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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140838
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/474 20210101AFI20250919BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20250919BHJP
   H01M 50/477 20210101ALI20250919BHJP
   H01M 50/48 20210101ALI20250919BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20250919BHJP
【FI】
H01M50/474
H01M50/342 101
H01M50/477
H01M50/48
H01M10/0585
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040439
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】島村 治成
【テーマコード(参考)】
5H012
5H021
5H029
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012BB01
5H012DD05
5H012EE04
5H021AA02
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE08
5H021EE09
5H021EE10
5H021EE21
5H021EE28
5H021HH01
5H021HH03
5H029AJ12
5H029AM01
5H029BJ12
5H029CJ06
5H029DJ04
5H029DJ13
5H029EJ06
5H029EJ12
5H029HJ04
(57)【要約】
【課題】電池ケースが予期せぬ個所で開裂しにくい非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】本発明により、積層電極体20と電池ケースとを備える非水電解質二次電池が提供される。電池ケースは下面を有し、下面にはガス排出弁13が設けられている。積層電極体20は、一対の平坦面F1と、下端面E1および上端面E2と、を有し、積層電極体20には、一対の平坦面F1を架け渡すようにテープtが貼り付けられている。下端面E1と上端面E2とは、テープtによって非対称に覆われている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の正極と複数枚の負極とを有する積層電極体と、非水電解質と、前記積層電極体および前記非水電解質を収容する電池ケースと、を備え、
前記電池ケースは、少なくとも、下面と、前記下面の一対の縁辺からそれぞれ延び、相互に対向する一対の側面と、前記下面に対向する上面と、を有し、
前記下面には、ガス排出弁が設けられており、
前記積層電極体は、
前記電池ケースの一対の側面に対向する一対の平坦面と、
前記正極と前記負極との積層構造が露出した端面であって、前記電池ケースの前記下面に対向する下端面および前記電池ケースの前記上面に対向する上端面と、
を有し、
前記積層電極体には、前記一対の平坦面を架け渡すように少なくとも1枚のテープが貼り付けられており、
前記積層電極体の前記下端面と前記上端面とは、前記ガス排出弁に向かってガスが流れるように、前記テープによって非対称に覆われている、
非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記ガス排出弁は、前記電池ケースの前記下面の重心と重なる位置に設けられている、
請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記上端面のうち前記テープで覆われている面積は、前記下端面のうち前記テープで覆われている面積よりも大きい、
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記上端面のうち、前記ガス排出弁の鉛直方向上方に位置する部分は、前記テープで覆われている、
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記上端面と前記下端面とに、それぞれ、少なくとも1枚の前記テープが貼り付けられており、
前記上端面に貼り付けられている前記テープは、前記電池ケースの第1の前記平坦面に沿って延びる長さが、前記下端面に貼り付けられている前記テープよりも長い、
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記下端面は、前記ガス排出弁と対向する部分を除いた全体が前記テープで覆われており、かつ、
前記上端面は、全体が前記テープで覆われている、
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記下端面の前記ガス排出弁と対向する部分は、前記ガス排出弁の中心部と対向する部分を除いて前記テープで覆われており、
前記上端面のうち、前記ガス排出弁の前記中心部の鉛直方向上方に位置する部分は、前記テープで覆われている、
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
前記積層電極体の外周面には、前記下端面のうち前記ガス排出弁と対向する部分を除いて、前記テープが1周以上巻きつけられている、
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
前記テープは、多孔質である、
請求項8に記載の非水電解質二次電池。
【請求項10】
前記下端面のうち、前記ガス排出弁と対向する部分は、前記テープで覆われておらず、かつ、前記ガス排出弁と対向しない部分の、前記電池ケースの前記側面に沿う方向の長さを100%としたときに、10%以上の長さが前記テープで覆われている、
請求項3に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層電極体と、非水電解質と、積層電極体および非水電解質を収容する電池ケースと、を備える非水電解質二次電池が知られている。このような非水電解質二次電池に関する従来技術文献として、特許文献1-3が挙げられる。例えば特許文献1には、積層電極体にずれ防止用テープを貼着して、積層ずれを抑制する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-91099号公報
【特許文献2】国際公開2017/033420号公報
【特許文献3】特開2016-194979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者の検討によれば、過充電等によって温度が上昇したときに、電池内で非水電解質が分解してガスが発生することがある。これにより、電池内の圧力が所定値以上になると、電池ケースの予期せぬ個所が開裂し、開裂した部分から電池の内容物(例えば活物質層の破片等)が外部に排出されて、周囲に飛散することがありうる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電池ケースが予期せぬ個所で開裂しにくい非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、複数枚の正極と複数枚の負極とを有する積層電極体と、非水電解質と、上記積層電極体および上記非水電解質を収容する電池ケースと、を備える、非水電解質二次電池が提供される。上記電池ケースは、少なくとも、下面と、上記下面の一対の縁辺からそれぞれ延び、相互に対向する一対の側面と、上記下面に対向する上面と、を有し、上記下面には、ガス排出弁が設けられており、上記積層電極体は、上記電池ケースの一対の側面にそれぞれ対向する一対の平坦面と、上記正極と上記負極との積層構造が露出した端面であって、上記電池ケースの上記下面に対向する下端面および上記電池ケースの上記上面に対向する上端面と、を有し、上記積層電極体には、上記一対の平坦面を架け渡すように少なくとも1枚のテープが貼り付けられており、上記積層電極体の上記下端面と上記上端面とは、上記ガス排出弁に向かってガスが流れるように、上記テープによって非対称に覆われている。
【0007】
本発明によれば、電池内で発生したガスが、電池ケースの下面に設けられたガス排出弁から安定して外部に排出されやすくなる。よって、電池ケースが予期せぬところで開裂することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る非水電解質二次電池を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1の非水電解質二次電池の上下を反転させた斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図4図4(A)-(C)は、ガス排出弁の変形例を示す模式的な平面図である。
図5図5は、図3の積層電極体を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、図5の積層電極体におけるガス流れを模式的に示す斜視図である。
図7図7(A)、(B)は、比較例1、2の図6相当図である。
図8図8(A)-(C)は、比較例3-1~3-3の図6相当図である。
図9図9(A)、(B)は、例2-1、2-2の図6相当図である。
図10図10(A)、(B)は、例3-1、3-2の図6相当図である。
図11図11(A)、(B)は、例4-1、4-2の図6相当図である。
図12図12は、例6の図6相当図である。
図13図13(A)、(B)は、例7-1、7-2の図6相当図である。
図14図14(A)、(B)は、例8-1、8-2の図6相当図である。
図15図15(A)、(B)は、例9、10、11の図6相当図である。
図16図16(A)、(B)は、例12、13の図6相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ここに開示される技術のいくつかの実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここに開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、ここに開示される技術を特徴付けない非水電解質二次電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位に同じ符号を付して説明している。
【0010】
なお、本明細書において、「非水電解質二次電池」とは、非水電解質を介して正極と負極との間を電荷担体が移動することによって充放電を繰り返し実施できる蓄電デバイス全般をいう。本明細書において、範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「Aより大きい」および「Bより小さい」の意を包含するものとする。
【0011】
図1は、一実施形態に係る非水電解質二次電池(以下、単に「電池」ということがある。)100の斜視図である。図2は、図1の電池100の上下を反転させた斜視図である。図3は、図1の電池100のIII-III線に沿う模式的な縦断面図であり、内部構造を示している。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、電池100の厚み方向、厚み方向と直交する幅方向、厚み方向および幅方向と直交する上下方向を、それぞれ表すものとする。上下方向Zは、典型的には鉛直方向である。
【0012】
電池100は、図1に示す向きで、例えば車両等に搭載される。電池100は、ここでは6面体からなる角形形状(詳しくは直方体形状)を有する角形電池である。図3に示すように、電池100は、電池ケース10と、積層電極体20と、非水電解液(図示省略)と、正極端子30と、負極端子40と、を備えている。非水電解液は、非水電解質の一例である。電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。
【0013】
電池ケース10は、積層電極体20と非水電解液とを収容する筐体である。図1図2に示すように、電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。
【0014】
図3に示すように、電池ケース10は、ここでは幅方向Yの両端部に一対の開口12hを有するケース本体12と、ケース本体12の一対の開口12hを塞ぐ2枚の封口板14と、を備えている。電池ケース10は、ケース本体12の一対の開口12hの周縁に、それぞれ封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって一体化されている。電池ケース10は、気密に封止(密閉)されている。
【0015】
ケース本体12は、角筒状であり、図1に示すように、長辺および短辺を有する略矩形状の下面12aと、下面12aの対向する一対の長辺(縁辺)からそれぞれ延び、相互に対向する一対の長側面12bと、下面12aに対向する上面12cと、を備えている。長側面12bは、下面12aおよび上面12cよりも面積が広い。上面12cは、下面12aと同様に略矩形状である。上面12cは、一対の長側面12bの上端部同士を連結している。ケース本体12は、例えば1枚の金属板を折り曲げて筒状に成形し、合わせ目を接合(例えば溶接接合)することによって形成されている。ここでは上面12cに溶接接合部12dが設けられている。
【0016】
図2に示すように、下面12aには、ガス排出弁13が設けられている。ガス排出弁13は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。下面12aは、モジュールやパックの枠体(典型的には金属製)に接触する面であり、放熱しやすい。そのため、ガス排出弁13を下面12aに設けることで、電池ケース10内で発生したガスが下面12aに触れて冷却されやすくなる。その結果、ガスの温度上昇や電池100内の圧力上昇を抑制でき、電池ケース10が予期せぬところで開裂することを抑えられる。また、ガスが冷やされてガスの勢いが弱まることにより、電池100の内容物が広範囲に飛散しにくくなる。
【0017】
なお、本実施形態ではガス排出弁13の数が1つであるが、2つ以上であってもよい。また、ガス排出弁13の面積は任意である。また、図2に示すように、本実施形態では、ガス排出弁13が十字状の切り欠きである。ただし、ガス排出弁13の形状は特に限定されない。他の実施形態において、ガス排出弁13は、線状(縦線ないし横線のみ)やX字状やH字状の切り欠きであってもよいし、例えば、円,楕円,四角,菱形,三角形,星形等の形状の溝や、それらの組み合わせ等であってもよい。また、切り欠きないし溝の寸法(長さ、幅、深さ)は任意であり、例えば電池ケース10の耐圧等を考慮して適宜決定しうる。
【0018】
ガス排出弁13は、図2に示すように、電池ケース10の下面12aの重心Gと重なる位置に設けられていることが好ましい。言い換えれば、ガス排出弁13は、下面(ガス排出弁13を有する面)12aの重心Gが、ガス排出弁13の中(ガス排出弁13内)に存在するように配置されていることが好ましい。これにより、電池ケース10内でガス量のバラつきが生じにくくなり、ガス排出弁13からガスが排出される際にガス圧の偏りが小さくなる。したがって、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮できる。なお、図2に示すように、下面12aが平板状かつ矩形状の場合、仮想線で示す2本の対角線の交点が、重心Gとなる。
【0019】
ガス排出弁13は、中心Cを有する。図2において、ガス排出弁13の中心Cは、電池ケース10の下面12aの重心Gと一致している。ただし、他の実施形態において、ガス排出弁13の中心Cは、下面12aの重心Gと一致していなくてもよい。ガス排出弁13の中心Cは、例えば、下面12aの重心Gから幅方向Yの一方側にずれた位置にあってもよい。
【0020】
図4(A)-(C)には、ガス排出弁のいくつかの変形例を示している。図4(A)-(C)では、いずれもガス排出弁13が、電池ケース10の下面12aの重心Gと重なる位置に設けられている。詳しくは、図4(A)に示すガス排出弁113は、楕円形の溝の内側に十字状の切り欠きを有する形状である。図4(A)では、ガス排出弁113の中心Cが、下面12aの重心Gと一致している。図4(B)に示すガス排出弁213は、楕円形の溝の内側にX字状の切り欠きを有する形状である。図4(B)では、ガス排出弁213の中心Cが、下面12aの重心Gから幅方向Yの左側にずれた位置にある。図4(C)に示すガス排出弁313は、円形の溝形状である。図4(C)では、ガス排出弁313の中心Cが、下面12aの重心Gと一致している。
【0021】
封口板14は、開口12hを封口する板状部材である。封口板14は、平面視において略矩形状である。封口板14の面積は、長側面12bよりも小さい。封口板14には、注液孔15が設けられている。注液孔15は、ケース本体12に封口板14を組み付けた後、電池ケース10の内部に非水電解液を注液するためのものである。注液孔15は、非水電解液の注液後に、封止部材16で封止されている。なお、本実施形態では、注液孔15が封口板14に設けられているが、他の実施形態において、注液孔15はケース本体12に設けられていてもよい。
【0022】
正極端子30および負極端子40は、ここでは、それぞれ電池ケース10の対向する面(具体的には、一対の封口板14)にそれぞれ固定されている。詳しくは、正極端子30は、幅方向Yの一方側(図1図2の右側)に配置された封口板14に取り付けられている。負極端子40は、幅方向Yの他方側(図1図2の左側)に配置された封口板14に取り付けられている。なお、本実施形態では、正極端子30および負極端子40が一対の封口板14にそれぞれ設けられているが、他の実施形態において、正極端子30および負極端子40は同じ封口板14に設けられていてもよいし、ケース本体12に設けられていてもよい。
【0023】
正極端子30および負極端子40は、それぞれ封口板14の外側の表面に露出している。正極端子30と負極端子40とは、ここでは、幅方向Yに延び封口板14の中心を通る軸線上に配置されている。ただし、他の実施形態において、軸線は、封口板14の中心から例えば厚み方向Xにずれていてもよい。また、正極端子30と負極端子40とは、軸線上に配置されていなくてもよい。例えば、正極端子30および負極端子40のうち一方が厚み方向Xの一方側にずれ、他方が厚み方向Xの他方側にずれていてもよい。
【0024】
図3に示すように、正極端子30は、電池ケース10の内部で、正極集電部32を介して積層電極体20の正極タブ23と電気的に接続されている。正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。負極端子40は、電池ケース10の内部で、負極集電部42を介して積層電極体20の負極タブ24と電気的に接続されている。負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。
【0025】
積層電極体20は、図3に示すように、電池ケース10の内部に収容されている。図5は、積層電極体20の斜視図である。図5に示すように、積層電極体20は、複数枚の方形状の正極と複数枚の方形状の負極とが、セパレータを介して絶縁された状態で厚み方向Xに積み重ねられて構成されている。電池ケース10の内部に収容されている積層電極体20は、1体のみであっても良いし、例えば1体の場合よりも積層数を少なくした積層電極体が2体や3体など複数体からなっていても良い。厚み方向Xは、複数枚の正極と複数枚の負極とが積層された積層方向である。積層電極体20を構成する各部材(正極、負極およびセパレータ等)は、一般的な非水電解質二次電池と同様でよく、特に制限はない。
【0026】
正極は、典型的には、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層と、を有する。正極集電体は、ここでは帯状である。正極集電体は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電体は、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。正極には、正極タブ23が設けられている。正極タブ23は、ここでは正極集電体の一部である。正極タブ23は、ここでは凸状で、幅方向Yの一方側(図3の右側)に向かって積層電極体20から突出している。正極タブ23は、ここでは正極集電部32を介して正極端子30と電気的に接続されている。
【0027】
正極活物質層は、帯状の正極集電体の長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層は、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質を有している。正極活物質としては、Ni、Co、Mnのうちの少なくとも1種を含む酸化物が好ましく、例えば、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。正極活物質は、例えば、NiおよびLiを含む複合酸化物であって、当該複合酸化物中のNi含有量が、当該複合酸化物中のLiおよび酸素を除く構成元素の総モル数に対して70~100モル%の範囲であるリチウムニッケル複合酸化物を含むことが好ましい。また、正極活物質には、Ni、Co、Mnの一部をAl、Ti、Zr、P、B、Si、Nb、C等で置換したものや、粒子表面がAl、Ti、Zr、W、P、B、Si、Nb、C等が含まれた化合物で覆われたものも含まれる。置換量および添加量としては、合わせて、0.1~7%程度である。
【0028】
負極は、典型的には、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層と、を有する。負極集電体は、ここでは帯状である。負極集電体は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体は、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。負極には、負極タブ24が設けられている。負極タブ24は、ここでは負極集電体の一部である。負極タブ24は、ここでは凸状で、幅方向Yの他方側(図3の左側)に向かって積層電極体20から突出している。負極タブ24は、ここでは負極集電部42を介して負極端子40と電気的に接続されている。
【0029】
負極活物質層は、帯状の負極集電体の長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層は、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質を有している。負極活物質としては、例えば、黒鉛やカーボン等の炭素材料や、Si,SiO,SiC,Sn等のリチウムを吸蔵できる金属やその化合物が挙げられる。
【0030】
セパレータは、正極活物質層と負極活物質層とを絶縁する部材である。セパレータとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる多孔性の樹脂シートが好適である。セパレータの表面には、無機フィラーを含む耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)が設けられていてもよい。無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、チタニア等を使用し得る。
【0031】
図5に示すように、積層電極体20の全体形状は、略直方体である。積層電極体20は、積層方向がケース本体12の下面12aと直交する向きで電池ケース10の内部に配置されている(図3も参照)。積層電極体20は、積層方向(厚み方向X)の一方側の面(第1平坦面F1、図5の前側の面)と、他方側の面(第2平坦面、図5の後側の面(図示せず))と、を有する。第1平坦面F1は、ケース本体12の第1の長側面12b(図1参照)と対向する面であり、第2平坦面は、ケース本体12の第2の長側面12bと対向する面である。
【0032】
積層電極体20は、複数枚の正極と複数枚の負極との積層構造が積層方向(厚み方向X)に沿って露出した4つの端面E1~E4を有する。詳しくは、積層電極体20は、電池ケース10(具体的にはケース本体12)の下面12aに対向する下端面E1と、電池ケース10(具体的にはケース本体12)の上面12cに対向する上端面E2と、一対の封口板14にそれぞれ対向する右端面E3および左端面E4と、を有する。端面E1~E4は、積層方向(厚み方向X)において第1平坦面F1と第2平坦面との間に位置している。端面E1~E4は、積層電極体20の外周縁を構成している。
【0033】
下端面E1および上端面E2は、電池ケース10のXY面に沿って広がっている。下端面E1は、ケース本体12の下面12aに設けられたガス排出弁13と対向する部分P1を有する。上端面E2は、ガス排出弁13の鉛直方向上方に位置する部分P2を有する。部分P2は、平面視で部分P1と重なる部分であり、積層電極体20の部分P1と反対側の面に位置している。右端面E3および左端面E4は、電池ケース10のXZ面に沿って広がっている。右端面E3からは凸状の正極タブ23が突出している。左端面E4からは凸状の負極タブ24が突出している。
【0034】
積層電極体20の外表面には、第1平坦面F1(ケース本体12の第1の長側面12bと対向する面)と、第2平坦面(ケース本体12の第2の長側面12bと対向する面)とを架け渡すように、少なくとも1枚のテープtが貼り付けられている。テープtの配置(例えば、テープtの幅、種類、貼りつける位置、数等)は、ここに開示される技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、特に限定されない。下端面E1および上端面E2は、それぞれ、少なくとも1枚のテープtによって、少なくとも一部が覆われていることが好ましい。これにより、積層ずれを抑制して、積層構造を安定して保持しやすくなる。正極タブ23が突出する右端面E3、および負極タブ24が突出する左端面E4は、テープtで覆われていないことが好ましい。これにより、金属リチウム(デンドライト)の析出を抑制でき、長期に亘って高い充放電性能を発揮しやすくなる。
【0035】
テープtとしては、従来からこの種の用途に使用されているものと同じでよく、特に制限はない。テープtは、接着強度が高く、より耐熱性が高い方が、好ましい。テープtは、典型的には、材質が各種エンプラ(PET、PEN、PI、PPE等)、オレフィンフィルム(PE、OPP、TPX等)、PMMA、TAC、等のプラスチックフィルムや、プラスチックで両面や端部を被覆された金属フィルム等で構成され、その片面に接着層が配置された構成である。プラスチックフィルムのテープtの具体例としては、例えば、PTFEフィルムテープ、アセテートクロステープ、エポキシテープ、ガラスクロステープ、ビニールテープ、ポリイミドテープ、ポリエステルテープ等が挙げられる。また、金属フィルムのテープtとしては、金属部分がむき出しになったテープよりも、例えば、樹脂膜で被覆されたアルミニウム箔テープ、銅箔テープ、ステンレス箔テープ等が好ましく、金属部分は合金であってもよい。金属フィルムのテープtは、耐熱性に優れるが、切り欠きによる金属部分の露出による短絡が発生する可能性もある。そのため、金属フィルムのテープtを使用する場合は、テープtを張り付けた上に、金属フィルムの部分を完全に覆うように、さらにプラスチックフィルムのテープを貼りつけることが好ましい。金属フィルムのテープtは、金属部分(ステンレス箔等)の融点が1000℃以上である金属のものが好ましい。
【0036】
いくつかの実施形態において、テープtは、多孔質であることが好ましい。これにより、積層電極体20に対する非水電解液の浸透性を向上できる。ひいては、急速充放電等の電池特性を向上できる。よって、ここに開示される技術の効果と電池特性とをバランスできる。特に、下端面E1および上端面E2の少なくとも一方が全体的にテープtで覆われるような態様では、テープtが多孔質であることが好ましい。特に限定されるものではないが、テープtの空孔率は、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮する観点から、概ね50%未満が好ましく、例えば20~40%がより好ましい。一例において、テープtの空孔率は、セパレータの空孔率よりも小さいことがより好ましい。なお、テープtの空孔率(%)は、次の式:〔1-(見かけ密度/真密度)〕×100;から算出できる。上記真密度は、テープtの構成成分の密度と含有割合とに基づいて算出できる。上記見かけ密度は、テープtの重量と体積とから算出できる。
【0037】
図5では、下端面E1と上端面E2とに、それぞれ、少なくとも1枚のテープtが貼り付けられている。詳しくは、下端面E1には、複数(具体的には2枚)のテープt1、t2が貼り付けられている。テープt1、t2は、間隔をあけて、幅方向Yに沿って貼り付けられている。一方、上端面E2には、1枚のテープt3が貼り付けられている。複数のテープtは、上下非対称に貼り付けられている。本実施形態では、ガス排出弁13に向かってガスが流れるように(好ましくは、ガス排出弁13に向かってガス流れを誘導するように)、下端面E1と上端面E2とが、少なくとも1枚のテープtによって非対称に覆われている。
【0038】
図6は、積層電極体20におけるガス流れを模式的に示す斜視図である。なお、特に限定解釈されることを意図したものではないが、以降の図面では、コンピュータのシミュレーション結果に基づく、積層電極体20内で発生したガスの流れを矢印で示している。矢印の太さはガスの量に比例し、矢印が太い方ほどガス量が多いことを示す。また、矢印の長さはガスの速さに比例し、矢印が長い方ほどガス流れが速いことを示す。図6に示すように、本実施形態によれば、積層ずれを防止しつつ、積層電極体20内で発生したガスのガス流れをガス排出弁13に向かって誘導しやすくなる。これにより、発生したガスがガス排出弁13から安定して外部に排出されやすくなる。よって、電池ケース10が予期せぬところで開裂することを抑制できる。
【0039】
図5において、上端面E2に貼付されているテープt3の幅方向Yの長さWbは、下端面E1に貼付されているテープt1、t2の長さWaよりも長い(すなわち、Wa<Wb)。いくつかの実施形態において、上端面E2のうち、テープt3で覆われている面積Anは、下端面E1のうち、テープt1、t2で覆われている面積Amよりも大きいことが好ましい(すなわちAm<An)。これにより、積層電極体20内で発生したガスが、ケース本体12の下面12aに設けられたガス排出弁13に向かって誘導されやすくなる。その結果、発生したガスがガス排出弁13から安定して外部に排出されやすくなる。また、電池ケース10が任意の個所で開裂することをより高いレベルで抑制できる。
【0040】
図5において、上端面E2のうち、ガス排出弁13の鉛直方向上方に位置する部分P2は、テープt3で覆われている。いくつかの実施形態において、上端面E2のうち、ガス排出弁13の鉛直方向上方に位置する部分P2は、テープtで覆われていることが好ましい。これにより、積層電極体20内で発生したガスが、部分P2のテープtにあたって、下方に向かう気流が生じやすくなる。その結果、発生したガスがガス排出弁13から安定して外部に排出されやすくなる。また、電池ケース10が任意の個所で開裂することをより高いレベルで抑制できる。
【0041】
図5において、下端面E1のテープt1、t2は、ガス排出弁13と対向する部分P1をあけて、貼り付けられている。すなわち、ガス排出弁13と対向する部分P1は、テープtで覆われていない。いくつかの実施形態において、下端面E1は、ガス排出弁13と対向する部分P1がテープtで覆われていないことが好ましい。これにより、積層電極体20内で発生したガスが、ガス排出弁13から外部に排出されやすくなる。
【0042】
図5において、下端面E1は、ガス排出弁13と対向する部分P1を除いた全体が、テープt1、t2で覆われている(人為的ないし機械的な誤差等は許容しうる)。上端面E2のテープt3は、幅方向Yに沿って上端面E2と略同じ長さで貼り付けられている。上端面E2は、全体がテープt3で覆われている(人為的ないし機械的な誤差等は許容しうる)。いくつかの実施形態において、下端面E1のうち、ガス排出弁13と対向する部分P1は、テープtで覆われておらず、かつ、ガス排出弁13と対向しない部分(ガス排出弁13と対向する部分P1を除いた非対向部分)の、幅方向Y(電池ケース10の長側面12bに沿う方向)の長さを100%としたときに、10%以上の長さがテープtで覆われていることが好ましい。これにより、積層電極体20内で発生したガスがガス排出弁13に向かって誘導されやすくなる。したがって、電池ケース10が任意の個所で開裂することを高いレベルで抑制できる。
【0043】
非対向部分全体のうちテープtで覆われている長さは、20%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましい。またこの場合、上端面E2は、テープtで覆われている幅方向Yの割合が下端面E1のうちガス排出弁13と対向しない部分よりも大きいことが好ましく、幅方向Yの全体長さの30%以上(特には40%以上)がテープtで覆われていることがより好ましい。
【0044】
また、いくつかの実施形態において、下端面E1は、ガス排出弁13と対向する部分P1を除いた全体が少なくとも1枚のテープtで覆われていることが好ましい。また、上端面E2は、全体が少なくとも1枚のテープtで覆われていることが好ましい。これにより、積層電極体20内で発生したガスが、特にガス排出弁13に向かって誘導されやすくなる。したがって、電池ケース10が任意の個所で開裂することを特に高いレベルで抑制できる。
【0045】
図5において、上端面E2に貼付されているテープt3は、第1平坦面F1(ケース本体12の第1の長側面12bと対向する面)側まで(下方に)延びている。図示は省略するが、テープt3は、第2平坦面(ケース本体12の第2の長側面12bと対向する面)側にも同じように延びている。また、下端面E1に貼付されているテープt1、t2は、第1平坦面F1(ケース本体12の第1の長側面12bと対向する面)側まで(上方に)延びている。図示は省略するが、テープt1、t2は、第2平坦面(ケース本体12の第2の長側面12bと対向する面)側にも同じように延びている。上端面E2に貼付されているテープt3の第1平坦面F1に沿って延びる(上下方向Zの)長さLtは、ここでは下端面E1に貼付されているテープt1、t2の第1平坦面F1に沿って延びる(上下方向Zの)長さLsと同じ(人為的ないし機械的な誤差等は許容しうる)である。
【0046】
ただし、いくつかの実施形態において、上端面E2に貼付されているテープtは、第1平坦面F1に沿って延びる長さLtが、下端面E1に貼付されているテープtの第1平坦面F1に沿って延びる長さLsよりも長いことが好ましい(すなわちLs<Lt)。上端面E2側のテープtの長さを長くすること、つまりガス排出弁13から遠い位置の第1平坦面F1部分にテープtを貼ることで、その部分が厚くなる。これにより、テープtの貼付された部分の反力が高まり、当該部分が大きな圧力を受けうる。その結果、積層電極体20内で発生したガスが上方に抜けにくくなり、下方のガス排出弁13に向かって誘導されやすくなる。したがって、電池ケース10が任意の個所で開裂することをより高いレベルで抑制できる。なお、上端面E2および/または下端面E1に複数枚のテープtが貼付されている場合は、複数のテープtの長さの算術平均値が上記を満たすことが好ましい。
【0047】
また図5では、下端面E1のテープt1、t2は、ガス排出弁13と対向する部分P1をあけて、貼り付けられていたが、ガス排出弁13と対向する部分P1の一部または全部はテープtで覆われていてもよい。その場合、いくつかの実施形態において、下端面E1のガス排出弁13と対向する部分P1は、ガス排出弁13の中心部と対向する部分を除いてテープtで覆われていることが好ましい。また、上端面E2のうち、ガス排出弁13の中心部の鉛直方向上方に位置する部分は、テープtで覆われていることが好ましい。このように、下端面E1のガス排出弁13と対向する部分P1のうち一部がテープtで覆われていることで、テープtで覆われていない部分(ガス排出弁13の中心部と対向する部分)にガスが集中し、ガスの勢いが増すため、ガス排出弁13が早期に開弁されやすくなる。よって、電池ケース10が任意の個所で開裂することをより高いレベルで抑制できる。なお、本明細書において「ガス排出弁13の中心部」とは、中心Cおよびその周縁部(ガス排出弁13の面積全体を100としたときに、中心Cから概ね70%以内、好ましくは30%以内、さらに好ましくは10%以内の面積の範囲)をいう。
【0048】
また図5では、下端面E1と上端面E2とにそれぞれ別々のテープtが貼付されていたが、積層電極体20に貼り付けられるテープtは1枚であってもよい。いくつかの実施形態において、積層電極体20の外周面には、下端面E1のうちガス排出弁13と対向する部分P1を除いて、テープtが1周以上巻きつけられていることが好ましい。これにより、下端面E1のうちガス排出弁13と対向する部分P1を除く全体と、上端面E2の全体と、第1平坦面F1と、第2平坦面とが、テープtで一度に覆われるので、テープtを貼り付ける際の作業性を向上できる。また、第1平坦面F1および第2平坦面に段差が生じにくくなり、面圧を均質化できる。ひいては、充放電時の反応ムラを抑制できる。
【0049】
非水電解液は、積層電極体20と共に電池ケース10の内部に収容されている。非水電解液は、一般的な非水電解液二次電池と同様でよく、特に制限はない。非水電解液は、非水溶媒と支持塩とを含む非水系の液状電解質である。非水溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)等のカーボネート類を含んでいる。非水溶媒は、EC、EMC、DMCを、合計比率が100%になるように、それぞれ1~99%の範囲内で混合したものが好ましい。支持塩は、例えばフッ素含有リチウム塩である。フッ素含有リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)や、LiFSIと呼ばれるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(FLiNO)、またはそれらを混合したものを含むことが好ましい。支持塩の濃度は、非水溶媒1Lあたり0.6~1.8molとすることが好ましい。ただし、他の実施形態において、非水電解質は固体状(固体電解質)で、積層電極体20と一体化されていてもよい。
【0050】
電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0051】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に限定することを意図したものではない。
【0052】
<電池の構築>
まず、各例につき、ガス排出弁を有する電池ケースを用意した。なお、ガス排出弁の位置および個数は、表1および図6図16に示す通りである。なお、例6,7-1,7-2,8-1の電池ケースは、図4(A)に示すような形状の(ガス排出弁の中心Cが電池ケースの下面の重心Gと重なる)ガス排出弁を備え、例8-2の電池ケースは、図4(B)に示すような形状の(ガス排出弁の中心Cが電池ケースの下面の重心Gからずれた位置にある)ガス排出弁を備えている。
【0053】
次に、積層電極体を用意し、表1に記載の条件で積層電極体の外周面にテープを貼り付けて積層構造を固定した。なお、このとき、表1で「ガス排出弁対向部分のテープ有無」が「無」となっている例については、下端面のうち、ガス排出弁と対向する部分にテープを貼り付けないようにした。また、表1で「ガス排出弁の鉛直方向上方部分のテープ有無」が「有」となっている例については、上端面のうち、ガス排出弁の鉛直方向上方部分にテープを貼り付け、テープで覆うようにした。図6図16には、各例におけるガス排出弁とテープの位置関係を示している。そして、積層電極体を電池ケースに収容し、さらに電池ケース内に非水電解液を注入して、図3に示すような角形電池を試作した。
【0054】
<電池の評価>
試作した電池を放電状態として、両側の長側面から、断熱材や弾性体を介して厚み3cmのアルミニウム製の金属ブロックで挟み込み、0.1~1MPaで定圧拘束した。なお、金属ブロックの中央(電池の長側面の重心(中央)の位置)には、釘を挿通可能なΦ数mmの穴があいている。この穴は、釘径に対して、+1~2mm程度の穴径である。例えば、釘径が3mmの場合であれば、穴径は、3.1~3.2mm程度の大きさである。次に、金属ブロックで挟み込んだ電池を満充電(SOC100%)まで充電した。そして、以下の手順で釘刺し試験を行った。
【0055】
釘刺し試験では、所定の釘を金属ブロックの中央にあいた穴から刺し、電池を強制的に短絡させて、電池の温度を上昇させた。なお、試験温度は、室温(25℃程度)とした。また、釘の種類は、株式会社ダイドーハント製丸釘SIZE:N65(φ3mm/形状は選択角度規定なし)を使用した。また、釘刺しの速度は1mm/sとし、電池が熱暴走状態になったときに停止させた。
【0056】
そして、熱暴走後の電池の形態変化を、ランク1から7の8つのランクで評価した。各ランクにおける電池の形態変化は、以下の通りである。結果を、表1に示す。
・ランク1:ガス排出弁が開弁のみで、電池ケースに変化がない状態
・ランク2:ガス排出弁の開弁と、その周辺のみに開裂があるが、それ以外の電池ケースに変化がない状態
・ランク3:ガス排出弁の開弁と、その周辺と、他電池ケースに開裂が3か所以内あるが、両端子部には開裂がない状態
・ランク4:ガス排出弁の開弁と、その周辺と、他電池ケースに開裂が4~9か所あるが、両端子部には開裂がない状態
・ランク5:ガス排出弁の開弁と、その周辺と、他電池ケースに開裂が10か所以上あり、さらに両端子部にも開裂がある状態
・ランク6:ガス排出弁の開弁と、その周辺と、他電池ケースに開裂が10か所以上あり、さらに両端子部にも開裂あり、かつ一方の端子部の面が電池ケースより分離した状態
・ランク7:ガス排出弁の開弁と、その周辺と、他電池ケースに開裂が10か所以上あり、さらに両端子部にも開裂あり、かつ一方の端子部の面が電池ケースより分離した状態であって、内容物のうち70wt%以上が電池ケースから外部に飛散した状態(比較例)
【0057】
【表1】
【0058】
まず、表1の比較例1、2と、比較例3-1~3-3を比較する。比較例1は、ガス排出弁を電池ケースの上面に設けた例である。比較例2は、ガス排出弁を電池ケースの両側面(具体的には一対の封口板)にそれぞれ設けた例である。比較例1、2は、いずれも、熱暴走後の電池の形態変化が最も大きく、ランク7(最低ランク)の状態を呈していた(図7(A)、(B)のガス流れ(矢印)も参照)。特に限定解釈されることを意図したものではないが、この理由として、ガス排出弁が電池ケースの上面または側面に設けられている場合、熱暴走時に発生したガスが冷やされにくいため、ガス温度が高いおよび/またはガス圧が高い状態のままとなり、電池ケースの開裂や内容物の外部への飛散が生じたことが考えられた。
【0059】
比較例3-1~3-3は、ガス排出弁を電池ケースの下面に設けた例である。比較例3-1~3-3は、比較例1、2に比べて相対的に熱暴走後の電池の形態変化が抑えられ、ランク5~6の状態を呈していた(図8(A)-(C)のガス流れ(矢印)も参照)。特に限定解釈されることを意図したものではないが、この理由として、熱暴走時に発生したガスが電池ケースの下面と接触して冷やされ、ガス温度やガス圧力の上昇が抑制されたことが考えられる。しかし、両端子部にも開裂が認められたことから、ここに開示される技術の効果が充分とは言えなかった。
【0060】
また、比較例3-1、3-2は、ガス排出弁が電池ケースの下面の重心Gと重なっていない例である。比較例3-3は、ガス排出弁が電池ケースの下面の重心Gと重なっている例である。比較例3-1~3-3のなかでは、比較例3-3で熱暴走後の電池の形態変化が最も抑えられていた。特に限定解釈されることを意図したものではないが、この理由として、比較例3-1、3-2では、電池内でガス量の分布が生じ、ガス圧の偏りによって電池ケースのガス排出弁以外のところ、特に弁が2つの場合では弁間が、弁が1つの場合では弁周辺が開裂しやすくなり、そこを中心に電池ケースの各箇所が開裂したことが考えられる。一方、比較例3-3では、電池内でのガス量の分布が相対的に生じにくく、ガス圧の偏りが小さかったため、電池ケースのガス排出弁以外の個所で開裂が起こりにくかったことが考えられる。
【0061】
次に、表1の例2-1、2-2と、比較例3-3を比較する。例2-1は、下端面E1と上端面E2とにテープが上下非対称に貼り付けられていること以外、比較例3-3と同様である。例2-1は、比較例3-3に比べて、さらに熱暴走後の電池の形態変化が抑えられており、ランク4の状態を呈していた(図9(A)のガス流れ(矢印)も参照)。また、例2-2は、上端面のうちガス排出弁の鉛直方向上方がテープで覆われていること以外、例2-1と同様である。例2-2は、例2-1に比べて、さらに熱暴走後の電池の形態変化が抑えられており、ランク3の状態を呈していた(図9(B)のガス流れ(矢印)も参照)。特に限定解釈されることを意図したものではないが、この理由として、発生したガスが、ガス排出弁の鉛直方向上方のテープにあたって下方に流れやすくなったことが考えられる。
【0062】
次に、表1の例3-1、3-2を比較する。例3-1、3-2は、上端面に例2-1、2-2よりも幅広のテープの幅を貼り付け、上端面に貼付されているテープの幅を下端面に貼付されているテープの幅よりも大きくした例である。なお、例3-1では、ガス排出弁と対向する部分がテープで覆われていないのに対して、例3-2では、ガス排出弁と対向する部分がテープで覆われている。例3-2は、例3-1に比べて、相対的に熱暴走後の電池の形態変化が抑えられており、ランク3の状態を呈していた(図10(A)、(B)のガス流れ(矢印)も参照)。
【0063】
次に、表1の例4-1、4-2を比較する。例4-1、4-2は、上端面で、例2-1、2-2よりもテープを積層方向に長めに貼付した例である。例4-2は、例4-1に比べて、相対的に熱暴走後の電池の形態変化が抑えられており、ランク3の状態を呈していた(図11(A)、(B)のガス流れ(矢印)も参照)。特に限定解釈されることを意図したものではないが、この理由として、発生したガスが、ガス排出弁の鉛直方向上方のテープにあたって、下方に流れやすくなったことが考えられる。
【0064】
次に、表1の例5は、下端面のうち、ガス排出弁と対向する部分を除いた全体がテープで覆われ、かつ、上端面の全体がテープで覆われている例である。例5では、これまでの実施例と比較しても、熱暴走後の電池の形態変化が特に高いレベルで抑えられ、良好な結果(ランク1)となった(図6のガス流れ(矢印)も参照)。
【0065】
次に、表1の例6~8-2を比較する。例6は、R1(ガス排出弁の中心Cから外縁までの長さに対するテープの貼られてない部分の長さの割合)が150%であり、例7-1、7-2は、R1が20%であり、例8-1、8-2は、R1が50%である。例7-1、7-2では、例6や例8-1,8-2に比べて、相対的に熱暴走後の電池の形態変化が抑えられており、ランク1または2の状態を呈していた(図12図13(A)、(B)、図14(A)、(B)のガス流れ(矢印)も参照)。特に限定解釈されることを意図したものではないが、この理由として、R1の割合が小さいほど、テープで覆われていない部分にガスが集中し、噴出ガスの勢いが増したことで、ガス排出弁を早期に開弁させることができたことが考えられる。
【0066】
また、例7-2は、下端面および上端面がテープでより広く覆われていること以外、例7-1と同様である。例7-2では、例7-1に比べて、熱暴走後の電池の形態変化が特に高いレベルで抑えられ、良好な結果(ランク1)となった。特に限定解釈されることを意図したものではないが、この理由として、発生したガスがガス排出弁にあたる勢いが大きくなり、ガス排出弁周辺の圧力が急速に高まることで、ガス排出弁を早期に開弁させることができたことが考えられる。
【0067】
また、例8-2は、ガス排出弁の中心Cが電池ケースの下面の重心Gからずれていること以外、例8-1と同様である。例8-2は、熱暴走後の電池の形態変化が例8-1と同ランク(ランク3)であったことから、ガス排出弁が電池ケースの下面の重心Gと重なる位置に設けられていれば、ガス排出弁の中心Cと電池ケースの下面の重心Gとが一致していなくても、同等の効果が得られることがわかった。
【0068】
次に、表1の例9~11を例5と比較する。例9は、電極体にテープを1周以上巻き付けた例である。例9は、熱暴走後の電池の形態変化が例5と同ランク(ランク1)であったことから、1枚のテープによっても、下端面のうち、ガス排出弁と対向する部分を除いた全体がテープで覆われ、かつ、上端面の全体が、テープで覆われていれば、同等の効果が得られることがわかった(図15(A)のガス流れ(矢印)も参照)。また、テープの空孔率が異なる例9(空孔率0%)と、例10(空孔率20%)、例11(空孔率40%)の比較から、テープの空孔率が低いほど、熱暴走後の電池の形態変化が高いレベルで抑えられていた(図15(B)、(C)のガス流れ(矢印)も参照)。この理由としては、テープに空孔があると、そこからガスが漏れるため、ガス排出弁方向へのガスの誘導性が低下したことが考えられる。
【0069】
次に、表1の例12、13を例2-2と比較する。例12は、上端面におけるテープの被覆率が、例2-2(26%)よりも大きい(43%の)例である。例12と例2-2の比較から、上端面におけるテープの被覆率が大きいほど、熱暴走後の電池の形態変化が高いレベルで抑えられていた(図16(A)のガス流れ(矢印)も参照)。また、例13は、下端面のうちガス排出弁と対向しない部分(非対向部分)のテープ被覆率が、例2-2(22%)よりも小さい(11%)例である。例13は熱暴走後の電池の形態変化が例2-2と同ランク(ランク3)であったことから、非対向部分のテープ被覆率が10%以上であれば、同等の効果が得られることがわかった(図16(B)のガス流れ(矢印)も参照)。
【0070】
以上、ここに開示される技術の実施形態について説明した。しかし、上述の説明は例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、上述の説明にて例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0071】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:複数枚の正極と複数枚の負極とを有する積層電極体と、非水電解質と、上記積層電極体および上記非水電解質を収容する電池ケースと、を備え、上記電池ケースは、少なくとも、下面と、上記下面の一対の縁辺からそれぞれ延び、相互に対向する一対の側面と、上記下面に対向する上面と、を有し、上記下面には、ガス排出弁が設けられており、上記積層電極体は、上記電池ケースの一対の側面にそれぞれ対向する一対の平坦面と、上記正極と上記負極との積層構造が露出した端面であって、上記電池ケースの上記下面に対向する下端面および上記電池ケースの上記上面に対向する上端面と、を有し、上記積層電極体には、上記一対の平坦面を架け渡すように少なくとも1枚のテープが貼り付けられており、上記積層電極体の上記下端面と上記上端面とは、上記ガス排出弁に向かってガスが流れるように、上記テープによって非対称に覆われている、非水電解質二次電池。
項2:上記ガス排出弁は、上記電池ケースの上記下面の重心と重なる位置に設けられている、項1に記載の非水電解質二次電池。
項3:上記上端面のうち上記テープで覆われている面積は、上記下端面のうち上記テープで覆われている面積よりも大きい、項1または2に記載の非水電解質二次電池。
項4:上記上端面のうち、上記ガス排出弁の鉛直方向上方に位置する部分は、上記テープで覆われている、項1から3のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池。
項5:上記上端面と上記下端面とに、それぞれ、少なくとも1枚の上記テープが貼り付けられており、上記上端面に貼り付けられている上記テープは、上記電池ケースの上記第1平坦面に沿って延びる長さが、上記下端面に貼り付けられている上記テープよりも長い、項1から4のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池。
項6:上記下端面は、上記ガス排出弁と対向する部分を除いた全体が上記テープで覆われており、かつ、上記上端面は、全体が上記テープで覆われている、項1から5のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池。
項7:上記下端面の上記ガス排出弁と対向する部分は、上記ガス排出弁の中心部と対向する部分を除いて上記テープで覆われており、上記上端面のうち、上記ガス排出弁の上記中心部の鉛直方向上方に位置する部分は、上記テープで覆われている、項1から5のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池。
項8:上記積層電極体の外周面には、上記下端面のうち上記ガス排出弁と対向する部分を除いて、上記テープが1周以上巻きつけられている、項1から5のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池。
項9:上記テープは、多孔質である、項1から8のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池。
項10:上記下端面のうち、上記ガス排出弁と対向する部分は、上記テープで覆われておらず、かつ、上記ガス排出弁と対向しない部分の、上記電池ケースの上記側面に沿う方向の長さを100%としたときに、10%以上の長さが上記テープで覆われている、項1から5のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池。
【符号の説明】
【0072】
10 電池ケース
12 ケース本体
12a 下面
12b 長側面
13、113、213、313 ガス排出弁
14 封口板
20 積層電極体
E1 下端面
E2 上端面
F1 第1平坦面
P1 ガス排出弁と対向する部分
t テープ
100 電池(非水電解質二次電池)
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