(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140692
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20250919BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 129
B41J2/01 401
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040236
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】米谷 和朗
(72)【発明者】
【氏名】池田 佑策
(72)【発明者】
【氏名】坂井 智幸
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA08
2C056EB03
2C056EB08
2C056EB40
2C056EB58
2C056EC03
2C056EC08
2C056EC42
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA13
2C056HA44
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】幅の狭い線状パターンを含む画像を印刷する場合であってもドット抜けによる画像欠陥を抑制しつつ良好な印刷画像を形成できるインクジェット印刷装置を提供する。
【解決手段】基材上に形成すべき印刷画像においてドット抜けによる画像欠陥の抑制のために補正すべき各補正個別領域につき、補正補助インク(ホワイトインクまたは透明インク)を用いて補正すべきか否かを判定する。補正補助インクを用いて補正すべきと判定された補正個別領域において基材の搬送方向の両端部を所定の間引き数の画素分(例えば1画素分)だけ除去することにより補正実行領域を決定し、当該補正実行領域では補正補助インクが吐出された後に印刷画像形成のための有色インクが吐出されるように印刷データを補正する。この補正後の印刷データに基づき基材上に印刷画像が形成される。
【選択図】
図25
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データに基づき印刷媒体にインクを吐出することにより前記印刷媒体上に印刷画像を形成する印刷装置であって、
第1のインクおよび補正補助インクを含む複数種類のインクを前記印刷媒体に吐出する記録部と、
前記印刷媒体を前記記録部に対し相対移動させる搬送部と、
前記記録部による前記複数種類のインクの吐出を制御する吐出制御部と、
前記印刷媒体に形成される前記印刷画像において前記補正補助インクを用いて補正すべき1つの以上の連続領域からなる補正領域を決定する補正領域決定部と
を備え、
前記搬送部は、前記印刷媒体の幅方向に直交し前記印刷媒体に平行な所定の搬送方向に前記印刷媒体を前記記録部に対し相対移動させる機構を含み、
前記記録部は、
前記第1インクを吐出する複数のインク吐出口を含む第1のインク吐出ヘッドと、
前記搬送方向に関して前記第1のインク吐出ヘッドよりも上流側に配置され、前記補正補助インクを吐出する複数のインク吐出口を含む補正補助インク吐出ヘッドとを含み、
前記印刷媒体上での前記第1のインクの濡れ広がり範囲は、前記印刷媒体上に直接に前記第1のインクが吐出されたときよりも、前記印刷媒体上に吐出された前記補正補助インク上に前記第1のインクが吐出されたときの方が大きく、
前記補正領域決定部は、前記補正領域に含まれる各連続領域につき、当該各連続領域における前記搬送方向の画素数が所定の間引き数の2倍よりも大きい場合に、当該各連続領域において前記搬送方向の両端部を前記搬送方向に前記間引き数の画素分だけ除去することにより得られる領域を補正実行領域として決定し、
前記吐出制御部は、前記印刷画像の形成のために前記補正実行領域に前記第1のインクが吐出される前に前記補正実行領域に前記補正補助インクが吐出されるように、前記第1のインク吐出ヘッドおよび前記補正補助インク吐出ヘッドを制御する、印刷装置。
【請求項2】
前記吐出制御部は、前記補正領域に含まれる各連続領域のうち前記搬送方向の画素数が前記間引き数の2倍以下である連続領域には前記補正補助インクが吐出されないように、前記補正補助インク吐出ヘッドを制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記間引き数は1または2である、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記補正領域決定部は、前記第1のインク吐出ヘッドに含まれる複数のインク吐出口のうちの吐出欠陥を有するインク吐出口である欠陥吐出口の位置に基づいて前記補正領域を決定する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記補正領域決定部は、前記欠陥吐出口から吐出されるべきインクにより前記印刷媒体に形成されるべき画素である欠け画素が前記搬送方向に連続する範囲を前記搬送方向の範囲とし前記欠け画素を中心として前記幅方向に所定数の画素が隣接する範囲を前記幅方向の範囲とする矩形の連続領域が前記補正領域に含まれるように、前記印刷データに基づき前記補正領域を決定する、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記補正領域決定部は、前記欠け画素を中心として前記幅方向に3画素または5画素が隣接する前記幅方向の範囲を前記矩形の連続領域の前記幅方向の範囲とするように、前記補正領域を決定する、請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記補正領域決定部は、前記搬送方向に関して前記補正補助インクが吐出される1個の画素と前記補正補助インクが吐出されない1個の画素とが交互に並ぶように、前記補正実行領域を決定する、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記補正領域決定部は、前記搬送方向に関して前記補正補助インクが吐出される2個の画素と前記補正補助インクが吐出されない2個の画素とが交互に並ぶように、前記補正実行領域を決定する、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記記録部は、前記搬送方向に関して前記補正補助インク吐出ヘッドよりも下流側に配置され、第2インクを吐出する複数のインク吐出口を含む第2のインク吐出ヘッドを更に含み、
前記印刷媒体上での前記第2のインクの濡れ広がり範囲は、前記印刷媒体上に直接に前記第2のインクが吐出されたときよりも、前記印刷媒体上に吐出された前記補正補助インク上に前記第2のインクが吐出されたときの方が大きく、
前記第1のインクと前記第2のインクが混じるように吐出された場合における前記印刷媒体上での前記第1のインクおよび前記第2のインクの濡れ広がり範囲は、前記印刷媒体上に直接に前記第1のインクおよび前記第2のインクが吐出されたときよりも、前記印刷媒体上に吐出された前記補正補助インク上に前記第1のインクおよび前記第2のインクが吐出されたときの方が大きく、
前記吐出制御部は、前記印刷画像の形成のために前記補正実行領域に前記第2のインクが吐出される前に前記補正実行領域に前記補正補助インクが吐出されるように、前記第2のインク吐出ヘッドおよび前記補正補助インク吐出ヘッドを制御する、請求項1から8のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記補正領域決定部は、
前記補正領域が前記第1のインクまたは前記第2のインクのうちの一方のみが吐出される単色領域である場合には、当該一方のインク量が予め決められた第1判定基準値よりも大きい領域のみが前記補正領域に含まれるように、前記印刷データに基づき前記補正領域を決定し、
前記補正領域が前記第1のインクおよび前記第2のインクの双方が吐出される領域であって前記第1のインクの色と前記第2のインクの色とが混じる混色の領域である場合には、総インク量が予め決められた第2判定基準値よりも大きく、前記第1のインク吐出ヘッドと前記第2のインク吐出ヘッドのうち前記欠陥吐出口を含むインク吐出ヘッドのインクの色のインク量の前記総インク量に対する割合が予め決められた第3判定基準値よりも大きい領域のみが、前記補正領域に含まれるように、前記印刷データに基づき前記補正領域を決定する、請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記補正領域決定部は、前記印刷画像を形成するために前記補正補助インクが吐出される領域は前記補正領域に含まれることがないよう、前記補正領域を決定する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記複数種類のインクは、紫外線硬化型インクである、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記補正補助インク以外の前記複数種類のインクのうち前記記録部から吐出されたインクを紫外線照射により硬化させる第1の紫外線照射部と、
前記記録部から吐出された前記補正補助インクを紫外線照射により硬化させる第2の紫外線照射部と、
前記第2の紫外線照射部による紫外線照射を制御する紫外線照射制御部と
を更に備え、
前記補正実行領域への前記補正補助インクの吐出が行われるときには、前記紫外線照射制御部は、前記第2の紫外線照射部による紫外線照射を停止する、または、前記第2の紫外線照射部による紫外線照射の強度を低下させる、請求項12に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記補正補助インク吐出ヘッドは、複数の液滴サイズで前記補正補助インクを吐出することが可能に構成されており、
前記吐出制御部は、前記補正補助インク以外の前記複数種類のインクのうち前記補正実行領域において前記補正補助インクの上に吐出されるインクに対応するインク吐出ヘッドから前記第1の紫外線照射部までの距離が近いほど前記補正補助インク吐出ヘッドから吐出される前記補正補助インクの液滴サイズが大きくなるよう、前記補正補助インク吐出ヘッドからの前記補正補助インクの吐出を制御する、請求項12に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記補正補助インク吐出ヘッドは、複数の液滴サイズで前記補正補助インクを吐出することが可能に構成されており、
前記吐出制御部は、前記補正実行領域には前記補正補助インク吐出ヘッドによって前記複数の液滴サイズのうち最も小さい液滴サイズで前記補正補助インクが吐出されるように、前記補正補助インク吐出ヘッドからの前記補正補助インクの吐出を制御する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記印刷媒体の色は、白色であり、
前記補正補助インク以外の前記複数種類のインクのうちの有色インクは、互いに異なるプロセスカラーまたは特色のインクであり、
前記補正補助インクは、白色インクである、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記補正補助インク以外の前記複数種類のインクのうちの有色インクは、互いに異なるプロセスカラーまたは特色のインクであり、
前記補正補助インクは、透明インクである、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項18】
前記補正補助インク以外の前記複数種類のインクのうち前記補正実行領域において前記補正補助インクの上に吐出されるインクと前記補正補助インクとは、明度値または色差に基づいて選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項19】
複数種類のインクを印刷媒体に吐出する記録部と、前記印刷媒体を前記記録部に対し相対移動させる搬送部とを備える印刷装置により、印刷データに基づき前記印刷媒体上に印刷画像を形成する印刷方法であって、
前記印刷画像を形成するために前記複数種類のインクのうちの1つのインクを第1のインクとして前記記録部から前記印刷媒体に吐出するステップと、
前記複数種類のインクのうちの他の1つのインクを補正補助インクとして前記記録部から前記印刷媒体に吐出するステップと、
前記印刷媒体に形成される前記印刷画像において前記補正補助インクを用いて補正すべき1つの以上の連続領域からなる補正領域を決定するステップと、
を備え、
前記搬送部は、前記印刷媒体の幅方向に直交し前記印刷媒体に平行な所定の搬送方向に前記印刷媒体を前記記録部に対し相対移動させる機構を含み、
前記印刷媒体上での前記第1のインクの濡れ広がり範囲は、前記印刷媒体上に直接に前記第1のインクが吐出されたときよりも、前記印刷媒体上に吐出された前記補正補助インク上に前記第1のインクが吐出されたときの方が大きく、
前記補正領域を決定するステップは、前記補正領域に含まれる各連続領域につき、当該各連続領域における前記搬送方向の画素数が所定の間引き数の2倍よりも大きい場合に、当該各連続領域において前記搬送方向の両端部を前記搬送方向に前記間引き数の画素分だけ除去することにより得られる領域を補正実行領域として決定し、
前記第1のインクを吐出するステップにおいて前記印刷画像の形成のために前記補正実行領域に前記第1のインクが吐出される前に、前記補正補助インクを吐出するステップにおいて前記補正実行領域に前記補正補助インクが吐出される、印刷方法。
【請求項20】
前記補正領域を決定するステップは、前記第1のインク吐出ヘッドに含まれる複数のインク吐出口のうちの吐出欠陥を有するインク吐出口である欠陥吐出口から吐出されるべきインクにより前記印刷媒体に形成されるべき画素である欠け画素が前記搬送方向に連続する範囲を前記搬送方向の範囲とし前記欠け画素を中心として前記幅方向に所定数の画素が隣接する範囲を前記幅方向の範囲とする矩形の連続領域が前記補正領域に含まれるように、前記印刷データに基づき前記補正領域を決定する、請求項19に記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する多数のノズルが設けられたインク吐出ヘッド(印刷ヘッド)を有する印刷装置およびそれを用いた印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクを印刷用紙等の印刷媒体に吐出することにより印刷を行うインクジェット方式の印刷装置(以下「インクジェット印刷装置」という)が知られている。インクジェット印刷装置では、一般的には、水性インクを用いて印刷が行われている。しかしながら、近年、例えばラベル印刷向けとして、UVインク(紫外線硬化型インク)を用いて印刷を行うインクジェット印刷装置の開発が進展している。UVインクを用いるインクジェット印刷装置では、インク吐出ヘッドから吐出されたUVインクを印刷媒体としての基材に定着させるために、UVインクへのUV光(紫外線)の照射が行われる。
【0003】
ところで、インクジェット印刷装置に関し、インク吐出ヘッドに設けられているノズルには個体差がある。それ故、インク吐出ヘッドに設けられている多数のノズルから同じ駆動信号に基づいてインクが吐出された場合であっても、それら多数のノズルから吐出されるインクの量にはばらつきが生じる。そのような状態で印刷が実行された場合、高品質の印刷物は得られない。そこで、全てのノズルから同じようにインクが吐出されるよう印刷データの濃度を補正する濃度均一化補正が行われている。
【0004】
また、インクジェット印刷装置では、長期間の不使用によるインクの固形化等に起因して、インクの吐出不良が生じることがある。インクの吐出不良が生じると、印刷画像において、吐出不良状態のノズル(以下、「欠陥ノズル」という)に対応するドットの欠落すなわちドット抜けが生じる。そこで、欠陥ノズルから吐出されるべきインクが他のノズル(典型的には、欠陥ノズルに隣接するノズル)から吐出されるよう印刷データの濃度を補正するノズル欠け補正が行われている。なお、特開2014-188785号公報に、ノズル欠け補正の一例が開示されている。
【0005】
図32を参照しつつ、濃度均一化補正およびノズル欠け補正について更に説明する。ここでは、5個のノズルに対応する5個の画素部9(1)~9(5)に着目する。5個の画素部9(1)~9(5)では上記5個のノズルから吐出される同じ色のインクによる単色の印刷が行われるものと仮定する。また、RIP処理によって生成された印刷データでは符号91を付した部分に示すように5個の画素部9(1)~9(5)の濃度(網%)はいずれも50であると仮定する。濃度均一化補正により、5個の画素部9(1)~9(5)の濃度が例えば符号92を付した部分に示すように補正される。この例では、同じ駆動信号に基づいて画素部9(1)に対応するノズルからは画素部9(2)に対応するノズルに比べて(5/4)倍のインクが吐出されるので、画素部9(1)の濃度は50の(4/5)倍である40に補正されている。また、同じ駆動信号に基づいて画素部9(4)に対応するノズルからは画素部9(2)に対応するノズルに比べて(5/6)倍のインクが吐出されるので、画素部9(4)の濃度は50の(6/5)倍である60に補正されている。この例では、5個のノズルのうち画素部9(3)に対応するノズルが欠陥ノズルである。そこで、符号92を付した部分に示すデータに対して、ノズル欠け補正が施される。これにより、5個の画素部9(1)~9(5)の濃度は符号93を付した部分に示すように補正される。これに関し、ノズル欠け補正前の画素部9(3)の濃度が40であるので、画素部9(2)の濃度に20が加算され、かつ、画素部9(4)の濃度に20が加算されている。すなわち、画素部9(2)の濃度は70に補正され、画素部9(4)の濃度は80に補正されている。
【0006】
以上のような濃度均一化補正およびノズル欠け補正によって、ノズル間の個体差や欠陥ノズルに起因する画像欠陥(ドット抜けによるスジ状の濃度低下等)の発生が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-188785号公報
【特許文献2】特開2019-155593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、欠陥ノズルが生じた場合に、当該欠陥ノズルから吐出されるべき量のインクがノズル欠け補正が行われることによって他のノズルから吐出されても欠陥が好適に解消された印刷物が得られないことがある。特に、単色高濃度の印刷が行われる領域に対応するノズルに欠陥が生じた場合に、他のノズルから吐出されるインクのドットサイズの大きさがドット抜けによる画像欠陥を解消するのには不十分となりやすい。このように、印刷対象の画像によっては従来のノズル欠け補正では十分な品質の印刷物が得られない。
【0009】
また、特開2019-155593号公報には、不良ノズル(欠陥ノズル)により生じるドット抜けの位置に白色インクやクリアインク(透明インク)を誘導インクとして吐出することでドット抜けを補完する印刷方法が記載されている。この公報には、不良ノズルから吐出されるべきインクがドット抜けの位置の近傍画素に吐出されるインク量が多いほど、ドット抜けの位置に吐出する誘導インクの吐出量を多くする、という実施形態も記載されている。この実施形態によれば、高濃度の印刷が行われる領域においてもドット抜けをより十分に補完することができる。
【0010】
しかし、このような白色インクや透明インクを誘導インクとして使用してドット抜けを補完する印刷方法では、数画素程度の幅の狭い線状パターンを含む画像、例えば文字やバーコードを含む画像を印刷する場合に、ドット抜けによる画像欠陥の発生が抑制されても良好な印刷画像が得られないことがある。
【0011】
そこで、インクジェット印刷装置において、文字やバーコード等のような幅の狭い線状パターン含む画像を印刷する場合であってもドット抜けによる画像欠陥を補正しつつ良好な印刷画像を形成できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の局面は、印刷データに基づき印刷媒体にインクを吐出することにより前記印刷媒体上に印刷画像を形成する印刷装置であって、
第1のインクおよび補正補助インクを含む複数種類のインクを前記印刷媒体に吐出する記録部と、
前記印刷媒体を前記記録部に対し相対移動させる搬送部と、
前記記録部による前記複数種類のインクの吐出を制御する吐出制御部と、
前記印刷媒体に形成される前記印刷画像において前記補正補助インクを用いて補正すべき1つの以上の連続領域からなる補正領域を決定する補正領域決定部と
を備え、
前記搬送部は、前記印刷媒体の幅方向に直交し前記印刷媒体に平行な所定の搬送方向に前記印刷媒体を前記記録部に対し相対移動させる機構を含み、
前記記録部は、
前記第1インクを吐出する複数のインク吐出口を含む第1のインク吐出ヘッドと、
前記搬送方向に関して前記第1のインク吐出ヘッドよりも上流側に配置され、前記補正補助インクを吐出する複数のインク吐出口を含む補正補助インク吐出ヘッドとを含み、
前記印刷媒体上での前記第1のインクの濡れ広がり範囲は、前記印刷媒体上に直接に前記第1のインクが吐出されたときよりも、前記印刷媒体上に吐出された前記補正補助インク上に前記第1のインクが吐出されたときの方が大きく、
前記補正領域決定部は、前記補正領域に含まれる各連続領域につき、当該各連続領域における前記搬送方向の画素数が所定の間引き数の2倍よりも大きい場合に、当該各連続領域において前記搬送方向の両端部を前記搬送方向に前記間引き数の画素分だけ除去することにより得られる領域を補正実行領域として決定し、
前記吐出制御部は、前記印刷画像の形成のために前記補正実行領域に前記第1のインクが吐出される前に前記補正実行領域に前記補正補助インクが吐出されるように、前記第1のインク吐出ヘッドおよび前記補正補助インク吐出ヘッドを制御する。
【0013】
本発明の第2の局面は、本発明の第1の局面において、
前記補正領域決定部は、前記第1のインク吐出ヘッドに含まれる複数のインク吐出口のうちの吐出欠陥を有するインク吐出口である欠陥吐出口の位置に基づいて前記補正領域を決定する。
【0014】
本発明の第3の局面は、本発明の第2の局面において、
前記補正領域決定部は、前記欠陥吐出口から吐出されるべきインクにより前記印刷媒体に形成されるべき画素である欠け画素が前記搬送方向に連続する範囲を前記搬送方向の範囲とし前記欠け画素を中心として前記幅方向に所定数の画素が隣接する範囲を前記幅方向の範囲とする矩形の連続領域が前記補正領域に含まれるように、前記印刷データに基づき前記補正領域を決定する。
【0015】
本発明の第4の局面は、本発明の第1から第3の局面のいずれかにおいて、
前記記録部は、前記搬送方向に関して前記補正補助インク吐出ヘッドよりも下流側に配置され、第2インクを吐出する複数のインク吐出口を含む第2のインク吐出ヘッドを更に含み、
前記印刷媒体上での前記第2のインクの濡れ広がり範囲は、前記印刷媒体上に直接に前記第2のインクが吐出されたときよりも、前記印刷媒体上に吐出された前記補正補助インク上に前記第2のインクが吐出されたときの方が大きく、
前記第1のインクと前記第2のインクが混じるように吐出された場合における前記印刷媒体上での前記第1のインクおよび前記第2のインクの濡れ広がり範囲は、前記印刷媒体上に直接に前記第1のインクおよび前記第2のインクが吐出されたときよりも、前記印刷媒体上に吐出された前記補正補助インク上に前記第1のインクおよび前記第2のインクが吐出されたときの方が大きく、
前記吐出制御部は、前記印刷画像の形成のために前記補正実行領域に前記第2のインクが吐出される前に前記補正実行領域に前記補正補助インクが吐出されるように、前記第2のインク吐出ヘッドおよび前記補正補助インク吐出ヘッドを制御する。
【0016】
本発明の第5の局面は、複数種類のインクを印刷媒体に吐出する記録部と、前記印刷媒体を前記記録部に対し相対移動させる搬送部とを備える印刷装置により、印刷データに基づき前記印刷媒体上に印刷画像を形成する印刷方法であって、
前記印刷画像を形成するために前記複数種類のインクのうちの1つのインクを第1のインクとして前記記録部から前記印刷媒体に吐出するステップと、
前記複数種類のインクのうちの他の1つのインクを補正補助インクとして前記記録部から前記印刷媒体に吐出するステップと、
前記印刷媒体に形成される前記印刷画像において前記補正補助インクを用いて補正すべき1つの以上の連続領域からなる補正領域を決定するステップと、
を備え、
前記搬送部は、前記印刷媒体の幅方向に直交し前記印刷媒体に平行な所定の搬送方向に前記印刷媒体を前記記録部に対し相対移動させる機構を含み、
前記印刷媒体上での前記第1のインクの濡れ広がり範囲は、前記印刷媒体上に直接に前記第1のインクが吐出されたときよりも、前記印刷媒体上に吐出された前記補正補助インク上に前記第1のインクが吐出されたときの方が大きく、
前記補正領域を決定するステップは、前記補正領域に含まれる各連続領域につき、当該各連続領域における前記搬送方向の画素数が所定の間引き数の2倍よりも大きい場合に、当該各連続領域において前記搬送方向の両端部を前記搬送方向に前記間引き数の画素分だけ除去することにより得られる領域を補正実行領域として決定し、
前記第1のインクを吐出するステップにおいて前記印刷画像の形成のために前記補正実行領域に前記第1のインクが吐出される前に、前記補正補助インクを吐出するステップにおいて前記補正実行領域に前記補正補助インクが吐出される。
【0017】
本発明の他の局面は、本発明の上記局面ならびに後述の実施形態およびその変形例に関する説明から明らかであるので、その説明を省略する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の局面によれば、印刷装置には、搬送部による搬送方向に関して、印刷媒体上に印刷画像を形成するための第1のインクを吐出する第1のインク吐出ヘッドよりも上流側に、補正補助インクを吐出する補正補助インク吐出ヘッドが設けられており、補正領域決定部により、印刷媒体に形成される印刷画像において補正補助インクを用いて補正すべき補正領域が決定される。ここで、補正補助インクとしては、通常、印刷媒体が白色の場合にはホワイトインクが用いられ、印刷媒体が白色以外の場合には透明インクが用いられるが、印刷媒体が白色の場合に透明インクを用いてもよい。補正領域決定部により決定された補正領域には1つ以上の連続領域(以下、後述のように「補正個別領域」という)が含まれており、この補正領域に含まれる各補正個別領域につき、当該各補正個別領域における上記搬送方向の画素数が所定の間引き数の2倍よりも大きい場合に、当該各補正個別領域において上記搬送方向の両端部を上記搬送方向に間引き数の画素分(例えば1画素分または2画素分)だけ除去することにより得られる領域が補正実行領域と決定される。印刷画像に基づき印刷媒体上に印刷画像が形成される際には、その印刷画像の形成のために当該補正実行領域に第1のインクが吐出される前に当該補正実行領域に補正補助インクが吐出される。印刷媒体上での第1のインクの濡れ広がり範囲は、印刷媒体上に直接に第1のインクが吐出されたときよりも、印刷媒体上に吐出された補正補助インクの上に第1のインクが吐出されたときの方が大きい。したがって、補正実行領域に吐出された第1のインクにより印刷媒体上に形成されるドットサイズが本来よりも大きくなる。これにより、高濃度の印刷が行われる領域に対応するノズルに欠陥が生じている場合であっても、ドット抜けによる画像欠陥が補正され、欠陥ノズルに起因する印刷画像の品質低下が効果的に抑制される。また、補正領域に含まれる各連続領域(各補正個別領域)において上記搬送方向の両端部を上記搬送方向に間引き数の画素分だけ除去することにより得られる補正実行領域において補正補助インクを用いた補正が行われるので、各補正個別領域に吐出された第1のインクの濡れ広がり範囲の当該各補正個別領域からのはみ出しが抑制される。その結果、文字やバーコード等のような幅の狭い線状パターン含む画像を印刷する場合であっても、補正補助インクの使用に起因する滲みによる印刷品質の低下が抑制される。
【0019】
本発明の他の局面の効果については、本発明の上記局面の効果ならびに下記実施形態およびその変形例の効果についての説明から明らかであるので、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムの全体構成図である。
【
図2】上記実施形態におけるインクジェット印刷装置の一構成例を示す模式図である。
【
図3】上記実施形態における記録部の構成を模式的に示す平面図である。
【
図4】上記実施形態において、1つのインク吐出ヘッドのインク吐出面の一構成例を示す平面図である。
【
図5】上記実施形態において、ヘッドモジュールにおけるノズルの配置について説明するための図である。
【
図6】上記実施形態における印刷制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図7】上記実施形態において、ホワイト補正の概要について説明するための図である。
【
図8】上記実施形態において、単色領域につきホワイト補正が行われる場合のインクの吐出について説明するための図(A)および混色領域につきホワイト補正が行われる場合のインクの吐出について説明するための図(B)である。
【
図9】フィルム基材上での有色インクの濡れ広がりに関する実験の結果の一例を示す図である。
【
図10】上記実施形態において、単色領域において欠陥ノズルによる画像欠陥を解消する場合のホワイト補正の要否についての判定基準値の求め方を説明するための図(A,B)である。
【
図11】上記実施形態において、混色領域において欠陥ノズルによる画像欠陥を解消する場合のホワイト補正の要否についての判定基準値の求め方を説明するための図(A,B,C)である。
【
図12】上記実施形態において、透明補正の概要について説明するための図である。
【
図13】上記実施形態において、単色領域につき透明補正が行われる場合のインクの吐出について説明するための図(A)および混色領域につき透明補正が行われる場合のインクの吐出について説明するための図(B)である。
【
図14】文字の印刷画像において欠陥ノズルに起因するドット抜けによる画像欠陥(白スジ等のスジ状の濃度低下)を説明するための図である。
【
図15】文字の印刷画像において欠陥ノズルに起因するドット抜けによる画像欠陥の発生を抑えるためにホワイト補正を行った場合の問題を説明するための図である。
【
図16】上記実施形態において補正実行領域を決定するための端部間引き処理を説明するための図である。
【
図17】上記実施形態において端部間引き処理を伴うホワイト補正を行いつつ文字を印刷することにより得られる印刷画像の例を示す図である。
【
図18】上記実施形態における濃度補正処理部の詳細な機能構成を示すブロック図である。
【
図19】上記実施形態において、ホワイト補正用のテンプレートの一例を示す図である。
【
図20】上記実施形態において、補正パターンの作成について説明するための図である。
【
図21】上記実施形態において、補正パターンの作成について説明するための図である。
【
図22】上記実施形態において、ホワイト補正用のテンプレートの一例を示す図である。
【
図23】上記実施形態において、ホワイト補正用のテンプレートの一例を示す図である。
【
図24】上記実施形態において、ホワイト補正用のテンプレートの一例を示す図である。
【
図25】上記実施形態における濃度補正の手順について説明するためのフローチャートである。
【
図26】上記実施形態の第1の変形例における濃度補正処理部の詳細な機能構成を示すブロック図である。
【
図27】上記実施形態の第1の変形例における濃度補正の手順について説明するためのフローチャートである。
【
図28】上記実施形態の第2の変形例における濃度補正処理部の詳細な機能構成を示すブロック図である。
【
図29】上記実施形態の第2の変形例における濃度補正の手順について説明するためのフローチャートである。
【
図30】上記実施形態の第3の変形例において、イエロー補正の概要について説明するための図である。
【
図31】上記実施形態の第3の変形例において、イエロー補正が行われた領域でのインクの吐出について説明するための図である。
【
図32】従来例に関し、濃度均一化補正およびノズル欠け補正について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。
【0022】
<1.印刷システムの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システムの全体構成図である。この印刷システムは、インクジェット印刷装置10と印刷データ生成装置30とによって構成されている。インクジェット印刷装置10と印刷データ生成装置30とは通信回線4によって互いに接続されている。印刷データ生成装置30は、PDFファイル等の入稿データに対してRIP処理等を施して印刷データを生成する。印刷データは、複数の色のインクのそれぞれの濃度データからなる。印刷データ生成装置30で生成された印刷データは、通信回線4を介してインクジェット印刷装置10に送信される。インクジェット印刷装置10は、印刷版を用いることなく、印刷データ生成装置30から送信された印刷データに基づいて、フィルムや印刷用紙等の印刷媒体としての基材にインクを吐出することにより印刷を行う。これに関し、本実施形態においては、印刷用のインクにはUVインク(紫外線硬化型インク)が採用される。インクジェット印刷装置10は、印刷機本体100と、印刷機本体100の動作を制御する印刷制御装置200とによって構成されている。
【0023】
<2.インクジェット印刷装置の構成>
図2は、インクジェット印刷装置10の一構成例を示す模式図である。上述したように、このインクジェット印刷装置10は、印刷機本体100と印刷制御装置200とによって構成されている。印刷機本体100は、基材12を供給する基材送出部11と、基材12を印刷機構内部へと搬送するための第1の駆動ローラ13と、印刷機構内部で基材12を搬送するための複数個の支持ローラ14と、基材12へのインクの吐出および基材12に吐出されたインクの硬化を行うことにより基材12に画像を記録する記録部15と、印刷画像(印刷後の基材12)を撮像する撮像部16と、基材12を印刷機構内部から出力するための第2の駆動ローラ17と、印刷後の基材12を巻き取る基材巻取部18とを備えている。後述するように、記録部15には、インクを吐出するインク吐出ヘッドと、インクを硬化させるUV-LED(紫外線を発する発光ダイオード)とが含まれている。印刷制御装置200は、以上のような構成の印刷機本体100の動作を制御する。なお、第1の駆動ローラ13と複数個の支持ローラ14と第2の駆動ローラ17とによって搬送部が実現される。
【0024】
ところで、本実施形態においては、所望の印刷物を得るための印刷を実行する前に、インク吐出ヘッド内のノズルの状態を検査するための検査チャートの印刷が行われる。検査チャートの印刷で得られた印刷画像は撮像部16によって撮像され、それによって得られた撮像データは印刷制御装置200へと送られる。そして、印刷制御装置200において、撮像データに基づき、後述する濃度補正が行われる。
【0025】
図3は、本実施形態における記録部15の構成を模式的に示す平面図である。記録部15には、インクを吐出する複数のインク吐出ヘッド150と、基材12に吐出されたインクを紫外線照射により硬化させるための複数のUV-LED159とが含まれている。より詳しくは、記録部15は、ホワイトインクを吐出するインク吐出ヘッド150(W)と、基材12に吐出されたホワイトインクを紫外線照射により硬化させるためのUV-LED159(b)と、ブルーインクを吐出するインク吐出ヘッド150(B)と、オレンジインクを吐出するインク吐出ヘッド150(O)と、シアンインクを吐出するインク吐出ヘッド150(C)と、マゼンタインクを吐出するインク吐出ヘッド150(M)と、イエローインクを吐出するインク吐出ヘッド150(Y)と、ブラックインクを吐出するインク吐出ヘッド150(K)と、基材12に吐出された有色インク(ブルーインク、オレンジインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、およびブラックインク)を紫外線照射により硬化させるためのUV-LED159(c)と、予備的に設けられたインク吐出ヘッド150(E)と、インク吐出ヘッド150(E)から基材12に吐出されたインクを紫外線照射により硬化させるためのUV-LED159(a)とによって構成されている。本実施形態では、インク吐出ヘッド150(E)は、透明インクを吐出するインク吐出ヘッドとして用いられる。基材12の搬送方向(以下、単に「搬送方向」ともいう)に関してホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)および透明インク用のインク吐出ヘッド150(E)は、有色インク用のインク吐出ヘッド150(B),150(O),150(C),150(M),150(Y),および150(K)よりも上流側に配置されている。
【0026】
本実施形態では、透明インク用のインク吐出ヘッド150(E)とホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)とは、印刷に使用される基材12の種類(白色の基材12か白色基材以外の基材12)に応じて選択的に使用される。すなわち、白色の基材12が印刷に使用される場合には、インク吐出ヘッド150(W)から基材12にホワイトインクを吐出する。この場合には、インク吐出ヘッド150(E)から基材12に透明インクを吐出しない。一方、白色基材以外の基材12が印刷に使用される場合には、インク吐出ヘッド150(E)から基材12に透明インクを吐出する。この場合には、インク吐出ヘッド150(W)から基材12にホワイトインクを吐出しない。
【0027】
印刷媒体としての基材12は、
図3における下方から上方へと搬送される。基材12には、まず、透明インクまたはホワイトインクが吐出される。その後、透明インクに対応するUV-LED159(a)、またはホワイトインクに対応するUV-LED159(b)により、透明インクまたはホワイトインクの硬化が行われる。次に、ブルーインク、オレンジインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、およびブラックインクが順に基材12に吐出され、UV-LED159(c)によりブルーインク、オレンジインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、およびブラックインクの硬化が行われる。但し、後述するホワイト補正が行われることによって基材12へのホワイトインクの吐出が行われた場合には、UV-LED159(b)によるホワイトインクの硬化は行われない。従って、ホワイト補正が行われた場合には、硬化されていない状態のホワイトインクの上に有色インクが吐出される。また、後述する透明補正が行われることによって基材12への透明インクの吐出が行われた場合には、UV-LED159(a)による透明インクの硬化は行われない。従って、透明補正が行われた場合にも、硬化されていない状態の透明インクの上に有色インクが吐出される。
【0028】
本実施形態においては、ホワイトインクおよび透明インク以外のインク(プロセスカラーインクまたは特色インク)を吐出するインクヘッドである、インク吐出ヘッド150(C)、インク吐出ヘッド150(M)、インク吐出ヘッド150(Y)、インク吐出ヘッド150(K)、インク吐出ヘッド150(O)、およびインク吐出ヘッド150(B)のいずれか2つ以上のインク吐出ヘッドによって第1のインク吐出ヘッドおよび第2のインク吐出ヘッドが実現され、インク吐出ヘッド150(W)とインク吐出ヘッド150(E)のいずれかによって第3のインク吐出ヘッドが実現され、UV-LED159(c)によって第1の紫外線照射部が実現され、UV-LED159(b)とUV-LED159(a)のいずれかによって第2の紫外線照射部が実現される。
【0029】
なお、
図3に示した記録部15の構成は一例であって、本発明はこれに限定されない。例えば、ブルーインクを吐出するインク吐出ヘッド150(B)やオレンジインクを吐出するインク吐出ヘッド150(O)が設けられていない構成の記録部15を採用することもできる。
【0030】
図4は、1つのインク吐出ヘッド150のインク吐出面の一構成例を示す平面図である。インク吐出ヘッド150は、長方形の一つのヘッドモジュール151により構成されている。ヘッドモジュール151は、インク吐出口としての多数のノズル152を有している。
図4に示す例ではヘッドモジュール151の形状は一つの長方形であるが、これには限定されず、複数個の平行四辺形のヘッドモジュールや、複数個の台形のヘッドモジュールで構成する等、様々な構成を採ることができる。なお、ノズルがインク吐出口に相当し、上述した欠陥ノズルが欠陥吐出口に相当する。
【0031】
図5は、ヘッドモジュール151におけるノズル152の配置について説明するための図である。典型的には、ヘッドモジュール151には、それぞれが主走査方向(基材12の幅方向)に並べて配置された複数のノズルからなる複数列のノズル群が含まれている。
図5に示す例では、4列のノズル群がヘッドモジュール151に含まれている。
図5において符号41を付した部分には、各ノズル152から吐出されたインクの基材12上における着弾位置を模式的に示している。1列目のノズル群に含まれるノズル152から吐出されるインクの着弾位置と2列目のノズル群に含まれるノズル152から吐出されるインクの着弾位置と3列目のノズル群に含まれるノズル152から吐出されるインクの着弾位置と4列目のノズル群に含まれるノズル152から吐出されるインクの着弾位置とは互いに異なる位置となるように、ヘッドモジュール151内の複数のノズル152は配置されている。例えば、1列目のノズル群に含まれる各ノズル152から吐出されるインクの着弾位置は、3列目のノズル群に含まれるノズル152から吐出されるインクの着弾位置と4列目のノズル群に含まれるノズル152から吐出されるインクの着弾位置との間の位置となっている。
【0032】
図5に示す例では、符号152(p)を付したノズルから吐出されるインクの着弾位置42と符号152(q)を付したノズルから吐出されるインクの着弾位置43とは隣接している。本明細書では、このようにインクの着弾位置が隣接する2つのノズルを「互いに隣接するノズル」として扱う。上記の例では、符号152(p)を付したノズルと符号152(q)を付したノズルとは互いに隣接するノズルとして扱われる。
【0033】
なお、以下においては、任意の色の名称を「Z」とすると、Zインクを吐出するノズル(Zインク用のインク吐出ヘッド150に含まれているノズル)を「Zインク吐出ノズル」ということがある。例えば、シアンインクを吐出するノズル(シアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)に含まれているノズル)を「シアンインク吐出ノズル」ということがある。
【0034】
<3.印刷制御装置のハードウェア構成>
図6は、印刷制御装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6に示すように、印刷制御装置200は、本体210、補助記憶装置221、光ディスクドライブ222、表示部223、キーボード224、およびマウス225等を備えている。本体210は、CPU(プロセッサ)211、メモリ212、第1ディスクインタフェース部213、第2ディスクインタフェース部214、表示制御部215、入力インタフェース部216、および通信インタフェース部217を含んでいる。CPU211、メモリ212、第1ディスクインタフェース部213、第2ディスクインタフェース部214、表示制御部215、入力インタフェース部216、および通信インタフェース部217は、システムバスを介して互いに接続されている。第1ディスクインタフェース部213には補助記憶装置221が接続されている。第2ディスクインタフェース部214には光ディスクドライブ222が接続されている。表示制御部215には、表示部(表示装置)223が接続されている。入力インタフェース部216には、キーボード224およびマウス225が接続されている。通信インタフェース部217には、通信ケーブルを介して印刷機本体100が接続されている。また、通信インタフェース部217は通信回線4に接続されている。補助記憶装置221は磁気ディスク装置等である。光ディスクドライブ222には、CD-ROMやDVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体としての光ディスク29が挿入される。表示部223は液晶ディスプレイ等である。表示部223は、オペレータが所望する情報を表示するために使用される。キーボード224およびマウス225は、この印刷制御装置200に対して作業者が指示を入力するために使用される。
【0035】
補助記憶装置221には、印刷制御プログラム(印刷機本体100による印刷処理の実行を制御するためのプログラム)Pが格納されている。CPU211は、補助記憶装置221に格納された印刷制御プログラムPをメモリ212に読み出して実行することにより、印刷制御装置200の各種機能を実現する。メモリ212は、RAMおよびROMを含んでいる。メモリ212は、補助記憶装置221に格納された印刷制御プログラムPをCPU211が実行するためのワークエリアとして機能する。なお、印刷制御プログラムPは、上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過性の記録媒体)に格納されて提供される。すなわち、ユーザーは、例えば、印刷制御プログラムPの記録媒体としての光ディスク29を購入して光ディスクドライブ222に挿入し、光ディスク29から印刷制御プログラムPを読み出して補助記憶装置221にインストールする。
【0036】
<4.ホワイト補正>
本実施形態においては、印刷媒体として印刷に使用される基材12が白色の基材である場合に、上述したノズル欠け補正が行われる際に、欠陥ノズルに隣接するノズル(以下、便宜上「欠陥隣接ノズル」という)に対応するホワイトインク吐出ノズルからホワイトインクが吐出されるよう、印刷データに含まれる濃度データを補正する処理が行われる。以下、この処理を「ホワイト補正」という。
【0037】
図7は、ホワイト補正の概要について説明するための図である。なお、説明の便宜上、
図7では各インク吐出ヘッド150において複数のノズルが一列に並べて配置されているように示している。また、
図7では、UV-LED159を省略している。ここで、シアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)に含まれる複数のノズルのうち符号51を付したノズルが欠陥ノズルであると仮定する。このとき、上述したノズル欠け補正が行われることによって、欠陥隣接ノズル(符号52を付したノズルおよび符号53を付したノズル)からは本来よりも多くの量のシアンインクが吐出される。また、ホワイト補正が行われることによって、欠陥隣接ノズルに対応するノズル(符号54を付したノズルおよび符号55を付したノズル)からホワイトインクが吐出される。なお、この例では、シアンインクが第1のインクまたは第2のインクに相当し、ホワイトインクが第3のインクに相当する。
【0038】
本実施形態においては、単色のインクによる印刷が行われる領域(以下「単色領域」という)のうち、欠陥ノズルから吐出されるべき当該単色のインクによって印刷されるべき高濃度の単色領域について、ホワイト補正が行われる。上記のようにシアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)に欠陥ノズルが含まれている場合、例えば80%以上の濃度である高濃度のシアン単色の印刷が行われる領域についてホワイト補正が行われる。なお、ホワイト補正を行うべき領域(以下「ホワイト補正領域」(または単に「補正領域」)という)を決定するための判定基準値の詳細は後述する。
【0039】
また本実施形態では、ホワイトインクおよび透明インク以外のインク(プロセスカラーインクまたは特色インク)であるシアン(C)、マゼンタ(M),イエロー(Y)、ブラック(K)、ブルー(B)、およびオレンジ(O)のインクのうちの2つ以上の色のインクによる混色の印刷が行われる領域(以下「混色領域」という)についてもホワイト補正が行われる。例えばシアンとマゼンタのインクによる混色領域については、上記のようにシアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)に欠陥ノズルが含まれている場合、例えば、シアンインクの印刷濃度とマゼンタインクの印刷濃度との和が90%以上値であって欠陥ノズルを含むインク吐出ヘッドから吐出されるインクすなわちシアンインクの印刷濃度が70%である領域についてホワイト補正が行われる。この例では、シアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)におけるノズル52,53に加えて、マゼンタインク用のインク吐出ヘッド150(M)におけるノズル49,50も欠陥隣接ノズルであり(
図7参照)、シアンインクおよびマゼンタインクの一方が第1のインクに、他方が第2のインクにそれぞれ相当し、ホワイトインクが第3のインクに相当する。なお、混色領域のうちホワイト補正を行うべき領域(ホワイト補正領域)を決定するための判定基準値の詳細は後述する。
【0040】
単色領域につきホワイト補正が行われる上記の例では、そのホワイト補正が行われると、印刷の際に、まず、欠陥隣接ノズルに対応するホワイトインク吐出ノズル54,55から基材12にホワイトインクが吐出される。その後、シアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)における欠陥隣接ノズル52,53からシアンインクが吐出される。すなわち、ホワイト補正が行われた領域では、模式的には
図8(A)に示すように、基材12上に吐出されたホワイトインクの上にシアンインクが吐出される。
【0041】
ところで、基材12上での有色インク(上記の例では、シアンインク)の濡れ広がり範囲は、基材12上に直接に当該有色インクが吐出されたときよりも基材12上に吐出されたホワイトインクの上に当該有色インクが吐出されたときの方が大きい。ここで、「有色インク」とは、透明インク以外のインクのうち基材(印刷媒体)の色と異なる色のインクをいう。また、「濡れ広がり範囲」とは、インクの吐出により印刷媒体上に形成されるドットが占める範囲をいう。したがって、有色インクの吐出により印刷媒体としての基材12に形成されるドットのサイズは、基材12上に直接に当該有色インクが吐出されたときよりも基材12上に吐出されたホワイトインクの上に当該有色インクが吐出されたときの方が大きい。これに関する実験の結果の一例を
図9に示す。
図9で符号61を付した部分には、或るフィルム基材上に直接に有色インクを吐出したときに得られた(インクの)ドットサイズを示しており、
図9で符号62を付した部分には、当該或る基材上にホワイトインクを吐出した後に有色インクを吐出したときに得られた(インクの)ドットサイズを示している。いずれの有色インク(ブラックインクを含む)についても予め基材にホワイトインクを吐出しておくことによって濡れ広がり範囲が大きくなることが把握される。以上に鑑み、欠陥隣接ノズルからの有色インクの吐出が行われる位置(基材12上の位置)に予めホワイトインクを吐出しておくことによって、欠陥隣接ノズルから吐出された有色インクが基材12上で十分に広がり、ノズル欠け補正による効果(欠陥ノズルに起因する画像欠陥の発生を抑えて印刷品質の低下を防止する効果)が高められる。このようにホワイトインクは、印刷画像におけるドット抜け等の画像欠陥に対する有色インク(
図7の例では、欠陥隣接ノズルから吐出されるシアンインク)による補正を補助するためのインク(以下「補正補助インク」という)として機能する。
【0042】
また、通常はホワイトインクが吐出された後には紫外線照射によるホワイトインクの硬化が行われるが、本実施形態においては、ホワイト補正により対象の領域へのホワイトインクの吐出が行われるときには、UV-LED159(b)によるホワイトインクへの紫外線照射が停止されまたは紫外線照射の強度が低下される。このようにホワイトインクへの紫外線照射の停止等(紫外線照射の停止または紫外線照射の強度の低下をいう)を行うことによって、ホワイトインクの濡れ広がり範囲が大きくなり、ホワイトインク上に吐出される有色インクの濡れ広がり範囲も効果的に大きくなる。
【0043】
混色領域につきホワイト補正が行われる上記の例では、そのホワイト補正が行われると、印刷の際に、まず、欠陥隣接ノズルに対応するホワイトインク吐出ノズル54,55から基材12にホワイトインクが吐出される。その後、シアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)における欠陥隣接ノズル52,53からシアンインクが吐出され、続いて、マゼンタインク用のインク吐出ヘッド150(M)における欠陥隣接ノズル49,50からマゼンタインクが吐出される(
図7参照)。すなわち、ホワイト補正が行われた領域では、模式的には
図8(B)に示すように、基材12上に吐出されたホワイトインクの上にシアンインクが吐出され、そのシアンインクの上にマゼンタインクが吐出される。
【0044】
<5.ホワイト補正領域の決定方法>
既述のように従来のノズル欠け補正(以下「通常のノズル欠け補正」ともいう)では、インクの吐出不良による印刷画像の欠陥(典型的にはドット抜けによるスジ状の濃度低下)を十分に解消できない場合がある。特に、高濃度の単色領域で吐出不良による画像欠陥が生じる場合には、欠陥隣接ノズルから吐出されるインクによるドットサイズでは当該画像欠陥を解消するには不十分である。このような印刷画像の欠陥を解消するために上記のようなホワイト補正を行うことができるが、印刷すべき画像の濃度(またはそれに対応する1画素当たりのインク量)によっては、ホワイト補正を行うと、過剰な補正となったり、不必要にホワイトインクを消費したりすることがある。このため、単色領域で吐出不良による画像欠陥が生じる場合にホワイト補正を行うか通常のノズル欠け補正を行うかを判定するための適切な基準値(ホワイト補正が適切か否かの判定基準値)を予め求めておく必要がある。また、混色領域で吐出不良による画像欠陥が生じる場合には、ホワイト補正を行うのが適切か否かは、混色領域に吐出される複数の色のインクの1画素当たりのインク量の合計である総インク量(TAC(Total Area Coverage)値)に依存する。また、総インク量が同じであっても、欠陥ノズルから吐出されるべきインクが当該混色領域に吐出される1画素当たりのインク量が総インク量に占める割合(以下「欠陥ノズルインク量割合」という)によってホワイト補正を行うのが適切か否かが変わる。
【0045】
そこで本実施形態では、単色領域において吐出不良による画像欠陥が生じる場合に、通常のノズル欠け補正で当該画像欠陥を十分に解消できる総インク量の最大値を第1判定基準値として求める。また、混色領域において吐出不良による画像欠陥が生じる場合に、通常のノズル欠け補正で当該画像欠陥を十分に解消できる、総インク量の最大値と欠陥ノズルインク量割合の最大値との組み合わせを予め求めておく(以下、これらの最大値をそれぞれ「第2判定基準値」および「第3判定基準値」と呼ぶ)。
【0046】
<5.1 単色領域におけるホワイト補正要否の判定基準値>
単色領域において欠陥ノズルによる画像欠陥を解消する場合のホワイト補正要否の判定のための上記第1判定基準値の求め方について説明する。まず、
図10(A)に示すように単色で濃度が連続的かつ単調に基材12の搬送方向に変化する領域(以下「単色グラデーション領域」という)を含む画像を表す濃度データを含む印刷データを準備する。この印刷データを用いて、当該単色に対応するインク吐出ヘッドにおける1つのノズルからのインク吐出を停止した状態で印刷を行うと(以下この印刷を「仮想欠陥ノズル印刷」という)、
図10(B)に示すようなドット抜けによる画像欠陥(白スジとして視認される部分)を含む印刷画像が得られる。上記の第1判定基準値を求めるために、この印刷データに含まれる濃度データに対し当該単色グラデーション領域についての通常のノズル欠け補正を行うことにより通常補正濃度データを得ると共に、この印刷データに含まれる濃度データに対し当該単色グラデーション領域についてのホワイト補正(ホワイトインクを用いるノズル欠け補正)を行うことによりホワイト補正濃度データを得る。
【0047】
次に、通常補正濃度データを含む印刷データを用いて仮想欠陥ノズル印刷を行うことにより得られる印刷画像(以下「通常補正印刷画像」という)における単色グラデーション領域から、目視により、当該単色グラデーション領域のうち上記画像欠陥が解消される部分を認識することで、通常のノズル欠け補正で上記画像欠陥を十分に解消できる当該単色の濃度の最大値を求める。ここで、単色の濃度は、1画素当たりの単色のインク量に相当し、以下では、これを「単色インク量」と呼び、1画素当たりに使用可能な当該単色インクの最大量を100%とする百分率で表すものとする。なお単色領域では、当該単色以外のインク色のインク量は0であるので、単色インク量は総インク量に等しい。そこで本実施形態では、上記のように通常補正印刷画像における単色グラデーション領域から目視により求められた上記最大値に相当する単色インク量を仮の第1判定基準値とする。その後、ホワイト補正濃度データを含む印刷データを用いて仮想欠陥ノズル印刷を行うことにより得られる印刷画像(以下「ホワイト補正印刷画像」という)における単色グラデーション領域から、目視により仮の第1判定基準値において補正過剰でないことが確認できれば、当該仮の第1判定基準値を第1判定基準値とする。仮の第1判定基準値では補正過剰であると判定される場合には、当該単色グラデーション領域から目視により、過剰補正とならずに上記画像欠陥が解消される当該単色の濃度の最小値を決定し、当該最小値に相当する当該単色のインク量と上記最大値に相当する当該単色のインク量との間で、上記画像欠陥を好適に解消できると判断される当該単色のインク量を目視により決定し、これを第1判定基準値とする。ただし、これ以外の方法により、当該最小値に相当する当該単色のインク量と上記最大値に相当する当該単色のインク量との間の値として第1判定基準値を決定してもよい。
【0048】
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ブルーおよびオレンジのそれぞれにつき、上記のような通常補正印刷画像およびホワイト補正印刷画像を実際に基材12に形成して、その単色グラデーション領域を上記のように目視で評価したところ、通常補正印刷画像では単色インク量が60%以下の部分において上記画像欠陥は十分に解消されており、ホワイト補正印刷画像では単色インク量が60%において過剰補正とならないことが確認された。そこで本実施形態では、第1判定基準値を60%とする。その結果、単色領域において欠陥ノズルの吐出不良によって画像欠陥が生じている場合には、この単色領域のうち当該欠陥ノズルに対応する位置を含む領域において単色インク量が60%以下のときに当該領域が通常補正領域と決定され、当該領域において単色インク量が60%よりも大きいときに当該領域がホワイト補正領域と決定される。
【0049】
<5.2 混色領域におけるホワイト補正要否の判定基準>
次に、混色領域おいて欠陥ノズルによる画像欠陥を解消する場合のホワイト補正の要否の判定のための上記の第2判定基準値および第3判定基準値の求め方について説明する。まず、
図11(A)~(C)に示すような混色の種々の形態のそれぞれにつき、当該形態の混色領域を含む画像を表す濃度データを含む印刷データを準備する。
図11において、各混色領域の上部に付された“Xn/Zm”は、X色のインクをn%のインク量だけ吐出しZ色のインクをm%のインク量だけ吐出することにより当該混色領域が形成されることを示している。例えば、
図11(A)に示す3つの混色領域のうち左の混色領域に付された“C90/M10”は、シアン(C)のインクを90%のインク量だけ吐出しマゼンタ(M)のインクを10%のインク量だけ吐出することにより当該左の混色領域が形成されることを示している。
【0050】
上記のようにして準備された複数の印刷データ(
図11に示す例では8個の印刷データ)のそれぞれにつき、当該印刷データに対応する形態の混色を構成する1つのインク色を吐出すべきインク吐出ヘッドにおける1つのノズルからのインク吐出が停止していると仮定して、当該印刷データに含まれる濃度データに対し混色領域について通常のノズル欠け補正を行うことにより通常補正濃度データを得ると共に、当該印刷データに含まれる濃度データに対し混色領域についてホワイト補正を行うことによりホワイト補正濃度データを得る。
【0051】
次に、通常補正濃度データを含む印刷データを用いて上記1つのインク色に対応するインク吐出ヘッドにおける1つのノズルからのインク吐出を停止した状態で印刷(仮想欠陥ノズル印刷)を行うことにより印刷画像(通常補正印刷画像)を基材12に形成し、その通常補正印刷画像において上記1つのノズルからのインク吐出停止による画像欠陥が解消されている否かを目視により判定する。また、ホワイト補正濃度データを含む印刷データを用いて上記1つのインク色に対応するインク吐出ヘッドにおける1つのノズルからのインク吐出を停止した状態で印刷(仮想欠陥ノズル印刷)を行うことによりホワイト補正印刷画像を基材12に形成し、そのホワイト補正印刷画像において上記1つのノズルからのインク吐出停止による画像欠陥が解消されている否かを目視により判定する。このような通常補正印刷画像およびホワイト補正印刷画像についての目視による判定を混色の種々の形態に対応する複数の印刷データにつき行って評価したところ、欠陥ノズルによる画像欠陥を含む混色領域において、総インク量が90%以下であるか、または、欠陥ノズルから吐出されるべきインクの色(以下「欠陥ノズル色」という)のインク量の総インク量に対する割合(欠陥ノズルインク量割合)が60%以下である場合には、当該混色領域に対応する通常補正印刷画像において当該画像欠陥は解消されていることが確認された。また、欠陥ノズルによる画像欠陥を含む混色領域において、総インク量が90%程度よりも大きく、かつ、欠陥ノズルインク量割合が60%程度よりも大きい場合には、当該混色領域に対応するホワイト補正印刷画像において過剰補正は見られなかった。そこで本実施形態では、第2判定基準値を90%とし、第3判定基準値を60%とする。その結果、混色領域において欠陥ノズルの吐出不良によって画像欠陥が生じている場合には、この混色領域のうち当該欠陥ノズルに対応する位置を含む領域において総インク量が90%以下または欠陥ノズルインク量割合が60%以下であるときに当該領域が通常補正領域と決定され、当該領域において総インク量が90%よりも大きくかつ欠陥ノズルインク量割合が60%より大きいときに当該領域がホワイト補正領域と決定される。
【0052】
なお、
図11に示す例では、説明便宜上、通常補正印刷画像およびホワイト補正印刷画像につき目視による上記評価を行うために8個の印刷データが準備されるものとしたが、実際には、混色の種々の形態に対応するより多くの印刷データを準備し、それらの印刷データを用いて混色領域におけるホワイト補正の要否について実用的な判定基準(第2判定基準値および第3判定基準値)を求める。また、上述の第1判定基準値(60%)、第2判定基準値(90%)、および第3判定基準値(60%)の具体的数値は、あくまで例示に過ぎず、他の数値を取り得ることは言うまでもない。
【0053】
<6.透明補正>
本実施形態においては、印刷媒体として印刷に使用される基材12が白色基材以外の基材(例えば、透明の基材、またはシルバー色の基材)である場合に、上述したノズル欠け補正が行われる際に、欠陥ノズルに隣接するノズル(欠陥隣接ノズル)に対応する透明インク吐出ノズルから透明インクが補正補助インクとして吐出されるよう、印刷データに含まれる濃度データを補正する処理が行われる。以下、この処理を「透明補正」という。
【0054】
ここで、シアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)に含まれる複数のノズルのうち
図12で符号511を付したノズルが欠陥ノズルであると仮定する。このとき、上述したノズル欠け補正が行われることにより、欠陥隣接ノズル(符号512を付したノズルおよび符号513を付したノズル)からは本来よりも多くの量のシアンインクが吐出される。また、透明補正が行われることにより、欠陥隣接ノズルに対応する透明インク吐出ノズル(符号514を付したノズルおよび符号515を付したノズル)から透明インクが吐出される。
【0055】
単色領域につき透明補正が行われる上記の例では、その透明補正が行われると、印刷の際に、まず、欠陥隣接ノズルに対応する透明インク吐出ノズルから基材12に透明インクが吐出される。その後、欠陥隣接ノズルからシアンインクが吐出される。すなわち、透明補正が行われた領域では、模式的には
図13(A)に示すように、基材12上に吐出された透明インク6(T)の上にシアンインク6(C)が吐出される。
【0056】
なお、ホワイト補正と同様、透明補正においても、基材12上での有色インク(上記の例では、シアンインク)の濡れ広がり範囲は、基材12上に直接に当該有色インクが吐出されたときよりも基材12上に吐出された透明インクの上に当該有色インクが吐出されたときの方が大きい。既述のように、濡れ広がり範囲とは、インクの吐出により印刷媒体上の形成されるドットが占める範囲をいう。したがって、有色インクの吐出により印刷媒体としての基材12に形成されるドットのサイズは、基材12上に直接に当該有色インクが吐出されたときよりも基材12上に吐出された透明インクの上に当該有色インクが吐出されたときの方が大きい(
図9参照)。このため、欠陥隣接ノズルからの有色インクの吐出が行われる位置(基材12上の位置)に予め透明インクを吐出しておくことによって、欠陥隣接ノズルから吐出された有色インクが基材12上で十分に広がり、ノズル欠け補正による効果(欠陥ノズルに起因する画像欠陥の発生を抑えて印刷品質の低下を防止する効果)が高められる。
【0057】
また、本実施形態においては、透明補正により対象の領域への透明インクの吐出が行われるときには、UV-LED159(a)による透明インクへの紫外線照射の停止等が行われる。このように透明インクへの紫外線照射の停止等を行うことによって、透明インクの濡れ広がり範囲が大きくなり、透明インク上に吐出される有色インクの濡れ広がり範囲も効果的に大きくなる。
【0058】
混色領域につき透明補正が行われる上記の例では、その透明補正が行われると、印刷の際に、まず、欠陥隣接ノズルに対応する透明インク吐出ノズル514,515から基材12に透明インクが吐出される。その後、シアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)における欠陥隣接ノズル512,513からシアンインクが吐出され、続いて、マゼンタインク用のインク吐出ヘッド150(M)における欠陥隣接ノズル509,510からマゼンタインクが吐出される。すなわち、透明補正が行われた領域では、模式的には
図13(B)に示すように、基材12上に吐出された透明インク6(T)の上にシアンインク6(C)が吐出され、そのシアンインク6(C)の上にマゼンタインク6(M)が吐出される。
【0059】
<7.補正実行領域の決定>
文字やバーコード等のような幅の狭い線状パターン含む画像を印刷する場合に上記のようなホワイト補正または透明補正を行うと、インク滲みが生じて印刷画像の品質が低下することがある。以下、この点について説明する。
【0060】
いま、「製造」という文字をインクジェット印刷装置で印刷する場合を考える。インクジェット印刷装置が、その文字の色に対応したインクを吐出するインク吐出ヘッドに欠陥ノズルが含まれているときに、ノズル欠け補正を行わずにその文字を印刷すると、
図14に示すような印刷画像が印刷媒体としての基材12に形成される。ここでは、図の上下方向を搬送方向とし、基材12は白色の基材であるものとする。この印刷画像では、ドット抜けによるスジ状の濃度低下(
図14示す例では上下方向に延びる白いスジ)が「製造」という文字を構成する線状パターン内に生じる。これに対し、このような欠陥ノズルに起因するドット抜けに対応したノズル欠け補正としてホワイト補正を行いつつその文字を印刷すると、
図15に示すように、ノズル欠け補正を行わない場合に白いスジが現れる部分のうち文字を構成する線状パターンの搬送方向の端部付近において滲みが生じることがある。
【0061】
本実施形態では、欠陥ノズルに起因するドット抜けによる印刷画像の品質低下を防止するためのノズル欠け補正としてホワイト補正を行う場合、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域としての補正領域(この例ではホワイト補正領域)に対し、ホワイトインクが吐出された後に画像形成のためのインク(この例では文字の画像を形成するためのブラックインク等の有色インク)が吐出される。この補正領域は、通常、印刷すべき画像に応じた個数の連続領域(少なくとも1つの連続領域)から構成される。例えば
図14に示す例における「造」という文字の印刷画像については、
図16に示すように、搬送方向に連続する31画素の範囲を搬送方向範囲とし基材12の幅方向(以下「基材幅方向」という)に連続する5画素の範囲を基材方向範囲とする矩形の連続領域AC1と、搬送方向に連続する2画素の範囲を搬送方向範囲とし基材幅方向に連続する5画素の範囲を基材方向範囲とする矩形の連続領域AC2と、搬送方向に連続する2画素の範囲を搬送方向範囲とし基材幅方向に連続する5画素の範囲を基材方向範囲とする矩形の連続領域AC3と、搬送方向に連続する4画素の範囲を搬送方向範囲とし基材幅方向に連続する5画素の範囲を基材方向範囲とする矩形の連続領域AC4とが、補正領域を構成する。このような補正領域を構成する各連続領域(以下「補正個別領域」という)に対し、ホワイトインクが吐出された後に、当該文字「造」の画像を形成するためのブラックインク等の有色インクが吐出されると、補正個別領域AC1~AC4のそれぞれにおいて搬送方向の端部に吐出された有色インクの濡れ広がり範囲が当該補正個別領域からはみ出し、そのはみ出し部分が滲みとして視認される。
【0062】
そこで本実施形態では、
図16に示すように、補正個別領域ACkにおいて(k=1~4)、搬送方向の両端部(図における上下方向の両端部)を搬送方向に1画素分だけ除去し,両端部を当該1画素分だけ除去した後の補正個別領域を「補正実行領域ADk」として、ホワイト補正のためのホワイトインクを補正個別領域ACkではなく補正実行領域ADkに吐出する(補正個別領域ACkの両端部における搬送方向に1画素分の部分にはホワイトインクが吐出されない)。ただし、搬送方向の幅が2画素分である補正個別領域AC2,AC3については、それらに対応する補正実行領域AD2,AD3を設定できないので、補正補助インクとしてのホワイトインクが吐出されない。なお以下では、補正個別領域としての矩形の連続領域において両端部を搬送方向に所定数の画素分だけ除去する処理を「端部間引き処理」と呼ぶ。
図16に示した端部間引き処理では、補正個別領域の両端部において除去される搬送方向の画素数(以下「間引き数」という)は1である。
【0063】
このようにホワイト補正では、補正領域に含まれる各補正個別領域に端部間引き処理を施すことにより補正実行領域を決定し、各補正実行領域にのみホワイト補正のためのホワイトインクを吐出する。より詳しくは、この端部間引き処理では、補正領域に含まれる補正個別領域のうち、搬送方向の画素数が間引き数の2倍よりも大きい補正個別領域については、当該補正個別領域に端部間引き処理を施すことにより、すなわち当該補正個別領域としての矩形連続領域において搬送方向の両端部を搬送方向に間引き数の画素分だけ除去することにより、補正実行領域を決定し、搬送方向の画素数が間引き数の2倍以下である補正個別領域については、補正実行領域を設定しない。また、ホワイト補正のためのホワイトインクは、各補正実行領域に対し隙間なく吐出するのではなく、ホワイトインクが吐出される1個の画素部とホワイトインクが吐出されない1個の画素部とが交互に現れるというような画素単位の周期的なパターンにしたがってが吐出される(詳細は
図19~
図24を参照して後述する)。
図16に示す例では、補正実行領域AD1,AD4のそれぞれにおいて、網掛けを施した画素部についてのみホワイトインクが吐出される。補正個別領域AC1,AC4のうち端部間引き処理により除去された両端部の領域にはホワイトインクは吐出されず、補正個別領域AC2,AC3では、それらのいずれの領域にもホワイトインクが吐出されない。なお、間引き数は、予め決められた比較的小さい自然数であり、
図16に示した例では1であるが、これに限定されない。ただし、文字等の画像には搬送方向の幅の狭い線状パターンが少なからず含まれ得ることを考慮すると、間引き数を1または2とするのが好ましい。
【0064】
図17は、本実施形態において端部間引き処理を伴うホワイト補正を行いつつ文字を印刷することにより得られる印刷画像の例を示す図である。この例では、
図14および
図15に示した印刷画像の形成時にインク吐出ヘッドに含まれていた欠陥ノズルが同じ状態で含まれているものとする。
図15に示すように、上記のような端部間引き処理を伴わないホワイト補正を行いつつ「製造」という文字を印刷すると、印刷画像において、ノズル欠陥に起因するドット抜けによる画像欠陥(白スジ)の発生が抑制されるが、補正個別領域の搬送方向端部付近で滲みが生じる。これに対し、端部間引き処理を伴うホワイト補正を行いつつ「製造」という文字を印刷する本実施形態では、ホワイトインクを吐出すべき補正実行領域が上記のように決定されることで、
図17に示すように、ノズル欠陥に起因するドット抜けによる画像欠陥(白スジ)が抑制されるとともに
図15の例で見られた滲みの発生が抑制される。
【0065】
以上では、文字やバーコード等のような幅の狭い線状パターン含む画像の印刷においてホワイト補正を行う場合につき説明したが、透明補正においても、基材12上での有色インクの濡れ広がり範囲は、基材12上に直接に当該有色インクが吐出されたときよりも基材12上に吐出された補正補助インクとしての透明インクの上に当該有色インクが吐出されたときの方が大きい。したがって、文字やバーコード等のような幅の狭い線状パターン含む画像の印刷において透明補正を行う場合も、上記のような端部間引き処理により補正実行領域を決定し透明インクの吐出を補正実行領域に対してのみ行うことにより、ノズル欠陥に起因するドット抜けによる画像欠陥の発生を抑制するとともに滲みの発生を抑制することができる。
【0066】
<8.濃度補正>
本実施形態に係るインクジェット印刷装置10では、従来から行われている濃度均一化補正およびノズル欠け補正に加えて、上述したホワイト補正および透明補正が行われる。本明細書では、濃度均一化補正、ノズル欠け補正、ホワイト補正、および透明補正を含む一連の処理を「濃度補正」という。印刷制御装置200で印刷制御プログラムPが実行されることによって、濃度補正を実行するための機能的構成要素である濃度補正処理部24が実現される。なお、ホワイト補正と透明補正は、印刷に使用される基材12の種類(白色の基材か白色基材以外の基材か)に応じて択一的に行われる。
【0067】
<8.1 機能構成>
図18は、本実施形態における濃度補正処理部24の詳細な機能構成を示すブロック図である。
図18に示すように、濃度補正処理部24は、補正係数算出部241と欠陥ノズル検出部242と基材判定部243と印刷データ保持部(画像メモリ)244とホワイト補正判定部245aとホワイト補正対象ノズル特定部246aとホワイト補正用端部処理部247aとホワイト補正パターン作成部248aと透明補正判定部245bと透明補正対象ノズル特定部246bと透明補正用端部処理部247bと透明補正パターン作成部248bとインク吐出制御部250とUV-LED設定部249とを含んでいる。インク吐出制御部250は、第1の補正処理部2501と第2の補正処理部2502と第3の補正処理部2503とを含んでいる。
【0068】
補正係数算出部241は、上述した検査チャートの印刷画像を撮像部16が撮像することによって得られた撮像データ70に基づいて、濃度均一化補正を実行するための補正係数71を算出する。例えば、或るノズルに着目したときに、当該ノズルからインクが吐出されることによって得られる濃度が本来の(4/5)倍の濃度であれば、当該ノズルに対応する補正係数71は1.25に定められる。
【0069】
欠陥ノズル検出部242は、撮像データ70に基づいて、有色インク用のインク吐出ヘッド150に含まれている多数のノズルの中から吐出不良状態のノズルである欠陥ノズルを検出する。そして、欠陥ノズルを特定する欠陥ノズル情報72が欠陥ノズル検出部242から出力される。なお、欠陥ノズルが全く検出されなかった場合には、インク吐出制御部250内の第1の補正処理部2501で濃度均一化補正のみが行われる。
【0070】
基材判定部243は、例えば設定済みの印刷条件に基づいて、印刷媒体として印刷に使用される基材を判定する。そして、基材を特定する基材情報73が基材判定部243から出力される。
【0071】
印刷データ保持部244は、印刷データ生成装置30から送信された印刷データ(RIP処理済みのデータ)74を一時的に保持する。なお、印刷データ保持部244は、ハードウェアとしてのメモリ212(
図6参照)によって実現される。
【0072】
ホワイト補正判定部245aは、欠陥ノズル情報72と基材情報73と印刷データ74とに基づいて、欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域のそれぞれにつき、ホワイト補正を実行するか否かを判定する。そして、その判定結果75aがホワイト補正判定部245aから出力される。
【0073】
これに関し、本実施形態においては、基材情報73に基づいて、印刷に使用される基材が白色の基材以外の場合にはホワイト補正を実行しない旨の判定が行われる。印刷に使用される基材が白色の基材の場合であって、欠陥ノズル情報72と印刷データ74とに基づいて、欠陥ノズルが存在していて、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域に当該欠陥ノズルから吐出されるべき色のインクによる単色高濃度の印刷が行われる領域が含まれている場合に、より詳しくは総インク量(=当該単色のインク量)が第1判定基準値よりも大きい印刷が行われる領域が含まれている場合に、ホワイト補正を実行する旨の判定が行われる。この場合、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域のうち、当該欠陥ノズルから吐出すべきインクにより基材12に形成されるべき画素である欠け画素が搬送方向に連続する範囲を搬送方向範囲とし当該欠け画素を中心として所定数の画素(
図16に示す例では5つの画素)が基材幅方向に隣接する範囲を基材幅方向範囲とする矩形の連続領域が補正個別領域(後述の透明補正や通常補正における補正個別領域と区別すべき場合には「ホワイト補正個別領域」という)として扱われる。ホワイト補正判定部245aから出力される判定結果75aには、各補正個別領域を示す補正個別領域情報も含まれている。例えば、印刷領域全体において
図16に示すような文字のみが印刷される場合には、4つの補正個別領域AC1~AC4を示す補正個別領域情報と、これら4つの補正個別領域AC1~AC4のいずれにおいてもホワイト補正が必要であることを示す判定情報とが、判定結果75aとして出力される。なお、補正個別領域情報により示される補正個別領域のうちホワイト補正が不要で通常のノズル欠け補正を行うべき補正個別領域については、ホワイト補正が不要あることを示す情報が判定結果75aに含まれる。
【0074】
また、欠陥ノズルが存在していて、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域に当該欠陥ノズルから吐出されるべき色(欠陥ノズル色)のインクを含む2つ以上の色のインクによる混色高濃度の印刷であって欠陥ノズル色の濃度が大きい印刷が行われる領域が含まれている場合、より詳しくは総インク量が第2判定基準値よりも大きく欠陥ノズルインク量割合(総インク量に対する欠陥ノズル色のインク量の割合)が第3判定基準値よりも大きい印刷が行われる領域が含まれている場合に、ホワイト補正を実行する旨の判定が行われる。この場合も、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域のうち、当該欠陥ノズルから吐出すべきインクにより基材12に形成されるべき画素である欠け画素が搬送方向に連続する範囲を搬送方向範囲とし当該欠け画素を中心として所定数の画素(例えば3画素または5画素)が基材幅方向に隣接する範囲を基材幅方向範囲とする矩形の連続領域が補正個別領域(ホワイト補正個別領域)として扱われる。
【0075】
換言すれば、欠陥ノズルが存在していても、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域に、当該欠陥ノズルから出力されるべき色のインク(欠陥ノズル色のインク)による単色高濃度の印刷が行われる領域が含まれず、欠陥ノズル色のインクを含む2つ以上の色のインクによる混色高濃度の印刷であって欠陥ノズルインク量割合が大きい印刷が行われる領域も含まれない場合には、ホワイト補正を実行しない旨の判定が行われる。このようにして、欠陥ノズルの存在に起因する画像欠陥が通常のノズル欠け補正では十分に解消されない領域についてのみホワイト補正が行われるので、ホワイトインクの無駄な消費が抑制される。
【0076】
ホワイト補正対象ノズル特定部246aは、ホワイト補正判定部245aから出力された判定結果75aがいずれかの補正個別領域につきホワイト補正を実行する旨を示していれば、判定結果75aに含まれる補正個別領域情報および判定情報と欠陥ノズル情報72とに基づいて、ホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)に含まれる多数のノズルの中からホワイト補正のためにホワイトインクを吐出するノズル(以下、「ホワイト補正対象ノズル」という)を特定する。そして、ホワイト補正対象ノズルを特定するホワイト補正対象ノズル情報76aがホワイト補正対象ノズル特定部246aから出力される。このホワイト補正対象ノズル情報76aは、補正個別領域情報を含み、ホワイト補正が必要な各補正個別領域である各ホワイト補正個別領域と関連付けてホワイト補正対象ノズルを特定する。
【0077】
ところで、本実施形態においては、ホワイト補正により印刷領域内の画素部にどのようなパターンでホワイトインクを吐出するのかを定めたテンプレートが用意されている。このテンプレートは、ホワイトインクの吐出パターンを画素単位で特定するものであり、ホワイト補正対象ノズル特定部246aおよびホワイト補正パターン作成部248aによって参照される。例えば、
図19に示すようなテンプレートが用意されている。
図19に関し、符号64を付した列の画素部は欠陥ノズルに対応する画素部であって、網掛けを施した画素部がホワイトインクの吐出対象となる画素部である。なお、主走査方向(基材幅方向)に関して、各ノズルは1つの画素部に対応している。
図19に示す例では、符号64Lを付した列および符号64Rを付した列に網掛けを施した画素部が含まれている。従って、ホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)に含まれる多数のノズルのうち符号64Lを付した列の画素部にインクを吐出するノズルおよび符号64Rを付した列の画素部にインクを吐出するノズルがホワイト補正対象ノズル特定部246aによって補正対象ノズルとして特定される。
【0078】
ホワイト補正用端部処理部247aは、ホワイト補正対象ノズル情報76aに含まれる補正個別領域情報に基づき、ホワイト補正が必要な各補正個別領域(各ホワイト補正個別領域)に対し既述の端部間引き処理を施すことにより(
図16参照)、各ホワイト補正個別領域に対応する補正実行領域(後述の透明補正における「補正実行領域」と区別すべき場合には「ホワイト補正実行領域」という)を決定し、ホワイト補正実行領域情報77aを出力する。このホワイト補正実行領域情報77aは、各補正実行領域を示す実行領域情報を含み、各補正実行領域と関連付けてホワイト補正対象ノズルを特定する。なお、ホワイト補正対象ノズル情報76aに含まれる補正個別領域情報により示されるホワイト補正個別領域のうち搬送方向の画素数が間引き数の2倍以下である補正個別領域については、補正実行領域は設定されない(
図16に示す補正個別領域AC2,AC3参照)。
【0079】
ホワイト補正パターン作成部248aは、ホワイト補正実行領域情報77aに基づいて、印刷領域全体において上述したようなテンプレートによりホワイトインクの吐出パターンを画素単位で特定するホワイト補正実行パターン78aを作成する。このホワイト補正実行パターン78aは、各ホワイト補正個別領域に対応する補正実行領域において上述したようなテンプレートによりホワイトインクの吐出パターンが画素単位で特定されたホワイト補正個別実行パターンから構成される。
図16に示した例では、補正個別領域AC1,AC4にそれぞれ対応する補正実行領域AD1,AD4のそれぞれにおいて上述したようなテンプレートによりホワイトインクの吐出パターンを画素単位で特定するパターンがホワイト補正個別実行パターンである。本実施形態においては、このようにして作成されるホワイト補正実行パターン78aに基づきホワイトインクが吐出されるべき領域が印刷領域全体におけるホワイト補正実行領域(以下「全域的ホワイト補正実行領域」という)として扱われる。従って、ホワイト補正実行パターン78aを作成することは、全域的ホワイト補正実行領域を決定することに相当する。
【0080】
上述したように本実施形態においては、単色高濃度の印刷が行われる領域、および、混色高濃度の印刷(総インク量の大きい印刷)であって欠陥ノズルインク量割合が大きい印刷が行われる領域についてホワイト補正が行われる。ここで、例えば、
図20で符号57を付した点線部分にインクを吐出するシアンインク吐出ノズルに欠陥が生じていて、かつ、符号58を付した矩形領域でシアンインクによる単色高濃度の印刷が行われるものと仮定する。このとき、シアンインクによる単色高濃度の印刷が行われる領域のうちホワイト補正を行うべき領域のみについてホワイト補正が行われるよう、ホワイト補正パターン作成部248aによって作成されるホワイト補正実行パターン78aは
図21に示すようなものとなる。なお、混色高濃度の印刷であって欠陥ノズルインク量割合が大きい印刷が行われる領域でホワイト補正を行う場合においても、当該領域のうちホワイト補正を行うべき領域のみについてホワイト補正が行われるよう、ホワイト補正パターン作成部248aによって作成される
図21に示すようなホワイト補正実行パターン78aが使用される。ただし以下では、説明の便宜のため、ホワイト補正実行パターン78aについては、単色高濃度の印刷が行われる領域でホワイト補正を行う場合のみを例に挙げて説明する。
【0081】
透明補正判定部245bは、欠陥ノズル情報72と基材情報73と印刷データ74とに基づいて、欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域のそれぞれにつき、透明補正を実行するか否かを判定する。そして、その判定結果75bが透明補正判定部245bから出力される。
【0082】
これに関し、本実施形態においては、基材情報73に基づいて、印刷に使用される基材が白色基材の場合には透明補正を実行しない旨の判定が行われる。印刷に使用される基材が白色基材以外の場合であって、欠陥ノズル情報72と印刷データ74とに基づいて、欠陥ノズルが存在していて、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域に当該欠陥ノズルから吐出されるべき色のインクによる単色高濃度の印刷が行われる領域が含まれている場合に、より詳しくは総インク量(=当該単色のインク量)が上記のホワイト補正判定部245aにおける第1判定基準値に対応する透明補正第1判定基準値よりも大きい印刷が行われる領域が含まれている場合に、透明補正を実行する旨の判定が行われる。この場合、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域のうち、当該欠陥ノズルから吐出すべきインクにより基材12に形成されるべき画素である欠け画素が搬送方向に連続する範囲を搬送方向範囲とし当該欠け画素を中心として所定数の画素(例えば3画素または5画素)が基材幅方向に隣接する範囲を基材幅方向範囲とする矩形の連続領域が補正個別領域(前述の透明補正や通常補正における補正個別領域と区別すべき場合には「透明補正個別領域」という)として扱われる。透明補正判定部245bから出力される判定結果75bには、各補正個別領域を示す補正個別領域情報も含まれている。なお、補正個別領域情報により示される補正個別領域のうち透明補正が不要で通常のノズル欠け補正を行うべき補正個別領域については、透明補正が不要あることを示す情報が判定結果75bに含まれる。
【0083】
また、欠陥ノズルが存在していて、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域に当該欠陥ノズルから吐出されるべき色(欠陥ノズル色)のインクを含む2つ以上の色のインクによる混色高濃度の印刷であって欠陥ノズル色の濃度が高い印刷が行われる領域が含まれている場合、より詳しくは総インク量が上記のホワイト補正判定部245aにおける第2判定基準値に対応する透明補正第2判定基準値よりも大きく欠陥ノズルインク量割合(総インク量に対する欠陥ノズル色のインク量の割合)が上記のホワイト補正判定部245aにおける第3判定基準値に対応する透明補正第3判定基準値よりも大きい印刷が行われる領域が含まれている場合に、透明補正を実行する旨の判定が行われる。この場合も、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域のうち、当該欠陥ノズルから吐出すべきインクにより基材12に形成されるべき画素である欠け画素が搬送方向に連続する範囲を搬送方向範囲とし当該欠け画素を中心として所定数の画素(例えば3画素または5画素)が基材幅方向に隣接する範囲を基材幅方向範囲とする矩形の連続領域が補正個別領域(透明補正個別領域)として扱われる。
【0084】
換言すれば、欠陥ノズルが存在していても、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域に、欠陥ノズル色のインクによる単色高濃度の印刷が行われる領域が含まれず、欠陥ノズル色のインクを含む2つ以上の色のインクによる混色高濃度の印刷であって欠陥ノズルインク量割合が大きい印刷が行われる領域も含まれない場合には、透明補正を実行しない旨の判定が行われる。このようにして、欠陥ノズルの存在に起因する画像欠陥が通常のノズル欠け補正では十分に解消されない領域についてのみ透明補正が行われるので、透明インクの無駄な消費が抑制される。なお、透明補正第1判定基準値、透明補正第2判定基準値、および、透明補正第3判定基準値は、上記のホワイト補正判定部245aにおいて使用される第1判定基準値、第2判定基準値、および、第3判定基準値を求めた既述の手法(
図10、
図11参照)と同様の手法により予め求めておくことができる。
【0085】
透明補正対象ノズル特定部246bは、透明補正判定部245bから出力された判定結果75bがいずれかの補正個別領域につき透明補正を実行する旨を示していれば、判定結果75bに含まれる補正個別領域情報および判定情報と欠陥ノズル情報72とに基づいて、透明用のインク吐出ヘッド150(E)に含まれる多数のノズルの中から透明補正用に透明インクを吐出するノズル(以下、「透明補正対象ノズル」という)を特定する。そして、透明補正対象ノズルを特定する透明補正対象ノズル情報76bが透明補正対象ノズル特定部246bから出力される。この透明補正対象ノズル情報76bは、補正個別領域情報を含み、透明補正が必要な各補正個別領域である各透明補正個別領域と関連付けて透明補正対象ノズルを特定する。
【0086】
透明補正用端部処理部247bは、透明補正対象ノズル情報76bに含まれる補正個別領域情報に基づき、透明補正が必要な各補正個別領域である各透明補正個別領域に対し既述の端部間引き処理を施すことにより(
図16参照)、各透明補正個別領域に対応する補正実行領域(前述のホワイト補正における「補正実行領域」と区別すべき場合には「透明補正実行領域」という)を決定し、透明補正実行領域情報77bを出力する。この透明補正実行領域情報77bは、各補正実行領域を示す実行領域情報を含み、各補正実行領域と関連付けて透明補正対象ノズルを特定する。なお、透明補正対象ノズル情報76bに含まれる補正個別領域情報により示される透明補正個別領域のうち搬送方向の画素数が間引き数の2倍以下である補正個別領域については、補正実行領域は設定されない。
【0087】
透明補正パターン作成部248bは、透明補正実行領域情報77bに基づいて、印刷領域全体において上述したテンプレートに示したようなパターンを表す透明補正実行パターン78bを作成する。この透明補正実行パターン78bは、各透明補正個別領域に対応する補正実行領域において上述したようなテンプレートにより透明インクの吐出パターンが画素単位で特定された透明補正個別実行パターンから構成される。本実施形態においては、このようにして作成される透明補正実行パターン78bに基づき透明インクが吐出されるべき領域が印刷領域全体における透明補正実行領域として扱われる。従って、透明補正実行パターン78bを作成することは、印刷領域全体における透明補正実行領域(以下「全域的透明補正実行領域」という)を決定することに相当する。
【0088】
図18に示すように、インク吐出制御部250は、印刷データ74に含まれる濃度データを補正し、補正後の濃度データ82に基づいて各インク吐出ヘッド150からのインクの吐出を制御する。上述したように、インク吐出制御部250は、第1の補正処理部2501と第2の補正処理部2502と第3の補正処理部2503とを含んでいる。ホワイト補正判定部245aと透明補正判定部245bからそれぞれ出力された判定結果75a,75bがホワイト補正および透明補正のいずれをも実行しない旨を示していれば、印刷データ74に含まれる濃度データを補正する処理が第1の補正処理部2501によって行われる。上記判定結果75aが、いずれかの補正個別領域につきホワイト補正を実行する旨を示していれば、印刷データ74に含まれる濃度データを補正する処理が第2の補正処理部2502によって行われる。上記判定結果75bが、いずれかの補正個別領域につき透明補正を実行する旨を示していれば、印刷データ74に含まれる濃度データを補正する処理が第3の補正処理部2503によって行われる。
【0089】
第1の補正処理部2501は、補正係数71と欠陥ノズル情報72と判定結果75a,75bと印刷データ74とに基づいて、濃度均一化補正およびノズル欠け補正を行う。これにより、印刷データ74に含まれる濃度データに補正が施され、各インク吐出ヘッド150からのインクの吐出を制御するための通常補正濃度データとして濃度データ82が生成される。
【0090】
第2の補正処理部2502は、補正係数71と欠陥ノズル情報72と判定結果75aとホワイト補正実行パターン78aと印刷データ74とに基づいて、濃度均一化補正、ノズル欠け補正、およびホワイト補正を行う。これにより、印刷データ74に含まれる濃度データに補正が施され、各インク吐出ヘッド150からのインクの吐出を制御するためのホワイト補正濃度データとして濃度データ82が生成される。
【0091】
第3の補正処理部2503は、補正係数71と欠陥ノズル情報72と判定結果75bと透明補正実行パターン78bと印刷データ74とに基づいて、濃度均一化補正、ノズル欠け補正、および透明補正を行う。これにより、印刷データ74に含まれる濃度データに補正が施され、各インク吐出ヘッド150からのインクの吐出を制御するための透明補正濃度データとして濃度データ82が生成される。
【0092】
ところで、ホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)および透明インク用のインク吐出ヘッド150(E)を含む各インク吐出ヘッド150は、複数の異なる液滴サイズでインク滴を吐出することが可能に構成されている。詳しくは、インク吐出ヘッド150内の各ノズルに対応してピエゾ素子(圧電素子)が設けられており、ピエゾ素子に与える駆動信号の電圧波形を変化させることによってノズルから吐出されるインクの液滴サイズを変化させることが可能となっている。本実施形態においては、補正領域には複数の液滴サイズのうち最も小さい液滴サイズでホワイトインクが吐出されるよう、第2の補正処理部2502による濃度データの補正が行われる。すなわち、インク吐出制御部250は、補正領域には複数の液滴サイズのうち最も小さい液滴サイズでホワイトインクが吐出されるよう、インク吐出ヘッド150(W)からのホワイトインクの吐出を制御する。これにより、有色インクの濡れ広がり範囲を広くするためにホワイトインクが必要以上に消費されるということが防止される。但し、補正領域に対して最も小さい液滴サイズ以外の液滴サイズでホワイトインクが吐出されるようにしても良い。このようなホワイトインクの吐出についてのインク吐出制御部250による制御は、透明インクの吐出についても同様に行われる。
【0093】
なお、有色インクがインク吐出ヘッド150から基材12に吐出されてからUV-LED159(c)からの紫外線照射によって硬化されるまでの時間は、有色インクの色毎に異なる。
図3を参照すると、例えば、ブラックインクがインク吐出ヘッド150(K)から基材12に吐出されてから硬化されるまでの時間は、ブルーインクがインク吐出ヘッド150(B)から基材12に吐出されてから硬化されるまでの時間に比べて顕著に短くなることが把握される。それ故、ホワイト補正に関して、インク吐出ヘッド150(W)から吐出されるホワイトインクの液滴サイズを一定にした場合、ブラックインクの濡れ広がり範囲がブルーインクの濡れ広がり範囲に比べて小さくなることが考えられる。そこで、ホワイト補正領域においてホワイトインクの上に吐出される有色インクに対応するインク吐出ヘッド150からUV-LED159(c)までの距離が近いほどホワイトインクのサイズが大きくなるようにインク吐出ヘッド150(W)からのホワイトインクの吐出を制御するようにしても良い。また同様の理由で、透明補正領域において透明インクの上に吐出される有色インクに対応するインク吐出ヘッド150からUV-LED159(c)までの距離が近いほど透明インクのサイズが大きくなるようにインク吐出ヘッド150(E)からの透明インクの吐出を制御するようにしても良い。
【0094】
UV-LED設定部249は、ホワイト補正判定部245aから出力された判定結果75aに基づいて、ホワイトインク用のUV-LED159(b)に紫外線照射制御信号79を与えることによって当該UV-LED159(b)による紫外線照射を制御し、また、透明補正判定部245bから出力された判定結果75bに基づいて、透明インク用のUV-LED159(a)に紫外線照射制御信号79を与えることによって当該UV-LED159(a)による紫外線照射を制御する。具体的には、ホワイト補正判定部245aの判定結果75aがホワイト補正を実行する旨を示していれば、UV-LED設定部249は、UV-LED159(b)による紫外線照射を停止し、透明補正判定部245bの判定結果75bが透明補正を実行する旨を示していれば、UV-LED159(a)による紫外線照射を停止する。なお、上記判定結果75aがホワイト補正を実行する旨を示している場合に関して、UV-LED設定部249がUV-LED159(b)による紫外線照射の強度を低下させるようにしても良い。すなわち、ホワイトインクの上に有色インクが吐出されたときに当該有色インクの濡れ広がり範囲が十分に広い範囲となるのであれば、UV-LED159(b)によるホワイトインクへの紫外線照射を必ずしも停止させる必要はない。この点は、上記判定結果75bが透明補正を実行する旨を示している場合でのUV-LED設定部249によるUV-LED159(a)の紫外線照射の制御についても同様である。
【0095】
なお、本実施形態においては補正係数算出部241による補正係数71の算出および欠陥ノズル検出部242による欠陥ノズルの特定は撮像データ70に基づいて行われるが、本発明はこれに限定されない。撮像部16を備えていないインクジェット印刷装置10が採用されている場合には、検査チャートの印刷画像を作業者が目視で確認することによって補正係数71の算出や欠陥ノズルの特定が行われるようにしても良い。
【0096】
また、基材判定部243に代えて作業者による基材情報73の入力を受け付ける構成要素を備える構成を採用して当該構成要素が受け付けた基材情報73に基づいてホワイト補正判定部245aによる処理(ホワイト補正を実行するか否かを判定する処理)と透明補正判定部245bによる処理(透明補正を実行するか否かを判定する処理)とが行われるようにしても良い。
【0097】
本実施形態においては、ホワイト補正判定部245a、ホワイト補正対象ノズル特定部246a、ホワイト補正用端部処理部247a、ホワイト補正パターン作成部248a、透明補正判定部245b、透明補正対象ノズル特定部246b、透明補正用端部処理部247b、および、透明補正パターン作成部248bによって補正領域決定部が実現され、UV-LED設定部249によって紫外線照射制御部が実現される。
【0098】
<8.2 補正パターンのテンプレート>
上記においては、ホワイト補正パターン作成部248aおよび透明補正パターン作成部248bでそれぞれ作成されるホワイト補正実行パターン78aおよび透明補正実行パターン78bの元となるテンプレートとして
図19に示すテンプレートが用意されているものとして説明した。しかしながら、採用可能なテンプレートは、
図19に示すテンプレートには限定されない。例えば、
図22に示すテンプレートや
図23に示すテンプレートや
図24に示すテンプレート等を採用することもできる。
図19および
図23に示すテンプレートは、基材幅方向に3画素が隣接して並ぶ補正個別領域に対応したテンプレートであり、
図22および
図24に示すテンプレートは、基材幅方向に5画素が隣接して並ぶ補正個別領域に対応したテンプレートである。また、
図19、
図22~
図24に示したテンプレート以外のテンプレートを採用することもできる。なお、印刷位置の誤差マージンやホワイト補正と透明補正での濡れ広がり範囲の確実な確保等から、欠陥ノズルに対応する画素部に対し、±2画素部でホワイト印刷または透明印刷が行われ、±1画素部でインク量を増大した印刷が行われる形態が好適である。したがって、
図22や
図24に示すテンプレートを使用するのが好ましい。なお、上記のようなテンプレートにより補正対象ノズルが特定されるが、これらのテンプレートは、ホワイト補正を行う場合と透明補正を行う場合の双方で使用可能である。しかし、以下に述べるこのようなテンプレートについては、便宜上、ホワイト補正を行う場合についてのみ説明する。
【0099】
図19または
図23に示すテンプレートが採用された場合には、ホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)に含まれる多数のノズルのうち符号64Lを付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64Rを付した列の画素部にインクを吐出するノズルとがホワイト補正対象ノズルとして特定される。
図22または
図24に示すテンプレートが採用された場合には、ホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)に含まれる多数のノズルのうち符号64を付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64L1を付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64R1を付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64L2を付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64R2を付した列の画素部にインクを吐出するノズルとがホワイト補正対象ノズルとして特定される。
【0100】
また、ホワイトインクが吐出される画素部に関して基材12の搬送方向に着目すると、
図19または
図22に示すテンプレートが採用された場合には、ホワイトインクが吐出される1個の画素部とホワイトインクが吐出されない1個の画素部とが交互に現れ、
図23または
図24に示すテンプレートが採用された場合には、ホワイトインクが吐出される2個の画素部とホワイトインクが吐出されない2個の画素部とが交互に現れる。
【0101】
<8.3 手順>
以下、
図25を参照しつつ、本実施形態における濃度補正の手順について説明する。なお、処理対象の印刷データ74は既に印刷データ保持部244(
図18参照)に保持されているものと仮定する。
【0102】
本実施形態では、
図18に示した濃度補正処理部24の主要部(ハードウェアで実現される構成要素以外の構成)は、
図6に示す制御装置200において、CPU211が印刷制御プログラムPに従って、
図25に示す手順による濃度補正処理を行うことにより、ソフトウェア的に実現される。この濃度補正処理においてCPU211は下記のように動作する。
【0103】
濃度補正処理の開始後、まず、有色インク用のインク吐出ヘッド150(詳しくは、ブルーインク用のインク吐出ヘッド150(B)、オレンジインク用のインク吐出ヘッド150(O)、シアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)、マゼンタインク用のインク吐出ヘッド150(M)、イエローインク用のインク吐出ヘッド150(Y)、およびブラックインク用のインク吐出ヘッド150(K))内のノズルの状態を検査するための検査チャートの印刷が行われるように記録部15および搬送部を制御する(ステップS110)。そして、検査チャートの印刷で得られた印刷画像を撮像部16に撮像させる(ステップS112)。これにより、撮像部16から撮像データ70が出力される。
【0104】
その後、撮像データ70に基づいて、有色インク用のインク吐出ヘッド150に含まれている多数のノズルのうちの欠陥ノズルを検出する(ステップS114)。次に、濃度均一化補正を実行するための補正係数71を撮像データ70に基づいて算出する(ステップS116)。
【0105】
補正係数71の算出後、例えば設定済みの印刷条件に基づいて、印刷に使用される基材(印刷媒体)の判定を行い、基材を特定する基材情報73を生成する(ステップS118)。そして、印刷に使用される基材が白色の基材か否かを基材情報73に基づき判定する(ステップS120)。その判定の結果、印刷に使用される基材が白色の基材であれば処理はステップS121に進み、印刷に使用される基材が白色の基材でなければ処理はステップS141に進む。
【0106】
ステップS121では、印刷データ74とステップS116で検出された欠陥ノズルの情報(上記欠陥ノズル情報72)とに基づいて、ホワイト補正を実行する必要性があるか否かを判定する。具体的には、欠陥ノズル情報72に基づき欠陥ノズルが存在しないと判定される場合には、ホワイト補正を実行する必要がないと判定し、欠陥ノズル情報72に基づき欠陥ノズルが存在すると判定される場合には、欠陥ノズル情報72および印刷データ74に基づき下記のようにしてホワイト補正の実行の要否を判定する。
【0107】
すなわち、欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域(これは基材12上の領域であり、以下「判定対象領域」という)での印刷のためのインク量が、下記の式(1a)および(1b)を満たすか、または、下記の式(2a)および(2b)を満たす場合に、ホワイト補正を実行する必要があると判定し、それ以外の場合(式(1a)または(1b)のいずれかを満たさず、かつ、式(2a)または(2b)のいずれかを満たさない場合)には、ホワイト補正を実行する必要がないと判定する。
IA(C)+IA(M)+IA(Y)+IA(K)+IA(O)+IA(B) > CR1 …(1a)
IA(Z)/{IA(C)+IA(M)+IA(Y)+IA(K)+IA(O)+IA(B)}= 1 …(1b)
IA(C)+IA(M)+IA(Y)+IA(K)+IA(O)+IA(B) > CR2 …(2a)
1 > IA(Z)/{IA(C)+IA(M)+IA(Y)+IA(K)+IA(O)+IA(B)}> CR3 …(2b)
上記式において、IA(C),IA(M),IA(Y),IA(K),IA(O),IA(B)は、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラック,オレンジ、ブルーのインク量(1画素当たりの各色のインクの最大量を100%とする百分率で表されるものとする)をそれぞれ示している。また、Zは、C,M,Y,K,O,Bのいずれかであって、欠陥ノズルから判定対象領域に吐出されるべきインクの色を示している。したがって、IA(Z)は、欠陥ノズルから判定対象領域に吐出されるべきインク量を示している。また上記式において、CR1,CR2,CR3は、既述のようにして予め決められた第1判定基準値、第2判定基準値、第3判定基準値をそれぞれ示しており(
図10、
図11参照)、本実施形態では、
CR1=60,CR2=90,CR3=0.6 …(3)
である。
【0108】
図3に示すように、本実施形態における記録部150には、プロセスカラーであるシアン,マゼンタ,イエロー,ブラックのインクをそれぞれ吐出するインク吐出ヘッド150(C),150(M),150(Y),150(B)に加えて、特色としてのオレンジ、ブルーのインクをそれぞれ吐出するインク吐出ヘッド150(O),150(B)が含まれているが、特色としてのオレンジ、ブルーのインクをそれぞれ吐出するインク吐出ヘッド150(O),150(B)が含まれていない場合には、上記式(1a)~(2b)においてIA(O)とIA(B)の項は省かれる。なお、上記式(1a),(1b)は、判定対象領域が、欠陥ノズルから吐出されるべき色のインクによる単色高濃度の印刷が行われる領域であることを表し、上記式(2a),(2b)は、判定対象領域が、欠陥ノズルから吐出されるべき色のインクと他の色のインクとによる混色高濃度の印刷が行われる領域であることを表している。
【0109】
上記のような式(1a)~(2b)による判定により、欠陥ノズルによって決まる判定領域のそれぞれにつきホワイト補正の要否を示す判定結果75aが得られる。この判定結果75aは、各判定領域に含まれる既述の補正個別領域(例えば
図16に示す領域AC1~AC4のそれぞれ)を示す補正個別領域情報と、各補正個別領域についてのホワイト補正の要否を示す判定情報とを含む。この判定結果75aに基づき、いずれかの補正個別領域につき、ホワイト補正を実行する必要性があれば処理はステップS122に進み、(いずれの補正個別領域についても)ホワイト補正を実行する必要性がなければ処理はステップS130に進む。なお、欠陥ノズルが存在するがホワイト補正を実行する必要はないと判定された場合には、後述のようにステップS130において通常のノズル欠け補正が行われる。
【0110】
ステップS122では、判定結果75aに含まれる補正個別領域情報および判定情報とステップS116で検出された欠陥ノズルの情報(上記欠陥ノズル情報72)とに基づいて、上述したホワイト補正対象ノズルを特定し、ホワイト補正対象ノズル情報76aを生成する。このホワイト補正対象ノズル情報76aは、補正個別領域情報を含み、各ホワイト補正個別領域と関連付けてホワイト補正対象ノズルを特定する。
【0111】
その後、ホワイト補正対象ノズル情報76aに含まれる補正個別領域情報に基づき各ホワイト補正個別領域(ホワイト補正が必要な各補正個別領域)に対し既述の端部間引き処理を施すことにより(
図16参照)、各ホワイト補正個別領域に対応する補正実行領域(ホワイト補正実行領域)を決定し、ホワイト補正実行領域情報77aを出力する(ステップS123)。このホワイト補正実行領域情報77aは、各補正実行領域を示す実行領域情報を含み、各補正実行領域(ホワイト補正実行領域)と関連付けてホワイト補正対象ノズルを特定する。なお、ホワイト補正対象ノズル情報76aに含まれる補正個別領域情報により示されるホワイト補正個別領域のうち搬送方向の画素数が間引き数の2倍以下である補正個別領域については、補正実行領域は設定されない。
【0112】
次に、ホワイト補正実行領域情報77aに基づいて、上述したホワイト補正実行パターン78aを作成する(ステップS124)。換言すれば、基材12上の領域のうち有色インクの濡れ広がり範囲を広くする目的で印刷領域全体においてホワイトインクが吐出されるべき領域である全域的ホワイト補正実行領域を決定する。
【0113】
ホワイト補正実行パターン78aの作成後、ステップS121での判定結果75aに基づいて、ホワイトインク用のUV-LED159(b)からの紫外線照射の停止等を行う(ステップS126)。これにより、上述したように、ホワイト補正が行われる場合には、インク吐出ヘッド150(W)から基材12に吐出されたホワイトインクへのUV-LED159(b)からの紫外線照射の停止等が行われる。
【0114】
UV-LED159(b)からの紫外線照射の停止等が行われた後、ステップS116で算出された補正係数71とステップS114で検出された欠陥ノズルの情報(上記欠陥ノズル情報72)とステップS121で得られた判定結果75aとステップS124で作成されたホワイト補正実行パターン78aと印刷データ74とに基づいて、既述の、濃度均一化補正、ノズル欠け補正、およびホワイト補正を行う(ステップS128)(
図32、
図7、
図8参照)。
【0115】
ステップS120での判定の結果、印刷に使用される基材12が白色基材以外の基材である場合には、ステップS141へ進んで、印刷データ74とステップS114で検出された欠陥ノズルの情報(上記欠陥ノズル情報72)とに基づいて、透明補正を実行する必要性があるか否かを判定する。具体的には、欠陥ノズル情報72に基づき欠陥ノズルが存在しないと判定される場合には、透明補正を実行する必要がないと判定し、欠陥ノズル情報72に基づき欠陥ノズルが存在すると判定される場合には、欠陥ノズル情報72および印刷データ74に基づき、既述のステップS121と同様にして、透明補正の実行の要否を判定する。
【0116】
すなわち、欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域(判定対象領域)の印刷のためのインク量が、既述の式(1a)および(1b)を満たすか、または、既述の式(2a)および(2b)を満たす場合に、透明補正を実行する必要があると判定し、それ例外の場合には、透明補正を実行する必要がないと判定する。ただし、これらの式における第1判定基準値CR1、第2判定基準値CR2、第3判定基準値CR3には、ステップS121で使用される第1判定基準値、第2判定基準値、および、第3判定基準値を求めた既述の手法(
図10、
図11参照)と同様の手法を用いて透明補正の場合につき求めた値を用いる。すなわち、当該手法において、ホワイト補正を行うことにより得られる補正印刷データを用いてホワイト補正印刷画像を形成する代わりに、透明補正を行うことにより得られる補正印刷データを用いて透明補正印刷画像を形成することにより、ステップS121で使用される第1判定基準値CR1、第2判定基準値CR2、および、第3判定基準値CR3にそれぞれ対応する透明補正第1判定基準値CR1、透明補正第2判定基準値CR2、および、透明補正第3判定基準値CR3を予め決定する。ステップS141では、これらの透明補正第1判定基準値CR1、透明補正第2判定基準値CR2、および、透明補正第3判定基準値CR3を用いて、既述の式(1a)~(2b)により、透明補正の実行の要否を判定する。
【0117】
このようなステップS141により、欠陥ノズルによって決まる判定領域のそれぞれにつきホワイト補正の要否を示す判定結果75bが得られる。この判定結果75bは、各判定領域に含まれる既述の補正個別領域(例えば
図16に示す領域AC1~AC4のそれぞれ)を示す補正個別領域情報と、各補正個別領域についての透明補正の要否を示す判定情報とを含む。この判定結果75bに基づき、いずれかの補正個別領域につき、透明補正を実行する必要性があれば処理はステップS142に進み、(いずれの補正個別領域についても)透明補正を実行する必要性がなければ処理はステップS130に進む。なお、欠陥ノズルが存在するが透明補正を実行する必要はないと判定された場合には、後述のようにステップS130において通常のノズル欠け補正が行われる。
【0118】
ステップS142では、判定結果75aに含まれる補正個別領域情報および判定情報と欠陥ノズル情報72とに基づいて、上述した透明補正対象ノズルを特定し、透明補正対象ノズル情報76bを生成する。この透明補正対象ノズル情報76bは、補正個別領域情報を含み、各透明補正個別領域と関連付けて透明補正対象ノズルを特定する。
【0119】
その後、ホワイト補正対象ノズル情報76aに含まれる補正個別領域情報に基づき各透明補正個別領域(透明補正が必要な各補正個別領域)に対し既述の端部間引き処理を施すことにより、各透明補正個別領域に対応する補正実行領域(透明補正実行領域)を決定し、透明補正実行領域情報77bを出力する(ステップS143)。この透明補正実行領域情報77bは、各補正実行領域を示す実行領域情報を含み、各補正実行領域(各透明補正実行領域)と関連付けて透明補正対象ノズルを特定する。なお、透明補正対象ノズル情報76bに含まれる補正個別領域情報により示される透明補正個別領域のうち搬送方向の画素数が間引き数の2倍以下である補正個別領域については、補正実行領域は設定されない。
【0120】
次に、透明補正実行領域情報77bに基づいて、上述した透明補正実行パターン78bを作成する(ステップS144)。換言すれば、基材12上の領域のうち有色インクの濡れ広がり範囲を広くする目的で印刷領域全体において透明インクが吐出されるべき領域である全域的透明補正実行領域を決定する。
【0121】
透明補正実行パターン78bの作成後、ステップS141での判定結果75bに基づいて、透明インク用のUV-LED159(a)からの紫外線照射の停止等を行う(ステップS146)。これにより、上述したように、透明補正が行われる場合には、インク吐出ヘッド150(E)から基材12に吐出されたホワイトインクへのUV-LED159(a)からの紫外線照射の停止等が行われる。
【0122】
UV-LED159(a)からの紫外線照射の停止等が行われた後、ステップS116で算出された補正係数71とステップS114で検出された欠陥ノズル情報72とステップS144で作成された透明補正実行パターン78bと印刷データ74とに基づいて、既述の、濃度均一化補正、ノズル欠け補正、および透明補正を行う(ステップS148)。
【0123】
上記のように、ホワイト補正が不要であると判定された場合にステップS130へ進み、透明補正が不要であると判定された場合にもステップS130へ進む(ステップS121,S141)。ステップS130では、ステップS114で検出された欠陥ノズルの情報(上記欠陥ノズル情報72)とステップS116で算出された補正係数71とステップS121で得られた判定結果75aまたはステップS141で得られた判定結果75bと印刷データ74とに基づいて、濃度均一化補正および通常のノズル欠け補正を行う(
図32参照)。
【0124】
ステップS128の処理、ステップS148の処理、または、ステップS130の処理が終了することによって、この濃度補正は終了する。
【0125】
CPU211が上記のように動作する濃度補正処理において、ステップS114により欠陥ノズル検出部242が実現され、ステップS116により補正係数算出部241が実現され、ステップS118により基材判定部243が実現され、ステップS120およびS121によりホワイト補正判定部245aが実現され、ステップS122によりホワイト補正対象ノズル特定部246aが実現され、ステップS123によりホワイト補正用端部処理部247aが実現され、ステップS124によりホワイト補正パターン作成部248aが実現され、ステップS120およびS141により透明補正判定部245bが実現され、ステップS142により透明補正対象ノズル特定部246bが実現され、ステップS143により透明補正用端部処理部247bが実現され、ステップS144により透明補正パターン作成部248bが実現され、ステップS126,S146によりUV-LED設定部249が実現され、ステップS128により第2の補正処理部2502が実現され、ステップS148により第3の補正処理部2503が実現され、ステップS130により第1の補正処理部2501が実現される(
図18参照)。なお、インク吐出制御部250は、印刷制御プログラムPに基づく印刷のための記録部15および搬送部に対する周知の制御処理と第1の補正処理部2501を実現するステップS130と第2の補正処理部2502を実現するS128と第3の補正処理部2503を実現するステップS148とにより実現される。
【0126】
以上のような手順でCPU211により濃度補正処理が行われた後、CPU211が印刷制御プログラムPに従って、当該濃度補正で得られた濃度データ82に基づいて各インク吐出ヘッド150からのインクの吐出および搬送部による基材の搬送を制御することにより、基材12への実際の印刷が行われる。その際、
図3から把握されるように、基材12へのインクの吐出は、ホワイトインク、ブルーインク、オレンジインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクの順で行われる。ここで、例えばシアンインク吐出ノズルに欠陥が検出されたケースに着目すると、ホワイト補正領域では、まず基材12上にホワイトインクが吐出され、その後、ホワイトインクの上にシアンインクが吐出され、また、透明補正領域では、まず基材12上に透明インクが吐出され、その後、透明インクの上にシアンインクが吐出される。
【0127】
<9.効果>
本実施形態によれば、印刷に使用される基材12が白色の基材である場合にはノズル欠け補正を行うべき領域ではホワイト補正(ホワイトインクを用いたノズル欠け補正)が行われ、印刷に使用される基材12が白色基材以外の基材である場合にはノズル欠け補正を行うべき領域において透明補正(透明インクを用いたノズル欠け補正)が行われる(
図25参照)。しかし、上記からわかるように、ホワイト補正を行う場合と透明補正を行う場合のいずれにおいても同様の効果が得られる(
図7、
図8、
図9、
図12、
図13、
図25参照)。このため以下では、ホワイト補正に着目した場合の本実施形態の効果についてのみ説明する。
【0128】
本実施形態によれば、有色インク用のインク吐出ヘッド150に欠陥ノズルが検出されたときに、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域(基材12上の領域)のうち当該欠陥ノズルから吐出されるべき色のインクによる単色高濃度の印刷が行われる領域に設定される補正実行領域について、欠陥隣接ノズルに対応するホワイトインク吐出ノズルからホワイトインクが吐出されるよう濃度データを補正するホワイト補正が行われる。ここで、基材12上での有色インクの濡れ広がり範囲は、基材12上に直接に当該有色インクが吐出されたときよりも基材12上に吐出されたホワイトインクの上に当該有色インクが吐出されたときの方が大きい。従って、ホワイト補正後の濃度データに基づいて各インク吐出ヘッド150からインクが吐出されることによって、ホワイト補正の対象となった領域において有色インクが基材12上で十分に広がり、従来に比べてノズル欠け補正による効果(欠陥ノズルに起因する画像欠陥の発生を抑えて印刷品質の低下を防止する効果)が高められる。すなわち、単色高濃度の印刷が行われる領域に対応するノズルに欠陥が生じている場合であっても、欠陥ノズルに起因する印刷画像における画質低下が効果的に抑制される。
【0129】
また、単色領域においてノズル欠け補正を行うべき場合に、通常のノズル欠け補正とホワイト補正(ホワイトインクを用いたノズル欠け補正)のいずれを行うべきかが、当該単色領域の濃度に相当する総インク量につき予め決められた判定基準値(第1判定基準値)に基づき決定することで(既述の式(1a),(1b)参照)、印刷画像の濃度に応じた適切なノズル欠け補正が行われ、ホワイトインクの不必要な使用も抑えられる。なお、有色インクの濡れ広がり範囲を広くするために用いられるインク(ホワイトインク)の色は基材12の色と同じである。従って、有色インクの濡れ広がり範囲を広くするために基材12上に吐出されたインクの色が印刷画像上で目立つことはない。
【0130】
また上記実施形態によれば、混色領域において欠陥ノズルに起因する画像欠陥の発生を抑制するためにノズル欠け補正を行うべき場合にも、当該混色領域の濃度に相当する総インク量が大きく且つ欠陥ノズルインク量割合が大きいときにホワイト補正が行われる。この場合、通常のノズル欠け補正とホワイト補正のいずれを行うべきかが、総インク量につき予め決められた判定基準値(第2判定基準値)と欠陥ノズルインク量割合につき予め決められた判定基準値(第3判定基準値)とに基づき決定される(既述の式(2a),(2b)参照)。これにより、総インク量および欠陥ノズルインク量割合に応じて適切なノズル欠け補正が行われる。このため、ホワイト補正による補正過剰や不必要なホワイトインクの使用を回避しつつ、混色領域において適切な条件下でのホワイト補正の適用によって従来よりもノイズ欠け補正の効果が高めることができる。
【0131】
また本実施形態によれば、各ホワイト補正個別領域に既述の端部間引き処理(
図16参照)を施すことにより得られるホワイト補正実行領域からなる全域的ホワイト補正実行領域に対しホワイト補正(ホワイトインクを用いたノズル欠け補正)が行われる(
図25参照)。これにより、補正個別領域(例えば
図16に示すAC1~AC4の領域)のそれぞれにおいて搬送方向の端部に吐出された有色インクの濡れ広がり範囲の当該補正個別領域からのはみ出が抑制される。その結果、文字やバーコード等のような幅の狭い線状パターン含む画像を印刷する場合であっても、ホワイト補正に起因する滲みによる印刷品質の低下を抑制することができる(
図17参照)。
【0132】
以上のように本実施形態によれば、単色領域および混色領域のいずれにおいても、欠陥ノズルに起因する画像欠陥の発生を抑制するためにノズル欠け補正を行うべき場合には、通常のノズル欠け補正を行うべきか、ホワイト補正(白色基材が使用される場合)または透明補正(白色基材以外の基材が使用される場合)を行うべきかが予め決められた判定基準値に基づき適切に決定されるので、適切な条件下でホワイト補正または透明補正が行われる。また、ホワイト補正または透明補正を実行する必要があると判定された各補正個別領域につき既述の端部間引き処理が施されることにより得られる補正実行領域にのみホワイトインクまたは透明インクが補正補助インクとして吐出されるので、文字やバーコード等のような幅の狭い線状パターン含む画像を印刷する場合であっても、ホワイト補正または透明補正に起因する滲みによる印刷品質の低下を抑えつつノズル欠け補正を効果的に行うことができる。このようなホワイト補正または透明補正を含むノズル欠け補正により、印刷物の高品質化を可能とするインクジェット印刷装置10が実現される。また、欠陥ノズルに起因する印刷画像の画質低下が上記のように適切かつ効果的に抑制されるので、従来に比較して再印刷の必要性が少なくなり、基材やインクの消費量の削減が可能となる。このように、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献することができる。
【0133】
<10.変形例>
<10.1 第1の変形例>
上記実施形態においては、印刷に使用される基材12が白色の基材である場合にはノズル欠け補正を行うべき領域でホワイト補正(ホワイトインクを用いたノズル欠け補正)が行われ、印刷に使用される基材12が白色基材以外の基材である場合にはノズル欠け補正を行うべき領域で透明補正(透明インクを用いたノズル欠け補正)が行われる(
図25参照)。しかし、印刷に使用される基材12として白色基材以外の基材の使用を想定する必要がない場合は、上記実施形態において、透明補正に関連する構成を省略してもよい。以下、このように上記実施形態において透明補正に関連する構成を省略したインクジェット印刷装置を上記実施形態の第1の変形例として以下に説明する。
【0134】
本変形例では、
図18に示した上記実施形態における濃度補正処理部24の機能的構成から、基材判定部243と透明補正判定部245bと透明補正対象ノズル特定部246bと透明補正用端部処理部247bと透明補正パターン作成部248bと第3の補正処理部2503とが削除され、UV-LED設定部249によるUV-LED159(a)の制御は不要となる。このため、本変形例における濃度補正処理部24は、
図26に示すような構成となる。また本変形例では、
図25に示した上記実施形態における濃度補正の手順(濃度補正処理)から、ステップS118,S120,S141~S148が削除され、
図27に示すような手順となる。
【0135】
このような本変形例によれば、印刷媒体として白色基材以外の基材の使用を想定しない場合には、ノズル欠け補正を行うべき単色領域および混色領域のいずれにおいても、通常のノズル欠け補正とホワイト補正のいずれを行うべきかが予め決められた判定基準値に基づき適切に決定されるので、適切な条件下でホワイト補正が行われ、上記実施形態と同様の効果が得られる。また、ホワイト補正を実行する必要があると判定された各補正個別領域につき既述の端部間引き処理が施されることにより得られる補正実行領域にのみホワイトインクが補正補助インクとして吐出されるので、文字やバーコード等のような幅の狭い線状パターン含む画像を印刷する場合であっても、ホワイト補正に起因する滲みによる印刷品質の低下を抑えつつノズル欠け補正を効果的に行うことができる。
【0136】
<10.2 第2の変形例>
上記実施形態においては、印刷に使用される基材12が白色の基材である場合にはノズル欠け補正を行うべき領域でホワイト補正(ホワイトインクを用いたノズル欠け補正)が行われ、印刷に使用される基材12が白色の基材でない場合にはノズル欠け補正を行うべき領域で透明補正(透明インクを用いたノズル欠け補正)が行われる(
図25参照)。しかし、印刷に使用される基材12として白色の基材の使用を想定する必要がない場合は、上記実施形態において、白色補正に関連する構成を省略してもよい。以下、このように上記実施形態において白色補正に関連する構成を省略したインクジェット印刷装置を上記実施形態の第2の変形例として以下に説明する。
【0137】
本変形例では、
図18に示した上記実施形態における濃度補正処理部24の機能的構成から、基材判定部243とホワイト補正判定部245aとホワイト補正対象ノズル特定部246aとホワイト補正用端部処理部247aとホワイト補正パターン作成部248aと第2の補正処理部2502とが削除され、UV-LED設定部249によるUV-LED159(b)の制御は不要となる。このため、本変形例における濃度補正処理部24は、
図28に示すような構成となる。また本変形例では、
図25に示した上記実施形態における濃度補正の手順(濃度補正処理)から、ステップS118,S120,S121~S128が削除され、
図29に示すような手順となる。
【0138】
このような本変形例によれば、印刷媒体として白色の基材の使用を想定しない場合には、ノズル欠け補正を行うべき単色領域および混色領域のいずれにおいても、通常のノズル欠け補正と透明補正のいずれを行うべきかが予め決められた判定基準値に基づき適切に決定されるので、適切な条件下で透明補正が行われ、上記実施形態と同様の効果が得られる。また、透明補正を実行する必要があると判定された各補正個別領域につき既述の端部間引き処理が施されることにより得られる補正実行領域にのみ透明インクが補正補助インクとして吐出されるので、文字やバーコード等のような幅の狭い線状パターン含む画像を印刷する場合であっても、透明補正に起因する滲みによる印刷品質の低下を抑えつつノズル欠け補正を効果的に行うことができる。
【0139】
<10.3 第3の変形例>
上記実施形態においては、ノズル欠け補正が行われることによる基材12上での有色インクの濡れ広がり範囲を大きくするために、基材12が白色の基材か白色基材以外の基材かに応じて、補正領域において基材12に有色インクが吐出される前に基材12に補正補助インクとしてホワイトインクまたは透明インクが吐出されていた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。そこで、有色インクの濡れ広がり範囲を大きくするためにホワイトインクや透明インク以外のインクを補正補助インクとして利用することも考えられる。また、以下のように、ブラックインク吐出ノズルに欠陥が生じたときに、ノズル欠け補正による効果を高めるために、イエローインクを使用することが考えられる。以下、上記実施形態におけるホワイト補正に代えて、ブラックインクの濡れ広がり範囲が大きくなるようイエローインクを補正補助インクとして使用する例を、上記実施形態の第3の変形例として説明する。
【0140】
本変形例においては、ブラックインク吐出ノズルに欠陥が生じたときに、ノズル欠け補正による効果を高めるために、補正領域において基材12にブラックインクが吐出される前に基材12にブラックインクよりも明度値が高いイエローインクが吐出される。また、上記実施形態におけるホワイト補正に代えて、ブラックインクの濡れ広がり範囲が大きくなるようインク吐出ヘッド150(Y)からブラックインクよりも明度値が高いイエローインクが吐出されるように濃度データを補正する処理(以下、この処理を「イエロー補正」という)が行われる。
【0141】
なお、ノズル欠け補正による効果を高める目的でイエローインクの吐出が行われる領域は、印刷画像を形成するためにイエローインクが吐出される領域以外の領域に限られる。イエローインクの吐出が行われる領域をこのように限定することによって、ブラックインクの濡れ広がり範囲を大きくするためのインクにイエローインクを採用したことに起因する印刷品質の低下が防止される。
【0142】
ここで、ブラックインク用のインク吐出ヘッド150(K)に含まれる複数のノズルのうち
図30で符号521を付したノズルが欠陥ノズルであると仮定する。このとき、上述したノズル欠け補正が行われることにより、欠陥隣接ノズル(符号522を付したノズルおよび符号523を付したノズル)からは本来よりも多くの量のブラックインクが吐出される。また、イエロー補正が行われることにより、欠陥隣接ノズルに対応するイエローインク吐出ノズル(符号524を付したノズルおよび符号525を付したノズル)からイエローインクが吐出される。
【0143】
イエロー補正が行われると、印刷の際に、まず、欠陥隣接ノズルに対応するイエローインク吐出ノズルから基材12にイエローインクが吐出される。その後、欠陥隣接ノズルからブラックインクが吐出される。すなわち、イエロー補正が行われた領域では、模式的には
図31に示すように、基材12上に吐出されたイエローインク6(Y)の上にブラックインク6(K)が吐出される。
【0144】
さらに他の例として、ブラックインク吐出ノズルに欠陥が生じたときに、ノズル欠け補正による効果を高めるために、補正領域において基材12にブラックインクが吐出される前に基材12にブラックインクと色差があまりないブルーインクを補正補助インクとして吐出するようにしてもよい。かかる場合、上記実施形態におけるホワイト補正に代えて、ブラックインクの濡れ広がり範囲が大きくなるようインク吐出ヘッド150(B)からブラックインクと色差があまりないブルーインクが吐出されるように濃度データを補正する処理(以下、この処理を「ブルー補正」という)を行い、イエロー補正の場合と同様の吐出制御を行うようにしてもよい。
【0145】
本変形例では、ホワイトインクや透明インクは用いられない。従って、プロセスカラーのインクのみを用いて印刷を行うインクジェット印刷装置においても、本変形例の構成を採用することによって、ブラックインク吐出ノズルについての欠陥ノズルの存在に起因する印刷画像における画像欠陥(ドット抜けによるスジ状の濃度低下等)の発生を効果的に抑制することが可能となる。また、イエロー補正またはブルー補正を実行する必要があると判定された各補正個別領域(例えば
図16に示す領域AC1~AC4のそれぞれ)につき既述の端部間引き処理が施されることにより得られる補正実行領域にのみイエローインクまたはブルーインクが補正補助インクとして吐出されるので、文字やバーコード等のような幅の狭い線状パターン含む画像を印刷する場合であっても、イエロー補正またはブルー補正に起因する滲みによる印刷品質の低下を抑えつつノズル欠け補正を効果的に行うことができる。
【0146】
<11.その他>
本発明は、上記各実施形態(変形例を含む)に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記各実施形態ではUVインクを用いて印刷を行うインクジェット印刷装置10を例示しているが、紫外線以外の放射線の照射によって硬化するインクを用いて印刷を行うインクジェット印刷装置が採用されている場合にも本発明を適用することができる。
【0147】
また、上記各実施形態は、インク吐出ヘッドに対して基材を搬送しながら、該インク吐出ヘッドからインクを吐出することにより基材に印刷画像を形成する、いわゆるワンパス方式のインクジェット印刷装置を例示していた。しかし、基材に対してインク吐出ヘッドを搬送しながら、該インク吐出ヘッドからインクを吐出することにより基材に印刷画像を形成する、いわゆるシャトル方式のインクジェット印刷装置に対しても本発明を適用することができる。後者の場合には、基材に対してインク吐出ヘッドを搬送する手段が、印刷媒体を搬送する搬送部を構成する。
【0148】
また、上記各実施形態では、白色基材に対してはホワイト補正を実施し、白色基材以外の基材に対しては透明補正を実施した。しかし、白色基材に対して透明補正を実施してもよい。すなわち、印刷装置によっては、記録部15が、透明インクを吐出するインク吐出ヘッド150(E)と透明インクを硬化させるためのUV-LED159(a)とを備え、ホワイトインクを吐出する150(W)とホワイトインクを硬化させるためのUV-LED159(b)とを備えない場合がある。この場合には、
図25のステップS141と同様の判断処理を実行して、印刷データ74とステップS114で検出された欠陥ノズルの情報(上記欠陥ノズル情報72)とに基づいて透明補正を実行する必要性があるか否かを判定すればよい。
【符号の説明】
【0149】
10…インクジェット印刷装置
12…基材(印刷媒体)
15…記録部
16…撮像部
24…濃度補正処理部
100…印刷機本体
150…インク吐出ヘッド
151…ヘッドモジュール
152…ノズル
159…UV-LED
200…印刷制御装置
241…補正係数算出部
242…欠陥ノズル検出部
243…基材判定部
244…印刷データ保持部
245a…ホワイト補正判定部
246a…ホワイト補正対象ノズル特定部
247a…ホワイト補正用端部処理部
248a…ホワイト補正パターン作成部
245b…透明補正判定部
246b…透明補正対象ノズル特定部
247b…透明補正用端部処理部
248b…透明補正パターン作成部
249…UV-LED設定部
250…インク吐出制御部
2501…第1の補正処理部
2502…第2の補正処理部
2503…第3の補正処理部
ACk …補正個別領域(k=1~4)
ADk …補正実行領域(k=1,4)