(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140106
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】混和材料、セメント組成物、セメント硬化体およびセメント硬化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20250919BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20250919BHJP
C04B 24/24 20060101ALI20250919BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20250919BHJP
C04B 103/61 20060101ALN20250919BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/14 A
C04B24/24 Z
C12N1/20 Z
C04B103:61
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039284
(22)【出願日】2024-03-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 出版者名:シーエムシー出版、刊行物名:月刊ファインケミカル第52巻第3号、発行年月日:令和 5年 3月15日 刊行物名:2023 ICUSA-GAME Conference Agenda、2023 ICUSA Committee、発行年月日:令和 5年7月13日 集会名:2023 ICUSA-GAME Conference、開催日:令和 5年 7月13日
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(71)【出願人】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(71)【出願人】
【識別番号】597139170
【氏名又は名称】学校法人静岡理工科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】林 俊斉
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】河合 慶有
(72)【発明者】
【氏名】西田 孝弘
【テーマコード(参考)】
4B065
4G112
【Fターム(参考)】
4B065AA19X
4B065BD40
4B065BD41
4B065CA60
4G112MC00
4G112PA29
4G112PB26
(57)【要約】
【課題】強度発現にさほど影響を与えず、且つ従来よりも効率的に資化可能な有機高分子を含むセメント組成物用の混和材料を提供すること
【解決手段】セメントと混合して使用される混和材料であって、好気性微生物と、生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)と、を含む、セメントとの混合用の混和材料である。これによれば、生物工学的手法により製造されたPHAは化学合成されたPLAよりも比表面積が大きく、好気性微生物により効率的に資化される。また、PHAはグルコースのように水に溶解して溶出、分解する懸念もなく、セメント硬化体の強度発現にさほど影響しない。さらに、本発明は、混和材料を含むセメント組成物、セメント硬化体、およびセメント硬化体の製造方法に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと混合して使用される混和材料であって、
好気性微生物と、
生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)と、
を含むことを特徴とするセメントとの混合用の混和材料。
【請求項2】
前記ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)が海洋分解性を有することを特徴とする請求項1に記載の混和材料。
【請求項3】
前記好気性微生物が、バチルス属細菌であることを特徴とする請求項1に記載の混和材料。
【請求項4】
前記好気性微生物が、Bacillus subtilisおよびBacillus altitudinisからなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の混和材料。
【請求項5】
さらに還元剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の混和材料。
【請求項6】
請求項1に記載の混和材料と、セメントと、水と、を含むセメント組成物。
【請求項7】
鋼材が請求項6に記載のセメント組成物に埋設された状態で該セメント組成物が硬化されてなるセメント硬化体。
【請求項8】
請求項6に記載のセメント組成物に鋼材を埋設させる埋設工程と、
前記セメント組成物を養生し、セメント硬化体を得る養生工程と、
を有することを特徴とする、鋼材の腐食が抑制されたセメント硬化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混和材料、セメント組成物、セメント硬化体およびセメント硬化体の製造方法に関し、特に、セメントと混合して使用される混和材料、混和材料を含むセメント組成物、セメント組成物を硬化したセメント硬化体、およびセメント組成物に鋼材を埋設させた、鋼材の腐食が抑制されたセメント硬化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやモルタル等のセメント硬化物は建築用途などに広く使用されており、特に、コンクリート中に鉄筋などの鋼材が埋設された鉄筋コンクリートは、建築用構造体として広く用いられている。
【0003】
鉄筋コンクリート中の鋼材の腐食は、以下の式
Fe→Fe2++2e-…… アノード反応
1/2O2+H2O+2e-→2OH-…… カソード反応
で示されるように、アノード反応で鋼材(鉄)から電子が奪われ、この電子により水中に溶存した酸素のカソード反応が進行し、OH-イオンを生成することですすむ。
【0004】
したがって、鋼材の腐食を抑制するためには、アノード反応および/またはカソード反応を抑制する方策が考えられる。
【0005】
また、セメント硬化物は時間が経つとひび割れが生じ、そこに水や酸素が侵入することで上記アノード反応およびカソード反応を促進して鋼材の腐食が進むという問題もある。よって、セメント硬化物のひび割れを修復することも、鋼材の腐食を抑制するために重要である。
【0006】
特許文献1は、好気性微生物の代謝を活用してコンクリート中の溶存酸素を消費させてカソード反応を停滞させることにより、鋼材の腐食を防止する方法を開示する。同時に、微生物代謝により二酸化炭素が放出することで、この二酸化炭素がセメント硬化物から水に溶解したカルシウムと反応して炭酸塩を析出させてひび割れが修復され、ひび割れへのさらなる水や空気の侵入を抑制し、鋼材の腐食を間接的に防ぐことができる。
【0007】
かかる好気性微生物の代謝を活用した鋼材の腐食抑制、およびセメント硬化物のひび割れの修復の効果を高めるためには、微生物の活性を高めることが重要であり、したがって、好気性微生物と共に微生物の栄養源を混和材として添加することが効果的である。
【0008】
特許文献1では、微生物の栄養源として、糖類、特にグルコースを添加している。しかし、グルコースは、多量に添加するとセメントの水和反応(硬化反応)を阻害してセメント硬化物の強度発現を遅延させるため、セメント組成物に多量に添加することができない。また、水に溶解して溶出、分解してしまうことや、微生物により直ぐに資化されて使い切られてしまうなどの問題があり、長期的な栄養源としての適正も低い。
【0009】
非特許文献1は、アルカリ親水性胞子形成性バチルスの細菌胞子と、栄養源としてのPLA(ポリ乳酸)とを含むセメント混和材であるConcrete Healing Agent-PLA based (CHA-PLA)を開示する。CHA-PLAを生コンクリート製造時に添加することで、練り混ぜ水中でポリ乳酸はセメント組成物中のカルシウムと反応して乳酸カルシウムに変化する。そして、得られたセメント硬化物に経時的なひび割れが発生すると、侵入してくる水や酸素によってpHが下がり、細菌が活動を開始する。そして、ひび割れ内に侵入する酸素および乳酸カルシウムを摂取しながら代謝活動によりひび割れ内に炭酸カルシウムを排出してひび割れを修復すると共に、セメント硬化物内の酸素量を減少させる。ひび割れが完全に閉塞すると、水や酸素の供給が絶たれることで細菌は再び休眠状態を保ち、次のひび割れ発生に備えることとなる。
【0010】
上述のとおり、セメント硬化体中でPLA(ポリ乳酸)は乳酸カルシウムとして存在するので、多量にPLAを添加してもセメントの水和反応に目立った悪影響を与えることはなく、セメント硬化体中で乳酸が乳酸カルシウムの形で存在するので、セメント硬化体からの溶出も少ない。
【0011】
よって、非特許文献1のアルカリ混和材によれば、多量に添加してもセメントの強度発現にさほど影響を与えず、さらにセメント硬化体中から漏出する心配も少ないままに、セメント硬化体中の酸素量の低減およびひび割れの自己修復に貢献できる。また、栄養源が入っているので、微生物の活性も高く維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】“Basilisk(登録商標) HA 安全データシート”、[online]、會澤高圧コンクリート株式会社、[令和5年11月13日検索]、インターネット<https://f.hubspotusercontent10.net/hubfs/9396663/Basilisk%E8%B3%87%E6%96%99/HA_SafetyData_jpn.pdf?__hstc=251652889.029a8563d372cf90894ab300054a373e.1699841801638.1699841801638.1699841801638.1&__hssc=251652889.55.1699841801639&__hsfp=1696857715>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のとおり、非特許文献1のアルカリ混和材によれば、多量に添加してもセメントの強度発現にさほど影響を与えず、さらにセメント硬化体中から漏出する心配も少ないままに、セメント硬化体中の酸素量の低減およびひび割れの自己修復に貢献できる。また、栄養源が入っているので、微生物の活性も高く維持できる。
【0015】
このように、PLA(ポリ乳酸)は、現状良好な栄養源と考えられるが、現在存在する化学的手法により製造され、押出成形されたPLAは得られた製品の粒径が大きく、したがって比表面積が小さくなり、微生物による資化効率が悪い。粉砕することで表面積を小さくすることも考えられるが、一般にPLAの樹脂は硬く、粉砕が困難である。さらに、一般にPLAは耐熱性が低いため、例えばボールミルで粉砕しようとすると粉砕時に発生した熱によりPLAが軟化し、粉砕できない虞もある。
【0016】
したがって、従来よりも効率的に資化可能な有機高分子を含むセメント組成物用の混和材が求められていた。
【0017】
上記課題に鑑みてなされた本願発明の目的は、強度発現にさほど影響を与えず、且つ従来よりも効率的に資化可能な有機高分子を含むセメント組成物用の混和材料を提供することにある。また、強度発現にさほど影響を与えず、且つ従来よりも効率的に資化可能な有機高分子を含むセメント組成物用の混和材料を用いた、鋼材の腐食が抑制されたセメント硬化体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記目的達成に向け鋭意検討を行った。その結果、混和材料に生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を微生物の栄養源として添加することで、多量に添加してもセメント硬化体の強度発現にさほど影響を与えず、且つPLAを用いる場合よりも効率的に資化可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、上記目的は、セメントと混合して使用される混和材料であって、好気性微生物と、生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)と、を含むことを特徴とするセメントとの混合用の混和材料により達成されることが見いだされた。
【0020】
また、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)が海洋分解性を有することが好ましい。
【0021】
さらに、好気性微生物が、バチルス属細菌であることが好ましく、好気性微生物が、Bacillus subtilisおよびBacillus altitudinisからなる群から選択されることが特に好ましい。
【0022】
そのうえ、さらに本発明の混和材料が還元剤を含むことが好ましい。
【0023】
また、上記目的は、本発明の混和材料と、セメントと、水と、を含むセメント組成物によっても達成することができ、さらに、上記目的は、鋼材が本発明のセメント組成物に埋設された状態で該セメント組成物が硬化されてなるセメント硬化体によっても達成することができる。
【0024】
さらに、上記目的は、本発明のセメント組成物に鋼材を埋設させる埋設工程と、前記セメント組成物を養生し、セメント硬化体を得る養生工程と、を有することを特徴とする、鋼材の腐食が抑制されたセメント硬化体の製造方法によっても達成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のセメントと混合して使用される混和材料および本発明の鋼材の腐食が抑制されたセメント硬化体の製造方法によれば、生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)が好気性微生物の栄養源として添加されていることから、化学合成されたPLA(ポリ乳酸)よりも比表面積が大きく、したがって得られるセメント組成物の硬化体(セメント硬化体)における資化効率が高くなる。また、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)はグルコースのように水に溶解して溶出、分解する懸念もなく、また、セメントの水和反応を阻害する虞もなく、得られるセメント組成物の硬化体(セメント硬化体)の強度発現にさほど影響しない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】高pH環境において微生物代謝が抑制された後、pHを9.0に低下させた後の、実施例1および比較例1-2のサンプル溶液中の溶存酸素濃度の経時的変化を示すグラフである。
【
図2】
図1と同じ試験の、縦軸をサンプル溶液中の呼吸率に変換したグラフである。
【
図3】
図1と同じ試験の、縦軸を呼吸率とし、横軸をpHとしたグラフである。
【
図4】本発明の鋼材の腐食が抑制されたセメント硬化体の製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<混和材料>
本発明の混和材料は、セメントと混合して使用される混和材料であって、好気性微生物と、生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)と、を含む。
【0028】
[好気性微生物]
好気性微生物は、酸素を消費して二酸化炭素を発生させるものであれば特に限定されず、偏性好気性微生物、通性好気性微生物、通性嫌気性微生物、微好気性微生物をも含み、細菌類、酵母、真菌、原生生物、原生動物等広く使用することが可能である。
【0029】
これらの中でも、特に、芽胞(胞子、分正子)形成能がある芽胞形成微生物が特に好ましい。
【0030】
芽胞形成微生物としては、例えば、枯草菌(Bacillus属)、放線菌(Streptomyces属等)、真菌類(不完全菌門、子嚢菌門、接合菌門、担子菌門、ツボカビ門)などを1種以上使用することが可能である。これらの中でも、内生胞子(芽胞)を生成することでセメント組成物、セメント硬化体内の高アルカリ環境、乾燥環境でも生存可能であることから、Bacillus属細菌(枯草菌)が好ましい。
【0031】
Bacillus属細菌は特に限定されないが、例えば、Bacillus subtilis(Bacillus subtilis var. natto(納豆菌)を含む)、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus lentus、Bacillus laterosporus、Bacillus alvei、Bacillus popilliae、 Bacillus pumilus、Bacillus altitudinis、Bacillus licheniformis、Bacillus coagulans、Bacillus cereus、Bacillus halodurans、Bacillus acidicola、Bacillus acidopullulyticus、Bacillus acidovorans、Bacillus aeolius、Bacillus aestuarii、Bacillus garadhaerens、Bacillus akibai、Bacillus alcaliinulinus、Bacillus alcalophilus、Bacillus algicola、Bacillus alkalitolerans、Bacillus alkalogaya、Bacillus alveayuensis、Bacillus amiliensis、Bacillus aminovorans、Bacillus aquimaris、Bacillus arbutinivorans、Bacillus arenosi、Bacillus arseniciselenatis、Bacillus arsenicus、Bacillus arvi、Bacillus asahii、Bacillus atrophaeus、Bacillus axarquiensis、Bacillus azotoformans、Bacillus badius、Bacillus baekryungensis、Bacillus barbaricus、Bacillus bataviensis、Bacillus benzoevorans、Bacillus bogoriensis、Bacillus borophilicus、Bacillus borotolerans、Bacillus caldolyticus、Bacillus caldotenax、Bacillus caldovelox、Bacillus carboniphilus、Bacillus casamancensis、Bacillus catenulatus、Bacillus cellulosilyticus、Bacillus sphericus、Bacillus thuringiensis、Bacillus clausiiなどから1 種以上を選択することができる。これらの中でも、温度、pHなどの環境ストレスに強いことから好気性微生物がBacillus subtilisおよびBacillus altitudinisからなる群から選択されることが好ましく(高pH環境における代謝活動の観点からは、Bacillus altitudinisがより好ましい)、耐熱性、経済性、安全性(食経験のある微生物であり、安全性が高い)の点で納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)が特に好ましい。
【0032】
[生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)]
本発明の混和材料は、好気性微生物の栄養源を含む。混和材料が栄養源を含むことで、セメント硬化体にひび割れ等が発生した場合に、好気性微生物の活性を高めることが可能となる。
【0033】
本発明において、混和材料は、好気性微生物の栄養源として生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を含む。生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)としては、例えば、ポリヒドロキシブタン酸(PHB)、ポリ(3-ヒドロキシブタン酸/3-ヒドロキシバレリル酸)(PHBV)、ポリ(3-ヒドロキシブタン酸/3-ヒドロキシヘキサン酸)(PHBH)などが挙げられるが、これらに限られるものではない。
中でも、分解が早く、資化されやすいこと、および、材料が柔らかく、微生物が取り入れやすいことを鑑みると、生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、ポリ(3-ヒドロキシブタン酸/3-ヒドロキシバレリル酸)(PHBV)、ポリ(3-ヒドロキシブタン酸/3-ヒドロキシヘキサン酸)(PHBH)およびこれらの混合物からなる群から選択されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)であることが好ましい。
【0034】
市販の生物工学的手法により製造されたPHAは、例えば、カネカ(PHBH)、ハイケム社(PHBV)から入手することができる。
【0035】
生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、化学合成されたポリ乳酸(PLA)などの生分解性プラスチックと比較して粒径が小さい。したがって、生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、セメント硬化体内で経時的なひび割れなどにより浸入してきた水分との接触面積が相対的に大きくなり、一時分解が進みやすく、その後好気性微生物により分解しやすく、化学合成された生分解性プラスチックと比較して好気性微生物による資化効率が向上すると考えられる。
【0036】
また、生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、海洋分解性を有することが好ましい。鋼材を有するセメント硬化体は海洋の干満帯に設けられる場合も多いが、海洋の干満帯は鋼材のカソード反応に要求される酸素が多量に供給されるだけでなく、セメント硬化体表面に付着した海水の蒸発により塩化物イオン濃度が凝縮するため、極めて厳しい腐食環境となる。
【0037】
このような環境において、生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)が海洋分解性を有することで、海洋の干満帯などに設けられた本発明の混和材料が含まれるセメント硬化体中のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の分解が進み、好気性微生物の活性が向上するため、厳しい腐食環境にあっても従来よりも腐食に耐え得るセメント硬化体を提供できる混和材料となる。
【0038】
さらに、生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の粒径は、資化効率の観点からは500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。
【0039】
そのうえ、生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の粒子形状は、どのようなものであっても良いが、セメント組成物中に配合された際にセメント組成物の流動性を維持する観点から、球状であることが好ましい。
【0040】
[還元剤]
本発明の混和材料は、さらに還元剤を含むことが好ましい。還元剤は、セメントペースト及びその硬化物中のアルカリ環境下で安定な物質であって、セメント硬化物中の酸化性物質と反応して還元能力を発揮する物質であれば特に限定さないが、例えば、腐食防止目的の金属(例えば鉄筋の鉄)よりも酸化されやすい物質を使用する。
【0041】
このような還元剤の例としては、鉄鋼スラグ粉末(高炉スラグ、製鋼スラグ、電気炉還元スラグ)、鉄(II)イオン、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、ナトリウムアマルガム、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、スズ(II)イオン、亜硫酸塩、ヒドラジン、亜鉛アマルガム、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)、シュウ酸(C2H2O4)、ギ酸(HCOOH)等があり、これらは単独又は2種以上を組み合わせて添加する。
【0042】
これらの中でも、セメント系材料との親和性が高く、好気性微生物と併用した場合にその繁殖を抑制しないという点で、鉄鋼スラグ粉末が好ましい。鉄鋼スラグ粉末の中でも、高炉スラグ粉末は酸化鉄量が少ない一方で(検出限界以下)、還元剤として機能する0~2価の鉄(特に2価鉄)やその他の鉄成分(例えば、Fe3O4、即ち四酸化三鉄)を含有するので、還元能力が高く、本発明の混和材料に最も適している。高炉スラグ粉末の種類は特に限定されず、高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグのいずれかでもよいが、混和材料の分散性を考慮して紛体(微粉末)のものを用いる。
【0043】
好気性微生物とは異なり、還元剤は化学反応により酸素を消費するため、ひび割れ等の破損がない健全なコンクリート中での酸素消費に特に寄与する。他方、好気性微生物は酸素が供給された状態で活発に活動する。従って、混和材料が、好気性微生物と還元剤との両方を含む場合には、腐食抑制効果がより長時間維持される。
【0044】
[添加剤]
本発明の混和材料には、好気性微生物、還元剤以外の添加剤を添加することができる。
【0045】
添加剤は特に限定されず、好気性微生物の活性を失活させなければ特に限定されず、フィラー、分散剤、界面活性剤、pH調整剤、pH緩衝剤等多様なものを使用可能であ。添加剤は1種類のみ単独で使用することもできるし、2種類以上を用いることもできる。
【0046】
添加剤として、生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)以外の他の好気性微生物の栄養源を添加することも可能である。栄養源は特に限定されず、有機炭素源(糖類、デンプン等)、無機炭素源(炭酸ナトリウム等)、有機窒素源(アミノ酸、ペプトン等)、無機窒素源(アンモニウム塩、硝酸塩等)、無機栄養源(P、S、K、Mg、Fe、Na等)を1種以上用いることができる。ただし、無機栄養源のうち、カルシウム等のセメントに含まれる無機栄養源は、別途添加する必要はない。
【0047】
栄養源は、好気性微生物の代謝により腐食性物質を排出しないものが好ましい。栄養源としての炭素源(糖類等)が有機酸(酢酸、ピルビン酸)のような腐食性物質の原因となる場合は、栄養源に窒素源を添加し、微生物が産出するアンモニアにより有機酸をマスクしてもよい。特に、バチルス属細菌を使用する場合に効果的である。
【0048】
好気性微生物が芽胞形成微生物の場合には、栄養源として発芽誘導物質を添加することもできる。発芽誘導物質は特に限定されないが、例えば芽胞形成微生物がバチルス属細菌の場合は、L-アラニン、L-バリンなどのアミノ酸がある。更に、バチルス属細菌が納豆菌の場合は、ビオチンのような補酵素を栄養源として添加することもできる。
【0049】
他の好気性微生物の栄養源は、セメント硬化体の強度発現に影響する栄養源も含まれることから、その配合割合は、例えば、水を除く混和材料の総質量に対して10%以下であり、5質量%以下であることが好ましい。
【0050】
したがって、本発明の混和材料によれば、生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)が好気性微生物の栄養源として添加されていることから、化学合成されたPLA(ポリ乳酸)よりも比表面積が大きく、したがって得られるセメント組成物の硬化体(セメント硬化体)における資化効率が高くなる。また、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)はグルコースのように水に溶解して溶出、分解する懸念もなく、また、セメントの水和反応を阻害する虞もなく、得られるセメント組成物の硬化体(セメント硬化体)の強度発現にさほど影響しない。
【0051】
よって、栄養源の資化効率が従来よりも向上することで、好気性微生物の代謝によるセメント硬化体中の溶存酸素の消費に基づく鋼材の腐食防止効果と、好気性微生物の代謝による二酸化炭素の放出、この放出された二酸化炭素とセメント硬化体から水に溶解したカルシウムとの反応による炭酸塩の析出によるひび割れ修復効果と、がさらに向上する。
【0052】
<セメント組成物>
本発明のセメント組成物は、本発明の混和材料と、セメントと、水と、を含む。このうち、混和材料については、上述の混和材料と変わるところはないため、ここではその説明を省略する。
【0053】
セメント組成物中の本発明の混和材料の配合量は、例えば、セメント組成物1m3あたりの微生物の細胞数(cells)が1010~1015/m3となる配合量であり、1012~1013/m3となる配合量であることが好ましい。
【0054】
また、セメント組成物中の本発明の混和材料の配合量は、例えば、セメント組成物1m3あたりの生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の量が0.3~10kg/m3となる配合量であり、0.5~8kg/m3となる配合量であることが好ましい。
【0055】
[セメント]
セメントは、水で練ったときに硬化性を示す無機質接合材であり、本発明においては、水硬性セメントを用いる。水硬性セメントとしては、ポルトランドセメント(JIS R5210)、水硬性石灰、ローマンセメント、天然セメントなどの単味セメントを用いてもよく、石灰混合セメント、混合ポルトランドセメントなどの混合セメント(JIS R5211、R5212、R5213)を用いてもよい。
【0056】
[水]
上記セメント組成物に配合される水としては、純水に限られず、水道水、河川水、湖沼水、海水も用いることもできる。
【0057】
[任意成分]
また、セメント組成物は、任意成分として骨材を含む。骨材は、一般にコンクリートの製造に用いられ、セメント組成物の水和反応による発熱抑制、収縮の抑制、セメント使用量を削減してコスト削減するために添加される。骨材は、粗骨材と細骨材に分けられ、粗骨材は5mm目ふるいに質量で85%以上留まるものであり、細骨材は5mm目ふるいを通過し、10mm目ふるいを質量で100%通過するものである。
【0058】
また、任意にAE剤(空気連行剤)、減水剤(AE減水剤、減水剤、高性能AE減水剤等)、流動化剤、凝結・硬化調節剤、急結剤、防錆剤、防水剤などの混和剤を含んでいてもよい。
【0059】
セメント組成物は、例えば、セメントおよび任意に他の粉体成分を粉体混合したのち、この粉体混合物に水、本発明の混和材料を添加して混練してペースト状とし、必要により細骨材、粗骨材を混合することにより調製することができる。
【0060】
<セメント硬化体>
本発明のセメント硬化体は、鋼材が上記本発明のセメント組成物に埋設された状態で該セメント組成物が硬化されてなる。
【0061】
[鋼材]
鋼材は特に限定されないが、例えば、鉄筋、鉄骨、丸鋼、異形棒鋼、異形鉄筋、PC鋼材、溶融金網等多様なものを含み、その材質も特に限定されない。
【0062】
鋼材をセメント組成物に埋設させるには、鋼材が配置された型枠にセメント組成物を注入する方法、鋼材の表面にセメント組成物を塗布する方法、鋼材の表面にセメント組成物を吹き付ける方法など、種々の方法を用いることができる。
【0063】
鋼材をセメント組成物に埋設させた後、養生などの工程を経てセメント組成物が硬化し、本発明のセメント硬化体が得られる。
【0064】
<セメント硬化体の製造方法>
本発明の腐食が抑制されたセメント硬化体の製造方法は、
図4に示すように、埋設工程(S110)と、養生工程(S120)と、を有する。
【0065】
[埋設工程(S110)]
本工程では、上記本発明のセメント組成物に鋼材を埋設させる。セメント組成物、鋼材については上述の内容と変わるところがないので、ここではその説明を省略する。
【0066】
鋼材をセメント組成物に埋設させるには、上記種々の方法を用いることができ、例えば、鋼材が配置された型枠にセメント組成物を注入する場合は、まず、セメント硬化体の求められる形状に応じて型枠を配置し、その中に鉄筋を張り巡らせ、あるいは鉄筋を張り巡らせた後にその周囲に型枠を配置する。その後、セメント組成物を型枠内に注入し、鉄筋(鋼材)をセメント組成物に埋設させる。
【0067】
また、鋼材の表面にセメント組成物を塗布する場合は、鉄骨や金網の表面にコテなどでセメント組成物を塗り広げ、鉄骨や金網をセメント組成物に埋設させる。鋼材の表面にセメント組成物を吹き付ける場合は、例えば、板状の鋼材や金網の表面にセメント組成物を吹付け、この鋼材や金網をセメント組成物に埋設させる(以上、埋設工程(S110))。
【0068】
[養生工程(S120)]
本工程では、セメント組成物を養生し、セメント硬化体を得る。
【0069】
鋼材に塗布され、吹付けられ、あるいは型枠に注入されたセメント組成物は、必要な圧縮強度が得られるまで養生することで硬化し、セメント硬化体が得られる。養生は、気中養生、水中養生など、従来公知の条件で行うことができる(以上、養生工程(S120))。
【0070】
以上、本発明の腐食が抑制されたセメント硬化体の製造方法によれば、鋼材がセメント硬化体内に埋設されており、このセメント硬化体内には好気性微生物と共にその栄養源として生物工学的手法により製造されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)が含まれている。したがって、栄養源の資化効率が従来よりも向上しており、栄養源の資化効率が従来よりも向上することで、好気性微生物の代謝によるセメント硬化体中の溶存酸素の消費に基づく鋼材の腐食防止効果と、好気性微生物の代謝による二酸化炭素の放出、この放出された二酸化炭素とセメント硬化体から水に溶解したカルシウムとの反応による炭酸塩の析出によるひび割れ修復効果と、がさらに向上する。
【実施例0071】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0072】
本実施例では、好気性微生物として納豆菌を採用し、その栄養源としては従来のポリ乳酸(PLA)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート/3-ヒドロキシバリレート)共重合体(PHBV、生物工学的手法により製造されたPHA)をそれぞれ用いた場合に、納豆菌が高pH環境においてその微生物代謝が抑制された後、塩酸を用いてpHを9.0程度まで低下させた後の納豆菌の活性の変化を検証した。なお、高pH環境において微生物代謝を抑制させた後に塩酸などでpHを9.0程度に低下させる操作は、セメント組成物打設直後の高pHのセメント硬化体の環境に置かれた後、時間の経過によりセメント硬化体表面の中性化し、あるいは生じた亀裂から水などが浸入した状況での微生物の活性の変化をモニターすることを意図している。
【0073】
1.納豆菌の培養
前培養として試験管に納豆菌(品名:純粋培養の納豆菌、宮城野納豆製造所製)の原液0.8mL、LB培地0.5g、蒸留水20mLを分取し、表面を市販の食品用ラップフィルムで覆い、20の温度で24時間以上振盪培養を行った。なお、前記納豆菌の原液50mL中には、3~4億個の納豆菌が含まれている。
【0074】
本培養は、蒸留水500mLにS7培地を上から順に蒸留水に溶解させて1000mLにメスアップして撹拌し、ここに前培養液1mLを植菌し、エアポンプおよびエアチューブを用いたエアレーションを行いつつ、20℃の恒温室で24時間の培養を行った。
なお、S7培地の組成は以下のとおりである。
S7 Base(※1) 85.5ml
1M MOPS(3-(N-morpholino)propanesulfonic acid)pH7.0 10ml
1M L-sodium glutamate 2ml
MT mix(※2) 1ml
25%(W/V)glucose 4ml
(※1 S7 Baseの内訳
K2HPO4 0.17g
KH2PO4 0.13g
(NH4)2SO4 0.27g/200ml)
(※2 MT mixの内訳
1M HCl 2ml
MgCl2・6H2O 40.6g
CaCl2・2H2O 10.29g
MnCl2・4H2O 0.99g
ZnCl2 13.6mg
FeCl3・6H2O 135mg
Thiamine・HCl 67.5mg/1L ⇒ フィルターろ過滅菌)
【0075】
2.高pH→pH9.0への低下後の微生物活性の変化の観察
試験管に本培養後の納豆菌の培養液30mLを添加し、さらに水酸化カルシウムを添加してpHを11.81に調整し、ここに生物工学的手法により製造されたPHAとしてPHBV(品名:PHBV粉体、製造者名:ハイケム株式会社、粒径:0.5μm以上30μm以下)1.0gを添加した。本サンプルを実施例1とする。その後、塩酸を添加してpHを9.0に調整し、塩酸を添加した時点を0時間として900時間後まで試験管中の溶存酸素濃度を測定した。
【0076】
さらに、PHBVに代えてポリ乳酸(PLA)(品名:PLA(ポリ乳酸)、製造者名:ハイケム株式会社、粒径:約3.5mm)を1.0g添加したことを除き、実施例1と同様の試験を行ったサンプルを比較例1とし、PHBVおよびその代替物を添加しなかったことを除き、実施例1と同様の試験を行ったサンプルを比較例2とした。なお、いずれのサンプルの試験管にも、本培養の際の培養液由来のグルコースが含まれている。
【0077】
溶存酸素濃度の測定は、光学式酸素センサー(品名:OXY―1 ST/ST trace、製造者名:PreSens社)を用いて行った。
【0078】
結果を
図1に示す。
図1は、高pH環境において微生物代謝が抑制された後、pHを9.0に低下させた後の、実施例1および比較例1-2のサンプル溶液中の溶存酸素濃度の経時的変化を示すグラフである。
【0079】
図示のように、48時間後に実施例1(PHBV)の溶液の溶存酸素濃度が3.40mg/Lに大きく低下した一方、比較例1(PLA)の溶液の溶存酸素濃度は120時間後でも5.17mg/Lと高く、比較例2(無し)の溶液の溶存酸素は216時間後でも8.40mg/Lと高かった。実施例1および比較例1の溶液の溶存酸素濃度の低下は、塩酸を用いてpHを低下させたことにより、納豆菌が再代謝活動を開始したためと考えられるが、実施例1は比較例1の1/2以下の経過時間で溶液の溶存酸素濃度が比較例1よりも低下していることから、生物工学的手法により製造されたPHA(PHBV)は化学合成されたポリ乳酸(PLA)よりも資化効率が高いことが分かる。
【0080】
実施例1では48時間後、比較例1では120時間後、および比較例2では216時間後に各サンプル溶液中にエアレーションを行い、大気中の気体酸素を溶解させることにより溶存酸素濃度が一旦上昇するが、エアレーションを停止すると好気呼吸に伴い溶存酸素濃度は低下し始める様子が観察される。
【0081】
図2は、
図1と同じ試験の、縦軸をサンプル溶液中の呼吸率に変換したグラフである。
【0082】
ここで、本発明において呼吸率とは、1秒に1回のサンプリング速度で5分間測定した溶存酸素濃度の経時変化を用いて、微生物が1秒間に消費する溶存酸素量を算出し、5分間の平均値を算出した値をいうものとする。
【0083】
図示のように、比較例2では、216時間後に呼吸率の上昇が確認された後、288時間後に最大値を示し、その後は呼吸率は低下し、0.002mg/L・s以下の低い値を示した。比較例1では、呼吸率が48時間後に上昇を開始し、120時間後に最大値を示し、その後は0.004mg/L・s前後の値を示している。実施例1では、呼吸率が0時間後から上昇を開始し、そのまま上昇を続けて216時間後にピークを示し、0.006前後の値を示した後に900時間後にさらに上昇している。
【0084】
この結果は、生物工学的手法により製造されたPHAとしてPHBVを添加した実施例1が、ポリ乳酸(PLA)を添加した比較例1よりも微生物の活性が高いことを示す。その理由は、生物工学的手法により製造されたPHBVが化学合成により製造されたポリ乳酸(PLA)よりも粒径が小さく、溶液との接触面積が大きくなり一次分解が進みやすく、その後納豆菌により分解されやすいためと考えられる。
【0085】
図3は、
図1と同じ試験の、縦軸を呼吸率とし、横軸をpHとしたグラフである。
【0086】
図示のように、実施例1、比較例1-2のいずれのサンプルにおいても、pHが低下するにつれて呼吸率が上昇している。そして、比較例2よりも、生分解性プラスチック(PLA、PHBV)をそれぞれ添加した比較例1、実施例1の方が呼吸率は高い傾向にある。特に、実施例1は比較例1よりも呼吸率が高い傾向を示している。
【0087】
これは、PHBV(粒径0.5μm以上30μm以下)とPLA(粒径約3.5mm)の粒径の違いが寄与していると考えられる。
本発明の混和材料は、セメントに混合する用途に用いることができる。また、本発明の混和材料を含むセメント組成物を硬化させてなるセメント硬化体、および本発明のセメント硬化体の製造方法により得られたセメント硬化体は、建築用構造体として広く用いることができる。特に、本発明の混和材料が海洋分解性の生物工学的手法により製造されたPHAを含む場合には、セメント硬化体は、海洋の浮体構造物の用途、海洋の干満帯に儲けられる建築用構造体の用途に好適に用いることができる。