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特開2025-140253蓄電デバイス電極用スラリー製造装置および蓄電デバイス電極用スラリーの製造方法
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  • 特開-蓄電デバイス電極用スラリー製造装置および蓄電デバイス電極用スラリーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140253
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】蓄電デバイス電極用スラリー製造装置および蓄電デバイス電極用スラリーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20250919BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20250919BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20250919BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20250919BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01G11/86
H01G13/00 381
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039527
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】杉本 憲哉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 桂介
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB02
5E078AB06
5E078BB30
5E082AB09
5E082BC38
5E082LL21
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050GA10
5H050GA29
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】電極用スラリーの品質を向上させる。
【解決手段】電極用スラリー製造装置10は、材料投入機30と、供給機40と、多軸混練機50とを備えている。材料投入機30は、複数種の電極材料A~Cをまとめて供給機40に投入する。供給機40は、投入口41aと、攪拌室41と、排出口41b1と、送り羽根43,44と、らせん状の羽根45とを備えている。投入口41aには、材料投入機30から電極材料A~Cが投入される。攪拌室41では、電極材料A~Cが攪拌される。排出口41b1は、攪拌室41の底部41bに設けられている。送り羽根43,44は、攪拌室41の底部41bに設けられた軸46に取り付けられている。送り羽根43,44は、排出口41b1に電極材料A~Cを送り出す。らせん状の羽根45は、送り羽根43,44の上に配置され、かつ、軸46に取り付けられている。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料投入機と、
供給機と、
多軸混練機と
を備え、
前記材料投入機は、複数種の電極材料をまとめて前記供給機に投入するように構成されており、
前記供給機は、
前記材料投入機から前記電極材料が投入される投入口と、
前記電極材料が攪拌される攪拌室と、
前記攪拌室の底部に設けられ、前記電極材料が前記多軸混練機に向けて送り出される排出口と、
前記攪拌室の前記底部に設けられた軸に取り付けられており、前記排出口に前記電極材料を送り出す送り羽根と、
前記送り羽根の上に配置され、かつ、前記軸に取り付けられているらせん状の羽根と
を備えた、
電極用スラリー製造装置。
【請求項2】
前記らせん状の羽根は、前記軸の径方向において、前記軸と繋がっている、請求項1に記載された電極用スラリー製造装置。
【請求項3】
前記らせん状の羽根には、前記電極材料が通過する複数の孔が形成されている、請求項1または2に記載された電極用スラリー製造装置。
【請求項4】
前記複数の孔は、前記らせん状の羽根が巻かれる方向に沿って間欠的に形成されている、請求項3に記載された電極用スラリー製造装置。
【請求項5】
前記孔は、前記軸の径方向に沿った長孔である、請求項3に記載された電極用スラリー製造装置。
【請求項6】
複数種の電極材料をそれぞれ予め定められた重量計量し、供給機に入れる工程と、
前記複数種の電極材料を前記供給機内で攪拌する工程と、
攪拌された前記複数種の電極材料を多軸混練機に供給する工程と、
前記多軸混練機で前記複数種の電極材料を混練する工程と
を含み、
前記供給機は、
材料投入機から前記電極材料が投入される投入口と、
前記電極材料が攪拌される攪拌室と、
前記攪拌室の底部に設けられ、前記電極材料が前記多軸混練機に向けて送り出される排出口と、
前記攪拌室の前記底部に設けられた軸に取り付けられており、前記排出口に前記電極材料を送り出す送り羽根と、
前記送り羽根の上に配置され、かつ、前記軸に取り付けられているらせん状の羽根と
を備えた、
電極用スラリーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス電極用スラリー製造装置および蓄電デバイス電極用スラリーの製造方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-233380号公報には、電極用スラリーを連続的に製造する、二次電池用電極用スラリーの連続製造装置が開示されている。連続製造装置は、供給部と、メカノケミカル処理部と、第1混練分散処理部と、第2分散処理部とを含んでいる。供給部は、少なくとも粉体の電極活物質を含む粉体電池材料を供給する。メカノケミカル処理部は、粉体電池材料にメカノケミカル処理を施す。第1混練分散処理部は、液状バインダーとメカノケミカル処理物とに混練分散処理を施す。第2混練分散処理部は、第1混練分散処理部で処理された混練物を希釈剤で希釈する。かかる連続製造装置によると、再現性良く、連続的に電極用スラリーを製造することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献2】特開2011-233380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、複数種の電極材料を用いて製造される電極用スラリーの品質を向上させたいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示される電極用スラリー製造装置は、材料投入機と、供給機と、多軸混練機と
を備えている。材料投入機は、複数種の電極材料をまとめて供給機に投入するように構成されている。供給機は、投入口と、攪拌室と、排出口と、送り羽根と、らせん状の羽根とを備えている。投入口には、材料投入機から電極材料が投入される。攪拌室では、電極材料が攪拌される。排出口は、攪拌室の底部に設けられている。排出口からは、電極材料が多軸混練機に向けて送り出される。送り羽根は、攪拌室の底部に設けられた軸に取り付けられている。送り羽根は、排出口に電極材料を送り出す。らせん状の羽根は、送り羽根の上に配置され、かつ、軸に取り付けられている。かかる電極用スラリー製造装置によると、複数種の電極材料を用いて製造される電極用スラリーの品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、電極用スラリーの製造方法のフローチャートである。
図2図2は、電極用スラリー製造装置10の模式図である。
図3図3は、供給機40の模式図である。
図4図4は、他の実施形態にかかる供給機40Aの模式図である。
図5図5は、他の実施形態にかかる供給機40Bの模式図である。
図6図6は、他の実施形態にかかる供給機40Cの模式図である。
図7図7は、他の実施形態にかかる供給機40Dの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、ここで開示される技術の一実施形態について図面を参照して説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略される。
【0008】
〈電池の製造方法〉
図1は、電極用スラリーの製造方法のフローチャートである。図1に示されているように、複数種の電極材料をそれぞれ予め定められた重量計量し、供給機に入れる工程S1と、複数種の電極材料を供給機内で攪拌する工程S3と、攪拌された複数種の電極材料を多軸混練機に供給する工程S5と、多軸混練機で複数の電極材料を混練する工程S7とを含んでいる。電極用スラリーは、電極用スラリー製造装置10(図2参照)を用いて製造される。
【0009】
ここで開示される電極用スラリー製造装置および電極用スラリーの製造方法は、種々の蓄電デバイスに用いられる電極用スラリーの製造装置および製造方法に適用可能である。ここで、「蓄電デバイス」とは、一対の電極(正極および負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電反応が生じる装置を包含する概念である。ここに開示される技術における蓄電デバイスは、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の二次電池の他に、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ等も包含する。以下では、ここで開示される技術について、リチウムイオン二次電池用の電極用スラリーを製造する製造装置および製造方法を一例として説明する。
【0010】
〈電極用スラリー製造装置10〉
図2は、電極用スラリー製造装置10の模式図である。図2では、材料が供給されまたは送られる方向は、矢印で示されている。電極用スラリー製造装置10では、電極材料と、溶媒とが混錬され、電極合材スラリーが製造される。この実施形態では、電極用スラリー製造装置10では、正極合材を含んだ正極合材スラリーが製造される。図2に示されているように、電極用スラリー製造装置10は、材料供給機20と、材料投入機30と、供給機40と、多軸混練機50とを備えている。
【0011】
はじめに、複数種の電極材料A~Cは、材料供給機20においてそれぞれ予め定められた重量計量され、材料投入機30によって供給機40に入れられる(S1)。
【0012】
〈材料供給機20〉
材料供給機20は、供給機21~23と、計量機27~29とを備えている。供給機21~23からは、それぞれ粉体の電極材料A~Cが供給される。供給機21~23としては、一定量の粉体材料を供給可能な公知の装置が用いられうる。供給機21~23としては、サークルフィーダ、スクリューフィーダ、ロータリーフィーダ、ベルトフィーダ等が用いられうる。
【0013】
供給機21,23には、電極材料A,Cが収容されている。この実施形態では、電極材料A,Cは、正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物である。ここでは、電極材料Aは、平均粒子径4μmでありタップ密度2.2g/cmのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物である。電極材料Cは、平均粒子径17μmでありタップ密度2.4g/cmのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物である。供給機22には、電極材料Bが収容されている。この実施形態では、電極材料Bは、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF:PolyVinylidene DiFluoride)である。ここでは、電極材料Bは、密度1g/cmのPVDFである。
【0014】
なお、正極活物質およびバインダは、特に限定されず、従来からリチウムイオン二次電池の正極活物質およびバインダとして用いられる各種の材料を特に制限なく使用することができる。例えば、正極活物質としては、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMn)や、これらの複合体(例えば、LiNi0.5Mn1.5、LiNi1/3Co1/3Mn1/3)などの、リチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含む酸化物(リチウム遷移金属酸化物)の粒子や、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)などの、リチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含むリン酸塩の粒子などが用いられうる。バインダはとしては、例えば、(メタ)クリル酸エステル重合体などのアクリル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのハロゲン化ビニル樹脂、ポリエチレンオキサイド(PEO)などのポリアルキレンオキサイドなどが用いられうる。また、後の工程の攪拌および混練の容易性の観点から、供給機から供給される粉体の電極材料の密度(またはタップ密度)は、0.5~3.0g/cmであることが好ましい。
【0015】
計量機27~29は、供給機21~23から供給される電極材料A~Cを計量する装置である。計量機27~29には、それぞれ供給機21~23から供給される電極材料A~Cが入れられる容器31が載せられている。容器31は、インデックステーブル25に配置されている。インデックステーブル25には、複数(図2に示されている実施形態では、6つ)の容器31が配置可能である。インデックステーブル25は、軸25aに接続された駆動装置25bによって予め定められた方向に、予め定められたタイミングで回転駆動される。インデックステーブル25が回転することによって、容器31は、供給機21~23から電極材料A~Cが供給される位置を順次移動する。この時、計量機27~29によって、容器31に供給される電極材料A~Cの重量がそれぞれ計量される。容器31が、電極材料A~Cが供給される位置を移動する際には、他の容器31も同じ方向、同じタイミングで移動する。1の容器31に材料が供給されると、当該容器31に続く他の容器31にも順次材料が供給される。
【0016】
計量機27~29では、電極材料A~Cは、それぞれ予め定められた重量計量される。計量機27~29としては、例えば、天秤、ロードセル等が用いられうる。はじめに、容器31は、電極材料Aが供給される位置に移動する。容器31は、計量機27にセットされる。計量機27によって、供給機21から容器31に供給される電極材料Aの重量が計量される。次に、容器31は、電極材料Bが供給される位置に移動する。容器31は、計量機28にセットされる。計量機28によって、供給機22から容器31に供給される電極材料Bの重量が計量される。次に、容器31は、電極材料Cが供給される位置に移動する。容器31は、計量機29にセットされる。計量機29によって、供給機23から容器31に供給される電極材料Cの重量が計量される。
【0017】
計量機27~29で計量される電極材料A~Cの重量は、目的の電極合材スラリーの組成に応じて適宜設定される。正極合材スラリーに含まれる正極活物質とバインダと導電材の重量比は、例えば、正極活物質:バインダ:導電材=96.0~99.0:0.5~2.0:0.5~2.0程度に設定されうる。この実施形態では、正極合材スラリーに含まれる正極活物質とバインダと導電材の重量比は、正極活物質:バインダ:導電材=97.5:1.0:1.5に設定されている。計量機27~29では、容器31の電極材料A~C重量比が、電極材料A(正極活物質):電極材料B(バインダ):電極材料C(正極活物質)=48.75:1.0:48.75になるように計量されている。なお、この実施形態では、導電材としてアセチレンブラック(AB)が用いられる。導電材としてのアセチレンブラックは、ペーストの状態で後述する多軸混練機50に入れられる。
【0018】
この実施形態では、電極材料A~Cは、電極材料A、電極材料B、電極材料Cの順で容器31に入れられている。容器31には、容器31の底から開口に向かって順に、電極材料A(正極活物質)、電極材料B(バインダ)、電極材料C(正極活物質)が入れられている。容器31に入れる工程S1では、相対的に密度の大きい正極活物質を容器31に入れた後に相対的に密度の小さいバインダを容器31に入れ、さらに、相対的に密度の大きい正極活物質を容器31に入れている。
【0019】
なお、電極材料A~Cを材料投入機30に入れる方法は特に限定されない。電極材料A~Cは、例えば、異なる容器で計量された後に容器31に入れられてもよい。また、電極材料A~Cを容器31に入れる順番は、上述した形態に限定されない。例えば、電極材料C、電極材料B、電極材料Aの順で容器31に入れられてもよい。容器31に材料を入れる順番は、材料の物性、数等に応じて適宜設定されてもよい。
【0020】
〈材料投入機30〉
材料投入機30は、複数種の電極材料A~Cをまとめて供給機40に投入するように構成されている。この実施形態では、材料投入機30として、容器31を反転させることによって電極材料A~Cを供給機40に投入する反転投入機が用いられている。以下、材料投入機30を、反転投入機30とも称する。なお、材料投入機30としては、反転投入機30に限られず、従来公知の材料投入機を用いることができる。材料投入機30としては、サークルフィーダ、スクリューフィーダ、ロータリーフィーダ、ベルトフィーダ等が用いられてもよい。
【0021】
反転投入機30は、アーム32と、駆動装置33とを備えている。アーム32は、容器31を把持できるように構成されている。駆動装置33は、アーム32に設定された支点32aを軸としてアーム32を駆動する装置である。駆動装置33は、例えば、モータ、スプロケット等によって実現されうる。
【0022】
この実施形態では、駆動装置33は、支点32aを軸にして供給機40に向かってアーム32を回転させる。駆動装置33は、アーム32を約180度回転させたところで停止させる。これによって、容器31の開口は、上方に向けられた状態(図2において破線で示されている状態)から、下方に向けられた状態に反転される。反転投入機30および供給機40の位置は、供給機40の攪拌室41(図3参照)の上で容器31が反転する位置に設定されている。攪拌室41の上部には、材料が投入される投入口41a(図3参照)が設けられている。電極材料A~Cは、反転した容器31から落ち、投入口41aから攪拌室41に入れられる。容器31からは、電極材料C、電極材料B、電極材料Aの順で攪拌室41に投入される。なお、電極材料A~Cを供給機40に入れる際には、反転投入機30以外の装置が用いられてもよい。例えば、昇降軸に沿って容器が昇降され反転される、昇降式の反転投入機が用いられていてもよい。
【0023】
電極材料A~Cが供給機40に入れられた後は、アーム32は、駆動装置33によって逆方向に駆動される。容器31は、インデックステーブル25に戻される。その後、容器31は、インデックステーブル25の回転によって移動する。このとき、反転投入機30には、計量された電極材料A~Cが入れられた容器31が、新たに送られる。これが繰り返されることによって、電極材料A~Cが入れられた容器31が一定間隔で反転投入機30に送られる。
【0024】
電極材料A~Cは、反転投入機30によって間欠的に供給機40へ投入される。材料供給機20での電極材料A~Cの計量と、反転投入機30による電極材料A~Cの反転投入は、連動して実行されうる。この実施形態では、約30秒のサイクルで、反転投入機30の容器31への電極材料A~Cの投入と、反転投入機30から供給機40への反転投入が繰り返される。このため、供給機40には、略一定の量の電極材料A~Cが略一定の間隔で投入される。換言すると、電極材料A~Cを計量し供給機40に入れる工程S1は、一定の間隔で繰り返し実施される。供給機40内には、重量比が調整された電極材料A~Cが予め定められた間隔で供給されうる。電極材料A~Cは、供給機40内へ投入される度に計量されているので、供給機40内の電極材料A~Cの重量比が安定しやすい。複数の電極材料A~Cが用いられる場合にも、供給機40に投入される混合粉体材料の配合比が保証されやすい。
【0025】
供給機40に入れられた電極材料A~Cは、供給機40内で攪拌される(S3)。
【0026】
〈供給機40〉
図3は、供給機40の模式図である。図3では、電極材料A~Cが送られる方向およびらせん状の羽根45が回転する方向は、矢印で示されている。図3では、供給機40の高さ方向に沿った断面が模式的に示されている。この実施形態では、供給機40として、予め定められた分量の材料を連続的に供給する定量供給機(以下、供給機40と称する。)が用いられている。この実施形態では、供給機40は、いわゆるサークルフィーダである。供給機40としてサークルフィーダを用いることによって、電極材料A~Cの供給量が安定し、また、設備が小型化されうる。
【0027】
図3に示されているように、供給機40は、投入口41aと、攪拌室41と、排出口41b1と、送り羽根43,44と、らせん状の羽根45とを備えている。投入口41aと排出口41b1は、攪拌室41に設けられている。投入口41aには、材料投入機30から電極材料A~Cが投入される。攪拌室41では、電極材料A~Cが攪拌される。攪拌室41で攪拌された電極材料A~Cは、排出口41b1から多軸混練機50に向けて送り出される。
【0028】
〈攪拌室41〉
攪拌室41は、略円筒状に形成されている。攪拌室41の上部は開口しており、電極材料A~Cが投入される投入口41aが形成されている。攪拌室41は、略円盤状の底部41bを有している。底部41bの一部には、排出口41b1が形成されている。攪拌室41は、排出口41b1を介して定量供給室42と接続されている。排出口41b1の上方には、中間プレート41cが設けられている。中間プレート41cは、一部に形成された開口41c1を除いて略円盤状である。中間プレート41cは、少なくとも排出口41b1の上方を覆う寸法である。中間プレート41cの開口41c1と、底部41bの排出口41b1とは、平面視において異なる位置に形成されている。中間プレート41cの開口41c1と、底部41bの排出口41b1とは、底部41bの略中央部に設けられた軸46を挟んで反対側に設けられている。
【0029】
〈送り羽根43,44〉
送り羽根43,44は、排出口41b1に向かって電極材料A~Cを送り出す。送り羽根43,44は、軸46に取り付けられている。送り羽根43,44は、軸46の回転に応じて回転する。軸46は、下部46aと上部46bとから構成されている。軸46の下部46aおよび上部46bは、それぞれ略円柱状である。下部46aは、上部46bよりも径が大きく、かつ、短い。軸46は、底部41bに設けられており、底部41bの略中央部から上方に延びている。
【0030】
送り羽根43,44は、略棒状の部材である。送り羽根43,44は、軸46から径方向外側に向かって延びている。送り羽根43は、中間プレート41cの下方に設けられている。送り羽根44は、中間プレート41cの上方に設けられている。換言すると、送り羽根43と送り羽根44は、それぞれ中間プレート41cを挟む位置に設けられている。送り羽根43は、底部41bの上面に沿っている。送り羽根43は、軸46の下部46aのうち、中間プレート41cよりも下方の部位から4本延びている。4本の送り羽根43は、軸46の周方向において略等間隔に設けられている。送り羽根44は、中間プレート41cの上面に沿っている。送り羽根44は、軸46の下部46aのうち、中間プレート41cよりも下方の部位から互いに反対方向に向かって2本延びている。軸46には、駆動装置47が接続されている。駆動装置47は、例えば、モータである。駆動装置47は、減速機、変速機等を介して軸46に接続されていてもよい。駆動装置47が軸46を回転駆動することによって、送り羽根43,44は、回転する。
【0031】
〈らせん状の羽根45〉
らせん状の羽根45は、電極材料A~Cを攪拌室41内で攪拌する。らせん状の羽根45は、軸46の上部46bに取り付けられている。らせん状の羽根45は、軸46の回転に応じて回転する。らせん状の羽根45は、軸46の下部46aに取り付けられた送り羽根43の上に配置されている。駆動装置47が軸46を回転させることによって、送り羽根43,44とらせん状の羽根45は、軸46の周方向に沿って同じ方向かつ同じ回転数で回転する。なお、「らせん状の羽根45」は、軸46の周方向および高さ方向において予め定められた方向に沿って巻かれた部材である。
【0032】
この実施形態では、らせん状の羽根45は、板状であり、軸46に対して巻き付けられている。換言すると、らせん状の羽根45は、軸46の径方向において、軸46の外周面と繋がっている。らせん状の羽根45は、いわゆるスクリュー羽根である。らせん状の羽根45は、基端から先端に向かって時計回りに2周巻き付けられている。らせん状の羽根45の外縁は、攪拌室41の内周面に対して、径方向において略一定の隙間が空いている。当該隙間は、電極材料A~Cが通過可能な寸法に設定されている。
【0033】
らせん状の羽根45には、複数の孔45aが形成されている。複数の孔45aは、電極材料A~Cが通過する寸法に設定されている。孔45aの寸法は、特に限定されないが、内径または最も細い部分の間隔が1mm以上に設定されていてもよく、例えば、3mm以上に設定されていることが好ましい。孔45aの寸法は、特に限定されないが、内径または最も細い部分の間隔が20mm以下に設定されていてもよく、例えば、10mm以下に設定されていることが好ましい。
【0034】
孔45aは、軸46の径方向に沿った長孔である。孔45aの形状は特に限定されない。この実施形態では、孔45aの外形形状は、一対の平行な直線と、当該一対の平行な直線を繋ぐ円弧状の線から構成された略オーバル形状である。なお、孔45aの形状は、かかるオーバル形状に限定されず、長方形等の多角形状であってもよく、楕円形状であってもよい。特に限定されないが、孔45aの短径に対する長径の比(アスペクト比)は、1よりも大きく、2以上であることが好ましい。孔45aの短径に対する長径の比は、10以下であってもよく、7以下であることが好ましい。なお、孔45aは、必ずしも長孔でなくてもよく、円形状であってもよく、正方形等の正多角形であってもよい。
【0035】
複数の孔45aは、らせん状の羽根45が巻かれる方向に沿って間欠的に形成されている。複数の孔45aは、略同一の寸法および形状であり、略一定の間隔で形成されている。複数の孔45aは、径方向において、らせん状の羽根45の外縁寄りに形成されている。孔45aは、らせん状の羽根45の幅方向(軸46の径方向)において、中間部よりも外側に設けられている。孔45aの中心は、らせん状の羽根45の幅方向において、中間部よりも外側に位置している。
【0036】
上述した供給機40内では、電極材料A~Cが攪拌される。以下、電極材料A~Cの供給機40への供給と、供給機40内での攪拌について説明する。
【0037】
攪拌室41の上方で容器31が反転されることによって、投入口41aから投入された電極材料A~Cは、容器31に入れられた順番とは逆の順番(この実施形態では、電極材料C,B,Aの順番)で供給機40に投入される。
【0038】
供給機40の攪拌室41内では、駆動装置47による軸46の回転に応じて、送り羽根43,44とらせん状の羽根45が回転している。ここでは、送り羽根43,44とらせん状の羽根45は、反時計回り(らせん状の羽根45が下端から先端に巻かれている方向とは反対方向)に回転している。電極材料A~Cが攪拌室41内へ投入されると、投入された電極材料A~Cは、回転するらせん状の羽根45に当たりつつ、攪拌室41内に溜まる。
【0039】
電極材料A~Cのうちの一部は、送り羽根44の上端以下の位置に溜まる。送り羽根44の上端以下の位置に溜まった電極材料A~Cは、送り羽根44によって開口41c1に向かって送られる。送られた電極材料A~Cは、開口41c1から下方に落ち、底部41bに溜まる。底部41bに溜まった電極材料A~Cは、送り羽根43によって排出口41b1に向かって送られる。送られた電極材料A~Cは、排出口41b1から排出される。
【0040】
電極材料A~Cのうちの一部は、送り羽根44よりも高い位置に溜まる。送り羽根44よりも高い位置に溜まった電極材料A~Cは、回転するらせん状の羽根45の回転方向に沿って攪拌される。また、電極材料A~Cは、一部、回転するらせん状の羽根45によって、上方に持ち上げられうる。持ち上げられた電極材料A~Cは、らせん状の羽根45に形成された孔45aから下方に落ち、または、らせん状の羽根45の外縁から落ちる。これによって、電極材料A~Cは、上下方向にも攪拌されうる。
【0041】
下方に落ちた電極材料A~Cは、送り羽根44よりも高い位置に溜まった場合には、らせん状の羽根45によって再び持ち上げられ、攪拌されうる。下方に落ちた電極材料A~Cは、送り羽根44の上端以下の位置に溜まった場合には、送り羽根44によって開口41c1に向かって送られる。次に、電極材料A~Cは、送り羽根43によって排出口41b1に向かって送られる。このように、電極材料A~Cは、らせん状の羽根45によって攪拌されつつ、送り羽根43,44によって略一定量ずつ排出口41b1から排出される。
【0042】
電極材料A~Cは、間欠的に材料投入機30によって投入されている。材料投入機30から投入された電極材料A~Cは、既に攪拌室41内に溜まっている電極材料A~Cの上に溜まりうる。このため、新たに投入された電極材料A~Cは、らせん状の羽根45によって攪拌され、順次、排出口41b1から排出される。この実施形態では、らせん状の羽根45の高さは、攪拌室41内に溜まりうる電極材料A~Cの高さよりも高い位置に達している。これによって、電極材料A~Cの攪拌効率が良好でありうる。以上のように、攪拌室41では、電極材料A~Cの、材料投入機30による投入、らせん状の羽根45による攪拌、排出口41b1からの排出が順次行われる。
【0043】
この実施形態では、攪拌室41の排出口41b1には、定量供給室42が接続されている。定量供給室42は、攪拌室41よりも低い略円筒状である。定量供給室42には、送り羽根42aが設けられている。送り羽根42aは、軸42bに取り付けられている。軸42bは、底部42cの略中央部から上方に延びている。送り羽根42aは、底部42cに沿って軸42bから径方向外側に向かって湾曲して延びている。かかる形状の送り羽根42aによって、電極材料A~Cを送る量が安定しやすい。送り羽根42aは、径方向外側に向かうに従って高さが低くなっている。この実施形態では、軸42bからは、4本の送り羽根42aが延びている。なお、送り羽根42aの形状、枚数等は、特に限定されず、材料の種類等によって適宜設定されうる。軸42bには、駆動装置47が接続されている。このため、送り羽根42aは、送り羽根43,44およびらせん状の羽根45と同じタイミングで回転する。定量供給室42の底部42cには、排出口42c1が形成されている。なお、定量供給室42は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0044】
排出口42c1から排出される電極材料A~Cの量は、送り羽根42a,43,44の回転数に応じて設定される。駆動装置47によって送り羽根42a,43,44が一定速度で回転駆動されることで、排出口42c1からは、略一定量の電極材料A~Cが連続的に排出されうる。送り羽根42a,43,44の回転数は、特に限定されないが、電極材料A~Cが反転投入される間隔、量等に応じて適宜設定されうる。
【0045】
攪拌された電極材料A~Cは、供給機40の排出口41b1から排出され、多軸混練機50に供給される(S5)。
【0046】
〈多軸混練機50〉
多軸混練機50(図2参照)は、電極材料A~Cにせん断力をかけつつ混練するための装置である。電極材料A~Cは、多軸混練機50内を搬送方向に沿って搬送されつつ混練される。図2に示されているように、多軸混練機50は、バレル51と、バレル51内に設けられたシャフト52と、シャフト52を駆動する駆動装置53とを備えている。この実施形態では、多軸混練機50として、バレル51内において略平行に延びる2本のシャフト52を有する二軸混練機50が用いられている。二軸混練機50には、バレル51内の材料の温度を測定するための温度計、バレル51内の材料の温度を調整するためのチラー等が設けられていてもよい。なお、電極材料を混練する装置は、二軸混練機に限られず、例えば、四軸混練機等の多軸混練機であってもよい。
【0047】
バレル51は、筒状であり、内部に電極材料、溶媒等が入れられる空間を有する。バレル51の一方の端部には、電極材料A~Cが供給される粉体供給口51aが設けられている。粉体供給口51aは、供給機40の排出口41b1と接続されている。この実施形態では、粉体供給口51aは、定量供給室42の排出口42c1を介して排出口41b1と接続されている。粉体供給口51aよりも下流側には、複数の溶媒供給口51bが設けられている。溶媒供給口51bには、溶媒供給装置55が接続されている。溶媒供給装置55には、吐出量を一定にするためのモーノポンプが接続されていてもよい。溶媒供給口51bからは、一定の吐出量の溶媒が連続的に供給される。溶媒としては、例えば、溶媒として、水、N-メチル-2-ピロリドン(N-methylpyrrolidone、NMP)等が用いられる。複数の溶媒供給口51bの下流側には、ペースト投入口51cが設けられている。ペースト投入口51cには、ペースト供給装置56が接続されている。ペースト供給装置56には、溶媒供給装置55と同様、吐出量を一定にするためのモーノポンプが接続されていてもよい。モーノポンプには、供給される溶媒およびペーストの流量を計測する流量計が設けられていてもよい。吐出量を安定させるために、流量計で計測される流量に応じてモーノポンプのローターの回転が制御されていてもよい。ペースト投入口51cからは、一定の吐出量のペーストが連続的に供給される。この実施形態では、ペースト投入口51cからは、ペースト状の導電材(この実施形態では、アセチレンブラック)が入れられる。このように、バレル51内には、電極材料A~C、溶媒、導電材の順で正極合材スラリーの材料が供給される。ペースト投入口51cの下流には、排出口51dが設けられている。排出口51dは、バレル51において、粉体供給口51aとは反対側の端部に設けられている。排出口51dからは、完成した正極合材スラリーが排出される。
【0048】
バレル51内には、搬送方向に沿って延びるシャフト52が設けられている。シャフト52には、スクリュー52aと、パドル52bとが設けられている。スクリュー52aと、パドル52bとは、搬送方向に沿って複数設けられている。スクリュー52aと、パドル52bとは、シャフト52の外周面に設けられている。スクリュー52aは、らせん状に巻かれた羽根を有している。パドル52bは、幅広面を搬送方向に向けた板状の部材である。特に限定されないが、パドル52bは、角部が曲線状に形成された多角形状(例えば、三角形、四角形、六角形等)である。パドル52bの側周面も曲線状に形成されていてもよい。パドル52bの側周面とバレル51の内周面には、所定の隙間が形成されている。
【0049】
駆動装置53は、シャフト52を回転駆動するモータ等でありうる。シャフト52が回転することによって、スクリュー52aおよびパドル52bは、シャフト52の周方向に沿って回転する。バレル51内の材料は、スクリュー52aの羽根に押されて搬送方向に沿って搬送される。バレル51内の材料は、パドル52bの側周面とバレル51の内周面との間で、せん断力がかけられる。二軸混練機50には、バレル51内の圧力を計測する圧力計が設けられていてもよい。圧力計によって計測されるバレル51内の圧力が所要の圧力範囲になるように、駆動装置53の駆動が制御されていてもよい。
【0050】
電極材料A~Cは、上述した二軸混練機50を用いて混練される(S7)。
【0051】
供給機40内で攪拌された電極材料A~Cは、粉体供給口51aから二軸混練機50のバレル51内に供給される。バレル51内には、供給機40によって単位時間あたり略一定量の電極材料A~Cが連続的に供給される。
【0052】
電極材料A~Cは、スクリュー52aによって搬送方向に搬送される。電極材料A~Cは、パドル52bの側周面とバレル51の内周面との間を通過する際にせん断力がかけられつつ、搬送される。バレル51内を搬送される電極材料A~Cは、溶媒供給口51bから供給される溶媒と混ぜられる。溶媒は、搬送方向に沿って設けられた複数の溶媒供給口51bから分けてバレル51内に入れられる。このため、電極材料A~Cと溶媒は、段階的に混ぜられる。これによって、混練される材料内のムラが生じにくい。バレル51内を搬送される材料(ここでは、電極材料A~Cと溶媒)は、ペースト状の導電材と混ぜられる。ペースト状の導電材は、ペースト投入口51cからバレル51内に入れられる。電極材料A~C、溶媒、導電材が混練されつつ搬送され、正極合材スラリーが完成する。製造された正極合材スラリーは、排出口51dから排出される。
【0053】
製造された正極合材スラリーを用いて公知の方法で電池を製造することができる。例えば、正極合材スラリーを正極集電体の両面に塗布し、乾燥させる。これを所定のサイズに切り取り、ロールプレスで圧延することにより、正極集電体の両面に正極活物質層を備えた正極シートを準備する。負極合材スラリーを製造し、正極シートを準備した手順と同様の手順で負極活物質を備えた負極シートを準備する。正極シートと負極シートとを、セパレータシートを介して積層し、電極体を作製する。電極体を電池ケースに収容し、電池組立体を作製する。電池組立体に電解液を注液し、初期充電およびエージング処理を実施し、電池が製造される。
【0054】
ところで、電極に用いられる電極用スラリー(電極合材スラリー)は、複数の電極材料を含んでいる。複数の電極材料は、多軸混練機内で高いせん断力がかけられつつ混練される。次いで、混練された電極材料は、溶媒等に希釈され、分散される。しかしながら、複数の電極材料は、例えば、比重、粒径、粘度等、材料の物性が異なりうる。また、電極材料には、溶媒等において均一に分散しにくい材料が含まれる場合がある。均一に分散しにくい材料としては、例えば、バインダ、増粘剤等が挙げられる。物性が異なる電極材料が含まれる場合、分散性が良好ではない電極材料が含まれる場合等には、多軸混練機内において、材料が不均一になる場合には、完成した電極用スラリーにおいても材料が不均一になる懸念がある。この場合、電極用スラリーが電極合材として塗布されたときにも不均一になり、電極の品質が安定しない懸念がある。
【0055】
上述した実施形態では、電極用スラリー製造装置10は、材料投入機30と、供給機40と、多軸混練機50とを備えている。材料投入機30は、複数種の電極材料A~Cをまとめて供給機40に投入するように構成されている。供給機40は、投入口41aと、攪拌室41と、排出口41b1と、送り羽根43,44と、らせん状の羽根45とを備えている。投入口41aには、材料投入機30から電極材料A~Cが投入される。攪拌室41では、電極材料A~Cが攪拌される。排出口41b1は、攪拌室41の底部41bに設けられている。排出口41b1からは、電極材料A~Cが多軸混練機50に向けて送り出される。送り羽根43,44は、攪拌室41の底部41bに設けられた軸46に取り付けられている。送り羽根43,44は、排出口41b1に電極材料A~Cを送り出す。らせん状の羽根45は、送り羽根43,44の上に配置され、かつ、軸46に取り付けられている。
【0056】
かかる電極用スラリー製造装置10によると、攪拌室41に投入された電極材料A~Cは、らせん状の羽根45によって攪拌され、かつ、送り羽根43,44によって排出口41b1から排出され、多軸混練機50に送られる。攪拌の際、電極材料A~Cは、回転するらせん状の羽根45の回転方向に沿って攪拌される。また、電極材料A~Cは、らせん状の羽根45によって持ち上げられたり、らせん状の羽根45から落とされたりしうる。これによって、電極材料A~Cは、上下方向にも攪拌されうる。このように、電極材料A~Cは、攪拌室41内において、らせん状の羽根45の回転方向および上下方向の両方の方向に沿って攪拌されうる。これによって、電極材料A~Cは、攪拌室41内で材料の均一性が向上する。多軸混練機50に、材料の均一性が良好な電極材料A~Cが供給されることにより、多軸混練機50内で電極材料A~Cに均一にせん断力がかけられやすくなる。多軸混練機50内で電極材料A~Cの分散性が良好になりうる。その結果、電極用スラリー内の電極材料A~Cの分散性が良好になり、電極の品質が安定しうる。
【0057】
上述した実施形態では、らせん状の羽根45は、軸46の径方向において、軸46と繋がっている。持ち上げられた電極材料A~Cは、らせん状の羽根45の外縁から落ちやすくなる。これによって、電極材料A~Cは、持ち上げられ、らせん状の羽根45の外縁から外側に落ちる経路で循環しやすくなる。その結果、上下方向において電極材料A~Cがより攪拌されやすくなる。
【0058】
上述した実施形態では、らせん状の羽根45には、電極材料A~Cが通過する複数の孔45aが形成されている。持ち上げられた電極材料A~Cは、らせん状の羽根45の周囲から落ちるだけではなく、孔45aからも落ちる。持ち上げられた電極材料A~Cが落ちる位置が追加で設定されることによって、電極材料A~Cがより攪拌されやすくなる。
【0059】
上述した実施形態では、複数の孔45aは、らせん状の羽根45が巻かれる方向に沿って間欠的に形成されている。複数の孔45aは、異なる高さに間欠的に設けられている。これによって、電極材料A~Cは、種々の高さの孔45aから落ちうる。その結果、電極材料A~Cがより攪拌されやすくなる。
【0060】
上述した実施形態では、孔45aは、軸46の径方向に沿った長孔である。孔45aが軸46の径方向に沿っていることによって、らせん状の羽根45によって持ち上げられた電極材料A~Cが孔45aから落ちやすくなる。これによって、電極材料A~Cがより攪拌されやすくなる。
【0061】
上述した実施形態では、複数の電極材料A~Cは、第1電極材料(この実施形態では、電極材料BとしてのPVDF)と、第1電極材料よりも密度が大きい第2電極材料(この実施形態では、電極材料A,Cとしての正極活物質)とを備えている。容器31に入れる工程では、第2電極材料の一部(電極材料A)を容器31に入れた後に第1電極材料(電極材料B)を容器31に入れ、さらに、第2電極材料の残り(電極材料C)を容器31に入れる。容器31内では、相対的に密度の小さい電極材料Bは、相対的に密度の大きい電極材料A,Cで挟まれている。これによって、容器31への電極材料A~Cの投入時、および、容器31から供給機40への電極材料A~Cの投入時に、電極材料Bの舞い上がりが低減されうる。その結果、二軸混練機50に供給される電極材料A~Cの重量比が安定しやすい。
【0062】
なお、ここでは、正極合材スラリーを製造する方法を一例として説明したが、かかる形態に限定されない。電極用スラリー製造装置10では、負極合材スラリーが製造されてもよい。
【0063】
負極合材スラリーには、例えば、負極活物質と、増粘剤と、バインダとが含まれうる。負極合材スラリーに含まれる材料は、特に限定されず、従来からリチウムイオン二次電池の材料として用いられる各種の材料を特に制限なく使用することができる。負極活物質としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、アモルファスカーボンおよびこれらの複合体(例えばアモルファスカーボンコートグラファイト)などに代表される炭素材料、あるいは、シリコン(Si)などのリチウムと合金を形成する材料、シリコン化合物(SiOなど)などのリチウム貯蔵性化合物が用いられうる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)が用いられうる。バインダとしては、例えば、スチレンブタジエンラバー(SBR)等が用いられうる。負極合材スラリーに含まれる負極活物質と増粘剤とバインダの重量比は、例えば、負極活物質:増粘剤:バインダ=96.0~99.0:0.5~2.0:0.5~2.0程度に設定されうる。
【0064】
負極合材スラリーを製造する場合には、容器31には、負極活物質と、増粘剤としてのCMCとが入れられうる。バインダとしてのSBRは、正極合材スラリーを製造する時のペースト状のアセチレンブラックと同様、ペースト投入口51cから投入されうる。負極合材スラリーを製造する工程は、正極合材スラリーを製造する工程と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0065】
なお、供給機40の構成は、上述した実施形態に限定されない。図4図7は、他の実施形態にかかる供給機40A~40Dの模式図である。なお、図4図7に示されている供給機40A~40Dのらせん状の羽根45A~45Dには、孔45a(図3参照)が形成されていてもよい。
【0066】
図4に示されている供給機40Aでは、軸46には、2枚のらせん状の羽根45Aが巻かれている。2枚のらせん状の羽根45Aは、軸46に対して軸対称である。2枚のらせん状の羽根45Aは、それぞれ軸46に対して約1.5周巻かれている。図5に示されている供給機40Bでは、2枚のらせん状の羽根45Bは、それぞれ軸46に対して約1周巻かれている。供給機40Bは、2枚のらせん状の羽根45Bの巻き数が約1周であること以外は、供給機40Aと同様の構成である。このように、軸46に巻かれるらせん状の羽根の、巻き数および単位長さあたりの枚数は、特に限定されず、電極材料A~Cの構成等に応じて、適宜設定されうる。
【0067】
図6に示されている供給機40Cでは、軸46には、2枚のらせん状の羽根45Cが巻かれている。らせん状の羽根45Cは、基端および上端を除いて、軸46とは略一定の間隔を空けて巻かれた帯状である。らせん状の羽根45Cは、電極材料A~Cが載る上面を備えている。らせん状の羽根45Cは、軸46の基端および上端において、軸46から延びる棒状の部材と繋がっている。これによって、軸46とらせん状の羽根45Cは、隙間が空けられた状態で支持されている。2枚のらせん状の羽根45Cは、軸46に対して軸対称である。2枚のらせん状の羽根45Cは、それぞれ軸46に対して約1.5周巻かれている。電極材料A~Cは、らせん状の羽根45Cの外縁からだけではなく、当該隙間(らせん状の羽根45Cの内縁)からも落ちうる。図7に示されている供給機40Dでは、2枚のらせん状の羽根45Dは、それぞれ軸46に対して約1周巻かれている。供給機40Dは、2枚のらせん状の羽根45Dの巻き数が約1周であること以外は、供給機40Cと同様の構成である。このように、軸46と、らせん状の羽根の周囲には、隙間が形成されていてもよい。
【0068】
本発明者の試行によると、らせん状の羽根の枚数が少ない程、粒径が小さい電極材料を攪拌させやすく、らせん状の羽根の枚数が多い程、粒径が大きい電極材料を攪拌させやすいことがわかった。また、らせん状の羽根の巻き数が少ない程、粒径が小さい電極材料を攪拌させやすく、らせん状の羽根の巻き数が多い程、粒径が大きい電極材料を攪拌させやすいことがわかった。また、電極材料の粒径が小さい場合には、軸と、らせん状の羽根との間に隙間が形成されていると、電極材料を攪拌させやすいことがわかった。上述した実施形態の正極合材スラリーを製造する場合、供給機40A~40Dの中では、供給機40Aを用いた場合に電極材料A~Cを拡散させやすいことがわかった。
【0069】
以上、ここで開示される技術について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられた実施形態などは本発明を限定しない。また、ここで開示される技術は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。また、本明細書は、以下の各項に記載の開示を含んでいる。
【0070】
項1:
材料投入機と、
供給機と、
多軸混練機と
を備え、
前記材料投入機は、複数種の電極材料をまとめて前記供給機に投入するように構成されており、
前記供給機は、
前記材料投入機から前記電極材料が投入される投入口と、
前記電極材料が攪拌される攪拌室と、
前記攪拌室の底部に設けられ、前記電極材料が前記多軸混練機に向けて送り出される排出口と、
前記攪拌室の前記底部に設けられた軸に取り付けられており、前記排出口に前記電極材料を送り出す送り羽根と、
前記送り羽根の上に配置され、かつ、前記軸に取り付けられているらせん状の羽根と
を備えた、
電極用スラリー製造装置。
【0071】
項2:
前記らせん状の羽根は、前記軸の径方向において、前記軸と繋がっている、項1に記載された電極用スラリー製造装置。
【0072】
項3:
前記らせん状の羽根には、前記電極材料が通過する複数の孔が形成されている、項1または2に記載された電極用スラリー製造装置。
【0073】
項4:
前記複数の孔は、前記らせん状の羽根が巻かれる方向に沿って間欠的に形成されている、項3に記載された電極用スラリー製造装置。
【0074】
項5:
前記孔は、前記軸の径方向に沿った長孔である、項3または4に記載された電極用スラリー製造装置。
【0075】
項6:
複数種の電極材料をそれぞれ予め定められた重量計量し、供給機に入れる工程と、
前記複数種の電極材料を前記供給機内で攪拌する工程と、
攪拌された前記複数種の電極材料を多軸混練機に供給する工程と、
前記多軸混練機で前記複数種の電極材料を混練する工程と
を含み、
前記供給機は、
材料投入機から前記電極材料が投入される投入口と、
前記電極材料が攪拌される攪拌室と、
前記攪拌室の底部に設けられ、前記電極材料が前記多軸混練機に向けて送り出される排出口と、
前記攪拌室の前記底部に設けられた軸に取り付けられており、前記排出口に前記電極材料を送り出す送り羽根と、
前記送り羽根の上に配置され、かつ、前記軸に取り付けられているらせん状の羽根と
を備えた、
電極用スラリーの製造方法。
【符号の説明】
【0076】
A~C 電極材料
10 電極用スラリー製造装置
20 材料供給機
21~23 供給機
25 インデックステーブル
25a 軸
25b 駆動装置
27~29 計量機
30 材料投入機(反転投入機)
31 容器
32 アーム
32a 支点
33 駆動装置
40,40A~40D 供給機
41 攪拌室
41a 投入口
41b 底部
41b1,42c1 排出口
41c 中間プレート
41c1 開口
42 定量供給室
42a,43,44 送り羽根
42b 軸
42c 底部
43,44 送り羽根
45,45A~45D らせん状の羽根
45a 孔
46 軸
46a 下部
46b 上部
47 駆動装置
50 多軸混練機(二軸混練機)
51 バレル
51a 粉体供給口
51b 溶媒供給口
51c ペースト投入口
51d 排出口
52 シャフト
52a スクリュー
52b パドル
53 駆動装置
55 溶媒供給装置
56 ペースト供給装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7