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  • 特開-ゴム組成物および防振ゴム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140914
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】ゴム組成物および防振ゴム
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20250919BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20250919BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20250919BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20250919BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K3/04
C08K5/14
F16F15/08 D
F16F1/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040562
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(71)【出願人】
【識別番号】503318150
【氏名又は名称】スバルテクニカインターナショナル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512304076
【氏名又は名称】富士ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 浩章
(72)【発明者】
【氏名】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 正規
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
4J002
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA19
3J048BB10
3J048EA17
3J059AD06
3J059BA42
3J059BC06
3J059EA17
3J059GA02
4J002CK021
4J002CK022
4J002DA037
4J002DA038
4J002EK026
4J002FD017
4J002FD018
4J002FD146
4J002GN00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】引張モジュラスを向上させることにより、乗心地の向上と、操縦安定性の向上を両立する。
【解決手段】ゴム組成物は、ミラブルウレタンポリマーと、有機過酸化物架橋剤と、窒素表面積が30m/g以上100m/g以下のカーボンと、を備え、ミラブルウレタンポリマーのムーニー粘度ML(1+4)100℃は、29以上90以下であり、有機過酸化物架橋剤の含有割合は、ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して、2質量部以上4質量部以下であり、カーボンの含有割合は、ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して1質量部以上40質量部以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラブルウレタンポリマーと、
有機過酸化物架橋剤と、
窒素表面積が30m/g以上100m/g以下のカーボンと、
を備え、
前記ミラブルウレタンポリマーのムーニー粘度ML(1+4)100℃は、29以上90以下であり、
前記有機過酸化物架橋剤の含有割合は、前記ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して、2質量部以上4質量部以下であり、
前記カーボンの含有割合は、前記ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して1質量部以上40質量部以下である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記ミラブルウレタンポリマーのムーニー粘度ML(1+4)100℃は、53以上78以下である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンは、第1のカーボンと、前記第1のカーボンと前記窒素表面積が異なる第2のカーボンとを含む、請求項1または2のゴム組成物。
【請求項4】
前記第1のカーボンの窒素表面積は、30m/g以上50m/gであり、
前記第2のカーボンの窒素表面積は、70m/g以上90m/gである、請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
ミラブルウレタンポリマーと、
有機過酸化物架橋剤と、
窒素表面積が30m/g以上100m/g以下のカーボンと、
を備え、
前記ミラブルウレタンポリマーのムーニー粘度ML(1+4)100℃は、29以上90以下であり、
前記有機過酸化物架橋剤の含有割合は、前記ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して、2質量部以上4質量部以下であり、
前記カーボンの含有割合は、前記ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して1質量部以上40質量部以下であるゴム組成物が架橋されることにより得られるゴムを含む、防振ゴム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物および防振ゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
車輪を路面に押さえつけて接地させるとともに、走行中において車輪から車体への振動の伝達を緩衝するために、車両には、車体と車輪とを連結するサスペンションシステムが設けられている。サスペンションシステムを構成する部材のうち、サスペンションブッシュには、振動を吸収する振動吸収機能が要求される。
【0003】
従来、サスペンションブッシュには、低コストであり、成形が容易であり、調達が容易である天然ゴム材料が広く用いられている。なお、天然ゴム自体は、車体を支えるには硬度が不十分であるため、天然ゴムをそのまま、サスペンションブッシュに適用することはできない。
【0004】
このため、補強材としてのカーボンを天然ゴムに添加した天然ゴム材料が、サスペンションブッシュ用の防振ゴムとして用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-96769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、カーボンは、天然ゴムおよび合成ゴムの伸長および収縮を阻害する。このため、天然ゴムおよび合成ゴムの引張モジュラスは、カーボンの含有割合が多くなるに従って低下する。
【0007】
そこで、乗心地を向上させるためには、サスペンションブッシュ用のゴム中のカーボンの含有量を低下させることが考えられる。しかし、カーボンの含有量を低下させすぎると、転舵時の動き出しの遅れや、車体の動きの増加により安定性が悪化してしまい、乗心地のみならず操縦安定性が低下してしまうという問題が生じる。
【0008】
このため、乗心地の向上と操縦安定性の向上とを両立することができるゴム組成物の開発が希求されている。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、引張モジュラスを向上させることにより、乗心地の向上と、操縦安定性の向上を両立することが可能なゴム組成物および防振ゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一実施の形態に係るゴム組成物は、
ミラブルウレタンポリマーと、
有機過酸化物架橋剤と、
窒素表面積が30m/g以上100m/g以下のカーボンと、
を備え、
前記ミラブルウレタンポリマーのムーニー粘度ML(1+4)100℃は、29以上90以下であり、
前記有機過酸化物架橋剤の含有割合は、前記ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して、2質量部以上4質量部以下であり、
前記カーボンの含有割合は、前記ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して1質量部以上40質量部以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、引張モジュラスを向上させることにより、乗心地の向上と、操縦安定性の向上を両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1~6、および、比較例の引張モジュラス[MPa]の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
[ゴム組成物]
本実施形態に係るゴム組成物は、ミラブルウレタンポリマーと、有機過酸化物架橋剤と、カーボンとを含む。
【0015】
<ミラブルウレタンポリマー>
ミラブルウレタンポリマーは、ミラブルウレタンゴムとも呼ばれる。ミラブルウレタンポリマーは、分子中にウレタン結合を有するポリマーである。ミラブルウレタンポリマーとして、例えば、硬化前の性状が通常の未架橋のゴムに類似しており、ロールミルやニーダーで可塑化させて混練したり、押出成形したりできる、ミラブル型の様々なウレタンポリマーを用いることができる。
【0016】
ミラブルウレタンポリマーは、例えば、ポリオール成分、イソシアネート成分、および必要に応じて連鎖移動剤を反応させて合成される。ポリオール成分は、例えば、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリオレフィン系等である。
【0017】
本実施形態に係るミラブルウレタンポリマーのムーニー粘度ML(1+4)100℃は、29以上90以下であり、好ましくは、53以上78以下であり、より好ましくは、61以上71以下であり、さらに好ましくは66である。
【0018】
ムーニー粘度ML(1+4)100℃は、JIS K6300-1で規定される。ムーニー粘度ML(1+4)100℃は、試験温度100℃、L形ロータの測定条件で、予熱時間1分間、ロータの回転時間4分間とした場合のムーニー粘度である。
【0019】
本実施形態に係るミラブルウレタンポリマーとして、例えば、株式会社エイコス製の製品名「E8010」、および、NOK株式会社製の製品名「アイアンラバー」のうちのいずれか一方または両方を用いることができる。
【0020】
<有機過酸化物架橋剤>
有機過酸化物架橋剤は、例えば、ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)=ペルオキシドである。
【0021】
ゴム組成物における有機過酸化物架橋剤の含有割合は、ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して、2質量部以上4質量部以下であり、好ましくは、2.5質量部以上3.5質量部以下であり、より好ましくは、2.6質量部以上3.2質量部以下であり、さらに好ましくは、2.8質量部である。
【0022】
<カーボン>
カーボンは、例えば、カーボンブラックである。本実施形態に係るカーボンの窒素表面積が30m/g以上100m/g以下である。ここで、窒素表面積は、多点法による代表値である。
【0023】
また、本実施形態において、カーボンは、第1のカーボンと、第1のカーボンと窒素表面積が異なる第2のカーボンとを含んでもよい。また、カーボンは、第1のカーボンおよび第2のカーボンのみからなってもよい。
【0024】
第1のカーボンの窒素表面積は、例えば、30m/g以上50m/g以下である。第2のカーボンの窒素表面積は、例えば、70m/g以上90m/g以下である。
【0025】
ゴム組成物に含まれるカーボンにおける第1のカーボンと第2のカーボンとの含有割合は、等しくてもよいし、異なってもよい。ゴム組成物に含まれるカーボンにおける第1のカーボンの含有割合は、例えば、第2のカーボンとの含有割合よりも大きくてもよい。
【0026】
ゴム組成物におけるカーボンの含有割合は、ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して1質量部以上40質量部以下であり、好ましくは、20質量部以上40質量部以下であり、より好ましくは、30質量部以上38質量部以下であり、さらに好ましくは、34質量部である。
【0027】
<その他>
ゴム組成物は、ミラブルウレタンポリマー、有機過酸化物架橋剤、および、カーボンに加えて、必要に応じて、他の添加剤が配合されてもよい。添加剤は、例えば、可塑剤、加水分解対策剤、酸化防止剤、薬品分散剤、潤滑剤、促進剤である。
【0028】
[ゴム組成物の効果]
本発明の実施形態に係るゴム組成物の効果について説明する。
【0029】
従来の天然ゴム材料では、カーボンの含有割合を増加させることにより、硬度を向上させていた。一方、カーボンの含有割合が多くなるに従って、天然ゴム材料の引張モジュラスは低下する。つまり、カーボンの含有割合と引張モジュラスとは、トレードオフの関係にある。このため、従来の天然ゴム材料では、硬度の向上と引張モジュラスの向上とを両立できないという問題があった。
【0030】
そこで、本実施形態に係るゴム組成物は、ミラブルウレタンポリマーと、有機過酸化物架橋剤と、窒素表面積が30m/g以上100m/g以下のカーボンと、を備え、ミラブルウレタンポリマーのムーニー粘度ML(1+4)100℃は、29以上90以下であり、有機過酸化物架橋剤の含有割合は、ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して、2質量部以上4質量部以下であり、カーボンの含有割合は、ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して1質量部以上40質量部以下である。
【0031】
このように、本実施形態に係るゴム組成物は、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が、29以上90以下であるミラブルウレタンポリマーと、カーボンとを含み、カーボンの含有割合を、ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して1質量部以上40質量部以下とする。これにより、本実施形態に係るゴム組成物が架橋されることにより得られるゴムは、引張モジュラスを向上させることができる。なお、引張モジュラスは、JIS K6251で規定される。
【0032】
また、本実施形態に係るゴム組成物は、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が、29以上90以下であるミラブルウレタンポリマーと、有機過酸化物架橋剤と、を含み、有機過酸化物架橋剤の含有割合を、ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して、2質量部以上4質量部以下とする。これにより、ミラブルウレタンポリマーを良好に架橋させることができ、本実施形態に係るゴム組成物が架橋されることにより得られるゴムの硬度を向上させることができる。
【0033】
したがって、本実施形態に係るゴム組成物は、架橋後のゴムの引張モジュラスの向上と硬度の向上とを両立させることが可能となる。
【0034】
また、本実施形態に係るゴム組成物に含まれるミラブルウレタンポリマーのムーニー粘度ML(1+4)100℃は、53以上78以下であってもよい。これにより、引張モジュラス[MPa]をさらに向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態に係るゴム組成物に含まれるカーボンは、第1のカーボンと、第1のカーボンと窒素表面積が異なる第2のカーボンとを含んでもよい。これにより、ゴム組成物の摩耗を低減することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るゴム組成物に含まれる第1のカーボンの窒素表面積は、30m/g以上50m/g以下であり、第2のカーボンの窒素表面積は、70m/g以上90m/g以下であってもよい。これにより、ゴム組成物の摩耗をさらに低減することができる。
【0037】
本実施形態に係るゴム組成物を架橋することにより得られるゴムは、防振ゴムに適用することができる。例えば、本実施形態に係るゴム組成物をサスペンションブッシュ用の防振ゴムに適用してもよい。引張モジュラスは、車両の乗心地の向上と操縦安定性の向上に寄与する。したがって、本実施形態に係るゴム組成物をサスペンションブッシュ用の防振ゴムに適用することにより、直線走行中であっても、カーブ走行中であっても、乗心地の向上と操縦安定性の向上とを両立することが可能となる。
【0038】
また、防振ゴムが適用される物品としては、上記のサスペンションブッシュに限定されない。例えば、自動車の車両等に用いられるマフラーハンガーなどの各種の物品に対して、本実施形態に係る防振ゴムを適用可能である。
【実施例0039】
以下では、本発明の実施例および比較例について具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも一例であって、本発明に係るゴム組成物は、下記の実施例に限定されない。
【0040】
実施例1~6のゴム組成物を作製した。実施例1~6の組成は、下記表1に示される。
【0041】
【表1】
【0042】
上記表1に示すように、実施例1~6では、ゴム組成物における第1のカーボンの含有割合を、ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して18質量部とした。また、実施例1~6では、ゴム組成物における第2のカーボンの含有割合を、ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して16質量部とした。
【0043】
また、上記表1に示すように、実施例1~5では、ゴム組成物における有機過酸化物架橋剤の含有割合を、ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して2.8質量部とした。また、実施例6では、ゴム組成物における有機過酸化物架橋剤の含有割合を、ミラブルウレタンポリマー100質量部に対して4.2質量部とした。
【0044】
また、実施例1~6では、可塑剤、加水分解対策剤、酸化防止剤、薬品分散剤、潤滑剤、促進剤等の添加剤を適宜添加した。
【0045】
[実施例1]
実施例1では、ポリマー100質量部として、NOK株式会社製の製品名「アイアンラバー」であって、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が29.0であるミラブルウレタンポリマーを用いた。
【0046】
[実施例2]
実施例2では、ポリマー50質量部として、株式会社エイコス製の製品名「E8010」であって、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が66.0であるミラブルウレタンポリマーと、ポリマー50質量部として、株式会社エイコス製の製品名「E8010」であって、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が40.0であるミラブルウレタンポリマーと、を用いた。
【0047】
[実施例3]
実施例3では、ポリマー100質量部として、株式会社エイコス製の製品名「E8010」であって、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が66.0であるミラブルウレタンポリマーを用いた。
【0048】
[実施例4]
実施例4では、ポリマー50質量部として、株式会社エイコス製の製品名「E8010」であって、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が66.0であるミラブルウレタンポリマーと、ポリマー50質量部として、株式会社エイコス製の製品名「E8010」であって、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が90.0であるミラブルウレタンポリマーと、を用いた。
【0049】
[実施例5]
実施例5では、ポリマー100質量部として、株式会社エイコス製の製品名「E8010」であって、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が90.0であるミラブルウレタンポリマーを用いた。
【0050】
[実施例6]
実施例6では、実施例5と同様に、ポリマー100質量部として、株式会社エイコス製の製品名「E8010」であって、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が90.0であるミラブルウレタンポリマーを用いた。
【0051】
[ムーニー粘度ML(1+4)100℃の測定]
実施例1~6のミラブルウレタンポリマーのムーニー粘度ML(1+4)100℃を測定した。ムーニー粘度ML(1+4)100℃の測定では、試験温度100℃、L形ロータの測定条件で、予熱時間1分間、ロータの回転時間4分間とした場合のムーニー粘度ML(1+4)100℃を測定した。実施例1~6のムーニー粘度ML(1+4)100℃は、下記表2に示される。
【0052】
【表2】
【0053】
上記表2に示すように、実施例1のムーニー粘度ML(1+4)100℃は、29.0であった。実施例2のムーニー粘度ML(1+4)100℃は、53.0であった。実施例3のムーニー粘度ML(1+4)100℃は、66.0であった。実施例4のムーニー粘度ML(1+4)100℃は、78.0であった。実施例5のムーニー粘度ML(1+4)100℃は、90.0であった。実施例6のムーニー粘度ML(1+4)100℃は、90.0であった。
【0054】
[引張モジュラスの測定]
実施例1~6のゴム組成物を架橋することにより得られたゴム、および、比較例の引張モジュラス[MPa]を測定した。なお、市販の天然ゴム(NR)およびブタジエンゴム(BR)のブレンド材を比較例とした。
【0055】
実施例1~6、および、比較例のM100、M200、M300をそれぞれ測定した。M100は、試験片の伸びが100%になるまで引張した際の引張力[MPa]である。M200は、試験片の伸びが200%になるまで引張した際の引張力[MPa]である。M300は、試験片の伸びが300%になるまで引張した際の引張力[MPa]である。引張力の測定は、株式会社エー・アンド・デイ製の製品名「テンシロン万能材料試験機(品番:RT1-1310)」を用いて行った。
【0056】
実施例1~6、および、比較例の引張モジュラス[MPa]は、上記表2に示される。また、図1は、実施例1~6、および、比較例の引張モジュラス[MPa]の測定結果を示すグラフである。図1において、黒い四角は実施例1を示し、白い三角は実施例2を示し、白い丸は実施例3を示し、白い四角は実施例4を示し、黒い三角は実施例5を示し、黒い丸は実施例6を示し、白い菱形は比較例を示す。
【0057】
上記表2および図1に示すように、実施例1のM100の引張モジュラスは、2.3[MPa]であった。実施例1のM200の引張モジュラスは、6.5[MPa]であった。実施例1のM300の引張モジュラスは、12.7[MPa]であった。
【0058】
実施例2のM100の引張モジュラスは、2.7[MPa]であった。実施例2のM200の引張モジュラスは、8.0[MPa]であった。実施例2のM300の引張モジュラスは、14.7[MPa]であった。
【0059】
実施例3のM100の引張モジュラスは、2.9[MPa]であった。実施例3のM200の引張モジュラスは、8.8[MPa]であった。実施例3のM300の引張モジュラスは、16.2[MPa]であった。
【0060】
実施例4のM100の引張モジュラスは、3.2[MPa]であった。実施例4のM200の引張モジュラスは、9.7[MPa]であった。実施例4のM300の引張モジュラスは、17.9[MPa]であった。
【0061】
実施例5のM100の引張モジュラスは、3.0[MPa]であった。実施例5のM200の引張モジュラスは、9.4[MPa]であった。実施例5のM300の引張モジュラスは、17.7[MPa]であった。
【0062】
以上の実施例1~実施例4の結果から、ムーニー粘度ML(1+4)100℃を大きくすることにより、補強材としてのカーボンの含有割合を増加させることなく、M100、M200、M300の引張モジュラスが向上することが確認された。
【0063】
一方、実施例5では、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が90と大きいにも拘わらず、実施例4よりもM100、M200、M300の引張モジュラスが低いことが確認された。ただし、実施例6では、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が90と実施例5と等しいものの、実施例5よりもM100、M200、M300の引張モジュラスが向上することが確認された。また、実施例6では、実施例4よりもM100、M200、M300の引張モジュラスが向上することが確認された。
【0064】
実施例5と実施例6とは、有機過酸化物架橋剤の量のみが異なる。長い分子鎖のポリマーは、短い分子鎖のポリマーと比較して架橋点の数が増加する。したがって、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が90と高い、長い分子鎖のポリマーでは、架橋点数に見合う量の有機過酸化物架橋剤が必要である。したがって、実施例5と実施例6との引張モジュラスの差から、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が90である場合には、有機過酸化物架橋剤の含有割合を増加させることにより、M100、M200、M300の引張モジュラスを向上できることが確認された。
【0065】
一方、比較例では、実施例1~6のいずれよりもM100、M200、M300の引張モジュラスが低いことが確認された。
【0066】
以上の結果から、実施例1~実施例6は、比較例と比較して、M100、M200、M300の引張モジュラスが高いことが確認された。
【0067】
[硬度の測定]
実施例1~6のゴム組成物を架橋することにより得られたゴム、および、比較例のショアA硬度(HA)を測定した。硬度(HA)の測定は、株式会社テクロック製の製品名「ゴム・プラスチック硬度計(品番:GS-701N)」を用いて行った。
【0068】
実施例1~6、および、比較例の硬度(HA)は、上記表2に示される。
【0069】
上記表2に示すように、実施例1の硬度(HA)は、61.0であった。実施例2の硬度(HA)は、64.0であった。実施例3の硬度(HA)は、66.0であった。実施例4の硬度(HA)は、68.0であった。実施例5の硬度(HA)は、67.0であった。実施例6の硬度(HA)は、67.0であった。比較例の硬度(HA)は、65.0であった。
【0070】
以上の結果から、実施例1~実施例6は、比較例と同程度の高い硬度(HA)を有することが確認された。
【0071】
[乗心地および操縦安定性の評価]
実施例2~4、および、比較例が適用されたサスペンションブッシュを搭載した車両を、4名のドライバが運転し、乗心地および操縦安定性を評価した。乗心地および操縦安定性の評価は、下記表3に示される。
【0072】
【表3】
【0073】
上記表3において、ステアリング応答性は、40[km/h]で走行した際、ステアリングを±2°、±30°転舵させたときの応答性を示す。ステアリング手応えは、100[km/h]で走行した際、ステアリングを±2°、±30°転舵させたときの応答性を示す。乗心地およびハンドリングは、普通走行(60[km/h]以下で走行した)した際のハンドリング・乗心地評価を示す。安定性、安心感、および、追従性は、120[km/h]でカーブ走行中にステアリングを±30°転舵させたときの車両安定感、遅れの少なさを示す。ロール感およびロール共振は、100[km/h]でステアリングを±30°転舵させたときのロール感、ロール収束性を示す。一般乗心地は、40[km/h]で、5~10[mm]程度の小さな段差の乗り越し、および、マンホールの乗り越しを行った際の乗心地を示す。
【0074】
上記表3の項目、ステアリング応答性、ステアリング手応え、ハンドリング、安定性、安心感、追従性、ロール感、および、ロール共振で示される操縦安定性において、実施例3が最も評価が高く、実施例2が次いで評価が高く、実施例4が次いで評価が高く、比較例が最も評価が低かった。
【0075】
また、上記表3の項目、乗心地および一般乗心地で示される車両の乗心地において、実施例3が最も評価が高く、実施例2が次いで評価が高く、実施例4が次いで評価が高く、比較例が最も評価が低かった。
【0076】
以上の結果から、実施例2~4は、比較例と比較して、操縦安定性および乗心地が高いことが確認された。また、実施例4、実施例2、実施例3の順で、操縦安定性および乗心地が向上することが確認された。
【0077】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
図1