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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025141016
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】診断装置、および診断方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20250919BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040727
(22)【出願日】2024-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 博貴
【テーマコード(参考)】
5L050
【Fターム(参考)】
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】複数の発電装置の保守管理の効率化を図る。
【解決手段】演算装置102は、物理量に基づいて、複数の風力発電装置20の全ての診断箇所ごとに該診断箇所の異常の度合いを示す異常値を特定し、全ての診断箇所から、異常値が最大異常値である最大異常箇所を特定し、最大異常箇所を含む異常情報を生成し、異常情報を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発電装置の診断装置であって、
前記複数の発電装置の各々には、該発電装置の少なくとも1つの診断箇所の物理量を検出するセンサが設置されており、
前記診断装置は、
演算装置と、
前記複数の発電装置の各々に設置されているセンサからの物理量を取得するインタフェースとを備え、
前記演算装置は、
前記物理量に基づいて、前記複数の発電装置の全ての診断箇所ごとに該診断箇所の異常の度合いを示す異常値を特定し、
前記全ての診断箇所から、異常値が最大異常値である最大異常箇所を特定し、
前記最大異常箇所を含む異常情報を生成し、
前記異常情報を出力する、診断装置。
【請求項2】
前記演算装置は、前記全ての診断箇所ごとの異常値の順位を特定し、
前記異常情報は、前記順位を示す情報を含む、請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記演算装置は、前記複数の発電装置ごとの異常値を、該発電装置の少なくとも1つの診断箇所の異常値に基づいて特定し、
前記異常情報は、前記複数の発電装置ごとの異常値の順位を示す情報を含む、請求項1または請求項2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記演算装置は、前記複数の発電装置ごとの運転可否を、該発電装置の異常値に基づいて特定し、
前記異常情報は、前記複数の発電装置の各々の運転可否を示す情報を含む、請求項3に記載の診断装置。
【請求項5】
前記演算装置は、前記複数の発電装置ごとの余寿命を、該発電装置の少なくとも1つの診断箇所の異常値に基づいて特定し、
前記異常情報は、前記複数の発電装置ごとの余寿命の順位を示す情報を含む、請求項1または請求項2に記載の診断装置。
【請求項6】
前記演算装置は、
前記全ての診断箇所ごとの異常値に応じて、該診断箇所に対して必要なメンテナンスの必要度を特定し、
前記異常情報は、前記メンテナンスの必要度の順位を示す情報を含む、請求項1または請求項2に記載の診断装置。
【請求項7】
前記異常情報は、前記メンテナンスの見積額および該メンテナンスの開始時期のうち少なくとも1つを含む、請求項6に記載の診断装置。
【請求項8】
前記演算装置は、
前記全ての診断箇所ごとに、過去の所定タイミングの基準物理量を記憶するメモリを備え、
前記演算装置は、
前記全ての診断箇所における前記インタフェースが取得した物理量と、該診断箇所に対応する前記基準物理量との差分値の絶対値を算出し、
前記全ての診断箇所における前記絶対値に基づいて、前記全ての診断箇所ごとの異常値を特定する、請求項1または請求項2に記載の診断装置。
【請求項9】
前記所定タイミングは、ユーザが指定したタイミングである、請求項8に記載の診断装置。
【請求項10】
前記診断装置は、前記異常情報を生成するごとに該異常情報を記憶するメモリをさらに備え、
前記異常情報は、前記メモリに記憶されている前回作成した前記異常情報を含む、請求項1または請求項2に記載の診断装置。
【請求項11】
前記演算装置は、前記異常情報を、前記複数の発電装置のユーザのユーザ端末に出力する、請求項1または請求項2に記載の診断装置。
【請求項12】
前記発電装置は、風力発電装置である、請求項1または請求項2に記載の診断装置。
【請求項13】
複数の発電装置の診断方法であって、
前記複数の発電装置の各々には、該発電装置の少なくとも1つの診断箇所の物理量を検出するセンサが設置されており、
前記診断方法は、
前記複数の発電装置の各々に設置されているセンサからの物理量を取得することと、
前記物理量に基づいて、前記複数の発電装置の全ての診断箇所ごとに該診断箇所の異常の度合いを示す異常値を特定ことと、
前記全ての診断箇所から、異常値が最大異常値である最大異常箇所を特定することと、
前記最大異常箇所を含む異常情報を生成することと、
前記異常情報を出力することとを備える、診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、診断装置、および診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2006-342766号公報には、風力発電装置の運転状態の診断装置に関する技術が開示されている。この診断装置は、該診断装置が取得した風力発電装置の稼動実績と、予め設定した風力発電設備のメンテナンス条件とを保持する。そして、この診断装置は、この稼動実績がメンテナンスの必要となる稼動量に達しているか否かを判定することにより、メンテナンスの必要性の有無を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-342766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の風力発電装置を一括して監視する構成が考えられる。しかしながら、従来の診断装置の監視対象は、1台の風力発電装置のみであった。したがって、複数の風力発電装置の保守管理の効率化を図ることができないという問題が生じ得る。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の発電装置の保守管理の効率化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の診断装置は、複数の発電装置の診断装置である。複数の発電装置の各々には、該発電装置の少なくとも1つの診断箇所の物理量を検出するセンサが設置されている。診断装置は、演算装置と、複数の発電装置の各々に設置されているセンサからの物理量を取得するインタフェースとを備える。演算装置は、物理量に基づいて、複数の発電装置の全ての診断箇所ごとに該診断箇所の異常の度合いを示す異常値を特定する。演算装置は、全ての診断箇所から、異常値が最大異常値である最大異常箇所を特定する。演算装置は、最大異常箇所を含む異常情報を生成する。演算装置は、異常情報を出力する。
【0007】
本開示の診断方法は、複数の発電装置の診断方法である。複数の発電装置の各々には、該発電装置の少なくとも1つの診断箇所の物理量を検出するセンサが設置されている。診断方法は、複数の発電装置の各々に設置されているセンサからの物理量を取得することを備える。診断方法は、物理量に基づいて、複数の発電装置の全ての診断箇所ごとに該診断箇所の異常の度合いを示す異常値を特定することを備える。診断方法は、全ての診断箇所から、異常値が最大異常値である最大異常箇所を特定することを備える。診断方法は、最大異常箇所を含む異常情報を生成することを備える。診断方法は、異常情報を出力することを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の発電装置の保守管理の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態の管理システムの構成例を示す図である。
図2】入力画面の一例を示す図である。
図3】結果画面の一例を示す図である。
図4】第1DBの一例を示す図である。
図5】第2DBの一例を示す図である。
図6】診断装置の機能ブロック図である。
図7】処理部の演算内容を説明するための図である。
図8】診断装置の主な処理を示すフローチャートである。
図9】他の結果画面の一例を説明するための図である。
図10】他の結果画面の一例を説明するための図である。
図11】他の結果画面の一例を説明するための図である。
図12】他の結果画面の一例を説明するための図である。
図13】他の結果画面の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
<第1実施形態>
[管理システムの構成例]
図1は、本実施の形態の管理システム10の構成例を示す図である。本開示の管理システム10は、状態監視システム(CMS:Condition Monitoring System)が適用されたシステムである。管理システム10は、M(Mは1以上の整数)個の風力発電ユニット45と、診断装置100と、ユーザ端末50と、メンテナンスサーバ70と、ネットワークNWとを備える。後述の収集装置30と、診断装置100と、ユーザ端末50と、メンテナンスサーバ70とはネットワークNWを通じて、互いに通信可能である。
【0012】
たとえば、M個の発電ユニットは互いに関連している。より詳細には、M個の風力発電ユニットの各々の風力発電装置は互いに関連している。ここで、「関連」とは、M個の風力発電装置が同一構成であり、かつM個の風力発電装置がウインドファームWFを構成することをいう。したがって、M個の発電ユニットの各々の外部の環境(温度、湿度、風量など)が同様となる。換言すれば、ウインドファームWFは、風力発電装置群を構成する。なお、変形例として、M個の風力発電装置は同一構成ではなくてもよい。
【0013】
なお、変形例として、「関連」とは、M個の風力発電装置の運転開始時期が同一であること、およびM個の風力発電装置の同一機種であることのうち少なく一方を含む概念としてもよい。M個の風力発電装置は、本開示の「複数の風力発電装置」に対応する。なお、変形例として、M個の発電ユニットは互いに関連していなくてもよい。
【0014】
図1の例では、1つのウインドファームが開示されているが、診断装置100は、Q(Qは1以上の整数)個のウインドファームを管理する。具体的には、診断装置100は、Q個のウインドファームの各々に属する全ての風力発電装置を一括して診断する。
【0015】
風力発電ユニット45は、風力発電装置20と、収集装置30と、N個のセンサSn(n=1,...,N、Nは1以上の整数)と、を備える。また、N個のセンサSnは、たとえば、振動センサ、および温度センサなどを含む。
【0016】
風力発電装置20は、風力を受けて発電する装置である。センサSnの各々は、風力発電装置20の診断箇所における、該センサに対応する物理量を検出する。このように、M個の風力発電装置20の各々には、該風力発電装置20の少なくとも1つの診断箇所の物理量を検出するセンサSnが設置されている。図1の例では、M個の風力発電装置の全てにおいて、N個のセンサが配置されている例が示されているが、M個の風力発電装置においてセンサの数が異なっていてもよい。
【0017】
Q個のウインドファームの各々には、ウインドファームID(identification)が付与されている。ウインドファームIDは、「WFID」または「風力発電装置群ID」とも称される。M個の風力発電装置の各々には、風力発電装置IDが付与されている。M個の風力発電装置に設置されている全てのセンサの各々には、センサIDが付与されている。また、センサIDは、「該センサIDのセンサによる診断箇所の診断箇所ID」でもある。
【0018】
また、センサが、振動センサであれば、物理量は振動値であり、センサが温度センサであれば、物理量は温度である。診断箇所は、たとえば、風力発電装置20の軸受、増速機、および発電機などである。
【0019】
なお、振動値は、たとえば、該所定箇所の変位、速度、および加速度などのいずれかにより表される。センサSnにより検出された物理量と、該センサのセンサIDとが対応付けられて時系列データとして収集装置30に出力される。
【0020】
収集装置30により収集された時系列データは、該収集装置30に対応する風力発電装置20の風力発電装置IDが該時系列データと対応付けられて診断装置100に出力される。診断装置100のメモリ104は、風力発電装置IDと時系列データとを対応付けて記憶する。このように、診断装置100のメモリ104は、全ての風力発電装置20の時系列データを一括して記憶する。なお、図1の例では、診断装置100がM個の風力発電装置20の時系列データを一括して記憶する構成が開示されるが、診断装置100とは別の装置(サーバ)が該時系列データを記憶するようにしてもよい。
【0021】
診断装置100は、時系列データを用いて、M個の風力発電装置20を診断する。風力発電装置20の診断は、風力発電装置20の異常の有無の判断処理と、風力発電装置20の異常が検出されたときには該異常の位置の位置特定処理とを含む。
【0022】
診断装置100による診断処理の結果、風力発電装置20の異常が診断装置100により検出された場合には、図示しない作業者が該風力発電装置20に対して、該異常を点検および修復するためのメンテナンスを実行する。
【0023】
診断装置100は、演算装置102と、メモリ104と、インタフェース106とを有する。演算装置102は、様々な処理および演算を実行する。メモリ104は、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などを含む。各構成要素はデータバスによって相互に接続されている。
【0024】
演算装置102は、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびGPU(Graphics Processing Unit)などで構成される。なお、演算装置102は、CPU、FPGA、およびGPUの少なくとも1つで構成されてもよい。また、演算装置102は、演算回路(processing circuitry)で構成されてもよい。演算装置102は、「少なくとも1つのプロセッサ」、または「演算回路」とも称される。
【0025】
メモリ104は、演算装置102が任意のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する揮発性の記憶領域(たとえば、ワーキングエリア)を含む。たとえば、メモリ104は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含む。
【0026】
ROMは、演算装置102にて実行されるプログラムを格納する。RAMは、演算装置102におけるプログラムの実行により生成されるデータなどを一時的に格納する。RAMは、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能できる。
【0027】
インタフェース106は、診断装置100の外部装置(収集装置30、ユーザ端末50、およびメンテナンスサーバ70など)と通信するように構成されている。
【0028】
ユーザ端末50は、ユーザAが保有する端末装置である。「ユーザA」とは、典型的には、M個の風力発電ユニット45を保有している者であり、たとえば、発電事業者である。ユーザ端末50は、典型的には、ユーザAが携帯可能な携帯端末である。なお、ユーザ端末50は、専用のコンピュータ端末でもよい。
【0029】
ユーザ端末50の表示部は、後述の入力画面(後述の図2参照)と、該入力画面に対する結果画面(後述の図3参照)とを表示する。
【0030】
メンテナンスサーバ70は、風力発電装置20のメンテナンスに関するメンテナンス情報を記憶するサーバである。メンテナンス情報は、たとえば、メンテナンスを行う作業者のスケジュール、メンテナンスされる部品の代替品の在庫数、メンテナンスの見積額などを含む。
【0031】
上述のように、診断装置100は、M個の風力発電装置を一括して監視する。ここで、ユーザAは、たとえば、M個の風力発電装置のうち最も異常である箇所を知りたい場合がある。また、その他の局面において、ユーザAは、M個の風力発電装置の異常値の順位を知りたい場合がある。たとえば、ユーザAは、M個の風力発電装置のうち、最も異常である風力発電装置、および2番目に異常である風力発電装置などを示す情報を知りたい場合がある。ユーザAは、このような情報を認識することにより、風力発電装置20のメンテナンスの優先度などを決定でき、M個の風力発電装置20の効率的な保守管理を実現できる。
【0032】
そこで、このような効率的な保守管理を実現するために、診断装置100は、異常情報をユーザ端末50に表示する。異常情報は、M個の風力発電装置20の全ての診断個所のうち最も異常である箇所(最大異常箇所)を含む情報である。また、異常情報は、複数の発電装置の全ての診断箇所ごとの異常値の順位に関する情報を含むようにしてもよい。診断箇所ごとの異常値は、該診断箇所の異常度合いを示す値である。
【0033】
[入力画面]
図2は、ユーザ端末50が表示する入力画面300の一例である。ユーザがユーザ端末50に対して所定の表示操作を行うことにより、ユーザ端末50は、図2の入力画面300を表示する。
【0034】
入力画面300は、文字画像301と、ウインドファームID入力画像302と、診断期間入力画像303とを含む。
【0035】
文字画像301は、「あなたのウインドファーム内の複数の風力発電装置の異常情報を示します。」という文字画像である。ウインドファームID入力画像302は、ウインドファームIDの入力をユーザに促進する文字画像と、ウインドファームIDの入力領域とを含む。診断期間入力画像303は、後述の診断期間の入力をユーザに促進する文字画像と、診断期間の入力領域とを含む。
【0036】
図2の入力領域に対してユーザにより入力情報が入力された後、ユーザにより所定の送信操作が実行された場合には、該入力情報が診断装置100に送信される。送信操作は、たとえば、ユーザ端末50に表示された送信ボタン(図示せず)に対するユーザの操作である。
【0037】
診断装置100は、ユーザ端末50から送信された入力情報を用いて後述の演算処理を実行する。そして、診断装置100は、該演算結果を示す結果画面データをユーザ端末50に送信する。ユーザ端末50は、結果画面データに基づく結果画面を表示する。
【0038】
[結果画面]
図3は、結果画面400の一例である。結果画面400は、文字画像401と、異常情報430とを含む。文字画像401は、「あなたの風力発電装置の異常値の順位(異常値のランキング)は以下の通りです。」という文字画像である。
【0039】
異常情報430は、全ての診断箇所ごとの異常値のうち、最大異常値である最大異常箇所を含む情報である。異常情報430は、装置順位情報412と、異常箇所情報413と、メンテナンス種別情報414と、見積額情報415と、開始時期情報416とを含む。図3の例では、M個の風力発電装置は、5台の風力発電装置である例(つまりM=5である例)が示される。また、5台の風力発電装置は、風力発電装置A1、風力発電装置A2、風力発電装置A3、風力発電装置A4、および風力発電装置A5と称される。また、この例では、5台の風力発電装置の各々には、同数のN個のセンサが設置されているとする。つまり、1つのウインドファームには、5×N個のセンサが配置されている。換言すると、診断装置100は、5×N個の診断箇所を診断することになる。
【0040】
装置順位情報412は、風力発電装置ごとの種別および順位を示す情報である。図3の例の装置順位情報412は、たとえば、異常値が1位の風力発電装置(つまり、異常度合いが最大である風力発電装置)は、風力発電装置A5であることが示されている。また、装置順位情報412は、異常値が2位の風力発電装置は、風力発電装置A3であることが示されている。装置順位情報412は、本開示の「異常値の順位を示す情報」に対応する。
【0041】
異常箇所情報413は、各風力発電装置ごとの異常箇所を示す情報である。図3の例では、風力発電装置A5の異常箇所は、軸受装置と、増速機とであることが示されている。また、風力発電装置A3の異常箇所は、軸受装置であることが示されている。また、他の風力発電装置においては、異常箇所は無いことが示されている。
【0042】
異常箇所情報413は、全ての診断箇所のうち少なくとも1つの診断箇所ごとの異常値の順位を示す情報でもある。図3の例の異常箇所情報413は、全て(5×N個)の診断箇所のうち、3つの診断箇所の異常値の順位を示している。3つの診断箇所は、風力発電装置A5の軸受装置、風力発電装置A5の増速機、風力発電装置A3の軸受装置である。
【0043】
また、図3の例の異常箇所情報413では、上から順に異常値が高いとされている。つまり、図3の例では、3つの診断箇所ごとの異常値の順位として、1位の異常箇所が風力発電装置A5の軸受装置であり、2位の異常箇所が風力発電装置A5の増速機であり、3位の異常箇所が風力発電装置A3の軸受装置であることが示されている。1位の異常箇所である風力発電装置A5の軸受装置の異常値が、最も高い。風力発電装置A5の該軸受装置が、本開示の「最大異常箇所」の一例に対応する。
【0044】
メンテナンス種別情報414は、各異常箇所毎に必要なメンテナンスの種別を示す情報である。図3の例では、風力発電装置A5の異常箇所である軸受装置に対しては、「軸受交換」というメンテナンスの種別が示されている。また、風力発電装置A5の異常箇所である増速機に対しては、「増速機交換」というメンテナンスの種別が示されている。また、風力発電装置A3の異常箇所である軸受装置に対しては、「軸受交換」というメンテナンスの種別が示されている。
【0045】
また、図3の例のメンテナンス種別情報414では、上から順にメンテナンスの必要度が高いとされている。つまり、図3の例では、3つのメンテナンスごとの順位として、1位が風力発電装置A5の軸受交換であり、2位が風力発電装置A5の増速機交換であり、3位が風力発電装置A3の軸受交換である。メンテナンス種別情報414は、本開示の「メンテナンスの必要度の順位を示す情報」に対応する。なお、診断個所(異常箇所)の異常度が高いほど、メンテナンスの必要度も高くなる。
【0046】
見積額情報415は、メンテンス種別毎に、該メンテナンス種別により示されるメンテナンスに必要な費用(見積額)を示す情報である。図3の例では、風力発電装置A5の軸受装置交換のメンテナンス見積額はL1円であることが示されている。また、風力発電装置A5の増速機交換のメンテナンス見積額はL2円であることが示されている。風力発電装置A3の軸受装置交換のメンテナンス見積額はL3円であることが示されている。
【0047】
開始時期情報416は、該メンテナンス種別により示されるメンテナンスが開始(可能な)時期を示す情報である。開始時期情報416は、メンテナンス状況(後述の図5参照)から特定される情報である。メンテナンス状況は、たとえば、メンテナンスに必要な部品(たとえば、新しい軸受など)の在庫と、メンテナンス作業者のスケジュール、およびメンテナンスのリードタイム(メンテナンスに必要な期間)などを含む。
【0048】
[診断装置が備えるデータベース(DB)]
次に、診断装置100が備える第1DB(Data Base)および第2DBを説明する。図4は、第1DBの一例を示す図である。第1DBにおいては、ウインドファームIDに対して、風力発電装置IDと、センサIDと、ユーザ端末IDとが対応付けられている。なお、図4などでは、ウインドファームIDは、「WFID」と示されている。本開示では、IDが、該IDが付されている事項の参照符号とされる場合がある。たとえば、風力発電装置IDが、A1の風力発電装置は、「風力発電装置A1」とも称される(図3も参照)。
【0049】
図4の例では、ウインドファームW1に、5台の風力発電装置である風力発電装置A1~A5が含まれている。また、風力発電装置A1には、N個のセンサであるセンサB1~BNが設置されている。また、センサIDは、該センサIDにより示されるセンサが設置された診断箇所のIDである診断箇所IDとも称される。ウインドファームW1については、ユーザ端末U1が対応付けられている。
【0050】
なお、ウインドファームIDとユーザ端末IDは必ずしも1対1で対応付ける必要はなく、たとえば、代表のユーザ端末IDが、複数のウインドファームIDと対応付けられていてもよい。
【0051】
図5は、第2DBの一例を示す図である。第2DBにおいて、異常IDに対して、メンテナンスIDと、メンテナンス見積額と、メンテナンス状況とが対応付けて規定されている。
【0052】
たとえば、異常C1に対して、メンテナンスM1、メンテナンス見積額:N1(円)、メンテナンス状況R1が対応付けられている例が示されている。つまり、異常C1については、異常C1を修復するために、風力発電装置20に対してメンテナンスM1を実行することが対応付けられている。また、異常C1については、該メンテナンスM1に要する見積額(費用)がN1円であることが対応付けられている。また、異常C1については、メンテナンスM1の現在または将来的な状況がR1であることが対応付けられている。メンテナンス状況は、上述のように、メンテナンスに必要な部品(たとえば、新しい軸受など)の在庫と、メンテナンス作業者のスケジュール、およびメンテナンスのリードタイム(メンテナンスに必要な期間)を含む。
【0053】
[診断装置100の機能ブロック図]
図6は、診断装置100の機能ブロック図である。診断装置100は、受信部112と、処理部114と、送信部116と、メモリ104とを有する。受信部112および送信部116は、図1のインタフェース106に対応する。処理部114は、図1の演算装置102に対応する。
【0054】
メモリ104には、第1DB141(図4参照)、第2DB142(図5参照)、および全ての診断箇所の各々の基準物理量151が格納されている。基準物理量151は、後述される。
【0055】
受信部112は、ユーザ端末50から入力画面300(図2参照)に入力された入力情報を取得する。入力情報は、図2で説明したように、ウインドファームID(ウインドファームID入力画像302に入力された情報)と、診断期間(診断期間入力画像303に入力された情報)とを含む。受信部112が取得した入力情報は、処理部114に出力される。以下の説明では、入力されたウインドファームIDは、「W1」であるとする。つまり、図4の例では、風力発電装置の数は5個であり、センサの数(診断個所の数)は、上述の5×Nであるとする。
【0056】
処理部114は、該入力情報を受信すると、該入力情報に含まれるウインドファームIDに含まれる風力発電ユニットの全ての診断箇所の最新(直近)の物理量を、上記時系列データから取得(抽出)する。最新の物理量は、本開示の「物理量」に対応する。最新の物理量は、インタフェース106が取得した物理量である。なお、処理部114は、入力情報が入力されたときに、全ての収集装置に最新の物理量を要求するして、該最新の物理量を取得するようにしてもよい。
【0057】
そして、処理部114は、物理量に基づいて、複数の風力発電装置の全ての診断箇所ごとの異常値を特定する。ここで、複数の風力発電装置は、たとえば、ユーザにより入力されたウインドファームIDにより示されるウインドファームに含まれる全ての風力発電装置(上述の5台の風力発電装置)である。また、物理量は、複数の風力発電装置の全ての診断箇所(上述の5×N個の診断箇所)の物理量である。換言すれば、全ての診断箇所の物理量は、複数の風力発電装置の全てのセンサが検出した物理量である。
【0058】
次に、異常値の特定(算出)の手法を説明する。上述したように、風力発電装置の全てのセンサは、たとえば、振動センサ、および温度センサなどを含む。したがって、5×N個の診断箇所の物理量については、振動値、温度など様々な種別の物理量がある。
【0059】
そこで、処理部114は、全ての診断箇所における最新物理量(5×N個の最新物理量)と、該診断箇所に対応する基準物理量との差分値の絶対値を算出する。換言すれば、処理部114は、全ての診断箇所における最新物理量のそれぞれと、全ての診断箇所における基準物理量との差分値の絶対値を算出する。処理部114は、たとえば、以下の式(1)により、差分値の絶対値(以下、「差分絶対値」とも称される。)を算出する。
【0060】
差分絶対値=│最新物理量-該最新物理量に対応する基準物理量| (1)
式(1)において、|X|は、Xの絶対値を示す。処理部114は、全ての診断箇所について式(1)を算出することにより、5×N個の差分絶対値を算出する。なお、式(1)については、後述の図7の※1にも開示されている。
【0061】
さらに、処理部114は、異常値が予め定められた閾値よりも大きいか否かを判断する。そして、処理部114は、閾値よりも大きい異常値(過度に大きい異常値)に対応する診断箇所を異常箇所として特定する。
【0062】
基準物理量は、過去の所定タイミングに検出された物理量である。過去の所定タイミングは如何なるタイミングであってもよい。所定タイミングは、たとえば、ユーザにより診断期間入力画像303(図2参照)に対して入力された診断期間まで遡ったタイミングとする。たとえば、診断期間として、ユーザに「3年」という情報が入力された場合には、現時点から3年前のタイミングが所定タイミングとなる。
【0063】
式(1)により算出される差分絶対値は、該差分絶対値の算出に用いられた物理量の、上記所定タイミングからの変化量である。一般的に、正常な診断箇所の差分絶対値(変化量)は、小さい値となる傾向にある。しかしながら、異常な診断箇所の差分絶対値(変化量)は、大きな値となる傾向にある。
【0064】
そこで、処理部114は、全ての(5×N個の)診断箇所ごとの差分絶対値を、該診断箇所の異常値として特定する。また、処理部114は、該差分絶対値に対して所定演算を実行し、該所定演算の結果を、診断箇所ごとの異常値としてもよい。所定演算は、たとえば、センサの種別(物理量の種別)に応じた正規化処理を含む。なお、異常値の算出手法については、上記の式(1)などに限られず、他の算出式、所定の関数、およびAI(Artificial intelligence)のうち少なくとも1つを用いる手法が採用されてもよい。また、異常値は、最新物理量と、基準物理量との除算値としてもよい。たとえば、異常値は、最新物理量/基準物理量としてもよい。
【0065】
図7は、処理部114の演算内容を説明するための図である。図7の例では、ウインドファームW1が入力情報として入力された場合が示されている。図7の例の風力発電装置IDおよびセンサIDの記載については、図4の記載と同様である。
【0066】
上述および図7に示すように、処理部114は、ユーザにより入力されたウインドファームIDにより指定されたウインドファームに含まれる全ての(5個の)風力発電装置20の全ての診断箇所の(診断箇所IDごとの)異常値を検出する。図7の例では、診断箇所B1については、異常値E1が算出されており、診断箇所B10については、異常値E10が算出されている例が示されている。また、その他の診断箇所についても異常値が算出される。
【0067】
さらに、処理部114は、特定した異常箇所において発生した異常の異常IDを特定する。処理部114は、たとえば、異常箇所である診断箇所ID、および該診断箇所IDを用いて、所定のデータベース(図示せず)を用いて、異常IDを特定する。図7の例では、診断箇所IDの異常IDは、C1であることが示されている。
【0068】
さらに、処理部114は、複数の風力発電装置20ごとの異常値(以下、「装置異常値」とも称される。)を、該風力発電装置の全ての診断箇所の異常値に基づいて特定する。たとえば、処理部114は、(1つの)該風力発電装置20の全ての診断箇所の異常値に対して所定処理を実行することにより、風力発電装置20の異常値を算出する。所定処理は、たとえば、加算処理である。つまり、処理部114は、1つの風力発電装置20の全ての診断箇所の異常値を加算することにより、該風力発電装置20の装置異常値を算出する。
【0069】
図7の例では、風力発電装置A1の装置異常値として、「F1」が算出されている。また、風力発電装置A5の装置異常値として、「F5」が算出されている。他の風力発電装置A2~A4についても、それぞれ、装置異常値F2~F4が算出される。
【0070】
そして、処理部114は、全ての(5つの)装置異常値の大小を比較して、全ての装置異常値に順位を付与する。このようにして、処理部114は、装置順位情報412(図3参照)を生成する。F1、F2、F3、F4、およびF5が、それぞれ、風力発電装置A1,風力発電装置A2,風力発電装置A3,風力発電装置A4,および風力発電装置A5の装置異常値であるとする。この場合には、図3の装置順位情報412の例では、F5>F3>F2>F1>F4となっている。
【0071】
また、処理部114は、診断箇所IDごとの異常値に基づいて、異常箇所情報413を生成する。なお、処理部114は、異常値が最大である異常箇所を最大異常箇所(図3の括弧書き参照)として特定する。
【0072】
また、処理部114は、図5の第2DB142を参照して、図7の異常IDに対応するメンテナンスIDにより示されるメンテナンス種別を、メンテナンス種別情報414として生成する。さらに、処理部114は、図5の第2DB142を参照して、このメンテナンスIDに対応するメンテナンス見積額を見積額情報415として生成する。さらに、処理部114は、図5の第2DBを参照して、図7の異常IDに対応するメンテナンス状況に基づいて開始時期情報416を生成する。
【0073】
そして、処理部114は、演算結果(生成した情報)に基づいて、結果画面の画像データ(結果画面データ)を生成する。送信部116は、第1DB141を参照して、入力されたウインドファームIDに対応するユーザ端末50に、結果画面データを送信する。そして、ユーザ端末50は、結果画面データに応じた結果画面(図3)を表示する。
【0074】
[フローチャート]
図8は、診断装置100の主な処理を示すフローチャートである。ユーザ端末50が、図2の入力画面に対して入力された入力情報を診断装置100に送信したときに、図8のフローチャートは開始される。
【0075】
まず、ステップS2において、診断装置100は、ユーザ端末50からの入力情報と、収集装置30からの最新物理量とを取得する。次に、ステップS4において、診断装置100は、M個の風力発電装置20の全ての診断箇所の異常値を算出する(図7の異常値の欄参照)。
【0076】
次に、ステップS6において、診断装置100は、全ての診断箇所の異常値の大小を比較することにより、最大異常箇所などを特定する。次に、ステップS8において、診断装置100は、M個の風力発電装置ごとの異常値(図7の例では、装置異常値)を算出する。
【0077】
次に、ステップS10において、診断装置100は、メンテナンスが必要か否かを判断する。たとえば、第2DB(図5参照)において、メンテナンスIDに対応付けられている異常IDの異常が診断装置100により特定された(診断された)場合には、ステップS10ではYESと判断される。また、メンテナンスIDに対応付けられている異常IDの異常が診断装置100により特定されなかった場合には、ステップS10ではNOと判断される。
【0078】
ステップS10でYESと判断された場合には、ステップS12において、診断装置100は、第2DBを参照して、メンテナンス見積額およびメンテナンス開始時期を特定する。そして、処理は、ステップS14に進む。一方、ステップS10でNOと判断された場合には、処理はステップS14に進む。
【0079】
ステップS14において、診断装置100は、異常情報430を生成する。次に、ステップS16において、異常情報430の画像データ(図6の結果画面データ)をユーザ端末50に送信する。
【0080】
[小括]
(1) 以上のように、診断装置100は、複数(M個)の風力発電装置20の全て(5×N個)の診断箇所ごとに異常値(図7参照)を特定する(ステップS4)。次に、診断装置100は、全ての異常値を比較することにより、異常値が最大異常値となる最大異常箇所を特定する(ステップS6)。
【0081】
次に、ステップS14において、診断装置100は、最大異常箇所を含む異常情報430を生成する。次に、ステップS16において、診断装置100は、異常情報をユーザAに通知するための処理を実行する。このような構成によれば、複数の発電装置の全ての診断箇所のうち最大の異常値である最大異常箇所をユーザに認識させることができる。したがって、ユーザは、複数の発電装置の最大異常箇所を含む異常情報を認識でき、複数の発電装置の保守管理の効率化を図ることができる。
【0082】
(2) また、図3に示すように、異常情報430は、複数の風力発電装置20ごとの装置異常度の順位を示す装置順位情報412を含む。このような構成によれば、診断装置100は、複数の風力発電装置ごとの装置異常度の順位をユーザAに認識させることができる。
【0083】
(3) また、図3に示すように、異常情報430は、メンテナンスの必要度の順位を示すメンテナンス種別情報414を含む。このような構成によれば、診断装置100は、メンテナンスの必要度の順位をユーザAに認識させることができる。
【0084】
(4) また、図3に示すように、異常情報430は、メンテナンスの見積額を示す見積額情報415と、該メンテナンスの開始時期を示す開始時期情報416とを含む。このような構成によれば、診断装置100は、メンテナンスの見積額および該メンテナンスの開始時期をユーザAに認識させることができる。
【0085】
(5) また、図7の※1に示すように、診断装置100は、各診断箇所の異常値として差分絶対値を算出する(上記式(1)も参照)。これにより、診断装置100は、物理量の変化量を異常値として算出することができ、精度の良い異常値を算出できる。
【0086】
(6) また、差分絶対値の算出に用いられる基準物理量は、所定タイミングに診断装置100が取得した物理量である。そして、本実施の形態においては、所定タイミングは、図7の※2に示すように、ユーザが指定したタイミング(図2の診断期間入力画像303に入力された診断期間、遡ったタイミング)となる。このような構成によれば、診断装置100は、ユーザが指定した所定タイミングからの物理量の変化量を異常値として算出できる。
【0087】
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態とは別の形態が説明される。
【0088】
(1) 図9は、他の異常情報430Aの一例を説明するための図である。異常情報430Aでは、図3の開始時期情報416の代わりに緊急度情報420が含まれている。なお、変形例として、異常情報430Aには、開始時期情報416および緊急度情報420の双方が含まれていてもよい。
【0089】
緊急度情報420は、風力発電装置20に対して実行すべきメンテナンスの緊急度(優先度)を示す情報である。なお、変形例として、緊急度情報420は、診断箇所に対して必要なメンテナンスの必要度の順位を示す情報としてもよい。緊急度情報420については、処理部114は、異常値の大きさに応じて、該異常値の異常IDに対応するメンテナンスIDのメンテナンスの緊急度を規定する。たとえば、処理部114は、該異常値が閾値よりも大きい(該異常値が過度に大きい)異常IDに対応するメンテナンスIDのメンテナンスは緊急度が高いように規定する。また、処理部114は、異常値が大きいほど、該異常値の異常IDに対応するメンテナンスIDのメンテナンスの緊急度を大きく規定しても良いよ。また、異常値が閾値よりも大きいという条件が、本開示の「緊急条件」の一例に対応する。
【0090】
図9の例では、風力発電装置A5の軸受装置の異常値および増速機の異常値が過度に高いことが示されている。したがって、風力発電装置A5の軸受交換および増速機交換というメンテナンスの緊急度が高いように規定されている。さらには、図9の例では、緊急度情報420に推奨情報421が付加されている。推奨情報421は、メンテナンスが緊急であることを示す緊急条件を満たす場合に、該メンテナンスを優先的に実行することを推奨する情報である。推奨情報421は無くてもよい。
【0091】
一般的に、結果画面において、複数のメンテナンスが提示されている場合においては、ユーザAは、複数のメンテナンスのうちのどのメンテナンスを優先的に実行すべきかを認識し難い。このような構成によれば、緊急性の高いメンテナンス(メンテナンスの優先順位)をユーザに認識させることができる。さらには、ユーザAは、推奨情報421が付与されているメンテナンスを最優先で実行すべきことを認識できる。また、ユーザAは、メンテナンスの優先順位を認識することにより、ウインドファーム全体で必要なメンテナンスコストを把握できる。したがって、ユーザAが長期的な保守を計画することで、風力発電装置の運転の稼働率が向上する。また、ユーザAは、メンテナンスに必要な物品の数量も把握できることで風力発電装置の保守管理の効率化を図ることができる。
【0092】
(2) 図10は、他の結果画面400の一例を説明するための図である。図10の結果画面は、今回生成された異常情報430と、前回生成された異常情報432とを含む。
【0093】
図10の例において、前回異常情報432では、装置異常値が最大(1位)である風力発電装置が、風力発電装置A2として示されている。また、この風力発電装置A2に必要なメンテナンスとして増速機交換が提示されており、該メンテナンスの費用としてL11円が提示されている。
【0094】
そして、作業者は、風力発電装置A2の増速機を交換したとする。その結果、今回の異常情報430においては、風力発電装置A2の装置異常度の順位は、1位から3位となっている。したがって、ユーザAは、風力発電装置A2の増速機の交換により、風力発電装置A2の装置異常値が改善し、風力発電装置A2の装置異常値の順位が1位から3位に改善されたことを認識できる。
【0095】
次に、図10に示される結果画面400の生成手法について、図6の破線箇所および図8の破線箇所を用いて説明する。処理部114(図6参照)は、異常情報を生成するごとに、該異常情報を前回異常情報152(図6の破線箇所参照)としてメモリ104に記憶する。処理部114が、次の異常情報を生成したときに、前回異常情報152を取得する(図8の破線箇所のステップS20)。そして、処理部114は、生成した異常情報と、前回異常情報152とを含む結果画面データをユーザ端末50に送信する。ユーザ端末50は、結果画面データに基づく結果画面(図10参照)を表示する。
【0096】
このような構成によれば、ユーザAは、今回作成された異常情報と、前回作成された異常情報とを対比して確認できる。
【0097】
(3) 図3の異常情報430は、風力発電装置の装置異常値の順序を示す情報である構成が説明された。しかしながら、診断箇所の異常値の順序を示す情報が、異常情報430として示されてもよい。
【0098】
図11は、他の異常情報430Bを説明するための図である。図11の例では、異常情報430Bでは、図3の装置順位情報412の代わりに、箇所順位情報431が含まれている。箇所順位情報431は、診断箇所(異常箇所)の異常値の順位を示す情報である。
【0099】
また、図11の例では、異常箇所に対応して、該異常箇所に対するメンテナンス種別、該メンテナンス見積額、メンテナンス開始時期が対応付けられている。なお、箇所順位情報431については、処理部114は、全ての診断箇所の異常値(図7参照)の順位を用いて生成する。
【0100】
このような構成によれば、ユーザAは、診断箇所ごとの異常値の順位、およびメンテナンスの優先順位を認識することができる。
【0101】
(4) 図12は、他の異常情報430Cの一例を説明するための図である。異常情報430Cは、図3の異常情報430に、可否情報442が付加された画面である。可否情報442は、複数の風力発電装置の各々の運転可否を示す情報である。図12の例では、風力発電装置A5については、運転不可と判断されており、風力発電装置A3については、制限運転を実行すべきと判断されている。
【0102】
なお、可否情報442については、処理部114は、風力発電装置の装置異常値(図7参照)の順位を用いて生成する。たとえば、装置異常値が過度に大きい(装置異常値が閾値よりも大きい)風力発電装置については、運転不可と判断される。
【0103】
このような構成によれば、ユーザに各風力発電装置の運転可否を認識させることができる。
【0104】
(5) 図13は、他の異常情報430Dの一例を説明するための図である。異常情報430Dは、図3の異常情報430に、寿命情報443が付加された画面である。寿命情報443は、複数の風力発電装置の各々の推定余寿命の長さの順位を示す情報である。
【0105】
図13の例では、推定余寿命は、V5>V4>V3>V2>V1となっている。つまり、図13の例では、風力発電装置A5の余寿命V1が最も短く、風力発電装置A4の余寿命V5が最も長いことが示されている。
【0106】
風力発電装置の余寿命の算出については、たとえば、該風力発電装置の装置異常値に基づいて実行される。診断装置100は、風力発電装置の装置異常値を寿命モデルに適用することにより該風力発電装置の余寿命を算出する。寿命モデルは、たとえば、装置異常値が大きいほど、風力発電装置の余寿命が短くなるような該余寿命を出力するモデルである。
【0107】
このような構成によれば、診断装置100は、複数の風力発電装置の余寿命の順位をユーザに認識させることができる。
【0108】
(6) 第1実施形態においては、基準物理量の所定タイミングは、ユーザが指定したタイミングである構成が説明された。しかしながら、所定タイミングは、他のタイミングとしてもよい。たとえば、所定タイミングは、風力発電装置が正常に運転している期間におけるタイミングとしてもよい(図7の※2参照)。より特定的には、風力発電装置の運転が開始したタイミングとしてもよい。
【0109】
このような構成によれば、診断装置100は、発電装置が正常に運転しているときの物理量からの変化量を、診断箇所の異常値として算出できる。したがって、診断装置100は、ユーザに所定タイミングを指定させることなく、精度が高い異常値を算出できる。
【0110】
(7) 上記の例では、発電装置は、風力発電装置である実施形態が説明された。しかしながら、発電装置は、他の発電装置であってもよい。他の発電装置は、たとえば、太陽光発電装置などであってもよい。
【0111】
(8) 上記の例では、複数の風力発電装置により、1つのウインドファームが構成されている例が説明された。しかしながら、複数の風力発電装置は、1つのウインドファームを構成する必要はなく、たとえば、複数の風力発電装置のうち少なくとも2つ風力発電装置は、離れた箇所に設置される構成が採用されてもよい。このような構成が採用された場合には、たとえば、ウインドファームAにM台(Mは1以上の整数)、ウインドファームBにN台(Nは1以上の整数)とされてもよい。
【0112】
(9) 上記の例では、風力発電装置の装置異常値の順位の表示、および風力発電装置の異常箇所の順位の表示などが説明された。しかしながら、表示する事項は他の事項であってもよい。たとえば、診断装置100は、ユーザ端末50に最大異常箇所(図3参照)のみを表示させるようにしてもよい。また、診断装置100は、最大異常箇所に対して実行すべきメンテナンス種別のみを表示するようにしてもよい。
【0113】
(10) 上記の実施形態では、「異常情報をユーザに通知するための通知処理」として、該異常情報をユーザ端末50に送信する例が開示された。しかしながら、通知処理は、異常情報をユーザに通知するための処理であれば、如何なる処理であってもよい。たとえば、通知処理は、異常情報を診断装置100の表示装置に表示する処理としてもよい。そして、診断装置100が、診断装置100の管理者の入力に応じて、または、該入力に関わらず、ユーザ端末50に異常情報を送信するようにしてもよい。
【0114】
(11) また、異常情報は、風力発電装置の装置異常値の順位を示す情報と、異常箇所の異常値の順位を示す情報と、メンテナンスの必要度の順位を示す情報とのうち少なくとも1つの情報を含むとしてもよい。また、該少なくとも1つの情報において、所定数の順位のみ(たとえば、5位の順位のみ)を含み、その他の順位(たとえば、6位以下の順位)は含まないようにしてもよい。
【0115】
(12) また、診断装置100が実行する上述の処理の一部の処理を他の装置が実行する構成が採用されてもよい。本開示においては、このような構成が採用された場合には、診断装置と、他の装置とがまとめて診断装置と称される。
【0116】
[付記]
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0117】
(付記1) 本開示の診断装置は、複数の発電装置の診断装置である。複数の発電装置の各々には、該発電装置の少なくとも1つの診断箇所の物理量を検出するセンサが設置されている。診断装置は、演算装置と、複数の発電装置の各々に設置されているセンサからの物理量を取得するインタフェースとを備える。演算装置は、物理量に基づいて、複数の発電装置の全ての診断箇所ごとに該診断箇所の異常の度合いを示す異常値を特定する。演算装置は、全ての診断箇所から、異常値が最大異常値である最大異常箇所を特定する。演算装置は、最大異常箇所を含む異常情報を生成する。演算装置は、異常情報を出力する。
【0118】
このような構成によれば、診断装置は、複数の発電装置の全ての診断箇所のうち最大の異常値である最大異常箇所を出力できる。したがって、複数の風力発電装置の保守管理の効率化を図ることができる。
【0119】
(付記2) 演算装置は、全ての診断箇所ごとの異常値の順位を特定し、異常情報は、順位を示す情報を含む、付記1に記載の診断装置。
【0120】
このような構成によれば、診断装置は、複数の発電装置の全ての診断箇所ごとの異常値の順位を出力できる。
【0121】
(付記3) 演算装置は、複数の発電装置ごとの異常値を、該発電装置の少なくとも1つの診断箇所の異常値に基づいて特定し、異常情報は、複数の発電装置ごとの異常値の順位を示す情報を含む、付記1または付記2に記載の診断装置。
【0122】
このような構成によれば、診断装置は、複数の発電装置ごとの異常値の順位を出力できる。
【0123】
(付記4) 演算装置は、複数の発電装置ごとの運転可否を、該発電装置の異常値に基づいて特定し、異常情報は、複数の発電装置の各々の運転可否を示す情報を含む、付記3に記載の診断装置。
【0124】
このような構成によれば、診断装置は、複数の発電装置の各々の運転可否を出力できる。
【0125】
(付記5) 演算装置は、複数の発電装置ごとの余寿命を、該発電装置の少なくとも1つの診断箇所の異常値に基づいて特定し、異常情報は、複数の発電装置ごとの余寿命の順位を示す情報を含む、付記1~付記4のいずれか1項に記載の診断装置。
【0126】
このような構成によれば、診断装置は、複数の発電装置の余寿命の順位を出力できる。
【0127】
(付記6) 演算装置は、全ての診断箇所ごとの異常値に応じて、該診断箇所に対して必要なメンテナンスの必要度を特定し、異常情報は、メンテナンスの必要度の順位を示す情報を含む、付記1~付記5のいずれか1項に記載の診断装置。
【0128】
このような構成によれば、診断装置は、メンテナンスの必要度を出力できる。
【0129】
(付記7) 異常情報は、メンテナンスの必要度が、該メンテナンスが緊急であることを示す緊急条件を満たす場合に、該メンテナンスを優先的に実行することを推奨する推奨情報を含む、付記6に記載の診断装置。
【0130】
このような構成によれば、診断装置は、緊急条件を満たすメンテナンスを優先的に実行することを推奨する推奨情報を出力できる。
【0131】
(付記8) 異常情報は、メンテナンスの見積額および該メンテナンスの開始時期のうち少なくとも1つを含む、付記6または付記7に記載の診断装置。
【0132】
このような構成によれば、診断装置は、メンテナンスの見積額および該メンテナンスの開始時期のうち少なくとも1つを出力できる。
【0133】
(付記9) 演算装置は、全ての診断箇所ごとに、過去の所定タイミングの基準物理量を記憶するメモリを備え、演算装置は、全ての診断箇所におけるインタフェースが取得した物理量と、該診断箇所に対応する基準物理量との差分値の絶対値を算出し、全ての診断箇所における絶対値に基づいて、全ての診断箇所ごとの異常値を特定する、付記1~付記8のいずれか1項に記載の診断装置。
【0134】
このような構成によれば、インタフェースが取得した物理量から、それぞれ、該診断箇所に対応する基準物理量を差し引くことにより、物理量の変化量を反映させた異常値を特定できる。したがって、異常値の精度を向上させることができる。
【0135】
(付記10) 所定タイミングは、ユーザが指定したタイミングである、付記9に記載の診断装置。
【0136】
このような構成によれば、ユーザが所望するタイミングの基準物理量を用いることができる。
【0137】
(付記11) 所定タイミングは、発電装置が正常に運転している期間におけるタイミングである、付記9に記載の診断装置。
【0138】
このような構成によれば、発電装置が正常に運転している物理量からの変化量を特定できる。
【0139】
(付記12) 診断装置は、異常情報を生成するごとに該異常情報を記憶するメモリをさらに備え、異常情報は、メモリに記憶されている前回作成した異常情報を含む、付記1~付記11のいずれか1項に記載の診断装置。
【0140】
このような構成によれば、今回作成された異常情報と、前回作成された異常情報とを出力できる。
【0141】
(付記13) 演算装置は、異常情報を、複数の発電装置のユーザのユーザ端末に出力する、付記1~付記12のいずれか1項に記載の診断装置。
【0142】
このような構成によれば、異常情報をユーザに認識させることができる。
【0143】
(付記14) 発電装置は、風力発電装置である、付記1~付記13のいずれか1項に記載の診断装置。
【0144】
このような構成によれば、診断装置は、複数の風力発電装置の全ての診断箇所ごとの異常値の順位に関する異常情報を出力できる。
【符号の説明】
【0145】
10 管理システム、20 風力発電装置、30 収集装置、45 風力発電ユニット、50 ユーザ端末、70 メンテナンスサーバ、100 診断装置、102 演算装置、104 メモリ、106 インタフェース、112 受信部、114 処理部、116 送信部、118 記憶部、151 基準物理量、432 前回異常情報、300 入力画面、301,401 文字画像、302 ウインドファームID入力画像、303 診断期間入力画像、400 結果画面、412 装置順位情報、413 異常箇所情報、414 メンテナンス種別情報、415 見積額情報、416 開始時期情報、420 緊急度情報、421 推奨情報、430 異常情報、431 箇所順位情報、442 可否情報、443 寿命情報。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13