(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025140962
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】バルブおよび緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/348 20060101AFI20250919BHJP
【FI】
F16F9/348
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040637
(22)【出願日】2024-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】安河内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 友基
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC13
3J069EE28
3J069EE80
(57)【要約】
【課題】減衰力特性の設定自由度を向上できるとともに、ランド部を省略あるいはランド部の面積を小さくして安定して減衰力を発生可能なバルブを提供する。
【解決手段】本発明のバルブVは、圧側ポート2dを有するピストン2と、ピストン2に積層されて圧側ポート2dを開閉する圧側積層リーフバルブ1とを備え、圧側積層リーフバルブ1は、ピストン2に積層されるとともに圧側ポート2dに連通される圧抜き孔1a3を有する第1リーフバルブ1aと、第1リーフバルブ1aの反ピストン側に積層されて圧抜き孔1a3を閉塞する第2リーフバルブ1bとを有し、圧側積層リーフバルブ1が圧側ポート2dを開放する際に、圧抜き孔1a3は第2リーフバルブ1bによって閉塞されたままとなることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートを有する弁座部材と、
前記弁座部材に積層されて前記ポートを開閉する積層リーフバルブとを備え、
前記積層リーフバルブは、前記弁座部材に積層されるとともに前記ポートに連通される圧抜き孔を有する第1リーフバルブと、前記第1リーフバルブの反弁座部材側に積層されて前記圧抜き孔を閉塞する第2リーフバルブとを有し、
前記積層リーフバルブが前記ポートを開放する際に、前記圧抜き孔は前記第2リーフバルブによって閉塞されたままとなる
ことを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記第1リーフバルブの撓み剛性は、前記第2リーフバルブの撓み剛性以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記第1リーフバルブの厚みは、前記第2リーフバルブの厚さ以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項4】
前記第1リーフバルブには、前記圧抜き孔が複数形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項5】
アウターチューブと、前記アウターチューブ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと、前記アウターチューブに対する前記ロッドの移動によって液体が行き来する少なくとも2つの作動室とを有する緩衝器本体と、
前記作動室間に設けられた請求項1から4のいずれか一項に記載のバルブとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブおよび緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、車両における乗心地を向上する目的で、車両における車体と車軸との間に介装されて使用され、伸縮時に発揮する減衰力で車体および車輪の振動を抑制する。
【0003】
このような緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドの一端に連結されてシリンダ内を一方室と他方室に区画するとともに一方室と他方室を連通するポートを有するピストンと、環状であって内周側を固定端としてピストンロッドに固定され外周側を自由端として撓みが許容された状態でピストンの一方室側に積層されてポートの一方室側開口を閉塞する複数のリーフバルブを積層して構成される積層リーフバルブとを備えている。そして、バルブはピストンとリーフバルブとで構成されている。
【0004】
また、ピストンは、ポートの一方室側開口の内周側に設けられて積層リーフバルブの内周側が積層されるボス部と、ポートの一方室側開口の外周側に設けられてポートを囲って積層リーフバルブの自由端側が当接する環状の弁座とを備えている。
【0005】
そして、ピストンが他方室を圧縮する方向に移動すると、他方室の圧力が高くなるので、他方室の作動油はポートを通じて圧力が低い一方室へ移動しようとする。すると、積層リーフバルブは、他方室の圧力をピストン側面となる正面で受けて自由端である外周側を撓ませて弁座から離間させてポートを開放しつつ、通過する作動油の流れに抵抗を与えて減衰力を発生させる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
他方、ピストンが一方室を圧縮する方向に移動すると、一方室の圧力が高くなるが、積層リーフバルブはピストンの一方室側端に積層されていて、一方室の圧力を反ピストン側面となる背面で受けてピストンへ押し付けられるため、ポートを閉塞して作動油の通過を阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のバルブでは、ピストンが一方室を圧縮する方向に移動して一方室の圧力が高くなると、最もピストン側に配置されてピストンに当接する1番目のリーフバルブと、1番目のリーフバルブの背面に積層される2番目のリーフバルブとの間に作動油が入り込むことがある。
【0009】
そして、自由端がピストンの弁座に着座している1番目のリーフバルブは、内周がピストンのボス部に支持されるとともに外周がピストンの弁座に支持されているが、固定端と自由端の間の部分は、ピストンのボス部と弁座の間に形成される環状凹部と対向して、何ら支持されていない。そのため、1番目のリーフバルブと2番目のリーフバルブとの間に作動油が入り込むと、1番目のリーフバルブと2番目のリーフバルブの間の圧力が上昇して、1番目のリーフバルブが背面側から押圧されるため、1番目のリーフバルブの固定端と自由端の間の部分がピストン側に凸状に撓んで、1番目のリーフバルブに大きな応力が作用し、1番目のリーフバルブを疲労させてしまう可能性がある。
【0010】
1番目のリーフバルブの疲労を軽減するためには、1番目のリーフバルブの厚みを厚くしたり、1番目のリーフバルブの撓み剛性を高くして、1番目のリーフバルブの耐久性を高める方法が考えられるが、1番目のリーフバルブの耐久性を高くすると積層リーフバルブの開弁圧も高くなるため、バルブの減衰力特性の設定自由度に制約が生じてしまう。
【0011】
また、1番目のリーフバルブの疲労を軽減する他の方法としては、環状凹部の底部に1番目のリーフバルブを支持するランド部を設けて、1番目のリーフバルブの撓みを抑制する方法も考えられる。しかしながら、ピストンにランド部を設けると、リーフバルブがランド部に吸着したり、ランド部とリーフバルブの間に作動油中を浮遊するコンタミナントが噛み込んで安定した減衰力の発生が難しくなる可能性がある。
【0012】
このような問題は、積層リーフバルブが、リーフバルブ全体が弁座部材に対して遠近してポートを開閉するフローティングバルブである場合であっても、同様に発生する。
【0013】
そこで、本発明は、減衰力特性の設定自由度を向上できるとともに、安定した減衰力の発生が可能なバルブと緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明のバルブは、ポートを有する弁座部材と、弁座部材に積層されてポートを開閉する積層リーフバルブとを備え、積層リーフバルブは、弁座部材に積層されるとともにポートに連通される圧抜き孔を有する第1リーフバルブと、第1リーフバルブの反弁座部材側に積層されて圧抜き孔を閉塞する第2リーフバルブとを有し、積層リーフバルブがポートを開放する際に、圧抜き孔は第2リーフバルブによって閉塞されたままとなることを特徴とする。この構成によると、第1リーフバルブと第2リーフバルブを弁座部材側に押圧する圧力が作用する際に第1リーフバルブと第2リーフバルブの間に液体が入り込んでしまったとしても、第1リーフバルブには圧側ポートと連通する圧抜き孔が設けられているので、第1リーフバルブと第2リーフバルブの間に入り込んだ液体は圧抜き孔を通じて圧側ポートへ排出される。したがって、第1リーフバルブと第2リーフバルブの間の圧力が作用して第1リーフバルブを撓ませるのを防止でき、第1リーフバルブには第1リーフバルブを弁座部材側へ撓ませる大きな応力が作用しないので、第1リーフバルブの厚みを厚くしたり撓み剛性を向上させるなどして、第1リーフバルブの耐久性を向上させる必要がなくなる。よって、第1リーフバルブの厚みを薄くしたり、第1リーフバルブの撓み剛性を低くすることができるので、第1リーフバルブの厚みや撓み剛性を自由に設定できる。
【0015】
また、本発明のバルブでは、第1リーフバルブの撓み剛性を、第2リーフバルブの撓み剛性以下としてもよい。この構成によると、バルブが発揮する減衰力が過大になるのを防止でき、当該バルブを備えた緩衝器を車両に搭載する場合に車両の乗り心地が悪化するのを防止できる。
【0016】
また、本発明のバルブでは、第1リーフバルブの厚みを、第2リーフバルブの厚さ以下としてもよい。第1リーフバルブは、板状の母材を金型で打ち抜いて成形されるが、この構成によると、第1リーフバルブの板厚が薄いので、金型の摩耗が少なく済む上、第1リーフバルブを高い精度で成形できる。
【0017】
また、本発明のバルブでは、第1リーフバルブには、圧抜き孔が複数形成されてもよい。この構成によると、第1リーフバルブと第2リーフバルブの間に入り込んだ液体が複数個所から速やかにポートに排出されるので、第1リーフバルブの一部が弁座部材側に撓んでしまうのを防止できる。
【0018】
また、本発明の緩衝器は、アウターチューブと、アウターチューブ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと、アウターチューブに対するロッドの移動によって液体が行き来する少なくとも2つの作動室とを有する緩衝器本体と、作動室間に設けられた上記バルブとを備えている。この構成によると、緩衝器は上記バルブを備えているので、減衰力特性の設計自由度が向上するとともに安定した減衰力を発生できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のバルブおよび緩衝器によれば、減衰力特性の設定自由度を向上できるとともに、ランド部を省略あるいはランド部の面積を小さくして安定した減衰力を発生できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施の形態のバルブが適用された緩衝器の縦断面図である。
【
図3】本実施の形態のバルブにおける第1リーフバルブの平面図である。
【
図4】収縮工程におけるバルブの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態におけるバルブVは、
図1に示すように、緩衝器Dのピストン部に適用されており、ポートとしての圧側ポート2dを有する弁座部材としてのピストン2と、ピストン2に積層されて圧側ポート2dを開閉する積層リーフバルブとしての圧側積層リーフバルブ1とを備えている。
【0022】
バルブVが適用された緩衝器Dは、
図1に示すように、アウターチューブとしてのシリンダ10と、シリンダ10内に移動可能に挿入されるロッド11とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内に設けられた二つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2との間に設けられたバルブVとを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車軸との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。なお、本発明に係るバルブVを含む緩衝器Dは、車両以外に利用されてもよいのは勿論、緩衝器以外に利用されてもよい。このように、本発明に係るバルブVの利用目的は、適宜変更できる。
【0023】
以下、バルブVおよび緩衝器Dの各部について詳細に説明する。まず、緩衝器Dの各部について説明すると、緩衝器本体Aは、
図1に示すように、アウターチューブとしての有底筒状のシリンダ10と、シリンダ10内に移動可能に挿入されるロッド11と、ロッド11に連結されてシリンダ10内に移動可能に挿入されるとともにシリンダ10内を作動室としての伸側室R1と圧側室R2とに区画する弁座部材としてのピストン2とを備えている。
【0024】
そして、ロッド11の
図1中上端となる基端には、ブラケット(図示せず)が設けられており、ロッド11が図外の前記ブラケットを介して車体と車軸の一方に連結される。また、シリンダ10の底部10aにもブラケット(図示せず)が設けられており、シリンダ10が図外の前記ブラケットを介して車体と車軸の他方に連結される。
【0025】
このようにして緩衝器Dは車体と車軸との間に介装される。そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が車体に対して上下に振動すると、ロッド11がシリンダ10に出入りして緩衝器Dが伸縮するとともに、ピストン2がシリンダ10内を上下(軸方向)に移動する。
【0026】
また、緩衝器本体Aは、シリンダ10の上端を塞ぐとともに、内周にロッド11が摺動自在に挿通される環状のロッドガイド13を備えている。よって、シリンダ10内は、密閉空間とされている。そして、そのシリンダ10内のピストン2から見てロッド11とは反対側に、フリーピストン14が摺動自在に挿入されている。
【0027】
シリンダ10内におけるフリーピストン14の上側には液室Lが形成され、下側には気室Gが形成されている。さらに、液室Lは、ピストン2でロッド11側の伸側室R1とピストン2側の圧側室R2とに区画されており、伸側室R1と圧側室R2には、それぞれ液体が充填されている。なお、緩衝器本体A内に充填される液体は、作動油や水、水溶液、その他の液体等とされてもよい。その一方、気室Gには、エア、または窒素ガス等の気体が圧縮された状態で封入されている。
【0028】
そして、緩衝器Dの伸長作動時にロッド11がシリンダ10から退出すると、その退出したロッド11の体積分に応じてフリーピストン14がシリンダ10内を上側へ移動して気室Gを拡大させ、ロッド11がシリンダ10内から退出した体積を補償する。反対に、緩衝器Dの収縮作動時にロッド11がシリンダ10内へ侵入し、その侵入したロッド11の体積分に応じてフリーピストン14がシリンダ10内を下側へ移動して気室Gを縮小させ、ロッド11がシリンダ10内に侵入した体積を補償する。なお、フリーピストン14に替えて、ブラダ、またはベローズ等を利用して液室Lと気室Gとを仕切っていてもよく、この仕切となる可動隔壁の構成は適宜変更できる。
【0029】
前述したとおり、本実施の形態では、緩衝器Dが片ロッド、単筒型の緩衝器であり、緩衝器Dの伸縮時にフリーピストン(可動隔壁)14で気室Gを拡大または縮小させて、シリンダ10に出入りするロッド11の体積補償をする。しかし、この体積補償のための構成も適宜変更できる。たとえば、フリーピストン14と気室Gとを廃止してシリンダ10の外側にアウターチューブを設け、シリンダ10とアウターチューブとの間に液体と気体とを貯留するリザーバを形成して、緩衝器を複筒型の緩衝器にする場合、リザーバによってシリンダ10内に出入りするロッド11の体積補償をしてもよい。なお、リザーバは、シリンダ10とは別置き型のタンク内に形成されていてもよい。また、緩衝器Dは、ロッド11の中央にピストン2が装着されてシリンダ10の両端からロッド11の端部がシリンダ10外に突出する両ロッド型の緩衝器として構成されてもよい。
【0030】
ロッド11は、先端側の外径が縮径されており、先端側の外径が小さい小径部11aと、小径部11aより外径が大きく小径部11aの
図1中上側に設けられた大径部11bと、小径部11aと大径部11bとの境に設けられた段部11cと、小径部11aの先端外周に設けられた螺子部11dとを備えている。
【0031】
本実施の形態のバルブVは、ロッド11に取り付けられて緩衝器Dにおけるピストン部に適用されている。バルブVを構成する弁座部材としてのピストン2は、
図1に示すように、環状であってロッド11の小径部11aの外周に嵌合されており、ロッド11の螺子部11dに螺着されるピストンナット15によってロッド11に固定されている。また、ピストン2は、ロッド11に組付けられていて、外周をシリンダ10の内周に摺接させており、シリンダ10内を作動室としての伸側室R1と圧側室R2とに仕切っている。
【0032】
より詳しくは、ピストン2は、環状の本体部2aと、本体部2aの
図2中下端外周に設けられた筒部2bと、本体部2aの
図2中上端内周に設けられた環状の圧側ボス部2cと、本体部2aの圧側ボス部2cの外周側に周方向に間隔を空けて設けられて本体部2aを軸方向に貫通する複数のポートとしての圧側ポート2dと、本体部2aの
図2中上端であって圧側ポート2dの外周側に設けられて圧側ボス部2cとともに圧側ポート2dの上方の開口端である出口端を取り囲む環状の弁座としての圧側弁座2eと、本体部2aの
図2中上端であって圧側弁座2eと圧側ボス部2cとの間に設けられた環状凹部2fと、本体部2aの
図2中下端であって圧側ポート2dの内周側から開口して本体部2aの
図2中上端であって圧側弁座2eより外周側に開口する伸側ポート2gと、本体部2aの
図2中下端であって圧側ポート2dと伸側ポート2gとの間に設けられた環状の伸側弁座2hとを備えている。
【0033】
本体部2aと筒部2bの外周には、シリンダ10の内周に外周を摺接させるピストンリング2iが装着されている。
図2に示すように、圧側ボス部2cは、本体部2aの
図2中上端の内周に設けられており、環状であって外周側に設けられる環状凹部2fよりも上方側へ突出しており、上端に圧側積層リーフバルブ1が積層される平坦面を備えている。
【0034】
圧側弁座2eは、環状であって本体部2aの
図2中上端の外周側に設けられて圧側積層リーフバルブ1が離着座する弁座として機能し、環状凹部2fおよび圧側ポート2dの出口端よりも上方側へ突出しており、上端に圧側積層リーフバルブ1が離着座する平坦面を備えている。
【0035】
圧側ポート2dは、本体部2aの
図2中上端となる伸側室側端であって
図2中で圧側ボス部2cの外周に同一円周上に等間隔に複数設けられており、本体部2aの
図2中上端から開口して軸方向に沿って延びて本体部2aの下端にまで通じている。また、圧側ポート2dは、本体部2aの
図2中上端であって、環状の圧側弁座2eの内周側に開口している。さらに、圧側ポート2dは、本体部2aの
図2中下端において、伸側弁座2hの外周側に開口している。このように、圧側ポート2dは、伸側室R1と圧側室R2とを連通している。
【0036】
本体部2aの
図2中下端には、伸側ボス部2jと伸側ボス部2jの外周に配置される伸側弁座2hとが設けられている。伸側ボス部2jおよび伸側弁座2hは、ともに環状であって本体部2aの下端から軸方向に突出しており、伸側ボス部2jと伸側弁座2hとの間には環状溝が形成されている。
【0037】
伸側ポート2gは、本体部2aの
図2中下端となる圧側室側端であって伸側ボス部2jと伸側弁座2hとの間の環状溝から開口して本体部2aの
図2中上端であって圧側弁座2eの外周に通じており、伸側室R1と圧側室R2とを連通している。また、伸側ポート2gは、本実施の形態では、圧側ポート2dと干渉しないように、本体部2aの圧側ポート2d,2d間を斜めに貫通して、本体部2aの
図2中上端であって圧側弁座2eの外周に開口しており、本体部2aに対して周方向で等間隔に複数設けられている。
【0038】
つづいて、圧側積層リーフバルブ1は、
図2に示すように、円環状の環状板からなるリーフバルブを複数枚積層して形成されており、弁座部材としてのピストン2の
図2中上端に積層されて、ピストン2とともにロッド11の小径部11aの外周に固定される。
【0039】
圧側積層リーフバルブ1は、最もピストン2側に配置されてピストン2に当接する第1リーフバルブ1aの内周側をロッド11に固定される固定端1a1として圧側ボス部2cに当接させており、外周側を自由端1a2としてピストン2から離間する方向への撓みが許容される状態で圧側弁座2eに離着座させている。
【0040】
第1リーフバルブ1aは、
図2,
図3に示すように、環状凹部2fと対向する部分に周方向で等間隔に複数設けられて圧側ポート2dに連通される圧抜き孔1a3と、外周部に周方向で等間隔に設けられた複数の切欠き1a4とを有している。本実施の形態では、圧抜き孔1a3と切欠き1a4はそれぞれ独立して設けられているが、圧抜き孔1a3は切欠き1a4と連通していてもよい。
【0041】
なお、圧抜き孔1a3の数は、特に限定されず一つであってもよい。また、本実施の形態では、
図3に示すように、圧抜き孔1a3を丸孔としているが、圧抜き孔1a3の形状は特に限定されない。
【0042】
また、第1リーフバルブ1aの背面側に積層される第2リーフバルブ1bは、内径と外径が第1リーフバルブ1aと等しい環状板であって、第1リーフバルブ1aの圧抜き孔1a3を背面側から閉塞している。なお、第2リーフバルブ1bは、圧抜き孔1a3を背面側から閉塞できればよいので、第2リーフバルブ1bの外径は、第2リーフバルブ1bが第1リーフバルブの背面に積層された際に、第2リーフバルブ1bの外周端が第1リーフバルブ1aの圧抜き孔1a3よりも外周側に配置される限りにおいて、特に限定されない。
【0043】
また、本実施の形態では、第1リーフバルブ1aの厚みは、第2リーフバルブ1bの厚さ以下となっており、第1リーフバルブ1aの撓み剛性は第2リーフバルブ1bの撓み剛性以下となっている。ただし、第1リーフバルブ1aの厚みを第2リーフバルブ1bよりも厚くして、第1リーフバルブ1aの撓み剛性を第2リーフバルブ1bの撓み剛性よりも高くしてもよい。
【0044】
また、第2リーフバルブ1bの
図2中上方には、複数のリーフバルブ(符示せず)と間座(符示せず)が積層されている。さらに、圧側積層リーフバルブ1の
図2中上方には、間座(符示せず)を介して、円環状であってロッド11の小径部11aの外周に装着されるバルブストッパ4が積層されている。バルブストッパ4は、圧側積層リーフバルブ1の第1リーフバルブ1aの自由端1a2が図中でピストン2から離間する上方へ向けて撓んで圧側積層リーフバルブ1の外周部の上面が当接すると、圧側積層リーフバルブ1のそれ以上のピストン2から離間する方向への撓みを規制して圧側積層リーフバルブ1に過剰な応力が作用しないように保護する。
【0045】
圧側積層リーフバルブ1は、第1リーフバルブ1aの自由端1a2を圧側弁座2eに着座させて閉弁する状態では、圧側ボス部2cと圧側弁座2eに密着して圧側ボス部2cと圧側弁座2eの間に開口する圧側ポート2dの出口端を切欠き1a4のみを介して伸側室R1に連通する一方で、
図4に示すように、圧側ポート2d側からの圧力で自由端1a2を撓ませて圧側弁座2eから離間すると圧側ポート2dを開放するとともに圧側弁座2eとの間に生じた隙間を通過する液体の流れに抵抗を与える。
【0046】
このように、第1リーフバルブ1aが圧側ポート2d側からの圧力を受けて撓んで圧側ポート2dを開放する際、第2リーフバルブ1bの下面にも第1リーフバルブ1aに形成された圧抜き孔1a3を通じて圧側ポート2d側からの圧力が作用するが、各圧抜き孔1a3の開口面積の合計は、第1リーフバルブ1aの受圧面積よりもはるかに小さい。また、第1リーフバルブ1aの撓み剛性は第2リーフバルブ1bよりも低い。よって、
図4に示すように、第1リーフバルブ1aが撓んで圧側ポート2dを開放する際には、第2リーフバルブ1bも第1リーフバルブ1aとともに撓み、圧抜き孔1a3は第2リーフバルブ1bによって閉塞されたままとなる。
【0047】
また、圧側積層リーフバルブ1が伸側室R1側の圧力によってピストン2側に押圧されて、第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bの間に液体が入り込んでしまったとしても、第1リーフバルブ1aには環状凹部2fと対向して圧側ポート2dと連通する圧抜き孔1a3が設けられているので、第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bの間に入り込んだ液体は圧抜き孔1a3を通じてピストン2側に排出されて圧側ポート2dを通じて圧側室R2へと流れる。
【0048】
また、第1リーフバルブ1aの外周部には切欠き1a4が形成されているので、圧側積層リーフバルブ1が圧側ポート2dの出口端を閉塞していても、切欠き1a4により形成されるオリフィスによって伸側室R1と圧側室R2の双方向流れが許容され、通過する液体の流れに対して抵抗が付与される。なお、オリフィスの形成方法は、適宜変更できる。例えば、圧側弁座2eに打刻を形成し、この打刻によりオリフィスを形成してもよい。ただし、オリフィスは省略されてもよい。
【0049】
ピストン2の
図1中下方には伸側積層リーフバルブ3が積層されている。伸側積層リーフバルブ3は、円環状の環状板からなるリーフバルブを複数枚積層して形成されており、弁座部材としてのピストン2の
図2中下端に積層されて、ピストン2とともにロッド11の小径部11aの外周に固定される。伸側積層リーフバルブ3は、最下方のリーフバルブの内周側を伸側ボス部2jに当接させており、ロッド11に固定される内周側を固定端とし、外周側を自由端としている。よって、伸側積層リーフバルブ3は、自由端側である外周側のピストン2から離間する方向への撓みが許容され、外周側を伸側弁座2hに離着座させる。
【0050】
伸側積層リーフバルブ3は、自由端を伸側弁座2hに着座させた状態では、伸側ボス部2jと伸側弁座2hに密着して伸側ボス部2jと伸側弁座2hの間に開口する伸側ポート2gの出口端を閉塞し、伸側ポート2g側からの圧力で自由端を撓ませて伸側弁座2hから離間すると伸側ポート2gを開放するとともに伸側弁座2hとの間に生じた隙間を通過する液体の流れに抵抗を与える。
【0051】
このように構成されたバルブストッパ4、圧側積層リーフバルブ1、ピストン2および伸側積層リーフバルブ3は、順に、ロッド11の小径部11aの外周に組付けられた後、小径部11aの螺子部11dに螺子結合されるピストンナット15とロッド11の段部11cとによって挟持されてロッド11に固定される。
【0052】
バルブVおよび緩衝器Dは、以上のように構成され、以下に作動を説明する。まず、緩衝器Dの伸縮時にピストン速度が低速域にあり、伸側室R1と圧側室R2の圧力の差である差圧が圧側積層リーフバルブ1と伸側積層リーフバルブ3の開弁圧に満たない場合には、液体は圧側積層リーフバルブ1に設けられた切欠き1a4により形成されたオリフィスを通って伸長時には伸側室R1から圧側室R2へと向かい、収縮時には圧側室R2から伸側室R1へと向かう。そして、その液体の流れに対してオリフィスにより抵抗が付与される。
【0053】
なお、本実施の形態では、圧側積層リーフバルブ1のみにオリフィスを設けているが、伸側積層リーフバルブ3にもオリフィスを設けてもよい。あるいは、圧側積層リーフバルブ1のオリフィスを省略し、伸側積層リーフバルブ3のみにオリフィスを設けてもよい。
【0054】
つづいて、緩衝器Dの収縮時のピストン速度が中高速域にあり、伸側室R1と圧側室R2の差圧が圧側積層リーフバルブ1と伸側積層リーフバルブ3の開弁圧を超える場合について説明する。
【0055】
まず、緩衝器Dが収縮作動を呈して、シリンダ10に対してピストン2が
図1中下方へ中高速域で移動すると、ピストン2の
図1中下方への移動によって、圧縮される圧側室R2内の液体が圧側積層リーフバルブ1を撓ませて圧側ポート2dを通過して伸側室R1へ移動する。
【0056】
より詳細には、緩衝器Dの収縮動時には、
図4に示すように、圧側室R2内の圧力が圧側ポート2dを通じて圧側積層リーフバルブ1の図中下面である正面に作用し、当該圧力の作用で圧側積層リーフバルブ1の第1リーフバルブ1aの自由端1a2が撓んで圧側弁座2eから離間して圧側ポート2dを開放するので、圧側室R2の液体は圧側積層リーフバルブ1と圧側弁座2eとの間に生じる隙間を通じて伸側室R1へ移動する。
【0057】
よって、緩衝器Dが収縮作動を呈すると、圧側積層リーフバルブ1が圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに抵抗を与えて、圧側室R2の圧力を上昇させるため、緩衝器Dは、収縮作動を妨げる圧側減衰力を発生する。
【0058】
また、このように、第1リーフバルブ1aが圧側室R2内の圧力を受けて撓んで圧側ポート2dを開放する際、第2リーフバルブ1bの下面にも第1リーフバルブ1aに形成された圧抜き孔1a3を通じて圧側室R2内の圧力が作用するが、各圧抜き孔1a3の開口面積の合計は、第1リーフバルブ1aの受圧面積よりもはるかに小さい。よって、
図4に示すように、第1リーフバルブ1aが撓んで圧側ポート2dを開放する際には、第2リーフバルブ1bも第1リーフバルブ1aとともに撓み、圧抜き孔1a3は第2リーフバルブ1bによって閉塞されたままとなるので、圧抜き孔1a3による流路抵抗は発生しない。
【0059】
なお、緩衝器Dの収縮作動に伴って、シリンダ10内に侵入するロッド11の体積に応じてフリーピストン14が
図1中下降して気室Gを縮小させて、ロッド11がシリンダ10内に侵入する体積が補償される。
【0060】
他方、緩衝器Dが伸長作動を呈して、シリンダ10に対してピストン2が
図1中上方へ中高速域で移動すると、ピストン2の
図1中上方への移動によって、圧縮される伸側室R1内の液体が伸側積層リーフバルブ3を撓ませて伸側ポート2gを通過して圧側室R2へ移動する。よって、緩衝器Dが伸長作動を呈すると、伸側積層リーフバルブ3が伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与えて、伸側室R1の圧力を上昇させるため、緩衝器Dは、伸長作動を妨げる伸側減衰力を発生する。なお、緩衝器Dの伸長作動に伴って、シリンダ10内から退出するロッド11の体積に応じてフリーピストン14が
図1中上昇して気室Gを拡大して、ロッド11がシリンダ10内から退出する体積が補償される。
【0061】
ここで、緩衝器Dが伸長すると伸側室R1の圧力が上昇するので、第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bの間に液体が入り込み、第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bの間の圧力が上昇する可能性がある。これに対し、本実施の形態では、圧側積層リーフバルブ1の第1リーフバルブ1aに圧側ポート2dと連通する圧抜き孔1a3が形成されているので、第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bの間に液体が入り込んだとしても、その液体は圧抜き孔1a3を通じてピストン2側に排出されて圧側ポート2dを通じて圧側室R2へと流れる。
【0062】
したがって、第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bの間の圧力が作用して第1リーフバルブ1aを撓ませることがない。よって、本実施の形態では、第1リーフバルブ1aの環状凹部2fと対向しピストン2に支持されていない部分がピストン2側に凸状に撓まないので、第1リーフバルブ1aの疲労を抑制できる。
【0063】
また、第1リーフバルブ1aには、背面側から大きな応力が作用しないので、第1リーフバルブ1aの耐久性を向上させる必要がない。したがって、第1リーフバルブ1aの厚みを薄くしたり、第1リーフバルブ1aの撓み剛性を低くすることができる。言い換えると、第1リーフバルブ1aに圧抜き孔1a3を設けることで、第1リーフバルブ1aの厚みや撓み剛性を自由に設定できるので、バルブVの減衰力特性の設定自由度が向上する。
【0064】
また、オリフィスの流路抵抗は、オリフィスの流路面積の大きさによって変わるが、前述したように、第1リーフバルブ1aに圧抜き孔1a3を設けたことで第1リーフバルブ1aの厚みを自由に設定できるので、オリフィスの流路面積の調整の自由度も向上する。具体的には、従来でも第1リーフバルブ1aの厚みを厚くすることは可能であったが、背面側から作用する応力に対する耐久性の問題で第1リーフバルブ1aの厚みを薄くすることはできなかった。これに対して、本実施の形態では、第1リーフバルブ1aの厚みを薄くでき、従来よりもオリフィスの流路面積を小さくできるので、オリフィスの流路面積の調整の自由度が向上する。
【0065】
前述したように、本実施の形態のバルブVは、ポートとしての圧側ポート2dを有する弁座部材としてのピストン2と、ピストン2に積層されて圧側ポート2dを開閉する積層リーフバルブとしての圧側積層リーフバルブ1とを備え、圧側積層リーフバルブ1は、ピストン2に積層されるとともに圧側ポート2dに連通される圧抜き孔1a3を有する第1リーフバルブ1aと、第1リーフバルブ1aの反ピストン側に積層されて圧抜き孔1a3を閉塞する第2リーフバルブ1bとを有し、圧側積層リーフバルブ1が圧側ポート2dを開放する際に、圧抜き孔1a3は第2リーフバルブ1bによって閉塞されたままとなる。
【0066】
このように構成されたバルブVでは、第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bをピストン2側に押圧する圧力が作用する際に第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bの間に液体が入り込んでしまったとしても、第1リーフバルブ1aには圧側ポート2dと連通する圧抜き孔1a3が設けられているので、第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bの間に入り込んだ液体は圧抜き孔1a3を通じて圧側ポート2dへ排出される。したがって、第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bの間の圧力が作用して第1リーフバルブ1aを撓ませるのを防止できる。よって、本実施の形態では、第1リーフバルブ1aのピストン2に支持されていない部分がピストン2側に凸状に撓まないので、第1リーフバルブ1aの疲労を抑制できる。
【0067】
また、第1リーフバルブ1aには背面側から大きな応力が作用しないので、第1リーフバルブ1aの厚みを厚くしたり撓み剛性を向上させるなどして、第1リーフバルブ1aの耐久性を向上させる必要がない。したがって、第1リーフバルブ1aの厚みを薄くしたり、第1リーフバルブ1aの撓み剛性を低くすることができるので、第1リーフバルブ1aの厚みや撓み剛性を自由に設定できる。よって、本実施の形態のバルブVでは、減衰力特性の設定自由度が向上する。
【0068】
また、前述したように、第1リーフバルブ1aには背面側から大きな応力が作用しないため、ピストン2の環状凹部2fの底部に第1リーフバルブ1aを支持するランド部を省略、あるいは、ランド部をピストン2に設けるとしてもランド部の面積を従来よりも小さくできる。
【0069】
よって、本実施の形態のバルブVでは、第1リーフバルブ1aがランド部に吸着したり、第1リーフバルブ1aとランド部の間にコンタミナントが噛み込んで安定した減衰力の発生が難しくなるといった問題が生じないため、安定した減衰力の発生が可能となる。さらに、ランド部はピストン2を焼結加工する際の成形性の悪化を招く原因となるが、本実施の形態のバルブVでは、ランド部を省略あるいはランド部の面積を小さくできるので、ピストン2を焼結加工する際の成形性の悪化を抑制できる。
【0070】
また、第1リーフバルブ1aの厚みを自由に設定できるため、第1リーフバルブ1aの外周部に切欠き1a4を設けてオリフィスを形成する場合に、第1リーフバルブ1aの厚みを変更してオリフィスの流路面積の調整の自由度が向上する。
【0071】
また、本実施の形態のバルブVでは、第1リーフバルブ1aの厚みは、第2リーフバルブ1bの厚さ以下となっている。第1リーフバルブ1aは、板状の母材を金型で打ち抜いて成形されるが、このように構成されたバルブVでは、第1リーフバルブ1aの板厚が薄いので、金型の摩耗が少なく済む上、第1リーフバルブ1aを高い精度で成形できる。
【0072】
また、本実施の形態のバルブVでは、第1リーフバルブ1aの撓み剛性は、第2リーフバルブ1bの撓み剛性以下となっている。従来は第1リーフバルブ1aの耐久性を向上させるために撓み剛性を大きくせざるを得なかったが、本実施の形態のバルブVでは、第1リーフバルブ1aに圧抜き孔1a3を設けたことで第1リーフバルブ1aの撓み剛性を低くできるようになった。よって、バルブVが発揮する減衰力が過大になるのを防止でき、バルブVを備えた緩衝器Dを車両に搭載する場合に、車両の乗り心地が悪化するのを防止できる。
【0073】
なお、本実施の形態では、第1リーフバルブ1aの厚みを第2リーフバルブ1bの厚み以下とすることで、第1リーフバルブ1aの撓み剛性を第2リーフバルブ1bの撓み剛性以下としているが、第1リーフバルブ1aの材質を変更して、第1リーフバルブ1aの撓み剛性を第2リーフバルブ1bの撓み剛性以下としてもよい。
【0074】
ただし、第1リーフバルブ1aの厚みや撓み剛性は任意に設定でき、第1リーフバルブ1aの厚みを第2リーフバルブ1bよりも厚くして、第1リーフバルブ1aの撓み剛性を第2リーフバルブ1bの撓み剛性よりも高くしてもよい。
【0075】
また、本実施の形態のバルブVでは、第1リーフバルブ1aには、圧抜き孔1a3が複数形成されている。このように構成されたバルブVでは、第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bの間に入り込んだ液体が複数個所から速やかに圧側ポート2dに排出されるので、第1リーフバルブ1aがピストン2側に撓んでしまうのをより防止できる。
【0076】
特に、本実施の形態では、圧抜き孔1a3は第1リーフバルブ1aの周方向で等間隔に配置されているので、第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bの間に入り込んだ液体は、第1リーフバルブ1aの周方向で均一に排出される。よって、第1リーフバルブ1aの圧抜き孔1a3から遠い部分がピストン2側に撓んでしまうといった事態を防止できる。
【0077】
また、圧抜き孔1a3の数を適宜変更することで、第1リーフバルブ1aの撓み剛性を調整して、バルブVの減衰力特性を調整できる。ただし、圧抜き孔1a3の数は特に限定されず、一つであってもよい。
【0078】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、アウターチューブとしてのシリンダ10と、シリンダ10内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド11と、シリンダ10に対するロッド11の移動によって液体が行き来する作動室としての少なくとも伸側室R1と圧側室R2とを有する緩衝器本体Aと、伸側室R1と圧側室R2との間に設けられたバルブVを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、上記バルブVを備えているので、減衰力特性の設計自由度が向上するとともに安定した減衰力を発生できる。
【0079】
なお、
図1に示したところでは、二つの作動室を伸側室R1と圧側室R2としているが、ポートを伸側ポート2gとして、伸側の減衰力を発生するバルブに本発明のバルブを適用してもよい。また、緩衝器Dがシリンダの外周にアウターチューブとしてアウターシェルを備えてシリンダとアウターシェルとの間にリザーバを備える複筒型緩衝器とされる場合には、圧側室とリザーバとの間に弁座部材を設けて圧側室とリザーバとの間にバルブVを設けてもよい。特に弁座部材の圧側室側に配置される第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bには、緩衝器Dの収縮時に大きな背圧が作用するので、第1リーフバルブ1aと第2リーフバルブ1bの間に入り込む圧力も大きくなる。そのため、第1リーフバルブ1aに圧抜き孔1a3を設けることで、第1リーフバルブ1aの疲労を抑制する効果がより効果的となる。
【0080】
さらに、前述したところでは、バルブVの圧側積層リーフバルブ1を構成する各リーフバルブは環状に構成されているが、リーフバルブは環状以外の形状で構成されてもよい。
【0081】
また、本実施の形態では、圧側積層リーフバルブ1(積層リーフバルブ)は、ロッド11の外周に内周端が固定されるリーフバルブの外周端を撓ますことで、圧側ポート2d(ポート)を開放しているが、圧側積層リーフバルブ1(積層リーフバルブ)は、リーフバルブ全体がピストン2(弁座部材)に対して遠近して圧側ポート2d(ポート)を開閉するフローティングバルブであってもよい。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1・・・圧側積層リーフバルブ(積層リーフバルブ)、1a・・・第1リーフバルブ、1a3・・・圧抜き孔、1b・・・第2リーフバルブ、2・・・ピストン(弁座部材)、2d・・・圧側ポート(ポート)、10・・・シリンダ(アウターチューブ)、11・・・ロッド、A・・・緩衝器本体、R1・・・伸側室(作動室)、R2・・・圧側室(作動室)、V・・・バルブ