(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140423
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】配策構造及び配線ユニット
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20250919BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20250919BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
B60J5/00 501Z
B60R16/02 620C
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039824
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】宮下 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】村上 翔
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB07
3D023BC01
3D023BD03
3D023BE25
3D023BE28
3D023BE38
(57)【要約】
【課題】車体と車両用ドアとの間を配策される線状伝送部材の経路を安定させることができる技術の提供。
【解決手段】配策構造10は、車体2と車体2にヒンジ80を介して接続された車両用ドア3との間に設けられ、車体2と車両用ドア3との間を配策される線状伝送部材5をガイドする配線ガイド7、を備える。配線ガイド7が、回動自在に接続された複数の経路規制部材71,72を備え、車両用ドア3のヒンジ80のまわりでの回動に応じて、複数の経路規制部材71,72の少なくとも1つが回動する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と前記車体にヒンジを介して接続された車両用ドアとの間に設けられ、前記車体と前記車両用ドアとの間を配策される線状伝送部材をガイドする配線ガイド、
を備え、
前記配線ガイドが、回動自在に接続された複数の経路規制部材を備え、
前記車両用ドアの前記ヒンジのまわりでの回動に応じて、前記複数の経路規制部材の少なくとも1つが回動する、配策構造。
【請求項2】
請求項1に記載の配策構造であって、
前記複数の経路規制部材が、2つの経路規制部材である、配策構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配策構造であって、
前記複数の経路規制部材のうちの少なくとも1つが、伸縮自在である、配策構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の配策構造であって、
前記車両用ドアが回動する際に、前記配線ガイドの一部分が、前記車両用ドアに沿って延在する姿勢に維持される、配策構造。
【請求項5】
請求項4に記載の配策構造であって、
前記車両用ドアに沿って延在する姿勢に維持される前記配線ガイドの一部分が、上方から見た場合に前記車両用ドアの一部によって隠れる位置にある、配策構造。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の配策構造であって、
前記線状伝送部材は、前記車両用ドアに搭載されるオプション品用の線状伝送部材である、配策構造。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の配策構造であって、
前記線状伝送部材が、前記車両用ドアによって開閉される前記車体の乗降口よりも室内側から引き出されたものである、配策構造。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の配策構造であって、
前記配線ガイドの上面と車室の床面との間の高さ方向の離間距離が、5センチメートル以下である、配策構造。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の配策構造であって、
前記複数の経路規制部材のうち、前記車両用ドアが開かれた状態において前記車体のフレームをまたぐ経路規制部材が、該状態において前記フレームを迂回するように屈曲している、配策構造。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の配策構造であって、
前記車両用ドアの閉動作に応じて発生する前記線状伝送部材の余長を吸収する余長吸収部、
を備える、配策構造。
【請求項11】
車体と前記車体にヒンジを介して接続された車両用ドアとの間で配策されて用いられる線状伝送部材と、
前記線状伝送部材をガイドする配線ガイドと、
を備え、
前記配線ガイドが、回動自在に接続された複数の経路規制部材を備える、配線ユニット。
【請求項12】
請求項11に記載の配線ユニットであって、
前記複数の経路規制部材のうちの少なくとも1つが、伸縮自在である、配線ユニット。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の配線ユニットであって、
前記車両用ドアのパネルに取り付けて用いられる交換用内装、
をさらに備え、
前記交換用内装が挿通口を備え、
前記配線ガイドの一端が前記挿通口と接続され、
前記線状伝送部材が前記挿通口を挿通される、配線ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配策構造及び配線ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両において、車体とドアとの間に配策されるワイヤーハーネスが記載されている。ワイヤーハーネスにおける車体とドアとの間を配策される部分は、グロメットで覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、ワイヤーハーネスを覆うグロメットは、長さ方向に山部と谷部とが交互に連続して設けられた蛇腹形状であり、長さ方向に自在に屈曲できる。ドアが開閉される際、すなわち、ドアがヒンジ部のまわりで回動する際に、これに追従して、グロメットが長さ方向に屈曲する。したがって、ドアの回動が阻害されない。その一方で、長さ方向に自在に屈曲できる蛇腹形状のグロメットには、形状が安定しづらいという側面もある。つまり、ワイヤーハーネスにおける車体とドアとの間を配策される部分をグロメットで覆う場合、該配策される部分の経路が不安定になりやすい。
【0005】
そこで、本開示は、車体と車両用ドアとの間を配策される線状伝送部材の経路を安定させることができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配策構造は、車体と前記車体にヒンジを介して接続された車両用ドアとの間に設けられ、前記車体と前記車両用ドアとの間を配策される線状伝送部材をガイドする配線ガイド、を備え、前記配線ガイドが、回動自在に接続された複数の経路規制部材を備え、前記車両用ドアの前記ヒンジのまわりでの回動に応じて、前記複数の経路規制部材の少なくとも1つが回動する配策構造である。
【0007】
本開示の配線ユニットは、車体と前記車体にヒンジを介して接続された車両用ドアとの間で配策されて用いられる線状伝送部材と、前記線状伝送部材をガイドする配線ガイドと、を備え、前記配線ガイドが、回動自在に接続された複数の経路規制部材を備える配線ユニットである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車体と車両用ドアとの間を配策される線状伝送部材の経路を、安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、車体、車両用ドア及び配策構造の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、車体、車両用ドア及び配策構造の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、カウルサイドトリム及びドアトリムの各々に設けられた挿入口を示す概略図である。
【
図4】
図4は、カウルサイドトリム及びドアトリムの各々に設けられた挿入口を示す概略図である。
【
図6】
図6は、カウルサイドトリム、ドアトリム及び配線ガイドを示す概略図である。
【
図7】
図7は、カウルサイドトリム、ドアトリム及び配線ガイドを示す概略図である。
【
図8】
図8は、カウルサイドトリム、ドアトリム及び配線ガイドを示す概略図である。
【
図9】
図9は、配線ガイドの変形の態様を説明するための図である。
【
図10】
図10は、配線ガイドの変形の態様を説明するための図である。
【
図11】
図11は、交換用ドアトリムを説明するための図である。
【
図12】
図12は、ドアをドアトリムに沿って切断した様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本開示の配策構造は、次の通りである。
【0012】
(1)車体と前記車体にヒンジを介して接続された車両用ドアとの間に設けられ、前記車体と前記車両用ドアとの間を配策される線状伝送部材をガイドする配線ガイド、を備え、前記配線ガイドが、回動自在に接続された複数の経路規制部材を備え、前記車両用ドアの前記ヒンジのまわりでの回動に応じて、前記複数の経路規制部材の少なくとも1つが回動する配策構造である。本開示によると、配線ガイドは、車両用ドアの回動に応じて、少なくとも1つの経路規制部材が回動する。このような配線ガイドは、例えば、長さ方向に自在に屈曲できる蛇腹形状のグロメットに比べて、変形の自由度が低い。したがって、車体と車両用ドアとの間を配策される線状伝送部材の経路を、安定させることができる。
【0013】
(2)(1)の配策構造において、前記複数の経路規制部材が、2つの経路規制部材であることが好ましい。この場合、配線ガイドの変形の自由度が十分に低くなる。したがって、線状伝送部材の経路を十分に安定させることができる。
【0014】
(3)(1)又は(2)の配策構造において、前記複数の経路規制部材のうちの少なくとも1つが、伸縮自在であることが好ましい。この場合、車両用ドアの回動に応じて、少なくとも1つの経路規制部材が伸縮することで、配線ガイドの長さを変化させることができる。例えば、車両用ドアの閉動作に応じて配線ガイドが縮短することができ、これによって、車両用ドアが閉じられた状態において配線ガイドがだぶついた形状になる、といった事態を回避することができる。
【0015】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの配策構造において、前記車両用ドアが回動する際に、前記配線ガイドの一部分が、前記車両用ドアに沿って延在する姿勢に維持されることが好ましい。この場合、搭乗者が乗降する際に配線ガイドが踏まれにくく、搭乗者が配線ガイドに引っ掛かりにくい。
【0016】
(5)(4)の配策構造において、前記車両用ドアに沿って延在する姿勢に維持される前記配線ガイドの一部分が、上方から見た場合に前記車両用ドアの一部によって隠れる位置にあることが好ましい。この場合、ドアが開閉される際に、配線ガイドが目立ちにくい。また、搭乗者が乗降する際に、配線ガイドが特に踏まれにくい。
【0017】
(6)(1)から(5)のいずれか1つの配策構造において、前記線状伝送部材は、前記車両用ドアに搭載されるオプション品用の線状伝送部材であることが好ましい。この場合、オプション品用の線状伝送部材の経路を安定させることができる。
【0018】
(7)(1)から(6)のいずれか1つの配策構造において、前記線状伝送部材が、前記車両用ドアによって開閉される前記車体の乗降口よりも室内側から引き出されたものであることが好ましい。この場合、線状伝送部材を車体と車両用ドアとの間で配策する作業を容易に行うことができる。
【0019】
(8)(1)から(7)のいずれか1つの配策構造において、前記配線ガイドの上面と車室の床面との間の高さ方向の離間距離が、5センチメートル以下であることが好ましい。この場合、配線ガイドが目立ちにくく、搭乗者などが配線ガイドに引っ掛かりにくい。
【0020】
(9)(1)から(8)のいずれか1つの配策構造において、前記複数の経路規制部材のうち、前記車両用ドアが開かれた状態において前記車体のフレームをまたぐ経路規制部材が、該状態において前記フレームを迂回するように屈曲していることが好ましい。この場合、車両用ドアが比較的大きく開かれても、配線ガイドがフレームと干渉しにくい。すなわち、配線ガイドによって、車両用ドアの可動域が制限されにくい。
【0021】
(10)(1)から(9)のいずれか1つの配策構造において、前記車両用ドアの閉動作に応じて発生する前記線状伝送部材の余長を吸収する余長吸収部、を備えることも好ましい。この場合、車両用ドアの閉動作に応じて発生する線状伝送部材の余長を、余長吸収部で吸収することができる。
【0022】
また、本開示の配線ユニットは、次の通りである。
【0023】
(11)車体と前記車体にヒンジを介して接続された車両用ドアとの間で配策されて用いられる線状伝送部材と、前記線状伝送部材をガイドする配線ガイドと、を備え、前記配線ガイドが、回動自在に接続された複数の経路規制部材を備える配線ユニットである。本開示に係る配線ユニットが備える配線ガイドは、回動自在に接続された複数の経路規制部材を備える。このような配線ガイドは、例えば、長さ方向に自在に屈曲できる蛇腹形状のグロメットに比べて、変形の自由度が低い。したがって、線状伝送部材の経路を安定させることができる。
【0024】
(12)(11)の配線ユニットにおいて、前記複数の経路規制部材のうちの少なくとも1つが、伸縮自在であることが好ましい。この場合、少なくとも1つの経路規制部材が伸縮することで、配線ガイドの長さを変化させることができる。
【0025】
(13)(11)又は(12)の配線ユニットにおいて、前記車両用ドアのパネルに取り付けて用いられる交換用内装、をさらに備え、前記交換用内装が挿通口を備え、前記配線ガイドの一端が前記挿通口と接続され、前記線状伝送部材が前記挿通口を挿通されることが好ましい。この場合、交換用内装を既存の内装と交換してパネルに取り付けることで、線状伝送部材が、一端側において挿通口を通じて車両用ドアの内部に引き入れられるとともに、延在途中において配線ガイドにガイドされた状態が、形成される。したがって、線状伝送部材を車体と車両用ドアとの間で配策する作業を簡素化することができる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配策構造及び配線ユニットの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下において、「平行」とは厳密な意味での平行を意味するものではなく、平行とみなされる範囲であれば本発明の効果を奏する範囲で幅を持つ意味である。
【0027】
[実施形態]
<1.車体、ドア、及び、配策構造>
実施形態に係る車両1の構成について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1及び
図2は、車両1の一部を例示する概略図である。
図1には、ドア3が開かれた様子が示されている。
図2には、ドア3が閉じられた様子が示されている。
【0028】
車両1は、自動車であって、例えば、車体2と、車両用ドア3(単にドア3ともいう)とを備える。ドア3は、車体2の乗降口20を開閉可能なように、ヒンジ80を介して車体2に接続される。また、車両1は、車体2とドア3との間に設けられた配策構造10を備える。
【0029】
(車体2)
車体2は、骨組みとして機能する金属製のフレーム21を備える。フレーム21には、車体2の内部(車室)への出入口である乗降口20が設けられる。具体的には、フレーム21には、乗降口20を画定する枠状の部分が含まれる。この枠状の部分における、乗降口20の下縁を規定する部分を、サイドシル211ともいう。乗降口20は、ドア3によって開閉される。つまり、乗降口20は、ドア3が閉められた状態ではドア3で覆われ、ドア3が開かれた状態では開放される。
【0030】
車体2は、樹脂などで形成された内装部材22をさらに備える。車体2の内装部材には、運転席前方から助手席前方までの内装部材であるインストルメントパネル221が含まれる。インストルメントパネル221には、例えば、計器類を覆う部分、及び、その周辺(前列座席の前方)の内装部材(ダッシュボードとも呼ばれる)などが含まれる。また、車体2の内装部材には、カウルサイドトリム222が含まれる。カウルサイドトリム222は、フレーム21における、ホイールアーチの室内側を構成する部分(カウルサイド)を覆う内装部材である。カウルサイドトリム222は、サイドシル211よりも室内側に設けられる。つまり、カウルサイドトリム222は、乗降口20よりも室内側に設けられる。カウルサイドトリム222は、例えば、カウルサイドの表面形状に沿う形状であり、下側部分が車室の床面24に達している(例えば
図4参照)。
【0031】
車体2は、防水用の車体側ウェザーストリップ23をさらに備える。車体側ウェザーストリップ23(単にウェザーストリップ23ともいう)は、フレーム21に取り付けられる。ウェザーストリップ23は、ゴムなどで形成される。ウェザーストリップ23は、乗降口20の開口縁に沿って設けられる。ドア3が閉められた状態では、ウェザーストリップ23が、ドア3の外周縁部に液密状に密着する。
【0032】
(ドア3)
ドア3は、例えばフロントサイドドアである。ドア3は、金属製のパネル31を備える。パネル31は、車体2のフレーム21に対してヒンジ80で連結される。パネル31は、例えば、アウターパネル及びインナーパネルを備える。
【0033】
ドア3は、樹脂などで形成されたドアトリム32をさらに備える。ドアトリム32は、ドア用の内装部材であり、ドア3の室内側意匠を構成する。ドアトリム32は、パネル31(具体的には例えば、インナーパネル)に、取り付けられる。
【0034】
ドアトリム32には、ドア3が閉じられた状態で室内側に張り出す張り出し部分321が設けられる。張り出し部分321とパネル31との間には、中空空間301が形成される。搭乗者に圧迫感を与えないために、張り出し部分321は、例えば、車室に設けられる運転席シートの座面よりも低い高さに設けられる(例えば
図3参照)。張り出し部分321の上面は、例えば、アームレストとして使用されてもよい。張り出し部分321には、その上面に開口するドアポケット322が設けられてもよい。また、ドアトリム32には、スピーカ323が設けられる(例えば
図3参照)。スピーカ323は、例えば、張り出し部分321に設けられる。ドアトリム32には、ドア3の開閉を行うためのハンドル、ドアロックの操作部、パワーウインドウのコントロールスイッチ、などがさらに設けられる(いずれも図示省略)。
【0035】
ドア3は、防水用のドア側ウェザーストリップ33をさらに備える。ドア側ウェザーストリップ33(単にウェザーストリップ33ともいう)は、パネル31に取り付けられる。ウェザーストリップ33は、ゴムなどで形成される。ウェザーストリップ33は、パネル31の外周縁に沿って設けられる。ドア3が閉められた状態では、ウェザーストリップ33は、車体2のフレーム21に液密状に密着する。
【0036】
(配策構造10)
配策構造10は、車体2とドア3との間に配策された複数の線状伝送部材4,5を備える。配策構造10が備える複数の線状伝送部材4,5には、例えば、ドア3に搭載される標準搭載品用の線状伝送部材4と、ドア3に搭載されるオプション品用の線状伝送部材5とが含まれる。
【0037】
ここで、「線状伝送部材」とは、電気または光等を伝送する線状の部材である。線状伝送部材は、例えば、芯線と芯線を覆う絶縁被覆とを有する電線であってもよい。また、線状伝送部材は、裸導線、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線あるいは光ファイバ等であってもよい。電気を伝送する場合、線状伝送部材は、各種信号線であってもよいし、各種電力線であってもよい。線状伝送部材は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(例えば、ツイスト線、あるいは複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。線状伝送部材は、配線部材ともいえる。
【0038】
また、「標準搭載品」とは、車両1の出荷前に予め搭載される部品であって、車両1の製造段階において搭載される。いわゆるメーカオプションは標準搭載品に含まれる。ドア3に搭載される標準搭載品には、例えば、パワーウインドウ用の電気部品、ドアロック用の電気部品、電動ミラー用の電気部品、スピーカ、などが含まれる。以後、単に標準搭載品といえば、ドア3に搭載される標準搭載品を意味する。
【0039】
一方、「オプション品」とは、車両1の製造出荷後に搭載される部品であって、販売店などで搭載される。いわゆるディーラオプションは、オプション品に含まれる。オプション品には、標準搭載品に追加して搭載される機器だけではなく、標準搭載品に替えて搭載される機器も含まれる。ドア3に搭載されるオプション品には、例えば、カメラ、測距センサ、他のセンサ、などが含まれる。以後、単にオプション品といえば、ドア3に搭載されるオプション品を意味する。
【0040】
標準搭載品用の線状伝送部材4は、標準搭載品と直接的にあるいは間接的に接続され、接続された標準搭載品に対して、例えば、電源供給及び信号伝達の少なくとも一方を行う。例えば、線状伝送部材4が電線などの電気を伝送する部材である場合、線状伝送部材4は、標準搭載品と電気的に接続される。配策構造10は、標準搭載品用の線状伝送部材4を複数備えてもよい。この場合、複数の線状伝送部材4には、例えば、複数の標準搭載品に対して電源供給及び信号伝達の少なくとも一方を行うための複数の電線が含まれてもよい。
【0041】
標準搭載品用の線状伝送部材4の一方端は、車体2の内部に位置し、他方端は、ドア3の内部に位置する。標準搭載品用の線状伝送部材4は、車体2とドア3との間、具体的には、フレーム21とパネル31との間に、配策される。標準搭載品用の線状伝送部材4における、車体2とドア3との間に配策される部分は、例えば、ウェザーストリップ23,33よりも室外側で配策される。標準搭載品用の線状伝送部材4のうち、車体2とドア3との間に配策される部分は、外装部材6で覆われる。外装部材6は、例えばグロメットであるが、グロメット以外であってもよい。外装部材6は、例えば、各端部がフレーム21及びパネル31のそれぞれに液密状に接続されることによって、車体2とドア3との間で架け渡される。配策構造10では、例えば、1つ以上の線状伝送部材4及び外装部材6で、ワイヤーハーネスが構成される。線状伝送部材4及び外装部材6を含んで構成されるワイヤーハーネスを、配線部材と捉えることもできる。
【0042】
オプション品用の線状伝送部材5は、オプション品の搭載に応じて、車両1に設けられる。すなわち、オプション品用の線状伝送部材5は、ドア3にオプション品が搭載される場合に、搭載されたオプション品と直接的にあるいは間接的に接続され、接続されたオプション品に対して、例えば、電源供給及び信号伝達の少なくとも一方を行う。例えば、線状伝送部材5が電線などの電気を伝送する部材である場合、線状伝送部材5は、オプション品と電気的に接続される。線状伝送部材5の種類は、搭載されるオプション品に応じて、適宜選択される。例えば、オプション品がイーサーネット対応機器である場合、線状伝送部材5としてはイーサーネットケーブルが採用される。配策構造10は、オプション品用の線状伝送部材5を複数備えてもよい。この場合、複数の線状伝送部材5には、例えば、複数のオプション品に対して電源供給及び信号伝達の少なくとも一方を行うための複数の電線が含まれてもよい。ドア3にオプション品が搭載されない場合、
図1及び
図2の例とは異なり、オプション品用の線状伝送部材5は車両1に設けられない。つまり、この場合、配策構造10は、オプション品用の線状伝送部材5を備えない。
【0043】
オプション品用の線状伝送部材5の一方端は、車体2の内部に位置し、他方端は、ドア3の内部に位置する。オプション品用の線状伝送部材5は、車体2とドア3との間、具体的には、カウルサイドトリム222とドアトリム32との間に、配策される。オプション品用の線状伝送部材5における、車体2とドア3との間に配策される部分は、例えば、ウェザーストリップ23,33よりも室内側で配策される。オプション品用の線状伝送部材5のうち、車体2とドア3との間に配策される部分は、例えば、配線ガイド7でガイドされる。配線ガイド7は、例えば、各端部がカウルサイドトリム222及びドアトリム32のそれぞれに接続されることによって、車体2とドア3との間で架け渡される。配策構造10では、例えば、1つ以上の線状伝送部材5及び配線ガイド7で、ワイヤーハーネスが構成される。線状伝送部材5及び配線ガイド7を含んで構成されるワイヤーハーネスを、配線部材と捉えることもできる。
【0044】
<2.挿通口>
上記のとおり、オプション品用の線状伝送部材5の一方端は、車体2の内部に位置し、他方端は、ドア3の内部に位置する。車体2及びドア3の各々には、オプション品用の線状伝送部材5を挿通させるための挿通口81,82が設けられる。各挿通口81,82には、オプション品の搭載に応じて線状伝送部材5が設けられる場合に、線状伝送部材5が挿通される。オプション品が搭載されていない段階(例えば、車両1の出荷段階)では、各挿通口81,82は、これに線状伝送部材5が挿通されない状態となっている。
【0045】
挿通口81,82について、
図1及び
図2に加え、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3には、ドア3が開かれた状態における、カウルサイドトリム222及びドアトリム32の近傍の様子が示されている。
図4には、ドア3が閉じられた状態を室内側から見た様子が示されている。ただし、
図3及び
図4では、パネル31及び配線ガイド7などの図示が省略されている。
【0046】
車体2に設けられる挿通口(車体側挿通口)81は、乗降口20よりも室内側に設けられる。また、車体側挿通口81は、十分に低い位置、すなわち、車室の床面24と十分に近い高さに設けられる。一例として、車体側挿通口81は、床面24との間の高さ方向の離間距離が、5センチメートル以下となるような位置に設けられる。ここでは、車体側挿通口81は、カウルサイドトリム222に設けられる。すなわち、ここでは、車体側挿通口81は、カウルサイドトリム222をその厚み方向に貫通する貫通孔である。
【0047】
ドア3に設けられる挿通口(ドア側挿通口)82は、ヒンジ80を介して車体2に取り付けられているドア3を上方から見た場合に(
図1、
図2)、ドア3の一部によって隠れる位置に、設けられる。「上方から見る」とは、鉛直方向に沿って下方に見下ろすことを意味する。ドア側挿通口82が、上方から見た場合にドア3の一部によって隠れる位置に設けられることで、ドア3が開かれた際に、上方から落ちてくる雨水などの液体がドア側挿通口82に入り込みにくくなる。
【0048】
ドア側挿通口82は、これが搭乗者などの目につきにくいように、搭乗者の目線よりも低い高さに設けられることが好ましく、例えば、スピーカ323よりも下方に設けられることが好ましい。ドア側挿通口82を目立ちにくくするためには、ドア側挿通口82が、十分に低い位置、すなわち、車室の床面24と十分に近い高さに設けられることも好ましい。一例として、ドア側挿通口82は、その上端と車室の床面24との間の高さ方向の離間距離が、5センチメートル以下となるような位置に設けられることが好ましい。
【0049】
ここでは、ドア側挿通口82は、ドア3の底部30に設けられる。「ドア3の底部30」とは、ヒンジ80を介して車体2に取り付けられているドア3を下方から見た場合(鉛直方向に沿って上方に見上げた場合)に、視認できる部分である。ここでは、ドアトリム32に張り出し部分321が設けられており、張り出し部分321の下面3210が、ドア3の底部30の少なくとも一部を形成する。そして、ドア側挿通口82は、張り出し部分321の下面3210に設けられる。この場合、ドア側挿通口82は、上方から見た場合に、張り出し部分321によって隠される。つまり、ドア側挿通口82は、ヒンジ80を介して車体2に取り付けられているドア3を上方から見た場合に、張り出し部分321によって隠れる位置に、設けられる。
【0050】
張り出し部分321の下面3210は、例えば、段差部324、段差部324よりも前方の前側部分325、及び、段差部324よりも後方の後側部分326から形成される。ただし、ここでは、ドア3がヒンジ80を介して車体2に取り付けられている状態において、ヒンジ80に近い側を「前方」とし、ヒンジ80から遠い側を「後方」とする。段差部324は、ドア3の底部30における、その前後方向の中央よりも後方の位置に設けられる。段差部324は、上辺と、上辺よりも低い位置にある下辺と、それらの間で高さ方向に延在する主面とを備えており、上辺において前側部分325に連なり、下辺において後側部分326に連なっている。つまり、段差部324は、後側部分326を前側部分325よりも低くする。前側部分325は、前後に沿って水平に延在する。後側部分326は、前側部分325よりも低い位置から、後方に向かうにつれて緩やかな曲線を描きつつ上向きに曲がる形状とされる。ドア側挿通口82は、段差部324に設けられる。すなわち、ここでは、ドア側挿通口82は、高さ方向に延在する段差部324の主面を、前後方向に貫通する貫通孔である。
【0051】
オプション品の搭載に応じて線状伝送部材5が設けられる場合、オプション品用の線状伝送部材5は、車体側挿通口81を挿通されることによって、車体2の内部からドア3の側へ引き出される。つまり、オプション用の線状伝送部材5は、乗降口20よりも室内側から引き出される。車体側挿通口81から引き出された線状伝送部材5は、ドアトリム32の前側部分325に沿って前後に配策され、ドア側挿通口82を前後に挿通されて、ドア3の内部へ導入される。このようにして、オプション品用の線状伝送部材5が、車体側挿通口81及びドア側挿通口82を通じて、車体2とドア3との間(具体的には、カウルサイドトリム222とドアトリム32の間)に、配策される。
【0052】
<3.配線ガイド>
(構成)
オプション品用の線状伝送部材5における、車体2とドア3との間を配策される部分(単に配策部分ともいう)は、配線ガイド7でガイドされる。配線ガイド7の構成について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、配線ガイド7を概略的に示す斜視図である。
【0053】
配線ガイド7は、第1経路規制部材71と、第2経路規制部材72とを備える。第1経路規制部材71と第2経路規制部材72とは、第1回動軸部73を介して接続されており、各経路規制部材71,72は、他方に対して回動することができる。つまり、配線ガイド7は、回動自在に接続された複数(ここでは、2つ)の経路規制部材71,72を備える。
【0054】
第1経路規制部材71は、延在方向に屈曲した形状である。第1経路規制部材71は、剛性を有しており、外力が付与されても変形しにくい。第1経路規制部材71は、筒状である。一例として、第1経路規制部材71は、対向して配置された一対の半割体が互いに係止された、割筒状である。上記のとおり、第1経路規制部材71は、一端において、第1回動軸部73を介して第2経路規制部材72と接続される。第1経路規制部材71の他端には、底面に開口701が設けられる。この開口701は、車体側挿通口81から引き出された線状伝送部材5を、配線ガイド7の筒内部に導入するための導入口としての役割を担う。
【0055】
第2経路規制部材72は、外筒部材721と、内筒部材722とを備える。外筒部材721及び内筒部材722は、いずれも、直線状に延在する形状である。外筒部材721及び内筒部材722は、いずれも、剛性を有しており、外力が付与されても変形しにくい。また、外筒部材721及び内筒部材722は、いずれも、筒状である。一例として、外筒部材721及び内筒部材722は、いずれも、対向して配置された一対の半割体が互いに係止された、割筒状である。外筒部材721の内径は、内筒部材722の外径よりも大きい。内筒部材722は、その一端側から、外筒部材721の筒内に差し込まれる。内筒部材722の他端側の開口702は、線状伝送部材5を配線ガイド7の筒内部から引き出すための導出口としての役割を担う。
【0056】
内筒部材722が外筒部材721の筒内から進出すると、第2経路規制部材72の延在方向の長さが伸びる(
図5の実線)。逆に、内筒部材722が外筒部材721の筒内に進入すると、第2経路規制部材72の延在方向の長さが縮む(
図5の二点鎖線)。つまり、内筒部材722が外筒部材721に対して進退(スライド)することによって、第2経路規制部材72の長さが変化する。すなわち、第2経路規制部材72は伸縮自在である。内筒部材722の外周面及び外筒部材721の内周面には、内筒部材722がその延在方向に沿って移動するようにガイドするためのガイド構造720(例えば、延在方向に沿う凸条と凹条の組み合わせ)が設けられてもよい。
【0057】
線状伝送部材5は、開口701を通じて配線ガイド7の筒内部に導入され、第1経路規制部材71の筒内部及び第2経路規制部材72の筒内部を順に挿通されて、開口702を通じて筒内部から導出される。これによって、線状伝送部材5における、配線ガイド7の筒内部を挿通される部分(挿通部分)が、配線ガイド7によってガイドされ、挿通部分の経路が配線ガイド7に沿う形状に規制される。また、挿通部分が、配線ガイド7で覆われることによって保護される。
【0058】
線状伝送部材5と、配線ガイド7とを含んで、配線ユニット700が構成されてもよい。配線ユニット700においては、線状伝送部材5が配線ガイド7の筒内部に挿通されていてもよい。
【0059】
(配設の態様)
次に、配線ガイド7の配設の態様について、
図6~
図8を参照しながら説明する。
図6~
図8は、カウルサイドトリム222、ドアトリム32及び配線ガイド7を示す概略図である。
図6には、ドア3が開かれた様子が示されている。
図7には、ドア3が閉じられた様子が示されている。
図8には、ドア3が閉じられた状態を室内側から見た様子が示されている。
図6~
図8では、パネル31などの図示が省略されている。
【0060】
配線ガイド7は、車体2とドア3との間に設けられる。具体的には、配線ガイド7は、第1経路規制部材71の端部においてカウルサイドトリム222と接続され、第2経路規制部材72の端部においてとドアトリム32と接続されることで、カウルサイドトリム222とドアトリム32との間に架け渡されるように設けられる。
【0061】
すなわち、第1経路規制部材71の端部は、カウルサイドトリム222、具体的には、ここに設けられた車体側挿通口81と、接続される。この接続部分では、開口701と車体側挿通口81とが重なるように配置される。また、この接続部分には、第2回動軸部74が設けられ、第1経路規制部材71は、車体側挿通口81のまわりで回動することができる。
【0062】
第1経路規制部材71は、ドア3が開かれた状態において、フレーム21(具体的には、サイドシル211)をまたぐような回動位置に配置される。この状態において、第1経路規制部材71は、フレーム21(具体的には、サイドシル211の前側に連なって上方に立ち上がる部分、いわゆる、フロントピラー)を迂回するように屈曲する。つまり、第1経路規制部材71は、ドア3が開かれた状態において、フロントピラーを迂回するように屈曲して、サイドシル211をまたぐ。
【0063】
第2経路規制部材72は、前側部分325に沿って延在する姿勢で、配設される。具体的には例えば、ドアトリム32には、前側部分325よりも下側の位置に、前側部分325と平行に延在する支持板327が設けられている(
図4参照)。支持板327が第2経路規制部材72を下面側から支持することによって、第2経路規制部材72が前側部分325に沿って延在する姿勢で支持される。ただし、支持板327は、第2経路規制部材72の伸縮を妨げない。つまり、第2経路規制部材72は、前側部分325に沿って延在する姿勢で支持されつつ、その延在方向、すなわち、前側部分325に沿って、伸縮することができる。前側部分325に沿って延在する姿勢とされることで、第2経路規制部材72は、上方から見た場合にドア3の一部(具体的には、張り出し部分321)に隠される。つまり、第2経路規制部材72は、ヒンジ80を介して車体2に取り付けられているドア3を上方から見た場合に、ドア3の一部によって隠れる位置に、設けられる。
【0064】
第2経路規制部材72の内筒部材722の先端は、ドア側挿通口82に差し込まれ、開口702がドア3の内部に配置される。この状態で、内筒部材722の先端に設けられている係止部7221が、ドア側挿通口82に係止される。これによって、第2経路規制部材72の端部が、ドアトリム32、具体的には、ここに設けられたドア側挿通口82と接続されるとともに、第2経路規制部材72がドア3に対して回動できないように規制される。つまり、第2経路規制部材72は、前側部分325に沿って延在する姿勢に規制される。
【0065】
このようにして、配線ガイド7が、カウルサイドトリム222とドアトリム32との間に配設される。車体側挿通口81を挿通されてここから引き出された線状伝送部材5、すなわち、乗降口20よりも室内側から引き出された線状伝送部材5は、開口701を通じて配線ガイド7の筒内部に導入され、第1経路規制部材71の筒内部及び第2経路規制部材72の筒内部を順に挿通されて、開口702を通じて筒内部から導出され、ドア3の内部に配置される。つまり、線状伝送部材5は、配線ガイド7の筒内部を挿通されることで、ドア側挿通口82を挿通された状態となる。こうして、線状伝送部材5の配策部分、すなわち、車体側挿通口81及びドア側挿通口82を通じてカウルサイドトリム222とドアトリム32とのとの間に配策される部分が、配線ガイド7によってガイドされ、配策部分の経路が、配線ガイド7に沿う形状に規制される。また、配策部分が、配線ガイド7で覆われることによって保護される。
【0066】
図8に示されるように、配線ガイド7は、カウルサイドトリム222と接続される一端側から、ドアトリム32と接続される他端側に至るまで、車室の床面24と平行な面内を延在する。したがって、線状伝送部材5の配策部分の経路は、車室の床面24と平行な面内に規制される。配線ガイド7を目立ちにくくするためには、配線ガイド7が、十分に低い位置、すなわち、車室の床面24と十分に近い高さに配設されることが好ましい。一例として、配線ガイド7は、その上面と車室の床面24との間の高さ方向の離間距離が、5センチメートル以下となるような高さに配設されることが好ましい。
【0067】
後に説明するように、配線ガイド7は、ドア3の回動に応じて変形する。具体的には、各経路規制部材71,72が各回動軸部73,74のまわりで回動し、第2経路規制部材72が伸縮する。ここで、各回動軸部73,74によって規定される回動軸は、車室の床面24と直交する方向に規定される。また、第2経路規制部材72が伸縮する方向は、前側部分325に沿う方向に規制されるところ、該方向は、車室の床面24と平行な面内にある。したがって、配線ガイド7は、車室の床面24と平行な面内において変形する。つまり、配線ガイド7は、線状伝送部材5の配策部分の経路を床面24と平行な面内に規制したままで、ドア3の回動に応じて変形する。
【0068】
(変形の態様)
乗降口20を開閉するためにヒンジ80のまわりでドア3が回動されると、これに追従するために(すなわち、配線ガイド7の両端を各挿通口81,82の位置に維持するために)、配線ガイド7が変形する。別の見方をすると、配線ガイド7は、ドア3の回動を阻害しないように変形する。配線ガイド7の変形の態様について、
図9及び
図10を参照しながら説明する。
図9及び
図10は、配線ガイド7の変形の態様を説明するための図である。
図9には、ドア3が閉じられた様子が示されている。
図10には、ドア3が開かれた様子が示されている。
【0069】
上記のとおり、ドア3は、ヒンジ80を介して車体2に連結されており、ヒンジ80のまわりで回動されることによって、乗降口20を開閉する。例えば、車体側挿通口81が乗降口20よりも室内側に設けられる構成が採用される場合、車体側挿通口81の位置とヒンジ80の位置とを一致させることは難しい。これら2つの位置が一致しない場合、ドア3が回動すると、車体側挿通口81とドア側挿通口82との離間距離が変化する。また、2つの位置が一致しない場合、例えば、ドア3が閉じられている状態において、車体側挿通口81とドア側挿通口82とを結ぶ直線経路の方向がドア3の延在方向と一致していたとしても、ドア3が開かれる方向に回動するにつれて、この直線経路の方向がドア3の延在方向からずれていく。
【0070】
配線ガイド7は、車体側挿通口81の位置とヒンジ80の位置とが一致しない場合であっても、第2経路規制部材72がドア3に沿って延在する姿勢を維持したままで、ドア3の回動に追従することができる。すなわち、配線ガイド7では、ドア3の回動に応じて、第1経路規制部材71が、第1回動軸部73がドア3(具体的には、前側部分325)の延在方向上に維持されるように、第2回動軸部74のまわりで(すなわち、車体側挿通口81のまわりで)回動する。回動の方向は、ドア3のそれと同じであるが、回動の角度はドア3のそれと同じであるとは限らない。第2経路規制部材72は、第1経路規制部材71の回動に応じて第1回動軸部73のまわりで回動する(すなわち、第1経路規制部材71に対して回動する)ことで、ドア3(具体的には、前側部分325)に沿って延在する姿勢を維持する。その一方で、第1回動軸部73のドア3に沿う方向の移動を補償するために、第2経路規制部材72の長さが変化する(伸縮する)。車体側挿通口81が、ヒンジ80よりも室内側かつ後方にある場合、ドア3が開かれる方向に回動すると(開動作)、ドア3に対して第1回動軸部73がヒンジ80に近づく方向に相対移動するので、その分だけ、内筒部材722が外筒部材721から進出して、第2経路規制部材72が伸長する。逆に、ドア3が閉じられる方向に回動すると(閉動作)、ドア3に対して第1回動軸部73がヒンジ80から離れる方向に相対移動するので、その分だけ、内筒部材722が外筒部材721に進入して、第2経路規制部材72が縮短する。
【0071】
このように、配線ガイド7は、ドア3の回動に応じて、第1経路規制部材71が第2回動軸部74のまわりで回動するとともに、第2経路規制部材72が、長さを変化させつつ、第1回動軸部73のまわりで回動することで、第2経路規制部材72がドア3に沿って延在する姿勢を維持したままで、ドア3の回動に追従する。つまり、ドア3が回動する際に、第2経路規制部材72が、ドア3に沿って延在する姿勢に維持される。したがって、搭乗者が乗降する際に配線ガイド7が踏まれにくく、搭乗者が配線ガイド7に引っ掛かりにくい。特に、ここでは、第2経路規制部材72は、前側部分325に沿って延在する姿勢とされている。つまり、ドア3が回動する際に、第2経路規制部材72が、前側部分325に沿って延在する姿勢、すなわち、上方から見て張り出し部分321で隠された状態に、維持される。したがって、ドア3が開閉される際に、配線ガイド7が目立ちにくい。また、搭乗者が乗降する際に、配線ガイド7が特に踏まれにくい。
【0072】
<4.効果等>
以上のように構成された配策構造10では、線状伝送部材5をガイドする配線ガイド7が、回動自在に接続された複数の経路規制部材71,72を備え、ドア3の回動に応じて、複数の経路規制部材71,72の少なくとも1つが回動する。このような配線ガイド7は、例えば、長さ方向に自在に屈曲できる蛇腹形状のグロメットに比べて、変形の自由度が低い。したがって、車体2とドア3との間を配策される線状伝送部材5の経路を、安定させることができる。
【0073】
特に、配線ガイド7が備える経路規制部材71,72の個数が2つであれば、配線ガイド7の変形の自由度が十分に低くなる。したがって、線状伝送部材5の経路を十分に安定させることができる。
【0074】
また、配線ガイド7が備える複数の経路規制部材71,72のうちの少なくとも1つが伸縮自在であれば、ドア3の回動に応じて、少なくとも1つの経路規制部材72が伸縮することで、配線ガイド7の長さを変化させることができる。例えば、ドア3の閉動作に応じて配線ガイド7が縮短することができ、これによって、ドア3が閉じられた状態において配線ガイドがだぶついた形状になる(ひいては、だぶついた部分が車室側に回り込んで搭乗者の邪魔になる)、といった事態を回避することができる。
【0075】
また、ドア3が回動する際に、配線ガイド7の一部分(上記の例では、第2経路規制部材72)が、ドア3に沿って延在する姿勢に維持される場合、搭乗者が乗降する際に配線ガイド7が踏まれにくく、搭乗者が配線ガイド7に引っ掛かりにくい。
【0076】
特に、ドア3に沿って延在する姿勢に維持される配線ガイド7の一部分(上記の例では、第2経路規制部材72)が、上方から見た場合にドア3の一部によって隠れる位置にある場合、ドア3が開閉される際に、配線ガイド7が目立ちにくい。また、搭乗者が乗降する際に、配線ガイド7が特に踏まれにくい。
【0077】
また、配線ガイド7でガイドされる線状伝送部材が、ドア3に搭載されるオプション品用の線状伝送部材5である場合、オプション品用の線状伝送部材5の経路を安定させることができる。
【0078】
また、配線ガイド7でガイドされる線状伝送部材が、ドア3に搭載されるオプション品用の線状伝送部材5である場合、すなわち、オプション品用の線状伝送部材5が、車体側挿通口81及びドア側挿通口82を通じて、車体2とドア3との間に配策される場合、標準搭載品用の線状伝送部材4とは独立して、オプション品用の線状伝送部材5を配策することができる。仮に、オプション品用の線状伝送部材5を挿通させるため挿通口81,82が設けられない場合、オプション品の搭載に応じて線状伝送部材5が設けられる場合に、該線状伝送部材5を、標準搭載品用の線状伝送部材4と同じ経路で配策することになる。つまり、標準搭載品用の線状伝送部材4を覆う外装部材6内に、オプション品用の線状伝送部材5を通さなければならない。しかしながら、多くの場合、このような配策作業は、容易ではない。外装部材6はウェザーストリップ23,33よりも室外側に位置しているので、配策作業を行う際の作業スペースの確保が難しく、また、外装部材6内にオプション品用の線状伝送部材5を通すだけの余分のスペースを確保することも容易ではないからである。オプション品用の線状伝送部材5を挿通させるため挿通口81,82が設けられる場合、上記のとおり、標準搭載品用の線状伝送部材4とは独立して、オプション品用の線状伝送部材5を配策することができるので、オプション品用の線状伝送部材5の配策作業性が向上する。
【0079】
また、配線ガイド7でガイドされる線状伝送部材5が、乗降口20よりも室内側から(具体的には、乗降口20よりも室内側に設けられた車体側挿通口81から)引き出されたものである場合、線状伝送部材5を室内側で配策することができるので、線状伝送部材5を車体2とドア3との間で配策する作業を容易に行うことができる。
【0080】
その反面、線状伝送部材5が乗降口20よりも室内側から引き出される場合、車体側挿通口81の位置とヒンジ80の位置とを一致させることが難しくなる。しかしながら、配線ガイド7が、回動自在に接続された2つの経路規制部材71,72を備え、第1経路規制部材71が、車体側挿通口81に対して回動自在に接続され、第2経路規制部材72が、伸縮自在であって、ドア3に沿って延在するような姿勢に規制されつつドア側挿通口82に接続される場合、ドア3の回動に応じて、第1経路規制部材71が第2回動軸部74のまわりで回動するとともに、第2経路規制部材72が、長さを変化させつつ、第1回動軸部73のまわりで回動することができる。これによって、車体側挿通口81の位置とヒンジ80の位置が一致しない場合であっても、第2経路規制部材72がドア3に沿って延在する姿勢を維持したままで、ドア3の回動に追従することができる。
【0081】
また、配線ガイド7の上面と車室の床面24との間の高さ方向の離間距離が、5センチメートル以下である場合、配線ガイド7が目立ちにくく、搭乗者などが配線ガイド7に引っ掛かりにくい。
【0082】
また、配線ガイド7が備える複数の経路規制部材71,72のうち、ドア3が開かれた状態において車体2のフレーム21(具体的には、サイドシル211)をまたぐ第1経路規制部材71が、該状態においてフレーム21(具体的には、フロントピラー)を迂回するように屈曲していれば、ドア3が比較的大きく開かれても、配線ガイド7がフレーム21と干渉しにくい。すなわち、配線ガイド7によって、ドア3の可動域が制限されにくい。
【0083】
[変形例]
上記の実施形態に係るドア3は、パネル31に取り付けられている既存のドアトリムの少なくとも一部が、交換用内装と交換されることによって得られてもよい。
図11には、パネル31に取り付けて用いられる交換用内装である交換用ドアトリム32aの一例が示されている。
【0084】
交換用ドアトリム32aは、上記の実施形態に係るドアトリム32と同様、オプション品用の線状伝送部材5を挿通させるためのドア側挿通口82aを備える。ドア側挿通口82aは、交換用ドアトリム32aがパネル31に取り付けられた状態において、上方から見た場合にドア3の一部によって隠れる位置に、設けられる。
【0085】
具体的には例えば、交換用ドアトリム32aは、上記の実施形態に係るドアトリム32と同様、張り出し部分321a、ここに設けられたドアポケット322a及びスピーカ323a、などを備える。また、張り出し部分321aの下面3210aは、例えば、その前後方向の中央よりも後方の位置に設けられた段差部324a、段差部324aの上辺に連なってその前方に延在する前側部分325a、及び、段差部324aの下辺に連なってその後方に延在する後側部分326aから形成される。ドア側挿通口82aは、段差部324aに設けられる。
【0086】
例えば、車両1の出荷段階では、ドア3のパネル31に、ドア側挿通口82aを備えないドアトリム932が取り付けられている。そして、車両1の出荷後、オプション品の搭載に応じて線状伝送部材5を設ける際に、既存のドアトリム932の少なくとも一部分と交換されて、交換用ドアトリム32aが、パネル31に取り付けられる。具体的には例えば、既存のドアトリム932における張り出し部分9321がパネル31から取り外され、張り出し部分9321に換えて、交換用ドアトリム32aがパネル31に取り付けられる。これによって、ドア側挿通口82aを有するドア3が、得られる。
【0087】
パネル31に交換用ドアトリム32aが取り付けられたドア3においては、線状伝送部材5を挿通させるためのドア側挿通口82aが、上方から見た場合にドア3の一部によって隠れる位置にあるので、上方から落ちてくる雨水などの液体がドア側挿通口82aに入り込みにくい。すなわち、ドア側挿通口82aから雨水などの液体が入り込むことが抑制される。また、車両1の出荷後、オプション品の搭載に応じて線状伝送部材5を設ける際に、既存のドアトリム932の少なくとも一部分を交換用ドアトリム32aに交換する構成であれば、オプション品が搭載されていない段階において、搭乗者などが、不使用状態のドア側挿通口82aがドア3に設けられていることに違和感をもつ、といった事態が生じない。
【0088】
オプション品用の線状伝送部材5と、配線ガイド7と、交換用ドアトリム32aとを含んで、配線ユニット700aが構成されてもよい。配線ユニット700aにおいては、線状伝送部材5が配線ガイド7の筒内部に挿通されていてもよい。さらに、配線ガイド7が、第2経路規制部材72が前側部分325aに沿って延在する姿勢に規制されつつ、一端においてドア側挿通口82aと接続されていてもよい。この場合、線状伝送部材5は、配線ガイド7の筒内部を挿通されることで、ドア側挿通口82aを挿通された状態となる。
【0089】
このような配線ユニット700aが用いられる場合、交換用ドアトリム32aを既存のドアトリム932の少なくとも一部分と交換してパネル31に取り付けることで、線状伝送部材5が、一端側においてドア側挿通口82aを通じてドア3の内部に引き入れられるとともに、延在途中において配線ガイド7にガイドされた状態が、形成される。したがって、線状伝送部材5を車体2とドア3との間で配策する作業を簡素化することができる。
【0090】
上記の実施形態において、ドア3が閉じられた状態における配線ガイド7の長さは、ドア3が開かれた状態における配線ガイド7の長さよりも短い(
図9、
図10)。したがって、ドア3の閉動作に応じて、線状伝送部材5の余長が発生する。
【0091】
そこで、配策構造10は、例えば
図12に示されるように、ドア3の閉動作に応じて発生する線状伝送部材5の余長を吸収するための余長吸収空間90を備えるものであってもよい。例えば、ドア3の内部空間(具体的には例えば、張り出し部分321とパネル31との間の中空空間301)の一部が、余長吸収空間90としての役割を担うものであってよい。
【0092】
さらに、配策構造10は、ドア3の閉動作に応じて発生する線状伝送部材5の余長を吸収するための余長吸収部9を備えるものであってもよい。余長吸収部9は、例えば、余長吸収空間90に配置されたものであってもよい。余長吸収部9は、例えば、線状伝送部材5を巻いて収容するものであってよい。この場合、余長吸収部9は、例えば、巻き軸部91と、収容部92とを備える。
【0093】
巻き軸部91は、線状伝送部材5が巻回される部分であり、収容部92内に設けられる。巻き軸部91は、例えば、柱状であり、ドア3の厚み方向に沿って突出する。したがって、巻き軸部91は、突起部ともいえる。線状伝送部材5は、巻き軸部91に対して、例えば一巻きされている。
【0094】
収容部92は、筐状に形成されており、その内部が、巻き軸部91の回りに巻回される線状伝送部材5の部分(巻回部分ともいう)50を収容可能な収容空間を形成する。収容部92は、例えば、パネル31或いはドアトリム32に取り付けられる。収容部92には、線状伝送部材5を収容部92内に案内する入口側案内部93と、線状伝送部材5を収容部92の外側に案内する出口側案内部94とが接続されてもよい。入口側案内部93及び出口側案内部94は、例えば筒状である。入口側案内部93及び出口側案内部94の各々は、筒内部を収容部92の内部空間(言い換えれば、巻回部分50の収容空間)と連通させつつ、収容部92と接続される。
【0095】
収容部92は、入口側案内部93を介して、ドア側挿通口82、或いは、ここを挿通された内筒部材722の先端と接続される。ドア側挿通口82を挿通された線状伝送部材5、具体的には例えば、配線ガイド7の開口702から引き出された線状伝送部材5は、入口側案内部93を通じて、収容部92の内部空間に案内される。そして、線状伝送部材5は、収容部92の内部空間において、巻き軸部91に巻回され、出口側案内部94を通じて、該内部空間の外部へと案内される。
【0096】
このような構成において、ドア3が閉じられる方向に回動すると(閉動作)、発生した余長分の線状伝送部材5が、入口側案内部93を通じて収容部92に引き込まれていく。ドア3の閉動作が進むにつれて、巻回部分50の径が大きくなり、ドア3が完全に閉じられた状態で、巻回部分50の径が最大となる(
図12の二点鎖線)。一方、ドア3が開かれる方向に回動すると(開動作)、線状伝送部材5が、入口側案内部93を通じて収容部92から引き出される。ドア3の開動作が進むにつれて、巻回部分50の径が小さくなり、ドア3が最大に開かれた状態で、巻回部分50の径が最小となる(
図12の実線)。このように、余長吸収部9では、線状伝送部材5における、巻き軸部91の回りに巻回された巻回部分50の径が、ドア3の開閉に応じて変化するという簡単な構成で、線状伝送部材5の余長、すなわち、ドア3の閉動作に応じて発生する線状伝送部材5の余長を、吸収することができる。余長が吸収されることで、例えば、発生した余長によって線状伝送部材5が無理な姿勢に屈曲される、といった事態が生じにくくなる。
【0097】
なお、余長吸収部9は、車両1の出荷段階では設けられず、出荷後、オプション品用の線状伝送部材5が設けられる場合に、余長吸収空間90に設けられてもよい。或いは、余長吸収部9は、線状伝送部材5が設けられるか否かにかかわらず、車両1の出荷段階から余長吸収空間90に設けられてもよい。また、配線ガイド7の筒内部の一部が、余長吸収空間90としての役割を担うものであってよく、余長吸収部9は、例えば、配線ガイド7の筒内部に配置されたものであってもよい。また、余長吸収部9は、配線ユニットの一部を構成するものであってもよい。例えば、オプション品用の線状伝送部材5と、配線ガイド7と、余長吸収部9とを含んで、配線ユニットが構成されてもよい。この配線ユニットにおいては、余長吸収部9が、配線ガイド7の筒内部に配置されていてもよい。
【0098】
上記の実施形態においては、ドア3が回動する際に、配線ガイド7の一部分がドア3に沿って延在する姿勢に維持されるものとしたが、これは必須ではない。例えば、配線ガイド7の一部分をドア3に沿って延在する姿勢に維持しないのであれば、配線ガイドを、いずれも伸縮できない2つの経路規制部材が回動自在に接続されたものとし、このような配線ガイドの両端の各々を車体側挿通口81及びドア側挿通口82の各々に回動自在に接続してもよい。このような構成によると、ドア3の回動に応じて、各経路規制部材が他方に対して回動しつつ(すなわち、互いがなす角度を変化させつつ)、各挿通口81,82のまわりで回動することで、車体側挿通口81の位置とヒンジ80の位置が一致しない場合であっても、ドア3の回動に追従することができる。
【0099】
上記の実施形態に係る配線ガイド7において、第1経路規制部材71は、延在方向に屈曲した形状であるとしたが、直線状に延在する形状であってもよい。
【0100】
上記の実施形態に係る配線ガイド7は、回動自在に接続された2つの経路規制部材71,72を備えるものであったが、配線ガイドは、回動自在に接続された3つ以上の経路規制部材を備えるものであってもよい。3つ以上の経路規制部材を備える場合、例えば、各経路規制部材が一列に配列されて、隣り合う経路規制部材の間が、回動自在に接続されてもよい。ただし、配線ガイドは、これが備える経路規制部材の個数が多くなるほど、変形の自由度が高くなる。線状伝送部材5の経路を十分に安定させるためには、配線ガイドが備える経路規制部材の個数は、5つ以下であることが好ましく、3つ以下であることが特に好ましい。
【0101】
上記の実施形態に係る配線ガイド7は、一端側において車体2に対して回動自在に接続され、他端側においてドア3に対して回動できないように規制されつつ接続されていたが、配線ガイドは、車体2及びドア3の各々に対して回動自在に接続されてもよいし、車体2及びドア3の各々に対して回動できないように規制されつつ接続されてもよい。
【0102】
上記の実施形態において、カウルサイドトリム222が、交換可能な部材であってもよい。例えば、車両1の出荷段階では、車体側挿通口81を備えないカウルサイドトリムがフレーム21に取り付けられており、車両1の出荷後、オプション品の搭載に応じて線状伝送部材5を設ける際に、既存のカウルサイドトリムの少なくとも一部分と交換されて、車体側挿通口81を備える交換用カウルサイドトリムが、フレーム21に取り付けられてもよい。
【0103】
上記の実施形態において、オプション品が搭載されておらず、車体側挿通口81及びドア側挿通口82に線状伝送部材5が挿通されていない状態において、車体側挿通口81及びドア側挿通口82の一方あるいは両方が、蓋部材、薄膜、などによって塞がれていてもよい。この場合、車両1の出荷後、オプション品の搭載に応じて線状伝送部材5を設ける際に、蓋部材が取り外される、或いは、薄膜が破られることによって、車体側挿通口81及びドア側挿通口82が露出されればよい。また、車体側挿通口81とここに挿通された線状伝送部材5との隙間は、充填材などで埋められてもよい。
【0104】
上記の実施形態において、標準搭載品用の線状伝送部材4が、車体側挿通口81及びドア側挿通口82を通じて、車体2とドア3との間に配策されてもよい。すなわち、各挿通口81,82は、標準搭載品用の線状伝送部材4を挿通させるためのものであってもよい。各挿通口81,82に標準搭載品用の線状伝送部材4が挿通される場合に、標準搭載品用の線状伝送部材4における、車体2とドア3との間を配策される部分をガイドする配線ガイド7が設けられてもよい。例えば、標準搭載品用の線状伝送部材4とオプション品用の線状伝送部材5との両方が、車体側挿通口81及びドア側挿通口82を通じて配策される場合に、両線状伝送部材4,5が共通の配線ガイド7でまとめてガイドされてもよい。具体的には例えば、両線状伝送部材4,5が同じ配線ガイド7の筒内部に挿通されてもよい。
【0105】
以上のように、配策構造及び配線ユニットは詳細に説明されたが、上記の説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上記の実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0106】
1 車両
2 車体
21 フレーム
211 サイドシル
22 内装部材
221 インストルメントパネル
222 カウルサイドトリム
23 ウェザーストリップ
3 ドア
30 ドアの底部
31 パネル
32 ドアトリム
32a 交換用ドアトリム
321,321a 張り出し部分
3210,3210a 張り出し部分の底部
322,322a ドアポケット
323,323a スピーカ
324,324a 段差部
325,325a 前側部分
326,326a 後側部分
33 ウェザーストリップ
10 配策構造
4 標準搭載品用の線状伝送部材
5 オプション品用の線状伝送部材
6 外装部材
7 配線ガイド
71 第1経路規制部材
72 第2経路規制部材
721 外筒部材
722 内筒部材
73 第1回動軸部
74 第2回動軸部
700,700a 配線ユニット
80 ヒンジ
81 車体側挿通口
82,82a ドア側挿通口
9 余長吸収部