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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140912
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】発熱構造体及び発熱装置
(51)【国際特許分類】
   F24V 30/00 20180101AFI20250919BHJP
【FI】
F24V30/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040560
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】512261078
【氏名又は名称】株式会社クリーンプラネット
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 允俊
(72)【発明者】
【氏名】相川 献治
(72)【発明者】
【氏名】吉野 英樹
(57)【要約】
【課題】発熱体の温度分布を均一化し、かつ、発熱面の面積を増大させることができる発熱構造体及び発熱装置を提供する。
【解決手段】発熱構造体8は、水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、又はプロトン導電体で形成された支持体と、支持体に設けられ水素の吸蔵と放出とにより熱を発生する多層膜とを有する発熱体14と、筒状に形成され、発熱体14に囲まれた外周面15aを有するヒータ15とを備える。発熱体14は、外周面15aに対向して配置された内縁部51と、外周面15aに対し内縁部51よりもヒータ15の中心軸線CLに沿った第1方向に直交する第2方向に離間して配置された外縁部52と、内縁部51と外縁部52とを接続し、中心軸線CLを中心とする周方向に連続して延びた発熱面53とを有し、内縁部51から外縁部52へ熱伝導により熱を伝達させる。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、又はプロトン導電体で形成された支持体と、前記支持体に設けられ水素の吸蔵と放出とにより熱を発生する多層膜とを有する発熱体と、
筒状に形成され、前記発熱体に囲まれた外周面を有するヒータと
を備え、
前記多層膜は、水素吸蔵金属又は水素吸蔵合金で形成された厚さ1000nm未満の第1層と、前記第1層とは異なる水素吸蔵金属、水素吸蔵合金又はセラミックスで形成された厚さ1000nm未満の第2層とを有し、
前記発熱体は、前記外周面に対向して配置された内縁部と、前記外周面に対し前記内縁部よりも前記ヒータの中心軸線に沿った第1方向に直交する第2方向に離間して配置された外縁部と、前記内縁部と前記外縁部とを接続し、前記中心軸線を中心とする周方向に連続して延びた発熱面とを有し、前記内縁部から前記外縁部へ熱伝導により熱を伝達させる発熱構造体。
【請求項2】
前記内縁部及び前記外縁部は、前記周方向に連続的に延びており、
前記発熱面は、前記第1方向に直交する平面内に配置されている請求項1に記載の発熱構造体。
【請求項3】
前記発熱体は、前記第1方向に複数配置されている請求項2に記載の発熱構造体。
【請求項4】
前記第1方向に沿って配置された複数の前記発熱体のうち隣接する前記発熱体の間に設けられたスペーサーを備える請求項3に記載の発熱構造体。
【請求項5】
前記第1方向に沿って配置された複数の前記発熱体のうち前記第1方向の末端に配置された前記発熱体に隣接して設けられた一対の末端部材を備え、
前記スペーサーは、前記外周面に対し前記第2方向に離間して配置された第1枠部と、前記第1枠部から前記第1方向に突出して設けられ、前記発熱体の前記外縁部に当接している第1突出部とを有し、
前記末端部材は、前記外周面に当接している内枠部と、前記外周面に対し前記内枠部よりも前記第2方向に離間して配置された外枠部と、前記内枠部と前記外枠部とを連結する連結部と、前記外枠部から前記第1方向に突出して設けられ、前記発熱体の前記外縁部に当接している第2突出部とを有する請求項4に記載の発熱構造体。
【請求項6】
前記第1突出部は、前記周方向に間隔をあけて配置された複数の第1ピンで構成され、
前記第2突出部は、前記周方向に間隔をあけて配置された複数の第2ピンで構成されている請求項5に記載の発熱構造体。
【請求項7】
前記内縁部及び前記外縁部は、前記周方向に間欠的に複数配置されており、
前記発熱面は、前記周方向に交互に複数回折り返しながら連続的に延びている請求項1に記載の発熱構造体。
【請求項8】
前記発熱体の形状を保持する保持部を備え、
前記保持部は、前記発熱体の前記第1方向の端部が嵌合する溝部を有し、
前記溝部は、前記周方向に交互に複数回折り返しながら連続的に延びている請求項7に記載の発熱構造体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の発熱構造体と、
内部に前記発熱構造体を収容する密閉容器と、
前記密閉容器の内部に前記水素を含む水素系ガスを供給する供給部と、
前記密閉容器の内部の前記水素系ガスを排出する排出部と
を備える発熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱構造体及び発熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素を含むガスが供給される密閉容器と、水素の吸蔵と放出とにより熱を発生する発熱体と、円柱状のヒータとを備えた発熱装置が提案されている(特許文献1参照)。発熱体は、板状部材が渦巻き状に巻回されて構成された巻回発熱体であり、ヒータの外周面の一部を覆うように配置されている。発熱体及びヒータは、密閉容器に収容されている。発熱体は、水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、又はプロトン導電体で形成された台座と、台座に設けられた多層膜とを有する。多層膜は、水素吸蔵金属又は水素吸蔵合金で形成された厚さ1000nm未満の第1層と、第1層とは異なる水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、又はセラミックスで形成された厚さ1000nm未満の第2層とを有する。第1層と第2層との間には、異種物質界面が形成されている。特許文献1の発熱装置では、発熱体に水素が吸蔵された後、密閉容器の内部の真空排気と発熱体の加熱とが行われることにより、発熱体において水素が異種物質界面を量子拡散により透過し、或いは、水素が異種物質界面を量子拡散によって拡散し、過剰熱を発生する。
【0003】
一方で、本願発明者らは、発熱体の温度と過剰熱の発生との間に相関関係があり、発熱体の温度が高温であるほど過剰熱が多く発生する傾向にあることを見出した。発熱体の温度が高すぎると当該発熱体が融点に達して破損するため、ヒータにより発熱体を加熱する際は、発熱体の温度を均一かつ破損しない程度の高温にすることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2023/149220号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発熱体は、多層膜の表面で構成される発熱面の面積を大きくすることにより、発熱量の増加が可能となる。真空排気された密閉容器の内部では気体の対流による熱伝達が期待できないため、ヒータから発熱体へ輻射により熱が伝わるとともに、発熱体の内部においては高温側から低温側へ熱伝導により熱が伝わる。このため、発熱体の発熱面の面積を大きくするほど、発熱体の高温側と低温側との間で温度差がつきやすくなるという問題があった。また、密閉容器の内部に複数の発熱体を配置した場合には、発熱体同士の発熱面が接触し、発熱量の低下や金属の熱拡散による発熱体同士の融着が生じるという問題があった。
【0006】
特許文献1の発熱装置は、円柱状のヒータの外周面が巻回発熱体に囲まれており、ヒータにより巻回発熱体を効率的に加熱できるように構成されている。しかしながら、特許文献1の発熱装置では、ヒータからの輻射熱が巻回発熱体の渦巻き方向の外周部に伝わり難いため、巻回発熱体の渦巻き方向の内周部と外周部との間に温度差が生じ、巻回発熱体の温度分布を均一化することが困難であった。また、巻回発熱体の巻き数を増やすほど巻回発熱体の内周部と外周部との温度差が大きくなるため、発熱面の面積を増大させることも困難であった。
【0007】
本発明は、発熱体の温度分布を均一化し、かつ、発熱面の面積を増大させることができる発熱構造体及び発熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る発熱構造体は、水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、又はプロトン導電体で形成された支持体と、前記支持体に設けられ水素の吸蔵と放出とにより熱を発生する多層膜とを有する発熱体と、筒状に形成され、前記発熱体に囲まれた外周面を有するヒータとを備え、前記多層膜は、水素吸蔵金属又は水素吸蔵合金で形成された厚さ1000nm未満の第1層と、前記第1層とは異なる水素吸蔵金属、水素吸蔵合金又はセラミックスで形成された厚さ1000nm未満の第2層とを有し、前記発熱体は、前記外周面に対向して配置された内縁部と、前記外周面に対し前記内縁部よりも前記ヒータの中心軸線に沿った第1方向に直交する第2方向に離間して配置された外縁部と、前記内縁部と前記外縁部とを接続し、前記中心軸線を中心とする周方向に連続して延びた発熱面とを有し、前記内縁部から前記外縁部へ熱伝導により熱を伝達させる。
【0009】
本発明に係る発熱装置は、上記の発熱構造体と、内部に前記発熱構造体を収容する密閉容器と、前記密閉容器の内部に前記水素を含む水素系ガスを供給する供給部と、前記密閉容器の内部の前記水素系ガスを排出する排出部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発熱体の温度分布を均一化し、かつ、発熱面の面積を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る熱利用システムの構成を概略的に示す概念図である。
図2】第1実施形態に係る発熱構造体の分解斜視図である。
図3】発熱体の構成を示す断面図である。
図4】第1実施形態に係る発熱構造体の温度分布を示すグラフである。
図5】第2実施形態に係る発熱構造体の分解斜視図である。
図6】第3実施形態に係る熱利用システムの構成を概略的に示す概念図である。
図7図6のVII-VII線に沿った発熱構造体の概略断面図である。
図8】第3実施形態に係る発熱構造体の分解斜視図である。
図9】第3実施形態に係る発熱構造体の温度分布を示すグラフである。
図10】第4実施形態に係る熱利用システムの構成を概略的に示す概念図である。
図11】第5実施形態に係る熱利用システムの構成を概略的に示す概念図である。
図12】第6実施形態に係る熱利用システムの構成を概略的に示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。以下の説明及び図面では、共通の構成については共通の符号を付している。共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。
【0013】
(1)第1実施形態に係る熱利用システム
図1において、熱利用システム1は、熱媒体が流通する配管経路2と、配管経路2を流通する熱媒体を加熱する発熱装置3と、発熱装置3により加熱された熱媒体を熱源として利用する熱利用装置4とを備える。配管経路2に発熱装置3及び熱利用装置4が組み込まれている。配管経路2は、発熱装置3と熱利用装置4との間で密閉された循環路を形成する。
【0014】
熱媒体としては、気体又は液体を用いることができ、熱伝導率に優れかつ化学的に安定したものが好ましい。気体としては、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、窒素ガス、水蒸気、空気、二酸化炭素などが用いられる。液体としては、例えば、水、溶融塩(KNO(40%)-NaNO(60%)など)、液体金属(Pbなど)などが用いられる。また、熱媒体として、気体又は液体に固体粒子を分散させた混相の熱媒体を用いてもよい。固体粒子は、金属、金属化合物、合金、セラミックスなどである。金属としては、Cu、Ni、Ti、Coなどが用いられる。金属化合物としては、上記金属の酸化物、窒化物、ケイ化物などが用いられる。合金としては、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼などが用いられる。セラミックスとしては、アルミナなどが用いられる。熱媒体は、本実施形態ではヘリウムガスが用いられるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0015】
発熱装置3は、中空の密閉容器5と、密閉容器5に接続された水素タンク6と、密閉容器5に接続された真空ポンプ7と、密閉容器5に収容された発熱構造体8とを備える。
【0016】
密閉容器5は、耐熱性及び耐圧性を有する。密閉容器5は、例えば、ステンレス鋼、耐熱性非鉄合金鋼などから形成されている。密閉容器5の材料としては、使用温度に応じた材料が使用され、例えば、使用温度が700℃程度までの場合はステンレス鋼が使用され、使用温度が700℃を超える場合は耐熱性非鉄合金鋼が使用される。密閉容器5は、円筒状に形成されている。密閉容器5は、胴体と、胴体の上端に設けられた上蓋と、胴体の下端に設けられた下蓋とで構成される。胴体の上端が上蓋で気密に閉じられ、胴体の下端が下蓋で気密に閉じられることで、密閉容器5の内部に空間9が区画される。密閉容器5の形状は、円筒状に限定されず、楕円筒状、角筒状、球体状などでもよい。なお、発熱装置3においては、密閉容器5の上蓋側を上側とし、密閉容器5の下蓋側を下側とする。
【0017】
発熱装置3は、密閉容器5と水素タンク6とを接続する導入管10と、密閉容器5と真空ポンプ7とを接続する排気管11とを有する。導入管10は、密閉容器5の下蓋から延びて水素タンク6に結合され、水素タンク6に貯蔵されている水素系ガスを密閉容器5の内部の空間9に案内する導入路を構成する。排気管11は、密閉容器5の上蓋から延びて真空ポンプ7に結合され、密閉容器5の内部の空間9から真空ポンプ7に吸引される水素系ガスを案内する排気路を構成する。
【0018】
導入管10は、密閉容器5と水素タンク6との間に設けられた供給バルブ12を有する。供給バルブ12は、導入管10を流通する水素系ガスの流量を調整する。供給バルブ12は、例えば電磁バルブやエアバルブなどが用いられる。導入管10は、当該導入管10を流通する水素系ガスの圧力を検出する圧力センサーを有してもよい。
【0019】
排気管11は、密閉容器5と真空ポンプ7との間に設けられた排気バルブ13を有する。排気バルブ13は、排気管11を流通する水素系ガスの流量を調整する。排気バルブ13は、例えば電磁バルブやエアバルブなどが用いられる。排気管11は、当該排気管11を流通する水素系ガスの圧力を検出する圧力センサーを有してもよい。
【0020】
排気バルブ13が閉じられ供給バルブ12が開かれると、水素タンク6から密閉容器5の内部の空間9に水素系ガスを供給することが可能となる。供給バルブ12が閉じられ排気バルブ13が開かれると、真空ポンプ7により密閉容器5の内部の空間9の水素系ガスを排出することが可能となる。
【0021】
水素タンク6は、水素系ガスを貯留している。この例では、供給バルブ12が開放されたときに、導入管10を介して高圧の水素タンク6から低圧の密閉容器5の内部の空間9に水素系ガスが供給される。水素系ガスは、水素の同位体を含むガスである。水素系ガスとしては、重水素ガスと軽水素ガスとの少なくともいずれかが用いられる。軽水素ガスは、天然に存在する軽水素と重水素の混合物、すなわち、軽水素の存在比が99.985%であり、重水素の存在比が0.015%である混合物を含む。導入管10は、水素タンク6に貯留されている水素系ガスを密閉容器5の内部の空間9に送り出すポンプを有してもよい。
【0022】
真空ポンプ7は、排気管11を介して密閉容器5の内部から水素系ガスを排出する。真空ポンプ7の駆動により、密閉容器5の内部の空間9が減圧される。真空ポンプ7は、例えば、ターボ分子ポンプとドライポンプとで構成される。ターボ分子ポンプは、後述する制御部21から入力される制御信号に基づきタービン翼の回転数を調整する。ターボ分子ポンプの回転数に応じて空間9の減圧の速度が調整される。
【0023】
発熱構造体8は、密閉容器5を介して、密閉容器5の外面に沿って流れる熱媒体を加熱する。発熱構造体8により加熱された熱媒体の温度は、例えば50℃以上1500℃以下の範囲に達する。この例では、熱媒体の温度は700℃に設定される。
【0024】
発熱構造体8は、水素の吸蔵と放出とにより熱を発生する発熱体14と、発熱体14を加熱するヒータ15と、発熱体14の温度を検出する温度センサー17とを備える。
【0025】
発熱体14は、貫通孔を有する板状に形成されている。発熱体14は、本実施形態では、円環状に形成されており、中央に円形の貫通孔を有する。発熱体14の貫通孔にはヒータ15が配置されている。発熱体14は、ヒータ15の中心軸線CL(図2参照)に沿った第1方向に複数配置されている。すなわち、発熱構造体8は、第1方向に沿って配置された複数の発熱体14を備える。なお、発熱体14は、円環状である場合に限定されず、多角環状などでもよい。発熱体14の構成については、別の図面を用いて後述する。
【0026】
ヒータ15は、中空又は中実の筒状に形成されている。本実施形態では、ヒータ15は、中実の円筒状に形成されており、中心軸線CLに沿った第1方向の全長に亘って均一な直径を有する。なお、「均一」とは、厳密に均一である場合の他、ほぼ均一である場合、すなわち発明の主旨を逸脱しない範囲で異なる場合も含むものとする。ヒータ15の形状は、円筒状である場合に限定されず、楕円筒状、角筒状など、他の適宜な形状としてもよい。筒状のヒータ15としては、シーズヒータ、セラミックヒータ、ランプヒータなどが用いられる。例えばシーズヒータは、螺旋状に巻かれた発熱線が金属製のパイプ内に収容された構成を有する。発熱線は、パイプ内において、パイプの軸方向の両端から所定の距離までの部分以外の部分に配置されている。発熱線の両端には、電源と接続される一対の端子が接続されている。一対の端子は、パイプの内部から外部に延びている。発熱線は、一対の端子を介して電源から電流が印加されることにより、ジュール熱を発生する。パイプは、発熱線で発生したジュール熱により加熱される。
【0027】
ヒータ15は、発熱体14に囲まれた外周面15aを有する。外周面15aは、本実施形態では円筒面とされている。ヒータ15は、外周面15aから輻射熱を発生する。
【0028】
ヒータ15は、一対の電極部20を有する。一対の電極部20は、導電線18と接続されている。導電線18は、電源19と接続されており、一対の電極部20と電源19とを電気的に接続する。ヒータ15は、電源19から導電線18及び一対の電極部20を介して電力が供給されることにより、外周面15aの温度が上昇する。ヒータ15は、外周面15aから発生する輻射熱により発熱体14を加熱する。一対の電極部20は、図1ではヒータ15の両端に設けられているが、ヒータ15の一端又は他端に設けてもよい。一対の電極部20は、図1では密閉容器5の内部から外部に延びているが、密閉容器5の内部に収容されていてもよい。例えば、密閉容器5の上蓋及び下蓋に一対の接続端子を設け、密閉容器5の外部において一対の接続端子を導電線18と接続し、密閉容器5の内部において一対の電極部20を一対の接続端子と接続してもよい。
【0029】
温度センサー17は、検出した温度を特定する検出信号を出力する。温度センサー17は、例えば、発熱体14に埋め込まれる熱電対を有する。熱電対は、検出した温度を特定する電圧を出力する。
【0030】
発熱装置3は、真空ポンプ7、供給バルブ12、排気バルブ13、温度センサー17及び電源19と電気的に接続された制御部21を備える。制御部21は、例えば、読み出し専用メモリ(ROM)その他の記憶ユニットに格納されたアプリケーションプログラムに基づき演算処理を実現するマイクロプロセッサー(MPU)や、演算処理にあたって一時的にプログラムやデータを保持するランダムアクセスメモリ(RAM)などを備える。
【0031】
制御部21は、真空ポンプ7、供給バルブ12、排気バルブ13及び電源19の動作をそれぞれ制御する制御信号を出力する。真空ポンプ7、供給バルブ12、排気バルブ13及び電源19は、制御部21から入力される制御信号に基づき動作する。
【0032】
制御部21は、供給バルブ12を閉じ、排気バルブ13を開放し、真空ポンプ7を駆動することにより、密閉容器5の内部の空間9の水素系ガスの排出(真空排気)を行う。
【0033】
制御部21は、真空ポンプ7の駆動を停止し、排気バルブ13を閉じ、供給バルブ12を開放することにより、密閉容器5の内部の空間9に水素系ガスの供給を行う。
【0034】
制御部21は、電源19の出力を制御することにより、電源19から導電線18及び一対の電極部20を介してヒータ15に供給される電力の大きさを調整する。電源19の出力が制御されることで、ヒータ15により加熱される発熱体14の温度が調整され、発熱体14を発熱に最適な温度の範囲内(例えば、50℃~1500℃)に維持することが可能となる。
【0035】
発熱装置3では、水素タンク6と導入管10と供給バルブ12とにより、密閉容器5の内部に水素を含む水素系ガスを供給する供給部が構成される。発熱装置3では、真空ポンプ7と排気管11と排気バルブ13とにより、密閉容器5の内部の水素系ガスを排出する排出部が構成される。
【0036】
熱利用装置4は、発熱装置3の密閉容器5を格納する格納容器41と、格納容器41の内部で発熱装置3により加熱された熱媒体(この例ではヘリウムガス)に基づき発電する第1発電ユニット42と、第1発電ユニット42から格納容器41に向けて熱媒体を送り出す圧力ポンプ43と、圧力ポンプ43と格納容器41との間に設けられた流量制御弁44とを備える。
【0037】
格納容器41は、断熱性及び耐圧性を有する。格納容器41は、例えば、ステンレス鋼、耐熱性非鉄合金鋼などから形成されている。格納容器41の材料としては、使用温度に応じた材料が使用され、例えば、使用温度が700℃程度までの場合はステンレス鋼が使用され、使用温度が700℃を超える場合は耐熱性非鉄合金鋼が使用される。格納容器41は、熱媒体が流入する流入口41aと、熱媒体が流出する流出口41bとを有する。流入口41aから格納容器41の内部に流入した熱媒体は、格納容器41の内部に格納された発熱装置3の密閉容器5の外面に沿って流れ、密閉容器5に収容された発熱構造体8により加熱される。格納容器41の内部で熱媒体の温度が上昇し、高温の熱媒体が得られる。高温の熱媒体は、格納容器41の流出口41bから流出し、第1発電ユニット42に流入する。
【0038】
第1発電ユニット42は、格納容器41から供給された高温の熱媒体を圧縮する圧縮機(図示なし)と、圧縮機により圧縮された高温かつ高圧の熱媒体に基づき駆動するガスタービン42aと、ガスタービン42aに連結された発電機42bとを備える。第1発電ユニット42では、熱媒体の温度は例えば600℃以上1500℃以下の範囲内に調整される。ガスタービン42aの出力軸は、発電機42bの入力軸に連結されている。ガスタービン42aのタービン翼が回転することで、発電機42bのローターが駆動され、発電機42bで電力が生成(発電)される。第1発電ユニット42で熱が利用された熱媒体は、第1発電ユニット42から流出し、圧力ポンプ43に流入する。
【0039】
圧力ポンプ43は、第1発電ユニット42から供給された熱媒体を予め定められた圧力で格納容器41に向けて送り出す。圧力ポンプ43は、例えばメタルベローズポンプが用いられる。
【0040】
流量制御弁44は、圧力ポンプ43から格納容器41に向けて流通する熱媒体の流量を調整する。流量制御弁44は、例えばバリアブルリークバルブが用いられる。
【0041】
図2は、第1実施形態に係る発熱構造体8の分解斜視図である。図2に示すように、発熱体14は、ヒータ15の外周面15aに対向して配置された内縁部51と、外周面15aに対し内縁部51よりもヒータ15の中心軸線CLに沿った第1方向に直交する第2方向に離間して配置された外縁部52と、内縁部51と外縁部52とを接続し、中心軸線CLを中心とする周方向に連続して延びた発熱面53とを有する。内縁部51及び外縁部52は、ヒータ15の中心軸線CLを中心とする周方向に連続的に延びている。発熱面53は、ヒータ15の中心軸線CLに沿った第1方向に直交する平面内に配置されている。連続的とは、中心軸線CLを中心とする周方向に亘って一つながりであることをいう。第2方向は、中心軸線CLを中心とする放射方向(半径方向とも称する)である。
【0042】
内縁部51は、周方向の一周に亘って配置されている。内縁部51により発熱体14の貫通孔が形成されている。内縁部51は、ヒータ15の外周面15aから第2方向に離間した位置に設けられている。発熱体14の内縁部51とヒータ15の外周面15aとの間には隙間が形成されている。内縁部51の直径は、ヒータ15の直径よりも大きい。内縁部51の直径は、発熱体14の内径である。例えば発熱体14が多角環状である場合は、発熱体14の内径は、内縁部51の内接円の直径とする。
【0043】
外縁部52は、周方向の一周に亘って配置されている。外縁部52は、密閉容器5の内面(胴体の内面)から第2方向に離間した位置に設けられている。発熱体14の外縁部52と密閉容器5の内面との間には隙間が形成されている。外縁部52の直径は、密閉容器5の内径よりも小さい。密閉容器5の内径は、胴体の内面の直径である。外縁部52の直径は、発熱体14の外径である。例えば発熱体14が多角環状である場合は、発熱体14の外径は、外縁部52の外接円の直径とする。
【0044】
発熱面53は、内縁部51から外縁部52まで連続して延びている。すなわち、発熱面53は、第1方向に直交する第2方向に連続して延びている。発熱面53は、円環状に形成されている。発熱面53は、後述する多層膜62(図3参照)の表面である。発熱体14は、発熱面53の面積が大きいほど、発熱量が増加する。発熱体14の発熱量とは、水素原子が後述する異種物質界面73を量子拡散によって透過し、或いは、水素原子が異種物質界面73を量子拡散によって拡散して発生する熱量のことである。
【0045】
発熱体14は、ヒータ15の外周面15aから発生する輻射熱を内縁部51で受ける。内縁部51は、ヒータ15の外周面15aからの輻射熱により温度が上昇する。内縁部51の熱は、熱伝導により外縁部52へ伝達される。すなわち、発熱体14は、内縁部51から外縁部52へ熱伝導により熱を伝達させる。外縁部52は、内縁部51からの熱伝導により温度が上昇する。これにより、内縁部51と外縁部52との温度差が小さくなり、発熱体14の温度分布が均一化される。
【0046】
発熱構造体8は、第1方向に沿って配置された複数の発熱体14のうち隣接する発熱体14の間に設けられたスペーサー55を備える。スペーサー55は、耐熱性及び耐圧性を有する材料で形成される。スペーサー55は、隣接する発熱体14の間に空間を形成し、隣接する発熱体14の接触を防止する。スペーサー55は、複数の発熱体14の第1方向への位置決めを行う。
【0047】
スペーサー55は、ヒータ15の外周面15aに当接している。スペーサー55は、環状に形成されている。スペーサー55の内縁部で形成される開口にヒータ15が挿入される。スペーサー55は、その内縁部がヒータ15の外周面15aに当接していることにより、ヒータ15の外周面15aに固定される。スペーサー55は、本実施形態では、円環状に形成されている。なお、スペーサー55は、円環状である場合に限定されず、多角環状などでもよい。
【0048】
次に、発熱体14の構成について説明する。図3は、発熱体14の構成を示す断面図である。図3に示すように、発熱体14は、水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、又はプロトン導電体で形成された支持体61(台座とも称する)と、支持体61に設けられた多層膜62とを有する。多層膜62は、水素吸蔵金属又は水素吸蔵合金で形成された厚さ1000nm未満の第1層71と、第1層71とは異なる水素吸蔵金属、水素吸蔵合金又はセラミックスで形成された厚さ1000nm未満の第2層72とを有する。第1層71と第2層72との間、及び支持体61と多層膜62との間には異種物質界面73が形成されている。異種物質界面73は、水素原子を透過させる。発熱体14は、水素原子が異種物質界面73を量子拡散によって透過し、或いは、水素原子が異種物質界面73を量子拡散によって拡散し、過剰熱を発生する。発熱体14としては、国際公開WO2018/230447、国際公開WO2020/122097、国際公開WO2020/122098などに開示されている発熱体を用いることができる。発熱体14の詳細な構成、機能、製造方法については、国際公開WO2018/230447、国際公開WO2020/122097、国際公開WO2020/122098などに開示されたものと同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0049】
図3では、多層膜62は、支持体61の一方の面(例えば表面)に積層された構成としているが、これに限定されず、多層膜62は、支持体61の他方の面(例えば裏面)に積層された構成としてもよく、また、多層膜62は、支持体61の両方の面(表面及び裏面)に積層された構成としてもよい。
【0050】
本実施形態に係る発熱装置3の作用及び効果を説明する。まず、密閉容器5が開放され、密閉容器5の内部に発熱構造体8が設置され、密閉容器5が密閉される。発熱構造体8の一対の電極部20は、導電線18を介して電源19に接続される。排気バルブ13が開放され、真空ポンプ7が駆動される。密閉容器5の内部の空間9が真空排気される。真空ポンプ7の駆動が停止され、排気バルブ13が閉じられ、電源19が駆動される。電源19から導電線18及び一対の電極部20を介して、ヒータ15に電力が供給される。ヒータ15は、電力が供給されることにより外周面15aの温度が上昇する。発熱体14は、ヒータ15の外周面15aから発生する輻射熱を内縁部51で受ける。内縁部51は、ヒータ15の外周面15aからの輻射熱により温度が上昇する。発熱体14は、内縁部51と外縁部52とが発熱面53により連続的に繋がっており、内縁部51の熱を熱伝導により外縁部52へ伝達させる。外縁部52は、内縁部51からの熱伝導により温度が上昇する。内縁部51と外縁部52との温度差が小さくなり、発熱体14の温度分布が均一化される。このようにして発熱体14の温度を均一かつ特定の温度に上昇させることができる。例えば、発熱体14の温度が200℃程度とされることで、発熱体14から水分を除去することができる。
【0051】
次に、電源19の出力が高くされ、発熱体14の温度が更に上昇する。例えば、発熱体14の温度が300℃程度とされる。供給バルブ12が開放される。水素タンク6から密閉容器5の内部の空間9に水素系ガスが流入する。密閉容器5の内部の空間9は水素系ガスで満たされる。発熱体14は水素を吸蔵する。具体的には、空間9の水素分子が発熱体14の多層膜62の表面(支持体61とは反対側の面)に吸着し、この水素分子が2つの水素原子に解離する。そして、解離した水素原子が多層膜62の内部に侵入(吸蔵)する。
【0052】
発熱体14に水素を吸蔵させた後、供給バルブ12が閉じられる。電源19の出力が制御され、発熱体14の温度が、発熱に最適な温度の範囲のうちの任意の温度(例えば700℃程度)とされる。このとき、排気バルブ13が開放され、真空ポンプ7が駆動される。密閉容器5の内部の空間9から水素系ガスが排出される。発熱体14は水素を放出する。具体的には、多層膜62の内部に侵入した水素原子が、多層膜62の表面に戻って再結合し、水素分子として放出される。この結果、水素原子が異種物質界面73を量子拡散によって透過し、或いは、水素原子が異種物質界面73を量子拡散によって拡散し、発熱体14において過剰熱を発生する。
【0053】
本実施形態に係る発熱構造体8は、発熱体14の内縁部51と外縁部52とが発熱面53により接続されており、発熱面53がヒータ15の中心軸線CLを中心とする周方向に連続して延びている。ヒータ15の外周面15aから発生する輻射熱により、発熱体14の内縁部51が加熱される。このとき、発熱体14では、内縁部51の熱が熱伝導により外縁部52へ伝達される。これにより、発熱体14全体に熱が伝わり、発熱体14の内縁部51と外縁部52との温度差が小さくなる。したがって、発熱構造体8は、発熱体14の温度分布を均一化することができる。
【0054】
発熱構造体8の温度分布を解析した結果を図4に示す。ヒータ15の中心軸線CLと発熱体14の内縁部51及び外縁部52を含む断面において、ヒータ15の中心軸線CLから密閉容器5の内面までの温度を解析した。市販の熱解析ソフトウェアを使用して熱伝導と輻射のシミュレーションを行った。電源19からヒータ15に供給される電力は400Wとした。図4において、横軸はヒータ15の中心軸線CLを中心とする半径方向(放射方向)の位置を示し、縦軸は温度を示す。図4より、発熱体14の内縁部51の温度と外縁部52の温度とが約550℃となり、発熱体14の温度分布が均一化されていることが確認できた。発熱体14の内縁部51と外縁部52とが発熱面53により連続的に繋がっていることにより、発熱体14全体に熱が伝わり、内縁部51と外縁部52との温度差が小さくなった結果と考えられる。
【0055】
発熱構造体8は、第1方向に沿って複数の発熱体14が配置されていることにより、各々の発熱面53の面積を加算した総面積が増大し、発熱量が増加する。発熱構造体8は、発熱体14の数を増やすだけで、発熱面53の総面積を容易に増大させることができる。発熱構造体8は、発熱体14の数を変更することにより、容易に発熱量を増減させることができる。
【0056】
発熱構造体8は、第1方向に沿って配置された複数の発熱体14のうち隣接する発熱体14の間に設けられたスペーサー55を備えることにより、隣接する発熱体14の間に空間が形成され、隣接する発熱体14の接触が防止される。これにより、発熱体14同士の発熱面53の接触による発熱量の低下や金属の熱拡散による発熱体14同士の融着が抑制される。各々の発熱体14は、隣接する発熱体14からの輻射熱により効率的に加熱され、より短時間で発熱に最適な温度に到達することが可能となる。
【0057】
本実施形態に係る熱利用システム1の作用及び効果を説明する。配管経路2では、圧力ポンプ43により、熱媒体としてのヘリウムガスが格納容器41に流入する。格納容器41では、発熱装置3からヘリウムガスに熱が伝達され、ヘリウムガスの温度が上昇する。格納容器41から流出した高温のヘリウムガスは、第1発電ユニット42の圧縮機(図示なし)に流入する。圧縮機から流出した高温かつ高圧のヘリウムガスは、ガスタービン42aに流入し、当該ガスタービン42aのタービン翼を回転させる。タービン翼の回転は、発電機42bのローターに伝達される。発電機42bで電力が生成される。
【0058】
ヘリウムガスの熱エネルギーは、ガスタービン42aのタービン翼の回転に消費される。ガスタービン42aでヘリウムガスの温度が下降するとともに圧力が低下する。ガスタービン42aから流出したヘリウムガスは、圧力ポンプ43に吸い込まれる。圧力ポンプ43から格納容器41に向けてヘリウムガスが送り出される。ヘリウムガスの循環に応じて発電が継続される。
【0059】
以上のように、熱利用システム1は、水素の吸蔵と放出とにより熱を発生する発熱体14を備える発熱装置3により加熱された熱媒体を熱源として利用するので、安価、クリーン、安全にエネルギーを供給することができる。
【0060】
熱利用システム1では、ヒータ15を中心として、外周面15aを覆うように発熱体14が設けられ、発熱体14を覆うように密閉容器5が設けられ、密閉容器5を覆うように格納容器41が設けられていることで、ヒータ15により効率的に発熱体14を加熱し、発熱体14により効率的に熱媒体を加熱することができる。
【0061】
(2)第2実施形態に係る発熱構造体
上記第1実施形態では第1方向に沿って配置された複数の発熱体14のうち隣接する発熱体14の間にスペーサー55が設けられているが、第2実施形態では、スペーサーに加え、第1方向の末端に配置された発熱体14に隣接して一対の末端部材が設けられている。
【0062】
図5は、第2実施形態に係る発熱構造体8aの分解斜視図である。発熱構造体8aは、第1実施形態に係る発熱装置3において、発熱構造体8の代わりに用いることができる。なお、上記第1実施形態と同一又は同等の構成要素及び部材については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
図5に示すように、発熱構造体8aは、発熱体14と、ヒータ15と、温度センサー17(図示なし)とを備える。発熱体14は、ヒータ15の中心軸線CLに沿った第1方向に複数配置されている。
【0064】
発熱構造体8aは、第1方向に沿って配置された複数の発熱体14のうち隣接する発熱体14の間に設けられたスペーサー75と、第1方向に沿って配置された複数の発熱体14のうち第1方向の末端に配置された発熱体14に隣接して設けられた一対の末端部材76とを備える。
【0065】
スペーサー75は、耐熱性及び耐圧性を有する材料で形成される。スペーサー75は、隣接する発熱体14の間に空間を形成する。スペーサー75は、隣接する発熱体14の接触を防止する。スペーサー75は、複数の発熱体14の第1方向への位置決めを行う。スペーサー75は、第1枠部78と、第1突出部79とを有する。
【0066】
第1枠部78は、ヒータ15の外周面15aに対し第2方向に離間して配置されている。第1枠部78は、環状に形成されている。第1枠部78の内縁部で形成される開口にヒータ15が挿入される。第1枠部78の内縁部とヒータ15の外周面15aとの間には隙間が形成されている。第1枠部78の内径はスペーサー75の内径であり、第1枠部78の外径はスペーサー75の外径である。第1枠部78の外径は、発熱体14の外径よりも大きい。第1枠部78は、本実施形態では、円環状に形成されている。なお、第1枠部78は、円環状である場合に限定されず、多角環状などでもよい。
【0067】
第1突出部79は、第1枠部78から第1方向に突出して設けられ、発熱体14の外縁部52に当接している。第1突出部79は、周方向に間隔をあけて配置された複数の第1ピンで構成される。複数の第1ピンは、その内縁部で発熱体14の外縁部52に当接する。
【0068】
一対の末端部材76は、複数の発熱体14と複数のスペーサー75とを第1方向から挟み込む。一対の末端部材76は、互いに同じ構成を有する。末端部材76は、内枠部81と、外枠部82と、連結部83と、第2突出部84とを有する。
【0069】
内枠部81は、ヒータ15の外周面15aに当接している。内枠部81は、環状に形成されている。内枠部81の内縁部で形成される開口にヒータ15が挿入される。内枠部81は、その内縁部がヒータ15の外周面15aに当接していることにより、末端部材76をヒータ15の外周面15aに固定させる。内枠部81は、本実施形態では、円環状に形成されている。なお、内枠部81は、円環状である場合に限定されず、多角環状などでもよい。
【0070】
外枠部82は、ヒータ15の外周面15aに対し内枠部81よりも第2方向に離間して配置されている。外枠部82は、環状に形成されている。外枠部82の内縁部で形成される開口に内枠部81が配置されている。外枠部82は、本実施形態では、円環状に形成されている。なお、外枠部82は、円環状である場合に限定されず、多角環状などでもよい。
【0071】
連結部83は、内枠部81と外枠部82とを連結している。連結部83は、周方向に間隔をあけて複数配置されている。すなわち、末端部材76は、内枠部81と外枠部82とを連結する複数の連結部83を備え、複数の連結部83が周方向に間隔をあけて配置された構成を有する。複数の連結部83同士の間には隙間が形成されている。図5では、4つの連結部83が、ヒータ15の中心軸線CLを中心として放射状に延びるように配置されている。
【0072】
第2突出部84は、外枠部82から第1方向に突出して設けられ、発熱体14の外縁部52に当接している。第2突出部84は、周方向に間隔をあけて配置された複数の第2ピンで構成される。複数の第2ピンは、その内縁部で発熱体14の外縁部52に当接する。
【0073】
第2実施形態に係る発熱構造体8aは、発熱体14の内縁部51と外縁部52とが発熱面53により接続されており、発熱面53がヒータ15の中心軸線CLを中心とする周方向に連続して延びている。ヒータ15の外周面15aから発生する輻射熱により、発熱体14の内縁部51が加熱される。このとき、発熱体14では、内縁部51の熱が熱伝導により外縁部52へ伝達される。これにより、発熱体14全体に熱が伝わり、発熱体14の内縁部51と外縁部52との温度差が小さくなる。したがって、発熱構造体8aは、発熱体14の温度分布を均一化することができる。
【0074】
発熱構造体8aは、第1方向に沿って複数の発熱体14が配置されていることにより、発熱面53の総面積が増大し、発熱量が増加する。発熱構造体8aは、発熱体14の数に応じて、発熱量を調整することができる。
【0075】
発熱構造体8aは、第1方向に沿って配置された複数の発熱体14のうち隣接する発熱体14の間にスペーサー75が設けられていることにより、隣接する発熱体14の間に空間が形成され、隣接する発熱体14の接触が防止される。これにより、発熱体14同士の発熱面53の接触による発熱量の低下や金属の熱拡散による発熱体14同士の融着が抑制される。各々の発熱体14は、隣接する発熱体14からの輻射熱により効率的に加熱され、より短時間で発熱に最適な温度に到達することが可能となる。
【0076】
発熱構造体8aは、スペーサー75に加え、第1方向に沿って配置された複数の発熱体14のうち第1方向の末端に配置された発熱体14に隣接して設けられた一対の末端部材76を備えている。発熱構造体8aでは、スペーサー75の第1突出部79が発熱体14の外縁部52に当接し、末端部材76の第2突出部84が発熱体14の外縁部52に当接し、末端部材76が内枠部81でヒータ15の外周面15aに固定されることにより、複数の発熱体14とヒータ15と複数のスペーサー75と一対の末端部材76とが一体化される。これにより、ヒータ15に対し、複数の発熱体14と複数のスペーサー75と一対の末端部材76の第1方向及び第2方向への位置決めが行われる。
【0077】
(3)第3実施形態に係る熱利用システム
上記第1及び第2実施形態では発熱体14が円環状に形成されているが、第3実施形態では発熱体の形状が異なる。
【0078】
図6は、第3実施形態に係る熱利用システム1aの構成を概略的に示す概念図である。熱利用システム1aは、上記第1実施形態の発熱装置3に代えて、発熱装置3aを備える。発熱装置3aは、熱利用装置4とともに配管経路2に組み込まれている。なお、上記各実施形態と同一又は同等の構成要素及び部材については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
発熱装置3aは、密閉容器5と、水素タンク6と、真空ポンプ7と、発熱構造体8bとを備える。発熱装置3aは、第1実施形態に係る発熱構造体8の代わりに、発熱構造体8bを備える。発熱構造体8bは、水素の吸蔵と放出とにより熱を発生する発熱体14aと、発熱体14aを加熱するヒータ15と、発熱体14aの温度を検出する温度センサー17とを備える。
【0080】
発熱体14aは、中空の筒状に形成されている。発熱体14aの内部の空間にはヒータ15が配置されている。発熱体14aは、ヒータ15の中心軸線CLに沿った第1方向に連続して延びており、かつ、中心軸線CLを中心とする周方向にジグザグに折り返しながら連続して延びている。
【0081】
図7を用いて発熱体14aの具体的な形状を説明する。図7は、図6のVII-VII線に沿った発熱構造体8bの概略断面図である。図7に示すように、発熱体14aは、ヒータ15の中心軸線CLを中心として、内側と外側とで交互に複数回折り返され、その両端が接続された構成を有する。発熱体14aは、第1方向から見た平面視において、中心軸線CLを中心とする周方向にジグザグ状に連続して延びた形状(星型形状とも称する)を有する。
【0082】
発熱体14aは、ヒータ15の外周面15aに対向して配置された内縁部91と、外周面15aに対し内縁部91よりも中心軸線CLに沿った第1方向に直交する第2方向に離間して配置された外縁部92と、内縁部91と外縁部92とを接続し、中心軸線CLを中心とする周方向に連続して延びた発熱面93とを有する。内縁部91及び外縁部92は、中心軸線CLを中心とする周方向に間欠的に複数配置されている。発熱面93は、中心軸線CLを中心とする周方向に交互に複数回折り返しながら連続的に延びている。間欠的とは、中心軸線CLを中心とする周方向において一つながりではないことをいう。すなわち、発熱体14aは、周方向に間欠的に配置された複数の内縁部91と、周方向に間欠的に配置された複数の外縁部92と、周方向に交互に複数回折り返しながら連続的に延びている発熱面93とを有する。
【0083】
内縁部91は、発熱体14aの内側の折り返し部を構成する。内縁部91は、第1方向に延びている。内縁部91は、ヒータ15の外周面15aから第2方向に離間した位置に設けられている。内縁部91と外周面15aとの間には隙間が形成されている。
【0084】
外縁部92は、発熱体14aの外側の折り返し部を構成する。外縁部92は、第1方向に延びている。外縁部92は、密閉容器5の内面(胴体の内面)から第2方向に離間した位置に設けられている。外縁部92と密閉容器5の内面との間には隙間が形成されている。
【0085】
発熱面93は、内縁部91で外側(外縁部92側)へ折り返され、外縁部92で内側(内縁部91側)へ折り返されている。発熱面93は、ヒータ15の外周面15aに直交する仮想平面94に対して傾斜した第1面93a及び第2面93bで構成される。図7では仮想平面94を二点鎖線で示している。第1面93a及び第2面93bは、仮想平面94を基準として対称に配置されている。第1面93a及び第2面93bは、中心軸線CLを中心とする周方向に交互に複数配置されている。隣接する第1面93aと第2面93bとの間には空間が形成されている。隣接する第1面93a及び第2面93bは、互いに対面して配置され、内縁部91又は外縁部92で連結されている。複数の第1面93a及び複数の第2面93bが、内縁部91と外縁部92とで交互に連結されることで、1つの連続体としての発熱面93が構成される。発熱面93は、中心軸線CLを中心とする周方向の一周に亘って配置されている。
【0086】
発熱体14aは、ヒータ15の外周面15aから発生する輻射熱を内縁部91で受ける。内縁部91は、ヒータ15の外周面15aからの輻射熱により温度が上昇する。内縁部91の熱は、熱伝導により外縁部92へ伝達される。すなわち、発熱体14aは、内縁部91から外縁部92へ熱伝導により熱を伝達させる。外縁部92は、内縁部91からの熱伝導により温度が上昇する。これにより、内縁部91と外縁部92との温度差が小さくなり、発熱体14aの温度分布が均一化される。
【0087】
図8は、第3実施形態に係る発熱構造体8bの分解斜視図である。図8に示すように、発熱構造体8bは、発熱体14aの形状を保持する保持部95を備える。保持部95は、耐熱性及び耐圧性を有する材料で形成される。保持部95は、発熱体14aの発熱面93を構成する第1面93aと第2面93bとの間に形成された空間を維持し、隣接する第1面93aと第2面93bとの接触を防止する。
【0088】
保持部95は、密閉容器5に固定される支柱96と、支柱96の一端に設けられた第1ガイド部97と、支柱96の一端と他端との間に設けられた第2ガイド部98とを有する。本実施形態では、密閉容器5の上蓋から4本の支柱96が吊り下げられている。なお、支柱96は、密閉容器5の上蓋から吊り下げられる場合に限定されず、密閉容器5の下蓋に対し、起立した姿勢で設けてもよい。支柱96は、密閉容器5の胴体に対し、第2方向に延びるように固定してもよい。
【0089】
第1ガイド部97は、発熱体14aの第1方向の一端部を受け止める。第1ガイド部97は、中央に開口97aを有する円盤状に形成されている。第1ガイド部97の開口97aにヒータ15が挿入される。
【0090】
第1ガイド部97は、発熱体14aの第1方向の一端部が嵌合する第1溝部97bを有する。第1溝部97bは、周方向に交互に複数回折り返しながら連続的に延びている。第1溝部97bは、発熱体14aの第1方向の一端部の位置決めを行う。第1溝部97bの幅は、発熱体14aの厚みよりも若干大きい。第1溝部97bの深さは、特に限定されない。第1溝部97bは、第1ガイド部97を第1方向に貫通するように構成してもよい。
【0091】
第2ガイド部98は、発熱体14aの第1方向の他端部を受け止める。第2ガイド部98は、中央に開口98aを有する円盤状に形成されている。第2ガイド部98の開口98aにヒータ15が挿入される。
【0092】
第2ガイド部98は、発熱体14aの第1方向の他端部が嵌合する第2溝部98bを有する。第2溝部98bは、周方向に交互に複数回折り返しながら連続的に延びている。第2溝部98bは、発熱体14aの第1方向の他端部の位置決めを行う。第2溝部98bの幅は、発熱体14aの厚みよりも若干大きい。第2溝部98bの深さは、特に限定されない。第2溝部98bは、第2ガイド部98を第1方向に貫通するように構成してもよい。
【0093】
第3実施形態に係る発熱構造体8bは、発熱体14aの内縁部91及び外縁部92が周方向に間欠的に複数配置されており、発熱面93が周方向に交互に複数回折り返しながら連続的に延びている。ヒータ15の外周面15aから発生する輻射熱により、発熱体14aの内縁部91が加熱される。このとき、発熱体14aでは、内縁部91の熱が熱伝導により外縁部92へ伝達される。これにより、発熱体14a全体に熱が伝わり、発熱体14aの内縁部91と外縁部92との温度差が小さくなる。したがって、発熱構造体8bは、発熱体14aの温度分布を均一化することができる。
【0094】
発熱構造体8bは、発熱体14aの発熱面93を構成する第1面93a及び第2面93bが周方向に交互に複数配置されており、隣接する第1面93aと第2面93bとの間に空間が形成されている。発熱構造体8bは、当該空間を介して、ヒータ15の外周面15aからの輻射熱を発熱面93の全面で受けることができるため、発熱体14aの内縁部91と外縁部92との温度差がより小さくなり、発熱体14aの温度分布をより均一化することができる。
【0095】
発熱構造体8bは、隣接する第1面93a及び第2面93bが互いに対面している。第1面は、隣接する第2面93bからの輻射熱により効率的に加熱される。第2面93bは、隣接する第1面93aからの輻射熱により効率的に加熱される。これにより、発熱体14aは、より短時間で発熱に最適な温度に到達することが可能となる。
【0096】
発熱構造体8bは、発熱体14aの形状を保持する保持部95を備える。保持部95は、発熱体14aの第1方向の一端部が嵌合する第1溝部97b、及び発熱体14aの第1方向の他端部が嵌合する第2溝部98bを有する。第1溝部97b及び第2溝部98bは、中心軸線CLを中心とする周方向交互に複数回折り返しながら連続的に延びている。保持部95により、発熱体14aの発熱面93を構成する第1面93aと第2面93bとの間に形成された空間が維持され、隣接する第1面93aと第2面93bとの接触が防止される。発熱構造体8bは、第1面93aと第2面93bとの接触による発熱量の低下や金属の熱拡散による第1面93aと第2面93bとの融着が抑制される。
【0097】
発熱構造体8bの温度分布を解析した結果を図9に示す。ヒータ15の中心軸線CLと発熱体14aの外縁部92を含む断面において、ヒータ15の中心軸線CLから密閉容器5の内面までの温度を解析した。市販の熱解析ソフトウェアを使用して熱伝導と輻射のシミュレーションを行った。電源19からヒータ15に供給される電力は600Wとした。図9において、横軸はヒータ15の中心軸線CLを中心とする半径方向(放射方向)の位置を示し、縦軸は温度を示す。図9では、ヒータ15の中心軸線CLから外周面15aまでのグラフの一部が省略されている。黒塗りの四角は、発熱体14aの内縁部91の温度と外縁部92の温度を示している。図9より、発熱体14aの内縁部91の温度と外縁部92の温度とが約600℃となり、発熱体14aの温度分布が均一化されていることが確認できた。発熱体14aの内縁部91と外縁部92とが発熱面93により連続的に繋がっていることにより、発熱体14a全体に熱が伝わり、内縁部91と外縁部92との温度差が小さくなった結果と考えられる。
【0098】
(4)第4実施形態に係る熱利用システム
図10は、第4実施形態に係る熱利用システム1bの構成を概略的に示す概念図である。熱利用システム1bは、上記第1実施形態の熱利用装置4に代えて、熱利用装置4aを備える。熱利用装置4aは、発熱装置3とともに配管経路2に組み込まれている。第4実施形態では、熱媒体として水が用いられる。なお、上記各実施形態と同一又は同等の構成要素及び部材については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0099】
熱利用装置4aは、発熱装置3の密閉容器5を格納するボイラー101と、ボイラー101から供給された気相の熱媒体に基づき発電する第2発電ユニット102と、第2発電ユニット102から供給された気相の熱媒体を冷却して液相の熱媒体とする復水器103と、復水器103から供給された液相の熱媒体を加圧してボイラー101に向けて送り出す給水ポンプ104とを備える。
【0100】
ボイラー101は、蒸発器として機能する配管105を格納している。配管105には給水ポンプ104から水が供給される。配管105は、発熱装置3の熱に曝される。密閉容器5から配管105に熱が伝達される。ボイラー101は、配管105の内部で高温かつ高圧の蒸気(気相の熱媒体)を生成する。高温かつ高圧の蒸気は、ボイラー101から第2発電ユニット102に供給される。
【0101】
第2発電ユニット102は、ボイラー101から供給された高温かつ高圧の蒸気に基づき駆動する蒸気タービン102aと、蒸気タービン102aに連結された発電機102bとを備える。第2発電ユニット102では、蒸気の温度は例えば300℃以上700℃以下の範囲内で調整される。蒸気タービン102aの出力軸は、発電機102bの入力軸に連結されている。蒸気タービン102aのタービン翼が回転することで、発電機102bのローターが駆動され、発電機102bで電力が生成される。熱が利用された後の蒸気は、第2発電ユニット102から復水器103に供給される。
【0102】
復水器103は、第2発電ユニット102から供給された蒸気を冷却水103aにより冷却して水(液相の熱媒体)に戻す。復水器103は、低圧の水を出力する。低圧の水は、復水器103から給水ポンプ104に供給される。給水ポンプ104は、復水器103から供給された水を予め定められた圧力でボイラー101に送り出す。
【0103】
以上のように、熱利用システム1bは、水素の吸蔵と放出とにより熱を発生する発熱体14を備える発熱装置3により加熱された熱媒体を熱源として利用するので、安価、クリーン、安全にエネルギーを供給することができる。
【0104】
なお、熱媒体には、水に代えて、発熱装置3の熱に応じて液相から気相に変化する物質を用いてもよい。熱媒体には、熱伝導率に優れかつ化学的に安定した物質が用いられることが好ましい。
【0105】
(5)第5実施形態に係る熱利用システム
図11は、第5実施形態に係る熱利用システム1cの構成を概略的に示す概念図である。熱利用システム1cは、上記第1実施形態の熱利用装置4に代えて、熱利用装置4bを備える。熱利用装置4bは、発熱装置3から熱を受け取って駆動するスターリングエンジン110と、スターリングエンジン110に連結される発電機111とを備える。なお、上記各実施形態と同一又は同等の構成要素及び部材については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0106】
スターリングエンジン110は、一端に閉塞端を有する第1シリンダー112と、閉塞端に向き合う位置で第1シリンダー112に収容されて、閉塞端との間に膨張室113を区画する膨張ピストン114と、一端に閉塞端を有する第2シリンダー115と、閉塞端に向き合う位置で第2シリンダー115に収容されて、閉塞端との間に圧縮室116を区画する圧縮ピストン117と、膨張室113と圧縮室116とを接続し、発熱装置3の密閉容器5から熱エネルギーを受け取る加熱器118と、圧縮室116及び加熱器118の間に配置される冷却器119と、冷却器119及び加熱器118の間に配置される再生器120と、連結ロッド121a、121bで膨張ピストン114及び圧縮ピストン117に個別に連結される出力軸としてのクランクシャフト122とを有する。
【0107】
スターリングエンジン110のクランクシャフト122(出力軸)は、発電機111の入力軸に連結されている。クランクシャフト122が回転することで、発電機111のローターが駆動され、発電機111で電力が生成される。
【0108】
膨張ピストン114は、第1シリンダー112内で、第1シリンダー112の軸方向に沿って変位する。膨張ピストン114が第1シリンダー112の閉塞端から遠ざかると、膨張室113が拡大する。膨張ピストン114が第1シリンダー112の閉塞端に接近すると、膨張室113が縮小する。膨張ピストン114の軸方向の往復動は、クランクシャフト122の回転運動に変換される。膨張室113には作動流体が封入される。ここでは、作動流体にヘリウムガスが用いられる。作動流体には、ヘリウムガス以外に水素系ガスや空気を用いてもよい。
【0109】
圧縮ピストン117は、第2シリンダー115内で、第2シリンダー115の軸方向に沿って変位する。圧縮ピストン117が第2シリンダー115の閉塞端から遠ざかると、圧縮室116が拡大する。圧縮ピストン117が第2シリンダー115の閉塞端に接近すると、圧縮室116が縮小する。クランクシャフト122の回転運動は、圧縮ピストン117の軸方向の往復動に変換される。圧縮室116が膨張室113に接続されていることから、圧縮室116は、膨張室113と同様に作動流体で充填される。作動流体は、加熱器118、再生器120及び冷却器119を経て膨張室113と圧縮室116との間を行き来する。
【0110】
加熱器118は、密閉容器5から作動流体に熱を伝達する。作動流体は、密閉容器5に収容された発熱構造体8により熱せられて膨張室113に流入する。作動流体の膨張に応じて膨張室113が拡大する。膨張ピストン114は、クランクシャフト122に向かって変位する。高温かつ高圧の作動流体は、膨張室113の縮小に応じて、加熱器118から再生器120に流入する。
【0111】
冷却器119は、冷却媒体(図示なし)に基づき作動流体を冷却する。冷却媒体には例えば水が用いられる。作動流体は、冷却媒体により冷やされて圧縮室116に流入する。圧縮室116は拡大する。圧縮ピストン117は、クランクシャフト122に向かって変位する。低温かつ低圧の作動流体は、圧縮室116の縮小に応じて、再生器120から加熱器118に流入する。
【0112】
再生器120は、加熱器118から流入する作動流体から熱エネルギーを吸収し蓄熱し、冷却器119から流入する作動流体に蓄積した熱エネルギーを伝達する。したがって、膨張室113の作動流体は、冷却器119に流入する前に再生器120で熱エネルギーを放出する。圧縮室116の作動流体は、加熱器118に流入する前に再生器120で加熱される。
【0113】
以上のように、熱利用システム1cは、水素の吸蔵と放出とにより熱を発生する発熱体14を備える発熱装置3により加熱された熱媒体を熱源として利用するので、安価、クリーン、安全にエネルギーを供給することができる。
【0114】
(6)第6実施形態に係る熱利用システム
図12は、第6実施形態に係る熱利用システム1dの構成を概略的に示す概念図である。熱利用システム1dは、上記第1実施形態の熱利用装置4に代えて、熱利用装置4cを備える。熱利用装置4cは、温度差に基づき電力を生成する熱電変換器130を備える。なお、上記各実施形態と同一又は同等の構成要素及び部材については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0115】
熱電変換器130は、受熱板131及び放熱板132を有する。受熱板131には高温配管133が接触する。高温配管133は、配管経路2と接続されており、熱媒体を流通させる。放熱板132には低温配管134が接触する。低温配管134は、冷却水を流通させる。
【0116】
熱電変換器130は、受熱板131と放熱板132との間に挟まれ、受熱板131及び放熱板132の間に並列に配置されるp型半導体135a及びn型半導体135bを備える。p型半導体135a及びn型半導体135bは、受熱板131に固定される第1電極と、放熱板132に固定される第2電極とに基づき電気的に交互に直列に接続される。直列接続の両端に位置する第2電極から電力が取り出される。
【0117】
以上のように、熱利用システム1dは、水素の吸蔵と放出とにより熱を発生する発熱体14を備える発熱装置3により加熱された熱媒体を熱源として利用するので、安価、クリーン、安全にエネルギーを供給することができる。
【0118】
本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0119】
発熱装置3は、1つの発熱構造体8を備える場合に限定されず、複数の発熱構造体8を備えるものでもよい。
【0120】
熱利用システム1b、1c、1dにおいて、発熱装置3は、発熱構造体8に代えて、発熱構造体8aを備えるものでもよい。熱利用システム1b、1c、1dは、発熱装置3に代えて、発熱装置3aを備えるものでもよい。
【符号の説明】
【0121】
3、3a 発熱装置
5 密閉容器
6 水素タンク
7 真空ポンプ
8、8a、8b 発熱構造体
9 空間
10 導入管
11 排気管
12 供給バルブ
13 排気バルブ
14、14a 発熱体
15 ヒータ
15a 外周面
17 温度センサー
18 導電線
19 電源
21 制御部
51、91 内縁部
52、92 外縁部
53、93 発熱面
55、75 スペーサー
61 支持体
62 多層膜
71 第1層
72 第2層
73 異種物質界面
76 末端部材
78 第1枠部
79 第1突出部
81 内枠部
82 外枠部
83 連結部
84 第2突出部
93a 第1面
93b 第2面
CL 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12