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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140246
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】防護システム
(51)【国際特許分類】
   F41H 5/08 20060101AFI20250919BHJP
   F41H 1/00 20060101ALI20250919BHJP
   F42B 12/52 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
F41H5/08
F41H1/00
F42B12/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039515
(22)【出願日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】笹本 幸一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼塚 昭夫
(57)【要約】
【課題】設置場所が制限され難く、防護を行うことができる防護システムを提供する。
【解決手段】防護システム10は、所定方向の一方側に展開可能である幕体23と、幕体23を所定方向の一方側に展開させるための駆動力を、移動機構などを用いて間接的に幕体23に付与可能である火薬式のガス発生器50と、ガス発生器50の駆動力によって幕体23を移動させる移動機構と、を備える。幕体23の一部は移動機構の一部に接続されており、幕体23は、移動機構が動作した場合に展開する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向の一方側に展開可能である幕体と、
前記幕体を前記一方側に展開させるための駆動力を前記幕体に付与可能である火薬式のガス発生器または点火器とを備えることを特徴とする防護システム。
【請求項2】
前記幕体は、防弾機能および防刃機能を有することを特徴とする請求項1に記載の防護システム。
【請求項3】
前記幕体は、展開する前の状態が蛇腹状に折り畳まれた状態またはロール状に巻き取られた状態であることを特徴とする請求項1または2に記載の防護システム。
【請求項4】
前記駆動力が付与されて前記幕体が展開するときに前記幕体を前記一方側に案内可能に、前記幕体に接続される案内部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の防護システム。
【請求項5】
前記案内部は、前記駆動力が付与されて前記幕体が展開することと同期して前記一方側に伸長可能に、前記幕体に接続されるパンタグラフ式の伸長部を有することを特徴とする請求項4に記載の防護システム。
【請求項6】
前記案内部は、前記駆動力が付与されて前記幕体が展開することと同期して前記一方側に伸長可能に、前記幕体に接続されるテレスコピック式の伸長部を有することを特徴とする請求項4に記載の防護システム。
【請求項7】
前記案内部は、前記駆動力が付与されて前記幕体が展開することと同期して前記一方側に伸長可能に、前記幕体に接続される袋状の伸長部を有することを特徴とする請求項4に記載の防護システム。
【請求項8】
前記駆動力が付与されて展開した前記幕体を展開した状態で保持可能である保持部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の防護システム。
【請求項9】
前記幕体と前記ガス発生器または前記点火器とを収容しかつ持ち運び可能である筐体を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の防護システム。
【請求項10】
カメラおよびセンサの少なくとも一方と、前記カメラによって撮影されかつ第1条件に合致した撮影情報、および、前記センサによって検知されかつ第2条件に合致した検知情報の少なくとも一方に基づいて、演算部によって不審人物がいるまたは異常が発生していると判定された場合に前記ガス発生器または前記点火器を作動させる作動制御部とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の防護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
防護システムの一例として、たとえば、特許文献1には、カーテン生地、またはロールスクリーン生地に、防弾機能を有するフィルムを貼り合わせた防弾機能を有するカーテンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3082065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のカーテンを設置するためには、当該カーテンを吊り下げるための部材等が必要であり、当該カーテンは設置場所が制限されてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、設置場所が制限され難く、防護を行うことができる防護システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明の防護システムは、所定方向の一方側に展開可能である幕体と、前記幕体を前記一方側に展開させるための駆動力を前記幕体に付与可能である火薬式のガス発生器または点火器とを備えることを特徴とする。
【0007】
(2) 上記(1)の防護システムにおいては、前記幕体は、防弾機能および防刃機能を有することが好ましい。
【0008】
(3) 上記(1)または(2)の防護システムにおいては、前記幕体は、展開する前の状態が蛇腹状に折り畳まれた状態またはロール状に巻き取られた状態であることが好ましい。
【0009】
(4) 上記(1)または(2)の防護システムにおいては、前記駆動力が付与されて前記幕体が展開するときに前記幕体を前記一方側に案内可能に、前記幕体に接続される案内部を備えることが好ましい。
【0010】
(5) 上記(4)の防護システムにおいては、前記案内部は、前記駆動力が付与されて前記幕体が展開することと同期して前記一方側に伸長可能に、前記幕体に接続されるパンタグラフ式の伸長部を有することが好ましい。
【0011】
(6) 上記(4)の防護システムにおいては、前記案内部は、前記駆動力が付与されて前記幕体が展開することと同期して前記一方側に伸長可能に、前記幕体に接続されるテレスコピック式の伸長部を有することが好ましい。
【0012】
(7) 上記(4)の防護システムにおいては、前記案内部は、前記駆動力が付与されて前記幕体が展開することと同期して前記一方側に伸長可能に、前記幕体に接続される袋状の伸長部を有することが好ましい。
【0013】
(8) 上記(1)または(2)の防護システムにおいては、前記駆動力が付与されて展開した前記幕体を展開した状態で保持可能である保持部を備えることが好ましい。
【0014】
(9) 上記(1)または(2)の防護システムにおいては、前記幕体と前記ガス発生器または前記点火器とを収容しかつ持ち運び可能である筐体を備えることが好ましい。
【0015】
(10) 上記(1)または(2)の防護システムにおいては、カメラおよびセンサの少なくとも一方と、前記カメラによって撮影されかつ第1条件に合致した撮影情報、および、前記センサによって検知されかつ第2条件に合致した検知情報の少なくとも一方に基づいて演算部によって不審人物がいるまたは異常が発生していると判定された場合に前記ガス発生器または前記点火器を作動させる作動制御部とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、設置場所が制限され難く、防護を行うことができる防護システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る防護システムの防護装置およびリモートコントローラを示し、幕体が展開していない状態を示す斜視図である。
図2図1の防護システムの防護装置およびリモートコントローラを示し、幕体が展開した状態を示す斜視図である。
図3図1の防護装置を示す側面図である。
図4図1の防護装置を示す背面図である。
図5図2の防護装置を示す側面図である。
図6図2の防護装置を示す背面図である。
図7図1の防護システムの機能構成を示すブロック図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る防護システムの幕体等を示す側面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る防護システムの案内部等を示す背面図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る防護システムの機能構成を示すブロック図である。
図11】本発明の第1変形例に係る幕体および案内部を示す図である。
図12】本発明の第2変形例に係る幕体および案内部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る防護システム10について、図1から図7を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係る防護システム10の防護装置20およびリモートコントローラ30を示し、幕体23が展開していない状態を示す斜視図である。図2は、図1の防護システム10の防護装置20およびリモートコントローラ30を示し、幕体23が展開した状態を示す斜視図である。まず、図1および図2を参照して、防護システム10の概略について説明する。
【0020】
図1および図2に示すように、防護システム10は、防護装置20と、リモートコントローラ30とを備えている。
【0021】
リモートコントローラ30は、防護装置20のガス発生器50を作動させるための作動操作を受け付ける。たとえば、リモートコントローラ30は、押しボタンを有しており、作動操作は、当該押しボタンを押す操作である。なお、リモートコントローラ30は、レバー、スイッチ、またはタッチボタン等を有していてもよく、レバー、スイッチ、またはタッチボタン等によって作動操作を受け付けてもよい。
【0022】
図1に示すように、リモートコントローラ30が作動操作を受け付けていない場合、幕体23は展開していない。図2に示すように、リモートコントローラ30が作動操作を受け付けた場合、ガス発生器50が作動し、幕体23が展開する。幕体23が展開した状態においては、幕体23によって投下物等から防護することができる。なお、リモートコントローラ30は、有線式でも無線式でも良い。
【0023】
図3は、図1の防護装置20を示す側面図である。図4は、図1の防護装置20を示す背面図である。図5は、図2の防護装置20を示す側面図である。図6は、図2の防護装置20を示す背面図である。図3から図6では、筐体21を断面で示している。次に、図3から図6を参照して、防護システム10の構成について説明する。
【0024】
図3から図6に示すように、防護装置20は、筐体21と、収容部22と、幕体23と、案内部24と、ガス発生器50を含む移動機構40と、保持部26とを備えている。
【0025】
筐体21は、本体部21aと、蓋部21bとを有している。本体部21aは、所定方向(図1等のZ軸方向)の一方側(図1等のZ軸方向のプラス側)に開口している。本体部21aは、所定方向と直交する第1直交方向(図1等のY軸方向)に長尺状である。本体部21aは、収容部22、幕体23、案内部24、ガス発生器50、および保持部26を収容している。蓋部21bは、本体部21aに第1直交方向回りに回動可能に取り付けられている。蓋部21bは、本体部21aに対して第1直交方向回りに回動することによって、本体部21aの開口部を塞ぐ位置(図1図3、および図4を参照)と、本体部21aの開口部を塞がない位置(図2図5、および図6を参照)とに位置可能である。筐体21は、持ち運び可能であり、筐体21に収容されている収容部22、幕体23、案内部24、ガス発生器50、および保持部26は、筐体21とともに持ち運び可能である。
【0026】
収容部22は、所定方向の一方側に開口しており、第1直交方向に長尺状である。収容部22は、幕体23を収容している。収容部22は、蛇腹状に折り畳まれた状態の幕体23を収容している(図3を参照)。収容部22は、筐体21の本体部21aに固定されている。
【0027】
幕体23は、所定方向の一方側に展開可能である。幕体23は、展開する前の状態が蛇腹状に折り畳まれた状態であり、上述したように、蛇腹状に折り畳まれた状態で収容部22に収容されている(図3を参照)。幕体23の一方側の端部は、案内部24の連結部24cに取り付けられている。たとえば、幕体23の一方側の端部は、連結部24cに挟み込まれたり、締結部材等によって連結部24cに固定されたり、接着剤等によって連結部24cに接着されたりすることによって、連結部24cに取り付けられている。幕体23の他方側の端部は、収容部22に取り付けられている。たとえば、幕体23の他方側の端部は、締結部材等によって収容部22に固定されたり、接着剤等によって収容部22に接着されたりすることによって、収容部22に取り付けられている。
【0028】
また、幕体23は、防弾機能および防刃機能を有している。幕体23は、展開した状態において、所定方向と直交しかつ第1直交方向と直交する第2直交方向(図1等のX軸方向)の一方側(図1等のX軸方向のプラス側)からの銃弾および刃物が他方側(図1等のX軸方向のマイナス側)に貫通しないように食い止めることが可能である。なお、幕体23は、防弾機能および防刃機能のうち一方のみを有していてもよい。また、幕体23は、防弾機能および防刃機能を有していなくてもよく、爆風等によって飛散した飛散物を貫通させない程度の強度を有していてもよいし、人等によって投下された投下物を貫通させない程度の強度を有していてもよい。たとえば、幕体23は、防弾チョッキに用いられる1以上の繊維等を用いて形成される。また、たとえば、幕体23は、防刃チョッキに用いられる1以上の繊維等を用いて形成される。具体的には、たとえば、幕体23は、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、またはポリベンザゾール繊維等を用いて形成される。
【0029】
案内部24は、駆動力が付与されて幕体23が展開するときに幕体23を所定方向の一方側に案内可能に、幕体23に接続されている。案内部24は、伸縮部24aと、支持部24bと、連結部24cとを有している。
【0030】
伸縮部24aは、所定方向に伸縮可能である。伸縮部24aは、駆動力が付与されて幕体23が展開することと同期して所定方向の一方側に伸長可能に、幕体23に接続されるパンタグラフ式の伸長部の一例である。つまり、幕体23が所定方向の一方側に所定量だけ展開した場合、幕体23の展開と同じタイミングで、伸縮部24aが所定方向の一方側に所定量だけ伸長する。また、伸縮部24aが所定方向の一方側に所定量だけ伸長した場合、伸縮部24aの伸長と同じタイミングで、幕体23が所定方向の一方側に所定量だけ展開する。伸縮部24aは、第1アーム部24dと、第2アーム部24eと、可動支軸24fとを有している。
【0031】
第1アーム部24dは、複数のアームが連結されて構成されている。第1アーム部24dは、第2直交方向から見たときに蛇腹状であり、所定方向に伸縮可能である。第1アーム部24dの所定方向の一方側の端部は、連結部24cに第2直交方向回りに回動可能に支持されている。第1アーム部24dの所定方向の他方側(図1等のZ軸方向のマイナス側)の端部は、支持部24bに第2直交方向回りに回動可能に支持されている。
【0032】
第2アーム部24eは、複数のアームが連結されて構成されている。第2アーム部24eは、第2直交方向から見たときに第1アーム部24dと対称的な蛇腹状であり、所定方向に伸縮可能である。第2直交方向から見たとき、第2アーム部24eを構成する各アームの中央部は、第1アーム部24dを構成する各アームの中央部と重なり、当該中央部と第2直交方向回りに回動可能に接続されている。第2アーム部24eの所定方向の一方側の端部は、連結部24cに第2直交方向回りに回動可能かつ第1直交方向にスライド可能に支持されている。第2アーム部24eの所定方向の他方側の端部は、支持部24bに第2直交方向回りに回動可能かつ第1直交方向にスライド可能に支持されている。
【0033】
支持部24bは、筐体21の本体部21aの底部に固定されており、上述したように第1アーム部24dおよび第2アーム部24eを支持している。連結部24cは、上述したように第1アーム部24dおよび第2アーム部24eを支持している。また、連結部24cには、上述したように幕体23が取り付けられている。幕体23と伸縮部24aとは、連結部24cを介して連結されており、伸縮部24aは、連結部24cを介して幕体23に接続されている。
【0034】
可動支軸24fは、後述する棒状部材44の先端部が回動可能に接続されているとともに、支持部24bに設けられたスライドレール24b1に沿ってスライド可能となるように、スライドレール24b1に取り付けられた部材である。
【0035】
移動機構40は、本体部21aの底部の内側に固定されている固定部材41と、シリンダとなる有底筒状部材42と、有底筒状部材42の内部を摺動可能なピストン部材43と、ピストン部材43の前方側にピストン部材43の移動(摺動)方向に沿って設けられた棒状部材44と、を備えている。
【0036】
有底筒状部材42は、後方側が固定部材41に固定支持されているとともに、前方側が枠体11に固定支持されている。また、有底筒状部材42は、ピストン部材43の移動方向を規制している移動規制部材である。
【0037】
棒状部材44は、前方側が可動支軸24fに接続されており、図4の初期状態から図6の作動状態(ガス発生器50の作動に伴うガスが発生して有底筒状部材42の内圧が増加し、ピストン部材43が移動した状態)となった場合、可動支軸24fを所定方向(図4および図6では左方向)に押し込むように移動(摺動)するものである。
【0038】
ガス発生器50は、幕体23を所定方向の一方側(Z軸方向)に展開させるための駆動力を発生可能な火薬式のガス発生器である。ガス発生器50は、幕体23の外部において、当該駆動力を幕体23に間接的に付与可能である。本実施形態では、移動機構40、案内部24を介して間接的に当該駆動力を幕体23に付与するものを示している。
【0039】
ガス発生器50は、内部の火薬が燃焼してピストン部材43を所定方向の一方(図4および図6では左方向)側に押し出すことが可能なガスを発生させることができるものである。たとえば、ガス発生器50は、小型軽量のものであり、ガス発生剤が充填されたカップ体と、ガス発生剤を着火させるための点火器と、点火器を保持するホルダとを備えるものである。また、たとえば、ガス発生器50は、マイクロガスジェネレータなどが挙げられるが、ガスを発生させることができるのであれば、どのような装置であってもよい。なお、ガス発生剤は、点火器が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤(火薬または推進薬)である。
【0040】
一般的にガス発生器50は、非火薬式と火薬式とに大別できる。非火薬式の主流は、二酸化炭素や窒素等のガスを封入したガスボンベに、針等の鋭利部材と圧縮したバネとを連結して、バネ力を利用して鋭利部材を飛ばし、ボンベを封止している封板に衝突させてガスを放出させるものである。このとき、バネの圧縮力を解放するために、サーボモータ等の駆動源が通常使用される。次に、火薬式の場合であるが、点火器単体でもよいし、点火器とガス発生剤とを備えたものでもよい。また、火薬の力で小型のガスボンベにおける封板を開裂させ、内部のガスを外部へと排出するハイブリッド型、ストアード型のガス発生器を使用してもよい。この場合、ガスボンベ内の加圧ガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素、二酸化炭素などの不燃性のガスから少なくとも一つ以上から選ばれる。また、加圧ガスが放出される際、確実に膨張させるために火薬式の発熱体をガス発生器50に備えていてもよい。さらにガス発生器50には、必要に応じてフィルタまたは/およびガス流量を調整するオリフィスを備えてもよい。
【0041】
ガス発生剤としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤が形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等又はこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジン、硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、又は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダ、スラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダ、又は、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。また、ニトロセルロースを主成分としたシングルベース火薬、ダブルベース火薬、トリプルベース火薬を用いてもよい。
【0042】
また、ガス発生剤の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状又は多孔筒形状等)の成形体も利用される。また、ガス発生剤の形状の他にもガス発生剤の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズおよび充填量を適宜選択することが好ましい。
【0043】
保持部26は、駆動力が付与されて展開した幕体23を展開した状態で保持可能である。本実施形態では、保持部26は、伸縮部24aが所定方向に伸長した状態を保持することによって、幕体23を展開した状態で保持する。保持部26は、筐体21の本体部21aの底部に設けられている。保持部26は、押しボタンのように、所定方向の他方側に押しているときにだけ一時的に当該他方側に沈むように設けられている。保持部26のうち本体部21aの底部から突出している部分の外形は、第1直交方向の一方側に向かうに連れて所定方向の一方側に位置するように傾斜した後に所定方向の他方側に向かうように形成されている(図4および図6を参照)。
【0044】
このような構成の保持部26は、第1直交方向の他方側(図1等のY軸方向のマイナス側)から一方側(図1等のY軸方向のプラス側)にスライドしてきた第2アーム部24eによって所定方向の他方側に押し込まれ、一時的に沈んだ状態となる。そして、第2アーム部24eがさらに第1直交方向の一方側に移動して保持部26を通過した後、保持部26は、元の状態に戻る。これによって、第2アーム部24eが保持部26よりも第1直交方向の他方側に移動しないように保持部26に掛止され、伸縮部24aが伸長した状態が保持される。伸縮部24aが伸長した状態が保持されることによって、展開した幕体23は、展開した状態で保持される。
【0045】
図7は、図1の防護システム10の機能構成を示すブロック図である。次に、図7を参照して、防護システム10の機能構成について説明する。
【0046】
図7に示すように、リモートコントローラ30は、作動操作を受け付けた場合、ガス発生器50を作動させるための作動信号等を発信する。制御装置25における制御部25b(たとえば、CPU、ROM、RAM等を有している、いわゆるコンピュータなど)が、受信部25aによって上記作動信号等を受信したと判定した場合、制御部25bによって電源(図示せず)等からの電力がガス発生器50に供給される命令信号が出力される。当該命令信号を受けた電源(図示せず)等から電力が供給されたガス発生器50は、作動してガスを発生させる。上述したように、ガス発生器50が作動して発生したガスによって、ピストン部材43に駆動力が付与され、ピストン部材43および棒状部材44が所定方向の一方側に移動する。移動した棒状部材44の先端部は、可動支軸24fを所定方向(図4および図6では左方向)に押し込むように移動(摺動)するため、伸縮部24aが瞬時に起立する。このとき、幕体23は、起立した伸縮部24aに持ち上げられた連結部24cによって引っ張り上げられ、展開する。
【0047】
次に、図1および図2を参照して、防護システム10の使用方法等について説明する。
【0048】
たとえば、要人が演説等を行う場合、要人を警護する必要がある。このような場合、要人の周囲に、図1に示すように幕体23が展開していない状態の防護装置20を設置しておく。そして、要人を警護する警護人は、リモートコントローラ30を持っておく。たとえば、警護人は、不審者が現れた場合、リモートコントローラ30によって作動操作を行い、図2に示すように幕体23を展開させる。展開した幕体23によって、要人を不審者から遮蔽することができ、要人を防護することができる。
【0049】
防護装置20は、幕体23および案内部24等を折り畳んでコンパクトにできるので、目立たないように設置できる。また、防護装置20は、持ち運び可能であるので、設置場所が制限され難く、様々な場所に設置することができる。また、防護システム10は、ガス発生器50を用いて幕体23を展開させるので、モータ等を用いる場合と比べて、幕体23を速く展開できる。また、防護システム10は、幕体23の外部において駆動力を付与して幕体23を展開させるので、展開体の内部にガスを供給して展開体を膨らませて展開させるものと比べて、幕体23を速く展開できる。
【0050】
防護システム10を用いることによって、警護人を要人の近くに配置しなくても、要人を迅速に防護することができる。警護人を要人の近くに配置しなくてもよいので、要人の警護を目立たないようにでき、要人が物々しく警護されている雰囲気になることを抑制できる。
【0051】
なお、防護装置20を地面等に設置して、幕体23を上方に展開するようにしてもよいし、防護装置20を壁面等に設置して、幕体23を水平方向に展開するようにしてもよいし、防護装置20を天井等に設置して、幕体23を下方に展開するようにしてもよい。
【0052】
また、上述した幕体23の長さは一例であり、防護装置20を設置する場所および要人の身長等によって、幕体23の長さを適宜変えてもよい。そして、幕体23の長さに応じて、伸縮部24aの伸長量等を変えてもよい。たとえば、第1アーム部24dを構成する複数のアームの個数および第2アーム部24eを構成する複数のアームの個数を増やすことによって、伸縮部24aの伸長量を多くすることができる。また、たとえば、第1アーム部24dを構成する複数のアームの長さおよび第2アーム部24eを構成する複数のアームの長さを長くすることによって、伸縮部24aの伸長量を多くすることができる。
【0053】
以上において説明したように、本実施形態における防護システム10は、所定方向の一方側に展開可能である幕体23と、幕体23を所定方向の一方側に展開させるための駆動力を発生可能である火薬式のガス発生器50とを備える。
【0054】
これによれば、幕体23を吊り下げるための部材等を設けることなく、幕体23を展開させて防護を行うことができるので、設置場所が制限され難く、防護を行うことができる。
【0055】
また、本実施形態における防護システム10において、幕体23は、防弾機能および防刃機能を有する。
【0056】
これによれば、より確実に防護を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態における防護システム10において、幕体23は、展開する前の状態(初期状態)が蛇腹状に折り畳まれた状態である。
【0058】
これによれば、展開する前の幕体23をよりコンパクトにできるとともに、幕体23をよりスムーズに展開することができるので、設置場所がさらに制限され難く、より確実に防護を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態における防護システム10は、幕体23が展開するときに幕体23を所定方向の一方側に案内可能に、幕体23に接続される案内部24を備える。
【0060】
これによれば、幕体23を所定方向の一方側に展開し易くなるので、より確実に防護を行うことができる。
【0061】
また、本実施形態における防護システム10において、案内部24は、駆動力が付与されて幕体23が展開することと同期して所定方向の一方側に伸長可能に、幕体23に接続されるパンタグラフ式の伸縮部24aを有する。
【0062】
これによれば、幕体23が展開する前において案内部24をよりコンパクトにできるので、設置場所がさらに制限され難い。
【0063】
また、本実施形態における防護システム10は、駆動力が付与されて展開した幕体23を展開した状態で保持可能である保持部26を備える。
【0064】
これによれば、幕体23を展開した状態で保持できるので、より確実に防護を行うことができる。
【0065】
また、本実施形態における防護システム10において、幕体23とガス発生器50とを収容しかつ持ち運び可能である筐体21を備える。
【0066】
これによれば、幕体23とガス発生器50とを容易に持ち運びできるので、設置場所がさらに制限され難い。
【0067】
また、本実施形態における防護システム10において、ガス発生器50を作動させるための作動操作を受け付けるリモートコントローラ30を備える。
【0068】
これによれば、幕体23およびガス発生器50から離れた場所から、ガス発生器50を作動させて幕体23を展開させることができる。
【0069】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態に係る防護システムについて、図8を参照しながら説明する。なお、本実施形態において、特に説明がない限り、下2桁が同じ数字の符号は、上記第1実施形態と同様の部位であるので、説明を省略することがある。また、説明をしていない部位に関しては、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0070】
図8は、本発明の第2実施形態に係る防護システムの幕体123等を示す側面図である。図8の(a)は、幕体123が展開していない状態を示し、図8の(b)は、幕体123が展開した状態を示している。
【0071】
図8に示すように、本実施形態に係る防護システムは、幕体123の他方側の端部が接続される芯材122aをさらに備えている点において、防護システム10と主に異なっている。
【0072】
幕体123は、展開前の状態が芯材122aにロール状に巻き取られた状態であり、芯材122aにロール状に巻き取られた状態で収容部122に収容されている。芯材122aは、第1直交方向回りに回転可能に収容部122に取り付けられており、幕体123が所定方向の一方側に展開するとき、収容部122に対して回転する。
【0073】
本実施形態における防護システムにおいて、幕体123は、展開する前の状態がロール状に巻き取られた状態である。
【0074】
これによれば、展開する前の幕体123をよりコンパクトにできるとともに、幕体123をよりスムーズに展開することができるので、設置場所がさらに制限され難く、より確実に防護を行うことができる。
【0075】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態に係る防護システムについて、図9を参照しながら説明する。なお、本実施形態において、特に説明がない限り、下2桁が同じ数字の符号は、上記第1実施形態と同様の部位であるので、説明を省略することがある。また、説明をしていない部位に関しては、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
図9は、本発明の第3実施形態に係る防護システムの案内部224等を示す背面図である。図9の(a)は、案内部224の伸縮部224aが縮んだ状態を示し、図9の(b)は、案内部224の伸縮部224aが伸長した状態を示している。
【0077】
図9に示すように、本実施形態に係る防護システムは、案内部24に代えて案内部224を備えている点、ガス発生器50に代えてガス発生器250を備えている点、および保持部26を備えていない点において、防護システム10と主に異なっている。なお、図示は省略しているが、第1直交方向における幕体223の両側に、案内部224が設けられている。
【0078】
案内部224は、駆動力が付与されて幕体223が展開するときに幕体223を所定方向の一方側に案内可能に、幕体223に接続されている。案内部224は、伸縮部224aと、支持部224bと、連結部224cとを備えている。
【0079】
伸縮部224aは、駆動力が付与されて幕体223が展開することと同期して一方側に伸長可能に、幕体223に接続されるテレスコピック式の伸長部の一例である。つまり、幕体223が所定方向の一方側に所定量だけ展開した場合、幕体223の展開と同じタイミングで、伸縮部224aが所定方向の一方側に所定量だけ伸長する。また、伸縮部224aが所定方向の一方側に所定量だけ伸長した場合、伸縮部224aの伸長と同じタイミングで、幕体223が所定方向の一方側に所定量だけ展開する。
【0080】
伸縮部224aは、支持部224bに直接結合されている筒状部材224dと、筒状部材224dに内挿され、所定方向にスライド可能な筒状部材224eと、筒状部材224eに内挿され、所定方向にスライド可能なピストン部224fとを有している。支持部224bは、筐体の底部に固定されている。連結部224cは、ピストン部224fの先端に設けられ、幕体223の一方側の端部と接続されている。伸縮部224aは、連結部224cを介して幕体223に接続されている。
【0081】
案内部224は、上述した筒状部材224d,224eおよびピストン部224fの構成により、所定方向に伸縮自在となっている。以下、筒状部材224d,224eおよびピストン部224fのそれぞれについて詳述する。
【0082】
筒状部材224dは、支持部224b側の端部に底部を有した筒状部材である。なお、筒状部材224dの底部の略中央には、案内部224の内部方向に噴出するガスを発生させるガス発生器250が固設されている。筒状部材224eは、単筒の管状部材である。筒状部材224d,224eは、軽金属、軽金属合金、プラスチック、または樹脂で形成されたものであり、テレスコピック構造となるように連結されている。また、筒状部材224d,224eは、筒状部材224dの内径と、筒状部材224eの外径とが略一致するように形成されている。なお、軽金属の例としては、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、チタン、アルカリ金属、アルカリ土類金属などである。以下、同様である。ここで、筒状部材224d,224eは、可撓性材料が選択されていることが好ましい。ここで、可撓性材料とは、ゴムまたはカーボンなどからなる材料のことであり、力によって撓むような材料であれば、どのようなものであってもよい。
【0083】
ピストン部224fは、軽金属、軽金属合金、プラスチック、または樹脂で形成されたものであり、中空状のものであり、先端が連結部224cによって閉塞されている。また、ピストン部224fは、筒状部材224eの間でテレスコピック構造となるように連結されている。また、筒状部材224eとピストン部224fとは、筒状部材224eの内径と、ピストン部224fの外径とが略一致するように形成されている。ここでピストン部224fは、可撓性がある材料が選択されていることが好ましい。
【0084】
ガス発生器250は、内部の火薬が燃焼してピストン部224fを所定方向(図9の(a)の矢印方向)に押し出すことが可能なガスを発生させることができるものである。たとえば、ガス発生器250は、ガス発生器50と同様のものである。
【0085】
ガス発生器250が作動した場合、幕体223を所定方向の一方側に展開させるための駆動力が幕体223に付与され、幕体223は当該駆動力によって所定方向の一方側に展開する。具体的には、ガス発生器250が作動した場合、ガス発生器250によってガスが発生し、当該ガスによる圧力が筒状部材224eおよびピストン部224fに加わり、当該圧力によって筒状部材224eおよびピストン部224fが所定方向の一方側に移動し、筒状部材224eおよびピストン部224fが所定方向の一方側に移動することによって当該駆動力が幕体223に付与され、当該駆動力によって幕体223が所定方向の一方側に展開する。
【0086】
リモートコントローラが作動操作を受け付けた場合に、第1実施形態と同様に、リモートコントローラからガス発生器250の作動信号が発信され、ガス発生器250が作動する。次に、図9の(a)の状態から、ガス発生器250の作動によりガスが発生し、そのガス圧によってピストン部224fが図9の(a)の矢印方向に移動し伸び切った後、続いて、筒状部材224eがテレスコピック式に伸長する。そして、筒状部材224eが伸び切った場合、伸縮部224aの伸長動作は完了し、伸縮部224a内にガスおよび空気が充満した空間224gが形成される(図9の(b)を参照)。
【0087】
なお、伸縮部224aが伸長しきった場合、この状態を保持すべく、連結部224cを所定方向の一方側で把持できる機構を備えていてもよいし、筒状部材224d,224eとピストン部224fとが伸長しきった状態でロック(固定)されるように、筒状部材224dと筒状部材224eとの間、および筒状部材224eとピストン部224fとの間において、ロック機構(たとえば、保持部26と同じような機構等)を備えていてもよい。
【0088】
また、上述した幕体223の長さは一例であり、防護装置を設置する場所および要人の身長等によって、幕体223の長さを適宜変えてもよい。そして、幕体223の長さに応じて、伸縮部224aの伸長量等を変えてもよい。たとえば、筒状部材の個数を増やすことによって、伸縮部224aの伸長量を多くすることができる。また、たとえば、筒状部材224d,224eおよびピストン部224fの長さを長くすることによって、伸縮部224aの伸長量を多くすることができる。
【0089】
また、幕体223は、第2実施形態のように、展開前の状態がロール状に巻き取られた状態であってもよい。また、第4実施形態のように、リモートコントローラに代えてカメラとセンサと作動制御部とを用いて、ガス発生器250を作動させるようにしてもよい。
【0090】
本実施形態における防護システムにおいて、案内部224は、駆動力が付与されて幕体223が展開することと同期して所定方向の一方側に伸長可能に、幕体223に接続されるテレスコピック式の伸縮部224aを有する。
【0091】
これによれば、幕体223が展開する前において案内部224をよりコンパクトにできるので、設置場所がさらに制限され難い。
【0092】
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態に係る防護システム310について、図10を参照しながら説明する。なお、本実施形態において、特に説明がない限り、下2桁が同じ数字の符号は、上記第1実施形態と同様の部位であるので、説明を省略することがある。また、説明をしていない部位に関しては、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
図10は、本発明の第4実施形態に係る防護システム310の機能構成を示すブロック図である。
【0094】
図10に示すように、本実施形態に係る防護システム310は、リモートコントローラ30に代えてカメラ360とセンサ370と演算部328と作動制御部327とを備えている点において、防護システム10と主に異なっている。
【0095】
カメラ360は、様々な場所に設置され、顔や風貌、所持品、仕草や、微細な体の変化等を撮影し、これらを示す撮影情報を取得する。カメラ360は、撮影情報のうち、あらかじめ定義されている第1条件に合致した撮影情報を、所定の人に関する撮影情報として、演算部328に送信する。たとえば、第1条件は、刃物または拳銃を所持している人が写っていること等である。この場合、カメラ360は、刃物または拳銃を所持している人が写っている画像(撮影情報)を、第1条件に合致した撮影情報として、演算部328に送信する。
【0096】
センサ370は、あらかじめ定義されている第2条件に合致した検知情報を、所定の人に関する検知情報として、演算部328に送信する。たとえば、第2条件は、あらかじめ定義した範囲に人が入ったこと等である。この場合、センサ370は、人感センサ等であり、あらかじめ定義した範囲に人が入った場合、あらかじめ定義した範囲に人が入ったことを示す検知情報を、第2条件に合致した検知情報として、演算部328に送信する。また、第2条件は、火炎が発生したこと等であってもよい。この場合、センサ370は、火炎探知器等であり、誰かが火炎を発生させた場合または自然または事故(短絡事故など)によって火災が発生した場合、火炎が発生したことを示す検知情報を、第2条件に合致した検知情報として、演算部328に送信する。また、第2条件は、検知した値が閾値を超えたこと等である。この場合、センサ370は、温度センサ等であり、あらかじめ定義したセンサの閾値を超えた値を検知した場合に、検知した値が閾値を超えたことを示す検知情報を、第2条件に合致した検知情報として、演算部328に送信する。たとえば、センサ370としては、他にも、赤外線センサ、紫外線センサ、合成開口レーダー(SAR)、ミリ波センサ、LiDARセンサ、音センサ、または超音波センサ等が挙げられる。
【0097】
演算部328は、カメラ360やセンサ370から、所定の人に関する情報として送られた撮影情報や検知情報を受け取り、撮影情報や検知情報が、あらかじめ定義した不審人物の条件に合致した場合に、不審人物がいると判定し、作動制御部327に信号を送る。たとえば、不審人物の条件は、不審人物の顔と一致すること等である。この場合、演算部328は、画像(撮影情報)に写っている顔と不審人物の顔とを照合し、これらが一致している場合、不審人物の条件と合致していると判定し、不審人物がいると判定する。なお、たとえば、演算部328は、上述したような撮影情報(刃物または拳銃を所持している人が写っている画像(撮影情報)等)が送られてきた場合に不審人物がいると判定してもよい。また、演算部328は、上述したような検知情報(あらかじめ定義した範囲に人が入ったことを示す検知情報等)が送られてきた場合に不審人物がいると判定してもよい。また、演算部328は、上述したような検知情報(あらかじめ定義した範囲に異常(火災など)があることを示す検知情報等)が送られてきた場合に異常(火災など)が発生していると判定してもよい。
【0098】
作動制御部327(CPU、ROM、RAMなどを有したコンピュータ)は、演算部328(CPU、ROM、RAMなどを有したコンピュータ)によって不審人物がいるまたは異常(火災など)が発生していると判定された場合に、ガス発生器350を作動させる。作動制御部327は、ガス発生器350の作動信号を発信し、ガス発生器350を作動させる。防護装置320が複数台設置されている場合は、演算部328によって不審人物のいる位置から防護するのに最適な位置に配置された防護装置320を判定し、その防護装置320内のガス発生器350を作動させる。
【0099】
なお、防護システム310は、カメラ360およびセンサ370のうち一方のみを備えていてもよい。
【0100】
本実施形態における防護システム310は、カメラ360およびセンサ370の少なくとも一方と、カメラ360によって撮影されかつ第1条件に合致した撮影情報、および、センサ370によって検知されかつ第2条件に合致した検知情報の少なくとも一方に基づいて演算部328によって不審人物がいるまたは異常(火災など)が発生していると判定された場合にガス発生器350を作動させる作動制御部327とを備える。
【0101】
これによれば、カメラ360によって撮影されかつ第1条件に合致した撮影情報、および、センサ370によって検知されかつ第2条件に合致した検知情報の少なくとも一方に基づいて、ガス発生器350を作動させることができるので、より確実に防護を行うことができる。
【0102】
<第1変形例>
以下、本発明の第1変形例に係る幕体323および案内部324について、図11を参照しながら説明する。
【0103】
図11は、本発明の第1変形例に係る幕体323および案内部324を示す図である。図11の(a)は、平面図を示し、図11の(b)は、正面図を示す。図11では、幕体323が展開された状態を示している。
【0104】
図11に示すように、案内部324は、一対の伸縮部324a(膨張チューブ)を有している。伸縮部324aは、駆動力が付与されて幕体323が展開することと同期して一方側に伸長可能に、幕体323に接続される袋状の伸長部の一例である。一対の伸縮部324aは、幕体323の両端部に接続されている。伸縮部324aは、幕体323が展開する前において、幕体323とともに、蛇腹状に折り畳まれているか、または、ロール状に巻き取られている。伸縮部324aの長手方向の一方側の端部は閉じており、伸縮部324aの長手方向の他方側の端部は開口している。伸縮部324aの他方側の端部の近傍には、伸縮部324aの内部にガスを噴出させ、伸縮部324a内に加圧することが可能なガス発生器が設けられ、ガス発生器によって発生したガスが、伸縮部324aの他方側の端部から伸縮部324aの内部に導入されることによって、伸縮部324aが膨らんで一方側に伸長する。伸縮部324aが一方側に伸長することによって、幕体323に駆動力が付与され、伸縮部324aの伸長と同期して、幕体323が伸縮部324aに案内されながら一方側に展開する。このように、玩具の吹き戻しを人が吹いた場合と同様の原理で、伸縮部324aは図11に示すように展開される。
【0105】
たとえば、ガス発生器は、図11に示すように、伸縮部324aの全体が膨らんで伸長する量のガスを発生させる。たとえば、伸縮部324aの内部に導入されたガスが抜けないような機構を設けることによって、伸縮部324aを伸長した状態で保持できるので、幕体323も展開した状態で保持できる。
【0106】
伸縮部324aには、強化クロス等を用いることができるが、ガス発生器で発生するガスの熱からクロスを保護するために、特に熱に強い素材のもの、または、内面に耐熱性の表面コーティングがなされているものが好ましい。また、ガスが流入することで、急激な膨張に耐える必要があるため、発生ガス圧力に耐えうる強度を持っているものが好ましい。また、伸縮部324aの一方側の端部には、伸縮部324aの内圧を調整するために、余分な気体を外部に排出することができる孔部(図示せず)が設けられていてもよい。
【0107】
本変形例における案内部324は、駆動力が付与されて幕体323が展開することと同期して一方側に伸長可能に、幕体323に接続される袋状の伸縮部324aを有する。
【0108】
これによれば、幕体323が展開する前において案内部324をよりコンパクトにできるので、防護システムの設置場所をさらに制限され難くすることができる。
【0109】
本変形例で説明したように、案内部は、袋状の伸長部を有していてもよい。
【0110】
<第2変形例>
以下、本発明の第2変形例に係る幕体423および案内部424について、図12を参照しながら説明する。
【0111】
図12は、本発明の第2変形例に係る幕体423および案内部424を示す図である。図12の(a)は、平面図を示し、図12の(b)は、正面図を示す。図12では、幕体423が展開された状態を示している。
【0112】
図12に示すように、幕体423は、第1変形例に係る幕体323と同様のものである。案内部424は、伸縮部424aを有している。伸縮部424aは、第1変形例に係る伸縮部324aと同様のものである。本変形例では、伸縮部424aが、幕体423の両端部ではなく中央部に接続されている点において、第1変形例と主に異なっている。
【0113】
本変形例で説明したように、袋状の伸長部は、幕体の両端部ではなく中央部に接続されていてもよい。
【0114】
<他の実施形態等>
上述した第1実施形態では、筐体21が、蓋部21bを有している場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、筐体は、蓋部を有していなくてもよい。第2から第4実施形態についても同様である。
【0115】
また、上述した第1実施形態では、防護装置20が、筐体21および収容部22を備えている場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、防護装置は、収容部を備えていなくてもよい。この場合、幕体については、筐体の本体部の底部等に載置すればよい。また、防護装置は、筐体および収容部を備えていなくてもよい。この場合、幕体およびガス発生器等については、地面等に載置すればよい。第2から第4実施形態についても同様である。
【0116】
また、ガス発生器50によって発生したガスによる圧力が、連結部24cに直接加わり、連結部24cを所定方向へ吹き上げるように押し出しつつ幕体を展開するものであってもよい。また、たとえば、シリンダとシリンダの内部に摺動可能に設けられるピストンとを設け、ガス発生器によるガスの圧力によってピストンを摺動させ、摺動させたピストンを連結部に当てて連結部を所定方向の一方側に移動させるようにしてもよい。また、ガス発生器によって発生したガスによる圧力のみで、パンタグラフ式の伸縮部の第2アーム部の所定方向の他方側の端部が第1直交方向の一方側にスライドするように構成してもよい。第2および第4実施形態についても同様である。
【0117】
また、上述した第1実施形態では、防護システム10が、ガス発生器50を備えている場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、防護システムは、ガス発生剤を備えておらず、ガス発生器に代えて、幕体を一方側に展開させるための駆動力を幕体に付与可能である火薬式の点火器を備えていてもよい。第2から第4実施形態についても同様である。
【0118】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0119】
10,310 防護システム
20,320 防護装置
21 筐体
21a 本体部
21b 蓋部
22,122 収容部
23,123,223,323,423 幕体
24,224,324,424 案内部
24a,224a,324a,424a 伸縮部
24b,224b 支持部
24c,124c,224c 連結部
24d 第1アーム部
24e 第2アーム部
24f 可動支軸
25 制御装置
25a 受信部
25b 制御部
26 保持部
30 リモートコントローラ
40 移動機構
41 固定部材
42 有底筒状部材
43 ピストン部材
44 棒状部材
50,250,350 ガス発生器
122a 芯材
224d,224e 筒状部材
224f ピストン部
224g 空間
327 作動制御部
328 演算部
360 カメラ
370 センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12