(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139868
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/852 20230101AFI20250919BHJP
H10K 50/856 20230101ALI20250919BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20250919BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20250919BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20250919BHJP
H10K 71/00 20230101ALI20250919BHJP
H10K 59/80 20230101ALI20250919BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20250919BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20250919BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
H10K50/852
H10K50/856
H10K59/35
H10K59/38
H10K59/12
H10K71/00
H10K59/80
G02B5/20 101
G02B1/11
G09F9/30 365
G09F9/30 349B
G09F9/30 339Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038938
(22)【出願日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】石岡 真男
(72)【発明者】
【氏名】馬飼野 彰宜
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
2H148BD01
2H148BG06
2K009AA02
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107DD10
3K107DD88
3K107EE03
3K107EE22
3K107EE27
3K107EE33
3K107FF13
3K107FF15
3K107GG12
5C094AA03
5C094BA03
5C094BA27
5C094DA15
5C094EA06
5C094EB05
5C094ED03
5C094FA02
5C094FB15
5C094JA09
(57)【要約】
【課題】干渉構造を有する表示装置において、各色の画素間での発光特性のばらつきを抑制する。
【解決手段】反射層14と第1電極17との間に配置する第1絶縁層16の厚さが、発光色の異なる画素間で異なる表示装置において、面積諧調マスクを用いて膜厚に勾配を設けたフォトレジストを形成して絶縁膜をエッチングして第1絶縁層16を形成することにより、反射層14の端部上において第1絶縁層16の斜面が基板10の第1面に対してなす角度Aが、各色の画素間で±10%以内とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の第1面上に第1画素と第2画素を有し、
前記第1画素及び第2画素はそれぞれ、反射層と、第1絶縁層と、第1電極と、前記第1電極の端部を覆う第2絶縁層と、前記第1電極及び前記第2絶縁層を覆う有機化合物層と、前記有機化合物層を覆う第2電極と、を当該順で有し、
前記反射層と前記第1電極との距離が、前記第1画素と前記第2画素とで互いに異なる表示装置であって、
前記反射層の端部上において前記第1絶縁層の斜面が前記第1面に対してなす角度Aが、前記第1画素と前記第2画素とで、その差が±10%以内であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記反射層の端部上に反射防止膜を有し、前記反射防止膜と前記反射層との段差によって前記第1絶縁層の斜面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記角度Aが、前記第1画素と前記第2画素とでほぼ等しいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記角度Aが、前記第1画素及び前記第2画素のいずれにおいても、50°乃至70°であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1絶縁層の斜面の最上部及び最下部における前記角度Aが連続的に変化していることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
さらに第3画素を有し、前記第3画素において、前記反射層と前記第1電極との距離が、前記第1画素及び前記第2画素とは異なり、且つ、前記角度Aが前記第1画素乃至前記第3画素において±10%以内であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記反射層と前記第1電極との距離が、第1画素<第2画素<第3画素であることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示装置が前記第2電極上にカラーフィルタを有し、前記第1画素乃至前記第3画素の各画素上のカラーフィルタの透過光の波長が、第1画素<第2画素<第3画素であることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第1画素及び前記第2画素がそれぞれ、トランジスタを有していることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
基板上に第1画素と第2画素とを有する表示装置の製造方法であって、
基板の第1面上に前記複数の画素毎に反射層を形成する工程と、
前記反射層上に、前記第1画素と前記第2画素とで異なる厚さで、且つ前記反射層の端部に形成される斜面と前記基板の第1面とのなす角度Aが、前記第1画素と前記第2画素とで、その差が±10%以内になるように第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層上に画素毎に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の端部を覆う第2絶縁層を形成する工程と、
前記第1電極及び前記第2絶縁層を覆う有機化合物層を形成する工程と、
前記有機化合物層を覆う第2電極を形成する工程と、を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1絶縁層を形成する工程が、前記基板の全面に絶縁膜を形成した後、前記絶縁膜上にフォトレジストを形成してエッチングして前記第1絶縁層とする工程であって、前記フォトレジストは、前記反射層上において膜厚に勾配を有し、前記勾配は、前記第1画素と前記第2画素とでほぼ一定であることを特徴とする請求項10に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記フォトレジストの形成に際し、面積諧調マスク又はハーフトーンマスクを用いて、前記フォトレジストの膜厚に前記勾配を形成することを特徴とする請求項10に記載の表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1画素における前記第1絶縁層と、前記第2画素における前記第1絶縁層とを、同時に形成することを特徴とする請求項10に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の有機エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)を用いた表示装置では、性能向上目的で透明電極を用いた干渉構造が用いられる。透明電極は有機EL素子から発せられた光を透過し、透過した光を反射・干渉させることで共振構造を形成し、発光効率を向上させている。透明電極を用いた光干渉による発光素子は例えば特許文献1で開示されており、反射層、絶縁層、下部電極、有機層、透明電極が形成され、絶縁層の膜厚を各色画素に最適化し、干渉効果を高める構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された干渉構造においては、画素間領域での絶縁膜表面に段差があり、発光領域の端部近傍において絶縁層表面は基板表面に対して角度を持つ斜面をなす。この時、各色の画素内で絶縁層の膜厚が異なる一方で各色の画素間における膜厚は一定となることから、その段差は画素ごとに異なる値を取ることになる。特許文献1においては画素ごとに絶縁層の成膜とエッチングを繰り返す形でこの構造を形成しているが、画素ごとにエッチング工程での絶縁膜の量が異なっていることから、形成後の上記斜面の角度は異なる値をとり得る。例えば、各色の干渉膜厚を波長λに対しλ/4で設計した場合、反射層上の第1絶縁層の膜厚は青色<緑色<赤色の順となっているが、青色の画素における前記段差部の角度が最も急峻となり得る。このとき、絶縁膜表面の斜面上に成膜される下部電極、有機層、透明電極の膜厚は、斜面の角度が急峻なほど相対的に薄くなり得る。これによって発光特性にばらつきが生じやすくなる懸念がある。
本発明の課題は、干渉構造を有する表示装置において、各色の画素間での発光特性のばらつきを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1は、基板の第1面上に第1画素と第2画素を有し、
前記第1画素及び第2画素はそれぞれ、反射層と、第1絶縁層と、第1電極と、前記第1電極の端部を覆う第2絶縁層と、前記第1電極及び前記第2絶縁層を覆う有機化合物層と、前記有機化合物層を覆う第2電極と、を当該順で有し、
前記反射層と前記第1電極との距離が、前記第1画素と前記第2画素とで互いに異なる表示装置であって、
前記反射層の端部上において前記第1絶縁層の斜面が前記第1面に対してなす角度Aが、前記第1画素と前記第2画素とで、その差が±10%以内であることを特徴とする。
本発明の第2は、基板上に第1画素と第2画素とを有する表示装置の製造方法であって、
基板の第1面上に前記複数の画素毎に反射層を形成する工程と、
前記反射層上に、前記第1画素と前記第2画素とで異なる厚さで、且つ前記反射層の端部に形成される斜面と前記基板の第1面とのなす角度Aが、前記第1画素と前記第2画素とで、その差が±10%以内になるように第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層上に画素毎に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の端部を覆う第2絶縁層を形成する工程と、
前記第1電極及び前記第2絶縁層を覆う有機化合物層を形成する工程と、
前記有機化合物層を覆う第2電極を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、各画素の反射層上の絶縁層の斜面の角度をほぼ等しく形成することによって、発光特性のばらつきが抑制された表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の表示装置の一実施形態の厚さ方向の断面模式図である。
【
図4】本発明の表示装置における、第1絶縁層の斜面と基板の第1面とのなす角度の説明図である。
【
図5】面積諧調マスクを用いたエッチング工程を示す図である。
【
図6】従来技術を用いた表示装置の製造工程図である。
【
図7】従来技術を用いた表示装置の製造工程図である。
【
図8】従来技術で製造した表示装置における、第1絶縁層の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について実施形態を挙げて詳細に説明するが、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
図1に本発明の一実施形態の有機EL素子からなる表示装置の断面図を示す。本実施形態においては、基板10上に駆動回路層11があり、その上に表面が平坦化された絶縁性の層間膜12が設けられている。層間膜12の上に有機EL素子が設けられ、駆動回路層11と反射層14とは導電プラグ13を介して接続されている。導電プラグ13は、例えばTi/TiNなどのバリアメタルを有するWプラグで有りうる。反射層14上には反射防止層15が設けられており、反射防止層15は反射率を上げるため、反射層14の中央部の領域が例えばフォトリソグラフィ法及びドライエッチング法により除去されている。反射防止層15の上には第1絶縁層16、アノードとして機能する第1電極17、第2絶縁層18、有機化合物層19、カソードとして機能する第2電極20、防湿層21、平坦化層22、カラーフィルタ23が、前記の順に積層されている。有機化合物層19から基板10に向けて放射された光を透過させるため第1電極17は透明材料であることが望ましく、例えば酸化インジウム錫(ITO)または酸化インジウム亜鉛(IZO)を用いて形成される。この透明材料はより薄いほど光の吸収を低減させることができ、消費電力において有利となる。尚、第1電極17と駆動回路層11は、不図示の接続部を介して電気的に接続されている。この接続部は、反射層14や反射防止層15を含んでいても良い。
【0010】
本実施形態に係る表示装置には前記構造を各々持つ第1画素25R、第2画素25G、第3画素25Bが含まれており、各画素には各々異なる色の第1カラーフィルタ23R、第2カラーフィルタ23G、第3カラーフィルタ23Bが設けられている。第1画素25R、第2画素25G、第3画素25Bは、有機EL表示装置から外部へ放射される光の色が相互に異なっており、例えば第1画素25Rは赤色(R)の光、第2画素25Gは緑色(G)の光、第3画素25Bは青色(B)の光を放射する。本実施形態による有機EL表示装置は複数の第1画素25R、複数の第2画素25G、複数の第3画素25Bを有しうる。尚、本実施形態では3種類の色の光を発生させるものとしているが、これに限定されるものではない。
【0011】
本実施形態に係る表示装置においては、基板10に形成された駆動回路層11から第1電極17に電気信号が送られ、有機化合物層19が光を発生させる。有機化合物層19から基板10に向けて放射された光は、反射層14によって反射される。有機化合物層19から第2電極20に向けて放射された光と反射層14で反射された光とは、第1画素25R、第2画素25G、第3画素25Bのそれぞれにおいて、第1絶縁層16の直下に反射防止層15が存在しない領域において共振し、増幅される。このようにして増幅された光は、それぞれカラーフィルタ23R、23G、23Bを通して放射される。
【0012】
有機化合物層19から基板10に向けて光が放射される際、各々の画素が放射する光の波長が異なる。即ち共振、増幅が行われるための望ましい波長も画素毎に異なっている。そのため、第1画素25R、第2画素25G、第3画素25Bの各々中央の反射防止層15が設けられない部分における第1絶縁層16の膜厚をそれぞれT
R、T
G、T
Bとすると、これらは相互に異なる値を取る。同様に、前記画素中央部分と画素周辺部分との段差をΔT
R、ΔT
G、ΔT
Bとすると、これらも相互に異なる値をとる。前記画素中央部分の端部付近より画素周辺部に向けて、第1絶縁層16の表面は傾斜しており、第1絶縁層16の斜面が、基板10の第1面に対してなす角度A
R、A
G、A
Bは膜厚T
R、T
G、T
Bの値によらず概ね一定、望ましくは相対比でその差が-10%乃至10%の範囲内の値をとるよう制御する。これにより、第1絶縁層16の表面上に積層される第1電極17の膜厚が一定の範囲内に制御されうる。
図4に、第1絶縁層16の膜厚と、斜面の角度とを示す。
図4中、(a)は第1画素25Rを、(b)は第2画素25Gを、(c)は第3画素25Bを示す。
尚、第1絶縁層16の斜面の最上部及び最下部において、角度Aは連続的に変化している。
【0013】
次に、
図2、
図3を用いて、本実施形態に係る表示装置の製造方法について説明する。
図2,
図3は、係る製造方法の工程を示す厚さ方向の断面模式図である。
【0014】
先ず、
図2(a)に示すように、上述した基板10上に駆動回路のトランジスタや容量等を含む駆動回路層11が公知のCMOSプロセスにより形成される。次いで、例えばプラズマCVD法、高密度プラズマ法やそれらの製法を組み合わせることにより、例えば酸化膜(SiO
x)、酸窒化膜(SiON)などの絶縁膜を成膜して層間膜12を形成する。層間膜12は成膜された後に、画素領域を含む表面を例えばCMP法により平坦化されていてもよい。次に、層間膜12において、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法により、所定の位置に複数の開口が形成される。各開口に、例えばタングステン(W)が配され、CMP法或いはエッチバック法によって余分な部分が除去され、導電性材料(タングステン)よりなる導電プラグ13が形成される。
【0015】
次に、
図2(b)に示すように、層間膜12の上に、例えばスパッタリング法により、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、アルミ合金、窒化チタン(TiN)からなる積層金属膜を形成し、この積層金属膜を、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法あるいはウエットエッチング法により、所定の形状にパターニングして、前述の導電プラグ13に接続された複数の反射層14と反射防止層15を表示領域に形成する。
【0016】
次に、
図2(c)に示すように、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法により、最表面が反射層14となるように、反射防止層15の所定の位置に複数の開口が形成される。反射防止層15があることでフォトリソグラフィの精度が向上し、より微細な形状加工が可能となっている。開口部の端は50°乃至70°程度のテーパー形状をとるのが望ましいが、それに限定されるものではない。
【0017】
次に、
図3(d)に示すように、反射層14の上に、プラズマCVD法により、例えば酸化膜(SiO
x)、酸窒化膜(SiON)、窒化ケイ素膜(SiN
x)などの絶縁層を成膜して第1絶縁層16を形成する。
【0018】
次に、
図3(e)に示すように、フォトリソグラフィ法によりフォトレジスト26のパターンを形成し、次いで
図3(f)に示すようにドライエッチング法或いはウエットエッチング法により画素となる箇所の第1絶縁層16を一部開口する。この時、エッチング後の第1絶縁層16の膜厚を制御するため、フォトリソグラフィには面積諧調マスク或いはハーフトーンマスクを用い、反射防止層15の形成されていない画素中央部分は膜厚を薄くし、且つ反射層14上方の画素周辺部分との間の角度が概ね一定の傾斜角度をなすようにフォトレジスト26をパターニングし、フォトレジスト26の形状を制御することが望ましい。尚、
図3(e)においては反射層14の形状を転写してフォトレジスト26も画素周辺部に凸部を有しているが、本発明はこれに限定されるものでは無く、画素周辺部は画素間領域とほぼ同等の厚さで形成しても良い。
【0019】
図5に面積諧調マスクを用いた膜厚調整の原理を示す。面積諧調マスクは露光波長以下の微小な開口パターンがドット状に配置され、マスク内でその開口率tに任意の分布を持つ特徴がある。例えば、
図5(a)で示したように、図中左方の部分は開口率tが低く、右方の部分は開口率tが高い分布を持つ面積諧調マスク33を用い、被エッチング材31上に塗布したポジ型のフォトレジスト32を露光してフォトリソグラフィを行う場合、
図5(b)で示したように開口率tの低い部分はフォトレジスト32の溶解量が少なくなることから残膜量が多くなり、開口率tの高い部分は残膜量が少なくなる。このようにフォトレジスト32の膜厚が分布を持った状態でエッチングを行った場合、
図5(c)に示したように被エッチング材31にフォトレジスト32の形状が転写され、エッチング後の被エッチング材31の膜厚に分布を持たせることが可能になる。
【0020】
よって、面積諧調マスクを用いることにより、
図3(e)のようにレジスト形状を制御してパターニングし、更にエッチングを行うことで、
図3(f)、
図4に示したようにエッチング後の第1絶縁層16の膜厚T
R、T
G、T
Bを異なるものとすることが可能である。また、面積諧調マスクの透過率は連続的に変化させられることから傾斜角度も任意に制御が可能で、角度A
R、A
G、A
Bがほぼ一定となる、所望の形状が得られる。以上の工程の後、公知の方法で有機化合物層19からカラーフィルタ23までの形成を行い、所望の有機EL表示装置を製造することができる。
【0021】
尚、上記実施形態では3種類の色の光の波長に対応した膜厚を一回の絶縁膜成膜、フォトリソグラフィ及びエッチングで形成しているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、前記工程が複数回であっても構わない。例えば3種類の画素について、絶縁膜成膜、フォトリソグラフィ及びエッチングをその都度実施する形態や、絶縁膜成膜は一括で行った上でフォトリソグラフィ及びエッチングを複数回実施する形態などでも構わない。また、複数回のフォトリソグラフィ及びエッチングにより形成する場合、その一部の工程のみで面積諧調マスクを用いる形でも構わない。
【0022】
本発明と比較するため、特許文献1に開示された製造方法で
図1の表示装置の第1絶縁層16を形成する工程を
図6、
図7に示す。尚、
図6、
図7では、簡易的に第1画素25R、第2画素25Gのみを示す。また、係る工程で形成した第1画素25R、第2画素25Gの拡大図を
図8に示す。いずれの図も、厚さ方向の断面模式図である。
【0023】
図6(a)に示すように、反射層14と反射防止層15とを形成する。次いで、
図6(b)に示すように、第1の絶縁膜16aを成膜する。次に、
図6(c)に示すように、公知のドライエッチング法を用いて第1画素25Rの反射層14上のみ第1の絶縁膜16aを除去する。次に、
図7(d)に示すように、第2の絶縁膜16bの成膜を行った後、再びドライエッチング法を用いて第2画素25Gの反射層14上の第1の絶縁膜16a、第2の絶縁膜16bを除去する。次に、
図7(f)に示すように、第3の絶縁膜16cの成膜を行う。このように画素ごとに成膜とエッチングを繰り返すことで、
図8に示すように、光学共振層の一部をなす第1絶縁層16の膜厚T
R、T
Gをそれぞれ調整することが可能である。
図8(a)は
図7(f)の第1画素25Rの、
図8(b)は
図7(f)の第2画素25Gの拡大図である。
【0024】
このような製造方法によれば、画素ごとに絶縁膜をドライエッチングする際の被エッチング膜の膜厚が異なることとなる。第1の絶縁膜16aや第2の絶縁膜16bをドライエッチングする際には、基板に対して平行な方向にもエッチングが進み得るため、被エッチング膜厚の膜厚が変わると、ドライエッチング後の第1絶縁層16の斜面が基板の第1面に対してなす角度A(
図8ではA
R、A
G)は画素毎に異なる値となり得る。角度Aに応じて第1電極17や有機化合物層19が第1絶縁層16の斜面上に成膜される膜厚も異なり得るため、このような構造においては画素間のリーク電流や画素ごとの駆動電流のばらつきにより発光特性のばらつきが生じ得る。これに対して本発明では角度Aを各画素でほぼ同一にすることで、発光特性のばらつきが少ない良好な表示装置が得られる。
【0025】
〔含まれる構成〕
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
基板の第1面上に第1画素と第2画素を有し、
前記第1画素及び第2画素はそれぞれ、反射層と、第1絶縁層と、第1電極と、前記第1電極の端部を覆う第2絶縁層と、前記第1電極及び前記第2絶縁層を覆う有機化合物層と、前記有機化合物層を覆う第2電極と、を当該順で有し、
前記反射層と前記第1電極との距離が、前記第1画素と前記第2画素とで互いに異なる表示装置であって、
前記反射層の端部上において前記第1絶縁層の斜面が前記第1面に対してなす角度Aが、前記第1画素と前記第2画素とで、その差が±10%以内であることを特徴とする表示装置。
【0026】
(構成2)
前記反射層の端部上に反射防止膜を有し、前記反射防止膜と前記反射層との段差によって前記第1絶縁層の斜面が形成されていることを特徴とする構成1に記載の表示装置。
(構成3)
前記角度Aが、前記第1画素と前記第2画素とでほぼ等しいことを特徴とする構成1又は2に記載の表示装置。
(構成4)
前記角度Aが、前記第1画素及び前記第2画素のいずれにおいても、50°乃至70°であることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の表示装置。
(構成5)
前記第1絶縁層の斜面の最上部及び最下部における前記角度Aが連続的に変化していることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の表示装置。
【0027】
(構成6)
さらに第3画素を有し、前記第3画素において、前記反射層と前記第1電極との距離が、前記第1画素及び前記第2画素とは異なり、且つ、前記角度Aが前記第1画素乃至前記第3画素において±10%以内であることを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の表示装置。
(構成7)
前記反射層と前記第1電極との距離が、第1画素<第2画素<第3画素であることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
(構成8)
前記表示装置が前記第2電極上にカラーフィルタを有し、前記第1画素乃至前記第3画素の各画素上のカラーフィルタの透過光の波長が、第1画素<第2画素<第3画素であることを特徴とする構成7に記載の表示装置。
(構成9)
前記第1画素及び前記第2画素がそれぞれ、トランジスタを有していることを特徴とする構成1乃至8のいずれかに記載の表示装置。
【0028】
(構成10)
基板上に第1画素と第2画素とを有する表示装置の製造方法であって、
基板の第1面上に前記複数の画素毎に反射層を形成する工程と、
前記反射層上に、前記第1画素と前記第2画素とで異なる厚さで、且つ前記反射層の端部に形成される斜面と前記基板の第1面とのなす角度Aが、前記第1画素と前記第2画素とで、その差が±10%以内になるように第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層上に画素毎に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の端部を覆う第2絶縁層を形成する工程と、
前記第1電極及び前記第2絶縁層を覆う有機化合物層を形成する工程と、
前記有機化合物層を覆う第2電極を形成する工程と、を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【0029】
(構成11)
前記第1絶縁層を形成する工程が、前記基板の全面に絶縁膜を形成した後、前記絶縁膜上にフォトレジストを形成してエッチングして前記第1絶縁層とする工程であって、前記フォトレジストは、前記反射層上において膜厚に勾配を有し、前記勾配は、前記第1画素と前記第2画素とでほぼ一定であることを特徴とする構成10に記載の表示装置の製造方法。
(構成12)
前記フォトレジストの形成に際し、面積諧調マスク又はハーフトーンマスクを用いて、前記フォトレジストの膜厚に前記勾配を形成することを特徴とする構成10又は11に記載の表示装置の製造方法。
(構成13)
前記第1画素における前記第1絶縁層と、前記第2画素における前記第1絶縁層とを、同時に形成することを特徴とする構成10乃至12のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【符号の説明】
【0030】
10:基板、14:反射層、15:反射防止層、16:第1絶縁層、17:第1電極、18:第2絶縁層、19:有機化合物層、20:第2電極、23R、23G、23B:カラーフィルタ、25:第1画素、25G:第2画素、25B:第3画素、26、32:フォトレジスト