(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140568
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】積層インダクタ
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20250919BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20250919BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
H01F27/29 P
H01F17/00 D
H01F17/04 F
H01F17/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040050
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070BA11
5E070CB02
5E070CB13
5E070CB17
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クラック等の構造欠陥に起因する信頼性の低下を抑制することができる積層インダクタを提供する。
【解決手段】積層インダクタ1Aにおいて、複数のコイル導体層CC1~CC8は、積層方向に連続する第1コイル導体層41をM+N層(M及びNは自然数)有する。第1コイル導体層41のそれぞれは、第1並列部P11~P14を有する。積層方向に隣り合う第1コイル導体層41の第1並列部同士は、少なくとも2つのビア導体Vを介して並列接続されている。第1コイル導体層のうち、M層は第1外部電極21に接続される第1引き出し導体51を有する第1引き出し層41Mであり、N層は第1引き出し導体51を有していない第1非引き出し層41Nである。Mは2以上の自然数であり、少なくとも1組の第1引き出し層41Mの積層方向での間には、少なくとも1層の第1非引き出し層41Nが存在する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層方向に積層され、内部にコイルを有する積層体と、
前記積層体の外表面に設けられ、前記コイルに電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と、を備え、
前記コイルは、前記絶縁層とともに前記積層方向に積層された複数のコイル導体層が電気的に接続されることにより構成され、
前記複数のコイル導体層は、前記積層方向に連続する第1コイル導体層をM+N層(M及びNは自然数)有し、
前記第1コイル導体層のそれぞれは、第1並列部を有し、
前記積層方向に隣り合う前記第1コイル導体層の前記第1並列部同士は、少なくとも2つのビア導体を介して並列接続されており、
前記第1コイル導体層のうち、M層は前記第1外部電極に接続される第1引き出し導体を有する第1引き出し層であり、N層は前記第1引き出し導体を有していない第1非引き出し層であり、
Mは2以上の自然数であり、
少なくとも1組の前記第1引き出し層の前記積層方向での間には、少なくとも1層の前記第1非引き出し層が存在する、積層インダクタ。
【請求項2】
複数の絶縁層が積層方向に積層され、内部にコイルを有する積層体と、
前記積層体の外表面に設けられ、前記コイルに電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と、を備え、
前記コイルは、前記絶縁層とともに前記積層方向に積層された複数のコイル導体層が電気的に接続されることにより構成され、
前記複数のコイル導体層は、前記積層方向に連続する第1コイル導体層をM+N層(M及びNは自然数)有し、
前記第1コイル導体層のそれぞれは、第1並列部を有し、
前記積層方向に隣り合う前記第1コイル導体層の前記第1並列部同士は、少なくとも2つのビア導体を介して並列接続されており、
前記第1コイル導体層のうち、M層は前記第1外部電極に接続される第1引き出し導体を有する第1引き出し層であり、N層は前記第1引き出し導体を有していない第1非引き出し層であり、
前記積層方向から見たときに、前記第1引き出し層の周回部のうち、電流経路を構成する部分は、前記第1非引き出し層の周回部のうち、電流経路を構成する部分と向き及び形状が同じである、積層インダクタ。
【請求項3】
前記第1引き出し層において、前記第1外部電極と、前記第1外部電極までの経路長が最も短い位置に存在する前記ビア導体と、の間を接続する部分は、前記第1外部電極と接する部分を除いて、直線状の形状からなる、請求項2に記載の積層インダクタ。
【請求項4】
Mは2以上の自然数であり、
少なくとも1組の前記第1引き出し層の前記積層方向での間には、少なくとも1層の前記第1非引き出し層が存在する、請求項2又は3に記載の積層インダクタ。
【請求項5】
前記第1引き出し層の少なくとも1層において、前記第1引き出し導体のうち前記第1外部電極と接する部分の幅は、前記第1並列部の幅よりも大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層インダクタ。
【請求項6】
前記第1引き出し層における前記第1引き出し導体のうち前記第1外部電極と接する部分の幅の合計は、前記第1引き出し層及び前記第1非引き出し層における前記第1並列部の幅の合計と同等以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層インダクタ。
【請求項7】
M+Nは3以上の自然数であり、
前記第1引き出し層は前記積層方向に2層以上連続していない、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層インダクタ。
【請求項8】
M+Nは3以上の自然数であり、
前記第1引き出し層と前記第1非引き出し層とは、前記積層方向に交互に設けられている、請求項7に記載の積層インダクタ。
【請求項9】
M=2、かつ、N=2であり、
2層の前記第1引き出し層の間に2層の前記第1非引き出し層が前記積層方向に連続して設けられている、請求項7に記載の積層インダクタ。
【請求項10】
前記第1引き出し層において、前記第1引き出し導体と前記第1並列部とは直接接続されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層インダクタ。
【請求項11】
前記第1非引き出し層の周回部のうち、電流経路を構成する部分は、前記並列部のみからなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層インダクタ。
【請求項12】
前記複数のコイル導体層は、前記積層方向に連続する第2コイル導体層をK+L層(K及びLは自然数)有し、
前記第2コイル導体層のそれぞれは、第2並列部を有し、
前記積層方向に隣り合う前記第2コイル導体層の前記第2並列部同士は、少なくとも2つのビア導体を介して並列接続されており、
前記第2コイル導体層のうち、K層は前記第2外部電極に接続される第2引き出し導体を有する第2引き出し層であり、L層は前記第2引き出し導体を有していない第2非引き出し層である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の絶縁体層からなる積層体と、上記積層体の外側に形成された外部電極と、上記積層体の内部にスパイラル状に形成されたコイル導体とを備え、上記コイル導体は外部電極と電気的に接続される引出部と引出部以外のコイル本体とを有し、上記コイル導体は絶縁体層に形成された導体パターンと絶縁体層を貫通し複数の導体パターンを電気的に接続するビアホール導体とを有し、一部の絶縁体層に形成された導体パターンは略矩形状の4つの頂点を含み一辺の一部を欠くC字状パターンであり、他の一部の絶縁体層に形成された導体パターンは上記略矩形状における上記C字状パターンにて欠けた一辺の一部に相当するI字状パターンであり、上記コイル本体を構成する導体パターンは上記C字状パターンと上記I字状パターンのみであり、上記コイル本体はC字状パターンが2層以上連続して積層される部分構造を有し、上記コイル本体におけるC字状パターンの個数はI字状パターンの個数よりも多い、積層インダクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、積層インダクタの製造時には、押し切りカットやダイサーカット等の方法で、積層体ブロックをカットする工程が含まれうる。特許文献1に記載の積層インダクタでは、積層体ブロックのカット時に生じる応力により、引き出し導体自体又は引き出し導体と絶縁層との界面にクラック等の構造欠陥が生じるおそれがある。積層インダクタに構造欠陥が生じると、積層インダクタの使用時における断線等のリスクが高くなるため、積層インダクタの信頼性が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、クラック等の構造欠陥に起因する信頼性の低下を抑制することができる積層インダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層インダクタは、複数の絶縁層が積層方向に積層され、内部にコイルを有する積層体と、上記積層体の外表面に設けられ、上記コイルに電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と、を備える。上記コイルは、上記絶縁層とともに上記積層方向に積層された複数のコイル導体層が電気的に接続されることにより構成される。上記複数のコイル導体層は、上記積層方向に連続する第1コイル導体層をM+N層(M及びNは自然数)有する。上記第1コイル導体層のそれぞれは、第1並列部を有する。上記積層方向に隣り合う上記第1コイル導体層の上記第1並列部同士は、少なくとも2つのビア導体を介して並列接続されている。上記第1コイル導体層のうち、M層は上記第1外部電極に接続される第1引き出し導体を有する第1引き出し層であり、N層は上記第1引き出し導体を有していない第1非引き出し層である。
【0007】
第1の態様において、Mは2以上の自然数であり、少なくとも1組の上記第1引き出し層の上記積層方向での間には、少なくとも1層の上記第1非引き出し層が存在する。
【0008】
第2の態様において、上記積層方向から見たときに、上記第1引き出し層の周回部のうち、電流経路を構成する部分は、上記第1非引き出し層の周回部のうち、電流経路を構成する部分と向き及び形状が同じである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クラック等の構造欠陥に起因する信頼性の低下を抑制することができる積層インダクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る積層インダクタの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す積層インダクタを高さ方向に透視して示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す積層インダクタの内部構造の一例を模式的に示す分解平面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す積層インダクタを幅方向に透視して示す図である。
【
図5】
図5は、比較例の積層インダクタを高さ方向に透視して示す図である。
【
図6】
図6は、比較例の積層インダクタを幅方向に透視して示す図である。
【
図7】
図7は、
図5でのVII-VII線に沿った断面において、第1引き出し導体を拡大して示す模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る積層インダクタの一例を模式的に示す分解平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3実施形態に係る積層インダクタの一例を模式的に示す分解平面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第4実施形態に係る積層インダクタの一例を模式的に示す分解平面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第5実施形態に係る積層インダクタの一例を模式的に示す分解平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の積層インダクタについて説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0012】
本明細書において、要素間の関係性を示す用語(例えば「垂直」、「平行」、「直交」等)及び要素の形状を示す用語は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0013】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2実施形態以降では、第1実施形態と共通の事項についての記述は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎には逐次言及しない。
【0014】
以下に示す図面は模式図であり、その寸法、縦横比の縮尺等は実際の製品と異なる場合がある。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る積層インダクタの一例を模式的に示す斜視図である。
【0016】
図1に示す積層インダクタ1Aは、積層体10Aと、第1外部電極21及び第2外部電極22と、を備える。積層体10Aは、例えば、6面を有する直方体状又は略直方体形状を有する。
図1には示されていないが、積層体10Aは、複数の絶縁層が積層方向に積層されてなり、内部にコイルを有している。第1外部電極21及び第2外部電極22は、各々、コイルに電気的に接続されている。
【0017】
積層インダクタ1A及び積層体10Aでは、長さ方向、高さ方向及び幅方向を
図1におけるL方向、T方向及びW方向とする。ここで、長さ方向Lと高さ方向Tと幅方向Wとは互いに直交する。
【0018】
図1に示す例では、積層体10Aは、長さ方向Lに相対する第1の端面11及び第2の端面12と、高さ方向Tに相対する第1の主面13及び第2の主面14と、幅方向Wに相対する第1の側面15及び第2の側面16と、を有する。
【0019】
図1には示されていないが、積層体10Aは、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。積層体10Aの角部は、積層体10Aの3面が交わる部分であり、積層体10Aの稜線部は、積層体10Aの2面が交わる部分である。
【0020】
第1外部電極21及び第2外部電極22は、積層体10Aの外表面に設けられている。
【0021】
第1外部電極21は、例えば、
図1に示すように、積層体10Aの第1の端面11の全部を覆い、かつ、第1の端面11から延伸して第1の主面13の一部、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部、及び、第2の側面16の一部を覆っている。
【0022】
第2外部電極22は、例えば、
図1に示すように、積層体10Aの第2の端面12の全部を覆い、かつ、第2の端面12から延伸して第1の主面13の一部、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部、及び、第2の側面16の一部を覆っている。
【0023】
以上のように第1外部電極21及び第2外部電極22が配置されている積層インダクタ1Aを基板上に実装する場合には、積層体10Aの第1の主面13、第2の主面14、第1の側面15及び第2の側面16のいずれかが実装面となる。
【0024】
図2は、
図1に示す積層インダクタを高さ方向に透視して示す図である。
【0025】
図2に示す積層インダクタ1Aにおいて、積層体10Aは、内部にコイル30Aを有している。
【0026】
コイル30Aは、後述する第1引き出し導体51及び第2引き出し導体52を有する。コイル30Aは、第1引き出し導体51を介して、第1外部電極21と接続されている。第2引き出し導体52を介して第2外部電極22と接続されている。
【0027】
図3は、
図1に示す積層インダクタの内部構造の一例を模式的に示す分解平面図である。
【0028】
図3に示すように、積層体10A(
図1参照)は、複数の絶縁層IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7及びIL8が、積層体10Aの第1の主面13(
図1参照)から第2の主面14(
図1参照)に向かって、高さ方向Tに積層されることにより構成されている。以下、絶縁層IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7及びIL8をまとめて絶縁層ILとも記載する。
【0029】
図3においては、絶縁層IL1が積層方向(ここでは高さ方向T)の上側(積層体10Aの第2の主面14側)、絶縁層IL8が積層方向の下側(積層体10Aの第1の主面13側)に配置され、かつ、各々の絶縁層ILの主面のうち、高さ方向Tの負方向側(
図3では紙面奥側)の主面が積層方向の下側、高さ方向Tの正方向側(
図3では紙面手前側)の主面が積層方向の上側に配置される。
【0030】
各々の絶縁層ILの構成材料としては、例えば、フェライト材料等の磁性材料が挙げられる。
【0031】
図3に示すように、絶縁層IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7及びIL8には、それぞれ、コイル導体層CC1、CC2、CC3、CC4、CC5、CC6、CC7及びCC8が設けられている。以下、コイル導体層CC1、CC2、CC3、CC4、CC5、CC6、CC7及びCC8をまとめてコイル導体層CCとも記載する。
【0032】
コイル導体層CC1、CC2、CC3、CC4、CC5、CC6、CC7及びCC8は、それぞれ、絶縁層IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7及びIL8の主面上、具体的には、高さ方向Tの正方向側(
図3では紙面手前側)の主面上に設けられている。
【0033】
絶縁層ILとともに積層方向(ここでは高さ方向T)に積層された複数のコイル導体層CCが電気的に接続されることにより、コイル30A(
図2参照)が構成されている。
【0034】
1層目L1のコイル導体層CC1は、周回部R1及び第1引き出し導体51からなる。1層目L1の絶縁層IL1には、コイル導体層CC1とコイル導体層CC2とを接続するビア導体V1x及びV1yが設けられている。
【0035】
2層目L2のコイル導体層CC2は、周回部R2からなる。2層目L2の絶縁層IL2には、コイル導体層CC2とコイル導体層CC3とを接続するビア導体V2x及びV2yが設けられている。
【0036】
3層目L3のコイル導体層CC3は、周回部R3からなる。3層目L3の絶縁層IL3には、コイル導体層CC3とコイル導体層CC4とを接続するビア導体V3x及びV3yが設けられている。
【0037】
4層目L4のコイル導体層CC4は、周回部R4及び第1引き出し導体51からなる。4層目L4の絶縁層IL4には、コイル導体層CC4とコイル導体層CC5とを接続するビア導体V4yが設けられている。
【0038】
5層目L5のコイル導体層CC5は、周回部R5及び第2引き出し導体52からなる。5層目L5の絶縁層IL5には、コイル導体層CC5とコイル導体層CC6とを接続するビア導体V5x及びV5yが設けられている。
【0039】
6層目L6のコイル導体層CC6は、周回部R6からなる。6層目L6の絶縁層IL6には、コイル導体層CC6とコイル導体層CC7とを接続するビア導体V6x及びV6yが設けられている。
【0040】
7層目L7のコイル導体層CC7は、周回部R7からなる。7層目L7の絶縁層IL7には、コイル導体層CC7とコイル導体層CC8とを接続するビア導体V7x及びV7yが設けられている。
【0041】
8層目L8のコイル導体層CC8は、周回部R8及び第2引き出し導体52からなる。
【0042】
以下、周回部R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8をまとめて周回部Rとも記載する。
【0043】
周回部Rは、コイル軸方向(ここでは高さ方向T)から見たときのコイル30Aの周回部分を構成している。
【0044】
以下、ビア導体V1x、V1y、V2x、V2y、V3x、V3y、V4y、V5x、V5y、V6x、V6y、V7x及びV7yをまとめてビア導体Vとも記載する。
【0045】
ビア導体Vは、絶縁層ILを積層方向(ここでは高さ方向T)に貫通するように設けられている。
【0046】
絶縁層ILの主面上には、ビア導体Vと接続されるランドが設けられていてもよい。その場合、ランドのサイズは、ランドの部分を除いたコイル導体層CCの線幅よりも若干大きくてもよい。
【0047】
各々のコイル導体層CC(ランドを含む)及び各々のビア導体Vの構成材料としては、例えば、Ag、Au、Cu、Pd、Ni、Al、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0048】
図3に示すように構成された絶縁層ILが高さ方向Tに積層されると、ビア導体Vを介してコイル導体層CCが電気的に接続される。その結果、積層体10A内においては、
図2に示すように、高さ方向Tに延在するコイル軸を有するソレノイド状のコイル30Aが構成される。
【0049】
図3には示されていないが、積層体10Aは、第1の主面13側に、コイル導体層CCが設けられていない絶縁層ILを1層以上含むことが好ましい。同様に、積層体10Aは、第2の主面14側に、コイル導体層CCが設けられていない絶縁層ILを1層以上含むことが好ましい。以下の実施形態においても同様である。
【0050】
本発明の積層インダクタでは、複数のコイル導体層は、積層方向(ここでは高さ方向T)に連続する第1コイル導体層をM+N層有する。M及びNは自然数である。第1コイル導体層のそれぞれは、第1並列部を有し、積層方向に隣り合う第1コイル導体層の第1並列部同士は、少なくとも2つのビア導体を介して並列接続されている。
【0051】
図3に示す積層インダクタ1Aでは、コイル導体層CC1、CC2、CC3及びCC4の4層が第1コイル導体層41となっている。すなわち、
図3に示す積層インダクタ1Aでは、M+N=4となる。
【0052】
積層インダクタ1Aでは、コイル導体層CC1、CC2、CC3及びCC4は、それぞれ、第1並列部P11、P12、P13、P14を有している。以下、第1並列部をまとめてP1とも記載する。
【0053】
コイル導体層CC1の第1並列部P11と、コイル導体層CC2の第1並列部P12と、はビア導体V1x及びV1yを介して並列接続されている。同様に、コイル導体層CC2の第1並列部P12と、コイル導体層CC3の第1並列部P13と、はビア導体V2x及びV2yを介して並列接続されている。また、コイル導体層CC3の第1並列部P13と、コイル導体層CC4の第1並列部P14と、はビア導体V3x及びV3yを介して並列接続されている。
【0054】
積層インダクタ1Aでは、コイル導体層CC1の周回部R1の全体が第1並列部P11となっている。同様に、コイル導体層CC2の周回部R2の全体が第1並列部P12となっている。また、コイル導体層CC3の周回部R3の全体が第1並列部P13となっている。また、コイル導体層CC4の周回部R4の全体が第1並列部P14となっている。
【0055】
積層インダクタ1Aでは、第1並列部P1の両端のみが、ビア導体Vを介して隣り合う第1並列部P1と接続されているが、第1並列部P1は、両端以外の部分においてもビア導体を介して隣り合う第1並列部P1と接続されていてもよい。この場合、隣り合う第1コイル導体層41の第1並列部P1同士は、3つ以上のビア導体を介して接続される。このように、隣り合う第1コイル導体層41の第1並列部P1同士は、少なくとも2つのビア導体を介して並列接続されていればよい。積層インダクタ1Aのように、隣り合う第1コイル導体層41の第1並列部P1同士が、2つのビア導体を介して並列接続されていてもよい。
【0056】
図4は、
図1に示す積層インダクタを幅方向に透視して示す図である。
【0057】
第1コイル導体層41のうち、M層は第1外部電極21に接続される第1引き出し導体51を有する第1引き出し層41Mである。
図3及び
図4に示すように、積層インダクタ1Aでは、コイル導体層CC1及びCC4の2層が第1引き出し層41Mとなっている。すなわち、積層インダクタ1Aでは、M=2となる。
【0058】
第1コイル導体層41のうち、N層は第1外部電極21に接続される第1引き出し導体51を有していない第1非引き出し層41Nである。
図3及び
図4に示すように、積層インダクタ1Aでは、コイル導体層CC2及びCC3の2層が第1非引き出し層41Nとなっている。すなわち、積層インダクタ1Aでは、N=2となる。
【0059】
なお、
図4に示すように、実際には隣接する絶縁層ILの間には境界は視認されない。
【0060】
以下、第1コイル導体層41が第1非引き出し層41Nを有することによる効果について、説明する。
【0061】
積層インダクタの製造時には、押し切りカットやダイサーカット等の方法で、積層体ブロックをカットする工程が含まれうる。以下、積層インダクタ1Aを製造する工程において、積層体10Aの第1の端面11が切断面となるように、積層体ブロックを高さ方向Tに沿ってカットする工程が含まれる場合を例にとって説明する。積層体ブロックをカットする際には、カット刃の進入方向に応力が生じる。ところで、第1引き出し導体51は、Ag等の金属成分を含んでいるので、第1引き出し導体51は、フェライト材料等から構成される絶縁層ILと比較して弾性率が高く、かつ、破断ひずみが小さい。そのため、切断面に存在する第1引き出し導体51の数が多い場合には、カット刃の進入方向に生じる応力によって、第1引き出し導体51自体、又は、第1引き出し導体51と絶縁層ILとの界面にクラック等の構造欠陥が生じるリスクが高くなる。
【0062】
図3及び
図4に示すように、積層インダクタ1Aでは、4層の第1コイル導体層41のうち、2層が第1引き出し層41Mとなっており、2層が第1非引き出し層41Nとなっている。一方で、後述する比較例の積層インダクタ101Aでは、4層の第1コイル導体層41のうち、4層が第1引き出し層41Mとなっている。比較例の積層インダクタ101Aと比較して、積層インダクタ1Aでは、カット刃の進行方向において第1引き出し導体51の数が少ない。そのため、カット刃の進入方向に生じる応力によって積層インダクタ1Aにおいてクラック等の構造欠陥が生じるリスクを低くすることができる。以上のことから、積層インダクタ1Aでは、クラック等の構造欠陥に起因する信頼性の低下が抑制される。
【0063】
また、積層インダクタ1Aでは、比較例の積層インダクタ101Aと比較して、第1非引き出し層41Nが設けられていることにより、積層方向(ここでは高さ方向T)での第1引き出し導体51の重なり数を減らすことができるので、積層インダクタ1Aのインピーダンスを高くすることができる。
【0064】
本発明の積層インダクタでは、Mは2以上の自然数であり、少なくとも1組の第1引き出し層41Mの積層方向での間には、少なくとも1層の第1非引き出し層41Nが存在することが好ましい。
図3及び
図4に示すように、積層インダクタ1Aでは、Mは2であり、第1引き出し層41Mであるコイル導体層CC1とコイル導体層CC4との間に、第1非引き出し層41Nであるコイル導体層CC2及びコイル導体層CC3が存在する。少なくとも1組の第1引き出し層41Mの積層方向での間に、少なくとも1層の第1非引き出し層41Nが存在すると、第1引き出し層41M同士の間に、弾性率が低く、かつ、破断ひずみが大きいフェライトなどからなる絶縁層ILが多く挟まれることになる。このため、積層体ブロックをカットする工程における、第1引き出し導体51での応力集中を抑制することができるので、積層インダクタ1Aにおいてクラック等の構造欠陥が生じるリスクをさらに低くすることができる。
【0065】
本発明の積層インダクタでは、M+Nは3以上の自然数であり、第1引き出し層41Mは積層方向に2層以上連続していないことが好ましい。
図3及び
図4に示すように、積層インダクタ1Aでは、M+Nは4であり、第1引き出し層41Mであるコイル導体層CC1とコイル導体層CC4とが積層方向に連続していない。第1引き出し層41Mが積層方向に2層以上連続していないと、各第1引き出し層41M同士の間に、第1非引き出し層41Nが存在することとなる。それゆえ、各第1引き出し層41M同士の間に弾性率が低く、かつ、破断ひずみが大きいフェライトなどからなる絶縁層ILが多く挟まれることになる。このため、積層体ブロックをカットする工程における、第1引き出し導体51での応力集中を抑制することができるので、積層インダクタ1Aにおいてクラック等の構造欠陥が生じるリスクをさらに低くすることができる。
【0066】
図3及び
図4に示すように、積層インダクタ1Aでは、M=2、かつ、N=2であり、2層の第1引き出し層41Mの間に2層の第1非引き出し層41Nが積層方向に連続して設けられている。
【0067】
図3に示す積層インダクタ1Aのように、積層方向から見たときに、第1引き出し層41Mの周回部Rのうち、電流経路を構成する部分は、第1非引き出し層41Nの周回部Rのうち、電流経路を構成する部分と向き及び形状が同じであることが好ましい。
【0068】
積層方向から見たときに、第1引き出し層41Mの周回部Rのうち、電流経路を構成する部分が、第1非引き出し層41Nの周回部Rのうち、電流経路を構成する部分と向き及び形状が同じであると、コイルの磁束が遮られることを抑制できるので、最も効率的にインピーダンスを向上することができる。第1引き出し層41Mの周回部Rのうち、電流経路を構成する部分が、第1非引き出し層41Nの周回部Rのうち、電流経路を構成する部分と向き又は形状が異なる場合には、周回部R同士で形状が異なる部分、又は、周回部R同士で向きが異なる部分において、コイルの磁束が遮られる、又は、コイルの磁束が打ち消し合ってしまうおそれがある。そのため、積層インダクタのインピーダンスが低下するおそれがある。
【0069】
また、積層方向から見たときに、第1引き出し層41Mの周回部Rのうち、電流経路を構成する部分が、第1非引き出し層41Nの周回部Rのうち、電流経路を構成する部分と向き及び形状が同じであると、各第1並列部P1における、導体での電流密度差が生じないようにすることができるため、積層インダクタ1Aを長期間使用した際の劣化を抑制できる。第1引き出し層41Mの周回部Rのうち、電流経路を構成する部分が、第1非引き出し層41Nの周回部Rのうち、電流経路を構成する部分と向き又は形状が異なる場合には、各第1並列部P1での電流の流れやすさが異なる状態になる場合がある。この場合、最も電流が流れやすい経路となる第1並列部P1を選択的に電流が多く流れることとなる。そのため、最も電流が流れやすい経路の劣化が加速されてしまうので、積層インダクタの劣化が起こりやすくなるおそれがある。
【0070】
第1引き出し層41Mの周回部Rのうち、電流経路を構成する部分とは、第1引き出し層41Mの周回部Rのうち、電流が流れないダミー電極を除いた部分を意味する。同様に、第1非引き出し層41Nの周回部Rのうち、電流経路を構成する部分とは、第1非引き出し層41Nの周回部Rのうち、電流が流れないダミー電極を除いた部分を意味する。
図3に示すように、積層インダクタ1Aには、電流が流れないダミー電極が存在しないため、第1引き出し層41Mの周回部Rの全体が電流経路を構成する部分となっており、第1非引き出し層41Nの周回部Rの全体が電流経路を構成する部分となっている。
【0071】
積層インダクタ1Aでは、積層方向から見たときに、第1引き出し層41Mの周回部Rは、第1非引き出し層41Nの周回部Rと向き及び形状が同じである。積層インダクタ1Aでは、積層方向から見たときに、第1引き出し層41Mの周回部Rの全体は、第1非引き出し層41Nの周回部Rの全体と重なっている。
【0072】
第1引き出し層41Mの少なくとも1層において、第1引き出し導体51のうち第1外部電極21と接する部分の幅は、第1並列部P1の幅よりも大きいことが好ましい。
図3に示すように、積層インダクタ1Aでは、第1引き出し層41Mであるコイル導体層CC1において、第1引き出し導体51のうち第1外部電極21と接する部分の幅A1は、第1並列部P11の幅B1よりも大きい。また、第1引き出し層41Mであるコイル導体層CC4において、第1引き出し導体51のうち第1外部電極21と接する部分の幅A4は、第1並列部P14の幅B4よりも大きい。積層インダクタ1Aのように、全ての第1引き出し層41Mにおいて、第1引き出し導体51のうち第1外部電極21と接する部分の幅は、第1並列部P1の幅よりも大きいことが好ましい。
【0073】
第1引き出し導体51のうち第1外部電極21と接する部分の幅が、第1並列部P1の幅よりも大きいと、例えば、積層体10Aの第1の端面11が切断面となるように、積層体ブロックを高さ方向Tに沿ってカットする場合において、第1引き出し導体51の面積を、カット刃の進入方向と垂直な方向に大きくすることができる。そのため、第1引き出し導体51における応力集中を低減することができるので、積層インダクタ1Aにおいてクラック等の構造欠陥が生じるリスクをさらに低くすることができる。
【0074】
その一方で、積層インダクタ1Aでは、第1非引き出し層41Nが存在しない構成と比較して、第1引き出し層41Mの数が少なくなっているので、第1引き出し層41Mを減らした分だけ第1引き出し導体51での抵抗が大きくなる。そこで、第1引き出し導体51のうち第1外部電極21と接する部分の幅を、第1並列部P1の幅よりも大きくすることにより、第1引き出し導体51での抵抗が大きくなることが抑制できる。
【0075】
第1引き出し層41Mにおける第1引き出し導体51のうち第1外部電極21と接する部分の幅の合計は、第1引き出し層41M及び第1非引き出し層41Nにおける第1並列部P1の幅の合計と同等以上であることが好ましい。
図3に示すように、積層インダクタ1Aでは、コイル導体層CC1における第1引き出し導体51のうち第1外部電極21と接する部分の幅A1と、コイル導体層CC4における第1引き出し導体51のうち第1外部電極21と接する部分の幅A4と、の合計が第1引き出し層41Mにおける第1引き出し導体51のうち第1外部電極21と接する部分の幅の合計となる。また、コイル導体層CC1、CC2、CC3及びCC4の第1並列部P11、P12、P13及びP14の幅B1~B4の合計が、第1引き出し層41M及び第1非引き出し層41Nにおける第1並列部P1の幅の合計となる。積層インダクタ1Aでは、第1引き出し層41Mにおける第1引き出し導体51のうち第1外部電極21と接する部分の幅の合計は、第1引き出し層41M及び第1非引き出し層41Nにおける第1並列部P1の幅の合計よりも大きい。第1引き出し層41Mにおける第1引き出し導体51のうち第1外部電極21と接する部分の幅の合計は、第1引き出し層41M及び第1非引き出し層41Nにおける第1並列部P1の幅の合計と同じであってもよい。
【0076】
第1引き出し層41Mにおける第1引き出し導体51のうち第1外部電極21と接する部分の幅の合計が、第1引き出し層41M及び第1非引き出し層41Nにおける第1並列部P1の幅の合計と同等以上であると、周回部Rでの電流密度に対して、第1引き出し導体51における電流密度が高くなることを抑制できる。そのため、第1引き出し導体51におけるエレクトロマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0077】
積層インダクタ1Aでは、第1引き出し導体51の幅は、周回部R1と接する部分よりも、第1外部電極21と接する部分において大きくなっている。第1引き出し導体51の幅は一定であってもよい。
【0078】
第1引き出し層41Mにおいて、第1引き出し導体51と第1並列部P1とは直接接続されていてもよい。
図3に示すように、積層インダクタ1Aでは、第1引き出し層41Mであるコイル導体層CC1において、第1引き出し導体51と第1並列部P11とは直接接続されている。同様に、第1引き出し層41Mであるコイル導体層CC4において、第1引き出し導体51と第1並列部P14とは直接接続されている。
【0079】
第1引き出し層41Mにおいて、第1外部電極21と、第1外部電極21までの経路長が最も短い位置に存在するビア導体Vと、の間を接続する部分は第1外部電極21と接する部分を除いて、直線状の形状からなっていてもよい。
【0080】
例えば、第1引き出し層41Mであるコイル導体層CC1においてはビア導体V1xが第1外部電極21までの経路長が最も短い位置に存在するビア導体となる。コイル導体層CC1では、第1引き出し導体51のうち、第1外部電極21と接する部分の幅が広くなっている。このような場合においても、第1外部電極21とビア導体V1xとの間の部分のうち、
図3におけるB1で示される幅の部分は、直線状の形状からなっている。そのため、コイル導体層CC1において、第1外部電極21とビア導体V1xとの間を接続する部分は、第1外部電極21と接する部分を除いて、直線状の形状からなっているといえる。
【0081】
第1非引き出し層41Nの周回部Rのうち、電流経路を構成する部分は、第1並列部P1のみからなっていてもよい。また、第1非引き出し層41Nの周回部Rの全体が、第1並列部P1のみからなっていてもよい。
図3に示すように、積層インダクタ1Aでは、第1非引き出し層41Nであるコイル導体層CC2において、周回部R2の全体が、第1並列部P12のみからなっている。同様に、第1非引き出し層41Nであるコイル導体層CC4において、周回部R4の全体が、第1並列部P14のみからなっている。
【0082】
本発明の積層インダクタでは、複数のコイル導体層は、積層方向(
図3では高さ方向T)に連続する第2コイル導体層をK+L層有していてもよい。K及びLは自然数である。第2コイル導体層のそれぞれは、第2並列部を有し、積層方向に隣り合う第2コイル導体層の第2並列部同士は、少なくとも2つのビア導体を介して並列接続されている。
【0083】
図3に示す積層インダクタ1Aでは、コイル導体層CC5、CC6、CC7及びCC8の4層が第2コイル導体層42となっている。すなわち、
図3に示す積層インダクタ1Aでは、K+L=4となる。
【0084】
積層インダクタ1Aでは、コイル導体層CC5、CC6、CC7及びCC8は、それぞれ、第2並列部P25、P26、P27、P28を有している。以下、第2並列部をまとめてP2とも記載する。
【0085】
コイル導体層CC5の第2並列部P25と、コイル導体層CC6の第2並列部P26と、はビア導体V5x及びV5yを介して並列接続されている。同様に、コイル導体層CC6の第2並列部P26と、コイル導体層CC7の第2並列部P27と、はビア導体V6x及びV6yを介して並列接続されている。また、コイル導体層CC7の第2並列部P27と、コイル導体層CC8の第2並列部P28と、はビア導体V7x及びV7yを介して並列接続されている。
【0086】
積層インダクタ1Aでは、コイル導体層CC5の周回部R5の全体が第2並列部P25となっている。同様に、コイル導体層CC6の周回部R6の全体が第2並列部P26となっている。また、コイル導体層CC7の周回部R7の全体が第2並列部P27となっている。また、コイル導体層CC8の周回部R8の全体が第2並列部P28となっている。
【0087】
積層インダクタ1Aでは、第2並列部P2の両端のみが、ビア導体Vを介して隣り合う第2並列部P2と接続されているが、第2並列部P2は、両端以外の部分においてもビア導体を介して隣り合う第2並列部P2と接続されていてもよい。この場合、隣り合う第2コイル導体層42の第2並列部P2同士は、3つ以上のビア導体を介して接続される。このように、隣り合う第2コイル導体層42の第2並列部P2同士は、少なくとも2つのビア導体を介して並列接続されていればよい。積層インダクタ1Aのように、隣り合う第2コイル導体層42の第2並列部P2同士が、2つのビア導体を介して並列接続されていてもよい。
【0088】
第2コイル導体層42のうち、K層は第2外部電極22に接続される第2引き出し導体52を有する第2引き出し層42Kである。
図3及び
図4に示すように、積層インダクタ1Aでは、コイル導体層CC5及びCC8の2層が第2引き出し層42Kとなっている。すなわち、積層インダクタ1Aでは、K=2となる。
【0089】
第2コイル導体層42のうち、L層は第2外部電極22に接続される第2引き出し導体52を有していない第2非引き出し層42Lである。
図3及び
図4に示すように、積層インダクタ1Aでは、コイル導体層CC6及びCC7の2層が第2非引き出し層42Lとなっている。すなわち、積層インダクタ1Aでは、L=2となる。
【0090】
第2コイル導体層42が第2非引き出し層42Lを有していると、積層インダクタ1Aを製造する工程において、例えば、積層体10Aの第2の端面12が切断面となるように、積層体ブロックを高さ方向Tに沿ってカットする工程が含まれる場合に、積層インダクタ1Aにおいてクラック等の構造欠陥が生じるリスクを低くすることができる。
【0091】
積層インダクタ1Aでは、積層体10Aの第2の主面14側から4層のコイル導体層CCが第1コイル導体層41となり、積層体10Aの第1の主面13側から4層のコイル導体層CCが第2コイル導体層42となっている。第2コイル導体層42は、第1コイル導体層41とは反対の主面側に設けられ、引き出し導体が第2外部電極22と接続すること以外は、第1コイル導体層41と同様の構成を有していてもよい。
【0092】
以下、
図1~
図4に示す積層インダクタ1Aの製造方法の一例について説明する。
【0093】
<磁性材料の作製工程>
まず、Fe2O3、ZnO、CuO及びNiOを所定の比率になるように秤量する。
【0094】
次に、これらの秤量物、純水等を、PSZ(部分安定化ジルコニア)メディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕する。混合・粉砕時間については、例えば、4時間以上、8時間以下とする。
【0095】
そして、得られた粉砕物を乾燥させた後、仮焼する。仮焼温度については、例えば、700℃以上、800℃以下とする。仮焼時間については、例えば、2時間以上、5時間以下とする。
【0096】
このようにして、粉末状の磁性材料、より具体的には、粉末状の磁性フェライト材料を作製する。
【0097】
フェライト材料は、例えば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料を用いる。
【0098】
Ni-Cu-Zn系フェライト材料は、例えば、全量を100mоl%としたとき、FeをFe2O3換算で40mol%以上、49.5mol%以下、ZnをZnO換算で2mol%以上、35mol%以下、CuをCuO換算で6mol%以上、13mol%以下、NiをNiO換算で10mol%以上、45mol%以下含む。
【0099】
Ni-Cu-Zn系フェライト材料は、Co、Bi、Sn、Mn等の添加物をさらに含んでいてもよい。
【0100】
Ni-Cu-Zn系フェライト材料は、不可避不純物をさらに含んでいてもよい。
【0101】
<グリーンシートの作製工程>
まず、磁性材料と、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤と、等を、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕することにより、スラリーを作製する。
【0102】
次に、スラリーを、ドクターブレード法等で、所定の厚みのシート状に成形した後、所定の形状に打ち抜くことにより、グリーンシートを作製する。グリーンシートの厚みについては、例えば、20μm以上、30μm以下とする。グリーンシートの形状については、例えば、矩形状とする。
【0103】
グリーンシートの材料としては、磁性材料に代えて、ホウケイ酸ガラス材料等の非磁性材料を用いてもよいし、磁性材料及び非磁性材料の混合材料を用いてもよい。
【0104】
<導体パターンの形成工程>
まず、グリーンシートの所定の箇所にレーザー照射を行うことにより、ビアホールを形成する。
【0105】
次に、Agペースト等の導電性ペーストを、スクリーン印刷法等で、ビアホールに充填しつつグリーンシートの表面に塗工する。これにより、グリーンシートに対して、ビア導体用導体パターンをビアホールに形成しつつ、ビア導体用導体パターンに接続されたコイル導体用導体パターンを表面上に形成する。このようにして、グリーンシートにコイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンが形成されたコイルシートを作製する。コイルシートには、
図3に示すコイル導体層CC(第1引き出し導体51及び52を含む)に相当するコイル導体用導体パターンと、
図3に示すビア導体Vに相当するビア導体用導体パターンとが形成される。
【0106】
<積層体ブロックの作製工程>
コイルシートを、
図3に相当する順序で積層方向に(ここでは高さ方向Tの負方向から正方向に向かって)積層した後、熱圧着することにより、積層体ブロックを作製する。
【0107】
<積層体及びコイルの作製工程>
まず、積層体ブロックを押し切りカットやダイサーカット等の方法で所定の大きさに切断することにより、個片化されたチップを作製する。
【0108】
次に、個片化されたチップを焼成する。焼成温度については、例えば、900℃以上、920℃以下とする。焼成時間については、例えば、2時間以上、4時間以下とする。
【0109】
個片化されたチップを焼成すると、コイルシートのグリーンシートは、絶縁層となる。
【0110】
また、個片化されたチップを焼成すると、コイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンは、各々、コイル導体及びビア導体となる。その結果、絶縁層とともに積層された複数のコイル導体がビア導体を介して電気的に接続されたコイルが作製される。
【0111】
以上により、複数の絶縁層が積層方向に積層され、内部にコイルを有する積層体が作製される。
【0112】
積層体に対しては、例えば、バレル研磨を施すことにより、角部及び稜線部に丸みを付けてもよい。
【0113】
<外部電極の形成工程>
まず、積層体の外表面のうち、コイルが引き出された端面に、Ag及びガラスフリットを含むペースト等の導電性ペーストを塗工することにより、導電性ペースト層を形成する。
【0114】
次に、導電性ペースト層を焼き付けることにより、外部電極の下地電極を形成する。焼き付け温度については、例えば、800℃以上、820℃以下とする。下地電極の厚みについては、例えば、5μmとする。
【0115】
そして、下地電極の表面上に、電解めっき等で、Niめっき電極及びSnめっき電極を順に形成する。これにより、下地電極、Niめっき電極、及び、Snめっき電極を順に有する外部電極が形成される。
【0116】
以上により、積層インダクタ1Aが製造される。
【0117】
積層インダクタ1Aのサイズは、例えば、長さ方向Lの寸法:2.0mm、幅方向Wの寸法:1.25mm、高さ方向Tの寸法:1.25mmである。
【0118】
図5は、比較例の積層インダクタを高さ方向に透視して示す図である。
図6は、比較例の積層インダクタを幅方向に透視して示す図である。
【0119】
図5に示すように、比較例の積層インダクタ101Aでは、積層体10Aは、内部にコイル30Aを有している。
【0120】
コイル30Aは、第1引き出し導体51及び第2引き出し導体52を有する。コイル30Aは、第1引き出し導体51を介して、第1外部電極21と接続されている。コイル30Aは、第2引き出し導体52を介して第2外部電極22と接続されている。
【0121】
図6に示すように比較例の積層インダクタ101Aでは、コイル導体層CC1、CC2、CC3及びCC4の全てが第1引き出し導体51を有する第1引き出し層41Mとなっている。また、コイル導体層CC5、CC6、CC7及びCC8の全てが第2引き出し導体52を有する第2引き出し層42Kとなっている。コイル30Aが有する第1引き出し導体51の数、及び、コイル30Aが有する第2引き出し導体52の数が異なること以外は、比較例の積層インダクタ101Aは、積層インダクタ1Aと同様の構成を有している。
【0122】
比較例の積層インダクタ101Aでは、積層体10Aの第1の端面11において、連続して4層の第1引き出し導体51が重なっている。比較例の積層インダクタ101Aの製造方法において、積層体10Aの第1の端面11が切断面となるように、積層体ブロックを高さ方向Tに沿ってカットする工程が含まれうる。この場合、比較例の積層インダクタ101Aでは、積層インダクタ1Aと比較して、カットの進行方向において第1引き出し導体51の材料であるAg等の金属成分が多くなる。Ag等の金属成分は、絶縁層ILを構成するフェライト材料等と比較して弾性率が高く、、かつ、破断ひずみが小さい。そのため、切断面にAg等の金属成分が多く含まれている積層インダクタ101Aでは、カット刃の進入方向に生じる応力によってクラック等の構造欠陥が生じるリスクが高くなる。
【0123】
図7は、
図5でのVII-VII線に沿った断面において、第1引き出し導体を拡大して示す模式図である。
【0124】
図7に示す例では、第1引き出し導体51と絶縁層ILとの界面を通るようなクラックCRが生じている。なお、積層インダクタ101Aにおいては、
図7に示す第1引き出し導体51と絶縁層ILとの界面を通るようなクラックCRだけでなく、第1引き出し導体51自体が破断するクラックCRが生じるおそれもある。積層インダクタ101AにクラックCR等の構造欠陥が生じると、積層インダクタ101Aの使用時における断線等のリスクが高くなるため、積層インダクタ101Aの信頼性が低下してしまう。
【0125】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る積層インダクタでは、第1引き出し層と第1非引き出し層とは、積層方向に交互に設けられている。
【0126】
図8は、本発明の第2実施形態に係る積層インダクタの一例を模式的に示す分解平面図である。
【0127】
図8に示す積層インダクタ1Bは、積層インダクタ1Aにおける、3層目L3のコイル導体層CC3と4層目L4のコイル導体層CC4とが入れ替えられ、かつ、5層目L5のコイル導体層CC5と6層目L6のコイル導体層CC6とが入れ替えられた構成となっている。上記の点以外は、積層インダクタ1Bは、積層インダクタ1Aと同じ構成を有する。
【0128】
図8に示す積層インダクタ1Bでは、コイル導体層CC1、CC2、CC3及びCC4の4層が第1コイル導体層41となっている。すなわち、
図8に示す積層インダクタ1Bでは、M+N=4となる。
【0129】
図8に示す積層インダクタ1Bでは、コイル導体層CC1及びCC3の2層が第1引き出し層41Mとなっている。すなわち、積層インダクタ1Bでは、M=2となる。
【0130】
図8に示す積層インダクタ1Bでは、コイル導体層CC2及びCC4の2層が第1非引き出し層41Nとなっている。すなわち、積層インダクタ1Bでは、N=2となる。
【0131】
図8に示す積層インダクタ1Bでは、第1引き出し層41Mと第1非引き出し層41Nとは、積層方向(ここでは高さ方向T)に交互に設けられている。第1引き出し層41Mと第1非引き出し層41Nとが、積層方向に交互に設けられていると、第1引き出し層41M同士が、積層方向に連続して存在することがない。そのため、積層インダクタ1Bにおいてクラック等の構造欠陥が生じるリスクをさらに低くすることができる。
【0132】
第1引き出し層41Mと第1非引き出し層41Nとが、積層方向に交互に設けられている場合、M+Nは3以上の自然数である。図示しないが、M+Nが3である場合には、1組の第1引き出し層41Mの間に1つの第1非引き出し層41Nが設けられていてもよく、1組の第1非引き出し層41Nの間に1つの第1引き出し層41Mが設けられていてもよい。
【0133】
図8に示す積層インダクタ1Bのように、複数の第1引き出し層41Mが存在し、第1引き出し層41Mと第1非引き出し層41Nとは、積層方向に交互に設けられていてもよい。この場合、複数の第1引き出し層41Mのそれぞれの間に第1非引き出し層41Nが存在することとなる。そのため、第1引き出し層41M同士の間に、弾性率が低く、かつ、破断ひずみが大きいフェライトなどからなる絶縁層ILが多く挟まれることになる。このため、積層体ブロックをカットする工程における、第1引き出し導体51での応力集中を抑制することができるので、積層インダクタ1Bにおいてクラック等の構造欠陥が生じるリスクをさらに低くすることができる。
【0134】
図8に示す積層インダクタ1Bでは、第2引き出し層42Kと第2非引き出し層42Lとは、積層方向に交互に設けられている。第2引き出し層42Kと第2非引き出し層42Lとが、積層方向に交互に設けられていると、第2引き出し層42K同士が、積層方向に連続して存在することがない。そのため、積層インダクタ1Bにおいてクラック等の構造欠陥が生じるリスクをさらに低くすることができる。
【0135】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る積層インダクタでは、第1引き出し層と第1非引き出し層とが1層ずつ存在する。
【0136】
図9は、本発明の第3実施形態に係る積層インダクタの一例を模式的に示す分解平面図である。
【0137】
図9に示す積層インダクタ1Cは、積層インダクタ1Aにおける、3層目L3のコイル導体層CC3、4層目L4のコイル導体層CC4、5層目L5のコイル導体層CC5及び6層目L6のコイル導体層CC6、が取り除かれた構成となっている。上記の点以外は、積層インダクタ1Cは、積層インダクタ1Aと同じ構成を有する。
【0138】
図9に示す積層インダクタ1Cでは、コイル導体層CC1及びCC2の2層が第1コイル導体層41となっている。すなわち、
図9に示す積層インダクタ1Cでは、M+N=2となる。
【0139】
図9に示す積層インダクタ1Cでは、コイル導体層CC1の1層が第1引き出し層41Mとなっている。すなわち、積層インダクタ1Cでは、M=1となる。
【0140】
図9に示す積層インダクタ1Cでは、コイル導体層CC2の1層が第1非引き出し層41Nとなっている。すなわち、積層インダクタ1Cでは、N=1となる。
【0141】
図9に示す積層インダクタ1Cでは、コイル導体層CC3及びCC4の2層が第2コイル導体層42となっている。すなわち、
図9に示す積層インダクタ1Cでは、K+L=2となる。
【0142】
図9に示す積層インダクタ1Cでは、コイル導体層CC4の1層が第2引き出し層42Kとなっている。すなわち、積層インダクタ1Cでは、K=1となる。
【0143】
図9に示す積層インダクタ1Cでは、コイル導体層CC3の1層が第2非引き出し層42Lとなっている。すなわち、積層インダクタ1Cでは、L=1となる。
【0144】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る積層インダクタでは、第1コイル導体層と第2コイル導体層との間に存在するコイル導体層の一部が並列接続されている。
【0145】
図10は、本発明の第4実施形態に係る積層インダクタの一例を模式的に示す分解平面図である。
【0146】
図10に示す積層インダクタ1Dでは、コイル導体層CC1、CC2、CC3、CC4、CC5、CC6、CC7及びCC8がビア導体V1x、V1y、V2x、V2y、V3x、V3y、V3z、V4x、V4y、V4z、V5x、V5y、V5z、V6x、V6y、V7x及びV7yを介して電気的に接続されている。
【0147】
図10に示す積層インダクタ1Dでは、4層目L4のコイル導体層CC4は、第1コイル導体層と第2コイル導体層との間に存在する。コイル導体層CC4の一部は、積層方向に隣り合うコイル導体層と並列接続されている。
【0148】
コイル導体層CC4の一部は、ビア導体V3x、V3y及びV3zを介して3層目L3のコイル導体層CC3の一部と並列に接続されている。また、コイル導体層CC4の一部は、ビア導体V4x、V4y及びV4zを介して5層目L5のコイル導体層CC5の一部と並列に接続されている。
【0149】
積層インダクタ1Dでは、第1コイル導体層と第2コイル導体層との間に存在するコイル導体層が並列接続されているため、直流抵抗を下げることができる。また、第1コイル導体層と第2コイル導体層との間に存在するコイル導体層の一部のみが並列接続されているため、積層方向に重なるビア導体の数を減らすことができる。そのため、積層方向に多くのビア導体が重なることに起因して積層インダクタ1Dの焼成時に生じるクラックを抑制することができる。
【0150】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態に係る積層インダクタでは、第1コイル導体層と第2コイル導体層との間に存在するコイル導体層は直列に接続されている。
【0151】
図11は、本発明の第5実施形態に係る積層インダクタの一例を模式的に示す分解平面図である。
【0152】
図11に示す積層インダクタ1Eでは、コイル導体層CC1、CC2、CC3、CC4、CC5、CC6、CC7、CC8及びCC9がビア導体V1x、V1y、V2x、V2y、V3x、V4x、V5x、V6x、V7x、V7y、V8x及びV8yを介して電気的に接続されている。
【0153】
図11に示す積層インダクタ1Eでは、4層目L4のコイル導体層CC4、5層目L5のコイル導体層CC5及び6層目L6のコイル導体層CC6は、第1コイル導体層と第2コイル導体層との間に存在する。コイル導体層CC4、コイル導体層CC5及びコイル導体層CC6は、それぞれ直列に接続されている。
【0154】
図11に示す積層インダクタ1Eでは、第1コイル導体層は並列部を有するため、第1コイル導体層において、電流集中を下げることができる。また、第1コイル導体層が第1非引き出し層を有するため、積層体ブロックをカットする工程における、第1引き出し導体51での応力集中を抑制することができる。積層インダクタ1Eは上記の効果を奏しながら、第1コイル導体層と第2コイル導体層との間に存在するコイル導体層は直列に接続されている積層インダクタの一例を示すものである。
【0155】
本発明の積層インダクタは、上記実施形態に限定されるものではなく、積層インダクタの構成、製造条件等に関し、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0156】
本発明の積層インダクタにおいて、MとNとは同じで合ってもよく、異なっていてもよい。
【0157】
本発明の積層インダクタが第2コイル導体層を有する場合、KとLとは同じであってもよく、異なっていてもよい。また、MとKとは同じであってもよく、異なっていてもよい。同様に、NとLとは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0158】
本発明の積層インダクタが第2コイル導体層を有する場合、第1コイル導体層と第2コイル導体層との間には、第1~第3実施形態のように他のコイル導体層が存在しなくてもよいし、第4及び第5実施形態のように他のコイル導体層が存在してもよい。例えば、第1コイル導体層と第2コイル導体層との間に第3コイル導体層が存在する場合、第3コイル導体層の構成は特に限定されない。
【0159】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0160】
<1>
複数の絶縁層が積層方向に積層され、内部にコイルを有する積層体と、
上記積層体の外表面に設けられ、上記コイルに電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と、を備え、
上記コイルは、上記絶縁層とともに上記積層方向に積層された複数のコイル導体層が電気的に接続されることにより構成され、
上記複数のコイル導体層は、上記積層方向に連続する第1コイル導体層をM+N層(M及びNは自然数)有し、
上記第1コイル導体層のそれぞれは、第1並列部を有し、
上記積層方向に隣り合う上記第1コイル導体層の上記第1並列部同士は、少なくとも2つのビア導体を介して並列接続されており、
上記第1コイル導体層のうち、M層は上記第1外部電極に接続される第1引き出し導体を有する第1引き出し層であり、N層は上記第1引き出し導体を有していない第1非引き出し層であり、
Mは2以上の自然数であり、
少なくとも1組の上記第1引き出し層の上記積層方向での間には、少なくとも1層の上記第1非引き出し層が存在する、積層インダクタ。
【0161】
<2>
複数の絶縁層が積層方向に積層され、内部にコイルを有する積層体と、
上記積層体の外表面に設けられ、上記コイルに電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と、を備え、
上記コイルは、上記絶縁層とともに上記積層方向に積層された複数のコイル導体層が電気的に接続されることにより構成され、
上記複数のコイル導体層は、上記積層方向に連続する第1コイル導体層をM+N層(M及びNは自然数)有し、
上記第1コイル導体層のそれぞれは、第1並列部を有し、
上記積層方向に隣り合う上記第1コイル導体層の上記第1並列部同士は、少なくとも2つのビア導体を介して並列接続されており、
上記第1コイル導体層のうち、M層は上記第1外部電極に接続される第1引き出し導体を有する第1引き出し層であり、N層は上記第1引き出し導体を有していない第1非引き出し層であり、
上記積層方向から見たときに、上記第1引き出し層の周回部のうち、電流経路を構成する部分は、上記第1非引き出し層の周回部のうち、電流経路を構成する部分と向き及び形状が同じである、積層インダクタ。
【0162】
<3>
上記第1引き出し層において、上記第1外部電極と、上記第1外部電極までの経路長が最も短い位置に存在する上記ビア導体と、の間を接続する部分は、上記第1外部電極と接する部分を除いて、直線状の形状からなる、<2>に記載の積層インダクタ。
【0163】
<4>
Mは2以上の自然数であり、
少なくとも1組の上記第1引き出し層の上記積層方向での間には、少なくとも1層の上記第1非引き出し層が存在する、<2>又は<3>に記載の積層インダクタ。
【0164】
<5>
上記第1引き出し層の少なくとも1層において、上記第1引き出し導体のうち上記第1外部電極と接する部分の幅は、上記第1並列部の幅よりも大きい、<1>~<4>のいずれかに記載の積層インダクタ。
【0165】
<6>
上記第1引き出し層における上記第1引き出し導体のうち上記第1外部電極と接する部分の幅の合計は、上記第1引き出し層及び上記第1非引き出し層における上記第1並列部の幅の合計と同等以上である、<1>~<5>のいずれかに記載の積層インダクタ。
【0166】
<7>
M+Nは3以上の自然数であり、
上記第1引き出し層は上記積層方向に2層以上連続していない、<1>~<6>のいずれかに記載の積層インダクタ。
【0167】
<8>
M+Nは3以上の自然数であり、
上記第1引き出し層と上記第1非引き出し層とは、上記積層方向に交互に設けられている、<7>に記載の積層インダクタ。
【0168】
<9>
M=2、かつ、N=2であり、
2層の上記第1引き出し層の間に2層の上記第1非引き出し層が上記積層方向に連続して設けられている、<7>に記載の積層インダクタ
【0169】
<10>
上記第1引き出し層において、上記第1引き出し導体と上記第1並列部とは直接接続されている、<1>~<9>のいずれかに記載の積層インダクタ。
【0170】
<11>
上記第1非引き出し層の周回部のうち、電流経路を構成する部分は、上記並列部のみからなる、<1>~<10>のいずれかに記載の積層インダクタ。
【0171】
<12>
上記複数のコイル導体層は、上記積層方向に連続する第2コイル導体層をK+L層(K及びLは自然数)有し、
上記第2コイル導体層のそれぞれは、第2並列部を有し、
上記積層方向に隣り合う上記第2コイル導体層の上記第2並列部同士は、少なくとも2つのビア導体を介して並列接続されており、
上記第2コイル導体層のうち、K層は上記第2外部電極に接続される第2引き出し導体を有する第2引き出し層であり、L層は上記第2引き出し導体を有していない第2非引き出し層である、<1>~<11>のいずれかに記載の積層インダクタ。
【符号の説明】
【0172】
1A、1B、1C、1D、1E、101A 積層インダクタ
10A 積層体
11 第1の端面
12 第2の端面
13 第1の主面
14 第2の主面
15 第1の側面
16 第2の側面
21 第1外部電極
22 第2外部電極
30A コイル
41 第1コイル導体層
41M 第1引き出し層
41N 第1非引き出し層
42 第2コイル導体層
42K 第2引き出し層
42L 第2非引き出し層
51 第1引き出し導体
52 第2引き出し導体
CC、CC1、CC2、CC3、CC4、CC5、CC6、CC7、CC8、CC9 コイル導体層
IL、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9 絶縁層
V、V1x、V1y、V2x、V2y、V3x、V3y、V3z、V4x、V4y、V4z、V5x、V5y、V5z、V6x、V6y、V7x、V7y、V8x、V8y、 ビア導体
P1、P11、P12、P13、P14 第1並列部
P2、P25、P26、P27、P28 第2並列部
CR クラック
L 長さ方向
T 高さ方向
W 幅方向