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特開2025-141076配線部材組付体及び追加配線部材組付モジュール
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  • 特開-配線部材組付体及び追加配線部材組付モジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025141076
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】配線部材組付体及び追加配線部材組付モジュール
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20250919BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20250919BHJP
   B60R 21/213 20110101ALI20250919BHJP
【FI】
B60R16/02 620Z
B60R13/02 A
B60R13/02 C
B60R21/213
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040826
(22)【出願日】2024-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大弥
(72)【発明者】
【氏名】曽根 康介
(72)【発明者】
【氏名】池田 吉孝
(72)【発明者】
【氏名】志田 友香
(72)【発明者】
【氏名】米盛 樹生
【テーマコード(参考)】
3D023
3D054
【Fターム(参考)】
3D023BB02
3D023BB09
3D023BD01
3D023BD08
3D023BE28
3D054AA18
3D054BB21
(57)【要約】
【課題】配線部材が内装部材によって保持されている場合において、内装部材の内側に配置されたエアバッグが円滑に展開できるようにすることを目的とする。
【解決手段】配線部材組付体20は、車室側を向く第1内装部材30と、第1内装部材の隣に位置する第2内装部材19と、第1内装部材に沿うように第1内装部材によって保持される配線部材38と、を備え、配線部材は、第1内装部材によって覆われる第1区間42と、第2内装部材によって覆われる第2区間46とを含み、第2区間が、第2内装部材に対する第1内装部材の変位を許容するための余長を吸収するように曲っている余長吸収部43を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室側を向く第1内装部材と、
前記第1内装部材の隣に位置する第2内装部材と、
前記第1内装部材に沿うように前記第1内装部材によって保持される配線部材と、
を備え、
前記配線部材は、前記第1内装部材によって覆われる第1区間と、前記第2内装部材によって覆われる第2区間とを含み、
前記第2区間が、前記第2内装部材に対する前記第1内装部材の変位を許容するための余長を吸収するように曲っている余長吸収部を有する、配線部材組付体。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材組付体であって、
前記第1内装部材は、ピラー本体を車室側から覆う長尺形状のピラー用内装部材であり、
前記第1区間が前記ピラー用内装部材の長手方向に沿うように、前記配線部材が前記ピラー用内装部材によって保持され、
前記余長吸収部は、前記第1内装部材と前記第1内装部材との境界の隣に位置する、配線部材組付体。
【請求項3】
請求項2に記載の配線部材組付体であって、
前記第2内装部材は、ルーフ用内装部材である、配線部材組付体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線部材組付体であって、
前記第1内装部材は、主内装部材と、前記主内装部材を前記車室側から覆う追加内装部材と、を含み、
前記第1区間の少なくとも一部が前記主内装部材と前記追加内装部材との間に位置する、配線部材組付体。
【請求項5】
請求項4に記載の配線部材組付体であって、
前記配線部材が、前記主内装部材の外側から、前記主内装部材と前記第2内装部材との境界を通って、前記第2内装部材の内側に延びる、配線部材組付体。
【請求項6】
請求項5に記載の配線部材組付体であって、
前記主内装部材のうち前記第2内装部材側の縁部又は前記第2内装部材のうち前記主内装部材側の縁部に、前記配線部材が通過する凹みが形成されている、配線部材組付体。
【請求項7】
請求項4に記載の配線部材組付体であって、
前記追加内装部材は、前記主内装部材の表面に沿って変形した状態で、前記主内装部材の表面に接合されたフィルムである、配線部材組付体。
【請求項8】
請求項7に記載の配線部材組付体であって、
前記第1区間の少なくとも一部が前記主内装部材の側縁に沿っている、配線部材組付体。
【請求項9】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線部材組付体であって、
前記余長吸収部は、前記第2区間が波状、環状又は螺旋状に曲げられた部分である、配線部材組付体。
【請求項10】
車室側を向く主内装部材に取付けられる追加配線部材組付モジュールであって、
前記主内装部材を覆うように前記主内装部材に取付けられる追加内装部材と、
前記追加内装部材に沿って配置される第1区間と、前記追加内装部材から延出する第2区間とを含む配線部材と、
を備え、
前記第2区間は、曲る形状に癖付けされかつ伸長可能な余長吸収部を有する、追加配線部材組付モジュール。
【請求項11】
請求項10の追加配線部材組付モジュールであって、
前記追加内装部材は、前記主内装部材の表面に沿って変形した状態で、前記主内装部材の表面に接合可能なフィルムである、追加配線部材組付モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材組付体及び追加配線部材組付モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のルーフに設けられた機器とルーフよりも下方に設けられた機器とが中継伝送部材を介して電気的に接続されること、当該中継接続部がピラーに沿って配設されることとが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/220573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配線部材がピラー等の内装部材に保持されることが想定される。また、内装部材の内側にエアバッグが配置されることがある。このような場合においても、エアバッグが円滑に展開できることが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、配線部材が内装部材によって保持されている場合において、内装部材の内側に配置されたエアバッグが円滑に展開できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材組付体は、車室側を向く第1内装部材と、前記第1内装部材の隣に位置する第2内装部材と、前記第1内装部材に沿うように前記第1内装部材によって保持される配線部材と、を備え、前記配線部材は、前記第1内装部材によって覆われる第1区間と、前記第2内装部材によって覆われる第2区間とを含み、前記第2区間が、前記第2内装部材に対する前記第1内装部材の変位を許容するための余長を吸収するように曲っている余長吸収部を有する、配線部材組付体である。
【0007】
また、本開示の追加配線部材組付モジュールは、車室側を向く主内装部材に取付けられる追加配線部材組付モジュールであって、前記主内装部材を覆うように前記主内装部材に取付けられる追加内装部材と、前記追加内装に沿って配置される第1区間と、前記追加内装部材から延出する第2区間とを含む配線部材と、を備え、前記第2区間は、曲る形状に癖付けされかつ伸長可能な余長吸収部を有する、追加配線部材組付モジュールである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、配線部材が内装部材によって保持されている場合において、内装部材の内側に配置されたエアバッグが円滑に展開できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は実施形態に係る配線部材組付体を備える車両の一部を示す概略斜視図である。
図2図2は同上の車両の一部を示す概略側面図である。
図3図3図2のIII-III線における概略断面図である。
図4図4は配線部材組付体の組付作業例を示す説明図である。
図5図5はエアバッグの展開動作例を示す説明図である。
図6図6はエアバッグの展開動作例を示す説明図である。
図7図7は変形例に係る配線部材組付体を示す説明図である。
図8図8は変形例に係る余長吸収部を示す図である。
図9図9は他の変形例に係る余長吸収部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本開示の配線部材組付体は、次の通りである。
【0012】
(1)車室側を向く第1内装部材と、前記第1内装部材の隣に位置する第2内装部材と、前記第1内装部材に沿うように前記第1内装部材によって保持される配線部材と、を備え、前記配線部材は、前記第1内装部材によって覆われる第1区間と、前記第2内装部材によって覆われる第2区間とを含み、前記第2区間が、前記第2内装部材に対する前記第1内装部材の変位を許容するための余長を吸収するように曲っている余長吸収部を有する、配線部材組付体である。
【0013】
本開示によると、配線部材の第2区間が、第2内装部材に対する第1内装部材の変位を許容するための余長を吸収するように曲っている余長吸収部を有する。このため、第1内装部材の内側に配置されたエアバッグが展開すると、第2区間の一部を第2内装部材から引出すようにして、第1内装部材が第2内装部材に対して変位できる。このため、配線部材が第1内装部材によって保持されている場合において、第1内装部材の内側に配置されたエアバッグが円滑に展開できる。
【0014】
(2)(1)の配線部材組付体であって、前記第1内装部材は、ピラー本体を車室側から覆う長尺形状のピラー用内装部材であり、前記第1区間が前記ピラー用内装部材の長手方向に沿うように、前記配線部材が前記ピラー用内装部材によって保持され、前記余長吸収部は、前記第1内装部材と前記第1内装部材との境界の隣に位置してもよい。
【0015】
これより、前記境界の隣に位置する余長吸収部を延すことで、第2区間を第2内装部材から円滑に引出すことができ、第1内装部材が円滑に変位できる。
【0016】
(3)(2)の配線部材組付体であって、前記第2内装部材は、ルーフ用内装部材であってもよい。
【0017】
ピラー用内装部材に保持される配線部材は、ルーフに追加されるルーフ側機器のための追加配線として適する。ルーフ側機器を追加する際には、ルーフ用内装部材の少なくとも一部がルーフ本体から分離されることが想定される。このため、余長吸収部を第2内装部材としてのルーフ用内装部材内に容易に配置できる。
【0018】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの配線部材組付体であって、前記第1内装部材は、主内装部材と、前記主内装部材を前記車室側から覆う追加内装部材と、を含み、前記第1区間の少なくとも一部が前記主内装部材と前記追加内装部材との間に位置してもよい。
【0019】
この場合、第1区間の少なくとも一部が主内装部材と追加内装部材との間に位置するため、第1区間の全体を主内装部材の内側に配置する場合と比較して、第1区間を内装部材に容易に組付けることができる。
【0020】
(5)(4)の配線部材組付体であって、前記配線部材が、前記主内装部材の外側から、前記主内装部材と前記第2内装部材との境界を通って、前記第2内装部材の内側に延びてもよい。
【0021】
これにより、配線部材の第1区間を主内装部材の外側に配置し、配線部材の第2区間を第2内装部材の内側に配置できる。
【0022】
(6)(5)の配線部材組付体であって、前記主内装部材のうち前記第2内装部材側の縁部又は前記第2内装部材のうち前記主内装部材側の縁部に、前記配線部材が通過する凹みが形成されていてもよい。
【0023】
これにより、主内装部材と第2内装部材との境界で、配線部材に不要な力が加わり難い。
【0024】
(7)(4)から(5)のいずれか1つの配線部材組付体であって、前記追加内装部材は、前記主内装部材の表面に沿って変形した状態で、前記主内装部材の表面に接合されたフィルムであってもよい。
【0025】
この場合、追加内装部材は、主内装部材の表面に沿って変形した状態で、主内装部材の表面に接合されているため、追加内装部材が主内装部材の表面から室内側に出る大きさを小さくでき、車室内空間を圧迫し難い。
【0026】
(8)(7)の配線部材組付体であって、前記第1区間の少なくとも一部が前記主内装部材の側縁に沿っていてもよい。
【0027】
これにより、配線部材が目立ち難い。
【0028】
(9)(1)から(8)のいずれか1つの配線部材組付体であって、前記余長吸収部は、前記第2区間が波状、環状又は螺旋状に曲げられた部分であってもよい。
【0029】
この場合、波状、環状又は螺旋状に曲げられた余長吸収部を延すことで、第1内装部材が容易に変位できる。
【0030】
また、本開示の追加配線部材組付モジュールは次の通りである。
【0031】
(10)車室側を向く主内装部材に取付けられる追加配線部材組付モジュールであって、前記主内装部材を覆うように前記主内装部材に取付けられる追加内装部材と、前記追加内装に沿って配置される第1区間と、前記追加内装部材から延出する第2区間とを含む配線部材と、を備え、前記第2区間は、曲る形状に癖付けされかつ伸長可能な余長吸収部を有する、追加配線部材組付モジュールである。
【0032】
本開示によると、配線部材の第2区間が、曲る形状に癖付けされかつ伸長可能な余長吸収部を有する。このため、主内装部材の内側に配置されたエアバッグが展開すると、第2区間の余長吸収部を伸長させることで、主内装部材が容易に変位できる。このため、配線部材が主内装部材と追加内装部材とによって保持されている場合において、主内装部材の内側に配置されたエアバッグが円滑に展開できる。
【0033】
(11)(10)の追加配線部材組付モジュールであって、前記追加内装部材は、前記主内装部材の表面に沿って変形した状態で、前記主内装部材の表面に接合可能なフィルムであってもよい。
【0034】
これにより、追加内装部材は、主内装部材の表面に沿って変形した状態で、主内装部材の表面に接合できる。これにより、追加内装部材が主内装部材の表面から室内側に出る大きさを小さくでき、車室内空間を圧迫し難い。
【0035】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材組付体及び追加配線部材組付モジュールの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0036】
[実施形態]
図1は配線部材組付体20を備える車両10の一部を示す概略斜視図であり、図2は同車両の一部を示す概略側面図である。図3図2のIII-III線における概略断面図である。
【0037】
車両10は、例えば、自動車である。車両10は、インストルメントパネル12と、ピラー14と、ルーフ18とを備える。
【0038】
インストルメントパネル12は、運転席及び助手席の前方に位置する。インストルメントパネル12に速度計等の計器が組込まれる。インストルメントパネル12は、上方を向く上パネル部12aと、車両10の前進方向に対して後方を向く後パネル部12bとを有している。上パネル部12aの後縁部に後パネル部12bが連なっている。後パネル部12bは、上パネル部12aよりも重力方向に近い姿勢である。上パネル部12aと後パネル部12bとは、角又は曲線をなして連なっている。インストルメントパネル12から後方に向くようにしてステアリングホイール12cが設けられる。
【0039】
ピラー14は、車体に対してルーフ18を支える部分である。図1及び図2では、最も前にある、いわゆるAピラーが示されている。ピラー14の下端部は、インストルメントパネル12の一側部の前側角部の近くに位置している。ピラー14の上端部は、ルーフ18の一側部の前側角部の近くに位置している。
【0040】
ピラー14は、金属等の剛性部材によって形成されたピラー本体15と、当該ピラー本体15を車室側から覆う内装部材30とを備える。ピラー本体15は、金属ボディの一部であることが想定される。内装部材30は、樹脂等によって形成されている。内装部材30は、車室側を向く第1内装部材の一例であり、ピラー本体15を車室側から覆う長尺形状のピラー用内装部材の一例である。
【0041】
ルーフ18は、車室を上方から覆う板状に形成されている。ルーフ18は、例えば、金属等の剛性部材によって形成されたルーフ本体18aと、当該ルーフ本体を車室側から覆うルーフライナ19とを備える複数層構造である。ルーフ本体は、金属ボディの一部であることが想定される。
【0042】
ルーフライナ19は、樹脂等によってルーフ本体18aの下方に広がる扁平な形状に形成されている。ルーフライナ19のうち車幅方向外側部分は下方に曲りドアDの開口上縁部に向っている。ルーフライナ19の車幅方向外側部分の前端部は、ピラー14の上端に向い内装部材30に向っている。よって、ルーフライナ19は、内装部材30の隣に位置する。例えば、ルーフライナ19は、内装部材30の隣で当該内装部材30に接していてもよい。ルーフライナ19は、第1内装部材の隣に位置する第2内装部材の一例であり、ルーフ用内装部材の一例である。
【0043】
車両10において、ルーフ18にルーフ側機器19a、19bが組付けられ、ルーフ18よりも下方に車両側機器11が組付けられることが考えられる。ルーフ側機器19a、19bは、例えば、ランプ、カメラ、アンテナ又はセンサである。ルーフ側機器19aは、車両における標準装備電気機器であってもよい。標準装備機器とは、車両のグレードに関係無く、また、オプション機器の設定に拘らず装備される機器である。ルーフ側機器19bは、車両10を車両製造工場から出荷した後に、追加される追加電気機器であってもよい。
【0044】
車両側機器11は、例えば、ECU(電子制御ユニット)、電源、操作スイッチ又はオーディオ機器である。車両側機器11は、例えば、インストルメントパネル12の内側に配置される。
【0045】
ベース配線部材16がピラー14に組付けられている。ベース配線部材16が車両側機器11とルーフ側機器19aとを電気的に接続する。つまり、ベース配線部材16は、標準装備される配線部材であってもよい。ベース配線部材16は、ピラー本体15と内装部材30との間の空間に配置され得る。このため、ピラー本体15から内装部材30が離れても、当該ベース配線部材16は、ピラー本体15上に残ることができる。
【0046】
配線部材組付体20もピラー14に組付けられる。配線部材組付体20が追加配線のための配線部材38を備えている。当該配線部材38が車両側機器11とルーフ側機器19bとを電気的に接続する。つまり、配線部材38は、装備を追加するための配線部材であってもよい。
【0047】
<配線部材組付体について>
配線部材組付体20は、上記ピラー本体15に組付けられる。配線部材組付体20は、内装部材30と、配線部材38とを備える。配線部材組付体20は、第1内装部材としての内装部材30と、第2内装部材としてのルーフライナ19と、配線部材38とを備える。
【0048】
内装部材30は、車室側を向く部材である。内装部材30は、車室側に露出し、車室内の乗員から観察可能な位置に配置されていることが想定される。
【0049】
配線部材38は、内装部材30に沿うように当該内装部材30によって保持されている。配線部材38が内装部材30に沿うとは、例えば、内装部材30が扁平部材である場合には、配線部材38が、当該内装部材30が扁平に広がる方向に沿っていることをいう。内装部材30が長尺部材である場合には、配線部材38は、内装部材30の長手方向に沿っていてもよい。
【0050】
配線部材38は、電気又は光の伝送線を少なくとも1つ含む。電気の伝送線は、例えば、被覆付の電線である。電線は信号線であってもよいし、電力線であってもよい。光の伝送線は、例えば、光ファイバである。本実施形態では、配線部材38は、少なくとも1本の電線39を含む。
【0051】
配線部材38は、内装部材30によって一定の経路に沿うように保持されている。内装部材30は、ピラー本体15を車室側から覆っている。配線部材38は、内装部材30に沿って配置されると共に、内装部材30から延出して車両側機器11及びルーフ側機器19bに接続される。このため、配線部材38は、内装部材30によって覆われる第1区間42と、内装部材30から延出する外側区間44、46とを含む。第1区間42とは、配線部材38のうち車室内から見えないように内装部材30によって覆われてている区間である。第1区間42は、内装部材30の長手方向に沿って直線的に延びていてもよいし、途中で曲っていてもよい。
【0052】
内装部材30は、主内装部材32と、追加内装部材40とを備えてもよい。
【0053】
主内装部材32は、追加内装部材40よりもピラー本体15に近い位置で、当該ピラー本体15を車室側から覆う。主内装部材32は、追加されるルーフ側機器19b及び配線部材38の有無に拘らず、ピラー本体15を車室側から覆う部材である。
【0054】
すなわち、ピラー本体15は、例えば、金属ボディの一部である。ピラー本体15は、車体外に露出する外表面を有する。ピラー本体15の車室側に、ルーフ18を支えるべく金属補強部材15rが溶接等されていてもよい。主内装部材32は、樹脂等によって形成される部材である。主内装部材32は、例えば、半筒状に形成されている。主内装部材32の両端部は、ピラー本体15の上下両端に対応する位置に配置される。主内装部材32の下端はインストルメントパネル12に接していてもよい。主内装部材32の上端は、ルーフ18のルーフライナに接していてもよい。主内装部材32の両側縁は、ピラー本体15の両側縁に沿って配置される。主内装部材32は、例えば、嵌込構造によってピラー本体15に取付けられる。例えば、主内装部材32の内面側に係止爪33aを有する係止部33が突出している。金属補強部材15rに当該係止部33が嵌込係止される係止孔15rhが形成されている。係止部33が係止孔15rhに係止することによって、主内装部材32がピラー本体15に取付けられる。主内装部材32がピラー本体15に取付けられる構造は上記例に限られない。例えば、主内装部材32の両側縁がピラー本体15の両側縁に設けられた溝に嵌まって、主内装部材32がピラー本体15に取付けられてもよい。その他、ネジ止、接着剤、粘着剤等によって、主内装部材32がピラー本体15に取付けられてもよい。
【0055】
主内装部材32のうち後方側の側縁部は、ピラー本体15の側縁部に対して分離容易な状態で対向するように配置されているとよい。これにより、エアバッグ80がピラー本体15と主内装部材32との間を通って車室側に容易に展開できる。
【0056】
ピラー本体15に主内装部材32が取付けられた状態で、ピラー本体15と主内装部材32との間にベース配線部材16を配置可能な空間が形成される。例えば、ピラー本体15が半筒状に形成され、主内装部材32が半筒状に形成される。ピラー本体15と主内装部材32とが合体した状態で、それらの間にベース配線部材16を配置可能な細長い空間S1が形成される。主内装部材32は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂で形成された部材であり、上記空間S1を一定の形状に保つことができる程度の剛性を有する。
【0057】
ベース配線部材16が前記空間S1内に配置されている。ベース配線部材16は、ピラー14に沿って延びる。好ましくは、ベース配線部材16は、主内装部材32よりもピラー本体15に近い位置に配置される。ベース配線部材16は、クリップ又はクランプによってピラー本体15に固定されていてもよい。
【0058】
ピラー本体15と内装部材30との間の空間S1にエアバッグ80が収納されることがある。ベース配線部材16は、エアバッグ80よりもピラー本体15側に配置されているとよい。ベース配線部材16がピラー本体15側に配置されていれば、エアバッグ80の展開動作に影響を与え難い。エアバッグ80が展開すると、ピラー本体15に対して離れる方向への力が主内装部材32に作用し、当該主内装部材32の少なくとも一部がピラー本体15から離れる方向に変位する。これにより、ピラー本体15と主内装部材32との後側の側縁部間に、エアバッグ80が車室側側に展開する際に通過可能な隙間が形成される。この際、係止部33の係止状態が解除されてもよいし、当該係止状態が保たれたままであってもよい。
【0059】
追加内装部材40は、主内装部材32を車室側から覆う部材である。追加内装部材40は、ルーフ側機器19b及び配線部材38が追加されると、主内装部材32に対して追加される部材であってもよい。追加内装部材40は、主内装部材32の全体を車室側から覆っていてもよいし、主内装部材32の一部を車室側から覆っていてもよい。追加内装部材が主内装部材と同じ領域に広がっていれば、追加内装部材の周りの縁全体が、主内装部材の外縁に沿うため、追加内装部材がより目立ち難くなる。追加内装部材の縁の少なくとも一部が主内装部材の縁の少なくとも一部に沿っていれば、その部分で追加内装部材が目立ち難くなる。
【0060】
配線部材38は、次のようにして内装部材30に保持される。すなわち、配線部材38の第1区間42が、主内装部材32のうち車室側の面上に配置される。第1区間42の少なくとも一部が主内装部材32と追加内装部材40との間に位置する。本実施形態では、第1区間42の全体が主内装部材32と追加内装部材40との間に位置する。
【0061】
配線部材38のうち主内装部材32上に位置する部分の全体が追加内装部材40によって覆われていてもよいし、配線部材38のうち主内装部材32上に位置する部分の一部が追加内装部材40から露出していてもよい。
【0062】
追加内装部材40は、主内装部材32のうち車室側の表面に沿って変形した状態で、主内装部材32の表面に接合されたフィルムであってもよい。つまり、追加内装部材40は、主内装部材32のうち車室側の表面に沿って変形可能な程度の柔軟性を有するフィルムであってもよい。フィルムは、厚みに拘らず、主内装部材32の表面に沿って変形可能な柔軟性を有していればよい。フィルムは、樹脂製であってもよいし、糸が組合わされた布であってもよい。
【0063】
追加内装部材40は、粘着層40gによって主内装部材32の表面に粘着されてもよい。追加内装部材40は、接着剤、溶着、又は、面ファスナによって主内装部材32の表面に接合されてもよい。追加内装部材40は、その他の引っ掛け構造、クリップ又は釘によって主内装部材32の表面に沿うように配置されてもよい。
【0064】
配線部材38は、主内装部材32の表面と追加内装部材40との間に挟まれることで、主内装部材32の表面に沿って保持される。例えば、主内装部材32上に沿って配置される配線部材38の両側で、主内装部材32の表面と追加内装部材40とが粘着することで、当該配線部材38が主内装部材32の表面に沿って一定経路に保持される。本実施形態では、第1区間42が内装部材30の長手方向に沿うように、配線部材38が内装部材30によって保持される。配線部材38は、主内装部材又は追加内装部材によって一定位置に保持されてもよい。例えば、配線部材38が主内装部材又は追加内装部材に溶着又は接着されてもよい。
【0065】
追加内装部材40がフィルムであれば、汎用的なフィルムを、主内装部材32の表面形状にあわせて切断することで、当該主内装部材32を覆うのに適切な追加内装部材40を容易に加工できる。また、追加内装部材40がフィルムであれば、追加内装部材40を主内装部材32の曲面形状にあわせるように容易に変形させることができる。また、追加内装部材40がフィルムであれば、主内装部材32と追加内装部材40との間でがたつき音が発生し難い。
【0066】
追加内装部材40の表面色は、主内装部材32の表面色と同系統の色であってもよい。例えば、色を、JIS Z 8102:2001に準じて、無彩色の白、灰色、黒、さらに、有彩色の赤、黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫、紫、赤紫の13系統に分けした場合に、同じ系統に属する色が同系統の色であると捉えてもよい。
【0067】
追加内装部材40の表面の意匠的質感は、主内装部材32の表面の意匠的質感と同じであってもよい。意匠的質感とは、見た目に印象を与え得る、物品の表面の模様、加工状態、表面の細かな形状をいう。例えば、主内装部材32の表面が、木目模様、大理石模様、シボ模様、梨地模様,光沢表面又はメタリックのような表面である場合、追加内装部材40の表面も当該インストルメントパネル12の表面と同じ模様又は質感の表面とするとよい。
【0068】
配線部材38の第1区間42の少なくとも一部は主内装部材32の側縁に沿っていてもよい。例えば、第1区間42の少なくとも一部が、主内装部材32の側縁から5cm以内の位置、好ましくは4cm以内の位置、より好ましくは3cm以内位置、さらに好ましくは、2cm以内の位置に配置されていてもよい。
【0069】
追加内装部材40がフィルムであれば、追加内装部材40のうち配線部材38を覆う部分が線状に突出する。配線部材38の少なくとも一部が主内装部材32の側縁に沿っていれば、配線部材38による線状の突出部が目立ち難い。
【0070】
追加内装部材40がフィルムであることは必須ではない。追加内装部材40は、主内装部材との間に配線部材38を配置可能な空間を保つことができる剛性を有する部材であってもよい。例えば、追加内装部材40は、樹脂の金型成形品であってもよい。
【0071】
上記したように、配線部材38は、内装部材30によって一定の経路に沿うように保持されている。このため、内装部材30がピラー本体15から離れると、配線部材38も当該内装部材30と共にピラー本体15から離れることが想定される。また、エアバッグ80がピラー本体15と内装部材30との間の空間S1に配置されることが考えられる。エアバッグ80は、ピラー本体15と内装部材30との間を通って車室内に展開する。この際、ピラー本体15と内装部材30との間にエアバッグ80が通過可能な隙間を形成するように、エアバッグ80の膨張力によって当該内装部材30が全体的に又は部分的に変位する。エアバッグ80の展開時に内装部材30が円滑に変位できるように、配線部材38のうちルーフライナ19によって覆われる部分に余長吸収部43が設けられている。
【0072】
すなわち、配線部材38の外側区間44、46は、配線部材38のうち内装部材30から出ている区間である。本実施形態では、配線部材38の長手方向中間部分が第1区間42であり、配線部材38の両端側部分が外側区間44、46である。
【0073】
外側区間44、46は、内装部材30ではない他の内装部材によって覆われて、車室内から見えなくなっている場合もある。本実施形態では、外側区間44は、内装部材30の下端から外方に延出し、車両側機器11に接続される。外側区間44は、全体的に又は部分的に他の内装部材によって覆われてもよい。例えば、外側区間44は、インストルメントパネル12の外面に沿って配置されたり、インストルメントパネル12の内側に導かれたりして、車両側機器11に向けて延出する。外側区間46は、内装部材30の上端から外方に延出し、ルーフ本体18aとルーフライナ19との間に延出する。外側区間46は、ルーフ本体18aとルーフライナ19との間を通ってルーフ18に追加装備されたルーフ側機器19bにコネクタ接続される。外側区間46は、第2内装部材としてのルーフライナ19によって覆われる第2区間46の一例である。
【0074】
第2区間46が、余長吸収部43を有する。余長吸収部43は、ルーフライナ19に対する内装部材30の変位を許容するための余長を吸収するように、第2区間の一部が曲っている部分である。
【0075】
余長吸収部43は、余長をルーフライナ19から引出可能な位置に配置されていれば、ルーフライナ19の内側のいずれに位置していてもよい。余長吸収部43は、内装部材30とルーフライナ19と境界の隣に位置していてもよい。より具体的には、余長吸収部43は、内装部材30の上端とルーフライナ19のうち車幅方向外側部分の前端部との境界の隣に位置していてもよい。この場合、余長吸収部43は、前記境界に対して、15cm以内の範囲内に位置していてもよいし、10cm以内の範囲内に位置していてもよいし、5cm以内の範囲内に位置していてもよい。余長吸収部43と前記境界との間において、配線部材38は、ルーフ本体18a等の車体又はルーフライナ19等の内装部材によって拘束されていない。よって、余長吸収部43が延びることによって形成される余長が前記境界側に容易に引出されうる。余長吸収部43と前記境界との間において、配線部材38は曲らず真っ直ぐ延びていることが好ましい。例えば、余長は、配線経路長よりも5cm以上長く、好ましくは10cm以上長く、より好ましくは15cm以上長い。
【0076】
本実施形態では、余長吸収部43は、第1区間42の一部が環状を描くように経路設定された部分である。余長吸収部43は、通常状態では、ルーフ本体18aとルーフライナ19との間の空間に配置される。ルーフライナ19に対する内装部材30の変位によって第1区間42が引っ張られると、第2区間46がルーフライナ19から出るように引っ張られる。すると、余長吸収部43が真っ直ぐに近い状態に変形して、余長分がルーフライナ19から外に出ることができる。引出された余長分、内装部材30は、ピラー本体15及びルーフライナ19からから離れる方向に部分的又は全体的に変位できる。
【0077】
上記第1区間42は、主内装部材32の外側に位置しており、第2区間46はルーフライナ19の内側に位置している。配線部材38は、主内装部材32の外側から、主内装部材32とルーフライナ19との境界を通って、ルーフライナ19の内側に延びる。これにより、配線部材38の一部を主内装部材32の外側に配置し、余長吸収部43をルーフライナ19の内側に配置する構成が実現される。
【0078】
<配線部材組付体の組付作業例について>
図4は配線部材組付体20の組付作業例を示す説明図である。
【0079】
車両10に車両側機器11及びルーフ側機器19aが搭載され、車両側機器11とルーフ側機器19aとがベース配線部材16によって電気的に接続されているとする。
【0080】
この車両10にルーフ側機器19bが追加される場合を考える。主内装部材32に取付けられる追加配線部材組付モジュール20Bが、車両側機器11とルーフ側機器19bとを電気的に接続するための配線部材38を備える。
【0081】
追加配線部材組付モジュール20Bは、上記追加内装部材40と、配線部材38とが組合わされた組合せ部品である。追加配線部材組付モジュール20Bは、追加内装部材40に配線部材38が粘着層によって粘着された状態で提供されてもよいし、追加内装部材40と配線部材38とは別体であるが同梱された状態で提供されてもよい。後者の場合、追加内装部材40に、配線部材38の余長設定箇所を含む経路が描かれているとよい。配線部材38のうちの第2区間46は、追加内装部材40から延出する部分である。第2区間46は、余長吸収部43を有する。余長吸収部43は、曲る形状に癖付けされており、当該癖を無くすように伸長可能である。
【0082】
配線部材38の少なくとも一部が主内装部材32と追加内装部材40との間に位置して主内装部材32に沿って配置される状態となるように、追加内装部材40が主内装部材32に取付けられる。例えば、追加内装部材40の粘着層40gが主内装部材32の表面に粘着される。
【0083】
この際、第1区間42が主内装部材32と追加内装部材40との間に挟まれる。これにより、第1区間42が配線部材38によって一定経路に沿った状態に保持される。
【0084】
追加配線部材組付モジュール20Bの取付時、取付前又は取付後に、ルーフライナ19が全体又は部分的にルーフ本体18aから外され、第2区間46がルーフ本体18aとルーフライナ19との間に配置される。余長吸収部43も、ルーフ本体18aとルーフライナ19との間に配置される。また、第2区間46の端部のコネクタがルーフ側機器19bに接続される。
【0085】
また、ピラー14の下側の延出する外側区間44も車両側機器11に向けて引出され、外側区間44の端部のコネクタが車両側機器11接続される。これにより、車両側機器11及びルーフ側機器19bを電気的に接続する配線部材38がピラー14に沿って配置される。
【0086】
配線部材38を配置する際に、主内装部材32をピラー本体15から外さなくてもよいので、配線部材38をピラー14に沿って配置する作業を容易に実施できる。
【0087】
<エアバッグの展開動作について>
エアバッグ80の展開動作例について説明する。図5及び図6に示すように、エアバッグ80が展開すると、内装部材30のうちエアバッグ80を覆っていた部分がピラー本体15から離れる方向、即ち、車室側に押される。配線部材38の第1区間42が内装部材30によって保持された状態で、内装部材30がピラー本体15から離れる方向に移動しようとするので、第2区間46にルーフライナ19から外側に引出す力が作用する。これにより、余長吸収部43が引っ張られて環状形状が小さくなり、第2区間46がルーフライナ19の外に引出される。第2区間46がルーフライナ19の外に引出された余長分、内装部材30はピラー本体15及びルーフライナ19から離れる方向に変位することができる。
【0088】
余長吸収部43がルーフライナ19の内側に位置しているので、余長吸収部43が人手等に触れ難く、余長吸収状態が安定する。
【0089】
これにより、ピラー本体15と内装部材30との後側の側縁部間に、エアバッグ80が抜出ていく隙間が形成される。なお、係止部33は、係止孔15rhから抜出て上記隙間を形成してもよいし、係止部33が係止孔15rhに係止したまま内装部材30が部分的に変形して、上記隙間を形成してもよい。
【0090】
エアバッグ80は、ピラー本体15と内装部材30との後側の側縁部間を通って室内側に円滑に展開することができる。
【0091】
<効果等>
以上のように構成された配線部材組付体20及び追加配線部材組付モジュール20Bによると、配線部材38の第2区間46が、ルーフライナ19に対する内装部材30の変位を許容するための余長を吸収するように曲っている余長吸収部43を有する。このため、内装部材30の内側に配置されたエアバッグ80が展開すると、第2区間46の一部をルーフライナ19から引出すようにして、内装部材30がルーフライナ19に対して変位できる。このため、配線部材38が内装部材30によって保持されている場合において、内装部材30の内側に配置されたエアバッグ80が円滑に展開できる。
【0092】
また、第1内装部材がピラー14用の内装部材30であり、余長吸収部43は、内装部材30とルーフライナ19との境界の隣に位置する。このため、内装部材30の内側に配置されたエアバッグ80の展開によって内装部材30が変位すると、前記境界の隣の余長吸収部43が伸びて第2区間46の余長が効果的に引出される。これにより、配線部材38がピラー用の内装部材30によって保持されている場合において、当該内装部材30の内側に配置されたエアバッグ80が円滑に展開できる。
【0093】
また、第2内装部材がルーフライナ19である。ピラー14用の内装部材30に保持される配線部材38は、ルーフ18に追加されるルーフ側機器19bのための追加配線として適する。ルーフ側機器19bを追加する際には、ルーフライナ19の少なくとも一部がルーフ本体18aから分離されることが想定される。このため、余長吸収部43をルーフライナ19の内側に容易に配置できる。
【0094】
また、配線部材38をピラー14に沿って配置するためには、例えば、主内装部材32の長手方向全体をピラー本体15から外して、第1区間42の全体を主内装部材32の内側に配置することが考えられる。本実施形態では、内装部材30は、主内装部材32と追加内装部材40とを備え、第1区間42の少なくとも一部が主内装部材32と追加内装部材40との間に位置する。このため、主内装部材32の長手方向全体をピラー本体15から分離させなくてもよく、第1区間42を内装部材に容易に組付けることができる。
【0095】
また、配線部材38が主内装部材32とルーフライナ19との境界を通るため、配線部材38の第1区間42を主内装部材32の外側に配置し、配線部材38の第2区間46をルーフライナ19の内側に容易に配置できる。
【0096】
図7に示すように、主内装部材32のうちルーフライナ19側の縁部又はルーフライナ19のうち主内装部材32側の縁部に、配線部材38が通過する凹み32g又は凹み19gが形成されてもよい。凹み32g又は凹み19gは、主内装部材32又はルーフライナ19の縁から内側に凹む形状である。凹み32g又は凹み19gは、半円状、半楕円状、四角又は三角形状の凹みであってもよい。凹み32g又は凹み19gは、配線部材38の断面形状よりも大きく、配線部材38が凹み32g又は凹み19gの縁に強く押付けられることなく、凹み32g又は凹み19gを通過できることが好ましい。
【0097】
これにより、主内装部材32とルーフライナ19との境界で、配線部材38に不要な力が加わり難い。
【0098】
なお、凹み32g又は凹み19gは、主内装部材32又はルーフライナ19に対して当初から形成された凹みであってもよいし、配線部材38を追加する際に形成される凹みであってもよい。後者の場合、主内装部材32又はルーフライナ19のうち凹み32g又は凹み19gの形成予定領域には、薄肉部等の破断容易な破断予定ラインが形成されているとよい。
【0099】
また、追加内装部材40は、主内装部材32の表面に沿って変形した状態で、主内装部材32の表面に接合されているため、追加内装部材40が主内装部材32の表面から室内側に出る大きさを小さくでき、車室内空間を圧迫し難い。
【0100】
また、第1区間42の少なくとも一部が主内装部材32の側縁に沿っていれば、当該第1区間42の一部が当該側縁に同化して観察され、配線部材38が目立ち難い。
【0101】
また、第2区間46が、環状をなす余長吸収部43を有するため、当該環状形状を無くすように余長吸収部43が延びることで、第2区間46がルーフライナ19の外に引出される。これにより、内装部材30が容易に移動できる。第2区間46の全体に弛みが設定されている場合と比較して、余長設定箇所を一定位置に設定できるので、第2区間46の引出挙動が安定する。
【0102】
余長吸収部43が環状であることは必須ではない。例えば、図8に示すように、余長吸収部43Bは、第2区間46の一部が波状に曲げられた箇所であってもよい。この場合、余長吸収部43Bが直線状態に近づくように変形することで、第2区間46がルーフライナ19から出ていくことができる。
【0103】
また、例えば、図9に示すように、余長吸収部43Cは、第2区間46の一部が螺旋状に曲げられた箇所であってもよい。この場合、余長吸収部43Cが直線状態に近づくように変形することで、第2区間46がルーフライナ19から出ていくことができる。螺旋は、円柱周面上に形成された立体的な螺旋であってもよいし、平面的な螺旋であってもよい。
【0104】
本実施形態において、追加内装部材40が省略され、第1区間42が主内装部材32に対応する内装部材によって保持されてもよい。
【0105】
[変形例]
上記実施形態では、余長吸収部43がルーフライナ19に設定される例が説明された。余長吸収部は、配線部材38のうちピラー14の下側に延出する外側区間44に設けられてもよい。この場合、余長吸収部は、インストルメントパネル12によって覆われるとよい。
【0106】
本実施形態では、第1内装部材がピラー用の内装部材であり、第2内装部材がルーフライナである例が説明された。第1内装部材及び第2内装部材は、その他の内装部材であってもよい。例えば、第1内装部材が助手席前方において助手席用エアバッグを覆う内装部材であり、第2内装部材が助手席用エアバッグを覆う内装部材の周りの内装部材であってもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、配線部材組付体が、追加のための配線部材を保持している例が説明された。配線部材組付体が追加のためではない標準装備のための配線部材を保持しており、当該標準装備のための配線部材が余長吸収部を有していてもよい。
【0108】
また、内装部材30が主内装部材32と追加内装部材40とを備えることは必須では無い。例えば、配線部材38が主内装部材32に対応する1つの内装部材によって保持されている場合にも、配線部材38に上記余長吸収部を設けるとよい。
【0109】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0110】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0111】
10 車両
11 車両側機器
12 インストルメントパネル
12a 上パネル部
12b 後パネル部
12c ステアリングホイール
14 ピラー
15 ピラー本体
15r 金属補強部材
15rh 係止孔
16 ベース配線部材
18 ルーフ
18a ルーフ本体
19 ルーフライナ
19a ルーフ側機器
19b ルーフ側機器
19g、32g 凹み
20 配線部材組付体
20B 追加配線部材組付モジュール
30 第1内装部材
32 主内装部材
33 係止部
33a 係止爪
38 配線部材
39 電線
40 追加内装部材
40g 粘着層
42 第1区間
43、43B、43C 余長吸収部
44 外側区間(第2区間)
46 外側区間
80 エアバッグ
D ドア
S1 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2025-08-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室側を向く第1内装部材と、
前記第1内装部材の隣に位置する第2内装部材と、
前記第1内装部材に沿うように前記第1内装部材によって保持される配線部材と、
を備え、
前記配線部材は、前記第1内装部材によって覆われる第1区間と、前記第2内装部材によって覆われる第2区間とを含み、
前記第2区間が、前記第2内装部材に対する前記第1内装部材の変位を許容するための余長を吸収するように曲っている余長吸収部を有する、配線部材組付体。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材組付体であって、
前記第1内装部材は、ピラー本体を車室側から覆う長尺形状のピラー用内装部材であり、
前記第1区間が前記ピラー用内装部材の長手方向に沿うように、前記配線部材が前記ピラー用内装部材によって保持され、
前記余長吸収部は、前記第1内装部材と前記第2内装部材との境界の隣に位置する、配線部材組付体。
【請求項3】
請求項2に記載の配線部材組付体であって、
前記第2内装部材は、ルーフ用内装部材である、配線部材組付体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線部材組付体であって、
前記第1内装部材は、主内装部材と、前記主内装部材を前記車室側から覆う追加内装部材と、を含み、
前記第1区間の少なくとも一部が前記主内装部材と前記追加内装部材との間に位置する、配線部材組付体。
【請求項5】
請求項4に記載の配線部材組付体であって、
前記配線部材が、前記主内装部材の外側から、前記主内装部材と前記第2内装部材との境界を通って、前記第2内装部材の内側に延びる、配線部材組付体。
【請求項6】
請求項5に記載の配線部材組付体であって、
前記主内装部材のうち前記第2内装部材側の縁部又は前記第2内装部材のうち前記主内装部材側の縁部に、前記配線部材が通過する凹みが形成されている、配線部材組付体。
【請求項7】
請求項4に記載の配線部材組付体であって、
前記追加内装部材は、前記主内装部材の表面に沿って変形した状態で、前記主内装部材の表面に接合されたフィルムである、配線部材組付体。
【請求項8】
請求項7に記載の配線部材組付体であって、
前記第1区間の少なくとも一部が前記主内装部材の側縁に沿っている、配線部材組付体。
【請求項9】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線部材組付体であって、
前記余長吸収部は、前記第2区間が波状、環状又は螺旋状に曲げられた部分である、配線部材組付体。
【請求項10】
車室側を向く主内装部材に取付けられる追加配線部材組付モジュールであって、
前記主内装部材を覆うように前記主内装部材に取付けられる追加内装部材と、
前記追加内装部材に沿って配置される第1区間と、前記追加内装部材から延出する第2区間とを含む配線部材と、
を備え、
前記第2区間は、曲る形状に癖付けされかつ伸長可能な余長吸収部を有する、追加配線部材組付モジュール。
【請求項11】
請求項10の追加配線部材組付モジュールであって、
前記追加内装部材は、前記主内装部材の表面に沿って変形した状態で、前記主内装部材の表面に接合可能なフィルムである、追加配線部材組付モジュール。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
(2)(1)の配線部材組付体であって、前記第1内装部材は、ピラー本体を車室側から覆う長尺形状のピラー用内装部材であり、前記第1区間が前記ピラー用内装部材の長手方向に沿うように、前記配線部材が前記ピラー用内装部材によって保持され、前記余長吸収部は、前記第1内装部材と前記第2内装部材との境界の隣に位置してもよい。