(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139797
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250919BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038831
(22)【出願日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】平井 健太
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AD05
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E001AH08
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC33
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG16
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ13
5E082JJ23
5E082MM22
5E082MM24
(57)【要約】
【課題】電歪クラックの発生を抑制し、信頼性の高い積層セラミックコンデンサを提供すること。
【解決手段】複数の内層誘電体層20i及び複数の内部電極層30が積層する積層体と外部電極を備えた積層セラミックコンデンサであって、長さ方向L及び積層方向Tに平行な断面をみたとき、前記内層誘電体層20iは、長さ方向Lの中央部に配置される中央領域と、長さ方向Lの端部に配置される端部領域と、含み、内層誘電体層20iの積層方向Tの厚みをTdとしたとき、前記中央領域は、長さ方向Lの寸法をTd/2とし積層方向Tの寸法をTdとする方形状の領域A1と、前記領域A1と隣接し、長さ方向Lの寸法をTd/2とし積層方向Tの寸法をTdとする方形状の領域A2と、を含み、前記領域A1は、他の領域より空隙率が高く、前記領域A1における空隙率P1と前記領域A2における空隙率P2との差は、1%以上5%以下である、積層セラミックコンデンサ1。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に交互に積層される複数の内層誘電体層及び複数の内部電極層を含む内層部と、該内層部を前記積層方向から挟み込む外層部と、を含み、前記積層方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、前記積層方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、前記積層方向及び前記幅方向に直交する長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面と、を備える積層体と、
前記積層体の前記長さ方向の両端部に、少なくとも前記第1の端面及び前記第2の端面をそれぞれ覆うように配置され、前記内部電極層に接続される一対の外部電極と、
を備え、
前記長さ方向及び前記積層方向に平行な断面をみたとき、
前記内層誘電体層は、前記長さ方向の中央部に配置される中央領域と、前記長さ方向の端部に配置される端部領域と、含み、
前記内層誘電体層の前記積層方向の厚みをTdとすると、
前記中央領域は、長さ方向の寸法をTd/2とし積層方向の寸法をTdとする方形状の領域A1と、前記領域A1と隣接し、長さ方向の寸法をTd/2とし積層方向の寸法をTdとする方形状の領域A2と、を含み、
前記領域A1は、他の領域より空隙率が高く、
前記領域A1における空隙率P1と前記領域A2における空隙率P2との差は、1%以上5%以下である、積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記積層体の前記積層方向の高さをTsとしたとき、
前記領域A1と前記領域A2は、前記積層体の前記積層方向において中央に位置する高さTs/10の範囲に存在する、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に積層され、さらに、その上面と下面に誘電体層が積層された積層体と、該積層体の両端面に形成された一対の外部電極とを備えている。
【0003】
そして、積層セラミックコンデンサは、一般に、チタン酸バリウムなどの誘電体セラミックからなるセラミックグリーンシートと未焼成の内部電極層とを交互に積層してグリーンチップを作製し、当該グリーンチップを焼成した後、得られた積層体の端面に外部電極を形成することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、積層体を製造する過程において、グリーンチップを焼成すると、誘電体セラミックが収縮し、誘電体層内に空隙が発生する。また、チタン酸バリウムは高誘電率系セラミックのため、電圧印加時に電歪現象によって空隙の部分に応力がかかり易く、空隙が誘電体層内の特定の部分に集中していると、その部分から電歪クラックが発生し、誘電体層の絶縁抵抗が劣化することにより、積層セラミックコンデンサとしての信頼性が低下することとなる。
【0006】
本発明は、電歪クラックの発生を抑制し、信頼性の高い積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、誘電体層内の空隙の分布を制御することにより、電歪クラックの発生率が低減することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、積層方向に交互に積層される複数の内層誘電体層及び複数の内部電極層を含む内層部と、該内層部を前記積層方向から挟み込む外層部と、を含み、前記積層方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、前記積層方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、前記積層方向及び前記幅方向に直交する長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面と、を備える積層体と、
前記積層体の前記長さ方向の両端部に、少なくとも前記第1の端面及び前記第2の端面をそれぞれ覆うように配置され、前記内部電極層に接続される一対の外部電極と、
を備え、
前記長さ方向及び前記積層方向に平行な断面をみたとき、
前記内層誘電体層は、前記長さ方向の中央部に配置される中央領域と、前記長さ方向の端部に配置される端部領域と、含み、
前記内層誘電体層の前記積層方向の厚みをTdとすると、
前記中央領域は、長さ方向の寸法をTd/2とし積層方向の寸法をTdとする方形状の領域A1と、前記領域A1と隣接し、長さ方向の寸法をTd/2とし積層方向の寸法をTdとする方形状の領域A2と、を含み、
前記領域A1は、他の領域より空隙率が高く、
前記領域A1における空隙率P1と前記領域A2における空隙率P2との差は、1%以上5%以下である、積層セラミックコンデンサである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、誘電体層内の空隙の分布を制御し、電歪クラックの発生を抑制した、信頼性の高い積層セラミックコンデンサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】積層セラミックコンデンサを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す積層セラミックコンデンサのII-II線断面図(LT断面)である。
【
図3】
図1に示す積層セラミックコンデンサのIII-III線断面図(WT断面)である。
【
図4】
図1に示す積層セラミックコンデンサの内層部の構造を示す模式図である。
【
図5】誘電体層内の空隙の分布状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の積層セラミックコンデンサの実施形態について説明するが、本発明がこれに限定されることはない。また、図面は、発明の内容を説明するため、模式的に簡略化して描画している場合があり、描画された構成要素又は構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
【0012】
(積層セラミックコンデンサ)
図1は、積層セラミックコンデンサを示す斜視図であり、
図2は、
図1に示す積層セラミックコンデンサのII-II線断面図であり、
図3は、
図1に示す積層セラミックコンデンサのIII-III線断面図である。
図4は、
図1に示す積層セラミックコンデンサの内層部の構造を示す模式図である。
図1~
図4に示す積層セラミックコンデンサ1は、積層体10と外部電極40とを備える。外部電極40は、第1の外部電極41と第2の外部電極42とを含む。
【0013】
図1~
図3には、XYZ直交座標系が示されている。X方向は積層セラミックコンデンサ1及び積層体10の長さ方向Lであり、Y方向は積層セラミックコンデンサ1及び積層体10の幅方向Wであり、Z方向は積層セラミックコンデンサ1及び積層体10の積層方向Tである。これにより、
図2に示す断面はLT断面とも称され、
図3に示す断面はWT断面とも称される。
なお、長さ方向L、幅方向W及び積層方向Tは、必ずしも互いに直交する関係になるとは限らず、互いに交差する関係であってもよい。
【0014】
積層セラミックコンデンサのサイズは、長さ方向Lの寸法が0.2mm以上10mm以下であり、幅方向Wの寸法が0.1mm以上10mm以下、積層方向Tの寸法が0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0015】
(積層体)
積層体10は、略直方体形状であり、積層方向Tに相対する第1の主面TS1及び第2の主面TS2と、幅方向Wに相対する第1の側面WS1及び第2の側面WS2と、長さ方向Lに相対する第1の端面LS1及び第2の端面LS2とを有する。なお、各面の表面には凹凸が設けられ、あるいは、粗されていてもよい。
【0016】
積層体10の角部及び稜線部には、丸みがつけられていると好ましい。角部は、積層体10の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体10の2面が交る部分である。
【0017】
図2及び
図3に示すように、積層体10は、積層方向Tに積層された複数の内層誘電体層20iと複数の内部電極層30とを有する。また、積層体10は、積層方向Tにおいて、内層部100と、内層部100を挟み込むように配置された第1の外層部201及び第2の外層部202とを有する。
【0018】
内層部100を構成する内層誘電体層20iと外層部200を構成する外層誘電体層20oは、内層部100と外層部200が求める機能が異なることから成分組成が相違していても良い。例えば、内層誘電体層20iは、高い誘電率が求められ、外層誘電体層20oは、高い耐湿性、耐候性、及び強度が求められる。
このため、内層部100を構成する誘電体層を内層誘電体層20iとし、外層部200を構成する誘電体層を外層誘電体層20oとして説明するが、内層誘電体層20iと外層誘電体層20oを特に区別する必要がないときは、これらをまとめて誘電体層20として説明する。
【0019】
(内層部)
図4は、内層部100の構造を示す模式的に示している。内層部100は、複数の内層誘電体層20iと複数の内部電極層30とを含む。内層部100では、複数の内部電極層30が内層誘電体層20iを介して対向して配置されている。内層部100は、静電容量を発生させ実質的にコンデンサとして機能する部分である。
【0020】
誘電体層20の材料としては、例えば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、又はCaZrO3等を主成分として含む誘電体セラミックを用いることができる。また、誘電体層20の材料としては、Mn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、又はNi化合物等を副成分として添加されてもよい。
【0021】
内層誘電体層20iの厚さは、特に限定されないが、例えば、0.2μm以上15μm以下であると好ましい。内層誘電体層20iの厚みを小さくすることにより、静電容量を向上させることができる。
【0022】
(外層部)
第1の外層部201は、積層体10の第1の主面TS1側に配置されており、第2の外層部202は、積層体10の第2の主面TS2側に配置されている。より具体的には、第1の外層部201は、複数の内部電極層30のうち第1の主面TS1に最も近い内部電極層30と第1の主面TS1との間に配置されており、第2の外層部202は、複数の内部電極層30のうち第2の主面TS2に最も近い内部電極層30と第2の主面TS2との間に配置されている。第1の外層部201及び第2の外層部202は、内部電極層30を含まない。
【0023】
外層部200は、絶縁性の材料によって形成される。第1の外層部201と第2の外層部202は、それぞれ、複数の外層誘電体層20oで構成することができるが、単一の外層誘電体層20oにより構成してもよい。また、外層誘電体層20oは、内層誘電体層20iと同種の誘電体材料で構成することができるが、求める機能により、内層誘電体層20iとは異なる成分を含有してもよい。
【0024】
複数の内部電極層30は、複数の第1の内部電極層31及び複数の第2の内部電極層32を含む。複数の第1の内部電極層31及び複数の第2の内部電極層32は、積層体10の積層方向Tに交互に配置されている。
【0025】
第1の内部電極層31は、第1の対向電極部311と第1の引出電極部312とを含み、第2の内部電極層32は、第2の対向電極部321と第2の引出電極部322とを含む。
【0026】
第1の対向電極部311と第2の対向電極部321とは、積層体10の積層方向Tにおいて内層誘電体層20iを介して互いに対向している。第1の対向電極部311及び第2の対向電極部321の形状は、特に限定されず、例えば略矩形状であればよい。第1の対向電極部311と第2の対向電極部321とは、静電容量を発生させ実質的にコンデンサとして機能する部分である。
【0027】
第1の引出電極部312は、第1の対向電極部311から積層体10の第1の端面LS1に向けて延在し、第1の端面LS1において露出している。第2の引出電極部322は、第2の対向電極部321から積層体10の第2の端面LS2に向けて延在し、第2の端面LS2において露出している。第1の対向電極部311と第1の引出電極部312の幅方向Wの長さは同一でも良いが、異なっていても良い。また、これらの幅方向Wの長さは、露出される第1の端面LS1に向かって徐々に変化しても良い。第2の対向電極部321と第2の引出電極部322の幅方向Wの長さは同一でも良いが、異なっていても良い。また、これらの幅方向Wの長さは、露出される第2の端面LS2に向かって徐々に変化しても良い。
【0028】
これにより、第1の内部電極層31は第1の外部電極41に接続され、第1の内部電極層31と、積層体10の第2の端面LS2、すなわち第2の外部電極42、との間には間隔を設けている。また、第2の内部電極層32は第2の外部電極42に接続され、第2の内部電極層32と、積層体10の第1の端面LS1、すなわち第1の外部電極41、との間には間隔を設けている。
【0029】
第1の内部電極層31及び第2の内部電極層32は、金属Niを主成分として含む。また、第1の内部電極層31及び第2の内部電極層32は、例えば、Cu、Ag、Pd、Sn又はAu等の金属、又はAg-Pd合金等の、それらの金属の少なくとも一種を含む合金、から選ばれる少なくとも1つを主成分として含んでもよいし、主成分以外の成分として含んでもよい。更に、第1の内部電極層31及び第2の内部電極層32は、内層誘電体層20iに含まれるセラミックと同一組成系の誘電体の粒子を主成分以外の成分として含んでいてもよい。なお、本明細書において、主成分の金属とは、最も重量%が高い金属成分をいう。
【0030】
第1の内部電極層31及び第2の内部電極層32の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.2μm以上2.0μm以下であると好ましく、0.3μm以上0.35μm以下であるとより好ましい。第1の内部電極層31及び第2の内部電極層32の枚数は、特に限定されない。
【0031】
なお、内層誘電体層20i及び内部電極層30の厚さの測定方法としては、例えば研磨により露出させた積層体の幅方向中央近傍のLT断面を走査型電子顕微鏡にて観察する方法が挙げられる。また、各値は、長さ方向の複数個所の測定値の平均値であってもよいし、更に積層方向の複数個所の測定値の平均値であってもよい。
【0032】
図3に示すように、積層体10は、幅方向Wにおいて、内部電極層30が対向する電極対向部W30と、電極対向部W30を挟み込むように配置された第1のサイドギャップ部WG1及び第2のサイドギャップ部WG2とを有する。第1のサイドギャップ部WG1は、電極対向部W30と第1の側面WS1との間に位置し、第2のサイドギャップ部WG2は、電極対向部W30と第2の側面WS2との間に位置する。より具体的には、第1のサイドギャップ部WG1は、内部電極層30の第1の側面WS1側の端と第1の側面WS1との間に位置し、第2のサイドギャップ部WG2は、内部電極層30の第2の側面WS2側の端と第2の側面WS2との間に位置する。第1のサイドギャップ部WG1及び第2のサイドギャップ部WG2は、内部電極層30を含まず、誘電体層20のみを含む。なお、第1のサイドギャップ部WG1及び第2のサイドギャップ部WG2は、Wギャップともいう。
【0033】
図2に示すように、積層体10は、長さ方向Lにおいて、内部電極層30の第1の内部電極層31と第2の内部電極層32とが対向する電極対向部L30と、第1のエンドギャップ部LG1と、第2のエンドギャップ部LG2とを有する。第1のエンドギャップ部LG1は、電極対向部L30と第1の端面LS1との間に位置し、第2のエンドギャップ部LG2は、電極対向部L30と第2の端面LS2との間に位置する。より具体的には、第1のエンドギャップ部LG1は、第2の内部電極層32の第1の端面LS1側の端と第1の端面LS1との間に位置し、第2のエンドギャップ部LG2は、第1の内部電極層31の第2の端面LS2側の端と第2の端面LS2との間に位置する。第1のエンドギャップ部LG1は、第2の内部電極層32を含まず、第1の内部電極層31及び内層誘電体層20iを含み、第2のエンドギャップ部LG2は、第1の内部電極層31を含まず、第2の内部電極層32及び内層誘電体層20iを含む。第1のエンドギャップ部LG1は、第1の内部電極層31の第1の端面LS1への引出電極部として機能する部分であり、第2のエンドギャップ部LG2は、第2の内部電極層32の第2の端面LS2への引出電極部として機能する部分である。第1のエンドギャップ部LG1及び第2のエンドギャップ部LG2は、Lギャップともいう。
【0034】
なお、電極対向部L30には、上述した第1の内部電極層31の第1の対向電極部311及び第2の内部電極層32の第2の対向電極部321が位置する。また、第1のエンドギャップ部LG1には、上述した第1の内部電極層31の第1の引出電極部312が位置し、第2のエンドギャップ部LG2には、上述した第2の内部電極層32の第2の引出電極部322が位置する。
【0035】
積層体10の厚さの測定方法としては、例えば、研磨により露出させた積層体の幅方向中央近傍のLT断面、又は、研磨により露出させた積層体の長さ方向中央近傍のWT断面を走査型電子顕微鏡にて観察する方法が挙げられる。また、各値は、長さ方向又は幅方向の複数個所の測定値の平均値としてもよい。
同様に、積層体10の長さの測定方法としては、例えば研磨により露出させた積層体の幅方向中央近傍のLT断面を走査型電子顕微鏡にて観察する方法が挙げられる。また、各値は、積層方向の複数個所の測定値の平均値としてもよい。
同様に、積層体10の幅の測定方法としては、例えば研磨により露出させた積層体の長さ方向中央近傍のWT断面を走査型電子顕微鏡にて観察する方法が挙げられる。また、各値は、積層方向の複数個所の測定値の平均値としてもよい。
【0036】
(外部電極)
外部電極40は、第1の外部電極41と第2の外部電極42とを含む。
【0037】
第1の外部電極41は、積層体10の第1の端面LS1に配置されており、第1の内部電極層31に接続されている。第1の外部電極41は、第1の端面LS1から、第1の主面TS1の一部及び第2の主面TS2の一部に延びていてもよい。また、第1の外部電極41は、第1の端面LS1から、第1の側面WS1の一部及び第2の側面WS2の一部に延びていてもよい。
【0038】
第2の外部電極42は、積層体10の第2の端面LS2に配置されており、第2の内部電極層32に接続されている。第2の外部電極42は、第2の端面LS2から、第1の主面TS1の一部及び第2の主面TS2の一部に延びていてもよい。また、第2の外部電極42は、第2の端面LS2から、第1の側面WS1の一部及び第2の側面WS2の一部に延びていてもよい。
【0039】
第1の外部電極41は、第1の下地電極層415と第1のめっき層416とを有し、第2の外部電極42は、第2の下地電極層425と第2のめっき層426とを有する。なお、第1の外部電極41は第1のめっき層416のみから構成されていてもよいし、第2の外部電極42は第2のめっき層426のみから構成されていてもよい。
【0040】
第1の下地電極層415及び第2の下地電極層425は、金属とガラスとを含む焼成層であってもよい。ガラスとしては、B、Si、Ba、Mg、Al、又はLi等から選ばれる少なくとも1つを含むガラス成分が挙げられる。具体例として、ホウケイ酸ガラスを用いることができる。金属としては、Cuを主成分として含む。また、金属としては、例えばNi、Ag、Pd、又はAu等の金属、又はAg-Pd合金等の合金、から選ばれる少なくとも1つを主成分として含んでもよいし、主成分以外の成分として含んでもよい。
【0041】
焼成層は、金属及びガラスを含む導電性ペーストをディップ法によって積層体に塗布して焼成した層である。なお、内部電極層の焼成後に焼成されてもよく、内部電極層と同時に焼成されてもよい。また、焼成層は、複数層であってもよい。
【0042】
或いは、第1の下地電極層415及び第2の下地電極層425は、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む樹脂層であってもよい。樹脂層は、上述した焼成層上に形成されてもよいし、焼成層を形成せずに積層体に直接形成されてもよい。
【0043】
樹脂層は、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む導電性ペーストを塗布法によって積層体に塗布して焼成した層である。なお、内部電極層の焼成後に焼成されてもよく、内部電極層と同時に焼成されてもよい。また、樹脂層は、複数層であってもよい。
【0044】
焼成層又は樹脂層としての第1の下地電極層415及び第2の下地電極層425の各々の一層あたりの厚さとしては、特に限定されず、2μm以上220μm以下であってもよい。
【0045】
或いは、第1の下地電極層415及び第2の下地電極層425は、スパッタ法又は蒸着法等の薄膜形成法により形成され、金属粒子が堆積された1μm以下の薄膜層であってもよい。
【0046】
第1のめっき層416は、第1の下地電極層415の少なくとも一部を覆い、第2のめっき層426は、第2の下地電極層425の少なくとも一部を覆う。第1のめっき層416及び第2のめっき層426としては、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、又はAu等の金属、又はAg-Pd合金等の合金から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0047】
第1のめっき層416及び第2のめっき層426は、それぞれ複数層により形成されていてもよい。好ましくは、Niめっき及びSnめっきの2層構造である。Niめっき層は、下地電極層がセラミック電子部品を実装する際のはんだによって侵食されることを防止することができ、Snめっき層は、セラミック電子部品を実装する際のはんだの濡れ性を向上させ、容易に実装することができる。第1のめっき層416及び第2のめっき層426は、それぞれ、Cuめっき、Niめっき及びSnめっきを積層するなどして3層構造とすることもできる。最外層をAuめっきとしてもよい。
【0048】
第1のめっき層416及び第2のめっき層426の各々の一層あたりの厚さとしては、特に限定されず、1μm以上10μm以下であってもよい。
【0049】
(空隙率)
本発明に係る積層セラミックコンデンサ1について、長さ方向L及び積層方向Tに平行なLT断面をみたとき、内層誘電体層20iは、長さ方向Lの中央部に配置される中央領域と、長さ方向Lの端部に配置される端部領域と、を含む。ここで、中央領域は、電極対向部L30を長さ方向Lに3等分した際の中央に位置する領域をいう。また、端部領域は、電極対向部L30を長さ方向Lに3等分した際の中央領域を除く範囲に位置する領域をいう。
【0050】
そして、内層誘電体層20iの積層方向Tの厚みをTdとすると、内層誘電体層20iの中央領域においては、
図5に示すように、長さ方向Lの寸法をTd/2とし積層方向の寸法をTdとした方形状の領域A1と、領域A1と隣接し、長さ方向の寸法をTd/2とし積層方向Tの寸法をTdとした方形状の領域A2と、を備えており、領域A1は、他の領域より空隙率が高く、領域A1における空隙率P1と領域A2における空隙率P2との差は、1%以上5%以下としている。
【0051】
内層誘電体層20i内において、空隙Pが多く存在する部分は、他の部分と比較して強度が低い。そのため、電歪応力の集中する箇所に空隙Pが多数存在すると、空隙を起点としてクラックが発生し易い。特に、空隙の分布状態により内層誘電体層20iの内部において粗密差が大きい領域が存在すると、空隙が多い粗の領域に応力が集中する。
本発明に係る積層セラミックコンデンサは、
図5に示すように、内層誘電体層20iの中央領域において、長さ方向Lの寸法をTd/2とし積層方向の寸法をTdとした方形状の領域A1と、領域A1と隣接し、長さ方向の寸法をTd/2とし積層方向Tの寸法をTdとした方形状の領域A2と、を備えるとともに、領域A1における空隙率P1と、領域A2における空隙率P2との差を1%以上5%以下にすることにより、空隙の疎密の差を低減し、電歪クラックの発生の低減を可能としている。
なお、空隙率P1と空隙率P2の差を1%以上5%以下とするが、1%未満であると製造条件により量産に適さない。また、5%を超えると、電歪クラック発生の抑制効果が低下する。
【0052】
図2に示すように、積層体10の積層方向Tの高さをTsとしたとき、領域A1と領域A2は、積層体10の積層方向Tにおいて中央に位置する高さTs/10の範囲に存在することが好ましい。
【0053】
積層セラミックコンデンサにおける電歪応力は、積層体10の積層方向Tの中央の位置に集中し易い。このため、積層体10の積層方向Tにおいて中央に位置する高さTs/10の範囲に存在する内層誘電体層20iにおいて、空隙による疎密の差を低減することが、電歪クラックの発生を低減するために効果的である。
このため、積層体10の積層方向Tの中央に位置し、高さTs/10の範囲に存在する内層誘電体層20iにおいて、領域A1の空隙率P1と領域A2空隙率P2との差を1%以上5%以下とすることにより、より効率的に電歪クラックの発生を低減することができる。
【0054】
(空隙率の測定)
空隙率の測定としては、研磨により露出させた積層体10の幅方向W中央におけるLT断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する方法がある。
撮影したSEM画像を2値化処理することにより空隙Pを識別する。そして、SEM画像における対象領域の面積と対象領域内の空隙Pの面積に基づき、下記の式(1)により空隙率を算出する。例えば、観察範囲は10μm×10μmとし、その範囲内における対象領域を分析して、空隙率を算出する。
空隙率(%)=(空隙の面積/対象領域の面積)×100 ・・・(1)
【0055】
(積層セラミックコンデンサの製造)
次に、積層セラミックコンデンサの製造方法について一例を説明する。
【0056】
まず、誘電体層を形成するためのセラミックグリーンシートと内部電極用の導電性ペーストを準備する。内部電極用の導電性ペーストには、バインダ及び溶剤が含まれるが、公知の有機バインダや有機溶剤を用いることができる。内部電極用の導電ペーストは内部電極53を形成する。
【0057】
次に、セラミックグリーンシート上に、たとえば、スクリーン印刷やグラビア印刷などにより、所定のパターンで内部電極用の導電性ペーストが印刷され、それにより内部電極パターンが形成される。
【0058】
次に、内部電極パターンが形成されていない外層用のセラミックグリーンシートが所定枚数積層され、その上に内部電極が形成されたセラミックグリーンシートが順次積層され、その上に外層用のセラミックグリーンシートが所定枚数積層されて、積層シートが作製される。セラミックグリーンシートは、積層セラミックコンデンサ1を構成する誘電体層20を形成する。
【0059】
得られた積層シートを静水圧プレスなどの手段により積層方向にプレスすることによって、積層ブロックが作製される。次に、積層ブロックが所定のサイズにカットされ、積層チップが切り出される。このとき、バレル研磨などにより、積層チップの角部及び稜線部に丸みがつけられてもよい。
【0060】
さらに、積層チップを焼成することにより、積層体10が作製される。このときの焼成温度は、誘電体や内部電極の材料にもよるが、900℃以上1300℃以下であることが好ましい。
【0061】
積層チップの焼成は、積層チップの中央から両端部に向けて順に圧力を掛けながら行う。積層チップに加える圧力、圧力を加える箇所の移動速度、焼成温度、及び焼成時間を調整することにより、誘電体層における空隙の分布を制御する。
【0062】
次に、ディップ法を用いて、積層体10の第1の端面LS1を下地電極層用の電極材料である導電性ペーストに浸漬することによって、第1の端面LS1に第1の下地電極層415用の導電性ペーストを塗布する。同様に、ディップ法を用いて、積層体10の第2の端面LS2を下地電極層用の電極材料である導電性ペーストに浸漬することによって、第2の端面LS2に第2の下地電極層425用の導電性ペーストを塗布する。その後、これらの導電性ペーストを焼成することにより、焼成層である第1の下地電極層415及び第2の下地電極層425が形成される。焼成温度は、600℃以上900℃以下であることが好ましい。
【0063】
なお、上述したように、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む導電性ペーストを塗布法によって塗布して焼成することによって、樹脂層である第1の下地電極層415及び第2の下地電極層425を形成してもよいし、スパッタ法又は蒸着法等の薄膜形成法により、薄膜である第1の下地電極層415及び第2の下地電極層425を形成してもよい。
【0064】
その後、第1の下地電極層415の表面に第1のめっき層416を形成して第1の外部電極41を形成し、第2の下地電極層425の表面に第2のめっき層426を形成して第2の外部電極42を形成する。以上の工程により、積層セラミックコンデンサ1が得られる。
【実施例0065】
電歪試験(クラック検出評価)
積層セラミックコンデンサについて、電歪試験を実施した。
前述の製造方法に従って、空隙の分布が異なるように製造条件を調整したサンプルを、各実験水準のサンプルとして、ロット単位で製造した。各ロット内のサンプルは、同一の設計かつ同一の製造条件で製造されている。実験水準(チップサイズ5種類×4水準)ごとに、同一のロットから、空隙率測定用のサンプルn=20個、電歪試験用サンプルn=100個を取り出して準備した。空隙率測定においては測定結果の平均値を用いて評価した。
【0066】
積層セラミックコンデンサの電歪試験は、B.D.V.装置を使用し、昇圧速度を100V/secとして、DC150Vまで昇圧することにより行った。
試料の評価は、超音波探傷装置を使用してクラックの有無を観察した。
具体的には、まず、試料である積層セラミックコンデンサの主面が上面を向くように整列させた。
次に、整列させた積層セラミックコンデンサの上面に対して、超音波探触子を用いて超音波を照射し、スキャンニングした。このときの超音波の反射波を観測し、底面波よりも早く返ってくる反射波を検出することにより、クラックの有無を確認した。
ここで、クラックが入っていることが確認されたものを電歪不良としてカウントし、同一ロットによるサンプル数n=100を母数としてクラック発生率を算出した。
【0067】
判定の基準は、クラック発生率が10%以下のものは〇(合格)、10%を超えるものは×(不合格)とした。結果を表1に示す。
【0068】
【0069】
表1に示すように、領域A1における空隙率P1と、領域A2における空隙率P2との差が1%以上5%以下であるときに、良好な結果であることを確認した。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。