(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001404
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】折り畳みナイフ
(51)【国際特許分類】
B26B 1/02 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
B26B1/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100969
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】592140539
【氏名又は名称】中村 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100167276
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠一
【テーマコード(参考)】
3C061
【Fターム(参考)】
3C061AA03
3C061AA16
3C061BA03
3C061BB11
3C061CC03
3C061CC05
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で刀身を把持部に対して固定できる折り畳みナイフを提供する。
【解決手段】折り畳みナイフは、刀身と、前記刀身を、収容空間から離れる第1方向と、前記収容空間内に向かう第2方向とに回動可能な状態で保持する一対の板状部材と、前記刀身が前記把持部の先端側の固定位置に到達したときに前記刀身の基端部に当接して、前記刀身の前記第1方向への移動を停止させる停止部と、前記刀身の基端部の回動領域内の第1位置と、前記回動領域から離れた第2位置との間を移動可能に配置され、前記刀身が前記固定位置に位置している状態において、前記第1位置に移動して、前記停止部と前記刀身の基端部に設けられた被係止部との間の隙間に嵌まることによって前記刀身の前記第2方向への移動を規制する移動規制部と、使用者が前記移動規制部の移動を操作可能な操作部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳みナイフであって、
一方の側端部に刃部を有する刀身と、
使用者によって把持される把持部を構成する一対の板状部材であって、互いの間に前記刃部を収容するための収容空間が形成されるように互いに重ね合わされ、互いの先端部位において前記刀身の基端部を厚み方向に挟み、前記刀身の基端部を通る回動軸を中心に、前記刀身を、前記刃部が前記収容空間から離れる第1方向と、前記刃部が前記収容空間内に向かう第2方向とに回動可能な状態で保持する、一対の板状部材と、
前記一対の板状部材の間に設けられ、前記刀身が前記第1方向に回動して前記把持部の先端側の固定位置に到達したときに、前記刀身の基端部に当接して、前記刀身の前記第1方向への回動を停止させる停止部と、
前記一対の板状部材の間において、前記刀身の基端部の回動領域内の第1位置と、前記回動領域から離れた第2位置との間を移動可能に配置され、前記刀身が前記固定位置に位置している状態において、前記第1位置に移動して、前記停止部と前記刀身の基端部に設けられた被係止部との間の隙間に嵌まることによって前記刀身の前記第2方向への移動を規制する移動規制部と、
前記一対の板状部材の外部に一部が露出するように設けられ、使用者が前記移動規制部の移動を操作可能なように、前記移動規制部に連結されている操作部と、
を備える、折り畳みナイフ。
【請求項2】
請求項1記載の折り畳みナイフであって、さらに、
前記移動規制部を前記第2位置から前記第1位置に向かう方向に付勢する弾性部材を備える、折り畳みナイフ。
【請求項3】
請求項2記載の折り畳みナイフであって、
前記被係止部は、第1被係止部であり、
前記刀身の基端部には、前記刃部が前記収容空間に収容されているときに前記刀身の前記第1方向への回動が規制されるように、前記第2位置から前記第1位置に向かって移動した前記移動規制部が係止される第2被係止部が設けられている、折り畳みナイフ。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の折り畳みナイフであって、
前記移動規制部は、前記一対の板状部材の板面に沿った方向に並ぶ前記第1位置と前記第2位置との間を移動可能に構成されており、
前記移動規制部の先端部は、前記第2位置から前記第1位置に向かう方向の先端ほど幅が小さくなる先細りの形状を有し、前記第1位置に移動したときに、前記停止部と前記刀身の基端部に設けられた被係止部との間の隙間に入り込む、折り畳みナイフ。
【請求項5】
請求項4記載の折り畳みナイフであって、
前記一対の板状部材の間に配置され、前記移動規制部の後端部を収容する筒状部材を備え、
前記弾性部材は、コイルばねによって構成され、前記筒状部材の内部に収容されている、折り畳みナイフ。
【請求項6】
請求項4記載の折り畳みナイフであって、
前記一対の板状部材の少なくとも一方には、前記移動規制部の移動経路に沿った貫通溝部が設けられており、
前記移動規制部は、側面に、前記貫通溝部を通じて、前記一対の板状部材の外部に向かって延びている突起部を有し、
前記弾性部材は、前記一対の板状部材の外側に設置され、前記突起部を介して前記移動規制部を前記第2位置から前記第1位置に向かう方向に付勢する、折り畳みナイフ。
【請求項7】
請求項6記載の折り畳みナイフであって、
前記貫通溝部は、前記一対の板状部材の両方に設けられ、
前記移動規制部は、前記突起部として、前記一対の板状部材の前記貫通溝部のそれぞれを通じて外部に延び出ている第1突起部と第2突起部とを有し、
前記一対の板状部材の外側には、前記弾性部材として、前記第1突起部を通じて前記移動規制部を付勢する第1弾性部材と、前記第2突起部を通じて前記移動規制部を付勢する第2弾性部材と、が設けられている、折り畳みナイフ。
【請求項8】
請求項2記載の折り畳みナイフであって、
前記刀身の基端部には、前記回転軸を中心とする円弧状の外周縁部である円弧部が設けられており、
前記被係止部は、前記円弧部の隣り合う位置に設けられた窪み部の縁部によって構成されている、折り畳みナイフ。
【請求項9】
請求項2、または、請求項3に記載の折り畳みナイフであって、
前記弾性部材は、前記一対の板状部材の間に配置され、後端側が固定され、先端側が、弾性変形によって厚み方向に変位可能な板バネによって構成され、
前記移動規制部は、前記板バネの先端に設けられ、前記板バネの弾性変形によって、厚み方向に並ぶ前記第1位置と前記第2位置との間を移動する、折り畳みナイフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、折り畳みナイフに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1には、折り畳みナイフの一例が開示されている。一般に、折り畳みナイフは、使用者が把持するための把持部に向かって刀身を回動させて折り畳むことにより、刀身の刃部を把持部内に収容することができ、携帯性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
折り畳みナイフは、刃部が把持部内に収容された閉じた状態から、刀身が把持部の先端に位置する開いた状態にされたときに、刀身が把持部に対して固く固定されることが好ましい。折り畳みナイフにおいては、より簡素な構成で、把持部に対して刀身を固定できるようにすることについて、依然として改良の余地があった。
【0005】
本開示の技術は、より簡素な構成で、開かれたときに刀身を把持部に対して固く固定できる折り畳みナイフを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
[第1形態]本開示の技術の一形態は、折り畳みナイフとして提供される。第1形態の折り畳みナイフは、一方の側端部に刃部を有する刀身と、使用者によって把持される把持部を構成する一対の板状部材であって、互いの間に前記刃部を収容するための収容空間が形成されるように互いに重ね合わされ、互いの先端部位において前記刀身の基端部を厚み方向に挟み、前記刀身の基端部を通る回動軸を中心に、前記刀身を、前記刃部が前記収容空間から離れる第1方向と、前記刃部が前記収容空間内に向かう第2方向とに回動可能な状態で保持する、一対の板状部材と、前記一対の板状部材の間に設けられ、前記刀身が前記第1方向に回動して前記把持部の先端側の固定位置に到達したときに、前記刀身の基端部に当接して、前記刀身の前記第1方向への回動を停止させる停止部と、前記一対の板状部材の間において、前記刀身の基端部の回動領域内の第1位置と、前記回動領域から離れた第2位置との間を移動可能に配置され、前記刀身が前記固定位置に位置している状態において、前記第1位置に移動して、前記停止部と前記刀身の基端部に設けられた被係止部との間の隙間に嵌まることによって前記刀身の前記第2方向への移動を規制する移動規制部と、前記一対の板状部材の外部に一部が露出するように設けられ、使用者が前記移動規制部の移動を操作可能なように、前記移動規制部に連結されている操作部と、を備える。
第1形態の折り畳みナイフによれば、移動規制部を移動させて、停止部と刀身の基端部に設けられた被係止部との間の隙間に嵌める簡素な構成により、刀身を把持部の先端側の固定位置に固く固定させることができる。
【0008】
[第2形態]上記第1形態に記載の折り畳みナイフは、さらに、前記移動規制部を前記第2位置から前記第1位置に向かう方向に付勢する弾性部材を備えてよい。
第2形態の折り畳みナイフによれば、弾性部材の付勢力によって、移動規制部の第1位置への移動が補助されるため、刀身を、把持部に対してより容易に固定できるようになる。また、弾性部材の付勢力によって、移動規制部の先端部が停止部と被係止部との間の隙間にさらに緊密に嵌まり込むようにできるため、刀身の把持部に対する固定性を、さらに高めることができる。
【0009】
[第3形態]上記第1形態または第2形態に記載の折り畳みナイフにおいて、前記被係止部は、第1被係止部であり、前記刀身の基端部には、前記刃部が前記収容空間に収容されているときに前記刀身の前記第1方向への回動が規制されるように、前記第2位置から前記第1位置に向かって移動した前記移動規制部が係止される第2被係止部が設けられてよい。
第3形態の折り畳みナイフによれば、移動規制部の先端部の刀身の第2被係止部に対する係止によって、刀身の回動が規制されるため、閉じた状態の折り畳みナイフが、使用者の操作によらずに開いてしまうことを抑制できる。
【0010】
[第4形態]上記第1形態、第2形態、および、第3形態のうちのいずれかに記載の折り畳みナイフにおいて、前記移動規制部は、前記一対の板状部材の板面に沿った方向に並ぶ前記第1位置と前記第2位置との間を移動可能に構成されており、前記移動規制部の先端部は、前記第2位置から前記第1位置に向かう方向の先端ほど幅が小さくなる先細りの形状を有し、前記第1位置に移動したときに、前記停止部と前記刀身の基端部に設けられた被係止部との間の隙間に入り込んでよい。
第4形態の折り畳みナイフによれば、移動規制部の先端部が先細りの形状を有しているため、その先端部が、停止部と刀身の基端部の被係止部との間の隙間に入り込みやすい。また、移動規制部の先端部を奥に入り込ませるほど、把持部に対する刀身の固定性を高めることができる。
【0011】
[第5形態]上記第4形態の折り畳みナイフは、前記一対の板状部材の間に配置され、前記移動規制部の後端部を収容する筒状部材を備え、前記弾性部材は、コイルばねによって構成され、前記筒状部材の内部に収容されてよい。
第5形態の折り畳みナイフによれば、筒状部材によって、移動規制部の移動がガイドされるため、移動規制部による刀身の固定をより円滑化させることができる。また、コイルばねが筒状部材に収容されているため、コイルばねに異物が入り込んでその弾性変形が阻害されることを抑制できる。
【0012】
[第6形態]上記第4形態の折り畳みナイフにおいて、前記一対の板状部材の少なくとも一方には、前記移動規制部の移動経路に沿った貫通溝部が設けられており、前記移動規制部は、側面に、前記貫通溝部を通じて、前記一対の板状部材の外部に向かって延びている突起部を有し、前記弾性部材は、前記一対の板状部材の外側に設置され、前記突起部を介して前記移動規制部を前記第2位置から前記第1位置に向かう方向に付勢してよい。
第6形態の折り畳みナイフによれば、貫通溝部によって、移動規制部の移動がガイドされるため、移動規制部の移動をより円滑化できる。また、弾性部材を一対の板状部材の外側に配置されているため、弾性部材の配置領域が収容空間と干渉することがなくなる。よって、弾性部材のサイズや配置位置等の設計の自由度を高めることができる。
【0013】
[第7形態]上記第6形態に記載の折り畳みナイフにおいて、前記貫通溝部は、前記一対の板状部材の両方に設けられ、前記移動規制部は、前記突起部として、前記一対の板状部材の前記貫通溝部のそれぞれを通じて外部に延び出ている第1突起部と第2突起部とを有し、前記一対の板状部材の外側には、前記弾性部材として、前記第1突起部を通じて前記移動規制部を付勢する第1弾性部材と、前記第2突起部を通じて前記移動規制部を付勢する第2弾性部材と、が設けられてよい。
第7形態の折り畳みナイフによれば、第1弾性部材と第2弾性部材とによって、移動規制部を、折り畳みナイフの厚み方向の両側において付勢することができるため、移動規制部をより安定した姿勢で移動させることができる。
【0014】
[第8形態]上記第2形態、第3形態、第4形態、第5形態、第6形態、第7形態のいずれかに記載の折り畳みナイフにおいて、前記刀身の基端部には、前記回転軸を中心とする円弧状の外周縁部である円弧部が設けられており、前記被係止部は、前記円弧部の端に設けられた窪み部の縁部によって構成されてよい。
第8形態の折り畳みナイフによれば、移動規制部の先端部が、弾性部材によって刀身の基端部の円弧部の端面に押し付けられた状態のまま刀身を回動させることができる。その状態で、刀身を開く方向に回動させていくと、移動規制部の先端部が、窪み部に到達したときに、移動規制部の先端部が、その窪み部に入り込んで窪み部の縁部に係止されて刀身が固定される。よって、折り畳みナイフを開いたときの刀身の固定をより簡易かつ、円滑におこなうことができる。
【0015】
[第9形態]上記第2形態、または、請求項3に記載の折り畳みナイフにおいて、前記弾性部材は、前記一対の板状部材の間に配置され、後端側が固定され、先端側が、弾性変形によって厚み方向に変位可能な板バネによって構成され、前記移動規制部は、前記板バネの先端に設けられ、前記板バネの弾性変形によって、厚み方向に並ぶ前記第1位置と前記第2位置との間を移動してよい。
第9形態の折り畳みナイフによれば、板バネの弾性変形を利用して移動規制部を第2位置から第1位置に移動させる簡素な構成によって、把持部に対して刀身を固定させることができる。
【0016】
本開示の技術は、折り畳みナイフ以外の形態で実現することが可能であり、例えば、折り畳みナイフの開閉機構やロック機構、開閉方法、刀身の固定方法等の形態で実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の折り畳みナイフを示す概略平面図。
【
図2】第1実施形態の折り畳みナイフを示す概略側面図。
【
図3】第1実施形態の折り畳みナイフの開閉動作を示す概略平面図。
【
図4】第1実施形態の折り畳みナイフの概略断面図。
【
図5】第1実施形態の移動規制部を示す概略斜視図。
【
図6】ロック機構による刀身の固定状態が解除された状態を示す概略図。
【
図7】刀身を収容空間に向かって回動させていく途中の状態を示す概略図。
【
図8】閉状態におけるロック機構の様子を示す概略図。
【
図9】第2実施形態のロック機構の操作部の構成を示す概略断面図。
【
図10】第3実施形態のロック機構の弾性部材の構成を示す概略平面図。
【
図11】第3実施形態のロック機構の弾性部材の構成を示す概略側面図。
【
図12】第3実施形態のロック機構の構成を示す概略断面図。
【
図13】第4実施形態のロック機構の弾性部材を示す概略平面図。
【
図14】第5実施形態のロック機構の弾性部材を示す概略平面図。
【
図15】移動規制部の第1の他の構成例を示す概略斜視図。
【
図16】移動規制部の第2の他の構成例を示す概略斜視図。
【
図17】第6実施形態のロック機構を示す概略平面図。
【
図18】第6実施形態のロック機構を示す概略側面図。
【
図19】第6実施形態のロック機構の固定状態の解除を示す概略側面図。
【
図20】第6実施形態の閉操作の途中のロック機構の様子を示す概略平面図。
【
図21】第6実施形態のロック機構の閉状態ときの様子を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.第1実施形態:
図1は、第1実施形態の折り畳みナイフ10を厚み方向に見たときの概略平面図である。
図2は、第1実施形態の折り畳みナイフ10を幅方向に見たときの概略側面図である。
図1および
図2には、開状態にあるときの折り畳みナイフ10が図示されている。
図3は、閉状態にあるときの折り畳みナイフ10を示す概略平面図であり、折り畳みナイフ10を開閉するときの刀身20の軌跡が示されている。
【0019】
図1、
図2、および、
図3にはそれぞれ、互いに直交する三方向である、X方向、Y方向、および、Z方向を示す矢印が図示されている。X方向、Y方向、および、Z方向はそれぞれ、折り畳みナイフ10に関する方向を示している。X方向は、折り畳みナイフ10の短手方向であり、幅方向に相当する。Y方向は、折り畳みナイフ10の長手方向であり、長さ方向に相当する。Z方向は、折り畳みナイフ10の厚み方向に相当する。X方向、Y方向、および、Z方向を示す矢印は、他の参照図においても
図1~
図3に対応するように、適宜、図示されている。
【0020】
折り畳みナイフ10は、刃部23を有する刀身20と、使用者によって把持される把持部30と、を備える。折り畳みナイフ10は、
図3に示すように、刀身20と把持部30とが長さ方向に一列に並んだ「開状態」から、刀身20が把持部30に対して折り畳まれて刃部23が把持部30の収容空間35内に収容された「閉状態」にすることが可能である。なお、閉状態にあるときの第1実施形態の折り畳みナイフ10では、指掛け部25を含む刀身20の第2側端部21bは、把持部30の外側に露出した状態となる。
【0021】
図1および
図2を参照する。刃部23は、刀身20の幅方向における一方の端部である第1側端部21aに設けられている。刃部23は、刀身20の長さ方向における先端から基端部26の手前にわたって形成されている。第1側端部21aの幅方向の反対側に位置する刀身20の第2側端部21bは、刃部23よりも厚みが大きい峰部24を構成する。
【0022】
刀身20には、使用者が刀身20を回動させるために指を掛けることができる指掛け部25が設けられている。指掛け部25は、刀身20の把持部30に寄った位置に設けられている。指掛け部25は、例えば、峰部24において厚み方向に突出するように取り付けられたつまみ状の部材によって構成される。他の実施形態では、指掛け部25は、つまみ状の部材の代わりに、例えば、刀身20を厚み方向に貫通する貫通孔などによって構成されてもよい。また、指掛け部25は、省略されてもよい。
【0023】
図2を参照する。折り畳みナイフ10は、把持部30を構成する一対の板状部材31a,31bを備える。一対の板状部材31a,31bは、互いに対応する外周輪郭形状を有しており、厚み方向に互いに重ね合わされて把持部30を構成する。
【0024】
第1板状部材31aと第2板状部材31bの外表面には、一対の板状部材31a,31bとともに把持部30を構成する外装部材32が取り付けられる。
図2では、外装部材32は、便宜上、一点鎖線で図示されている。また、
図2以外では、外装部材32の図示は、便宜上、省略されている。
【0025】
第1板状部材31aと第2板状部材31bの間には、スリット状の間隙が形成されている。第1板状部材31aと第2板状部材31bの間の間隙の一部は、刃部23を収容するための収容空間35を構成する。
【0026】
第1板状部材31aと第2板状部材31bの互いの先端部位の間には、刀身20の基端部26が厚み方向に挟まれている。第1板状部材31aと第2板状部材31bと刀身20の基端部26とは、それらを厚み方向に貫通して締結する連結軸部材33によって連結されている。これにより、刀身20は、一対の板状部材31a,31bに対して回動可能な状態で保持される。
【0027】
連結軸部材33の中心軸は、刀身20の回動軸RXに相当する。
図3に示すように、刀身20は、刀身20の基端部26を通る回動軸RXを中心として、刃部23が収容空間35から離れる第1方向D1と、刃部23が収容空間35に向かう第2方向D2とに回動可能である。
【0028】
把持部30には、ロック機構40が設けられている。折り畳みナイフ10が開状態にあるときには、刀身20は、ロック機構40により、
図1に示す把持部30の先端側の固定位置PSに固定される。また、折り畳みナイフ10が閉状態にあるときには、刃部23が把持部30内の収容空間35内に収容され、刀身20は、ロック機構40によって、
図3に示す収容位置PCに固定される。使用者は、ロック機構40を操作することにより、ロック機構40によって刀身20の回動が規制された固定状態を解除することができる。
【0029】
以下、
図4~
図8を参照して、ロック機構40と、その周辺の構成を説明する。
【0030】
図4は、
図2に示す4-4切断における折り畳みナイフ10のロック機構40周辺の概略断面図である。
図4には、開状態にある折り畳みナイフ10において、ロック機構40によって、刀身20の位置が固定されている状態が示されている。
【0031】
第1実施形態のロック機構40は、移動規制部41と、弾性部材47と、筒状部材48と、を備える。移動規制部41は、一対の板状部材31a,31bの間において、第1位置P1(
図4)と第2位置P2(
図6)との間を移動可能に配置されている。第1実施形態では、第1位置P1と第2位置P2とは、一対の板状部材31a,31bの板面に沿った方向に並ぶ。
【0032】
図4には、第1位置P1に配置されているときの移動規制部41が図示されている。第1位置P1は、刀身20の基端部26の回動領域内にある。「刀身20の基端部26の回動領域」とは、刀身20を回動軸RXを中心として回動させたときに基端部26が通過する領域を意味する。移動規制部41が第1位置P1に位置するときには、少なくとも、その先端部43が刀身20の基端部26の回動領域内に配置される。
【0033】
後に参照する
図6には、第2位置P2に配置されているときの移動規制部41が図示されている。第2位置P2は、第1位置P1より後端側に位置し、刀身20の基端部26の回動領域から離れている。第2位置P2では、移動規制部41の全体が刀身20の基端部26の回動領域から離れる。
【0034】
図5は、第1実施形態の移動規制部41の構成例を示す概略斜視図である。第1実施形態では、移動規制部41は、略円形断面を有する直棒状の部材によって構成されている。移動規制部41は、略円柱形状を有する本体部42と、くさび状の形状、つまり、先端側ほど幅が小さくなる先細りの形状を有する先端部43とを有する。第1実施形態では、移動規制部41の先端部43は、先端側ほど縮径するテーパー形状を有している。
【0035】
移動規制部41の本体部42の側面には、それぞれが厚み方向に沿って互いに反対方向に延びている一対の軸状の突起部44a,44bが設けられている。
図2に示すように、第1突起部44aは第1板状部材31aに設けられた貫通溝部36を通じて、第2突起部44bは第2板状部材31bに設けられた貫通溝部36を通じて、それぞれが把持部30の外側に延び出るように配置される。
【0036】
一対の板状部材31a,31bの貫通溝部36は、
図4において破線で示すように、移動規制部41の移動経路に沿って形成されている。
図2に示すように、貫通溝部36を介して把持部30の外部に延び出ている移動規制部41の各突起部44の端部には、使用者が操作するための操作部45が取り付けられる。
図5に示すように、各突起部44の端部には、操作部45を螺合させるためのねじ溝が切られている。
【0037】
図4では、第1突起部44aおよび操作部45の位置が一点鎖線で図示されている。使用者は、指を掛けて操作部45を動かすことによって、把持部30内の移動規制部41を貫通溝部36に沿って移動させることができる。
【0038】
図4に示すように、移動規制部41の後端側には筒状部材48が配置されている。第1実施形態では、筒状部材48は、把持部30の幅方向における側端部に寄った位置において、当該側端部に沿って配置されている。
【0039】
筒状部材48は、その内径が移動規制部41の本体部42の直径よりも大きい。移動規制部41の後端部42rは、筒状部材48内に挿入されている。移動規制部41が、第1位置P1と第2位置P2との間を移動するとき、移動規制部41の後端部42rは、筒状部材48内を移動する。筒状部材48は、移動規制部41の移動をガイドする機能を有する。
【0040】
本実施形態では、筒状部材48の先端側の入り口には、移動規制部41の一対の突起部44a,44bが挿入されるガイドスリット48sが設けられている。移動規制部41は、第2位置P2の近傍では、ガイドスリット48sにガイドされて安定して移動することができる。なお、他の実施形態では、筒状部材48を短くしてガイドスリット48sを省略してもよい。
【0041】
筒状部材48には、コイルばねによって構成された弾性部材47が収容されている。移動規制部41の後端部42rは、弾性部材47によって、第2位置P2から第1位置P1に向かう方向に付勢されている。筒状部材48に収容されていることにより、コイルばねの隙間に異物が入り込むことによってコイルばねの弾性変形が阻害されることが抑制される。
【0042】
第1実施形態では、筒状部材48は、先端側が刀身20の回動軸RXの方に向かって湾曲した形状を有している。筒状部材48内に収容されている弾性部材47も同様に湾曲した状態で配置されている。このように湾曲した筒状部材48を用いれば、移動規制部41に対する所望の付勢力が得られるようにするために弾性部材47の長さが長くなった場合でも、把持部30内の限られた空間内に、弾性部材47の配置領域を確保することが容易にできる。また、把持部30内部の空間利用効率を高めることができ、把持部30内に弾性部材47の配置領域を確保しながら、把持部30を小型化することが容易にできる。
【0043】
筒状部材48の後端部には、調整ネジ49が設けられている。調整ネジ49は、筒状部材48の内部まで貫入しており、その先端が弾性部材47の後端部に接している。使用者は、例えば、一対の板状部材31a,31bの間に挿入可能なスクリュードライバーなどを用いて、筒状部材48内に進入する調整ネジ49の深さを調整することができる。これにより、筒状部材48内での弾性部材47の伸縮状態を調整することができ、弾性部材47から移動規制部41に付与される付勢力を調整することができる。
【0044】
一対の板状部材31a,31bの間には、停止部50が設けられている。第1実施形態では、停止部50は、一対の板状部材31a,31bの間の間隙を厚み方向に貫くように配置された円柱状の部材によって構成されている。停止部50は、刀身20が第1方向D1に回動して把持部30の先端側の固定位置PSに到達したときに、刀身20の基端部26に当接して、刀身20の第1方向D1への移動を停止させる。刀身20の基端部26の外周端面には、停止部50に当接する当接面52が設けられている。当接面52は、刀身20の回動方向に直交するように設けられていることが好ましい。
【0045】
刀身20の基端部26には、当接面52に隣り合う位置であって、当接面52よりも回動軸RXに近い位置に第1被係止部53が設けられている。刀身20の基端部26には、当接面52に隣り合う位置に、先端側に向かって窪んでいる第1窪み部55が設けられている。第1被係止部53は、第1窪み部55を挟んで当接面52に対向する、第1窪み部55の縁部によって構成されている。
【0046】
図4に示すように、刀身20の基端部26の当接面52が停止部50に当接したときに、停止部50と第1被係止部53の間には、第1窪み部55に連通する隙間が形成される。折り畳みナイフ10が開状態にされたときに、移動規制部41の先端部43が、その隙間に入り込むことによって、刀身20は、その回動が規制されて、把持部30に対して固定される。
【0047】
第1実施形態では、移動規制部41の先端部43は、くさび状の先細りの形状を有しているため、停止部50と第1被係止部53の間の隙間の奥に入り込みやすい。また、移動規制部41の先端部43が、その隙間の奥に入り込むほど、把持部30に対する刀身20の固定性を高めることができる。
【0048】
第1実施形態では、移動規制部41は、弾性部材47によって、停止部50と第1被係止部53との間の隙間の奥に向かって付勢されている。これによって、移動規制部41の第1位置P1への移動が補助されるため、移動規制部41を第1位置P1へと移動させやすくなっている。また、弾性部材47の付勢力が、移動規制部41の先端部43を停止部50と第1被係止部53との間の隙間に食い込ませる方向に働くため、把持部30に対する刀身20の固定性が、さらに高められる。また、移動規制部41が、使用者の操作によらず、後端側に移動して、刀身20の固定状態が解除されてしまうことが抑制される。
【0049】
刀身20の基端部26には、上記の第1被係止部53に加えて、折り畳みナイフ10が閉状態にされたときに移動規制部41の先端部43が係止される第2被係止部56が設けられている。第2被係止部56は、刀身20の第2側端部21b側に設けられている第2窪み部57の回動軸RX側の縁部によって構成される。
【0050】
刀身20の基端部26には、刀身20の回動軸RXを中心とする円弧状の外周縁部によって構成された円弧部58が設けられている。円弧部58は、第1窪み部55に隣り合う位置に設けられている。本実施形態では、円弧部58は、第1窪み部55と第2窪み部57の間に設けられており、上述した第1被係止部53および第2被係止部56は、円弧部58の端部を構成している。円弧部58の半径は、回動軸RXと停止部50との間の距離より小さい。これにより、刀身20を回動軸RXを中心として回動させたときに、円弧部58が停止部50に干渉することが抑制される。
【0051】
以下では、
図6、
図7、および、
図8を順に参照して、折り畳みナイフ10を開状態から閉状態にするときの操作を説明しながら、第2被係止部56と円弧部58の働きを説明する。
図6~
図8には、開状態から閉状態にされるときの折り畳みナイフ10のロック機構40周辺の状態が、
図4と同様な概略断面図によって図示されている。
【0052】
図6には、開状態にある折り畳みナイフ10において、ロック機構40による刀身20の固定状態が解除された状態が模式的に示されている。使用者は、操作部45を把持部30の後端側に移動させることによって、移動規制部41を第2位置P2の方に移動させることができる。移動規制部41が第2位置P2に位置するとき、移動規制部41の先端部43は、刀身20の基端部26の回動領域から離れ、基端部26に干渉しない位置に配置される。これによって、刀身20は、第2方向D2への回動が許容された状態となる。
【0053】
図7には、刀身20を、把持部30の収容空間35に向かって第2方向D2へと回動させていく途中の様子が模式的に示されている。刀身20の固定位置PSからの回動を開始させた後には、使用者は、操作部45に加えていた外力を開放してもよい。使用者が、操作部45から指を離して、操作部45に対する外力を開放すると、弾性部材47の付勢力によって、移動規制部41は、第1位置P1に向かって移動し、その先端部43が円弧部58の端面に接する。基端部26に円弧部58が形成されていることにより、刀身20は、移動規制部41の先端部43が弾性部材47によって基端部26に押し付けられた状態でも、そのまま円滑に回動を継続させていくことができる。
【0054】
図8には、折り畳みナイフ10が、刃部23が収容空間35に収容された閉状態になり、ロック機構40によって刀身20が固定された状態が模式的に示されている。刀身20を第2方向D2に回動させていき、刀身20が収容位置PCに到達すると、移動規制部41の先端部43が、第2窪み部57に入り込み、第2被係止部56に対して係止された状態となり、刀身20が、刃部23が収容空間35から離れる第1方向D1に回動することが規制される。
【0055】
刀身20には、収容位置PCに到達したときに、ロック機構40の筒状部材48の側面に当接する当接部59が設けられている。第1実施形態では、当接部59は、第2窪み部57の第2被係止部56とは反対側の縁部によって構成されている。筒状部材48の側面に当接部59が当接することによって、刀身20が収容位置PCから、さらに、第2方向D2へと回動することが規制される。
【0056】
折り畳みナイフ10を、
図8に示す閉状態から、
図4に示す開状態に戻すには、使用者は、刀身20の指掛け部25に指を掛けて刀身20を第1方向D1に回動させる操作を行うのみでよい。第1実施形態の折り畳みナイフ10は、使用者がそのように操作したときに、
図8に示す移動規制部41の先端部43と第2被係止部56との係止状態が解除されるように構成されている。具体的には、弾性部材47の付勢力や、係止状態にあるときの移動規制部41の先端部43と第2被係止部56との間の接触面積が調整されている。これによって、閉状態の折り畳みナイフ10を開く操作が容易化されている。
【0057】
折り畳みナイフ10を開く際には、移動規制部41は、弾性部材47の弾性力によって、第1位置P1に向かって移動し、
図7に示された状態と同様に、その先端部43が刀身20の円弧部58の端面に接する。この状態のまま、刀身20をさらに第1方向D1に回動させていくと、刀身20が固定位置PSに到達したときに、移動規制部41の先端部43は、弾性部材47の付勢力によって、停止部50と第1被係止部53との間の隙間に自動的に嵌まり、刀身20は固定される。
【0058】
以上のように、第1実施形態の折り畳みナイフ10によれば、移動規制部41の先端部43を、把持部30の停止部50と、刀身20の基端部26の第1被係止部53との間の隙間に入り込ませる簡素な構成によって、刀身20を固定位置PSに固定できる。また、第1実施形態の折り畳みナイフ10によれば、移動規制部41に対する弾性部材47の付勢力によって、開状態での把持部30に対する刀身20の固定性や、折り畳みナイフ10を開く際の操作性がさらに高められている。
【0059】
2.第2実施形態:
図9は、第2実施形態の折り畳みナイフ10Aに設けられているロック機構40Aの構成を示す概略断面図である。
図9には、移動規制部41が第1位置P1にある状態が図示されており、移動規制部41が第2位置P2に移動したときの状態が一点鎖線で図示されている。
【0060】
第2実施形態の折り畳みナイフ10Aの構成は、第2実施形態のロック機構40Aを備えている点以外は、第1実施形態の折り畳みナイフ10の構成とほぼ同じである。第2実施形態のロック機構40Aの構成は、操作部45の形成位置が異なっている点以外は、第1実施形態のロック機構40とほぼ同じである。
【0061】
第2実施形態では、移動規制部41は、筒状部材48の側面に設けられたスリット61を通じて、把持部30の側端部に向かって延びている突起部44を、側面に有している。操作部45は、把持部30の側面部から外部に延び出ている突起部44の端部に設けられている。
【0062】
第2実施形態の折り畳みナイフ10Aによれば、使用者は、把持部30の側面部に設けられた操作部45を長手方向に移動させることによって、移動規制部41を、第1位置P1と第2位置P2との間で移動させることができる。その他に、第2実施形態の折り畳みナイフ10Aによれば、第1実施形態で説明したのと同様な種々の効果を奏することができる。
【0063】
3.第3実施形態:
図10は、第3実施形態の折り畳みナイフ10Bのロック機構40Bが設けられた部位を厚み方向に見たときの概略平面図である。
図11は、折り畳みナイフ10Bの当該部位を幅方向に見たときの概略側面図である。
図11では、一対の板状部材31a,31bのそれぞれの外側に配置される外装部材32が一点鎖線で図示されている。なお、
図10では、外装部材32の図示は省略されている。
【0064】
第3実施形態の折り畳みナイフ10Bの構成は、第3実施形態のロック機構40Bを備えている点以外は、第1実施形態の折り畳みナイフ10とほぼ同じである。第3実施形態のロック機構40Bの構成は、以下に説明する点以外は、第1実施形態のロック機構40とほぼ同じである。
【0065】
第3実施形態のロック機構40Bは、筒状部材48を備えておらず、一対の弾性部材47Ba,47Bbを備えている。第3実施形態では、移動規制部41の操作部45は、移動規制部41の第1突起部44aの端部にのみ設けられている。他の実施形態では、一対の弾性部材47Ba,47Bbのうちの少なくとも一方が省略されてもよい。なお、図示および詳細な説明は省略するが、第3実施形態の折り畳みナイフ10Bでは、把持部30内に、筒状部材48の代わりに刀身20の当接部59が当接する構造物が設けられていることが好ましい。
【0066】
図10に示すように、第1弾性部材47Ba、および、第2弾性部材47Bbは、弾性を有するワイヤー部材を弾性変形させて撓ませた構成を有している。
図11に示すように、第1弾性部材47Baは、第1板状部材31aの外側の板面に設置され、第2弾性部材47Bbは、第2板状部材31bの外側の板面に設置されている。外装部材32には、弾性部材47Ba,47Bbを収容する収容室32rを形成するための凹部が形成されている。
【0067】
第1弾性部材47Baは、一方の端部が移動規制部41の第1突起部44aに巻かれており、他方の端部が第1板状部材31aの板面に設けられた凸状の固定部63に巻かれている。第1弾性部材47Baは、第1突起部44aを通じて移動規制部41を付勢する。
【0068】
第2弾性部材47Bbは、一方の端部が移動規制部41の第2突起部44bに巻かれており、他方の端部が第2板状部材31bの板面に設けられた凸状の固定部63に巻かれている。第2弾性部材47Bbは、第2突起部44bを通じて移動規制部41を付勢する。
【0069】
図12は、
図11に示す12-12切断におけるロック機構40Bの概略断面図である。一対の板状部材31a,31bのそれぞれに設けられている貫通溝部36には、移動規制部41の側面に面する角部を切り欠かいたような傾斜面36sが形成されている。これによって、移動規制部41は、4つの傾斜面36sに囲まれて保持された状態となるため、第1位置P1と第2位置P2の間を、安定した姿勢で移動することができる。なお、他の実施形態では、傾斜面36sは省略されてもよい。
【0070】
第3実施形態の折り畳みナイフ10Bによれば、一対の弾性部材47Ba,47Bbが一対の板状部材31a,31bの外側に配置されるため、一対の弾性部材47Ba,47Bbの配置領域が、刀身20の収容空間35と干渉することがない。よって、弾性部材47Ba,47Bbのサイズや配置位置等の設計の自由度が高められている。また、第3実施形態の弾性部材47Ba,47Bbによれば、把持部30において長さ方向に占める範囲を低減することができる。その他に、第3実施形態の折り畳みナイフ10Bによれば、上記の第1実施形態で説明したのと同様な種々の効果を奏することができる。
【0071】
4.第4実施形態:
図13は、第4実施形態の折り畳みナイフ10Cのロック機構40Cが設けられた部位を厚み方向に見たときの概略平面図である。第4実施形態の折り畳みナイフ10Cの構成は、一対の弾性部材47Ca,47Cbの構成が異なるロック機構40Cを備えている点以外は、第3実施形態の折り畳みナイフ10Bとほぼ同じである。第4実施形態の一対の弾性部材47Ca,47Cbの構成は、その中央部が一対の板状部材31a,31bのそれぞれの板面に設けられた中央固定部64に巻回されている点以外は、第3実施形態の弾性部材47Ba,47Bbとほぼ同じである。
【0072】
第4実施形態の一対の弾性部材47Ca,47Cbによれば、移動規制部41に付与する付勢力を確保しながら、把持部30内における設置範囲を低減することができる。その他に、第4実施形態の折り畳みナイフ10Cによれば、上記の各実施形態で説明したのと同様な種々の効果を奏することができる。
【0073】
5.第5実施形態:
図14は、第5実施形態の折り畳みナイフ10Dのロック機構40Dが設けられた部位を厚み方向に見たときの概略平面図である。第4実施形態の折り畳みナイフ10Dの構成は、一対の弾性部材47Da,47Dbの構成が異なるロック機構40Dを備えている点以外は、第3実施形態の折り畳みナイフ10Bとほぼ同じである。第5実施形態の弾性部材47Da,47Dbは、トーションばねによって構成され、移動規制部41より、把持部30の側端部側に設けられている。なお、弾性部材47Da,47Dbの少なくとも一方は、一対の板状部材31a,31bの間の空間に設置されてもよい。第5実施形態の折り畳みナイフ10Dにおいても、上記の各実施形態で説明したのと同様な種々の効果を奏することができる。
【0074】
6.移動規制部の他の構成例:
図15および
図16は、他の構成例としての移動規制部41a,41bを示す概略斜視図である。
図15に示す第1の構成例の移動規制部41aは、本体部42が四角柱形状を有している。また、
図16に示す第2の構成例の移動規制部41bは、本体部42が多角柱形状を有している。移動規制部41a,41bは、上記の第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、および、第5実施形態に適用することができる。移動規制部41a,41bによっても、上記の各実施形態で説明したのと同様な種々の効果を奏することができる。
【0075】
7.第6実施形態:
図17は、第6実施形態の折り畳みナイフ10Eを厚み方向に見たときの概略平面図である。
図18および
図19は、第6実施形態の折り畳みナイフ10Eのロック機構40Eが設けられている部位を幅方向に見たときの概略側面図である。
図18は、弾性部材47Eが弾性変形していない状態を示しており、
図19は、弾性部材47Eが弾性変形した状態を示している。
【0076】
第6実施形態の折り畳みナイフ10Eの構成は、構成が異なるロック機構40Eを備えており、刀身20の基端部26の構成が異なっている点以外は、第1実施形態の折り畳みナイフ10とほぼ同じである。第6実施形態のロック機構40Eは、板バネによって構成された弾性部材47Eを備えている。弾性部材47Eは、一対の板状部材31a,31bの間において、把持部30の側端部に沿って配置されている。
【0077】
弾性部材47Eの後端側の部位は、第2板状部材31bに固定されており、先端側の部位は、外力が付与されていな状態では、
図18に示すように、第2板状部材31bから浮いた状態で配置される。弾性部材47Eは、外力を加えられたときに、
図19に示すように、弾性変形して、その先端側の部位が厚み方向に変位する。
【0078】
第6実施形態のロック機構40Eの移動規制部41Eは、弾性部材47Eの先端側の部位に設けられている。移動規制部41Eは、弾性部材47Eの弾性変形によって、厚み方向に並ぶ第1位置P1と第2位置P2との間を移動する。第1位置P1は、刀身20の基端部26の回動領域内の位置であり、第2位置P2は、刀身20の基端部26の回動領域から厚み方向に離れた位置である。移動規制部41Eは、第1位置P1より第2位置P2側にあるときに、第2位置P2から第1位置に向かう方向に付勢される。
【0079】
刀身20が固定位置PSに位置し、移動規制部41Eは、第1位置P1に位置するときには、
図17に示すように、刀身20の基端部26の第1窪み部55に入り込み、その基端部が停止部50と第1被係止部53との間の隙間に嵌まり込む。これによって、刀身20が回動軸RXを中心として第2方向D2へと回動することが規制され、把持部30に対して固定される。
【0080】
弾性部材47Eの先端側には、使用者が厚み方向に押すことができる操作部45が設けられている。操作部45は、第1板状部材31aに設けられた貫通孔66を通じて外側に突出している。使用者が操作部45を厚み方向に押すことによって、弾性部材47Eが弾性変形し、移動規制部41が、
図19に示すように、第2位置P2に移動する。これによって、移動規制部41Eが刀身20の基端部26から離れて、刀身20の固定状態が解除される。
【0081】
図20は、移動規制部41Eが第2位置P2に位置する状態のときに、刀身20が第2方向D2に回動していく途中の様子を示す概略平面図である。移動規制部41Eの先端には、半球状の凸部67が設けられている。また、第6実施形態では、刀身20の基端部26の表面には、回動軸RXを中心とする円弧を描く溝部68が設けられている。溝部68の一方の端部は、第1窪み部55に接続している。溝部68の回動軸RXを挟んで反対側に位置する他方の端部には、移動規制部41Eの凸部67が嵌合可能な半球状の凹部69が設けられている。刀身20が回動されている間、凸部67は、基端部26の表面の溝部68に一部が嵌った状態で、溝部68に沿って基端部26上を滑っていく。なお、他の実施形態では、溝部68は省略されてもよい。
【0082】
図21は、刀身20の刃部23が収容空間35に収容された閉状態の折り畳みナイフ10Eのロック機構40Eを示す概略平面図である。刀身20が収容位置PCに到達すると、移動規制部41Eの凸部67は、刀身20の基端部26の凹部69に嵌合する。
【0083】
刀身20の基端部26には、刃部23に隣り合う位置に第2窪み部70が形成されている。また、把持部30の内部の収容空間35の手前の領域には、一対の板状部材31a,31bを貫通するように設けられた柱状部75が設けられている。柱状部75は、弾性部材47Eの側方に設けられている。
【0084】
刀身20が収容位置PCに到達するときには、
図21に示すように、柱状部75は、刀身20の基端部26の第2窪み部70内に到達し、第2窪み部70の内周縁の端面に当接する。これによって、刀身20の第2方向D2へのさらなる回動が規制される。なお、第2窪み部70の回動軸RX側の縁部71は、側方に突出しており、刀身20が収容位置PCに位置するときには、弾性部材47Eの上に位置する。
【0085】
閉状態にあるときの凹部69に対する凸部67の嵌合状態は、使用者が指掛け部25に指を掛けて刀身20を開く方向に回動させる操作をしたときに解除されるように構成されている。具体的には、そのように嵌合状態を解除可能なように、凹部69に対する凸部67の大きさや、弾性部材47Eの弾性力が調整されている。これによって、閉状態にある折り畳みナイフ10Eを使用者がより簡易に開くことが可能になっている。
【0086】
第6実施形態の折り畳みナイフ10Eによれば、板バネによって構成された弾性部材47Eの弾性変形によって移動規制部41Eを移動させる簡素な構成によって、把持部30に対して刀身20を固定することができる。その他に、第6実施形態の折り畳みナイフ10Eによれば、上記の各実施形態で説明したのと同様な種々の効果を奏することができる。
【0087】
8.他の実施形態:
本開示の技術は、上述の各実施形態の構成に限定されることはなく、例えば、以下のように改変することが可能である。以下に説明する他の実施形態はいずれも、上記の各実施形態と同様に、本開示の技術を実施するための形態の一例として位置づけられる。
【0088】
(1)他の実施形態1:
上記の各実施形態において、ロック機構40,40A,40B,40C,40D,40Eは、弾性部材による付勢力を利用せず、使用者による操作部45を介した操作のみで移動規制部41が移動する構成が採用されていてもよい。また、上記の各実施形態において、ロック機構40,40A,40B,40C,40D,40Eは、金属に限らず、ゴムなどの弾性変形可能な部材の弾性力によって、移動規制部41が付勢される構成が採用されてもよい。また、磁力によって、移動規制部41が付勢される構成が採用されてもよい。
【0089】
(2)他の実施形態2:
移動規制部41,41a,41b,41Eや刀身20の基端部26の構成は、上記の各実施形態で説明した構成には限定されない。例えば、移動規制部41の先端部43は、先端ほど幅のみが小さくなり、厚みが一定の構成を有していてもよい。移動規制部41は、先細りの形状を有する先端部43の代わりに、停止部50や第1被係止部53が嵌まり込む窪みが側面に形成された構成を有していてもよい。移動規制部41は、本体部42に相当する部位を有しておらず、先端部43に相当する部位のみで構成されていてもよい。また、刀身20の基端部26は、円弧部58や、第2窪み部57を有していなくてもよい。
【0090】
(3)他の実施形態3:
上記の第1実施形態、および、第2実施形態において、調整ネジ49は省略されてもよいし、筒状部材48は省略されてもよい。また、筒状部材48は湾曲した形状を有していなくてもよい。
【0091】
(4)他の実施形態4:
上記第3実施形態において、移動規制部41の一対の突起部44a,44bや、一対の弾性部材47Ba,47Bbは、いずれか一方が省略されてもよい。第4実施形態の一対の弾性部材47Ca,47Cbや、第5実施形態の一対の弾性部材47Da,47Dbにおいても同様である。
【0092】
(5)他の実施形態5:
上記の各実施形態および上記の他の実施形態で説明したロック機構40,40A,40B,40C,40D,40Eの構成は、折り畳みナイフ以外の折り畳み機構を有する様々な器具に適用されてもよい。例えば、折り畳み機構を有するスプーンやフォークの食事用の器具、筆記用具や定規等の文房具、くし等の化粧用の器具に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10,10A,10B,10C,10D,10E…折り畳みナイフ、20…刀身、21a…第1側端部、21b…第2側端部、23…刃部、24…峰部、25…指掛け部、26…基端部、30…把持部、31a,31b…一対の板状部材、32…外装部材、32r…収容室、33…連結軸部材、35…収容空間、36…貫通溝部、36s…傾斜面、40,40A,40B,40C,40D,40E…ロック機構、41,41a,41b,41E…移動規制部、42…本体部、42r…後端部、43…先端部、44,44a,44b…突起部、45…操作部、47,47Ba,47Bb,47Ca,47Cb,47Da,47Db,47E…弾性部材、48…筒状部材、48s…ガイドスリット、49…調整ネジ、50…停止部、52…当接面、53…第1被係止部、55…第1窪み部、56…第2被係止部、57…第2窪み部、58…円弧部、59…当接部、61…スリット、63…固定部、64…中央固定部、66…貫通孔、67…凸部、68…溝部、69…凹部、70…第2窪み部、71…縁部、75…柱状部、D1…第1方向、D2…第2方向、P1…第1位置、P2…第2位置、PC…収容位置、PS…固定位置、RX…回動軸