(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001401
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、変位量計測装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
G01B11/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100961
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000142067
【氏名又は名称】株式会社共和電業
(71)【出願人】
【識別番号】591038299
【氏名又は名称】株式会社ヒカリ
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176337
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 芳巳
(72)【発明者】
【氏名】東山 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】浅井 大介
(72)【発明者】
【氏名】菅 倫明
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA03
2F065AA07
2F065AA65
2F065BB28
2F065CC14
2F065FF01
2F065FF42
2F065JJ03
2F065JJ09
2F065JJ26
2F065QQ01
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ31
2F065QQ41
(57)【要約】
【課題】計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、変位量計測装置を提供する。
【解決手段】変位量計測システムは、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測装置と、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影する撮像装置と、を備える。変位量計測装置は、2次元画像内の2次元格子パターンを含む解析領域における画素毎の変位量を算出する画素毎変位量算出処理と、画素毎の変位量のばらつきに基づいて、解析領域が欠落領域を含むか否かを判定する判定処理と、を実行する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測装置と、
前記計測対象物に設置された前記2次元格子パターンを撮影する撮像装置と、を備える変位量計測システムであって、
前記変位量計測装置は、
前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における画素毎の変位量を算出する画素毎変位量算出処理と、
前記画素毎の変位量のばらつきに基づいて、前記解析領域が欠落領域を含むか否かを判定する判定処理と、を実行する
変位量計測システム。
【請求項2】
前記変位量計測装置は、
前記解析領域における前記2次元格子パターンの平均変位量のうちの、前記判定処理において有効と判定した前記2次元画像における前記2次元格子パターンの平均変位量のみに基づいて、前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を算出する
請求項1に記載の変位量計測システム。
【請求項3】
前記変位量計測装置は、
前記判定処理において、隣り合う画素の変位量の微分値に基づいて、前記解析領域が欠落領域を含むか否かを判定する
請求項1または2に記載の変位量計測システム。
【請求項4】
前記変位量計測装置は、
前記判定処理において、前記解析領域内における画素毎の変位量の標準偏差に基づいて、前記解析領域が欠落領域を含むか否かを判定する
請求項1または2に記載の変位量計測システム。
【請求項5】
計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測プログラムであって、
前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における画素毎の変位量を算出する画素毎変位量算出処理と、
前記画素毎の変位量のばらつきに基づいて、前記解析領域が欠落領域を含むか否かを判定する判定処理と、をコンピュータに実行させる
変位量計測方法。
【請求項6】
計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測方法であって、
前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における画素毎の変位量を算出する画素毎変位量算出処理と、
前記画素毎の変位量のばらつきに基づいて、前記解析領域が欠落領域を含むか否かを判定する判定処理と、を含む
変位量計測方法。
【請求項7】
計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測装置であって、
前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における画素毎の変位量を算出する画素毎変位量算出処理と、
前記画素毎の変位量のばらつきに基づいて、前記解析領域が欠落領域を含むか否かを判定する判定処理と、を実行する
変位量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、および、変位量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁および鉄塔等の計測対象物の点検作業では、例えば、計測対象物の面内方向の変位量が計測される。特許文献1は、計測対象物の面内方向の変位量計測方法の一例を開示している。特許文献1に開示される変位量計測方法では、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する。2次元画像は、例えば、撮像装置によって撮影される。2次元画像内には、2次元格子パターンを含む解析領域が設定される。
【0003】
特許文献1の変位量計測方法では、例えば、計測対象物に対する2次元格子パターンの転写の失敗等によって、2次元画像の一部が欠落領域を含む場合に、機械学習によって2次元画像の欠落領域を補完することによって、計測対象物の面内方向の変位量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
欠落領域を含む2次元画像を用いて計測対象物の変位量を算出すると、変位量を正しく計測することができない。上記変位量計測方法では、機械学習によって2次元画像の欠落領域を補っているものの、機械学習の精度によっては、欠落領域の補完が不十分となる可能性がある。
【0006】
本発明は、計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、および、変位量計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1観点に係る変位量計測システムは、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測装置と、前記計測対象物に設置された前記2次元格子パターンを撮影する撮像装置と、を備える変位量計測システムであって、前記変位量計測装置は、前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における画素毎の変位量を算出する画素毎変位量算出処理と、前記画素毎の変位量のばらつきに基づいて、前記解析領域が欠落領域を含むか否かを判定する判定処理と、を実行する。
【0008】
解析領域に欠落領域が含まれない場合、解析領域における画素毎の変位量は、概ね一定となる。一方、解析領域に欠落領域が含まれる場合、欠落領域における画素毎の変位量は、欠落領域以外の領域の画素毎の変位量と大きく異なるため、解析領域全体として、画素毎の変位量のばらつきが大きくなる。
【0009】
上記変位量計測システムによれば、判定処理において、画素毎の変位量のばらつきが大きいと判定された2次元画像、換言すれば、欠落領域を含むと判定された2次元画像を抽出することができるため、欠落領域を含む2次元画像以外の2次元画像を用いて、計測対象物の変位量を計測できる。このため、計測対象物の変位量の計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【0010】
本発明の第2観点に係る変位量計測システムは、第1観点に係る変位量計測システムであって、前記変位量計測装置は、前記解析領域における前記2次元格子パターンの平均変位量のうちの、前記判定処理において有効と判定した前記2次元画像における前記2次元格子パターンの平均変位量のみに基づいて、前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を算出する。
【0011】
上記変位量計測システムによれば、計測対象物の変位量の計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【0012】
本発明の第3観点に係る変位量計測システムは、第1観点または第2観点に係る変位量計測システムであって、前記変位量計測装置は、前記判定処理において、隣り合う画素の変位量の微分値に基づいて、前記解析領域が欠落領域を含むか否かを判定する。
【0013】
上記変位量計測システムによれば、計測対象物の変位量の計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【0014】
本発明の第4観点に係る変位量計測システムは、第1観点または第2観点に係る変位量計測システムであって、前記変位量計測装置は、前記判定処理において、前記解析領域内における画素毎の変位量の標準偏差に基づいて、前記解析領域が欠落領域を含むか否かを判定する。
【0015】
上記変位量計測システムによれば、計測対象物の変位量の計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【0016】
本発明の第5観点に係る変位量計測プログラムは、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測プログラムであって、前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における画素毎の変位量を算出する画素毎変位量算出処理と、前記画素毎の変位量のばらつきに基づいて、前記解析領域が欠落領域を含むか否かを判定する判定処理と、をコンピュータに実行させる。
【0017】
上記変位量計測プログラムによれば、第1観点に係る変位量計測システムと同様の効果が得られる。
【0018】
本発明の第6観点に係る変位量計測方法は、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測方法であって、前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における画素毎の変位量を算出する画素毎変位量算出処理と、前記画素毎の変位量のばらつきに基づいて、前記解析領域が欠落領域を含むか否かを判定する判定処理と、を含む。
【0019】
上記変位量計測方法によれば、第1観点に係る変位量計測システムと同様の効果が得られる。
【0020】
本発明の第7観点に係る変位量計測装置は、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測装置であって、前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における画素毎の変位量を算出する画素毎変位量算出処理と、前記画素毎の変位量のばらつきに基づいて、前記解析領域が欠落領域を含むか否かを判定する判定処理と、を実行する。
【0021】
上記変位量計測装置によれば、第1観点に係る変位量計測システムと同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に関する計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、および、変位量計測装置によれば、計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態の変位量計測システムの概略構成図。
【
図2】2次元格子パターンが設置された計測対象物の正面図。
【
図5】
図4の解析領域に欠落領域が形成された状態の図。
【
図6】
図1の制御装置に構築される機能ブロックに関する図。
【
図7】
図3の解析領域に欠落領域が含まれない場合の画素毎の変位量の一例を示す図。
【
図8】
図3の解析領域に欠落領域が含まれる場合の画素毎の変位量の一例を示す図。
【
図9】
図7の隣り合う画素の変位量の微分値の算出結果の一例を示す図。
【
図10】
図8の隣り合う画素の変位量の微分値の算出結果の一例を示す図。
【
図11】面内変位量算出処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図12】実施形態のシステムを適用しない場合の位相接続有りモードの変位量の計測結果の一例を示すグラフ。
【
図13】実施形態のシステムを適用しない場合の位相接続無しモードの変位量の計測結果の一例を示すグラフ。
【
図14】実施形態のシステムを適用した場合の位相接続有りモードの変位量の計測結果の一例を示すグラフ。
【
図15】実施形態のシステムを適用した場合の位相接続無しモードの変位量の計測結果の一例を示すグラフ。
【
図16】変形例の変位量計測システムが実行する面内変位量算出処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る変位量計測装置、および、これを備える変位量計測システムについて説明する。
【0025】
<1.変位量計測システムの全体構成>
図1は、変位量計測システム10(以下では、「システム10」という)の概略構成図である。システム10は、計測対象物100に設置された2次元格子パターン200(
図2参照)を撮影した2次元画像(以下では、「2次元格子画像」という)を用いて、計測対象物100の面内方向の変位量を計測するシステムである。計測対象物100は、例えば、インフラ構造物である。インフラ構造物は、例えば、高架道路、橋梁、鉄橋、または、トンネルである。変位量計測システム10は、変位量計測装置20と、撮像装置30と、を含む。
【0026】
<2.変位量計測システムのハード構成>
変位量計測装置20は、本体21、入力装置22、および、出力装置23を有する。本体21は、記憶装置21Aおよび制御装置21Bを有する。記憶装置21Aおよび制御装置21Bは、バス24を介して通信できるように接続される。記憶装置21Aは、例えば、ハードディスクまたはソリッドステートドライブである。記憶装置21Aは、計測対象物100の面内方向の変位量の算出に関する1または複数のアプリケーションソフトウェア(以下では、「変位量算出ソフト」という)を記憶する。
【0027】
制御装置21Bは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、後述する機能を実行する。制御装置21Bは、入力装置22からの要求に応じて記憶装置21Aに記憶されている面内変位量算出ソフトを実行する。制御装置21Bが面内変位量算出ソフトを実行することによって、変位量計測装置20には、後述する1または複数の機能ブロックが構築される。
【0028】
入力装置22は、例えばキーボードであり、本体21と接続される。出力装置23は、例えば、液晶ディスプレイであり、本体21から出力された信号を受信できるように、本体21と接続される。なお、本体21、入力装置22、および、出力装置23は、ノート型パーソナルコンピュータのように、一体的に構成されてもよい。
【0029】
撮像装置30は、2次元格子画像を撮影する撮影処理を実行できるように構成される。本実施形態では、撮像装置30は、カメラである。本実施形態では、撮像装置30は、変位量計測装置20と無線通信または有線通信できるように接続される。撮像装置30が撮影した2次元格子画像は、変位量計測装置20に送信され、例えば、記憶装置21Aに記憶される。なお、撮像装置30は、タブレット端末に搭載されるカメラ、または、スマートフォンに搭載されるカメラであってもよい。
【0030】
<3.2次元格子パターン>
図2に示される計測対象物100には、1または複数の2次元格子パターン200が設置される。2次元格子パターン200の具体的な構成は、任意に選択可能である。本実施形態では、2次元格子パターン200は、計測対象物100に貼り付けられるように構成されるシール部材に印刷される。2次元格子パターン200は、計測対象物100に直接描かれてもよく、計測対象物100に固定される板等の部材に印刷または刻印されてもよい。
【0031】
図3は、2次元格子画像300を示す図である。計測対象物100の面内方向の変位量の計測においては、2次元格子画像300内に解析領域50が設定される。
【0032】
図4は、解析領域50の一例を示す図である。解析領域50は、複数の画素50Aを含む。
図4に示される例では、解析領域50は、10行×10列の合計100個の画素50Aを有する。計測対象物100の面内方向の変位量の計測においては、画素50A毎の変位量が算出され、全ての画素50Aの変位量の平均値が、解析領域50における2次元格子パターン200の平均変位量として算出される。
【0033】
計測対象物100の面内方向の変位量の計測においては、計測を開始した後に、2次元格子パターン200の少なくとも一部が例えば、人物等の外的要因によって一時的に遮られることがある。このような場合、解析領域50には、
図5に示されるように、欠落領域50X(
図5の黒色で塗りつぶされた部分)が形成される。欠落領域50Xは、解析領域50のうちの外的要因によって2次元格子パターン200が遮られた領域である。欠落領域50Xを含む2次元格子画像300を用いて計測対象物100の変位量を算出すると、変位量の算出の精度が大きく低下する。本実施形態では、制御装置21Bは、後述する面内変位量算出処理において、画素50A毎の変位量のばらつきに基づいて欠落領域50Xを含む2次元格子画像300を抽出し、欠落領域50Xを含む2次元格子画像300以外の2次元格子画像300を用いて、計測対象物100の変位量を計測する。
【0034】
<4.変位量計測システムのソフト構成>
図6に示されるように、制御装置21Bが記憶装置21A(
図1参照)に記憶されている変位量算出ソフトを実行することによって構成される機能ブロックは、例えば、解析領域抽出部41、画素毎変位量算出部42、平均変位量算出部43、総計変位量算出部44、および、判定部45を含む。変位量計測装置20にこれらの機能ブロックが構築されることによって、計測対象物100の面内方向の変位量を算出する面内変位量算出処理が実行される。以下では、各機能ブロックの詳細について説明する。
【0035】
<4-1.解析領域抽出部>
解析領域抽出部41は、2次元格子画像300(
図3参照)から2次元格子パターン200を含む領域を解析領域50として抽出する解析領域抽出処理を実行する。解析領域50は、2次元格子画像300のうちの2次元格子パターン200が写っている領域の全体であってもよく、一部であってもよい。本実施形態では、解析領域抽出部41は、解析領域抽出処理において、2次元格子画像300のうちの2次元格子パターン200が写っている領域の一部を解析領域50として抽出する。解析領域50の形状は、任意に選択可能である。本実施形態では、解析領域50の形状は、正方形である。解析領域50の形状は、長方形、ひし形、三角形、五角形以上の多角形、円、または、楕円であってもよい。
【0036】
<4-2.画素毎変位量算出部>
画素毎変位量算出部42は、解析領域50における画素50A毎の変位量を算出する画素毎変位量算出処理を実行する。例えば、撮像装置30によって撮影される画像が連続した静止画である場合、画素毎変位量算出部42は、画素毎変位量算出処理において、1つの静止画毎の解析領域50内の全ての画素50Aの変位量を算出する。例えば、撮像装置30によって撮影される画像が動画である場合、画素毎変位量算出部42は、画素毎変位量算出処理において、1コマ毎の解析領域50内の全ての画素50A毎の変位量を算出する。
【0037】
<4-3.平均変位量算出部>
平均変位量算出部43は、解析領域50における2次元格子パターン200の平均変位量を算出する平均変位量算出処理を実行する。平均変位量算出処理においては、1つの静止画、または、動画の1コマにおける解析領域50内の全ての画素50Aの変位量の平均値が平均変位量として算出される。平均変位量算出部43は、平均変位量算出処理において、解析領域50内における2次元格子パターン200のX軸の方向の平均変位量dAx、および、Y軸の方向の平均変位量dAyを算出する。なお、平均変位量dAx、dAyの算出は、例えば、特許第4831703号公報等に記載の公知の方法を用いて実施できる。
【0038】
<4-4.総計変位量算出部>
総計変位量算出部44は、2次元格子パターン200の総計の変位量を算出する総計変位量算出処理を実行する。総計変位量算出部44は、総計変位量算出処理において、平均変位量算出処理によって算出された平均変位量dAx、dAyを、2次元格子パターン200の累積の変位量に加算することによって、2次元格子パターン200の総計の変位量を算出する。
【0039】
<4-5.判定部>
判定部45は、解析領域50内の画素50A毎の変位量のばらつきに基づいて、解析領域50が欠落領域50Xを含むか否かを判定する判定処理を実行する。
図7は、解析領域50に欠落領域50Xが含まれない場合の解析領域50の一例に関する図である。
図7では、理解を容易にするため、各画素50A内にX軸方向の変位量(mm)を記載している。解析領域50に欠落領域50Xが含まれない場合、解析領域50おける画素50A毎の変位量は、概ね一定となる。
【0040】
図8は、解析領域50に欠落領域50Xが含まれる場合の解析領域50の一例に関する図である。
図8では、理解を容易にするため、各画素50A内にX軸方向の変位量(mm)を記載している。解析領域50に欠落領域50Xが含まれる場合、欠落領域50Xにおける画素50A毎の変位量は、欠落領域50X以外の領域の画素50A毎の変位量と大きく異なる。このため、解析領域50全体として、画素50A毎の変位量のばらつきが大きくなる。
【0041】
判定部45は、判定処理において、解析領域50内の隣り合う画素50A間の変位量の微分値に基づいて、画素50A毎の変位量のばらつきが大きいか否かを判定する。
【0042】
図9は、
図7の例、すなわち、解析領域50に欠落領域50Xが含まれない場合における解析領域50内の隣り合う画素50A間の変位量の微分値を算出した結果の一例である。例えば、
図9に示される例において、1行10列目の画素50Aの変位量の微分値「0.1」は、
図7に示される例において、1行10列目の画素50Aの変位量「2.1」と、1行9列目の画素50Aの変位量「2.0」との差に基づいて算出される。
図9に示されるように、解析領域50に欠落領域50Xが含まれない場合には、解析領域50内の隣り合う画素50A間の変位量の微分値は小さい。
【0043】
図10は、
図8の例、すなわち、解析領域50に欠落領域50Xが含まれる場合における解析領域50内の隣り合う画素50A間の変位量の微分値を算出した結果の一例である。例えば、
図10に示される例において、8行10列目の画素50Aの変位量の微分値「-7.1」は、
図8に示される例において、8行10列目の画素50Aの変位量「-3.4」と、8行9列目の画素50Aの変位量「3.7」との差に基づいて算出される。
図10に示されるように、解析領域50に欠落領域50Xが含まれる場合には、欠落領域50Xにおける隣り合う画素50A間の変位量の微分値は大きい。
【0044】
判定部45は、解析領域50内の隣り合う画素50A間の変位量の微分値の絶対値の少なくとも1つが、閾値以上である場合、画素50A毎の変位量のばらつきが大きい、すなわち、解析領域50に欠落領域50Xが含まれると判定する。判定部45は、解析領域50内の隣り合う画素50A間の変位量の微分値の絶対値の全てが、閾値未満である場合、画素50A毎の変位量のばらつきが小さい、すなわち、解析領域50に欠落領域50Xが含まれないと判定する。なお、閾値は、欠落領域50Xが存在すると判定できる値であり、試験によって予め決められる。
【0045】
<5.面内変位量算出処理>
図11を参照して、面内変位量算出処理の処理手順の一例について説明する。
制御装置21Bは、例えば、記憶装置21Aに任意の2次元格子画像300が保存され、かつ、ユーザからの要求があった場合に面内変位量算出処理を開始する。
【0046】
ステップS11では、制御装置21Bは、1枚目の2次元格子画像300、または、1コマ目の2次元格子画像300から2次元格子パターン200の基準変位を設定する。
【0047】
ステップS12では、制御装置21Bは、解析領域50内の画素50A毎の変位量を算出する。
【0048】
ステップS13では、制御装置21Bは、解析領域50内の画素50A毎の変位量に基づいて、2次元格子パターン200の平均変位量dAx、dAyを算出する。
【0049】
ステップS14では、制御装置21Bは、解析領域50内の隣り合う画素50A間の変位量の微分値を算出する。
【0050】
ステップS15では、制御装置21Bは、隣り合う画素50A間の変位量の微分値の絶対値の少なくとも1つが閾値以上か否かを判定する。ステップS15が否定判定の場合、すなわち、隣り合う画素50A間の変位量の微分値の絶対値の全てが閾値未満である場合、制御装置21Bは、解析領域50に欠落領域50Xが含まれないと判定し、ステップS16の処理を実行する。
【0051】
ステップS16では、制御装置21Bは、累積変位量に平均変位量dAxおよび平均変位量dAyを加算して、2次元格子パターン200の総計の変位量を算出する。
【0052】
一方、ステップS15が肯定判定の場合、すなわち、隣り合う画素50A間の変位量の微分値の少なくとも1つが閾値以上である場合、制御装置21Bは、解析領域50に欠落領域50Xが含まれていると判定し、ステップS17の処理を実行する。
【0053】
ステップS17では、制御装置21Bは、累積変位量に平均変位量dAxおよび平均変位量dAyを加算しない。
【0054】
ステップS18では、制御装置21Bは、ユーザから面内変位量算出処理の終了を要求する信号が入力されたか否かを判定する。ステップS18が肯定判定の場合、制御装置21Bは、面内変位量算出処理を終了する。ステップS18が否定判定の場合、制御装置21Bは、ステップS12以降の処理を繰り返し実行する。なお、ステップS18では、制御装置21Bは、予め設定される所定時間が経過したか否かを判定してもよい。ステップS18が肯定判定の場合、すなわち、所定時間が経過している場合、制御装置21Bは、面内変位量算出処理を終了する。ステップS18が否定判定の場合、すなわち、所定時間が経過していない場合、制御装置21Bは、ステップS12以降の処理を繰り返し実行する。
【0055】
<6.実施形態の効果>
以上のように構成されたシステム10によれば、次の効果を得ることができる。
【0056】
<6-1>
システム10によれば、面内変位量算出処理のステップS15において、画素50A毎の変位量のばらつきが大きいと判定された2次元格子画像300、換言すれば、欠落領域50Xを含むと判定された2次元格子画像300を抽出することができるため、欠落領域50Xを含む2次元格子画像300以外の2次元格子画像300を用いて、計測対象物100の変位量を計測できる。このため、計測対象物100の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【0057】
システム10は、計測対象物100の面内方向の変位量を計測する公知の位相接続有りモード、および、位相接続無しモードの両方に好適に適用できる。位相接続有りモードは、2次元格子パターン200の格子のピッチの半分以上の変位量を計測するモードである。位相接続無しモードは、2次元格子パターン200の格子のピッチの半分以下の変位量を計測するモードである。
【0058】
図12は、システム10を適用しない場合の位相接続有りモードにおける計測対象物100の変位量の計測結果の一例を示すグラフである。
図13は、システム10を適用しない場合の位相接続無しモードにおける計測対象物100の変位量の計測結果の一例を示すグラフである。
【0059】
図12、
図13の破線で示される部分は、欠落領域50Xを含む2次元格子画像300を用いて、計測対象物100の変位量が計測された部分である。欠落領域50Xを含む2次元格子画像300を用いて、計測対象物100の変位量を計測した部分では、計測値が大きく乱れていることが把握できる。
【0060】
図14は、システム10を適用した場合の位相接続有りモードにおける計測対象物100の変位量の計測結果の一例を示すグラフである。システム10では、欠落領域50Xを含むと判定された2次元格子画像300は排除され、欠落領域50Xを含まない2次元格子画像300を用いて、計測対象物100の変位量が計測されるため、計測対象物100の変位量を好適に計測できる。
【0061】
図15は、システム10を適用した場合の位相接続無しモードにおける計測対象物100の変位量の計測結果の一例を示すグラフである。システム10では、欠落領域50Xを含むと判定された2次元格子画像300は排除され、欠落領域50Xを含まない2次元格子画像300を用いて、計測対象物100の変位量が計測されるため、計測対象物100の変位量を好適に計測できる。
【0062】
<6-2>
判定部45は、判定処理において、解析領域50内の隣り合う画素50A間の変位量の微分値に基づいて、画素50A毎の変位量のばらつきが大きいか否かを判定する。このため、2次元格子画像300を確認することなく、計測対象物100の面内方向の変位量の計測を継続することができる。
【0063】
<7.変形例>
上記実施形態は本発明に関する変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、変位量計測装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、変位量計測装置は、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、各実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。なお、以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0064】
<7-1>
上記実施形態において、判定部45は、解析領域50内における画素50A毎の変位量の標準偏差に基づいて、解析領域50が欠落領域50Xを含むか否かを判定してもよい。この変形例において、判定部45は、2次元格子パターン200の平均変位量dAx、dAyと画素50A毎の変位量の差ΔXを算出し、全ての差ΔXの和を画素50Aの数で除することによって標準偏差を算出する。
【0065】
図7に示される例では、2次元格子パターン200の平均変位量dAxは、2.0mmであり、解析領域50内の画素50A毎の変位量の標準偏差は、0.1mmである。
図8に示される例では、2次元格子パターン200の平均変位量dAxは、2.0mmであり、解析領域50内の画素50A毎の変位量の標準偏差は、1.0mmである。
【0066】
判定部45は、解析領域50内の画素50A毎の変位量の標準偏差が閾値以上である場合、画素50A毎の変位量のばらつきが大きい、すなわち、解析領域50に欠落領域50Xが含まれると判定する。判定部45は、解析領域50内の画素50A毎の変位量の標準偏差が閾値未満である場合、画素50A毎の変位量のばらつきが小さい、すなわち、解析領域50に欠落領域50Xが含まれないと判定する。なお、閾値は、欠落領域50Xが存在すると判定できる値であり、試験によって予め決められる。
【0067】
図16は、変形例の変位量計測システム10によって実行される面内変位量算出処理の一例を示すフローチャートである。
図16に示される面内変位量算出処理は、
図11に示される面内変位量算出処理と比較して、ステップS14の処理に代えてステップS21の処理を有し、ステップS15に代えてステップS22の処理を有する点において異なる。
【0068】
ステップS21では、制御装置21Bは、画素50A毎の変位量の標準偏差を算出する。
【0069】
ステップS22では、制御装置21Bは、画素50A毎の変位量の標準偏差が閾値以上か否かを判定する。ステップS22が否定判定の場合、すなわち、画素50A毎の変位量の標準偏差が閾値未満である場合、制御装置21Bは、解析領域50に欠落領域50Xが含まれないと判定し、ステップS16の処理を実行する。
【0070】
一方、ステップS22が肯定判定の場合、すなわち、画素50A毎の変位量の標準偏差が閾値以上である場合、制御装置21Bは、解析領域50に欠落領域50Xが含まれていると判定し、ステップS17の処理を実行する。
【0071】
<7-2>
上記実施形態では、解析領域50は、解析領域抽出部41によって設定されたが、ユーザが解析領域50を設定してもよい。
【0072】
<7-3>
上記実施形態では、変位量計測装置20は、撮像装置30と無線通信または有線通信できるように接続されていたが、変位量計測装置20と撮像装置30とは、通信可能に接続されていなくてもよい。この場合、撮像装置30によって撮影された2次元格子画像300は、例えば、USBフラッシュメモリまたはSDメモリカード等の補助記憶装置に保存される。変位量計測装置20は、補助記憶装置から2次元格子画像300を取得することによって、面内変位量算出処理を実行する。
【符号の説明】
【0073】
10 :変位量計測システム
20 :変位量計測装置
30 :撮像装置
50 :解析領域
100:計測対象物
200:2次元格子パターン