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特開2025-140657材料キット、硬化性組成物、膜形成方法、および物品製造方法
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  • 特開-材料キット、硬化性組成物、膜形成方法、および物品製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140657
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】材料キット、硬化性組成物、膜形成方法、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/46 20060101AFI20250919BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20250919BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20250919BHJP
   C08G 12/32 20060101ALI20250919BHJP
   C08L 61/08 20060101ALI20250919BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20250919BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
C08F2/46
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
C08G12/32
C08L61/08
C08K5/3492
B05D7/24 301T
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040189
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】大塚 正宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】城野 潤平
【テーマコード(参考)】
4D075
4F209
4J002
4J011
4J033
5F146
【Fターム(参考)】
4D075AC07
4D075CA35
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB07
4D075DB11
4D075DB13
4D075DB14
4D075DB31
4D075DC22
4D075EA21
4D075EB22
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG03
4F209AG05
4F209AH33
4F209PA02
4F209PB01
4F209PG05
4F209PJ06
4F209PN09
4J002CC071
4J002EU186
4J002FD146
4J002GP03
4J002HA05
4J011CA01
4J011CC10
4J011PA43
4J011QA12
4J011QA45
4J011SA84
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J033FA06
4J033FA11
4J033HB10
5F146AA33
(57)【要約】
【課題】材料キットに関する新たな技術を提供する。
【解決手段】材料キットは、硬化性組成物と、基板と前記硬化性組成物とを密着させる密着層を形成するための層形成組成物とを含み、前記硬化性組成物は、重合性化合物(a1)と、光重合開始剤(b1)と、溶剤(d1)と、を含み、23℃、1気圧における前記硬化性組成物の粘度が1.3mPa・s以上60mPa・s以下であり、前記重合性化合物(a1)と、前記光重合開始剤(b1)と、前記溶剤(d1)との合計体積に対する前記溶剤(d1)の含有量が、5体積%以上95体積%以下であり、前記溶剤(d1)の沸点が、1気圧において、250℃未満であり、前記硬化性組成物の前記密着層に対する接触角が1.8[°]以下であり、前記硬化性組成物から前記溶剤(d1)が除かれた状態の組成物の前記密着層に対する接触角が11[°]以上19[°]以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物と、基板と前記硬化性組成物とを密着させる密着層を形成するための層形成組成物とを含む材料キットであって、
前記硬化性組成物は、重合性化合物(a1)と、光重合開始剤(b1)と、溶剤(d1)と、を含み、
23℃、1気圧における前記硬化性組成物の粘度が1.3mPa・s以上60mPa・s以下であり、
前記重合性化合物(a1)と、前記光重合開始剤(b1)と、前記溶剤(d1)との合計体積に対する前記溶剤(d1)の含有量が、5体積%以上95体積%以下であり、
前記溶剤(d1)の沸点が、1気圧において、250℃未満であり、
前記硬化性組成物の前記密着層に対する接触角が1.8[°]以下であり、
前記硬化性組成物から前記溶剤(d1)が除かれた状態の組成物の前記密着層に対する接触角が11[°]以上19[°]以下である、
ことを特徴とする材料キット。
【請求項2】
前記硬化性組成物の前記密着層に対する接触角が1.0[°]以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の材料キット。
【請求項3】
前記硬化性組成物から前記溶剤(d1)が除かれた状態の前記組成物は、23℃、1気圧において、30mPa・s以上10,000mPa・s以下の粘度を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の材料キット。
【請求項4】
前記硬化性組成物は、インクジェット用の硬化性組成物である、ことを特徴とする請求項1に記載の材料キット。
【請求項5】
前記硬化性組成物に対する二酸化炭素の溶解度係数は、0.5kg/m3・atm以上10kg/m3・atm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の材料キット。
【請求項6】
前記層形成組成物は溶剤(d2)を含み、
前記層形成組成物の全体を100質量%としたとき、前記溶剤(d2)の含有量が70質量%以上かつ99.5質量%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の材料キット。
【請求項7】
前記層形成組成物は光重合開始剤を含有しない、ことを特徴とする請求項1に記載の材料キット。
【請求項8】
前記層形成組成物の全体を100質量%としたとき、粒径が0.2μmより大きい粒子の含有量が1個/mL未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の材料キット。
【請求項9】
前記層形成組成物は、前記基板と結合する少なくとも1つの官能基および少なくとも1つの重合性官能基を有する化合物(a2)、架橋剤(b2)、溶剤(d2)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の材料キット。
【請求項10】
1~R6を、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、またはアルキロール基のいずれかを表すとき、
前記架橋剤(b2)は、次式
【化63】
で表される化合物であり、
1~R6のうちの少なくとも5つはアルコキシアルキル基またはアルキロール基である、
ことを特徴とする請求項9に記載の材料キット。
【請求項11】
前記架橋剤(b2)は、ペンタメトキシメチルメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、(ヒドロキシメチル)ペンタキス(メトキシメチル)メラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンの中から選択される少なくとも一種を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の材料キット。
【請求項12】
前記架橋剤(b2)は、1分子中に、アルコキシアルキル基またはアルキロール基のいずれか一方または両方を合計で少なくとも5つ有する化合物である、ことを特徴とする請求項9に記載の材料キット。
【請求項13】
前記化合物(a2)は、前記基板と結合する官能基として、1分子中に水酸基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基を少なくとも1つ有する、ことを特徴とする請求項9に記載の材料キット。
【請求項14】
前記層形成組成物の全重量に対する前記化合物(a2)および前記架橋剤(b2)の重量分率をそれぞれα、βとすると、α/βが、0.11以上9以下である、ことを特徴とする請求項9に記載の材料キット。
【請求項15】
前記層形成組成物の全重量に対する前記化合物(a2)および前記架橋剤(b2)の重量分率をそれぞれα、βとすると、αとβとの和が、0.01以上10以下である、ことを特徴とする請求項9に記載の材料キット。
【請求項16】
前記層形成組成物は、インプリント用の硬化性組成物である、ことを特徴とする請求項9に記載の材料キット。
【請求項17】
重合性化合物(a1)と、光重合開始剤(b1)と、溶剤(d1)と、を含む硬化性組成物であって、
23℃、1気圧における前記硬化性組成物の粘度が1.3mPa・s以上60mPa・s以下であり、
前記重合性化合物(a1)と、前記光重合開始剤(b1)と、前記溶剤(d1)の合計体積に対する前記溶剤(d1)の含有量が、5体積%以上95体積%以下であり、
前記溶剤(d1)の沸点が、1気圧において、250℃未満であり、
前記硬化性組成物のシリコン基板に対する接触角が1.8[°]以下であり、
前記硬化性組成物から前記溶剤(d1)が除かれた状態の組成物の前記シリコン基板に対する接触角が11[°]以上19[°]以下である、
ことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項18】
前記硬化性組成物の前記シリコン基板に対する接触角が1.0[°]以下であることを特徴とする請求項17に記載の硬化性組成物。
【請求項19】
前記硬化性組成物から前記溶剤(d1)が除かれた状態の前記組成物は、23℃、1気圧において、30mPa・s以上10,000mPa・s以下の粘度を有する、ことを特徴とする請求項17に記載の硬化性組成物。
【請求項20】
型と基板との間の空間に硬化性組成物の膜を形成する膜形成方法であって、
前記基板上に、請求項17に記載の硬化性組成物の複数の液滴を離散的に配置する配置工程と、
前記基板上に離散的に配置された前記複数の液滴のそれぞれが、隣接する液滴と結合して、前記基板上で連続的な液膜を形成するまで待機する待機工程と、
前記待機工程の後、前記型と前記液膜とを接触させる接触工程と、
を有することを特徴とする膜形成方法。
【請求項21】
前記待機工程では、前記液膜に含まれる溶剤が揮発して、前記溶剤の含有量が前記液膜の全体に対して10体積%以下になるまで待機する、ことを特徴とする請求項20に記載の膜形成方法。
【請求項22】
前記待機工程では、30℃以上200℃以下、且つ、10秒以上600秒以下の条件で前記基板を加熱する、ことを特徴とする請求項20に記載の膜形成方法。
【請求項23】
前記配置工程では、前記基板上に、1.0pL以上の体積を有する前記硬化性組成物の液滴を、80個/mm以上の密度で配置する、ことを特徴とする請求項20に記載の膜形成方法。
【請求項24】
前記待機工程の後に残存する前記硬化性組成物の体積を膜形成領域の面積で除した値である平均残存液膜厚は、20nm以下である、ことを特徴とする請求項20に記載の膜形成方法。
【請求項25】
前記型は、パターンを含み、
前記接触工程では、前記型の前記パターンと前記液膜とを接触させ、
前記膜形成方法は、前記接触工程の後、前記液膜を硬化させ、前記型の前記パターンに対応するパターンを有する硬化膜を形成する硬化工程を更に有する、
ことを特徴とする請求項20に記載の膜形成方法。
【請求項26】
前記型は、平坦面を含み、
前記接触工程では、前記型の前記平坦面と前記液膜とを接触させ、
前記膜形成方法は、前記接触工程の後、前記液膜を硬化させ、前記型の前記平坦面に倣った面を有する硬化膜を形成する硬化工程を更に有する、
ことを特徴とする請求項20に記載の膜形成方法。
【請求項27】
前記配置工程では、インクジェット法を用いて、前記基板の上に前記複数の液滴を離散的に配置する、ことを特徴とする請求項20に記載の膜形成方法。
【請求項28】
前記接触工程において、前記型と前記基板との間の空間を満たす気体は、モル比率で10%以上の二酸化炭素を含む、ことを特徴とする請求項20に記載の膜形成方法。
【請求項29】
請求項20から28のいずれか1項に記載の膜形成方法を用いて、基板の上に硬化性組成物の膜を形成する形成工程と、
前記形成工程で前記膜が形成された前記基板を加工する加工工程と、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造する製造工程と、
を有する、ことを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料キット、硬化性組成物、膜形成方法、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどでは、微細化の要求が高まり、微細加工技術として、インプリント技術(光インプリント技術)が注目されている。インプリント技術では、微細な凹凸パターンが表面に形成された型(モールド)を、基板上に供給(塗布)された硬化性組成物に接触させた状態で、硬化性組成物を硬化させる。これにより、モールドのパターンを硬化性組成物の硬化膜に転写し、パターンを基板上に形成する。インプリント技術によれば、基板上に数ナノメートルオーダーの微細なパターン(構造体)を形成することができる。
【0003】
インプリント技術を利用したパターン形成方法の一例を説明する。まず、基板上のパターン形成領域に液状の硬化性硬化物を離散的に滴下(配置)する。パターン形成領域に配置された硬化性組成物の液滴は、基板上で拡がる。かかる現象は、プレスプレッドと呼ばれる。次いで、基板上の硬化性組成物に対して、型を接触させる(押し当てる)。これにより、硬化性組成物の液滴は、毛細管現象によって、基板と型との隙間の全域に拡がる。かかる現象は、スプレッドと呼ばれる。また、硬化性組成物は、毛細管現象によって、型のパターンを構成する凹部に充填される。かかる現象は、フィリングと呼ばれる。なお、スプレッド及びフィリングが完了するまでの時間は、充填時間と呼ばれる。硬化性組成物の充填が完了すると、硬化性組成物に対して光を照射して、硬化性組成物を硬化させる。そして、基板上の硬化した硬化性組成物から型を引き離す。これらの工程を実施することによって、型のパターンが基板上の硬化性組成物に転写され、硬化性組成物のパターンが形成される。ここで、基板上に形成される硬化性組成物のパターンは、残膜を含む。残膜とは、硬化性組成物の硬化膜の凹部(型のパターンの凸部)と基板との間に残存する硬化膜である。
【0004】
また、半導体デバイスを製造するためのフォトリソグラフィ工程においては、基板を平坦化することも必要とされる。例えば、近年注目されているフォトリソグラフィ技術である極端紫外線露光技術(EUV)では、微細化に伴って投影像が結像される焦点深度が浅くなるため、硬化性組成物が供給される基板の表面の凹凸は、数十nm以下に抑えなければならない。インプリント技術においても、硬化性組成物の充填性や線幅精度の向上のために、EUVと同程度の平坦性が要求される。平坦化技術として、凹凸を有する基板上に、凹凸に対応する分量の硬化性組成物の液滴を離散的に滴下し、平坦面を有する型を接触させた状態で硬化性組成物を硬化させることで、平坦な表面を得る技術が知られている。
【0005】
インプリント技術を利用したパターン形成方法や平坦化技術では、基板上に滴下された硬化性組成物の液滴同士が互いに接触していない状態で型を接触させるため、型と基板上の硬化性組成物との間に必然的に気泡が巻き込まれる。かかる気泡は、拡散して消失するまでに長時間を要し、生産性(スループット)を低下させる要因の1つとなっている。そこで、基板上の硬化性組成物と型とを接触させる前に、硬化性組成物の液滴同士を結合させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、基板上に滴下された硬化性組成物の液滴同士が結合する程度に液滴が高速で広がるため、硬化性組成物が所望の領域(設計液膜領域)からはみ出すことがある。このように、硬化性組成物が所望の領域からはみ出した長さを「はみ出し量」と呼ぶ。はみ出した硬化性組成物は、隣接するインプリント領域を侵食したり、型の側壁に付着するなどの望ましくない状態を招きうる。
【0007】
はみ出しを防止するために、ピンニング効果を活用して液膜の広がり過ぎを抑制する技術が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-188736号公報
【特許文献2】特表2010-530641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の発明者らは、一旦液滴同士が結合し液膜を形成したとしても、その後収縮することがあるという課題を見出した。液膜が収縮した場合、型の端部に硬化性組成物が行き渡らないエッジ未充填欠陥を引き起こし得る。特許文献2には、はみ出しの防止のためにピンニング効果を利用する技術が開示されているが、液膜の収縮については記載がない。
【0010】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、例えば材料キットに関する新たな技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての材料キットは、硬化性組成物と、基板と前記硬化性組成物とを密着させる密着層を形成するための層形成組成物とを含む材料キットであって、前記硬化性組成物は、重合性化合物(a1)と、光重合開始剤(b1)と、溶剤(d1)と、を含み、23℃、1気圧における前記硬化性組成物の粘度が1.3mPa・s以上60mPa・s以下であり、前記重合性化合物(a1)と、前記光重合開始剤(b1)と、前記溶剤(d1)の合計体積に対する前記溶剤(d1)の含有量が、5体積%以上95体積%以下であり、前記溶剤(d1)の沸点が、1気圧において、250℃未満であり、前記硬化性組成物の前記密着層に対する接触角が1.8[°]以下であり、前記硬化性組成物から前記溶剤(d1)が除かれた状態の組成物の前記密着層に対する接触角が11[°]以上19[°]以下である、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば、材料キットおよび硬化性組成物に関する新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】パターン形成方法(膜形成方法)を説明するための図。
図2】逆インプリントによるパターン形成方法(膜形成方法)を説明するための図。
図3】硬化性組成物の液滴の待機工程中の流動挙動を説明するための図。
図4】接触工程で生じる気体閉じ込めに関して従来技術と実施形態との比較を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0016】
本発明者らは、膜形成方法に関する新たな技術を提供するにあたって、基板上に離散的に滴下(配置)された硬化性組成物の液滴同士が結合して連続的な液膜を形成し、且つ、液膜が広がりすぎず、収縮もしない物性条件を見出した。以下、実施形態に係る、硬化性組成物と、基板と硬化性組成物とを密着させる密着層を形成するための層形成組成物とを含む材料キットについて説明する。
【0017】
[硬化性組成物]
本開示における硬化性組成物(A)は、インクジェット用の硬化性組成物である。本開示における硬化性組成物(A)は、少なくとも、重合性化合物である成分(a1)と、光重合開始剤である成分(b1)と、溶剤である成分(d1)と、を含む組成物である。
【0018】
また、本明細書において、硬化膜とは、基板上で硬化性組成物を重合させて硬化させた膜を意味する。なお、硬化膜の形状は、特に限定されるものではなく、表面にパターン形状を有していてもよい。また、硬化性組成物の硬化膜の凹部(型のパターンの凸部)と基板との間に残存する硬化膜を残膜と称する。
【0019】
<成分(a1):重合性化合物>
成分(a1)は、重合性化合物である。本明細書において、重合性化合物は、光重合開始剤(成分(b1))から発生した重合因子(ラジカルなど)と反応し、連鎖反応(重合反応)によって高分子化合物からなる膜を形成する化合物である。
【0020】
このような重合性化合物としては、例えば、ラジカル重合性化合物が挙げられる。成分(a1)である重合性化合物は、一種類の重合性化合物のみで構成されていてもよいし、複数種類(一種類以上)の重合性化合物で構成されていてもよい。
【0021】
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル系化合物、スチレン系化合物、ビニル系化合物、アリル系化合物、フマル系化合物、マレイル系化合物が挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリル系化合物とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する化合物のことである。アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性p-クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2-ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、PO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、1-又は2-ナフチル(メタ)アクリレート、1-又は2-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、3-又は4-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、シノアベンジル(メタ)アクリレート、ナフタレンメチル(メタ)アクリレート
【0023】
上述した単官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アロニックス(登録商標)M101、M102、M110、M111、M113、M117、M5700、TO-1317、M120、M150、M156(以上、東亞合成製)、MEDOL10、MIBDOL10、CHDOL10、MMDOL30、MEDOL30、MIBDOL30、CHDOL30、LA、IBXA、2-MTA、HPA、ビスコート#150、#155、#158、#190、#192、#193、#220、#2000、#2100、#2150(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレートBO-A、EC-A、DMP-A、THF-A、HOP-A、HOA-MPE、HOA-MPL、PO-A、P-200A、NP-4EA、NP-8EA、エポキシエステルM-600A、POB-A、OPP-EA(以上、共栄社化学製)、KAYARAD(登録商標) TC110S、R-564、R-128H(以上、日本化薬製)、NKエステルAMP-10G、AMP-20G、A-LEN-10(以上、新中村化学工業製)、FA-511A、512A、513A(以上、日立化成製)、PHE、CEA、PHE-2、PHE-4、BR-31、BR-31M、BR-32(以上、第一工業製薬製)、VP(BASF製)、ACMO、DMAA、DMAPAA(以上、興人製)、HRD-01(以上、日本触媒製)
【0024】
また、アクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、PO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、EO,PO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、o-、m-又はp-ベンゼンジ(メタ)アクリレート、o-、m-又はp-キシリレンジ(メタ)アクリレート
【0025】
上述した多官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ユピマー(登録商標)UV SA1002、SA2007(以上、三菱化学製)、ビスコート#195、#230、#215、#260、#335HP、#295、#300、#360、#700、GPT、3PA(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレート4EG-A、9EG-A、NP-A、DCP-A、BP-4EA、BP-4PA、TMP-A、PE-3A、PE-4A、DPE-6A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD(登録商標) PET-30、TMPTA、R-604、DPHA、DPCA-20、-30、-60、-120、HX-620、D-310、D-330(以上、日本化薬製)、アロニックス(登録商標)M208、M210、M215、M220、M240、M305、M309、M310、M315、M325、M400(以上、東亞合成製)、リポキシ(登録商標)VR-77、VR-60、VR-90(以上、昭和高分子製)、オグソールEA-0200、オグソールEA-0300(以上、大阪ガスケミカル製)、SR295,SR355(以上、サートマー製)
【0026】
なお、上述した化合物群において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれと同等のアルコール残基を有するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はそれと同等のアルコール残基を有するメタクリロイル基を意味する。EOは、エチレンオキサイドを示し、EO変性化合物Aとは、化合物Aの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基とが、エチレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。また、POは、プロピレンオキサイドを示し、PO変性化合物Bとは、化合物Bの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基とが、プロピレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。
【0027】
スチレン系化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
スチレン、2,4-ジメチル-α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、2,6-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、2,4,5-トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン及びオクチルスチレンなどのアルキルスチレン;フロロスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、o-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、ジブロモスチレン及びヨードスチレンなどのハロゲン化スチレン;ニトロスチレン、アセチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレ、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、2-ビニルビフェニル、3-ビニルビフェニル、4-ビニルビフェニル、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、4-ビニル-p-ターフェニル、1-ビニルアントラセン、α-メチルスチレン、o-イソプロペニルトルエン、m-イソプロペニルトルエン、p-イソプロペニルトルエン、2,3-ジメチル-α-メチルスチレン、3,5-ジメチル-α-メチルスチレン、p-イソプロピル-α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、α-クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジビニルビフェニルなど、スチリル基を重合性官能基として有する化合物
【0028】
ビニル系化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、酢酸ビニル及びアクリロニトリル;ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンなどの共役ジエンモノマー;塩化ビニル及び臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン、有機カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、アジピン酸ジビニル等、(メタ)アクリロニトリルなど、ビニル基を重合性官能基として有する化合物
【0029】
なお、本明細書において、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリルとメタクリロニトリルとの総称である。
【0030】
アクリル系化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
酢酸アリル、安息香酸アリル、アジピン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル
【0031】
フマル系化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ-sec-ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ-n-ブチル、フマル酸ジ-2-エチルヘキシル、フマル酸ジベンジル
【0032】
マレイル系化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ-sec-ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ-n-ブチル、マレイン酸ジ-2-エチルヘキシル、マレイン酸ジベンジル
【0033】
その他のラジカル重合性化合物としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
イタコン酸のジアルキルエステル及びその誘導体(イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジ-sec-ブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジ-n-ブチル、イタコン酸ジ-2-エチルヘキシル、イタコン酸ジベンジルなど)、有機カルボン酸のN-ビニルアミド誘導体(N-メチル-N-ビニルアセトアミドなど)、マレイミド及びその誘導体(N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなど)
【0034】
成分(a1)が、重合性官能基を1つ以上有する複数種類の化合物で構成される場合には、単官能重合性化合物と多官能重合性化合物との両方を含むことが好ましい。成分(a1)のうち、多官能重合性化合物の比率は、20重量%以上であることが好ましく、25重量%以上であることが更に好ましく、40重量%以上であることが特に好ましい。これは、単官能重合性化合物と多官能重合性化合物とを組み合わせることで、機械的強度が強い、ドライエッチング耐性が高い、耐熱性が高いなど、性能のバランスに優れた硬化膜が得られるからである。
【0035】
本開示における膜形成方法においては、基板上に離散的に配置された硬化性組成物(A)の液滴同士が結合して実質的に連続的な液膜を形成するまでに数ミリ秒から数百秒を要するため、後述する待機工程が必要となる。待機工程では、溶剤(d1)を揮発させる一方で、重合性化合物(a1)は揮発してはならない。従って、重合性化合物(a1)に含まれる1種類以上の重合性化合物のそれぞれの常圧下における沸点は、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、350℃以上であることが更に好ましい。また、硬化性組成物(A)の硬化膜において、高いドライエッチング耐性や高い耐熱性を得るために、芳香族構造、芳香族複素環構造又は脂環式構造などの環構造を有する化合物を少なくとも含むことが好ましい。なお、常圧とは、1気圧(大気圧)であるものとする。
【0036】
重合性化合物(a1)の沸点は、概ね分子量と相関がある。このため、重合性化合物(a1)に含まれる1種類以上の重合性化合物のそれぞれの分子量は、200以上であることが好ましく、240以上であることがより好ましく、250以上であることが更に好ましい。但し、分子量が200以下であっても、沸点が250℃以上であれば、本開示における重合性化合物(a1)として好ましく用いることができる。このように、重合性化合物(a1)に含まれる1種類以上の重合性化合物のそれぞれの常圧下での沸点は、250℃以上であるとよい。
【0037】
また、重合性化合物(成分(a1))の80℃における蒸気圧は、0.001mmHg以下であることが好ましい。重合性化合物(a1)が1種類以上の重合性化合物を含む場合、1種類以上の重合性化合物のそれぞれの80℃における蒸気圧が0.001mmHg以下であるとよい。これは、後述する溶剤(成分(d1))の揮発を加速するために、硬化性組成物を加熱することが好ましいが、かかる加熱の際に、重合性化合物(a1)の揮発を抑制するためである。
【0038】
なお、常圧下における各種有機化合物の沸点及び蒸気圧は、Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)5thEdition.5.3.04などにより計算することができる。
【0039】
<成分(a1)のオオニシパラメータ>
有機化合物のドライエッチング速度V、有機化合物中の全原子数N、組成物中の全炭素原子数N、及び、組成物中の全酸素原子数Nは、以下の式(1)の関係にあることが知られている。
V∝N/(Nc-No) 式(1)
ここで、N/(Nc-No)は、「オオニシパラメータ」(以下、「OP」とする)とも呼ばれている。例えば、米国特許出願公開第2020/0286740号明細書には、OPが小さい重合性化合物成分を用いることで、ドライエッチング耐性の高い光硬化性組成物を得る技術が開示されている。
【0040】
式(1)によれば、分子中に酸素原子が多い、或いは、芳香環構造や脂環構造が少ない有機化合物ほど、OPが大きく、ドライエッチング速度が速いことが示唆される。
【0041】
本開示における硬化性組成物(A)は、成分(a1)のOPを1.80以上4.00以下とする。成分(a1)のOPは、2.00以上3.50以下が更に好ましく、2.40以上3.00以が特に好ましい。成分(a1)のOPを4.00以下とすることで、硬化性組成物(A)の硬化膜は、高いドライエッチング耐性を有する。また、成分(a1)のOPを1.80以上とすることで、硬化性組成物(A)の硬化膜を用いてその下地層を加工した後に、硬化性組成物(A)の硬化膜を除去することが容易となる。成分(a1)が複数種類の重合性化合物a、a、・・・、aで構成される場合には、以下の式(2)に示すように、モル分率に基づく加重平均値(モル分率加重平均値)としてOPを算出する。このように、成分(a1)が1種類以上の重合性化合物を含む場合、成分(a1)のOPは、1種類以上の重合性化合物のそれぞれの分子のN/(N-N)値のモル分率加重平均値として算出される。
【数1】
ここで、OPは成分aのOPであり、nは成分aの成分(a1)全体に占めるモル分率である。
【0042】
成分(a1)のOPを1.80以上4.00以下とするためには、環状構造を2つ以上有し、少なくとも1つが芳香族構造又は芳香族複素環構造である化合物(a1-1)を、少なくとも成分(a1)として含むことが好ましい。
【0043】
<化合物(a1-1):芳香族構造、芳香族複素環構造又は脂環式構造を有する重合性化合物>
本開示における重合性化合物(a1)は、芳香族構造、芳香族複素環構造又は脂環式構造を有する重合性化合物(a1-1)を含んでいてもよい。
【0044】
環状構造としては、芳香族構造、芳香族複素環構造又は脂環式構造が挙げられる。
【0045】
芳香族構造としては、炭素数は、6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい。芳香族環の具体例としては、以下のものが挙げられる。
ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環、フルオレン環、ベンゾシクロオクテン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、インデン環、インダン環、トリフェニレン環、ピレン環、クリセン環、ペリレン環、テトラヒドロナフタレン環
【0046】
なお、上述した芳香族環のうち、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。芳香族環は、複数が連結した構造を有していてもよく、例えば、ビフェニル環やビスフェニル環が挙げられる。
【0047】
芳香族複素環構造としては、炭素数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~5が更に好ましい。芳香族複素環の具体例としては、以下のものが挙げられる。
チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、イソインドール環、インドール環、インダゾール環、プリン環、キノリジン環、イソキノリン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環
【0048】
脂環式構造としては、炭素数は、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、6以上が更に好ましい。また、脂環式構造としては、炭素数は、22以下が好ましく、18以下がより好ましく、6以下が更に好ましく、5以下が一層好ましい。その具体例としては、以下のものが挙げられる。
シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロブテン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、ジシクロペンタジエン環、スピロデカン環、スピロノナン環、テトラヒドロジシクロペンタジエン環、オクタヒドロナフタレン環、デカヒドロナフタレン環、ヘキサヒドロインダン環、ボルナン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、イソボルナン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、アダマンタン環
【0049】
250℃以上の沸点を有する重合性化合物(a1-1)の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
3-フェノキシベンジルアクリレート(mPhOBzA、OP2.54、沸点367.4℃、80℃蒸気圧0.0004mmHg、分子量254.3)、
【化1】
1-ナフチルアクリレート(NaA、OP2.27、沸点317℃、80℃蒸気圧0.0422mmHg、分子量198)、
【化2】
2-フェニルフェノキシエチルアクリレート(PhPhOEA、OP2.57、沸点364.2℃、80℃蒸気圧0.0006mmHg、分子量268.3)、
【化3】
1-ナフチルメチルアクリレート(Na1MA、OP2.33、沸点342.1℃、80℃蒸気圧0.042mmHg、分子量212.2)、
【化4】
2-ナフチルメチルアクリレート(Na2MA、OP2.33、沸点342.1℃、80℃蒸気圧0.042mmHg、分子量212.2)、
【化5】
以下の式に示すDPhPA(OP2.38、沸点354.5℃、80℃蒸気圧0.0022mmHg、分子量266.3)、
【化6】
以下の式に示すPhBzA(OP2.29、沸点350.4℃、80℃蒸気圧0.0022mmHg、分子量238.3)、
【化7】
以下の式に示すFLMA(OP2.20、沸点349.3℃、80℃蒸気圧0.0018mmHg、分子量250.3)、
【化8】
以下の式に示すATMA(OP2.13、沸点414.9℃、80℃蒸気圧0.0001mmHg、分子量262.3)、
【化9】
以下の式に示すDNaMA(OP2.00、沸点489.4℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量338.4)、
【化10】
以下の式に示すBPh44DA(OP2.63、沸点444℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量322.3)、
【化11】
以下の式に示すBPh43DA(OP2.63、沸点439.5℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量322.3)、
【化12】
以下の式に示すDPhEDA(OP2.63、沸点410℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量322.3)、
【化13】
以下の式に示すBPMDA(OP2.68、沸点465.7℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量364.4)、
【化14】
以下の式に示すNa13MDA(OP2.71、沸点438.8℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量296.3)、
【化15】
以下の式(a1-1-1)(OP2.40、沸点333.4℃、80℃蒸気圧0.0181mmHg、分子量199.2)、
【化16】
以下の式(a1-1-2)(OP2.40、沸点333.4℃、80℃蒸気圧0.0181mmHg、分子量199.2)、
【化17】
以下の式(a1-1-3)(OP1.86、沸点369.5℃、80℃蒸気圧0.0053mmHg、分子量193.3)、
【化18】
以下の式(a1-1-4)(OP2.85、沸点438.8℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量296.3)、
【化19】
以下の式(a1-1-5)(OP2.71、沸点438.8℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量296.3)、
【化20】
以下の式(a1-1-6)(OP2.87、沸点421.0℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量338.4)、
【化21】
以下の式(a1-1-7)(OP2.87、沸点465.2℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量338.4)、
【化22】
以下の式(a1-1-8)(OP2.68、沸点465.7℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量364.4)、
【化23】
以下の式(a1-1-9)(OP2.50、沸点433.1℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量320.3)、
【化24】
以下の式(a1-1-10)(OP2.64、沸点468.1℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量326.4)、
【化25】
以下の式(a1-1-11)(OP3.25、沸点553.4℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量358.4)、
【化26】
以下の式(a1-1-12)(OP2.63、沸点443.9℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量322.4)、
【化27】
以下の式(a1-1-13)(OP2.89、沸点509.3℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量406.4)、
【化28】
以下の式(a1-1-14)(OP2.63、沸点450.0℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量322.4)、
【化29】
以下の式(a1-1-15)(OP3.00、沸点476.5℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量366.4)
【化30】
以下の式(a1-1-16)(OP2.68、沸点447.4℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量364.4)
【化31】
以下の式(a1-1-17)(OP2.36、沸点543.8℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量398.5)、
【化32】
以下の式(a1-1-18)(OP3.27、沸点526.9℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量396.4)、
【化33】
以下の式(a1-1-19)(OP2.71、沸点333.7℃、80℃蒸気圧0.0302mmHg、分子量244.3)、
【化34】
以下の式(a1-1-20)(OP2.73、沸点333.7℃、80℃蒸気圧0.0134mmHg、分子量258.3)、
【化35】
以下の式(a-1-21)(OP2.71、沸点319.2℃、80℃蒸気圧0.0566mmHg、分子量262.3)、
【化36】
以下の式(a1-1-22)(OP2.71、沸点336.9℃、80℃蒸気圧0.0055mmHg、分子量244.3)、
【化37】
以下の式(a1-1-23)(OP3.00、沸点370.9℃、80℃蒸気圧0.0021mmHg、分子量274.4)、
【化38】
以下の式(a1-1-24)(OP3.00、沸点376.4℃、80℃蒸気圧0.0005mmHg、分子量274.4)、
【化39】
以下の式(a1-1-25)(OP3.00、沸点379.4℃、80℃蒸気圧0.0002mmHg、分子量288.4)、
【化40】
以下の式(a1-1-26)(OP2.33、沸点360.8℃、80℃蒸気圧0.0006mmHg、分子量252.3)、
【化41】
以下の式(a1-1-27)(OP2.54、沸点371.5℃、80℃蒸気圧0.0003mmHg、分子量254.3)、
【化42】
以下の式(a-1-28)(OP2.57、沸点381.2℃、80℃蒸気圧0.0001mmHg、分子量268.3)、
【化43】
以下の式(a1-1-29)(OP2.57、沸点381.8℃、80℃蒸気圧0.0004mmHg、分子量268.3)、
【化44】
以下の式(a1-1-30)(OP2.50、沸点487.4℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量374.4)、
【化45】
以下の式(a1-1-31)(OP2.67、沸点417.2℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量268.3)、
【化46】
以下の式(a1-1-32)(OP2.67、沸点417.2℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量268.3)、
【化47】
以下の式(a1-1-33)(OP2.67、沸点417.2℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量268.3)、
【化48】
以下の式(a1-1-34)(OP2.67、沸点417.2℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量268.3)、
【化49】
以下の式(a1-1-35)(OP2.71、沸点438.8℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量296.3)、
【化50】
【0050】
<化合物(a1-2):Si原子を少なくとも含む重合性化合物>
本開示における重合性化合物(a1)は、Si原子を少なくとも含む重合性化合物(a1-2)を含んでいてもよい。更に、重合性化合物(a1)が重合性化合物(a1-2)を含む場合には、溶剤(d1)が除かれた状態の硬化性組成物(A’)は、かかる硬化性組成物(A)の全体に対して、10重量%以上のSi原子を含むことが好ましい。
【0051】
Si原子を少なくとも含む重合性化合物(a1-2)の一例としては、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。例えば、環状シロキサン化合物などとしては、以下に示すような構造が挙げられる。重合性官能基を有する基Qにおける重合性官能基としては、例えば、ラジカル重合性官能基が挙げられる。ラジカル重合性官能基としては、具体的には、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルベンゼン基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基、マレイミド基である。重合性官能基を有する基Qは、上述した重合性官能基を有する基であればよい。
【化51】
【0052】
重合性化合物(a1-2)の一例としては、その他にも、例えば、以下の化学式(I)に示すようなシルセスキオキサン骨格、及び、以下の化学式(II)に示すようなシリコーン骨格が挙げられる。ここで、化学式(I)において、m+n=8(8≧m≧1)、Rは、2価の有機基である。また、化学式(II)において、A、B、R、Rは、独立に炭素数1~6のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基であり、tは、1~3の整数であり、A及びBのうちの少なくともいずれか1つは、重合性官能基である。
【化52】
【化53】
【0053】
重合性官能基を有する基Q、A、Bにおける重合性官能基としては、例えば、ラジカル重合性官能基が挙げられる。ラジカル重合性官能基としては、具体的には、(メタ)アクリレート系化合物、(メタ)アクリルアミド系化合物、ビニルベンゼン系化合物、アリルエーテル系化合物、ビニルエーテル系化合物、マレイミド系化合物である。重合性官能基を有する基Qは、上述した重合性官能基を有する基であればよい。
【0054】
シリコン含有(メタ)アクリレート系化合物は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する化合物である。シリコン含有のアクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(2-アクリロイルエトキシ)トリメチルシラン、
N-(3-アクリロイル-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、
アクリロキシメチルトリメトキシシラン、
(アクリロキシメチル)フェネチルトリメトキシシラン、
アクリロキシメチルトリメチルシラン、
(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、
(3-アクリロキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、
(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン 、
(3-アクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、
(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、
(3-アクリロキシプロピル)トリクロロシラン、
(3-アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、
(3-アクリロキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、
アクリロキシトリイソプロピルシラン、
アクリロキシトリメチルシラン、
メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、
0-(メタクリロキシエトキシ)カルバモイルプロピルメチルジメトキシシラン、
(メタクリロキシメチル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、
N-(3-メタクリロイル-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、
(メタクリロキシメチル)メチルジメトキシシラン、
(メタクリロキシメチル)メチルジエトキシシラン、
メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
メタクリロイルプロピルトリイソプロポキシシラン、
0-(メタクリロキシエチル)-N-(トリエトキシシリルプロピル)カルバメート、
メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、
メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、
メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、
メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、
(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、
メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、
メタクリロキシプロピルシラトラン、
メタクリロキシペンタメチルジシロキサン、
(メタクリロキシメチル)フェニルジメチルシラン、
メタクリロキシトリメチルシラン、
メタクリロキシメチルトリメチルシラン、
(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、
メタクリロキシプロピルペンタメチルジシロキサン、
0-(メタクリロキシエチル)-3-[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピルカルバメート、
メタクリロキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
メタクリロキシエトキシトリメチルシラン、
(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、
メタクリロキシプロピルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、
メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3-メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、
メタクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、
メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、
3-メタクルロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、
3-メタクルロキシプロピルジメチルクロロシラン、
0-メタクリロキシ(ポリエチレンオキシ)トリメチルシラン、
ポリ(メタクルロキシプロピルシルセスキオキサン)、
メタクリロキシプロピルヘプタイソブチル-T8-シルセスキオキサン、
メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
【0055】
上述したシリコン含有単官能(メタ)アクリレート系化合物の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
SIA0160.0、SIA0180.0、SIA0182.0、SIA0184.0、SIA0186.0、SIA0190.0、SIA0194.0、SIA0196.0、SIA0197.0、SIA0198.0、SIA0199.0、SIA0200.0、SIA0200.A1、SIA0210.0、SIA0315.0、SIA0320.0、SIM6483.0、SIM6487.5、SIM6480.76、SIM6481.2、SIM6486.1、SIM6481.1、SIM6481.46、SIM6481.43、SIM6482.0、SIM6487.4、SIM6487.35、SIM6480.8、SIM6486.9、SIM6486.8、SIM6486.5、SIM6486.4、SIM6481.3、SIM6487.3、SIM6487.1、SIM6487.6、SIM6486.14、SIM6481.48、SIM6481.5、SIM6491.0、SIM6485.6、SIM6481.15、SIM6487.0、SIM6481.05、SIM6485.8、SIM6481.0、SIM6487.4LI、SIM6481.16、SIM6487.8、SIM6487.6HP、SIM6487.17、SIM6486.7、SIM6487.2、SIM6486.0、SIM6486.2、SIM6487.6-06、SIM6487.6-20、SIM6485.9、SST-R8C42、SLT-3R01、SIM6486.65(以上、GELEST製)、
TM-0701T、FM-0711、FM-0721、FM-0725(以上、JNC製)
【0056】
シリコン含有(メタ)アクリルアミド系化合物は、アクリルアミド基又はメタクリルアミド基を1つ以上有する化合物である。シリコン含有のアクリルアミド基又はメタクリルアミド基を1つ有する単官能(メタ)アクリルアミド系化合物としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
3-アクリルアミドプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
【0057】
上述したシリコン含有単官能(メタ)アクルアミド系化合物の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
SIA0146.0、SIA0150.0(以上、GELEST製)
【0058】
また、アクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
両末端をアクリロキシプロピル基で修飾された直鎖状ポリジメチルシロキサン、
両末端をメタクリロキシプロピル基で修飾された直鎖状ポリジメチルシロキサン、
複数のアクリロキシプロピル基で修飾された環状シロキサン、
複数のメタクリロキシプロピル基で修飾された環状シロキサン、
複数のアクリロキシプロピル基で修飾されたシルセスキオキサン、
複数のメタクリロキシプロピル基で修飾されたシルセスキオキサン
【0059】
上述したシリコン含有多官能(メタ)アクリレート系化合物の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
SIA0200.2、SIA0200.3、SIM6487.42、DMS-R11、DMS-R05、DMS-R22、DMS-R18、DMS-R31(以上、GELEST製)、
FM-7711、FM-7721、FM-7725(以上、JNC製)、
X-22-2445(信越化学)、
AC-SQ TA-100、MAC-SQ TM-100、AC-SQSI-20、MAC-SQ SI-20(以上、東亜合成製)
【0060】
また、例えば、Ogawaらによる“Ultraviolet curable branched siloxanes as low-k dielectric for imprint lithography”より、以下のものを合成及び/又は入手することができる。
両末端をメタクリロキシプロピル基で修飾された直鎖状変性ポリジメチルシロキサン(MA-Si-12)、
4つのメタクリロキシプロピル基で修飾された8員環シロキサン(8-ring)、
5つのメタクリロキシプロピル基で修飾された10員環シロキサン(10-ring)
【0061】
硬化性組成物(A)における成分(a1)の配合割合は、成分(a1)と、後述する成分(b1)と、後述する成分(c1)との合計、即ち、溶剤(d1)を除く全成分の合計質量に対して、40重量%以上99重量%以下であることが好ましい。また、50重量%以上95重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上90重量%以下であることが更に好ましい。成分(a1)の配合割合を40重量%以上にすることによって、硬化性組成物の硬化膜の機械強度が高くなる。また、成分(a1)の配合割合を99重量%以下にすることによって、成分(b1)や成分(c1)の配合割合を高くすることができ、速い光重合速度などの特性を得ることができる。1種類以上の重合性化合物を含む成分(a1)の少なくとも一部は、重合性官能基を有するポリマーであってもよい。かかるポリマーは、芳香族構造、芳香族複素環構造又は脂環式構造などの環構造を少なくとも含むことが好ましい。例えば、以下の構造(1)~構造(6)のいずれかで表される構成単位の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【化54】
【0062】
構造(1)~構造(6)において、置換基Rは、それぞれ独立に芳香環を含む部分構造を含む置換基であり、Rは、水素原子又はメチル基である。本明細書において、構造(1)~構造(6)で表される構成単位中、R以外の部分を特定のポリマーの主鎖とする。置換基Rの式量は、80以上であり、100以上であることが好ましく、130以上であることがより好ましく、150以上であることが更に好ましい。置換基Rの式量の上限は、500以下であることが実際的である。
【0063】
重合性官能基を有するポリマーは、通常、重量平均分子量が500以上の化合物であり、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましい。重量平均分子量の上限は、特に定めるものではないが、例えば、50,000以下が好ましい。重量平均分子量を上述した下限値以上とすることにより、沸点を250℃以上とすることができ、硬化後の機械物性をより向上させることができる。また、重量平均分子量を上述した上限値以下とすることにより、溶剤への溶解性が高く、粘度が高すぎずに離散的に配置される液滴の流動性が維持され、液膜平面の平坦性をより向上させることができる。なお、本開示における重量平均分子量(Mw)は、特に述べない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したものをいう。
【0064】
ポリマーが有する重合性官能基の具体例としては、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタン基、メチロール基、メチロールエーテル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。重合容易性の観点から、特に、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0065】
成分(a1)の少なくとも一部として重合性官能基を有するポリマーを添加する場合、その配合割合は、後述する粘度規定に収まる範囲であれば自由に設定することができる。例えば、溶剤(d1)を除く全成分の合計質量に対して、0.1重量%以上60重量%以下であることが好ましく、1重量%以上50重量%以下であることがより好ましく、10重量%以上40重量%以下であることが更に好ましい。重合性官能基を有するポリマーの配合割合を0.1重量%以上とすることで、耐熱性、ドライエッチング耐性、機械強度や低揮発性を向上させることができる。また、重合性官能基を有するポリマーの配合割合を60重量%以下とすることで、後述する粘度の上限規定に収めることができる。
【0066】
<成分(b1):光重合開始剤>
成分(b1)は、光重合開始剤である。本明細書において、光重合開始剤は、所定の波長の光を感知して、上述した重合因子(ラジカル)を発生させる化合物である。具体的には、光重合開始剤は、光(赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線などの荷電粒子線、放射線)によりラジカルを発生する重合開始剤(ラジカル発生剤)である。成分(b1)は、一種類の光重合開始剤のみで構成されていてもよいし、複数種類の光重合開始剤で構成されていてもよい。
【0067】
ラジカル発生剤としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-又はp-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体などの置換基を有してもよい2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-プロパン-1-オンなどのα―アミノ芳香族ケトン誘導体;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-t-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナンタラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノンなどのキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾインエーテル誘導体;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、プロピルベンゾインなどのベンゾイン誘導体;ベンジルジメチルケタールなどのベンジル誘導体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタンなどのアクリジン誘導体;N-フェニルグリシンなどのN-フェニルグリシン誘導体;アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンなどのアセトフェノン誘導体;チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどのチオキサントン誘導体;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド誘導体;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)などのオキシムエステル誘導体;キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン
【0068】
上述したラジカル発生剤の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Irgacure 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI-1700、-1750、-1850、CG24-61、Darocur 1116、1173、Lucirin(登録商標) TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF製)、ユベクリルP36(UCB製)
【0069】
上述したラジカル発生剤のうち、成分(b1)は、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤であることが好ましい。なお、上述したラジカル発生剤のうち、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤は、以下のものである。
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド化合物
【0070】
硬化性組成物(A)における成分(b1)の配合割合は、成分(a1)と、成分(b1)と、後述する成分(c1)との合計、即ち、溶剤(d1)を除く全成分の合計質量に対して、0.1重量%以上50重量%以下であることが好ましい。また、硬化性組成物(A)における成分(b1)の配合割合は、溶剤(d1)を除く全成分の合計質量に対して、0.1重量%以上20重量%以下であることがより好ましく、1重量%以上20重量%以下であることが更に好ましい。成分(b1)の配合割合を0.1重量%以上にすることによって、組成物の硬化速度が速くなり、反応効率を向上させることができる。また、成分(b1)の配合割合を50重量%以下にすることによって、ある程度の機械的強度を有する硬化膜を得ることができる。
【0071】
<成分(c1):非重合性化合物>
本開示における硬化性組成物(A)は、上述した成分(a1)及び成分(b1)の他に、種々の目的に応じて、本開示の効果を損なわない範囲において、成分(c1)として、非重合性化合物を更に含むことができる。このような成分(c1)としては、(メタ)アクリロイル基などの重合性官能基を有さず、且つ、所定の波長の光を感知して、上述した重合因子(ラジカル)を発生させる能力を有していない化合物が挙げられる。非重合性化合物としては、例えば、増感剤、水素供与体、界面活性剤(c1)、酸化防止剤、ポリマー成分、その他の添加剤などが挙げられる。成分(c1)として、上述した化合物を複数種類含んでいてもよい。
【0072】
増感剤は、重合反応促進や反応転化率の向上を目的として、適宜添加される化合物である。増感剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0073】
増感剤としては、例えば、増感色素などが挙げられる。増感色素は、特定の波長の光を吸収することで励起され、成分(b1)である光重合開始剤と相互作用する化合物である。ここで、相互作用とは、励起状態の増感色素から成分(b1)である光重合開始剤へのエネルギー移動や電子移動などである。増感色素の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、カルバゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、キサントン誘導体、クマリン誘導体、フェノチアジン誘導体、カンファキノン誘導体、アクリジン系色素、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素
【0074】
水素供与体は、成分(b1)である光重合開始剤から発生した開始ラジカルや重合生長末端のラジカルと反応し、より反応性が高いラジカルを発生する化合物である。成分(b1)である光重合開始剤が光ラジカル発生剤である場合に、水素供与体を添加することが好ましい。
【0075】
このような水素供与体の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’-ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエタノールアミン、N-フェニルグリシンなどのアミン化合物、2-メルカプト-N-フェニルベンゾイミダゾール、メルカプトプロピオン酸エステルなどのメルカプト化合物
【0076】
水素供与体は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、水素供与体は、増感剤としての機能を有していてもよい。
【0077】
本開示においては、界面活性剤(c1)の添加によって硬化性組成物(A)の密着層に対する接触角を所望の値に制御することができる。特に、後述するフッ素系界面活性剤は、基板、硬化性組成物、空気の三相界面においてピンニング効果を発揮し、接触角を高くすることができる。
【0078】
また、界面活性剤(c1)は、型と硬化性組成物との間の界面結合力の低減、即ち、後述する離型工程における離型力の低減する内添型離型剤としても機能する。本明細書において、内添型とは、硬化性組成物の配置工程の前に、予め硬化性組成物に添加されていることを意味する。界面活性剤(c1)としては、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及び炭化水素系界面活性剤などの界面活性剤を使用することができる。但し、本開示において、界面活性剤(c1)には、後述するように、添加量に制限がある。なお、本開示における界面活性剤(c1)は、重合性を有していないものとする。界面活性剤(c1)は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0079】
フッ素系界面活性剤としては、以下のものが含まれる。
パーフルオロアルキル基を有するアルコールのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなど)付加物、パーフルオロポリエーテルのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなど)付加物
【0080】
なお、フッ素系界面活性剤は、分子構造の一部(例えば、末端基)に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、チオール基などを有していてもよい。例えば、ペンタデカエチレングリコールモノ1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルエーテルなどが挙げられる。
【0081】
フッ素系界面活性剤としては、市販品を使用してもよい。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられる。
メガファック(登録商標)F-444、TF-2066、TF-2067、TF-2068、略称DEO-15(以上、DIC製)、フロラードFC-430、FC-431(以上、住友スリーエム製)、サーフロン(登録商標)S-382(AGC製)、EFTOP EF-122A、122B、122C、EF-121、EF-126、EF-127、MF-100(以上、トーケムプロダクツ製)、PF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(以上、OMNOVA Solutions製)、ユニダイン(登録商標)DS-401、DS-403、DS-451(以上、ダイキン工業製)、フタージェント(登録商標)250、251、222F、208G(以上、ネオス製)
【0082】
また、界面活性剤(c1)は、炭化水素系界面活性剤であってもよい。炭化水素系界面活性剤としては、炭素数1~50のアルキルアルコールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物やポリアルキレンオキサイドなどが含まれる。
【0083】
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物としては、以下のものが挙げられる。
メチルアルコールエチレンオキサイド付加物、デシルアルコールエチレンオキサイド付加物、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物、セチルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物
【0084】
なお、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物の末端基は、単純に、アルキルアルコールにポリアルキレンオキサイドを付加して製造できるヒドロキシル基に限定されるものではない。かかるヒドロキシル基が、その他の置換基、例えば、カルボキシル基、アミノ基、ピリジル基、チオール基、シラノール基などの極性官能基やアルキル基、アルコキシ基などの疎水性官能基に置換されていてもよい。
【0085】
ポリアルキレンオキサイドとしては、以下のものが挙げられる。
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これらのモノ又はジメチルエーテル、モノまたはジオクチルエーテル、モノ又はジノニルエーテル、モノ又はジデシルエーテル、モノアジピン酸エステル、モノオレイン酸エステル、モノステアリン酸エステル、モノコハク酸エステル
【0086】
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物は、市販品を使用してもよい。アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられる。
青木油脂工業製のポリオキシエチレンメチルエーテル(メチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON MP-400、MP-550、MP-1000)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンデシルエーテル(デシルアルコールエチレンオキサイド付加物)(FINESURF D-1303、D-1305、D-1307、D-1310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンラウリルエーテル(ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON EL-1505)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンセチルエーテル(セチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON CH-305、CH-310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンステアリルエーテル(ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON SR-705、SR-707、SR-715、SR-720、SR-730、SR-750)、青木油脂工業製のランダム重合型ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル(BLAUNON SA-50/50 1000R、SA-30/70 2000R)、BASF製のポリオキシエチレンメチルエーテル(Pluriol(登録商標)A760E)、花王製のポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲンシリーズ)
【0087】
また、ポリアルキレンオキサイドは、市販品を使用してもよく、例えば、BASF製のエチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合物(Pluronic PE6400)などが挙げられる。
【0088】
また、界面活性剤(c1)は、シリコン系界面活性剤であってもよい。シリコン系界面活性剤としては、例えば、商品名SI-10シリーズ(竹本油脂(株)製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業(株)製)、KP-341(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0089】
また、界面活性剤(c1)は、フッ素原子とシリコン原子との両方を少なくとも含む界面活性剤であってもよい。フッ素原子とシリコン原子との両方を含む界面活性剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。
商品名X-70-090、X-70-091、X-70-092、X-70-093、(以上、信越化学工業(株)製)、商品名メガフアックR-08、XRB-4(以上、大日本インキ化学工業(株)製)
【0090】
硬化性組成物(A)における界面活性剤を除いた成分(c1)の配合割合は、成分(a1)と、成分(b1)と、成分(c1)との合計、即ち、溶剤(d1)を除く全成分の合計質量に対して、0.01重量%以上50重量%以下であることが好ましい。また、硬化性組成物(A)における界面活性剤を除いた成分(c1)の配合割合は、溶剤(d1)を除く全成分の合計質量に対して、0.01重量%以上50重量%以下であることがより好ましく、0.01重量%以上20重量%以下であることが更に好ましい。界面活性剤を除いた成分(c1)の配合割合を50重量%以下にすることによって、ある程度の機械的強度を有する硬化膜を得ることができる。
【0091】
<成分(d1):溶剤>
本開示における硬化性組成物は、溶剤(d1)として、常圧下において、沸点が100℃以上250℃未満の溶剤を含む。成分(d1)としては、成分(a1)、成分(b1)が溶解する溶剤、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、含窒素系溶媒などが挙げられる。成分(d1)は、1種類を単独で、或いは、2種類以上を組み合わせて用いることができる。成分(d1)の常圧下における沸点は、100℃以上とし、140℃以上であることが好ましく、150℃以上であることが特に好ましい。成分(d1)の常圧下における沸点は、250℃未満とし、200℃未満であることが好ましい。成分(d1)の常圧下における沸点が100℃未満であると、後述する待機工程における揮発速度が速すぎるため、硬化性組成物(A)の液滴同士が結合する前に成分(d1)が揮発し、硬化性組成物(A)の液滴同士が結合しない可能性がある。また、成分(d1)の常圧下における沸点が250℃以上であると、後述する待機工程において、溶剤(d1)の揮発が不十分となり、硬化性組成物(A)の硬化物に成分(d1)が残存する可能性がある。ここで、成分(d1)が1種類以上の溶剤を含む場合、1種類以上の溶剤のそれぞれの常圧下における沸点は、100℃以上250℃未満(例えば、100℃以上200℃未満)であるとよい。
【0092】
アルコール系溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、iso-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾールなどのモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール系溶媒
【0093】
ケトン系溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン
【0094】
エーテル系溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
エチルエーテル、iso-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、2-n-ブトキシエタノール、2-n-ヘキソキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-(2-エチルブトキシ)エタノール、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、1-n-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン
【0095】
エステル系溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミルγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸iso-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル
【0096】
含窒素系溶媒としては、例えば、例えば、以下のものが挙げられる。
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン
【0097】
上述した溶媒のうち、エーテル系溶媒及びエステル系溶媒が好ましい。なお、成膜性に優れる観点から、より好ましいものとして、グリコール構造を有するエーテル系溶媒、エステル系溶媒が挙げられる。
【0098】
また、更に好ましいものとして、以下のものが挙げられる。
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル
【0099】
更に、特に好ましいものとして、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。なお、エチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなども挙げられる。
【0100】
本開示において、好ましい溶剤は、エステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれかを少なくとも1つ有する溶剤である。具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、乳酸エチルから選ばれる単独又はこれらの混合溶剤である。
【0101】
また、本開示において、成分(d1)として、常圧下において沸点が80℃以上250℃未満である重合性化合物を用いることもできる。常圧下において沸点が80℃以上250℃未満である重合性化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
シクロヘキシルアクリレート(198℃)、ベンジルアクリレート(229℃)、イソボルニルアクリレート(245℃)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(202℃)、トリメチルシクロヘキシルアクリレート(232℃)、イソオクチルアクリレート(217℃)、n-オクチルアクリレート(228℃)、エトキシエトキシエチルアクリレート(沸点230℃)、ジビニルベンゼン(193℃)、1,3-ジイソプロペニルベンゼン(218℃)、スチレン(145℃)、α―メチルスチレン(165℃)
【0102】
本開示では、硬化性組成物(A)の全体を100体積%とした場合、溶剤(d1)の含有量を、5体積%以上95体積%以下、好ましくは、15体積%以上85体積%以下とし、更に好ましくは、40体積%以上80体積%以下とする。硬化性組成物(A)の全体とは、重合性化合物(a1)と、光重合開始剤(b1)と、溶剤(d1)との合計体積をいう。例えば、溶剤(d1)の含有量は、40体積%以上85体積%以下である。溶剤(d1)の含有量が5体積%よりも少ないと、実質的に連続的な液膜が得られる条件において、溶剤(d1)の揮発後に薄い膜を得ることが難しい。また、溶剤(d1)の含有量が95体積%よりも多いと、インクジェット法により最密に液滴を滴下したとしても、溶剤(d1)の揮発後に厚い膜を得ることが難しい。
【0103】
<硬化性組成物の配合時の温度>
本開示における硬化性組成物(A)を調製する際には、少なくとも、成分(a1)、成分(b1)、成分(d1)を所定の温度条件下で混合・溶解させる。所定の温度条件は、具体的には、0℃以上100℃以下の範囲とする。なお、硬化性組成物(A)が成分(c1)を含む場合も同様である。
【0104】
<硬化性組成物の粘度>
本開示における硬化性組成物(A)は、液体とする。これは、後述する配置工程において、硬化性組成物(A)の液滴をインクジェット法により基板上に離散的に滴下するためである。本開示における硬化性組成物(A)の粘度は、23℃、1気圧において、1.3mPa・s以上60mPa・s以下とし、2mPa・s以上30mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下であることが更に好ましい。硬化性組成物(A)の粘度が2mPa・s未満であると、インクジェット法による液滴の吐出性が不安定になりうる。また、硬化性組成物(A)の粘度が60mPa・sよりも大きいと、本開示において好ましい1.0~3.0pL程度の体積の液滴を形成することが難しい。
【0105】
硬化性組成物(A)から溶剤(d1)が揮発した後の状態、即ち、硬化性組成物(A)のうち溶剤(d1)を除く成分の混合物の23℃、1気圧での粘度は、30mPa・s以上10,000mPa・s以下である。硬化性組成物(A)のうち溶剤(d1)を除く成分の混合物の23℃、1気圧での粘度は、90mPa・s以上2,000mPa・s以下、例えば、120mPa・s以上1000mPa・s以下であることが好ましい。また、硬化性組成物(A)のうち溶剤(d1)を除く成分の混合物の23℃、1気圧での粘度は、150mPa・s以上500mPa・s以下であることが更に好ましい。硬化性組成物(A)のうち溶剤(d2)を除く成分の粘度を1000mPa・s以下にすることによって、硬化性組成物(A)と型とを接触させる際に、スプレッド及びフィルが速やかに完了する。従って、本開示における硬化性組成物(A)を用いることで、インプリント処理を高いスループットで実施することができるとともに、充填不良によるパターン欠陥を抑制することができる。また、硬化性組成物(A)のうち溶剤(d1)を除く成分の粘度を1mPa・s以上にすることによって、溶剤(d1)が揮発した後の硬化性組成物(A’)の液滴の不要な流動を防止することができる。更に、硬化性組成物(A)と型とを接触させる際に、型の端部から硬化性組成物(A)が流出しにくくなる。
【0106】
<硬化性組成物の接触角>
本発明者らは、硬化性組成物(A)の接触角に関して、硬化性組成物(A)の密着層又はシリコン基板に対する接触角が、1.8[°]以下であることによって、基板上で硬化性組成物の液滴同士が結合し、連続的な液膜を形成できることを見出した。
【0107】
本実施形態において、硬化性組成物(A)から溶剤(d1)が除かれた状態の組成物の密着層又はシリコン基板に対する接触角は、11[°]以上19[°]以下とする。本発明者らは、硬化性組成物(A)から溶剤(成分(d1))が除かれた状態の組成物の密着層の表面又はシリコン基板に対する接触角が11[°]以上であることによって、液滴の広がりにピンニング効果が発揮されることを見出した。それにより、基板上での液滴の広がりを所望の大きさで止めることができ、硬化性組成物のはみ出し量を抑制することができる。また、硬化性組成物(A)から溶剤(成分(d1))が除かれた状態の組成物の密着層の表面又はシリコン基板に対する接触角が19[°]以下であることによって、基板上に形成された液膜が収縮するのを抑制することができる。
【0108】
<硬化性組成物に混入している不純物>
本開示における硬化性組成物(A)は、可能な限り、不純物を含まないことが好ましい。なお、不純物とは、上述した成分(a1)、成分(b1)、成分(c1)及び成分(d1)以外のものを意味する。従って、本開示における硬化性組成物(A)は、精製工程を経て得られたものであることが好ましい。このような精製工程としては、フィルタを用いた濾過などが好ましい。
【0109】
フィルタを用いた濾過としては、上述した成分(a1)、成分(b1)及び成分(c1)を混合した後、例えば、孔径0.001μm以上5.0μm以下のフィルタで濾過することが好ましい。フィルタを用いた濾過を行う際には、多段階で行ったり、多数回繰り返したりすること(循環濾過)が更に好ましい。また、フィルタで濾過した液体を再度濾過してもよいし、孔径の異なる複数のフィルタを用いて濾過してもよい。濾過に用いるフィルタとしては、ポリエチレン樹脂製、ポリプロピレン樹脂製、フッ素樹脂製、ナイロン樹脂製などのフィルタが挙げられるが、特に限定されるものではない。このような精製工程を経ることで、硬化性組成物に混入したパーティクルなどの不純物を取り除くことができる。これにより、硬化性組成物に混入した不純物によって、硬化性組成物を硬化させた後に得られる硬化膜に不用意に凹凸が生じてパターンの欠陥となることを防止することができる。
【0110】
なお、本開示における硬化性組成物を、半導体集積回路を製造するために使用する場合、製品の動作を阻害しないようにするため、金属原子を含む不純物(金属不純物)が硬化性組成物に混入することを極力避けることが好ましい。硬化性組成物に含まれる金属不純物の濃度は、10ppm以下であることが好ましく、100ppb以下であることが更に好ましい。
【0111】
<硬化性組成物のガラス転移温度>
ガラス転移温度が離型時の温度よりも十分に高いと、離型時の硬化物が強固なガラス状態、即ち、高い機械強度を示すため、離型の衝撃によるパターンの倒れや破損が生じにくくなる。従って、離型工程を室温で実施する場合、硬化物(重合性化合物(a1)の硬化後)のガラス転移温度は、70℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上が特に好ましい。
【0112】
硬化物(光硬化物)のガラス転移温度を測定する方法としては、示差走査熱量分析(DSC)又は動的粘弾性装置などを用いて測定する方法を適用することが可能である。例えば、DSCを用いてガラス転移温度を測定する場合を考える。この場合、硬化物のDSC曲線の低温側のベースライン(試験片に転移及び反応を生じない温度領域のDSC曲線部分)を高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線と、を取得する。そして、かかる直線と、かかる接線との交点から、補外ガラス転移開始温度(Tig)を求め、これをガラス転移温度として求めることができる。主な装置としては、STA-6000(Perkin Eimer製)などが挙げられる。一方、動的粘弾性装置を用いてガラス転移温度を測定する場合、硬化物の損失正弦(tanδ)が極大となる温度がガラス転移温度として定義される。動的粘弾性を測定する主な装置としては、MCR301(Anton Paar社製)などが挙げられる。
【0113】
[層形成組成物]
本開示における層形成組成物は、基材(基板)と硬化性組成物との間に密着層を形成するための組成物である。
【0114】
層形成組成物は、基材と結合する少なくとも1つの官能基および少なくとも1つの重合性官能基を有する化合物(a2)、架橋剤(b2)、溶剤(d2)を少なくとも有する。ここで、「基材と硬化性組成物を密着させる」とは、離型工程において、硬化性組成物の硬化膜からモールドを分離させるための力よりも強い強度で、密着層を介して基材と当該硬化膜とが結合している状態として定義されうる。離型工程とは、後述するが、インプリント処理において、基材上に形成された硬化性組成物の硬化膜からモールドを分離させる工程である。
【0115】
本実施形態に係る層形成組成物は、基材上に硬化性組成物の硬化膜(硬化物)を形成する場合に特に好ましく用いられる。また、本実施形態に係る層形成組成物によって形成される密着層と基材とを有する積層体は、硬化膜を得るために硬化性組成物が配置(供給)される基材として好ましく用いることができる。また、本実施形態の層形成組成物は、インプリント用の密着層形成組成物として用いることができ、特に、光ナノインプリント用の密着層形成組成物として有用である。ここで、本実施形態では、硬化性組成物として、光の照射によって硬化する性質を有する光硬化性組成物を用いる例を説明する。但し、硬化性組成物としては、光硬化性組成物に限られるものではなく、加熱によって硬化する性質を有する熱硬化性組成物が用いられてもよい。
【0116】
以下、本実施形態に係る層形成組成物が有する各成分について、詳細に説明する。本実施形態に係る層形成組成物は、前述のとおり、化合物(a2)、架橋剤(b2)および溶剤(d2)を有する。
【0117】
<化合物(a2)>
化合物(a2)は、基材と結合する少なくとも1つの官能基、及び、硬化性組成物と結合する少なくとも1つの重合性官能基を有する。ここで、「結合する官能基」とは、共有結合、イオン結合、水素結合、分子間力などの化学結合を生じる官能基をいう。化合物(a2)は、層形成組成物の全体を100質量%としたときに、1質量%未満の割合で含まれる。本実施形態で用いることができる化合物(a2)の種類は、公知の化合物を広く採用でき、特に定めるものではない。
【0118】
本実施形態に係る化合物(a2)は、1分子中に水酸基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基を少なくとも1つ有する。例えば、化合物(a2)としては、エチレン性不飽和結合含有基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、ビニルエーテル基を有する化合物等を挙げることができる。
【0119】
エチレン性不飽和結合含有基を有する化合物(a2)としては、具体的には以下のものを挙げることができる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリジノン、2-アクリロイロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシ2-ヒドロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-アクリロイロキシプロピルフタレート、2-エチル-2-ブチルプロパンジオールアクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、1-または2-ナフチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以後「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以後「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p-イソプロペニルフェノール、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、o-,m-,p-キシリレンジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタンジアクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0120】
エポキシ基を有する化合物(a2)としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類、フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類、高級脂肪酸のグリシジルエステル類
【0121】
ビニルエーテル基を有する化合物(a2)としては、例えば以下のものを挙げることができる。
2-エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール-1,4-ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2-プロパンジオールジビニルエーテル、1,3-プロパンジオールジビニルエーテル、1,3-ブタンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1-トリス〔4-(2-ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル
【0122】
一例としては、エチレン性不飽和基(P)と親水性基(Q)を有するポリ(メタ)アクリレート化合物が好ましい。エチレン性不飽和基(P)としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、マレイミド基、アリル基、ビニル基が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはそれと同等のアルコール残基を有するメタクリロイル基を意味する。親水性基(Q)としては、アルコール性水酸基、カルボキシル基、フェノール性水酸基、エーテル基(好ましくはポリオキシアルキレン基)、アミノ基、アミド基、イミド基、ウレイド基、ウレタン基、シアノ基、スルホンアミド基、ラクトン基、シクロカーボネート基などが挙げられる。親水性基がウレタン基である場合、ウレタン基に隣接する基が酸素原子、例えば、「-O-C(=O)-NH-」として樹脂中に存在することが好ましい。
【0123】
ポリ(メタ)アクリレート化合物(アクリル樹脂)は、エチレン性不飽和基(P)を含む繰り返し単位、および、親水性基(Q)を含む繰り返し単位を、同一の繰り返し単位に含んでいてもよいし、別々の繰り返し単位に含んでいてもよい。但し、ポリ(メタ)アクリレート化合物(アクリル樹脂)は、これらの繰り返し単位を、20~100モル%の割合で含むことが好ましい。さらに、ポリ(メタ)アクリレート化合物(アクリル樹脂)は、エチレン性不飽和基(P)および親水性基(Q)の両方を含まない、他の繰り返し単位を含んでいてもよく、他の繰り返し単位の割合は、アクリル樹脂中の50モル%以下であることが好ましい。
【0124】
ポリ(メタ)アクリレート化合物(アクリル樹脂)は、下記の一般式(I)(II)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【化55】
(一般式(I)および(II)において、R1およびR2は、それぞれ、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシメチル基を表す。L1は、3価の連結基を表し、L2aは、単結合または2価の連結基を表し、L2bは、単結合、2価の連結基、または3価の連結基を表す。Pはエチレン性不飽和基を表し、Qは親水性基を表し、nは1または2である。)
【0125】
1およびR2は、各々独立に、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基を表す。R1およびR2としては、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0126】
1は、3価の連結基を表す。3価の連結基は、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、またはこれらを組み合わせた3価の基であり、エステル結合、エーテル結合、スルフィド結合、および窒素原子を含んでいても良い。3価の連結基の炭素数は1~9が好ましい。
【0127】
2aは、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、またはこれらを組み合わせた2価の基であり、エステル結合、エーテル結合、およびスルフィド結合を含んでいてもよい。2価の連結基の炭素数は1~8が好ましい。
【0128】
2bは、単結合、2価の連結基、または3価の連結基を表す。L2bが表す2価の連結基は、L2aが表す2価の連結基と同義であり、好ましい範囲も同様である。L2bが表す3価の連結基は、L1が表す3価の連結基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0129】
Pは、エチレン性不飽和基を表す。Pが表すエチレン性不飽和基は、上記で例示したエチレン性不飽和基と同義であり、好ましいエチレン性不飽和基も同様である。また、Qは、親水性基を表す。Qが表す親水性基は、上記で例示した親水性基と同義であり、好ましい親水性基も同様である。
【0130】
nは、1または2であり、1が好ましい。
【0131】
なお、L1、L2aおよびL2bは、エチレン性不飽和基、親水性基を含まない。
【0132】
ポリ(メタ)アクリレート化合物(アクリル樹脂)は、さらに、下記の一般式(III)および/または一般式(IV)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【化56】
(一般式(III)および(IV)において、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシメチル基を表す。L3およびL4は、それぞれ、単結合または2価の連結基を表す。Qは親水性基を表す。R5は、炭素数1~12の脂肪族基、炭素数3~12の脂環族基、または炭素数6~12の芳香族基を表す。)
【0133】
3およびR4は、それぞれ、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基を表す。R3およびR4としては、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0134】
3およびL4は、それぞれ、単結合または2価の連結基を表す。L3およびL4の各々が表す2価の連結基としては、一般式(I)中のL2aが表す2価の連結基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0135】
Qは親水性基を表す。Qが表す親水性基は、上記で例示した親水性基と同義であり、好ましい親水性基も同様である。
【0136】
5は、炭素数1~12の脂肪族基、脂環族基、芳香族基を表す。炭素数1~12の脂肪族基としては、例えば、炭素数1~12のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2-エチルへキシル基、3,3,5-トリメチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基)などが挙げられる。炭素数3~12の脂環族基としては、炭素数3~12のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデカニル基)などが挙げられる。炭素数6~12の芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる。中でも、フェニル基、ナフチル基が好ましい。脂肪族基、脂環族基および芳香族基は、置換基を有していてもよい。
【0137】
以下に、本実施形態で用いることができるアクリル樹脂の具体例を示す。なお、下記の具体例中、xは0~50mol%を表し、yは0~50mol%を表し、zは20~100mol%を表している。
【化57】
【0138】
また、本実施形態で用いることができる化合物(a2)の他の例としては、主鎖が芳香環を含むものが挙げられる。芳香環を含む化合物(a2)としては、主鎖が芳香環とアルキレン基とからなり、主鎖がベンゼン環とメチレン基とが交互に結合した構造であるものを例示することができる。この化合物(a2)は、側鎖に反応性基を有することが好ましく、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有することがより好ましく、側鎖にアクリロイル基を有することがより好ましい。
【0139】
主鎖が芳香環を含む化合物(a2)は、下記の一般式(a2―1)で表される構成単位を主成分とするポリマーが好ましく、下記の一般式(a2―1)で表される構成単位が90モル%以上を占めるポリマーであることがより好ましい。
【化58】
(一般式(a2―1)において、Rはアルキル基であり、L1およびL2は、それぞれ、2価の連結基であり、Pは重合性基である。nは0~3の整数である。)
【0140】
Rは、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。L1は、アルキレン基であることが好ましく、炭素数1~3のアルキレン基であることがより好ましく、「-CH2-」であることがより好ましい。L2は、「-CH2-」、「-O-」、「-CHR(Rは置換基)-」、およびこれらの2以上の組み合わせからなる2価の連結基であることが好ましい。Rは、OH基が好ましい。Pは、(メタ)アクリロイル基が好ましく、アクリロイル基がより好ましい。nは、0~2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。
【0141】
本実施形態で用いることができる化合物(a2)の他の例としては、エポキシポリ(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。その他、化合物(a2)としては、例えば、特表2009-503139号公報の段落0040~0056に記載されたものが挙げられ、この内容は、参照により本明細書に組み込まれうる。
【0142】
上述した化合物(a2)の中でも、基材との結合性が高い官能基を有するものが好ましい。基材との結合性が高い官能基としては、水酸基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基のいずれかから選ばれ、水酸基またはカルボキシル基が特に好ましい。
【0143】
化合物(a2)は、低分子化合物でもポリマーでもよいが、ポリマーが好ましい。分子量は、通常200以上100,000以下であり、好ましくは500以上50,000以下であり、さらに好ましくは1,000以上10,000以下である。化合物(a2)の分子量が200以下だとベーク工程にて揮発する虞があり、100,000以上だとスピンコート工程において気泡が残りやすい虞がある。
【0144】
なお、化合物(a2)は、一種類の化合物で構成されていてもよく、複数種類の化合物で構成されていてもよい。
【0145】
<架橋剤(b2)>
本実施形態に係る架橋剤(b2)は、1分子中に、アルコキシアルキル基またはアルキロール基のいずれか一方または両方(以下、「官能基a」と称する)を合計で少なくとも5つ有する化合物である。
【0146】
本実施形態に係る架橋剤(b2)が有する官能基aは、後述する密着層形成工程において、化合物(a2)の有する水酸基またはカルボキシル基と反応する官能基である。その結果、化合物(a2)と架橋剤(b2)との間に結合が生成される。架橋剤(b2)は1分子中に官能基aを複数個有するため、架橋剤(b2)は、複数個の化合物(a2)との間にそれぞれ結合を生じさせることができる。架橋剤(b2)が複数個の化合物(a2)との間にそれぞれ結合を生じることによって、密着層を構成する化合物同士が架橋した構造(架橋構造)を形成することができる。
【0147】
本実施形態に係る架橋剤(b2)が有する官能基aと、化合物(a2)が有する水酸基またはカルボキシル基との反応は、後述する密着層形成工程における加熱プロセスによって生じることが好ましい。
【0148】
このように架橋構造を有する密着層を形成することで、基材に接続されていない、遊離した未反応の化合物(a2)または架橋剤(b2)の量を低減させることができる。これにより、密着層の膜強度を向上させることができる。
【0149】
未反応の化合物(a2)や架橋剤(b2)が密着層中に遊離した状態で存在していると、後述する硬化性組成物の配置工程において、これらの化合物が硬化性組成物中へと溶出する可能性がある。その結果、硬化性組成物の組成が変化することによって硬化性組成物の特性が変化し、例えば硬化性組成物を硬化させて得られる硬化膜のパターンの剥がれ欠陥などが生じてしまう。
【0150】
一方、本実施形態に係る層形成組成物を用いると、密着層中の、基材に接続されていない遊離した化合物(a2)や架橋剤(b2)の量を従来よりも大幅に低減させることができる。これにより、硬化性組成物の配置工程における硬化性組成物中への化合物(a2)または架橋剤(b2)の溶出も大幅に抑制することができる。その結果、上述した硬化膜のパターンの剥がれ欠陥などの発生を抑制することができる。
【0151】
また、架橋剤(b2)が有する官能基aは、基材の表面に存在する官能基との間で、共有結合、イオン結合、水素結合、分子間力などのいずれかの化学結合または相互作用を生じてもよい。例えば、基材として表面にシラノール基などの水酸基を有する基材を用いた場合には、アルコキシアルキル基とシラノール基との間で脱アルコール反応が生じる。その結果、架橋剤(b2)と基材との間に共有結合を形成することができる。これにより、密着層と基材との間の密着性を向上させることができる。
【0152】
さらに、架橋剤(b2)は、下記の一般式(b2―1)で表される化合物であることが好ましい。
【化59】
一般式(b2―1)において、R1~R6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、またはアルキロール基のいずれかを表す。但し、R1~R6の少なくとも5つはアルコキシアルキル基またはアルキロール基である。
【0153】
上記の一般式(b2―1)で表される化合物は、構造の中心にトリアジン環を有するメラミンの誘導体である。すなわち、一般式(1)で表される化合物は、1,3,5-トリアジンの2位、4位、6位に窒素原子がそれぞれ結合した構造を有している。さらに、一般式(1)で表される化合物は、5つまたは6つの官能基aを有する。即ち、上記の一般式(b2―1)で表される化合物は、グリコールウリルの誘導体等の尿素系化合物に比べて、官能基aを多く有する。
【0154】
架橋剤(b2)が有するアルコキシアルキル基またはアルキロール基の種類は、特に限定はされないが、アルコキシアルキル基としてはメトキシメチル基が好ましく、アルキロール基としてはメチロール基が好ましい。このようにアルコキシアルキル基またはアルキロール基として式量の小さな官能基を用いることで、密着層101中の単位質量あたりの架橋密度を向上させることができる。その結果、密着層101の膜強度を向上させることができる。
【0155】
架橋剤(b2)の具体例としては、ペンタメトキシメチルメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、(ヒドロキシメチル)ペンタキス(メトキシメチル)メラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどが挙げられる。架橋剤(b2)は、これらの中から選択される少なくとも一種を含みうるが、これに限定されるものではない。
【0156】
また、架橋剤(b2)として尿素系化合物を適用してもよい。具体的には、テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、4,5-ジメトキシ-1,3ビス(メトキシメチル)イミダゾリジン-2-オン、テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、テトラキス(エトキシメチル)グリコールウリル、テトラキス(イソプロポキシメチル)グリコールウリル、テトラキス(アミルオキシメチル)グリコールウリル、テトラキス(ヘキソキシメチル)グリコールウリルなどのメチル化された尿素系架橋剤が挙げられる。
【0157】
尿素系化合物の市販品としては、三和ケミカル社より市販されているニカラックMX-270、ニカラックMX-280、ニカラックMX-290、アメリカンシアナミド社(American Cyanamid Co.)より市販されているパウダーリンク(Powderlink)1174、サイテックインダストリーズ社より市販されているサイメル1170等を好ましく使用することができる。
【0158】
また、上記の樹脂の単量体も使用することができ、例えば、下記の化合物、ジメトキシメチル尿素等を挙げることができる。
【化60】
【0159】
なお、架橋剤(b2)は、一種類の化合物で構成されていてもよく、複数種類の化合物で構成されていてもよい。
【0160】
<化合物(a2)および架橋剤(b2)の配合比率>
層形成組成物のうち、化合物(a2)または架橋剤(b2)のどちらか一方の配合比率が極端に小さいと、密着層101の架橋密度が小さくなり、膜強度や硬化性が不十分となる。したがって、層形成組成物の全重量に対する化合物(a2)および架橋剤(b2)の重量分率をそれぞれα、βとすると、α:βは1:9~9:1であることが好ましく、1:5~5:1であることがより好ましい。すなわち、α/βは、0.11以上9以下であることが好ましく、0.2以上5以下であることが好ましい。なお、最適な配合比率は、化合物(a2)および架橋剤(b2)の官能基の数や分子量、反応性によって異なるが、概ね上述の範囲内の配合比率とすることで、層形成組成物の硬化性を高めることができる。
【0161】
層形成組成物における化合物(a2)および架橋剤(b2)の配合割合(αとβとの和)は、層形成組成物の粘度や、目的とする密着層の膜厚などによって適宜調整することができる。αとβとの和は、層形成組成物の全重量に対して、0.01以上10以下であることが好ましく、0.1以上10以下であることがより好ましく、0.1以上7以下であることがさらに好ましい。層形成組成物における化合物(a2)と架橋剤(b2)との配合割合を上記範囲にすることで、層形成組成物の粘度を低くすることができ、形成される密着層101の膜厚を小さくすることができる。
【0162】
<揮発性溶剤(d2)>
本実施形態に係る層形成組成物は、揮発性溶剤(d2)(以下、単に「溶剤(d2)」と称する)を含有する。層形成組成物が溶剤(d2)を含有することによって、層形成組成物の粘度を低下させることができる。その結果、基材に対する層形成組成物の塗布性を向上させることができる。
【0163】
溶剤(d2)は、常圧における沸点が80~200℃である第1溶剤(d2-1)と、常圧における沸点が200℃~300℃である第2溶剤(d2-2)を混合して使用してもよい。或いは、溶剤(d2)は、第1溶剤(d2-1)を単独で使用してもよいし、第2溶剤(d2-2)を単独で使用してもよい。
【0164】
第1溶剤(d2-1)は、化合物(a2)および架橋剤(b2)が溶解することができる溶剤であれば、特に限定はされないが、常圧における沸点が80~200℃である溶剤が好ましい。また、第1溶剤(d2-1)は、水酸基、エーテル構造、エステル構造、ケトン構造のいずれかを少なくとも1つ有する有機溶剤であることが好ましい。これらの溶剤は、化合物(a2)および架橋剤(b2)の溶解性や、基材に対する濡れ性などに優れる。
【0165】
本実施形態に係る第1溶剤(d1-1)として用いることが可能な溶剤の具体例としては以下のものを挙げることができる。
n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、iso-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、sec-ウンデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、プロピレングリコールなどのアルコール系溶剤;n-ブチルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、ジオキサン、ジメチルジオキサン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、2-n-ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1-n-ブトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;ブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、フェンチョンなどのケトン系溶剤;ジエチルカーボネート、酢酸アミル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸iso-アミル、シュウ酸ジエチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、マロン酸ジエチルなどの酢酸系溶剤;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミドなどのアミド系から選ばれる単独またはこれらの混合溶剤。
【0166】
この中でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、またはその混合溶液が、塗布性の観点で特に好ましい。
【0167】
第2溶剤(d2-2)は、化合物(a2)および架橋剤(b2)が溶解することができる溶剤であれば、特に限定はされないが、常圧における沸点が200~300℃である溶剤が好ましい。また、第2溶剤(d2-2)は、水酸基、エーテル構造、エステル構造、ケトン構造のいずれかを少なくとも1つ有する有機溶剤であることが好ましい。これらの溶剤は、化合物(a2)および架橋剤(b2)の溶解性や、基材に対する濡れ性などに優れる。
【0168】
本実施形態に係る第2溶剤(d2―2)として用いることが可能な溶剤の具体例としては以下のものを挙げることができる。
n-ノニルアルコール、n-デカノール、sec-テトラデシルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどのアルコール系溶剤;n-ヘキシルエーテル、2-n-ヘキソキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-(2-エチルブトキシ)エタノール、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、1-フェノキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤;アセトフェノンなどのケトン系溶剤;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸ベンジル、酢酸n-ノニル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸n-アミル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどの酢酸系溶剤;アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系から選ばれる単独またはこれらの混合溶剤。
【0169】
上述のように、溶剤(d2)は、第1溶剤(d2-1)および第2溶剤(d2-2)の二種を含有していてもよい。この場合、第1溶剤(d2-1)および第2溶剤(d2-2)の合計を100質量部としたとき、第2溶剤(d2-2)は1~50質量部が好ましく、2~40質量部がより好ましく、5~25質量部がよりさらに好ましい。第2溶剤(d2-2)の質量部を上記範囲内とすることで、膜厚の面内均一性および欠陥密度が改善される。なお、溶剤(d2)は三種類以上の溶剤を含有していてもよい。
【0170】
本実施形態に係る溶剤(d2)の、層形成組成物における配合割合は、化合物(a2)および架橋剤(b2)の粘度や塗布性、形成する密着層101の膜厚などによって適宜調整することができる。層形成組成物における溶剤(d2)の配合割合(含有量)は、層形成組成物の全体を100質量%としたとき、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。層形成組成物における溶剤(d2)の配合割合が大きいほど、形成する密着層の膜厚を薄くできるため、インプリント用の密着層形成組成物として好ましい。層形成組成物における溶剤(d2)の配合割合が70質量%未満である場合には、十分な塗布性が得られない場合がある。なお、溶剤(d2)の配合割合の上限は特に限定はされないが、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましい。
【0171】
<その他の成分(e2)>
本実施形態に係る層形成組成物は、前述した化合物(a2)、架橋剤(b2)および溶剤(d2)の他に、種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更なる添加成分(e2)を含有していてもよい。このような添加成分(e2)としては、架橋剤、ポリマー成分、酸化防止剤、重合禁止剤、界面活性剤等が挙げられる。層形成組成物は、基材上に配置した後、加熱により溶剤(d2)を揮発させつつ硬化されることで、基材上に形成される密着層の膜厚を薄くすることができる。そのため、本実施形態に係る層形成組成物は、光照射によって層形成組成物を硬化させる目的などで添加される光重合開始剤を含まないことが好ましい。層形成組成物が光重合開始剤を含むと、密着層の形成の過程で光重合が生じ、溶剤(d2)が完全に揮発する前に層形成組成物が硬化してしまい、密着層101の膜厚を薄くすることが困難になる可能性があるからである。
【0172】
<密着層形成組成物の粘度>
本実施形態に係る層形成組成物の23℃における粘度は、好ましくは0.5mPa・s以上20mPa・s以下であり、より好ましくは1mPa・s以上10mPa・s以下であり、さらに好ましくは1mPa・s以上5mPa・s以下である。但し、層形成組成物の23℃における粘度は、化合物(a2)、架橋剤(b2)、溶剤(d2)および必要に応じて添加するその他の成分(e2)などの各成分の種類や配合割合によって異なりうる。
【0173】
層形成組成物の23℃における粘度を20mPa・s以下とすることにより、層形成組成物の基材102に対する塗布性を向上させ、基材上における層形成組成物の膜厚の調整などを容易に行うことができる。
【0174】
<密着層形成組成物に混入している不純物>
本実施形態に係る層形成組成物は、できる限り不純物を含まないことが好ましい。ここで記載する不純物とは、前述した化合物(a2)、架橋剤(b2)、溶剤(d2)、および必要に応じて添加するその他の成分(e2)以外のものを意味する。層形成組成物をインプリント処理に用いる場合には、特に、パーティクルおよび固形成分を含まないことが好ましい。ここで、パーティクルとは、典型的には数nm~数μmの粒径(直径)を有するゲル状ないし固形状の粒状物質を指す。したがって、層形成組成物の全体を100質量%としたとき、粒径が0.2μmより大きい粒子の含有量は、0質量%以上3質量%未満であることが好ましい。あるいは、層形成組成物の全体を100質量%としたとき、粒径が0.2μmより大きい粒子の含有量が1個/mL未満であることが好ましい
【0175】
したがって、本実施形態に係る層形成組成物は、精製工程を経て得られたものであることが好ましい。このような精製工程としては、フィルタを用いた濾過等が好ましい。具体的には、前述した化合物(a2)、架橋剤(b2)、溶剤(d2)、および必要に応じて添加するその他の成分(e2)を混合した後、例えば、孔径0.001μm以上5.0μm以下のフィルタで濾過することが好ましい。また、孔径0.001μm以上0.2μm以下のフィルタで濾過することがより好ましい。フィルタを用いた濾過は、多段階で行ったり、多数回繰り返したりすることがさらに好ましい。また、濾過した液を再度濾過してもよい。孔径の異なるフィルタを複数用いて濾過してもよい。濾過に使用するフィルタとしては、ポリエチレン樹脂製、ポリプロピレン樹脂製、フッ素樹脂製、ナイロン樹脂製等のフィルタを使用することができるが、特に限定されるものではない。
【0176】
このような精製工程を経ることで、層形成組成物に混入したパーティクル等の不純物を取り除くことができる。これにより、パーティクル等の不純物によって、層形成組成物を塗布した後に得られる密着層に不用意に欠陥が発生することを防止することができる。
【0177】
なお、層形成組成物を、半導体集積回路など、半導体素子で利用される回路基板を製造するために使用する場合、層形成組成物中に、金属原子を含有する不純物(金属不純物)が混入することを極力避けることが好ましい。これは、金属などの不純物によって回路基板の動作を阻害しないようにするためである。このような場合、層形成組成物に含まれる金属不純物の濃度としては、10ppm以下にすることが好ましく、100ppb以下にすることがさらに好ましい。
【0178】
したがって、層形成組成物は、その製造工程において、金属に接触させずに調製されることが好ましい。すなわち、化合物(a2)、架橋剤(b2)、溶剤(d2)、および必要に応じて添加するその他の成分(e2)の各原料を秤量する際や、配合して撹拌する際には、金属製の秤量器具、容器などを使用しないことが好ましい。また、前述した精製工程において、さらに金属不純物除去フィルタを用いて濾過することが好ましい。金属不純物除去フィルタとしては、セルロース及び珪藻土製、イオン交換樹脂製等のフィルタを使用することができるが、特に限定されるものではない。これらの金属不純物除去フィルタは、洗浄してから用いることが好ましい。洗浄方法としては、超純水による洗浄、アルコールによる洗浄、層形成組成物による共洗いの順で実施することが好ましい。
【0179】
[密着層形成工程]
密着層形成工程では、図1(a)に示すように、前述した層形成組成物を用いて、高分子化合物(重合体)を主成分とする密着層を基材上に形成する。
【0180】
硬化性組成物を配置する対象である基材は、基板または支持体であり、種々の目的によって任意の基材を選択することができる。例えば、シリコンウエハ、アルミニウム、チタン-タングステン合金、アルミニウム-ケイ素合金、アルミニウム-銅-ケイ素合金、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の半導体デバイス用基板や、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基材、紙、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基材、TFTアレイ基材、PDPの電極板、プラスチック基材、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材等を用いることができる。基材としては、上述の基板上にスピン・オン・グラス、有機物、金属、酸化物、窒化物など、1種類あるいは複数種類の膜を成膜したものを用いてもよい。
【0181】
本実施形態では、特に、基材として、表面にシラノール基(SiOH基)などの水酸基(OH基)を有する基材を用いることが好ましい。これらの基材としては、例えばシリコンウエハや石英、ガラスなどが挙げられる。表面に水酸基を有する基材を用いることで、加熱処理により、基材が表面に有する水酸基と層形成組成物の化合物(a2)の官能基とが化学結合を形成すると考えられる。また、架橋剤(b2)がアルコキシアルキル基を有する場合も、水酸基と化学結合を形成すると考えられる。
【0182】
層形成組成物を基材上に塗布する方法としては、例えば、インクジェット法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法等を用いることができる。これらの方法の中でも、塗布性、特に膜厚均一性の観点から、スピンコート法が特に好ましい。
【0183】
層形成組成物を基材に塗布(配置)した後、層形成組成物に含まれる溶剤(d2)を乾燥によって揮発させ、基材上に密着層を形成する。このとき、溶剤(d2)を揮発させると同時に、基材と化合物(a2)または架橋剤(b2)とを反応させるとともに、化合物(a2)と架橋剤(b2)とを反応させるとよい。これにより、基材と密着層との間に結合を形成させ、密着層の中における化合物(a2)と架橋剤(b2)との間に結合を形成させる。なお、化合物(a2)と架橋剤(b2)との間の結合によって架橋構造が形成されると推測される。
【0184】
このような揮発および反応を効果的に行うは、層形成組成物が塗布された基材に対して加熱処理(ベーク処理)が行われることが好ましい。加熱処理の温度は、化合物(a2)または架橋剤(b2)と基材との反応性、化合物(a2)と架橋剤(b2)との反応性、化合物(a2)や架橋剤(b2)、溶剤(d2)およびその他の成分(e2)の沸点等により適宜選択することができる。加熱処理の温度は、好ましくは70℃以上250℃以下であり、より好ましくは100℃以上220℃以下であり、さらに好ましくは140℃以上220℃以下である。また、溶剤(d2)の乾燥、基材102と化合物(a2)または架橋剤(b2)との反応、化合物(a2)と架橋剤(b2)との架橋反応は、同一の温度で行ってもよいし、別々の温度で行ってもよい。すなわち、これらの反応は同時に行ってもよいし、逐次的に行ってもよい。
【0185】
密着層形成工程により基材上に形成される密着層の膜厚は、使用する用途によっても異なるが、例えば、0.1nm以上100nm以下であり、より好ましくは0.5nm以上60nm以下であり、さらに好ましくは1nm以上10nm以下である。
【0186】
層形成組成物を基材上に適用して密着層を形成する際には、1層目の密着層の上に更に層形成組成物を用いて2層目の密着層が形成されてもよい。このような方法は、多重塗布と呼ばれうる。また、基材上に形成される密着層の表面は、できる限り平坦であることが好ましい。表面の粗さが1nm以下であることが好ましい。
【0187】
このような密着層形成工程により、基材と、基材上に積層された重合体層(密着層)とを有する積層体を形成することができる。上述のとおり、重合体層は、架橋剤(b2)が有するアルコキシアルキル基またはアルキロール基と、化合物(a2)が有する水酸基、カルボキシル基との間の反応によって架橋構造をとる。
【0188】
[パターン形成方法]
図1(a)乃至図1(g)を参照して、本開示におけるパターン形成方法について説明する。本開示によって形成される硬化膜は、1nm以上10mm以下のサイズのパターンを有する膜であることが好ましく、10nm以上100μm以下のサイズのパターンを有する膜であることがより好ましい。一般的に、光を利用してナノサイズ(1nm以上100nm以下)のパターン(凹凸構造)を有する膜を形成する膜形成方法は、光インプリント法と呼ばれている。本開示における膜形成方法は、光インプリント法を利用して、型と基板との間の空間に硬化性組成物の膜を形成する。但し、硬化性組成物は、その他のエネルギー(例えば、熱、電磁波)によって硬化されてもよい。また、本開示における膜形成方法は、パターンを有する膜を形成する方法、即ち、パターン形成方法として実施されてもよいし、パターンを有しない膜(例えば、平坦化膜)を形成する方法、即ち、平坦化膜形成方法として実施されてもよい。
【0189】
以下、本開示における膜形成方法がパターン形成方法に適用された例について説明する。パターン形成方法は、例えば、形成工程と、配置工程と、待機工程と、接触工程と、硬化工程と、離型工程(分離工程)と、を含む。形成工程は、下地層を形成する工程である。配置工程は、下地層の上に硬化性組成物(A)の液滴を離散的に配置する工程である。待機工程は、硬化性組成物(A)の液滴同士が結合し、且つ、溶剤(d1)が揮発するまで待機する工程である。接触工程は、硬化性組成物(A)と型とを接触させる工程である。硬化工程は、硬化性組成物(A)を硬化させる工程である。離型工程は、硬化性組成物(A)の硬化膜から型を引き離す工程である。配置工程は、形成工程の後に実施され、待機工程は、配置工程の後に実施され、接触工程は、待機工程の後に実施され、硬化工程は、接触工程の後に実施され、離型工程は、硬化工程の後に実施される。
【0190】
<配置工程>
配置工程では、図1(a)に模式的に示されるように、基板101の上に硬化性組成物(A)の液滴102が離散的に配置される。配置工程では、1.0pL以上の体積を有する硬化性組成物(A)の液滴102が80個/mm以上の密度で配置される。基板101としては、下地層が積層されている基板を用いてもよい。また、基板101の表面は、前述の層形成組成物が形成されていることが好ましく、シランカップリング剤処理、シラザン処理、有機薄膜の成膜などの表面処理によって、硬化性組成物(A)との密着性が向上されていてもよい。
【0191】
前記シランカップリング剤としては、アクリル基を有する公知のシランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤を塗布する方法としては、例えば、インクジェット法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法、気相蒸着法等を用いることができる。これらの方法の中でも、塗布性、特に膜厚均一性の観点から、気相蒸着法が特に好ましい。
【0192】
また、基板101としては、表面処理されていないシリコン基板を用いることもできる。
【0193】
基板上に硬化性組成物(A)の液滴102を配置する配置方法としては、インクジェット法が特に好ましい。硬化性組成物(A)の液滴102は、型106のパターンを構成する凹部が密に存在する領域に対向する基板101の領域の上には密に、型106のパターンを構成する凹部が疎に存在する領域に対向する基板101の領域の上には疎に配置されることが好ましい。これにより、基板101の上に形成される後述する硬化性組成物(A)の膜(残膜)109は、型106のパターンの疎密にかかわらず、均一な厚さに制御される。
【0194】
配置すべき硬化性組成物(A)の体積を規定するために、平均残存液膜厚という指標を定義する。平均残存液膜厚は、配置工程において配置される硬化性組成物(A’)(溶剤(d1)を除く)の体積を型の膜形成領域の面積で除した値である。硬化性組成物(A’)(溶剤(d1)を除く)の体積は、硬化性組成物(A)の個々の液滴の、溶剤(d1)が揮発した後の体積の総和である。この定義によれば、基板表面に凹凸がある場合にも、凹凸状態によらずに平均残存液膜厚を規定することができる。ここで、平均残存液膜厚は、後述する待機工程の後に残存する硬化性組成物(A)の体積を型の膜形成領域の面積で除した値として理解されてもよく、20nm以下であるとよい。
【0195】
<待機工程>
本開示においては、配置工程の後、接触工程の前の間に、待機工程を設けている。ここで、1回のパターン形成で滴下される硬化性組成物(A)の液滴の総体積を、1回のパターン形成でパターンが形成される領域(パターン形成領域)の全面積で除した値を平均初期液膜厚と定義する。待機工程において、硬化性組成物(A)の液滴102は、図1(b)に模式的に示されるように、基板101の上で広がる。これにより、基板101のパターン形成領域は、全域にわたって、硬化性組成物(A)に被覆される。
【0196】
後述する実施例によれば、例えば、溶剤(d1)が高揮発溶剤で不揮発成分の体積比率が20%であり、且つ、液滴ピッチが88μm、即ち、平均初期液膜厚が13nm以上である場合が選択される。この場合、図1(c)に模式的に示されるように、基板上で硬化性組成物(A)の液滴同士が結合し、実質的に連続的な液膜103になることが数値計算で示された。また、これは、1.0pL以上の体積の硬化性組成物(A)の液滴を、130個/mm以上の密度で配置することを意味している。
【0197】
図3(a)乃至図3(d)を参照して、基板上に配置された硬化性組成物(A)の液滴の待機工程中の流動挙動について説明する。硬化性組成物(A)の液滴102は、図3(a)に示されるように、基板101に離散的に配置され、図3(b)に示すように、各液滴102が基板上で徐々に広がる。そして、図3(c)に示されるように、基板上の硬化性組成物(A)の液滴同士が結合し始めて液膜となり、図3(d)に示されるように、連続的な液膜となる(基板101の表面が硬化性組成物(A)で被覆され、露出面がない状態となる)。図3(d)に示すような硬化性組成物(A)の状態を、「実質的に連続的な液膜」と称する。
【0198】
更に、待機工程においては、図1(d)に模式的に示されるように、液膜104に含まれている溶剤105(溶剤(d1))を揮発させる。待機工程の後(例えば、接触工程の開始時)の液膜103における溶剤(d1)の残存量は、溶剤(d1)以外の成分の合計重量を100体積%とすると、10体積%以下とすることが好ましい。溶剤(d1)の残存量が10体積%よりも多い場合、硬化膜の機械物性が低くなる可能性がある。
【0199】
待機工程においては、溶剤(d1)の揮発を加速させることを目的として、基板101及び硬化性組成物(A)を加熱するベーク工程を実施したり、基板101の周囲の雰囲気気体を換気したりしてもよい。加熱は、例えば、30℃以上200℃以下、好ましくは、80℃以上150℃以下、特に好ましくは、90℃以上110℃で行われる。加熱時間は、10秒以上600秒以下とすることができる。ベーク工程は、ホットプレート、オーブンなどの既知の加熱器を用いて実施することができる。
【0200】
待機工程は、例えば、0.1秒から600秒とし、好ましくは、10秒から300秒とする。待機工程が0.1秒よりも短いと、硬化性組成物(A)の液滴同士の結合が不十分となり、実質的に連続的な液膜が形成されない。待機工程が600秒を超えると、生産性が低下してしまう。そこで、生産性の低下を抑制するために、配置工程が完了した基板を、順次、待機工程に移行させ、複数の基板に対して並列に待機工程を実施し、待機工程が完了した基板を、順次、接触工程に移行させるようにしてもよい。なお、従来技術では、実質的に連続的な液膜が形成されるまで、理論上では、数千秒~数万秒を要するが、実際には、揮発の影響で硬化性組成物の液滴の広がりが停滞するため、連続的な液膜を形成することができない。
【0201】
待機工程において、溶剤(d1)が揮発すると、成分(a1)、成分(b1)及び成分(c1)からなる実質的に連続的な液膜104が残存する。溶剤(d1)が揮発した(除去された)実質的に連続的な液膜104の平均残存液膜厚は、溶剤(d1)が揮発した分だけ、液膜103よりも薄くなる。基板101のパターン形成領域は、全域にわたって、溶剤(d1)が除去された硬化性組成物(A’)の実質的に連続的な液膜104に被覆された状態が維持される。
【0202】
<接触工程>
接触工程では、図1(e)に模式的に示されるように、溶剤(d1)が除去された硬化性組成物(A)の実質的に連続的な液膜104と型106とを接触させる。接触工程は、硬化性組成物(A)と型106とが接触していない状態から両者が接触した状態に変更する工程と、両者が接触した状態を維持する工程と、を含む。これにより、型106が表面に有する微細なパターンの凹部に硬化性組成物(A)の液体が充填(フィル)され、かかる液体は、型106の微細なパターンに充填(フィル)された液膜となる。
【0203】
接触工程において型106と基板101との間に巻き込まれる気体に関して、従来技術(例えば特許第6584578号公報)と本実施形態との比較を、図4に示す。本実施形態によれば、待機工程において、硬化性組成物(A)は、溶剤(d1)が除去された実質的に連続的な液膜104となるため、従来技術に比べて型106と基板101との間に巻き込まれる気体の体積が小さくなる。従って、接触工程における硬化性組成物(A)のスプレッドは、速やかに完了する。
【0204】
接触工程において硬化性組成物(A)のスプレッド及びフィルが速やかに完了すると、型106を硬化性組成物(A)に接触させた状態を維持する時間(接触工程に要する時間)を短くすることができる。そして、接触工程に要する時間を短くすることは、パターンの形成(膜の形成)に要する時間を短縮することにつながるため、生産性の向上をもたらす。接触工程は、0.1秒以上3秒以下であることが好ましく、0.1秒以上1秒以下であることが特に好ましい。接触工程が0.1秒よりも短いと、スプレッド及びフィルが不十分となり、未充填欠陥と呼ばれる欠陥が多発する傾向がある。
【0205】
型106としては、硬化工程が光照射工程を含む場合、これを考慮して光透過性の材料で構成された型が用いられる。型106を構成する材料の材質としては、具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜などが好ましい。但し、型106を構成する材料として光透明性樹脂が用いられる場合は、硬化性組成物に含まれる成分に溶解しない樹脂が選択される。石英は、熱膨張係数が小さく、パターン歪みが小さいことから、型106を構成する材料として好適である。
【0206】
型106の表面に形成されるパターンは、例えば、4nm以上200nm以下の高さを有する。型106のパターンの高さが低いほど、離型工程において、型106を硬化性組成物の硬化膜から引き離す力、即ち、離型力を小さくすることができ、硬化性組成物のパターンが引きちぎられて型106に残存する離型欠陥の数を少なくすることができる。また、型を引き離す際の衝撃によって硬化性組成物のパターンが弾性変形し、隣接するパターン要素同士が接触し、癒着、或いは、破損が発生する場合がある。但し、パターン要素の幅に対してパターン要素の高さが2倍程度以下(アスペクト比2以下)であることが、それらの不具合を回避するために有利である。一方、パターン要素の高さが低過ぎると、基板101の加工精度が低くなる。
【0207】
型106には、硬化性組成物(A)に対する型106の剥離性を向上させるために、接触工程を実施する前に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、型106の表面に離型剤を塗布して離型剤層を形成することが挙げられる。型106の表面に塗布する離型剤としては、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤、炭化水素系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、パラフィン系離型剤、モンタン系離型剤、カルナバ系離型剤などが挙げられる。例えば、ダイキン工業(株)製のオプツール(登録商標)DSXなどの市販の塗布型離型剤も好適に用いることができる。なお、離型剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。上述した離型剤のうち、フッ素系及び炭化水素系の離型剤が特に好ましい。
【0208】
接触工程において、型106を硬化性組成物(A)に接触させる際に、硬化性組成物(A)に加える圧力は、特に限定されるものではなく、例えば、0MPa以上100MPa以下とする。なお、型106を硬化性組成物(A)に接触させる際に、硬化性組成物(A)に加える圧力は、0MPa以上50MPa以下であることが好ましく、0MPa以上30MPa以下であることがより好ましく、0MPa以上20MPa以下であることが更に好ましい。
【0209】
接触工程は、大気雰囲気下、減圧雰囲気下、不活性ガス雰囲気下のいずれの条件下でも行うことができるが、酸素や水分による硬化反応への影響を防ぐことができるため、減圧雰囲気や不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。不活性ガス雰囲気下で接触工程を行う場合に用いられる不活性ガスの具体例としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、各種フロンガスなど、或いは、これらの混合ガスが挙げられる。二酸化炭素又はヘリウムをモル比率で10%以上含むガスが好ましく、二酸化炭素をモル比率で10%以上含むガスが特に好ましい。ヘリウムガスは、型、基板、硬化性組成物などに拡散しやすいため、型のパターンなどに閉じ込められた雰囲気気体が速やかに消失する。二酸化炭素は、硬化性組成物や基板上の下地層に溶解しやすいため、型のパターンなどに閉じ込められた雰囲気気体が速やかに消失する。また、硬化性組成物に対する二酸化炭素の溶解度係数は、0.5kg/m・atm以上10kg/m・atm以下であることが好ましい。これらの詳細については、特開2022-99271号公報に開示されている。大気雰囲気下を含めて特定のガスの雰囲気下で接触工程を行う場合、好ましい圧力は、0.0001気圧以上10気圧以下である。
【0210】
<硬化工程>
硬化工程では、図1(f)に模式的に示されるように、硬化用エネルギーとしての照射光107を硬化性組成物(A)に照射することによって、硬化性組成物(A)を硬化させて硬化膜を形成する。硬化工程では、例えば、硬化性組成物(A)に対して、型106を介して照射光107が照射される。より詳細には、型106の微細なパターンに充填された硬化性組成物(A)に対して、型106を介して照射光107が照射される。これにより、型106の微細なパターンに充填された硬化性組成物(A)が硬化して、パターンを有する硬化膜108となる。
【0211】
照射光107は、硬化性組成物(A)の感度波長に応じて選択される。具体的には、照射光107は、150nm以上400nm以下の波長の紫外光、X線、又は、電子線などから適宜選択される。なお、照射光107は、紫外光であることが特に好ましい。これは、硬化助剤(光重合開始剤)として市販されているものは、紫外光に感度を有する化合物が多いからである。紫外光を発する光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep-UVランプ、炭素アーク灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、Fレーザなどが挙げられる。但し、紫外光を発する光源としては、超高圧水銀灯が特に好ましい。光源の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。また、型の微細なパターンに充填された硬化性組成物(A)の全域に対して光を照射してもよいし、一部の領域のみに対して(領域を限定して)光を照射してもよい。また、光の照射は、基板の全領域に対して断続的に複数回にわたって行ってもよいし、基板の全領域に対して連続的に行ってもよい。更に、第1照射過程で基板の第1領域に対して光を照射し、第2照射過程で基板の第1領域とは異なる第2領域に対して光を照射してもよい。
【0212】
<離型工程>
離型工程では、図1(g)に模式的に示されるように、硬化膜108から型106が引き離される。パターンを有する硬化膜108と型106とを引き離すことで、型106の微細なパターンを反転させたパターンを有する硬化膜108が自立した状態で得られる。ここで、パターンを有する硬化膜108の凹部にも硬化膜が残存する。かかる膜は、残膜と呼ばれる。
【0213】
パターンを有する硬化膜108から型106を引き離す手法としては、引き離す際にパターンを有する硬化膜108の一部が物理的に破損しなければよく、各種条件なども特に限定されない。例えば、基板101を固定して、型106を基板101から遠ざけるように移動させてもよい。また、型106を固定して、基板101を型106から遠ざけるように移動させてもよい。型106及び基板101の両方を正反対の方向に移動させることで、パターンを有する硬化膜108から型106を引き離してもよい。
【0214】
<繰り返し>
上述した配置工程から離型工程を、この順で有する一連の工程(製造プロセス)によって、所望の凹凸パターン形状(型106の凹凸形状に倣ったパターン形状)を、所望の位置に有する硬化膜を得ることができる。
【0215】
本開示におけるパターン形成方法では、配置工程から離型工程までの繰り返し単位(ショット)を、同一基板上で繰り返して複数回行うことができ、基板の所望の位置に複数の所望のパターンを有する硬化膜108を得ることができる。
【0216】
[逆インプリントパターン形成方法]
図2(a)乃至図2(g)を参照して、別の例によるパターン形成方法について説明する。本開示によって形成される硬化膜は、1nm以上10mm以下のサイズのパターンを有する膜であることが好ましく、10nm以上100μm以下のサイズのパターンを有する膜であることがより好ましい。一般的に、光を利用してナノサイズ(1nm以上100nm以下)のパターン(凹凸構造)を有する膜を形成する膜形成方法は、光インプリント法と呼ばれている。本開示における膜形成方法は、光インプリント法を利用して、型と基板との間の空間に硬化性組成物の膜を形成する。但し、硬化性組成物は、その他のエネルギー(例えば、熱、電磁波)によって硬化されてもよい。また、本開示における膜形成方法は、パターンを有する膜を形成する方法、即ち、パターン形成方法として実施されてもよいし、パターンを有しない膜(例えば、平坦化膜)を形成する方法、即ち、平坦化膜形成方法として実施されてもよい。
【0217】
以下、本開示における膜形成方法がパターン形成方法に適用された例について説明する。パターン形成方法は、例えば、形成工程と、配置工程と、待機工程と、接触工程と、硬化工程と、離型工程と、を含む。形成工程は、下地層を形成する工程である。配置工程は、下地層の上に硬化性組成物(A)の液滴を離散的に配置する工程である。待機工程は、硬化性組成物(A)の液滴同士が結合し、且つ、溶剤(d1)が揮発するまで待機する工程である。接触工程は、硬化性組成物(A)と型とを接触させる工程である。硬化工程は、硬化性組成物(A)を硬化させる工程である。離型工程は、硬化性組成物(A)の硬化膜から型を引き離す工程である。配置工程は、形成工程の後に実施され、待機工程は、配置工程の後に実施され、接触工程は、待機工程の後に実施され、硬化工程は、接触工程の後に実施され、離型工程は、硬化工程の後に実施される。
【0218】
<配置工程>
図2(a)乃至図2(g)の図1(a)乃至図1(g)との違いは、型と基板との位置関係が逆になっていることである。したがって図2(a)乃至図2(g)に示される方式は「逆インプリント」とよばれうる。一例において、型はレプリカモールドの元となるブランクテンプレートでありうる。配置工程では、図2(a)に模式的に示されるように、型201の上に硬化性組成物(A)の液滴102が離散的に配置される。配置工程では、1.0pL以上の体積を有する硬化性組成物(A)の液滴102が80個/mm以上の密度で配置される。
【0219】
型201としては、硬化工程が光照射工程を含む場合、これを考慮して光透過性の材料で構成された型が用いられる。型201を構成する材料の材質としては、具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜などが好ましい。但し、型106を構成する材料として光透明性樹脂が用いられる場合は、硬化性組成物に含まれる成分に溶解しない樹脂が選択される。石英は、熱膨張係数が小さく、パターン歪みが小さいことから、型201を構成する材料として好適である。
【0220】
型上に硬化性組成物(A)の液滴102を配置する配置方法としては、インクジェット法が特に好ましい。硬化性組成物(A)の液滴102は、型201のパターンを構成する凹部が密に存在する領域に対向する基板206の領域の上には密に、基板206のパターンを構成する凹部が疎に存在する領域に対向する型201の領域の上には疎に配置されることが好ましい。これにより、基板101の上に形成される後述する硬化性組成物(A)の膜(残膜)109は、基板206のパターンの疎密にかかわらず、均一な厚さに制御される。
【0221】
配置すべき硬化性組成物(A)の体積を規定するために、平均残存液膜厚という指標を定義する。平均残存液膜厚は、配置工程において配置される硬化性組成物(A’)(溶剤(d1)を除く)の体積を型の膜形成領域の面積で除した値である。硬化性組成物(A’)(溶剤(d1)を除く)の体積は、硬化性組成物(A)の個々の液滴の、溶剤(d1)が揮発した後の体積の総和である。この定義によれば、基板表面に凹凸がある場合にも、凹凸状態によらずに平均残存液膜厚を規定することができる。ここで、平均残存液膜厚は、後述する待機工程の後に残存する硬化性組成物(A)の体積を型の膜形成領域の面積で除した値として理解されてもよく、20nm以下であるとよい。
【0222】
<待機工程>
本開示においては、配置工程の後、接触工程の前の間に、待機工程を設けている。ここで、1回のパターン形成で滴下される硬化性組成物(A)の液滴の総体積を、1回のパターン形成でパターンが形成される領域(パターン形成領域)の全面積で除した値を平均初期液膜厚と定義する。待機工程において、硬化性組成物(A)の液滴102は、図2(b)に模式的に示されるように、型201の上で広がる。これにより、型201のパターン形成領域は、全域にわたって、硬化性組成物(A)に被覆される。
【0223】
後述する実施例によれば、例えば、溶剤(d1)が高揮発溶剤で不揮発成分の体積比率が20%であり、且つ、液滴ピッチが88μm、即ち、平均初期液膜厚が13nm以上である場合が選択される。この場合、図2(c)に模式的に示されるように、基板上で硬化性組成物(A)の液滴同士が結合し、実質的に連続的な液膜103になることが数値計算で示された。また、これは、1.0pL以上の体積の硬化性組成物(A)の液滴を、130個/mm以上の密度で配置することを意味している。
【0224】
図3(a)乃至図3(d)を参照して、基板上に配置された硬化性組成物(A)の液滴の待機工程中の流動挙動については、図3(a)乃至図3(d)を参照して説明したとおりである。
【0225】
更に、待機工程においては、図2(d)に模式的に示されるように、液膜104に含まれている溶剤105(溶剤(d1))を揮発させる。待機工程の後(例えば、接触工程の開始時)の液膜103における溶剤(d1)の残存量は、溶剤(d1)以外の成分の合計重量を100体積%とすると、10体積%以下とすることが好ましい。溶剤(d1)の残存量が10体積%よりも多い場合、硬化膜の機械物性が低くなる可能性がある。
【0226】
待機工程においては、溶剤(d1)の揮発を加速させることを目的として、型201及び硬化性組成物(A)を加熱するベーク工程を実施したり、型201の周囲の雰囲気気体を換気したりしてもよい。加熱は、例えば、30℃以上200℃以下、好ましくは、80℃以上150℃以下、特に好ましくは、90℃以上110℃で行われる。加熱時間は、10秒以上600秒以下とすることができる。ベーク工程は、ホットプレート、オーブンなどの既知の加熱器を用いて実施することができる。
【0227】
待機工程は、例えば、0.1秒から600秒とし、好ましくは、10秒から300秒とする。待機工程が0.1秒よりも短いと、硬化性組成物(A)の液滴同士の結合が不十分となり、実質的に連続的な液膜が形成されない。待機工程が600秒を超えると、生産性が低下してしまう。そこで、生産性の低下を抑制するために、配置工程が完了した基板を、順次、待機工程に移行させ、複数の基板に対して並列に待機工程を実施し、待機工程が完了した基板を、順次、接触工程に移行させるようにしてもよい。なお、従来技術では、実質的に連続的な液膜が形成されるまで、理論上では、数千秒~数万秒を要するが、実際には、揮発の影響で硬化性組成物の液滴の広がりが停滞するため、連続的な液膜を形成することができない。
【0228】
待機工程において、溶剤(d1)が揮発すると、成分(a1)、成分(b1)及び成分(c1)からなる実質的に連続的な液膜104が残存する。溶剤(d1)が揮発した(除去された)実質的に連続的な液膜104の平均残存液膜厚は、溶剤(d1)が揮発した分だけ、液膜103よりも薄くなる。基板101のパターン形成領域は、全域にわたって、溶剤(d1)が除去された硬化性組成物(A’)の実質的に連続的な液膜104に被覆された状態が維持される。
【0229】
<接触工程>
接触工程では、図2(e)に模式的に示されるように、溶剤(d1)が除去された硬化性組成物(A)の実質的に連続的な液膜104と基板206とを接触させる。接触工程は、硬化性組成物(A)と基板206とが接触していない状態から両者が接触した状態に変更する工程と、両者が接触した状態を維持する工程と、を含む。これにより、基板206が表面に有する微細なパターンの凹部に硬化性組成物(A)の液体が充填(フィル)され、かかる液体は、型106の微細なパターンに充填(フィル)された液膜となる。
【0230】
接触工程において型106と基板101との間に巻き込まれる気体に関して、従来技術(例えば特許第6584578号公報)と本実施形態との比較を、図4に示す。本実施形態によれば、待機工程において、硬化性組成物(A)は、溶剤(d1)が除去された実質的に連続的な液膜104となるため、従来技術に比べて型106と基板101との間に巻き込まれる気体の体積が小さくなる。従って、接触工程における硬化性組成物(A)のスプレッドは、速やかに完了する。
【0231】
接触工程において硬化性組成物(A)のスプレッド及びフィルが速やかに完了すると、基板206を硬化性組成物(A)に接触させた状態を維持する時間(接触工程に要する時間)を短くすることができる。そして、接触工程に要する時間を短くすることは、パターンの形成(膜の形成)に要する時間を短縮することにつながるため、生産性の向上をもたらす。接触工程は、0.1秒以上3秒以下であることが好ましく、0.1秒以上1秒以下であることが特に好ましい。接触工程が0.1秒よりも短いと、スプレッド及びフィルが不十分となり、未充填欠陥と呼ばれる欠陥が多発する傾向がある。
【0232】
基板206としては、下地層が積層されている基板を用いてもよい。また、基板261の表面は、前述の層形成組成物が形成されていることが好ましく、シランカップリング剤処理、シラザン処理、有機薄膜の成膜などの表面処理によって、硬化性組成物(A)との密着性が向上されていてもよい。
前記シランカップリング剤としては、アクリル基を有する公知のシランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤を塗布する方法としては、例えば、インクジェット法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法、気相蒸着法等を用いることができる。これらの方法の中でも、塗布性、特に膜厚均一性の観点から、気相蒸着法が特に好ましい。
【0233】
また、基板206としては、表面処理されていないシリコン基板を用いることもできる。
【0234】
基板206の表面に形成されるパターンは、例えば、4nm以上200nm以下の高さを有する。基板206のパターンの高さが低いほど、離型工程において、基板206を硬化性組成物の硬化膜から引き離す力、即ち、離型力を小さくすることができ、硬化性組成物のパターンが引きちぎられて基板206に残存する離型欠陥の数を少なくすることができる。また、型を引き離す際の衝撃によって硬化性組成物のパターンが弾性変形し、隣接するパターン要素同士が接触し、癒着、或いは、破損が発生する場合がある。但し、パターン要素の幅に対してパターン要素の高さが2倍程度以下(アスペクト比2以下)であることが、それらの不具合を回避するために有利である。一方、パターン要素の高さが低過ぎると、型201の加工精度が低くなる。
【0235】
基板206には、硬化性組成物(A)に対する基板206の剥離性を向上させるために、接触工程を実施する前に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、基板206の表面に離型剤を塗布して離型剤層を形成することが挙げられる。基板206の表面に塗布する離型剤としては、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤、炭化水素系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、パラフィン系離型剤、モンタン系離型剤、カルナバ系離型剤などが挙げられる。例えば、ダイキン工業(株)製のオプツール(登録商標)DSXなどの市販の塗布型離型剤も好適に用いることができる。なお、離型剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。上述した離型剤のうち、フッ素系及び炭化水素系の離型剤が特に好ましい。
【0236】
接触工程において、基板206を硬化性組成物(A)に接触させる際に、硬化性組成物(A)に加える圧力は、特に限定されるものではなく、例えば、0MPa以上100MPa以下とする。なお、基板206を硬化性組成物(A)に接触させる際に硬化性組成物(A)に加える圧力は、0MPa以上50MPa以下であることが好ましく、0MPa以上30MPa以下であることがより好ましく、0MPa以上20MPa以下であることが更に好ましい。
【0237】
接触工程は、大気雰囲気下、減圧雰囲気下、不活性ガス雰囲気下のいずれの条件下でも行うことができるが、酸素や水分による硬化反応への影響を防ぐことができるため、減圧雰囲気や不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。不活性ガス雰囲気下で接触工程を行う場合に用いられる不活性ガスの具体例としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、各種フロンガスなど、或いは、これらの混合ガスが挙げられる。二酸化炭素又はヘリウムをモル比率で10%以上含むガスが好ましく、二酸化炭素をモル比率で10%以上含むガスが特に好ましい。ヘリウムガスは、型、基板、硬化性組成物などに拡散しやすいため、型のパターンなどに閉じ込められた雰囲気気体が速やかに消失する。二酸化炭素は、硬化性組成物や基板上の下地層に溶解しやすいため、型のパターンなどに閉じ込められた雰囲気気体が速やかに消失する。また、硬化性組成物に対する二酸化炭素の溶解度係数は、0.5kg/m・atm以上10kg/m・atm以下であることが好ましい。これらの詳細については、特開2022-99271号公報に開示されている。大気雰囲気下を含めて特定のガスの雰囲気下で接触工程を行う場合、好ましい圧力は、0.0001気圧以上10気圧以下である。
【0238】
<硬化工程>
硬化工程では、図2(f)に模式的に示されるように、硬化用エネルギーとしての照射光107を硬化性組成物(A)に照射することによって、硬化性組成物(A)を硬化させて硬化膜を形成する。硬化工程では、例えば、硬化性組成物(A)に対して、基板206を介して照射光107が照射される。より詳細には、基板206の微細なパターンに充填された硬化性組成物(A)に対して、基板206を介して照射光107が照射される。これにより、基板206の微細なパターンに充填された硬化性組成物(A)が硬化して、パターンを有する硬化膜108となる。
【0239】
照射光107は、硬化性組成物(A)の感度波長に応じて選択される。具体的には、照射光107は、150nm以上400nm以下の波長の紫外光、X線、又は、電子線などから適宜選択される。なお、照射光107は、紫外光であることが特に好ましい。これは、硬化助剤(光重合開始剤)として市販されているものは、紫外光に感度を有する化合物が多いからである。紫外光を発する光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep-UVランプ、炭素アーク灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、Fレーザなどが挙げられる。但し、紫外光を発する光源としては、超高圧水銀灯が特に好ましい。光源の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。また、型の微細なパターンに充填された硬化性組成物(A)の全域に対して光を照射してもよいし、一部の領域のみに対して(領域を限定して)光を照射してもよい。また、光の照射は、基板の全領域に対して断続的に複数回にわたって行ってもよいし、基板の全領域に対して連続的に行ってもよい。更に、第1照射過程で基板の第1領域に対して光を照射し、第2照射過程で基板の第1領域とは異なる第2領域に対して光を照射してもよい。
【0240】
<離型工程>
離型工程では、図2(g)に模式的に示されるように、硬化膜108から基板206が引き離される。パターンを有する硬化膜108と基板206とを引き離すことで、基板206の微細なパターンを反転させたパターンを有する硬化膜108が自立した状態で得られる。ここで、パターンを有する硬化膜108の凹部にも硬化膜が残存する。かかる膜は、残膜と呼ばれる。
【0241】
パターンを有する硬化膜108から基板206を引き離す手法としては、引き離す際にパターンを有する硬化膜108の一部が物理的に破損しなければよく、各種条件なども特に限定されない。例えば、型201を固定して、基板206を型201から遠ざけるように移動させてもよい。また、基板206を固定して、型201を基板206から遠ざけるように移動させてもよい。基板206及び型201の両方を正反対の方向に移動させることで、パターンを有する硬化膜108から基板206を引き離してもよい。
【0242】
<繰り返し>
上述した配置工程から離型工程を、この順で有する一連の工程(製造プロセス)によって、所望の凹凸パターン形状(基板206の凹凸形状に倣ったパターン形状)を、所望の位置に有する硬化膜を得ることができる。
【0243】
本開示におけるパターン形成方法では、配置工程から離型工程までの繰り返し単位(ショット)を、同一型上で繰り返して複数回行うことができ、型の所望の位置に複数の所望のパターンを有する硬化膜108を得ることができる。
【0244】
[平坦化膜形成方法]
以下、本開示における膜形成方法が平坦化膜形成方法に適用された例について説明する。平坦化膜形成方法は、例えば、配置工程と、待機工程と、接触工程と、硬化工程と、離型工程とを含む。配置工程は、基板上に硬化性組成物(A)の液滴を配置する工程である。待機工程は、硬化性組成物(A)の液滴同士が結合し、且つ、溶剤(d1)が揮発するまで待機する工程である。接触工程は、硬化性組成物(A)と型とを接触させる工程である。硬化工程は、硬化性組成物(A)を硬化させる工程である。離型工程は、硬化性組成物(A)の硬化膜から型を引き離す工程である。平坦化膜形成方法では、基板としては、高低差が10~1,000nm程度の凹凸を有する基板が用いられ、型としては、平坦面を有する型が用いられ、接触工程、硬化工程及び離型工程を経て、型の平坦面に倣った面を有する硬化膜が形成される。配置工程においては、基板の凹部には、硬化性組成物(A)の液滴が密に配置され、基板の凸部には、硬化性組成物(A)が疎に配置される。待機工程は、配置工程の後に実施され、接触工程は、待機工程の後に実施され、硬化工程は、接触工程の後に実施され、離型工程は、硬化工程の後に実施される。
【0245】
平坦化膜形成方法において、上記のとおり平坦面を含む型が使用される。そのような型はスーパーストレート(superstrate)ともよばれうる。そのような型は、硬化性組成物との接触領域の全面がパターンのない平坦面でありうる。ただし、硬化性組成物との接触領域の一部に、位置合わせ用のマークあるいはパターンが形成される場合もある。したがって、硬化性組成物との接触領域の、例えば9割以上は平坦面でありうる。
【0246】
[物品製造方法]
物品製造方法は、上述した膜形成方法を用いて基板上に硬化性組成物の膜を形成する形成工程と、形成工程で硬化性組成物の膜が形成された基板を加工する加工工程と、加工工程で加工された基板から物品を製造する製造工程と、を含む。膜形成方法は、上述したように、パターン形成方法、或いは、平坦化膜形成方法である。
【0247】
また、本開示におけるパターン形成方法によって形成されたパターンを有する硬化膜108は、各種物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられる。本開示におけるパターン形成方法によって形成されたパターンを有する硬化膜108は、基板101(基板101が被加工層を有する場合は被加工層)に対するエッチングやイオン注入などのマスクとして一時的に用いられる。基板101の加工工程において、エッチングやイオン注入などが行われた後、マスクは除去される。これにより、各種物品を製造することができる。
【0248】
硬化物のパターンの凹部にある硬化物をエッチングによって除去する場合、その具体的な方法としては、特に限定されるものではなく、既知の方法、例えば、ドライエッチングを用いることができる。ドライエッチングには、既知のドライエッチング装置を用いることができる。ドライエッチングのソースガスは、エッチングに供される硬化物の元素組成に応じて適宜選択される。具体的には、ソースガスとして、CF、C、C、CCl、CCl、CBrF、BCl、PCl、SF、Clなどのハロゲン系ガスを用いることができる。また、ソースガスとして、O、CO、COなどの酸素原子を含むガス、He、N、Arなどの不活性ガス、H、NHのガスなども用いることができる。なお、これらのガスを混合し、ソースガスとして用いることもできる。この場合、下地基板を歩留まりよく加工するために、光硬化膜には、高いドライエッチング体制が求められる。
【0249】
物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型などである。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性又は不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子などが挙げられる。光学素子としては、マイクロレンズ、導光体、導波路、反射防止膜、回折格子、偏光素子、カラーフィルタ、発光素子、ディスプレイ、太陽電池などが挙げられる。MEMSとしては、DMD、マイクロ流路、電気機械変換素子などが挙げられる。記録素子としては、CD、DVDのような光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、磁気ヘッドなどが挙げられる。センサとしては、磁気センサ、光センサ、ジャイロセンサなどが挙げられる。型としては、インプリント用の型などが挙げられる。
【0250】
また、本開示における平坦化膜形成方法によって形成された平坦化膜の上でインプリントリソグラフィ技術や極端紫外線露光技術(EUV)などの既知のフォトリソグラフィ工程を行うことができる。また、スピン・オン・グラス(SOG)膜及び/又は酸化シリコン層を積層し、その上に硬化性組成物を塗布してフォトリソグラフィ工程を行うことができる。これにより、半導体デバイスなどのデバイスを製造することができる。また、そのようなデバイスを含む装置、例えば、ディスプレイ、カメラ、医療装置などの電子機器を形成することもできる。デバイスの例としては、例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D-RDRAM、NANDフラッシュなどが挙げられる。
【0251】
[実施例]
以下、実施例について詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下に使用される「部」および「%」は、特に示さない限りすべて重量基準である。
【0252】
[硬化性組成物の調整]
以下に示す重合性化合物(a1)、光重合開始剤(b1)、溶剤(d1)および界面活性剤(c1)を、表1に示す重量(%)となるように混合し、フィルタの孔径が0.005μmのポリエチレン製フィルタにて濾過した。これにより、硬化性組成物1~6を調製した。
【表1】
【0253】
表1において示す略称は、以下の通りである。
DCPDA:ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学製)
Omnirad 819:フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM Resin製)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学製)
FS2000M1:フッ素系界面活性剤(CHANGZHOU FOREIGN社製)
【0254】
[層形成組成物1の調整]
化合物(a2-1)、および架橋剤(b2-1)を、下記に示す重量(%)となるように、揮発性溶剤(d2-1)に溶解した。
・化合物(a2-1) 0.2775
・架橋剤(b2-1) 0.0692
・揮発性溶剤(d2-1) 99.6533
【0255】
次に、得られた混合溶液を、フィルタの孔径が0.005μmのポリエチレン製フィルタにて濾過した。これにより、層形成組成物1を調製した。
略称は、以下の通りである。
(化合物(a2-1))
カルボン酸無水物変性クレゾールノボラック型エポキシアクリレート(新中村化学工業製、商品名:EA-7140)(式(1))
【化61】
(架橋剤(b2-1))
2,4,6-トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン(東京化成工業製)(式(2))
【化62】
(揮発性溶剤(d2-1))
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(東京化成工業製)
【0256】
[層形成組成物2]
層形成組成物2には、富士フイルム製層形成組成物FULS-013Dを使用した。
【0257】
[密着層1~2の形成]
上記層形成組成物1~2をそれぞれ、2インチのシリコンウエハ上にスピンコートで塗布した。その後220℃90秒という条件でベークを行い、密着層1~2をそれぞれ形成した。
【0258】
[硬化性組成物の密着層に対する接触角]
硬化性組成物の密着層に対する接触角の測定には、産業用マテリアルプリンターDMP-2850(富士フィルム製)を用いる。液滴体積を1~2μLとし、液滴が密着層に着滴した直後の液滴を装置の上面カメラで撮像する。そして、画像解析により測定した液滴直径から、(式4)および(式5)を用いて接触角を算出した。
【0259】
液滴の形状が球の形状を維持しつつ、広がると仮定したとき、液滴半径rと高さhとの関係は、以下のように表すことができる。下記式において示す略称は、以下の通りである。
r:液滴半径
V:液滴体積
h:液滴高さ
:初期形状が半球としたときの半径
(式4)
【数2】
(式5)
【数3】
【0260】
[硬化性組成物から溶剤を除いた組成物の密着層に対する接触角]
接触角の測定には、液適の量を1μLとし、自動静的接触角測定装置Dropmaster300(協和界面化学製)を用いた。溶剤が完全に揮発した後の平衡接触角(例えば着滴15秒後の接触角)を測定した。
【0261】
<実施例1>
実施例1では、上記で測定した液滴直径、硬化性組成物1の密着層1に対する接触角、及び、硬化性組成物から溶剤を除いた組成物の密着層1に対する接触角の測定結果を示す。
【0262】
<実施例2~24>
実施例1で用いた硬化性組成物および密着層を、表2の通りに変更し、実施例2~24を実施した。
【表2】
【0263】
<インクジェットの吐出の評価>
インクジェットの吐出の評価は、市販の産業用マテリアルプリンターDMP-2850(富士フィルム製)を用いた。表2に示す実施例1~24、及び、比較例1~3の硬化性組成物をカートリッジに充填した。そして、液滴を吐出している様子を内蔵の吐出観察カメラで観察し、以下の評価基準でインクジェットの吐出を評価した。
【0264】
(評価基準)
AAA:5m/sec以上の吐出速度(飛翔速度)で、着弾位置のずれ(ヨレ)が全く認められなかった。
AA :5m/sec以上の吐出速度で、実用上影響がないレベルの極わずかな着弾位置のずれが認められた。
A :3m/sec以上の吐出速度で、実用上影響がないレベルの極わずかな着弾位置のずれが認められた。
B :吐出されなかった。
【0265】
<液膜形成の評価>
液膜形成の評価は、市販の産業用マテリアルプリンターDMP-2850(富士フィルム製)を用いた。表2に示す実施例1~24および比較例1~3の硬化性組成物をそれぞれカートリッジに充填した。溶剤(d1)が揮発した後の膜厚が160nm以下となる条件で、2pl程度の液滴を、密着層またはシリコン基板上に、4種のピッチ(35、50、70、122μm)間隔で6行のアレイ状に滴下(配置)した。そして、以下の評価基準で液膜形成を評価した。
【0266】
(評価基準)
AAA:いずれのピッチ間隔においても、実質的に連続的な液膜が形成された。
AA :35、50、70μmのピッチ間隔において、実質的に連続的な液膜が形成された。
A :35、50μmのピッチ間隔において、実質的に連続的な液膜が形成された。
B :35μmのピッチ間隔において、実質的に連続的な液膜が形成された。
C :いずれのピッチ間隔においても、実質的に連続的な液膜が形成されなかった。
【0267】
<液膜安定性の評価>
液膜安定性の評価は、市販の産業用マテリアルプリンターDMP-2850(富士フィルム製)を用いた。上記の液膜形成の評価にて、液膜が形成された後、液膜が収縮せずに、維持できている時間を計測し、以下の評価基準で液膜安定性を評価した。なお、「収縮」とは、液膜の長さが、設計液膜領域未満になることと定義する。
【0268】
(評価基準)
AAA:600秒以上収縮しなかった。
AA :300秒以上600秒未満収縮しなかった。
A :180秒以上300秒未満収縮しなかった。
B :180秒以内に収縮した。
【0269】
<はみ出し量の評価>
はみ出し量の評価は、市販の産業用マテリアルプリンターDMP-2850(富士フィルム製)を用いた。上記の液膜形成の評価にて、液膜が形成された後、180sec経過後の液膜が実質的に連続的な液膜を形成しているのを確認し、はみ出し量を測定した。なお、液膜のはみ出し量は、液膜の長さから70×6μm(設計液膜領域)を差し引いた量として定義し、以下の評価基準ではみ出し量を評価した。
(評価基準)
AAA:はみ出し量が50μm以下であった。
AA :はみ出し量が70μm以下であった。
A :はみ出し量が100μm以下であった。
B :はみ出し量が100μmよりも大きかった。
【0270】
これまでの評価結果を表3に示す。
【表3】
【0271】
硬化性組成物の23℃における粘度が、1.9mPa・s以上60mPa・s以下であれば、インクジェット(IJ)吐出が良好であり、3mPa・s以上60mPa・s以下が好ましく、8mPa・s以上60mPa・s以下が更に好ましいことがわかる。
【0272】
液膜形成は、硬化性組成物の前記密着層またはシリコン基板に対する接触角が1.8[°]以下であれば良好であり、1.1[°]以下が好ましく、0.6[°]以下が更に好ましいことがわかる。
【0273】
液膜安定性は、硬化性組成物から溶剤を除いた組成物の密着層またはシリコン基板に対する接触角が19[°]以下であれば良好であり、15[°]以下が好ましく、11[°]以下が更に好ましいことがわかる。
【0274】
はみだし量は、硬化性組成物から溶剤を除いた組成物の密着層またはシリコン基板に対する接触角が11[°]以上であれば良好であり、13[°]以上が好ましく、17[°]以上が更に好ましいことがわかる。
【0275】
本明細書の開示は、以下の技術を含む。
(項目1)
硬化性組成物と、基板と前記硬化性組成物とを密着させる密着層を形成するための層形成組成物とを含む材料キットであって、
前記硬化性組成物は、重合性化合物(a1)と、光重合開始剤(b1)と、溶剤(d1)と、を含み、
23℃、1気圧における前記硬化性組成物の粘度が1.3mPa・s以上60mPa・s以下であり、
前記重合性化合物(a1)と、前記光重合開始剤(b1)と、前記溶剤(d1)との合計体積に対する前記溶剤(d1)の含有量が、5体積%以上95体積%以下であり、
前記溶剤(d1)の沸点が、1気圧において、250℃未満であり、
前記硬化性組成物の前記密着層に対する接触角が1.8[°]以下であり、
前記硬化性組成物から前記溶剤(d1)が除かれた状態の組成物の前記密着層に対する接触角が11[°]以上19[°]以下である、
ことを特徴とする材料キット。
(項目2)
前記硬化性組成物の前記密着層に対する接触角が1.0[°]以下である、ことを特徴とする項目1に記載の材料キット。
(項目3)
前記硬化性組成物から前記溶剤(d1)が除かれた状態の前記組成物は、23℃、1気圧において、30mPa・s以上10,000mPa・s以下の粘度を有する、ことを特徴とする項目1または2に記載の材料キット。
(項目4)
前記硬化性組成物は、インクジェット用の硬化性組成物である、ことを特徴とする項目1から3のいずれか1項に記載の材料キット。
(項目5)
前記硬化性組成物に対する二酸化炭素の溶解度係数は、0.5kg/m3・atm以上10kg/m3・atm以下である、ことを特徴とする項目1から4のいずれか1項に記載の材料キット。
(項目6)
前記層形成組成物は溶剤(d2)を含み、
前記層形成組成物の全体を100質量%としたとき、前記溶剤(d2)の含有量が70質量%以上かつ99.5質量%以下である、ことを特徴とする項目1から5のいずれか1項に記載の材料キット。
(項目7)
前記層形成組成物は光重合開始剤を含有しない、ことを特徴とする項目1から6のいずれか1項に記載の材料キット。
(項目8)
前記層形成組成物の全体を100質量%としたとき、粒径が0.2μmより大きい粒子の含有量が1個/mL未満である、ことを特徴とする項目1から7のいずれか1項に記載の材料キット。
(項目9)
前記層形成組成物は、前記基板と結合する少なくとも1つの官能基および少なくとも1つの重合性官能基を有する化合物(a2)、架橋剤(b2)、溶剤(d2)を有する、ことを特徴とする項目1から8のいずれか1項に記載の材料キット。
(項目10)
1~R6を、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、またはアルキロール基のいずれかを表すとき、
前記架橋剤(b2)は、次式
【化63】
で表される化合物であり、
1~R6のうちの少なくとも5つはアルコキシアルキル基またはアルキロール基である、
ことを特徴とする項目9に記載の材料キット。
(項目11)
前記架橋剤(b2)は、ペンタメトキシメチルメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、(ヒドロキシメチル)ペンタキス(メトキシメチル)メラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンの中から選択される少なくとも一種を含む、ことを特徴とする項目9または10に記載の材料キット。
(項目12)
前記架橋剤(b2)は、1分子中に、アルコキシアルキル基またはアルキロール基のいずれか一方または両方を合計で少なくとも5つ有する化合物である、ことを特徴とする項目9から11のいずれか1項に記載の材料キット。
(項目13)
前記化合物(a2)は、前記基板と結合する官能基として、1分子中に水酸基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基を少なくとも1つ有する、ことを特徴とする項目9から12のいずれか1項に記載の材料キット。
(項目14)
前記層形成組成物の全重量に対する前記化合物(a2)および前記架橋剤(b2)の重量分率をそれぞれα、βとすると、α/βが、0.11以上9以下である、ことを特徴とする項目9から13のいずれか1項に記載の材料キット。
(項目15)
前記層形成組成物の全重量に対する前記化合物(a2)および前記架橋剤(b2)の重量分率をそれぞれα、βとすると、αとβとの和が、0.01以上10以下である、ことを特徴とする項目9から14のいずれか1項に記載の材料キット。
(項目16)
前記層形成組成物は、インプリント用の硬化性組成物である、ことを特徴とする項目9から15のいずれか1項に記載の材料キット。
(項目17)
重合性化合物(a1)と、光重合開始剤(b1)と、溶剤(d1)と、を含む硬化性組成物であって、
23℃、1気圧における前記硬化性組成物の粘度が1.3mPa・s以上60mPa・s以下であり、
前記重合性化合物(a1)と、前記光重合開始剤(b1)と、前記溶剤(d1)の合計体積に対する前記溶剤(d1)の含有量が、5体積%以上95体積%以下であり、
前記溶剤(d1)の沸点が、1気圧において、250℃未満であり、
前記硬化性組成物のシリコン基板に対する接触角が1.8[°]以下であり、
前記硬化性組成物から前記溶剤(d1)が除かれた状態の組成物の前記シリコン基板に対する接触角が11[°]以上19[°]以下である、
ことを特徴とする硬化性組成物。
(項目18)
前記硬化性組成物の前記シリコン基板に対する接触角が1.0[°]以下であることを特徴とする項目17に記載の硬化性組成物。
(項目19)
前記硬化性組成物から前記溶剤(d1)が除かれた状態の前記組成物は、23℃、1気圧において、30mPa・s以上10,000mPa・s以下の粘度を有する、ことを特徴とする項目17または18に記載の硬化性組成物。
(項目20)
型と基板との間の空間に硬化性組成物の膜を形成する膜形成方法であって、
前記基板上に、項目17から19のいずれか1項に記載の硬化性組成物の複数の液滴を離散的に配置する配置工程と、
前記基板上に離散的に配置された前記複数の液滴のそれぞれが、隣接する液滴と結合して、前記基板上で連続的な液膜を形成するまで待機する待機工程と、
前記待機工程の後、前記型と前記液膜とを接触させる接触工程と、
を有することを特徴とする膜形成方法。
(項目21)
前記待機工程では、前記液膜に含まれる溶剤が揮発して、前記溶剤の含有量が前記液膜の全体に対して10体積%以下になるまで待機する、ことを特徴とする項目20に記載の膜形成方法。
(項目22)
前記待機工程では、30℃以上200℃以下、且つ、10秒以上600秒以下の条件で前記基板を加熱する、ことを特徴とする項目20または21に記載の膜形成方法。
(項目23)
前記配置工程では、前記基板上に、1.0pL以上の体積を有する前記硬化性組成物の液滴を、80個/mm以上の密度で配置する、ことを特徴とする項目20から22のいずれか1項に記載の膜形成方法。
(項目24)
前記待機工程の後に残存する前記硬化性組成物の体積を膜形成領域の面積で除した値である平均残存液膜厚は、20nm以下である、ことを特徴とする項目20から23のいずれか1項に記載の膜形成方法。
(項目25)
前記型は、パターンを含み、
前記接触工程では、前記型の前記パターンと前記液膜とを接触させ、
前記膜形成方法は、前記接触工程の後、前記液膜を硬化させ、前記型の前記パターンに対応するパターンを有する硬化膜を形成する硬化工程を更に有する、
ことを特徴とする項目20から24のいずれか1項に記載の膜形成方法。
(項目26)
前記型は、平坦面を含み、
前記接触工程では、前記型の前記平坦面と前記液膜とを接触させ、
前記膜形成方法は、前記接触工程の後、前記液膜を硬化させ、前記型の前記平坦面に倣った面を有する硬化膜を形成する硬化工程を更に有する、
ことを特徴とする項目20から25のいずれか1項に記載の膜形成方法。
(項目27)
前記配置工程では、インクジェット法を用いて、前記基板の上に前記複数の液滴を離散的に配置する、ことを特徴とする項目20から26のいずれか1項に記載の膜形成方法。
(項目28)
前記接触工程において、前記型と前記基板との間の空間を満たす気体は、モル比率で10%以上の二酸化炭素を含む、ことを特徴とする項目20から27のいずれか1項に記載の膜形成方法。
(項目29)
項目20から28のいずれか1項に記載の膜形成方法を用いて、基板の上に硬化性組成物の膜を形成する形成工程と、
前記形成工程で前記膜が形成された前記基板を加工する加工工程と、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造する製造工程と、
を有する、ことを特徴とする物品製造方法。
【0276】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0277】
101:基板、102:液滴、103:液膜、105:溶剤、106:型、107:照射光、108:硬化膜
図1
図2
図3
図4