(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140538
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/73 20060101AFI20250919BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
H01R13/73 A
H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040002
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松岡 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】土岐 徳子
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE11
5E087GG02
5E087JJ01
5E087LL03
5E087LL04
5E087LL13
5E087MM05
5E087RR18
(57)【要約】
【課題】絶縁の信頼性を向上できるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、端子2およびプレート4をモールド成型することにより、端子2、樹脂部3、およびプレート4を備える。プレート4は、コネクタ1がコネクタ取付相手の開口部に取付け固定された際に、その開口部において樹脂部3とコネクタ取付相手との間を止水するシール部材の面圧を確保するために設けられている。プレート4には、端子2とプレート4とを絶縁する立体形状の絶縁部32が設けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と、モールド成型によって前記端子と一体形成されるとともに、コネクタ取付相手に形成された開口部に前記端子が位置するように前記開口部に配置される樹脂部と、前記開口部において前記樹脂部と前記コネクタ取付相手との間を止水するシール部材の面圧を確保するために、前記モールド成型によって前記端子とともに前記樹脂部に一体形成されたプレートと、を備えたコネクタであって、
前記プレートには、前記端子と前記プレートとを絶縁する立体形状の絶縁部が設けられている、コネクタ。
【請求項2】
前記端子は、複数設けられ、
前記絶縁部は、一部品で複数の前記端子に対向する形状を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記プレートと前記絶縁部との間には、前記絶縁部を前記プレートに位置決めする位置決め部が設けられている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記端子は、電線付き端子であり、
前記絶縁部は、対向配置された前記電線付き端子の形状に対応する形状の肉厚部および薄肉部を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記樹脂部は、前記開口部に対応する形状の環状部を有し、
前記端子は、前記環状部の内側に露出して配置され、
前記プレートは、前記コネクタ取付相手に固定された際に前記シール部材を押圧するプレート本体と、前記開口部に対応する形状で前記プレート本体に形成されたプレート孔と、を有し、
前記絶縁部は、前記プレート孔の周縁に沿って配置されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記樹脂部は、前記環状部の側面に、前記端子を収容する端子取付部を有し、
前記絶縁部は、前記端子取付部に収容された前記端子と前記プレートとの間に配置されている、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記絶縁部は、一次モールド成型によって前記プレートに形成され、
前記樹脂部は、前記端子および前記プレートを樹脂で一体にする二次モールド成型によって形成されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記絶縁部は、前記プレートとは別部品で形成され、組付けによって前記プレートに一体化されている、請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、電線付き端子とプレートとを樹脂によってモールド成型したコネクタが周知である。電線付き端子とプレートとは、樹脂によって絶縁されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹脂に亀裂が入ってしまった場合に、樹脂とプレートとの界面から水等の流体が浸入すると、浸入した流体によって電線付き端子とプレートとがショートする可能性があった。
【0005】
本開示の目的は、絶縁の信頼性を向上できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するコネクタは、端子と、モールド成型によって前記端子と一体形成されるとともに、コネクタ取付相手に形成された開口部に前記端子が位置するように前記開口部に配置される樹脂部と、前記開口部において前記樹脂部と前記コネクタ取付相手との間を止水するシール部材の面圧を確保するために、前記モールド成型によって前記端子とともに前記樹脂部に一体形成されたプレートと、を備えた構成であって、前記プレートには、前記端子と前記プレートとを絶縁する立体形状の絶縁部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、コネクタにおいて絶縁の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、コネクタを裏面から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、絶縁部を有するプレートの斜視図である。
【
図7】
図7は、絶縁部を有するプレートの平面図である。
【
図8】
図8は、
図3に示すVIII-VIII線断面図である。
【
図10】
図10は、プレートから絶縁部を分解した際の斜視図である。
【
図11】
図11は、樹脂部にクラックが発生した際の作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示のコネクタは、端子と、モールド成型によって前記端子と一体形成されるとともに、コネクタ取付相手に形成された開口部に前記端子が位置するように前記開口部に配置される樹脂部と、前記開口部において前記樹脂部と前記コネクタ取付相手との間を止水するシール部材の面圧を確保するために、前記モールド成型によって前記端子とともに前記樹脂部に一体形成されたプレートと、を備えた構成であって、前記プレートには、前記端子と前記プレートとを絶縁する立体形状の絶縁部が設けられている。
【0010】
本構成によれば、端子とプレートとの間に立体形状の絶縁部を設けたので、樹脂部に端子からプレートに至るクラックが形成されてしまった際に、プレートと樹脂部との界面から水が浸入しても、絶縁部によって水がクラックに到達することが防止される。これにより、樹脂部とプレートとの界面からコネクタの内部に浸入した水がクラックを介して端子に到達してしまう状況が生じ難くなる。従って、樹脂部とプレートとの界面から浸入した水を原因とする端子とプレートとの短絡が生じ難い。よって、コネクタにおいて絶縁の信頼性を向上することが可能となる。
【0011】
[2]上記[1]において、前記端子は、複数設けられ、前記絶縁部は、一部品で複数の前記端子に対向する形状を有する。この構成によれば、端子が複数であっても、絶縁部が単一の部品であるので、コネクタの構造の簡素化に寄与する。
【0012】
[3]上記[1]または[2]において、前記プレートと前記絶縁部との間には、前記絶縁部を前記プレートに位置決めする位置決め部が設けられている。この構成によれば、絶縁部を位置決め部によってプレートに固定することが可能となるので、絶縁部の位置ずれを生じ難くすることが可能となる。
【0013】
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、前記端子は、電線付き端子であり、前記絶縁部は、対向配置された前記電線付き端子の形状に対応する肉厚部および薄肉部を有する。この構成によれば、電線付き端子が例えば段差形状の段状部を有する場合に、その段状部に応じた肉厚部および薄肉部が絶縁部に形成される。このため、電線付き端子と絶縁部との間隔を一定にすることによって、その部分において樹脂部を肉抜きすることが可能となる。よって、電線付き端子と絶縁部との間に形成される樹脂部の厚さを薄くすることが可能となるので、その部分のボイドやヒケの発生を抑制することが可能となる。
【0014】
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、前記樹脂部は、前記開口部に対応する形状の環状部を有し、前記端子は、前記環状部の内側に露出して配置され、前記プレートは、前記コネクタ取付相手に固定された際に前記シール部材を押圧するプレート本体と、前記開口部に対応する形状で前記プレート本体に形成されたプレート孔と、を有し、前記絶縁部は、前記プレート孔の周縁に沿って配置されている。この構成によれば、樹脂部が環状部を有する形状の場合に、その環状に沿って絶縁部を配置することが可能となる。よって、樹脂部とプレートとの界面から浸入する水を原因とする短絡に対し、効果的に対策をとることが可能となる。
【0015】
[6]上記[5]において、前記樹脂部は、前記環状部の側面に、前記端子を収容する端子取付部を有し、前記絶縁部は、前記端子取付部に収容された前記端子と前記プレートとの間に配置されている。この構成によれば、端子とプレートとが近くに配置されたコネクタに対し、端子とプレートとの間に設けた絶縁部によって、樹脂部とプレートとの界面から水が浸入することを原因とする短絡の対策をとることが可能となる。
【0016】
[7]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、前記絶縁部は、一次モールド成型によって前記プレートに形成され、前記樹脂部は、前記端子および前記プレートを樹脂で一体にする二次モールド成型によって形成されている。この構成によれば、絶縁部がモールド成型によってプレートに形成され、さらに、端子とプレートともモールド成型によって一体化される。よって、両者の工法を同じとすることが可能となるので、製造の簡略化に寄与する。
【0017】
[8]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、前記絶縁部は、前記プレートとは別部品で形成され、組付けによって前記プレートに一体化されている。この構成によれば、別工程で製造した絶縁部をプレートに取付けるという簡易な方法によって、絶縁部を有するプレートを製造することが可能となる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。
【0019】
(コネクタ1)
図1に示すように、コネクタ1は、端子2、樹脂部3、およびプレート4を備える。コネクタ1は、端子2およびプレート4をモールド成型することにより、端子2およびプレート4が樹脂部3に一体化された構造となっている。モールド成型は、例えば、金型に端子2およびプレート4をセットして金型内に樹脂を流し込んで硬化させることにより、端子2、樹脂部3、およびプレート4を一体部品として製造する成型方法である。
【0020】
コネクタ1は、端子2が接続される電気端子(図示略)を有するコネクタ取付相手5に取付け固定される。コネクタ取付相手5は、例えば、中空状のケースであって、内部に所定の電気部品(図示略)が搭載されている。コネクタ1は、コネクタ取付相手5に形成された開口部6に端子2の先端が配置されるように、コネクタ取付相手5に固定される。本例の場合、端子2は、複数(本例は、6つ)設けられている。
【0021】
(樹脂部3)
図1から
図3に示すように、樹脂部3は、開口部6に対応する形状の環状部8を有する。本例の場合、環状部8は、開口部6に連通するように形成された孔部9を有する。樹脂部3は、環状部8の側面に、端子2を収容する端子取付部10を有する。本例の場合、端子取付部10は、各々の端子2ごとに複数(本例は、6つ)設けられている。
【0022】
図1に示す通り、コネクタ1は、樹脂部3とコネクタ取付相手5との間にシール部材11を介在させてコネクタ取付相手5に取付け固定されている。シール部材11は、例えば、環状のゴムパッキンである。樹脂部3の裏面には、シール部材11を樹脂部3において位置決めするシール収容凹部12(
図2参照)が形成されている。シール収容凹部12は、孔部9を囲むように環状に形成されている。
【0023】
(プレート4)
図4に示すように、プレート4は、コネクタ取付相手5に固定された際にシール部材11を押圧するプレート本体14と、開口部6に対応する形状でプレート本体14に形成されたプレート孔15と、を有する。プレート4は、コネクタ取付相手5との間に配置されたシール部材11をプレート本体14によって強く押して面圧を確保した状態で、コネクタ取付相手5に取付けられている。プレート4は、金属製である。
【0024】
図1に示す通り、プレート本体14の両側には、プレート4をコネクタ取付相手5に固定するボルトやネジ等の締結部16(1つのみ図示)を挿入するための孔部17が複数形成されている。プレート4は、プレート本体14の両側に形成された孔部17に締結部16の軸部を挿し込むとともに、締結部16の軸部をコネクタ取付相手5の被締結部18に締結することにより、コネクタ取付相手5に固定される。
【0025】
図4に示す通り、プレート4には、プレート表側の樹脂材とプレート裏側の樹脂材とを繋ぐ樹脂を配置させる貫通孔19が形成されている。貫通孔19は、プレート孔15の周縁に沿って複数(本例は、計6つ)配置されている。樹脂部3は、プレート表側の樹脂材とプレート裏側との樹脂材とが、貫通孔19に収容された樹脂材によって繋がれることにより、プレート4に強固に固定される。
【0026】
(端子2)
図5および
図6に示すように、端子2は、電線21の先端に端子2が固定された電線付き端子22である。電線21は、芯線23と、芯線23の周囲を被覆する絶縁被覆24と、を有する。芯線23は、例えば、バスバーや撚り線などが挙げられる。芯線23は、絶縁被覆24の端部から外部に所定量露出されている。絶縁被覆24の外周において端子取付部10の入口位置には、樹脂部3と絶縁被覆24との界面の止水性を確保する熱収縮チューブ25が取付けられている。
【0027】
端子2は、電線21の芯線23が接続された電線接続部26と、コネクタ取付相手5の電気端子(図示略)に固定される接点部27と、を有する。接点部27は、板状の導体が複数回折り曲げられた形状に形成されている。具体的には、接点部27は、電線接続部26から斜め方向に延びる形状に形成された基端部28と、基端部28の端部から下方に略90度折り曲げられた中間部29と、中間部29の端部から上方に略90度折り曲げられた先端部30と、を有する。このように、端子2は、電線接続部26と先端部30とが平面視において互いの軸が重ならないように配置されている。端子2は、樹脂部3の環状部8の内側に露出して配置されている。具体的には、端子2の接点部27の一部が環状部8の内側に露出して配置されている。
【0028】
(絶縁部32)
図5および
図7に示すように、プレート4には、端子2とプレート4とを絶縁する立体形状の絶縁部32が設けられている。絶縁部32は、例えば、樹脂部3にクラック(亀裂)33(
図11参照)などが入ったとしても、端子2とプレート4との間の絶縁を確保するために設けられる。絶縁部32の立体形状とは、例えば、ある程度の厚みを持った形状を言う。絶縁部32は、例えば、樹脂製である。
【0029】
本例の場合、絶縁部32は、プレート孔15の周縁に沿って配置されている。絶縁部32は、例えば、一部品で複数の端子2に対向する形状を有する。具体的には、絶縁部32は、複数の端子2に対向するように帯状に形成されている。
【0030】
絶縁部32としては、例えば、一次モールド成形品が挙げられる。この場合、絶縁部32は、一次モールド成型によってプレート4に形成される。また、樹脂部3は、端子2およびプレート4を一体形成する二次モールド成型によって形成される。すなわち、一次モールド成型によって絶縁部32を有するプレート4が形成されるとともに、そのプレート4と端子2とが二次モールド成型によって一体化される。
【0031】
絶縁部32としては、例えば、プレート4に後付けされる別部品が挙げられる。この場合、絶縁部32は、組付けによってプレート4に一体化されている。すなわち、別の製造工程で絶縁部32が形成されるとともに、その絶縁部32をプレート4に組付けることによって、絶縁部32を有するプレート4が製造される。
【0032】
図8に示すように、絶縁部32は、例えば、端子取付部10に収容された端子2とプレート4との間に配置されている。絶縁部32は、プレート4に取付けられるとともに、端子2に対向するように配置されている。本例の場合、絶縁部32は、端子2の電線接続部26に対向するように配置されている。絶縁部32は、その全体が樹脂部3の内部に隠れるように配置されている。
【0033】
(絶縁部32の段付き形状)
図8に示す通り、電線付き端子22は、絶縁被覆24から芯線23が露出する部位に段状部35を有する形状に形成されている。本例の場合、絶縁部32は、電線付き端子22の段状部35に対応する段付き形状に形成されている。具体的には、絶縁部32は、芯線23が固定された電線接続部26に対向した肉厚部36と、絶縁被覆24に対向した薄肉部37と、を有する。このように、絶縁部32は、対向配置された電線付き端子22の形状に対応するように肉厚部36および薄肉部37を有する段付き形状に形成されている。
【0034】
図9に示すように、肉厚部36は、例えば、プレート4のプレート孔15に沿って形成されることにより、複数の薄肉部37を連結する形状に形成されている。具体的には、肉厚部36は、薄肉部37の方向に突出した突出部位36aと、貫通孔19を避ける凹状部36bと、を有する。突出部位36aは、薄肉部37ごとに形成されている。凹状部36bは、貫通孔19ごとに形成されている。薄肉部37は、肉厚部36よりも低く形成されるとともに、プレート4の端縁に配置される位置まで延設されている。
【0035】
(位置決め部39)
図10に示すように、プレート4と絶縁部32との間には、絶縁部32をプレート4に位置決めする位置決め部39が設けられている。位置決め部39は、例えば、絶縁部32に形成された複数の位置決め突40と、プレート4に形成された複数の位置決め孔41と、を有する。位置決め突40は、絶縁部32の裏面に幅方向に並んで配置されている。位置決め孔41は、各位置決め突40と対応するようにプレート4に貫設されている。
【0036】
(実施形態の作用)
次に、本実施形態のコネクタ1の作用について説明する。
図11に示すように、樹脂部3を有するコネクタ1の場合、例えば、端子2からプレート4まで延びるクラック(亀裂)33が樹脂部3に発生する可能性がある。樹脂部3にこの形状のクラック33が発生した場合、樹脂部3とプレート4との界面から内部に浸入した水がクラック33に到達すると、その水が端子2に至り、端子2とプレート4とがショートしてしまう可能性がある。
【0037】
本例の場合、プレート4に絶縁部32を設けたので、仮に樹脂部3とプレート4の界面から水が浸入しても、この水を絶縁部32で堰き止めてクラック33に至らなくすることが可能となる。すなわち、樹脂部3の内部に浸入した水が端子2に至り難くなる。よって、端子2とプレート4との絶縁性が確保される。
【0038】
また、本例の場合、絶縁部32を立体形状としたので、その分、樹脂部3を肉抜き形成することが可能となる。具体的には、電線付き端子22の段状部35の形状に合わせて、絶縁部32の形状を肉厚部36および薄肉部37を有する形状としたので、この部分において絶縁部32を肉抜きすることが可能となる。このため、端子2とプレート4とを樹脂で一体化したコネクタ1をモールド成型するとき、樹脂部3において電線付き端子22に対向する部位に、ボイドやヒケを生じ難くすることも可能となる。
【0039】
(実施形態の効果)
上記実施形態のコネクタ1によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)コネクタ1は、端子2、樹脂部3、およびプレート4を備える。樹脂部3は、モールド成型によって端子2と一体形成されるとともに、コネクタ取付相手5に形成された開口部6に端子2が位置するように開口部6に配置される。プレート4は、開口部6において樹脂部3とコネクタ取付相手5との間を止水するシール部材11の面圧を確保するために、モールド成型によって端子2とともに樹脂部3に一体形成されている。プレート4には、端子2とプレート4とを絶縁する立体形状の絶縁部32が設けられている。
【0040】
本構成によれば、端子2とプレート4との間に立体形状の絶縁部32を設けたので、樹脂部3に端子2からプレート4に至るクラック33が形成されてしまった際に、樹脂部3とプレート4と界面から水が浸入しても、絶縁部32によって水がクラック33に到達することが防止される。これにより、樹脂部3とプレート4との界面からコネクタ1の内部に浸入した水がクラック33を介して端子2に到達してしまう状況が生じ難くなる。従って、樹脂部3とプレート4との界面から浸入した水を原因とする端子2とプレート4との短絡が生じ難い。よって、コネクタ1において絶縁の信頼性を向上することができる。
【0041】
(2)端子2は、複数設けられている。絶縁部32は、一部品で複数の端子2に対向する形状を有する。この構成によれば、端子2が複数であっても、絶縁部32が単一の部品であるので、コネクタ1の構造の簡素化に寄与する。
【0042】
(3)プレート4と絶縁部32との間には、絶縁部32をプレート4に位置決めする位置決め部39が設けられている。この構成によれば、絶縁部32を位置決め部39によってプレート4に固定することが可能となるので、絶縁部32の位置ずれを生じ難くすることができる。
【0043】
(4)端子2は、電線付き端子22である。絶縁部32は、対向配置された電線付き端子22の形状に対応する形状の肉厚部36および薄肉部37を有する。この構成によれば、電線付き端子22が例えば段差形状の段状部35を有する場合に、その段状部35に応じた肉厚部36および薄肉部37が絶縁部32に形成される。このため、電線付き端子22と絶縁部32との間隔を一定にすることによって、その部分において樹脂部3を肉抜きすることが可能となる。よって、電線付き端子22と絶縁部32との間に形成される樹脂部3の厚さを薄くすることが可能となるので、その部分のボイドやヒケの発生を抑制することができる。
【0044】
(5)樹脂部3は、開口部6に対応する形状の環状部8を有する。端子2は、環状部8の内側に露出して配置されている。プレート4は、コネクタ取付相手5に固定された際にシール部材11を押圧するプレート本体14と、開口部6に対応する形状でプレート本体14に形成されたプレート孔15と、を有する。絶縁部32は、プレート孔15の周縁に沿って配置されている。この構成によれば、樹脂部3が環状部8を有する形状の場合に、その環状に沿って絶縁部32を配置することが可能となる。よって、樹脂部3とプレート4との界面から浸入する水を原因とする短絡に対し、効果的に対策をとることができる。
【0045】
(6)樹脂部3は、環状部8の側面に、端子2を収容する端子取付部10を有する。絶縁部32は、端子取付部10に収容された端子2とプレート4との間に配置されている。この構成によれば、端子2とプレート4とが近くに配置されたコネクタ1に対し、端子2とプレート4との間に設けた絶縁部32によって、樹脂部3とプレート4との界面から水が浸入することを原因とする短絡の対策をとることができる。
【0046】
(7)絶縁部32は、一次モールド成型によってプレート4に形成されている。樹脂部3は、端子2およびプレート4を樹脂で一体にする二次モールド成型によって形成されている。この構成によれば、絶縁部32がモールド成型によってプレート4に形成され、さらに、端子2とプレート4ともモールド成型によって一体化される。よって、両者の工法を同じとすることが可能となるので、製造の簡略化に寄与する。
【0047】
(8)絶縁部32は、プレート4とは別部品で形成され、組付けによってプレート4に一体化されている。この構成によれば、別工程で製造した絶縁部32をプレート4に取付けるという簡易な方法によって、絶縁部32を有するプレート4を製造することができる。
【0048】
(他の実施形態)
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0049】
・絶縁部32は、プレート孔15の全周に亘って形成されていてもよい。
・絶縁部32は、プレート4の表面のみに形成されることに限らず、裏面にも形成されてもよい。
【0050】
・絶縁部32は、樹脂部3とプレート4との界面の一部にのみ形成されることに限らず、界面全体(略全体も含む)に形成されてもよい。
・絶縁部32は、肉厚部36と薄肉部37とを有する形状に限らず、厚さが一律の形状を有していてもよい。
【0051】
・肉厚部36は、薄肉部37ごとに形成されてもよい。すなわち、絶縁部32は、端子2ごとに分けられた形状に形成されてもよい。
・薄肉部37は、肉厚部36と同様に1つのみ形成される形状でもよい。
【0052】
・端子2は、樹脂部3(具体的には、環状部8)の側部に配置されることに限らず、例えば樹脂部3(具体的には、環状部8)の上部に配置されてもよい。
・端子2の個数は、複数に限定されず、1つとしてもよい。
【0053】
・樹脂部3は、孔部9を有さない形状としてもよい。この場合、樹脂部3は、コネクタ取付相手5の開口部6を閉じるようにコネクタ取付相手5に固定される。
・プレート4をコネクタ取付相手5に締結部16によって固定する際の締結部16の数は、実施例以外の数に適宜変更してもよい。
【0054】
・プレート4の孔部17の位置は、実施例以外の位置に適宜変更してもよい。
・プレート4をコネクタ取付相手5に固定する構造は、締結部16を用いた構造に限らず、例えば、ロック片を突起部分に係合する構造を用いてもよい。
【0055】
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0056】
1 コネクタ
2 端子
3 樹脂部
4 プレート
5 コネクタ取付相手
6 開口部
8 環状部
9 孔部
10 端子取付部
11 シール部材
12 シール収容凹部
14 プレート本体
15 プレート孔
16 締結部
17 孔部
18 被締結部
19 貫通孔
21 電線
22 電線付き端子
23 芯線
24 絶縁被覆
25 熱収縮チューブ
26 電線接続部
27 接点部
28 基端部
29 中間部
30 先端部
32 絶縁部
33 クラック
35 段状部
36 肉厚部
36a 突出部位
36b 凹状部
37 薄肉部
39 位置決め部
40 位置決め突
41 位置決め孔