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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140852
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20250919BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20250919BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250919BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20250919BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20250919BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20250919BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20250919BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20250919BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M50/133
H01M50/103
H01M10/0587
H01G11/82
H01G11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040456
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H028
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AA15
5E078AB06
5E078AB13
5E078BA26
5E078BA38
5E078HA05
5E078HA12
5E078HA21
5E078HA23
5H011AA01
5H028AA07
5H028CC02
5H028CC12
5H028HH05
5H029AJ11
5H029AL03
5H029AL11
5H029AM01
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029DJ02
5H050AA14
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB11
5H050DA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】充放電に伴う電極体の膨張に対し、信頼度が高い二次電池を提供する。
【解決手段】ここで開示される二次電池は、長尺なシート状の正極22と長尺なシート状の負極24とが、セパレータ26を介在させつつ捲回された扁平形状の捲回電極体20と、前記捲回電極体20を収容する電池ケース10と、を備える。捲回電極体20は、捲回軸と電池ケース10の高さ方向とが略垂直となるように該電池ケース10内に収容されている。電池ケース10は、底面11aと、該底面11aに対向する封口板11d、該底面11aと封口板11dとの間にある側面とから構成されている。該側面は、ケース10内部に収容される前記捲回電極体20の扁平面に対向する2つの平坦面11bと、前記捲回電極体20の捲回軸方向の2つの端部にそれぞれ対向する2つの曲面11cとを備えている。該2つの曲面11cは、いずれも電池外方側が凸面となる曲面を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なシート状の正極と長尺なシート状の負極とが、セパレータを介在させつつ捲回された扁平形状の捲回電極体と、
前記捲回電極体を収容する電池ケースと、
を備える二次電池であって、
前記捲回電極体は捲回軸と前記電池ケースの高さ方向とが略垂直となるように該電池ケース内に収容されており、
前記電池ケースは、底面と、該底面に対向する封口板と、該底面と封口板との間にある側面とから構成されており、
該側面は、ケース内部に収容される前記捲回電極体の扁平面に対向する2つの平坦面と、前記捲回電極体の捲回軸方向の2つの端部にそれぞれ対向する2つの曲面とを備えており、
該2つの曲面は、いずれも電池外方側が凸面となる曲面を構成する、
二次電池。
【請求項2】
前記曲面の少なくとも一部の肉厚は、前記平坦面の肉厚よりも薄い、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記負極は、負極活物質としてSiまたはSi化合物を含む、請求項1または2に記載の二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、充放電を繰り返すことにより電極体の膨張が起こり、電池ケースが破損し得る。そこで、電極体の膨張を見込み、電池缶内部の容積を増加させるために、電池缶の板厚を薄くした場合、深絞り成型時に徐々に角部が脆くなり、電池缶の成型が困難になる。
この種の先行技術として、例えば特許文献1には、電極体の膨張を、電池ケース中央部の板厚の薄い部分で吸収し、電池ケースの破損を防止する二次電池が記載されている。
また、特許文献2には、電池の高さ方向に向けた曲面を、封口板に設けることで、電極体の膨張に伴う電池ケースの破損を防止する二次電池が記載されている。
また、特許文献3には、電池ケース側面に凹部を設けることで、電極体の膨張に伴う電池ケースの破損を防止する二次電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-338992号公報
【特許文献2】特開2005-294012号公報
【特許文献3】特開2017-22057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池の高容量化の観点から、負極活物質としてSiまたはSi化合物を使用する二次電池の開発が進んでいる。しかし、負極活物質としてSiまたはSi化合物を使用する場合、黒鉛等の他の負極活物質を使用する場合と比較して、上記二次電池の充放電に伴う電極体の膨張が著しく生じる。このため、二次電池においては、電極体の膨張に対する信頼度の更なる向上が求められている。
【0005】
本開示は係る事情に鑑みてなされたものであって、その主な目的は、充放電に伴う電極体の膨張に対し、信頼度が高い二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく、ここに開示される二次電池は、長尺なシート状の正極と長尺なシート状の負極とが、セパレータを介在させつつ捲回された扁平形状の捲回電極体と、上記捲回電極体を収容する電池ケースとを備える。上記捲回電極体は捲回軸と上記電池ケースの高さ方向とが略垂直となるように上記電池ケース内に収容されている。上記電池ケースは、底面と、該底面に対向する封口板と、該底面と封口板との間にある側面とから構成されている。上記側面は、ケース内部に収容される上記捲回電極体の扁平面に対向する2つの平坦面と、上記捲回電極体の捲回軸方向の2つの端部にそれぞれ対向する2つの曲面とを備えている。上記2つの曲面は、いずれも電池外方側が凸面となる曲面を構成する。
【0007】
上記構成の二次電池によると、電池ケースが電極体の膨張に対し追従し変形し、さらに、上記2つの曲面により電池ケース内に生じる空間が、電極体の膨張を吸収することで、電池ケースの破損の防止を実現する。
【0008】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、上記曲面の少なくとも一部の肉厚は、上記平坦面の肉厚よりも薄い。これにより、上述する、電極体膨張時における、電池ケースの変形を促進させることができ、電池ケースの破損を好適に抑制することができる。
【0009】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、上記負極は、負極活物質としてSiまたはSi化合物を含む。これにより、高容量化の観点から、高性能な二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る二次電池を模式的に示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る電池ケースを模式的に示す斜視図である。
図3】一実施形態に係る電極体の構成を示す模式図である。
図4】一実施形態に係る二次電池を模式的に示す上面図である。
図5】一実施形態に係る二次電池の電極体膨張に伴う、電池ケースの膨張を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、ここに開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここに開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、本明細書で説明する図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さなど)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
【0012】
本明細書において「二次電池」とは、正負極間の電荷担体の移動に伴って繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、リチウムイオンキャパシタ(LIC)等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。以下、本開示に係る二次電池の主要な各構成材料について説明する。なお、ここに記さない二次電池の構成材料については、従来公知のものを使用することが可能である。
【0013】
(1)一実施形態に係る二次電池の全体構成
図1は、一実施形態に係る二次電池100の斜視図である。図2は一実施形態に係る電池ケースを模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、本二次電池100は、後述する電池ケース10と、該ケース内部に収容される電極体20(図示せず)とから構成されている。
電池ケース10は、外装体11の開口11hの周縁に封口板11dが接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。外装体11は、底面11aと、底面11aに対向する封口板11dと、底面11aと封口板11dとの間にある側面11b,11cとから構成されている。
封口板11dには、注液孔15と、ガス排出弁17と、2つの端子引出孔(図示せず)と、が設けられている。注液孔15は、外装体11に封口板11dを組み付けた後に電解液を注液するためのものである。注液孔15は、封止部材16により封止されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。
2つの端子引出孔は、封口板11dの長辺方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子引出孔は封口板11dを上下方向Zに貫通している。端子引出孔は、それぞれ、封口板11dに取り付けられる前の(かしめ加工前の)の正極端子30および負極端子40を挿通可能な大きさの内径を有する。
【0014】
(2)電池ケース
図2に示すように、電池ケース10は、電極体20(図示せず)を収容する筐体である。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。
【0015】
後述する、電極体の膨張に追従する、電池ケースの変形を促進させる観点から、電池ケース10の部材のヤング率は、220GPa以下が好ましく、100GPa以下がより好ましく、70GPa以下が特に好ましい。
【0016】
電池ケース10は、底面11aと、底面11aに対向する封口板11dと、底面11aと封口板11dとの間にある側面11b、11cとから構成されている。側面11b,11cは、ケース部に収容される電極体20(図示せず)の扁平面に対向する2つの平坦面11bと、電極体20(図示せず)の捲回軸方向の2つの端部にそれぞれ対向し、電池外方側が凸面となる2つの曲面11cとを備える。本開示において、曲面の面積を表す指標としてR値を用いる。R値は、図4に示す電池の上面図と、以下の式より算出することができる。

R={(w/2)+h}/2h
R:R値
w:曲面全体を構成する弧ABに対する弦ABの長さ
h:弧ABから弦ABに対する垂線の最大距離

hを一定とした場合、R値が大きくなる(wが大きくなる)ほど、曲面の面積は大きくなる。電池ケース10の側面11cに曲面を設けることで電池ケース10内に生じる空間により、電極体20の膨張を吸収する観点から、上記曲面のR値(h=5のとき)は、5.0以上が好ましく、6.5以上がより好ましく、8.0以上が特に好ましい。また、曲面を過剰に設けることで、上記空間が余剰スペースとなることを防止する観点から、R値の値(h=5のとき)は12.0以下が好ましく、11.0以下がより好ましく、10.0以下が特に好ましい。
【0017】
上記2つの曲面のうち、少なくとも一つの肉厚は、上記平端面の肉厚より薄く形成されている。後述する、電極体20の膨張に追従する、電池ケース10の変形を促進させる観点から、曲面11cの肉厚と平坦面11bの肉厚との比は、0.9以下が好ましく、0.85以下がより好ましく、0.8以下が特に好ましい。他方、側面11cの肉厚を過剰に薄くすることで、電池ケース10の強度不足となることを防止する観点から、上記曲面の肉厚と平坦面11bの肉厚との比は、0.2以上が好ましく、0.25以上がより好ましく、0.3以上が特に好ましい。
【0018】
(2)捲回電極体
図3は、一実施形態に係る電極体の構成を示す模式図である。電極体20は、正極22および負極24を有する。電極体20は、ここでは、帯状の正極22と帯状の負極24とが帯状のセパレータ26を介して積層され、捲回軸WLを中心として捲回されてなる扁平形状の捲回電極体である。
【0019】
正極22は、図3に示すように、正極芯体22cと、正極芯体22cの少なくとも一方の表面上(ここでは両面)に形成された正極活物質層22aを有する。
【0020】
正極芯体22cは、帯状である。正極芯体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極芯体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
【0021】
正極活物質層22aは、図3に示すように、帯状の正極芯体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質を含んでいる。正極活物質としては、少なくともNi、Co、Mnのうち少なくとも一種を含むことが好ましく、例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物が使用され得る。正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばカーボンブラック(例えばアセチレンブラック(AB))等の炭素材料を使用し得る。バインダとしては、例えばPVdF等を使用し得る。
【0022】
図3に示すように、複数の正極タブ22tは、電極体20の長辺方向Yの端部から突出している。また、複数の正極タブ22tは、帯状の正極22の長手方向に沿って間隔を置いて設けられている。タブの形状は、ここでは矩形状としているがその他種々の形状(例えば、台形状)等とすることもできる。正極タブ22tの少なくとも一部には、正極活物質層22aが形成されずに、正極芯体22cが露出した領域が形成される。
【0023】
負極24は、図3に示すように、負極芯体24cと、負極芯体24cの少なくとも一方の表面上(ここでは両面)に形成された負極活物質層24aと、を有する。
【0024】
負極芯体24cは、帯状である。負極芯体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極芯体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0025】
負極活物質層24aは、帯状の負極芯体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料、Si、SiO等のSi化合物)を含んでいる。Si化合物としては、SiO(0.05<x1.95)で表される酸化ケイ素、LiSi(x、y、zは独立して0≦x、y、z≦1を満たす)で表されるリチウムシリコン酸化物、Li21Siで表されるリチウム含有リチウム-ケイ素合金などを使用し得る。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。
【0026】
上記負極活物質として特にSiまたはSi化合物を使用する場合、単位面積当たりの電荷担体(リチウムイオン等)の挿入/脱離量が多いことから、高容量化を実現する、高性能な二次電池を提供することが可能となる。負極活物質としてSiまたはSi化合物を使用した場合、電荷担体(リチウムイオン等)の挿入/脱離に伴う体積変化が大きいことから、充放電に伴う電極体の膨張が著しく起こり、結果として電池ケースの破損が生じやすい。しかし、本開示にかかる二次電池は、充放電に伴う電極体の膨張に伴う電池ケースの破損の防止を実現するため、負極活物質としてSiまたはSi化合物を使用することができる。
【0027】
図3に示すように、複数の負極タブ24tは、電極体20の長辺方向Yの端部から突出している。また、複数の負極タブ24tは、帯状の負極24の長手方向に沿って間隔を置いて設けられている。タブの形状は、ここでは矩形状としているがその他種々の形状(例えば、台形状)等とすることもできる。負極タブ24tの少なくとも一部には、負極活物質層24aが形成されずに、負極芯体24cが露出した領域が形成される。
【0028】
セパレータ26は、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔性の樹脂シートが好適である。また、セパレータ26は、上記樹脂シートの表面に、無機フィラーを含む耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)が設けられていてもよい。無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、チタニア等を使用し得る。また、セパレータ26の片側又は両側の表面に、接着層が設けられていることが好ましい。接着層は、接触する正極活物質層又は負極活物質層との接着性を向上させる。接着層は、接着成分として、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含有する。また、接着層は、アルミナ、ベーマイト等の無機粒子を含み得る。接着層は、上記樹脂シートの表面に設けられてもよく、HRLの表面に設けられてもよい。
【0029】
≪電極体の膨張≫
上述したように、この種の二次電池では、充放電に伴い、電池ケース内部に収容した電極体の膨張が起こり得る。ここで過度な膨張は、結果として、電池ケースの破損が生じ得る。
【0030】
特に負極活物質としてSiまたはSi化合物を使用した場合、電荷担体(リチウムイオン等)の挿入/脱離に伴う体積変化が大きいため、上記二次電池の充放電に伴う電極体の過度な膨張が他の種類(例えば黒鉛)の負極活物質を使用した場合よりも起こりやすい。
【0031】
上記二次電池の充放電に伴う電極体の過度な膨張が起こる際、捲回電極体の扁平面から電池外方側へと向けた方向への膨張の度合いが相対的に大きく、湾曲面から電池外方側と向けた方向への膨張の度合いが相対的に小さい。
そこで、ここで開示される二次電池に用いられる電池ケースでは、後述するような工夫が施されている。
【0032】
≪電池ケース破損の抑制≫
以下、本開示にかかる電極体の膨張による電池ケースの破損抑制の原理について、従来の電池と比較を行いつつ説明する。
【0033】
(1)捲回電極体の収容向き
一実施形態に係る二次電池では、捲回電極体20の捲回軸WLと、電池ケース10の高さ方向とが、略垂直となるように、捲回電極体20は電池ケース10内に収容されている。すなわち、電池ケース10の平坦面11bと捲回電極体20の扁平面とが対向し、且つ、電池ケース10の側面11b,11cの有する2つの曲面11c側に、捲回電極体20の正極22および負極24が来るように、捲回電極体20が収容されている。
なお、本明細書および請求項中において「高さ方向」とは、封口板11dを含めた六面体形状の電池ケース10の底面11aから側面11b,11cが立ち上がる方向(即ち図2中のZ方向)を示しており、重力の方向(鉛直方向)に限定されない。例えば二次電池100(電池ケース10)を一方の平坦面11bが重力方向の下(底)となるように配置した場合、ここでいう高さ方向は、重力方向と交差する水平方向と同様になることに留意されたい。
【0034】
従来の二次電池では、捲回電極体の捲回軸と、この種の六面体電池ケースの高さ方向とが、略平行となるように、捲回電極体は電池ケース内に収容されているものもある。該電極体の収容態様では、本開示に係る二次電池と比較すると、捲回電極体が電池ケース内へ収容される向きが、電池の高さ方向に対し90°異なる。
【0035】
(2)電池ケースの構造
図1に示すように、一実施形態にかかる電池ケース10の2つの曲面11cは、捲回電極体20の正負極の端子付近が、電池外方側へ向けた凸面となるように形成されている。
【0036】
他方、従来の二次電池では、六面体形状の電池ケースが有する4つの側面は、全て平坦な構造となっている、いわゆる箱型(ないしは角型)電池ケースである。このため、本開示にかかる電池ケースの技術的思想の範囲外であるといえる。例えば、六面体形状の箱型電池ケースにおいて、対抗する2つの側面それぞれに曲面を設けた場合の捲回電極体の捲回軸と電池の高さ方向とが略平行となるような収容態様である場合には、本開示にかかる電池ケースの破損防止効果と同等の効果は実現できない。
【0037】
(3)電極体の膨張に伴う、電池ケースの破損の抑制
一実施形態にかかる二次電池では、上記(1)捲回電極体20の収容向き、および上記(2)電池ケース10の構造を組み合わせることで、捲回電極体20の膨張に伴う、電池ケース10の破損の抑制を実現する。
【0038】
図5に示すように、一実施形態にかかる電池ケース10は、二次電池の充放電に伴う捲回電極体20の膨張が起こった際、電池の厚さ方向(電極体の積層方向)への膨張に対しては、電池ケース10が電極体20の膨張に追従し、矢印Aの方向に沿って変形する。電池ケース10は、電極体20の膨張が生じる前は、実線で記した形状であり、電極体20の膨張に追従しながら、点線で示す形状へと変形する。
【0039】
このとき、電池ケース10の曲面11cが有する肉厚が、平坦面11bの肉厚より薄い場合、上記電池ケース10の変形は、より顕著に生じ得るため、電池ケース10の破損の防止を好適に実現する。
【0040】
また、二次電池の充放電に伴って捲回電極体20(図示せず)の膨張が起こった際、電池ケース10の側面11cが有する2つの曲面により生じる内部空間において電極体20の膨張を吸収することもできる。
【0041】
一実施形態に係る電池ケース10は、上述する効果により、二次電池の充放電に伴う電極体20の膨張に起因する、電池ケース10の破損の抑制を実現する。
【0042】
一実施形態にかかる電極体20の収容態様および電池ケース10は、上述のとおり、電池の厚さ方向(電極体の積層方向)および幅方向(電極体の長辺方向)への電極体20の膨張を考慮していることから、二次電池の膨張に対し高い信頼度を有する。このため、負極活物質として使用した際に、充放電に伴う電極体の膨張の度合いが大きい、SiまたはSi化合物を負極活物質として用いることができ、高容量の二次電池の提供が可能となる。
【0043】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10 電池ケース
11a 底面
11b 側面(2つの平坦面)
11c 側面(2つの曲面)
11d 封口板
11h 開口
20 電極体
22 正極
22a 正極活物質層
22c 正極活芯体
22t 正極タブ
24 負極
24a 負極活物質層
24c 負極芯体
24t 負極タブ
26 セパレータ
30 正極端子
40 負極端子

図1
図2
図3
図4
図5