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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025141153
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20250919BHJP
   H04N 13/344 20180101ALI20250919BHJP
   H04N 13/322 20180101ALI20250919BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N13/344
H04N13/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040947
(22)【出願日】2024-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】熱田 暁生
(72)【発明者】
【氏名】森田 紘光
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA42
2H199CA74
2H199CA77
2H199CA82
2H199CA96
(57)【要約】
【課題】 光学素子がもつ光学特性の影響がより小さい、きれいな映像を使用者に表示できる映像表示装置を提供する。
【解決手段】 使用者の右眼および左眼に対して第1および第2の映像をそれぞれ表示する第1および第2の映像表示部と、第1および第2の映像表示部にそれぞれ対応する第1および第2の表示光学素子である。加えて、少なくとも1つ以上の前記表示光学素子及び対応する前記映像表示部の、相対的な位置を変えるアクチュエータとを備え、第1および第2の映像表示部の一部であって、第1および第2の映像表示部における表示光学素子の光軸と交差する領域に表示されている像が供える深度情報に対応して、アクチュエータを駆動するように構成されている。そしてアクチュエータを駆動することで、表示光学素子の位置及び対応する映像表示部の位置を相対的に変える映像表示装置を提供する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の右眼および左眼に対して第1および第2の映像をそれぞれ表示する第1および第2の映像表示部と、
前記第1および第2の映像表示部にそれぞれ対応する第1および第2の表示光学素子と、
少なくとも1つ以上の前記表示光学素子及び対応する前記映像表示部の、相対的な位置を変えるアクチュエータと、
を備える映像表示装置であって、
前記第1および第2の映像表示部の一部であって、前記第1および第2の映像表示部における前記表示光学素子の光軸と交差する領域に表示されている像が供える深度情報に対応して、前記アクチュエータを駆動することで、前記表示光学素子の位置及び対応する前記映像表示部の位置を相対的に変えることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記領域は、前記映像表示部が備える表示領域の50%以下の領域であることを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記領域は、前記表示領域の面積を100%としたとき、50%以下の面積を占める領域である請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記領域は、矩形状の前記映像表示部の一方の幅を100%としたとき、50%以下の幅に対応する領域である請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記表示光学素子の光軸と交差する領域の映像の深度情報は、前記第1および第2の映像表示部に表示された対象物の距離情報も含むことを特徴とする請求項1または2に記載の映像表示装置。
【請求項6】
前記映像表示装置の姿勢を検出する検出部をさらに備え、前記姿勢の検出結果に応じて前記領域に表示する映像情報を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の映像表示装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは振動体と前記振動体と接する接触体を備えた振動型モータであり、
前記姿勢を検出するときに、前記振動型モータの保持トルクにより前記表示光学素子を保持することを特徴とする請求項6記載の映像表示装置。
【請求項8】
前記使用者の視力情報に基づき前記表示光学素子の位置を変える補正部をさらに設けたことを特徴とする請求項1記載の映像表示装置。
【請求項9】
前記補正部は、前記使用者の視力情報に加えて、前記像が供える深度情報に基づいて前記表示光学素子の位置を変える請求項8記載の映像表示装置。
【請求項10】
前記像が供える深度情報の変化を算出する変動処理部を備え、
前記変化が閾値を超えた時に前記アクチュエータを駆動する請求項1または2記載の映像表示装置。
【請求項11】
前記アクチュエータは、少なくとも1つ以上の前記表示光学素子の位置を変えるアクチュエータである請求項1または2記載の映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者が頭部に装着して使用する映像表示装置や、使用者が眼鏡のように装着して使用する映像表示装置がある。使用者の眼の近傍に表示部が配置され、使用者の左右それぞれの眼に対して視差映像の表示処理が行われる。視差映像は映像に遠くを見ているか、近くを見ているかの深度情報が含まれており、表示される視差映像を使用者が視認することによって、視差映像に表示された物体についての立体感がある映像が得られる。
【0003】
この映像表示装置で使用者の視線は左右それぞれの眼に対して表示された映像によって生成される立体映像の位置に調節されるが、焦点位置は表示画面上の左右各々の画像に固定している。これは現実の物体を視認する場合には生じ得ない不自然な状態となる。
【0004】
例えば、視差映像として表示される物体の像を使用者が見ると、使用者の輻輳角は、その物体の位置に応じて変化する。この時、現実空間での経験に基づいて水晶体の焦点距離は輻輳角の大きさに応じて変化する。この場合、水晶体の焦点距離と映像表示装置の固定された視度とが不一致となる可能性があり、表示された視差映像に焦点が合わず、鮮明に見ることが困難となる等、良好な視認性が確保できないことがある。そのため、映像表示装置の視度調整では、装置内のレンズを駆動する方法等により、使用者の輻輳角を定める視差映像内の深度情報に応じて視度を変更することが望ましい。
【0005】
特許文献1では、映像を視聴した際の使用者の注視点の位置に応じた深度情報に対する視度調整を、個人差や映像表示装置の使用状態に対応して行うことで、立体視時の違和感を低減することを可能としている。
【0006】
また、特許文献2では、視線センサを設け、使用者の視線位置にある画像の深度情報に対する視度調整をするもので、視線方向の映像を見えやすくするようなシステム構成となっている。
【0007】
ここで特許文献1の光学系について、図9を参照して説明する。
【0008】
図9は、特許文献1に示される映像表示装置10の概略構成を示す図である。
【0009】
映像データ取得部100、表示処理部101、視度変更指示部106、物体位置算出部108、使用者情報記録部109、動作モード記録部110は例えばCPU等の1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行することで実現される。映像表示装置10を、使用者が頭部に装着して使用する形態と、眼鏡のように装着して使用する形態がある。いずれの形態でも、使用者の左眼2a,右眼2bに対して近傍に映像表示装置1を固定することができる。なお、使用者の左眼2aに関連する構成要素の符号には記号aを付記し、使用者の右眼2bに関連する構成要素の符号には記号bを付記することによって区別する。
【0010】
映像表示装置1は映像データ取得部100と表示処理部101を備える。映像データ取得部100は表示用の映像データを外部装置やネットワーク等を通じて取得する。表示処理部101は取得された映像データに対して表示倍率の調整処理等を行う。処理された映像データは、2つの表示部102a,102bに送られて表示される。例えば、映像データを2つの表示部102a,102bへの各データに分割して表示する構成がある。この構成に限定されることなく、1つの表示部の画面を2つに分割して、分割された画面に映像データを表示する構成でもよい。このような右目と左目に合わせた映像処理により、ユーザーは違和感無く映像を見ることが可能となっている。
【0011】
ここで、映像表示装置1は、左眼2a、右眼2bにそれぞれ対応する第1および第2の表示光学素子を備える。第1の表示光学素子はレンズ103aを有し、第2の表示光学素子はレンズ103bを有する。表示部102a,102bに表示された映像はそれぞれに対応するレンズ103a,103bを通して左眼2a,右眼2bに対して提示される。
【0012】
視度変更駆動部104a,104bはモータ等の駆動源を有していて、それぞれ、レンズ103a,103bの駆動を行う。つまりレンズ103a,103bは、視度変更駆動部104a,104bによって、それらの光軸に沿う方向(矢印103a1から104a1,103b1から104b1)に移動する。
【0013】
特許文献2は上記構成に視線センサを設け検出された視線方向から視線位置を算出し、その視線位置にある画像の深度情報に合わせてディスプレイを駆動するというものである。
【0014】
特許文献1ではレンズを駆動して深度を調整しているが、先行例2はディスプレイを移動して同様な効果を得るようにしている。
【0015】
図10は、視度変更駆動部104a,104bによってレンズ103a,103bが移動する時の状態の説明図である。図10(A)は、レンズ103a,103bを表示部102a,102bの近くにそれぞれ移動させた時の状態を示す図である。図10(B)は、レンズ103a,103bを眼2a,2bの近くにそれぞれ移動させた時の状態を示す図である。観察者である使用者は、その眼2a,2bで表示部102a,102bを、レンズ103a,103bを通して見た時に虚像105a,105bを視認する。観察者の眼2a,2bの位置を基準とした、光軸103a1,103b1の方向の虚像105a,105bの位置を、虚像結像位置iとして定義する。図10(A)および図2(B)に示すように、レンズ103a,103bの位置を変更することによって、虚像結像位置iを変更することができる。例えば、レンズ103a,103bが表示部102a,102bに近づくにつれて、虚像結像位置iは眼2a,2bに近づいていく。逆に、レンズ103a,103bが眼2a,2bに近づくと、虚像結像位置iは眼2a,2bから遠ざかる。従って、視度変更駆動部104a,104bによってレンズ103a,103bを移動することにより、視度すなわち観察者が遠くにあるものの映像や近くにあるものの映像をボケなどなしに見ることが可能となる。映像では注視点が遠くにあるか近くにあるかの違いを深度情報として持っている。この深度情報と観察者の視度が一致すると観察者にとっては映像が鮮明に見えるということになる。図11は従来の映像表示装置において視線と映像位置との関係を示す図である。
【0016】
従来の構成と同じ部分には同じ符号が付けられている。
【0017】
図11では使用者の視線が左側を向いておりディスプレイ102の左部を見ている。
【0018】
本図面では課題をわかりやすくするために102にピントが合うように描いているが、実際には前述したようにレンズが移動することで虚像面が変わり、ピント位置(焦点位置)も変化するものである。
【0019】
ここで、使用者がディスプレイ102の左端を見ているとき光学系としてはレンズの端を介して像を見ることになる。光学性能を考えたときにレンズの端を介して対象物を見ると光学収差や視線センサの検出誤差が増える、人の視線が不安定な動きになるなどの要因により使用者が見る映像の画質が悪くなってしまう。すなわち画像が歪んでしまいきれいな映像をえることができなくなってしまうという問題が発生する。
【0020】
また、ディスプレイ102の全領域のどこを見ているかを検出してその映像位置の深度情報を得る構成ではディスプレイ全体の映像の深度情報から抽出することが必要となり深度情報を得るための処理時間が長くなってしまうという問題も発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2023-32278号公報
【特許文献2】特開2023-32250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、光学素子がもつ光学特性の影響がより小さい、きれいな映像を使用者に表示できる映像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の映像表示装置は、使用者の右眼および左眼に対して第1および第2の映像をそれぞれ表示する第1および第2の映像表示部と、
前記第1および第2の映像表示部にそれぞれ対応する第1および第2の表示光学素子と、
少なくとも1つ以上の前記表示光学素子及び対応する前記映像表示部の、相対的な位置を変えるアクチュエータと、
を備える映像表示装置であって、
前記第1および第2の映像表示部の一部であって、前記第1および第2の映像表示部における前記表示光学素子の光軸と交差する領域に表示されている像が供える深度情報に対応して、前記アクチュエータを駆動することで、前記表示光学素子の位置及び対応する前記映像表示部の位置を相対的に変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、光学素子がもつ光学特性の影響がより小さい、きれいな映像を使用者に表示できる映像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施例の映像表示装置の概略構成を示す構成図
図2】第1の実施例の映像表示装置の実施形態を示すための図
図3】第1の実施例のアルゴリズムを表わすフローチャート図とディスプレイ表示内容
図4】第1の実施例の光学中心の領域を示す図
図5】第2の実施例の映像表示装置の概略構成を示す構成図
図6】第2の実施例の使用者による深度とレンズ位置との関係を示す図
図7】第3の実施例の映像表示装置の概略構成を示す構成図
図8】第3の実施例の深度情報変化とレンズ駆動位置との関係を示す図
図9】従来の映像表示装置の概略構成を示す構成図
図10】従来の映像表示装置でのレンズ位置と虚像位置との関係を示す図
図11】従来の映像表示装置で視線方向と光学系との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施形態の映像表示装置は以下の要素を備えている。使用者の右眼および左眼に対して第1および第2の映像をそれぞれ表示する第1および第2の映像表示部と、第1および第2の映像表示部にそれぞれ対応する第1および第2の表示光学素子である。加えて、少なくとも1つ以上の前記表示光学素子及び対応する前記映像表示部の、相対的な位置を変えるアクチュエータとを備えている。
【0027】
その上で、第1および第2の映像表示部の一部であって、第1および第2の映像表示部における表示光学素子の光軸と交差する領域に表示されている像が供える深度情報に対応して、アクチュエータを駆動するように構成されている。そしてアクチュエータを駆動することで、表示光学素子の位置及び対応する映像表示部の位置を相対的に変えることを特徴とする。
【0028】
このような構成をとるため、光学収差が小さく光学性能の良いところでの映像を使用者に表示できるためきれいな映像を提供することが可能となる。更には使用者の酔い、疲れを低減する効果も得られる。また、画像処理領域が限定されることで、画像処理量が減り、高速な処理対応が可能となる。
【0029】
以下、図面を参照しつつ詳述する。また、以下の説明において実施例が説明されるが、発明の趣旨を逸脱しない限り、様々な要素を組み合わせて本発明を構成してよい。
【実施例0030】
まず、本実施形態を説明するための用語について以下のように定義している。
【0031】
光学中心:光学系の光軸と交差する領域 交差するポイントだけではなく交差する位置を含むある領域
視線方向:使用者の目が向いている方向を示す
深度情報:映像の注視点が近いか遠いかを示す指標
視度調整:画像の深度情報に応じてレンズを動かしピントが合う位置に合わせること
視度 :ピントが合う位置のこと
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図1~4を参照して説明する。図1は本実施形態の映像表示装置の構成を示す図である。従来の映像表示装置の構成と同じ部分には同じ符号がつけられている。また頭の回転などを検出するための姿勢変化検出部を備えていてもよい。
【0033】
本実施例では、例として視度調整する機能に加え頭の回転などを検出するための姿勢変化検出部111が設けられて姿勢変化に応じて映像の位置が変わるように処理される。図2は本実施形態の映像表示装置で視度調整前と後の状態を示す図であり、1が使用者、10が映像表示装置本体、102が映像表示装置内の映像表示部であるディスプレイの見え方を示している。図2(a)は使用者1がディスプレイ中心に表示されている像である三角マークを見ている状態で、+マークか使用者の視線を示しているものとする。ここで三角マークは深度大(遠く)にある対象物でありその対象物にピントが合う状態となっている。
【0034】
ディスプレイ左側のマル印は深度小(近く)にある対象物であり図2(a)の状態ではディスプレイの端にありピント調整も深度大(遠く)になっているのでピントが合っておらずボケている状態となっている。更には本提案の課題で示したようにディスプレイの端を見るときは光軸の交差するところからずれており、表示光学素子であるレンズの収差などの影響も重畳されてしまっている。
【0035】
図2(b)は使用者1が頭を動かすことにより装置の画像表示部がディスプレイの端にあったマル印を光学中心位置へ移動させ更に視度調整により深度大(遠く)から深度小(近く)にピントが合うようになった状態を示している。
【0036】
ここで、対象物は光学中心位置に移動しているので、前記光学収差などの影響を受け無くなりきれいな画像として対象物を見ることが可能となっている。
【0037】
図3に本実施形態のフローチャートと途中状態でのディスプレイ画像の状態を示している。このフローチャートにて図2の(a)から(b)に変わる流れを説明する。
【0038】
まず使用者がディスプレイ中心で深度大(遠く)の三角マークを見ている状態である。ここで、レンズ103に取り付けられたレンズ駆動部104は上記三角マークにピントが合う位置にレンズ103を移動させた状態となっている。(F-01、D-01)
【0039】
次に使用者がディスプレイ左にあるマル印(深度小(近く))を見ようとして頭を左方向に動かす。(F-02)
【0040】
頭が動いたときに図1、姿勢変化検出部111(例えばヘッドトラッキングセンサで構成される検出部)にて姿勢が変化した方向変化量などを検出する。例えば、映像表示装置の姿勢を、映像表示装置に搭載された検出部で検知することで姿勢の変化を検知することができる。また、検出された姿勢あるいは姿勢の変化などの、姿勢の検出結果に応じて映像表示部に表示する映像情報を決定するように構成することができる。
【0041】
図1、映像中心算出出部112にて上記姿勢変化検出結果に応じ、映像中心位置を移動させる。
【0042】
このときはディスプレイ中心位置の視度調整位置は深度大(遠く)になった状態なのでマル印はボケた状態のままになっている。(F-03、D-02)
【0043】
マル印がディスプレイ中心に移動したのでマル印の深度情報を取得する。(F-04)
【0044】
深度情報が前の状態の深度大(遠く)からマル印の深度小(近く)に変わったため深度小(近く)にピントが合うようにレンズ(モータ)位置を移動させする。(F-05)
【0045】
レンズは最適な位置に移動して停止する。この状態でディスプレイ中心のマル印にピントが合い画像がきれいに見えるようになる。(F-06、D-03)
【0046】
頭の動きディスプレイの中心の深度に変化があれば再びレンズを移動させるようスタンバイする。ここで、本実施例は頭の動きによって映像が移動し、ディスプレイ中心の深度情報が変化したが、頭が動かなくても映像が変化して深度が変わった場合でもレンズ駆動して視度調整を行うことで画像がきれいに見えるようになる。(F-07)
【0047】
本実施例のように光学中心で視度調整を行うことにより視線センサを設ける必要が無い、光学中心で見るためレンズの端の光学的性能が悪いところを使わずに済むという効果が得られる。また、本実施例のモータ駆動には頭の回転などにより姿勢変化するときに慣性力でレンズが移動しないように、停止時の保持力を有する振動型モータを使用することが望ましい。振動型モータは振動体と、この振動体と接する接触体を備えた振動型モータであり、振動型モータの保持トルクにより前記表示光学素子を保持するように構成することができる。
【0048】
図4は上記光学中心領域を示す図である。光学的にレンズの収差の影響の出にくい範囲としてディスプレイ102の領域全体を100%として中心部50%以下の領域を光学的にきれいに見える領域としている。この中心部の領域とは、すなわち、レンズの光軸と交差する点を含みディスプレイ102の表示領域の面積を100%としたとき、50%以下の面積を占める領域であってよい。あるいは、レンズの光軸と交差する点を含みディスプレイ102が実質的に矩形状である場合、の表示領域の一方の幅を100%とした際の、50%以下の幅に対応する領域であってもよい。
【0049】
図4(a)は深度小(近く)に視度調整されている状態で図4(b)は深度大(遠く)に視度調整されている状態で105a、bが虚像の位置となっている。画角は異なるものの使用者が見える範囲の中心部を視度調整領域としているので、深度情報の処理とレンズ駆動制御については画像の中心のみの処理で良いため画像がきれいだけでなく、高速で高応答な処理も可能となっている。
【0050】
本実施例では適切な領域をディスプレイ領域の50%以下の領域としているが光学性能や情報処理能力によっては領域をより広くとることも可能である。また、本実施例はレンズを動かして視度調整を行っているが、特許文献2に示すようなディスプレイが光軸方向に移動する装置でも同様な効果が得られる。すなわち、アクチュエータを駆動することで、第1および第2の表示光学素子の少なくとも1つ以上の表示光学素子の位置と第1および第2の映像表示部の位置を相対的に変えるように構成できればよい。
【実施例0051】
本提案の第二の実施例を図5にて説明する。
【0052】
図5は本実施第2の形態の映像表示装置の構成を示す図である。
【0053】
従来の映像表示装置の構成と同じ部分には同じ符号がつけられいる。本実施例では視度変更指示部106とレンズ駆動用アクチュエータの間にそれぞれ左眼補正部106aと右眼補正部106bが設けられている。
【0054】
左眼補正部106aと右眼補正部106bには使用者の眼の特徴データとレンズ移動量との関係を示すデータが保存されており、使用者に応じたレンズ移動量が設定されるようになっている。
【0055】
図6は、使用者による深度情報(横軸)とレンズ位置(縦軸)の関係を模式的に示したグラフである。図6の線(A)(B)(C)は使用者毎の深度情報(横軸)とレンズ位置(縦軸)の関係を示している。
【0056】
一般的に使用者の視度は、物体距離に応じて変化する。人が物体距離の近い物体を見ている場合、近い位置に視度が合い、逆に物体距離が遠い物体を見ている場合には遠い位置に視度が合うように変化する。この結果、人は物体距離が近い物体であっても、遠い物体であっても鮮明に物体を見ることができる。
【0057】
ディスプレイ上に表示されている像の深度情報は、ディスプレイに投影された仮想的な空間において、現実の基準位置に対応する位置からその像までの距離情報(物体距離)と同じ意味合いを持っている。そのため、ディスプレイの位置が変わらなくてもレンズが移動することで物体距離が変わったように見えるものである。
【0058】
図6にて線(A)ではディスプレイ上の深度情報が変わると物体距離が変わったのと等価であり、その位置でピントが合うようにレンズ位置を変化させる必要がある。
【0059】
図6、線(B)は、例えば加齢の影響による眼の水晶体の焦点調節能力の低下を改善するためのレンズ位置を示している。中高年層の場合には鮮明に見える物体距離の範囲が狭く、物体距離が遠いものや近いものを鮮明に見ることが難しくなることが多い。
【0060】
本実施例では上記加齢の使用者でのレンズ移動範囲を大きくして見える範囲を拡大している。このように移動範囲を大きくして物体距離が遠いものや近いものであっても鮮明に見ることができるようにしている。
【0061】
図6の線(C)では深度情報とレンズ位置の変化量との関係は線(A)の場合と同じであるが、同じ物体距離でのレンズ位置が異なる。これは近視や遠視等の影響により、鮮明に見える物体距離が異なる場合である。このような人の場合、物体距離と視度が線(A)で示すような関係となるように矯正するための眼鏡を使用することが多い。
【0062】
本実施例の線(C)のように物体距離とレンズ位置の関係にすることで眼鏡を付けることと同じ効果が得られ眼鏡を付けることなしに映像を鮮明にみることが可能となる。
【0063】
図6では両目の視力などの情報が同じ使用者についての深度とレンズ位置の関係を示したが、左眼と右眼の視力情報が異なる状態の使用者においても対応することが可能である。
【0064】
図5は右眼に対し左目の視力が低い使用者に対するレンズ位置の関係を示している。
【0065】
図5では右眼に対し左眼補正部106aがより遠くでピントが合うように左眼用レンズ位置を決定し、右眼補正部106bは左眼よりは近くでピントが合うように右眼用レンズ位置を設定している。例えば左眼が図6(A)で右眼が図6(B)のような関係である。
【0066】
このように本実施例では左右それぞれの補正部を有することで、左右のレンズ位置が独立に設定できるようにもなっている。
【0067】
また上記補正を行う場合、視線方向すなわち光学中心から外れた位置を見ているか、光学中心を見ているかにより補正データが異なる。すなわち使用者の視力のデータに加え、視線方向とレンズ駆動量の掛け合わせのデータを保持している必要があり、データ容量も増えかつ、そのデータを処理する時間も増えてしまうという問題が生じ得る。そして、本実施例では実施例1同様に光学中心の位置の深度情報のみを使用するため、処理するデータ量が格段に減らすことができ、使用者の左右の眼に対応する処理も十分対応可能となっている。
【0068】
このように使用者の視力などの情報に対応しかつ使用者がメガネをしなくてもレンズ移動によりメガネを付けたときと同じ感覚で映像を見ることが可能となる。使用者はメガネ無しで映像表示装置を装着できるためメガネが入るスペースが不要となり映像表示装置の小型化も実現できる。
【実施例0069】
本提案の第3の実施例を図7、8にて説明する。
【0070】
図7は本実施第3の形態の映像表示装置の構成を示す図である。
【0071】
従来の映像表示装置の構成と同じ部分には同じ符号がつけられいる。
【0072】
本実施例では映像中心算出部112と表示処理部101との間に変動処理部113が設けられている。
【0073】
実施例1では映像中心の深度情報に応じてレンズを移動させ視度調整を行っていたが本実施例では映像中心の深度情報の変化を変動処理部113で算出している。従来深度情報の変化を見ようとしても映像全体のどこの情報を算出するのかを視線センサで視線方向を検出した後に求める必要があり、処理時間に時間を要していた。
【0074】
本実施例は検出位置が光学中心の位置と決まっているので深度情報の変化を容易に検出可能であり、変化の情報を得ることも容易となっている。
【0075】
図8は上記映像中心の深度変化とレンズ移動の様子を時間変化として描いた図である。
【0076】
ここで、光学中心の深度情報の変化がリアルタイムに検出できているが、本提案の光学中心に合わせて検出するようにしたために処理するデータ量が少なくなりほぼリアルタイムに深度情報の変化を検出できている。
【0077】
変動処理部では上記深度情報の変化を例えば積分処理し、急激な変化には対応しないようにしつつ、変化があったときにはゆっくりと変化に対応するように処理している。
【0078】
変動処理部には前回の値から変動した量の閾値を設けその閾値を超えたときにレンズ駆動をする指令を視度変更指示部に出すようになっている。
【0079】
例えば時間t1のような急峻でかつ一瞬で元に戻るような深度情報変化があった場合積分した結果は閾値を超えないためレンズ駆動を実施しない。
【0080】
時間t2からt3では深度情報が大きい値の方へ変化している。
【0081】
このような場合、変動処理部での積分した結果は閾値を超えていく。そしてレンズ駆動する指令を視度変更指示部に出し、レンズ駆動される。
【0082】
以上のように、本実施例では光学中心の深度情報を高速で処理し情報を得た後、レンズ移動が必要かを変動処理部で判断しレンズ移動の制御を行う。
【0083】
本実施例のような動作をさせることで、急峻な変化にレンズが対応することなく、使用者は滑らかな映像変化を得ることができるため、違和感や酔いなどが発生することなく映像を鑑賞することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本提案の映像表示装置は、ヘッドマウントディスプレイ、映像表示メガネなどの装置に用いられる。最近ではより高精細な映像が求められており、鮮明な映像を得られる本装置は多くの用途の製品へ展開することが可能となる。また、視力補正用のメガネを付けずに使用することも可能となり、装置の小型化にも貢献できる。
【符号の説明】
【0085】
1 使用者
10 映像表示装置
100 映像取得部
101 表示処理部
102a,b 映像表示部
103a,b レンズ
104a,b アクチュエータ
104a,b レンズ移動範囲
105a,b 虚像
106 視度変更指示部
106a 左眼補正部
106b 左眼補正部
108 物体位置算出部
109 使用者情報記憶部
110 動作モード記録部
111 姿勢変化検出部
112 映像中心算出部
113 変動処理部
201a 左眼
201b 右眼
図1
図2
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図11