IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-無線通信装置および無線システム 図1
  • 特開-無線通信装置および無線システム 図2
  • 特開-無線通信装置および無線システム 図3
  • 特開-無線通信装置および無線システム 図4
  • 特開-無線通信装置および無線システム 図5
  • 特開-無線通信装置および無線システム 図6
  • 特開-無線通信装置および無線システム 図7
  • 特開-無線通信装置および無線システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140905
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】無線通信装置および無線システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 5/20 20240101AFI20250919BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20250919BHJP
   H04B 5/40 20240101ALI20250919BHJP
【FI】
H04B5/20
H04L25/02 V
H04L25/02 303
H04B5/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040550
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】戸叶 克輝
(72)【発明者】
【氏名】庄司 勇輝
【テーマコード(参考)】
5K012
5K029
【Fターム(参考)】
5K012AB02
5K012AC01
5K012AC08
5K012AC10
5K012AD01
5K029AA11
5K029DD04
5K029DD24
5K029KK26
5K029LL01
(57)【要約】
【課題】 本発明は、電極がもつ寄生成分による自己共振を抑制し高速化されたデータ伝送を可能とする無線通信装置の提供を目的とする。
【解決手段】 差動信号を送信する送信装置と、前記送信装置との間での電磁界結合により差動信号を受信する受信装置とを有し、前記受信装置は、前記電磁界結合により差動信号を受信する2つの電極から構成される結合導体と、前記2つの電極間に配置される、少なくとも1つのハイパスフィルタと抵抗から構成される回路素子部と、前記結合導体と接続される受信回路と、を有し、前記ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、前記結合導体の自己共振周波数より低いことを特徴とする無線通信装置。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動信号を送信する送信装置と、
前記送信装置との間での電磁界結合により差動信号を受信する受信装置とを有し、
前記受信装置は、前記電磁界結合により差動信号を受信する2つの電極から構成される結合導体と、前記2つの電極間に配置される、少なくとも1つのハイパスフィルタと抵抗から構成される回路素子部と、前記結合導体と接続される受信回路と、を有し、
前記ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、前記結合導体の自己共振周波数より低いことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記ハイパスフィルタは少なくとも1つのコンデンサから構成されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記ハイパスフィルタのカットオフ周波数は前記差動信号の最低周波数以上であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記回路素子部は前記2つの電極の少なくとも一方の端部に接続されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記回路素子部は前記2つの電極の一方の端部と他の一方の端部に接続されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記回路素子部の前記ハイパスフィルタは、前記2つの電極のうちの一方の電極の少なくとも一方の端部に接続し、前記抵抗は、前記2つの電極のうちの他方の電極の少なくとも一方の端部に接続することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記抵抗は前記結合導体の結合系インピーダンスの値の半分以上であり、前記結合導体の特性インピーダンスの2倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記ハイパスフィルタはチェビシェフフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記受信回路の出力部に補正回路が接続されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記結合導体の電極は直方体の形状である請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記送信装置は、差動信号を送信する2つの電極を有することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項12】
他の通信装置との間での電磁界結合により差動信号を受信する受信装置であって、
前記電磁界結合により差動信号を受信する2つの電極から構成される結合導体と、
前記2つの電極間に配置される、少なくとも1つのハイパスフィルタと抵抗から構成される回路素子部と、
前記結合導体と接続される受信回路と、
を有し、
前記ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、前記結合導体の自己共振周波数より低いことを特徴とする受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線で信号を伝送する無線通信装置、および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近接させた複数の電極間で電磁界結合により通信する近接無線通信システムが研究・開発されている。電子回路基板やモジュール間で通信を行うためのコネクタやハーネスを用いた有線接続を無線化することにより、接続部における部品点数を減らすことができ、装置の製造工程を簡略化すること可能となる。特許文献1では、回転可動部に適用した、伝送機と受信機を備えており各々の電極間において、電磁界結合により無線通信を行う無線通信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-168491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示された無線通信装置では、受信機の電極間に十分高い値をもつ受信機抵抗を配置することで、データの最低周波数成分を減衰させない通過帯域を得ている。しかしながら、特許文献1の構成では、高周波において電極の寄生容量成分と寄生インダクタ成分により自己共振が発生する。例えば自己共振する周波数近傍の周波数成分を用いた高速な無線通信を行う場合、自己共振の影響によりデータが劣化してしまう。本発明は、電極がもつ寄生成分による自己共振を抑制し高速化されたデータ伝送を可能とする無線通信装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの側面としての無線通信装置は、差動信号を送信する送信装置と、前記送信装置との間での電磁界結合により差動信号を受信する受信装置とを有し、前記受信装置は、前記電磁界結合により差動信号を受信する2つの電極から構成される結合導体と、前記2つの電極間に配置される、少なくとも1つのハイパスフィルタと抵抗から構成される回路素子部と、前記結合導体と接続される受信回路と、を有し、前記ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、前記結合導体の自己共振周波数より低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の1つの側面によれば、従来よりも高速な無線通信が可能な無線通信装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に関わる無線通信システムの構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に関わる無線通信システムのシミュレーション結果を示す図である。
図3】第1の実施形態に関わる受信装置に接続される結合系インピーダンスに関するシミュレーション結果を示す図である。
図4】第1の実施形態に関わる受信装置の構成の一例と、当該受信装置のシミュレーション結果を示す図である。
図5】第1の実施形態に関わる受信装置の別の構成例と、当該受信装置のシミュレーション結果を示す図である。
図6】第2の実施形態に関わる、受信装置、回路素子部のフィルタ構成の一例を示す図と、そのシミュレーション結果を示す図である。
図7】第3の実施形態に関わる受信装置の構成の一例と、補正回路及び無線通信装置のシミュレーション結果を示す図である。
図8】結合導体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1(a)は、第1の実施形態における無線通信システム100の構成の一例を示す図である。無線通信システム100は送信装置10、受信装置20から構成され無線通信を行う。送信装置10は、結合導体101、終端抵抗104、送信回路105から構成され、受信装置20は、結合導体201、回路素子部204、205、抵抗206、受信回路207から構成される。結合導体101は電極102と電極103から構成され、結合導体201は電極202と電極203から構成される。
【0009】
送信装置10の構成について説明する。送信装置10の送信回路105は、結合導体101に送信信号を入力する。結合導体101に入力される送信信号は、搬送波による変調を伴う信号でもよいし、変調を行わないベースバンド信号でもよいが、本発明では、変調を行わないベースバンド信号の伝送について説明する。また、送信回路105から送信される送信信号は差動信号とする。さらに送信信号は、例えば8B10B等の符号により符号化されたデジタルの2値信号でもよいし、3値以上の多値信号でもよい。2つの電極である電極102と電極103は、それぞれ一端が送信回路105の出力部と接続されており、他端は結合導体101の差動インピーダンスと略等しいインピーダンスを持つ抵抗で終端される。従って、送信回路105から終端抵抗104の方向に信号が伝送される。
【0010】
結合導体101は、基板に形成されても良いし板金等により形成されてもよい。また、結合導体101は、電極102と電極103に印可される信号の基準電位となるGND導体を有していても良い。
【0011】
次に、受信装置20の構成について説明する。図1(b)は無線通信システム100の受信装置20の詳細図であり、結合導体101と結合する面から見た図を示している。結合導体201は誘電体基板212に構成される。さらに、回路素子部204はフィルタ208と抵抗209が直列に接続された回路から構成され、回路素子部205はフィルタ210と抵抗211が直列に接続された回路から構成される。また、結合導体201は、結合導体101の終端抵抗104が接続される方の端部と近い端部から信号線を介して受信回路207と接続している。
【0012】
結合導体201は、電極202と電極203を有する。送信装置10の結合導体101と受信装置20の結合導体201は、互いに対向するように近接して配置され、電磁界により結合する結合器である。図1(c)は無線通信システム100の送信装置10の結合電極101と、受信装置20の結合電極202を対向させた際の断面図である。図1(c)から分かるように、電極102と電極202が互いに対向し、電極103と電極203が互いに対向するように配置される。なお、結合電極101は誘電体基板106に構成される。また、結合電極101と結合電極102のZ軸方向の距離をdとしている。
【0013】
差動信号が送信回路から出力され、電極102と電極103は互いに逆位相の差動信号が入力され、電極202と電極203にも互いに逆位相の差動信号が出力される。出力された差動信号は受信回路207に入力される。
【0014】
図1のフィルタ208、210は特性として、ハイパスフィルタの特性を有する。ハイパスフィルタとはフィルタのカットオフ周波数よりも低い周波数の場合はインピーダンスが非常に高くなり、カットオフ周波数よりも高い周波数の場合は、インピーダンスが非常に小さくなるという特性を有する。つまり、カットオフ周波数よりも高い周波数の信号のみを通すフィルタである。
【0015】
従って回路素子部204、205はカットオフ周波数よりも低い周波数においては、非常にインピーダンスが高くなり、カットオフ周波数よりも高い周波数では抵抗209、211のインピーダンスとなる。抵抗209、211のインピーダンスは後述する結合系インピーダンスに設定する。これにより、カットオフ周波数よりも高い周波数では結合導体201は抵抗209、211で整合され、結合導体201が持つ寄生成分による自己共振の影響を抑制することができる。
【0016】
また、抵抗209、211で整合されるため定在波の発生を抑制することができ、電極202、電極203のY軸方向の長さを任意の値に設定することが可能になる。
【0017】
受信装置20の抵抗206は、結合導体201と受信回路207との間の伝送路に接続される。抵抗206は、例えば、1kΩ以上の高いインピーダンスに設定される。抵抗206のインピーダンス値を高くすることで、結合導体101、201の結合によって生じる容量成分のインピーダンスより、抵抗206の方が高域の周波数はもちろんのこと、低域の周波数帯において大きくなる。これにより、低周波数の伝送信号も受信回路207まで伝達される。そのため、結合導体101から伝送される信号が矩形波の場合、結合導体201から受信回路207に入力される信号は略矩形波形になる。なお、受信回路207の入力インピーダンスが伝送信号の最低周波数において、結合により生じる容量成分のインピーダンスと抵抗209、211のインピーダンスよりも十分に大きい場合、抵抗206は省略することができる。
【0018】
受信回路207は、結合導体201から伝送された信号を整形または増幅し、信号を後段の回路に出力する。信号を整形する構成として、例えば、エミッタフォロア回路や差動増幅回路などがある。結合導体201から伝送された信号が受信信号としてそのまま処理できるものであれば、整形機能を省略してもよい。
【0019】
図1の無線通信システムの構成における、結合導体101と結合導体102の伝達特性、および受信回路207に入力される信号のアイパターンのシミュレーション結果を図2に示した。回路素子部204、205が配置されている場合と、配置されていない場合のシミュレーション結果を示している。結合導体101と結合導体201の距離dは2mmの時のシミュレーション結果である。
【0020】
図1の抵抗206は、シミュレーションでは22kΩの抵抗値を設定している。ただし、伝送信号の最低周波数flにおいて結合導体101、結合導体201の結合による容量成分のインピーダンスより高ければよく22kΩより小さくても良い。回路素子部204、205のうち、ハイパスフィルタ208、210としてコンデンサを配置している。シミュレーションではコンデンサの値を0.4pFとしている。ハイパスフィルタのカットオフ周波数fcは、結合導体201の寄生成分による自己共振周波数をfpとしたとき下記の数式を成り立つ値にする。
【0021】
【数1】
【0022】
つまり、ハイパスフィルタのカットオフ周波数は伝送信号の最低周波数以上であり、自己共振周波数以下であればよい。なお、本発明における、伝送信号の最低周波数とは、例えば10Gbpsのベースバンド信号を8B10B符号化し、結合導体101で102を介して伝送する場合、連続ビット数は最大5ビットとなる。基本周波数は5GHzであるため、その5分の1の1GHzを伝送信号の最低周波数とする。ただし、伝送する信号の速度、符号化方法、システムに求められるエラー率の値などによって、最低周波数は異なる。
【0023】
図2(a)は、結合導体101から結合導体201に差動信号を伝送するときの伝達特性を示したシミュレーション結果である。横軸は周波数、縦軸は伝達量である。破線220は回路素子部204、205が配置されない場合の伝達特性であり、実線221は回路素子部204、205が配置した場合の伝達特性である。破線220において、7GHz付近にピーキングが発生していることを確認できる。これは、結合導体201の寄生成分による自己共振が生じているためである。つまり結合導体201の自己共振周波数が7GHz程度であることが分かる。一方実線221においてはピーキングを抑えられていることが確認できる。高域では、回路素子部204,205が抵抗209、211として機能し整合されるためである。図2(b)は回路素子部204、205が配置されない場合における10Gbpsのシリアル信号を伝達したときの受信回路207に入力される信号のアイパターンである。図2(c)は回路素子部204、205が配置される場合の10Gbpsのシリアル信号を伝達したときのアイパターンである。図2(c)の方がアイの開口部があることが確認でき、波形の乱れを改善できていることを確認できる。
【0024】
ここで図3を用いて、抵抗209、211の値である結合系インピーダンスについて詳細に説明する。結合系インピーダンスとは、送信側の結合導体101と受信側の結合導体201が対向しているときにおいて、受信側の結合導体201がもつ整合インピーダンスのことである。図3(a)は、結合導体101と結合導体201との各距離dにおいて抵抗209、211のインピーダンスを変化させた場合の反射特性を示す。各グラフの最下点のときのインピーダンスが結合系インピーダンスである。すなわち、d=1mmの時の結合系インピーダンス(Zoc1)は160Ω程度であり、d=2mmの時の結合系インピーダンス(Zoc2)は200Ω程度であり、d=3mmの時の結合系インピーダンス(Zoc3)は220Ω程度であり、d=4mmの時の結合系インピーダンス(Zoc4)は220Ω程度である。また、結合導体201が結合導体101と対向しておらず、結合導体201単体の反射特性も示している。この図から分かるように、結合導体201単体の特性インピーダンス(Zo)は220Ω程度でありZoc3,Zoc4と略等しくなる。さらに図3(b)に距離dと結合系インピーダンスの関係のグラフを示した。距離dが小さいほど特性インピーダンスと結合系インピーダンスの差が大きくなっていることが確認できる。これは、結合導体201と結合導体101の結合が強くなるためである。
【0025】
図3(c)は、抵抗209、211のインピーダンスを変化させたときの、結合導体101から結合導体201に差動信号を伝送するときの伝達特性を示したシミュレーション結果である。なお図2のシミュレーション条件と同様、結合導体201と結合導体101の距離dは2mmである。破線220、実線221は図2と同じグラフである。222は抵抗209、211のインピーダンスを結合系インピーダンスの半分にした場合の伝達特性であり、223は抵抗209、211のインピーダンスを結合系インピーダンスの2倍にした場合の伝達特性である。図3(c)から分かるように、抵抗209、211が結合系インピーダンスから多少ずれた場合であっても回路素子部204、205が配置されない場合と比較するとピーキングが抑制されていること分かる。つまり結合系インピーダンスの半分以上かつ2倍以下の範囲に置いてであってもピーキング抑制の効果があることが分かる。
【0026】
なお、図1のフィルタ208、210のカットオフ周波数は、通過する信号の基本周波数成分を含む特性のフィルタであることが望ましい。具体的には、10Gbpsのベースバンド信号を結合導体101で102を介して伝送する場合、5GHzが基本周波数成分となる。よって、ハイパスフィルタは通過帯域として少なくとも5GHzが含まれる特性のフィルタを配置する。
【0027】
なお、本実施形態では、結合導体201は、結合導体101の終端抵抗104が接続される方の端部と近い端部から信号線を介して受信回路207と接続している。しかし、結合導体201の逆の端部、つまり、送信回路105が接続される方の端部から近い方の端部から信号線を介して受信回路207と接続されても同様にピーキングを抑制する効果がある。図4(a)に送信回路105が接続される方の端部から近い方の端部から信号線を介して受信回路207に接続される構成を示した。さらに、図4(a)の構成における伝達特性シミュレーション結果を図4(b)に示した。220、221は図2(a)と同様のグラフであり、224は4(a)の構成の伝達特性である。224から分かるように、220と比較してピーキングが抑制できていることが確認できる。
【0028】
さらに、本実施形態では結合導体201の両端に回路素子部204,205を配置した構成について述べたが、一方の端部にのみ回路素子部が配置されていてもよい。
【0029】
図5(a)、(b)において、回路素子部が一方の端部にのみ配置された場合の構成図を示した。
【0030】
さらに図5(a)、(b)の構成における伝達特性シミュレーション結果を図5(c)に示した。220、221は図2(a)と同様のグラフであり、225は図5(a)の構成の伝達特性であり、226は図5(b)の構成の伝達特性である。225,226から分かるように、220と比較してピーキングが抑制できていることが確認できる。
【0031】
<第2の実施形態>
実施形態1では、回路素子部204、205として、フィルタと抵抗の直列回路から構成される場合について述べた、実施形態2では、別のハイパスフィルタの構成について示す。
【0032】
図6(a)、(b)に、本実施形態における、受信装置20と回路素子部204、205のハイパスフィルタの回路構成を示した。送信装置10と信号の伝送方式は実施形態1と同じであり、受信装置20については同一の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
図6(a)において、回路素子部204、205はそれぞれ二つのハイパスフィルタを有する。図6(b)において、ハイパスフィルタ208、210、213、214の回路構成例を示す。コンデンサ215、216、インダクタ217、抵抗218から構成される。これは二次のチェビシェフフィルタの構成であるが、ハイパスフィルタとしての機能を有していればフィルタの次数や種類は問わない。例えば、ベッセル、ガウシアン、バタワース等の種類でも良い。また、受動素子のみで構成されていなくてもよい。なお、図6(a)、図6(b)において、フィルタ210の抵抗218は、フィルタ214の抵抗218と接続する。これは、インダクタ217が機能するためには中間電位となる箇所が必要になるためである。低周波数の信号を伝送する場合、インダクタ218はインピーダンスが低く短絡してしまい、回路素子部上でインピーダンスのバランスに偏りができてしまう。その偏りを解消するために、抵抗218を配置している。
【0034】
図6(c)に、図6(a)、図6(b)の構成における結合導体101から結合導体201に差動信号を伝送するときの伝達特性を示したシミュレーション結果を示した。シミュレーションにおいて、コンデンサ215、216を0.43pF、インダクタ217を4.6nH、抵抗218を50Ωと設定している。横軸は周波数、縦軸は伝達量である。227は図6(b)のハイパスフィルタを実装した場合の伝達特性である。破線220、実線221は図2と同じグラフである。220の7GHz付近で発生しているピーキングを、本実施形態でも抑制できていることが確認できる。また、227と221を比較すると、伝達量が227の方が大きいことが確認できる。このように、二次のチェビシェフフィルタの構成を用いることで、伝達量を大きくすることが可能である。
【0035】
<第3の実施形態>
本実施形態では、受信回路207の後段に更に補正回路を接続した際の構成について示す。図7(a)は、受信回路207の後段に補正回路217を接続した際の構成図である。送信装置10と信号の伝送方式は実施形態1と同じであり、受信装置20については同一の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
図7(a)において、実施形態2で用いた受信回路207の出力部に補正回路217を接続している。図7(b)は補正回路217の周波数特性を示している。横軸は周波数、縦軸は入力部から出力部への伝達量である。補正回路217は低域の周波数特性ほど伝達量が大きい特性をもつ。図7(c)は、結合導体101から結合導体201に差動信号を伝送するときの伝達特性を示したシミュレーション結果である。横軸は周波数、縦軸は伝達量である。228が補正回路を接続した際の伝達特性である。221に比べて、低域の周波数特性と周波数特性のピーク値の差を抑制できていることが確認できる。これは、221の周波数特性に対して図7(b)の周波数特性を持つ補正回路217により低域の周波数成分が強調されたためである。
【0037】
なお、補正回路217において、受信回路207と順番が入れ替わってもよいし、受信回路207の中に組み込まれてもよい。さらに、補正回路217の周波数特性に本実施系形態の特性に限らず、用途に合わせて選定してよい。例えば、高域の周波数特性を減衰する特性、ある周波数付近の周波数特性を強調する特性のもの等でもよい。
【0038】
なお、実施形態1~3における結合導体101、結合導体201の結合方法について、電界結合のみで行われてもよいし、磁界結合のみで行われてもよいし、電界結合と磁界結合の両方によって行われてもよい。また、電極102と電極202、電極103と電極103がそれぞれ対向していれば、送信装置10が移動してもよいし、受信装置20が移動してもよい。
【0039】
なお、実施形態1~3では、結合導体の形状として直方体の場合の構成を述べてきた。しかし直方体に限らず、結合導体101、201の形状は、電極102と電極202、電極103と電極203がそれぞれ互いに対向するように配置されていれば、直方体でなくてもよい。例えば、図8(a)のように角が丸みを帯びている形状、図8(b)のような楕円型、図8(c)のような多角形型でもよい。X軸方向の結合導体の幅が均一ではない場合は、回路素子部204、205を配置する場所を決定した後、最も整合のとれているインピーダンスを結合系インピーダンスとして扱う。
【0040】
(その他の実施形態)
また、本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
【0041】
(構成1)
差動信号を送信する送信装置と、
前記送信装置との間での電磁界結合により差動信号を受信する受信装置とを有し、
前記受信装置は、前記電磁界結合により差動信号を受信する2つの電極から構成される結合導体と、前記2つの電極間に配置される、少なくとも1つのハイパスフィルタと抵抗から構成される回路素子部と、前記結合導体と接続される受信回路と、を有し、
前記ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、前記結合導体の自己共振周波数より低いことを特徴とする無線通信装置。
【0042】
(構成2)
前記ハイパスフィルタは少なくとも1つのコンデンサから構成されることを特徴とする構成1に記載の無線通信装置。
【0043】
(構成3)
前記ハイパスフィルタのカットオフ周波数は前記差動信号の最低周波数以上であることを特徴とする構成1または2に記載の無線通信装置。
【0044】
(構成4)
前記回路素子部は前記2つの電極の少なくとも一方の端部に接続されることを特徴とする構成1から3のいずれか1つの構成に記載の無線通信装置。
【0045】
(構成5)
前記回路素子部は前記2つの電極の一方の端部と他の一方の端部に接続されることを特徴とする構成1から3のいずれか1構成に記載の無線通信装置。
【0046】
(構成6)
前記回路素子部の前記ハイパスフィルタは、前記2つの電極のうちの一方の電極の少なくとも一方の端部に接続し、前記抵抗は、前記2つの電極のうちの他方の電極の少なくとも一方の端部に接続することを特徴とする構成1から4のいずれか1構成に記載の無線通信装置。
【0047】
(構成7)
前記抵抗は前記結合導体の結合系インピーダンスの値の半分以上であり、前記結合導体の特性インピーダンスの2倍以下であることを特徴とする構成1から6のいずれか1構成に記載の無線通信装置。
【0048】
(構成8)
前記ハイパスフィルタはチェビシェフフィルタであることを特徴とする構成1から7のいずれか1構成に記載の無線通信装置。
【0049】
(構成9)
前記受信回路の出力部に補正回路が接続されることを特徴とする構成1から8のいずれか1構成に記載の無線通信装置。
【0050】
(構成10)
前記結合導体の電極は直方体の形状である構成1から9のいずれか1構成に記載の無線通信装置。
【0051】
(構成11)
前記送信装置は、差動信号を送信する2つの電極を有することを特徴とする構成1に記載の無線通信装置。
【0052】
(構成12)
他の通信装置との間での電磁界結合により差動信号を受信する受信装置であって、
前記電磁界結合により差動信号を受信する2つの電極から構成される結合導体と、
前記2つの電極間に配置される、少なくとも1つのハイパスフィルタと抵抗から構成される回路素子部と、前記結合導体と接続される受信回路と、を有し、前記ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、前記結合導体の自己共振周波数より低いことを特徴とする受信装置。
【符号の説明】
【0053】
100 無線通信システム
10 送信装置
20 受信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8