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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139780
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20250919BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/01 301
B41J2/14 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038809
(22)【出願日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】石松 伸
(72)【発明者】
【氏名】吉川 晋平
(72)【発明者】
【氏名】宮下 岳穂
(72)【発明者】
【氏名】戸田 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍
(72)【発明者】
【氏名】但馬 裕基
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 樹
(72)【発明者】
【氏名】出田 智士
(72)【発明者】
【氏名】田丸 勇治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】來山 泰明
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FA03
2C056FA10
2C056HA09
2C056HA52
2C057AF63
2C057AG14
2C057AN01
2C057AP79
2C057AR14
2C057BA13
(57)【要約】
【課題】 フレキシブル配線基板の屈曲部における配線の電気信頼性を向上させた液体吐出ヘッドを得る。
【解決手段】 駆動信号により駆動される素子と、前記素子の駆動によって液体を吐出する吐出口と、を有する素子基板と、前記駆動信号を前記素子に供給するための配線を備えたフレキシブル配線基板と、第1の面で前記素子基板と前記フレキシブル配線基板とを支持する支持部材と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、前記フレキシブル配線基板は、前記支持部材の、第1の方向に延びる一辺に沿って屈曲された屈曲部を有し、前記第1の面に対して垂直な方向から見て、前記屈曲部は、前記第1の方向と直交する第2の方向において前記素子基板の辺と対向する領域に前記配線を有さない、液体吐出ヘッドである。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号により駆動される素子と、前記素子の駆動によって液体を吐出する吐出口と、を有する素子基板と、
前記駆動信号を前記素子に供給するための配線を備えたフレキシブル配線基板と、
第1の面で前記素子基板と前記フレキシブル配線基板とを支持する支持部材と、
を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記フレキシブル配線基板は、前記支持部材の、第1の方向に延びる一辺に沿って屈曲された屈曲部を有し、
前記第1の面に対して垂直な方向から見て、前記屈曲部は、前記第1の方向と直交する第2の方向において前記素子基板の辺と対向する領域に前記配線を有さない、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
駆動信号により駆動される素子と、前記素子の駆動によって液体を吐出する吐出口と、前記駆動信号を外部から受け取るための端子と、を有する素子基板と、
前記駆動信号を前記素子に供給するための配線を有するフレキシブル配線基板と、
第1の面で前記素子基板と前記フレキシブル配線基板とを支持する支持部材と、
を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記フレキシブル配線基板は、第1の方向に延びる前記支持部材の一端に沿って屈曲された屈曲部を有し、
前記第1の面に対して垂直な方向から見て、前記屈曲部は、前記第1の方向と直交する第2の方向において前記素子基板の辺と対向する領域を含む開口を有する、液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記支持部材を支持する筐体と、
前記第2の方向における前記筐体の第1の側面に配置され、前記フレキシブル配線基板と電気接続された電気配線基板と、
を有する、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記素子基板は、前記配線と電気接続するための端子を複数有し、
複数の前記端子は、前記第1の方向と交差する方向に並んで配置されている、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記配線は、
前記端子との接続部分から前記電気配線基板側に延びる第1の配線と、
前記端子との接続部分から前記電気配線基板と反対側に延びてから前記電気配線基板側に延びる第2の配線と、を含む、請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記フレキシブル配線基板は、内部に前記素子基板が配置される開口を有する、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記屈曲部を、前記第2の方向における前記電気配線基板側に有する、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記屈曲部を、前記第2の方向における前記電気配線基板側と反対側に有する、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記屈曲部を、前記第2の方向において前記支持部材を挟んだ両方に有する、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記素子基板は、前記第1の面と対向する面と反対の面に、前記吐出口と、前記配線と電気接続するための端子と、を有する、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記フレキシブル配線基板と、前記支持部材の前記第1の面と交差する側面と、の間に樹脂部材を有する、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
複数の前記端子のうちの端に配置された前記端子に対応して配置された、ダミー配線またはグランド配線を有する、請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記フレキシブル配線基板の前記支持部材と反対側の面に配置されたカバー部材をさらに有する、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記素子基板は、前記第1の方向に並んで配置された、第1の素子基板と、第2の素子基板と、を有し、前記第1の素子基板と前記第2の素子基板との間を経由するように配置された前記配線を有する、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
前記第1の素子基板は、前記配線と電気接続するための端子が前記第1の方向と交差する方向に複数並んだ端子列を有し、
前記端子列は、前記第2の素子基板と対向しない前記第1の素子基板の辺に沿って配置されている、請求項14に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項16】
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドを備え、前記液体吐出ヘッドが走査運動するように構成された液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置などの液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドは、装置本体からの電気信号に基づいてエネルギー発生素子を駆動し、微小な吐出口から液滴を吐出させる。液体吐出ヘッドは、記録装置本体に搭載されており、記録装置本体から供給される電気信号で制御、駆動され、媒体上に液体を吐出して画像の形成などを行う。従って、液体吐出ヘッドは、駆動信号などを伝達するための電気配線基板を有している。一般に、液体吐出ヘッドは、エネルギー発生素子や吐出口を備えた素子基板と、素子基板に電気接続された電気配線基板としてのフレキシブル配線基板を有している。
【0003】
電気配線基板は導電性のコンタクトパッドを含む電気信号入力部を備えており、記録装置本体はコンタクトパッドと電気的に接続するコンタクトピンを備えている。コンタクトパッドとコンタクトピンが接触することで、電気的な通信が可能となる。
【0004】
近年、液体吐出装置および液体吐出ヘッドには、高精細な画像を高速にかつ、安価に得る事が要求されている。このため、素子基板においてエネルギー発生素子は高集積化され、それに応じてフレキシブル電気配線基板内(フレキシブル基板)の配線数も増加する。配線数の増加に対応する方法には、フレキシブル配線基板そのものを広く長くする方法がある。この際、大きくなったフレキシブル配線基板は、液体吐出ヘッドの筐体に沿って折り曲げ固定する事により、液体吐出ヘッドの大型化を回避できる。
【0005】
特許文献1には、素子基板に電気接続されたフレキシブル配線基板を折り曲げ、液体吐出ヘッドの筐体の面に固定した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015―93452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フレキシブル配線基板の折り曲げに関して、液体が吐出される領域における紙などの被吐出媒体のコックリング量低減のための、紙おさえ幅の増大を抑制する観点では、直角に近い曲率で曲げることが好ましい。紙おさえ幅が大きくなる事は、装置本体の大型化につながりコストアップにもつながるためである。一方で、屈曲率が小さいと、折り曲げ部分でフレキシブル配線基板内部の配線が割れるなどの破損につながる場合がある。
【0008】
上記課題を解決する本発明は、フレキシブル配線基板の屈曲部における配線の電気信頼性を向上させた液体吐出ヘッドを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の1つの容態は、駆動信号により駆動される素子と、前記素子の駆動によって液体を吐出する吐出口と、を有する素子基板と、前記駆動信号を前記素子に供給するための配線を備えたフレキシブル配線基板と、第1の面で前記素子基板と前記フレキシブル配線基板とを支持する支持部材と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、前記フレキシブル配線基板は、前記支持部材の、第1の方向に延びる一辺に沿って屈曲された屈曲部を有し、前記第1の面に対して垂直な方向から見て、前記屈曲部は、前記第1の方向と直交する第2の方向において前記素子基板の辺と対向する領域に前記配線を有さない、液体吐出ヘッドである。
【0010】
また、本発明の別の容態は、駆動信号により駆動される素子と、前記素子の駆動によって液体を吐出する吐出口と、前記駆動信号を外部から受け取るための端子と、を有する素子基板と、前記駆動信号を前記素子に供給するための配線を有するフレキシブル配線基板と、第1の面で前記素子基板と前記フレキシブル配線基板とを支持する支持部材と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、前記フレキシブル配線基板は、第1の方向に延びる前記支持部材の一端に沿って屈曲された屈曲部を有し、前記第1の面に対して垂直な方向から見て、前記屈曲部は、前記第1の方向と直交する第2の方向において前記素子基板の辺と対向する領域を含む開口を有する、液体吐出ヘッド。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フレキシブル配線基板の屈曲部における配線の電気信頼性を向上させた液体吐出ヘッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】液体吐出装置の一例を示す概略構成図および制御ブロック図である。
図2】液体吐出ヘッドの一例を示す分解斜視図である。
図3】液体吐出ヘッドの一例を示す概略斜視図である。
図4】吐出ユニットの一例を示す概略図である。
図5】比較例の吐出ユニットを示す概略図である。
図6】比較例の吐出ユニットを示す断面図である。
図7】比較例の吐出ユニットを示す断面図である。
図8】第1の実施形態に係る吐出ユニットを示す概略図である。
図9】第1の実施形態に係る吐出ユニットを示す概略図である。
図10】第1の実施形態に係る吐出ユニットを示す断面図である。
図11】第2の実施形態に係る吐出ユニットを示す概略図である。
図12】第2の実施形態に係る吐出ユニットを示す断面図である。
図13】第3の実施形態に係る吐出ユニットを示す概略図である。
図14】第4の実施形態に係る吐出ユニットを示す概略図である。
図15】第5の実施形態に係る吐出ユニットを示す概略図及び断面図である。
図16】比較例の吐出ユニットを示す概略図である。
図17】第6の実施形態に係る吐出ユニットを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態の例を説明する。ただし、以下の記載は本発明の範囲を限定するものではない。一例として、本実施形態では発熱素子により気泡を発生させて液体を吐出するサーマル方式が採用されている。しかし、液体を吐出するためのエネルギー発生素子として圧電素子を用いるピエゾ方式や、その他の各種液体吐出方式が採用された液体吐出ヘッドにも本発明を適用することができる。なお、本発明の液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出装置は、インクジェットプリンター、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置に適用可能である。さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に適用可能である。例えば、バイオチップ作製や電子回路印刷や半導体基板作製などの用途としても用いることができる。
【0014】
本実施形態は、インクなどの液体をタンクと液体吐出ヘッド間で循環させる形態の液体吐出装置であるが、その他の形態であってもよい。例えば、液体をタンクと液体吐出ヘッド間で循環させる形態であってもよい。また、液体を循環せずに、液体吐出ヘッド上流側と下流側に2つのタンクを設け、一方のタンクから他方のタンクへ液体を流すことで、圧力室内の液体を流動させる形態であってもよい。
【0015】
(第1の実施形態)
図1(a)は、本発明を適用可能な液体吐出ヘッド1を用いた液体吐出装置50の構成例の概略斜視図であり、図1(b)は、液体吐出装置50の制御系のブロック図である。図1(a)に示した液体吐出装置50は、液体吐出ヘッド1が走査運動しながらインクを吐出して媒体Pに画像等を記録する、シリアルスキャン方式のインクジェットプリンターである。液体吐出ヘッド1はキャリッジ53に搭載され、キャリッジ53は、ガイド軸51に沿って矢印Xの主走査方向に移動する。媒体Pは、搬送ローラ55,56,57,58によって、主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する矢印Yの副走査方向に搬送される。図中、X方向はキャリッジ53の走査方向であって媒体Pの幅方向、Y方向は媒体Pの搬送方向、Z方向はX方向及びY方向と交差する方向であって、液体が吐出される方向と反対の方向である。液体吐出ヘッド1には、循環ユニット54が搭載され、後述する吐出ユニット300のインク循環が行われる。吐出ユニット300に備わる吐出素子(後述する)は、電気接続基板からの入力信号に応じて、ヘッドドライバ1Aによって駆動される。吐出に必要な電気配線、インクおよび空気の配管が、ガイド59によってキャリッジ53へ供給される。
【0016】
CPU(制御部)400は、ROM401に格納された処理手順等のプログラムに基づいて液体吐出装置50を制御し、RAM402は、それらの処理を実行するワークエリアなどとして用いられる。CPU400は、液体吐出装置50の外部のホスト装置500からの画像データに基づいて、ヘッドドライバ1Aを制御する。また、CPU400は、モータドライバ403Aを介して、キャリッジ53を移動させるためのキャリッジモータ403を制御し、モータドライバ404Aを介して、媒体Pを搬送させるための搬送モータ404を制御する。
【0017】
図1(a)に示す液体吐出ヘッド1はように、CMYKインクによる(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)フルカラー印刷が可能な構成である。液体吐出ヘッド1が吐出する液体はこれに限らず、白インクは反応液などを吐出する構成であってもよいし、ブラックインクのみを吐出する構成であってもよい。媒体Pの搬送路から外れた位置にキャップ部材(不図示)が配置され、液体吐出動作を行わない時には、液体吐出ヘッド1のフェイス面を覆う位置に相対的に移動し、吐出口の乾燥を防止や、充填や回復のための吸引動作を行う。
【0018】
図2は、本実施形態の液体吐出ヘッド1を示す分解斜視図である。図2図1(a)に示すように、液体吐出ヘッド1は、循環ユニット54を有する。循環ユニット54は吐出する液体(インクや反応液など)の種類にそれぞれ対応した循環ユニットを有する。本実施形態では、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、シアンインクのそれぞれに対応した循環ユニット54m、54y、54k、54cを備える。それぞれの循環ユニット54は、液体吐出ヘッド1の筐体である流路部材110に接続されている。循環ユニット54と流路部材110の接続方法は、間にシール部材を挟み込んだビス締め方式や、溶着による接続など、任意の接続法を用いることができる。流路部材110には装置本体からのインクを受け入れるための供給口を有する接続部材200があり、接続部材200は各循環ユニット54(54m、54y、54k、54c)と連通している。
【0019】
液体吐出ヘッド1が装置本体へ装着された状態で、接続部材200のインク供給口201には、吐出する液体(インク)の種類に対応した供給チューブ(不図示)が接続される。供給チューブは、図1(a)に示したガイド59に備えられる。供給チューブから供給された各インクは、流路部材110の接続部材200を経由し、各循環ユニット54に供給される。流路部材110の底面(‐Z方向の面)には吐出ユニット300が接続されており、循環ユニット54に供給されたインクは流路部材110を経由し、吐出ユニット300に供給される。
【0020】
吐出ユニット300と流路部材110の接続方法は、任意の方法を用いることができ、接着剤を用いた接着でも良く、シール部材を挟み込んだビス締めによる固定でも良い。吐出ユニット300は、インクを吐出する吐出口と、インクを吐出するための吐出素子を備えた素子基板310、素子基板310へ電気信号を送るためのフレキシブル配線基板330、素子基板310やフレキシブル配線基板330を支持する支持部材320、および、フレキシブル配線基板330を覆うカバー部材340を有する。素子基板310、およびフレキシブル配線基板330は支持部材320の第1の面322に接着固定されている。さらに、素子基板310が吐出口を備える側の面である表面を覆うようにカバー部材340が接着接合されている。カバー部材340のうち、素子基板310に対応する箇所は開口となっている。支持部材320は、インクを循環ユニット54から素子基板310に供給する流路321を有する流路部材でもある。
【0021】
図3(a)は、本実施形態の液体吐出ヘッド1を電気配線基板210側から見た、概略斜視図であり、図3(b)は、液体吐出ヘッド1を接続部材200側から見た、概略斜視図である。図3に示すように、フレキシブル配線基板330は、支持部材320が素子基板310を支持する面に接合されている。フレキシブル配線基板330は、支持部材320の電気配線基板210側に屈曲部502Aを、接続部材200側に屈曲部502Bを有するように、筐体としての流路部材110に配設されている。本明細書において、フレキシブル配線基板の「屈曲部」は、フレキシブル配線基板が折り曲げられて曲面形状を有する部分を指す。
【0022】
フレキシブル配線基板330の接着固定に際しては、支持部材320の吐出素子310が接着されていない両方の面にも配設されている。配設の際には、図2のように、フレキシブル配線基板330を支持部材320の辺に沿うように屈曲させてから支持部材320に接合してもよい。フレキシブル配線基板330の一部を支持部材320に接合してから、支持部材320に沿うように屈曲させて配設してもよい。カバー部材340を接合した後に支持部材320に沿うように屈曲させてもよい。また、カバー部材340を有さない構成であってもよい。さらに、図2の構成と異なり、支持部材320にカバー部材340を接合させ、カバー部材340上にフレキシブル配線基板330が接合されて屈曲された構成であってもよい。
【0023】
支持部材320と、フレキシブル配線基板330との間の空間509には、接合力の強化とインク侵入による信頼性の低下を防ぐため、樹脂部材である接着剤もしくは封止剤519が挿入されている(図7参照)。
【0024】
流路部材110の接続部材200が設けられた面と反対側の面は、本体からの電気信号を受け取る電気配線基板210が接続されたコンタクト面となっている。電気配線基板210からフレキシブル配線基板330を介し、素子基板310に電気信号が送られる。流路部材110への電気配線基板210の接続は、加締めや接着剤による固定、もしくは両面テープによる固定など、任意の方法を用いればよい。電気配線基板210とフレキシブル配線基板330との電気接続は、本実施形態ではACF(異方性導電膜)圧着により形成されているが、ワイヤボンディングやフライングリードボンディングなどを用いてもよい。
【0025】
図4は、吐出ユニット300を素子基板310の有する吐出口側から見た概略図である。なお、図4においては、フレキシブル配線基板330が備える個別の配線(導線)503の説明のため、カバー部材340は図示していない。素子基板310は、吐出素子に電気接続された接続端子504を、吐出素子310の長辺に沿って複数有している。接続端子504は、配線503と電気接続されている。図4や、以降の図で示す吐出ユニットの概略図においては、配線503や接続端子504の一部のみを図示している。なお、接続端子504は、図4においては素子基板310の長辺の片側にのみ配置されているが、素子基板310の長辺の両側に配置してもよい。接続端子504が、素子基板310の短辺に沿って複数配置された構成であってもよい。本実施形態では、素子基板310とフレキシブル配線基板330とは、ワイヤボンディングにより電気接続されている。より具体的には、素子基板310の有する接続端子504と、フレキシブル配線基板330の有する配線503とが、ワイヤボンディングにより電気接続されている。電気接続方式はフライングリードボンディング等のその他の方式であってもよい。
【0026】
配線503はフレキシブル配線基板330内において、電気配線基板210と接続されるように引き回される。フレキシブル配線基板330は支持部材320の上面(図4のXY平面)に接合され、支持部材320の上面からはみ出した部分は、支持部材320の側面に沿って屈曲される事となる。
【0027】
図5に示す比較例を用いて、本発明の課題を説明する。図5は、比較例の吐出ユニット300を示す概略図であり、支持部材320上に素子基板310とフレキシブル配線基板330とを接合した、フレキシブル配線基板330を屈曲させる前の状態を示す。図5では、図4と同様にカバー部材340を省略しており、さらに接続端子504と配線503との電気接続部分も簡略化して示している。図5に示した比較例において、接続端子504は吐出素子310の短辺に沿って複数配置されている。この場合、フレキシブル配線基板330内において、接続部材200側の接続端子504から電気配線基板210側に配線503を引き出す場合は、配線503のレイアウト(引き回し)の関係で屈曲部502Bを経由する配線パターンになる場合がある。この時、素子基板310と屈曲部502Bと配線503の位置関係によっては、フレキシブル配線基板330及びその内部の配線503の屈曲のしやすさが、場所によって異なる場合がある。例えば、屈曲部502Aの延びる方向(X方向)と直交する方向(Y方向)において素子基板310の辺と対向する部位に位置する、フレキシブル配線基板330や配線503aと、Y方向において素子基板310の辺と対向しないフレキシブル配線基板330や配線503eとでは、屈曲のしやすさが異なる場合が多い。配線503eのように、フレキシブル配線基板330の折り曲げ方向(Y方向)と同じ方向に素子基板310が無い位置のフレキシブル配線基板330の部分は、少ない荷重で屈曲させる事ができ、その屈曲率も小さく、安定した形状をつくりやすい。一方で、配線503aのように、屈曲部の折り曲げ方向(Y方向)と同じ方向に素子基板310が存在している部分は、屈曲させるのにより大きな荷重が必要であり、屈曲率を小さくすることや、安定した位置や形状をつくることが困難になりやすい。
【0028】
図6(a)は、図5のVIa―VIaにおける断面図であり、図6(b)は、図5のVIb―VIbにおける断面図である。図6(a)および6(b)に示すように、フレキシブル配線基板330は、配線503が、カバーフィルム505とベースフィルム508とで挟まれた構成を有する。フレキシブル配線基板330では、配線503とカバーフィルム505は、カバーフィルム接着剤506を介して接合され、配線503とベースフィルム508は、ベースフィルム接着剤507を介して接合されている。本実施形態では、一例として、厚み4μmのカバーフィルム505、厚み40μmのカバーフィルム接着剤506、厚み35μmの配線503、厚み15μmのベースフィルム接着剤507、および厚み50μmのベースフィルム508が積層接着された構成を有する。また、本実施形態においては、配線503は銅で構成されており、銅箔のエッチングにより形成されている。カバーフィルム505およびベースフィルム508の材質はポリイミドである。カバーフィルム接着剤506およびベースフィルム接着剤は、硬化しているためある程度の硬度を有するものの、配線503やカバーフィルム505およびベースフィルム508よりは軟らかい。
【0029】
図6(a)のように、折り曲げ方向と同じ方向(Y方向)におけるフレキシブル配線基板330の長さを長くとれる領域では、フレキシブル配線基板330を形成する各層も長い。このため、フレキシブル配線基板330の屈曲に対してその長さの全域を用い各層が伸縮することで対応できる。一方で、図6(b)のように、フレキシブル配線基板330の長さが短い領域では、各層が伸縮して対応できる変形の絶対量が少ないため、屈曲構造をつくりにくい。
【0030】
図7は、フレキシブル配線基板330を屈曲させた状態での、図5のVIa-VIaの位置および図6(b)に対応した断面図である。屈曲部502Bが大きいと空間509も大きくなり、液体吐出ヘッド1の大きさ(Y方向の大きさ)が大きくなる。さらに、接続部材200側の屈曲部502Bが大きくなると、媒体P抑え用のローラ(図1においては不図示)の位置に影響を及ぼして、抑え幅に影響を及ぼしたりすることがある。これらは、液体吐出装置全体の大型化につながりやすい。
【0031】
また、屈曲部502Bの曲率を小さくして屈曲部502Bを小さくすることができたとしても、屈曲率の小さな屈曲部では、内部の配線503が割れやすくなるという課題もある。
【0032】
図8は、第1の実施形態における吐出ユニット300を示す概略図であって、図5と同様に支持部材320上に素子基板310とフレキシブル配線基板330とを接合した、フレキシブル配線基板330を屈曲させる前の状態を示す。図8に示した本実施形態では、1つの支持部材上に2つの素子基板310と、1つのフレキシブル配線基板330と、が配置されている。支持部材320に接合された素子基板310の長辺に沿って接続端子504が配置され、同じく支持部材320上に接合されたフレキシブル配線基板330と電気接続されている。一方の素子基板310において複数の接続端子504が並んだ端子列は、他方の素子基板310と対向しない辺に沿って配置されている。また、2つの素子基板310の間を経由するように配置された配線503を有する。
【0033】
フレキシブル配線基板330が支持部材320からはみ出した部分は、複数の接続端子504が並んだ端子列が延びる方向と交差する方向、本実施形態においてはY方向に屈曲されることで、電気配線基板210と接続されている。さらに、フレキシブル配線基板330が支持部材320からはみ出した部分であって、電気配線基板210と接続されない、接続部材200側の領域でも同様に、端子列が延びる方向と交差する方向(Y方向)に屈曲されている。図9は、図8の1つの素子基板310近傍の屈曲部502B付近の拡大図である。図10(a)は、図9のX-Xにおける断面図である。本発明の液体吐出ヘッド1および吐出ユニット300においては、屈曲部502Bは、屈曲する方向(Y方向)において隣接する素子基板310の辺310aと対向する領域516に配線503を有さないにように、配線503が配置されている。言い換えると、支持部材320が素子基板310を支持する面と垂直な方向から見て、第1の方向(X方向)に沿って屈曲された屈曲部502Bは、第1の方向と直交する方向(第2の方向、Y方向)において素子基板310の辺310aと対向する領域に配線503を有さない。なお、図9において辺310aは吐出素子310の短辺(すなわち接続端子504のない辺)である。支持部材320とカバー部材340との間の空間509には、接着剤(封止剤)519が配置されている。
【0034】
図10(a)の破線Nは、フレキシブル配線基板330の端面514aと対向する素子基板310の辺から屈曲部502Bの終点(R形状ではなくなる位置)515までの領域516を示している。本実施形態では、Y方向において素子基板310の辺310aと対向する、フレキシブル配線基板330の端面514aから屈曲部502Bの終点515までの領域を避けて配線503が配置されている。この構成により、屈曲形状を作るに際し、フレキシブル配線基板330の屈曲方向における長さが短い領域で、フレキシブル配線基板330を屈曲させやすくなる。本実施形態では一例として、配線503の最小幅を40μmとし、最小ピッチは80μmとした。フレキシブル配線基板330の、屈曲部502Bの大きさはR=0.8mmとし、素子基板310の辺310aの長さであって領域KのX方向の長さは7mm、領域516のY方向の長さは3mmとした。領域516からフレキシブル配線基板330の端面514b(先端面)までの長さLは4mmとした。電気配線基板210側では、装置の構成上、フレキシブル配線基板330の屈曲を大きくとれるため、屈曲部502Aの大きさはR=2.0mmとした。なお、屈曲部502の大きさの評価は、Rの大きさを用いる方法に限らず、例えば、支持部材320の上面からはみ出した部分の、支持部材320の面と水平な方向の大きさを用いて評価すればよい。
【0035】
このような、フレキシブル配線基板330を用い屈曲させ液体吐出ヘッド1にしたところ良好な印字を長期にわたり得る事ができた。また、5℃環境における間欠印字耐久(1時間印字のち1時間待機の繰り返し)においても、良好な印字を確認できた。
【0036】
図示はしていないがカバー部材340のうえにフレキシブル配線基板330を接合させる形態でも、支持部材320にフレキシブル配線基板330を接合しそのうえにカバー部材340を接合する形態でも同様の効果を確認できた。カバー部材340を用いない形態でも同様の効果を確認できた。
【0037】
上述の効果は、図6のような配線503が1層の単層フレキシブル配線基板を用いた構成に限るものではなく、内部に複数の配線を有するフレキシブル配線基板を用いた構成にも適用可能である。
【0038】
上記説明した本発明によれば、フレキシブル配線基板を容易にかつ小さく屈曲する事がでる。これは、液体吐出ヘッドの小型化に寄与し、液体吐出装置そのものの小型化につながる。さらに、液体吐出装置の小型化は装置製造コストの低減にもつながる。また、フレキシブル配線基板の屈曲部を小さくできる事は、フレキシブル配線基板と支持部材との隙間も小さくなるため、その隙間を埋める接着剤(封止剤)の必要量も減少し、これも製造コストの低減につながる効果を得られる。
【0039】
さらに、フレキシブル配線基板を容易に屈曲できることは、フレキシブル配線基板の屈曲時の荷重を減らす事になり、屈曲部ならびにフレキシブル配線基板そのもの信頼性の低下を抑制できる。これは、液体吐出ヘッドの信頼性の向上にもつながる。
【0040】
(第2の実施形態)
以下では、上述した第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態の構成と同様の部分は説明を省略する。
【0041】
図11は、第2の実施形態を示す吐出ユニット300の概略図であって、図5と同様に支持部材320上に素子基板310とフレキシブル配線基板330とを接合した、フレキシブル配線基板330を屈曲させる前の状態を示す。第1の実施形態と同様、長辺に接続端子504を備えた素子基板310と、フレキシブル配線基板330が、支持部材320の面に接合されている。
【0042】
本実施形態では、素子基板310を露出させるためのフレキシブル配線基板330の開口518が、屈曲部まで拡大されている。言い換えると、支持部材320の面に対して垂直な方向から見て、開口518は、前記第1の方向と直交する方向において前記素子基板の辺と対向する領域516を含むように構成されている。図11では、開口518は領域516を全て含んでいる。すなわち、領域516を含むように、フレキシブル配線基板330の一部が切除されている。フレキシブル配線基板330を屈曲させやすくなるためには、図11のように、支持部材320の辺が露出するようなフレキシブル配線基板330の形状であることが望ましい。本実施形態の構成であれば、フレキシブル配線基板330の長さの短い部位を屈曲させる必要性がないため、図8の構成よりもさらにフレキシブル配線基板330屈曲させやすくなる効果を得られる。なお、領域516を含む開口は、図8のように素子基板310を露出させる開口と一体である構成でなくてもよい。
【0043】
図12は、フレキシブル配線基板330を屈曲させた状態での、図11のXII-XIIの位置に対応した断面図である。図12では、カバー部材340も示している。フレキシブル配線基板330が切除された領域には、支持部材320とカバー部材340との間に空間509が形成され、毛管力をもちいた接着剤(封止剤)519の充填ができる。また、カバー部材340の存在によって、空間509にインクが多量には付着しにくい。
【0044】
本実施例では一例として、配線503の最小幅は40μmとし、最小ピッチは90μmとした。フレキシブル配線基板330の、屈曲部502Bの大きさはR=0.8mm、素子基板310の辺310aの長さであって領域KのX方向の長さは7mm、領域516ではフレキシブル配線基板330をY方向の長さ2.5mm削除して0.5mm残した。そして、領域516からフレキシブル配線基板の端部までの長さLは4.0mmとした。
【0045】
電気配線基板210側では、装置の構成上、インクの付着がおきにくいため、領域516にかかるフレキシブル配線基板330そのものを削除した。このような吐出ユニット300の構成で、液体吐出ヘッド1を構成したところ、良好な印字を長期にわたり得る事ができた。また、5℃環境における間欠印字耐久(1時間印字のち1時間待機)においても、良好な印字を確認できた。
【0046】
(第3の実施形態)
以下では、上述した第1および第2の実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の部分は説明を省略する。
【0047】
図13は、第3の実施形態を示す吐出ユニット300の概略図であって、図5と同様に支持部材320上に素子基板310とフレキシブル配線基板330とを接合した、フレキシブル配線基板330を屈曲させる前の状態を示す。第1の実施形態と同様、長辺に接続端子504を備えた素子基板310と、フレキシブル配線基板330が、支持部材320の面に接合されている。
【0048】
第3の実施形態では、フレキシブル配線基板330は、屈曲部502Aでは第1の実施形態、屈曲部502Bでは第2の実施形態と同様の形状になっている。
【0049】
フレキシブル配線基板330のカバーフィルム505の外表面およびベースフィルム508の外表面の耐インク性は高いものの、接着剤層を介した各層の界面はインクに浸食されやすい。このため、フレキシブル配線基板330の素子基板310と対向する端面(端部)は接着剤519や封止剤で保護される事が望ましい。一方で、フレキシブル配線基板330端面の保護範囲が大きいと、製造工程のリードタイムの悪化やコストアップにつながりやすい。
【0050】
図13に示す本実施形態は上記課題を考慮したものであり、フレキシブル配線基板330の接続部材200側は第1の実施形態の形状を、電気配線基板210側は第2の実施形態の形状を用いている。
【0051】
接続部材200側の屈曲部502Bでは、インク供給口201からのインクの付着が起きやすく、空間509を封止することが望ましい。そこで、空間509の体積を減らして充填される接着剤(封止剤)の量を減らすために、第1の実施形態のように、フレキシブル配線基板330が支持部材320と重なる領域は減らさずに、領域516を避けて配線503が配置されている。フレキシブル配線基板330の耐インク性は、接着剤(封止剤)より高いため、液体吐出ヘッドの耐インク信頼性が保たれる。
【0052】
一方で、電気配線基板210側の屈曲部502Aは、液体吐出装置50の構成上インクが付着する可能性が接続部材200側と比べて低いため、最小限の接着剤(封止剤)519の充填で十分である。このため、第2の実施形態のように、フレキシブル配線基板330を切除して屈曲しやすさを優先している。
【0053】
このような吐出ユニット300の構成で、液体吐出ヘッド1を構成したところ、良好な印字を長期にわたり得る事ができた。また、5℃環境における間欠印字耐久(1時間印字のち1時間待機)においても、良好の印字を確認できた。
【0054】
(第4の実施形態)
以下では、上述した実施形態と異なる点を中心に説明し、上述の実施形態の構成と同様の部分は説明を省略する。
【0055】
図14は、本発明の第4の実施形態を示す吐出ユニット300の概略図であって、図5と同様に支持部材320上に素子基板310とフレキシブル配線基板330とを接合した、フレキシブル配線基板330を屈曲させる前の状態を示す。
【0056】
図14の構成では、フレキシブル配線基板330の有する複数の配線503のうち、フレキシブル配線基板330外周側の端部に最も近い配線503cと、開口の端部に隣接する配線503dが、接続端子504に接続しないダミー配線となっている。これにより、フレキシブル配線基板330の端部からのインク侵入による信頼性の低下を抑制することができる。なお、配線503dと503cのどちらかのみがダミー配線である構成であってもよい。配線503dと503cの両方がダミー配線である構成であってもよい。また、図14では接続部材200側の屈曲部502Bのみがダミー配線を有する構成であるが、電気配線基板210側の屈曲部502Aのみがダミー配線を有していてもよいし、屈曲部502Aと502Bの双方がダミー配線である構成であってもよい。
【0057】
ダミー配線の代わりにグランド配線を設けてもよく、同様に、フレキシブル配線基板330の端部からのインク侵入による信頼性の低下を抑制する効果を得られる。グランド配線は、電位がかからないため、端部からマイグレーションを起こさないためである。
【0058】
本実施形態は、図14左側の素子基板310に対応した屈曲部502Bのような、領域516に配線503の無いフレキシブル配線基板330が存在する構成であってもよいし、図14右側の素子基板310に対応した屈曲部502Bのような、領域516を含むようにフレキシブル配線基板330が開口を有する構成であってもよい。
【0059】
(第5の実施形態)
以下では、上述した実施形態と異なる点を中心に説明し、上述の実施形態の構成と同様の部分は説明を省略する。
【0060】
図15(a)は、本発明の第5の実施形態を示す吐出ユニット300の部分概略図であって、屈曲部502Aの拡大図である。図15(a)は、図5と同様に支持部材320上に素子基板310とフレキシブル配線基板330とを接合した、フレキシブル配線基板330を屈曲させる前の状態を示す。第1~第4の実施形態と異なり、本実施形態の構成では、素子基板310は短辺に接続端子504を備えている。この場合、図5に示した比較例のように、屈曲部502Aの屈曲方向(Y方向)において素子基板310と対向する領域に配線503が配置されていると、屈曲部502Aの形成が困難になりやすい。
【0061】
そこで、本実施形態では、配線503は、電気配線基板210側に引き回すにあたって、Y方向において素子基板310と対向しない領域まで屈曲部502Aの延びる方向(X方向)に沿って配置され、その後電気配線基板側に向けて屈曲部502Aの屈曲方向(Y方向)に延びて配置されている。図15(b)は、図15(a)のXVb-XVbにおける断面図である。図15(b)からもわかるように、フレキシブル配線基板330の屈曲のしやすさに大きな影響をあたえる配線(銅箔)503を屈曲させないため、少ない荷重で屈曲部502Aを小さくする事ができる。
【0062】
一方で、図16に示す比較例のように、配線503を、素子基板310と対向しない領域まで配線503をX方向に延ばさずY方向に屈曲させて配置した場合は、少ない荷重で屈曲部502Bを屈曲させる事が困難になり、安定した屈曲形状をつくりにくくなってしまう。
【0063】
なお、図15に示した本実施形態の構成では、屈曲部502Aに沿って(X方向に沿って)配線503を配置する事になるため、フレキシブル配線基板330を屈曲させようとすると、折り曲げ方向(Y方向)における配線305のエッジ510を起点に屈曲しようとするように作用してしまい、屈曲形状と位置を安定してつくりにくくなる場合がある。また、エッジ510を起点にして屈曲形状をつくるように、屈曲部B502に近い位置に意図的にエッジ510を配置すると、フレキシブル配線基板330のテンションがかかる部位に対し、エッジ510が刃のようにカバーフィルム接着剤506に食い込んで亀裂を生じさせ、カバーフィルム505にも損傷や亀裂をあたえてしまう場合がある。なお、図9に示す構成のように、屈曲部502Bに沿って配線503が配置されていても、素子基板310の短辺と隣接する領域ではなく、屈曲部502Bよりもフレキシブル配線基板330の先端側の領域であれば、フレキシブル配線基板330が伸縮可能な長さを確保できるため、配線503のエッジを起点した亀裂は起こりにくい。
【0064】
(第6の実施形態)
以下では、上述した実施形態と異なる点を中心に説明し、上述の実施形態の構成と同様の部分は説明を省略する。
【0065】
上述の第1~第5の実施形態では、1つの接続端子504に1つの配線503が接続され、個々の配線503が電気配線基板210側に引き回された構成を示していた。しかしながら、本発明の接続端子と配線の構成はこれに限らず、例えば、複数の配線503がフレキシブル配線基板330内でまとめられた構成であっても、本発明を好適に用いることができる。図17は、本発明の第6の実施形態を示す吐出ユニット300の部分概略図である。図17に示した構成は、複数の接続端子504に接続された複数の配線503がまとめられた配線503fを有する。
【0066】
本実施形態では、吐出素子の駆動電圧として24Vの電圧を印加するが、複数の配線をまとめた配線とすることで配線抵抗を減らすことができる。一方で、複数の配線をまとめた配線を設けると、フレキシブル配線基板330の柔軟性の低下につながる場合がある。このため、複数の配線をまとめた構成をとる場合は、電源供給用の配線をまとめ、吐出素子の駆動信号用の配線をまとめない構成とすることが望ましい。
【0067】
本開示は、以下の実施形態を含む。
【0068】
(構成1)
駆動信号により駆動される素子と、前記素子の駆動によって液体を吐出する吐出口と、を有する素子基板と、
前記駆動信号を前記素子に供給するための配線を備えたフレキシブル配線基板と、
第1の面で前記素子基板と前記フレキシブル配線基板とを支持する支持部材と、
を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記フレキシブル配線基板は、前記支持部材の、第1の方向に延びる一辺に沿って屈曲された屈曲部を有し、
前記第1の面に対して垂直な方向から見て、前記屈曲部は、前記第1の方向と直交する第2の方向において前記素子基板の辺と対向する領域に前記配線を有さない、液体吐出ヘッド。
【0069】
(構成2)
駆動信号により駆動される素子と、前記素子の駆動によって液体を吐出する吐出口と、前記駆動信号を外部から受け取るための端子と、を有する素子基板と、
前記駆動信号を前記素子に供給するための配線を有するフレキシブル配線基板と、
第1の面で前記素子基板と前記フレキシブル配線基板とを支持する支持部材と、
を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記フレキシブル配線基板は、第1の方向に延びる前記支持部材の一端に沿って屈曲された屈曲部を有し、
前記第1の面に対して垂直な方向から見て、前記屈曲部は、前記第1の方向と直交する第2の方向において前記素子基板の辺と対向する領域を含む開口を有する、液体吐出ヘッド。
【0070】
(構成3)
前記支持部材を支持する筐体と、
前記第2の方向における前記筐体の第1の側面に配置され、前記フレキシブル配線基板と電気接続された電気配線基板と、
を有する、構成1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【0071】
(構成4)
前記素子基板は、前記配線と電気接続するための端子を複数有し、
複数の前記端子は、前記第1の方向と交差する方向に並んで配置されている、構成3に記載の液体吐出ヘッド。
【0072】
(構成5)
前記配線は、
前記端子との接続部分から前記電気配線基板側に延びる第1の配線と、
前記端子との接続部分から前記電気配線基板と反対側に延びてから前記電気配線基板側に延びる第2の配線と、を含む、構成4に記載の液体吐出ヘッド。
【0073】
(構成6)
前記フレキシブル配線基板は、内部に前記素子基板が配置される開口を有する、構成1から構成5のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
【0074】
(構成7)
前記屈曲部を、前記第2の方向における前記電気配線基板側に有する、構成3から6のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
【0075】
(構成8)
前記屈曲部を、前記第2の方向における前記電気配線基板側と反対側に有する、構成3から7のいずれか1つ3に記載の液体吐出ヘッド。
【0076】
(構成9)
前記屈曲部を、前記第2の方向において前記支持部材を挟んだ両方に有する、構成3から8のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
【0077】
(構成10)
前記素子基板は、前記第1の面と対向する面と反対の面に、前記吐出口と、前記配線と電気接続するための端子と、を有する、構成1から3のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
【0078】
(構成11)
前記フレキシブル配線基板と、前記支持部材の前記第1の面と交差する側面と、の間に樹脂部材を有する、構成1から10のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
【0079】
(構成12)
複数の前記端子のうちの端に配置された前記端子に対応して配置された、ダミー配線またはグランド配線を有する、構成4に記載の液体吐出ヘッド。
【0080】
(構成13)
前記フレキシブル配線基板の前記支持部材と反対側の面に配置されたカバー部材をさらに有する、構成1から12のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
【0081】
(構成14)
前記素子基板は、前記第1の方向に並んで配置された、第1の素子基板と、第2の素子基板と、を有し、前記第1の素子基板と前記第2の素子基板との間を経由するように配置された前記配線を有する、構成1から13のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
【0082】
(構成15)
前記第1の素子基板は、前記配線と電気接続するための端子が前記第1の方向と交差する方向に複数並んだ端子列を有し、
前記端子列は、前記第2の素子基板と対向しない前記第1の素子基板の辺に沿って配置されている、構成14に記載の液体吐出ヘッド。
【0083】
(構成16)
構成1から15のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッドを備え、前記液体吐出ヘッドが走査運動するように構成された液体吐出装置。
【符号の説明】
【0084】
1 液体吐出ヘッド
50 液体吐出装置
54 循環ユニット
110 流路部材
200 接続部材
210 電気配線基板
300 吐出ユニット
310 吐出素子基板
320 支持部材
330 フレキシブル配線基板
340 カバー部材
502A、502B 屈曲部
503 配線
504 接続端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図17