(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140540
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/64 20060101AFI20250919BHJP
【FI】
H01R13/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040004
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山上 貴布
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB07
5E021FC38
5E021JA05
5E021KA06
(57)【要約】
【課題】相手コネクタとの接続信頼性を向上できるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、端子20と、端子20を保持するハウジング30と、ハウジング30の内部に収容されるとともに、第1軸線Xに沿って第1位置と第2位置とに移動可能に設けられたスライダ60と、スライダ60を付勢するスプリング70と、を有する。スプリング70は、第1軸線Xと交差する第2軸線Yに向かって延びる一対のアーム71と、一対のアーム71を連結するとともにスライダ60に接触する連結部75と、を有する。連結部75は、第1軸線Xおよび第2軸線Yの双方と交差する第3軸線Zに沿って延びている。スプリング70は、連結部75が第3軸線Zに沿ってスライダ60に接触された状態で、スライダ60を第1位置に向けて付勢する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と、
前記端子を保持するハウジングと、
前記ハウジングの内部に収容されるとともに、第1軸線に沿って第1位置と第2位置とに移動可能に設けられたスライダと、
前記スライダを付勢するスプリングと、を有し、
前記スプリングは、
前記第1軸線と交差する第2軸線に沿って延びる一対のアームと、
前記一対のアームを連結するとともに前記スライダに接触する連結部と、を有し、
前記連結部は、前記第1軸線および前記第2軸線の双方と交差する第3軸線に沿って延びており、
前記スプリングは、前記連結部が前記第3軸線に沿って前記スライダに接触された状態で、前記スライダを前記第1位置に向けて付勢する、コネクタ。
【請求項2】
前記一対のアームの各々は、前記連結部と接続される第1端部と、前記第1端部の反対側に設けられた第2端部とを有し、
前記スプリングは、前記第2端部から前記第1端部に向かって折り返された折り返し部を更に有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記スプリングは、前記折り返し部から前記第3軸線に沿って延びる延長部を更に有し、
前記延長部は、前記ハウジングの内面に接触可能である、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記一対のアームの各々は、前記連結部から第1斜め方向に立ち上がる立上り部と、前記立上り部の端部から前記第1斜め方向と交差する第2斜め方向に立ち下がる立下り部と、を有し、
前記立上り部は、前記連結部から離れるに連れて、前記スライダから離れる方向に傾斜している、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記スライダは、相手コネクタとの嵌合を保証する嵌合保証部を有し、
前記嵌合保証部は、前記相手コネクタが有する相手側嵌合保証部に押圧される部分であり、
前記連結部は、前記第1軸線から見た平面視において、前記嵌合保証部と重なる位置に設けられている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記第1軸線に沿って延びるガイド溝を有し、
前記スライダは、前記ガイド溝に嵌合するとともに前記第1軸線に沿って延びるガイド凸部を有し、
前記ガイド凸部は、前記第2軸線において前記ガイド溝と係合可能に形成されており、
前記スライダは、前記ガイド凸部が前記ガイド溝に嵌合した状態で、前記第1軸線に沿って移動可能である、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記スライダは、前記アームおよび前記連結部が収容されるスプリング収容部を有し、
前記スプリング収容部は、底面と、前記底面から突出する壁部とを有し、
前記壁部は、前記スプリングを前記スプリング収容部の内部空間に誘い込む誘導部を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記ハウジングは、
前記端子を収容する端子収容部を有するハウジング本体と、
前記ハウジング本体に取り付けられるカバー部材と、を有し、
前記ハウジングは、前記ハウジング本体と前記カバー部材とが合体されることにより、前記スライダの外周と前記端子の外周とを包囲する筒状に形成されている、請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、エアバッグインフレータ等の制御に用いられるコネクタ、所謂スクイブコネクタが搭載される(例えば、特許文献1参照)。この種のコネクタは、端子と、端子を保持するハウジングと、ハウジングの内部に収容されたスライダと、スライダを付勢するスプリングとを備えている。スプリングは、スライダを押さえつける一対の作動アームと、一対の作動アームの各々の端部に設けられたねじりコイル部とを有している。上記コネクタでは、スプリングの付勢力によりスライダをスライドさせる方式によって、コネクタと相手コネクタとの嵌合保証を行っている。具体的には、スライダは、コネクタと相手コネクタとの嵌合時に、スプリングの反力を受けながら後方に移動される。そして、コネクタと相手コネクタとの嵌合完了後に、スライダは、スプリングの反力により前方に移動される。具体的には、スライダは、一対の作動アームによって押さえつけられて前方に移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記コネクタにおいては、相手コネクタとの接続信頼性を更に向上させることが望まれている。
本開示の目的は、相手コネクタとの接続信頼性を向上できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のコネクタは、端子と、前記端子を保持するハウジングと、前記ハウジングの内部に収容されるとともに、第1軸線に沿って第1位置と第2位置とに移動可能に設けられたスライダと、前記スライダを付勢するスプリングと、を有し、前記スプリングは、前記第1軸線と交差する第2軸線に沿って延びる一対のアームと、前記一対のアームを連結するとともに前記スライダに接触する連結部と、を有し、前記連結部は、前記第1軸線および前記第2軸線の双方と交差する第3軸線に沿って延びており、前記スプリングは、前記連結部が前記第3軸線に沿って前記スライダに接触された状態で、前記スライダを前記第1位置に向けて付勢する。
【発明の効果】
【0006】
本開示のコネクタによれば、相手コネクタとの接続信頼性を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態のコネクタおよび相手コネクタを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のコネクタを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のコネクタの一部を示す平面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のコネクタを示す断面図(
図3における4-4線断面図)である。
【
図5】
図5は、一実施形態のスライダを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、一実施形態のコネクタを示す断面図(
図3における6-6線断面図)である。
【
図7】
図7は、一実施形態のコネクタを示す断面図である。
【
図8】
図8は、一実施形態のコネクタを示す断面図である。
【
図9】
図9は、一実施形態のコネクタおよび相手コネクタを示す断面図(
図3における9-9線断面図)である。
【
図10】
図10は、一実施形態のコネクタおよび相手コネクタを示す断面図である。
【
図11】
図11は、一実施形態のコネクタおよび相手コネクタを示す断面図である。
【
図12】
図12は、一実施形態のコネクタおよび相手コネクタを示す断面図である。
【
図13】
図13は、一実施形態のコネクタの一部を示す断面斜視図である。
【
図14】
図14は、一実施形態のコネクタの一部を示す断面斜視図である。
【
図15】
図15は、一実施形態のスプリングを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のコネクタは、端子と、前記端子を保持するハウジングと、前記ハウジングの内部に収容されるとともに、第1軸線に沿って第1位置と第2位置とに移動可能に設けられたスライダと、前記スライダを付勢するスプリングと、を有し、前記スプリングは、前記第1軸線と交差する第2軸線に沿って延びる一対のアームと、前記一対のアームを連結するとともに前記スライダに接触する連結部と、を有し、前記連結部は、前記第1軸線および前記第2軸線の双方と交差する第3軸線に沿って延びており、前記スプリングは、前記連結部が前記第3軸線に沿って前記スライダに接触された状態で、前記スライダを前記第1位置に向けて付勢する。
【0009】
この構成によれば、一対のアームを連結する連結部が第3軸線に沿ってスライダに線接触された状態で、スライダがスプリングにより第1位置に向けて付勢される。これにより、一対のアームのみがスライダに接触する場合に比べて、スプリングとスライダとの接触領域、特に第3軸線に沿う接触領域を増大させることができる。このため、スプリングの付勢力によりスライダが第1軸線に沿って第2位置から第1位置に移動する際に、スライダに対してバランス良く付勢力を付与することができ、スライダをバランス良く移動させることができる。したがって、スライダが第2位置から第1位置に移動する際に、スライダが第3軸線に対して傾くことを好適に抑制でき、スライダを安定した姿勢で可動させることができる。この結果、スプリングのばね反力をスライダに好適に付与させることができるため、スプリングおよびスライダを利用した相手コネクタとの嵌合保証を好適に行うことができる。このような嵌合保証が好適に機能されることにより、コネクタと相手コネクタとが半嵌合状態となる等の嵌合不良が発生することを好適に抑制できる。この結果、コネクタと相手コネクタとの接続信頼性を向上させることができる。
【0010】
[2]上記[1]において、前記一対のアームの各々は、前記連結部と接続される第1端部と、前記第1端部の反対側に設けられた第2端部とを有し、前記スプリングは、前記第2端部から前記第1端部に向かって折り返された折り返し部を更に有してもよい。
【0011】
この構成によれば、スプリングを、各アームの第2端部にねじりコイル形状を設けない構造とすることができる。これにより、ねじりコイル形状を設ける従来構造に比べて、スプリングを小型化することができる。
【0012】
[3]上記[2]において、前記スプリングは、前記折り返し部から前記第3軸線に沿って延びる延長部を更に有し、前記延長部は、前記ハウジングの内面に接触可能であってもよい。
【0013】
この構成によれば、延長部を設けた分だけ、スプリングとハウジングの内面との接触面積を増大させることができる。これらスプリングとハウジングの内面との接触により、ハウジングの内部におけるスプリングの移動を好適に規制できる。このため、ハウジングの内部におけるスプリングの姿勢を所望の姿勢に好適に維持できる。
【0014】
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、前記一対のアームの各々は、前記連結部から第1斜め方向に立ち上がる立上り部と、前記立上り部の端部から前記第1斜め方向と交差する第2斜め方向に立ち下がる立下り部と、を有し、前記立上り部は、前記連結部から離れるに連れて、前記スライダから離れる方向に傾斜していてもよい。
【0015】
この構成によれば、スプリングの各アームが逆V字状に屈曲するように形成される。これにより、各アームによってスライダに好適に付勢力を付与することができる。
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、前記スライダは、相手コネクタとの嵌合を保証する嵌合保証部を有し、前記嵌合保証部は、前記相手コネクタが有する相手側嵌合保証部に押圧される部分であり、前記連結部は、前記第1軸線から見た平面視において、前記嵌合保証部と重なる位置に設けられていてもよい。
【0016】
この構成によれば、コネクタと相手コネクタとが嵌合される際に、スライダの嵌合保証部が相手側嵌合保証部によって押圧される。この嵌合保証部と平面視で重なるようにスプリングの連結部が設けられる。このため、相手側嵌合保証部により嵌合保証部が押圧される際に、その嵌合保証部と重なる位置で連結部がスライダに第3軸線に沿って線接触される。したがって、相手側嵌合保証部により嵌合保証部が押圧される際に、スプリングの連結部によってスライダを好適に支持することができる。この結果、相手側嵌合保証部による押圧に伴ってスライダが第1位置から第2位置に移動する際に、スライダが第3軸線に対して傾くことを好適に抑制でき、スライダを安定した姿勢で可動させることができる。
【0017】
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、前記ハウジングは、前記第1軸線に沿って延びるガイド溝を有し、前記スライダは、前記ガイド溝に嵌合するとともに前記第1軸線に沿って延びるガイド凸部を有し、前記ガイド凸部は、前記第2軸線において前記ガイド溝と係合可能に形成されており、前記スライダは、前記ガイド凸部が前記ガイド溝に嵌合した状態で、前記第1軸線に沿って移動可能であってもよい。
【0018】
この構成によれば、ガイド凸部がガイド溝に嵌合された状態で、スライダが第1軸線に沿って移動される。このとき、ガイド凸部が第2軸線においてガイド溝と係合される。このため、スライダが第1軸線に沿って移動する際に、スライダが第2軸線に対して傾くことを好適に抑制でき、スライダを安定した姿勢で可動させることができる。
【0019】
[7]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、前記スライダは、前記アームおよび前記連結部が収容されるスプリング収容部を有し、前記スプリング収容部は、底面と、前記底面から突出する壁部とを有し、前記壁部は、前記スプリングを前記スプリング収容部の内部空間に誘い込む誘導部を有してもよい。
【0020】
この構成によれば、ハウジングに対してスプリングを取り付ける際に、スプリングを誘導部に沿って移動させることにより、スプリングをスプリング収容部の内部空間にスムーズに挿入させることができる。これにより、コネクタの組立作業性を向上させることができる。
【0021】
[8]上記[1]から[7]のいずれかにおいて、前記ハウジングは、前記端子を収容する端子収容部を有するハウジング本体と、前記ハウジング本体に取り付けられるカバー部材と、を有し、前記ハウジングは、前記ハウジング本体と前記カバー部材とが合体されることにより、前記スライダの外周と前記端子の外周とを包囲する筒状に形成されていてもよい。
【0022】
この構成によれば、ハウジングが、ハウジング本体およびカバー部材の複数の部品によってスライダの外周と端子の外周とを包囲する筒状に形成されている。これにより、ハウジングを筒状としながらも、ハウジングが複数の部品に分かれていることで、ハウジングを端子等に対して後付け可能となる。したがって、端子等とハウジングとの組み付け性を向上でき、コネクタの組立作業性を向上できる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「直交」や「平行」は、厳密に直交や平行の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね直交や平行の場合も含まれる。本明細書の説明で使用される「筒状」は、周方向全周にわたって連続して周壁が形成されたものだけではなく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものや、C字状やU字状のように周方向の一部に切り欠きなどを有するものも含む。なお、「筒状」の形状には、円形、楕円形、および尖ったまたは丸い角を有する多角形が含まれるが、これらに限定されない。本明細書における「対向」とは、面同士または部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。本明細書における「対向」とは、2つの部材が互いに離れている場合だけでなく、2つの部材が互いに接触している場合も含む。また、本明細書における「第1」「第2」「第3」等の用語は、単に対象物を区別するために用いられており、対象物を順位づけするものではない。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
(コネクタ10の全体構成)
図1に示すように、コネクタ10は、相手コネクタ200に嵌合可能に構成されている。コネクタ10は、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車などの図示しない車両に設けられるものである。また、コネクタ10は、車両のシートベルトプリテンショナーやエアバッグインフレータ等の制御に用いられるコネクタ、所謂スクイブコネクタである。
【0025】
各図面には、第1軸線Xと、第1軸線Xと直交する第2軸線Yと、第1軸線Xおよび第2軸線Yの双方と直交する第3軸線Zとを図示している。また、各図面には、第1軸線Xに沿った一方向である前方向X1と、第1軸線Xに沿った他方向であって前方向X1の反対方向である後方向X2とを図示している。ここで、前方向X1は、相手コネクタ200に対するコネクタ10の嵌合方向の前方になる。各図面には、第2軸線Yに沿った一方向である上方向Y1と、第2軸線Yに沿った他方向であって上方向Y1の反対方向である下方向Y2とを図示している。各図面には、第3軸線Zに沿った一方向である第1幅方向Z1と、第3軸線Zに沿った他方向であって第1幅方向Z1の反対方向である第2幅方向Z2とを図示している。なお、各図面における各方向は、必ずしもコネクタ10および相手コネクタ200の使用時の姿勢を表すものではない。また、相手コネクタ200における方向の説明は、相手コネクタ200がコネクタ10に嵌合された状態を基準として記載する。
【0026】
(相手コネクタ200の構成)
相手コネクタ200は、相手端子201と、相手端子201を保持する相手ハウジング202とを有している。相手ハウジング202は、コネクタ10のハウジング30に嵌合される相手側嵌合筒部203と、コネクタ10と相手コネクタ200との嵌合を保証する相手側嵌合保証部204と、を有している。相手端子201は、相手側嵌合筒部203の内部に設けられている。相手側嵌合保証部204は、相手側嵌合筒部203の内部に設けられている。
【0027】
(コネクタ10の構成)
図2に示すように、コネクタ10は、端子20と、ハウジング30と、スライダ60と、スプリング70と、フェライトコア80と、を備えている。本実施形態のコネクタ10は、2つの端子20を備えている。
【0028】
(端子20の構成)
2つの端子20は、第3軸線Zに沿って並んで設けられている。各端子20は、電線接続部21と、雌端子部22とを有している。電線接続部21は、第2軸線Yに沿って延びている。雌端子部22は、第1軸線Xに沿って延びている。各端子20は、全体としてL字状に形成されている。各端子20は、金属製である。
【0029】
電線接続部21は、電線90に接続されている。ここで、電線90は、導電性を有する芯線とその芯線の外周を被覆する絶縁被覆とを有する被覆電線である。電線接続部21は、電線90の芯線の端部に接続されている。電線接続部21は、例えば、圧着や超音波溶接などによって電線90の芯線に接続されている。
【0030】
雌端子部22は、電線接続部21の上方向Y1の端部に接続されている。雌端子部22は、電線接続部21の長さ方向と直交する方向に延びている。雌端子部22は、筒状に形成されている。
【0031】
(ハウジング30の構成)
ハウジング30は、ハウジング本体31と、ハウジング本体31に取り付け可能に形成されたカバー部材50とを有している。ハウジング本体31は、後方向X2に開口する箱状に形成されている。カバー部材50は、ハウジング本体31の開口を塞ぐようにハウジング本体31に取り付けられている。ハウジング本体31とカバー部材50とは別部品である。ハウジング本体31およびカバー部材50の各々は、樹脂製である。
【0032】
ハウジング30は、ハウジング本体31とカバー部材50とを合体させることにより、端子20とスライダ60とスプリング70とを包囲する筒状に形成されている。換言すると、端子20とスライダ60とスプリング70とは、ハウジング本体31とカバー部材50とによって形成されるハウジング30の内部空間に収容されている。
【0033】
図2および
図3に示すように、ハウジング本体31は、基部32と、基部32から後方向X2に向かって突出する周壁33,34,35,36とを有している。ハウジング本体31は、端子20を収容する端子収容部37と、フェライトコア80を収容するフェライト収容部38とを有している。ハウジング本体31は、スライダ60が取り付けられる取付部40と、スプリング70を収容するスプリング収容部45とを有している。
図3に示すように、本実施形態のハウジング本体31は、2つのスプリング収容部45を有している。なお、
図3では、図面の簡略化のために、カバー部材50の図示を省略している。
【0034】
図2に示すように、基部32は、平板状に形成されている。周壁33は、基部32の上方向Y1の端部に設けられている。周壁34は、基部32の下方向Y2の端部に設けられている。周壁33,34は、第3軸線Zに沿って延びている。周壁35は、基部32の第1幅方向Z1の端部に設けられている。周壁36は、基部32の第2幅方向Z2の端部に設けられている。周壁35,36は、第2軸線Yに沿って延びている。
【0035】
端子収容部37には、端子20が前方向X1に沿って挿入される。端子収容部37は、第3軸線Zに沿って並ぶ2つの端子20を保持可能に形成されている。
図4に示すように、端子収容部37は、基部32から後方向X2に向かって突出する筒状部37Aと、基部32から前方向X1に向かって突出する筒状部37Bとを有している。筒状部37Aの内部空間と筒状部37Bの内部空間とは互いに連通されている。筒状部37A,37Bには、端子20の雌端子部22が収容される。
【0036】
図3に示すように、端子収容部37は、端子20の電線接続部21が収容される収容溝37Cを有している。収容溝37Cは、筒状部37Aから下方向Y2に沿って延びている。収容溝37Cの内部空間は、筒状部37Aの内部空間に連通されている。
【0037】
図2に示すように、フェライト収容部38には、電線90の外周に取り付けられたフェライトコア80が前方向X1に沿って挿入される。フェライト収容部38は、端子収容部37の収容溝37Cから下方向Y2に向かって延びている。フェライト収容部38の内部空間は、収容溝37Cの内部空間に連通されている。
【0038】
取付部40には、スライダ60が前方向X1に沿って取り付けられる。取付部40は、ハウジング30の内部空間において第1軸線Xに沿って移動可能にスライダ60を保持している。取付部40は、筒状部37Aの外周面に設けられたガイド溝41と、基部32を貫通する貫通孔42(
図4参照)と、周壁35,36に設けられた切欠部43とを有している。
【0039】
ガイド溝41には、スライダ60のガイド凸部69が前方向X1に沿って挿入される。ガイド溝41は、第1軸線Xに沿って延びている。ガイド溝41は、筒状部37Aの軸方向の全長にわたって延びている。
【0040】
図4に示すように、貫通孔42は、筒状部37Aよりも上方向Y1側に設けられている。貫通孔42には、スライダ60の嵌合保証部68が前方向X1に沿って挿入される。
図2に示すように、切欠部43は、周壁35,36の各々に設けられている。切欠部43は、周壁35,36の上方向Y1の端部を切り欠くように形成されている。
【0041】
2つのスプリング収容部45は、第3軸線Zの両端部にそれぞれ設けられている。各スプリング収容部45には、スプリング70のアーム71が前方向X1に沿って挿入される。
図3に示すように、スプリング収容部45は、第2軸線Yに沿って延びる溝状に形成されている。第1幅方向Z1の端部に設けられたスプリング収容部45は、フェライト収容部38の外周面と周壁34と周壁35とによって囲まれて形成されている。第2幅方向Z2の端部に設けられたスプリング収容部45は、フェライト収容部38の外周面と周壁34と周壁36とによって囲まれて形成されている。
【0042】
図1に示すように、ハウジング本体31は、相手ハウジング202の相手側嵌合筒部203に嵌合する嵌合筒部46を有している。嵌合筒部46は、相手側嵌合筒部203の内側に嵌合する。
図2に示すように、嵌合筒部46は、基部32から前方向X1に向かって突出している。
【0043】
図3に示すように、ハウジング本体31は、周壁33,35,36に設けられた係合部47を有している。係合部47は、周壁33,35,36の外面から外方に突出する係合突起である。周壁33には1つの係合部47が設けられている。周壁35,36の各々には2つの係合部47が設けられている。
【0044】
(カバー部材50の構成)
図1に示すように、カバー部材50は、ハウジング本体31に取り付けられている。カバー部材50は、ハウジング本体31に着脱可能に形成されている。カバー部材50は、本体部51と、本体部51から前方向X1に向かって突出する係合部52とを有している。本実施形態のカバー部材50は、ハウジング本体31の係合部47に対応する3つの係合部52を有している。
【0045】
本体部51は、平板状に形成されている。本体部51は、ハウジング本体31の後方向X2の開口を塞ぐように形成されている。
各係合部52は、本体部51からハウジング本体31に向かって突出している。各係合部52は、弾性変形可能に形成された弾性片である。各係合部52は、枠体に形成されている。各係合部52は、係合部47と係合可能な係合孔53を有している。係合部47と係合孔53とは、係合部52の弾性変形を利用したスナップフィット方式により互いに係合される。係合部47と係合孔53との係合により、ハウジング本体31とカバー部材50とが合体した状態が維持される。
【0046】
(スライダ60の構成)
図5に示すように、スライダ60は、本体部61と、スプリング収容部63と、嵌合保証部68と、ガイド凸部69とを有している。スライダ60は、本体部61とスプリング収容部63と嵌合保証部68とガイド凸部69とが一体に形成された単一部品である。スライダ60は、樹脂製である。
【0047】
図6から
図12に示すように、スライダ60は、ハウジング30の内部に収容されている。スライダ60は、第1軸線Xに沿って第1位置(
図6、
図8、
図9および
図12参照)と第2位置(
図7、
図10および
図11参照)とに移動可能にハウジング本体31により保持されている。
図6、
図8、
図9および
図12に示すように、第1位置は、本体部61が第1軸線Xにおいてハウジング本体31の基部32に係合された位置である。
図7、
図10および
図11に示すように、第2位置は、相手ハウジング202により後方向X2に向かってスライダ60が押圧された状態の位置である。第2位置は、第1位置から後方向X2に向かった位置、具体的には第1位置よりもカバー部材50に近い位置である。
【0048】
図10に示すように、ハウジング30と相手ハウジング202とが嵌合される際には、スライダ60の嵌合保証部68が相手側嵌合保証部204により後方向X2に向かって押圧される。これにより、スライダ60は、スプリング70の付勢力に抗してスプリング70を第1軸線Xに圧縮させつつ、第1軸線Xに沿って第1位置から第2位置に平行移動する。
図11に示すように、スライダ60が第2位置に配置された状態で嵌合保証部68が相手側嵌合保証部204により更に押圧されると、嵌合保証部68が開口を広げるように弾性変形し、相手側嵌合保証部204が嵌合保証部68の内部に進入する。これにより、スライダ60の前方向X1への移動が許容される。そして、コネクタ10と相手コネクタ200とが正規に嵌合されると、
図12に示すように、スプリング70によりスライダ60が第1位置に向けて付勢され、スライダ60が第1軸線Xに沿って第2位置から第1位置に平行移動する。
【0049】
図13および
図14に示すように、スライダ60の本体部61は、本体部61を第1軸線Xに貫通する貫通孔62を有している。貫通孔62には、ハウジング本体31の端子収容部37が挿入されている。
【0050】
スプリング収容部63は、スプリング70の一部、具体的にはスプリング70の一対のアーム71とそれら一対のアーム71を連結する連結部75とを収容可能に形成されている。スプリング収容部63は、前方向X1から見た平面形状がU字状に形成されている。スプリング収容部63は、底面64と、底面64から後方向X2に向かって突出する壁部65,66を有している。底面64は、本体部61の後方向X2の端面により構成されている。スプリング収容部63の内部空間は、底面64と壁部65,66とハウジング本体31の周壁33とによって囲まれた空間により形成されている。
【0051】
壁部65は、本体部61の第1幅方向Z1の端部と第2幅方向Z2の端部とに設けられている。壁部65は、第2軸線Yに沿って直線状に延びている。
図3に示すように、壁部65は、取付部40の切欠部43の内部に収容されている。
【0052】
図13に示すように、壁部66は、貫通孔62の周縁部に設けられている。壁部66は、貫通孔62の周縁部に沿って貫通孔62の全周にわたって形成されている。壁部66は、前方向X1から見た平面形状がU字状に形成されている。壁部66は、例えば、誘導部67を有している。誘導部67は、壁部66の突出先端面(つまり、後方向X2の端面)からスプリング収容部63の内部空間に向かうに連れて、前方向X1に向かって傾斜する傾斜面に形成されている。誘導部67は、スプリング70をスプリング収容部63の内部空間に誘い込む機能を有している。
【0053】
図9に示すように、嵌合保証部68は、2つの弾性片68Aを有している。2つの弾性片68Aは、第3軸線Zにおいて互いに対向するように設けられている。各弾性片68Aは、本体部61から前方向X1に向かって延びている。各弾性片68Aは、本体部61に接続された基端を固定端とし、基端とは反対側の先端を自由端とする片持ち状に形成されている。各弾性片68Aは、弾性変形による第3軸線Zへの撓みが可能に構成されている。各弾性片68Aは、ハウジング30と相手ハウジング202とが嵌合される際に、相手側嵌合保証部204により後方向X2に向かって押圧される。2つの弾性片68Aは、相手側嵌合保証部204による押圧によって、互いに離れる方向への撓みが可能に構成されている。
【0054】
図5に示すように、スライダ60は、2つのガイド凸部69を有している。2つのガイド凸部69は、第3軸線Zにおいて互いに対向するように設けられている。各ガイド凸部69は、第1軸線Xに沿って延びている。各ガイド凸部69は、貫通孔62の内周面に設けられている。
図3に示すように、各ガイド凸部69は、ハウジング本体31のガイド溝41に嵌合可能に形成されている。各ガイド凸部69は、ガイド溝41に嵌合された状態で、上方向Y1および下方向Y2の双方においてガイド溝41と係合可能に形成されている。スライダ60は、各ガイド凸部69がガイド溝41に嵌合された状態で、第1軸線Xに沿って第1位置と第2位置との間で移動可能である。
【0055】
(スプリング70の構成)
図15に示すように、スプリング70は、線材により形成されている。スプリング70は、金属製である。スプリング70は、一対のアーム71と、一対のアーム71を連結する連結部75とを有している。スプリング70は、一対のアーム71の各々の端部に設けられた一対の折り返し部76と、一対の折り返し部76の各々の先端に設けられた一対の延長部77とを有している。スプリング70は、アーム71と連結部75と折り返し部76と延長部77とが連続して一体に形成された単一部材である。本実施形態のスプリング70は、ねじりコイル形状を有していない。
【0056】
一対のアーム71は、第3軸線Zにおいて互いに対向するように設けられている。各アーム71は、全体として第2軸線Yに沿って延びている。各アーム71の上方向Y1の端部には、連結部75が接続されている。各アーム71は、例えば、第3軸線Zから見た平面視において、逆V字状に屈曲するように形成されている。各アーム71は、連結部75から第1斜め方向に立ち上がる立上り部72と、立上り部72の端部(具体的には、下方向Y2の端部)から第1斜め方向と交差する第2斜め方向に立ち下がる立下り部73とを有している。
図6に示すように、立上り部72は、連結部75から離れるに連れて、カバー部材50に向かって(ここでは、後方向X2に向かって)傾斜するように形成されている。立下り部73は、立上り部72から離れるに連れて、ハウジング本体31に向かって(ここでは、前方向X1に向かって)傾斜するように形成されている。立上り部72の上方向Y1の端部、つまりアーム71の上方向Y1の端部は、スライダ60に接触している。立下り部73の下方向Y2の端部、つまりアーム71の下方向Y2の端部は、ハウジング本体31に接触している。
図3に示すように、立上り部72は、スライダ60のスプリング収容部63に収容されている。立下り部73は、ハウジング本体31のスプリング収容部45に収容されている。
【0057】
図15に示すように、連結部75は、一対のアーム71の上方向Y1の端部同士を連結している。連結部75は、一方のアーム71の上方向Y1の端部から他方のアーム71の上方向Y1の端部まで連続して延びている。連結部75は、第3軸線Zに沿って延びている。
図9に示すように、連結部75は、スライダ60のスプリング収容部63に収容されている。具体的には、連結部75は、スプリング収容部63のうち第1軸線Xにおいて嵌合保証部68と重なる部分に収容されている。連結部75は、スプリング収容部63の底面64に接触されている。連結部75は、第3軸線Zに沿って線状に底面64に接触されている。すなわち、連結部75は、底面64に線接触されている。
【0058】
図15に示すように、一対の折り返し部76は、第3軸線Zにおいて互いに対向するように設けられている。各折り返し部76は、各アーム71の下方向Y2の端部から各アーム71の上方向Y1の端部に向かって折り返されるように形成されている。
図6に示すように、各折り返し部76は、ハウジング本体31の基部32から離れる方向(ここでは、後方向X2)に向かって折り返されるように形成されている。各折り返し部76は、各アーム71の下方向Y2の端部からU字状に折り返されている。各折り返し部76は、カバー部材50の内面、つまり本体部51の前方向X1の端面に接触可能に設けられている。
【0059】
図15に示すように、各延長部77は、各折り返し部76の先端(ここでは、上方向Y1の端部)から他方のアーム71に向かって延びている。各延長部77は、第3軸線Zに沿って延びている。一対の延長部77は、互いに離れて設けられている。換言すると、一対の延長部77の間には隙間が設けられている。各延長部77は、カバー部材50(
図4参照)の内面に接触可能に設けられている。
【0060】
(フェライトコア80の構成)
図2に示すように、フェライトコア80は、電線90の外周に取り付けられている。フェライトコア80は、電線90の外周を包囲するように形成されている。電線90は、フェライトコア80を第2軸線Yに貫通するように形成されている。フェライトコア80は、ハウジング本体31のフェライト収容部38に収容されている。
【0061】
(コネクタ10の製造方法)
次に、コネクタ10の製造方法について説明する。
図3に示すように、まず、ハウジング本体31の取付部40にスライダ60が取り付けられる。詳述すると、ガイド凸部69がガイド溝41に嵌合されるとともに、壁部65が切欠部43に配置された状態で、スライダ60を前方向X1に沿って第1位置までスライドさせる。このとき、スライダ60は、ガイド凸部69がガイド溝41によってガイドされた状態で、前方向X1に沿ってスライドされる。
【0062】
次に、端子20と端子20に接続された電線90と電線90の外周に装着されたフェライトコア80とが、前方向X1に沿ってハウジング本体31の端子収容部37およびフェライト収容部38に挿入される。
【0063】
続いて、ハウジング本体31およびスライダ60に対してスプリング70が取り付けられる。具体的には、ハウジング本体31の各スプリング収容部45にスプリング70の各アーム71の下方向Y2の端部が収容されるように、スプリング70がハウジング本体31に取り付けられる。このとき、スプリング70の連結部75は、スライダ60のスプリング収容部63に収容されていない場合がある。例えば、連結部75は、壁部66の先端面や誘導部67(
図13参照)に乗っかっている場合がある。
【0064】
次いで、
図6に示すように、ハウジング本体31に対してカバー部材50が取り付けられる。このカバー部材50によりスプリング70が前方向X1に向かって押圧される。これにより、
図14に示すように、スプリング70の連結部75および各アーム71の立上り部72が誘導部67に沿ってスプリング収容部63の内部空間に誘導される。この結果、スプリング70を、スライダ60のスプリング収容部63に好適に収容させることができる。
【0065】
以上の工程により、コネクタ10を製造することができる。
(コネクタ10と相手コネクタ200との嵌合方法)
次に、コネクタ10と相手コネクタ200との嵌合方法について説明する。
【0066】
まず、
図6および
図9に示すように、コネクタ10を準備するとともに、相手コネクタ200を準備する。続いて、
図9に示すように、嵌合筒部46と相手側嵌合筒部203とが互いに対向するように、コネクタ10と相手コネクタ200とを配置する。このとき、スライダ60が第1位置に配置されるとともに、スライダ60の嵌合保証部68と相手コネクタ200の相手側嵌合保証部204とが互いに対向される。
【0067】
続いて、
図10に示すように、コネクタ10と相手コネクタ200との嵌合が開始されると、嵌合保証部68の前方向X1の端面に相手側嵌合保証部204の後方向X2の端面が接触される。コネクタ10と相手コネクタ200との嵌合が進むと、相手側嵌合保証部204により嵌合保証部68が後方向X2に向かって押圧される。これにより、
図7に示すように、スライダ60は、スプリング70を第1軸線Xに圧縮させつつ、第1軸線Xに沿って第1位置から第2位置に移動される。このとき、
図14に示すように、スライダ60は、ガイド凸部69がガイド溝41に嵌合された状態で、第1軸線Xに沿って第1位置から第2位置にスライドされる。これにより、ガイド凸部69が第2軸線Yにおいてガイド溝41と係合された状態で、スライダ60が第1軸線Xに沿ってスライドされるため、スライダ60が第2軸線Yに対して傾くことを抑制できる。また、
図10に示すように、相手側嵌合保証部204により押圧される部分である嵌合保証部68と第1軸線X上で重なるようにスプリング70の連結部75が設けられる。この連結部75が第3軸線Zに沿ってスライダ60に接触されているため、スライダ60が第1軸線Xに沿ってスライドされる際に、スライダ60が第3軸線Zに対して傾くことを抑制できる。
【0068】
次いで、
図11に示すように、スライダ60が第2位置に配置された状態で嵌合保証部68が相手側嵌合保証部204により更に後方向X2に向かって押圧されると、嵌合保証部68の一対の弾性片68Aが互いに離れるように弾性変形する。これにより、相手側嵌合保証部204が一対の弾性片68Aの間に進入される。これにより、スライダ60の前方向X1への移動が許容される。その後、コネクタ10と相手コネクタ200とが正規に嵌合されると、
図12に示すように、スプリング70の反力によりスライダ60が第1位置に向けて付勢され、スライダ60が第1軸線Xに沿って第2位置から第1位置に平行移動する。このとき、スプリング70は、スライダ60に対して第3軸線Zに沿って線接触する連結部75によってスライダ60を前方向X1に向かって押圧する。このため、スライダ60が第1軸線Xに沿って第2位置から第1位置にスライドされる際に、スライダ60が第3軸線Zに対して傾くことを抑制できる。このように、コネクタ10と相手コネクタ200とが正規に嵌合されると、相手側嵌合保証部204の全体が嵌合保証部68の内部に収容された状態で、スライダ60が第1位置に配置される。なお、コネクタ10と相手コネクタ200とが正規に嵌合できていない場合には、例えば、スプリング70の反力によって後方向X2に向かってコネクタ10が押し返される。
【0069】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)コネクタ10は、端子20と、端子20を保持するハウジング30と、ハウジング30の内部に収容されるとともに、第1軸線Xに沿って第1位置と第2位置とに移動可能に設けられたスライダ60と、スライダ60を付勢するスプリング70と、を有する。スプリング70は、第1軸線Xと交差する第2軸線Yに向かって延びる一対のアーム71と、一対のアーム71を連結するとともにスライダ60に接触する連結部75と、を有する。連結部75は、第1軸線Xおよび第2軸線Yの双方と交差する第3軸線Zに沿って延びている。スプリング70は、連結部75が第3軸線Zに沿ってスライダ60に接触された状態で、スライダ60を第1位置に向けて付勢する。
【0070】
この構成によれば、一対のアーム71を連結する連結部75が第3軸線Zに沿ってスライダ60に線接触された状態で、スライダ60がスプリング70により第1位置に向けて付勢される。これにより、一対のアーム71のみがスライダ60に接触する場合に比べて、スプリング70とスライダ60との接触領域、特に第3軸線Zに沿う接触領域を増大させることができる。このため、スプリング70の付勢力によりスライダ60が第1軸線Xに沿って第2位置から第1位置に移動する際に、スライダ60に対してバランス良く付勢力を付与することができ、スライダ60をバランス良く移動させることができる。したがって、スライダ60が第2位置から第1位置に移動する際に、スライダ60が第3軸線Zに対して傾くことを好適に抑制でき、スライダ60を安定した姿勢で可動させることができる。この結果、スプリング70のばね反力をスライダ60に好適に付与させることができるため、スプリング70およびスライダ60を利用した相手コネクタ200との嵌合保証を好適に行うことができる。このような嵌合保証が好適に機能されると、コネクタ10と相手コネクタ200とが正規に嵌合できていない場合に、スプリング70の反力によって後方向X2に向かってコネクタ10が押し返される。これにより、コネクタ10と相手コネクタ200とが半嵌合状態となる等の嵌合不良が発生することを好適に抑制できる。この結果、コネクタ10と相手コネクタ200との接続信頼性を向上させることができる。
【0071】
(2)一対のアーム71の各々は、連結部75と接続される第1端部(ここでは、上方向Y1の端部)と、第1端部の反対側に設けられた第2端部(ここでは、下方向Y2の端部)とを有する。スプリング70は、第2端部から第1端部に向かって折り返された折り返し部76を有する。
【0072】
この構成によれば、スプリング70を、各アーム71の第2端部にねじりコイル形状を設けない構造とすることができる。これにより、ねじりコイル形状を設ける従来構造に比べて、スプリング70を小型化することができる。
【0073】
(3)スプリング70を小型化できるため、フェライトコア80のサイズを大きくすることができる。この場合には、コネクタ10におけるノイズ除去性能を向上させることができる。
【0074】
(4)スプリング70は、折り返し部76から第3軸線Zに沿って延びる延長部77を更に有する。延長部77は、ハウジング30の内面、具体的にはカバー部材50の本体部51の前方向X1の端面に接触可能である。
【0075】
この構成によれば、延長部77を設けた分だけ、スプリング70とハウジング30の内面との接触面積を増大させることができる。これらスプリング70とハウジング30の内面との接触により、ハウジング30の内部におけるスプリング70の移動を好適に規制できる。このため、ハウジング30の内部におけるスプリング70の姿勢を所望の姿勢に好適に維持できる。
【0076】
(5)一対のアーム71の各々は、連結部75から第1斜め方向に立ち上がる立上り部72と、立上り部72の端部から第1斜め方向と交差する第2斜め方向に立ち下がる立下り部73と、を有する。立上り部72は、連結部75から離れるに連れて、スライダ60から離れる方向に傾斜している。
【0077】
この構成によれば、スプリング70の各アーム71が逆V字状に屈曲するように形成される。これにより、各アーム71によってスライダ60に好適に付勢力を付与することができる。
【0078】
(6)スライダ60は、相手コネクタ200との嵌合を保証する嵌合保証部68を有する。嵌合保証部68は、相手コネクタ200が有する相手側嵌合保証部204に押圧される部分である。連結部75は、第1軸線Xから見た平面視において、嵌合保証部68と重なる位置に設けられている。
【0079】
この構成によれば、コネクタ10と相手コネクタ200とが嵌合される際に、スライダ60の嵌合保証部68が相手側嵌合保証部204によって押圧される。この嵌合保証部68と平面視で重なるようにスプリング70の連結部75が設けられる。このため、相手側嵌合保証部204により嵌合保証部68が押圧される際に、その嵌合保証部68と重なる位置で連結部75がスライダ60に第3軸線Zに沿って線接触される。したがって、相手側嵌合保証部204により嵌合保証部68が押圧される際に、スプリング70の連結部75によってスライダ60を好適に支持することができる。この結果、相手側嵌合保証部204による押圧に伴ってスライダ60が第1位置から第2位置に移動する際に、スライダ60が第3軸線Zに対して傾くことを好適に抑制でき、スライダ60を安定した姿勢で可動させることができる。
【0080】
(7)ハウジング30は、第1軸線Xに沿って延びるガイド溝41を有する。スライダ60は、ガイド溝41に嵌合するとともに第1軸線Xに沿って延びるガイド凸部69を有する。ガイド凸部69は、第2軸線Yにおいてガイド溝41と係合可能に形成されている。スライダ60は、ガイド凸部69がガイド溝41に嵌合した状態で、第1軸線Xに沿って移動可能である。
【0081】
この構成によれば、ガイド凸部69がガイド溝41に嵌合された状態で、スライダ60が第1軸線Xに沿って移動される。このとき、ガイド凸部69が第2軸線Yにおいてガイド溝41と係合される。このため、スライダ60が第1軸線Xに沿って移動する際に、スライダ60が第2軸線Yに対して傾くことを好適に抑制でき、スライダ60を安定した姿勢で可動させることができる。
【0082】
(8)スライダ60は、アーム71および連結部75が収容されるスプリング収容部63を有する。スプリング収容部63は、底面64と、底面64から突出する壁部65,66とを有する。壁部66は、スプリング70をスプリング収容部63の内部空間に誘い込む誘導部67を有する。
【0083】
この構成によれば、ハウジング30に対してスプリング70を取り付ける際に、スプリング70を誘導部67に沿って移動させることにより、スプリング70をスプリング収容部63の内部空間にスムーズに挿入させることができる。これにより、コネクタ10の組立作業性を向上させることができる。
【0084】
(9)スプリング70を誘導部67に沿ってスプリング収容部63の内部空間に挿入させることができるため、スプリング70を正規位置、つまりスプリング収容部63の内部空間に好適にセットすることができる。
【0085】
(10)ハウジング30は、端子20を収容する端子収容部37を有するハウジング本体31と、ハウジング本体31に取り付けられるカバー部材50と、を有する。ハウジング30は、ハウジング本体31とカバー部材50とが合体されることにより、スライダ60の外周と端子20の外周とを包囲する筒状に形成されている。
【0086】
この構成によれば、ハウジング30が、ハウジング本体31およびカバー部材50の複数の部品によってスライダ60の外周と端子20の外周とを包囲する筒状に形成されている。これにより、ハウジング30を筒状としながらも、ハウジング30が複数の部品に分かれていることで、ハウジング30を端子20等に対して後付け可能となる。したがって、端子20等とハウジング30との組み付け性を向上でき、コネクタ10の組立作業性を向上できる。
【0087】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0088】
・上記実施形態におけるスプリング70の構造を適宜変更してもよい。
・スプリング70の延長部77を省略してもよい。
・各アーム71の構造を変更してもよい。例えば、立上り部72および立下り部73を省略し、各アーム71を第2軸線Yに沿って直線状に延びる形状としてもよい。
【0089】
・上記実施形態におけるスライダ60の構造を適宜変更してもよい。
・スプリング収容部63の壁部66から誘導部67を省略してもよい。
・スライダ60のガイド凸部69を省略してもよい。
【0090】
・嵌合保証部68の構造を適宜変更してもよい。
・上記実施形態におけるハウジング30の構造を適宜変更してもよい。
・ハウジング本体31とカバー部材50との係合構造を適宜変更してもよい。
【0091】
・上記実施形態のハウジング30では、ハウジング本体31とカバー部材50とを別部品で構成するようにしたが、これに限定されない。例えば、ハウジング本体31とカバー部材50とをヒンジ等を介して一体に形成するようにしてもよい。
【0092】
・上記実施形態では、ハウジング30を2つの分割体、つまりハウジング本体31とカバー部材50とにより構成したが、これに限定されない。例えば、ハウジング30を3つ以上の分割体により構成してもよい。
【0093】
・ハウジング本体31の構造を適宜変更してもよい。ガイド溝41を省略してもよい。切欠部43を省略してもよい。
・上記実施形態におけるフェライトコア80を省略してもよい。
【0094】
・上記実施形態における端子20の構造を適宜変更してもよい。端子20を、電線接続部21と雌端子部22とが一直線上に並ぶ構造に変更してもよい。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
10 コネクタ
20 端子
21 電線接続部
22 雌端子部
30 ハウジング
31 ハウジング本体
32 基部
33,34,35,36 周壁
37 端子収容部
37A,37B 筒状部
37C 収容溝
38 フェライト収容部
40 取付部
41 ガイド溝
42 貫通孔
43 切欠部
45 スプリング収容部
46 嵌合筒部
47 係合部
50 カバー部材
51 本体部
52 係合部
53 係合孔
60 スライダ
61 本体部
62 貫通孔
63 スプリング収容部
64 底面
65 壁部
66 壁部
67 誘導部
68 嵌合保証部
68A 弾性片
69 ガイド凸部
70 スプリング
71 アーム
72 立上り部
73 立下り部
75 連結部
76 折り返し部
77 延長部
80 フェライトコア
90 電線
200 相手コネクタ
201 相手端子
202 相手ハウジング
203 相手側嵌合筒部
204 相手側嵌合保証部
X 第1軸線
X1 前方向
X2 後方向
Y 第2軸線
Y1 上方向
Y2 下方向
Z 第3軸線
Z1 第1幅方向
Z2 第2幅方向