(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140539
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20250919BHJP
【FI】
H01R13/42 D
H01R13/42 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040003
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山上 貴布
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE07
5E087FF07
5E087FF13
5E087GG26
5E087GG32
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR36
(57)【要約】
【課題】端子の位置ずれを抑制できるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、端子20と、端子20を保持するハウジング30とを備える。端子20は、第1軸線Xに沿って延びる雌端子部22と、第1軸線Xと交差する第2軸線Yに沿って延びる電線接続部21と、を有する。雌端子部22は、電線接続部21と接続される溝状の接続部23と、接続部23の端部から第1軸線Xに沿った一方向である前方向X1に向かって延びる筒状部24と、を有する。接続部23は、前方向X1の反対方向である後方向X2に開口している。ハウジング30は、端子20が収容される端子収容部37を有するハウジング本体31と、ハウジング本体31に取り付けられるカバー部材50と、を有する。カバー部材50は、接続部23の内部に挿入されるとともに接続部23と第2軸線Yにおいて係合可能に形成された突起部52を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と、
前記端子を保持するハウジングと、
前記ハウジングの内部に収容されるとともに、第1軸線に沿って第1位置と第2位置とに移動可能に設けられたスライダと、
前記スライダを付勢するスプリングと、を備え、
前記端子は、前記第1軸線に沿って延びる雌端子部と、前記第1軸線と交差する第2軸線に沿って延びる電線接続部と、を有し、
前記雌端子部は、前記電線接続部と接続される溝状の接続部と、前記接続部の端部から前記第1軸線に沿った一方向である第1方向に向かって延びる筒状部と、を有し、
前記接続部は、前記第1方向の反対方向である第1反対方向に開口しており、
前記ハウジングは、
前記端子が収容される端子収容部を有するハウジング本体と、
前記ハウジング本体に取り付けられるカバー部材と、を有し、
前記カバー部材は、前記接続部の内部に挿入されるとともに前記接続部と前記第2軸線において係合可能に形成された突起部を有する、コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジング本体は、前記第1反対方向に開口する箱状に形成されており、
前記カバー部材は、前記ハウジング本体の前記第1反対方向の開口を塞ぐ本体部と、前記本体部から前記第1方向に向かって突出する前記突起部と、を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記接続部は、基部と、前記基部のうち前記第2軸線に沿った一方向である第2方向の端部に設けられた第1壁部と、前記基部のうち前記第2方向の反対方向である第2反対方向の端部に設けられた第2壁部とを有し、
前記第1壁部および前記第2壁部の各々は、前記第1方向および前記第2方向の双方と交差する第3方向に向かって突出しており、
前記突起部は、前記第2方向において前記第1壁部と係合可能に形成されるとともに、前記第2反対方向において前記第2壁部と係合可能に形成されている、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記突起部から前記第2反対方向に向かって延びる回転規制部を有し、
前記回転規制部は、前記第1軸線を中心とする前記端子の回転方向において前記第2壁部と係合可能に形成されている、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記接続部は、前記第1壁部のうち前記第1反対方向の端部に設けられた切欠部を有し、
前記突起部は、前記本体部に接続された円柱状の基端部と、前記基端部から前記第1方向に向かって突出する円柱状の先端部と、を有し、
前記先端部の外径は、前記基端部の外径よりも小さく形成されており、
前記基端部の前記第1方向の端面は、前記切欠部により露出される前記第1壁部の前記第1反対方向の端面と前記第1軸線において係合可能に形成されている、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第2壁部は、前記第3方向において前記回転規制部と対向しており、
前記突起部は、前記先端部から前記第3方向に向かって延びる係合面を有し、
前記第1壁部は、前記先端部の外周面に沿った湾曲形状に形成されており、
前記係合面は、前記回転方向において前記第1壁部の周方向の端面と係合可能に形成されている、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記カバー部材は、前記本体部から前記第1方向に向かって突出する位置規制部を有し、
前記位置規制部は、前記第1軸線において前記電線接続部と係合可能に形成されている、請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、エアバッグインフレータ等の制御に用いられるコネクタ、所謂スクイブコネクタが搭載される(例えば、特許文献1参照)。この種のコネクタは、端子と、端子を保持するハウジングと、ハウジングの内部に収容されたスライダと、スライダを付勢するスプリングとを備えている。このコネクタでは、スプリングの付勢力によりスライダをスライドさせる方式によって、コネクタと相手コネクタとの嵌合保証を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記コネクタにおいては、ハウジングの内部における端子の位置ずれを抑制することが望まれている。
本開示の目的は、ハウジングの内部における端子の位置ずれを抑制できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のコネクタは、端子と、前記端子を保持するハウジングと、前記ハウジングの内部に収容されるとともに、第1軸線に沿って第1位置と第2位置とに移動可能に設けられたスライダと、前記スライダを付勢するスプリングと、を備え、前記端子は、前記第1軸線に沿って延びる雌端子部と、前記第1軸線と交差する第2軸線に沿って延びる電線接続部と、を有し、前記雌端子部は、前記電線接続部と接続される溝状の接続部と、前記接続部の端部から前記第1軸線に沿った一方向である第1方向に向かって延びる筒状部と、を有し、前記接続部は、前記第1方向の反対方向である第1反対方向に開口しており、前記ハウジングは、前記端子が収容される端子収容部を有するハウジング本体と、前記ハウジング本体に取り付けられるカバー部材と、を有し、前記カバー部材は、前記接続部の内部に挿入されるとともに前記接続部と前記第2軸線において係合可能に形成された突起部を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示のコネクタによれば、端子の位置ずれを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態のコネクタおよび相手コネクタを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のコネクタを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のコネクタの一部を示す断面斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のコネクタの一部を示す平面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態のコネクタを示す断面図(
図4における5-5線断面図)である。
【
図6】
図6は、一実施形態のカバー部材を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、一実施形態のコネクタを示す断面図(
図4における7-7線断面図)である。
【
図8】
図8は、一実施形態のコネクタを示す断面図(
図5における8-8線断面図)である。
【
図9】
図9は、一実施形態のコネクタを示す断面図(
図4における9-9線断面図)である。
【
図10】
図10は、一実施形態のコネクタを示す断面図である。
【
図11】
図11は、一実施形態のコネクタおよび相手コネクタを示す断面図(
図4における11-11線断面図)である。
【
図12】
図12は、一実施形態のコネクタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のコネクタは、端子と、前記端子を保持するハウジングと、前記ハウジングの内部に収容されるとともに、第1軸線に沿って第1位置と第2位置とに移動可能に設けられたスライダと、前記スライダを付勢するスプリングと、を備え、前記端子は、前記第1軸線に沿って延びる雌端子部と、前記第1軸線と交差する第2軸線に沿って延びる電線接続部と、を有し、前記雌端子部は、前記電線接続部と接続される溝状の接続部と、前記接続部の端部から前記第1軸線に沿った一方向である第1方向に向かって延びる筒状部と、を有し、前記接続部は、前記第1方向の反対方向である第1反対方向に開口しており、前記ハウジングは、前記端子が収容される端子収容部を有するハウジング本体と、前記ハウジング本体に取り付けられるカバー部材と、を有し、前記カバー部材は、前記接続部の内部に挿入されるとともに前記接続部と前記第2軸線において係合可能に形成された突起部を有する。
【0009】
この構成によれば、端子収容部に端子が収容されたハウジング本体に対してカバー部材が取り付けられると、カバー部材の突起部が溝状の接続部に挿入される。このとき、突起部が、第2軸線において接続部と係合可能に設けられる。これら接続部と突起部との係合により、ハウジングの内部において端子が第2軸線に沿って移動することを好適に抑制できる。この結果、ハウジングの内部における端子の位置ずれを好適に抑制できる。
【0010】
[2]上記[1]において、前記ハウジング本体は、前記第1反対方向に開口する箱状に形成されており、前記カバー部材は、前記ハウジング本体の前記第1反対方向の開口を塞ぐ本体部と、前記本体部から前記第1方向に向かって突出する前記突起部と、を有してもよい。
【0011】
この構成によれば、ハウジング本体にカバー部材が取り付けられることにより、ハウジングが、端子の外周を包囲する筒状に形成される。また、ハウジング本体にカバー部材が取り付けられることにより、第1反対方向に開口する接続部に対してカバー部材の突起部を第1方向に沿って好適に挿入することができる。これにより、第2軸線において接続部と突起部とを互いに係合させることができるため、ハウジングの内部における端子の移動を好適に抑制できる。
【0012】
[3]上記[2]において、前記接続部は、基部と、前記基部のうち前記第2軸線に沿った一方向である第2方向の端部に設けられた第1壁部と、前記基部のうち前記第2方向の反対方向である第2反対方向の端部に設けられた第2壁部とを有し、前記第1壁部および前記第2壁部の各々は、前記第1方向および前記第2方向の双方と交差する第3方向に向かって突出しており、前記突起部は、前記第2方向において前記第1壁部と係合可能に形成されるとともに、前記第2反対方向において前記第2壁部と係合可能に形成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、突起部が、第2方向において接続部の第1壁部と係合可能に設けられる。これら突起部と第1壁部との係合により、ハウジングの内部において端子が第2反対方向に向かって移動することを好適に抑制できる。また、突起部が、第2反対方向において接続部の第2壁部と係合可能に設けられる。これら突起部と第2壁部との係合により、ハウジングの内部において端子が第2方向に向かって移動することを好適に抑制できる。このように、突起部と第1壁部および第2壁部との係合により、ハウジングの内部において端子が第2方向および第2反対方向に移動することを好適に抑制できる。この結果、ハウジングの内部における端子の位置ずれを好適に抑制できる。
【0014】
[4]上記[3]において、前記カバー部材は、前記突起部から前記第2反対方向に向かって延びる回転規制部を有し、前記回転規制部は、前記第1軸線を中心とする前記端子の回転方向において前記第2壁部と係合可能に形成されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、カバー部材の回転規制部が、第2壁部に対して、第1軸線を中心とする回転方向に係合可能に形成される。この回転規制部に第2壁部が係合されることにより、第1軸線を中心とする端子の回転を規制することができる。これにより、端子の回転に伴う端子の位置ずれを好適に抑制できる。
【0016】
[5]上記[4]において、前記接続部は、前記第1壁部のうち前記第1反対方向の端部に設けられた切欠部を有し、前記突起部は、前記本体部に接続された円柱状の基端部と、前記基端部から前記第1方向に向かって突出する円柱状の先端部と、を有し、前記先端部の外径は、前記基端部の外径よりも小さく形成されており、前記基端部の前記第1方向の端面は、前記切欠部により露出される前記第1壁部の前記第1反対方向の端面と前記第1軸線において係合可能に形成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、突起部の基端部が、第1軸線において接続部の第1壁部と係合可能に設けられる。これら基端部と第1壁部との係合により、ハウジングの内部において端子が第1反対方向に向かって移動することを好適に抑制できる。この結果、ハウジングの内部における端子の位置ずれを好適に抑制できる。
【0018】
[6]上記[5]において、前記第2壁部は、前記第3方向において前記回転規制部と対向しており、前記突起部は、前記先端部から前記第3方向に向かって延びる係合面を有し、前記第1壁部は、前記先端部の外周面に沿った湾曲形状に形成されており、前記係合面は、前記回転方向において前記第1壁部の周方向の端面と係合可能に形成されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、カバー部材の係合面が、第1壁部の周方向の端面に対して、第1軸線を中心とする回転方向に係合可能に形成される。この係合面に第1壁部が係合されることにより、第1軸線を中心とする端子の回転を規制することができる。これにより、端子の回転に伴う端子の位置ずれを好適に抑制できる。
【0020】
[7]上記[2]から[6]のいずれかにおいて、前記カバー部材は、前記本体部から前記第1方向に向かって突出する位置規制部を有し、前記位置規制部は、前記第1軸線において前記電線接続部と係合可能に形成されていてもよい。
【0021】
この構成によれば、位置規制部が、第1軸線において電線接続部と係合可能に設けられる。これら位置規制部と電線接続部との係合により、ハウジングの内部において端子が第1反対方向に向かって移動することを好適に抑制できる。この結果、ハウジングの内部における端子の位置ずれを好適に抑制できる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「直交」や「平行」は、厳密に直交や平行の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね直交や平行の場合も含まれる。本明細書の説明で使用される「筒状」は、周方向全周にわたって連続して周壁が形成されたものだけではなく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものや、C字状やU字状のように周方向の一部に切り欠きなどを有するものも含む。なお、「筒状」の形状には、円形、楕円形、および尖ったまたは丸い角を有する多角形が含まれるが、これらに限定されない。本明細書における「対向」とは、面同士または部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。本明細書における「対向」とは、2つの部材が互いに離れている場合だけでなく、2つの部材が互いに接触している場合も含む。また、本明細書における「第1」「第2」「第3」等の用語は、単に対象物を区別するために用いられており、対象物を順位づけするものではない。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0023】
(コネクタ10の全体構成)
図1に示すように、コネクタ10は、相手コネクタ200に嵌合可能に構成されている。コネクタ10は、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車などの図示しない車両に設けられるものである。また、コネクタ10は、車両のシートベルトプリテンショナーやエアバッグインフレータ等の制御に用いられるコネクタ、所謂スクイブコネクタである。
【0024】
各図面には、第1軸線Xと、第1軸線Xと直交する第2軸線Yと、第1軸線Xおよび第2軸線Yの双方と直交する第3軸線Zとを図示している。また、各図面には、第1軸線Xに沿った一方向である前方向X1と、第1軸線Xに沿った他方向であって前方向X1の反対方向である後方向X2とを図示している。ここで、前方向X1は、相手コネクタ200に対するコネクタ10の嵌合方向の前方になる。各図面には、第2軸線Yに沿った一方向である上方向Y1と、第2軸線Yに沿った他方向であって上方向Y1の反対方向である下方向Y2とを図示している。各図面には、第3軸線Zに沿った一方向である第1幅方向Z1と、第3軸線Zに沿った他方向であって第1幅方向Z1の反対方向である第2幅方向Z2とを図示している。なお、各図面における各方向は、必ずしもコネクタ10および相手コネクタ200の使用時の姿勢を表すものではない。また、相手コネクタ200における方向の説明は、相手コネクタ200がコネクタ10に嵌合された状態を基準として記載する。
【0025】
(相手コネクタ200の構成)
相手コネクタ200は、相手端子201と、相手端子201を保持する相手ハウジング202とを有している。相手ハウジング202は、コネクタ10のハウジング30に嵌合される相手側嵌合筒部203と、コネクタ10と相手コネクタ200との嵌合を保証する相手側嵌合保証部204と、を有している。相手側嵌合保証部204は、相手側嵌合筒部203の内部に設けられている。相手端子201は、相手側嵌合筒部203の内部に設けられている。
【0026】
(コネクタ10の構成)
図2に示すように、コネクタ10は、端子20と、ハウジング30と、スライダ60と、スプリング70と、フェライトコア80と、を備えている。本実施形態のコネクタ10は、2つの端子20を備えている。
【0027】
(端子20の構成)
2つの端子20は、第3軸線Zに沿って並んで設けられている。各端子20は、電線接続部21と、雌端子部22とを有している。電線接続部21は、第2軸線Yに沿って延びている。雌端子部22は、第1軸線Xに沿って延びている。各端子20は、全体としてL字状に形成されている。各端子20は、金属製である。
【0028】
図3に示すように、電線接続部21は、電線90に接続されている。ここで、電線90は、導電性を有する芯線91とその芯線91の外周を被覆する絶縁被覆92とを有する被覆電線である。電線90の端部では、芯線91の端部が絶縁被覆92の端部から露出されている。
【0029】
電線接続部21は、絶縁被覆92から露出された芯線91の端部と電気的に接続されている。電線接続部21は、基部21Aと、基部21Aから第1幅方向Z1に向かって突出する一対の側壁21Bと、芯線接続部21Cと、被覆接続部21Dとを有している。
【0030】
基部21Aは、第2軸線Yに沿って帯状に延びている。一対の側壁21Bは、第1軸線Xにおいて互いに対向するように設けられている。
芯線接続部21Cは、絶縁被覆92から露出された芯線91の端部と接続されている。芯線接続部21Cと芯線91との接合は、例えば、圧着や超音波溶接等により行うことができる。本実施形態の芯線接続部21Cは、圧着により芯線91に接合されている。被覆接続部21Dは、絶縁被覆92の端部と接続されている。本実施形態の被覆接続部21Dは、絶縁被覆92の端部に圧着されている。
【0031】
電線接続部21のうち芯線接続部21Cよりも上方向Y1側の部分は、基部21Aと一対の側壁21Bとによって、第1幅方向Z1に開口する溝状に形成されている。
雌端子部22は、電線接続部21の上方向Y1の端部に接続されている。雌端子部22は、電線接続部21の長さ方向と直交する方向に延びている。雌端子部22は、電線接続部21と接続される接続部23と、筒状部24とを有している。
【0032】
接続部23は、第1幅方向Z1に開口する溝状に形成されている。接続部23は、前方向X1に開口するとともに、後方向X2に開口している。接続部23は、電線接続部21から前方向X1に延びるとともに、電線接続部21から後方向X2に延びている。
【0033】
接続部23は、基部25と、基部25から第1幅方向Z1に向かって突出する第1壁部26および第2壁部27とを有している。
基部25は、第1軸線Xに沿って帯状に延びている。基部25は、基部21Aと連続して一体に形成されている。
【0034】
第1壁部26は、基部25の上方向Y1の端部に設けられている。第1壁部26は、基部25から湾曲して突出するように形成されている。第1壁部26は、第1軸線Xに沿って延びている。第1壁部26には、切欠部28が設けられている。切欠部28は、第1壁部26の後方向X2の端部を切り欠くように形成されている。
【0035】
第2壁部27は、基部25の下方向Y2の端部に設けられている。第2壁部27は、一対の側壁21Bのそれぞれと連続して一体に形成されている。第2壁部27は、基部25から第3軸線Zに沿って直線状に突出している。第2壁部27は、第1軸線Xに沿って延びている。第2壁部27は、接続部23の内部空間と電線接続部21の内部空間とが互いに連通されるように一部が切り欠かれて形成されている。
【0036】
筒状部24は、接続部23の前方向X1の端部から前方向X1に向かって延びる筒状に形成されている。筒状部24には、
図1に示した相手端子201が挿入される。筒状部24の内部空間は、接続部23の内部空間と連通している。
【0037】
(ハウジング30の構成)
図2に示すように、ハウジング30は、ハウジング本体31と、ハウジング本体31に取り付け可能に形成されたカバー部材50とを有している。ハウジング本体31は、後方向X2に開口する箱状に形成されている。カバー部材50は、ハウジング本体31の開口を塞ぐようにハウジング本体31に取り付けられている。ハウジング本体31とカバー部材50とは別部品である。ハウジング本体31およびカバー部材50の各々は、樹脂製である。
【0038】
ハウジング30は、ハウジング本体31とカバー部材50とを合体させることにより、端子20とスライダ60とスプリング70とを包囲する筒状に形成されている。換言すると、端子20とスライダ60とスプリング70とは、ハウジング本体31とカバー部材50とによって形成されるハウジング30の内部空間に収容されている。
【0039】
図2および
図4に示すように、ハウジング本体31は、基部32と、基部32から後方向X2に向かって突出する周壁33,34,35,36とを有している。ハウジング本体31は、端子20を収容する端子収容部37と、フェライトコア80を収容するフェライト収容部38とを有している。ハウジング本体31は、スライダ60が取り付けられる取付部40と、スプリング70を収容するスプリング収容部45とを有している。
図4に示すように、本実施形態のハウジング本体31は、2つのスプリング収容部45を有している。なお、
図4では、図面の簡略化のために、カバー部材50の図示を省略している。
【0040】
図2に示すように、基部32は、平板状に形成されている。周壁33は、基部32の上方向Y1の端部に設けられている。周壁34は、基部32の下方向Y2の端部に設けられている。周壁33,34は、第3軸線Zに沿って延びている。周壁35は、基部32の第1幅方向Z1の端部に設けられている。周壁36は、基部32の第2幅方向Z2の端部に設けられている。周壁35,36は、第2軸線Yに沿って延びている。
【0041】
端子収容部37には、端子20が前方向X1に沿って挿入される。端子収容部37は、第3軸線Zに沿って並ぶ2つの端子20を保持可能に形成されている。
図5に示すように、端子収容部37は、基部32から後方向X2に向かって突出する筒状部37Aと、基部32から前方向X1に向かって突出する筒状部37Bとを有している。筒状部37Aの内部空間と筒状部37Bの内部空間とは互いに連通されている。筒状部37A,37Bには、端子20の雌端子部22が収容される。
【0042】
図2に示すように、端子収容部37は、端子20の電線接続部21が収容される収容溝37Cを有している。収容溝37Cは、筒状部37Aから下方向Y2に沿って延びている。収容溝37Cの内部空間は、筒状部37Aの内部空間に連通されている。
【0043】
フェライト収容部38には、電線90の外周に取り付けられたフェライトコア80が前方向X1に沿って挿入される。フェライト収容部38は、端子収容部37の収容溝37Cから下方向Y2に沿って延びている。フェライト収容部38の内部空間は、収容溝37Cの内部空間に連通されている。
【0044】
取付部40には、スライダ60が前方向X1に沿って取り付けられる。取付部40は、ハウジング30の内部空間において第1軸線Xに沿って移動可能にスライダ60を保持している。取付部40は、筒状部37Aの外周面に設けられたガイド溝41と、周壁35,36に設けられた切欠部43とを有している。
【0045】
ガイド溝41には、スライダ60のガイド凸部69が前方向X1に沿って挿入される。ガイド溝41は、第1軸線Xに沿って延びている。ガイド溝41は、筒状部37Aの軸方向の全長にわたって延びている。
【0046】
切欠部43は、周壁35,36の各々に設けられている。切欠部43は、周壁35,36の上方向Y1の端部を切り欠くように形成されている。
2つのスプリング収容部45は、第3軸線Zの両端部にそれぞれ設けられている。各スプリング収容部45には、スプリング70のアーム71が前方向X1に沿って挿入される。
図4に示すように、スプリング収容部45は、第2軸線Yに沿って延びる溝状に形成されている。第1幅方向Z1の端部に設けられたスプリング収容部45は、フェライト収容部38の外周面と周壁34と周壁35とによって囲まれて形成されている。第2幅方向Z2の端部に設けられたスプリング収容部45は、フェライト収容部38の外周面と周壁34と周壁36とによって囲まれて形成されている。
【0047】
図1に示すように、ハウジング本体31は、相手ハウジング202の相手側嵌合筒部203に嵌合する嵌合筒部46を有している。嵌合筒部46は、相手側嵌合筒部203の内側に嵌合する。
図2に示すように、嵌合筒部46は、基部32から前方向X1に向かって突出している。
【0048】
図4に示すように、ハウジング本体31は、周壁33,35,36に設けられた係合部47を有している。係合部47は、周壁33,35,36の外面から外方に突出する係合突起である。周壁33には1つの係合部47が設けられている。周壁35,36の各々には2つの係合部47が設けられている。
【0049】
(カバー部材50の構成)
図1に示すように、カバー部材50は、ハウジング本体31に取り付けられている。カバー部材50は、ハウジング本体31に着脱可能に形成されている。
【0050】
図6に示すように、カバー部材50は、本体部51と、本体部51から前方向X1に向かって突出する突起部52と、突起部52から下方向Y2に向かって突出する回転規制部53とを有している。カバー部材50は、本体部51から前方向X1に向かって突出する位置規制部54と、本体部51から前方向X1に向かって突出する係合部55とを有している。本実施形態のカバー部材50は、2つの端子20(
図2参照)にそれぞれ対応する2つの突起部52と2つの回転規制部53と2つの位置規制部54とを有している。
【0051】
図2に示すように、本体部51は、平板状に形成されている。本体部51は、ハウジング本体31の後方向X2の開口を塞ぐように形成されている。
図5に示すように、各突起部52は、カバー部材50の内面、つまり本体部51の前方向X1の端面から端子20に向かって突出している。各突起部52は、端子20の接続部23の内部空間に挿入される。各突起部52は、第2軸線Yにおいて接続部23と係合可能に形成されている。各突起部52は、接続部23の内部空間に挿入されることで、端子20の上方向Y1への移動および端子20の下方向Y2への移動を規制する機能を有している。
【0052】
図6に示すように、各突起部52は、本体部51に接続された基端部52Aと、基端部52Aから前方向X1に向かって突出する先端部52Bとを有している。基端部52Aは、全体として円柱状に形成されている。先端部52Bは、全体として円柱状に形成されている。基端部52Aの外径は、先端部52Bの外径よりも大きい。このため、基端部52Aと先端部52Bの境界部分には段差が形成されている。
【0053】
図5に示すように、基端部52Aの一部は、接続部23の内部空間に挿入されている。基端部52Aの前方向X1の端面は、接続部23の第1壁部26の後方向X2の端面と対向している。具体的には、基端部52Aの前方向X1の端面は、切欠部28により露出された第1壁部26の後方向X2の端面と第1軸線Xにおいて係合可能に形成されている。基端部52Aは、下方向Y2において第2壁部27と係合可能に形成されている。
【0054】
先端部52Bは、接続部23の内部空間に全体が挿入されている。先端部52Bは、上方向Y1において第1壁部26と係合可能に形成されている。先端部52Bは、下方向Y2において第2壁部27と係合可能に形成されている。このように、先端部52Bは、第2軸線Yに沿った両方向、つまり上方向Y1および下方向Y2において接続部23と係合可能に形成されている。なお、
図3に示すように、第1壁部26は、円柱状をなす先端部52Bの外周面に沿って湾曲する湾曲形状に形成されている。
【0055】
各回転規制部53は、各突起部52の先端部52Bから下方向Y2に向かって突出している。各回転規制部53は、先端部52Bよりも第1幅方向Z1に向かって突出するように形成されている。これにより、回転規制部53と先端部52Bとの境界部分には段差が形成されるとともに、上方向Y1に向く係合面53Aが形成されている。係合面53Aは、先端部52Bから第1幅方向Z1に向かって延びるとともに、第1軸線Xに沿って延びている。
【0056】
図7および
図8に示すように、各回転規制部53は、第3軸線Zにおいて第2壁部27と対向するように設けられている。
図8に示すように、各回転規制部53は、第1軸線Xを中心とする端子20の回転方向において第2壁部27と係合可能に形成されている。各回転規制部53は、第1軸線Xを中心とする一方の回転方向、ここでは時計回り(右回り)方向への端子20の回転を規制する機能を有している。係合面53Aは、第1軸線Xを中心とする端子20の回転方向において第1壁部26の周方向の端面と係合可能に形成されている。係合面53Aは、第1軸線Xを中心とする一方の回転方向、ここでは反時計周り(左回り)方向への端子20の回転を規制する機能を有している。なお、端子20がハウジング本体31の端子収容部37に収容された状態では、端子収容部37を構成する壁部によっても反時計回り方向への端子20の回転が規制されている。
【0057】
図5に示すように、各位置規制部54は、第1軸線Xにおいて各端子20の電線接続部21と対向するように設けられている。各位置規制部54は、第1軸線Xにおいて各電線接続部21と係合可能に形成されている。各位置規制部54は、各電線接続部21に面接触可能に設けられている。各位置規制部54は、各電線接続部21を前方向X1に向かって押圧可能に形成されている。各位置規制部54は、端子20の後方向X2への移動を規制する機能を有している。各位置規制部54は、第2軸線Yに沿って延びている。
図6に示すように、各位置規制部54は、回転規制部53と連続して一体に形成されている。
【0058】
図1に示すように、本実施形態のカバー部材50は、ハウジング本体31の係合部47に対応する3つの係合部55を有している。各係合部55は、本体部51からハウジング本体31に向かって突出している。各係合部55は、弾性変形可能に形成された弾性片である。各係合部55は、枠体に形成されている。各係合部55は、係合部47と係合可能な係合孔56を有している。係合部47と係合孔56とは、係合部55の弾性変形を利用したスナップフィット方式により互いに係合される。係合部47と係合孔56との係合により、ハウジング本体31とカバー部材50とが合体した状態が維持される。
【0059】
(スライダ60の構成)
図2に示すように、スライダ60は、本体部61と、スプリング収容部63と、嵌合保証部68と、ガイド凸部69とを有している。スライダ60は、本体部61とスプリング収容部63と嵌合保証部68とガイド凸部69とが一体に形成された単一部品である。スライダ60は、樹脂製である。
【0060】
図9から
図12に示すように、スライダ60は、ハウジング30の内部に収容されている。スライダ60は、第1軸線Xに沿って第1位置(
図9および
図12参照)と第2位置(
図10および
図11参照)とに移動可能にハウジング本体31により保持されている。
図9および
図12に示すように、第1位置は、本体部61が第1軸線Xにおいてハウジング本体31の基部32に係合された位置である。
図10および
図11に示すように、第2位置は、相手ハウジング202により後方向X2に向かってスライダ60が押圧された状態の位置である。第2位置は、第1位置から後方向X2に向かった位置、具体的には第1位置よりもカバー部材50に近い位置である。
【0061】
ハウジング30と相手ハウジング202とが嵌合される際には、相手ハウジング202によりスライダ60が後方向X2に向かって押圧される。これにより、スライダ60は、スプリング70の付勢力に抗してスプリング70を第1軸線Xに圧縮させつつ、第1軸線Xに沿って第1位置から第2位置に平行移動する。
図11に示すように、スライダ60が第2位置に配置された状態で相手ハウジング202によりスライダ60が更に押圧されると、嵌合保証部68が開口を広げるように弾性変形し、相手側嵌合保証部204が嵌合保証部68の内部に進入する。これにより、スライダ60の前方向X1への移動が許容される。そして、コネクタ10と相手コネクタ200とが正規に嵌合されると、
図12に示すように、第2位置に配置されたスライダ60がスプリング70により第1位置に向けて付勢され、スライダ60が第1軸線Xに沿って第2位置から第1位置に平行移動する。
【0062】
図2に示すように、スライダ60の本体部61は、本体部61を第1軸線Xに貫通する貫通孔62を有している。貫通孔62には、ハウジング本体31の端子収容部37が挿入されている。
【0063】
スプリング収容部63は、スプリング70の一部を収容可能に形成されている。スプリング収容部63は、前方向X1から見た平面形状がU字状に形成されている。
図11に示すように、嵌合保証部68は、2つの弾性片68Aを有している。2つの弾性片68Aは、第3軸線Zにおいて互いに対向するように設けられている。各弾性片68Aは、本体部61から前方向X1に向かって延びている。各弾性片68Aは、本体部61に接続された基端を固定端とし、基端とは反対側の先端を自由端とする片持ち状に形成されている。各弾性片68Aは、弾性変形による第3軸線Zへの撓みが可能に構成されている。各弾性片68Aは、ハウジング30と相手ハウジング202とが嵌合される際に、相手側嵌合保証部204により後方向X2に向かって押圧される。2つの弾性片68Aは、相手側嵌合保証部204による押圧によって、互いに離れる方向への撓みが可能に構成されている。
【0064】
図2に示すように、スライダ60は、2つのガイド凸部69を有している。2つのガイド凸部69は、第3軸線Zにおいて互いに対向するように設けられている。各ガイド凸部69は、第1軸線Xに沿って延びている。各ガイド凸部69は、貫通孔62の内周面に設けられている。
図4に示すように、各ガイド凸部69は、ハウジング本体31のガイド溝41に嵌合可能に形成されている。各ガイド凸部69は、ガイド溝41に嵌合された状態で、上方向Y1および下方向Y2の双方においてガイド溝41と係合可能に形成されている。スライダ60は、各ガイド凸部69がガイド溝41に嵌合された状態で、第1軸線Xに沿って第1位置と第2位置との間で移動可能である。
【0065】
(スプリング70の構成)
図2に示すように、スプリング70は、線材により形成されている。スプリング70は、金属製である。スプリング70は、一対のアーム71と、一対のアーム71を連結する連結部75とを有している。スプリング70は、一対のアーム71の各々の端部に設けられた一対の折り返し部76と、一対の折り返し部76の各々の先端に設けられた一対の延長部77とを有している。スプリング70は、アーム71と連結部75と折り返し部76と延長部77とが連続して一体に形成された単一部材である。本実施形態のスプリング70は、ねじりコイル形状を有していない。
【0066】
一対のアーム71は、第3軸線Zにおいて互いに対向するように設けられている。各アーム71は、全体として第2軸線Yに沿って延びている。各アーム71は、例えば、第3軸線Zから見た平面視において、逆V字状に屈曲するように形成されている。
【0067】
連結部75は、一対のアーム71の上方向Y1の端部同士を連結している。連結部75は、第3軸線Zに沿って延びている。連結部75は、スライダ60のスプリング収容部63に収容されている。連結部75は、スプリング収容部63の底面に線接触されている。
【0068】
一対の折り返し部76は、第3軸線Zにおいて互いに対向するように設けられている。各折り返し部76は、各アーム71の下方向Y2の端部から各アーム71の上方向Y1の端部に向かって折り返されるように形成されている。各折り返し部76は、ハウジング本体31の基部32から離れる方向(ここでは、後方向X2)に向かって折り返されるように形成されている。各折り返し部76は、各アーム71の下方向Y2の端部からU字状に折り返されている。各折り返し部76は、カバー部材50の内面に接触可能に設けられている。
【0069】
各延長部77は、各折り返し部76の先端(ここでは、上方向Y1の端部)から他方のアーム71に向かって延びている。各延長部77は、第3軸線Zに沿って延びている。一対の延長部77は、互いに離れて設けられている。換言すると、一対の延長部77の間には隙間が設けられている。各延長部77は、カバー部材50の内面に接触可能に設けられている。
【0070】
(フェライトコア80の構成)
フェライトコア80は、電線90の外周に取り付けられている。フェライトコア80は、電線90の外周を包囲するように形成されている。電線90は、フェライトコア80を第2軸線Yに貫通するように形成されている。フェライトコア80は、ハウジング本体31のフェライト収容部38に収容されている。
【0071】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)コネクタ10は、端子20と、端子20を保持するハウジング30と、ハウジング30の内部に収容されるとともに、第1軸線Xに沿って第1位置と第2位置とに移動可能に設けられたスライダ60と、スライダ60を付勢するスプリング70と、を備える。端子20は、第1軸線Xに沿って延びる雌端子部22と、第1軸線Xと交差する第2軸線Yに沿って延びる電線接続部21と、を有する。雌端子部22は、電線接続部21と接続される溝状の接続部23と、接続部23の端部から第1軸線Xに沿った一方向である第1方向(本実施形態では、前方向X1)に向かって延びる筒状部24と、を有する。接続部23は、第1方向の反対方向である第1反対方向(本実施形態では、後方向X2)に開口している。ハウジング30は、端子20が収容される端子収容部37を有するハウジング本体31と、ハウジング本体31に取り付けられるカバー部材50と、を有する。カバー部材50は、接続部23の内部に挿入されるとともに接続部23と第2軸線Yにおいて係合可能に形成された突起部52を有する。
【0072】
この構成によれば、端子収容部37に端子20が収容されたハウジング本体31に対してカバー部材50が取り付けられると、カバー部材50の突起部52が溝状の接続部23に挿入される。このとき、突起部52が、第2軸線Yにおいて接続部23と係合可能に設けられる。これら接続部23と突起部52との係合により、ハウジング30の内部において端子20が第2軸線Yに沿って移動することを好適に抑制できる。この結果、ハウジング30の内部における端子20の位置ずれを好適に抑制できる。
【0073】
(2)接続部23は、基部25と、基部25のうち第2軸線Yに沿った一方向である第2方向(本実施形態では、上方向Y1)の端部に設けられた第1壁部26とを有する。接続部23は、基部25のうち第2方向の反対方向である第2反対方向(本実施形態では、下方向Y2)の端部に設けられた第2壁部27を有する。第1壁部26および第2壁部27の各々は、前方向X1および上方向Y1の双方と交差する第3方向(本実施形態では、第1幅方向Z1)に向かって突出している。突起部52は、上方向Y1において第1壁部26と係合可能に形成されるとともに、下方向Y2において第2壁部27と係合可能に形成されている。
【0074】
この構成によれば、突起部52が、上方向Y1において接続部23の第1壁部26と係合可能に設けられる。これら突起部52と第1壁部26との係合により、ハウジング30の内部において端子20が下方向Y2に向かって移動することを好適に抑制できる。また、突起部52が、下方向Y2において接続部23の第2壁部27と係合可能に設けられる。これら突起部52と第2壁部27との係合により、ハウジング30の内部において端子20が上方向Y1に向かって移動することを好適に抑制できる。このように、突起部52と第1壁部26および第2壁部27との係合により、ハウジング30の内部において端子20が上方向Y1および下方向Y2に移動することを好適に抑制できる。この結果、ハウジング30の内部における端子20の位置ずれを好適に抑制できる。
【0075】
(3)突起部52は、第1壁部26および第2壁部27と係合されることにより、接続部23の内側から端子20を保持することができる。これにより、端子20に接続される電線90が例えば下方向Y2に引っ張られた場合であっても、突起部52によって端子20を保持できるため、端子20が変形することを抑制できる。
【0076】
(4)カバー部材50の回転規制部53が、第2壁部27に対して、第1軸線Xを中心とする端子20の回転方向に係合可能に形成されている。この回転規制部53に第2壁部27が係合されることにより、第1軸線Xを中心とする端子20の回転を規制することができる。これにより、端子20の回転に伴う端子20の位置ずれを好適に抑制できる。
【0077】
(5)また、回転規制部53により端子20の回転を規制できるため、その回転に起因する端子20の損傷や摩耗を低減することができる。さらに、コネクタ10と相手コネクタ200とが正規に嵌合した状態において、端子20および相手端子201同士の摺動や摩耗を低減することができる。
【0078】
(6)カバー部材50の係合面53Aが、第1壁部26の周方向の端面に対して、第1軸線Xを中心とする端子20の回転方向に係合可能に形成されている。この係合面53Aに第1壁部26が係合されることにより、第1軸線Xを中心とする端子20の回転を規制することができる。これにより、端子20の回転に伴う端子20の位置ずれを好適に抑制できる。
【0079】
(7)突起部52の基端部52Aが、第1軸線Xにおいて接続部23の第1壁部26と係合可能に設けられている。これら基端部52Aと第1壁部26との係合により、ハウジング30の内部において端子20が後方向X2に向かって移動することを好適に抑制できる。この結果、ハウジング30の内部における端子20の位置ずれを好適に抑制できる。
【0080】
(8)位置規制部54が、第1軸線Xにおいて電線接続部21と係合可能に設けられている。これら位置規制部54と電線接続部21との係合により、ハウジング30の内部において端子20が後方向X2に向かって移動することを好適に抑制できる。この結果、ハウジング30の内部における端子20の位置ずれを好適に抑制できる。
【0081】
(9)位置規制部54を設けたことにより、カバー部材50と端子20との接触面積を増大させることができる。これにより、端子20の位置規制を大きな面で行うことができるため、ハウジング30の内部における端子20の移動を好適に抑制できる。
【0082】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0083】
・上記実施形態におけるハウジング30の構造を適宜変更してもよい。
・ハウジング本体31とカバー部材50との係合構造を適宜変更してもよい。
・上記実施形態のハウジング30では、ハウジング本体31とカバー部材50とを別部品で構成するようにしたが、これに限定されない。例えば、ハウジング本体31とカバー部材50とをヒンジ等を介して一体に形成するようにしてもよい。
【0084】
・上記実施形態では、ハウジング30を2つの分割体、つまりハウジング本体31とカバー部材50とにより構成したが、これに限定されない。例えば、ハウジング30を3つ以上の分割体により構成してもよい。
【0085】
・カバー部材50の構造を適宜変更してもよい。位置規制部54を省略してもよい。回転規制部53を省略してもよい。
・ハウジング本体31の構造を適宜変更してもよい。ガイド溝41を省略してもよい。切欠部43を省略してもよい。
【0086】
・上記実施形態におけるスプリング70の構造を適宜変更してもよい。
・スプリング70の延長部77を省略してもよい。
・各アーム71の構造を変更してもよい。
【0087】
・スプリング70の連結部75を省略してもよい。
・上記実施形態におけるスライダ60の構造を適宜変更してもよい。
・スライダ60のガイド凸部69を省略してもよい。
【0088】
・嵌合保証部68の構造を適宜変更してもよい。
・上記実施形態におけるフェライトコア80を省略してもよい。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
10 コネクタ
20 端子
21 電線接続部
21A 基部
21B 側壁
21C 芯線接続部
21D 被覆接続部
22 雌端子部
23 接続部
24 筒状部
25 基部
26 第1壁部
27 第2壁部
28 切欠部
30 ハウジング
31 ハウジング本体
32 基部
33,34,35,36 周壁
37 端子収容部
37A,37B 筒状部
37C 収容溝
38 フェライト収容部
40 取付部
41 ガイド溝
43 切欠部
45 スプリング収容部
46 嵌合筒部
47 係合部
50 カバー部材
51 本体部
52 突起部
52A 基端部
52B 先端部
53 回転規制部
53A 係合面
54 位置規制部
55 係合部
56 係合孔
60 スライダ
61 本体部
62 貫通孔
63 スプリング収容部
68 嵌合保証部
68A 弾性片
69 ガイド凸部
70 スプリング
71 アーム
75 連結部
76 折り返し部
77 延長部
80 フェライトコア
90 電線
91 芯線
92 絶縁被覆
200 相手コネクタ
201 相手端子
202 相手ハウジング
203 相手側嵌合筒部
204 相手側嵌合保証部
X 第1軸線
X1 前方向(第1方向)
X2 後方向(第1反対方向)
Y 第2軸線
Y1 上方向(第2方向)
Y2 下方向(第2反対方向)
Z 第3軸線
Z1 第1幅方向(第3方向)
Z2 第2幅方向