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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139887
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/14 20060101AFI20250919BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20250919BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
G03G21/14
G03G21/00 318
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038969
(22)【出願日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】野口 文朗
【テーマコード(参考)】
2H134
2H270
【Fターム(参考)】
2H134GB02
2H134HB01
2H134HB18
2H134KB20
2H134KH01
2H134KH15
2H270LA05
2H270LA06
2H270LA63
2H270LD08
2H270MA14
2H270MH03
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】新品状態のプロセスカートリッジを印刷可能状態にするための初期回転におけるクリーニング不良の発生を防ぐこと。
【解決手段】新品状態の感光ドラム1を印刷可能な状態に移行させるための初期動作と、転写材Pにトナー像を形成するための画像形成動作と、を実行する制御部100を備え、制御部100は、初期動作において現像装置3から感光ドラム1に現像領域31においてトナーを供給する〔2〕トナー供給期間の直前までの時間T11で、転写ローラ4に画像形成動作時とは異なる定電圧(-150V)((v)転写電圧の実施例1)を印加するように転写電圧電源20を制御し、時間T11において転写ローラ4に印加する定電圧を、トナーの正規の帯電極性、かつ、感光ドラム1と転写ローラ4との間で放電しない電圧値となるように転写電圧電源20を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な像担持体と、
前記像担持体と当接する現像領域において前記像担持体の表面にトナーを供給してトナー像を形成する現像部材と、
前記像担持体から転写材に前記トナー像を転写させるための転写部材と、
前記転写部材に電圧を印加するための印加手段と、
前記トナー像を転写材に転写させたあとに前記像担持体に残留したトナーをクリーニングするためのクリーニングブレードと、
新品状態の前記像担持体を印刷可能な状態に移行させるための初期動作と、前記転写材に前記トナー像を形成するための画像形成動作と、を実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記初期動作において前記現像部材から前記像担持体に前記現像領域においてトナーを供給する第1期間の直前までの第2期間で、前記転写部材に前記画像形成動作時とは異なる定電圧を印加するように前記印加手段を制御し、前記第2期間において前記転写部材に印加する前記定電圧を、トナーの正規の帯電極性、かつ、前記像担持体と前記転写部材との間で放電しない電圧値となるように前記印加手段を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、トナーの正規の帯電極性がマイナスのとき、前記第2期間において前記転写部材に印加する前記定電圧を、-550V以上0V未満となるように前記印加手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2期間において前記転写部材に印加する前記定電圧を、-200V以上-100V以下となるように前記印加手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1期間後の第3期間において、前記転写部材に印加する定電圧を、前記像担持体と前記転写部材との間で放電しない電圧値となるように前記印加手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第3期間において、前記転写部材に印加する定電圧を、-550V以上+550V以下となるように前記印加手段を制御することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記印加手段を第1印加手段としたとき、
前記像担持体の表面を一様に帯電する帯電部材と、
前記帯電部材に電圧を印加する第2印加手段と、
を備え、
前記制御部は、前記第3期間において、前記第2印加手段により前記帯電部材に印加する電圧と同じ電圧を前記転写部材に印加し、前記第1印加手段により前記第2印加手段が印加する電圧の極性とは逆極性の電圧を前記転写部材に印加し、前記転写部材に印加される電圧が前記定電圧となるように、前記第1印加手段及び前記第2印加手段を制御することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1期間で、トナーを供給する区間とトナーを供給しない区間とが複数あるように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記印加手段を第1印加手段としたとき、
前記像担持体の表面を一様に帯電する帯電部材と、
前記帯電部材に電圧を印加する第2印加手段と、
を備え、
前記制御部は、前記第2期間において、前記第2印加手段により前記帯電部材に印加する電圧と同じ電圧を前記転写部材に印加し、前記第1印加手段により前記第2印加手段が印加する電圧の極性とは逆極性の電圧を前記転写部材に印加し、前記転写部材に印加される電圧が前記定電圧となるように、前記第1印加手段及び前記第2印加手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成装置は、前記像担持体の表面の削れ率が第1値である第1像担持体と、前記第1像担持体よりも表面が柔らかく前記削れ率が前記第1値よりも大きい第2値である第2像担持体と、を装着可能であり、
前記第2像担持体が装着されたときに前記転写部材に印加される前記定電圧が含まれる電圧の範囲は、前記第1像担持体が装着されたときに前記転写部材に印加される前記定電圧が含まれる電圧の範囲よりも狭いことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記削れ率に関する情報を記憶した記憶部と、
前記記憶部と、前記像担持体と、を有するカートリッジと、
を備えることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記現像部材は、前記像担持体と接触するトナー担持体を有し、
前記トナー担持体は、新品状態において、少なくともトナーの正規の帯電極性と同極性の潤滑剤を含む潤滑剤が表面に塗布されていることを特徴とする請求項1から請求項10のうちのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置は、感光ドラムの表面を帯電部材により一様に帯電し、帯電された感光ドラムの表面を画像情報に従って露光して、感光ドラム上に静電潜像を形成する。また、感光ドラム上の静電潜像を現像装置によりトナーを用いて現像することで感光ドラム上にトナー像を形成し、転写部材により、紙などの記録材に転写する。また、転写後に感光ドラム上に残ったトナーは、クリーニングブレードによって感光ドラム上から除去して回収する。この画像形成装置では、消耗品である感光ドラム、帯電部材、現像装置、及び、クリーニングブレード等を一体化して、画像形成装置と着脱自在なプロセスカートリッジにして、メンテナンスを容易にしている。
【0003】
ところで、新品状態のプロセスカートリッジを画像形成装置に装着した場合、印刷可能な状態に移行させる初期動作の実行が必要となる。この初期動作では、主に現像装置からクリーニングブレードにトナーを供給するトナー供給動作が行われている。こうして、トナーに外添されている微粒子を感光ドラムとクリーニングブレードとの間に送ることで、感光ドラムとの間で潤滑性を持たせ、クリーニングブレードがめくれることによる破損を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-038973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、初期動作におけるトナー供給動作を行ったときに、トナーがクリーニングブレードをすり抜けて帯電部材を汚してしまう、いわゆるクリーニング不良が発生する場合がある。通常、クリーニングブレードの先端部分には阻止層と呼ばれる外添剤微粒子のバリア層があることでクリーニング性能を保っている。しかし、新品状態のプロセスカートリッジのクリーニングブレードの先端部分には、阻止層がまだ形成されていないため、クリーニング不良が発生しやすい。
【0006】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、新品状態のプロセスカートリッジを印刷可能状態にするための初期回転におけるクリーニング不良の発生を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0008】
(1)回転可能な像担持体と、前記像担持体と当接する現像領域において前記像担持体の表面にトナーを供給してトナー像を形成する現像部材と、前記像担持体から転写材に前記トナー像を転写させるための転写部材と、前記転写部材に電圧を印加するための印加手段と、前記トナー像を転写材に転写させたあとに前記像担持体に残留したトナーをクリーニングするためのクリーニングブレードと、新品状態の前記像担持体を印刷可能な状態に移行させるための初期動作と、前記転写材に前記トナー像を形成するための画像形成動作と、を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記初期動作において前記現像部材から前記像担持体に前記現像領域においてトナーを供給する第1期間の直前までの第2期間で、前記転写部材に前記画像形成動作時とは異なる定電圧を印加するように前記印加手段を制御し、前記第2期間において前記転写部材に印加する前記定電圧を、トナーの正規の帯電極性、かつ、前記像担持体と前記転写部材との間で放電しない電圧値となるように前記印加手段を制御することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新品状態のプロセスカートリッジを印刷可能状態にするための初期回転におけるクリーニング不良の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1~3の画像形成装置の概略構成図
図2】実施例1~3の画像形成装置のブロック図
図3】実施例1~3のクリーニングブレード先端のクリーニング状態を表す図
図4】実施例1の初期動作のシーケンス図
図5】実施例2の初期動作のシーケンス図
図6】実施例3の初期動作のシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【実施例0011】
実施例1では、新品状態のプロセスカートリッジ13を画像形成装置12に装着して印刷可能状態に移行させるための初期動作実行時のトナー供給動作と、その直前に転写ローラ4に印加する電圧制御について説明する。
【0012】
<画像形成装置及び画像形成動作の説明>
図1に実施例1の画像形成装置としての電子写真方式のレーザービームプリンタの概略構成を示す。また、図2に実施例1の画像形成装置のブロック図を示す。実施例1の電子写真技術を利用した画像形成装置12は、像担持体としてのドラム形状の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」という。)1を備えている。感光ドラム1の周囲には、図1に矢印で示す感光ドラム1の回転方向(時計回り方向)に沿って順に、帯電ローラ2、露光装置6、現像装置3、転写ローラ4、クリーニング装置5が配設されている。また、感光ドラム1と転写ローラ4との間に形成される転写ニップ部Nの転写材Pの搬送方向の下流側には、定着装置7が配設されている。
【0013】
また画像形成装置12は、制御部100を備えている。制御部100は、例えば、CPU101、ROM102、RAM103、タイマ104を有している。CPU101は、ROM102に記憶されたプログラムを実行し、RAM103を作業領域や一時的な記憶領域として使用しつつ、画像形成装置12全体の動作を制御する。CPU101は、画像形成装置12の制御においてタイミング制御を行う際にはタイマ104を用いて時間管理を行う。制御部100は、高電圧部200を制御する(図2参照)。制御部100は、記憶部としての不揮発性メモリ9からの情報の読み込みや、不揮発性メモリ9への情報の書き込みも行う。高電圧部200は、帯電電圧電源19、現像電圧電源18、転写電圧電源20を含む(図2参照)。
【0014】
<画像形成装置の詳細な説明>
実施例1において、感光ドラム1は、アルミニウム製のドラム基体上にOPC(有機光導電体)感光層を有している。感光ドラム1は、画像形成装置12本体側に設けられた駆動手段である駆動部220(図3参照)により所定の周速で矢印方向(時計回り方向)に回転駆動される。帯電部材としての帯電ローラ2は、第2印加手段としての帯電電圧電源19から印加される帯電電圧によって感光ドラム1を所定の極性、電位に均一に帯電する。帯電電圧として直流電圧を-1100V印加することで、感光ドラム1上の電位(以下、感光ドラム上電位という。)が、電位Vd=-500Vになるようにしている。
【0015】
露光装置6は、パーソナルコンピュータ(不図示)等から入力される画像情報をビデオコントローラ(不図示)によって時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザー光(露光ビームL)をレーザー出力部(不図示)から出力する。露光ビームLは、帯電された感光ドラム1表面を走査露光することにより、画像情報に対応した静電潜像を形成する。実施例1では、感光ドラム1上の明部電位Vlが-150Vとなるように露光ビームLを照射した。現像装置3について、後に詳細に記述する。
【0016】
転写手段としての転写ローラ4は、感光ドラム1表面に所定の押圧力で接触して転写ニップ部Nを形成し、第1印加手段(印加手段)としての転写電圧電源20から転写電圧が印加される。この転写電圧により、感光ドラム1と転写ローラ4との間の転写ニップ部Nにおいて感光ドラム1表面のトナー像が用紙などの転写材Pに転写される。
【0017】
定着装置7は、内部にハロゲンヒータ(不図示)を備えた加熱ローラと加圧ローラとを有している。定着装置7は、定着ローラと加圧ローラとの間の定着ニップ部において転写材Pを挟持搬送しながら、転写材Pの表面に転写された未定着のトナー像を加熱、溶融、加圧して熱定着させ、永久画像とする。定着が終了した永久画像を担持した転写材Pは、画像形成装置12外へと排出される。
【0018】
クリーニング手段としてのクリーニングブレード5aは、感光ドラム1上に転写されずに残留したトナーをクリーニングし、感光ドラム1は再度画像形成に供される。なお、感光ドラム1、帯電ローラ2、現像装置3、クリーニングブレード5aは、一体的にユニット化され、画像形成装置12本体に着脱自在なプロセスカートリッジ13(カートリッジ)を形成している。プロセスカートリッジ13には、プロセスカートリッジ13に関する種々の情報を記憶している不揮発性メモリ9が設置されている。
【0019】
<現像装置の詳細>
さらに図1を用いて、現像部材である現像装置3の詳細を説明する。現像装置3は、外添粒子が添加されたトナーTを収納する現像容器3a、トナーTを撹拌する撹拌部材10、トナー担持体としての現像ローラ8、現像ローラ8にトナーTを供給する供給ローラ14、トナーTの層厚を規制する現像ブレード11、を有する。トナーTは、正規の極性として負極性(マイナスの極性)に帯電し、平均粒径7μmの磁性1成分トナーを用いる。すなわち、実施例1ではトナーの正規の帯電極性はマイナスである。またトナーTの表面には、トナー外添剤(外添粒子)として粒径20nmのシリカ粒子が添加されている。撹拌部材10は、支持棒と撹拌シートとを有する。支持棒は、現像容器3aに両端部を支持されており、図1中時計回りに回転する。撹拌シートは、厚さ100μmのPPSシート(ポリフェニレンサルファイドシート)を用い、短手方向の端部の一方が支持棒に圧着されている。
【0020】
現像ローラ8は、感光ドラム1表面に対向して接触しており、現像ローラ8の両端は、現像装置3の開口部に回転自在に支持され、感光ドラム1と順方向に回転している。感光ドラム1と現像ローラ8とは常に当接しており、実施例1の画像形成装置12には、感光ドラム1から現像ローラ8を離間させる離間機構はない。現像領域31は、現像ローラ8と感光ドラム1とが当接している部分である。また、現像ローラ8には、画像形成装置12本体に配置された現像電圧の印加手段として現像電圧電源18が接続されており、現像電圧電源18は、印刷中に直流電圧である現像電圧Vdc=-400Vを印加している。またプロセスカートリッジ13が新品状態のとき、現像ローラ8の表面には潤滑剤としてトスパール(粒径1~2μm)が塗布されている。
【0021】
供給ローラ14は、現像ローラ8表面に対向して接触して配置されており、現像ローラ8と逆方向に回転している。現像ブレード11は、支持板金に厚み1mmのSUS板金のブレードを固定したものである。支持板金は、適切にトナーTの層厚を規制し摩擦帯電するために、現像ローラ8に適切な当接圧で接触するように現像容器3aに固定されている。なお、新品状態のプロセスカートリッジ13の場合、輸送時などのトナー漏れ防止のため、トナーTが図1中の領域から漏れないように現像容器3a内にシール部材(不図示)が接着されている。図1はシール部材が開封された後の状態を示している。
【0022】
このような構成により、トナーTは、供給ローラ14により現像ローラ8表面に供給される。その後、現像ローラ8表面のトナーTは、現像ブレード11により、層厚を最適化され摩擦帯電により電荷を付与される。電荷を付与されたトナーTは、現像領域31において、感光ドラム1の静電潜像をトナー像として顕像化する。
【0023】
<プロセスカートリッジ新品時の初期動作>
新品状態のプロセスカートリッジ13を画像形成装置12に装着した場合、特別な初期動作が必要となる(以下、この動作を初期動作と呼ぶ)。初期動作は、主に「〔1〕慣らし回転期間」、「〔2〕トナー供給動作期間」(第1期間)、「〔3〕阻止層形成期間」(第3期間)の3つの期間に分かれる。これらの初期動作は制御部100が制御している。
【0024】
「〔1〕慣らし回転期間」では、プロセスカートリッジ13内の現像ローラ8等の回転体を回転(以下、慣らし回転という。)させる動作を行う期間で、この期間で現像ローラ8の長手方向(回転軸方向でもある。)全域において適切にトナーTをコートさせる。次に「〔2〕トナー供給動作期間」では、現像ローラ8にコートさせたトナーを、回転する感光ドラム1を介してクリーニングブレード5aに供給する。実施例1では、長手方向は全域、すなわち長さとしては250mmの領域に相当する量のトナーを供給している。最後に「〔3〕阻止層形成期間」ではクリーニングブレード5aに供給されたトナーTを感光ドラム1の回転駆動の力で転がし、トナーTに外添されたシリカ粒子を感光ドラム1に移行させている。
【0025】
図3は、クリーニングブレード5aの先端部分の要部拡大模式図である。シリカ粒子を感光ドラム1に移行させることにより、図3に示すようにクリーニングブレード5a先端にシリカ粒子を集めて、阻止層15と呼ばれるバリア層を形成し、トナーTがクリーニングブレード5aをすり抜けるのを防いでいる。実施例1では「〔2〕トナー供給動作期間」の直前の所定時間、例えば5秒間、転写ローラ4に定電圧を印加している。また実施例1では、初期動作において、駆動部220による駆動スピードは、画像形成時のスピードの半分のスピードで駆動しているが、どのような駆動スピードにおいても、実施例1の効果は得られる。
【0026】
<実施例1と比較例1~3の初期動作の説明>
図4に実施例1と、比較例1~3の初期動作のシーケンス詳細を示す。図4において、(i)は駆動部の駆動(ON)、停止(OFF)を示し、(ii)は帯電ローラ2に印加される帯電電圧[V]を示し、(iii)は現像ローラ8に印加される現像電圧[V]を示し、(iv)は露光装置6による露光を示す。なお、露光装置6による露光は光源の最大光量で発光している全発光とし、全発光による露光をON、非露光をOFFとしている。図4において、(v)は実施例1から比較例1~4の転写ローラ4に印加される転写電圧[V]を示す。横軸はいずれも時間を示し、t11~t16は各タイミングを示す。
【0027】
実施例1と比較例1~3の初期動作では、駆動部220、帯電電圧電源19による帯電電圧の印加、現像電圧電源18による現像電圧の印加、及び、露光装置6の動作は共通している。つまり、まずタイミングt11で画像形成装置12の駆動部220をONにして、感光ドラム1や現像ローラ8を回転させつつ、タイミングt12以降に帯電ローラ2に-1100Vを、現像ローラ8に-400Vを印加して慣らし回転を行う。その後、タイミングt14で露光装置6により最大出力の露光ビームLを発光(全発光)することで感光ドラム1上に静電潜像を形成し、トナーTを感光ドラム1に現像する。これによりタイミングt15までトナー供給動作を行い、さらにその後の阻止層形成期間を経て、タイミングt16で初期動作を終了する。なお、タイミングt16の初期動作の終了では、駆動部220のOFF、帯電ローラ2への電圧印加を停止させ、現像ローラ8への電圧印加を停止させる。なお、タイミングt11からタイミングt14までが〔1〕慣らし回転期間、タイミングt14からタイミングt15までが〔2〕トナー供給動作期間、タイミングt15からタイミングt16までが〔3〕阻止層形成期間である。
【0028】
実施例1と比較例1~3では、慣らし回転期間、かつ、トナー供給動作期間の直前のタイミングt13からタイミングt14までの時間T11(第2期間)、例えば5秒間に、転写電圧電源20により転写ローラ4に転写電圧を印加する。ここで、実施例1と比較例1~3では、転写ローラ4に印加する定電圧の電圧値が異なっている。具体的には、実施例1ではトナーの正規の帯電極性(マイナス)と同極性の-150V、比較例1では-1000V、比較例2ではトナーの正規の帯電極性とは逆極性の+1000V、比較例3では+150Vを、それぞれ転写ローラ4に印加している。また、比較例4では、慣らし回転期間が開始されるタイミングt11でまず転写ローラ4に-150Vを印加したあと、タイミングt13で一度0Vにしてから、タイミングt14以降でトナー供給動作を行っている。すなわち比較例4では、トナー供給動作期間の直前では0Vにしてからトナー供給動作期間に移行している。
【0029】
<実施例1の効果の検証>
実施例1の効果を表1に示す。試験方法は、実施例1と比較例1~3で初期動作をそれぞれ行ったあとにハーフトーン50%画像を出力して、出力した画像にクリーニング不良による縦スジの発生がないか確認し、縦スジ発生レベルとして評価した。また画像形成装置12の設置環境は15℃/10%で試験を行った。
【表1】
縦スジ発生レベル 〇:縦スジ発生なし、△:縦スジ少し発生、×:縦スジ多数発生
表1のように、実施例1では縦スジ発生しなかったが、比較例1~4では縦スジ画像が発生してしまった。特に比較例2では縦スジ多数の画像が発生した。
【0030】
(実施例1:縦スジ発生レベル〇)
実施例1で縦スジが発生しなかった理由を説明する。慣らし回転期間においては、初期に現像ローラ8表面に塗布されているトスパール(粒径1~2μm)の一部や、その後現像ローラ8にコートされるトナーの一部が、感光ドラム1に転移する。このとき、転写ローラ4に-150Vの定電圧を印加することで、感光ドラム1に転移したもののうちネガ系(極性がマイナス)のものだけをクリーニングブレード5aに送り、ポジ系(極性がプラス)のものは転写ローラ4に保持させる。
【0031】
これにより、クリーニングブレード5aのエッジ部では、図3で説明したような、阻止層15がすばやく形成される。ネガ系のものをクリーニングブレード5aに送る理由としては、ネガ系のものの方が感光ドラム1との付着力が弱くクリーニングブレード5aをすり抜けにくく、阻止層になりやすい性質があるからである。このように慣らし回転期間において、あらかじめ簡易的な阻止層を作っておいてから、その後、トナー供給動作を行う。これにより、トナー供給動作期間中多くのトナーがクリーニングブレード5aに到達しても、トナーがクリーニングブレード5aのエッジ部をすり抜けることに起因するクリーニング不良が起きないようにしている。なお、実施例1の慣らし回転期間における阻止層15は、感光ドラム1表面において周方向の幅で10μm程度である。その後、阻止層形成期間において、最終的な阻止層が形成される。阻止層形成期間における実施例1の阻止層15は、感光ドラム1表面において周方向の幅で20μm以上である。
【0032】
(比較例1:縦スジ発生レベル△)
比較例1で縦スジが少し発生してしまった理由としては、転写ローラ4に-1000Vの転写電圧を印加することで、転写ローラ4と感光ドラム1との間でネガ放電が生じてしまったことにある。この放電により感光ドラム1表面に微小な穴が開き、クリーニングブレード5aとの接触面積が減ることで、感光ドラム1とクリーニングブレード5aとの摩擦力が下がる。これによりクリーニングブレード5aの先端が巻き込まれる量が減り、ゴムが巻き込まれたときに発生する応力が減り、感光ドラム1に対するクリーニングブレード5aの圧が下がってしまい、トナーがすり抜けやすくなるためである。また別の課題として、転写ローラ4と感光ドラム1との間でネガ放電が起こってしまうので、慣らし回転期間では感光ドラム1表面の電位が上がり続けてしまう。これにより、トナー供給期間で露光装置6による露光を全発光としても、明部電位Vlが-250V程度にしかならず、感光ドラム1上へのトナー供給量が減ってしまい、クリーニングブレード5aへの適切なトナー供給ができないという課題も発生している。
【0033】
(比較例2:縦スジ発生レベル×)
比較例2で縦スジが多数発生してしまった理由としては、転写ローラ4に+1000Vの電圧を印加しているので、転写ローラ4と感光ドラム1との間でポジ放電が生じてしまったことにある。この放電により比較例1と同様に、感光ドラム1とクリーニングブレード5aの摩擦力が下がり、感光ドラム1に対するクリーニングブレード5aの圧が下がり、トナーがすり抜けやすくなる。また、慣らし回転期間で現像ローラ8から感光ドラム1に移行したトスパールやトナーが、転写ローラ4を通過するときにポジ放電によって強くポジ化(プラス極性化)されてしまい、感光ドラム1との付着力が強い状態でクリーニングブレード5aに突入する。このような強ポジ物質(強くポジ化された物質)はクリーニングブレード5aをすり抜けやすく、阻止層15になりにくいので、トナー供給期間でのクリーニング不良が発生しやすくなる。比較例2ではこの2つの理由が大きく、比較例1よりも多くの縦スジが発生した画像となってしまう。
【0034】
(比較例3:縦スジ発生レベル△)
比較例3で、縦スジが少し発生してしまった理由は、転写ローラ4に+150Vの電圧を印加することで、実施例1とは異なり、慣らし回転期間では、ポジ系のトスパールやトナーがクリーニングブレード5aに供給されてしまうことにある。ポジ系のものは感光ドラム1との付着力が高く阻止層になりにくいので、トナー供給期間までに十分な阻止層を形成することができずに、縦スジが少し発生してしまった。
【0035】
(比較例4:縦スジ発生レベル△)
比較例4で、縦スジが少し発生してしまった理由は、転写ローラ4に-150V印加するタイミングが、トナー供給期間の直前ではなかったからである。転写ローラ4に-150Vを一度印加したあと0Vにしてからトナー供給動作を行うと、0Vの区間(t13~t14)では簡易の阻止層形成が起こりにくく、クリーニングブレード5aから抜けていく量の方が多くなり、一度形成された阻止層が枯渇してしまう。よって、比較例4では、縦スジが少し発生してしまった。
【0036】
以上説明してきたように、実施例1のように、初期動作中のトナー供給動作期間直前の慣らし回転期間中で、転写ローラ4に放電の起きない負極性の転写電圧を印加することで、クリーニング不良の発生しない、画像形成装置を提供することができる。
【0037】
なお、実施例1におけるトナー供給期間におけるトナー供給を分割して行ってもよい。例えば「25mmトナー供給して25mmトナー供給しない」を10回繰り返してもよい。すなわち、制御部100は、トナー供給区間において、連続してトナーを供給し続ける必要はなく、トナーを供給する区間とトナーを供給しない区間とが複数あるように制御してもよい。上述したように、制御部100は、トナーの供給と供給停止とを交互に行ってもよい。これにより、トナーTが連続的にクリーニングブレード5aに突入しなくなるので、慣らし回転期間で作った簡易の阻止層が決壊する可能性をさらに減らすことができる。
【0038】
また、実施例1における転写ローラ4と帯電ローラ2のネガ電圧が、画像形成装置12において同一の高電圧を用いている、すなわち、同一の電源から供給されている場合にも実施例1を適用することができる。つまり、帯電ローラ2に-1100Vの帯電電圧が印加され、転写ローラ4にも同じ-1100Vの電圧が印加されるような構成であっても、適用可能である。この場合、転写ローラ4にポジ電圧として、定電圧の+950Vの電圧を印加する。これにより転写ローラ4には差し引き-150V(=-1100V+950V)の電圧が印加されることになり、実施例1と同様の効果を得ることができる。なお、この構成については、以下の実施例において説明する、阻止層形成期間において印加される転写電圧についても同様である。
【0039】
以上、実施例1によれば、新品状態のプロセスカートリッジを印刷可能状態にするための初期回転におけるクリーニング不良の発生を防ぐことができる。
【実施例0040】
実施例2では初期動作中の〔3〕阻止層形成期間においても、転写ローラ4に印加する転写電圧を調整することを特徴とする。実施例2を適用することで、クリーニングブレードの性能がより劣るような、画像形成装置12の設置温度が5℃/30%になるような場合でも、クリーニング不良の発生を防ぐことができる。
【0041】
<実施例2と比較例5~7の初期動作の説明>
図5に実施例2と、比較例5~7の初期動作のシーケンス詳細を示す。図5の(i)~(iv)は実施例1と同様である。また、t21~t26は各タイミングを示す。実施例2と比較例5~7においても、実施例1と同様に、駆動部220、帯電ローラ2への帯電電圧印加、現像ローラ8への現像電圧印加、及び、露光装置6の動作は共通している。さらに、慣らし回転期間における転写ローラ4には、0V以外の電圧を印加している。すなわち、第2期間としてのタイミングt23からタイミングt24までの時間T21には、-150Vの転写電圧が転写ローラ4に印加されている。なお、タイミングt21からタイミングt24までが〔1〕慣らし回転期間、タイミングt24からタイミングt25までが〔2〕トナー供給動作期間、タイミングt25からタイミングt26までが〔3〕阻止層形成期間である。
【0042】
実施例2と比較例5~7では、阻止層形成期間の転写ローラ4に印加する定電圧の電圧値が異なっている。具体的には、実施例2では-150V、比較例5では-1000V、比較例6では+1000V、比較例7では+150Vを、それぞれ転写ローラ4に印加している。また、ここまで述べてきた構成以外については、実施例1と同様のため、説明は省略する。
【0043】
<実施例2の効果の検証>
実施例2の効果を表2に示す。試験方法は、実施例2と比較例5~7で初期動作をそれぞれ行ったあとにハーフトーン50%画像を出力して、出力した画像にクリーニング不良による縦スジの発生がないか確認し、縦スジ発生レベルとして評価した。また画像形成装置12の設置環境は15℃/10%及び5℃/30%で試験を行った。
【表2】
縦スジ発生レベル 〇:縦スジ発生なし、△:縦スジ少し発生、×:縦スジ多数発生
【0044】
表2のように、15℃/10%の画像形成装置12の設置環境では、すべて縦スジの発生はなかった。しかし、5℃/30%の画像形成装置12の設置環境では、実施例2では縦スジは発生しなかったが、比較例5~6で縦スジ画像が少し発生してしまった。なお、比較例7においても縦スジの発生はなかった。
【0045】
(実施例2:縦スジ発生レベル〇)
実施例2で縦スジが発生しなかった理由を説明する。実施例2の阻止層形成期間では、転写ローラ4に印加する電圧が-150Vなので、転写ローラ4と感光ドラム1との間には放電が発生していない。よってクリーニングブレード5aと感光ドラム1の摩擦力は保持されて、クリーニングブレード5a先端が適切に巻き込まれ、圧を発生した。これにより、5℃/30%の設置環境においてもクリーニング不良の発生はなかった。比較例7においても同様の理由でクリーニング不良の発生はなかった。比較例7は、慣らし回転期間における電圧印加は実施例2と同様であり、阻止層形成期間における電圧印加の絶対値は同じで極性が異なる。実施例2及び比較例7から、阻止層形成期間における電圧印加は、絶対値が、放電が発生しない電圧(例えば150V)であれば、極性は+でも-でも良好な結果を得られることがわかった。
【0046】
一方、比較例5、6においては、転写ローラ4と感光ドラム1の間で放電が起こっているため、実施例1でも説明したように、クリーニングブレード5aと感光ドラム1の間の摩擦力が弱まってしまう。阻止層形成期間では、クリーニングブレード5aのエッジ部には、トナー供給期間に供給されたトナーが多く残っており、クリーニングブレード5aの感光ドラム1に対する圧が下がってしまう。これにより、クリーニング不良が発生してしまった。
【0047】
以上説明してきたように、実施例2のように初期動作中の阻止層形成期間において、転写ローラ4に放電の起きない電圧を印加することで、クリーニング不良の発生しない、画像形成装置を提供することができる。例えば、画像形成装置が5℃/30%という環境に設置されている場合でも、初期動作中のクリーニング不良の発生を防ぐことができる。
【0048】
以上、実施例2によれば、新品状態のプロセスカートリッジを印刷可能状態にするための初期回転におけるクリーニング不良の発生を防ぐことができる。
【実施例0049】
実施例3では、画像形成装置12に装着できるプロセスカートリッジ13が2種類以上あり、それぞれのプロセスカートリッジ13に使われている感光ドラム1の表層材料が異なることを特徴とする。よって、それぞれのプロセスカートリッジ13で耐久試験を行った場合の1000枚あたりの感光ドラム1の表層の削れ量(以下、感光ドラム削れ率と呼ぶ。)が異なることを特徴とする。それぞれのプロセスカートリッジ13において、初期動作中の〔1〕慣らし回転期間、及び、〔3〕阻止層形成期間での転写ローラ4にかける電圧を制御することで、クリーニング不良の発生を防ぐことができる。
【0050】
<実施例3-1、実施例3-2、比較例8~9の構成及び初期動作の説明>
まず実施例3中で使用される2種類の感光ドラム1の表層の材料の違いについて述べる。実施例3-1と比較例8~9では感光ドラム1の表層の材料が、実施例1、2、比較例1~7で用いたものより柔らかい材料が用いられている。具体的には、実施例3-1、及び、比較例8~9で用いた感光ドラム1の表層材料は、ポリカーボネート樹脂である。一方、実施例1、実施例2、実施例3-2、及び、比較例1~7で用いた感光ドラム1の表層材料は、ポリアリレート樹脂である。
【0051】
これにより1000枚あたりに感光ドラム削れ率としては、ポリカーボネート樹脂が0.4μmであり、ポリアリレート樹脂が0.2μmとなっている。さらにこれらの値はプロセスカートリッジ13に設置されている不揮発性メモリ9に情報として入っている。この感光ドラム削れ率の情報は、画像形成装置12の制御部100と不揮発性メモリ9の電気接点(不図示)を介した接触によって通信可能に構成されている。なお、感光ドラム削れ率に関する情報は、ROM102に記憶されていてもよい。
【0052】
実施例3では、不揮発性メモリ9内の感光ドラム削れ率の情報を用いて、削れ率の違う2種類の感光ドラム1を使用するときに、初期動作中の転写ローラ4に印加する電圧の範囲を変えることを特徴とする。具体的には、感光ドラム削れ率が大きい0.4(第2値)の第2像担持体である感光ドラムのときには、制御部100は初期動作中の転写ローラ4に印加する電圧を-200V以上-100V以下に制御する。一方、感光ドラム削れ率が小さい0.2(第1値)の第1像担持体である感光ドラムときには、制御部100は初期動作中の転写ローラ4に印加する電圧を-550V以上0V未満に制御する。すなわち、制御部100は、感光ドラム削れ率が大きい場合には、感光ドラム削れ率が小さい場合よりも、転写ローラ4に印加できる電圧の範囲を狭くする。
【0053】
図6を用いて実施例3-1、実施例3-2、比較例8~9の初期動作のシーケンス詳細を示す。図6の(i)~(iv)は実施例1と同様である。また、t31~t36は各タイミングを示す。実施例3-1、実施例3-2、比較例8~9においても、実施例1と同様に、駆動部220、帯電ローラ2の電圧印加、現像ローラ8の電圧印加、及び、露光装置6の動作は共通している。なお、タイミングt31からタイミングt34までが〔1〕慣らし回転期間、タイミングt34からタイミングt35までが〔2〕トナー供給動作期間、タイミングt35からタイミングt36までが〔3〕阻止層形成期間である。ここまで述べてきた構成以外については、実施例1と同様のため、説明は省略する。
【0054】
このような構成における、実施例3-1、実施例3-2、比較例8~9の初期動作のシーケンスの違いについて述べる。具体的には転写ローラ4に印加する定電圧の電圧値が異なっている。
・実施例3-1では、慣らし回転期間、及び、阻止層形成区間の転写ローラ4に印加する定電圧の電圧値が-150Vになっている。
・実施例3-2では、慣らし回転期間、及び、阻止層形成区間の転写ローラ4に印加する定電圧の電圧値が-500Vになっている。
・比較例8では、慣らし回転期間の転写ローラ4に印加する定電圧の電圧値が-500V、阻止層形成区間の転写ローラ4に印加する定電圧の電圧値が+500Vになっている。
・比較例9では、慣らし回転期間、及び、阻止層形成区間の転写ローラ4に印加する定電圧の電圧値が+150Vになっている。
【0055】
<実施例3-1、実施例3-2の効果の検証>
実施例3-1、実施例3-2の効果を表3に示す。試験方法は、実施例3-1、実施例3-2、比較例8~9で初期動作をそれぞれ行ったあとに、ハーフトーン50%画像を出力して、出力した画像にクリーニング不良による縦スジの発生がないかを確認した。また、画像形成装置12の設置環境は15℃/10%で行った。
【表3】
縦スジ発生レベル 〇:縦スジ発生なし、△:縦スジ少し発生、×:縦スジ多数発生
表3に示すように、実施例3-1、実施例3-2では縦スジは発生しなかったが、比較例8~9では画像に縦スジが少し発生してしまった。
【0056】
(実施例3:縦スジ発生レベル〇)
実施例3-1で縦スジが発生しなかった理由を説明する。実施例3-1の感光ドラム1は、実施例1よりも感光ドラム削れ率が大きく、削れやすい。言い換えれば、実施例3-1の感光ドラム1は、上述した感光ドラム削れ率が大きい0.4のものに該当する。このため、感光ドラム1とクリーニングブレード5aとの間に介在する感光ドラムの削れ粉も多くなり、感光ドラム1とクリーニングブレード5aの摩擦力が下がる。よって、クリーニングブレード5a先端が巻き込まれる量が少なくなり、感光ドラム1に対する圧も低下して、クリーニング不良が起きやすい状態になっている。
【0057】
このような状態でも、慣らし回転期間(時間T31)、及び、阻止層形成期間では、転写ローラ4に印加する転写電圧を-150Vにすることで、実施例1で説明したような理由でクリーニング性能が保たれている。-150Vという電圧値は、上述した感光ドラム削れ率が大きい0.4のときに転写ローラ4に印加する電圧値の-200V以上-100V以下という範囲内に含まれている。
【0058】
また実施例3-2で縦スジが発生しなかった理由を説明する。実施例3-2では、実施例3-1よりも感光ドラム削れ率が小さい。言い換えれば、実施例3-2の感光ドラム1は、上述した感光ドラム削れ率が小さい0.2のものに該当する。このため、クリーニングブレード5a先端が巻き込まれる量も実施例3-1よりも大きい。よって、クリーニング不良も起きにくい状態のため、慣らし回転期間(時間T31)、及び、阻止層形成期間では転写ローラ4に印加する電圧を-500Vにしても、クリーニング不良の発生は無かった。-500Vという電圧値は、上述した感光ドラム削れ率が小さい0.2のときに転写ローラ4に印加する電圧値の-550V以上-0V以下という範囲内に含まれている。
【0059】
(比較例8、9:縦スジ発生レベル△)
また比較例8においては、転写ローラ4と感光ドラム1との間で放電が起きる電圧(-550V)に近い値を狙っているので、画像形成装置12の高圧部品のばらつきにより、実際には放電が発生していることがあった。これにより、実施例1で説明したような理由でクリーニング不良が起きやすい状況になる。さらに、使用している感光ドラム1も表層が柔らかく、クリーニング不良が起きやすいものを使っているため、縦スジが少し発生してしまった。比較例8の感光ドラム1は、上述した感光ドラム削れ率が大きい0.4のものに該当する。-500V及び+500Vという電圧値は、いずれも、上述した感光ドラム削れ率が大きい0.4のときに転写ローラ4に印加する電圧値の-200V以上-100V以下という範囲内には含まれていない。
【0060】
また比較例9については、慣らし回転期間で転写ローラ4に+150Vを印加しているため、放電は起きないものの、実施例1で説明したような簡易的な阻止層が形成されないままトナー供給動作が行われるため、縦スジが少し発生してしまった。比較例9の感光ドラム1も、上述した感光ドラム削れ率が大きい0.4のものに該当する。+150Vという電圧値は、上述した感光ドラム削れ率が大きい0.4のときに転写ローラ4に印加する電圧値の-200V以上-100V以下という範囲内には含まれていない。
【0061】
以上説明してきたように、実施例3のように感光ドラム削れ率が高くクリーニング不良が発生しやすい状況でも、転写ローラ4にかける電圧の狙い値をより適切なものにすることで、クリーニング不良の発生しない、画像形成装置を提供することができる。
以上、実施例3によれば、新品状態のプロセスカートリッジを印刷可能状態にするための初期回転におけるクリーニング不良の発生を防ぐことができる。
【0062】
<その他の実施形態>
上述した実施例では、現像ローラが感光ドラムに常に当接しており、当接離間機構を備えない画像形成装置について説明したが、画像形成装置が当接離間機構を備えていてもよい。すなわち、制御部100は、初期動作で駆動部220により感光ドラム1を回転させる前に、当接離間機構により感光ドラムと現像ローラとを当接させておけばよい。
本発明は上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0063】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
回転可能な像担持体と、
前記像担持体と当接する現像領域において前記像担持体の表面にトナーを供給してトナー像を形成する現像部材と、
前記像担持体から転写材に前記トナー像を転写させるための転写部材と、
前記転写部材に電圧を印加するための印加手段と、
前記トナー像を転写材に転写させたあとに前記像担持体に残留したトナーをクリーニングするためのクリーニングブレードと、
新品状態の前記像担持体を印刷可能な状態に移行させるための初期動作と、前記転写材に前記トナー像を形成するための画像形成動作と、を実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記初期動作において前記現像部材から前記像担持体に前記現像領域においてトナーを供給する第1期間の直前までの第2期間で、前記転写部材に前記画像形成動作時とは異なる定電圧を印加するように前記印加手段を制御し、前記第2期間において前記転写部材に印加する前記定電圧を、トナーの正規の帯電極性、かつ、前記像担持体と前記転写部材との間で放電しない電圧値となるように前記印加手段を制御することを特徴とする画像形成装置。
(構成2)
前記制御部は、トナーの正規の帯電極性がマイナスのとき、前記第2期間において前記転写部材に印加する前記定電圧を、-550V以上0V未満となるように前記印加手段を制御することを特徴とする構成1に記載の画像形成装置。
(構成3)
前記制御部は、前記第2期間において前記転写部材に印加する前記定電圧を、-200V以上-100V以下となるように前記印加手段を制御することを特徴とする構成1に記載の画像形成装置。
(構成4)
前記制御部は、前記第1期間後の第3期間において、前記転写部材に印加する定電圧を、前記像担持体と前記転写部材との間で放電しない電圧値となるように前記印加手段を制御することを特徴とする構成1から構成3のうちのいずれかに記載の画像形成装置。
(構成5)
前記制御部は、前記第3期間において、前記転写部材に印加する定電圧を、-550V以上+550V以下となるように前記印加手段を制御することを特徴とする構成4に記載の画像形成装置。
(構成6)
前記印加手段を第1印加手段としたとき、
前記像担持体の表面を一様に帯電する帯電部材と、
前記帯電部材に電圧を印加する第2印加手段と、
を備え、
前記制御部は、前記第3期間において、前記第2印加手段により前記帯電部材に印加する電圧と同じ電圧を前記転写部材に印加し、前記第1印加手段により前記第2印加手段が印加する電圧の極性とは逆極性の電圧を前記転写部材に印加し、前記転写部材に印加される電圧が前記定電圧となるように、前記第1印加手段及び前記第2印加手段を制御することを特徴とする構成4又は構成5に記載の画像形成装置。
(構成7)
前記制御部は、前記第1期間で、トナーを供給する区間とトナーを供給しない区間とが複数あるように制御することを特徴とする構成1から構成6のうちのいずれかに記載の画像形成装置。
(構成8)
前記印加手段を第1印加手段としたとき、
前記像担持体の表面を一様に帯電する帯電部材と、
前記帯電部材に電圧を印加する第2印加手段と、
を備え、
前記制御部は、前記第2期間において、前記第2印加手段により前記帯電部材に印加する電圧と同じ電圧を前記転写部材に印加し、前記第1印加手段により前記第2印加手段が印加する電圧の極性とは逆極性の電圧を前記転写部材に印加し、前記転写部材に印加される電圧が前記定電圧となるように、前記第1印加手段及び前記第2印加手段を制御することを特徴とする構成1から構成7のうちのいずれかに記載の画像形成装置。
(構成9)
前記画像形成装置は、前記像担持体の表面の削れ率が第1値である第1像担持体と、前記第1像担持体よりも表面が柔らかく前記削れ率が前記第1値よりも大きい第2値である第2像担持体と、を装着可能であり、
前記第2像担持体が装着されたときに前記転写部材に印加される前記定電圧が含まれる電圧の範囲は、前記第1像担持体が装着されたときに前記転写部材に印加される前記定電圧が含まれる電圧の範囲よりも狭いことを特徴とする構成1から構成8のうちのいずれかに記載の画像形成装置。
(構成10)
前記削れ率に関する情報を記憶した記憶部と、
前記記憶部と、前記像担持体と、を有するカートリッジと、
を備えることを特徴とする構成9に記載の画像形成装置。
(構成11)
前記現像部材は、前記像担持体と接触するトナー担持体を有し、
前記トナー担持体は、新品状態において、少なくともトナーの正規の帯電極性と同極性の潤滑剤を含む潤滑剤が表面に塗布されていることを特徴とする構成1から構成10のうちのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【符号の説明】
【0064】
1 感光ドラム
3 現像装置
4 転写ローラ
5a クリーニングブレード
20 転写電圧電源
100 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6