(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140262
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】光走査装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20250919BHJP
G02B 26/12 20060101ALI20250919BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20250919BHJP
G03G 15/04 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
G02B26/10 E
G02B26/12
G02B26/10 B
B41J2/47 101D
G03G15/04 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039542
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 一己
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隼人
【テーマコード(参考)】
2C362
2H045
【Fターム(参考)】
2C362AA03
2C362BA04
2C362BA86
2H045AA01
2H045BA02
2H045CA68
2H045CB35
(57)【要約】
【課題】従来の構成に対して小型化及び光学性能の向上の少なくとも一方を図った光走査装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る光走査装置は、光源からの光束を偏向して被走査面を主走査方向に走査する偏向器と、第1及び第2の光学面を有する結像光学素子と、反射面を有する反射光学素子とを備え、光源からの光束は、第2の光学面、第1の光学面、偏向器、第1の光学面、第2の光学面、反射面、第2の光学面、及び第1の光学面を順に介して被走査面に導光されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光束を偏向して被走査面を主走査方向に走査する偏向器と、
第1及び第2の光学面を有する結像光学素子と、
反射面を有する反射光学素子とを備え、
前記光源からの前記光束は、前記第2の光学面、前記第1の光学面、前記偏向器、前記第1の光学面、前記第2の光学面、前記反射面、前記第2の光学面、及び前記第1の光学面を順に介して前記被走査面に導光されることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記光源からの前記光束を前記偏向器に入射させる入射光学系を備え、
前記入射光学系は、前記光束を反射する反射光学素子を含まないことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記偏向器の軸上偏向点と前記反射面との間の距離をL1、前記軸上偏向点と前記被走査面との間の距離をL2としたとき、
L2≦L1
なる条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記結像光学素子は、副走査断面において前記偏向器に向かって凹のメニスカス形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記結像光学素子は、主走査断面において前記偏向器に向かって凸のメニスカス形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記第2の光学面上において、前記光源からの前記光束と前記偏向器によって偏向された前記光束とは、副走査方向において前記第2の光学面の面頂点に対して互いに反対側を通過することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の光学面それぞれの有効領域は、副走査断面において連続的な形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記光源からの前記光束を前記偏向器に入射させる入射光学系を備え、
前記入射光学系は、前記光源からの前記光束の主走査断面における収束度を変更すると共に、前記光源からの前記光束を副走査断面において集光する光学素子を有することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記偏向器によって偏向された前記光束の光路上において前記結像光学素子以外の屈折光学素子は設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項10】
前記偏向器によって偏向された前記光束の光路上において前記反射光学素子以外の反射光学素子は設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項11】
前記光源からの前記光束を前記偏向器に入射させる入射光学系を備え、
前記入射光学系において、前記光束の光路上における前記結像光学素子と前記偏向器との間に屈折光学素子は設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項12】
光源からの光束を偏向して被走査面を主走査方向に走査する偏向器と、
第1及び第2の光学面を有する第1の結像光学素子と、
反射面を有する第1の反射光学素子とを備え、
前記偏向器によって偏向された前記光束は、前記第1の光学面、前記第2の光学面、前記反射面、前記第2の光学面、及び前記第1の光学面を順に介して前記被走査面に導光され、
前記第1の結像光学素子は、主走査断面において前記偏向器に向かって凸のメニスカス形状を有していることを特徴とする光走査装置。
【請求項13】
前記第2の光学面上において、前記偏向器によって偏向された前記光束と前記反射面によって反射された前記光束との双方が通過する領域の主走査方向における幅をA、前記偏向器によって偏向された前記光束は通過しない一方で、前記反射面によって反射された前記光束が通過する領域の主走査方向における幅をBとしたとき、
0.9≦B/A≦2.0
なる条件を満たすことを特徴とする請求項12に記載の光走査装置。
【請求項14】
前記第2の光学面上において、前記偏向器によって偏向された前記光束のうち主走査方向において前記第1の結像光学素子の光軸から最も離隔した位置を通過する前記光束の主光線の通過位置と前記光軸との間の距離をh、主走査断面における前記主光線が前記第2の光学面から出射したときの進行方向と前記反射面の法線とのなす角度をθ、前記第2の光学面の面頂点と前記反射面との間の距離をL3としたとき、
0.9≦2×L3×tanθ/h≦2.0
なる条件を満たすことを特徴とする請求項12に記載の光走査装置。
【請求項15】
前記偏向器によって偏向された前記光束の光路上において前記偏向器に最も近い前記第1の結像光学素子を含む少なくとも一つの結像光学素子を有し、前記偏向器によって偏向された前記光束を前記被走査面に導光する結像光学系を備え、
前記第2の光学面の面頂点と前記反射面との間の距離をL3、前記第1の光学面の面頂点と前記偏向器の軸上偏向点との間の距離をL4としたとき、
0.8≦L3/L4≦3.0
なる条件を満たすことを特徴とする請求項12に記載の光走査装置。
【請求項16】
前記光源からの前記光束は、前記第2の光学面、及び前記第1の光学面を順に介して前記偏向器に入射することを特徴とする請求項12に記載の光走査装置。
【請求項17】
前記光源からの前記光束を反射して前記偏向器に導光する第2の反射光学素子を備えることを特徴とする請求項12に記載の光走査装置。
【請求項18】
主走査断面に投影した際に、前記偏向器に入射するときの前記光束の進行方向と、前記偏向器によって軸上像高に向けて偏向されたときの前記光束の進行方向とは互いに平行であることを特徴とする請求項1乃至17の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項19】
主走査断面において、前記偏向器の偏向面に入射するときの前記光束の幅は該偏向面の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至17の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項20】
請求項1乃至17の何れか一項に記載の光走査装置と、該光走査装置により前記被走査面に形成される静電潜像をトナー像として現像する現像器と、現像された前記トナー像を被転写材に転写する転写器と、転写された前記トナー像を前記被転写材に定着させる定着器とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項21】
請求項1乃至17の何れか一項に記載の光走査装置と、外部機器から出力された信号を画像データに変換して該光走査装置に入力するプリンタコントローラとを備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置に関し、例えばレーザービームプリンタ(LBP)、デジタル複写機やマルチファンクションプリンタ(多機能プリンタ)等の画像形成装置に好適に用いられる光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学性能を維持しつつ十分な小型化を図った光走査装置が求められている。
特許文献1は、偏向器によって偏向された光束が結像光学素子を通過し、反射光学素子によって反射された後、再び当該結像光学素子を通過することで被走査面に導光される構成を採ることで小型化を図った光走査装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に開示されている光走査装置では、反射光学素子によって反射された光束と、入射光学系を形成する各光学素子とが互いに干渉しないように、当該入射光学系を形成する各光学素子が偏向器から大きく離隔した位置に配置されている。
その結果、当該入射光学系を配置するための領域が増大しているため、十分な小型化がなされていない。
【0005】
一方、特許文献1に開示されている光走査装置では、上記の構成を採る際に光学性能を維持するための結像光学素子の形状が十分に検討されていない。
そこで本発明は、従来の構成に対して小型化及び光学性能の向上の少なくとも一方を図った光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光走査装置は、光源からの光束を偏向して被走査面を主走査方向に走査する偏向器と、第1及び第2の光学面を有する結像光学素子と、反射面を有する反射光学素子とを備え、光源からの光束は、第2の光学面、第1の光学面、偏向器、第1の光学面、第2の光学面、反射面、第2の光学面、及び第1の光学面を順に介して被走査面に導光されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来の構成に対して小型化及び光学性能の向上の少なくとも一方を図った光走査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一実施形態に係る光走査装置の主走査断面図及び副走査断面図。
【
図2】第二実施形態に係る光走査装置の主走査断面図及び副走査断面図。
【
図3】第三実施形態に係る光走査装置の主走査断面図及び副走査断面図。
【
図4】第三実施形態に係る光走査装置の主走査断面図。
【
図5】第四実施形態に係る光走査装置の主走査断面図及び副走査断面図。
【
図6】第四実施形態に係る光走査装置の主走査断面図。
【
図7】第五実施形態に係る光走査装置の主走査断面図及び一部副走査断面図。
【
図8】第五実施形態に係る光走査装置の主走査断面図。
【
図9】実施形態に係るモノクロ画像形成装置及びカラー画像形成装置の要部副走査断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本実施形態に係る光走査装置を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお以下に示す図面は、本実施形態を容易に理解できるようにするために実際とは異なる縮尺で描かれている場合がある。
また以下の説明において、副走査方向とは、偏向器4の回転軸に平行な方向であり、主走査方向とは、被走査面6上において光束によって走査される方向である。また副走査断面とは、主走査方向に垂直な断面であり、主走査断面とは、副走査方向に垂直な断面である。
また以下では、主走査方向をY方向、副走査方向をZ方向、主走査方向及び副走査方向に垂直な方向をX方向と定義する。
【0010】
[第一実施形態]
従来、電子写真技術を用いたプリンタや複写機では、感光ドラムに潜像を描画するために光走査装置が用いられている。
そして近年、プリンタや複写機における高速化や小型化を図るために様々なタイプの光走査装置が開発されている。
【0011】
例えば、回転多面鏡(ポリゴンミラー)を用いる光走査装置において高速化を図る一つの手法として、当該回転多面鏡の反射面の数を増大させることによって当該回転多面鏡が一回転する際の走査数を増大させる方法が知られている。
一方、回転多面鏡の反射面の数が増大することで当該回転多面鏡の外径が大きくなると、当該回転多面鏡を回転させるためのモータの負荷が増大してしまう。
【0012】
そしてモータの負荷の増大に応じて当該モータのパワーを増大させるために高価なモータを用いると、高コスト化するため好ましくない。
そこで回転多面鏡の反射面の数を増大させながら当該回転多面鏡の外径の増大を抑制する方式として、オーバーフィルドスキャン(OFS)方式が知られている。
【0013】
OFS方式では、主走査断面内において回転多面鏡の反射面に入射する光束の光束幅が当該反射面の幅より大きくなっている。
一方、通常よく採用されているアンダーフィルドスキャン(UFS)方式では、回転多面鏡の反射面に入射した光束が蹴られることがないように、主走査断面内において当該反射面の幅が当該反射面に入射する光束の光束幅より十分大きくなっている。
すなわち、OFS方式では積極的に光束を蹴る構成を採ることで、回転多面鏡の外径を小さくすることができる。
【0014】
OFS方式では、回転多面鏡の反射面の数を増大させることによって当該回転多面鏡が一回転する際の走査数を増大させることができる一方で、一つの反射面が走査することができる角度は小さくなってしまう。
そして、被走査面上における走査幅は仕様によって決定されるため、一つの反射面の走査角度の低減に応じてfθ係数を増大させる必要がある。
【0015】
例えば十個の反射面を有する回転多面鏡を用いて310mmの走査幅を有する被走査面を走査するためには、fθ係数を247mm/rad以上の値に設定する必要がある。
なおfθ係数は、結像光学系の主走査断面内における焦点距離に近い大きさであることが多い。
【0016】
換言すると、fθ係数の増大は結像光学系の焦点距離の増大に繋がり、それにより回転多面鏡と被走査面との間の距離も増大する。
すなわちOFS方式は高速化に有利である一方で、小型化には不利な点を有している。
【0017】
また、光走査装置を小型化する単純な方法として、折り返しミラーを用いて光路を折り曲げる方法が知られている。
一方、折り返しミラーを用いて光路を折り曲げると、当該折り返しミラーの上流側に配置されている光学素子と、当該折り返しミラーによって反射された光束とが互いに干渉する虞がある。
【0018】
そこで従来、回転多面鏡と被走査面との間の距離が470mmであるOFS方式を採り、三つの折り返しミラーを用いて当該回転多面鏡によって反射された光束を当該被走査面に導光することで小型化を図った光走査装置が提案されている。
しかしながらそのような光走査装置では、折り返しミラーの数が増大することで高コスト化する虞がある。
また、各折り返しミラーの組み立て公差等に応じて照射位置のずれが発生し易くなるため、当該照射位置の調整を実施するために高コスト化する虞もある。
【0019】
また従来、回転多面鏡によって反射された光束が結像光学素子を通過し、反射光学素子によって反射された後、再び当該結像光学素子を通過することで被走査面に導光される構成を採ることで小型化を図った光走査装置も提案されている。
しかしながら当該提案されている光走査装置では、当該反射光学素子によって反射された光束と、入射光学系を形成する各光学素子とが互いに干渉しないように、当該入射光学系を形成する各光学素子が回転多面鏡から大きく離隔した位置に配置されている。
その結果、入射光学系を配置するための領域が増大しているため、十分な小型化がなされていない。
【0020】
そこで本実施形態は、十分な小型化を図った光走査装置を提供することを目的としている。
図1(a)及び(b)はそれぞれ、第一実施形態に係る光走査装置50の模式的主走査断面図及び模式的副走査断面図を示している。
【0021】
本実施形態に係る光走査装置50は、光源1、アナモフィックレンズ2(光学素子)、絞り3、偏向器4、結像光学素子5及び反射光学素子7を備えている。
光源1としては、例えば半導体レーザーを用いることができ、発光点の数は一つでも複数でも構わない。
アナモフィックレンズ2は、主走査断面内において正の屈折力を有しており、光源1から出射した光束を主走査断面内において収束度を変更、具体的には弱収束光束に変換している。
【0022】
本実施形態に係る光走査装置50では、アナモフィックレンズ2によって変換された弱収束光束を用いることによって主走査断面内において結像光学素子5に必要となる屈折力を低減させることで、結像光学素子5の端部までのコバ厚を確保している。
またアナモフィックレンズ2は、副走査断面内においても正の屈折力を有しており、光源1から出射した光束を偏向器4の偏向面4aの近傍に集光させており、これにより偏向面4a上において主走査方向に長い線像が形成される。
【0023】
絞り3は、矩形形状の開口部を有しており、アナモフィックレンズ2を通過した光束の副走査方向における光束幅を規制している。なお絞り3は、当該光束の主走査方向における光束幅も規制している。
本実施形態に係る光走査装置50では、絞り3を通過した光束を結像光学素子5に入射させており、当該光束は結像光学素子5を通過することで主走査断面内及び副走査断面内双方において更に収束される。
なお絞り3の開口部は、矩形形状に限らず、楕円形状やトラック形状に形成されていても構わない。
【0024】
偏向器4としては、八つの偏向面4aを有する回転多面鏡(ポリゴンミラー)が用いられている。しかしながら偏向器4の偏向面4aの数は、八つに限定されるものではない。
そして結像光学素子5を通過した光束は、偏向器4の偏向面4aによって偏向される。
【0025】
なお本実施形態に係る光走査装置50では、主走査断面内において偏向面4aに入射する際の光束の光束幅は偏向面4aの幅よりも大きい。
そのため偏向器4の偏向面4aによって偏向された光束の主走査方向における光束幅は、偏向面4aによって規制されることになる。
【0026】
結像光学素子5は、二つの光学面(レンズ面)、すなわち副走査方向及び主走査方向それぞれに垂直なX方向において偏向器4側の第1の光学面5a及び反射光学素子7側の第2の光学面5bを有している。
第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれの主走査断面内における形状は、後述するように偏向面4aによって偏向された光束が反射光学素子7を介して結像光学素子5を二回通過することで被走査面6上を所望の走査特性で走査するように形成されている。
【0027】
また第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれの副走査断面内における形状は、偏向面4aの近傍と被走査面6の近傍とを互いに光学的に共役の関係に設定することで面倒れ補償を行っている。
なおここでいう面倒れ補償とは、偏向面4aが倒れた際の被走査面6上の走査位置の副走査方向におけるずれの低減を意味している。
【0028】
本実施形態に係る光走査装置50では、光源1から出射した光束は、アナモフィックレンズ2及び絞り3を通過することで、結像光学素子5の第2の光学面5bから入射する。
次に結像光学素子5の第1の光学面5aから出射した光束は、偏向器4によって偏向された後、結像光学素子5の第1の光学面5aから再度入射する。
【0029】
そして結像光学素子5の第2の光学面5bから出射した光束は、反射光学素子7によって反射された後、結像光学素子5の第2の光学面5bから再度入射する。
最後に、結像光学素子5の第1の光学面5aから出射した光束は、被走査面6上に導光される。
換言すると本実施形態に係る光走査装置50では、光源1からの光束は、第2の光学面5b、第1の光学面5a、偏向器4、第1の光学面5a、第2の光学面5b、反射光学素子7の反射面、第2の光学面5b、及び第1の光学面5aを順に介して被走査面6に導光される。
【0030】
本実施形態に係る光走査装置50では、このようにして光束が結像光学素子5を複数回通過することによって主走査断面内及び副走査断面内双方において集光(導光)されることで、被走査面6の近傍においてスポット状の像が形成される。
そして偏向器4を不図示の駆動部によって
図1(a)中矢印B11方向に一定速度で回転させることによって、被走査面6上が主走査方向の
図1(a)中矢印C11の向きに光走査されることで、被走査面6上に静電潜像が形成される。
【0031】
本実施形態に係る光走査装置50では、光源1から出射した光束を偏向器4の偏向面4aに入射させる入射光学系がアナモフィックレンズ2、絞り3及び結像光学素子5によって形成される。
そして、偏向器4の偏向面4aによって偏向された光束を被走査面6に導光する結像光学系が結像光学素子5によって形成される。
【0032】
すなわち本実施形態に係る光走査装置50では、入射光学系及び結像光学系それぞれにおいて結像光学素子5が共有されている。
また本実施形態に係る光走査装置50では、偏向器4の偏向面4aによって偏向された光束の光路を折り曲げるように当該光束を反射する反射光学系が反射光学素子7によって形成される。
【0033】
なお本実施形態に係る光走査装置50では、アナモフィックレンズ2を用いる代わりに、アナモフィックレンズ2の光学的機能を分担するように、例えばカップリングレンズとシリンドリカルレンズとを用いても構わない。
また本実施形態に係る光走査装置50では、アナモフィックレンズ2の光学的機能を結像光学素子5に担わせても構わない。
【0034】
しかしながらそのような構成を採用する場合には、結像光学素子5において偏向器4に入射する光束が通過する領域と、偏向器4によって偏向された光束が通過する領域とにおいて必要とされるパワーが互いに異なることになる。
そのため結像光学素子5の副走査断面内における形状が、少なくとも光学的には不連続となってしまう。
【0035】
また本実施形態に係る光走査装置50に設けられているアナモフィックレンズ2及び結像光学素子5としては、射出成型によって形成されたプラスチックモールドレンズが用いられているが、これに限らずガラスモールドレンズが用いられてもよい。
なお、モールドレンズは非球面形状を有するように容易に形成することができ、且つ大量生産に適している。
そのため、本実施形態に係る光走査装置50においてアナモフィックレンズ2及び結像光学素子5としてモールドレンズを用いることで生産性及び光学性能の向上を図ることができる。
【0036】
また本実施形態に係る光走査装置50では、低コスト化を達成するために結像光学系が単一の結像光学素子5によって形成されている。
換言すると本実施形態に係る光走査装置50では、偏向器4によって偏向された光束の光路上において結像光学素子5以外の屈折光学素子は設けられていない。
【0037】
また本実施形態に係る光走査装置50では、低コスト化を達成するために反射光学系が単一の平面形状を有する反射光学素子7によって形成されている。
換言すると本実施形態に係る光走査装置50では、偏向器4によって偏向された光束の光路上において反射光学素子7以外の反射光学素子は設けられていない。
【0038】
しかしながらこれに限らず、結像性能を向上させるために複数の結像光学素子によって結像光学系を形成したり、反射光学系において平面以外の形状を有する反射光学素子を設けても構わない。
また本実施形態に係る光走査装置50では、入射光学系において入射光束の光路上における結像光学素子5と偏向器4との間に屈折光学素子は設けられていない。
【0039】
本実施形態に係る光走査装置50では、光源1から出射した後に偏向面4aに進行する際、偏向面4aが偏向した後に反射光学素子7に進行する際、及び反射光学素子7が反射した後に被走査面6に進行する際の計三回、光束が結像光学素子5を通過している。
このような構成を採用することで、一般に光路長が長くなる傾向にあると共に、各光学系が占有する領域が増大する傾向にあるOFS方式を採用していても、十分な小型化を達成することができる。
すなわちOFS方式を採用することによる印字の高速化と、小型化とを両立させることを可能としている。
【0040】
特に、光源1から出射した光束を結像光学素子5を通過させた後に偏向器4の偏向面4aに入射させることで、光源1と偏向面4aとの間の光路に反射光学素子を設けない構成を用いることができる。
これにより特許文献1に開示されている光走査装置のように光源1を偏向器4から大きく離隔させて配置する必要が無くなるため、入射光学系の小型化を達成することができる。
【0041】
またOFS方式において反射光学素子によって反射された光束を偏向面に入射させる構成を用いる場合には、当該反射光学素子の角度を十分に調整しないと被走査面上での書き始め側の走査領域と書き終わり側の走査領域との間において濃度ムラが発生する虞がある。
そのため、反射光学素子の角度の調整には非常に手間がかかることとなり、その結果コストが増大してしまう。
一方、本実施形態に係る光走査装置50では光源1から出射した光束を反射光学素子によって反射させずに偏向器4の偏向面4aに入射させる構成を採ることが可能となるため、上記のような調整を不要とすることでコストの増大を抑制することができる。
【0042】
また本実施形態に係る光走査装置50では、上記のように光源1から出射した光束を反射光学素子によって反射させずに偏向器4の偏向面4aに入射させる構成を採ることができるため、当該光束を偏向面4aに対して正面入射させることができる。
すなわち
図1(a)に示されているように、主走査断面内に投影したときに入射光学系及び結像光学系それぞれの光軸が互いに平行となっている。
換言すると本実施形態に係る光走査装置50では、主走査断面内に投影した際に、偏向器4に入射するときの光束の進行方向と、偏向器4によって軸上像高に向けて偏向されたときの光束の進行方向とは互いに平行である。
【0043】
なおここで、結像光学素子5の第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれの面頂点を通る直線を含み主走査方向に垂直な副走査断面と、被走査面6との交線の主走査方向における位置を軸上像高と定義する。
そして結像光学系の光軸は、被走査面6上の当該軸上像高を走査するように偏向器4によって偏向される光束(以下、軸上光束と称する。)の主光線の偏向面4a上の偏向点(以下、軸上偏向点と称する。)と当該軸上像高とを通る軸として定義される。
また入射光学系の光軸は、光源1の発光面の中心と当該軸上偏向点とを通る軸として定義される。
また、結像光学素子5の第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれの面頂点を通る直線を結像光学素子5の光軸と定義する。
【0044】
上記のように本実施形態に係る光走査装置50では、光源1から出射した光束を偏向面4aに対して正面入射させている。
一般的に、偏向面4aの入射した光束に対する反射率は、当該光束の入射角度に応じて変化する。
【0045】
加えて、屈折光学素子を通過する光束に対する透過率も、当該光束の入射角度に応じて変化する。
そこで本実施形態に係る光走査装置50では、上記のように光源1から出射した光束を偏向面4aに対して正面入射させることで被走査面6上での書き始め側の走査領域と書き終わり側の走査領域との間における濃度ムラの発生を抑制している。
【0046】
また本実施形態に係る光走査装置50では、
図1(b)に示されているように副走査断面内に投影したときに光源1から出射した光束を偏向面4aに対して斜めに入射、すなわち斜入射させている。
これにより、光源1及びアナモフィックレンズ2の結像光学素子5や反射光学素子7に対する干渉を抑制することができる。
【0047】
また本実施形態に係る光走査装置50では、OFS方式を採用することで偏向器4の偏向面4aの数を八つ、すなわちUFS方式を採用する光走査装置に設けられている偏向器の偏向面の数よりも増大させることで印字の高速化を達成している。
しかしながら、これに限らず本実施形態に係る光走査装置50はUFS方式を採用してもよく、すなわちそのような場合においても光束が結像光学素子5を三回通過する構成を採ることで小型化を達成することができる。
【0048】
上記のように本実施形態に係る光走査装置50では、OFS方式を採ることで高速化を実現しつつ小型化を図ることができる。
このとき偏向器4の偏向面4aの数をNとしたとき、以下の条件式(1)が満たされていることが好ましい。
6≦N≦10 ・・・(1)
【0049】
もし条件式(1)の下限値を下回ると、十分な高速化を実現することが困難となるため、好ましくない。
一方、条件式(1)の上限値を上回ると、各偏向面に割り当てられる走査角度が小さくなり過ぎることによって結像光学系のfθ係数を大きくする必要が生じることで、光路長が増大してしまうため、好ましくない。
【0050】
また本実施形態に係る光走査装置50では、小型化を達成するために以下の条件式(2)が満たされていることが好ましい。
L2≦L1 ・・・(2)
ここで、L1は反射光学素子7の反射面と偏向面4a上の軸上偏向点との間の空間的な距離であり、L2は偏向面4a上の軸上偏向点と被走査面6との間の空間的な距離である。
【0051】
距離L1をΔL1だけ増大させると偏向器4の偏向面4aと被走査面6との間の光路長は略2×ΔL1だけ増大する一方で、距離L2をΔL2だけ増大させると当該光路長は略ΔL2だけ増大する。
そのため、距離L2を増大させるより距離L1を増大させた方が全光路長を容易に増大させることができる。
そこで本実施形態に係る光走査装置50では条件式(2)を満たすことで全光路長を維持しつつ小型化を達成することができる。
【0052】
また本実施形態に係る光走査装置50では、光源1から出射した光束を主走査断面内において収束光束に変換させて偏向器4の偏向面4aに入射させている。これにより、全光路長を低減することで小型化を達成することができる。
また、これにより結像光学素子5に必要となる主走査断面内におけるパワーを低減させることによって結像光学素子5の肉厚を低減させることで、結像光学素子5を射出成型で製造する際の製造時間を短縮することができる。
【0053】
また本実施形態に係る光走査装置50では、副走査断面内において結像光学素子5が全体で正のパワーを有するように偏向面4aに向かって凹のメニスカス形状を有している。
結像光学素子5をこのような形状に形成することで、結像光学素子5の主平面を結像光学素子5の位置に対してアナモフィックレンズ2側に配置させることができる。
【0054】
また本実施形態に係る光走査装置50では、入射光学系及び結像光学系それぞれにおける光路は、結像光学素子5の第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれの面頂点を通る直線を含み主走査方向に平行な断面に対して互いに反対側に形成されている。
また本実施形態に係る光走査装置50に設けられている結像光学素子5は、上記のように副走査断面内において正のパワーを有している。
【0055】
そのため、偏向面4aによって反射された後に結像光学素子5に向かう光束の進行方向が当該断面に対してなす角度は、結像光学素子5を通過した後に反射光学素子7に向かう光束の進行方向が当該断面に対してなす角度より大きくなる。
従って本実施形態に係る光走査装置50では、結像光学素子5の主平面をアナモフィックレンズ2側に配置させることで、入射光学系及び結像光学系それぞれにおける光路の間の離隔量を増大させている。
これにより、光源1及びアナモフィックレンズ2をX方向において結像光学素子5と反射光学素子7との間に配置させることができる。
【0056】
本実施形態に係る光走査装置50では、副走査断面内に投影した際に、偏向面4a上の軸上偏向点は、結像光学素子5の第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれの面頂点を通る直線の近傍に配置されている。
そして副走査断面内に投影した際に、絞り3からの光束の結像光学素子5を通過する際の光路と、偏向面4aによって偏向された光束の結像光学素子5を通過する際の光路との間に当該直線が配置されている。
換言すると本実施形態に係る光走査装置50では、結像光学素子5の第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれにおいて、光源1からの光束と偏向器4によって偏向された光束とは、副走査方向において面頂点に対して互いに反対側を通過する。
【0057】
特に本実施形態に係る光走査装置50では、副走査断面内に投影した際に、絞り3からの光束の結像光学素子5を通過する際の光路と、偏向面4aによって偏向された光束の結像光学素子5を通過する際の光路との略中間に当該直線が配置されている。
もしそのような構成を用いずに一方の光路を当該直線に寄せてしまうと、当該光路を進行する光束のうち当該直線から遠い領域を通過する光線の進行方向が、当該直線に近い領域を通過する光線の進行方向に比べて大きく変化することで結像性能が低下してしまう。
【0058】
すなわち、本実施形態に係る光走査装置50では偏向面4aと被走査面6とを互いに共役関係に設定しているため、結像光学素子5は副走査断面においてある程度強い正のパワーを有している必要がある。
従って、結像光学素子5の子線曲率半径をある程度小さく設定する必要があるため、結像光学素子5の第1及び第2の光学面5a及び5bにおいて光線が通過する領域が当該直線から遠くなるほど入射方向は垂直から水平に近づいていく。
そして、結像光学素子5の第1及び第2の光学面5a及び5bに対する光線の入射角度がある程度大きくなると、当該入射によって当該光線の進行方向が急激に変化することで結像性能が低下してしまう。
【0059】
また本実施形態に係る光走査装置50では、光源1から出射し結像光学素子5を通過した光束は、パワーを有する屈折光学素子を通過したり反射光学素子によって反射されずに偏向器4に入射する。
すなわち、当該入射光束の光路と偏向面4aによって偏向された偏向光束の光路とは互いに非常に近接しているため、そのような屈折光学素子や反射光学素子を当該偏向光束に干渉しないように配置することは困難である。
【0060】
一方、そのような屈折光学素子や反射光学素子を入射光束の光路上に配置させようとすると、当該入射光束の偏向面4aに対する入射角度を大きくすることによって当該入射光束と当該偏向光束とを互いに大きく離隔させることが求められる。
そして、当該入射角度を大きくすると斜め非点収差が大きく発生することによって結像性能が低下してしまうため好ましくない。
【0061】
なお偏向器4において発生する回転音を遮音するための平板状の素子は、当該入射光束の当該光路上に設けられていても構わない。
これは、当該入射光束に加えて当該偏向光束もそのような平板状の素子を通過させることで上記のように当該入射光束と当該偏向光束とを互いに大きく離隔させる必要は無いためである。
【0062】
また本実施形態に係る光走査装置50では、光源1と偏向面4aとの間の入射光束の光路において結像光学素子5に加えてアナモフィックレンズ2も設けられている。
このような構成を採ることで、結像光学素子5を副走査断面内において第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれの面頂点を通る直線を挟んで光学的に連続な形状に形成することができる。
そのため、結像光学素子5を射出成型によって低コストで形成することが可能となる。
【0063】
なお、段差が形成されているような不連続な形状で結像光学素子5を射出成型で形成することは不可能ではないが、射出成型によって段差部近傍の形状を設計通りに形成することは困難である。
従って結像光学素子5は、所望の形状で安定して形成し易くするために、連続的な形状を有していることが好ましい。
【0064】
また本実施形態に係る光走査装置50に設けられているアナモフィックレンズ2は、主走査断面内及び副走査断面内において互いに異なるパワーを有するレンズである。
すなわち本実施形態に係る光走査装置50における偏向面4a上での集光状態を実現するためには、主走査断面内及び副走査断面内において必要となるパワーが互いに大きく異なる。
【0065】
従って、結像光学素子5において主走査断面内及び副走査断面内におけるパワーが互いに異なっていても、アナモフィックレンズ2の光学面を回転対称に形成した場合、上記集光状態を実現することは困難である。
換言するとアナモフィックレンズ2の光学面を回転対称に形成する一方で、結像光学素子5の主走査断面内及び副走査断面内におけるパワーを互いに大きく異ならせると、結像光学素子5の第1及び第2の光学面5a及び5bが光学的に不連続になり好ましくない。
【0066】
また本実施形態に係る光走査装置50では、偏向面4aによって偏向された光束は、結像光学素子5及び反射光学素子7によって被走査面6に導光されている。
すなわち本実施形態に係る光走査装置50では、偏向面4aによって偏向された光束を被走査面6に導光する光学素子の数を十分低減させることで低コスト化を図っている。
【0067】
ここで、結像光学系を結像光学素子5を含む複数の結像光学素子によって形成し、所定の結像光学素子をX方向において偏向器4と被走査面6との間に配置させる場合を考える。
このとき、そのように配置された結像光学素子は、主走査方向に長尺な形状を有することが求められる。
【0068】
従って、そのような結像光学素子を射出成型で形成する場合に一度で成型することができる数が少なくなるため、高コスト化してしまう。
一方、複数の結像光学素子全てをX方向において偏向器4と反射光学素子7との間に配置した場合、隣接する結像光学素子が互いに干渉する虞がある。
すなわち、そのような配置は困難となる虞があるため好ましくない。
【0069】
また本実施形態に係る光走査装置50では、上記のように偏向面4aによって偏向された光束は、結像光学素子5及び反射光学素子7によって被走査面6に導光されているが、結像光学素子5の配置や形状によっては他の光学素子に干渉し易くなる虞がある。
そこで本実施形態に係る光走査装置50では、結像光学素子5の第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれにおいて以下の条件式(3)が満たされていることが好ましい。
-3.00≦(Pb-Pa)/t≦2.00 ・・・(3)
【0070】
条件式(3)においてtは結像光学素子5の肉厚、Paは軸上光束の通過位置のX方向における座標、Pbは最軸外像高に向かう光束(以下、最軸外光束と称する。)の通過位置のX方向における座標である。
条件式(3)の下限値を下回ると、結像光学素子5及び反射光学素子7が互いに干渉する虞があるため好ましくない。
【0071】
一方、条件式(3)の上限値を上回ると、結像光学素子5の主走査方向における長さが大きくなり、射出成型で形成する場合に一度で成型することができる数が少なくなるため、高コスト化してしまう。
また、条件式(3)の下限値を下回る、若しくは上限値を上回るように結像光学素子5の形状が変化すると、許容することが困難な像面湾曲が発生するため好ましくない。
【0072】
なお本実施形態に係る光走査装置50では、条件式(3)の代わりに以下の条件式(3a)が満たされていることがより好ましい。
-2.50≦(Pb-Pa)/t≦-0.25 ・・・(3a)
すなわち本実施形態に係る光走査装置50に設けられている結像光学素子5は、条件式(3a)を満たすように、主走査断面内に投影した際に偏向器4に向かって凸のメニスカス形状を有していることが好ましい。
【0073】
次に、本実施形態に係る光走査装置50の諸元値と、各光学素子の面間隔、屈折率及び偏心配置情報と、アナモフィックレンズ2及び結像光学素子5の光学面の形状とをそれぞれ、以下の表1、表2及び表3に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
本実施形態に係る光走査装置50に設けられている結像光学素子5の偏向面4a側の第1の光学面5a及び反射光学素子7側の第2の光学面5bそれぞれの母線は、以下の式(4)に示される16次の多項式関数で表される非球面形状を有している。
また、本実施形態に係る光走査装置50に設けられているアナモフィックレンズ2の入射面及び出射面それぞれの母線も、以下の式(4)で表される非球面形状を有している。
【0078】
【0079】
なお式(4)と以下に示す式(5)及び式(6)とでは、各光学面の面頂点を原点とし、主走査方向をY軸、副走査方向をZ軸、主走査方向及び副走査方向それぞれに垂直な方向をX軸としている。
また、X軸において反射光学素子7から被走査面6への向き、すなわち
図1(b)での左から右への向きを正とし、Z軸において
図1(b)での下から上への向きを正としている。
【0080】
また式(4)において、Rは主走査断面内における曲率半径(母線曲率半径)、K、B4、B6、B8、B10、B12、B14及びB16は非球面係数である。
本実施形態に係る光走査装置50では、アナモフィックレンズ2及び結像光学素子5の各光学面において非球面係数B4乃至B16はそれぞれ、Y方向のプラス側とマイナス側とで互いに同一の値を有している。
すなわち本実施形態に係る光走査装置50に設けられているアナモフィックレンズ2及び結像光学素子5の各光学面は、主走査方向において光軸に対して互いに対称な母線形状を有している。
【0081】
また本実施形態に係る光走査装置50に設けられている結像光学素子5の偏向面4a側の第1の光学面5a及び反射光学素子7側の第2の光学面5bそれぞれの子線は、以下の式(5)で表される形状を有している。
また本実施形態に係る光走査装置50に設けられているアナモフィックレンズ2の入射面及び出射面それぞれの子線も、以下の式(5)で表される形状を有している。
【0082】
【0083】
なお式(5)において、Sは母線上の所定の位置における当該母線の法線を含み主走査断面に垂直な断面内において定義される子線形状を示している。
また式(5)に示されている主走査方向において光軸からYだけ離れた位置での副走査断面内における曲率半径(子線曲率半径)r’は、以下の式(6)のように表される。
【0084】
【0085】
式(6)において、rは光軸上における子線曲率半径、E1、E2、E4、E6、E8、E10及びE12は子線変化係数である。
すなわち、結像光学素子5の各光学面の子線曲率半径r’は、主走査方向における位置Yに応じて変化する。
【0086】
また本実施形態に係る光走査装置50では、結像光学素子5の各光学面において子線変化係数E1乃至E12はそれぞれ、Y方向のプラス側とマイナス側とで互いに同一の値を有している。
すなわち本実施形態に係る光走査装置50に設けられている結像光学素子5の各光学面は、主走査方向において光軸に対して互いに対称な子線形状を有している。
【0087】
なお、本実施形態に係る光走査装置50に設けられているアナモフィックレンズ2及び結像光学素子5の各光学面の形状を上記の式(4)乃至式(6)に表される関数で定義しているが、当該形状の定義はこれに限られない。
また表3に示されている結像光学素子5の各光学面の形状は、光束が三回通過する領域において互いに同一である。
【0088】
すなわち本実施形態に係る光走査装置50に設けられている結像光学素子5の各光学面の有効領域は、光学的に連続な形状を有している。
換言すると結像光学素子5の各光学面の有効領域の母線と子線とはそれぞれ、単一の式(4)と単一の式(5)及び(6)とで表される。
【0089】
ここで結像光学素子5の各光学面の有効領域は、主走査方向においては被走査面6上の両側の最軸外像高に向かう最軸外光束が通過する位置の間の領域で定義される。
また結像光学素子5の各光学面の有効領域は、副走査方向においては光源1からの光束が通過する位置と、反射光学素子7によって反射された光束が通過する位置との間の領域で定義される。
【0090】
本実施形態に係る光走査装置50では、反射光学素子7と偏向面4aとの間のX方向における距離L1は60mm、偏向面4aと被走査面6との間のX方向における距離L2は37mmとなっている。
すなわち、本実施形態に係る光走査装置50全体のX方向における大きさは、97mmとなっている。
【0091】
具体的に本実施形態に係る光走査装置50では、光束が往復、すなわち二回進行する反射光学素子7と偏向面4aとの間の光路の距離に略対応する距離L1を、光束が一回進行する偏向面4aと被走査面6との間の光路に略対応する距離L2より大きくしている。
これにより、OFS方式において求められる偏向面4aと被走査面6との間の十分な光路長を確保しつつ、光走査装置50全体のX方向における大きさを100mm以下に低減させることができる。
【0092】
また本実施形態に係る光走査装置50では、光源1から出射した光束を結像光学素子5を通過させた後に偏向器4に入射させることで、光源1と偏向器4との間の当該光束の光路上に反射光学素子を設けること無く、光源1及びアナモフィックレンズ2を配置できる。
また本実施形態に係る光走査装置50では、アナモフィックレンズ2の光軸は副走査断面内において主走査断面に対して2.00°だけ傾いている一方で、結像光学素子5の光軸は、主走査断面に平行となっている。
【0093】
ここで、結像光学素子5の光軸がアナモフィックレンズ2の光軸に平行になるように結像光学素子5を主走査断面に対して傾いて配置させる場合を考える。
このとき偏向面4aによって偏向された光束は、結像光学素子5の光軸に対して大きい角度をなす方向に沿って進行しながら結像光学素子5に入射することになってしまう。
また結像光学素子5をそのように傾いて配置させると、第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれが当該光軸に対して副走査方向における双方の側の間で互いに光学的に不連続な形状を有することになる虞がある。
【0094】
また本実施形態に係る光走査装置50では、光源1から出射し結像光学素子5を通過した光束は、結像光学素子5によって屈折されることで副走査断面内において主走査断面に対して5.70°の角度をなして偏向面4aに入射している。
すなわち本実施形態に係る光走査装置50では、副走査断面内における偏向面4aに対する光束の入射角度5.70°は、副走査断面内における結像光学素子5に対する当該光束の入射角度2.00°より大きくなっている。
【0095】
これは、結像光学素子5が副走査断面内において正のパワーを有していると共に、光源1から出射した光束は、副走査方向において結像光学素子5の下側を通過しているためである。
本実施形態に係る光走査装置50では、X方向において反射光学素子7と結像光学素子5との間に光源1やアナモフィックレンズ2を配置することで、小型化を図っている。
【0096】
従って、偏向面4aによって偏向された光束が光源1やアナモフィックレンズ2と干渉しないように、当該光束の光路と入射光学系の光路とを互いに十分に離隔させる必要がある。
そのような離隔を行うためには、偏向面4aからの結像光学素子5の離隔量を増大させることが有利である。
【0097】
しかしながら、本実施形態に係る光走査装置50において結像光学素子5を偏向面4aから離隔させて配置すると、結像光学素子5とアナモフィックレンズ2とが互いに干渉してしまう虞がある。
そして、そのような干渉を抑制するためにアナモフィックレンズ2を結像光学素子5から離隔させて配置すると、偏向面4aからの光源1の離隔量も更に増大してしまう。
【0098】
この場合、偏向面4aからの反射光学素子7の離隔量よりも偏向面4aからの光源1の離隔量の方が大きくなってしまい、十分な小型化を行うことが困難となる。
そこで本実施形態に係る光走査装置50では、結像光学素子5を副走査断面内において偏向面4aに向かって凹のメニスカス形状を有するように形成している。
【0099】
そして結像光学素子5をこのように形成することによって、結像光学素子5が配置されている位置に対してアナモフィックレンズ2が配置されている側に主平面の位置をシフトさせることができる。
これにより、光源1から出射し偏向面4aに入射する光束の光路と、偏向面4aによって偏向された光束の光路との間の離隔量が増大することで、光源1及びアナモフィックレンズ2をX方向において結像光学素子5と反射光学素子7との間に配置することができる。
【0100】
本実施形態に係る光走査装置50では、偏向面4aで偏向されて結像光学素子5の第2の光学面5bから出射する際の軸上光束の主光線の位置は、副走査方向において結像光学素子5の光軸から+3.30mmだけ離隔している。
また、絞り3を通過した後に結像光学素子5の第2の光学面5bに入射する際の光束の主光線の位置は、副走査方向において結像光学素子5の光軸から-3.21mmだけ離隔している。
【0101】
すなわち上記二つの位置は、互いに3.30-(-3.21)=6.51mmだけ離隔している。
そして上記二つの位置は、結像光学素子5の光軸に対して互いに略対称となっており、これにより、結像光学素子5を副走査断面内において光軸に対して互いに対称な形状に形成しても、大きい副走査コマ収差の発生を抑制することができる。
【0102】
なお、偏向面4aで偏向されて結像光学素子5の第2の光学面5bから出射する際の軸上光束の、結像光学素子5の光軸側のマージナル光線の位置は、副走査方向において結像光学素子5の光軸から+1.80mmだけ離隔している。
また、絞り3を通過した後に結像光学素子5の第2の光学面5bに入射する際の光束の、結像光学素子5の光軸側のマージナル光線の位置は、副走査方向において結像光学素子5の光軸から-1.78mmだけ離隔している。
すなわち上記二つの位置は互いに3mm以上離隔しているため、偏向面4aで偏向されて結像光学素子5の第2の光学面5bから出射した光束に干渉しないように光源1及びアナモフィックレンズ2を配置することができる。
【0103】
また、結像光学素子5を通過した後に反射光学素子7の反射面によって反射される際の当該反射面上における軸上光束の、結像光学素子5の光軸側のマージナル光線の位置は、副走査方向において結像光学素子5の光軸から+2.27mmだけ離隔している。
なお、光源1の発光点の位置は副走査方向において結像光学素子5の光軸から-4.09mmだけ離隔している、すなわち上記位置から十分に離隔しているため、光源1として半導体レーザダイオード(LD)を配置することができる。
【0104】
そして、反射光学素子7の反射面によって反射された後に結像光学素子5の第2の光学面5bに入射する際の軸上光束の主光線の位置は、副走査方向において結像光学素子5の光軸から+4.99mmだけ離隔している。
すなわち、当該位置と、偏向面4aで偏向されて結像光学素子5の第2の光学面5bから出射する際の軸上光束の主光線の上記位置とは、互いに4.99-3.30=1.69mmしか離隔しておらず、上記の離隔量6.51mmより小さくなっている。
【0105】
上記のように本実施形態に係る光走査装置50は、反射光学素子7の反射面によって反射された後に結像光学素子5の第2の光学面5bに入射する際の軸上光束の主光線の位置を結像光学素子5の光軸から大きく離隔させないように構成されている。これにより、副走査コマ収差を低減することができる。
なお本実施形態に係る光走査装置50では、反射光学素子7は傾いて配置されていない。
【0106】
上述のように本実施形態に係る光走査装置50では、結像光学素子5を副走査断面内において偏向面4aに向かって凹のメニスカス形状になるように形成している。
このとき、結像光学素子5の各光学面の副走査断面内における曲率半径の絶対値が小さくなるほど、偏向面4aからの主平面の位置の離隔量を増大させることができる。
【0107】
これにより、光源1から出射し偏向面4aに入射する光束と、偏向面4aによって偏向された光束とを互いに分離し易くなる。
一方、当該二つの光束はそれぞれ、結像光学素子5において光軸から離隔した領域を通過するため、結像光学素子5の各光学面の副走査断面内における曲率半径の絶対値を小さくし過ぎると、副走査コマ収差が発生し易くなってしまう。
【0108】
そこで本実施形態に係る光走査装置50では、結像光学素子5を副走査断面内において全ての光束が第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれの光軸上における曲率半径の絶対値のうち小さい絶対値の0.35倍以下の領域を通過するように形成している。
換言すると本実施形態に係る光走査装置50では、以下の条件式(7)が満たされていることが好ましい。
|Ps|≦0.35×|Rs| ・・・(7)
【0109】
条件式(7)において、|Rs|は結像光学素子5の第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれの光軸上における曲率半径の絶対値のうち相対的に小さい値である。
また|Ps|は、曲率半径の絶対値が|Rs|である結像光学素子5の一方の光学面上において、全ての光束の光線の通過位置のうち副走査断面内において結像光学素子5の光軸から最も離隔している通過位置と当該光軸との間の距離である。
【0110】
具体的に本実施形態に係る光走査装置50では、|Rs|は、表3に示されているように第2の光学面5bにおける22.452mmである。
また、結像光学素子5の第2の光学面5b上では、全ての光束の光線の通過位置のうち反射光学素子7によって反射された軸上光束の、結像光学素子5の光軸とは反対側のマージナル光線の通過位置が、副走査断面内において当該光軸から最も離隔している。
【0111】
具体的に当該通過位置は、副走査断面内において当該光軸から+7.263mmだけ離隔しているため、|Ps|は7.263mmである。
従って、7.263mm/22.452mm=0.323であることから、本実施形態に係る光走査装置50では上記の条件が満たされている。
【0112】
以上のように本実施形態に係る光走査装置50では、光源1からの光束が結像光学素子5を通過した後に偏向器4に入射し、偏向器4によって偏向された光束が結像光学素子5を通過し、反射光学素子7によって反射された後に結像光学素子5を再び通過する。
このような構成を採用することで、従来に比べて更なる小型化を図ることができる。
【0113】
すなわち本実施形態によれば、高速化のためにOFS方式を採った場合でも入射光学系及び結像光学系が配置される領域を低減し、且つ反射光学素子の位置の調整を必要としない光走査装置50を提供することができる。
【0114】
[第二実施形態]
図2(a)及び(b)はそれぞれ、第二実施形態に係る光走査装置60の模式的主走査断面図及び模式的副走査断面図を示している。
なお本実施形態に係る光走査装置60は、諸元値が異なること以外は第一実施形態に係る光走査装置50と同一の構成を有しているため、同一の部材には同一の符番を付し、説明を省略する。
【0115】
本実施形態に係る光走査装置60の諸元値と、各光学素子の面間隔、屈折率及び偏心配置情報と、アナモフィックレンズ2及び結像光学素子5の光学面の形状とをそれぞれ、以下の表4、表5及び表6に示す。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
本実施形態に係る光走査装置60に設けられている結像光学素子5の偏向面4a側の第1の光学面5a及び反射光学素子7側の第2の光学面5bそれぞれの母線は、上記の式(4)に示される16次の多項式関数で表される非球面形状を有している。
また、本実施形態に係る光走査装置60に設けられているアナモフィックレンズ2の入射面及び出射面それぞれの母線も、上記の式(4)で表される非球面形状を有している。
【0120】
また本実施形態に係る光走査装置60に設けられている結像光学素子5の偏向面4a側の第1の光学面5a及び反射光学素子7側の第2の光学面5bそれぞれの子線は、上記の式(5)及び式(6)で表される形状を有している。
また本実施形態に係る光走査装置60に設けられているアナモフィックレンズ2の入射面及び出射面それぞれの子線も、上記の式(5)及び式(6)で表される形状を有している。
なお、本実施形態に係る光走査装置60に設けられているアナモフィックレンズ2及び結像光学素子5の各光学面の形状を上記の式(4)乃至式(6)に表される関数で定義しているが、当該形状の定義はこれに限られない。
【0121】
本実施形態に係る光走査装置60では、反射光学素子7と偏向面4aとの間のX方向における距離L1は60mm、偏向面4aと被走査面6との間のX方向における距離L2は34mmとなっている。
すなわち本実施形態に係る光走査装置60全体のX方向における大きさは、94mmとなっている。
【0122】
本実施形態に係る光走査装置60では、光束が往復、すなわち二回進行する反射光学素子7と偏向面4aとの間の光路の距離に略対応する距離L1を、光束が一回進行する偏向面4aと被走査面6との間の光路に略対応する距離L2より大きくしている。
これにより、OFS方式において求められる偏向面4aと被走査面6との間の十分な光路長を確保しつつ、光走査装置60全体のX方向における大きさを100mm以下に低減させることができる。
特に、反射光学素子7が5mmの厚さを有していても光走査装置60全体のX方向における大きさを100mm以下に低減させることができる。
【0123】
本実施形態に係る光走査装置60では、偏向面4aで偏向されて結像光学素子5の第2の光学面5bから出射する際の軸上光束の主光線の位置は、副走査方向において結像光学素子5の光軸から+3.40mmだけ離隔している。
また、絞り3を通過した後に結像光学素子5の第2の光学面5bに入射する際の光束の主光線の位置は、副走査方向において結像光学素子5の光軸から-3.21mmだけ離隔している。
【0124】
すなわち上記二つの位置は、互いに3.40-(-3.21)=6.61mmだけ離隔している。
そして上記二つの位置は、結像光学素子5の光軸に対して互いに略対称となっており、これにより、結像光学素子5を副走査断面内において光軸に対して互いに対称な形状に形成しても、大きい副走査コマ収差の発生を抑制することができる。
【0125】
なお、偏向面4aで偏向されて結像光学素子5の第2の光学面5bから出射する際の軸上光束の、結像光学素子5の光軸側のマージナル光線の位置は、副走査方向において結像光学素子5の光軸から+1.98mmだけ離隔している。
また、絞り3を通過した後に結像光学素子5の第2の光学面5bに入射する際の光束の、結像光学素子5の光軸側のマージナル光線の位置は、副走査方向において結像光学素子5の光軸から-1.78mmだけ離隔している。
すなわち上記二つの位置は互いに3mm以上離隔しているため、偏向面4aで偏向されて結像光学素子5の第2の光学面5bから出射した光束に干渉しないように光源1及びアナモフィックレンズ2を配置することができる。
【0126】
また、結像光学素子5を通過した後に反射光学素子7の反射面によって反射される際の当該反射面上における軸上光束の、結像光学素子5の光軸側のマージナル光線の位置は、副走査方向において結像光学素子5の光軸から+2.40mmだけ離隔している。
なお、光源1の発光点の位置は副走査方向において結像光学素子5の光軸から-4.09mmだけ離隔している、すなわち上記位置から十分に離隔しているため、光源1として半導体レーザダイオード(LD)を配置することができる。
【0127】
そして、反射光学素子7の反射面によって反射された後に結像光学素子5の第2の光学面5bに入射する際の軸上光束の主光線の位置は、副走査方向において結像光学素子5の光軸から+4.99mmだけ離隔している。
すなわち、当該位置と、偏向面4aで偏向されて結像光学素子5の第2の光学面5bから出射する際の軸上光束の主光線の上記位置とは、互いに4.99-3.40=1.59mmしか離隔しておらず、上記の離隔量6.61mmより小さくなっている。
【0128】
上記のように本実施形態に係る光走査装置60は、反射光学素子7の反射面によって反射された後に結像光学素子5の第2の光学面5bに入射する際の軸上光束の主光線の位置を結像光学素子5の光軸から大きく離隔させないように構成されている。
これにより、副走査コマ収差を低減することができる。
【0129】
また本実施形態に係る光走査装置60では、結像光学素子5を副走査断面内において全ての光束が第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれの光軸上における曲率半径の絶対値のうち小さい絶対値の0.35倍以下の領域を通過するように形成している。
換言すると本実施形態に係る光走査装置60では、上記の条件式(7)が満たされていることが好ましい。
【0130】
具体的に本実施形態に係る光走査装置60では、|Rs|は、表6に示されているように第2の光学面5bにおける21.212mmである。
また、結像光学素子5の第2の光学面5b上では、全ての光束の光線の通過位置のうち反射光学素子7によって反射された軸上光束の、結像光学素子5の光軸とは反対側のマージナル光線の通過位置が、副走査断面内において当該光軸から最も離隔している。
【0131】
具体的に当該通過位置は、副走査断面内において当該光軸から+7.171mmだけ離隔しているため、|Ps|は7.171mmである。
従って、7.171mm/21.212mm=0.338であることから、本実施形態に係る光走査装置60では上記の条件式(7)が満たされている。
【0132】
また本実施形態に係る光走査装置60では、条件式(3)が満たされていることが好ましい。
そして本実施形態に係る光走査装置60に設けられている結像光学素子5は、条件式(3a)を満たすように、主走査断面内に投影した際に偏向器4に向かって凸のメニスカス形状を有していることが好ましい。
【0133】
以上のように本実施形態に係る光走査装置60では、光源1からの光束が結像光学素子5を通過した後に偏向器4に入射し、偏向器4によって偏向された光束が結像光学素子5を通過し、反射光学素子7によって反射された後に結像光学素子5を再び通過する。
このような構成を採用することで、従来に比べて更なる小型化を図ることができる。
【0134】
[第三実施形態]
従来、回転多面鏡によって反射された光束が結像光学素子を通過し、反射光学素子によって反射された後、再び当該結像光学素子を通過することによって被走査面に導光される構成を採ることで小型化を図った光走査装置が提案されている。
しかしながら当該提案されている光走査装置では、光束が複数回通過する当該結像光学素子を十分な光学性能を維持するように形成されていない。
【0135】
そこで本実施形態及び後述する第四乃至第五実施形態では、十分な光学性能を有する結像光学素子を容易に形成することで小型化と光学性能との両立を図った光走査装置を提供することを目的としている。
図3(a)及び(b)はそれぞれ、第三実施形態に係る光走査装置70の模式的主走査断面図及び模式的副走査断面図を示している。
また
図4は、第三実施形態に係る光走査装置70の模式的主走査断面図を示している。
なお本実施形態に係る光走査装置70は、諸元値が異なること以外は第一実施形態に係る光走査装置50と同一の構成を有しているため、同一の部材には同一の符番を付し、説明を省略する。
【0136】
絞り3は、矩形形状の開口部を有しており、アナモフィックレンズ2を通過した光束の主走査方向及び副走査方向それぞれにおける光束幅を規制している。
偏向器4としては、四つの偏向面4aを有する回転多面鏡(ポリゴンミラー)が用いられている。しかしながら偏向器4の偏向面4aの数は、四つに限定されるものではない。
【0137】
そして本実施形態に係る光走査装置70では、主走査断面内において偏向面4aに入射する際の光束の光束幅は偏向面4aの幅よりも十分に小さい、すなわちUFS方式が採られている。
従って、偏向器4が回転することによって被走査面6上の走査領域が光束によって走査される際に当該光束が蹴られることはない。
【0138】
本実施形態に係る光走査装置70では、光源1から出射した後に偏向面4aに進行する際、偏向面4aが偏向した後に反射光学素子7に進行する際、及び反射光学素子7が反射した後に被走査面6に進行する際の計三回、光束が結像光学素子5を通過している。
本実施形態に係る光走査装置70では、このような構成を採ることで小型化を図っている。
【0139】
特に本実施形態に係る光走査装置70では、光源1から出射した光束を偏向面4aに入射させる前に結像光学素子5(第1の結像光学素子)を通過させることで光源1と偏向面4aとの間の光路上に折り返しミラーを設けていない。
これにより、光源1を偏向器4から大きく離隔した位置に配置する必要がなくなるため小型化を図ることができる。
加えて、部品の数を削減することができることで低コスト化を図ることもできる。
【0140】
また本実施形態に係る光走査装置70では、
図3(a)に示されているように結像光学素子5は、主走査断面内に投影した際に偏向器4に向かって凸のメニスカス形状を有するように形成されている。
これにより、収差、特に主走査コマ収差の低減を図ることができる。
【0141】
一般的に、コマ収差を低減させるために、偏向器に近接して配置されている結像光学素子を当該偏向器に向かって凹のメニスカス形状に形成することで光線を略垂直に入射させている。
一方、本実施形態に係る光走査装置70では、結像光学素子5の主走査方向端部側において反射光学素子7によって反射された光束が通過する領域が設けられている。
【0142】
そのため本実施形態に係る光走査装置70では、結像光学素子5を特に当該領域において光線が略垂直に入射するように形成することでコマ収差を低減させている。
しかしながら本実施形態に係る光走査装置70では、結像光学素子5を大きく湾曲させないように形成している。
これは、結像光学素子5を大きく湾曲させると偏向器4から見て凹の像面湾曲が発生するためである。
【0143】
本実施形態に係る光走査装置70に設けられている結像光学素子5の第2の光学面5b上において、偏向器4の偏向面4aによって偏向された光束と反射光学素子7の反射面によって反射された光束との双方が通過する領域の主走査方向における幅をAとする。
また、結像光学素子5の第2の光学面5b上において、偏向器4の偏向面4aによって偏向された光束は通過しない一方で、反射光学素子7の反射面によって反射された光束が通過する領域の主走査方向における幅をBとする。
すなわち幅Bは、
図3(a)に示されている幅B1と幅B2との和で表される。
【0144】
このとき本実施形態に係る光走査装置70では、以下の条件式(8)が満たされていることが好ましい。
0.9≦B/A≦2.0 ・・・(8)
【0145】
幅Aを有する上記領域のように所定の像高に向けて偏向面4aによって偏向された光束と、別の像高に向けて当該反射面によって反射された光束とが互いに同一の位置を通過する場合、双方の像高に合わせて結像光学素子5の形状を決定することは困難である。
そこで本実施形態に係る光走査装置70では、条件式(8)に示すように偏向器4の偏向面4aによって偏向された光束は通過しない一方で、反射光学素子7の反射面によって反射された光束が通過する領域の幅Bを幅Aと同程度、若しくは幅A以上に設定している。
【0146】
これにより、結像光学素子5の幅Aを有する領域における形状を軸上像高近傍における各像高に応じて決定することができ、幅Bを有する領域における形状を適切に決定することで、最軸外像高近傍における結像性能の低下を抑制することが可能となる。
すなわち条件式(8)の下限値を下回ると、本実施形態に係る光走査装置70のように小型化を図る際に光学性能が低下してしまうため好ましくない。
【0147】
一方、条件式(8)の上限値を上回るほど幅Bを有する領域が大きくなると、結像光学素子5と反射光学素子7との間の距離が大きくなることによって光走査装置70が大型化してしまうため好ましくない。
また、条件式(8)の上限値を上回るほど幅Bを有する領域が大きくなると、結像光学素子5の主走査方向における長さが増大することによって高コスト化してしまうため好ましくない。
【0148】
また
図4に示されているように、結像光学素子5の第2の光学面5b上において、偏向面4aによって偏向された光束のうち主走査方向において結像光学素子5の光軸から最も離隔した位置を通過する光束の主光線の通過位置と当該光軸との間の距離をhとする。
また、主走査断面内における当該主光線が第2の光学面5bから出射した際の進行方向と反射光学素子7の反射面の法線との間の角度をθ、第2の光学面5bの面頂点と反射光学素子7の反射面との間の距離をL
3とする。
このとき本実施形態に係る光走査装置70では、以下の条件式(9)が満たされていることが好ましい。
【0149】
【0150】
距離hで定義される領域では、所定の像高に向けて偏向面4aによって偏向された光束と、別の像高に向けて反射面によって反射された光束とが互いに同一の位置を通過する場合がある。
このとき、上記のように双方の像高に合わせて結像光学素子5の形状を決定することは困難である。
【0151】
一方、偏向面4aによって偏向された後に結像光学素子5の第2の光学面5b上の結像光学素子5の光軸から最も離隔した位置から出射した光束の主光線が、反射光学素子7によって反射された後に再び第2の光学面5bに入射する位置を考える。
このとき、上記二つの位置の間の距離は近似的に2×L3×tanθと表すことができる。
【0152】
そこで本実施形態に係る光走査装置70では、条件式(9)に示されているように当該距離を距離hと同程度、若しくは距離h以上に設定している。
これにより、結像光学素子5の距離hで定義される領域における形状を軸上像高近傍における各像高に応じて決定することができ、2×L3×tanθで定義される領域における形状を適切に決定することで、最軸外像高近傍における結像性能の低下を抑制できる。
【0153】
すなわち条件式(9)の下限値を下回ると、本実施形態に係る光走査装置70のように小型化を図る際に光学性能が低下してしまうため好ましくない。
一方、条件式(9)の上限値を上回るほど距離L3が大きくなると、結像光学素子5と反射光学素子7との間の距離が大きくなることによって光走査装置70が大型化してしまうため好ましくない。
また、条件式(9)の上限値を上回るほど角度θが大きくなると、結像光学素子5の主走査方向における長さが増大することによって高コスト化してしまうため好ましくない。
【0154】
また
図4に示されているように、偏向器4によって偏向された光束が通過する光学面のうち偏向器4に最も近い光学面である結像光学素子5の第1の光学面5aの面頂点と、偏向器4の回転軸の中心との間の距離をL
4とする。
なお偏向器4の回転軸の中心が結像光学素子5の光軸からシフトしている場合には、当該中心から当該光軸への垂線と当該光軸との間の交点と、第1の光学面5aの面頂点との間の距離をL
4とする。
また、偏向器4を形成する回転多面鏡の内接円の半径をL
5とする。このとき本実施形態に係る光走査装置70では、以下の条件式(10)が満たされていることが好ましい。
【0155】
【0156】
換言すると、結像光学系に含まれる少なくとも一つの結像光学素子のうち偏向器4に最も近い結像光学素子である結像光学素子5の第2の光学面5bの面頂点と反射光学素子7の反射面との間の距離をL3とする。
そして、結像光学素子5の第1の光学面5aの面頂点と偏向器4の偏向面4a上の軸上偏向点との間の距離をL6とする。
このとき本実施形態に係る光走査装置70では、以下の条件式(10a)が満たされていることが好ましい。
0.8≦L3/L6≦1.2 ・・・(10a)
【0157】
条件式(10)の下限値を下回るほど距離L3が小さくなることによって結像光学素子5と反射光学素子7とが互いに近くなると、上記の幅Bを有する領域が狭くなってしまう。
この場合、本実施形態に係る光走査装置70のように小型化を図る際に光学性能が低下してしまうため好ましくない。
【0158】
一方、条件式(10)の上限値を上回るほど距離L4と半径L5との間の差が小さくなることによって結像光学素子5と偏向器4との間の距離が小さくなると、以下のような不都合が生じる。
具体的には、結像光学素子5は副走査断面内において正のパワーを有しているため、副走査断面内において絞り3を通過した後に結像光学素子5に入射する際の光束の角度より、当該光束が結像光学素子5から出射する際の角度が大きくなる。
【0159】
従って、条件式(10)の上限値を上回るほど結像光学素子5と偏向器4との間の距離が小さくなると、結像光学素子5から出射した後に反射光学素子7に進行する光束に干渉しないように光源1やアナモフィックレンズ2を配置することが困難となり好ましくない。
また、この場合には偏向面4aからの反射光学素子7の離隔量よりも偏向面4aからの光源1やアナモフィックレンズ2の離隔量の方が大きくなってしまい、十分な小型化を行うことが困難となるため、好ましくない。
【0160】
次に、本実施形態に係る光走査装置70の諸元値と、各光学素子の面間隔、屈折率及び偏心配置情報と、アナモフィックレンズ2及び結像光学素子5の光学面の形状とをそれぞれ、以下の表7、表8及び表9に示す。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
本実施形態に係る光走査装置70に設けられている結像光学素子5の偏向面4a側の第1の光学面5a及び反射光学素子7側の第2の光学面5bそれぞれの母線は、上記の式(4)に示される16次の多項式関数で表される非球面形状を有している。
また、本実施形態に係る光走査装置70に設けられているアナモフィックレンズ2の入射面及び出射面それぞれの母線も、上記の式(4)で表される非球面形状を有している。
【0165】
また本実施形態に係る光走査装置70に設けられている結像光学素子5の偏向面4a側の第1の光学面5a及び反射光学素子7側の第2の光学面5bそれぞれの子線は、上記の式(5)及び式(6)で表される形状を有している。
また本実施形態に係る光走査装置70に設けられているアナモフィックレンズ2の入射面及び出射面それぞれの子線も、上記の式(5)及び式(6)で表される形状を有している。
なお、本実施形態に係る光走査装置70に設けられているアナモフィックレンズ2及び結像光学素子5の各光学面の形状を上記の式(4)乃至式(6)に表される関数で定義しているが、当該形状の定義はこれに限られない。
【0166】
本実施形態に係る光走査装置70では、反射光学素子7と偏向面4aとの間のX方向における距離L1は60mm、偏向面4aと被走査面6との間のX方向における距離L2は37mmとなっている。
すなわち本実施形態に係る光走査装置70全体のX方向における大きさは、97mmとなっている。
【0167】
具体的に本実施形態に係る光走査装置70では、光束が往復、すなわち二回進行する反射光学素子7と偏向面4aとの間の光路の距離に略対応する距離L1を、光束が一回進行する偏向面4aと被走査面6との間の光路に略対応する距離L2より大きくしている。
これにより、偏向面4aと被走査面6との間の十分な光路長を確保しつつ、光走査装置70全体のX方向における大きさを100mm以下に低減させることができる。
【0168】
また本実施形態に係る光走査装置70では、結像光学素子5の第1及び第2の光学面5a及び5bの参照球面の主走査断面内における曲率半径はそれぞれ、-254mm及び-369mmに設定されている。
なおここでいう参照球面とは、被走査面6上の走査領域に導光される光束が通過する領域、すなわち有効領域のみを近似的に表す球面である。
【0169】
すなわち結像光学素子5は、第1及び第2の光学面5a及び5b双方が偏向器4に向かって凸形状を有するように、換言すると凸のメニスカス形状を有するように形成されている。
これにより、収差、特に主走査コマ収差の低減を実現している。
【0170】
なお、本実施形態に係る光走査装置70において第1及び第2の光学面5a及び5bの上記曲率半径の絶対値をそれぞれ上記のように大きい値に設定したのは、偏向器4から見た凹の像面湾曲の発生を抑制するためである。
すなわち本実施形態に係る光走査装置70では、主走査コマ収差と他の収差との間のバランスを考慮して、第1及び第2の光学面5a及び5bの上記曲率半径の絶対値をそれぞれ上記のように大きい値に設定している。
【0171】
また偏向面4aによって偏向された後に第2の光学面5b上において、主走査断面内での結像光学素子5の光軸から最も離隔した位置から出射する光束の主光線の出射位置は、当該光軸から26.203mmの距離だけ離隔している。
加えて、当該光束の当該光軸とは反対側のマージナル光線の出射位置は、当該光軸から27.846mmの距離だけ離隔している。
【0172】
一方、反射光学素子7の反射面によって反射された当該光束の主光線の第2の光学面5b上における入射位置は、当該光軸から62.658mmの距離だけ離隔している。
なお、反射光学素子7の反射面によって反射された当該光束の当該光軸とは反対側のマージナル光線の第2の光学面5b上における入射位置は、当該光軸から63.468mmの距離だけ離隔している。
【0173】
従って、第2の光学面5b上において偏向器4の偏向面4aによって偏向された光束と反射光学素子7の反射面によって反射された光束との双方が通過する領域の主走査方向における幅Aは、2×27.846=55.692mmと算出される。
また、第2の光学面5b上において偏向面4aによって偏向された光束は通過しない一方で、当該反射面によって反射された光束が通過する領域の主走査方向における幅Bは、2×(63.468-27.846)=71.244mmと算出される。
【0174】
従って本実施形態に係る光走査装置70では、B/A=71.244/55.692=1.28と算出されることから、条件式(8)が満たされていることがわかる。
このように本実施形態に係る光走査装置70では幅Bを有する領域を十分に確保していることで、光学性能の低下を抑制している。
【0175】
また、偏向面4aによって偏向された後に第2の光学面5b上において、主走査断面内での結像光学素子5の光軸から最も離隔した位置から出射する光束の主光線の出射位置と当該光軸との間の距離hは、26.203mmである。
また、主走査断面内における当該主光線が第2の光学面5bから出射した際の進行方向と反射光学素子7の反射面の法線との間の角度θは、39.55°である。
そして第2の光学面5bの面頂点と反射光学素子7の反射面との間の距離L3は、25.00mmである。
【0176】
従って本実施形態に係る光走査装置70では、(2×L3×tanθ)/h=(2×25.00×0.826)/26.203=1.58と算出されることから、条件式(9)が満たされていることがわかる。
このように本実施形態に係る光走査装置70では、第2の光学面5b上において偏向面4aによって偏向された光束は通過しない一方で、反射光学素子7の反射面によって反射された光束が通過する領域を十分に確保していることで、光学性能の低下を抑制している。
【0177】
また本実施形態に係る光走査装置70では、偏向器4によって偏向された光束が通過する光学面のうち偏向器4に最も近い光学面である結像光学素子5の第1の光学面5aの面頂点と、偏向器4の回転軸の中心との間の距離L4は、34.071mmである。
そして、偏向器4を形成する回転多面鏡の内接円の半径L5は、7.071mmである。
【0178】
従って本実施形態に係る光走査装置70では、L3/(L4-L5)=25.00/(34.071-7.071mm)=0.93と算出されることから、条件式(10)が満たされていることがわかる。
すなわち本実施形態に係る光走査装置70では、距離L3と距離L4との和に略対応する反射光学素子7と偏向器4との間の領域において距離L3に対応する反射光学素子7と結像光学素子5との間の領域を十分に確保している。
【0179】
これにより、第2の光学面5b上において偏向面4aによって偏向された光束は通過しない一方で、反射光学素子7の反射面によって反射された光束が通過する領域を十分に確保していることで、光学性能の低下を抑制している。
加えて、X方向において反射光学素子7と結像光学素子5との間の領域に光源1及びアナモフィックレンズ2を配置することができることによって、小型化を図ることもできる。
【0180】
また本実施形態に係る光走査装置70では、上記のように光源1から出射した光束は、アナモフィックレンズ2によって主走査断面内において弱収束光束に変換されている。
そのため偏向器4によって偏向された当該光束は、偏向器4と被走査面6との間に光学素子は設けられていないと仮定した場合において偏向面4aから238.882mmだけ離隔した位置に集光される。
【0181】
従って本実施形態に係る光走査装置70では、結像光学素子5を大きなパワーを有する必要が無く、8mmの肉厚を有するように形成することができる。
加えて、偏向器4と被走査面6との間の光路長も短くすることができる。
【0182】
以上のように本実施形態に係る光走査装置70では、光源1からの光束が結像光学素子5を通過した後に偏向器4に入射し、偏向器4によって偏向された光束が結像光学素子5を通過し、反射光学素子7によって反射された後に結像光学素子5を再び通過する。
このような構成を採用することで、従来に比べて更なる小型化を図ることができる。
【0183】
また本実施形態に係る光走査装置70では、結像光学素子5が主走査断面内において偏向器4に向かって凸のメニスカス形状を有している。
このような構成を採用することで、従来に比べて光学性能の向上を図ることができる。
【0184】
[第四実施形態]
図5(a)及び(b)はそれぞれ、第四実施形態に係る光走査装置80の模式的主走査断面図及び模式的副走査断面図を示している。
また
図6は、第四実施形態に係る光走査装置80の模式的主走査断面図を示している。
なお本実施形態に係る光走査装置80は、諸元値が異なること以外は第一実施形態に係る光走査装置50と同一の構成を有しているため、同一の部材には同一の符番を付し、説明を省略する。
【0185】
本実施形態に係る光走査装置80では、
図5(a)に示されているように結像光学素子5は、主走査断面内に投影した際に偏向器4に向かって凸のメニスカス形状を有するように形成されている。
これにより、収差、特に主走査コマ収差の低減を図ることができる。
【0186】
一般的に、コマ収差を低減させるために、偏向器に近接して配置されている結像光学素子を当該偏向器に向かって凹のメニスカス形状に形成することで光線を略垂直に入射させている。
一方、本実施形態に係る光走査装置80では、結像光学素子5の主走査方向端部側において反射光学素子7によって反射された光束が通過する領域が設けられている。
【0187】
そのため本実施形態に係る光走査装置80では、結像光学素子5を特に当該領域において光線が略垂直に入射するように形成することでコマ収差を低減させている。
しかしながら本実施形態に係る光走査装置80では、結像光学素子5を大きく湾曲させないように形成している。
これは、結像光学素子5を大きく湾曲させると偏向器4から見て凹の像面湾曲が発生するためである。
【0188】
また本実施形態に係る光走査装置80では、上記の条件式(8)、(9)及び(10)の少なくとも一つが満たされていることが好ましい。
次に、本実施形態に係る光走査装置80の諸元値と、各光学素子の面間隔、屈折率及び偏心配置情報と、アナモフィックレンズ2及び結像光学素子5の光学面の形状とをそれぞれ、以下の表10、表11及び表12に示す。
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
本実施形態に係る光走査装置80に設けられている結像光学素子5の偏向面4a側の第1の光学面5a及び反射光学素子7側の第2の光学面5bそれぞれの母線は、上記の式(4)に示される16次の多項式関数で表される非球面形状を有している。
また、本実施形態に係る光走査装置80に設けられているアナモフィックレンズ2の入射面及び出射面それぞれの母線も、上記の式(4)で表される非球面形状を有している。
【0193】
また本実施形態に係る光走査装置80に設けられている結像光学素子5の偏向面4a側の第1の光学面5a及び反射光学素子7側の第2の光学面5bそれぞれの子線は、上記の式(5)及び式(6)で表される形状を有している。
また本実施形態に係る光走査装置80に設けられているアナモフィックレンズ2の入射面及び出射面それぞれの子線も、上記の式(5)及び式(6)で表される形状を有している。
なお、本実施形態に係る光走査装置80に設けられているアナモフィックレンズ2及び結像光学素子5の各光学面の形状を上記の式(4)乃至式(6)に表される関数で定義しているが、当該形状の定義はこれに限られない。
【0194】
本実施形態に係る光走査装置80では、反射光学素子7と偏向面4aとの間のX方向における距離L1は60mm、偏向面4aと被走査面6との間のX方向における距離L2は37mmとなっている。
すなわち本実施形態に係る光走査装置80全体のX方向における大きさは、97mmとなっている。
【0195】
具体的に本実施形態に係る光走査装置80では、光束が往復、すなわち二回進行する反射光学素子7と偏向面4aとの間の光路の距離に略対応する距離L1を、光束が一回進行する偏向面4aと被走査面6との間の光路に略対応する距離L2より大きくしている。
これにより、OFS方式において求められる偏向面4aと被走査面6との間の十分な光路長を確保しつつ、光走査装置80全体のX方向における大きさを100mm以下に低減させることができる。
【0196】
また本実施形態に係る光走査装置80では、結像光学素子5の第1及び第2の光学面5a及び5bの参照球面の主走査断面内における曲率半径はそれぞれ、-266mm及び-229mmに設定されている。
すなわち結像光学素子5は、第1及び第2の光学面5a及び5b双方が偏向器4に向かって凸形状を有するように、換言すると凸のメニスカス形状を有するように形成されている。
これにより、収差、特に主走査コマ収差の低減を実現している。
【0197】
なお、本実施形態に係る光走査装置80において第1及び第2の光学面5a及び5bの上記曲率半径の絶対値をそれぞれ上記のように大きい値に設定したのは、偏向器4から見た凹の像面湾曲の発生を抑制するためである。
すなわち本実施形態に係る光走査装置80では、主走査コマ収差と他の収差との間のバランスを考慮して、第1及び第2の光学面5a及び5bの上記曲率半径の絶対値をそれぞれ上記のように大きい値に設定している。
【0198】
また偏向面4aによって偏向された後に第2の光学面5b上において、主走査断面内での結像光学素子5の光軸から最も離隔した位置から出射する光束の主光線の出射位置は、当該光軸から26.457mmの距離だけ離隔している。
加えて、当該光束の当該光軸とは反対側のマージナル光線の出射位置は、当該光軸から27.945mmの距離だけ離隔している。
【0199】
一方、反射光学素子7の反射面によって反射された当該光束の主光線の第2の光学面5b上における入射位置は、当該光軸から60.393mmの距離だけ離隔している。
なお、反射光学素子7の反射面によって反射された当該光束の当該光軸とは反対側のマージナル光線の第2の光学面5b上における入射位置は、当該光軸から61.160mmの距離だけ離隔している。
【0200】
従って、第2の光学面5b上において偏向器4の偏向面4aによって偏向された光束と反射光学素子7の反射面によって反射された光束との双方が通過する領域の主走査方向における幅Aは、2×27.945=55.890mmと算出される。
また、第2の光学面5b上において偏向面4aによって偏向された光束は通過しない一方で、当該反射面によって反射された光束が通過する領域の主走査方向における幅Bは、2×(61.160-27.945)=66.430mmと算出される。
【0201】
従って本実施形態に係る光走査装置80では、B/A=66.430/55.890=1.19と算出されることから、条件式(8)が満たされていることがわかる。
このように本実施形態に係る光走査装置80では幅Bを有する領域を十分に確保していることで、光学性能の低下を抑制している。
【0202】
また、偏向面4aによって偏向された後に第2の光学面5b上において、主走査断面内での結像光学素子5の光軸から最も離隔した位置から出射する光束の主光線の出射位置と当該光軸との間の距離hは、26.457mmである。
また、主走査断面内における当該主光線が第2の光学面5bから出射した際の進行方向と反射光学素子7の反射面の法線との間の角度θは、38.71°である。
そして第2の光学面5bの面頂点と反射光学素子7の反射面との間の距離L3は、25.00mmである。
【0203】
従って本実施形態に係る光走査装置80では、(2×L3×tanθ)/h=(2×25.00×0.801)/26.457=1.51と算出されることから、条件式(9)が満たされていることがわかる。
このように本実施形態に係る光走査装置80では、第2の光学面5b上において偏向面4aによって偏向された光束は通過しない一方で、反射光学素子7の反射面によって反射された光束が通過する領域を十分に確保していることで、光学性能の低下を抑制している。
【0204】
また本実施形態に係る光走査装置80では、偏向器4によって偏向された光束が通過する光学面のうち偏向器4に最も近い光学面である結像光学素子5の第1の光学面5aの面頂点と、偏向器4の回転軸の中心との間の距離L4は、34.071mmである。
そして、偏向器4を形成する回転多面鏡の内接円の半径L5は、7.071mmである。
【0205】
従って本実施形態に係る光走査装置80では、L3/(L4-L5)=25.00/(34.071-7.071mm)=0.93と算出されることから、条件式(10)が満たされていることがわかる。
すなわち本実施形態に係る光走査装置80では、距離L3と距離L4との和に略対応する反射光学素子7と偏向器4との間の領域において距離L3に対応する反射光学素子7と結像光学素子5との間の領域を十分に確保している。
【0206】
これにより、第2の光学面5b上において偏向面4aによって偏向された光束は通過しない一方で、反射光学素子7の反射面によって反射された光束が通過する領域を十分に確保していることで、光学性能の低下を抑制している。
加えて、X方向において反射光学素子7と結像光学素子5との間の領域に光源1及びアナモフィックレンズ2を配置することができることによって、小型化を図ることもできる。
【0207】
また本実施形態に係る光走査装置80では、上記のように光源1から出射した光束は、アナモフィックレンズ2によって主走査断面内において弱収束光束に変換されている。
そのため偏向器4によって偏向された当該光束は、偏向器4と被走査面6との間に光学素子は設けられていないと仮定した場合において偏向面4aから225.1mmだけ離隔した位置に集光される。
【0208】
従って本実施形態に係る光走査装置80では、結像光学素子5を大きなパワーを有する必要が無く、8mmの肉厚を有するように形成することができる。
加えて、偏向器4と被走査面6との間の光路長も短くすることができる。
【0209】
以上のように本実施形態に係る光走査装置80では、光源1からの光束が結像光学素子5を通過した後に偏向器4に入射し、偏向器4によって偏向された光束が結像光学素子5を通過し、反射光学素子7によって反射された後に結像光学素子5を再び通過する。
このような構成を採用することで、従来に比べて更なる小型化を図ることができる。
【0210】
また本実施形態に係る光走査装置80では、結像光学素子5が主走査断面において偏向器4に向かって凸のメニスカス形状を有している。
このような構成を採用することで、従来に比べて光学性能の向上を図ることができる。
【0211】
[第五実施形態]
図7(a)及び(b)はそれぞれ、第五実施形態に係る光走査装置90の模式的主走査断面図及び一部模式的副走査断面図を示している。
また
図8は、第五実施形態に係る光走査装置90の模式的主走査断面図を示している。
【0212】
本実施形態に係る光走査装置90は、光源1、アナモフィックレンズ2、絞り3、偏向器4、結像光学素子5、第1の反射光学素子7及び第2の反射光学素子9を備えている。
光源1としては、例えば半導体レーザーを用いることができ、発光点の数は一つでも複数でも構わない。
アナモフィックレンズ2は、主走査断面内において正の屈折力を有しており、光源1から出射した光束を主走査断面内において弱収束光束に変換している。
【0213】
本実施形態に係る光走査装置90では、アナモフィックレンズ2によって変換された弱収束光束を用いることによって主走査断面内において結像光学素子5に必要となる屈折力を低減させることで、結像光学素子5の端部までのコバ厚を確保している。
またアナモフィックレンズ2は、副走査断面内においても正の屈折力を有しており、光源1から出射した光束を偏向器4の偏向面4aの近傍に集光させており、これにより偏向面4a上において主走査方向に長い線像が形成される。
【0214】
絞り3は、矩形形状の開口部を有しており、アナモフィックレンズ2を通過した光束の主走査方向及び副走査方向それぞれにおける光束幅を規制している。
なお絞り3の開口部は、矩形形状に限らず、楕円形状やトラック形状に形成されていても構わない。
第2の反射光学素子9は、絞り3を通過した光束を偏向器4の偏向面4aに向けて反射する。
【0215】
偏向器4としては、四つの偏向面4aを有する回転多面鏡(ポリゴンミラー)が用いられている。しかしながら偏向器4の偏向面4aの数は、四つに限定されるものではない。
そして本実施形態に係る光走査装置90では、主走査断面内において偏向面4aに入射する際の光束の光束幅は偏向面4aの幅よりも十分に小さい、すなわちUFS方式が採られている。
従って、偏向器4が回転することによって被走査面6上の走査領域が光束によって走査される際に当該光束が蹴られることはない。
【0216】
結像光学素子5は、二つの光学面(レンズ面)、すなわち副走査方向及び主走査方向それぞれに垂直な方向において偏向器4側の第1の光学面5a及び反射光学素子7側の第2の光学面5bを有している。
第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれの主走査断面内における形状は、後述するように偏向面4aによって偏向された光束が反射光学素子7を介して結像光学素子5を二回通過することで被走査面6上を所望の走査特性で走査するように形成されている。
また第1及び第2の光学面5a及び5bそれぞれの副走査断面内における形状は、偏向面4aの近傍と被走査面6の近傍とを互いに光学的に共役の関係に設定することで面倒れ補償を行っている。
【0217】
本実施形態に係る光走査装置90では、光源1から出射した光束は、アナモフィックレンズ2及び絞り3を通過し、第2の反射光学素子9によって反射されることで偏向器4に入射する。
そして偏向器4によって偏向された光束は、結像光学素子5の第1の光学面5aから入射する。
【0218】
そして結像光学素子5を通過することで収束度が変化し、結像光学素子5の第2の光学面5bから出射した光束は、第1の反射光学素子7によって反射された後、結像光学素子5の第2の光学面5bから再度入射する。
最後に、結像光学素子5の第1の光学面5aから出射した光束は、被走査面6上に導光される。
換言すると本実施形態に係る光走査装置90では、偏向器4によって偏向された光束は、第1の光学面5a、第2の光学面5b、第1の反射光学素子7の反射面、第2の光学面5b、及び第1の光学面5aを順に介して被走査面6に導光される。
【0219】
本実施形態に係る光走査装置90では、このようにして光束が結像光学素子5を複数回通過することによって主走査断面内及び副走査断面内双方において集光されることで、被走査面6の近傍においてスポット状の像が形成される。
そして偏向器4を不図示の駆動部によって
図7(a)中矢印B11方向に一定速度で回転させることによって、被走査面6上が主走査方向の
図7(a)中矢印C11の向きに光走査されることで、被走査面6上に静電潜像が形成される。
【0220】
本実施形態に係る光走査装置90では、光源1から出射した光束を偏向器4の偏向面4aに入射させる入射光学系がアナモフィックレンズ2、絞り3及び第2の反射光学素子9によって形成される。
そして、偏向器4の偏向面4aによって偏向された光束を被走査面6に導光する結像光学系が結像光学素子5によって形成される。
また本実施形態に係る光走査装置90では、偏向器4の偏向面4aによって偏向された光束の光路を折り曲げるように当該光束を反射する反射光学系が第1の反射光学素子7によって形成される。
【0221】
なお本実施形態に係る光走査装置90では、アナモフィックレンズ2を用いる代わりに、アナモフィックレンズ2の光学的機能を分担するように、例えばカップリングレンズとシリンドリカルレンズとを用いても構わない。
また本実施形態に係る光走査装置90に設けられているアナモフィックレンズ2及び結像光学素子5としては、射出成型によって形成されたプラスチックモールドレンズが用いられているが、これに限らずガラスモールドレンズが用いられてもよい。
【0222】
なお、モールドレンズは非球面形状を有するように容易に形成することができ、且つ大量生産に適している。
そのため、本実施形態に係る光走査装置90においてアナモフィックレンズ2及び結像光学素子5としてモールドレンズを用いることで生産性及び光学性能の向上を図ることができる。
【0223】
また本実施形態に係る光走査装置90では、低コスト化を達成するために結像光学系が単一の結像光学素子5によって形成されていると共に、反射光学系が単一の平面形状を有する第1の反射光学素子7によって形成されている。
しかしながらこれに限らず、結像性能を向上させるために複数の結像光学素子によって結像光学系を形成したり、反射光学系において平面以外の形状を有する反射光学素子を設けても構わない。
【0224】
本実施形態に係る光走査装置90では、偏向面4aが偏向した後に第1の反射光学素子7に進行する際、及び第1の反射光学素子7が反射した後に被走査面6に進行する際の計二回、光束が結像光学素子5を通過している。
このような構成を採用することで、小型化を達成することができる。
【0225】
また本実施形態に係る光走査装置90では、偏向面4aによって偏向された光束に干渉しないように、光源1、アナモフィックレンズ2及び絞り3をそれぞれ、第2の反射光学素子9から離隔するように配置している。
なお、副走査断面内における主走査断面に対する角度が大きくなるように偏向面4aに対して光束を斜入射させる構成を採り、光源1、アナモフィックレンズ2及び絞り3と、上記光束とを互いに大きく離隔させることで、双方の干渉を抑制することもできる。
しかしながらこの場合、当該斜入射の角度が大きくなることで光学性能が低下する虞があるため、好ましくない。
【0226】
また本実施形態に係る光走査装置90では、
図7(a)に示されているように結像光学素子5は、主走査断面内に投影した際に偏向器4に向かって凸のメニスカス形状を有するように形成されている。
これにより、収差、特に主走査コマ収差の低減を図ることができる。
【0227】
一般的に、コマ収差を低減させるために、偏向器に近接して配置されている結像光学素子を当該偏向器に向かって凹のメニスカス形状に形成することで光線を略垂直に入射させている。
一方、本実施形態に係る光走査装置90では、結像光学素子5の主走査方向端部側において反射光学素子7によって反射された光束が通過する領域が設けられている。
【0228】
そのため本実施形態に係る光走査装置90では、結像光学素子5を特に当該領域において光線が略垂直に入射するように形成することでコマ収差を低減させている。
しかしながら本実施形態に係る光走査装置90では、結像光学素子5を大きく湾曲させないように形成している。
これは、結像光学素子5を大きく湾曲させると偏向器4から見て凹の像面湾曲が発生するためである。
【0229】
また本実施形態に係る光走査装置90では、上記の条件式(8)及び(9)が満たされていることが好ましい。
また
図8に示されているように、偏向器4によって偏向された光束が通過する光学面のうち偏向器4に最も近い光学面である結像光学素子5の第1の光学面5aの面頂点と、偏向器4の回転軸の中心との間の距離をL
4とする。
【0230】
なお偏向器4の回転軸の中心が結像光学素子5の光軸からシフトしている場合には、当該中心から当該光軸への垂線と当該光軸との間の交点と、第1の光学面5aの面頂点との間の距離をL4とする。
また、偏向器4を形成する回転多面鏡の内接円の半径をL5とする。このとき本実施形態に係る光走査装置90では、以下の条件式(11)が満たされていることが好ましい。
【0231】
【0232】
条件式(11)の下限値を下回るほど距離L3が小さくなることによって結像光学素子5と反射光学素子7とが互いに近くなると、上記の幅Bを有する領域が狭くなってしまう。
この場合、本実施形態に係る光走査装置90のように小型化を図る際に光学性能が低下してしまうため好ましくない。
【0233】
一方、条件式(11)の上限値を上回るほど距離L4と半径L5との間の差が小さくなることによって結像光学素子5と偏向器4との間の距離が小さくなると、以下のような不都合が生じる。
すなわち、入射光学系の配置が困難であったり、偏向器4を駆動するモータや当該モータを駆動するための基板に結像光学素子5が干渉する虞があるため、好ましくない。
【0234】
また本実施形態に係る光走査装置90では、光源1から出射した光束を主走査断面において収束光束に変換させて偏向器4の偏向面4aに入射させている。これにより、全光路長を低減することで小型化を達成することができる。
また、これにより結像光学素子5に必要となる主走査断面内におけるパワーを低減させることによって結像光学素子5の肉厚を低減させることで、結像光学素子5を射出成型で製造する際の製造時間を短縮することができる。
【0235】
本実施形態に係る光走査装置90では、光源1から出射した光束を偏向面4aに対して正面入射させている。
一般的に、偏向面4aの入射した光束に対する反射率は、当該光束の入射角度に応じて変化する。
【0236】
加えて、屈折光学素子を通過する光束に対する透過率も、当該光束の入射角度に応じて変化する。
そこで本実施形態に係る光走査装置90では、上記のように光源1から出射した光束を偏向面4aに対して正面入射させることで被走査面6上での書き始め側の走査領域と書き終わり側の走査領域との間における濃度ムラの発生を抑制している。
【0237】
また本実施形態に係る光走査装置90では、
図7(b)に示されているように副走査断面に投影したときに光源1から出射した光束を偏向面4aに対して斜めに入射させている。
これにより、第2の反射光学素子9と偏向面4aによって偏向された光束との間の干渉を抑制することができる。
【0238】
また本実施形態に係る光走査装置90では、結像光学系を単一の結像光学素子5によって形成すると共に、反射光学系が単一の第1の反射光学素子7によって形成することで低コスト化を図っている。
なお結像光学系を複数の結像光学素子によって形成した場合、X方向において所定の結像光学素子が偏向器4と被走査面6との間に配置されると、当該所定の結像光学素子の主走査方向における長さが増大してしまう。
【0239】
そして主走査方向に長い当該所定の結像光学素子を射出成型で形成する場合、一度に成型することができる数が少なくなることで高コスト化してしまう。
一方、X方向において複数の結像光学素子全てを偏向器4と第1の反射光学素子7との間に配置した場合、当該複数の結像光学素子の間の距離が低減することによって配置することが困難となるため、好ましくない。
【0240】
次に、本実施形態に係る光走査装置90の諸元値と、各光学素子の面間隔、屈折率及び偏心配置情報と、アナモフィックレンズ2及び結像光学素子5の光学面の形状とをそれぞれ、以下の表13、表14及び表15に示す。
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
本実施形態に係る光走査装置90に設けられている結像光学素子5の偏向面4a側の第1の光学面5a及び反射光学素子7側の第2の光学面5bそれぞれの母線は、上記の式(4)に示される16次の多項式関数で表される非球面形状を有している。
また、本実施形態に係る光走査装置90に設けられているアナモフィックレンズ2の入射面及び出射面それぞれの母線も、上記の式(4)で表される非球面形状を有している。
【0245】
また本実施形態に係る光走査装置90に設けられている結像光学素子5の偏向面4a側の第1の光学面5a及び反射光学素子7側の第2の光学面5bそれぞれの子線は、上記の式(5)及び式(6)で表される形状を有している。
また本実施形態に係る光走査装置90に設けられているアナモフィックレンズ2の入射面及び出射面それぞれの子線も、上記の式(5)及び式(6)で表される形状を有している。
なお、本実施形態に係る光走査装置90に設けられているアナモフィックレンズ2及び結像光学素子5の各光学面の形状を上記の式(4)乃至式(6)に表される関数で定義しているが、当該形状の定義はこれに限られない。
【0246】
本実施形態に係る光走査装置90では、反射光学素子7と偏向面4aとの間のX方向における距離L1は60mm、偏向面4aと被走査面6との間のX方向における距離L2は37mmとなっている。
すなわち本実施形態に係る光走査装置90全体のX方向における大きさは、97mmとなっている。
【0247】
具体的に本実施形態に係る光走査装置90では、光束が往復、すなわち二回進行する反射光学素子7と偏向面4aとの間の光路の距離に略対応する距離L1を、光束が一回進行する偏向面4aと被走査面6との間の光路に略対応する距離L2より大きくしている。
これにより、偏向面4aと被走査面6との間の十分な光路長を確保しつつ、光走査装置90全体のX方向における大きさを100mm以下に低減させることができる。
【0248】
また本実施形態に係る光走査装置90では、アナモフィックレンズ2の光軸は副走査断面内において主走査断面に対して2°だけ傾いている。
これにより、第2の反射光学素子9に入射する光束と、偏向面4aによって偏向された光束が互いに離隔する、すなわち第2の反射光学素子9と偏向面4aによって偏向された光束との間の干渉を抑制することができる。
また光源1、アナモフィックレンズ2及び絞り3も、偏向面4aによって偏向された光束に干渉しないように、当該光束が進行する領域の外側に配置されている。
【0249】
また本実施形態に係る光走査装置90では、結像光学素子5の第1及び第2の光学面5a及び5bの参照球面の主走査断面内における曲率半径はそれぞれ、-458mm及び-986mmに設定されている。
すなわち結像光学素子5は、第1及び第2の光学面5a及び5b双方が偏向器4に向かって凸形状を有するように、換言すると凸のメニスカス形状を有するように形成されている。
これにより、収差、特に主走査コマ収差の低減を実現している。
【0250】
なお、本実施形態に係る光走査装置90において第1及び第2の光学面5a及び5bの上記曲率半径の絶対値をそれぞれ上記のように大きい値に設定したのは、偏向器4から見た凹の像面湾曲の発生を抑制するためである。
すなわち本実施形態に係る光走査装置90では、主走査コマ収差と他の収差との間のバランスを考慮して、第1及び第2の光学面5a及び5bの上記曲率半径の絶対値をそれぞれ上記のように大きい値に設定している。
【0251】
また偏向面4aによって偏向された後に第2の光学面5b上において、主走査断面内での結像光学素子5の光軸から最も離隔した位置から出射する光束の主光線の出射位置は、当該光軸から25.201mmの距離だけ離隔している。
加えて、当該光束の当該光軸とは反対側のマージナル光線の出射位置は、当該光軸から26.412mmの距離だけ離隔している。
【0252】
一方、反射光学素子7の反射面によって反射された当該光束の主光線の第2の光学面5b上における入射位置は、当該光軸から66.273mmの距離だけ離隔している。
なお、反射光学素子7の反射面によって反射された当該光束の当該光軸とは反対側のマージナル光線の第2の光学面5b上における入射位置は、当該光軸から67.784mmの距離だけ離隔している。
【0253】
従って、第2の光学面5b上において偏向器4の偏向面4aによって偏向された光束と反射光学素子7の反射面によって反射された光束との双方が通過する領域の主走査方向における幅Aは、2×26.412=52.824mmと算出される。
また、第2の光学面5b上において偏向面4aによって偏向された光束は通過しない一方で、当該反射面によって反射された光束が通過する領域の主走査方向における幅Bは、2×(67.784-26.412)=82.744mmと算出される。
【0254】
従って本実施形態に係る光走査装置90では、B/A=82.744/52.824=1.57と算出されることから、条件式(8)が満たされていることがわかる。
このように本実施形態に係る光走査装置90では幅Bを有する領域を十分に確保していることで、光学性能の低下を抑制している。
【0255】
また、偏向面4aによって偏向された後に第2の光学面5b上において、主走査断面内での結像光学素子5の光軸から最も離隔した位置から出射する光束の主光線の出射位置と当該光軸との間の距離hは、25.201mmである。
また、主走査断面内における当該主光線が第2の光学面5bから出射した際の進行方向と反射光学素子7の反射面の法線との間の角度θは、40.40°である。
そして第2の光学面5bの面頂点と反射光学素子7の反射面との間の距離L3は、25.00mmである。
【0256】
従って本実施形態に係る光走査装置90では、(2×L3×tanθ)/h=(2×25.00×0.851)/25.201=1.69と算出されることから、条件式(9)が満たされていることがわかる。
このように本実施形態に係る光走査装置90では、第2の光学面5b上において偏向面4aによって偏向された光束は通過しない一方で、反射光学素子7の反射面によって反射された光束が通過する領域を十分に確保していることで、光学性能の低下を抑制している。
【0257】
また本実施形態に係る光走査装置90では、偏向器4によって偏向された光束が通過する光学面のうち偏向器4に最も近い光学面である結像光学素子5の第1の光学面5aの面頂点と、偏向器4の回転軸の中心との間の距離L4は、34.071mmである。
そして、偏向器4を形成する回転多面鏡の内接円の半径L5は、7.071mmである。
【0258】
従って本実施形態に係る光走査装置90では、L3/(L4-L5)=25.00/(34.071-7.071mm)=0.93と算出されることから、条件式(11)が満たされていることがわかる。
すなわち本実施形態に係る光走査装置90では、距離L3と距離L4との和に略対応する反射光学素子7と偏向器4との間の領域において距離L3に対応する反射光学素子7と結像光学素子5との間の領域を十分に確保している。
これにより、第2の光学面5b上において偏向面4aによって偏向された光束は通過しない一方で、反射光学素子7の反射面によって反射された光束が通過する領域を十分に確保していることで、光学性能の低下を抑制している。
【0259】
また本実施形態に係る光走査装置90では、上記のように光源1から出射した光束は、アナモフィックレンズ2によって主走査断面内において弱収束光束に変換されている。
そのため偏向器4によって偏向された当該光束は、偏向器4と被走査面6との間に光学素子は設けられていないと仮定した場合において偏向面4aから159.7mmだけ離隔した位置に集光される。
【0260】
従って本実施形態に係る光走査装置90では、結像光学素子5を大きなパワーを有する必要が無く、8mmの肉厚を有するように形成することができる。
加えて、偏向器4と被走査面6との間の光路長も短くすることができる。
【0261】
以上のように本実施形態に係る光走査装置90では、偏向器4によって偏向された光束が結像光学素子5を通過し、反射光学素子7によって反射された後に結像光学素子5を再び通過する。
また結像光学素子5は、主走査断面内において偏向器4に向かって凸のメニスカス形状を有している。
このような構成を採用することで、従来に比べて光学性能の向上を図ることができる。
【0262】
[モノクロ画像形成装置]
図9(a)は、第一乃至第五実施形態の何れかに係る光走査装置を備えるモノクロ画像形成装置104の要部副走査断面図を示している。
【0263】
図9(a)に示されているようにモノクロ画像形成装置104には、パーソナルコンピュータ等の外部機器117から出力されたコードデータDcが入力される。
当該入力されたコードデータDcは、モノクロ画像形成装置104内に設けられているプリンタコントローラ111によって、画像データ(ドットデータ)Diに変換される。
【0264】
そして当該変換された画像データDiは、第一乃至第五実施形態の何れかに係る光走査装置である光走査ユニット100に入力される。
次に光走査ユニット100からは、当該入力された画像データDiに応じて変調された光ビーム103が射出され、当該射出された光ビーム103によって感光ドラム101の感光面が主走査方向に走査される。
【0265】
静電潜像担持体(感光体)たる感光ドラム101は、モータ115によって時計廻りに回転させられる。
そして感光ドラム101の感光面は、当該回転に伴って光ビーム103に対して主走査方向に垂直な副走査方向に移動する。
【0266】
感光ドラム101の上方には、感光ドラム101の表面を一様に帯電せしめる帯電ローラ102が当該表面に当接するように設けられている。
そして、帯電ローラ102によって帯電された感光ドラム101の表面には、光走査ユニット100によって走査される光ビーム103が照射される。
【0267】
上述したように光ビーム103は、画像データDiに基づいて変調されており、感光ドラム101の表面には光ビーム103が照射されることによって静電潜像が形成される。
そして当該形成された静電潜像は、光ビーム103の照射位置よりも更に感光ドラム101の回転方向の下流側において感光ドラム101に当接するように配設されている現像器107によってトナー像として現像される。
【0268】
次に、現像器107によって現像されたトナー像は、感光ドラム101の下方において感光ドラム101に対向するように配設されている転写ローラ108によって被転写材たる用紙112上に転写される。
用紙112は、感光ドラム101の前方(
図9(a)において右側)の用紙カセット109内に収納されているが、手差しでも給紙が可能である。
そして用紙カセット109の端部には、給紙ローラ110が配設されており、用紙カセット109内の用紙112が搬送路へ送り込まれる。
【0269】
上記のように未定着トナー像が転写された用紙112は、更に感光ドラム101の後方(
図9(a)において左側)に配設されている定着器150に搬送される。
定着器150は、内部に定着ヒータ(不図示)を有する定着ローラ113と、当該定着ローラ113に圧接するように配設された加圧ローラ114とによって形成されている。
【0270】
そして、転写部から搬送されてきた用紙112が定着ローラ113と加圧ローラ114との間の圧接部において加圧しながら加熱されることで、用紙112上の未定着トナー像が定着される。
また定着ローラ113の後方には排紙ローラ116が配設されており、定着された用紙112は、モノクロ画像形成装置104の外部に排出される。
【0271】
なお
図9(a)において図示されていないが、プリンタコントローラ111は、上述したデータの変換に限らず、モータ115を含むモノクロ画像形成装置104内の各部材や、光走査ユニット100内のポリゴンモータ等の制御も行う。
またモノクロ画像形成装置104の記録密度は、特に限定されない。
【0272】
[カラー画像形成装置]
図9(b)は、第一乃至第五実施形態の何れかに係る光走査装置を備えるカラー画像形成装置260の要部副走査断面図を示している。
【0273】
カラー画像形成装置260は、四つの第一乃至第五実施形態の何れかに係る光走査装置211、212、213及び214が並行して像担持体である感光ドラム面上に画像情報を記録するタンデムタイプを採っている。
カラー画像形成装置260は、第一乃至第五実施形態の何れかに係る光走査装置211乃至214と、像担持体としての感光ドラム221、222、223及び224とを備えている。
またカラー画像形成装置260は、現像器231、232、233及び234と、搬送ベルト251と、プリンタコントローラ253と、定着器254とを備えている。
【0274】
図9(b)に示されているようにカラー画像形成装置260には、パーソナルコンピュータ等の外部機器252からR(レッド)、G(グリーン)及びB(ブルー)の各色信号が入力される。
そして当該入力された色信号は、カラー画像形成装置260内に設けられているプリンタコントローラ253によって、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びK(ブラック)の各画像データ(ドットデータ)に変換される。
【0275】
次に当該変換された画像データはそれぞれ、光走査装置211乃至214に入力される。
そして光走査装置211乃至214それぞれから各画像データに応じて変調された光ビーム241、242、243及び244が射出され、当該出射した光ビーム241乃至244によって感光ドラム221乃至224の感光面がそれぞれ主走査方向に走査される。
【0276】
感光ドラム221乃至224の表面を一様に帯電せしめる帯電ローラ(不図示)が表面に当接するように設けられている。
そして、当該帯電ローラによって帯電された感光ドラム221乃至224の表面に、光走査装置211乃至214それぞれから光ビーム241乃至244が照射されるようになっている。
【0277】
上述したように光ビーム241乃至244は、各色の画像データに基づいて変調されており、光ビーム241乃至244を照射することによって感光ドラム221乃至224それぞれの表面に静電潜像が形成される。
そして形成された静電潜像は、感光ドラム221乃至224に当接するように配設されている現像器231乃至234によってトナー像として現像される。
【0278】
現像器231乃至234によって現像されたトナー像は、感光ドラム221乃至224に対向するように配設された不図示の転写ローラ(転写器)によって搬送ベルト251上を搬送される不図示の用紙(被転写材)上に多重転写される。これにより、一枚のフルカラー画像が形成される。
上記のように未定着トナー像が転写された用紙は、更に感光ドラム221乃至224の後方(
図9(b)において左側)に設けられている定着器254に搬送される。
【0279】
定着器254は、内部に定着ヒータ(不図示)を有する定着ローラと、当該定着ローラに圧接するように配設されている加圧ローラとによって形成されている。
そして転写部から搬送されてきた用紙は、当該定着ローラと当該加圧ローラとの間の圧接部によって加圧しながら加熱されることにより、用紙上の未定着トナー像が定着される。
更に定着ローラの後方には不図示の排紙ローラが配設されており、当該排紙ローラは、定着された用紙をカラー画像形成装置260の外部に排出せしめる。
【0280】
カラー画像形成装置260では、光走査装置211乃至214がそれぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びK(ブラック)の各色に対応し、各々並行して感光ドラム221乃至224の感光面上に画像信号(画像情報)を記録する。
これにより、カラー画像を高速に印字することができる。
【0281】
なお外部機器252としては、例えばCCDセンサを備えたカラー画像読取装置が用いられてもよい。
この場合には、当該カラー画像読取装置とカラー画像形成装置260とによってカラーデジタル複写機が形成される。
【0282】
以上、好ましい実施形態について説明したが、これらの実施形態に限定されずその要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0283】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)光源からの光束を偏向して被走査面を主走査方向に走査する偏向器と、第1及び第2の光学面を有する結像光学素子と、反射面を有する反射光学素子とを備え、光源からの光束は、第2の光学面、第1の光学面、偏向器、第1の光学面、第2の光学面、反射面、第2の光学面、及び第1の光学面を順に介して被走査面に導光されることを特徴とする光走査装置。
(構成2)光源からの光束を偏向器に入射させる入射光学系を備え、入射光学系は、光束を反射する反射光学素子を含まないことを特徴とする構成1に記載の光走査装置。
(構成3)偏向器の軸上偏向点と反射面との間の距離をL1、軸上偏向点と被走査面との間の距離をL2としたとき、L2≦L1なる条件を満たすことを特徴とする構成1または2に記載の光走査装置。
(構成4)結像光学素子は、副走査断面において偏向器に向かって凹のメニスカス形状を有していることを特徴とする構成1乃至3の何れか一項に記載の光走査装置。
(構成5)結像光学素子は、主走査断面において偏向器に向かって凸のメニスカス形状を有していることを特徴とする構成1乃至4の何れか一項に記載の光走査装置。
(構成6)第2の光学面上において、光源からの光束と偏向器によって偏向された光束とは、副走査方向において第2の光学面の面頂点に対して互いに反対側を通過することを特徴とする構成1乃至5の何れか一項に記載の光走査装置。
(構成7)第1及び第2の光学面それぞれの有効領域は、副走査断面において連続的な形状を有していることを特徴とする構成1乃至6の何れか一項に記載の光走査装置。
(構成8)光源からの光束を偏向器に入射させる入射光学系を備え、入射光学系は、光源からの光束の主走査断面における収束度を変更すると共に、光源からの光束を副走査断面において集光する光学素子を有することを特徴とする構成1乃至7の何れか一項に記載の光走査装置。
(構成9)偏向器によって偏向された光束の光路上において結像光学素子以外の屈折光学素子は設けられていないことを特徴とする構成1乃至8の何れか一項に記載の光走査装置。
(構成10)偏向器によって偏向された光束の光路上において反射光学素子以外の反射光学素子は設けられていないことを特徴とする構成1乃至9の何れか一項に記載の光走査装置。
(構成11)光源からの光束を偏向器に入射させる入射光学系を備え、入射光学系において、光束の光路上における結像光学素子と偏向器との間に屈折光学素子は設けられていないことを特徴とする構成1乃至10の何れか一項に記載の光走査装置。
(構成12)光源からの光束を偏向して被走査面を主走査方向に走査する偏向器と、第1及び第2の光学面を有する第1の結像光学素子と、反射面を有する第1の反射光学素子とを備え、偏向器によって偏向された光束は、第1の光学面、第2の光学面、反射面、第2の光学面、及び第1の光学面を順に介して被走査面に導光され、第1の結像光学素子は、主走査断面において偏向器に向かって凸のメニスカス形状を有していることを特徴とする光走査装置。
(構成13)第2の光学面上において、偏向器によって偏向された光束と反射面によって反射された光束との双方が通過する領域の主走査方向における幅をA、偏向器によって偏向された光束は通過しない一方で、反射面によって反射された光束が通過する領域の主走査方向における幅をBとしたとき、0.9≦B/A≦2.0なる条件を満たすことを特徴とする構成12に記載の光走査装置。
(構成14)第2の光学面上において、偏向器によって偏向された光束のうち主走査方向において第1の結像光学素子の光軸から最も離隔した位置を通過する光束の主光線の通過位置と光軸との間の距離をh、主走査断面における主光線が第2の光学面から出射したときの進行方向と反射面の法線とのなす角度をθ、第2の光学面の面頂点と反射面との間の距離をL3としたとき、0.9≦2×L3×tanθ/h≦2.0なる条件を満たすことを特徴とする構成12または13に記載の光走査装置。
(構成15)偏向器によって偏向された光束の光路上において偏向器に最も近い第1の結像光学素子を含む少なくとも一つの結像光学素子を有し、偏向器によって偏向された光束を被走査面に導光する結像光学系を備え、第2の光学面の面頂点と反射面との間の距離をL3、第1の光学面の面頂点と偏向器の軸上偏向点との間の距離をL4としたとき、0.8≦L3/L4≦3.0なる条件を満たすことを特徴とする構成12乃至14の何れか一項に記載の光走査装置。
(構成16)光源からの光束は、第2の光学面、及び第1の光学面を順に介して偏向器に入射することを特徴とする構成12乃至15の何れか一項に記載の光走査装置。
(構成17)光源からの光束を反射して偏向器に導光する第2の反射光学素子を備えることを特徴とする構成12乃至16の何れか一項に記載の光走査装置。
(構成18)主走査断面に投影した際に、偏向器に入射するときの光束の進行方向と、偏向器によって軸上像高に向けて偏向されたときの光束の進行方向とは互いに平行であることを特徴とする構成1乃至17の何れか一項に記載の光走査装置。
(構成19)主走査断面において、偏向器の偏向面に入射するときの光束の幅は偏向面の幅よりも大きいことを特徴とする構成1乃至17の何れか一項に記載の光走査装置。
(構成20)構成1乃至17の何れか一項に記載の光走査装置と、光走査装置により被走査面に形成される静電潜像をトナー像として現像する現像器と、現像されたトナー像を被転写材に転写する転写器と、転写されたトナー像を被転写材に定着させる定着器とを備えることを特徴とする画像形成装置。
(構成21)構成1乃至17の何れか一項に記載の光走査装置と、外部機器から出力された信号を画像データに変換して光走査装置に入力するプリンタコントローラとを備えることを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0284】
1 光源
4 偏向器
5 結像光学素子
5a 第1の光学面
5b 第2の光学面
6 被走査面
7 反射光学素子
50 光走査装置