IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-有機発光装置及びその製造方法 図1
  • 特開-有機発光装置及びその製造方法 図2
  • 特開-有機発光装置及びその製造方法 図3
  • 特開-有機発光装置及びその製造方法 図4
  • 特開-有機発光装置及びその製造方法 図5
  • 特開-有機発光装置及びその製造方法 図6
  • 特開-有機発光装置及びその製造方法 図7
  • 特開-有機発光装置及びその製造方法 図8
  • 特開-有機発光装置及びその製造方法 図9
  • 特開-有機発光装置及びその製造方法 図10
  • 特開-有機発光装置及びその製造方法 図11
  • 特開-有機発光装置及びその製造方法 図12
  • 特開-有機発光装置及びその製造方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139867
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】有機発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 71/00 20230101AFI20250919BHJP
   H10K 59/65 20230101ALI20250919BHJP
   H10K 50/854 20230101ALI20250919BHJP
   H10K 59/95 20230101ALI20250919BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20250919BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20250919BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20250919BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20250919BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
H10K71/00
H10K59/65
H10K50/854
H10K59/95
H10K50/844 445
H10K77/10
H10K59/12
G09F9/00 338
G09F9/30 365
G09F9/30 338
G09F9/30 309
G09F9/00 366A
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038937
(22)【出願日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】石井 隆司
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB04
3K107BB08
3K107CC23
3K107CC43
3K107DD11
3K107EE03
3K107EE28
3K107EE29
3K107EE48
3K107EE50
3K107EE57
3K107EE61
3K107EE65
3K107EE68
3K107FF00
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG33
3K107GG37
5C094AA15
5C094AA38
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA15
5C094FA01
5C094FA02
5C094FA04
5C094FB01
5C094FB02
5C094FB15
5C094JA01
5G435AA13
5G435AA18
5G435BB05
5G435CC09
5G435EE49
5G435HH14
5G435HH20
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】耐水性に優れ、かつ狭額縁化が可能な有機発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板1上に複数の有機発光素子6を形成する有機発光素子形成工程と、有機発光素子6を覆い、非表示領域に溝10aを有する第一封止層7を形成する第一封止層形成工程と、第一封止層7の上に、シャドウマスク20を用いて、第二封止層8を形成する第二封止層形成工程と、を有する有機発光装置の製造方法であって、第二封止層形成工程は、シャドウマスク20の開口部の周囲を構成する端部が溝10aの上に位置するよう配置された状態で、第二封止層8を形成する工程である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数の有機発光素子を形成する有機発光素子形成工程と、
前記有機発光素子を覆い、非表示領域に溝を有する第一封止層を形成する第一封止層形成工程と、
前記第一封止層の上に、シャドウマスクを用いて、第二封止層を形成する第二封止層形成工程と、
を有する有機発光装置の製造方法であって、
前記第二封止層形成工程は、前記シャドウマスクの開口部の周囲を構成する端部が前記溝の上に位置するよう配置された状態で、前記第二封止層を形成する工程であることを特徴とする有機発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記シャドウマスクを除去した後、前記第二封止層を覆う第三封止層を形成する第三封止層形成工程を有することを特徴とする請求項1に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記第一封止層の水分透過量は、10-5g/m2/day以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記第二封止層は、アスペクト比が1/10より高い構造においてコンフォーマルな堆積が可能な層であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記基板の非表示領域に溝を形成する基板溝形成工程を有し、
前記第一封止層の前記溝は、前記基板における溝に沿って形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記基板溝形成工程は、前記基板の表示領域の周囲に沿って溝を形成する工程であることを特徴とする請求項5に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記第一封止層形成工程は、前記第一封止層を、前記基板の全面に形成する工程であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記第一封止層は、窒化珪素、酸化珪素及び窒化酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記第二封止層は、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニア、酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記第三封止層の水分透過量は、10-5g/m2/day以下であることを特徴とする請求項2に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記第三封止層形成工程は、前記第三封止層を、前記基板の全面に形成する工程であることを特徴とする請求項2に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記第三封止層は、窒化珪素、酸化珪素及び窒化酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項2に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項13】
基板上に複数の有機発光素子と、前記有機発光素子を覆う封止層と、を有する有機発光装置であって、
前記封止層は、第一封止層と前記第一封止層を覆う第二封止層とを有し、
前記第一封止層は、非表示領域に溝を有し、
前記第二封止層の端部は、前記溝の内部に形成されていることを特徴とする有機発光装置。
【請求項14】
前記封止層は、前記第二封止層を覆う第三封止層をさらに有することを特徴とする請求項13に記載の有機発光装置。
【請求項15】
前記第一封止層の水分透過量は、10-5g/m2/day以下であることを特徴とする請求項13または14に記載の有機発光装置。
【請求項16】
前記第二封止層は、アスペクト比が1/10より高い構造においてコンフォーマルな堆積が可能な層であることを特徴とする請求項13または14に記載の有機発光装置。
【請求項17】
前記基板の非表示領域に溝を有し、前記第一封止層の前記溝は、前記基板における溝に沿って形成されていることを特徴とする請求項13または14に記載の有機発光装置。
【請求項18】
前記基板における溝は、前記基板の表示領域の周囲に沿って形成されていることを特徴とする請求項17に記載の有機発光装置。
【請求項19】
前記第一封止層は、前記基板の全面に形成されていることを特徴とする請求項13または14に記載の有機発光装置。
【請求項20】
前記第一封止層は、窒化珪素、酸化珪素及び窒化酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項13または14に記載の有機発光装置。
【請求項21】
前記第二封止層は、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニア、酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項13または14に記載の有機発光装置。
【請求項22】
前記第三封止層の水分透過量は、10-5g/m2/day以下であることを特徴とする請求項14に記載の有機発光装置。
【請求項23】
前記第三封止層は、前記基板の全面に形成されていることを特徴とする請求項14に記載の有機発光装置。
【請求項24】
前記第三封止層は、窒化珪素、酸化珪素及び窒化酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項14に記載の有機発光装置。
【請求項25】
請求項13または14に記載の有機発光装置を有し、前記有機発光装置は、複数の画素を有し、前記複数の画素の少なくとも一つが、有機発光素子と、前記有機発光素子に接続されたトランジスタと、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項26】
画像情報を入力するための入力部と、画像を出力するための表示部と、を有し、
前記表示部が、請求項25に記載の表示装置を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項27】
複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、前記撮像素子が撮像した画像を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は請求項13または14に記載の有機発光装置を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項28】
請求項13または14に記載の有機発光装置を有する表示部と、前記表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項29】
請求項13または14に記載の有機発光装置を有する光源と、前記光源が発する光を透過する光拡散部または光学フィルタと、を有することを特徴とする照明装置。
【請求項30】
請求項13または14に記載の有機発光装置を有する灯具と、前記灯具が設けられた機体と、を有することを特徴とする移動体。
【請求項31】
請求項13または14に記載の有機発光装置を有することを特徴とする電子写真方式の画像形成装置の露光光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の有機発光装置は、同じ外箱(ベゼル、キャビネット)サイズでのより大きな表示領域の実現、或いは、ディスプレイサイズを維持したままでの本体小型化の実現が求められ、表示領域周辺の封止領域の狭額縁化が求められている。
表示領域周辺の封止領域を狭額縁化する技術として、特許文献1には、封止層をシャドウマスクでパターニングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6642936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
封止層には、外部から水分の浸入を防ぐ耐水性の高い層を含むことが好ましいが、耐水性の高い層は、図6に示す様に異物や段差によって亀裂を生じる場合がある。図6の有機発光装置は、基板1と、画素分離膜2と、有機発光素子6と、有機発光素子6を覆い保護する封止層7とを具備するものである。ここで、有機発光素子6は、下部電極3と、有機化合物層4と、上部電極5とをこの順に有する素子である。また、耐水性の高い封止層7は、有機発光素子6を覆う様に形成されている。封止層7は、画素分離膜2の段差や異物31で亀裂32が発生する場合がある。そこで、亀裂32を平滑化するカバーレッジ性の高い層を含むことが好ましい。さらに、カバーレッジ性の高い層は透湿性が高い場合があるため、カバーレッジ性の高い層の上に耐水性の高い封止層を積層して、カバーレッジ性の高い層の上と端部を覆うことが好ましい。
カバーレッジ性の高い層を形成するために、特許文献1のように封止層をシャドウマスクでパターニングする場合、図7に示す様に、下地とシャドウマスクが接触する部分に異物やキズが発生する。図7(a)に示す様に、耐水性の高い封止層7の上に、シャドウマスク20によって、カバーレッジ性の高い封止層8をパターニングして形成する際、シャドウマスク20のエッジで、封止層7、封止層8にキズによる異物31が発生する。そして、図7(b)のように、封止層7、封止層8の上に耐水性の高い封止層9を積層すると、このキズによる異物31周辺の亀裂32から水分が侵入して、侵入水が横浸透33によってデバイスに到達し、腐食するという問題が発生し得る。
また、シャドウマスクをリブで浮かせる等により、シャドウマスクと下地との接触を回避すると、封止層がぼけて広がり、表示領域周辺の封止領域の狭額縁化が達成できないという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑み、耐水性に優れ、かつ狭額縁化が可能な有機発光装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の有機発光装置の製造方法は、
基板上に複数の有機発光素子を形成する有機発光素子形成工程と、
前記有機発光素子を覆い、非表示領域に溝を有する第一封止層を形成する第一封止層形成工程と、
前記第一封止層の上に、シャドウマスクを用いて、第二封止層を形成する第二封止層形成工程と、
を有する有機発光装置の製造方法であって、
前記第二封止層形成工程は、前記シャドウマスクの開口部の周囲を構成する端部が前記溝の上に位置するよう配置された状態で、前記第二封止層を形成する工程であることを特徴とする。
本発明の有機発光装置は、
基板上に複数の有機発光素子と、前記有機発光素子を覆う封止層と、を有する有機発光装置であって、
前記封止層は、第一封止層と前記第一封止層を覆う第二封止層とを有し、
前記第一封止層は、非表示領域に溝を有し、
前記第二封止層の端部は、前記溝の内部に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐水性に優れ、かつ狭額縁化が可能な有機発光装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の有機発光装置の一例を示す概略図である。
図2図1(a)のB部の部分拡大図である。
図3】基板の溝の形状の例を示す概略断面図である。
図4】本発明の有機発光装置の製造方法の一例を示す概略断面図である。
図5】シャドウマスクの一例を示す平面図である。
図6】異物や段差によって封止層に亀裂が生じる状況を示す概略断面図である。
図7】シャドウマスクが接触する部分に異物やキズが発生する状況を説明する概略断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。
図9】(a)本発明の一実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。
図10】(a)本発明の一実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。(b)折り曲げ可能な表示装置の一例を表す模式図である。
図11】(a)本発明の一実施形態に係る照明装置の一例を示す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係る車両用灯具を有する移動体の一例を示す模式図である。
図12】(a)本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイスの一例を示す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイスの他の例を示す模式図である。
図13】(a)本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例を表す模式図である。(b)(c)本発明の一実施形態に係る画像形成装置の露光光源の一例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の有機発光装置及びその製造方法の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0009】
<有機発光装置>
まず、本発明の有機発光装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の有機発光装置の一例を示す概略図である。図1(a)は平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A’断面図である。図1において、1は基板、2は画素分離膜、3は下部電極、4は有機化合物層、5は上部電極、6は有機発光素子、7は第一封止層、8は第二封止層、9は第三封止層、10、10aは溝、11は表示領域、12は非表示領域、13はパッド電極である。尚、図示の便宜上、図1(a)においては、溝10、表示領域11、非表示領域12、パッド電極13以外の図示を省略している。
【0010】
図1に示す有機発光装置は、図1(a)に示す様に、表示領域11と、表示領域11の外側の非表示領域12を有し、非表示領域12に複数のパッド電極13を有する。また、図1に示す有機発光装置は、基板1の非表示領域12に、表示領域11の周囲に沿って溝10を有する。
【0011】
図1に示す有機発光装置は、図1(b)に示す様に、基板1上の表示領域11内に、複数の有機発光素子6を有する。図1において、有機発光素子6は、下部電極3と、有機化合物層4と、上部電極5とをこの順に有する素子であり、隣接する有機発光素子6の間には、画素分離膜2を有する。下部電極3、上部電極5はいずれかが陽極で、他方が陰極であってよい。有機発光素子6の発光色は、赤色、緑色、青色であってもよいし、白色であってもよい。
【0012】
基板1は、透明であっても不透明であってもよい。また、基板1として、例えば、シリコンやガラス、合成樹脂等からなる絶縁性基板、又は表面に酸化珪素、窒化珪素等の絶縁層を形成した導電性基板あるいは半導体基板等を使用することができる。
【0013】
画素分離膜2は、絶縁層であり、バンクとも呼ばれる。画素分離膜2は、下部電極3の端を覆っており、下部電極3を囲って配されている。下部電極3の画素分離膜2の配されていない部分が、有機化合物層4と接し、発光領域となる。
【0014】
下部電極3の構成材料としては、例えば、アルミニウムと珪素の化合物、アルミニウム、銀、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、チタンなどが挙げられる。
【0015】
有機化合物層4の具体的な構造として、例えば、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層の三層からなる三層構造等が挙げられる。ただし、この三層構造に限定されるものではなく、発光層のみの一層構造でもよく、三層構造以外の複数の層構造(二層構造、四層構造等)であってもよい。
【0016】
上部電極5の構成材料としては、例えば、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ITO(インジウム錫酸化物)等の酸化物透明導電膜や、銀、アルミ、金、MgAg(マグネシウム銀)等の金属半透過膜等を使用することができる。
【0017】
図1に示す有機発光装置は、図1(b)に示す様に、有機発光素子6を覆い保護する封止層を具備する。図1において、封止層は、第一封止層7と第二封止層8と第三封止層9の三層構成であるが、第一封止層7と第二封止層8の二層構成であってもよい。封止層の上には、カラーフィルタ、マイクロレンズ等を設けてよい。カラーフィルタを設ける場合は、封止層との間に平坦化層を設けてよい。平坦化層はアクリル樹脂等で構成することができる。カラーフィルタとマイクロレンズとの間において、平坦化層を設ける場合も同様である。
【0018】
図1において、第一封止層7は、有機発光素子6を覆い、パッド電極13の形成領域を除く基板1の全面に形成されている。図1(b)に示す様に、第一封止層7には、基板1の溝10に相当する箇所に、溝10に倣った凹部として溝10aを有する。第一封止層7は、耐水性の高い層であることが好ましく、第一封止層7の水分透過量は10-5g/m2/day以下であることが好ましい。第一封止層7の水分透過量は、10-5g/m2/day以下10-8g/m2/day以上であることがより好ましく、10-5g/m2/day以下10-6g/m2/day以上であることがさらに好ましい。第一封止層7の構成材料としては、例えば、窒化珪素、酸化珪素、窒化酸化珪素等が挙げられる。第一封止層7は、窒化珪素、酸化珪素及び窒化酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。第一封止層7は、例えば、スパッタ法、CVD法、ALD法等を用いて形成することができる。第一封止層7の厚さは、50nm以上であることが好ましく、100nm以上2,000nm以下であることがより好ましい。第一封止層7の厚さが2,000nm以下だと膜剥がれが発生し難い。
【0019】
図1において、第二封止層8は、第一封止層7の上の、溝10aの内部及び溝10aの内側に形成されている。図1(b)に示す様に、第二封止層8の端部は、第一封止層7の溝10aの内部に形成されている。第二封止層8は、カバーレッジ性の高い層であることが好ましく、高アスペクト比の構造に対してコンフォーマル性(表面に沿って均一な膜が形成される性質)があることが好ましい。第二封止層8は、アスペクト比が1/10より高い構造においてコンフォーマルな堆積が可能な層であることが好ましい。第二封止層8は、アスペクト比が1/10より高く1/4,000以下の範囲の構造においてコンフォーマルな堆積が可能な層であることがより好ましい。また、第二封止層8は、アスペクト比が1/10より高く1/1,000以下の範囲の構造においてコンフォーマルな堆積が可能な層であることがさらに好ましい。第二封止層8の構成材料としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ジメチルシロキサン(DMSO)、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニア、酸化チタン等が挙げられ、またこれらの材料を組み合わせた積層膜であってもよい。第二封止層8は、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニア、酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。第二封止層8は、例えば、CVD法、ALD法等により形成することができる。第二封止層8の厚さは、5nm以上であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましい。第二封止層8の厚さが200nm以下だと膜剥がれが発生し難い。
【0020】
図1において、第三封止層9は、第一封止層7と第二封止層8を覆い、パッド電極13の形成領域を除く基板1の全面に形成されている。図1(b)に示す様に、第三封止層9には、基板1の溝10に相当する箇所に凹部を有してもよい。第三封止層9は、耐水性の高い層であることが好ましく、第三封止層9の水分透過量は10-5g/m2/day以下であることが好ましい。第三封止層9の水分透過量は、10-5g/m2/day以下10-8g/m2/day以上であることがより好ましく、10-5g/m2/day以下10-6g/m2/day以上であることがさらに好ましい。第三封止層9の構成材料としては、例えば、窒化珪素、酸化珪素、窒化酸化珪素等が挙げられる。第三封止層9は、窒化珪素、酸化珪素及び窒化酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。第三封止層9は、例えば、スパッタ法、CVD法、ALD法等を用いて形成することができる。第三封止層9の厚さは、50nm以上であることが好ましく、100nm以上2,000nm以下であることがより好ましい。第三封止層9の厚さが2,000nm以下だと膜剥がれが発生し難い。
【0021】
図2に、図1(a)のB部の部分拡大図を示す。尚、図示の便宜上、図2においては、第二封止層8、溝10a、表示領域11、非表示領域12以外の図示を省略している。図2(a)に示す様に、第二封止層8の端部は、コーナー部においても、溝10aの内部に形成されていることが好ましい。また、図2(b)に示す様に、コーナー部が丸みを帯びている場合、第二封止層8の端部は、溝10aの内部において、コーナー部の丸みを追従する形状であってもよい。
【0022】
図3は、基板の溝の形状の例を示す概略断面図であり、図1(a)のC部分に相当する箇所の基板を示す図である。溝10の断面形状は特に限定されず、図3(a)に示す様にV字形状であっても、図3(b)に示す様にU字形状であっても、図3(c)に示す様に台形形状であってもよい。また、溝10の断面形状は、図3(d)(e)に示す様に、溝10の最深部の位置が、溝10の幅w方向の中心の位置から、基板1の端部側(紙面の向かって右側)または基板1の表示領域11側(紙面の向かって左側)にずれた形状であってもよい。また、溝10の断面形状は、図3(f)(g)に示す様に、最深部からの高さが、基板1の端部側と、基板1の表示領域11側で異なる形状であってもよい。
【0023】
<有機発光装置の製造方法>
図4は、本発明の有機発光装置の製造方法の一例を示す概略断面図であり、図5は、本発明で用いるシャドウマスクの一例を示す平面図である。本発明の有機発光装置の製造方法は、パッド電極13の形成領域の封止層を除去するパッド電極取り出し工程を有してよい。
【0024】
[基板溝形成工程]
図4(a)に示す様に、先ず、基板1の非表示領域12に、好ましくは表示領域11の周囲に沿って溝10を形成する。溝10の形成方法は、特に限定されないが、例えば、グレイスケールマスクを用いたフォトリソグラフィ等で形成することができる。尚、基板溝形成工程は必須ではない。
【0025】
[有機発光素子形成工程]
次に、図4(a)に示す様に、基板1上に、下部電極3、画素分離膜2、有機化合物層4、上部電極5をこの順に形成し、表示領域11内に複数の有機発光素子6を形成する。
【0026】
[第一封止層形成工程]
次に、図4(b)に示す様に、基板1の全面に、有機発光素子6を覆う第一封止層7を形成する。図4(b)に示す様に、第一封止層7には、基板1の溝10に相当する箇所に、溝10に倣った凹部として溝10aが形成される。第一封止層7は、例えば、スパッタ法、CVD法、ALD法等を用いて形成することができる。尚、基板溝形成工程を有さな場合は、エッチング等の公知の方法で、第一封止層7の非表示領域に、好ましくは表示領域11の周囲に沿って溝10aを形成すればよい。
【0027】
[第二封止層形成工程]
次に、図4(c)に示す様に、シャドウマスク20を用いて、第一封止層7の上に、第二封止層8をパターニングして形成する。シャドウマスク20としては、例えば、図5に示すシャドウマスクを用いることができる。図5に示すシャドウマスク20は、矩形状の開口部21を有する。図5において、22は、開口部21の周囲を構成する端部である。図4(c)に示す様に、シャドウマスク20は、開口部21の周囲を構成する端部22が第一封止層7の溝10aの上に位置する様に配置する。その後、シャドウマスク20の開口部21内に、第二封止層8を形成する。その結果、第二封止層8の端部は、第一封止層7の溝10aの内部に形成される。第二封止層8は、例えば、CVD法、ALD法等により形成することができる。
【0028】
[第三封止層形成工程]
次に、図4(d)に示す様に、シャドウマスク20を除去した後、第一封止層7と第二封止層8を覆う様に、基板1の全面に、第三封止層9を形成する。図4(d)に示す様に、第三封止層9には、基板1の溝10に相当する箇所に凹部が形成されていてもよい。第三封止層9は、例えば、スパッタ法、CVD法、ALD法等を用いて形成することができる。尚、第三封止層9の形成は必須ではない。
【0029】
以上の通り、基板1に溝10を設けることで、シャドウマスク20が密着しても、シャドウマスク20の開口部21の周囲を構成する端部22は下地と接触せず、第一封止層7、第二封止層8端部で、キズによる異物が発生しない。そのため、第三封止層9として、亀裂のない層を形成できる。また、シャドウマスクをリブで浮かせる等により、シャドウマスクと下地との接触を回避した場合の様に、第二封止層8がぼけて広がることがない。そのため、第二封止層8膜端は、最小限の面積で第三封止層9の内側に封じ込め、外部から水分の浸入を防ぐ耐水性の高い積層封止層を形成できる。さらに、シャドウマスク20を密着させることで、シャドウマスクをリブで浮かせる等により、シャドウマスクと下地との接触を回避した場合に比べ、表示領域周辺の封止領域の狭額縁化が可能となる。そのため、付加価値の高い、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ等の有機発光装置を提供できる。
【0030】
<有機発光装置の用途>
本実施形態に係る有機発光装置は、表示装置や照明装置の構成部材として用いることができる。他にも、電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライト、白色光源にカラーフィルタを有する発光装置等の用途がある。
【0031】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する画像入力部を有し、入力された情報を処理する情報処理部を有し、入力された画像を表示部に表示する画像情報処理装置でもよい。表示装置は、本実施形態の有機発光装置を有してよく、有機発光装置は、複数の画素を有し、複数の画素の少なくとも一つが、有機発光素子と、有機発光素子に接続されたトランジスタ等の能動素子と、を有してよい。このとき、基板はシリコンなどの半導体基板であり、トランジスタは基板に形成されたMOSFETであってもよい。画像表示装置は、画像情報を入力するための入力部と、画像を出力するための表示部と、を有し、表示部が、本実施形態の表示装置を有する。
【0032】
また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部は、タッチパネル機能を有していてもよい。このタッチパネル機能の駆動方式は、赤外線方式でも、静電容量方式でも、抵抗膜方式であっても、電磁誘導方式であってもよく、特に限定されない。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0033】
図8は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。表示装置1000は、上部カバー1001と、下部カバー1009と、の間に、タッチパネル1003、表示パネル1005、フレーム1006、回路基板1007、バッテリー1008を有してよい。タッチパネル1003および表示パネル1005は、フレキシブルプリント回路FPC1002、1004が接続されている。回路基板1007には、トランジスタがプリントされている。バッテリー1008は、表示装置が携帯機器でなければ、設けなくてもよいし、携帯機器であっても、別の位置に設けてもよい。
【0034】
本実施形態に係る表示装置は、赤色、緑色、青色を有するカラーフィルタを有してよい。カラーフィルタは、当該赤色、緑色、青色がデルタ配列で配置されてよい。
【0035】
本実施形態に係る表示装置は、携帯端末の表示部に用いられてもよい。その際には、表示機能と操作機能との双方を有してもよい。携帯端末としては、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、ヘッドマウントディスプレイ等が挙げられる。
【0036】
本実施形態に係る表示装置は、複数のレンズを有する光学部と、当該光学部を通過した光を受光する撮像素子とを有する撮像装置の表示部に用いられてよい。撮像装置は、撮像素子が取得した情報を表示する表示部を有してよい。また、表示部は、撮像装置の外部に露出した表示部であっても、ファインダ内に配置された表示部であってもよい。撮像装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラであってよい。
【0037】
図9(a)は、本実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。撮像装置1100は、ビューファインダ1101、背面ディスプレイ1102、操作部1103、筐体1104を有してよい。ビューファインダ1101は、本実施形態に係る表示装置を有してよい。その場合、表示装置は、撮像する画像のみならず、環境情報、撮像指示等を表示してよい。環境情報には、外光の強度、外光の向き、被写体の動く速度、被写体が遮蔽物に遮蔽される可能性等であってよい。
【0038】
撮像に好適なタイミングはわずかな時間なので、少しでも早く情報を表示した方がよい。したがって、本実施形態の有機発光装置を用いた表示装置を用いるのが好ましい。有機発光装置は応答速度が速いからである。有機発光装置を用いた表示装置は、表示速度が求められる、これらの装置、液晶表示装置よりも好適に用いることができる。
【0039】
撮像装置1100は、不図示の光学部を有する。光学部は複数のレンズを有し、筐体1104内に収容されている撮像素子に結像する。複数のレンズは、その相対位置を調整することで、焦点を調整することができる。この操作を自動で行うこともできる。撮像装置は光電変換装置と呼ばれてもよい。光電変換装置は逐次撮像するのではなく、前画像からの差分を検出する方法、常に記録されている画像から切り出す方法等を撮像の方法として含むことができる。
【0040】
図9(b)は、本実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。電子機器1200は、表示部1201と、操作部1202と、筐体1203を有する。筐体1203には、回路、当該回路を有するプリント基板、バッテリー、通信部を有してよい。表示部1201は、本実施形態に係る有機発光装置を有してよい。操作部1202は、ボタンであってもよいし、タッチパネル方式の反応部であってもよい。操作部1202は、指紋を認識してロックの解除等を行う、生体認識部であってもよい。通信部を有する電子機器は通信機器ということもできる。電子機器1200は、レンズと、撮像素子とを備えることでカメラ機能をさらに有してよい。カメラ機能により撮像された画像が表示部1201に映される。電子機器1200としては、スマートフォン、ノートパソコン等があげられる。
【0041】
図10は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。図10(a)は、テレビモニタやPCモニタ等の表示装置である。表示装置1300は、額縁1301を有し表示部1302を有する。表示部1302には、本実施形態に係る発光装置が用いられてよい。表示装置1300は、額縁1301と、表示部1302を支える土台1303を有している。土台1303は、図10(a)の形態に限られない。額縁1301の下辺が土台を兼ねてもよい。また、額縁1301および表示部1302は、曲がっていてもよい。その曲率半径は、5000mm以上6000mm以下であってよい。
【0042】
図10(b)は本実施形態に係る表示装置の他の例を表す模式図である。図10(b)の表示装置1310は、折り曲げ可能に構成されており、いわゆるフォルダブルな表示装置である。表示装置1310は、第一表示部1311、第二表示部1312、筐体1313、屈曲点1314を有する。第一表示部1311と第二表示部1312とは、本実施形態に係る発光装置を有してよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、つなぎ目のない1枚の表示装置であってよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、屈曲点で分けることができる。第一表示部1311、第二表示部1312は、それぞれ異なる画像を表示してもよいし、第一および第二表示部とで一つの画像を表示してもよい。
【0043】
図11(a)は、本実施形態に係る照明装置の一例を表す模式図である。照明装置1400は、筐体1401と、光源1402と、回路基板1403と、光源1402が発する光を透過する光学フィルタ1404と光拡散部1405と、を有してよい。光源1402は、本実施形態に係る有機発光装置を有してよい。光学フィルタ1404は光源の演色性を向上させるフィルタであってよい。光拡散部1405は、ライトアップ等、光源の光を効果的に拡散し、広い範囲に光を届けることができる。光学フィルタ1404、光拡散部1405は、照明の光出射側に設けられてよい。必要に応じて、最外部にカバーを設けてもよい。
【0044】
照明装置は例えば室内を照明する装置である。照明装置は白色、昼白色、その他青から赤のいずれの色を発光するものであってよい。それらを調光する調光回路や発光色を調色する調色回路を有してよい。照明装置は本実施形態の有機発光装置とそれに接続される電源回路を有してよい。電源回路は、交流電圧を直流電圧に変換する回路である。照明装置はインバータ回路を有してよい。また、白とは色温度が4200Kで昼白色とは色温度が5000Kである。照明装置はカラーフィルタを有してもよい。
【0045】
また、本実施形態に係る照明装置は、放熱部を有していてもよい。放熱部は装置内の熱を装置外へ放出するものであり、比熱の高い金属、液体シリコン等が挙げられる。
【0046】
図11(b)は、本実施形態に係る移動体の一例である自動車の模式図である。当該自動車は灯具の一例であるテールランプを有する。自動車1500は、テールランプ1501を有し、ブレーキ操作等を行った際に、テールランプを点灯する形態であってよい。
【0047】
テールランプ1501は、本実施形態に係る有機発光装置を有してよい。テールランプ1501は、有機発光装置を保護する保護部材を有してよい。保護部材はある程度高い強度を有し、透明であれば材料は問わないが、ポリカーボネート等で構成されることが好ましい。ポリカーボネートにフランジカルボン酸誘導体、アクリロニトリル誘導体等を混ぜてよい。
【0048】
自動車1500は、車体1503、それに取り付けられている窓1502を有してよい。窓1502は、自動車の前後を確認するための窓でなければ、透明なディスプレイであってもよい。当該透明なディスプレイは、本実施形態に係る有機発光装置を有してよい。この場合、有機発光装置が有する電極等の構成材料は透明な部材で構成される。
【0049】
本実施形態に係る移動体は、船舶、航空機、ドローン等であってよい。移動体は、機体と当該機体に設けられた灯具を有してよい。灯具は、機体の位置を知らせるための発光をしてよい。灯具は本実施形態に係る有機発光装置を有する。
【0050】
図12を参照して、上述の各実施形態の表示装置の適用例について説明する。表示装置は、例えばスマートグラス、HMD、スマートコンタクトのようなウェアラブルデバイスとして装着可能なシステムに適用できる。このような適用例に使用される撮像表示装置は、可視光を光電変換可能な撮像装置と、可視光を発光可能な表示装置とを有する。
【0051】
図12(a)は、本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイスの一例を示す模式図である。図12(a)を用いて、1つの適用例に係る眼鏡1600(スマートグラス)を説明する。眼鏡1600のレンズ1601の表面側に、CMOSセンサやSPADのような撮像装置1602が設けられている。また、レンズ1601の裏面側には、上述した各実施形態の表示装置が設けられている。
【0052】
眼鏡1600は、制御装置1603をさらに備える。制御装置1603は、撮像装置1602と表示装置に電力を供給する電源として機能する。また、制御装置1603は、撮像装置1602と表示装置の動作を制御する。レンズ1601には、撮像装置1602に光を集光するための光学系が形成されている。
【0053】
図12(b)は、本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイスの他の例を示す模式図である。図12(b)を用いて、1つの適用例に係る眼鏡1610(スマートグラス)を説明する。眼鏡1610は、制御装置1612を有しており、制御装置1612に、図12(a)の撮像装置1602に相当する撮像装置と、表示装置が搭載される。レンズ1611には、制御装置1612内の撮像装置と、表示装置からの発光を投影するための光学系が形成されており、レンズ1611には画像が投影される。制御装置1612は、撮像装置および表示装置に電力を供給する電源として機能するとともに、撮像装置および表示装置の動作を制御する。
【0054】
制御装置1612は、装着者の視線を検知する視線検知部を有してもよい。視線の検知は赤外線を用いてよい。赤外発光部は、表示画像を注視しているユーザーの眼球に対して、赤外光を発する。発せられた赤外光の眼球からの反射光を、受光素子を有する撮像部が検出することで眼球の撮像画像が得られる。平面視における赤外発光部から表示部への光を低減する低減手段を有することで、画像品位の低下を低減する。赤外光の撮像により得られた眼球の撮像画像から表示画像に対するユーザーの視線を検出する。眼球の撮像画像を用いた視線検出には任意の公知の手法が適用できる。一例として、角膜での照射光の反射によるプルキニエ像に基づく視線検出方法を用いることができる。より具体的には、瞳孔角膜反射法に基づく視線検出処理が行われる。瞳孔角膜反射法を用いて、眼球の撮像画像に含まれる瞳孔の像とプルキニエ像とに基づいて、眼球の向き(回転角度)を表す視線ベクトルが算出されることにより、ユーザーの視線が検出される。
【0055】
本発明の一実施形態に係る表示装置は、受光素子を有する撮像装置を有し、撮像装置からのユーザーの視線情報に基づいて表示装置の表示画像を制御してよい。具体的には、表示装置は、視線情報に基づいて、ユーザーが注視する第一の視界領域と、第一の視界領域以外の第二の視界領域とを決定する。第一の視界領域、第二の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。表示装置の表示領域において、第一の視界領域の表示解像度を第二の視界領域の表示解像度よりも高く制御してよい。つまり、第二の視界領域の解像度を第一の視界領域よりも低くしてよい。
【0056】
また、表示領域は、第一の表示領域、第一の表示領域とは異なる第二の表示領域とを有し、視線情報に基づいて、第一の表示領域および第二の表示領域から優先度が高い領域が決定される。第一の視界領域、第二の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。優先度の高い領域の解像度を、優先度が高い領域以外の領域の解像度よりも高く制御してよい。つまり優先度が相対的に低い領域の解像度を低くしてよい。
【0057】
なお、第一の視界領域や優先度が高い領域の決定には、AIを用いてもよい。AIは、眼球の画像と当該画像の眼球が実際に視ていた方向とを教師データとして、眼球の画像から視線の角度、視線の先の目的物までの距離を推定するよう構成されたモデルであってよい。AIプログラムは、表示装置が有しても、撮像装置が有しても、外部装置が有してもよい。外部装置が有する場合は、通信を介して、表示装置に伝えられる。
【0058】
視認検知に基づいて表示制御する場合、外部を撮像する撮像装置を更に有するスマートグラスに好ましく適用できる。スマートグラスは、撮像した外部情報をリアルタイムで表示することができる。
【0059】
図13(a)は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す模式図である。画像形成装置140は電子写真方式の画像形成装置であり、感光体127、露光光源128、帯電部130、現像部131、転写器132、搬送ローラー133、定着器135を有する。露光光源128から光129が照射され、感光体127の表面に静電潜像が形成される。この露光光源128が本実施形態に係る有機発光装置を有する。現像部131はトナー等を有する。帯電部130は感光体127を帯電させる。転写器132は現像された画像を記録媒体134に転写する。搬送ローラー133は記録媒体134を搬送する。記録媒体134は例えば紙である。定着器135は記録媒体134に形成された画像を定着させる。
【0060】
図13(b)および図13(c)は、露光光源128を示す図であり、発光部136が長尺状の基板に複数配置されている様子を示す模式図である。矢印137は、感光体の軸に平行な方向であり、有機発光素子が配列されている列方向を表す。この列方向は、感光体127が回転する軸の方向と同じである。この方向は感光体127の長軸方向と呼ぶこともできる。図13(b)は発光部136を感光体127の長軸方向に沿って配置した形態である。図13(c)は、図13(b)とは異なる形態であり、第一の列と第二の列のそれぞれにおいて発光部136が列方向に交互に配置されている形態である。第一の列と第二の列は行方向に異なる位置に配置されている。第一の列は、複数の発光部136が間隔をあけて配置されている。第二の列は、第一の列の発光部136同士の間隔に対応する位置に発光部136を有する。すなわち、行方向にも、複数の発光部136が間隔をあけて配置されている。図13(c)の配置は、たとえば格子状に配置されている状態、千鳥格子に配置されている状態、あるいは市松模様と言い換えることもできる。
【0061】
以上説明した通り、本実施形態に係る有機発光装置を用いることにより、良好な画質で、長時間表示にも安定な表示が可能になる。また、本実施形態に係る有機発光装置を用いることにより、高効率で高輝度な光出力による屋外での良好な視認性と省電力表示の両立が可能になる。
【実施例0062】
<実施例1>
図1に示す有機発光装置を、図4に示す方法で製造した。まず、基板1に、図3(a)に示す断面形状を有する溝10(開口幅w10μm、深さd5μm)を、グレイスケールマスクを用いたフォトリソグラフィで、表示領域11の周囲に沿って形成した。この基板1上に、下部電極3、画素分離膜2、有機化合物層4、上部電極5をこの順に形成し、表示領域11内に複数の有機発光素子6を形成した。
【0063】
次に、図4(b)に示す様に、基板1の全面に、有機発光素子6を覆う第一封止層7をCVD法により形成した。第一封止層7は、水分透過量が10-5g/m2/day以下である窒化珪素を用いて膜厚100nmで形成した。第一封止層7には、基板1の溝10に相当する箇所に溝10aが形成されていた。
【0064】
次に、図4(c)に示す様に、図5に示すシャドウマスク20を用いて、第一封止層7の上に、第二封止層8をパターニングして形成した。第二封止層8は、アスペクト比1/10より高い構造においてコンフォーマルな堆積が可能なALD法を用いて、酸化アルミニウムを膜厚10nmで形成した。具体的には、図4(c)に示す様に、シャドウマスク20を、開口部21の周囲を構成する端部22が第一封止層7の溝10aの上に位置する様に配置した。その後、シャドウマスク20の開口部21内に、第二封止層8を形成した。第二封止層8の端部は、第一封止層7の溝10aの内部に形成されていた。
【0065】
次に、図4(d)に示す様に、シャドウマスク20を除去した後、第一封止層7と第二封止層8を覆う様に、基板1の全面に、第三封止層9をCVD法により形成した。第三封止層9は、水分透過量が10-5g/m2/day以下である窒化珪素を用いて膜厚100nmで形成した。図4(d)に示す様に、第三封止層9には、基板1の溝10に相当する箇所に凹部が形成されていた。
【0066】
作成した有機発光装置を、高温高湿(60℃/90%)の試験装置に保管し、100時間保管後、200時間保管後、1,000時間保管後、2,000時間保管後の有機発光装置の非発光欠陥について、以下の基準で評価した。尚、非発光の欠陥が生じた時点で評価を中止した。結果を表1に示す。
A:発光領域に非発光の欠陥が生じなかった。
B:発光領域に非発光の欠陥が生じたが、有機発光装置の仕様を満たさす。
C:発光領域に非発光の欠陥が生じ、有機発光装置の仕様を満たさない。
【0067】
<実施例2乃至7>
溝10の断面形状を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして有機発光装置を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0068】
尚、実施例4の溝(図3(d))は、最深部の位置が、溝10の幅方向の中心から2μm外側にずれ、実施例5の溝(図3(e))は、最深部の位置が、溝10の幅方向の中心から2μm内側にずれている。また、実施例6の溝(図3(f))は、外側が内側より3μm低く、実施例7の溝(図3(g))は、外側が内側より2μm高い。
【0069】
<比較例1>
基板1上に溝10を設けなかった以外は、実施例1と同様にして有機発光装置を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0070】
<実施例8,9>
第一封止層7または第三封止層9の水分透過量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして有機発光装置を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0071】
<実施例10>
第二封止層8を、アスペクト比1/10の構造においてコンフォーマルな堆積が可能な材料を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして有機発光装置を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
≪含まれる構成≫
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
基板上に複数の有機発光素子を形成する有機発光素子形成工程と、
前記有機発光素子を覆い、非表示領域に溝を有する第一封止層を形成する第一封止層形成工程と、
前記第一封止層の上に、シャドウマスクを用いて、第二封止層を形成する第二封止層形成工程と、
を有する有機発光装置の製造方法であって、
前記第二封止層形成工程は、前記シャドウマスクの開口部の周囲を構成する端部が前記溝の上に位置するよう配置された状態で、前記第二封止層を形成する工程であることを特徴とする有機発光装置の製造方法。
(構成2)
前記シャドウマスクを除去した後、前記第二封止層を覆う第三封止層を形成する第三封止層形成工程を有することを特徴とする構成1に記載の有機発光装置の製造方法。
(構成3)
前記第一封止層の水分透過量は、10-5g/m2/day以下であることを特徴とする構成1または2に記載の有機発光装置の製造方法。
(構成4)
前記第二封止層は、アスペクト比が1/10より高い構造においてコンフォーマルな堆積が可能な層であることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の有機発光装置の製造方法。
(構成5)
前記基板の非表示領域に溝を形成する基板溝形成工程を有し、
前記第一封止層の前記溝は、前記基板における溝に沿って形成されていることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の有機発光装置の製造方法。
(構成6)
前記基板溝形成工程は、前記基板の表示領域の周囲に沿って溝を形成する工程であることを特徴とする構成5に記載の有機発光装置の製造方法。
(構成7)
前記第一封止層形成工程は、前記第一封止層を、前記基板の全面に形成する工程であることを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載の有機発光装置の製造方法。
(構成8)
前記第一封止層は、窒化珪素、酸化珪素及び窒化酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載の有機発光装置の製造方法。
(構成9)
前記第二封止層は、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニア、酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする構成1乃至8のいずれかに記載の有機発光装置の製造方法。
(構成10)
前記第三封止層の水分透過量は、10-5g/m2/day以下であることを特徴とする構成2に記載の有機発光装置の製造方法。
(構成11)
前記第三封止層形成工程は、前記第三封止層を、前記基板の全面に形成する工程であることを特徴とする構成2または10に記載の有機発光装置の製造方法。
(構成12)
前記第三封止層は、窒化珪素、酸化珪素及び窒化酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする構成2、10または11に記載の有機発光装置の製造方法。
(構成13)
基板上に複数の有機発光素子と、前記有機発光素子を覆う封止層と、を有する有機発光装置であって、
前記封止層は、第一封止層と前記第一封止層を覆う第二封止層とを有し、
前記第一封止層は、非表示領域に溝を有し、
前記第二封止層の端部は、前記溝の内部に形成されていることを特徴とする有機発光装置。
(構成14)
前記封止層は、前記第二封止層を覆う第三封止層をさらに有することを特徴とする構成13に記載の有機発光装置。
(構成15)
前記第一封止層の水分透過量は、10-5g/m2/day以下であることを特徴とする構成13または14に記載の有機発光装置。
(構成16)
前記第二封止層は、アスペクト比が1/10より高い構造においてコンフォーマルな堆積が可能な層であることを特徴とする構成13乃至15のいずれかに記載の有機発光装置。
(構成17)
前記基板の非表示領域に溝を有し、前記第一封止層の前記溝は、前記基板における溝に沿って形成されていることを特徴とする構成13乃至16のいずれかに記載の有機発光装置。
(構成18)
前記基板における溝は、前記基板の表示領域の周囲に沿って形成されていることを特徴とする構成17に記載の有機発光装置。
(構成19)
前記第一封止層は、前記基板の全面に形成されていることを特徴とする構成13乃至18のいずれかに記載の有機発光装置。
(構成20)
前記第一封止層は、窒化珪素、酸化珪素及び窒化酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする構成13乃至19のいずれかに記載の有機発光装置。
(構成21)
前記第二封止層は、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニア、酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする構成13乃至21のいずれかに記載の有機発光装置。
(構成22)
前記第三封止層の水分透過量は、10-5g/m2/day以下であることを特徴とする構成14に記載の有機発光装置。
(構成23)
前記第三封止層は、前記基板の全面に形成されていることを特徴とする構成14または22に記載の有機発光装置。
(構成24)
前記第三封止層は、窒化珪素、酸化珪素及び窒化酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする構成14、22または23に記載の有機発光装置。
【0074】
(構成25)
構成13乃至24のいずれかに記載の有機発光装置を有し、前記有機発光装置は、複数の画素を有し、前記複数の画素の少なくとも一つが、有機発光素子と、前記有機発光素子に接続されたトランジスタと、を有することを特徴とする表示装置。
(構成26)
画像情報を入力するための入力部と、画像を出力するための表示部と、を有し、
前記表示部が、構成25に記載の表示装置を有することを特徴とする画像表示装置。
(構成27)
複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、前記撮像素子が撮像した画像を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は構成13乃至24のいずれかに記載の有機発光装置を有することを特徴とする光電変換装置。
(構成28)
構成13乃至24のいずれかに記載の有機発光装置を有する表示部と、前記表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有することを特徴とする電子機器。
(構成29)
構成13乃至24のいずれかに記載の有機発光装置を有する光源と、前記光源が発する光を透過する光拡散部または光学フィルタと、を有することを特徴とする照明装置。
(構成30)
構成13乃至24のいずれかに記載の有機発光装置を有する灯具と、前記灯具が設けられた機体と、を有することを特徴とする移動体。
(構成31)
構成13乃至24のいずれかに記載の有機発光装置を有することを特徴とする電子写真方式の画像形成装置の露光光源。
【符号の説明】
【0075】
1:基板、2:画素分離膜、3:下部電極、4:有機化合物層、5:上部電極、6:有機発光素子、7:第一封止層、8:第二封止層、9:第三封止層、10,10a:溝、11:表示領域、12:非表示領域、13:パッド電極、20:シャドウマスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13