(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025141175
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】タレットパンチプレス及びタレットパンチプレスの制御方法
(51)【国際特許分類】
B21D 28/36 20060101AFI20250919BHJP
B21D 37/04 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
B21D28/36 B
B21D37/04 P
B21D37/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040986
(22)【出願日】2024-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】井室 元良
【テーマコード(参考)】
4E048
4E050
【Fターム(参考)】
4E048MA06
4E048MA09
4E050CC01
(57)【要約】
【課題】ワークをパンチ加工する加工時間を短くすることができるタレットパンチプレスを提供する。
【解決手段】タレットパンチプレス100は、第1の加工プログラムに従って第1のワークWをパンチ加工した後、第2の加工プログラムに従って第2のワークWをパンチ加工する。制御装置(NC装置7)は、第2の加工プログラムにおける第1の指令に続く第2の指令に対応して使用される第2の金型を装着すべきタレット4のステーション40に装着されている、第1の加工プログラムにおける指令に対応して使用された第1の金型を、第1の指令に対応して第2のワークWのパンチ加工を開始する前にステーション40から抜き取るよう金型移動機構(アーム6)を制御する。制御装置は、第2のワークWをパンチ加工している時間内に、抜き取られた第1の金型をストレージ5に戻し、第2の金型をストレージ5から抜き取るよう金型移動機構を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークをパンチ加工するために使用する金型を装着する複数のステーションを有するタレットと、
ワークをパンチ加工するために使用する金型、及び使用後の金型を装着するストレージと、
前記タレットに装着されている金型を前記ストレージに移動させ、前記ストレージに装着されている金型を前記タレットに移動させる金型移動機構と、
少なくとも1つの指令を含む第1の加工プログラムに従って第1のワークをパンチ加工した後、複数の指令を含む第2の加工プログラムに従って第2のワークをパンチ加工するとき、前記第2の加工プログラムに含まれる前記複数の指令のうちのいずれかの指令である第1の指令に続く第2の指令に対応して使用される第2の金型を装着すべき前記タレットのステーションに装着されている、前記第1の加工プログラムに含まれるいずれかの指令に対応して使用された第1の金型を、前記第1の指令に対応して前記第2のワークのパンチ加工を開始する前に前記タレットの前記ステーションから抜き取るよう前記金型移動機構を制御し、前記第2のワークをパンチ加工している時間内に、抜き取られた前記第1の金型を前記ストレージに戻し、さらに前記第2の金型を前記ストレージから抜き取るよう前記金型移動機構を制御する制御装置と、
を備えるタレットパンチプレス。
【請求項2】
前記金型移動機構は少なくとも一部の構成として、前記タレットまたは前記ストレージに装着されている金型を把持して抜き取るアームを有し、
前記制御装置は、前記アームが前記ストレージから抜き取った前記第2の金型を、前記タレットの近傍であって、前記第1の指令に対応する前記第2のワークのパンチ加工に影響を与えない安全領域に移動させるよう前記金型移動機構を制御する
請求項1に記載のタレットパンチプレス。
【請求項3】
前記第1及び第2のワークを互いに直交するX軸方向及びY軸方向に移動させるワーク移動機構をさらに備え、
前記Y軸方向は、前記第1及び第2のワークを前記Y軸方向に沿った第1の方向に移動させると前記第1及び第2のワークが前記タレットに必ず接近し、前記第1及び第2のワークを前記Y軸方向に沿った前記第1の方向とは反対の第2の方向に移動させると前記第1及び第2のワークが前記タレットから必ず離隔する方向であり、
前記制御装置は、
前記第2の指令に対応する動作における最初の動作として、前記第2のワークを前記Y軸方向の原点に移動させるよう前記ワーク移動機構を制御し、
前記ストレージから抜き取られた前記第2の金型を、前記第2の金型を装着すべき前記タレットのステーションに移動させるよう前記金型移動機構を制御する
請求項1または2に記載のタレットパンチプレス。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記第2の加工プログラムに含まれる前記複数の指令における各指令に対応して前記第2のワークをパンチ加工する加工時間が所定の時間以下である指令が存在するとき、
前記第1の指令として前記複数の指令における最初の指令に対応する動作において、
前記第1の指令に対応して使用される第3の金型を装着すべき前記タレットのステーションに装着されている、前記第1の加工プログラムに含まれるいずれかの指令に対応して使用された第4の金型を、前記タレットの前記ステーションから前記ストレージに戻し、
前記第3の金型を前記ストレージから、前記第3の金型を装着すべき前記タレットのステーションに移動させ、
前記加工時間が前記所定の時間以下である指令に対応して使用される第5の金型を装着すべき前記タレットのステーションに装着されている、前記第1の加工プログラムに含まれるいずれかの指令に対応して使用された第6の金型を、前記タレットの前記ステーションから前記ストレージに戻し、
前記第5の金型を前記ストレージから、前記第5の金型を装着すべき前記タレットのステーションに移動させるよう前記金型移動機構を制御する
請求項1または2に記載のタレットパンチプレス。
【請求項5】
ワークをパンチ加工するために使用する金型を装着する複数のステーションを有するタレットと、ワークをパンチ加工するために使用する金型、及び使用後の金型を装着するストレージと、前記タレットに装着されている金型を前記ストレージに移動させ、前記ストレージに装着されている金型を前記タレットに移動させる金型移動機構とを備えるタレットパンチプレスを制御する制御装置が、
少なくとも1つの指令を含む第1の加工プログラムに従って第1のワークをパンチ加工した後、複数の指令を含む第2の加工プログラムに従って第2のワークをパンチ加工するとき、
前記第2の加工プログラムに含まれる前記複数の指令のうちのいずれかの指令である第1の指令に続く第2の指令に対応して使用される第2の金型を装着すべき前記タレットのステーションに装着されている、前記第1の加工プログラムに含まれるいずれかの指令に対応して使用された第1の金型を、前記第1の指令に対応して前記第2のワークのパンチ加工を開始する前に前記タレットの前記ステーションから抜き取るよう前記金型移動機構を制御し、
前記第2のワークをパンチ加工している時間内に、抜き取られた前記第1の金型を前記ストレージに戻し、さらに前記第2の金型を前記ストレージから抜き取るよう前記金型移動機構を制御する
タレットパンチプレスの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タレットパンチプレス及びタレットパンチプレスの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを加工するための金型としてパンチとダイとを用いてワークをパンチ加工するタレットパンチプレスが普及している。タレットパンチプレスは、ワークをパンチ加工するために使用する金型を装着するタレットと、使用前の金型及び使用後の金型を装着するストレージとを備える。
(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タレットパンチプレスは、加工プログラムに従ってワークをパンチ加工する。加工プログラムは、ワークをパンチ加工する位置(座標)と、タレットにおけるワークをパンチ加工するために使用する金型を装着するステーションの番号と、ワークをパンチ加工するために使用する金型を示す番号とを含む指令を、一般的には複数並べた機械制御コードである。加工プログラムにおける各指令をT指令と称する。
【0005】
タレットパンチプレスは、T指令ごとに、タレットに装着する金型を交換する。タレットパンチプレスがあるT指令に従ってワークをパンチ加工しているときには、タレットに装着する金型を交換することはできない。タレットパンチプレスが加工プログラムに従ってワークをパンチ加工しようとするとき、タレットのステーションに以前のパンチ加工で使用した金型が既に装着されているとする。このとき、従来のタレットパンチプレスにおいては、タレットに装着する金型を交換するのに要する交換時間と、その交換時間とは別の時間である、ワークを実際にパンチ加工する実加工時間とを含む加工時間が必要となる。タレットパンチプレスがワークをパンチ加工する加工時間を短くすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様は、ワークをパンチ加工するために使用する金型を装着する複数のステーションを有するタレットと、ワークをパンチ加工するために使用する金型、及び使用後の金型を装着するストレージと、前記タレットに装着されている金型を前記ストレージに移動させ、前記ストレージに装着されている金型を前記タレットに移動させる金型移動機構と、少なくとも1つの指令を含む第1の加工プログラムに従って第1のワークをパンチ加工した後、複数の指令を含む第2の加工プログラムに従って第2のワークをパンチ加工するとき、前記第2の加工プログラムに含まれる前記複数の指令のうちのいずれかの指令である第1の指令に続く第2の指令に対応して使用される第2の金型を装着すべき前記タレットのステーションに装着されている、前記第1の加工プログラムに含まれるいずれかの指令に対応して使用された第1の金型を、前記第1の指令に対応して前記第2のワークのパンチ加工を開始する前に前記タレットの前記ステーションから抜き取るよう前記金型移動機構を制御し、前記第2のワークをパンチ加工している時間内に、抜き取られた前記第1の金型を前記ストレージに戻し、さらに前記第2の金型を前記ストレージから抜き取るよう前記金型移動機構を制御する制御装置とを備えるタレットパンチプレスを提供する。
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様は、ワークをパンチ加工するために使用する金型を装着する複数のステーションを有するタレットと、ワークをパンチ加工するために使用する金型、及び使用後の金型を装着するストレージと、前記タレットに装着されている金型を前記ストレージに移動させ、前記ストレージに装着されている金型を前記タレットに移動させる金型移動機構とを備えるタレットパンチプレスを制御する制御装置が、少なくとも1つの指令を含む第1の加工プログラムに従って第1のワークをパンチ加工した後、複数の指令を含む第2の加工プログラムに従って第2のワークをパンチ加工するとき、前記第2の加工プログラムに含まれる前記複数の指令のうちのいずれかの指令である第1の指令に続く第2の指令に対応して使用される第2の金型を装着すべき前記タレットのステーションに装着されている、前記第1の加工プログラムに含まれるいずれかの指令に対応して使用された第1の金型を、前記第1の指令に対応して前記第2のワークのパンチ加工を開始する前に前記タレットの前記ステーションから抜き取るよう前記金型移動機構を制御し、前記第2のワークをパンチ加工している時間内に、抜き取られた前記第1の金型を前記ストレージに戻し、さらに前記第2の金型を前記ストレージから抜き取るよう前記金型移動機構を制御するタレットパンチプレスの制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
1またはそれ以上の実施形態に係るタレットパンチプレス及びタレットパンチプレスの制御方法によれば、タレットパンチプレスがワークをパンチ加工する加工時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1及び第2実施形態に係るタレットパンチプレスの全体的な構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1及び第2実施形態に係るタレットパンチプレスが備えるNC装置の内部構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1及び第2実施形態に係るタレットパンチプレスで用いられる第1の加工プログラムの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1及び第2実施形態に係るタレットパンチプレスで用いられる第2の加工プログラムの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1及び第2実施形態に係るタレットパンチプレスが備えるタレットを示す概念図である。
【
図6】
図6は、第1及び第2実施形態に係るタレットパンチプレスが備えるストレージを示す概念図である。
【
図7A】
図7Aは、タレットパンチプレスの動作及びタレットパンチプレスの制御方法の第1の比較例を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、タレットパンチプレスの動作及びタレットパンチプレスの制御方法の第2の比較例を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、第1実施形態に係るタレットパンチプレスの動作及び第1実施形態に係るタレットパンチプレスの制御方法を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、
図9Aに続く、第1実施形態に係るタレットパンチプレスの動作及び第1実施形態に係るタレットパンチプレスの制御方法を示す図である。
【
図10A】
図10Aは、第2実施形態に係るタレットパンチプレスの動作及び第2実施形態に係るタレットパンチプレスの制御方法を示す図である。
【
図10B】
図10Bは、
図10Aに続く、第2実施形態に係るタレットパンチプレスの動作及び第2実施形態に係るタレットパンチプレスの制御方法を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係るタレットパンチプレスが実行する処理及び第2実施形態に係るタレットパンチプレスの制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、第1及び第2実施形態に係るタレットパンチプレス及びタレットパンチプレスの制御方法について、添付図面を参照して説明する。第1実施形態に係るタレットパンチプレスと第2実施形態に係るタレットパンチプレスとは共通の構成を備える。
図1において、第1及び第2実施形態に係るタレットパンチプレス100は、本体部1、加工対象の板金であるワークWを載置するテーブル2、ワークWをテーブル2と一体的に移動させるワーク移動機構3、ストレージ5、NC装置7を備える。本体部1には、軸4aを中心として回転自在に設けられたタレット4と、軸6aを中心として回転するアーム6とが設けられている。
【0011】
NC装置7には、加工プログラムサーバ8が接続されている。加工プログラムサーバ8はNC装置7とは離れた遠隔地に設置されていて、LAN等の任意のネットワークによってNC装置7と接続されていてもよい。
【0012】
ワーク移動機構3は、例えば3つのワーククランパ32によってワークWを保持するワーク保持部31、X軸33、Y軸34を有する。ワーク移動機構3は、ワーク保持部31をX軸33に沿ってX軸方向に移動させることができる。ワーク移動機構3は、ワーク保持部31をテーブル2と一体的に、Y軸34に沿ってY軸方向に移動させることができる。X軸方向とY軸方向とは互いに直交する。Y軸方向とは、ワークWをY軸方向に沿った第1の方向(
図1の左方向)に移動させるとワークWがタレット4に必ず接近し、ワークWをY軸方向に沿った第1の方向とは反対の第2の方向(
図1の右方向)に移動させるとワークWがタレット4から必ず離隔する方向である。
【0013】
タレット4には、複数の金型を装着するための複数のステーション40が設けられている。詳細には、タレット4は、複数のパンチを装着するための上部タレットと、複数のダイを装着するための下部タレットとを含む。ストレージ5には、金型を装着するための複数のステーション50が設けられている。ストレージ5はタレット4の近くであって、本体部1に近接した位置に設けられている。ストレージ5には、使用するまで待機する使用前の金型、使用後の金型を含む複数の金型が装着されている。
【0014】
詳細には、ストレージ5は、パンチを装着するためのパンチ用ストレージと、ダイを装着するためのダイ用ストレージとを含む。ダイ用ストレージは上下に配置された2段で構成されていることがある。ストレージ5は軸5aを中心として回転自在である。
【0015】
アーム6は、ストレージ5に装着されている金型を把持してタレット4へと移動させたり、タレット4に装着されている金型を把持してストレージ5に移動させたりする金型移動機構の少なくとも一部を構成する。
【0016】
図2を用いて、NC装置7の内部構成例を説明する。NC装置7は、情報処理部71、動作制御部72、記憶部73を備える。情報処理部71は、加工プログラム解析部711を有する。動作制御部72は、プレス制御部721、金型移動計画策定部722、金型交換動作制御部723を有する。記憶部73は、各金型がタレット4またはストレージ5のどのステーションに装着されているかを示す情報と、各金型がアーム6に把持されているか否かを示す情報とを含む金型所在情報を記憶する。また、記憶部73は、金型所在情報として、過去にワークWをパンチ加工したときの加工プログラムを含む各加工プログラムで使用した金型の所在情報を記憶している。NC装置7はタレットパンチプレス100を制御する制御装置の一例である。
【0017】
加工プログラム解析部711は、ワークWをパンチ加工する加工プログラムを解析する。プレス制御部721は、解析された加工プログラムに従って、タレットパンチプレス100がワークWをパンチ加工するプレスの動作を制御する。金型移動計画策定部722は、解析された加工プログラムに従って、金型をタレット4からストレージ5へと、またはストレージ5からタレット4へと移動させる移動計画を策定する。金型交換動作制御部723は、金型移動計画策定部722が策定した移動計画に従って、金型のタレット4とストレージ5との間の交換動作を制御する。
【0018】
タレットパンチプレス100は、
図3に示す第1の加工プログラムPG1に従ってワークW(第1のワーク)をパンチ加工した後に、
図4に示す第2の加工プログラムPG2に従って他のワークW(第2のワーク)をパンチ加工するとする。第1の加工プログラムPG1によるワークWのパンチ加工と第2の加工プログラムPG2によるワークWのパンチ加工とは時間的に隣接する2つのパンチ加工であってもよいし、時間的に隣接していない2つのパンチ加工であってもよい。
【0019】
以下の説明においては、金型のうちダイの交換動作を例とする。パンチの交換動作はダイの交換動作と同様である。
図3及び
図4における各行がT指令である。第1の加工プログラムPG1及び第2の加工プログラムPG2において、「X_Y_」はワークWをパンチ加工する位置(座標)を示している。実際には、「X_Y_」は例えばX1000Y1200のようにX座標及びY座標を特定する具体的な数値である。
【0020】
例えば、
図3の最初の「X_ Y_ T1018011」なるT指令における「X_Y_」に続く「T101」は、タレット4のステーション40の番号を示す。「T101」に続く「801」は、ワークWをパンチ加工するために使用する金型(ダイ)の番号であり、金型S801を示す。「801」に続く「1」は、ダイ用ストレージが上下に配置された2段で構成されている場合の上側に配置されたダイ用ストレージに装着されている金型であることを示す。
【0021】
図5は、タレット4が有するステーション40の一部を示している。第1の加工プログラムPG1及び第2の加工プログラムPG2で指定されている各金型を装着するステーション40の番号は、T101、T202、T303、T104、T205、T306である。T101、T202、T303、T104、T205、T306のステーション40は、例えば
図5に示す位置に位置しているとする。
【0022】
第1の加工プログラムPG1でT101、T202、T303、T104、T205、T306のステーション40に装着して使用される金型は、金型S801~S806である。第2の加工プログラムPG2でT101、T202、T303、T104、T205、T306のステーション40に装着して使用される金型は、金型S901~S906である。金型S801~S806及びS901~S906は、
図6に示すストレージ5の各位置のステーション50に装着される(装着されている)金型であるとする。
【0023】
タレットパンチプレス100の動作、及びタレットパンチプレス100が実行するタレットパンチプレスの制御方法を説明する前に、
図7A及び
図7Bを用いて第1の比較例、
図8A及び
図8Bを用いて第2の比較例を説明する。タレットパンチプレス100が、
図3に示す第1の加工プログラムPG1に従ったワークWのパンチ加工を完了した時点で、タレット4のT101、T202、T303、T104、T205、T306のステーション40には、それぞれ金型S801~S806が装着されている。
【0024】
<第1の比較例>
NC装置7は、
図4に示す第2の加工プログラムPG2に従って、
図7A及び
図7Bに示すようにワークWをパンチ加工するようタレットパンチプレス100を制御する。
図7Aにおいて、NC装置7は、「X_ Y_ T1019011」なるT指令に対応して、動作OP71を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。動作OP71及び後述する動作OP72~OP76の最初にワークWをY軸方向の原点に移動させるのは、金型をタレット4からストレージ5に移動させたり、ストレージ5からタレット4に移動させたりするときに、ワークWがタレット4の金型の出入口を塞がないようにするためである。
【0025】
NC装置7は、金型S801をT101のステーション40からストレージ5に戻すよう金型移動機構を制御する。これにより、タレット4のT101のステーション40は空きとなる。NC装置7は、金型S901をストレージ5からT101のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S901を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。動作OP71~OP76において、白抜き矢印は、ワークWのパンチ加工が継続している時間を示している。
【0026】
金型S901を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T2029021」なるT指令に対応して、動作OP72を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。NC装置7は、金型S802をT202のステーション40からストレージ5に戻し、金型S902をストレージ5からT202のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S902を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。
【0027】
金型S902を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T3039031」なるT指令に対応して、動作OP73を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。NC装置7は、金型S803をT303のステーション40からストレージ5に戻し、金型S903をストレージ5からT303のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S903を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。
【0028】
図7Bにおいて、金型S903を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T1049041」なるT指令に対応して、動作OP74を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。NC装置7は、金型S804をT104のステーション40からストレージ5に戻し、金型S904をストレージ5からT104のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S904を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。
【0029】
金型S904を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T2059051」なるT指令に対応して、動作OP75を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。NC装置7は、金型S805をT205のステーション40からストレージ5に戻し、金型S905をストレージ5からT205のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S905を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。
【0030】
金型S905を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T3069061」なるT指令に対応して、動作OP76を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。NC装置7は、金型S806をT306のステーション40からストレージ5に戻し、金型S906をストレージ5からT306のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S906を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。その後、金型S906を用いたパンチ加工が終了する。
【0031】
第1の比較例では、動作OP71~OP76の全てにおいて、ワークWをY軸方向の原点に移動させる時間が必要である。
【0032】
<第2の比較例>
NC装置7は、
図4に示す第2の加工プログラムPG2に従って、
図8A及び
図8Bに示すようにワークWをパンチ加工するようタレットパンチプレス100を制御する。
図8Aにおいて、NC装置7は、「X_ Y_ T1019011」なるT指令に対応して、動作OP81を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。
【0033】
NC装置7は、金型S801をT101のステーション40からストレージ5に戻し、金型S901をストレージ5からT101のステーション40に移動させる。NC装置7は、金型S802をT202のステーション40からストレージ5に戻し、金型S902をストレージ5からT202のステーション40に移動させる。NC装置7は、金型S803をT303のステーション40からストレージ5に戻し、金型S903をストレージ5からT303のステーション40に移動させる。
【0034】
NC装置7は、金型S804をT104のステーション40からストレージ5に戻し、金型S904をストレージ5からT104のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、金型S805をT205のステーション40からストレージ5に戻し、金型S905をストレージ5からT205のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、金型S806をT306のステーション40からストレージ5に戻し、金型S906をストレージ5からT306のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。
【0035】
このように、第2の比較例においては、NC装置7は、最初のT指令に対応する動作OP81において、T101、T202、T303、T104、T205、T306のステーション40に装着されている金型S801~S806の全てを任意の順でストレージ5に戻すよう金型移動機構を制御する。また、NC装置7は、金型S901~S906の全てをストレージ5からT101、T202、T303、T104、T205、T306のステーション40に任意の順で移動させるよう金型移動機構を制御する。
【0036】
NC装置7は、動作OP81において、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S901を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。
【0037】
金型S901を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T2029021」なるT指令に対応して、動作OP82を実行させる。NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S902を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。金型S902を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T3039031」なるT指令に対応して、動作OP83を実行させる。NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S903を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。
【0038】
図8Bにおいて、金型S903を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T1049041」なるT指令に対応して、動作OP84を実行させる。NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S904を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。金型S904を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T2059051」なるT指令に対応して、動作OP85を実行させる。NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S905を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。
【0039】
金型S905を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T3069061」なるT指令に対応して、動作OP86を実行させる。NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S906を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。その後、金型S906を用いたパンチ加工が終了する。
【0040】
第2の比較例では、第1の比較例よりも、5回分のワークWをY軸方向の原点に移動させる時間だけ加工時間を短くすることができる。しかしながら、加工時間の短縮効果はわずかであり、第2の比較例よりもさらに加工時間を短くすることが望まれる。
【0041】
<第1実施形態>
図9A及び
図9Bを用いて、第1実施形態に係るタレットパンチプレス100の動作、及びタレットパンチプレス100が実行する第1実施形態に係るタレットパンチプレスの制御方法を説明する。NC装置7は、
図4に示す第2の加工プログラムPG2に従って、
図9A及び
図9Bに示すようにワークWをパンチ加工するようタレットパンチプレス100を制御する。
【0042】
図9Aにおいて、NC装置7は、「X_ Y_ T1019011」なるT指令に対応して、動作OP91を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。NC装置7は、金型S801をT101のステーション40からストレージ5に戻し、金型S901をストレージ5からT101のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。加えて、NC装置7は、金型S802をT202のステーション40から抜き取るよう金型移動機構を制御する。このとき、アーム6は金型S802を把持している。金型S802は、次のT指令に対応して使用される金型S902を装着すべきタレット4のステーション40に既に装着されている金型である。
【0043】
動作OP91においては、「X_ Y_ T1019011」なるT指令を第1の指令とすれば、次の「X_ Y_ T2029021」なるT指令が第2の指令となる。
【0044】
NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S901を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。白抜き矢印で示す、タレットパンチプレス100が金型S901を用いてワークWをパンチ加工している時間内に、NC装置7は、アーム6によって把持されている金型S802をストレージ5に戻し、次のT指令に対応して使用される金型S902をストレージ5から抜き取るよう金型移動機構を制御する。このとき、アーム6は金型S902を把持している。NC装置7は、アーム6をタレット4近傍の安全領域まで移動させる。
【0045】
安全領域とは、テーブル2が移動しても、タレット4が移動しても、テーブル2及びタレット4がアーム6またはアーム6が把持している金型と接触することがない領域である。即ち、安全領域とは、各T指令に対応するワークWのパンチ加工に影響を与えない領域である。アーム6が把持している金型をタレット4の近傍に移動させれば、次のT指令に対応する動作においてアーム6が把持している金型をタレット4のステーション40に装着するまでの時間を短くすることができる。NC装置7は、アーム6が把持している金型を安全領域におけるタレット4にできるだけ近い位置に移動させるのがよい。
【0046】
アーム6が安全領域に到達しているか否かは、NC装置7がアーム6の各軸座標に基づいて判定することができる。NC装置7は、アーム6の各軸座標を、アーム6を動かす図示していないモータのエンコーダ情報に基づいて取得することができる。
【0047】
金型S901を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T2029021」なるT指令に対応して、動作OP92を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。NC装置7は、アーム6が把持している金型S902をT202のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。加えて、NC装置7は、金型S803をT303のステーション40から抜き取るよう金型移動機構を制御する。このとき、アーム6は金型S803を把持している。金型S803は、次のT指令に対応して使用される金型S903を装着すべきタレット4のステーション40に既に装着されている金型である。
【0048】
動作OP92においては、「X_ Y_ T2029021」なるT指令を第1の指令とすれば、次の「X_ Y_ T3039031」なるT指令が第2の指令となる。
【0049】
NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S902を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。白抜き矢印で示す、タレットパンチプレス100が金型S902を用いてワークWをパンチ加工している時間内に、NC装置7は、アーム6によって把持されている金型S803をストレージ5に戻し、次のT指令に対応して使用される金型S903をストレージ5から抜き取るよう金型移動機構を制御する。このとき、アーム6は金型S903を把持している。NC装置7は、アーム6をタレット4近傍の安全領域まで移動させる。
【0050】
金型S902を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T3039031」なるT指令に対応して、動作OP93を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。NC装置7は、アーム6が把持している金型S903をT303のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。加えて、NC装置7は、金型S804をT104のステーション40から抜き取るよう金型移動機構を制御する。このとき、アーム6は金型S804を把持している。金型S804は、次のT指令に対応して使用される金型S904を装着すべきタレット4のステーション40に既に装着されている金型である。
【0051】
動作OP93においては、「X_ Y_ T3039031」なるT指令を第1の指令とすれば、次の「X_ Y_ T1049041」なるT指令が第2の指令となる。
【0052】
NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S903を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。白抜き矢印で示す、タレットパンチプレス100が金型S903を用いてワークWをパンチ加工している時間内に、NC装置7は、アーム6によって把持されている金型S804をストレージ5に戻し、次のT指令に対応して使用される金型S904をストレージ5から抜き取るよう金型移動機構を制御する。このとき、アーム6は金型S904を把持している。NC装置7は、アーム6をタレット4近傍の安全領域まで移動させる。
【0053】
図9Bにおいて、金型S903を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T1049041」なるT指令に対応して、動作OP94を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。NC装置7は、アーム6が把持している金型S904をT104のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。加えて、NC装置7は、金型S805をT205のステーション40から抜き取るよう金型移動機構を制御する。このとき、アーム6は金型S805を把持している。金型S805は、次のT指令に対応して使用される金型S905を装着すべきタレット4のステーション40に既に装着されている金型である。
【0054】
動作OP94においては、「X_ Y_ T1049041」なるT指令を第1の指令とすれば、次の「X_ Y_ T2059051」なるT指令が第2の指令となる。
【0055】
NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S904を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。白抜き矢印で示す、タレットパンチプレス100が金型S904を用いてワークWをパンチ加工している時間内に、NC装置7は、アーム6によって把持されている金型S805をストレージ5に戻し、次のT指令に対応して使用される金型S905をストレージ5から抜き取るよう金型移動機構を制御する。このとき、アーム6は金型S905を把持している。NC装置7は、アーム6をタレット4近傍の安全領域まで移動させる。
【0056】
金型S904を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T2059051」なるT指令に対応して、動作OP95を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。NC装置7は、アーム6が把持している金型S905をT205のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。加えて、NC装置7は、金型S806をT306のステーション40から抜き取るよう金型移動機構を制御する。このとき、アーム6は金型S806を把持している。金型S806は、次のT指令に対応して使用される金型S906を装着すべきタレット4のステーション40に既に装着されている金型である。
【0057】
動作OP95においては、「X_ Y_ T2059051」なるT指令を第1の指令とすれば、次の「X_ Y_ T3069061」なるT指令が第2の指令となる。
【0058】
NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S905を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。白抜き矢印で示す、タレットパンチプレス100が金型S905を用いてワークWをパンチ加工している時間内に、NC装置7は、アーム6によって把持されている金型S806をストレージ5に戻し、次のT指令に対応して使用される金型S906をストレージ5から抜き取るよう金型移動機構を制御する。このとき、アーム6は金型S906を把持している。NC装置7は、アーム6をタレット4近傍の安全領域まで移動させる。
【0059】
金型S905を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T3069061」なるT指令に対応して、動作OP96を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。NC装置7は、アーム6が把持している金型S906をT306のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S906を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。その後、金型S906を用いたパンチ加工が終了する。
【0060】
金型移動計画策定部722は、以上説明した動作OP91~OP96における金型S801~S806のストレージ5への移動、及び金型S901~S906のタレット4への移動の移動計画を策定する。金型交換動作制御部723は、金型移動計画策定部722が策定した移動計画に従って、金型のタレット4とストレージ5との間の交換動作を制御する。プレス制御部721は、動作OP91~OP96におけるタレットパンチプレス100によるワークWのパンチ加工を制御する。
【0061】
以上のように、第1実施形態に係るタレットパンチプレス100及びタレットパンチプレスの制御方法は、最後のT指令を除く各T指令(第1の指令)に対応する動作において、ワークWのパンチ加工を開始する前に、次のT指令(第2の指令)に対応して使用される金型(第2の金型)を装着すべきタレット4のステーション40に既に装着されている金型(第1の金型)を抜き取るよう金型移動機構を制御する。
【0062】
さらに、第1実施形態に係るタレットパンチプレス100及びタレットパンチプレスの制御方法は、各T指令に対応する動作において、ワークWをパンチ加工している時間内に、アーム6によって把持されて事前に抜き取られている金型をストレージ5に戻し、次のT指令に対応して使用される金型を把持してストレージ5から抜き取るよう金型移動機構を制御する。
【0063】
即ち、第1実施形態に係るタレットパンチプレス100及びタレットパンチプレスの制御方法は、最後のT指令を除く各T指令に対応する動作において、ワークWをパンチ加工している時間内に、ワークWのパンチ加工に影響を与えない範囲で、タレット4とストレージ5との間の金型の交換動作のうちの一部の動作を実行させている。従って、第1実施形態に係るタレットパンチプレス100及びタレットパンチプレスの制御方法によれば、タレットパンチプレス100がワークWをパンチ加工する加工時間を短くすることができる。
【0064】
第1実施形態に係るタレットパンチプレス100及びタレットパンチプレスの制御方法においては、NC装置7は、各T指令に対応する動作OP91~OP96における最初の動作として、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。第2の指令に対応する動作である動作OP92~OP95の最初の動作として、NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させる。続けて、NC装置7は、最初のT指令を除く各T指令に対応する動作において、直前のT指令に対応する動作においてストレージ5から抜き取った金型(第2の金型)を、タレット4のステーション40に移動するよう金型移動機構を制御する。
【0065】
よって、直前のT指令に対応する動作においてストレージ5から抜き取った金型をステーション40に何らの支障もなく装着することができ、その金型を用いてワークWをパンチ加工することができる。
【0066】
第1実施形態に係るタレットパンチプレス100及びタレットパンチプレスの制御方法においては、各T指令に対応する動作においてワークWをY軸方向の原点に移動させる時間が必要になるものの、金型の交換動作に要する時間を短くすることができるため、第2の比較例よりも加工時間を短くすることが可能である。
【0067】
<第2実施形態>
図10A及び
図10Bを用いて、第2実施形態に係るタレットパンチプレス100の動作、及びタレットパンチプレス100が実行する第2実施形態に係るタレットパンチプレスの制御方法を説明する。第1実施形態において、ワークWをパンチ加工している時間内に実行させている、タレット4とストレージ5との間の金型の交換動作のうちの一部の動作に要する所定の時間は十数秒である。1つのT指令に対応する動作において、ワークWをパンチ加工する加工時間が例えば2秒のように短いとする。このとき、第1実施形態のように動作させると、1つのT指令に対応してワークWをパンチ加工する加工時間よりも上記の所定の時間の方が長いため、全体での加工時間を短くすることに寄与しない。
【0068】
第2実施形態に係るタレットパンチプレス100の動作、及び第2実施形態に係るタレットパンチプレスの制御方法は、動作OP91~OP96のうち、ワークWのパンチ加工時間が所定の時間以下(例えば4秒以下)のT指令に対応する動作が存在するときに好適な動作及び制御方法である。一例として、「X_ Y_ T1049041」なるT指令に対応する動作OP94におけるパンチ加工時間が4秒以下であるとする。
【0069】
NC装置7(金型移動計画策定部722)は、加工プログラムに基づいて、1つのT指令に対応する動作で、ワークWをパンチ加工する回数、ワークWを複数の箇所でパンチ加工する座標間の距離、パンチ加工の種類によって、おおよそのパンチ加工時間を算出することができる。
【0070】
図10Aにおいて、NC装置7は、「X_ Y_ T1019011」なるT指令に対応して、動作OP101を実行させる。NC装置7は、ワークWをY軸方向の原点に移動させるようワーク移動機構3を制御する。NC装置7は、金型S801をT101のステーション40からストレージ5に戻し、金型S901をストレージ5からT101のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。
【0071】
「X_ Y_ T1049041」なるT指令に対応する動作OP94におけるパンチ加工時間が4秒以下である。そこで、NC装置7は、一点鎖線で囲んでいるように、金型S804をT104のステーション40からストレージ5に戻し、金型S904をストレージ5からT104のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。
【0072】
NC装置7は、金型S802をT202のステーション40から抜き取るよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S901を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。タレットパンチプレス100が金型S901を用いてワークWのパンチ加工をしている時間内に、NC装置7は、アーム6によって把持されている金型S802をストレージ5に戻し、次のT指令に対応して使用される金型S902をストレージ5から抜き取るよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、アーム6をタレット4近傍の安全領域まで移動させる。
【0073】
次の「X_ Y_ T2029021」なるT指令に対応する動作OP102は、
図9Aに示す動作OP92と同じである。
図10Bに示す「X_ Y_ T3039031」なるT指令に対応する動作OP103は、
図9Aに示す動作OP93と同じである。
【0074】
図10Bにおいて、金型S903を用いたパンチ加工の終了後、NC装置7は、「X_ Y_ T1049041」なるT指令に対応して、動作OP104を実行させる。動作OP104で用いる金型S904は、動作OP101において既にT104のステーション40に移動している。動作OP104では、ワークWをY軸方向の原点に移動させる動作は不要である。よって、NC装置7は、即座に、ワーク移動機構3を制御してテーブル2を移動させ、金型S904を用いたワークWのパンチ加工を開始するようタレットパンチプレス100を制御する。短い白抜き矢印で示すように、動作OP101におけるパンチ加工時間は4秒以下の短い時間である。
【0075】
続く「X_ Y_ T2059051」なるT指令に対応する動作OP105は、
図9Bに示す動作OP95と同じであり、「X_ Y_ T3069061」なるT指令に対応する動作OP106は、
図9Bに示す動作OP96と同じである。
【0076】
金型移動計画策定部722は、以上説明した動作OP101~OP106における金型S801~S806のストレージ5への移動、及び金型S901~S906のタレット4への移動の移動計画を策定する。金型交換動作制御部723は、金型移動計画策定部722が策定した移動計画に従って、金型のタレット4とストレージ5との間の交換動作を制御する。プレス制御部721は、動作OP101~OP106におけるタレットパンチプレス100によるワークWのパンチ加工を制御する。
【0077】
以上のように、第2の加工プログラムPG2は、複数のT指令における各T指令に対応してワークW(第2のワーク)をパンチ加工する加工時間が所定の時間以下であるT指令を含む。このとき、第2実施形態に係るタレットパンチプレス100は次のように動作し、第2実施形態に係るタレットパンチプレスの制御方法はタレットパンチプレス100を次のように制御する。
【0078】
NC装置7は、第1の指令として複数のT指令における最初のT指令に対応する動作において、金型移動機構を次のように制御する。NC装置7は、最初のT指令に対応して使用される金型S901(第3の金型)を装着すべきタレット4のステーション40に装着されている金型S801(第4の金型)を、タレット4のステーション40からストレージ5に戻すよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、金型S901をストレージ5から、金型S901を装着すべきタレット4のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。
【0079】
図10A及び
図10Bに示す例では、金型S904(第5の金型)が、加工時間が所定の時間以下であるT指令に対応して使用される金型である。NC装置7は、金型S904を装着すべきタレット4のステーション40に装着されている金型S804(第6の金型)を、タレット4のステーション40からストレージ5に戻すよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、金型S904をストレージ5から、金型S904を装着すべきタレット4のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。
【0080】
図10A及び
図10Bに示す例では、加工時間が所定の時間以下であるT指令に対応して使用される金型は金型S904の1つのみである。加工時間が所定の時間以下であるT指令に対応して使用されるという条件に該当する金型が複数存在する場合には、NC装置7は金型移動機構を次のように制御する。NC装置7は、最初のT指令に対応する動作において、該当する複数の金型における各金型(第5の金型)を装着すべきタレット4のステーション40に装着されている金型(第6の金型)を、タレット4のステーション40からストレージ5に戻すよう金型移動機構を制御する。さらに、NC装置7は、該当する各金型をストレージ5から、該当する各金型を装着すべきタレット4のステーション40に移動させるよう金型移動機構を制御する。
【0081】
第2実施形態に係るタレットパンチプレス100及びタレットパンチプレスの制御方法によれば、第2の加工プログラムPG2における複数のT指令が、加工時間が例えば4秒以下のような所定の時間以下であるT指令を含んでいても、タレットパンチプレス100がワークWをパンチ加工する加工時間を短くすることができる。
【0082】
図11に示すフローチャートを用いて、第2実施形態に係るタレットパンチプレス100が実行する処理及び第2実施形態に係るタレットパンチプレスの制御方法をさらに説明する。
図11に示すフローチャートは、第2の加工プログラムPG2に含まれている複数のT指令におけるT指令単位の処理を示している。
【0083】
NC装置7は、処理が開始されると、ステップS1にて、T指令金型がタレット4近傍の安全領域まで移動しているか否かを判定する。T指令金型とは、T指令に対応して使用される金型である。T指令金型がタレット4近傍の安全領域まで移動していれば(YES)、NC装置7は、ステップS2にて、アーム6が把持しているT指令金型をタレット4に移動させるよう金型移動機構を制御して、処理をステップS4に移行させる。
【0084】
ステップS1にてT指令金型がタレット4近傍の安全領域まで移動していなければ(NO)、NC装置7は、ステップS3にて、T指令金型が装着されるタレット4のステーション40に既に装着されている金型をストレージ5に移動させるよう金型移動機構を制御する。また、NC装置7は、ステップS3にて、T指令金型をストレージ5からタレット4に移動させるよう金型移動機構を制御して、処理をステップS4に移行させる。
【0085】
なお、T指令金型が装着されるタレット4のステーション40に金型が装着されておらず、T指令金型が装着されるタレット4のステーション40が空きであることがある。
図11では図示を省略しているが、NC装置7は、ステップS3の前に、金型所在情報に基づいて、T指令金型が装着されるステーション40に既に金型が装着されているか否かを判定する。T指令金型が装着されるステーション40に既に金型が装着されていれば、NC装置7はステーション40に既に装着されている金型をストレージ5に移動させるよう金型移動機構を制御すればよい。
【0086】
NC装置7は、ステップS4にて、他の交換金型があるか否かを判定する。交換金型とは、タレット4とストレージ5との間で交換すべき金型である。他の交換金型がなければ(NO)、NC装置7は処理をステップS9に移行させる。他の交換金型があれば(YES)、NC装置7は、ステップS5にて、パンチ加工時間が4秒以下のT指令があるか否かを判定する。パンチ加工時間が4秒以下のT指令がなければ(NO)、NC装置7は処理をステップS7に移行させる。
【0087】
ステップS5にてパンチ加工時間が4秒以下のT指令があれば(YES)、NC装置7は、ステップS6にて、該当するT指令全てのT指令金型が装着されるタレット4のステーション40に既に装着されている金型をストレージ5に移動させるよう金型移動機構を制御する。また、NC装置7は、ステップS6にて、該当するT指令全てのT指令金型をストレージ5からタレット4に移動させるよう金型移動機構を制御して、処理をステップS7に移行させる。
【0088】
NC装置7は、ステップS7にて、他の交換金型があるか否かを判定する。他の交換金型がなければ(NO)、NC装置7は処理をステップS9に移行させる。他の交換金型があれば(YES)、NC装置7は、ステップS8にて、次のT指令におけるT指令金型が装着されるタレット4のステーション40に既に装着されている金型をタレット4から抜き取るよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、ステップS9にて、パンチ加工を開始させるようタレットパンチプレス100を制御する。
【0089】
NC装置7は、ステップS10にて、ステップS9におけるパンチ加工を開始するのと並行して、抜き取った金型をストレージ5に移動させ、次のT指令におけるT指令金型をストレージ5からタレット4近傍の安全領域まで移動させよう金型移動機構を制御する。NC装置7は、パンチ加工が終了すると処理を終了させる。
【0090】
ところで、以上説明した第1及び第2実施形態においては、第1の加工プログラムPG1の各T指令に対応して使用する金型を装着するタレット4のステーション40と、第2の加工プログラムPG2の各T指令に対応して使用する金型を装着するタレット4のステーション40とが全て共通である場合を例としている。第2の加工プログラムPG2の少なくとも1つのT指令に対応して使用する金型を装着するステーション40が、第1の加工プログラムPG1のいずれかのT指令に対応して使用する金型を装着するステーション40と共通であれば、第1または第2実施形態の処理を実行させることが可能である。
【0091】
第1の加工プログラムPG1は少なくとも1つのT指令を含み、第2の加工プログラムPG2は2またはそれ以上のT指令を含めば、第1または第2実施形態の処理を実行させることが可能である。第2の加工プログラムPG2におけるいずれかの指令である第1の指令に続く第2の指令に対応して使用される第2の金型を装着すべきステーション40に、第1の加工プログラムPG1におけるいずれかの指令に対応して使用された第1金型が既に装着されていれば、第1または第2実施形態の処理を実行させることが可能である。
【0092】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 本体部
2 テーブル
3 ワーク移動機構
4 タレット
5 ストレージ
6 アーム(金型移動機構)
7 NC装置(制御装置)
8 加工プログラムサーバ
31 ワーク保持部
32 ワーククランパ
33 X軸
34 Y軸
40,50 ステーション
71 情報処理部
72 動作制御部
73 記憶部
721 プレス制御部
722 金型移動計画策定部
723 金型交換動作制御部
100 タレットパンチプレス
W ワーク