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特開2025-140904画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140904
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20250919BHJP
【FI】
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040549
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】池本 祥
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA01
2G051AB02
2G051BC02
2G051CA04
2G051CD06
2G051CD07
2G051DA06
(57)【要約】
【課題】 撮像画像の枚数が変動した場合における検査精度の低下を抑制することを目的とする。
【解決手段】 画像処理装置であって、物体を撮像して得られる撮像画像を取得し、取得された撮像画像の数が、物体の検査のための基準数であるか否かを判定し、取得された撮像画像の数が基準数であると判定された場合、取得された撮像画像に基づいて、物体における欠陥を検出し、取得された撮像画像の数が基準数でないと判定された場合、警告を出力する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を撮像して得られる撮像画像を取得する取得手段と、
前記取得された撮像画像の数が、物体の検査のための基準数であるか否かを判定する判定手段と、
前記取得された撮像画像の数が前記基準数であると判定された場合、前記取得された撮像画像に基づいて、前記物体における欠陥を検出する検査手段と、
前記取得された撮像画像の数が前記基準数でないと判定された場合、警告を出力する出力手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記出力手段は、前記検査手段による検査の結果を出力することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記検査手段は、前記取得された撮像画像を合成して得られる画像に基づいて、前記物体における欠陥を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
検査項目に応じて前記基準数を設定する設定手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記検査項目には、色、表面形状、光沢が含まれることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記設定手段は、前記検査項目が光沢である場合に前記基準数を1枚以上に設定し、前記検査項目が色又は表面形状である場合に前記基準数を3枚以上に設定することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記出力手段は、前記取得された撮像画像の数が前記基準数でないと判定された場合、検査不可を示す警告を出力することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記出力手段は、前記取得された撮像画像の数が前記基準数より多く、撮像手段が撮像を継続している場合に、前記撮像手段の異常を示す警告を出力し、前記撮像手段の点検又は復旧を促す表示を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記取得手段は、前記取得された撮像画像の数が前記基準数より多い場合、余剰画像を削除することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
コンピュータを請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
物体を撮像して得られる撮像画像を取得する取得ステップと、
前記取得された撮像画像の数が、物体の検査のための基準数であるか否かを判定する判定ステップと、
前記取得された撮像画像の数が前記基準数であると判定された場合、前記取得された撮像画像に基づいて、前記物体における欠陥を検出する検査ステップと、
前記取得された撮像画像の数が前記基準数でないと判定された場合、警告を出力する出力ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を検査するための画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品の外観検査技術として、検査面の凹凸を検出する技術が知られている。特許文献1には、検査対象物を撮像して得られた複数の画像をフォトメトリックステレオ法を用いて合成し、検査対象物の良否を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-232480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工業製品の種類によっては、単位時間当たりの生産数が多く、1回の検査にかけられる時間が短い場合がある。この場合、撮像を高速で行う必要があるが、連続撮像により得られる画像の枚数は撮像装置の設定や通信状況などに応じて変動することがある。撮像画像が所望の枚数よりも多い又は少ない場合、検査精度が低下してしまうという課題がある。
【0005】
そこで本発明は、撮像画像の枚数が変動した場合における検査精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像処理装置は、物体を撮像して得られる撮像画像を取得する取得手段と、前記取得された撮像画像の数が、物体の検査のための基準数であるか否かを判定する判定手段と、前記取得された撮像画像の数が前記基準数であると判定された場合、前記取得された撮像画像に基づいて、前記物体における欠陥を検出する検査手段と、前記取得された撮像画像の数が前記基準数でないと判定された場合、警告を出力する出力手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撮像画像の枚数が変動した場合における検査精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】外観検査システムの外観及びハードウェア構成を示す図
図2】外観検査システムの機能構成を示す図
図3】画像処理システムにおける処理を示すフローチャート
図4】照明部を説明するための図
図5】ユーザインタフェースの例を示す図
図6】検査に必要な撮像画像の枚数を説明するための図
図7】画像処理システムにおける処理を示すフローチャート
図8】画像処理システムにおける処理を示すフローチャート
図9】検査に必要な撮像画像の枚数を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の実施形態は本発明を必ずしも限定するものではない。また、各実施形態において説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0010】
[第1実施形態]
検査対象物を撮像して得られる画像データを基に検査を行う際に、所望の枚数よりも撮像画像が多い又は少ない状況で検査を行ってしまうと検査精度が低下してしまうことがある。例えば、撮影画像の枚数が少ない場合、フォトメトリックステレオ法を行うのに十分な撮像画像が得られないため、検査対象物の表面形状を高精度に推定することが困難になる。また、撮影画像の枚数が多い場合、撮像と光源の点灯とがうまく同期できていないために撮影画像が暗くなってしまい、欠陥の検出を高精度に行うことができなくなってしまう。そこで本実施形態においては、撮像により得られた撮像画像が所望の枚数でない場合にユーザに対して警告を出力する。これにより、所望の枚数よりも撮像画像が多い又は少ない状況で検査を行うことで検査精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0011】
<外観検査システムの外観及びハードウェア構成>
図1(a)は、本実施形態における外観検査システムのハードウェア構成例を示す図である。図1(b)は外観検査システム全体の外観正面図であり、図1(c)は外観検査システム全体の外観上面図である。本実施形態における外観検査システムは、画像処理システム1、開始信号出力インターフェース101、搬送制御装置111、搬送装置112を有する。
【0012】
画像処理システム1は、撮像制御装置102、撮像装置103、画像処理装置104、ディスプレイ105、マウス106、キーボード107、照明装置108を有する。画像処理システム1は、搬送装置112を制御する搬送制御装置111と接続される。搬送制御装置111は、搬送装置112を用いて検査対象の物体113を画像処理システム1に搬送し、開始信号出力インターフェース101を介して、検査開始信号を画像処理システム1に送る。
【0013】
撮像制御装置102は、制御ユニット114を有し、撮像装置103や照明装置108を制御して、光源の点灯と同期して物体113を撮像する。詳細には、撮像制御装置102は、開始信号入力インターフェース115から検査開始信号を受信すると、レリーズ信号出力インターフェース116を介して撮像装置103に撮像指示を送る。また、撮像制御装置102は、撮像装置103から、撮像と同期して外部ストロボ光源に発光タイミングを通知させるために送られるシンクロ信号を、シンクロ信号入力インターフェース117を介して受け付ける。さらに、撮像制御装置102は、受信したシンクロ信号に応じて、点灯信号出力インターフェース119を介して、照明装置108の光源を所定の順番及び組み合わせで点灯させる。以上の動作により、所定の照明によって光が照射された物体113を撮像することができる。尚、本実施形態においては、撮像装置103から出力されるシンクロ信号を基に光源の点灯と撮像とを同期させているが、光源の点灯と撮像との同期方法は上記例に限定されない。例えば、制御ユニット114からパルス信号を出力することにより、撮像装置103への撮像指示と照明装置108への光源点灯指示とを同時に出力しても良い。撮像制御装置102は、USBインターフェース118を介して、画像処理装置104と接続されており、画像処理装置104からの命令を受け付けたり、撮像制御装置102の状態を示す情報を画像処理装置104に提供したりする。
【0014】
撮像装置103は、制御ユニット125、レンズや撮像素子等を含む撮像光学系121を有する。撮像装置103は、レリーズ信号入力インターフェース120を介して受け付けた撮像指示を基に撮像して得られた光学像を、画像処理エンジン123によって量子化することで撮像画像を生成する。撮像装置103は、生成した撮像画像を、USBインターフェース124を介して画像処理装置104に転送する。尚、本実施形態においては、デジタルカメラを用いて撮像した静止画像を取得して用いる例を説明するが、ビデオカメラを用いて撮像した動画像から所定のフレームを静止画像として抽出して用いても良い。撮像装置103は、シンクロ信号出力インターフェース122を介して、シンクロ信号を撮像制御装置102に送る。
【0015】
画像処理装置104は、RAM126、ROM127、CPU128、GPU129、USBインターフェース130を有する。各構成は内部バスで接続されている。後述するフローチャートに示す処理は、プログラムコードとしてROM127に格納されている。このプログラムコードは、RAM126に展開され、CPU128、GPU129によって実行される。
【0016】
照明装置108は、複数の光源109を有する。本実施形態における光源109はLEDであるが、キセノンランプ等の別の光源であっても良い。複数の光源109は、物体113上部において半球状に分散されて設置されており、天頂角と方位角との少なくとも一方が互いに異なる。撮像画像を用いた検査では、外観検査項目に応じて、光の照射方法を変える必要がある。例えば、物体の光沢を検査する際には、検査面に対して正反射した光を撮像できる方向から光を照射する必要がある。また、物体の色や表面形状を検査する際には、検査面に対して正反射した光を撮像しない方向から光を照射する必要がある。そのため、一部の光源109は、物体113の設置面に対して入射角の大きな方向に設置されており、撮像装置103が拡散反射光を受光しやすい幾何条件での撮像が可能となる。また、一部の光源109は、物体113の設置面に対して入射角の小さな方向に設置されており、撮像装置103が正反射光を受光しやすい幾何条件での撮像が可能となる。尚、光源109は個別に発光面や分光特性を異ならせても良い。例えば、物体113の設置面に対して入射角の大きな方向には光源1091乃至1098に示すようなスポット照射型の照明を設置し、入射角の小さな方向には光源1099に示すような円環状に発光素子が配置されたリング照明を設置しても良い。照明装置108は、制御ユニット114の命令に応じて、光源109のうちの所定の光源を予め設定された時間点灯させる。
【0017】
尚、本実施形態の画像処理システム1において、撮像制御装置102、撮像装置103、画像処理装置104、照明装置108を別々の装置としたが、複数の装置が一体となっていても良い。
【0018】
<画像処理システムが実行する処理>
図2は、本実施形態における外観検査システムの機能構成例を示す図である。撮像制御装置102の制御ユニット114は、撮像制御部202を有する。撮像制御部202は、レリーズ信号出力部207、シンクロ信号入力部208、シンクロ信号カウント部209、点灯信号出力部210を有する。撮像装置103の制御ユニット125は、撮像部203を有する。撮像部203は、レリーズ信号入力部211、制御部212、シンクロ信号出力部213、画像取得部214を有する。画像処理装置104は、画像処理部204を有する。画像処理部204は、検査画像取得部215、色形状検査部216、光沢検査部217、出力部218を有する。搬送制御装置111は、開始信号出力部201を有する。搬送装置112は、搬送部206を有する。照明装置108は、照明部205を有する。
【0019】
図3は、本実施形態における画像処理システム1で実行する処理のフローチャートである。物体113が搬送装置112によって所定位置まで搬送されると、搬送制御装置111の開始信号出力部201は、撮像制御部202に検査開始信号を送る。撮像制御部202が検査開始信号を受け付けることによって、図3の処理は開始する。以下、各ステップ(工程)は符号の前にSをつけて表す。
【0020】
S301において、撮像制御部202及び撮像部203は、所定の光源を点灯させて検査対象の物体113を撮像して得られる複数の撮像画像を取得し、画像処理部204に転送する。具体的には、まず、検査開始信号を受け取ったレリーズ信号出力部207は、レリーズ信号入力部211にレリーズ信号を送る。制御部212は、レリーズ信号入力部211がレリーズ信号を受け取ったことを検知すると、撮像動作を実行する。本実施形態においては、公知の連続撮像機能を用いて高速連続撮像を実施する。連続撮像機能とは、レリーズ信号が送られ続ける間、所定の速度で撮像を繰り返す機能であり、本実施形態では秒間30コマで撮像を行う。撮像時に制御部212は、シャッター幕が開いたタイミングに外部ストロボ光源の発光タイミングを同期させるために、シンクロ信号出力部213にシンクロ信号を出力させる。シンクロ信号入力部208によりシンクロ信号が入力されると、シンクロ信号カウント部209は、シンクロ信号の入力回数、すなわち撮像画像の枚数をカウントする。点灯信号出力部210は、撮像画像の枚数に応じて順次点灯する光源を切り替え、照明部205に点灯信号を出力する。図4に、本実施形態における照明部205の設置角度及び点灯順を示す。尚、光源の個数や配置、点灯順は図4の例に限られない。光源番号1に対応する光源には、円環状のリング照明を用い、あらゆる方位角方向から検査面に対して光を照射する。画像取得部214は、所定の光源を点灯させて検査対象の物体113を撮像して得られる撮像画像を、検査画像取得部215に随時転送することを繰り返す。以上の処理により、S301において、撮像制御部202及び撮像部203は、複数の撮像画像を画像処理部204に転送することができる。
【0021】
S302において、検査画像取得部215は、取得した撮像画像の枚数と検査に必要な撮像画像の枚数を示す基準数とを比較する。具体的には、まず、検査画像取得部215は、外観検査項目の設定を基に、比較に用いる基準数を設定する。本実施形態における外観検査項目は、色、表面形状、光沢の3種類とする。尚、外観検査項目は上記の例に限られず、外観を表しており撮像して判別できるものであれば良い。例えば材質や模様などでも良い。検査画像取得部215は、図5に示す検査画面ユーザインタフェース(UI)をディスプレイ105に表示させ、ユーザからの指示を受け付ける。外観検査項目は、図5に示す検査画面UIにおいて1種類以上が設定される。ユーザは、ディスプレイ105に表示された検査画面UIに対して、マウス106やキーボード107を用いた入力が可能である。製品選択領域501において予め登録された複数の製品からドロップダウンメニューで検査対象製品が選択されると、選択された検査対象製品に対応する外観検査項目が項目設定領域502に設定される。尚、ユーザが項目設定領域502のラジオボタンへ入力を行うことで、外観検査項目を変更することも可能である。図4に示すように、撮像時に点灯させる光源と外観検査項目とは対応関係を有する。図6に示すように、検査画像取得部215は、外観検査項目それぞれの検査に必要な撮像画像の枚数を基準数に設定する。例えば、光沢の検査では1枚以上、色や表面形状の検査では3枚以上が基準数に設定される。尚、基準数は、検査対象製品に応じて切り替わるようにしても良い。また、検査画面UIにおいては、検査日領域506に検査日が表示され、検査時刻領域507に検査時刻が表示される。
【0022】
検査画像取得部215は、取得した撮像画像の枚数と設定した基準数とを比較することにより、取得した撮像画像の枚数が検査に必要な撮像画像の枚数であるか否かを判定する。取得した撮像画像の枚数が検査に必要な撮像画像の枚数である場合は処理をS303に遷移させる。取得した撮像画像の枚数が検査に必要な撮像画像の枚数より少ない場合は処理をS304に遷移させ、取得した撮像画像の枚数が検査に必要な撮像画像の枚数より多い場合は処理をS305に遷移させる。尚、S302における撮像画像の枚数の判定は、画像の検査を実行する時間間隔、すなわち検査対象の製品が生産されるタクトタイムごと行われるが、検査開始や検査終了といった撮像終了時間のタイミングを外部装置から入力して行っても良い。
【0023】
S303において、色形状検査部216及び光沢検査部217は、検査処理を実行する。色形状検査部216は、フォトメトリックステレオ法により撮像画像を合成して得られた法線情報及び色情報を含む検査画像に対して、空間フィルタ処理を行うことで欠陥を検出する。空間フィルタに対する反応値を積分して数値化した値を異常度とし、異常度を判定用の閾値と比較することで検査の合否を判定する。算出された異常度は、図5に示す検査画面UIの異常度表示領域509に表示される。判定用の閾値は、図5に示す検査画面UIの閾値設定領域503において設定が可能である。光沢検査部217は、物体の検査面における正反射光を受光して得られる撮像画像を光沢情報を有する検査画像として用いて、上記と同様に空間フィルタ処理を行うことで欠陥を検出する。尚、フォトメトリックステレオ法は、複数の照明方向に対応する撮像画像を合成することにより、物体の表面形状を表す法線情報や物体の色を表す色情報を取得することができる手法である。尚、上記の検査処理の方法は一例であり、他の検査方法を用いても良い。
【0024】
また、出力部218は、検査処理の結果をディスプレイ105に表示させる。例えば、図5に示す検査画面UIにおいて、判定結果領域508には、検査合格であれば「OK」を表示し、検査不合格であれば「NG」を表示する。さらに出力部218は、検査合格品と検査不合格品とそれぞれについて後工程への搬送指示を搬送部206に出力する。
【0025】
S304において、出力部218は、撮像失敗の警告を判定結果領域508及び異常イベント表示領域510に表示する。例えば、判定結果領域508には、検査不可を表す「NR(NoRead)」を表示する。尚、不図示の積層信号灯を点灯させて、撮像失敗を通知してもよい。S304に進んだ場合、撮像失敗により検査を行うことができないため、検査対象製品は検査合格品や検査不合格品とは区別し、撮像失敗品として後工程へ搬送させる指示を搬送部206に送り、検査装置による検査や目視検査を再度行わせる。
【0026】
S305において、出力部218は、S304と同様に、撮像失敗の警告を判定結果領域508及び異常イベント表示領域510に表示する。その後、S306において、出力部218は、撮像装置103による撮像が停止しているか否かを判定する。具体的には、出力部218は、レリーズ信号出力部207の信号の状態がレリーズ状態になっているか否か、もしくは、撮像部203から画像処理装置104に撮像画像が転送され続けているか否かを判定する。
【0027】
撮像が停止していれば処理を終了する。撮像が停止していなければ、画像処理システム1が正常な動作を行えない状態であるため、S307において出力部218は、撮像制御部202をリセットし、初期状態に復帰させる。撮像制御部202の初期状態は、レリーズ信号出力部207の信号がOFFの状態であり、搬送制御装置111から入力される検査開始信号の入力待機状態を指す。S308において、出力部218は、撮像装置103の応答状態を確認する。具体的には、出力部218は、撮像装置103の制御ユニット125が画像処理装置104からの命令に対して正しく応答する状態であるか否かを判定する。撮像装置103の制御ユニット125が画像処理装置104からの命令に対して正しく応答する状態であれば、撮像装置103に異常は生じていないと判定し、処理を終了する。撮像装置103の制御ユニット125が画像処理装置104からの命令に対して正しく応答しない状態であれば、撮像装置103に異常が生じていると判定し、装置異常の警告を判定結果領域508及び異常イベント表示領域510に表示する。例えば、判定結果領域508には、装置不良を表す「ER(Error)」を表示する。尚、不図示の積層信号灯を点灯させて、装置不良を通知してもよい。装置異常の際、出力部218は、画像処理システム1の点検や再起動等の復旧作業を促すような表示を行う。例えば、検査開始ボタン504や検査停止ボタン505を押下することで、再起動処理が実施され、検査待機状態に復旧することができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態における画像処理システム1は、撮像画像の枚数が変動した場合は検査対象製品を撮像失敗品として後工程への搬送指示を行い、必要に応じて装置異常がないかを確認する。これにより、撮像画像の枚数が変動した場合における検査精度の低下を抑制することができる。
【0029】
[第2実施形態]
第1実施形態においては、撮像画像の枚数が変動した場合は検査対象製品を撮像失敗品として後工程への搬送指示を行った。第2実施形態においては、撮像画像の枚数が変動した場合であっても、検査精度に影響しない条件を満たしていれば検査を行う。これにより、撮像画像の枚数の変動によって検査ができないことによる歩留まりの低下を抑制することができる。尚、本実施形態における画像処理システム1の構成は第1実施形態のものと同等であるため、説明を省略する。以下において、本実施形態と第1実施形態とで異なる部分を主に説明する。尚、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明する。
【0030】
<画像処理システムが実行する処理>
図7は、本実施形態における画像処理システム1で実行する処理のフローチャートである。物体113が搬送装置112によって所定位置まで搬送されると、搬送制御装置111の開始信号出力部201は、撮像制御部202に検査開始信号を送る。撮像制御部202が検査開始信号を受け付けることによって、図7の処理は開始する。以下、各ステップ(工程)は符号の前にSをつけて表す。尚、S301~S304,S307~S309の処理は第1実施形態と同様である。
【0031】
S701において、出力部218は、撮像装置103による撮像が停止しているか否かを判定する。具体的には、出力部218は、レリーズ信号出力部207の信号の状態がレリーズ状態になっているか否か、もしくは、撮像部203から画像処理装置104に撮像画像が転送され続けているか否かを判定する。撮像が停止していなければ処理をS702に遷移させ、撮像が停止していれば処理をS703に遷移させる。
【0032】
S702において、出力部218は、撮像失敗の警告を判定結果領域508及び異常イベント表示領域510に表示する。例えば、判定結果領域508には、検査不可を表す「NR(NoRead)」を表示する。尚、不図示の積層信号灯を点灯させて、撮像失敗を通知してもよい。S702に進んだ場合、撮像失敗により検査を行うことができないため、検査対象製品は検査合格品や検査不合格品とは区別し、撮像失敗品として後工程へ搬送させる指示を搬送部206に送り、検査装置による検査や目視検査を再度行わせる。その後、処理はS308に遷移する。
【0033】
S703において、検査画像取得部215は、撮像画像の枚数が多い、かつ、撮像が停止している場合、余剰画像を削除する。その後、S303において、色形状検査部216及び光沢検査部217は、正常動作通りに撮像できている枚数までの撮像画像を用いて、検査処理を実行する。撮像装置103の連続撮像機能によって撮像画像の枚数が多くなってしまう要因は、レリーズタイムラグや連続撮像継続の判定タイミングの変動によって、撮像の最後に余剰に撮像が行われることだと想定される。そのため、検査画像取得部215は、17枚目以降の撮像画像を余剰画像として特定し削除する。尚、本実施形態では撮像の順番を基に余剰画像を特定するが、撮像画像の特徴を基に余剰画像を特定しても良い。例えば、撮像画像のうちの平均輝度が低い画像を余剰画像として削除しても良い。これは、余剰に撮像が行われた場合、光源が同期して点灯しておらず比較的暗い画像が撮像されるためである。尚、撮像画像の枚数の設定については、必要な撮像画像の枚数以上に撮像される設定にしても良い。これは、撮像画像の枚数が不足する場合は検査精度に影響するが、撮像画像の枚数が多く余剰に撮像される場合は条件によっては検査精度に影響しないためである。
【0034】
以上説明したように、本実施形態における画像処理システム1は、撮像画像の枚数が変動した場合であっても検査精度に影響しない条件を満たしていれば検査を行った。これにより、撮像画像の枚数の変動によって検査ができないことによる歩留まりの低下を抑制することができる。
【0035】
[第3実施形態]
第2実施形態においては、撮像画像の枚数が変動した場合であっても検査精度に影響しない条件を満たしていれば検査を行った。第3実施形態においては、撮像画像の枚数が変動した場合であっても検査精度への影響が少ない条件を満たしていれば検査を行う。これにより、撮像画像の枚数の変動によって検査ができないことによる歩留まりの低下をさらに抑制することができる。尚、本実施形態における画像処理システム1の構成は第1実施形態のものと同等であるため、説明を省略する。以下において、本実施形態と第1実施形態及び第2実施形態とで異なる部分を主に説明する。尚、第1実施形態及び第2実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明する。
【0036】
<画像処理システムが実行する処理>
図8は、本実施形態における画像処理システム1で実行する処理のフローチャートである。物体113が搬送装置112によって所定位置まで搬送されると、搬送制御装置111の開始信号出力部201は、撮像制御部202に検査開始信号を送る。撮像制御部202が検査開始信号を受け付けることによって、図8の処理は開始する。以下、各ステップ(工程)は符号の前にSをつけて表す。尚、S301,S302,S304,S307~S309の処理は第1実施形態と同様であり、S701~S703の処理は第2実施形態と同様である。
【0037】
S801において、検査画像取得部215は、外観検査項目に応じた照明条件を満たしているか否かを判定する。外観検査項目に応じた照明条件の例を図9に示す。フォトメトリックステレオ法により検査画像を生成するには、原理的に、分散した方向から光が照射された物体を撮像して得られる3枚以上の画像が必要となる。そのため、外観検査項目が色や形状の場合は、天頂角や方位角の方向に応じて、それぞれの検査に必要な撮像画像の枚数である基準数を設定する。これにより、ある方向からの光照射に対応する画像の撮像に失敗したとしても、その近くの方向からの光照射に対応する画像があれば情報の欠損が少なく検査画像の生成を行うことができるため、検査処理を可能とみなすことができる。尚、検査処理を可能とする確率を高めるため、連続撮像のうち撮像が成功しやすい順に優先して検査に必要な光源を点灯させる方が好ましい。
【0038】
S802において、色形状検査部216及び光沢検査部217は、検査処理を実行する。この際、S801において撮像に失敗した画像があっても検査を行うと判定した場合、撮像画像とフォトメトリックステレオ法による合成のためのパラメータとの整合関係を調整する。フォトメトリックステレオ法を行うには、光源方向が既知である必要がある。そのため、予め保持する光源方向のうち、撮像に成功した画像に対応する光源方向の組み合わせのみを用いて検査画像を生成する。以降の検査処理については他の実施形態と同様のため説明は省略する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態における画像処理システム1は、撮像画像の枚数が変動した場合であっても検査精度への影響が少ない条件を満たしていれば検査を行った。これにより、撮像画像の枚数の変動によって検査ができないことによる歩留まりの低下をさらに抑制することができる。
【0040】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0041】
104 画像処理装置
204 画像処理部
215 検査画像取得部
216 色形状検査部
217 光沢検査部
218 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9