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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139875
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】スプライン連結装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 1/06 20060101AFI20250919BHJP
【FI】
F16D1/06 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038949
(22)【出願日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広野 大地
(57)【要約】
【課題】穴スプライン歯および軸スプライン歯の軸方向の基端側の応力を緩和できるスプライン連結装置を提供する。
【解決手段】ハブ32は、内周側に穴スプライン部32Cが設けられている。回転軸34は、外周側に軸スプライン部34Aが設けられている。クランピングねじ35は、薄肉部32Hを押圧することにより、穴スプライン歯32C1と軸スプライン歯34A1とを拘束する。軸スプライン歯34A1および穴スプライン歯32C1は、軸方向の基端側の端部42,53にテーパ面43,52を有している。軸スプライン歯34A1のテーパ面43と穴スプライン歯32C1のテーパ面52は、穴スプライン部32Cと軸スプライン部34Aとをスプライン結合させた状態で、周方向から見て交差している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に穴スプライン部が設けられた円筒状のハブと、
先端部に、外周側に前記穴スプライン部とスプライン結合する軸スプライン部が設けられた回転軸と、を備え、
前記ハブは、前記穴スプライン部の径方向外側に設けられ、一方側の端面から他方側の端面にかけて、前記ハブの軸線方向に貫通する貫通穴と、
前記ハブの外周側面から前記貫通穴に向けて形成された挿入穴と、
前記ハブの前記貫通穴と前記穴スプライン部との間に形成された薄肉部と、を有し、
前記ハブの前記挿入穴に挿入され、前記薄肉部を押圧する押圧具と、を備えたスプライン連結装置において、
前記軸スプライン部には、軸スプライン歯の前記回転軸の軸方向の先端側とは反対側となる基端側の端部に軸スプラインテーパ面が形成され、
前記穴スプライン部には、穴スプライン歯の軸線方向の基端側の端部に穴スプラインテーパ面が形成され、
それぞれ前記軸スプラインテーパ面と前記穴スプラインテーパ面は、前記穴スプライン部と前記軸スプライン部とをスプライン結合させた状態で、それらのテーパ面を前記ハブの周方向から見たとき、交差するように形成されている、
ことを特徴とするスプライン連結装置。
【請求項2】
前記穴スプライン歯は、前記穴スプラインテーパ面よりも前記基端側にあり、前記穴スプライン歯の軸方向の中間部の高さよりも低い高さで軸方向に延びる歯元延長部を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載のスプライン連結装置。
【請求項3】
前記回転軸は、前記軸スプライン歯の前記軸スプラインテーパ面よりも前記基端側に溝を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載のスプライン連結装置。
【請求項4】
前記回転軸の外周面に周方向に沿って溝が形成され、
前記溝は前記軸スプライン歯の前記軸スプラインテーパ面に連続して形成され、
前記溝は前記穴スプライン歯の前記歯元延長部と径方向に対面する、
ことを特徴とする請求項2に記載のスプライン連結装置。
【請求項5】
前記回転軸は、建設機械に搭載される油圧ポンプの回転軸である、
ことを特徴とする請求項1に記載のスプライン連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、油圧ショベル等の建設機械に搭載された原動機と油圧ポンプとの間で回転力を伝達するスプライン連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、油圧ショベル等の建設機械の原動機と油圧ポンプとの間は、スプライン連結装置により回転力の伝達を可能に連結されている。スプライン連結装置は、例えば、内周側に穴スプライン部が設けられた円筒状のハブと、外周側にハブの穴スプライン部とスプライン結合される軸スプライン部が設けられた回転軸と、を備えている。
【0003】
また、例えば、特許文献1には、ネジによりハブの穴スプライン部の穴スプライン歯を回転軸の軸スプライン部の軸スプライン歯に押付けることにより、穴スプライン部と軸スプライン部とを拘束するカップリングが開示されている。また、特許文献2には、軸方向に延びるスプライン歯のうち回転軸の軸方向の先端側とは反対側となる基端側に切り欠き部を設けたスプライン連結構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭53-73342号公報
【特許文献2】特開2009-250356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、軸スプライン歯の軸方向長さが穴スプライン歯の軸方向長さよりも短いと、軸スプライン歯の軸方向の端部、即ち、軸スプライン歯が径方向の外側に向けて立ち上がる傾斜部(テーパ面を有する端部)が、穴スプライン歯の軸方向の中間部の側面に対して周方向に当接する。また、これとは逆に、穴スプライン歯の軸方向長さが軸スプライン歯の軸方向長さよりも短いと、穴スプライン歯の軸方向の端部、即ち、穴スプライン歯が径方向の内側に向けて立ち上がる傾斜部(テーパ面を有する端部)が、軸スプライン歯の軸方向の中間部の側面に対して周方向に当接する。
【0006】
ここで、軸スプライン歯または穴スプライン歯の軸方向の端部(傾斜部、テーパ面を有する端部)は、この端部が周方向に当接する相手、即ち、穴スプライン歯または軸スプライン歯の軸方向の中間部よりも剛性が低い。このため、回転力を伝達しているときに、スプライン歯の軸方向の端部(傾斜部、テーパ面を有する端部)の曲げによる変形量が増大する傾向となり、当該端部と相手側の中間部との周方向の当接部に応力が集中する可能性がある。
【0007】
特に、回転軸に設けられる軸スプライン歯は、回転軸の軸方向の先端側とは反対側となる基端側に、この軸スプライン歯を形成するための加工工具の逃げ溝が形成される。このため、そのままでは、軸スプライン歯が穴スプライン歯よりも軸方向長さが短くなり、軸スプライン歯の軸方向の基端側の端部と穴スプライン歯の軸方向の中間部とが周方向に当接する。これにより、回転力を伝達しているときに、軸スプライン歯の軸方向の基端側の端部(傾斜部、テーパ面を有する端部)の曲げによる変形量が増大する傾向となり、この端部と穴スプライン部の中間部との周方向の当接部に応力が集中する可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、穴スプライン歯および軸スプライン歯の軸方向の基端側の応力を緩和できるスプライン連結装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、好ましくは、内周に穴スプライン部が設けられた円筒状のハブと、先端部に、外周側に前記穴スプライン部とスプライン結合する軸スプライン部が設けられた回転軸と、を備え、前記ハブは、前記穴スプライン部の径方向外側に設けられ、一方側の端面から他方側の端面にかけて、前記ハブの軸線方向に貫通する貫通穴と、前記ハブの外周側面から前記貫通穴に向けて形成された挿入穴と、前記ハブの前記貫通穴と前記穴スプライン部との間に形成された薄肉部と、を有し、前記ハブの前記挿入穴に挿入され、前記薄肉部を押圧する押圧具と、を備えたスプライン連結装置において、前記軸スプライン部には、軸スプライン歯の前記回転軸の軸方向の先端側とは反対側となる基端側の端部に軸スプラインテーパ面が形成され、前記穴スプライン部には、穴スプライン歯の軸線方向の基端側の端部に穴スプラインテーパ面が形成され、それぞれ前記軸スプラインテーパ面と前記穴スプラインテーパ面は、前記穴スプライン部と前記軸スプライン部とをスプライン結合させた状態で、それらのテーパ面を前記ハブの周方向から見たとき、交差するように形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、穴スプライン歯および軸スプライン歯の軸方向の基端側の応力を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態によるスプライン連結装置が適用された建設機械(油圧ショベル)を示す左側面図である。
図2図1中の矢示II-II方向からみた拡大断面図である。
図3】エンジン、軸継手、油圧ポンプ等を図2と同方向からみた一部が断面の拡大図である。
図4】フライホイール、軸継手、油圧ポンプ等を示す分解斜視図である。
図5】回転軸、ハブおよびポンプ側ブロックを拡大して示す分解斜視図である。
図6】回転軸、ハブおよび押圧具(クランピングねじ)を示す断面図である。
図7図6中の(VII)部を示す拡大断面図である。
図8】回転軸を示す側面図である。
図9】回転軸を示す斜視図である。
図10】ハブおよび押圧具を示す正面図である。
図11】ハブおよび押圧具を示す断面図である。
図12】ハブおよび押圧具を示す斜視図である。
図13】ハブおよび押圧具を図12の右側からみた斜視図である。
図14】(A)参考例、(B)実施形態、(C)変形例を示す図7と同様位置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態によるスプライン連結装置を、油圧ショベルに搭載されたエンジンと油圧ポンプとの間の結合部(スプライン結合部)に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1において、建設機械の代表例である油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2の上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に取り付けられた作業装置4と、を備えている。下部走行体2および上部旋回体3は、油圧ショベル1の車体を構成している。油圧ショベル1は、作業装置4を用いて土砂の掘削作業等を行う。
【0014】
下部走行体2には、走行油圧モータ(図示せず)が設けられている。下部走行体2は、走行油圧モータによって走行する。上部旋回体3には、旋回油圧モータ(図示せず)が設けられている。上部旋回体3は、旋回油圧モータによって旋回する。
【0015】
フロント装置とも呼ばれる作業装置4は、ブーム4Aと、アーム4Bと、作業具としてのバケット4Cと、を備えている。また、作業装置4は、ブーム4Aを駆動させるブームシリンダ4Dと、アーム4Bを駆動させるアームシリンダ4Eと、バケット4Cを駆動させる作業具シリンダとしてのバケットシリンダ4Fと、を備えている。
【0016】
旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体(支持フレーム、車体フレーム)を構成している。旋回フレーム5は、下部走行体2上に旋回可能に搭載されている。旋回フレーム5には、キャブ6、カウンタウエイト7、エンジン9、油圧ポンプ15、熱交換器23等が搭載されている。
【0017】
旋回フレーム5は、前後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、底板5A上に立設され前後方向に延びる左縦板5Bおよび右縦板5Cと、左縦板5Bの外側に位置して前後方向に延びる左サイドフレーム5Dと、右縦板5Cの外側に位置して前後方向に延びる右サイドフレーム5Eと、底板5Aおよび左縦板5Bと左サイドフレーム5Dとの間を接続する左張出しビーム5Fと、底板5Aおよび右縦板5Cと右サイドフレーム5Eとの間を接続する右張出しビーム5Gと、を備えている。
【0018】
図1に示すように、左縦板5Bおよび右縦板5Cの前側には、作業装置4(のブーム4Aおよびブームシリンダ4D)が回動可能に取付けられている。図2に示すように、旋回フレーム5の後側には、例えば、左縦板5Bと右縦板5Cとの間に位置して上側に延びる取付台座5Hが前後方向に離隔して設けられている。各取付台座5Hには、エンジン9が防振マウント24を介して制振状態で取付けられている。
【0019】
図1に示すように、キャブ6は、旋回フレーム5の左前側に搭載されている。キャブ6は、オペレータが搭乗する運転室を形成している。キャブ6の内部には、オペレータの運転席、オペレータが操作する走行用操作レバー、作業用操作レバー等が配置されている。
【0020】
カウンタウエイト7は、旋回フレーム5の左縦板5Bおよび右縦板5Cの後端部に取付けられている。カウンタウエイト7は、略円弧状に形成され、作業装置4との重量バランスをとる重量物である。外装カバー8は、キャブ6とカウンタウエイト7との間に位置して旋回フレーム5上に設けられている。外装カバー8は、エンジンカバー8A、左カバー8B、右カバー8Cを含んで構成されている。外装カバー8は、エンジン9、油圧ポンプ15、熱交換器23等の搭載機器を収容する。
【0021】
原動機としてのエンジン9は、カウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム5の後端側に設けられている。エンジン9は、例えばディーゼルエンジンにより構成されている。エンジン9は、出力軸となるクランク軸11の中心軸線が左右方向に延在する横置き状態で上部旋回体3に搭載されている。エンジン9の排気ガスは、排気ガス後処理装置25を介して排出される。なお、油圧ショベル1の原動機としては、ディーゼルエンジンと電動モータとを組み合わせたハイブリッド式の原動機、または、電動モータ単体の原動機としてもよい。
【0022】
図2および図3に示すように、エンジン9は、エンジン本体10と、エンジン本体10に設けられた複数(例えば6個)のシリンダ(図示せず)と、各シリンダ内を往復動する複数(例えば6個)のピストン(図示せず)と、各ピストンとコネクティングロッド(図示せず)を介して接続され各ピストンの往復動を回転力として出力するクランク軸11(以下、出力軸11という)と、を備えている。
【0023】
エンジン本体10は、出力軸11を収容する中空容器として形成されたクランクケース10Aと、クランクケース10Aの下側に設けられエンジンオイルを収容するオイルパン10Bと、クランクケース10A上に搭載されシリンダが形成されたシリンダブロック10Cと、シリンダブロック10C上に搭載されたシリンダヘッド10Dと、を備えている。
【0024】
図2に示すように、エンジン本体10の一端側(図2の左側)には、熱交換器23に冷却風を供給するための冷却ファン12が設けられている。エンジン本体10のシリンダブロック10Cおよびシリンダヘッド10Dには、エンジン冷却水が循環するウォータジャケット(図示せず)が形成されている。ウォータジャケットは、冷却水の熱を放出する熱交換器23に接続されている。熱交換器23は、エンジン冷却水等を冷却する。
【0025】
図3に示すように、出力軸11の他端側(図3の右側)でフライホイールハウジング14内に突出した端部には、円板状のフライホイール13が設けられている。図4に示すように、フライホイール13には、回転中心を中心とする円弧上の4箇所位置に、周方向に等間隔に離隔してそれぞれ雌ねじ穴13Aが形成されている。これら各雌ねじ穴13Aには、軸継手17の原動機側ブロック18を取付けるためのボルト19が螺合される。
【0026】
図2および図3に示すように、エンジン本体10の他端側(図2および図3の右側)には、短尺な円筒状のフライホイールハウジング14が設けられている。フライホイールハウジング14内には、フライホイール13と、樹脂等により形成された弾性体20を有する軸継手17と、が配置されている。フライホイールハウジング14の開口端は、油圧ポンプ15のフランジ部15Bが取付けられるフランジ取付部14Aとなっている。フランジ取付部14Aには、雌ねじ穴14Bが周方向に複数個列設されている。雌ねじ穴14Bには、油圧ポンプ15のフランジ部15Bをフランジ取付部14Aに取付けるためのボルト16が螺合されている。
【0027】
油圧ポンプ15は、エンジン9によって回転駆動される。油圧ポンプ15は、フライホイールハウジング14を介してエンジン9に取付けられている。油圧ポンプ15は、エンジン9によって駆動されることにより、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータ(走行油圧モータ、旋回油圧モータ、ブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4F等)に向けて作動用の圧油を吐出する。油圧ポンプ15は、例えば斜軸式油圧ポンプ、斜板式油圧ポンプにより構成されるポンプ機構(図示せず)と、ポンプ機構を収容するポンプケーシング15Aと、ポンプケーシング15Aの中央から突出して設けられポンプ機構に接続される回転軸34と、を備えている。
【0028】
一方、ポンプケーシング15Aの基端側(図2ないし図3の左側)は、全周にわたって径方向の外側に拡がった環状のフランジ部15Bとなっている。フランジ部15Bは、油圧ポンプ15をエンジン9に取付けるための取付板となっている。即ち、フランジ部15Bは、フライホイールハウジング14(のフランジ取付部14A)に対してボルト16を用いて取付けられる。このために、フランジ部15Bには、フライホイールハウジング14のフランジ取付部14Aの雌ねじ穴14Bと対応する位置に、それぞれボルト挿通孔15Cが設けられている。
【0029】
次に、エンジン9の出力軸11と油圧ポンプ15の回転軸34とを連結する軸継手17について説明する。
【0030】
軸継手17は、エンジン9の出力軸11(より具体的には、出力軸11に設けられたフライホイール13)と油圧ポンプ15の回転軸34との間に設けられている。軸継手17は、弾性体20の弾性変形に基づいて、エンジン9の出力軸11(フライホイール13)と油圧ポンプ15の回転軸34との間のトルク変動、回転中心軸線のずれ等を吸収する。軸継手17は、フライホイールハウジング14の内部(軸継手室)に、フライホイール13と軸方向に隣り合って配置(収容)されている。軸継手17は、複数(4個)の原動機側ブロック18(以下、エンジン側ブロック18という)と、弾性体20と、複数(4個)の被駆動側ブロック21(以下、ポンプ側ブロック21という)と、ハブ32と、を備えている。
【0031】
4個のエンジン側ブロック18は、エンジン9の出力軸11側となるフライホイール13に、周方向(回転方向)に間隔をもって取付けられている。各エンジン側ブロック18は、略扇状のブロック体として形成され、軸方向に延びるボルト挿通孔18Aを有している。各エンジン側ブロック18は、ボルト挿通孔18Aに挿通したボルト19をフライホイール13の雌ねじ穴13Aに螺合することにより、フライホイール13の側面に一体的に設けられている。
【0032】
エンジン側ブロック18には、外径側に位置して周方向の両側に、それぞれ周方向に延びる鍔部18Bが設けられている。これら各鍔部18Bは、ポンプ側ブロック21の鍔部21Bと共に、弾性体20の径方向の変位を規制する。即ち、エンジン側ブロック18の鍔部18Bとポンプ側ブロック21の鍔部21Bは、弾性体20の外周面との当接に基づいて、弾性体20がそれ以上径方向外側に変位するのを阻止する。
【0033】
弾性体20は、例えば弾性を有する樹脂材料、ゴム材料を用いて厚肉な円筒状に形成され、ハブ32を取囲んで配置されている。弾性体20には、その外周面20Aから径方向内側に向け、エンジン側ブロック18を収容する原動機側ブロック係合溝部20B(以下、エンジン側ブロック係合溝部20Bという)と、ポンプ側ブロック21を収容する被駆動側ブロック係合溝部20C(以下、ポンプ側ブロック係合溝部20Cという)とが、周方向に交互に形成されている。
【0034】
即ち、弾性体20は、中央にハブ32が収容されるハブ収容部20Dを有している。ハブ収容部20Dの周囲には、4個のエンジン側ブロック係合溝部20Bと4個のポンプ側ブロック係合溝部20Cとが周方向に間隔をもって交互に配置されている。各エンジン側ブロック係合溝部20Bと各ポンプ側ブロック係合溝部20Cとの間は、それぞれエンジン側ブロック18とポンプ側ブロック21とにより周方向に圧縮(挟持)される圧縮部20Eとなっている。
【0035】
4個のポンプ側ブロック21は、ハブ32の外周側に、このハブ32から径方向外側に突出した状態で周方向に間隔をもって取付けられている。各ポンプ側ブロック21は、略扇状のブロック体として形成されている。各ポンプ側ブロック21は、径方向に延びるボルト挿通孔21Aを有している。各ポンプ側ブロック21は、ボルト挿通孔21Aに挿通したボルト22(図3)をハブ32のねじ穴(図示せず)に螺合することにより、ハブ32の外周側面32Dに一体的に設けられている。ポンプ側ブロック21には、外径側に位置して周方向の両側に、それぞれ周方向に延びる鍔部21Bが設けられている。これら各鍔部21Bは、エンジン側ブロック18の鍔部18Bと同様に、弾性体20の径方向の変位を規制している。
【0036】
次に、油圧ポンプ15の回転軸34と軸継手17のハブ32とを含んで構成されるスプライン連結装置31について説明する。
【0037】
スプライン連結装置31は、エンジン9と油圧ポンプ15との間で回転力を伝達する。スプライン連結装置31は、軸継手17のハブ32と、油圧ポンプ15の回転軸34と、押圧具としてのクランピングねじ35と、を備えている。
【0038】
ハブ32は、厚肉な円筒体として形成されている。ハブ32は、弾性体20のハブ収容部20Dに収容されている。ハブ32は、回転軸34と共にスプライン連結装置31を構成している。ハブ32は、エンジン9からの回転力により回転軸34を回転駆動する駆動部材に相当する。ハブ32の内周側には、穴スプライン部32Cが設けられている。穴スプライン部32Cは、ハブ32の一側面32Aと他側面32Bとの間、即ち、油圧ポンプ15側(回転軸34の軸方向の基端側)の側面となる一側面32Aとエンジン9側(回転軸34の軸方向の先端側)の側面となる他側面32Bとの間にわたって設けられている。穴スプライン部32Cは、軸方向に延びる複数の穴スプライン歯32C1を備えたインボリュートスプラインとして構成されている。穴スプライン部32Cは、回転軸34の軸スプライン部34Aにスプライン結合される。
【0039】
一方、ハブ32の外周側面32Dには、ポンプ側ブロック21を取付けるためのねじ穴(図示せず)が、周方向の4箇所位置(例えば、90°等間隔)に設けられている。ポンプ側ブロック21は、ポンプ側ブロック21のボルト挿通孔21Aに挿通されると共にハブ32のねじ穴に螺合されるボルト22(図3)を用いて、ハブ32に固定される。また、ハブ32には、ねじ穴と干渉しない位置に、押圧具を挿入するための挿入穴32Fが設けられている。
【0040】
挿入穴32Fは、ハブ32の外周側面32Dから径方向内側(穴スプライン部32C側)に向けて穿設されている。即ち、各挿入穴32Fの中心軸線O2-O2(図10および図11参照)は、ハブ32(穴スプライン部32C)の中心軸線O1-O1(図10および図11参照)と直交する方向に延びている。換言すれば、挿入穴32Fは、ハブ32の径方向に延びる有底の穴である。挿入穴32Fは周方向に隣り合うねじ穴の間に2個設けられ、それらはハブ32の軸方向に離隔している。また、挿入穴32Fの内径部32F1は、ハブ32の軸方向に延びるメガネ形状(ひょうたん形状)の貫通穴32Gによって連通している。挿入穴32Fは、雌ねじ穴として形成されている。挿入穴32Fには、クランピングねじ35が螺合される。
【0041】
穴スプライン部32Cと挿入穴32Fとの間には、メガネ形状(ひょうたん形状)の貫通穴32Gが設けられている。貫通穴32Gは、一側面32Aと他側面32Bとの間で貫通して設けられ、各挿入穴32Fの内径部32F1と連通している。図10に示すように、貫通穴32Gは、穴スプライン部32Cの中心軸線O1-O1と挿入穴32Fの中心軸線O2-O2とを含む仮想平面と交差する位置が挟幅部32G1となっている。また、貫通穴32Gは、挟幅部32G1の両側が円形部32G2となっている。挟幅部32G1は、一対の円形部32G2の間で一対の円形部32G2を連通している。
【0042】
挿入穴32Fと穴スプライン部32Cとの間は、薄肉部32Hとなっている。即ち、薄肉部32Hは、貫通穴32Gの挟幅部32G1の内径側と穴スプライン部32Cとの間に形成されている。挟幅部32G1の内径側は、平坦面となっており、クランピングねじ35の先端面が当接し、このクランピングねじ35の先端面により押圧される。薄肉部32Hの周囲は、貫通穴32Gを形成したことに伴って変形しやすくなっている。
【0043】
従って、クランピングねじ35により薄肉部32Hを押圧したときに、小さい力で穴スプライン歯32C1と軸スプライン歯34A1とを拘束させることができる。しかも、貫通穴32Gにより、円形部32G2の周囲も変形しやすくなるので、クランピングねじ35により薄肉部32Hを押圧したときに、より小さい力で穴スプライン歯32C1と軸スプライン歯34A1とを拘束させることができる。
【0044】
油圧ポンプ15の回転軸34は、中実な円柱体として形成されている。回転軸34は、エンジン9からの回転力により軸継手17のハブ32を介して回転駆動される被駆動部材(被駆動軸)である。このために、回転軸34の外周側には、軸継手17のハブ32の穴スプライン部32Cとスプライン結合される軸スプライン部34Aが設けられている。軸スプライン部34Aは、軸方向に延びる複数の軸スプライン歯34A1を備えたインボリュートスプラインとして構成されている。回転軸34は、ハブ32と共にスプライン連結装置31を構成している。
【0045】
押圧具としてのクランピングねじ35は、ハブ32の挿入穴32Fに挿入されている。クランピングねじ35は、挿入穴32Fへの締付け(螺合)に基づいて、薄肉部32Hを押圧する(挟幅部32G1を拡開する方向の力を付与する)。これにより、穴スプライン部32Cの穴スプライン歯32C1と軸スプライン部34Aの軸スプライン歯34A1とを拘束する。この場合、クランピングねじ35が薄肉部32Hを押圧することに基づいてハブ32が変形し、穴スプライン歯32C1が拡開する。これにより、穴スプライン歯32C1と軸スプライン歯34A1とを拘束することができる。
【0046】
ところで、回転軸に設けられる軸スプライン歯は、回転軸の軸方向の先端側とは反対側となる基端側には回転軸の外形よりも小さい外径を有する小径部が設けられる。この小径部は軸スプライン歯を形成するための加工工具の逃げ溝として機能する。即ち、図8および図9に示すように、回転軸34には、軸スプライン歯34A1の軸方向の基端側(図8および図9の左側)の位置に、回転軸34の全周に渡って溝41が形成される。溝41は軸スプライン歯34A1を加工する際に、加工用工具を逃がすための逃げ溝となる(以下、溝41を「逃げ溝41」と記載する)。このため、そのままでは、図14の(A)に示す参考例のように、軸スプライン歯34A1が穴スプライン歯32C1よりも軸方向長さが短くなる。この場合、軸スプライン歯34A1の軸方向の基端側の端部42(テーパ面43を有する端部42)は、穴スプライン歯32C1の軸方向の中間部51の側面に対して周方向に当接する。
【0047】
しかし、軸スプライン歯34A1の軸方向の基端側の端部42(テーパ面43を有する端部42)は、この端部42が周方向に当接する相手、即ち、穴スプライン歯32C1の軸方向の中間部51よりも剛性が低い。このため、回転力を伝達しているときに、軸スプライン歯34A1の軸方向の基端側の端部42(テーパ面43を有する端部42)の曲げによる変形量が増大する傾向となり、この端部42と穴スプライン歯32C1の中間部51との周方向の当接部に応力が集中する可能性がある。
【0048】
そこで、図14の(B)および(C)に示すように、実施形態および変形例では、軸スプライン歯34A1のテーパ面43と穴スプライン歯32C1のテーパ面52を、穴スプライン部32Cと軸スプライン部34Aとをスプライン結合させた状態で、周方向から見て交差させている。これにより、軸スプライン歯34A1の軸方向の基端側と穴スプライン歯32C1の軸方向の基端側とを、互いにテーパ面43,52を有する端部42,53同士、即ち、剛性が同等の端部42,53同士を周方向に当接させることができる。このため、この当接する部分の曲げによる変形量を同等にでき、応力を均等にできるため、応力集中を緩和できる。以下、これらの点について、詳しく説明する。
【0049】
図6ないし図13に示すように、スプライン連結装置31は、ハブ32と、回転軸34と、押圧具としてのクランピングねじ35と、を備えている。ハブ32は、円筒状に形成されている。ハブ32は、内周に穴スプライン部32Cが設けられている。ハブ32は、貫通穴32Gと、押圧具を挿入するための挿入穴32Fと、薄肉部32Hと、を有している。貫通穴32Gは、穴スプライン部32Cの径方向外側に設けられている。貫通穴32Gは、ハブ32の一方側の端面(一側面32A)から他方側の端面(他側面32B)にかけて、ハブ32の軸線方向に貫通している。挿入穴32Fは、ハブ32の外周側面32Dから貫通穴32G(径方向内側)に向けて形成されている。薄肉部32Hは、挿入穴32Fの内径側と穴スプライン部32Cとの間に形成されている。即ち、薄肉部32Hは、ハブ32の貫通穴32Gと穴スプライン部32Cとの間に形成されている。
【0050】
回転軸34は、油圧ショベル1(建設機械)に搭載される油圧ポンプ15の回転軸に対応する。回転軸34は、先端部(図6図8図9で右端部)の外周側に軸スプライン部34Aが設けられている。回転軸34の軸スプライン部34Aは、ハブ32の穴スプライン部32Cとスプライン結合する。クランピングねじ35は、ハブ32の挿入穴32Fに挿入される。クランピングねじ35は雄ねじであり、雌ねじの挿入穴32Fに螺合される。クランピングねじ35は、薄肉部32Hを押圧する。クランピングねじ35は、薄肉部32Hを押圧することにより、穴スプライン部32Cの穴スプライン歯32C1と軸スプライン部34Aの軸スプライン歯34A1とを拘束する。
【0051】
この上で、図6および図7に示すように、軸スプライン歯34A1および穴スプライン歯32C1は、回転軸34の軸方向の先端側(図6および図7の右側)とは反対側となる基端側(図6および図7の左側)の端部42,53に、軸方向の先端側に向かう程高さが高くなる方向に傾斜したテーパ面43,52を有している。即ち、軸スプライン歯34A1は、回転軸34の軸方向の基端側(図6および図7の左側)の端部42に、先端側(図6および図7の右側)に向かう程高さが高くなる方向に傾斜したテーパ面43を有している。換言すれば、軸スプライン部34Aには、軸スプライン歯34A1の回転軸34の軸方向の先端側とは反対側となる基端側の端部42に軸スプラインテーパ面であるテーパ面43が形成されている。テーパ面43は、軸スプライン歯34A1の歯先から歯元、または、さらに回転軸34の小径に至るまで軸方向にスプライン長さが増加する部分に対応する。
【0052】
また、穴スプライン歯32C1は、回転軸34の軸方向の基端側(図6および図7の左側)の端部53に、先端側(図6および図7の右側)に向かう程高さが高くなる方向に傾斜したテーパ面52を有している。換言すれば、穴スプライン部32Cには、穴スプライン歯32C1の軸線方向の基端側の端部53に穴スプラインテーパ面であるテーパ面52が形成されている。テーパ面52は、穴スプライン歯32C1の歯先から歯元、または、さらにハブ32のスプライン穴の大径に至るまで軸方向にスプライン長さが増加する部分に対応する。
【0053】
そして、実施形態では、図7および図14の(B)に示すように、軸スプライン歯34A1のテーパ面43と穴スプライン歯32C1のテーパ面52は、穴スプライン部32Cと軸スプライン部34Aとをスプライン結合させた状態で、周方向から見て交差している。即ち、軸スプライン歯34A1のテーパ面43は、穴スプライン部32Cと軸スプライン部34Aとをスプライン結合させた状態で、このテーパ面43をハブ32の周方向から見たとき、穴スプライン歯32C1のテーパ面52と交差するように形成されている。また、穴スプライン歯32C1のテーパ面52は、穴スプライン部32Cと軸スプライン部34Aとをスプライン結合させた状態で、このテーパ面52をハブ32の周方向から見たとき、軸スプライン歯34A1のテーパ面43と交差するように形成されている。従って、軸スプライン歯34A1のテーパ面43と穴スプライン歯32C1のテーパ面52とを回転軸34の周方向から見たとき、図7に示すように、手前側に位置するテーパ面43の稜線とその奥に位置するテーパ面52の稜線とが交差している。この場合、軸スプライン部34Aを構成する全ての軸スプライン歯34A1のテーパ面43と穴スプライン部32Cを構成する全ての穴スプライン歯32C1のテーパ面52とは、いずれもが周方向に隣り合う別の部材のテーパ面と図7に示すように交差している。
【0054】
図7および図14の(B)に示すように、交差位置Xは、軸スプライン歯34A1のテーパ面43のスプライン歯丈の中央より近い位置であることが好ましい。即ち、交差位置Xは、軸スプライン歯34A1のテーパ面43の高さH(図7)の半分、または、これよりも回転軸34の内径側となる位置(低い位置)であることが好ましい。
【0055】
また、穴スプライン歯32C1は、テーパ面52よりも軸方向の基端側に、穴スプライン歯32C1の軸方向の中間部51の高さよりも低い高さで軸方向に延びる歯元延長部54を有している。歯元延長部54は、穴スプラインの歯底径から歯元の丸み以上の歯丈を残した形状となっている。歯元延長部54の軸方向の基端側の端部は、ハブ32の軸方向の位置決めを行う回転軸34の当接面44と当接している。また、軸スプライン部34Aが設けられる回転軸34は、軸スプライン歯34A1のテーパ面43よりも軸方向の基端側に逃げ溝41を有している。
【0056】
即ち、回転軸34の外周面には、周方向に沿って逃げ溝41が形成されている。逃げ溝41は、軸スプライン歯34A1のテーパ面43に連続して形成されている。逃げ溝41は、軸スプライン歯34A1の高さ寸法(周方向に隣り合う軸スプライン歯34A1の谷の深さ寸法)よりも大きい深さ寸法を有する全周溝として、回転軸34に形成されている。逃げ溝41は、穴スプライン部32Cと軸スプライン部34Aとをスプライン結合させた状態で、穴スプライン歯32C1の歯元延長部54と径方向に対面する。
【0057】
実施形態による油圧ショベル1およびスプライン連結装置31は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0058】
油圧ショベル1のオペレータは、上部旋回体3のキャブ6に搭乗し、エンジン9を始動して油圧ポンプ15を駆動する。これにより、油圧ポンプ15から圧油が吐出され、この圧油はコントロールバルブ(図示せず)を介して、ブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4F、走行油圧モータ、旋回油圧モータ等の油圧アクチュエータに供給される。
【0059】
キャブ6に搭乗したオペレータが走行用操作レバー(図示せず)を操作したときには、下部走行体2により車両を前進または後退させることができる。一方、キャブ6内のオペレータが作業用操作レバーを操作することにより、作業装置4を回動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。油圧ショベル1の稼働時、エンジン9の出力軸11から出力されたトルクは、軸継手17を介して、油圧ポンプ15の回転軸34に伝達される。このとき、エンジン9の出力軸11から出力されたトルクは、スプライン連結装置31、即ち、ハブ32の穴スプライン部32Cおよび回転軸34の軸スプライン部34Aを介して、油圧ポンプ15の回転軸34に伝達される。
【0060】
ここで、実施形態によれば、軸スプライン歯34A1および穴スプライン歯32C1は、回転軸34の軸方向の先端側とは反対側となる基端側の端部42,53に、先端側に向かう程高さが高くなる方向に傾斜したテーパ面43,52を有している。この上で、軸スプライン歯34A1のテーパ面43の稜線と穴スプライン歯32C1のテーパ面52の稜線は、穴スプライン部32Cと軸スプライン部34Aとをスプライン結合させた状態で、周方向から見たとき、交差して見える。即ち、それぞれテーパ面43とテーパ面52は、穴スプライン部32Cと軸スプライン部34Aとをスプライン結合させた状態で、それらのテーパ面43,52をハブ32の周方向から見たとき、交差するように形成されている。このため、軸スプライン歯34A1の軸方向の基端側と穴スプライン歯32C1の軸方向の基端側は、互いにテーパ面43,52を有する端部42,53同士、即ち、剛性が同等の端部42,53同士が周方向に当接する。
【0061】
これにより、穴スプライン部32Cと軸スプライン部34Aとのスプライン結合に基づいてこれらの間で回転力を伝達しているときに、穴スプライン歯32C1および軸スプライン歯34A1の軸方向の基端側の端部42,53(テーパ面43,52を有する端部42,53)の曲げによる変形量を同等にでき、応力を均等にできる。この結果、穴スプライン歯32C1および軸スプライン歯34A1の軸方向の基端側の端部42,53の応力(応力集中)を緩和することができる。また、応力を緩和できるため、疲労強度を向上できることに加えて、ハブ32および回転軸34の径寸法を小さく設定することができ、スプライン連結装置31を小型化できる。
【0062】
実施形態によれば、穴スプライン歯32C1は、テーパ面52よりも基端側に、穴スプライン歯32C1の軸方向の中間部51の高さよりも低い高さで軸方向に延びる歯元延長部54を有している。このため、歯元延長部54により穴スプライン歯32C1の基端側の端部53の応力を分散させることができ、この面からも応力を緩和でき、疲労強度を向上できる。
【0063】
実施形態によれば、回転軸34は、軸スプライン歯34A1のテーパ面43よりも軸方向の基端側に逃げ溝41を有している。このため、回転軸34に軸スプライン部34A(軸スプライン歯34A1)を形成するときに、この軸スプライン部34A(軸スプライン歯34A1)を形成するための加工工具を逃げ溝41に逃がすことができる。また、逃げ溝41を形成しても、軸スプライン歯34A1のテーパ面43と穴スプライン歯32C1のテーパ面52とを周方向から見て交差させることで、穴スプライン歯32C1および軸スプライン歯34A1の軸方向の基端側の端部42,53の応力を緩和できる。
【0064】
実施形態によれば、逃げ溝41は、穴スプライン部32Cと軸スプライン部34Aとをスプライン結合させた状態で、穴スプライン歯32C1の歯元延長部54と径方向に対面する。このため、ハブ32の内面のうち回転軸34の逃げ溝41と径方向に対面する部位を、穴スプライン歯32C1の歯元延長部54とすることができる。また、穴スプライン歯32C1のテーパ面52よりも基端側に歯元延長部54を設けることにより、歯元延長部54を設けない構成(後述の図14の(C)に示す変形例)と比較して、ハブ32の軸方向の位置決めを行う回転軸34の当接面44との接触面積を大きくできる。これにより、ハブ32が回転軸34に対して軸方向にずれること、および、ハブ32の中心軸線が回転軸34の中心軸線に対して傾くことを抑制できる。
【0065】
実施形態によれば、回転軸34は、油圧ショベル1に搭載される油圧ポンプ15の回転軸34である。このため、油圧ショベル1の油圧ポンプ15とエンジン9との間をスプライン連結装置31で連結することができ、かつ、このスプライン連結装置31の穴スプライン歯32C1および軸スプライン歯34A1の軸方向の基端側の応力を緩和できる。
【0066】
なお、実施形態では、穴スプライン歯32C1の基端側に歯元延長部54を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図14の(C)に示す変形例のように、穴スプライン歯32C1の基端側に歯元延長部を設けなくてもよい。この場合も、軸スプライン歯34A1のテーパ面43と穴スプライン歯32C1のテーパ面52は、穴スプライン部32Cと軸スプライン部34Aとをスプライン結合させた状態で、周方向から見て交差している。
【0067】
このため、変形例も、実施形態と同様に、軸スプライン歯34A1の軸方向の基端側と穴スプライン歯32C1の軸方向の基端側は、互いにテーパ面43,52を有する端部42,53同士、即ち、剛性が同等の端部42,53同士が周方向に当接する。これにより、変形例も、実施形態と同様に、穴スプライン歯32C1および軸スプライン歯34A1の軸方向の基端側の端部42,53(テーパ面43,52を有する端部42,53)の曲げによる変形量を同等にでき、この端部42,53の応力(応力集中)を緩和することができる。
【0068】
実施形態では、軸スプライン部34Aを構成する全ての軸スプライン歯34A1と穴スプライン部32Cを構成する全ての穴スプライン歯32C1で、周方向に隣り合うテーパ面43,52同士を周方向から見て交差させた場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、穴スプライン部を構成する複数の穴スプライン歯のうち押圧具(クランピングねじ)と対応する位置の1または複数の穴スプライン歯、および、この穴スプライン歯と周方向に隣り合う1または複数の軸スプライン歯で、周方向に隣り合うテーパ面同士を周方向から見て交差させてもよい。即ち、全てのスプライン歯で周方向に隣り合うテーパ面同士を交差させてもよいし、一部のスプライン歯、即ち、応力(応力集中)の緩和が必要なスプライン歯で周方向に隣り合うテーパ面同士を交差させてもよい。また、歯元延長部についても、全ての穴スプライン歯に設けてもよいし、一部の穴スプライン歯、即ち、応力の分散が必要な穴スプライン歯の基端側に設けてもよい。
【0069】
実施形態では、油圧ショベル1の原動機としてエンジン9を用いる構成とし、このエンジン9と油圧ポンプ15との間(より具体的には、軸継手17と油圧ポンプ15との間)で回転力を伝達するスプライン連結装置31を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば原動機として電動モータ、発電モータ(アシスト発電モータ)等の電動機を用い、これら電動機と油圧ポンプとの間で動力を伝達するスプライン連結装置として用いてもよい。また、スプライン連結装置は、建設機械に搭載されるスプライン連結装置だけでなく、ハブと回転軸との間で回転力を伝達する各種の機械機器のスプライン連結装置として広く適用することができる。
【0070】
実施形態および変形例は例示であり、異なる実施形態および変形例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0071】
1 油圧ショベル(建設機械)
15 油圧ポンプ
31 スプライン連結装置
32 ハブ
32C 穴スプライン部
32C1 穴スプライン歯
32F 挿入穴
32G 貫通穴
32H 薄肉部
34 回転軸
34A 軸スプライン部
34A1 軸スプライン歯
35 クランピングねじ(押圧具)
41 逃げ溝(溝)
42,53 端部
43 テーパ面(軸スプラインテーパ面)
52 テーパ面(穴スプラインテーパ面)
51 中間部
54 歯元延長部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図14