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特開2025-1402変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、変位量計測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001402
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、変位量計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
G01B11/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100963
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000142067
【氏名又は名称】株式会社共和電業
(71)【出願人】
【識別番号】591038299
【氏名又は名称】株式会社ヒカリ
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176337
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 芳巳
(72)【発明者】
【氏名】東山 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】浅井 大介
(72)【発明者】
【氏名】菅 倫明
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA03
2F065AA07
2F065AA65
2F065BB27
2F065CC14
2F065FF01
2F065FF42
2F065JJ03
2F065JJ09
2F065JJ26
2F065QQ01
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ31
2F065QQ41
(57)【要約】
【課題】計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、変位量計測装置を提供する。
【解決手段】変位量計測システムは、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測装置と、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影する撮像装置と、を備える。変位量計測装置は、2次元画像内の2次元格子パターンを含む解析領域における2次元格子パターンの変位量を算出する算出処理と、変位量が所定条件を満たしている場合に、変位量に基づいて解析領域を移動する領域移動処理と、を実行する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測装置と、
前記計測対象物に設置された前記2次元格子パターンを撮影する撮像装置と、を備える変位量計測システムであって、
前記変位量計測装置は、
前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における前記2次元格子パターンの変位量を算出する変位量算出処理と、
前記変位量が所定条件を満たしている場合に、前記変位量に基づいて前記解析領域を移動する領域移動処理と、を実行する
変位量計測システム。
【請求項2】
前記変位量計測装置は、
前記領域移動処理において、前記変位量の絶対値が閾値以上である場合に前記解析領域を移動する
請求項1に記載の変位量計測システム。
【請求項3】
前記変位量計測装置は、
前記領域移動処理において、前記変位量が0以外の場合に前記解析領域を移動する
請求項1に記載の変位量計測システム。
【請求項4】
計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測プログラムであって、
前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における前記2次元格子パターンの変位量を算出する変位量算出処理と、
前記変位量が所定条件を満たしている場合に、前記変位量に基づいて前記解析領域を移動する領域移動処理と、コンピュータに実行させる
変位量計測プログラム。
【請求項5】
計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測方法であって、
前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における前記2次元格子パターンの変位量を算出する変位量算出処理と、
前記変位量が所定条件を満たしている場合に、前記変位量に基づいて前記解析領域を移動する領域移動処理と、を含む
変位量計測方法。
【請求項6】
計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測装置であって、
前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における前記2次元格子パターンの変位量を算出する変位量算出処理と、
前記変位量が所定条件を満たしている場合に、前記変位量に基づいて前記解析領域を移動する領域移動処理と、を実行する
変位量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、および、変位量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁および鉄塔等の計測対象物の点検作業では、例えば、計測対象物の面内方向の変位量が計測される。特許文献1は、計測対象物の面内方向の変位量計測方法の一例を開示している。特許文献1に開示される変位量計測方法では、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する。2次元画像は、例えば、撮像装置によって撮影される。2次元画像内には、2次元格子パターンを含む解析領域が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4831703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記変位量計測方法では、計測対象物に対する撮像装置の位置が固定されている。このため、計測対象物の面内方向の変位量が大きい場合、換言すれば、計測対象物に設置される2次元格子パターンの変位量が大きい場合、解析領域の一部が2次元格子パターンから外れることがある。解析領域の一部が2次元格子パターンから外れた場合、解析領域内の2次元格子パターンの格子の数が減少するため、計測対象物の表面の面内方向の変位量を正しく計測することができない。また、2次元格子パターンは、計測範囲に応じたサイズが必要であり、設置するためのスペースが狭い場合、特別な取付治具が必要となる。このため、コストも高くなるといった付随的な課題も存在する。
【0005】
本発明は、計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、および、変位量計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る変位量計測システムは、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測装置と、前記計測対象物に設置された前記2次元格子パターンを撮影する撮像装置と、を備える変位量計測システムであって、前記変位量計測装置は、前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における前記2次元格子パターンの変位量を算出する変位量算出処理と、前記変位量が所定条件を満たしている場合に、前記変位量に基づいて前記解析領域を移動する領域移動処理と、を実行する。
【0007】
上記変位量計測システムによれば、2次元格子パターンの変位量が所定条件を満たしている場合には、2次元格子パターンの変位に追従するように解析領域が移動する。計測対象物の面内方向の変位量が大きい場合であっても、解析領域の一部が2次元格子パターンから外れることが抑制される。このため、計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる
【0008】
本発明の第2観点に係る変位量計測システムは、第1観点に係る変位量計測システムであって、前記変位量計測装置は、前記領域移動処理において、前記変位量の絶対値が閾値以上である場合に前記解析領域を移動する。
【0009】
上記変位量計測システムによれば、2次元格子パターンの変位量の絶対値が閾値以上である場合、換言すれば、2次元格子パターンの変位量がある程度大きい場合、2次元格子パターンの変位に追従するように解析領域が移動する。このため、解析領域の一部が2次元格子パターンから外れることが抑制される。
【0010】
本発明の第3観点に係る変位量計測システムは、第1観点に係る変位量計測システムであって、前記変位量計測装置は、前記領域移動処理において、前記変位量が0以外の場合に前記解析領域を移動する。
【0011】
上記変位量計測システムによれば、2次元格子パターンの変位量が僅かの場合であっても、2次元格子パターンの変位に追従するように解析領域が移動する。このため、解析領域の一部が2次元格子パターンから外れることがより一層抑制される。
【0012】
本発明の第4観点に係る変位量計測プログラムは、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測プログラムであって、前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における前記2次元格子パターンの変位量を算出する変位量算出処理と、前記変位量が所定条件を満たしている場合に、前記変位量に基づいて前記解析領域を移動する領域移動処理と、コンピュータに実行させる。
【0013】
上記変位量計測プログラムによれば、第1観点に係る変位量計測システムと同様の効果が得られる。
【0014】
本発明の第5観点に係る変位量計測方法は、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測方法であって、前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における前記2次元格子パターンの変位量を算出する変位量算出処理と、前記変位量が所定条件を満たしている場合に、前記変位量に基づいて前記解析領域を移動する領域移動処理と、を含む。
【0015】
上記変位量計測方法によれば、第1観点に係る変位量計測システムと同様の効果が得られる。
【0016】
本発明の第6観点に係る変位量計測装置は、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測装置であって、前記2次元画像内の前記2次元格子パターンを含む解析領域における前記2次元格子パターンの変位量を算出する変位量算出処理と、前記変位量が所定条件を満たしている場合に、前記変位量に基づいて前記解析領域を移動する領域移動処理と、を実行する。
【0017】
上記変位量計測装置によれば、第1観点に係る変位量計測システムと同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に関する計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、および、変位量計測装置によれば、計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の変位量計測システムの概略構成図。
図2】2次元格子パターンが設置された計測対象物の正面図。
図3】2次元格子画像の一例を示す図。
図4図3の2次元格子画像において、2次元格子パターンがX軸の方向に変位した状態の図。
図5図1の制御装置に構築される機能ブロックに関する図。
図6】面内変位量算出処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図7】領域移動処理に関する図。
図8】変形例の変位量計測システムが実行する面内変位量算出処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る変位量計測装置、および、これを備える変位量計測システムについて説明する。
【0021】
<1.変位量計測システムの全体構成>
図1は、変位量計測システム10(以下では、「システム10」という)の概略構成図である。システム10は、計測対象物100に設置された2次元格子パターン200(図2参照)を撮影した2次元画像(以下では、「2次元格子画像」という)を用いて、計測対象物100の面内方向の変位量を計測するシステムである。計測対象物100は、例えば、インフラ構造物である。インフラ構造物は、例えば、高架道路、橋梁、鉄橋、または、トンネルである。変位量計測システム10は、変位量計測装置20と、撮像装置30と、を含む。
【0022】
<2.変位量計測システムのハード構成>
変位量計測装置20は、本体21、入力装置22、および、出力装置23を有する。本体21は、記憶装置21Aおよび制御装置21Bを有する。記憶装置21Aおよび制御装置21Bは、バス24を介して通信できるように接続される。記憶装置21Aは、例えば、ハードディスクまたはソリッドステートドライブである。記憶装置21Aは、計測対象物100の面内方向の変位量の算出に関する1または複数のアプリケーションソフトウェア(以下では、「変位量算出ソフト」という)を記憶する。
【0023】
制御装置21Bは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、後述する機能を実行する。制御装置21Bは、入力装置22からの要求に応じて記憶装置21Aに記憶されている面内変位量算出ソフトを実行する。制御装置21Bが面内変位量算出ソフトを実行することによって、変位量計測装置20には、後述する1または複数の機能ブロックが構築される。
【0024】
入力装置22は、例えばキーボードであり、本体21と接続される。出力装置23は、例えば、液晶ディスプレイであり、本体21から出力された信号を受信できるように、本体21と接続される。なお、本体21、入力装置22、および、出力装置23は、ノート型パーソナルコンピュータのように、一体的に構成されてもよい。
【0025】
撮像装置30は、2次元格子画像を撮影する撮影処理を実行できるように構成される。本実施形態では、撮像装置30は、カメラである。本実施形態では、撮像装置30は、変位量計測装置20と無線通信または有線通信できるように接続される。撮像装置30が撮影した2次元格子画像は、変位量計測装置20に送信され、例えば、記憶装置21Aに記憶される。なお、撮像装置30は、タブレット端末に搭載されるカメラ、または、スマートフォンに搭載されるカメラであってもよい。
【0026】
<3.2次元格子パターン>
図2に示される計測対象物100には、1または複数の2次元格子パターン200が設置される。2次元格子パターン200の具体的な構成は、任意に選択可能である。本実施形態では、2次元格子パターン200は、計測対象物100に貼り付けられるように構成されるシール部材に印刷される。2次元格子パターン200は、計測対象物100に直接描かれてもよく、計測対象物100に固定される板等の部材に印刷または刻印されてもよい。
【0027】
図3は、2次元格子画像300を示す図である。計測対象物100の面内方向の変位量の計測においては、2次元格子画像300内に解析領域50が設定され、解析領域50における2次元格子パターン200の平均変位量が算出される。
【0028】
図4は、計測対象物100がX軸の正の方向に変位した状態の2次元格子画像300の一例を示す図である。システム10においては、計測対象物100に対する撮像装置30の位置が固定されている。このため、計測対象物100の面内方向の変位量が大きい場合、換言すれば、計測対象物100に設置される2次元格子パターン200の変位量が大きい場合、解析領域50の一部が2次元格子パターン200から外れることがある。このため、計測対象物100の面内方向の変位量を正しく計測することができない。本実施形態のシステム10は、計測対象物100の面内方向の変位量が大きい場合であっても、計測対象物100の面内方向の変位量を精度よく検出できるように構成される。
【0029】
<4.変位量計測システムのソフト構成>
図5に示されるように、制御装置21Bが記憶装置21A(図1参照)に記憶されている変位量算出ソフトを実行することによって構成される機能ブロックは、例えば、解析領域抽出部41、変位量算出部42、総計変位量算出部43、および、領域移動部44を含む。変位量計測装置20にこれらの機能ブロックが構築されることによって、計測対象物100の面内方向の変位量を算出する面内変位量算出処理が実行される。以下では、各機能ブロックの詳細について説明する。
【0030】
<4-1.解析領域抽出部>
解析領域抽出部41は、2次元格子画像300(図3参照)から2次元格子パターン200を含む領域を解析領域50として抽出する解析領域抽出処理を実行する。解析領域50は、2次元格子画像300のうちの2次元格子パターン200が写っている領域の全体であってもよく、一部であってもよい。本実施形態では、解析領域抽出部41は、解析領域抽出処理において、2次元格子画像300のうちの2次元格子パターン200が写っている領域の一部を解析領域50として抽出する。解析領域50の形状は、任意に選択可能である。本実施形態では、解析領域50の形状は、正方形である。解析領域50の形状は、長方形、ひし形、三角形、五角形以上の多角形、円、または、楕円であってもよい。
【0031】
<4-2.変位量算出部>
変位量算出部42は、解析領域50における2次元格子パターン200の平均変位量を算出する変位量算出処理を実行する。例えば、撮像装置30によって撮影される画像が連続した静止画である場合、変位量算出部42は、変位量算出処理において、静止画毎の解析領域50内の2次元格子パターン200の平均変位量を算出する。例えば、撮像装置30によって撮影される画像が動画である場合、変位量算出部42は、変位量算出処理において、1コマ毎の解析領域50内の2次元格子パターン200の平均変位量を算出する。変位量算出処理においては、1つの静止画、または、動画の1コマにおける解析領域50内の1画素毎の変位量を算出し、全ての画素の変位量の平均値が平均変位量として算出される。変位量算出部42は、変位量算出処理において、解析領域50内における2次元格子パターン200のX軸の方向の平均変位量dAx、および、Y軸の方向の平均変位量dAyを算出する。なお、平均変位量dAx、dAyの算出は、例えば、特許文献1等に記載の公知の方法を用いて実施できる。
【0032】
<4-3.総計変位量算出部>
総計変位量算出部43は、2次元格子パターン200の総計の変位量を算出する総計変位量算出処理を実行する。総計変位量算出部43は、総計変位量算出処理において、変位量算出処理によって算出された平均変位量dAx、dAyを、2次元格子パターン200の累積の変位量に加算することによって、2次元格子パターン200の総計の変位量を算出する。
【0033】
<4-4.領域移動部>
領域移動部44は、変位量算出処理によって算出された平均変位量dAx、dAyが所定条件を満たしている場合に、平均変位量dAx、dAyに基づいて解析領域50を移動する領域移動処理を実行する。本実施形態では、領域移動部44は、領域移動処理において、平均変位量dAxが予め定められる閾値XA以上である場合に、解析領域50が2次元格子パターン200に追従するように、解析領域50を平均変位量dAx分、X軸の方向に移動させる。本実施形態では、領域移動部44は、領域移動処理において、平均変位量dAyが予め定められる閾値XB以上である場合に、解析領域50が2次元格子パターン200に追従するように、解析領域50を平均変位量dAy分、Y軸の方向に移動させる。なお、領域移動部44は、変位量算出処理によって算出された解析領域50内の任意の画素の変位量が所定条件を満たしている場合に、変位量に基づいて解析領域50を移動する領域移動処理を実行してもよい。
【0034】
計測対象物100の面内方向の変位量が大きく、解析領域50の一部が2次元格子パターン200から外れることがあると想定される場合、閾値XAおよび閾値XBは、2次元格子パターン200の大きさに基づいて、決められることが好ましい。ただし、閾値XAおよび閾値XBは、2次元格子パターン200から外れない値に設定する必要がある。例えば、2次元格子パターン200の面積と解析領域50の面積との差が大きい場合、換言すれば、2次元格子パターン200が解析領域50に対して十分大きい場合、計測対象物100の面内方向の変位量が大きい場合であっても、解析領域50の一部が2次元格子パターン200から外れる可能性は低い。一方、2次元格子パターン200の面積と解析領域50の面積との差が小さい場合、計測対象物100の面内方向の変位量が小さい場合であっても、解析領域50の一部が2次元格子パターン200から外れる可能性が高い。このため、閾値XAおよび閾値XBは、用いられる2次元格子パターン200の面積が大きい程、高い値に設定されることが好ましい。換言すれば、閾値XAおよび閾値XBは、用いられる2次元格子パターン200の面積が小さい程、低い値に設定されることが好ましい。
【0035】
<5.面内変位量算出処理>
図6を参照して、面内変位量算出処理の処理手順の一例について説明する。
制御装置21Bは、例えば、記憶装置21Aに任意の2次元格子画像300が保存され、かつ、ユーザからの要求があった場合に面内変位量算出処理を開始する。
【0036】
ステップS11では、制御装置21Bは、1枚目の2次元格子画像300、または、1コマ目の2次元格子画像300から2次元格子パターン200の基準変位を設定する。
【0037】
ステップS12では、制御装置21Bは、2次元格子パターン200の平均変位量dAx、dAyを算出する。
【0038】
ステップS13では、制御装置21Bは、平均変位量dAxの絶対値が閾値XA以上であるか否か、および、平均変位量dAyの絶対値が閾値XB以上であるか否かを判定する。ステップS13が肯定判定の場合、すなわち、平均変位量dAxの絶対値が閾値XA以上であること、および、平均変位量dAyの絶対値が閾値XB以上であることの少なくとも一方を満たす場合、制御装置21Bは、ステップS14の処理を実行する。
【0039】
ステップS14では、制御装置21Bは、平均変位量dAxおよび平均変位量dAyに基づいて、解析領域50が2次元格子パターン200に追従するように、解析領域50を移動する。制御装置21Bは、平均変位量dAxの絶対値が閾値XA以上である場合には、平均変位量dAx分、解析領域50をX軸の方向に移動する。制御装置21Bは、平均変位量dAyの絶対値が閾値XB以上である場合には、平均変位量dAy分、解析領域50をY軸の方向に移動する。ステップS14では、制御装置21Bは、平均変位量dAxおよび平均変位量dAyの算出結果に応じて、解析領域50をX軸の方向のみ、Y軸の方向のみ、または、X軸の方向およびY軸の方向に移動させる。例えば、平均変位量dAxの絶対値が閾値XA以上であり、平均変位量dAyの絶対値が閾値XB未満であり、かつ、平均変位量dAxが正の数である場合、図7に示されるように、2次元格子パターン200は、X軸の正の方向に大きく変位している。このため、図7の矢印で示されるように、制御装置21Bは、解析領域50を平均変位量dAx分、X軸の正の方向に移動する。
【0040】
ステップS15では、制御装置21Bは、2次元格子パターン200の基準変位を解析領域50を移動させた状態の2次元格子画像300における解析領域50内の変位に変更する。
【0041】
ステップS16では、制御装置21Bは、累積変位量に平均変位量dAxおよび平均変位量dAyを加算して、2次元格子パターン200の総計の変位量を算出する。
【0042】
ステップS17では、制御装置21Bは、平均変位量dAxおよび平均変位量dAyを0にする。
【0043】
一方、ステップS13が否定判定の場合、すなわち、平均変位量dAxの絶対値が閾値XA未満であり、かつ、平均変位量dAyの絶対値が閾値XB未満である場合、制御装置21Bは、ステップS18の処理を実行する。ステップS18では、制御装置21Bは、2次元格子画像300における解析領域50の位置を維持する。
【0044】
ステップS19では、制御装置21Bは、累積変位量に平均変位量dAxおよび平均変位量dAyを加算して、2次元格子パターン200の総計の変位量を算出する。
【0045】
ステップS20では、制御装置21Bは、ユーザから面内変位量算出処理の終了を要求する信号が入力されたか否かを判定する。ステップS20が肯定判定の場合、制御装置21Bは、面内変位量算出処理を終了する。ステップS21が否定判定の場合、制御装置21Bは、ステップS12以降の処理を繰り返し実行する。なお、ステップS20では、制御装置21Bは、予め設定される所定時間が経過したか否かを判定してもよい。ステップS20が肯定判定の場合、すなわち、所定時間が経過している場合、制御装置21Bは、面内変位量算出処理を終了する。ステップS21が否定判定の場合、すなわち、所定時間が経過していない場合、制御装置21Bは、ステップS12以降の処理を繰り返し実行する。
【0046】
<6.実施形態の効果>
以上のように構成されたシステム10によれば、次の効果を得ることができる。
【0047】
<6-1>
2次元格子パターン200の平均変位量dAx、dAyが所定条件を満たしている場合には、ステップS14の領域移動処理において、2次元格子パターン200の変位に追従するように解析領域50が移動する。計測対象物100の面内方向の変位量が大きい場合であっても、解析領域50の一部が2次元格子パターン200から外れることが抑制される。このため、計測対象物100の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【0048】
<6-2>
従来では、2次元格子パターンは、計測範囲に応じたサイズが必要であり、設置するためのスペースが狭い場合、特別な取付治具が必要となる。このため、コストも高くなる。本実施形態では、2次元格子パターン200の変位に追従するように解析領域50が移動するため、小さいサイズの2次元格子パターン200を用いることができる。このため、2次元格子パターン200のコストを低減できる。また、2次元格子パターン200を設置するためのスペースが狭い場合であっても、特別な取付治具等を使用せずに、2次元格子パターン200を容易に配置できる。さらには、計測対象物100が屋外に設置されるものであっても、2次元格子パターン200に作用する風等の外的要因を低減できる。
【0049】
<7.変形例>
上記実施形態は本発明に関する変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、変位量計測装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する変位量計測システム、変位量計測プログラム、変位量計測方法、変位量計測装置は、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、各実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。なお、以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0050】
<7-1>
上記実施形態において、面内変位量算出処理の具体的な方法は、変更可能である。図8は、変形例の変位量計測システム10によって実行される面内変位量算出処理の一例を示すフローチャートである。図8に示される面内変位量算出処理は、図6に示される面内変位量算出処理と比較して、ステップS13の処理に代えてステップS21の処理を有する点において異なる。
【0051】
ステップS21では、制御装置21Bは、平均変位量dAxが0以外であるか否か、および、平均変位量dAyが0以外であるか否かを判定する。ステップS21が肯定判定の場合、すなわち、平均変位量dAxが0以外であること、および、平均変位量dAyが0以外であることの少なくとも一方を満たす場合、制御装置21Bは、ステップS14の処理を実行する。この変形例の変位量計測システムによれば、2次元格子パターン200の平均変位量dAx、dAyが僅かの場合であっても、2次元格子パターン200の変位に追従するように解析領域50が移動する。このため、解析領域50の一部が2次元格子パターン200から外れることがより一層抑制される。
【0052】
<7-2>
上記実施形態では、制御装置21Bは、平均変位量dAxの絶対値が閾値XA以上である場合には、平均変位量dAx分、解析領域50をX軸の方向に移動させたが、平均変位量dAxよりも小さい変位量分、または、平均変位量dAxよりも大きい変位量分、解析領域50をX軸の方向に移動させてもよい。同様に、制御装置21Bは、平均変位量dAyの絶対値が閾値XB以上である場合には、平均変位量dAy分、解析領域50をY軸の方向に移動させたが、平均変位量dAyよりも小さい変位量分、または、平均変位量dAyよりも大きい変位量分、解析領域50をY軸の方向に移動させてもよい。ようするに、制御装置21Bは、平均変位量dAx、dAyが所定条件を満たしている場合、解析領域50が2次元格子パターン200に追従するように解析領域50を移動させればよい。
【0053】
<7-3>
上記実施形態では、解析領域50は、解析領域抽出部41によって設定されたが、ユーザが解析領域50を設定してもよい。
【0054】
<7-4>
上記実施形態では、変位量計測装置20は、撮像装置30と無線通信または有線通信できるように接続されていたが、変位量計測装置20と撮像装置30とは、通信可能に接続されていなくてもよい。この場合、撮像装置30によって撮影された2次元格子画像300は、例えば、USBフラッシュメモリまたはSDメモリカード等の補助記憶装置に保存される。変位量計測装置20は、補助記憶装置から2次元格子画像300を取得することによって、面内変位量算出処理を実行する。
【符号の説明】
【0055】
10:変位量計測システム
20:変位量計測装置
30:撮像装置
50:解析領域
60:サブ領域
100:計測対象物
200:2次元格子パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8