説明するための斜視図である。第二変形例に係るプラズマ生成部10Bは、上側マスク層14及び下側マスク層15が設けられていない点で、前記した基本構造と相違する。第二変形例に係るプラズマ生成部のように、上側マスク層14及び下側マスク層15は省略してもよい。つまり、プラズマ生成部10Bを、誘電体層11、上層電極12及び下層電極13で構成することにより、より小型化を図ることができるとともに、部品点数を削減することができる。
【0034】
また、第一変形例及び第二変形例のように、上側マスク層14及び下側マスク層15を両方又は片方省略することで、上層電極12及び下層電極13を直接気体と触れさせることができ、電極の端でプラズマと気体とを接触させ、プラズマ気体を容易に取り出すことができる。
【0035】
<プラズマ生成部の第三変形例>
図6は、第三変形例に係るプラズマ生成部を説明するための断面図である。第三変形例に係るプラズマ生成部10Cは、誘電体層11Caの下側に空気層18を設けている点、上側マスク層14及び下側マスク層15を備えていない点で基本構造と相違する。また、プラズマ生成部10Cは、下層電極13の下面に誘電体層11Cbをさらに備えている。プラズマ生成部10Cは、誘電体層11Ca,11Cb、上層電極12、下層電極13、空気層18を備えている。ただし、空気も誘電体の一種と考えられるので、誘電体層11Ca,11Cb、空気層18の三つを合わせて、一つの誘電体層と考えると、基本構造の
図2と同じものと考えられる。下層電極13の下面に設けられた誘電体層11Cbは、下層電極13を支持するために用いられている。第三変形例のように、誘電体層11Caと下層電極13との間に空気層18を設けつつ、上側マスク層及び下側マスク層を省略してもよい。このような形態でも基本構造と略同等の効果を奏することができるとともに部品点数を減らすことができる。
【0036】
上層の誘電体層11Caと空気層18は、合成して一つの誘電体として機能する。この誘電率は、誘電体層11Caの比誘電率(あるいは誘電率)と厚み、それに、気体として空気を用いる場合には、空気の比誘電率(あるいは誘電率)と空気層18の厚みから計算できる。また、誘電体層11Cbは、プラズマ発生にはほとんど関与しない。ただし、このような構造とすることで、上層電極12と下層電極13を有する構造体として同じものを用いることもできる。これにより、製造コストを抑えることができる。
【0037】
第三変形例では、空気層18においてもプラズマを発生させることができる。なお、基本構造のように上層電極12及び下層電極13の上面に、上側マスク層14及び下側マスク層15をそれぞれ設けるようにしてもよい。また、第三変形例では、誘電体層11Ca,11Cbを構造的に支える支柱や溝や突起などが付いた支持体については表示していない。電極構造を支える構造物は、電極から十分な距離を置いて配置すれば、導体、絶縁体のどちらでもよいが、絶縁体のほうが好ましい。また、内部を通る流体の流れを分割、制御、あるいは流速を変える目的で、空気層18に構造物を配置してもよい。またこれらの構造物が誘電体で構成されている場合、電界を制御して、特定の部分の電界集中を抑えたり、あるいは逆に電界を意図的に集中させることでもできる。
【0038】
<プラズマ生成部の第四変形例>
図7は、第四変形例に係るプラズマ生成部を説明するための断面図である。第四変形例に係るプラズマ生成部10Dは、上から順に、空気層18と、上層電極12と、誘電体層11Caと、空気層18と、下層電極13と、誘電体層11Cbと、空気層18と、上層電極12と、誘電体層11Caと、空気層18と、下層電極13と、誘電体層11Cbと、を備えている。つまり、第三変形例に係るプラズマ生成部10Cを高さ方向に二つ積層させて構成されている。誘電体層11Ca,11Cbの端部は、箱状の筐体21Dに支持されている。
【0039】
筐体21Dの内部に誘電体層11Caの一方面(上面)のみに上層電極12が積層された基本ユニットと、誘電体層11Cbの一方面(上面)のみに下層電極13が積層された基本ユニットとが空気層(気体流入層)18を介して交互に配置されている。これにより、極性の異なる電極が交互に積層されるが、プラズマが発生しない空間を作りたい場合には電極は交互に配置しなくともよい。このようにプラズマを発生させない空間を設計することで、その間にセンサを配置したり、あるいは配線や他の回路などを配置したりすることもできる。高さ方向に隣り合う電極層間に空気層18がそれぞれ形成される。
【0040】
本変形例によれば、誘電体層と電極層(上層電極12又は下層電極13)から構成される基本ユニットを間隔をあけて積層させるだけで、プラズマ生成部10Dを容易に形成することができる。また、複数の空気層18でプラズマを生成することができるため、少ないスペースで効率よくプラズマを生成することができる。また、容易に多段化することができ、プラズマ処理の能力を簡単に変更できるため製造コストの低減や開発期間を短縮することができる。
【0041】
気体をプラズマ処理することによって発揮される機能としては、殺菌、ウィルスの不活化、消臭、表面改質、化学物質の分解などが挙げられる。これらの機能が発揮されるメカニズムとしては、プラズマ処理によって、気体中に一重項酸素、過酸化水素、OHラジカル、ペルオキシドラジカル、オゾン等の活性種が生成し、それらが酸化反応等によって、対象となる微生物を死滅させたり、化学物質を分解・改質させたりするためと考えられている。微生物としては、各種の細菌、ウィルス、カビなどが挙げられる。
【0042】
プラズマ処理された気体は、プラズマによって発生した活性種によって、当該気体中に存在する微生物が死滅したり、化学物質が分解したりして、当該気体の殺菌・消臭等が行われる。
さらに、プラズマ処理された気体中に、活性種が存在(残存)している。そのため、本形態のプラズマ処理装置によって生成したプラズマ処理された気体を対象物に吹き付けることによって、当該対象物中に存在する微生物が死滅したり、化学物質が分解したりして、当該対象物の殺菌・消臭等が行われる。
【0043】
<第一実施形態>
次に、本発明の第一実施形態に係る洗浄設備用プラズマ処理装置について説明する。
図8及び
図9に示すように、本実施形態に係る洗浄設備用プラズマ処理装置100は、洗浄設備200に設けられる。洗浄設備200は、水槽201と、ヒーターユニット202と、を備えている。ヒーターユニット202は省略してもよい。説明を省略するが洗浄設備200は、給水タンクや給水用のパイプ、満水になった際に給水を止める止水弁など各種の設備を備えていてもよい。
【0044】
水槽201は、上方が開口し、内部に水が貯留されている。水槽201は、例えば、施設の入場口の床や各ゲートの床等に配置されている。水槽201の水は、施設又は施設のエリアに入場する人の足、靴底、車両のタイヤ、機器の脚等(洗浄対象物)を洗浄する際の洗浄水として用いられる。洗浄対象物はあくまで例示であって、他の物、人の他の部位であってもよい。ヒーターユニット202は、水槽201の内部に貯留された水の温度を調節する装置である。なお、ヒーターユニット202は省略してもよい。また図示していないが、水槽には泥などを濾すフィルタがあってもよい。またこの殺菌効果のある水を噴霧できる小型の噴霧器などを周辺に設置してもよい。さらには、この水槽内の水を攪拌するポンプやモーターなどがあってもよい。
【0045】
洗浄設備用プラズマ処理装置100は、
図8及び
図9に示すように、プラズマ生成部10と、気体流動部20と、電源部30と、水位センサ40と、ワイヤレスインターフェース50と、制御部60と、温度センサ70と、を備えている。本実施形態のプラズマ生成部10は、前記したプラズマ生成部の基本構造と同じであるが、プラズマ生成部の第一変形例、第二変形例を用いてもよい。プラズマ生成部10は、一つであってもよいし、複数設置してもよい。
【0046】
気体流動部20は、気体をプラズマで処理するためにプラズマ生成部10に気体を流すとともに、プラズマによって処理された気体を洗浄設備200に供給する部位である。
図10にも示すように、気体流動部20は、筐体21と、流入チューブ(流入部)22と、流出チューブ(流出部)23と、送風装置24と、を備えている。筐体21は、プラズマ生成部10を覆う箱状体である。
【0047】
流入チューブ22は、送風装置24と筐体21とを連結するフレキシブルな筒状体である。流出チューブ23は、筐体21と洗浄設備200の水槽201とを連結するフレキシブルな筒状体である。流出チューブ23の先端は洗浄設備200の水槽201に貯留された水の内部に位置している。流入チューブ22は、プラズマ生成部10に気体を供給することができる流入部として機能するものであれば他の形態でもよい。また、流出チューブ23は、プラズマ生成部10でプラズマによって処理された気体を流出させる流出部として機能するものであれば他の形態でもよい。
【0048】
送風装置24は、プラズマ生成部10に空気を供給するとともに、プラズマによって処理された空気を洗浄設備200に供給する装置であって、公知の装置を適宜選択して用いることができる。気体を流動させる駆動装置としては、遠心式送風機(シロッコファン、ラジアルファン、ターボファンなど)、軸流式送風機(プロペラファンなど)、斜流式送風機(ラインファンなど)、横流式送風機、ブロア、コンプレッサーなどの公知の装置が適宜使用される。送風装置24は、制御部60からの制御信号に基づいて稼働、停止又は送風量あるいは気体の送り出し圧力を制御する。また、送風装置24の代わりに例えば、加圧されたエアーホースの出口などに流入チューブ22を接続して気体を送ってもよい。この場合送風装置24は不要となる。さらに必要に応じて送風装置の入り口や出口にゴミなどを捉えるフィルタを設けてもよい。
【0049】
電源部30は、誘電体層11を挟んで互いに対向する上層電極12と下層電極13との間に交流電圧を印加するものである。電源部30は、例えば、電源コネクタ31に接続されている。電源部30については、プラズマ生成部10の各電極に所定の周波数で所定の電圧の交流電圧を印加することができれば特に制限はなく、公知の電源装置を用いることができる。交流電圧の周波数としては、50Hz~30MHzが好ましく、50Hz~100kHがより好ましい。また、交流電圧としては、0.1~50kVが好ましく、0.2~10kVがより好ましい。小型化のためには動作周波数を上げたほうがよい。
【0050】
水位センサ40は、水槽201の水位を測定するセンサである。水位センサ40の測定結果は、制御部60に送信される。水位センサ40は、水槽201の内部に設置されている。水タンクの出口を水面側に向けて自動的に一定の水位まで供給するような装置がある場合、水位センサ40は取り除いてもよい。
【0051】
ワイヤレスインターフェース50は、無線で移動端末装置、端末装置等に情報を提供する部位である。制御部60は、プラズマ生成に関する情報をワイヤレスインターフェース50に送信する。プラズマ生成に関する情報は、例えば、プラズマの発生回数、発生量(プラズマ密度)、プラズマの強さ、電圧や電流、あるいは電力量、運転時間、電源部やコントローラー、プラズマ発生部の温度、湿度、ファンやポンプに関する情報、水温、エラー情報等である。また、移動端末装置等に送信する情報としては、例えば、施設の入場者数、水量等を含めてもよい。ワイヤレスインターフェース50は、例えば、ブルートゥース(登録商標)やWi-Fi、NFC(Near Field Communication)、誘導コイル、光センサーなどを用いることができる。移動端末装置は、例えば、スマートフォン、携帯電話等を用いることができる。端末装置は、例えば、パソコンやタブレットを用いることができる。
【0052】
制御部60は、洗浄設備用プラズマ処理装置100の各部位に制御信号を送信して制御する部位である。制御部60は、筐体21に設置されている。制御部60は、演算部(中央演算装置)、記憶部を少なくとも備えている。制御部60は、制御部電源61を介して電源コネクタ31に接続されている。制御部電源61は、制御部60の動作に必要な電源を作り出して供給する部分である。制御部60は、制御部60内に設けられた高圧制御部(図示省略)を介して電源部30に制御信号を送信して各電極層(上層電極12及び下層電極13)に交流電圧を印加する。また、制御部60は、交流電圧の印加に合わせて送風装置24に制御信号を送信してプラズマ生成部10に空気を流通させる。
【0053】
また、制御部60は、日付及び時刻を計測するタイマ部(図示省略)を備えている場合もある。また、制御部60は、水槽201に設けられた人感センサ(図示省略)からの検知結果を受信するように構成されている。制御部60が交流電圧を印加させるタイミングは、適宜設定することができる。例えば、制御部60に時刻を計測するタイマ部を設け、所望の時間帯にプラズマを発生するようにしてもよいし、所定の操作で稼働させてもよいし、常時稼働させてもよい。
【0054】
温度センサ70(水温用温度センサ)は、水槽201の水温を測定するセンサである。測定結果は、制御部60に送信される。温度センサ70で水槽201内の水温を測定することできるため、検知結果に基づいてヒーターユニット202を制御し所望の温度に調節することができる。ヒーターユニット202がない場合には、温度センサ70は省略してもよい。また説明を省略しているが、機器の状態を把握、あるいは異常な状況を検出するための温度センサが必要に応じて配置されている。これらは、機器の動作状態を検出するためのものであり、必要に応じて1個又は複数個設置される。
【0055】
次に、本実施形態に係る作用効果について説明する。制御部60は、交流電圧を印加させる制御信号を電源部30に送信するとともに、送風装置24を稼働、あるいは送風量を制御させる。これにより、流入チューブ22、筐体21及び流出チューブ23に気体が流れるとともに、プラズマ生成部10で発生したプラズマによって気体が処理され、プラズマ気体が水槽201の水の中に供給される。これにより、水槽201の水がプラズマによって処理され、プラズマ水(プラズマ液体)が生成される。
【0056】
例えば、利用者が足(靴)を水槽201内のプラズマ水に浸すことで、足(靴)に付着している汚れなどを落として洗浄することができるとともに、プラズマにより菌を滅菌(殺菌)することができる。また、本実施形態は、有機物にとりついてウィルスや菌の活性度を下げるため、薬剤に耐性をもった耐性菌に対しても滅菌(殺菌)効果がある。また、当該プラズマ水によれば、滅菌するための薬剤を投入する必要もなくなり、作業を省力化できるとともに、薬剤のコストも削減できる。さらに本実施形態によれば、電気のみの供給で洗浄設備用プラズマ処理装置100を動作できるため、例えば大規模な災害時などで薬剤の供給が止まった場合でも、滅菌(殺菌)効果を提供できる。制御部60は、前記した人感センサからの検知信号に基づいて洗浄設備200を利用したと認識し、日時と共に記憶部に記憶される。これにより、洗浄設備用プラズマ処理装置100の利用頻度を把握することもできる。
【0057】
また、本実施形態は、足を水槽201内のプラズマ水に浸した場合、薬より粘土の低い液体に殺菌成分を取り込ませて浸透させるため、粘土の高い液体では入りづらい皮膚の隙間やひび割れ部分にも侵入して、滅菌(殺菌)効果を発揮することができる。また、5~10分以上で使用する場合は、皮膚をふやけさせ、柔らかくすることで、皮膚の奥に潜む菌まで殺菌できる。また、水槽201の大きさを適宜大きくすることで、大型の洗浄対象物(車両のタイヤや各種機械の脚等)も滅菌(殺菌)できる。さらにはアルコールのみの消毒や塩素のみの消毒では効果の出づらいウィルスなどにも効果が期待できる。
【0058】
また、温度センサ70で水温を検知し、測定結果が制御部60に送信される。この測定結果に応じてヒーターユニット202を作動させることで、水温の調節をすることができるため、冬場や寒冷地であっても水が氷ることなく使用することができる。なお、加温の必要がない場合は、ヒーターユニット202を省略してもよい。
【0059】
また、水位センサ40の測定結果において、水位が継続的に下がる、水位が下がったままになる、若しくは、水位の異常な上下動が検知された場合、何らかの故障があると検知し、エラー信号を発信し、洗浄設備用プラズマ処理装置100を停止させることもできるし、ワイヤレスインターフェース50を介して利用者の移動端末装置等にエラー情報を送信することもできる。
【0060】
また、プラズマ生成部10は筐体21で覆われるとともに、例えば、水槽201の外部に取り付けられている。洗浄設備200の使用に邪魔にならず、かつ、プラズマ生成部10と水とを切り離すことができる。これにより、水に起因する機器の故障を防ぐことができる。
また、本実施形態の洗浄設備用プラズマ処理装置100によれば、新設の洗浄設備200だけでなく、既設の洗浄設備200にも容易に取り付けることができる。必要に応じて流入チューブ22の入力部にゴミなどを取り除くフィルタを設けてもよい。
【0061】
<第二実施形態>
次に、
図11に示すように、本発明の第二実施形態に係る洗浄設備用プラズマ処理装置100Aについて説明する。洗浄設備用プラズマ処理装置100Aは、リザーブタンク28を備えている点で第一実施形態と相違する。本実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0062】
洗浄設備用プラズマ処理装置100Aは、洗浄設備200Aに設けられるものであって、プラズマ生成部10と、気体流動部20と、電源部30と、水位センサ40と、ワイヤレスインターフェース50と、制御部60と、温度センサ70と、リザーブタンク28と、を備えている。
【0063】
リザーブタンク28は、水(液体)を貯留することができる設備である。配管29は、水槽201と、リザーブタンク28とを連結する管である。配管29の一端はリザーブタンク28に連結され水の流出部となっている。配管29の他端は、水槽201の内部に位置している。配管29にはバルブ(例えば、電磁バルブ、図示省略)が設けられており、制御部60からの制御信号に基づいて開閉可能になっている。
【0064】
本実施形態では、水位センサ40から送信される測定値が所定の閾値を下回ると、制御部60は、制御信号を送信してバルブを所定時間開弁する。これにより、所定量の水がリザーブタンク28から水槽201に流れ、水を補充することができる。本実施形態によれば、水槽201が水不足(液体不足)になることを防ぐことができる。なお、本実施形態では、リザーブタンク28を設けたが、水槽201の水が所定量貯留されるように、水を補充することができれば他の形態であってもよい。
【0065】
<第三実施形態>
次に、
図12に示すように、本発明の第三実施形態に係る洗浄設備用プラズマ処理装置100Bについて説明する。洗浄設備用プラズマ処理装置100Bは、プラズマ水生成部(プラズマ液生成部)25を備えている点で第一実施形態と相違する。本実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0066】
洗浄設備用プラズマ処理装置100Bは、洗浄設備200Bに設けられるものであって、プラズマ生成部10と、気体流動部20Bと、電源部30と、水位センサ40と、ワイヤレスインターフェース50と、制御部60と、温度センサ70と、プラズマ水生成部25と、を備えている。
【0067】
プラズマ水生成部25は、水が貯留された容器を備えている。プラズマ水生成部25は、プラズマ生成部10で生成されたプラズマ気体を受け入れ、貯留された水をプラズマによって処理してプラズマ水を生成する部位である。導入管26及び導出管27は、プラズマ水生成部25と水槽201とを連結する配管である。本実施形態では、プラズマ水生成部25で生成されたプラズマ水は、導出管27を介して水槽201内に供給される。水槽201内の水は、導入管26を介してプラズマ水生成部25に戻る。つまり、プラズマ水生成部25と水槽201とで水が循環するようになっている。
【0068】
筐体21で覆われたプラズマ生成部10は、設置スペースが狭いなどの要因により、水槽201の外部又は近傍に設置できない場合がある。本実施形態によれば、プラズマ水生成部25で生成されたプラズマ水を導出管27を介して水槽201へ供給することができる。そのため、設置スペースの狭い場所等においても、洗浄設備用プラズマ処理装置を適用することができる。また、プラズマ水生成部25を設けることで、各設備間の距離や設備面積に応じて設備設計の自由度を高めることができる。
【0069】
<第四実施形態>
次に、
図13に示すように、本発明の第四実施形態に係る洗浄設備用プラズマ処理装置100Cについて説明する。洗浄設備用プラズマ処理装置100Cでは、筐体21C内の空間が複数設けられており、異なる圧力の気体を取り出すことができる点で第一実施形態と相違する。本実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0070】
気体流動部20Cは、筐体21Cと、流入チューブ22A,22B,22Cと、流出チューブ23A,23B,23Cと、各流入チューブ22A,22B,22Cに接続された送風装置(図示省略)とを備えている。各送風装置は、それぞれ異なる風速(風圧)で気体を送ることができる。
【0071】
筐体21Cは、層状の誘電体層11Aaと、誘電体層11Abとを備えており、筐体21C内を第一空間71、第二空間72及び第三空間73の三つの空間に隔てている。誘電体層11Aaの上面には上層電極12が設置され、誘電体層11Abの下面には下層電極13が設置されている。上層電極12及び下層電極13は、電源部30に電気的に接続されている。上層電極12、下層電極13、誘電体層11Aa、誘電体層11Ab及び第二空間72(空気層)で「プラズマ生成部」を構成している。上層電極12及び下層電極13に交流電圧を印加することにより、第一空間71、第二空間72及び第三空間73に流通する気体をプラズマによって処理することができる。上層電極12及び下層電極13には必要に応じて穴や、穴が大きくなった構造(例えば網状のようなもの)を形成してもよい。また、上層電極12及び下層電極13の上には、電極を保護するためのマスク層があってもよい。
【0072】
第一空間71では、流入チューブ(流入部)22Aから気体が流入し、プラズマ気体が流出チューブ(流出部)23Aから取り出される。また、第二空間72では、流入チューブ(流入部)22Bから気体が流入し、プラズマ気体が流出チューブ(流出部)23Bから取り出される。また、第三空間73では、流入チューブ(流入部)22Cから気体が流入し、プラズマ気体が流出チューブ(流出部)23Cから取り出される。
【0073】
各空間から取り出されるプラズマ気体は、圧力(気圧)が異なっているため、各気圧に応じてプラズマ気体の供給先を選定することができる。例えば、車両のタイヤ等を洗浄する大型の水槽201の場合は大きな圧力が必要なため、圧力が高いプラズマ気体を水槽201に供給する。また、靴裏を洗浄する小型の水槽201の場合は圧力が小さくて済むため、最も低い圧力のプラズマ気体を水槽201に供給する。
【0074】
本実施形態によれば、気体流動部20Cによって、一のプラズマ生成部に対して複数の異なる圧力(気圧)のプラズマ気体を取り出すことができる。これにより、水槽201の大きさが複数あり供給先の気圧の負荷が異なる場合であっても効率よくプラズマ気体を供給することができる。なお、本実施形態では、空間を3つ設けたが、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0075】
気体の負荷は、供給先の状況によって異なっている。例えば、大きい水槽の中に気体を送る場合は、小さい水槽の中に気体を送るのに比べて高い圧力が必要となる。このような場合、プラズマ生成部を気圧ごと設けると、その分コストがかかってしまうとともに、設置スペースも増えてしまう。
【0076】
この点、本実施形態によれば空間ごとに流入チューブ(流入部)及び流出チューブ(流出部)を備えており、3つの空間がそれぞれ独立しているため、例えば、一の空間に不具合があっても、他の空間ではプラズマ生成を継続することができるため、装置全体の信頼性を高めることができる。また、例えば、大きい水槽の中及び小さい水槽の中に加え、入口付近の大気中にもプラズマ気体を供給することができるため、滅菌するエリアを増やすことができる。
【0077】
なお、本実施形態のようにプラズマ生成部においては、前記した基本構造のように誘電体層の上面及び下面に一対の電極層が設けられている構成してもよいし、本実施形態のように一対の電極層の間に誘電体層を介して空気層(空間)があるように構成してもよい。後者の場合であってもプラズマを生成することができる。また、各空間に送られるプラズマ気体の圧力(気圧)は、少なくとも一か所において他の空間と異なっていればよく、全て異なっている必要はない。
【0078】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜設計変更が可能である。本実施形態では、水槽201を備える洗浄設備200を例示したが、水が貯留可能であり足等を浸すことのできる形状であればどのような形状であってもよい。例えば、平坦な面に窪み部を設け、水を貯留させたような形状であってもよい。
【0079】
また、本実施形態では、水にプラズマによって処理された気体を供給して、プラズマ水を生成したが、水以外の液体であってもよいし、水とその他の液体とを混合したものであってもよい。
【0080】
また、制御部60に入力部(タッチパネル等)、表示部(モニタ)を設けてもよい。例えば、入力部から入力された指示に基づいて、プラズマを発生させるようにしてもよい。また、表示部にプラズマ生成に関する情報、電気量、水量等を表示させてもよい。
また、第四実施形態では、風速(風圧)の異なる送風装置を第一空間71、第二空間72及び第三空間73ごとに設け、各空間の圧力(気圧)が異なるようにしたが、例えば、送風装置は一つにして空気が通る流路に弁を設け、当該弁で調整することで各空間の圧力を変えてもよい。また、送風装置は一つにして流路の内径を調整して各区間の圧力を変えてもよい。これにより、送風装置の設置数を減らすことで設備コストを下げることができる。
【符号の説明】
【0081】
10 プラズマ生成部
11 誘電体層
12 上層電極(電極層)
13 下層電極(電極層)
14 上側マスク層(マスク層)
15 下側マスク層(マスク層)
20 気体流動部
21 筐体
22 流入チューブ(流入部)
23 流出チューブ(流出部)
25 プラズマ水生成部(プラズマ液生成部)
30 電源部
40 水位センサ
60 制御部
70 温度センサ
100 洗浄設備用プラズマ処理装置
200 洗浄設備